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ネモリズマブ、結節性痒疹のそう痒・皮膚病変を改善/NEJM

 ネモリズマブ単剤療法はプラセボとの比較において、結節性痒疹のそう痒と皮膚病変を有意に改善したことが、海外第III相二重盲検無作為化比較試験「OLYMPIA 2試験」で示された。結節性痒疹は、慢性の神経免疫疾患であり、重度のそう痒を伴い疾病負荷が大きいとされる。ネモリズマブは、インターロイキン(IL)-31受容体αを標的としたモノクローナル抗体で、結節性痒疹の発症に重要な経路を阻害する。第II相試験では、IL-31を介したシグナル伝達を阻害し、そう痒と皮膚病変の改善、Th2細胞(IL-13)とTh17細胞(IL-17)を介した免疫応答を抑制することが示されていた。本結果は、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のShawn G. Kwatra氏らによって、NEJM誌2023年10月26日号で報告された。 OLYMPIA 2試験は、9ヵ国68施設において実施され、18歳以上の中等度~重度の結節性痒疹患者が対象となった。登録は2020年9月~2021年11月に行われた。対象患者は、ネモリズマブ群(初回用量60mg、その後は30mgまたは60mg[ベースライン時の体重[90kg未満または90kg以上]に基づく]を4週ごとに16週間皮下注射)、プラセボ群へ無作為に2対1の割合で割り付けられた。 有効性の主要評価項目は、16週目のPeak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS、スコア範囲:0~10点、スコアが高いほど重度)に基づくそう痒の改善(PP-NRSスコアが4点以上低下)と、16週目のInvestigator's Global Assessment(IGA、スコア範囲:0~4点)に基づく奏効(IGAスコア0点[消失]または1点[ほとんど消失]かつベースラインから2点以上低下)であった。 主要な副次評価項目は以下の5つ。(1)4週目のPP-NRSスコアがベースラインから4点以上低下(2)4週目の週間平均PP-NRSスコアが2点未満(3)16週目の週間平均PP-NRSスコアが2点未満(4)4週目のsleep disturbance numerical rating scale(SD-NRS、スコア範囲:0~10点、スコアが高いほど重度)スコアがベースラインから4点以上低下(5)16週目のSD-NRSスコアがベースラインから4点以上低下 主な結果は以下のとおり。・合計274例が無作為化された(ネモリズマブ群183例、プラセボ群91例)。・16週目において、2つの主要評価項目に関して治療効果が示された。・16週目においてそう痒の改善を達成した患者の割合は、ネモリズマブ群56.3%、プラセボ群20.9%であり、ネモリズマブ群が有意に改善した(調整群間差:37.4パーセントポイント[95%信頼区間[CI]:26.3~48.5]、p<0.001)。・16週目においてIGAに基づく奏効を達成した患者の割合も、ネモリズマブ群37.7%、プラセボ群11.0%であり、ネモリズマブ群が有意に改善した(調整群間差:28.5パーセントポイント[95%CI:18.8~38.2]、p<0.001)。・5つの主要な副次評価項目について、いずれもネモリズマブ群が有意に改善した(いずれもp<0.001)。(1)4週目のPP-NRSスコアがベースラインから4点以上低下:41.0% vs.7.7%(2)4週目の週間平均PP-NRSスコアが2点未満:19.7% vs.2.2%(3)16週目の週間平均PP-NRSスコアが2点未満:35.0% vs.7.7%(4)4週目のSD-NRSスコアがベースラインから4点以上低下:37.2% vs.9.9%(5)16週目のSD-NRSスコアがベースラインから4点以上低下:51.9% vs.20.9%・主な有害事象(ネモリズマブ群で5%以上に発現)は、頭痛(ネモリズマブ群6.6%、プラセボ群4.4%)、アトピー性皮膚炎(それぞれ5.5%、0%)であった。

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犬の老化パターンは体のサイズにより異なる

 加齢に伴い生じる犬の行動面や認知面の機能低下のパターンは、体のサイズにより異なるようだ。犬の行動に関わる機能が低下し始める年齢は、体重が30kg以上の大型犬では7〜8歳であるのに対し、より小型の犬では10〜11歳であるが、低下速度は後者の方が前者よりも速いことが、ハンガリーの研究で明らかにされた。エトヴェシュ・ロラーンド大学(ハンガリー)でシニア・ファミリードッグ・プロジェクトに関わっているBorbala Turcsan氏とEniko Kubinyi氏によるこの研究の詳細は、「GeroScience」に9月23日掲載された。 犬の平均寿命は、最も大型の犬での7歳程度から小型犬での14歳程度までと、犬種によって最大で2倍以上の開きがある。また一般に、純血種の犬の方が雑種犬よりも短命なことも知られている。しかし、平均寿命と、行動や認知に関わる機能の加齢による低下との関連について判明していることはほとんどない。 Turcsan氏らは、1万5,000匹以上の犬のデータを収集し、さまざまな行動上の特徴と認知機能障害の有病率が、時間の経過に伴いどのように変化するかの評価を行った。具体的には、行動や認知に関わる機能に変化が現れ始める年齢、それらの変化の進行速度、さらには犬の体のサイズ、頭部の形状、純血種/雑種などを調べ、これらの因子と加齢に伴う変化との関連について検討した。犬の体のサイズは、トイ< 6.5kg、ミニチュア6.5〜 9kg、中型犬(小)9〜<15kg、中型犬(大)15〜<30kg、大型犬30〜40kg、超大型犬>40kgの6群に分類した。 その結果、犬では10歳半頃から行動に関わるさまざまな機能が低下し始めるものの、低下が始まる年齢や低下速度は体のサイズにより異なることが明らかになった。例えば、体重が30kg以上の大型犬では、行動に関わる機能低下がより小型の犬よりも2〜3歳早く現れ始めるが、低下速度は小型の犬よりも緩徐であった。この点についてTurcsan氏は、「大型犬ではより小型の犬に比べ、比較的若い年齢で肉体的な衰えが現れ、健康問題が蓄積し、感覚機能も低下するため、認知機能に低下が見られるはるか前に、老犬らしい行動を見せるようになる」と説明する。 一方、体重が6.5kg未満の最も小型の犬(トイ)では、老齢期の認知機能障害の有病率が、体重が40kgを超える超大型犬の4倍以上高かった。研究グループは、「この結果は、大型犬の平均寿命は相対的に短いが、認知機能低下の程度も小さいとの説を裏付けるものだ」との見方を示している。さらに、グレイハウンドのような長頭種(鼻が長い)の犬は中頭種や短頭種の犬よりも、さらに純血種の犬は雑種犬よりも、老齢期に認知機能障害を発症するリスクが高いことも明らかになった。 このほか、興味深いことに、飼い主は犬の体のサイズや純血種/雑種に関係なく、6歳頃になると自分の犬が「歳を取った」と感じ始めることも示された。Turcsan氏は、「6歳という年齢は、行動に関わるデータから機能が低下し始めると考えられている年齢よりも4〜5歳も若い。これは、犬の毛が白くなったり、一般には気付きにくい変化を飼い主が捉えているせいかもしれない」と述べている。 Turcsan氏は、「小型犬を飼いたいが、シニア犬になったときに精神面に深刻な問題が生じるリスク、あるいは大型犬を飼いたいが7~8歳になったときに身体的健康に問題が生じるリスクを避けたい人は、10~30kgサイズの犬を飼うのが良いだろう。このサイズの犬は、これより小型や大型の犬に比べて、予想される寿命に対する健康寿命が長いことが、われわれの研究で示されている」とアドバイスしている。

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中等症~重症の乾癬、リサンキズマブの実臨床の有効性は?

