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4261.

インスリン不使用2型糖尿病患者では血糖値自己測定の有用性に疑問符

血糖値を自己測定しても血糖コントロールは改善されない可能性が示唆された。イギリス・オックスフォード大学のAndrew Farmer氏らが無作為化オープン試験であるDiGEM(Diabetes Glycemic Education and Monitoring)スタディの結果としてBMJのサイトにて早期公表した(6月25日付オンライン版、本誌掲載は7月21日号)。 血糖値の自己測定を推奨している米国糖尿病学会(ADA)による2007年ガイドラインなどを見直す必要性が示唆された形となった。1週間に2回血糖値を自己測定本スタディでは、インスリンを使用していない2型糖尿病患者を対象に、通常の血糖コントロール(通常治療群:152例)と、1週間に2日、3回/日(空腹時×1、食事2時間前・食後2時間値のいずれか×2)の血糖自己測定がHbA1cに及ぼす影響が比較された。血糖自己測定群はさらに、血糖測定後に低血糖または高血糖が認められた時に医師とコンタクトをとる「単純自己測定群」(150例)と、血糖値に応じた対処法を指導される「積極的自己測定群」(151例)に無作為化されている。対象患者の平均年齢は65.7歳、罹病期間中央値は3年間、HbA1c平均値は7.5%だった。1年後のHbA1cに有意差なし1次評価項目である1年後のHbA1c値は、しかし、3群間に有意差はなく、通常治療群7.49%、単純自己測定群7.28%、積極的自己測定群7.36%という結果だった(p=0.12)。試験開始時からの変化率で比較しても、3群間に有意差はなかった(p=0.38)。本試験の対象のように、すでにかなり良好な血糖コントロールが得られているインスリン不使用の2型糖尿病患者では、コスト等を考えるとルーチンな血糖自己測定は推奨できない──と筆者らは結論している。(宇津貴史:医学レポーター)

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SSRI治療を受けている大うつ病若年患者に、認知行動療法の併用は有効か

若年者の大うつ病に対する至適治療法は確立されていない。選択的セトロニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、若年者のうつ病において自殺傾向を招く恐れがあるが、短期的には有効な可能性がある。NICE(National Institute for Health and Clinical Excellence)ガイドラインは、認知行動療法(CBT)などの特異的な心理療法とSSRIの併用を提唱している。 イギリス・ケンブリッジ大学精神科発達精神医学のIan Goodyer氏らは、中等度~重症の大うつ病の若年者において、臨床的ケアとSSRIによる治療にCBTを併用する群としない群を比較する無作為化試験を実施した。BMJ誌6月7日付オンライン版、7月21日付本誌掲載の報告から。11~17歳の中等度~重症の大うつ病患者でSSRIとSSRI+CBTを比較対象は、初回の簡易的介入に反応しなかった11~17歳の中等度~重症の大うつ病あるいは大うつ病に進展する可能性のある若年うつ病患者208例。自殺傾向や行為障害のあるものも対象に含めた。2000~2004年の間に、SSRIとルーチンのケアを受ける群(SSRI群:103例)あるいはSSRI、ルーチンのケアとCBTを受ける群(SSRI+CBT群:105例)に無作為に割り付け、12週間の治療ののち16週間の経過観察を行った。SSRIに認知行動療法を併用しても短期的ベネフィットは得られない12週の治療終了時におけるHealth of the Nation outcome scales for children and adolescentsのスコアの変化(主要評価項目)は-0.64[95%信頼区間-2.54~1.26、p=0.50]であり、有意差は認めなかった。副次評価項目(mood and feelings questionnaire、children’s depression rating scale改訂版、children’s global assessment scale、clinical global impression improvement scale)は、いずれも有効性に関する有意差は示せなかった。全体として自殺念慮や自傷行為には減少傾向が見られたが、CBTによる自殺念慮、自殺行動の予防効果は確認できなかった。治療終了後16週までに、SSRI群の61%、SSRI+CBT群の53%が、「たいへんよい」「きわめてよい」まで症状が改善していた。Goodyer氏は、「SSRIとルーチンの臨床ケアを受けている大うつ病の若年患者にCBTを併用しても短期的なベネフィットは得られなかった」と結論している。(菅野 守:医学ライター)

4263.

