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蘇生処置を受けた新生児はIQ低下のリスクが増大

蘇生処置を受けた新生児は、その後の小児期を健康に過ごした場合でも、知能指数(IQ)低下のリスクが増大していることが、イギリスBristol大学のDavid E Odd氏らが実施したコホート研究で明らかとなった。低酸素状態など出生時の軽度の脳損傷によって、小児が成長してからようやく検出し得るような、わずかな認知機能障害の可能性が高まるという。Lancet誌2009年5月9日号(オンライン版2009年4月21日号)掲載の報告。ALSPACコホートの3つの群を比較研究グループは、出生時に蘇生処置を受けたが脳症の症状は見られなかった新生児において、小児期のIQスコアの低下ついて評価した。1991年4月1日~1992年12月31日の間にBristol市で生まれた小児が80%以上を占めるAvon Longitudinal Study of Parents and Children(ALSPAC)のコホートから、以下の3つの群に属する小児を選択した。出生時に蘇生処置を受けたが脳症の症状はなく、それ以上の治療は受けなかった群(815例)、蘇生処置を受け脳症の症状が見られたため新生児治療を受けた群(58例)、蘇生治療を受けず脳症の症状もないため新生児治療は受けなかったレファランス群(1万609例)。認知機能の評価は平均年齢8.6(SD 0.33)歳時に行い、IQのスコアが80未満の場合を「低IQ」と定義した。5,953人の小児で、WISC-III(Weschler intelligence scale for children)によるIQスコアが得られた。IQの全検定を完遂できたのは5,887人であった。蘇生処置を受けた新生児は、無症状、有症状とも8歳時の低IQリスクが増大8歳時の解析(5,887例)では、蘇生処置を受け脳症の症状のない小児(オッズ比:1.65、95%信頼区間:1.13~2.43)および症状が見られたため新生児治療を受けた小児(同6.22、同1.57~24.65)の双方において、低IQのリスクが増大していた。一方、無症状小児は有症状小児よりも人数が多かったことから、低IQのリスク増大が、出生時に蘇生処置を要する原因となった病態に起因すると考えられる小児は、無症状群が3.4%(96%信頼区間:0.5~6.3)、有症状群は1.2%(同0.2~2.2)であった。著者は、「蘇生処置を受けた新生児は、その後の小児期を健康に過ごした場合でも、IQ低下のリスクが増大していた」と結論し、「蘇生処置時に無症状の新生児は、脳症の神経症状を呈した新生児に比べ、成人期に低IQをきたす確率が高い可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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米国CDC暫定ガイダンス、豚インフルエンザで1歳未満にもオセルタミビルを推奨

米疾病対策センター(CDC)は米東部時間28日午後7時、豚由来インフルエンザウイルス感染の確定例や疑い例の小児を診る米国の臨床医に向けて暫定ガイダンスを発表、1歳以上の幼児の豚由来インフルエンザの治療と予防にオセルタミビルとザナミビルの投与を推奨している。 注:ガイダンスは暫定的なものであり、今後、データの蓄積により変更もありえる ●Interim Guidance for Clinicians on the Prevention and Treatment of Swine-Origin Influenza Virus Infection in Young Childrenhttp://www.cdc.gov/swineflu/childrentreatment.htm 

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米国CDC暫定ガイダンス、豚インフルエンザで妊婦の治療・予防にも抗ウイルス薬を推奨

米疾病対策センター(CDC)は米東部時間28日午後1時45分、豚由来インフルエンザウイルスの妊婦に対する治療や感染予防に関する暫定ガイダンスを発表、妊婦であっても抗インフルエンザ薬による治療、予防を推奨している。 注:ガイダンスは暫定的なものであり、今後、データの蓄積により変更もありえる ●Interim Guidance—Pregnant Women and Swine Influenza: Considerations for Clinicianshttp://www.cdc.gov/swineflu/clinician_pregnant.htm 

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ICUでの投薬ミスは日常的に起きている、報告・チェック体制がミスを防ぐ最大の武器

非経口の投薬ミスは、ICUでは日常的に起きており、深刻な医療安全の問題であることが、ESICM(European Society of Intensive Care Medicine)の質改善研究グループによって行われた、27ヵ国113施設のICUを対象とした多国籍前向き研究の結果、明らかになった。BMJ誌2009年4月18日号(オンライン版2009年3月12日号)掲載より。27ヵ国113施設1,328例のICU患者に起きた投薬ミスを解析本研究はICUでの非経口投薬ミスの、国際レベルでの傾向、特徴、寄与因子、予防措置について評価をすることを目的とし、スタッフの自己申告に基づく観察前向き24時間横断研究にて行われた。解析対象となった参加症例数は1,328例。主要評価項目は、ミスによる影響の度合い、特徴分布、寄与因子分布、予防因子分布とされた。臓器への障害は少なくとも1投薬ごとに起きている投薬ミスは、患者441例に関わる861件、患者100人・日当たり74.5件が報告された。このうち4分の3は、「不作為の過誤(errors of omission)」だった。投薬治療ステージで被った投薬過誤による永続的な有害事象例および死亡例は、合わせて12例(対象全患者の0.9%)だった。多変量ロジスティック解析の結果、臓器への障害は少なくとも1投薬ごとに起きている(オッズ比:1.19)、静脈注射時に起きている(yes対no:2.73倍)、非経口投薬の数が多いほど起きている(1非経口投薬増当たりオッズ比:1.06)、ICUでの定型的介入時(yes対no:1.50倍)、施設規模が大きいほど起きている(1ベッド増当たりオッズ比:1.01)、看護師が受け持つ患者が多いほど起きている(患者1人増当たりオッズ比:1.30)、ICU稼働率が増すほど起きている(10%増当たりオッズ比:1.03)ことが明らかになった。一方で、投薬ミスは基本的なモニタリングが行われている場合は低かった(yes対no:0.19倍)。また、クリティカルなインシデントの報告システムがある場合(0.69倍)、看護師の交代時のルーチンチェックが確立している場合(0.68倍)、回転率が高い場合(1患者増当たりオッズ比:0.73倍)も、ミスは少なかった。本報告を行ったウィーン大学救急部門のAndreas Valentin氏は、「重症患者のケアが複雑になるほど、ミスを報告するシステムやチェック体制を組織的に整えることが、ミスを防ぐ最大の因子である」とまとめている。