 インターロイキン(IL)-23阻害薬リサンキズマブによる治療を受けた中等症~重症の乾癬患者は、治療開始1年後において、多くの患者が高い皮疹消失レベルを達成した。また、乾癬症状も改善し、労働生産性・活動障害も改善した。米国・イェール大学のBruce Strober氏らが、中等症~重症の乾癬に対するリサンキズマブの実臨床における治療効果の検討を目的として実施した、後ろ向き観察研究の結果を報告した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2023年9月20日号掲載の報告。 研究グループは米国およびカナダの乾癬データベースCorEvitas Psoriasis Registryを用いて、中等症~重症の乾癬と診断され、リサンキズマブによる治療開始後12±3ヵ月時点でリサンキズマブを継続使用していた成人患者287例を対象とした後ろ向き観察研究を実施した。皮疹の重症度(Investigator Global Assessment[IGA]スコア、Psoriasis Area Severity Index[PASI]など)、患者報告アウトカム(Dermatology Life Quality Index[DLQI]スコアに基づくQOL、VASで評価した疲労・皮膚疼痛・そう痒、Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire[WPAI]に基づく労働生産性・活動障害)を検討した。 主な結果は以下のとおり。・治療開始1年時点において、多くの患者が皮疹の消失を達成した(IGAスコア0:55.4%[158/285例]、PASI 100[ベースラインから100%改善]:55.8%[159/285例])。また、多くの患者が皮疹の消失/ほぼ消失を達成した(IGAスコア0/1:74.4%[212/285例]、PASI 90[ベースラインから90%改善]:65.6%[187/285例])。・生活への影響なし(DLQIスコア0/1)の割合は67.7%(174/257例)であった。・乾癬症状(疲労、皮膚疼痛、そう痒)が有意に改善し(いずれもp<0.001)、労働生産性・活動障害も有意に改善した(いずれもp<0.001)。 著者らは本研究の限界として、CorEvitas Psoriasis Registryが米国およびカナダの成人乾癬患者を必ずしも代表しているわけではないこと、患者のアドヒアランスを評価していないことを挙げている。

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マルウェア、ランサムウェアとは【サイバー攻撃の回避術】第5回

ランサムウェアを始めとするマルウェアは、サイバー攻撃の目立つ部分であるため、そこのみに注目が集まりやすいが、実際に攻撃を防ぐためには、アンチウイルスソフトなどの直接的なマルウェア対策のみでは不十分であり、地道ではあるが脆弱性対策を優先すべきことを再確認されたい。はじめに医療機関に限らず、ランサムウェア1)などを用いたサイバー攻撃は後を絶たない。医療ISACの把握している範囲では、全世界で1日10件程度のランサムウェア被害が発生しており、日本でも2022年には過去最高の230件の被害が報告された2)。そもそもランサムウェアとは何か、また、ほかのさまざまなコンピュータウイルス3)などにはどのようなものがあり、どのような使い方をされており、われわれは何を知ってどのように対処すればよいか、といった点について、一般ユーザが最低限知っておくべき知識を概説する。マルウェア4)とはコンピュータやその利用者に被害をもたらすことを目的とした、悪意のあるソフトウェアをマルウェアと呼ぶ。もともとコンピュータウイルスやワーム5)などと呼ばれていたが、悪意のあるソフトウェアを総称する用語としてマルウェアが一般的になっているので、本稿では以降、悪意があるプログラムの総称として「マルウェア」を用いる。マルウェアの代表的なものとしては、以下のようなものが挙げられる。プログラムやファイルの一部を書き換えて自己複製するコンピュータウイルス独立したプログラムとして実行され、ネットワークなどを介してほかのコンピュータに拡散するワーム攻撃者の命令に従ってDDoS攻撃6)や迷惑メールの送信などを行うボット暗号化などによってファイルを利用不能な状態にして、元に戻すことと引き換えに金銭を要求するランサムウェアさらに、自己増殖能力はなく、深く潜伏して一定の条件下にて活性化する、トロイの木馬7)などもマルウェアの一種である。マルウェアは攻撃者が用いるツールの一つであり、マルウェア感染のみで身代金要求などの重大なサイバー被害を生じることは通常ない。それはハッカーらの攻撃手法の段階を示すサイバーキルチェーン8)を見ればよくわかる。攻撃者は攻撃候補を探すために、インターネット上に公開されているサーバやGlobal IP9)などのうち、脆弱性が存在するものを探索する。攻撃候補を決定したら、その脆弱性を利用してシステム内に侵入し、外部の攻撃用のサーバ(Command&Control Server:C2 Server)10)から、手動で内部探索を行う。その際に管理者の権限(ID/PW)を奪取する水平移動という行動をとり、攻撃を防御するような仕組みを次々と無効化していく。たとえば、アンチウイルスソフトの無効化などは常套手段である。その上で、システム内およびネットワークで接続された機器などの中から攻撃対象となり得るファイルサーバなどを定め、データを窃取した上で、ランサムウェアに感染させ、時限的に発動するように設定する。その猶予時間内に攻撃者は自分の侵入した痕跡を消し去った上で撤収するのである。マルウェア感染の防止方法とその意義サイバー攻撃においてマルウェアは重要なツールの一つだが、マルウェア感染を防げばすべての被害を防げるわけではない。まずは侵入を防ぐこと、次にマルウェア感染しないように脆弱性対策をいち早く行うことが重要である。従ってアンチウイルスソフトの意義は限定的となる。さらにアンチウイルスソフトの限界として1.一般に知られていない脆弱性を利用した攻撃(ゼロデイ攻撃)11)に用いられるマルウェアについては無効2.最近のトレンドとして、マルウェアの亜種や新種が一日に数十万~数百万件発生している12)ため、定義ファイルとのパターンマッチングでマルウェアを同定するアンチウイルスソフトが無効なケースが増えていること3.さらに最近流行しているファイルレスマルウェア13)は、直接メモリ上に展開して感染するため、最小するマルウェアのプログラムファイル自体が存在しないため、アンチウイルスソフトは無効であることなどが指摘できる。このような状況を考えれば基本的なスタンスとして、アンチウイルスソフトに一定の効果は期待できるものの過信は禁物であり、やはり根本的な対策として脆弱性対策に力を入れるべきことがわかる。市販されている各種アンチウイルスソフトについては機能的に大差なく14)、適用可能であればWindows標準のWindows Defenderでも問題はない。脆弱性対策については、OS、ブラウザ、Adobeなどのアプリケーション、VPN装置をはじめとするファームウェア15)を中心に考える必要がある。WindowsについてはMicrosoft社が月に一回、定期的な更新プログラムを公開しており、可能であれば自動的に更新する設定が好ましい。しかしながら、医療機関の業務系システムはインターネットには直接接続していないことも多く、その場合にどのように更新プログラムを適用するかは、事業者側とよく協議して確実に実行できる体制を構築する必要がある。2023年5月に改正された厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」16)でも、脆弱性対策について、ベンダー側と協議して責任分界点を明確にした上で確実に実行するように求めている。ほかのアプリケーションや、VPN装置などの脆弱性対策についても同様であるが、とくに後者については、実際の侵入経路となった被害実績があるため、重要性は高い。ランサムウェアの最新状況ランサムウェアはマルウェアの一種であるが、ランサムウェアを用いた身代金窃取を目的とした行動は、犯罪エコシステムを形成している17)。すなわち、ランサムウェアを開発し利用料を取って販売するグループ、実際に攻撃を行うグループ(アフィリエイト)18)、脆弱性などが存在する攻撃対象候補のリスト(Initial Access List)19)を販売するグループ、さまざまな攻撃用のツールを販売するグループ、身代金受け取りのため仮想通貨口座を貸し出すグループなど、さまざまな役割のグループが暗躍しているのが実態である。いわゆるRaaS(Ransomware as a Service)である(図1)。(図1)Ransomware as a Service:(RaaS)画像を拡大する以下に、最近活発に活動しているランサムウェアの代表的なグループとその特徴を列挙する。1)LockBit 3.020)ロシアの代表的なランサムウェアグループの一つ。楕円関数暗号を用いた高度の暗号化を図る。2021年の半田病院の事例を含め、日本にも被害事例は多い。二重脅迫を行うことも有名で、独自のLeak siteで被害者名と公表までのカウントダウンを行う。一部情報では幹部が「医療機関は狙わない、万が一、被害に遭った場合は無料で復号化キーを提供する」と発言しているようだが21)、実際にはアフィリエイトが独自にターゲットを選定するため、医療機関の被害も後を絶たないのが現実である。2)ALPHV(別名:BlackCat)22)2021年より活動を続けるロシアのランサムウェアグループの一つ。多数のアフィリエイトを用いた一大グループを形成している。上述の暗号化の復元、窃取データの公開に加え、DDos攻撃を行うとして脅迫する三重脅迫の手口でも知られる。2022年に日本の玩具メーカーのバンダイナムコが、2023年にはファイル転送・無害化サービスなどを行うクラウド事業者であるPlottが被害に遭っている。3)Conti23)2020年より活動を続けるロシアのランサムウェアグループ。多数の医療機関を問答無用で標的にするなどその凶悪さが注目を集めている。アメリカのセキュリティ企業Palo Alto Networks24)は「私たちが追跡している数十のランサムウェアギャングの中でも際立って冷酷なランサムウェアの一つ」と表現している。 FBIが発表したフラッシュアラートによると、医療機関や救急医療機関のネットワークシステムを標的にした攻撃が1年間に少なくとも16件確認されている。4)Stormous25)ロシアのランサムウェアグループの一つ。2022年のロシアによるウクライナ侵攻に前後して活動を活発化し、Contiランサムウェアにならい、ロシアへの支持を表明するとともに、ウクライナおよび西側諸国をターゲットに活動することを宣言した。これまでにウクライナ外務省やゲーム会社大手Epic Games、コカ・コーラ、ベトナム企業などを攻撃し、データを盗んだと主張しているが、一部の専門家は、Stormousが実際に攻撃したわけではなく、ダークウェブに以前から出回っていた流出データを再利用しただけの詐欺ではないかと疑っている。DDos(Distributed Denial of Service)DDos攻撃とは、攻撃対象となるWebサーバなどに対し、複数のコンピュータから大量のパケットを送りつけることで、正常なサービス提供を妨げる行為を指す。サイバーキルチェーンロッキード・マーティン社が確立したサイバーセキュリティーフレームワークのこと。 攻撃者が攻撃を達成するまでの活動を7ステップにわけることで、敵の戦術・技術・手順を分析し、攻撃を可視化することを可能にする。ファームウェア家電製品や、パソコン、周辺機器、携帯電話などのように、コンピュータシステムを組み込んだ電子機器本体(組み込みシステム)に所望の動作をさせるためのソフトウェアであり、ハードウェアに密接に結び付いていて、むやみに書き換えることのない媒体に書き込まれた物を指す。ほかのソフトウェアと同じく脆弱性が発見されることがあり、その対策を怠ると不正アクセスやマルウェア感染を惹起する可能性があり、セキュリティ対策の対象として重要である。参考1)NTTコミュニケーションズ:ICT Business Online. ランサムウェアとは2)警察庁:令和4年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(令和5年3月16日)3)kikakurui.com:コンピュータウイルス. JIS X0008「情報処理用語-セキュリティ」4)NTTコミュニケーションズ:マルウェアとは?ウイルスとの違いは?5)Cyber Security.com:ワームとは?その種類・感染原因・対策・駆除・削除方法について徹底解説6)Cyber Security.com:DDoS攻撃とは?読み方や意味・最新事例と対策方法7)norton:トロイの木馬とは?ウイルスとの違いや感染被害例について8)AMIYA:サイバーキルチェーンとは9)NTTコミュニケーションズ:グローバルIPアドレスとは? プライベートIPとの違いや確認方法10)e-Words:C&Cサーバ11)NTT東日本:ゼロデイ攻撃についてわかりやすく解説_手口から被害事例・対策まで12)FORTINET:フォーティネットグローバル脅威レポート13)cyberreason:ファイルレスマルウェアとは?〜ファイルレス攻撃(非マルウェア型攻撃)を理解する~14)the比較:セキュリティソフトの比較202315)e-Words:ファームウェア16)厚生労働省:医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版(令和5年5月)17)Canon:キャノンサイバーセキュリティ情報局. RaaS(Ransomware as a Service)18)FORTINET:アフィリエイト向けマニュアル:Contiが直接教えるその攻撃の手法19)MOTEX:NO MORE情報漏えい. 漏えいした個人情報が取引されるブラックマーケットとは?20)NHK:サイカルJournal. LockBit3.0とは何者か?21)TechTarget Japan:コロナ禍で「医療機関は狙わない」と宣言した攻撃者の新たな標的とは?22)Paloalto:脅威の評価:BlackCatランサムウェア23)MBSD:Contiランサムウェアの内部構造を紐解く24)Palpalto:Palo Alto Networks25)SOMPO CYBER SECURITY:サイバーセキュリティお役立ち情報