クローン病治療に対するcertolizumab pegolの有効性

治験薬剤である抗腫瘍壊死因子(抗TNF)治療薬certolizumab pegol(CZP)については現在、クローン病と関節リウマチ(RA)についてそれぞれ臨床試験が継続されている。クローン病に対する同剤の臨床試験プログラムはPRECISEと呼ばれているが、本報告は、アメリカ・メイヨークリニックのWilliam J. Sandborn氏らによるPRECISE 1 Study:クローン病治療におけるCZPの有効性を検証する無作為二重盲検プラセボ対照試験の結果。NEJM誌7月19日号に掲載された。中等度~重度のクローン病患者662例を対象試験対象は、成人で中等度~重度のクローン病患者662例。患者をC反応性蛋白(CRP)の濃度レベルで階層化し、0週目、2週目、4週目と、その後は4週間ごとに、CZP 400mgとプラセボが皮下投与されるようランダムに割り付けられた。主要エンドポイントは、6週時点での奏功率と、6週目、26週目それぞれの時点での奏功率とした。わずかな有効性は認められるが緩解率の有意差は認められず母集団のうちCRPレベルが10mg/L以上の患者について、6週時点で「response」[CDAI(Crohn’s Disease Activity Index)スコアが100以下を達成した場合と定義]が認められた患者はCZP群37%、プラセボ群26%だった(P= 0.04)。また、6週、26週それぞれの時点で「response」が認められたのはCZP群22%、プラセボ群12%だった(P = 0.05)。母集団全体で見ると、6週時点はCZP群35%、プラセボ群27%(P = 0.02)、また、6週、26週各時点で認められたのはCZP群23%、プラセボ群16%(P = 0.02)だった。一方、緩解率(緩解:CDAIスコアが150以下を達成した場合と定義)については、6週時点と26週時点において両群に有意差は認められなかった(P = 0.17)。重篤な有害事象の発生はCZP群で10%、プラセボ群で7%の患者で報告され、重篤な感染症はそれぞれ2%、1%未満と報告された。また、CZP群のうち8%の患者で本剤への抗体が出現し、2%で抗核抗体が出現した。これらから研究グループは、「中等度~重度のクローン病患者へのCZP投与はプラセボと比較して、導入療法および維持療法いずれにおいてもわずかではあるが奏功率の向上が認められた。ただし緩解率について有意差は認められなかった」と結論付けた。(朝田哲明:医療ライター)

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女性における非空腹時TG値は心血管イベントとの強い関連示す

食後高トリグリセリド(TG)血症はアテローム性動脈硬化症を引き起こす重要な役割を果たす可能性がある、など論争の的になっているTG値と心血管疾患との関連について、アメリカ・ボストンのブリガム&ウーマン病院Sandeep Bansal氏らの研究グループが研究報告を行った。JAMA誌7月18日号の掲載報告から。米国女性26,509例を対象とした前向き研究Bansal氏らが行ったのは、空腹時と非空腹時それぞれのTG値と将来的な心血管イベントリスクとの関連を評価するというもの。Women's Health Studyに健康状態良好で参加登録した米国女性26,509例(1992年11月~1995年7月の間に登録、追跡調査期間中央値11.4年)を対象とした前向き研究で、TG値は、登録時の血液サンプル測定値が用いられた(空腹時群20,118例、非空腹時群6,391例)。主要評価項目は心血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的虚血性発作、冠動脈再建または心血管死亡)の発生ハザード比。追跡期間中央値11.4年の間に心血管イベントを経験した参加者は1,001例(非致死的心筋梗塞276例、虚血性発作265例、冠動脈再建628例、心血管死亡163例)で、総発生率は3.46/1,000人年だった。空腹時TG値は独立した関連性を示さない空腹時群および非空腹時群の各TG値からの心血管イベントの予測は、年齢、血圧、および喫煙とホルモン療法について加味した補正後モデルにおいては、いずれも可能だった。しかし、さらに総コレステロール、HDLコレステロール、インスリン抵抗性を加味した補正後モデルでは、空腹時群TG値と心血管イベントとの関連は弱まってしまった。これに対して非空腹時群では強い関連を示し続けた。また2次解析の結果、食後2~4時間での測定TG値が、最もよく心血管イベントとの関連を示し、空腹時間が長くなるほど減少することも明らかとなった。これら結果からBansal氏らは、女性において、非空腹時TG値は、従来の心血管リスク因子や他の脂質レベル、インスリン抵抗性マーカーとは別個の、心血管イベントとの関連を示す強力な因子であると結論づけた。なお同日号で、「男性および女性における非空腹時TG値と心筋梗塞、虚血性心疾患および死亡とのリスク」と題するデンマークからの報告も寄せられており、合わせて読むと知見が深まる。(武藤まき:医療ライター)

4265.