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新型インフルエンザに関する情報サイト

新型インフルエンザに関する情報サイトのリンクです。 ●MLインフルエンザ流行前線情報DBhttp://ml-flu.children.jp/ ●日本感染症学会緊急提言「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」http://www.kansensho.or.jp/ ●日本予防医学リスクマネージメント学会「新型インフルエンザ A(N1H1) 情報」http://www.jsrmpm.org/JSwineinfo.html ●国立感染症研究所感染症情報センター「国内医療機関における新型インフルエンザA(H1N1)診断の流れ Ver.1」http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/pdf09/090506_diagnosis.pdf ●国立感染症研究所感染症情報センター「国内医療機関における新型インフルエンザA(H1N1)抗ウイルス薬による治療・予防投薬の流れ Ver.1」http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/pdf09/090506_treatment-chemoprophylaxis.pdf ●UP-TO-DATE「Epidemiology, clinical manifestations, and diagnosis of swine H1N1 influenza A」http://www.utdol.com/home/content/topic.do?topicKey=pulm_inf/18836 ●新型インフルエンザ(豚インフルエンザH1N1)に係る症例定義及び届出様式についてhttp://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/090429-03.html  ●首相官邸「海外における新型インフルエンザの発生に関する政府の対応状況」http://www.kantei.go.jp/jp/kikikanri/flu/swineflu/index.html ●厚生労働省「新型インフルエンザ対策関連情報」http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html ●厚生労働省「ブタインフルエンザに対する対応について」http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/090426-02.html ●WHO「Swine influenza」http://www.who.int/csr/disease/swineflu/en/index.html ●CDC「Swine Influenza (Flu)」http://www.cdc.gov/swineflu/ ●国立感染症研究所感染症情報センター「ブタインフルエンザ」http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/index.html ●青木眞先生のブログにCDCの一般向けの翻訳が掲載されていますhttp://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/b60eb34d09d10229a171a400faf59300 ●新型インフルエンザ・ウォッチング日記http://blog.goo.ne.jp/tabibito12 

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ニコチン補充療法、禁煙したくない・できそうもない人にも効果

ニコチン補充療法は、禁煙したくない・できそうもないと考えている人にも、有効かつ安全に禁煙できる方法だという。英国バーミンガム大学Health and Population Sciences校のDavid Moore氏らが行ったシステマティックレビューのメタ解析の結果で、BMJ誌2009年4月11日号(オンライン版2009年4月2日号)で報告された。介入開始から6ヵ月時点での禁煙状況など評価Cochrane Library、Medlineなど6ソースで行われたシステマティックレビューは、発表・未発表を問わず、短期的に禁煙する意志はないことを断言した喫煙者も登録されており、ニコチン補充療法(動機付け支援あるなしにかかわらず)との比較が、プラセボ、未治療、その他薬物療法、あるいは動機付け支援のような心理的介入とで行われている無作為化試験で(現在進行中の試験、参照リストに登録されている試験、スポンサーが製薬会社のもの、臨床専門医のものいずれも含む)、喫煙率が報告されていることが適格条件とされた。解析の主要評価項目は、介入開始から6ヵ月時点での禁煙状況。また、追跡終了時点での禁煙状況もしくは減煙状況、および有害事象についても評価された。6ヵ月間禁煙できた割合は、プラセボ群の2倍適格条件を満たしたプラセボ対照無作為化試験は7試験(4試験はニコチンガム、2試験はニコチン吸入器、1試験はガム・吸入器・パッチから自由に選択)。いずれも禁煙については副次評価項目だった。被験者総計2,767例が、6~18ヵ月にわたり介入が行われ、12~26ヵ月間追跡されていた。6ヵ月間禁煙できていた人は、ニコチン置換療法群は6.75%で、プラセボ群3.28%の約2倍の達成率だった。また追跡終了時点で、禁煙できていた人(介入後6週目以降持続して)は、ニコチン置換療法群は1.6%、プラセボ群は0.4%。減煙できていた人は、ニコチン置換療法群は21.8%、プラセボ群は16.5%(持続的に減煙できていた人は、各6.3%、1.6%)。すべての評価項目で、ニコチン置換療法の有効性が認められた。有害事象に関しては、死亡(オッズ比:1.00)、重篤な有害事象(1.16)、有害事象による介入中断(1.25)について有意差はなかったが、悪心がニコチン置換療法群で有意に多かった(1.69)。これらからMoore氏は、ニコチン置換療法は効果的な介入であると結論したが、「今回得られたエビデンスは、定期的な行動支援とモニタリングが前提となっており、定期的支援がなくてもニコチン置換療法が効果的なものかどうかは不明である」とも述べている。

