大転子痛症候群に対し蛍光透視法ガイド下にコルチコステロイド注射を行う治療法は、コストが6倍以上に高騰するうえに必ずしも転帰は改善しないことが、Johns Hopkins医科大学麻酔・救急医療科のSteven P Cohen氏らが実施した多施設共同試験で判明した。臨床的に滑液包炎が見られる患者に対する転子滑液包へのコルチコステロイド注射は、疼痛および身体的な障害を低減することが示されている。滑液包への標準的な注射法は確立されていないが、蛍光透視法を用いないで注射する方法では薬剤が滑液包に到達する患者はごくわずかだという。BMJ誌2009年4月25日号(オンライン版2009年4月14日号)掲載の報告。
蛍光透視法ガイド下注射と非ガイド下注射を比較する無作為化試験
研究グループは、大転子痛症候群を対象に蛍光透視法ガイド下注射法の予後改善効果を評価するために、多施設共同二重盲検無作為化対照比較試験を行った。対象は、アメリカとドイツの3つの医療施設で臨床的に大転子痛症候群と診断された患者65例であった。
患者は、コルチコステロイド薬と局部麻酔薬を転子滑液包へ注射する際に、蛍光透視法をガイドとする群(32例)あるいは蛍光透視法を用いない群(いわゆるブラインド注射、33例)に無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、1ヵ月後の安静時および活動時の数値化スケール(0~10)による疼痛スコア[安静時あるいは活動時の疼痛が50%以上低減し、全体的な回復感(global perceived effect; GPE)が得られた場合に予後改善効果ありと定義]であった。副次評価項目は、Oswestry障害スコア、SF-36によるQOL評価、薬剤使用量の低減、患者満足度とした。
いずれの評価項目も両群でほぼ同等
全体の予後改善率は注射後1ヵ月の時点で61%、改善効果が3ヵ月まで持続した患者は44%であった。両群間に転帰の差は認めなかった。
注射後1ヵ月の時点における平均疼痛スコアは、安静時が蛍光透視法群2.7、ブラインド注射群2.2、活動時はそれぞれ5.0、4.0で有意な差はなかった。注射後3か月の時点において、予後改善効果が持続していた患者は蛍光透視法群が13例(41%)、ブラインド注射群は15例(47%)と同等であった。
Oswestry障害スコア、SF-36によるQOL評価、薬剤使用量の低減、患者満足度も両群で同等であった。平均コストはブラインド注射群が188ドルであったのに対し、蛍光透視法群は1,216ドルと6倍以上も高価であった。
著者は、「大転子痛症候群に対する蛍光透視法を用いた注射は治療コストが劇的に高騰する一方で、転帰は必ずしも改善しない」と結論し、「本試験は症例数が少ないため、転子滑液包への注射の有効性を確立し、蛍光透視法を使用した方法が有効な患者と使用しない治療法が有効な患者を同定するには、さらなる検討を要する」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)