心臓CTが発癌リスクを顕著に高めるキーワード

CT冠動脈造影(CTCA)は一般的な検査法となったが、これに付随した発癌リスクについてのデータはほとんど示されていない。米科学アカデミーによる放射線の生物学的影響に関する最近の報告(BEIR VII phase 2)では、CTCA検査の放射線照射と癌発生率の生涯寄与リスク(LAR)を推計するためのフレームワークを提供しているが、どのような影響があるかについての報告が、アメリカ・コロンビア大学のAndrew J. Einstein氏らの研究グループらによってJAMA誌7月18日号に寄せられた。男女別人体模型を使ってシミュレーション本研究はCTCA検査による放射線照射がLARに及ぼす影響について、年齢、性、スキャン・プロトコル別(標準的な心臓CTCA、ECTCM:心電図波形に同期して管電流を変調させる撮像法、心臓と大動脈の両方を評価するなど)にリスクを評価するというもの。コンピュータを組み込んだ標準的な男女の人体模型を使って、標準的なスパイラルCTプロトコルを用いた64スライスCTCAによる線量を、モンテカルロ・シミュレーション法を用いて臓器別に推計。乳房(女性のみ)、肺など10臓器別の癌発生LARを、BEIR VIIのアプローチで年齢別、性別に推計し、それらを合計して全身のLARを算出し評価を行った。主要評価項目は、全身および臓器別癌発生のLAR。「女性」「若年患者」「心臓+大動脈評価スキャン」で顕著に高いLAR結果として、年齢・性・プロトコル別でLARは大きな差異が見られた。標準的な心臓CTCAによるLARは、20歳女性では1/143に上ったが、80歳男性では1/3,261。しかしこの数値は、ECTCMによる場合はそれぞれ1/219と1/5,017に減少しており、プロトコルによりリスクの違いがあることも明らかとなった。また同じプロトコル(ECTCM)でも60歳女性と60歳男性の推定LARはそれぞれ1/715と1/1,911で、性別間での差異もあった。なおプロトコル別では、心臓と大動脈の評価の組み合わせで最もLARが高まることが確認された(20歳女性の1/114が最高)。臓器別で最もLARが高率だったのは、より若い女性での肺癌と乳癌だった。シミュレーション・モデルではあるがこれらの推計は、64スライスCTCAの使用が癌のLARと少なからず関連していることを示唆しており、女性、若年患者、また心臓と大動脈評価を組み合わせたスキャンで、顕著に高いことが明らかになったとEinstein氏らは結論付けている。(武藤まき:医療ライター)

4266.

「出来高制」の医療報酬制度は医師のモチベーション低下につながらない

近年、臨床現場における医療の質の向上を図るために、医師や看護師などの医療提供者に対し、「出来高制」の報酬制度を取り入れるなど、報酬面での動機付け(Financial Incentives)を利用することに関心が高まっている。しかし一方で、このような報酬制度の採用による悪影響はないのだろうか。マンチェスター大学のR. McDonald氏らは、初期医療を行う英国の一般診療所において、このような報酬制度の導入が、医師や看護師の提供する医療の質とともに、診療の自主性、内面的なモチベーションにどのような影響を及ぼすかを検討した結果、「医師の内面的なモチベーションに悪影響は見られなかった」と報告した。BMJ誌5月17日付オンライン版、本誌6月30日号より。QOF導入が自主性やモチベーションに与える影響を検討McDonald氏らは、英国の2件の一般診療所において、臨床医12名、看護師9名、診療アシスタント4名、事務スタッフ4名を対象に検討を行った。報酬面の動機付けは、英国の一般臨床医に対する報酬体系のひとつであるQuality and Outcome Framework(QOF)を用いて行った。QOFとは、10の疾病グループごとに標準的な目標を設定し、目標を達成すれば成果報酬が支払われるというシステムだ。同検討では、QOFを導入したのち5ヵ月間の、診療現場での仕事ぶりや態度を観察・評価するとともに、個々との面談アンケートを実施し、QOF導入による影響を検討した。看護師は変化に対する危惧とともに、責任を与えられることへの喜びを指摘その結果、QOF導入後は医療の質に対するデータ収集への関心が高まり、医師も看護師も、一般的にQOFは、質の高い医療を提供するのに役立つと感じていることがわかった。医師に比べ看護師は、QOF導入後に生じる変化を危惧するケースが多かったが、同時に、特定の領域で責任を与えられたことを喜んでいた。これに対し医師の多くは、質的目標が、自身の診療の自主性に影響するとは考えていなかった。このような結果からMcDonald氏らは、「医療の質の向上を目指した出来高性の報酬制度を採用しても、一般臨床医の内面的なモチベーションに悪影響はないと思われる」と結論づけた。ただし、医師に比べ看護師では、導入に伴う変化を危惧する声が多く聞かれたとしている。