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男性の肥満は褐色脂肪組織の活性低下が関係

褐色脂肪組織が体重の調節にとって重要であることが動物実験などによって明らかになったが、褐色脂肪組織の成人にとっての生理的意義は? Nutrition and Toxicology Research Institute Maastricht(オランダ)のWouter D. van Marken Lichtenbelt氏らのグループは、つい最近まで小型哺乳類と乳児だけに関係する話とされていた褐色脂肪組織について、寒冷環境下での肥満および非肥満男性の違い(褐色脂肪組織の有無、分布、活性)について系統的調査を行った。NEJM誌2009年4月9日号より。非肥満男性10例と肥満男性14例の、褐色脂肪組織の活性を調査調査は計24例の健常な男性[BMI 25未満の非肥満型10例(20~32歳)と、BMI 25以上の過体重・肥満型14例(18~30歳)]を、通常の気温環境(22℃)と寒冷環境(16℃)の両方に曝露し、褐色脂肪組織の活性(身体組成とエネルギー代謝との関連を調査)を調べる方法で行われた。褐色脂肪組織の活性は、PET/CT断層撮影にて判定。身体組成とエネルギー消費は、二重エネルギーX線吸光光度測定法と間接熱量測定法を用いて測定した。肥満男性の多くで活性低下が見られた結果、寒冷環境への曝露では被験者24例中23例(96%)で、褐色脂肪組織の活性化が観察された。一方、通常の気温環境では観察されなかった。また活性は、過体重・肥満被験者のほうが、非肥満被験者より有意に低かった(P = 0.007)。BMIと体脂肪率はいずれも、褐色脂肪組織と有意に負の相関がみられた一方で、安静時代謝率とは有意に正の相関を示した。これらの結果からLichtenbelt氏は、若年男性は褐色脂肪組織を持つ割合は高いこと、過体重・肥満男性の褐色脂肪組織の活性は低下しており、褐色脂肪組織は男性の代謝にとって重要であることがわかったと結論している。また、褐色脂肪組織は肥満治療のターゲットとなり得る可能性についても示唆した。(朝田哲明:医療ライター)

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患者カルテ情報の研究利用、過度な個人情報保護は結果に重大な影響招く

2003年4月にアメリカで発効されたHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act;医療保険の携行と責任に関する法律)などによる患者情報の秘匿性への重視から、患者のカルテ情報の研究利用について、かつては必要とされていなかったインフォームドコンセントが義務付けられることが多くなった。しかし、“義務的”にインフォームドコンセントを行った上で集めたデータに基づく研究結果には“バイアス”がかかって有効性に重大な影響を与えているのではないか――。そのような懸念は、すでに1977年頃には言われていたが、最近富みに編集レビュー委員らが強調するようになっていることから、マクマスター大学(カナダ・ハミルトン)臨床疫学・生物統計学部のMichelle E Kho氏らは、実際にインフォームドコンセントが前向き観察研究でバイアスを先導しているのか、システマティックレビューで検証を行った。BMJ誌2008年4月4日号(オンライン版2009年3月12日号)より。患者の研究への同意率は66.9%レビュー対象は、2008年3月までに、Embase、Medline、Cochrane Libraryで発表された、参加者と非参加者の特徴が報告されており、カルテ情報を用いるためにインフォームドコンセントを行っていた前向き観察研究論文が選ばれた。分析されたのは、参加者および非参加者の年齢、性、人種、教育、収入または健康状態。また、各々の研究への同意率、選択および報告への偏りの恐れに対する感受性についても調べられた。レビューされたのは1650論文。そのうち分析可能なデータを含み基準を満たしたのは17の研究論文だった。結果、分析された転帰尺度について、参加者と非参加者間の差が確認された。しかし、インフォームドコンセントによるバイアス、および有効性に与える影響の大きさについて整合性を見いだすことはできなかった。また、カルテ情報利用に関する同意率は、17論文での16万1,604例のうち66.9%だった。Kho氏は、「カルテ情報の利用に関して、個人情報保護法が観察研究に過度なバイアスをもたらすことのないよう、義務的なインフォームドコンセントの必要性に関して、調査倫理委員会等は思慮深く意思決定する必要がある」と結論している。

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かかりつけ医に、うつ病重症度判定の報酬インセンティブを導入したが……:イギリス