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仕事のストレスは男性の心疾患リスクを高める

 過酷なのにやりがいの感じられない仕事は、男性の心臓の健康に大きな打撃を与える可能性のあることが、6,400人以上を対象にした大規模研究で示唆された。仕事にストレスを感じている男性の心疾患発症リスクは、仕事への満足度がより高い同世代の男性の最大で2倍に達することが明らかになったという。CHU de Quebec-Universite Laval Research Center(カナダ)のMathilde Lavigne-Robichaud氏らによるこの研究の詳細は、「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に9月19日掲載された。 この研究は、心疾患のない6,465人(男性3,118人、女性3,347人)のホワイトカラー(平均年齢45.3±6.7歳)を2000年から2018年まで追跡して、職場ストレイン(仕事の要求度は高いが裁量権や支援が不足している状態)や、努力報酬不均衡(effort-reward imbalance;ERI、努力が適切な報酬や昇進に結び付いていないと感じている状態)と心疾患発症との関連を検討したもの。職場ストレインとERIはそれぞれ信頼性と妥当性が示されている質問票により評価された。 中央値18.7年の追跡期間中に男性571人と女性265人に冠動脈疾患(CHD)が生じた。解析の結果、職場ストレインまたはERIのいずれかを感じている男性では、仕事のストレスに曝露していない(軽度の職場ストレインはあるが報酬は低くない)男性に比べて、CHDの発症リスクが49%(ハザード比1.49、95%信頼区間1.07〜2.09)、職場ストレインとERIの両方を感じている男性では103%(同2.03、1.38〜2.97)、有意に高かった。これらの結果は、教育レベルや婚姻状態、喫煙や飲酒の習慣、糖尿病や高血圧などの健康状態を考慮しても変わらなかった。これに対して、女性では、職場ストレインやERIとCHD発症との間に有意な関連は認められなかった。 研究グループは、これらの結果は、仕事のストレスが男性の心臓には打撃を与えるが、女性の心臓には影響を及ぼさないことを証明するものではないと話す。それでも、成人が1日の大半の時間を費やす職場でのストレスが心疾患の原因になり得る理由はあるという。その一つとしてLavigne-Robichaud氏は、慢性的なストレスが心血管系に直接的に影響を及ぼし得ることを指摘する。「職場ストレインとERIは、心拍数の増加、血圧の上昇、心血管の狭窄を含む身体的反応を引き起こす。これらが直接的に心臓に負荷をかけ、血流や心拍リズムに問題が生じ、最終的に心疾患の発症リスクが高まる」と説明する。 仕事のストレスが、それほど直接的でない方法で心臓に害を与えることもあるという。Lavigne-Robichaud氏は、「仕事でストレスを抱えていると、健全な食生活を送り、定期的に運動を行い、リラックスする時間を見つける能力が妨げられる可能性がある」と指摘し、「健康的なライフスタイルを送ることが困難な状況下では、ストレスが心血管系に及ぼす直接的な影響がいっそう顕著になる可能性がある」と付け加えている。同氏は、この研究結果は、職場は従業員の心臓の健康を促進することができ、また促進すべきであるとする、すでに山と積み上げられたエビデンスに加わるものだと述べている。 なお、本研究で、女性では仕事のストレスとCHDとの間に関連が認められなかった点についてLavigne-Robichaud氏は、「この研究での女性のCHD症例が男性の半分程度だったように、女性は、人生の後半に心疾患を発症する人が男性よりも多い。そのため、仕事のストレスと心疾患との間に明確な関連性を見出しにくくなっている可能性がある」と説明している。 Lavigne-Robichaud氏によると、米国心臓協会(AHA)などの団体は、すでに雇用主に対して、健康診断の実施や栄養価の高い食事選択肢の提供などを含む「包括的なウェルネスプログラム」を推奨しているとのことだ。「われわれの研究は、これらのプログラムに仕事のストレス軽減を目的とした介入を取り入れることが、心疾患の予防に役立つ可能性を示唆するものだ」と述べている。

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ボールペンで輪状甲状靭帯切開は可能か?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第242回

ボールペンで輪状甲状靭帯切開は可能か? Unsplashより使用どの医療系マンガか忘れましたが、ボールペンを使って胸腔ドレナージや輪状甲状靭帯切開を行うというのは、なかなかドラマティックなものです。日本酒を口に含んでブーっと消毒するシーンもカッコよく見えてきますが、あれはさすがに汚いかもしれません。既存の消毒剤と「日本酒ブー」のランダム化比較試験を誰かやっていただきたいところです。さて、ボールペンが緊急輪状甲状靭帯切開に使えるシロモノかどうかを検討した珍しい研究があります。Kisser U, et al.Bystander cricothyrotomy with ballpoint pen: a fresh cadaveric feasibility study.Emerg Med J. 2016 Aug;33(8):553-556.この研究は、3種類のボールペンが緊急輪状甲状靭帯切開に有用かどうか調べたものです。マネキンではなく、新鮮な死体を用いておこなわれた実臨床的なものとなっています。まずボールペンの特性です。内径が狭すぎると、そもそも切開しても呼吸ができないというジレンマに陥ります。3本のうち2本の内径が3mm以上ということで、気管切開のカニューレとしては妥当な水準だったようです。私たちが行っているようなセルジンガー法のキットは、輪状甲状靭帯切開の内径がだいたい4mmなので、2mmになってくると、さすがに呼吸がちょっとしんどいですね。さて、問題は皮膚から気管まで到達できるかどうかです。ボールペンは、先がメスになっているわけではないので、気管を貫通できたのは10例中1例という、残念な結果でした。この1例も、5分以上かけて3回気管切開を試みていますので、簡単にブスっというわけではなさそうです。そのため、ボールペンがあっても、緊急輪状甲状靭帯切開を行うことは事実上不可能であると思っておいたほうがよいです。ちなみに、「ナイフを併用してもよい」という条件であれば、10例中8例という成功率だったと報告されています1)。ただし、メスを持ち歩くと逮捕されそうなので、街中でドラマティックに緊急輪状甲状靭帯切開を行うのは難しいかもしれません。1)Braun C, et al. Bystander cricothyroidotomy with household devices - A fresh cadaveric feasibility study. Resuscitation. 2017 Jan;110:37-41.