4267.

進行パーキンソン病の遺伝子治療、世界的に注目を集める試験で一定の成果が

掲載誌の発行前からその成果が伝えられ、発表後は日本でも一般紙などがさかんに報じている注目の研究。 パーキンソン病では黒質のドパミン作動性ニューロンの消失によって基底核回路に変化が起き、視床下核への抑制性のγ-アミノ酪酸(GABA)作動性インプットの低下などをきたす。そのため、運動開始困難、筋硬直、振戦を特徴とする運動障害が起きる。ドパミン作動性神経伝達薬の有効性は確立されているが、進行パーキンソン病ではジスキネジアやmotor fluctuationなど許容しえない薬剤関連合併症が多くみられる。 アメリカNYにあるコーネル大学Weill 医学部脳神経外科のMichael G. Kaplitt氏らは、運動回路内に正常な脳活性を再確立すれば、パーキンソン病の運動障害は回復するとの仮説のもと、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いてGABAの産生を促進するグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)遺伝子を視床下核ニューロンへ直接導入する遺伝子治療を試みた。Lancet誌6月23日号の報告。高、中、低用量のAAV-GADを視床下核の片側に手術的に注入Kaplitt氏らは、パーキンソン病12例(男性11例、女性1例、平均年齢58.2歳)を対象に、GAD遺伝子を移入したアデノ随伴ウイルスベクター(AAV-GAD)を視床下核の片側(対側半身の運動機能に対応)に手術的に注入し、その安全性および認容性を検討するオープンラベル試験を実施した。症例選択基準は、Hoehn and Yahr stage 3以上で、少なくとも5年以上の病歴があり、薬剤効果非発現時にmotor fluctuationがみられる70歳以下の症例とした。AAV-GADを低、中、高用量投与する3群に分け、それぞれに4例ずつを登録した。臨床評価は、ベースライン(併用薬の効果発現時、非発現時)、術後1、3、6、12ヵ月後に行い、日常生活動作(ADL)の評価にはUnified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)を用い、神経心理学的検査、PET検査を施行した。治療関連有害事象は認めず、3ヵ月後に運動能が有意に改善、1年後も持続全登録例が手術を受け、脱落例やフォローアップ不能例はなかった。治療に関連した有害事象は認めなかった。遺伝子治療3ヵ月後には、視床化核のAAV-GAD注入側とは対側半身の運動関連UPDRSスコアが有意に改善し(併用薬効果非発現時:p=0.0015、同発現時:p=0.01)、その効果は12ヵ月後も持続していた。PET検査では、治療側に限定的な視床部代謝の減少が確認され、臨床的運動スコアと補足運動野の脳代謝に相関が認められた。以上の結果により、Kaplitt氏は「進行パーキンソン病において、視床下核のAAV-GAD遺伝子治療は安全で良好な認容性を示し、成人脳に対するin vivo遺伝子治療は種々の神経変性疾患に対し安全に施行可能なことが示唆された」と結論した。なお、現在、日本で進められている遺伝子治療(自治医大神経内科・中野今治氏)では、hAADC遺伝子を組み込んだAAV-2ベクターを線条体に注入するとともにL-DOPAを経口投与する方法が採用されている。(菅野 守:医学ライター)

4268.