イギリスでは2006年4月以降、NHS(国民健康保険制度)のQOF(quality and outcomes framework)契約を結ぶかかりつけ医に対し、初診時全患者について、公認された3つの評価表(PHQ-9、HADS、BDI-II)のいずれかを用いて、うつ病重症度評価を行う報酬インセンティブを導入している。目的は、中等度~重度うつ病患者の過少治療(特に抗うつ薬投与)を改善することにある。サウサンプトン大学プライマリ・ケア部門のTony Kendrick氏らは、制度導入後のかかりつけ医の抗うつ薬の処方率と精神科専門医等への紹介率をカルテデータから調べ、狙い通り改善が図られているのか調査を行った。BMJ誌2009年3月28日号(オンライン版2009年3月19日号)掲載より。検査実施率は着実に増えている一方、評価ツールの精度、有用性に疑問の声原則として評価表でスコアが高かった患者は、必要な介入がより大きいことを示す。しかしQOFガイダンスでも、治療評価はスコアだけをあてにするのではなく、身体的障害やうつ病既往歴、患者の希望を考慮するよう推奨している。また評価表は、それぞれ開発・設計目的が少しずつ異なっており、うつ病重症度の「ゴールドスタンダード」はない。HADS(hospital anxiety and depression scale)はうつ病患者を同定する検査ツールであり、BDI-II(Beck depression inventory第2版)はうつ病重症度を測定する診断ツール、そしてPHQ-9は検査と診断の両評価を兼ね備えたものとして開発された。そのためNHSによれば、公認評価表の診断時活用は、2006~2007年の平均81%から、2007~2008年は平均91%にアップしたと報告されているが、一方でかかりつけ医がスコア結果を無視している実態がありツールの精度や有用性について議論が続いているという。高齢患者、共存症患者への治療率が低いそうした背景の中でKendrick氏らは、サウサンプトン、リバプール、ノーフォークの3地域からかかりつけ医38人の協力を得て、2006年4月から2007年3月の間に、うつ病評価を行った患者2,294例のカルテデータを解析した。結果、使用された評価表の内訳は、PHQ-9が1,658例、HADSが584例、BDI-IIが52例。広く使われていたPHQ-9とHADS患者群(2,242例)で、抗うつ薬処方率は79.1%、専門医等の紹介率は22.8%。処方率および紹介率は、より高度な重症度スコアと有意に相関していた。ただし評価表別に見ると、PHQ-9群では83.5%の患者が中等度~重度患者と分類されている一方、HADSでの同分類患者分類の割合は55.6%という違いが見られた。また、QOFで特に重視すべきスクリーニング対象としている高齢患者(65歳以上)、あるいは共存症(虚血性心疾患、糖尿病など)を有する患者について、治療に結びついている割合が、それぞれの対照群と比べると低いことが明らかになった。Kendrick氏は、「かかりつけ医は、評価表スコアだけに頼らずうつ病治療の評価を行っており、スコア結果と実際の治療とは相反している実態が明らかになった。今回の結果は、治療を行うことが妥当である、臨床的な判断とも一致する、とかかりつけ医が患者分類の手段として容認できるよう、推奨スコアの変更を行う必要があることを示唆するものである」と結論している。

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PSA検診による前立腺癌死亡率の減少効果なし:アメリカでの無作為化試験の結果

PSA検診を実施しても、前立腺癌による死亡率を減少する効果はないとする研究結果が出た。これは、前立腺癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌の4種類の癌のスクリーニングについて米国で行われている、PLCO(Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian)癌スクリーニング試験の結果。米ワシントン大学のGerald L. Andriole氏らが、NEJM誌2009年3月26日号(オンライン版2009年3月18日号)で発表した。同一号のNEJM誌で、ヨーロッパの研究グループが発表したPSA検診の有効性に関する結果とは、相反する試験結果となっている。約7万7,000人を7年追跡試験は、1993~2001年にかけて、米国内10ヵ所の医療センターで、7万6,693人を無作為に2群に分け、一方には前立腺癌検診を毎年行い(検診群)、もう一方には通常の医療を行った(対照群)。具体的には、検診群にはPSA検診を6年間、直腸診を4年間、それぞれ毎年行った。対照群には通常の医療ケアを行ったが、その中でPSA検診や直腸診を受けた人もいた。検診群のPSA検診受診率は85%、直腸診受診率は86%だった。対照群のPSA検診受診率は40~52%、直腸診受診率は41~46%だった。前立腺癌死亡率は両群で変わらず7年間追跡後、前立腺癌罹患率は、対照群で95人/1万患者・年だったのに対し、検診群では116人/1万患者・年だった(罹患率比:1.22、95%信頼区間:1.16~1.29)。前立腺癌による死亡率は、対照群で1.7人/1万患者・年(死亡者数44人)に対し、検診群で2.0人/1万患者・年(同50人)と、両群に有意差はなかった(死亡率比:1.13、95%信頼区間:0.75~1.70)。なお、試験開始後10年のデータについては67%が完了しているが、7年追跡の結果と一貫しているという。同研究グループは、試験開始後7~10年の追跡結果において、前立腺癌による死亡率は非常に小さく、検診群と対照群では有意差は見られなかったと結論づけている。(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)