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過去30年で50歳未満のがん患者が大幅に増加

 50歳未満のがん患者が世界的に急増しているとの研究結果が報告された。過去30年間で、この年齢層の新規がん患者が世界で79%増加しており、また、若年発症のがんによる死亡者数も28.5%増加したことが明らかになったという。英エディンバラ大学のXue Li氏らによるこの研究の詳細は、「BMJ Oncology」に9月5日掲載された。 研究グループによると、がんは高齢者に多い疾患であるが、1990年代以降、世界の多くの地域で50歳未満のがん患者の数が増加していることが複数の研究で報告されているという。Li氏らは、2019年の世界の疾病負担(Global Burden of Disease;GBD)研究のデータを用いて、若年発症のがんの世界的な疾病負担について検討した。GBD 2019から、204の国と地域における14〜49歳の人での29種類のがんの罹患率や死亡率、障害調整生存年(DALY)、リスク因子に関するデータを抽出し、1990年から2019年の間にこれらがどのように変化したかを推定した。 その結果、2019年に50歳未満でがんの診断を受けた患者は326万人に上り、1990年と比べると79.1%も増加していたことが明らかになった。29種類のがんの中で、乳がんは発症率と死亡率ともに最も高かった(発症率:13.7/10万人、死亡率:3.5/10万人)。1990年から2019年の間に発症率の伸びが最も大きかったのは上咽頭がんと前立腺がんであり、それぞれ年平均2.28%と2.23%ずつ増加したと推定された。 2019年の50歳未満でのがんによる死亡者数は106万人以上に上り、1990年から27.7%増加していた。10万人当たりの死亡率とDALYが高かった上位4種のがんは、乳がん、気管・気管支・肺のがん、胃がん、大腸がんであり、また、腎臓がんと卵巣がんは死亡率が急上昇していた。 2019年に若年発症のがん症例が最も多く認められたのは、北米(273.2/10万人)、オーストラリア(157.7/10万人)、西ヨーロッパ(125.6/10万人)であった。一方、年齢調整死亡率(ASDR)が最も高かったのは、オセアニア(39.1/10万人)、東欧(33.7/10万人)、中央アジア(31.8/10万人)であり、若年発症のがんが低・中所得国にも大きな影響を及ぼしていることがうかがわれた。 このような世界的な傾向を考慮に入れた上で研究グループは、2030年までに若年発症のがんの新規患者数は31%、それによる死亡者数は21%増加し、特に40代でのリスクが高まると予測している。 なぜ若年発症のがんが急増しているのだろうか。研究グループは、遺伝的要因はもちろんのこと、それ以外にも、赤肉と塩分の摂取が多く果物や牛乳の摂取が不足した食生活、飲酒、喫煙、運動不足、肥満、高血糖も、がん患者の増加に影響している可能性があるとの見方を示している。 この論文の論説を執筆した英クイーンズ大学ベルファストのAshleigh Hamilton氏らは、「予防と早期発見のための対策を講じることが、若年発症のがんに対する最適な治療戦略の特定とともに喫緊に必要とされている」と述べている。同氏らは、「どのような治療法であれ、若年発症のがん患者に対する治療では、患者の特定のニーズに合わせた総合的なアプローチを取るべきだ」と強調している。

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第2章 資格試験の観点からの医師国家試験【国試のトリセツ】Introduction

Introduction第2 章は「資格試験の観点からの医師国家試験」を取り扱います。医師国家試験は、第95回(2001年実施)以降、第111回(2017年実施)までは出題問題数が500問でした。第112回(2018年実施)より400問となり、3日間実施だった日程が2日間になっています。問題の分類は、一般問題、臨床実地問題、必修問題の3区分を踏襲しており、本章ではそれぞれの傾向と対策を講じていきます。§1一般問題§2臨床実地問題§3必修問題§4演習の工夫§1 一般問題一般問題は、「設問文」→「選択肢」という構造で成り立っています。「単純な知識の想起によって解答できる問題」が大半を占めているのが特徴です。医師国家試験の問題作成のプロセスの中には「主題を定める」という留意事項があります。つまり、提示された問題には出題背景やテーマが存在しているのが通常です。問題作成者は「受験生が●●について■■できる」という到達目標を設計しているので、過去問の演習では、その到達目標に沿うことができれば学習効率が高まります(#8 出題者の意図を汲む)。設問文以外には、選択肢に一般問題の特徴が現れます。したがって、選択肢がどのような制約で作成されているのかを事前に知っていれば、選択肢を吟味する際に役に立つのです(#9 選択肢のつくり方を意識する)。正解の選択肢は、唯一であるように作られています。ここが医療現場と最も矛盾する点であり、医師国家試験と実臨床とが乖離する要因を担っています(第3 章の#42 実臨床と資格試験との乖離を知る / #47 臨床には正解がない参照)。また、提示された選択肢は、それぞれが「最もらしいもの」であることが望ましいとされており、「ナンセンス肢」を含まないように配慮されています。例えば、生後18時間の新生児がチアノーゼを呈して頻呼吸に陥っているときに考えるべき疾患は何かと問うた場合に、選択肢に「乳児肥厚性幽門狭窄症」が含まれていた場合には「ナンセンス」となるのです。この選択肢を「肥厚性幽門狭窄症」として差し替えれば、肥厚性幽門狭窄症が乳児の疾患であることを知っていなければ除外できなくなるので選択肢の適正化を図れます。医師国家試験は、多肢選択式問題の形式をとっているので、選択肢の吟味は避けられない行程となります。地道な作業ではありますが、復習の際には選択肢をひとつひとつ大切に扱うことで、効率を高めることができます(#10 正しい内容を述べた選択肢から要点を抽出する / #11 誤った内容を述べた選択肢では誤りの箇所を正す)。このように、一般問題を演習する場合には、背景に存在している出題テーマを汲み取ろうとするプロセスと、選択肢をどのように扱っていくかという2点が重要になります。ここでまずは、臨床実地問題を解く上でも重要になる一般問題へのアプローチ方法について考えていきましょう。§2 臨床実地問題臨床実地問題は、図のような構造で成り立っています。すなわち、「本文」→「画像」→「設問文」→「選択肢」という順での配置です。このセクションでは以下のように、それぞれの要素ごとに取扱原則を設けています。画像を拡大するこれらに加え、第1章 七大原則の#2〜6を組み合わせると、第112回医師国家試験から問題数の割合が増えた臨床実地問題への対策が可能となるのです。臨床実地問題では、単に知識を問うような形式ではなく、(a)与えられた情報をどのように解釈・評価するのか、(b)知識を応用してどのように問題解決するのか、を問うような形式が好んで選ばれます。(a)は「アセスメント」と呼ばれる思考過程であり、第3章の§1で重点的にとり上げます。一方、(b)は問題解決能力を要するという点で(a)よりも高次的な形式となります。この形式では、医師の思考に沿った出題が可能になるという点で、より「臨床色の強い」問題が出来上がります。医師の思考については第3章の§2と§3で触れます。このように、第2章では資格試験でのテクニカルな切り口で、(そして第3章では実臨床の要素を踏まえた切り口で)医師国家試験を多角的に眺めることを意図しています。§3 必修問題必修問題は、医師として必ず知っておくべき基本が問われます。したがって、1問あたりの難易度は一般問題・臨床実地問題と比べると平易な問題が多く配置されるのが特徴となっています。合格基準は、80%以上の得点という絶対基準が適用されています。そのため「みんなが解ける問題を確実に得点する」という原則をいかに保てるかが、基準クリアの条件となります。大学入試の試験当日には「魔物が潜んでいる」と喩えられることがありますが、医師国家試験も同様に普段通りの自分を出せないような状況が起こりえます。このセクションでは、本番でのパフォーマンスを著しく低下させるような代表的なケースを取り上げて、リスクヘッジを行うことを目指します。例えば、本番では通常の演習とは異なり、正解を確認する術がないので見直しをした後で答えを変更したり、あるいは変更しようかどうか迷う状況が起こり得ます(#17 見直しで迷ったときは最初の答えを優先させる)。禁忌問題を気にしすぎて、「みんなが解ける問題」を間違ってしまうことも有り得ます(#18 禁忌問題は治療・緊急性・倫理的配慮で察知する)。他には、自信満々で答えた問題が、実は自大学での常識に過ぎず、Global Standard から掛け離れているがために失点することもあります(#19 local factor は排除する)。また、必修問題には高正解率の問題が大半を占めますが、中には正解率が5割に満たないような難問・奇問も紛れ込んでいるのが通常です。そのような問題に対面して生じたモヤモヤとした感情をいかに切り替えるかが大事なのです(#20 モヤモヤ問題をいち早く察知して適切に対応する)。医師国家試験を解くのは人間なので、エラーがどうしても付きまといます。統計上、エラーのパターンは比較的限られており、エラーが生じるメカニズムとその対応策を事前に知っていれば、本番のパフォーマンスを普段通りに近づけることができるはずです。巻末の付録に、遭遇頻度が高く、時に致命的になりやすいエラーを集めたコラムを配置しているので、必修問題に不安を覚える受験生は、そのエラー集も参考にすると良いでしょう。合格圏に達している受験生は、普段通りに解ければ何ら心配する必要がないのが必修問題です。しかし、試験本番に潜む魔物に対して、どのような事前準備が行えるかが合否の鍵を握っているといっても過言ではありません。§4 演習の工夫まず、医師国家試験の過去問演習における鉄則から§4はスタートします(#21 過去問は直近3カ年分を徹底的に研究・演習する)。どのような理由で直近3カ年を重視するかについて言及しています。次に、学習効率を高めるためには演習の量と質について考える必要があります。つまり、一問の演習あたりの精度と速度が効率を規定しているとも換言できます。量に重きを置き過ぎたせいで結果として押さえるべきポイントを反復する機会が少なくなってしまいがちな受験生は、演習のフォームを修正する必要があります(#22 30秒サマリーで反復の回数を増やす)。一方で、質に重きを置き過ぎたせいで結果として進捗が遅くなる傾向になる受験生は、演習速度を改善することが求められます(#23 速読では(1)診断、(2)根拠、(3)治療を確認する)。演習のフォームという点では、七大原則の#3、#4、#5を徹底することで、一問あたりから得られる学びを増幅させることができます。しかし、#3、#4、#5は演習の負荷を上げる効果があり、演習の質が高まる一方で、演習速度を低下させるという欠点があります。質にしろ、量にしろ、度が過ぎた場合には成績が伸び悩む現象が起こります。適宜、演習フォームを見直して、精度と速度のバランスをうまく調整することが重要です。このように、§4では普段のトレーニングをどのように最適化すればよいかについて考察します。第2章以降は、問題ごとにCheckpointを設けています。いずれも本書に登場する「基本ルール」で構成されています。その問題を解くときに有用と思われる記述をpickupしています。解いた後で「基本ルール」を意識してアプローチしたかどうかを確認する目的で適宜利用してください。より詳しい理解が必要であれば、該当するナンバー(#)を参照できるような配置にしているので、うまく活用していただけると幸いです。