医療状況の異なる国の比較から見えるプライマリ・ケアの実像とは

プライマリ・ケアが公正で過不足のない効果的な医療システムの構築に最大限に貢献するにはどうすればよいか……。各国の事情がいかに異なろうと、プライマリ・ケアの役割に関する根本的な命題は同じだ。オーストラリア、ニュージーランド、アメリカの3ヵ国は、プライマリ・ケア医の供給、健康保険によるプライマリ・ケアへの近接性、専門医療へのゲートキーパーとしてのプライマリ・ケア医の役割が大きく異なる。University of California San FranciscoのAndrew B. Bindman氏は、これら3ヵ国のプライマリ・ケアにおける患者構成、診療の範囲、診療時間などを比較検討することで、プライマリ・ケアの将来像を探った。5月15日付BMJオンライン版、6月16日付本誌で掲載された報告。質問票を用いた合計10万件以上に及ぶcross sectional調査Bindman氏らは、2001~2002年にオーストラリア、ニュージーランド、アメリカの3ヵ国におけるプライマリ・ケアの診療状況を比較検討するために、患者背景、診断、診療時間などに関する質問票を用いたcross sectional調査を実施した。オーストラリアは7万9,790件、ニュージーランドは1万64件、アメリカは2万5,838件の外来受診が解析の対象となった。診断コードはJohns Hopkins expanded diagnostic clustersに準拠し、診療の範囲は疾患に関連する全問題の75%を説明しうるexpanded diagnostic clustersの診断名数として定義された。診療所要時間は医師が記録した外来診療時間などから計算した。プライマリ・ケア医による診療の多くの局面は各国間でよく類似プライマリ・ケア医が管理する1回の外来診療ごとの疾患関連問題数は平均1.4件であった。問題の75%を説明しうるexpanded diagnostic clustersの診断名数は、オーストラリアが52、ニュージーランドが57、アメリカは46であった。健康関連問題の頻度は各国間で高い相関を示した。最も大きな違いは診療時間であり、1患者当たりの年間診療時間はアメリカがもっとも短く、オーストラリアの半分、ニュージーランドの1/3であった。これらの結果を踏まえ、Bindman氏は「3ヵ国はそれぞれプライマリ・ケアの供給および財政の状況が異なるが、プライマリ・ケア医による診療の多くの局面は各国間でよく類似している」と結論している。(菅野 守:医学ライター)

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夭折するロシア男性、その原因とは?

先進工業国の中でロシアは例外的に平均寿命が短い。2004年のデータでは男性59歳、女性72歳、男女とも働き盛りの死亡率の高さが際立つ。25~65歳のロシア男性の死亡率はじつに55%にも及ぶが、イングランド/ウェールズの15%と比べるといかに高い数値かがわかる。また、死亡率には大きな変動が見られ、特に男性で変動が激しいが、就労女性にも同様の傾向が見られる。そして、これらの問題にはアルコールの関与が示唆されている。 London School of Hygiene and Tropical MedicineのDavid A. Leon氏は、ロシア男性の若死に傾向とアルコールの関連を調査、その結果を6月16日付のLancet誌で報告している。典型的なロシアの都市において25~54歳の死亡男性の飲酒状況を調査Leon氏らは、イジェフスク市(ロシア連邦ウドムルト共和国の首都、2002年時の人口約63万2,000人)に居住し、2003年10月20日~2005年10月3日の間に死亡した25~54歳の男性の飲酒状況などについて調査した。対照群は市民の中から無作為に抽出した。死亡男性の生活環境を知る情報提供者に、死亡後6~8週以内にインタビューを行った。死亡男性1,468名、対照群1,496名について、飲酒状況(酒の種類、頻度、量)、工業用エタノールを原料とする非飲用アルコールの飲用頻度、学歴、喫煙歴に関する情報を収集した。就労年齢ロシア男性の死因の約半数が有害な飲酒と密接に関連対照群のうち問題のある飲酒者あるいは非飲用アルコールの飲用者の割合は13%であったのに対し、死亡男性では51%にも達していた。禁酒者や通常飲酒者と比較して、これらの死亡男性の死亡オッズ比は6.0(95%信頼区間:5.0-7.3)と高値であり、過去に非飲用アルコールの飲用歴がある者の年齢補正死亡オッズ比は9.2(95%信頼区間:7.2-11.7)にも達した。さらに、死因の43%が有害な飲酒(問題のある飲酒もしくは非飲用アルコールの飲用)に起因していた。これらの結果は、典型的なロシアの都市に居住する就労年齢男性の死因の約半数が有害な飲酒で説明可能なことを示唆する。Leon氏は、「ソビエト連邦崩壊後の1990年初頭のロシアに見られる急激な死亡率の変動は、非飲用アルコールなどの有害物質の飲用と関連するとの説があるが、今回の解析結果はこの主張を間接的に支持するもの」としている。(菅野 守:医学ライター)