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急性胸痛を訴え救急外来を受診した患者へのアドバイス

急性胸痛を訴え救急外来を受診する患者の大半は、即時診断は困難で、さらなる診断評価を必要とする。通常はそのことを患者に口頭で伝えるだけだが、診断に対する不安を患者に与えることになったり、急性胸痛を繰り返すことになるなどQOLに重大な影響をもたらし、うまく伝えることが求められている。Northern General HospitalのJane Arnold氏らは、年間70万人(イングランドとウェールズで)に上る急性胸痛患者への有用な情報伝達方法として、循環器外来患者のコミュニケーションツールとして開発されたインフォメーションシートをアレンジ。患者の不安解消および健康QOL、治療満足度、二次的症状の改善に役立つか試験した。BMJ誌2009年3月21日号(オンライン版2009年2月26日号)より。診断評価の伝達を、口頭のみ群、+インフォメーションシート提示群とで比較試験は1施設のER胸痛ユニットで、非盲検無作為化試験で行われた。急性胸痛を訴え受診するも初発症状での診断がつかなかった患者を、診断評価後に、一般的な口頭でのアドバイスだけを与えるグループと、口頭でのアドバイスに加えインフォメーションシートを提示するグループに、無作為に割り付けた。主要転帰は、不安症(14の質問項目で評価するhospital anxiety and depression scale)。副次転帰は、うつ病(hospital anxiety and depression scaleで評価)、健康QOL(SF-36でセルフ評価)、患者満足度、1ヵ月以内の再度の急性胸痛の有無、ライフスタイルの変化(禁煙、食事、運動)、さらに他のソースから情報を得ようとしたり、疼痛へ備えた健康管理行動とした。インフォメーションシート提示はうつや不安予防に有効患者700例のうち試験に応じたのは494例(70.6%)だった。結果は、アドバイスが口頭のみだったグループに比べ、インフォメーションシートも受け取ったグループのほうが、主要転帰の不安症、副次転帰のうつ病の評価指標平均値(hospital anxiety and depression scale)が、より低く、シート提示が不安症やうつを減らすことが確認された。不安症のスコアは、7.61対8.63、群間差は1.02(95%信頼区間:0.20~1.84)。うつ病スコアは、4.14対5.28、群間差は1.14(0.41~1.86)。SF-36評価による精神面および健康状態についても、+インフォメーションシート群のほうが高く、健康QOLの面に有用なことが認められた。一方で、患者満足度、二次的症状、ライフスタイルの変化、さらなる情報探求行動や疼痛へ備えた健康管理行動に有意な変化は見られなかった。それでもArnold氏は、患者にインフォメーションシートを提供することの潜在的な有用性を強調し、さらなる改良開発が必要であるとまとめている。

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間欠性跛行患者へのナフチドロフリルの臨床的有用性確認

間欠性跛行に対する経口ナフチドロフリルの有効性について、Ghent大学(ベルギー)Heymans薬理学研究所のT De Backer氏らが、個々の患者データに基づくメタ解析を実施。プラセボとの比較で臨床的な有用性が確認されたと、BMJ誌2009年3月21日号(オンライン版2009年3月10日号)で発表した。血管作用薬の治療薬として提案されて30年以上になるが、強力な有効性データが不足しており、使用については議論が続いている。ナフチドロフリルは1968年に発売され、European and transatlanticガイドラインでも有効性が言及されているが、メタ解析による有効性の提示が行われていない。唯一行われたシステマティックレビューによるメタ解析は、取り上げた試験間の不均一性を理由に見送られていたが、Backer氏らは、個々の患者データに基づくメタ解析で補正可能と判断し本研究を実施した。1,266例を無作為化し全例解析解析は、Medline、International Pharmaceutical Abstracts、Embase、Science Citation Index、the Cochrane trial registersから、無痛歩行距離を主要アウトカムとする、二重盲検無作為化プラセボ対照試験を取り出し行われた。個々の患者データは、電子データもしくは症例報告から収集され整合性の確認を行った上で解析に回された。解析方法は、すべての患者を無作為化したのち全例解析。有効性は、プラセボとの比較によるナフチドロフリル投与後の無痛歩行距離の相対的改善率(相乗平均)で評価された。レスポンダー解析における治療成功の定義は、歩行距離がベースライン時より最低50%改善された場合とした。患者総数は1,266例で、主要解析対象は1,083例にて行われた。結果、プラセボとの比較でナフチドロフリル投与後の無痛歩行距離の相対的改善率は、1.37(95%の信頼区間1.27~1.49)。改善率の差は22.3%(95%信頼区間:17.1%~27.6%)だった。また、6ヵ月の治療期間中に症状軽減のために必要とした治療回数は4.48(95%の信頼区間3.62~5.85)だった。