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食事の質は片頭痛にも影響

 イラン・Isfahan University of Medical SciencesのArghavan Balali氏らは、食事の質と片頭痛との関連性について、評価を行った。その結果、食事の質の改善は、片頭痛の頻度、重症度、関連する問題などの片頭痛アウトカムの改善と関連している可能性が示唆された。Nutritional Neuroscience誌オンライン版2023年8月5日号の報告。 20~50歳の片頭痛患者262例を対象に、横断的研究を実施した。食事の質の評価には、Healthy Eating Index 2015(HEI-2015)およびAlternative Healthy Eating Index 2010(AHEI-2010)を用いた。食事の摂取量の評価には、168項目の食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いた。片頭痛のアウトカムには、臨床因子(重症度、期間、頻度、片頭痛に関連する問題)および血中一酸化窒素(NO)を含めた。食事の質と片頭痛アウトカムとの関連性は、線形回帰を用いて評価し、βおよび95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・HEI-2015では、関連する交絡因子で調整した後、HEIスコアが最も高い群(第3三分位)と最も低い群(第1三分位)との間において、片頭痛頻度の逆相関が認められた(β:-4.75、95%CI:-6.73~-2.76)。・AHEI-2010では、調整済みモデルにおいて、片頭痛頻度(β:-3.67、95%CI:-5.65~-1.69)および片頭痛に関連する問題(β:-2.74、95%CI:-4.79~-0.68)と逆相関が認められた。・AHEI-2010では、第2三分位と第1三分位との間において、片頭痛重症度の逆相関が認められた(β:-0.56、95%CI:-1.08~-0.05)。・食事の質とNOレベルとの関連は認められなかった(p>0.14)。・本メカニズムの解明には、今後の研究が求められる。

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既治療のHR+/HER2-転移乳がんへのSG、OSを改善(TROPiCS-02)/Lancet

 sacituzumab govitecan(SG)は、ヒト化抗Trop-2モノクローナル抗体と、トポイソメラーゼ阻害薬イリノテカンの活性代謝産物SN-38を結合した抗体薬物複合体。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHope S. Rugo氏らは、「TROPiCS-02試験」において、既治療のホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)の切除不能な局所再発または転移のある乳がんの治療では、本薬は標準的な化学療法と比較して、全生存期間(OS)を有意に延長し、管理可能な安全性プロファイルを有することを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年8月23日号で報告された。9ヵ国の非盲検無作為化第III相試験 TROPiCS-02試験は、北米と欧州の9ヵ国91施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2019年5月~2021年4月に患者を登録した(Gilead Sciencesの助成を受けた)。 対象は、HR+/HER2-の切除不能な局所再発または転移のある乳がんで、内分泌療法、タキサン系薬剤、CDK4/6阻害薬による治療を1つ以上受け、転移病変に対し2~4レジメンの化学療法を受けており、年齢18歳以上で全身状態が良好な(ECOG PS 0/1)患者であった。 被験者を、sacituzumab govitecan(10mg/kg、21日ごとに1日目と8日目)または化学療法の静脈内投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。化学療法群は、担当医の選択でエリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビンのいずれかの単剤投与を受けた。 主要評価項目は、無増悪生存期間(PFS、すでに発表済みで、本論では報告がない)で、主な副次評価項目はOS、客観的奏効率(ORR)、患者報告アウトカムであった。 543例を登録し、sacituzumab govitecan群に272例(年齢中央値57歳[四分位範囲[IQR]:49~65]、男性2例)、化学療法群に271例(55歳[48~63]、3例)を割り付けた。全体の進行病変に対する化学療法のレジメン数中央値は3(IQR:2~3)で、86%が6ヵ月以上にわたり転移病変に対する内分泌療法を受けていた。ORR、全般的健康感/QOLも良好 追跡期間中央値12.5ヵ月(IQR:6.4~18.8)の時点で390例が死亡した。OS中央値は、化学療法群が11.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.1~12.7)であったのに対し、sacituzumab govitecan群は14.4ヵ月(13.0~15.7)と有意に改善した(ハザード比[HR]:0.79、95%CI:0.65~0.96、p=0.020)。生存に関するsacituzumab govitecan群の有益性は、Trop-2の発現レベルに基づくサブグループのすべてで認められた。 また、ORRは、化学療法群の14%(部分奏効38例)と比較して、sacituzumab govitecan群は21%(完全奏効2例、部分奏効55例)と有意に優れた(オッズ比[OR]:1.63、95%CI:1.03~2.56、p=0.035)。奏効期間中央値は、sacituzumab govitecan群が8.1ヵ月、化学療法群は5.6ヵ月だった。 全般的健康感(global health status)/QOLが悪化するまでの期間は、化学療法群が3.0ヵ月であったのに対し、sacituzumab govitecan群は4.3ヵ月であり、有意に良好であった(HR:0.75、95%CI:0.61~0.92、p=0.0059)。また、倦怠感が悪化するまでの期間も、sacituzumab govitecan群で有意に長かった(2.2ヵ月 vs.1.4ヵ月、HR:0.73、95%CI:0.60~0.89、p=0.0021)。 sacituzumab govitecanの安全性プロファイルは、先行研究との一貫性が認められた。sacituzumab govitecan群の1例で、治療関連の致死的有害事象(好中球減少性大腸炎に起因する敗血症性ショック)が発現した。 著者は、「これらのデータは、前治療歴を有する内分泌療法抵抗性のHR+/HER2-の転移乳がんの新たな治療選択肢としてのsacituzumab govitecanを支持するものである」としている。なお、sacituzumab govitecanは、米国では2023年2月、EUでは2023年7月に、内分泌療法ベースの治療と転移病変に対する2つ以上の全身療法を受けたHR+/HER2-の切除不能な局所再発または転移のある乳がんの治療法として承認されている。

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にきびに対して最も効果的な治療法とは?