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女性結核患者の検出率向上に簡便な喀痰採取ガイダンスが有効

回避可能とされる成人死亡原因の26%を結核が占めるパキスタンでは、結核が疑われる女性の喀痰塗抹検査の陽性率が男性に比べて低く、女性結核患者の検出に支障をきたしているという。この男女差を生む主な原因は、痰の代わりに唾液を提出するなど女性の喀痰標本の質の低さにある。その背景には結核の喀痰検査に関する正しい知識の不足のほか、とくに人前で痰を吐くことへの抵抗感など文化的要因があると考えられる。そこで、London School of Hygiene and Tropical MedicineのMishal Sameer Khan氏らは、簡便な喀痰採取ガイダンスを用いた無作為化試験を実施。Lancet誌6月9日号に掲載された論文では、喀痰標本の質が改善され、検査陽性率が向上したと報告している。喀痰採取ガイダンスの有無で比較する無作為化試験対象は、2005年5~7月に、ラワルピンディ市(パキスタン)の結核センターを結核の疑いで受診した3,055例(女性1,494例、男性1,561例)。これらの症例が、喀痰標本の提出前に簡便な喀痰採取ガイダンスを受ける群と、特別な指導は受けずに標本を提出する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、喀痰塗抹検査陽性女性のうちガイダンスを受けない群と受けた群の比とした。ガイダンスを受けた女性は、受けない女性に比べ喀痰塗抹検査陽性率が有意に高く[リスク比:1.63(95%信頼区間:1.19-2.22)]、検査陽性例の検出率が有意に優れていた(13% vs 8%、p=0.002)。また、ガイダンスを受けた女性では唾液の提出が有意に減少し(p=0.003)、早朝に採取した標本の提出が有意に増える(p=0.02)など、標本の質的な改善も達成された。低所得国の結核対策における男女間差の解消に有効か喀痰採取ガイダンスは簡便で有効性が高く、費用効果に優れた方法である。Khan氏は、「低所得国では、結核抑制策における男女間差の解消に有効な可能性がある」と指摘している。なお、男性ではガイダンスによって検査陽性率や標本の質が改善されることはなかったという。(菅野 守:医学ライター)

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ロシグリタゾンの心血管リスク増加について「断定はできない」

最近のメタ解析の結果に懸念が示されている2型糖尿病治療薬のロシグリタゾンの心血管系へのリスクについて、RECORD研究グループが中間解析を発表した。心不全に対する有意なリスク増加が認められたものの、今回の解析結果からは、心筋梗塞のリスク増加に関係していると言い切れるだけの十分なデータが得られなかったと報告している。本論文の詳細はNEJMオンライン版6月5日号に掲載された。RECORDの4,447例対象に中間解析ロシグリタゾンの心血管系への影響については、市販後の安全性に関する非劣性試験で、オープンラベルの大規模無作為化試験RECORD(Rosiglitazone Evaluated for Cardiac Outcomes and Regulation of Glycaemia in Diabetes)が現在進行中である。その研究グループが中間解析を行った。解析対象は、メトホルミンあるいはSU剤での血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者4,447例。ロシグリタゾン追加投与群(2,220例)と、メトホルミン+SU剤併用群(対照群:2,227例)に割り付け、主要エンドポイントは、心血管系に起因する入院または死亡である。心不全リスク増加を確認するも心筋梗塞リスク増加断定にはデータ不十分解析は、平均追跡期間3.75年で統計的な検出力を限定して行われた。その結果、ロシグリタゾン群(217例)と対照群(202例)の主要エンドポイントのハザード比は1.08(95%信頼区間0.89-1.31)で、両群に統計学的な有意差は見られなかった。ただ、心不全を呈する患者がロシグリタゾン群に多く存在していたことが確認された(ハザード比2.15;95%信頼区間1.30-3.57)。しかし研究グループは今回の解析からは、ロシグリタゾンが心血管系に起因する入院・死亡リスクに関係しているとは断言できないと結論。死亡増加の要因が心血管系に起因するかどうか、ロシグリタゾンが心筋梗塞のリスク増加と関係していたか断定するだけのデータは得られなかったと述べている。(武藤まき:医療ライター)

4272.