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がん患者の最後の選択には「宗教的対処」が影響

患者の最後の選択――終末期医療の選択肢決断に、「宗教的対処(religious coping)」が影響していることが、米国ダナファーバー癌研究所のAndrea C. Phelps氏らによる調査で明らかにされた。これまで、がん患者が病気と向き合うために信心に拠り所を求めることや、一般市民対象の調査で、68.3%が「治療決定に信心が関係すると思う」と回答し、57.4%が「たとえ医師がこれ以上の治療は無駄と言っても神が治してくださると信じる」と回答したなどの報告を踏まえ、Phelps氏らは、信心と延命措置に対する希望との関連を明らかにすることを目的に調査を行った。JAMA誌2009年3月18日号より。進行がん患者345人の信心と治療選択を調査調査は、米国内の40施設で、2003年1月1日~2007年8月31日に登録された、進行がん患者345人を対象に行われた。基線で行った患者インタビューで、心理社会的側面、宗教/霊的側面、事前ケア計画および終末期医療について評価。患者の「宗教的対処」の側面については、評価指標「Brief RCOPE」(「積極的対処」と「消極的対処/苦痛」の2つの因子で評価)で判定された。経過観察は患者の死亡時まで続けられた(中央値は基線評価後122日)。主要評価項目は、積極的な延命処置(最後の週に人工呼吸器装着、蘇生術)。解析は、年齢や人種/民族性などを補正し行い、積極的な宗教的対処と終末期のアウトカムについて、P<0.05で有意な関連ありとした。主要転帰は、さらに心理社会的要因[その他の対処スタイル、病状認知度、霊的サポート、選択に対する誇張した態度、事前ケア計画(蘇生不要の意志表明、リビングウィル、委任状)]を補正し評価が行われた。宗教的対処レベルが強い患者の延命処置受け入れは約3倍基線で「積極的な宗教的対処」レベルが強い患者のほうが、そのレベルが弱い患者と比べて、人工呼吸器装着を受け入れていた割合が2.81倍(P=0.04)と、有意に高かった(11.3%対3.6%)。同様に、最終週に延命処置を受けていた割合も2.90倍(P=0.03)で、有意に高かった(13.6%対4.2%)。主要転帰モデル解析の結果でも、「積極的な宗教的対処」レベルが強い患者のほうが、延命処置を受ける予測因子が有意に強いままだった。Phelps氏は「進行がん患者の積極的な宗教的対処レベルと終末期での延命処置選択とは関連があることが確認された」と結論し、この関連メカニズムについて、さらなる調査が必要だとまとめている。(朝田哲明:医療ライター)

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PCIは非急性冠動脈疾患の死亡率を改善しない

非急性冠動脈疾患の治療では、カテーテルベースの治療法による死亡や心筋梗塞の抑制効果が薬物療法よりも優れることを示すエビデンスはないことが、アメリカTufts医療センター臨床試験・健康政策研究所のThomas A Trikalinos氏らが行ったメタ解析で明らかとなった。1977年、Andreas Gruntzig が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の開発によって冠動脈疾患の治療に革命的な進歩をもたらして以来、アメリカでは毎年100万人以上の患者がPCI治療を受けているが、この中には非急性期の患者も多く含まれるという。急性冠症候群やST上昇心筋梗塞ではPCIの有用性が確立されているが、非急性期に対する効果については議論が続いている。Lancet誌2009年3月14日号掲載の報告。インターベンション治療と薬物療法の無作為化試験の系統的オーバービュー研究グループは、非急性冠動脈疾患を対象に経皮的冠動脈形成術(PTCA)、ベアメタルステント(BMS)、薬剤溶出性ステント(DES)、薬物療法を比較した無作為化試験について系統的オーバービューを行った。4つの治療法のうち2つ以上について比較した試験をMedlineで検索した。解析の対象は、死亡、心筋梗塞、冠動脈バイパス移植術、標的病変あるいは標的血管の再血行再建術(TLR/TVR)、あらゆる再血行再建術をアウトカムとする試験とした。変量効果メタ解析でhead-to-head比較試験を評価し、ネットワークメタ解析で直接的エビデンスと間接的エビデンスの統合解析を行った。非急性期の初回治療は薬物療法とすべき4つの治療法のうち2つを比較した4種類の組み合わせ(PTCA vs. 薬物療法:7試験、BMS vs. PTCA:34試験、BMS vs. 薬物療法:4試験、DES vs. BMS:18試験)について検討した63の試験(2万5,388例)が適格基準を満たした。DESと薬物療法、DESとPTCAを直接比較した試験はなかった。すべての直接比較、間接比較において、PCIの進歩は死亡や心筋梗塞の改善には結びついていなかった。DESと薬物療法の間接比較では、死亡のリスク比は0.96(95%信頼区間:0.60~1.52)、心筋梗塞のリスク比は1.15(同:0.73~1.82)であり、いずれも有意差を認めなかった。対照的に、直接比較におけるTLR/TVRのリスク低減効果は、BMSがPTCA に比べ有意に優れ(リスク比:0.68)、DESはBMSよりも有意に優れた(同:0.44)。また、間接比較では、DES がPTCAよりもTLR/TVRのリスク低減効果が有意に優れた(同:0.30)。著者は、「非急性期冠動脈疾患においては、カテーテルベースの治療の技術革新が、薬物療法と比較して死亡や心筋梗塞の抑制効果に優れるとのエビデンスはない」と結論し、「今回の結果は、非急性期の初回治療戦略は至適な薬物療法とする現在の勧告を支持するもの」としている。(菅野守:医学ライター)