 生活の質(QOL)に大きな影響を与えかねないにきび(ざ瘡)に対する最も効果的な治療法は何なのだろうか。台大病院(台湾)のChung-Yen Huang氏らによる200件以上の研究を対象にしたレビューから、その答えは、経口イソトレチノイン(商品名アキュテイン)であることが明らかになった。この研究結果は、「Annals of Family Medicine」7/8月号に掲載された。 Huang氏らは、にきびに対する薬物療法に関する包括的な比較を行うために、論文データベースを用いて2022年2月までに発表された関連論文を検索し、221件の臨床試験を含む210件の研究論文(対象者の総計6万5,601人、平均年齢20.4歳)をレビュー対象として抽出。これらの研究で検討されていた37種類のにきび治療法を、総皮疹数、炎症性皮疹数、非炎症性皮疹数の減少率に基づき比較した。対象とした37種類のにきび治療法には、外用と経口の抗菌薬、外用レチノイド、経口イソトレチノイン、過酸化ベンゾイル(BPO)、アゼライン酸、ホルモン治療薬の単剤療法と併用療法が含まれていた。治療期間中央値は12週間だった。 解析の結果、総皮疹数、炎症性皮疹数、非炎症性皮疹数のいずれについても、最も効果的な治療法は経口イソトレチノインであることが示された。イソトレチノインは、皮脂腺を縮小して皮脂分泌を抑制するとともに抗炎症作用も持つ。 経口イソトレチノインに次いで効果的な治療法は、総皮疹数と非炎症性皮疹数に対してはいずれも、外用の抗菌薬・BPO・レチノイドの3剤併用療法、経口抗菌薬・外用BPO・外用レチノイドの3剤併用療法の順であった。炎症性皮疹数に対しては、2番目に効果的な治療法が外用抗菌薬と外用アゼライン酸の2剤併用療法、3番目が経口抗菌薬・外用BPO・外用レチノイドの3剤併用療法であった。また、単剤療法に関しては、経口または外用抗菌薬と外用レチノイドは炎症性皮疹数に対して同等の効果があるが、抗菌薬は非炎症性皮疹数に対してあまり効果のないことが示された。 今回の研究には関与していない、米アラバマ州バーミンガムを拠点とする皮膚科医であるJulie Harper氏は、「経口イソトレチノインは、にきびの治療薬として最も効果が期待できる薬だ。イソトレチノインを服用した多くの人で、にきびが消えるだけでなく、その状態を長期にわたり維持できる」と言う。ただし、副作用として肝障害や抑うつ症状などが生じたり、妊娠中の女性では胎児に重篤な先天異常をもたらす可能性もあるため、誰もが服用できる薬剤ではないことも同氏は指摘している。 また、米ボストンの皮膚科医であるEmmy Graber氏は、「臨床試験参加者は、外用の抗菌薬・BPO・レチノイドによる3剤併用療法を処方されても遵守する可能性が高いが、実臨床で患者に複数の外用薬を1日に何度も使わせるのは困難だ」と指摘する。そして、「外用薬でも優れた効果を得ることはできるが、そのために重要になるのがコンプライアンスと併用だ」と述べ、「3剤併用療法では、内服薬を含める方が外用薬だけを3種類用いるよりも効果的だろう」との見方を示している。 一方、米Acne Treatment & Research Center(にきび治療研究センター)のメディカルディレクターを務めるHilary Baldwin氏は、「全ての外用レチノイドが同じように作られているわけではないのに、この研究では、外用レチノイドとしてまとめられている。外用レチノイドの強さを一括りにして評価することは不可能だ」と研究の限界点に言及する。同氏はさらに、「にきびは、その数だけでなく、病変の大きさ(赤み)も評価して、重症度を判断するべきだ」と主張する。さらに、「患者ごとにパラメーターは大きく異なっており、にきびの治療成績は、治療の遵守、皮膚の敏感さ、ライフスタイルの特徴など多くの要因に左右されるものだ」と説明している。

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中等症~重症の尋常性乾癬へのリサンキズマブ、5年追跡結果

 中等症~重症の尋常性乾癬患者に対するリサンキズマブ治療の長期安全性と有効性が報告された。最長5年の継続投与の忍容性は良好であり、持続的かつ高い有効性が示された。ベルギー・Alliance Clinical Research and Probity Medical ResearchのKim A. Papp氏らが、進行中の第III相非盲検延長試験「LIMMitless試験」の中間解析の結果をJournal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2023年8月6日号で報告した。乾癬は慢性の炎症性皮膚疾患で、長期にわたる治療が必要になることが多い。リサンキズマブはヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤で、IL-23のp19サブユニットに結合し、IL-23の作用を中和することで乾癬による皮膚症状や関節炎などを改善する。 LIMMitless試験は、中等症~重症の尋常性乾癬患者を対象に、リサンキズマブ150mg(12週ごとに皮下注射)の長期安全性と有効性を評価する国際共同単群評価試験。日本を含む17の国と地域で、先行する複数の第II/III相試験のいずれかを完了した患者が登録された。今回の中間解析では、304週間にわたる安全性(治療中に発生した有害事象[TEAE])を評価した。有効性は、256週間にわたって評価した。Psoriasis Area and Severity Index(PASI)スコアが90%以上または100%減少(PASI 90/100)、static Physician's Global Assessment(sPGA)スコアで皮膚病変が消失/ほぼ消失(sPGA 0/1)、およびDermatology Life Quality Index(DLQI)で生活への影響なし(DLQI 0/1)を達成した患者の割合を評価した。 主な結果は以下のとおり。・先行研究でリサンキズマブ群に無作為化された897例のうち、データカットオフ時点で治療を継続していたのは706例であった。・TEAE、投与中止に至ったTEAE、とくに注目すべきTEAEの発現率は、いずれも低率であった。・256週時点において、PASI 90、PASI 100達成患者の割合は、それぞれ85.1%、52.3%であり、sPGA 0/1達成患者の割合は85.8%、DLQI 0/1達成患者の割合は76.4%であった。

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若者のうつ病・不安症、未治療での1年後の回復率~メタ解析

 抑うつ症状や不安症状を有する若者に対し、特別なメンタルヘルス介入を行わなかった場合の1年後の回復率は、どの程度か。英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のAnna Roach氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施し、これを明らかにしようと試みた。その結果、不安や抑うつ症状を有する若者の約54%は、特別なメンタルヘルス介入を行わなくても回復することが示唆された。BMJ Open誌2023年7月21日号の報告。 1980年~2022年8月に公表された論文をMEDLINE、Embase、PsycINFO、Web of Science、Global Healthよりシステマティックに検索した。特別な介入を行わなかった10~24歳の若者を対象に、ベースラインおよびフォローアップ1年後の抑うつ症状および不安症状を評価した査読済みの英語論文を対象とした。3人のレビュアーにより関連データを抽出した。メタ解析を実施し、1年後の回復率を算出した。エビデンスの質は、Newcastle-Ottawa Scaleを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた参考論文1万7,250件のうち5件(1,011例)をメタ解析に含めた。・1年間の回復率は、47~64%の範囲であった。・メタ解析では、全体をプールした若者の回復率は0.54(0.45~0.63)であった。・今後の研究において、回復の予測因子や回復に寄与するリソース、活動を調査する必要がある。

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双極性障害に対する薬物療法のパターン~メタ解析

 米国・メイヨークリニックのBalwinder Singh氏らは、双極性障害の治療実態を明らかにするため、Global Bipolar Cohortの共同ネットワークを活用して、北米、欧州、オーストラリアの双極性障害患者を対象とした複数のコホート研究における薬物療法のパターンを調査した。その結果、双極性障害患者に対しては、気分安定薬である抗けいれん薬、第2世代抗精神病薬、抗うつ薬の使用頻度が高く、必ずしもガイドラインと一致する治療パターンではなかった。また、地域ごとに治療パターンの大きな違いがあり、北米ではリチウムの使用頻度が低く、欧州では第1世代抗精神病薬の使用頻度が高かった。著者らは、これらの違いと治療アウトカムとの関係を調査し、双極性障害治療の改善に役立つエビデンスベースのガイドラインを提供し実践するには、今後、縦断的研究を実施する必要があるとしている。Bipolar Disorders誌オンライン版2023年7月18日号の報告。 薬物療法、人口統計、診断サブタイプ、併存疾患に関するデータを、各コホート研究より収集した。治療パターンを特定するため、一般化線形混合法を用いた個別および地域ごとにプールされた比例メタ分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象は、北米3,985例、欧州3,822例、オーストラリア2,544例を含む双極性障害患者1万351例(女性の割合:60%、双極I型障害:60%、双極II型障害:33%)。・気分安定薬としての抗けいれん薬(44%)、第2世代抗精神病薬(42%)、抗うつ薬(38%)の使用頻度が高かった。・リチウムは29%に使用されており、主にオーストラリア(31%)、欧州(36%)で使用頻度が高かった。・第1世代抗精神病薬は、欧州では24%で使用されていたが、北米では1%のみであった。・抗うつ薬の使用頻度は、双極I型障害(35%)よりも双極II型障害(47%)で高かった。・包含/除外基準、データソース、コホート研究への登録時期については、研究間で有意な違いが認められた。