急性心筋梗塞治療にP4Pの効果なし

医療の質を向上させるツールとして促進された「治療成績に応じた医療費の支払い(Pay for Performance:P4P)」だが、急性心筋梗塞の治療プロセスとアウトカムの質向上に、P4Pの影響は見られなかったとの報告が、米国デューク大学Center for Clinical and Genetic EconomicsのSeth W. Glickmanらの研究グループによって報告された。本論文の詳細は、JAMA誌6月6日号に掲載されている。治療プロセスとアウトカム向上を判定メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)は2003年に、急性心筋梗塞治療の指標づくりを視野に入れた、米国で最大級のパイロット版P4Pプロジェクトに着手している。Glickmanらは、P4Pが急性心筋梗塞の治療プロセスとアウトカムの向上に結びつくかどうかを判定した。対象は、米国心臓学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)のガイドライン「CRUSADE」で登録された、ST非上昇型心筋梗塞患者10万5,383人。2003年7月から2006年6月にかけて治療を受けた者を、P4Pプロジェクトに参加する54病院(P4P参加病院群)あるいは参加していない446の対照病院に分け、重症度分析と観察的手法を用いて分析した。主要評価項目は、(1)ACC/AHAが推奨するクラスIの治療ガイドラインの順守、(2)院内死亡率、の2つが用いられた。P4P参加病院とそれ以外で有意差は認められずP4Pプロジェクトでは6つの療法にインセンティブをつけている。そのうち、退院患者のアスピリン服用コンプライアンスと、禁煙カウンセリングの2つについて、P4P参加病院群の改善率がわずかに高かったものの、有意差は認められなかった。インセンティブ対象外の療法においても改善率に有意差は認められず、院内死亡率の改善割合についても、P4P参加病院群が対照病院と比べて有意に高いとの証拠は得られなかった(オッズ比0.91 vs 0.97, P=0.21)。研究グループは、医療の質向上のプロジェクトに自発的に参加した病院において、P4Pプログラムと急性心筋梗塞の治療プロセスまたはアウトカムの質の向上に明らかな相関は見られず、逆相関があるという証拠も見つからなかったと報告し、プロジェクトにおけるP4Pの役割を規定するには、さらなる研究が必要と結論づけた。(朝田哲明:医療ライター)

4273.

テロや紛争起因のPTSDに認知療法は効果的

テロや紛争に起因するPTSD症状に悩まされる人々に対し、認知療法が有効であるとの報告が、英国ウルスター大学Michael Duffy氏らの研究グループによって寄せられた。宗教対立から長年にわたり無差別テロなどが日常化してきた北アイルランドで行われた無作為化臨床試験で、認知療法を行った患者群に大幅な改善が見られた結果を受けての報告。本論文の詳細は、BMJ誌6月2日号に掲載された。北アイルランドのNICTT基点に行われた無作為化臨床試験テロに起因する精神的外傷(トラウマ)に対する効果的な治療法はほとんど報告されていない。Duffy氏らは、テロや紛争を背景要因とするPTSD症状に苦しむ住民の多い北アイルランドで、PTSDに対する認知療法の有効性を無作為化臨床試験で検証した。対象者は、PTSDに苦しむ人々に、認知療法のプログラムを提供することを目的に設立されたNICTT(The Northern Ireland Centre for Trauma and Transformation)に紹介されてきた患者の中から、主としてテロや紛争に起因する慢性PTSDの患者58人(中央値5.2年、3ヵ月から32年)を選定し、ただちに認知療法を行う群と12週待ちの待機群に振り分けた。治療群には平均5.9セッション、必要に応じてさらに2セッションの治療プログラムが行われた。患者スコア、エフェクトサイズとも大幅改善示す主要評価項目はPTSDスケールおよびベック抑うつ評価尺度を用い、副次評価項目にSDS(Sheehan disability scale)の労働・社会生活面(労働障害、社会生活障害、家庭生活障害)を用いてスコアを判定。12週間後に行った判定では、治療群と待機群では、PTSDスコアでは平均差9.6(95%信頼区間3.6-15.6)、ベック抑うつ評価尺度では同10.1(同4.8-15.3)、自己申告による労働・社会生活面への影響については同1.3(同0.3-2.5)といずれも大幅な改善が認められた。また、治療前後のエフェクトサイズについても、PTSD1.25、抑うつ1.05、労働・社会生活面1.17と、あらかじめ設定した「large」(0.8以上)に該当する変化が見られた。対照群にはまったく変化が見られなかったこと、さらに追跡調査の結果などとも合わせて、認知療法はテロや紛争に起因するPTSDに効果的な治療法であると結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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