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新世代抗うつ薬を比較

 新世代抗うつ薬12種類の有効性と受容性について、ベローナ大学(イタリア)Andrea Cipriani氏らが、複数の無作為化試験結果のメタ解析を行った(別名:混合治療比較メタ解析、ネットワークメタ解析)。ここ20年で登場したうつ病の新薬は構造やメカニズムが似通っており、またいわゆるジェネリック薬も多く、どれほど違いがあるのかが不明とされていた。解析結果は、Lancet誌2009年2月28日号(オンライン版2009年1月29日号)に掲載された。参加者総数25,928人の117の無作為化試験を系統的にチェック 対象となった抗うつ薬は、bupropion、citalopram、duloxetine、escitalopram、フルオキセチン(商品名:プロザック)、フルボキサミン(同:デプロメール、ルボックス)、ミルナシプラン(同:トレドミン)、mirtazapine、パロキセチン(同:パキシル)、reboxetine、セルトラリン(同:ジェイゾロフト)、venlafaxine。 1991年から2007年11月30日の間の、117の無作為化試験(参加者総数25,928人)を系統的にチェックし、急性の単極性成人うつ病に対する有効性を比較した。主要評価項目は、割り当てられた治療への反応率および脱落率とし、全例解析が行われた。有効性と受容性はセルトラリンとescitalopramが高い、一方最も低いのはreboxetine duloxetineとの比較で、mirtazapine(オッズ比:1.39)、escitalopram(1.33)、venlafaxine(1.30)、sertraline(1.27)は、有効性が有意に上回っていた。 フルオキセチンとの比較ではそれぞれ、mirtazapine(オッズ比:1.37)、escitalopram(1.32)、venlafaxine(1.28)、sertraline(1.25)。 フルボキサミンとの比較では、mirtazapine(オッズ比:1.41)、escitalopram(1.35)、venlafaxine(1.30)、sertraline(1.27)。パロキセチンとの比較では、mirtazapine(オッズ比:1.35)、escitalopram(1.30)、venlafaxine(1.27)、sertraline(1.22)。 reboxetineとの比較では、mirtazapine(オッズ比:2.03)、escitalopram(1.95)、venlafaxine(1.89)、sertraline(1.85)だった。 reboxetineは、他のどの抗うつ薬よりも有意に有効性が劣っていた。またescitalopramとセルトラリンは受容性の面で最も高く、duloxetine、フルボキサミン、パロキセチン、reboxetineとvenlafaxineは、脱落率が有意に少なかった。 これらからCipriani氏は「有効性と受容性に関してescitalopramとセルトラリンを支持する。臨床的に重要な違いが抗うつ薬の間に存在している。成人で中等度から重度の主要なうつ病治療を開始する際は、セルトラリンが最高の選択薬のようだ。有効性、受容性および価格の面で、とてもよくバランスがとれているからである」と結論している。

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重症の足首捻挫には膝下キャストを

重症の足首捻挫に対する機械的な支持法では、膝下キャストの効果が最も優れることが、イギリスWarwick大学のS E Lamb氏らが実施した無作為化試験で明らかとなった。イギリスでは救急診療部の受診件数の3~5%を重症足首捻挫が占め、年間約100~150万例にのぼる。最も多いのは外側靱帯の捻挫だという。Lancet誌2009年2月14日号掲載の報告。管状圧迫包帯と3つの機械的支持法の効果を比較研究グループは、重症足首捻挫の治療法として2層性管状圧迫包帯と3つの機械的支持法(Aircastブレース、Bledsoeブーツ、膝下キャスト)の有効性を盲検下に評価する多施設共同無作為化試験を行った。 2003年4月~2005年7月までに、イギリスの8つの救急診療部から重症足首捻挫患者584例が登録され、管状圧迫包帯群に144例、Aircastブレース群に149例、Bledsoeブーツ群に149例、膝下キャスト群に142例が割り付けられた。患者は、訓練を受けた医療従事者により受診から3日以内に機械的支持法を施行され、腫脹および疼痛の軽減に関する助言を受けた。1、3、9ヵ月後にFoot and Ankle Score(FAOS)による評価を行い、主要評価項目は3ヵ月後のFAOSによる足首機能とした。膝下キャストが最も優れ、管状圧迫包帯が最も劣る管状圧迫包帯で治療された患者に比べ、膝下キャストを装着された患者の回復がより迅速であった。膝下キャストは、管状圧迫包帯よりも3ヵ月後の足首機能が優れており(FAOSで9%の差)、さらに疼痛、症状、活動性も良好であった。Aircastブレースは、管状圧迫包帯よりも3ヵ月後の足首機能が優れていた(FAOSで8%の差)が、疼痛、症状、活動性にはほとんど差がなかった。Bledsoeブーツには管状圧迫包帯を超えるベネフィットはなかったが、全体として管状圧迫包帯の効果が最も低かった。9ヵ月後には、管状圧迫包帯と3つの機械的保護法の間に有意な差はなくなった。副作用はまれであり、治療法間の明らかな差は認めなかった(全群で、蜂巣炎2例、肺塞栓2例、深部静脈血栓3例)。著者は、「膝下キャストあるいはAircastブレースによる短期的な固定法は、管状圧迫包帯よりも回復が迅速であった。ベネフィットの幅の広さを考慮すると、膝下キャストが推奨される」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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ゾメタが閉経前の女性の乳がん再発リスクを低減 研究結果がNEJMに掲載される

ノバルティス ファーマ株式会社は13日、閉経前の早期乳がん患者の術後ホルモン療法にゾメタ(ゾレドロン酸)を追加投与した場合、ホルモン療法単独の場合と比較して、再発または死亡のリスクが36%減少したという研究(2008年6月に第44回米国臨床腫瘍学会で発表)が、New England Journal of Medicine誌に掲載されたことを発表した。この研究は、オーストリアの乳房・結腸直腸がん研究グループ(Austrian Breast & Colorectal Cancer Study Group : ABCSG)が行ったもので、閉経前の早期乳がん患者に対するゾメタの再発抑制効果を示した初めての大規模無作為化第III相臨床試験。ゾメタは、がんが進行する前の段階で再発や転移を防ぐ、直接的な抗腫瘍効果が基礎研究で示唆されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2009/pr20090213.html

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腰痛の画像検査は無用?