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ボードゲームは小児の数学的スキルを高める

 夜に家族でボードゲームをして過ごす時間は、単に楽しいだけではないようだ。モノポリーやオセロなどのボードゲームは、幼児期の数学的スキルの育成にも役立つ可能性が、新たな研究で示された。チリ・カトリック大学のJaime Balladares氏らによる研究で、詳細は「Early Years」に7月6日掲載された。 ボードゲームの特徴は、コマの数や位置、動かし方などに関してルールが決められており、その動きや位置の変化がゲームの進行や結果に影響を与えることだ。そのため、小児期から成人期まで、目的と年齢層に応じてレベルを調整して、いくつかのプレイパターンを作ることも可能だ。過去の研究では、ボードゲームが小児の読み書きや読解力を向上させる可能性が報告されるなど、教育面で有効なことが示唆されている。しかし、特に、プリスクール(幼稚園前)や保育園・幼稚園でのボードゲームの使用が小児にもたらす効果について定量的に分析した研究結果は報告されていない。 Balladares氏らは論文データベースから、2000年以降に発表された、3〜9歳を対象にボードゲームが認知機能に及ぼす効果を検討した研究を19本抽出し、メタアナリシスを実施した。いずれの研究もボードゲームを介入手段としており、一つの研究を除き全ての研究がボードゲームと数学的スキルとの関係を探ることに焦点を当てていた。介入は、教師やセラピスト、訓練を受けた親の指導の下で、平均して1回当たり20分を週に2回、1カ月半にわたって実施されていた。一部の研究では、介入に使ったボードゲームが数学的スキルに焦点を当てたものであるかどうかで対象者を2群に分類していた。また、別の研究では、全ての対象者が数学的スキルに焦点を当てたボードゲームを行っていたものの、全員が同じ種類のゲームを割り当てられていたわけではなかった。対象者は、介入前と介入後に、数を数える能力や足し算・引き算の能力などの数学的スキルの評価を受けた。 その結果、介入後には介入前と比べて、分析した課題の52%以上で小児の数学的スキルが有意に向上していることが明らかになった。また、ボードゲームによる介入を受けた群と受けていない対照群とで数学的スキルを比較した研究結果の32%で、ボードゲームがスキル向上に有益であると示されていたことが判明した。 こうした結果を受けてBalladares氏は、「ボードゲームは幼児の数学的スキルを向上させる。ボードゲームをすることは、基礎的な数学的スキルとより高度な数学的スキルに潜在的な影響をもたらす方法と見なすことができる。ボードゲームは、数学的スキルや他の領域に関連した学習目標を含むように簡単にカスタマイズすることができる」と話す。 Balladares氏はさらに、「今後の研究では、このようなボードゲームが数学的スキル以外の認知能力や発達能力に及ぼす影響について調べる必要がある」と語る。また、「ゲームの複雑さや教育目的のためのより良質なゲームをこれまで以上に考えだす必要性に鑑みると、ボードゲームによる介入の開発と評価のための興味深い領域が、今後数年間で、拡大していくはずだ」と話している。(HealthDay News 2023年7月10日)

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英語で「難しい天秤です」は?【1分★医療英語】第93回

第93回 英語で「難しい天秤です」は?I wonder if we should stop anticoagulation given recent GI bleeding.(最近あった消化管出血を考えると、抗凝固薬をやめるべきなのか悩んでいます) It is a difficult balancing act between risks and benefits.(それはリスクとベネフィットの難しい天秤ですよね)《例文1》The decision to proceed with the surgery requires a careful balancing act.(手術に進むかの決断には注意深いバランスが必要です)《例文2》We need to think about a delicate balancing act between pain control and sedation.(疼痛コントロールと鎮静の間で繊細な天秤を考える必要があります)《解説》医療現場では、相反する2つの事実を天秤に掛け、バランスを取らなければならないことはしばしばです。治療の益と害、手術をすべきかどうか。そんなときに、「対立する2つの間でバランスを取らなければならない=難しい天秤に掛けなければならない」という状況に置かれます。そういった際、患者さんへの説明、あるいは医療者同士の議論の場で有用な表現が、この“balancing act”です。“balancing act”は、本来は「曲芸における綱渡り」を意味する言葉だそうです。綱渡りは、絶妙なバランスを取りながら綱の上を渡る曲芸。医療者にも医療上の絶妙なバランスを求められることがありますが、そのようなバランスを取って決断していくことを“balancing act”という言葉で表現し、「両立させること」「バランスを取ること」という意味を持ちます。たとえば、冒頭の会話のシチュエーションはこのような感じです。心房細動の既往があり、血栓症のリスクが高い患者に消化管出血が起こった。血栓のリスクも、出血のリスクも高く、今後の抗凝固薬をどうすべきか…。この血栓リスク、出血リスクの両者は難しい天秤だと思いますが、それらを慎重に測りながら、どこかに線引きをして決断をしなければなりません。そんなシチュエーションを表現するのに、この“It is a balancing act”は最適な表現です。一般英会話の教科書で見ることは少ないかもしれませんが、医療現場ではよく登場する表現ですので、そのまま覚えてしまうとよいでしょう。講師紹介

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第176回 バラなどの芳香と共に眠ることと記憶の改善が関連

バラなどの芳香と共に眠ることと記憶の改善が関連香りで嗅覚を刺激することで頭の働きがよくなることが先立つ試験で示されています。パーキンソン病患者70例が参加した試験では数種の香りを毎日しばし嗅ぐことで言語の流暢さが改善しました1)。50~84歳の成人91例の試験ではエッセンシャルオイル4種を毎日2回嗅ぐことで言語機能が改善し、うつ症状も緩和しました2)。認知機能低下の恐れがある高齢成人68例を募った試験では9つの香りを嗅ぐことと認知症症状の抑制の関連が示されています3)。認知症をすでに発症した患者の香りを豊かにすることも認知機能に有益なようです。認知症成人65例が参加した試験の結果、40種類の香りに毎日2回接することで記憶、うつ症状、注意、言語機能などが改善しました4)。早速実践に移せればよいですが、認知症の患者が平素に40種類の香りを毎日2回嗅ぐのはおそらく容易ではありません。認知症患者が40種類のボトルを毎日2回、すなわち80回も手にとって開け閉めして嗅ぐことはおよそ非現実的ですし、認知症でなくとも手に負えるものではなさそうです。そのような込み入った手段だと長続きしません。普段の生活の中で続けてもらうにはできるだけ容易な手段にする必要があります。そこで考え出されたのがよい香りと共に眠るというおよそ苦もなく実践できそうな手段です。香りの種類もせいぜい数種類に限定しました。それらの香りを1つずつ順繰りに毎晩寝るときに部屋に漂わせる効果を少人数の試験で検討したところ願ったりかなったりの結果が得られました。試験には記憶が損なわれていない60~85歳の男女43例が参加し、よい香りと共に眠る群とそうでない対照群に無作為に振り分けられました。よい香りと共に眠る群の20例は芳香油を2時間拡散させて眠ることを毎晩繰り返しました。同様の日課を対照群の23例は実質的に香りがしない蒸留水を使って繰り返しました。芳香は7種類で、バラ、オレンジ、ユーカリ、レモン、ペパーミント、ローズマリー、ラベンダーの芳香油が1つずつ毎晩順繰りに使われました。半年をそうして過ごしたところ、よい香りと共に眠る群では言語の学習や記憶の検査であるRey Auditory Verbal Learning Test(RAVLT)成績が向上しました5)。対照群のRAVLT成績は逆に悪化しました。また、老化やアルツハイマー病で支障を来す脳領域である鉤状束の機能の改善が画像検査で示されました。香りを豊かにすることは脳の調子を改善する効果的で手軽な方法となりうるようであり、より大人数の試験でその効果の検討が進むことを著者は望んでいます。どうやら香りの効果は多岐にわたり、高齢者や認知機能に限ったものではなさそうです。最近発表された試験結果ではペパーミント油の香りが心臓手術後の患者の痛みを和らげ、睡眠の質を改善したことが示されています6)。ペパーミント油の主成分であるカルボン、リモネン、メンソールが痛み緩和効果の多くを担うようであり、ペパーミントの香りを漂わせるアロマセラピーを手術後に施すことを著者は勧めています。さかのぼること20年ほど前に発表された試験結果では早産児の無呼吸を減らすバニラの香り(バニリン)の効果が認められています7)。参考1)Haehner A, et al. PLoS One. 2013;8:e61680.2)Birte-Antina W, et al. J Geriatr Psychiatry Neurol. 2017;33:212-220.3)Oleszkiewicz A, et al. Behav Neurosci. 2021;135:732-740.4)Cha H, et al. Geriatr Gerontol Int. 2022;22:5-11.5)Woo CC, et al. Front Neurosci. 2023;17:1200448.6)Maghami M, et al. BMJ Support Palliat Care. 2023 Aug 3. [Epub ahead of print] 7)Marlier L, et al. Pediatrics. 2005;115:83-88.