重篤な基礎疾患のない腰痛患者に画像検査を行っても臨床転帰は改善しないことが、アメリカ・オレゴン健康科学大学のRoger Chou氏らが実施したメタ解析で明らかとなった。Agency for Healthcare Policy and Research(AHCPR)ガイドラインは急性腰痛発症1ヵ月以内の画像検査を否定しており、重篤な基礎疾患を示唆する臨床所見(いわゆるred flags:癌、感染症、馬尾神経症候群など)のない慢性腰痛には画像検査を行うべきではないとするガイドラインもある。しかし、現実には患者の要望などもあってルーチンに施行したり、臨床所見がないのに行われる場合が多いという。Lancet誌2009年2月7日号掲載の報告。腰痛、腰椎機能を主要評価項目とした6試験のメタ解析研究グループは、重篤な基礎疾患のない腰痛患者において、即座に腰部画像検査(X線、MRI、CT)を実施する群と、これを施行しない通常ケアのみの群の臨床転帰を評価するために、無作為化対照比較試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。解析対象の試験は、腰痛あるいは腰椎機能を主要評価項目とするものとし、QOL、精神的健康状態、各種スケールに基づく患者自身による全般的な改善度、ケアに対する患者満足度についても検討した。6つの試験(イギリス3、アメリカ2、インドネシア1、計1,804例)が選択基準を満たした。試験の質は、Cochrane Back Review Groupの基準を適用した判定法に基づいて2人のレビューワーが個々に評価した。メタ解析には変量効果モデル(random effects model)を用いた。プライマリ・ケアに十分に適用可能即時的な腰部画像診断施行群と非施行群で、短期的(3ヵ月以内)および長期的(6ヵ月~1年)な解析の双方において、腰痛と腰椎機能障害の発症には有意な差は認められなかった。そのほかの評価項目についても、有意差を認めたものはなかった。試験の質、個々の画像法、腰痛の罹病期間も解析の結果に影響を及ぼさなかったが、これらの検討を行った試験は少なかった。今回の解析結果は、プライマリ・ケアにおける急性および亜急性の腰痛に十分に適用できるものであった。著者は、「重篤な基礎疾患のない腰痛患者に対し画像検査を行っても臨床転帰は改善しない。それゆえ、重篤な基礎疾患を示唆する所見のない急性、亜急性の腰痛に対するルーチンの即時的な画像検査は止めるべき」と結論し、「不要な画像検査を避ける一方で、患者の要望を満たし満足度を向上させる腰痛評価法や患者教育の戦略を確立する必要がある」と主張している。(菅野守:医学ライター)

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心房細動におけるMultaqに関するATHENAスタディの結果がNEJMに掲載される

サノフィ・アベンティス株式会社は12日、ATHENAスタディの結果がNew England Journal of Medicine(NEJM)に掲載されたことを発表した。試験では、心房細動または心房粗動の患者、またこれらの病気を最近発症した患者において、Multaq(一般名:dronedarone)を標準的治療と併用すると、心血管系の理由による初回入院または死亡のリスクが24%有意に減少する(プラセボ群では39.4%に対してMultaq群では31.9%、p

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ADA欠損症患児への遺伝子治療の長期転帰

ADA(アデノシンデアミナーゼ)欠損症患児への遺伝子治療が、安全かつ有効であることが、San Raffaele Telethon遺伝子治療研究所のAlessandro Aiuti氏らによって報告された。ADA欠損は、致死的なプリン代謝異常と免疫不全を示す重症複合免疫不全症(SCID)の原因となり、治療法としてはHLA一致同胞ドナーからの幹細胞移植があるが、ドナーがいないなど治療が適応される患者は限られている。本報告は、長期転帰の検討で、NEJM誌2009年1月29日号にて掲載された。4.0年現在、全例生存、有効性と安全性確認試験対象は、移植ドナーがいないADA欠損症によるSCIDを呈する患児10例。ブスルファンによる骨髄非破壊前処置を施した後、自己由来のCD34+骨髄細胞(ADA遺伝子を含んだレトロウイルスベクターで形質導入)を移植した。細胞移植後に酸素補充療法は行わなかった。追跡期間中央値4.0(1.8~8.0)年現在、全例生存が確認された。移植した造血幹細胞は安定しており、ADA(1年時点で骨髄細胞中に平均3.5~8.9%)と、リンパ系細胞(末梢血中に平均52.4~88.0%)を含む骨髄細胞に分化していた。患児8例は、酸素補充療法を必要とせず、血液細胞のADA発現が持続しており、プリン代謝物の解毒障害の徴候は見られなかった。また、9例は免疫再構築が認められ、T細胞が増加[3年時点で平均数1.07×10(9)/L]、T細胞機能が正常化。免疫グロブリン補充療法を中止した5例では、ワクチンまたはウイルス抗原への曝露後、抗原特異的抗体反応の誘発が確認された。効果的な感染予防と身体発育の改善によって、日常生活も可能になっていた。重篤な有害事象は、遷延性好中球減少症(2例)、高血圧(1例)、中心静脈カテーテル関連の感染症(2例)、EBウイルスの再活性化(1例)、自己免疫性肝炎(1例)。(武藤まき:医療ライター)

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