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睡眠中のアロマセラピー、高齢者の記憶を200%超改善

 高齢者が睡眠中にエッセンシャルオイルの香りに曝露することで、記憶力が大幅に改善したという研究結果が報告された。高齢者の認知機能低下は重要な社会問題であり、安価かつ簡便に家庭内で実施可能な対処法が求められていることから、本研究の手法は非常に有用と考えられた。本研究結果は、米国・カリフォルニア大学アーバイン校のCynthia C. Woo氏らによって、Frontiers in Neuroscience誌2023年7月24日号で報告された。 認知機能障害や認知症のない60~85歳の男女43人を対象とした。睡眠時にエッセンシャルオイルの香りに曝露する群(嗅覚刺激群)、微量の匂い物質の香りに曝露する群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月間嗅覚刺激を実施した。嗅覚刺激群は、7種類のエッセンシャルオイルを用いて、毎晩1種類ずつ2時間曝露した。対照群は、同様に微量の匂い物質の香りに曝露した。ベースライン時と6ヵ月後において、神経心理学的評価と機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いた脳機能の解析を行った。記憶機能は、Rey Auditory Verbal Learning Test(RAVLT)を用いて評価した。また、Wechsler Adult Intelligence Scale 3rd edition(WAIS-III)を用いた知能検査も実施した。 主な結果は以下のとおり。・6ヵ月後におけるベースライン時からのRAVLTスコア(第5試行)の変化量(標準偏差)は、対照群が-0.73点(1.74)であったのに対し、嗅覚刺激群は0.92点(1.31)であり、嗅覚刺激群は対照群と比較して226%の有意な改善が認められた(p=0.02)。・知能検査については、両群間に有意差は認められなかった。・嗅覚刺激群は対照群と比較して、左鉤状束※の平均拡散能(mean diffusivity)が有意に増加した(p=0.02)。・ベースライン時の14日間の平均睡眠時間と6ヵ月後における14日間の平均睡眠時間を比較した結果、対照群は3分減少したのに対し、嗅覚刺激群は22分増加した。※ 鉤状束はエピソード記憶、言語、社会的感情処理などの機能を担っていることが示唆されており、加齢やアルツハイマー病によって機能が低下するとされている。

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選択的Nav1.8阻害薬VX-548、術後急性疼痛を軽減/NEJM

 電位依存性ナトリウム(Na)チャネルNav1.8の選択的阻害薬であるVX-548は、高用量においてプラセボと比較し、腹壁形成術ならびに腱膜瘤切除術後48時間にわたって急性疼痛を軽減し、有害事象は軽度~中等度であった。米国・Vertex PharmaceuticalsのJim Jones氏らが、2件の第II相無作為化二重盲検比較試験の結果を報告した。電位依存性NaチャネルNav1.8は、末梢侵害受容ニューロンに発現し、侵害受容シグナルの伝達に寄与していることから、選択的Nav1.8阻害薬VX-548の急性疼痛抑制効果が研究されていた。NEJM誌2023年8月3日号掲載の報告。腹壁形成術および腱膜瘤切除術後の急性疼痛患者で、VX-548vs.プラセボを評価 研究グループは、(1)腹壁形成術(軟部組織の痛みのモデル)、または(2)腱膜瘤切除術(外反母趾手術)(骨の痛みのモデル)術後の急性疼痛を有する患者を対象とした2件の第II相無作為化二重盲検比較試験を実施した。 (1)の腹壁形成術試験は2021年8月~2021年11月に米国内の7施設において、腹壁形成術終了後4時間以内で、数値的疼痛評価尺度(Numeric Pain Rating Scale[NPRS]、スコア範囲:0~10、数値が高いほど痛みが強いことを示す)のスコアが4以上、および口頭式疼痛評価尺度(Verbal Categorical Rating Scale[VRS]、痛みが「ない」から「重度」まで4段階で評価)で中等度または重度の痛みを有する18~75歳の患者を、高用量群(VX-548を100mg経口負荷投与後12時間ごとに50mgを維持投与)、中用量群(VX-548を60mg経口負荷投与後12時間ごとに30mgを維持投与)、実薬対照群(酒石酸水素ヒドロコドン5mg/アセトアミノフェン325mgを6時間ごとに経口投与)、プラセボ群(プラセボを6時間ごとに経口投与)に1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、48時間投与した。 (2)の腱膜瘤切除術試験は2021年7月~2022年1月に9施設において、術後1日目の膝窩坐骨神経ブロック除去後9時間以内に(1)と同様の痛みを有する18~75歳の患者を、高用量群、中用量群、低用量群(VX-548を20mg経口負荷投与後12時間ごとに10mgを維持投与)、実薬対照群、プラセボ群に2対2対1対2対2の割合で無作為に割り付け、48時間投与した。 主要エンドポイントは、NPRSスコアに基づく疼痛強度差(SPID)の48時間にわたる時間加重合計(SPID48)とした。NPRSスコアは、初回投与後0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、8、12時間後、以降は4時間ごとに合計19回測定した。主解析では、VX-548各投与群とプラセボ群を比較した。VX-548高用量群で術後急性疼痛が軽減 (1)腹壁形成術試験には計303例、(2)腱膜瘤切除術試験には計274例が登録された。 時間加重SPID48のVX-548高用量群とプラセボ群の最小二乗平均群間差は、腹壁形成術後で37.8(95%信頼区間[CI]:9.2~66.4)、腱膜瘤切除術後で36.8(95%CI:4.6~69.0)であった。両試験とも、中用量群または低用量群はプラセボ群と同様の結果であった。 有害事象はほとんどが軽度~中等度であり、主な有害事象は(1)腹壁形成術試験では悪心、頭痛、便秘、(2)腱膜瘤切除術試験では悪心および頭痛であった。

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手のひらのにおいで男女を識別可能か

 手のひらのにおいは、男性と女性とで異なるとする研究結果を、米フロリダ国際大学Global Forensic and Justice CenterのKenneth Furton氏らが、「PLOS ONE」に7月5日報告した。手のひらのにおい成分を使って、約97%という高い精度で個人の性別を予測することができたという。研究グループは、この研究結果が犯罪者の追跡に役立つ可能性があるとの見方を示している。 Furton氏らは論文の背景説明で、強盗、傷害、強姦などの犯罪はいずれも、犯人が手を使って行うため、犯人と犯罪現場との間で生物学的物質と無機物質の交換が行われることになると述べている。これは、犯人の手が何かに触れるたびに、その痕跡が犯行現場に残されるということである。指紋やDNAは、犯行現場に残される最も一般的な痕跡である。しかし、これらの証拠が必ずしも残されているわけではないし、残されていても採取可能な量が十分ではないなどの理由で法医学的証拠として使えない場合もある。 研究グループは今回、たとえ指紋やDNAなどが証拠として使えない場合でも、人間のにおいのエビデンスを集めることで、犯人の特徴を割り出し、犯罪捜査に役立てることができるのではないかという発想の下、研究を実施した。 まず、18〜46歳の黒人、ヒスパニック系、白人の男女それぞれ10人ずつ(計60人)の手のひらからガーゼで試料を採取し、ヘッドスペース固相マイクロ抽出/ガスクロマトグラフ質量分析(HS-SPME/GC-MS)法により、試料中の揮発性有機化合物(VOC;大気中で気体となる有機化合物の総称)を分析した。HS-SPME/GC-MS法では、HS-SPMEにより試料中の揮発性成分を抽出し、GC-MSでその質量を分析する。得られたVOCの特徴は、事前学習によりクラス分類を最適化させた部分最小二乗判別分析(PLS-DA)モデルや線形判別分析(LDA)モデルなどを用いて評価した。その結果、VOCの分析により、においの主の性別を96.67%の精度で識別できることが示された。 研究グループは、犬はにおいを手がかりに人間を、その人の生死の状態に関わりなく識別できるが、今回の研究は、においを研究室で分析して、その性別を正確に識別した初めてのものであることを強調している。論文の筆頭著者である、Global Forensic and Justice CenterのChantrell Frazier氏は、「この技術は、犬の嗅覚による捜査と組み合わせて使うことができるだろう」と述べている。 今回の研究結果は、今後さらに検証する必要があるものの、Furton氏らは、「将来的には、手のにおいの特徴を基に、犯人の詳細が割り出されるようになる可能性がある」と述べている。

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