医療一般|page:85

「正反対の者同士は惹かれ合う」は真実ではない?

 恋愛関係に関して昔から言われる「正反対の者同士は惹かれ合う」という説は、実際には正しくないようだ。何万組ものカップルを対象に130種類以上の特性について相関を調べた結果、正反対の者同士が惹かれ合うという主張を裏付ける結果は得られなかったことが報告されたのだ。米コロラド大学ボルダー校のTanya Horwitz氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Human Behaviour」に8月31日掲載された。  Horwitz氏によると、正反対の者同士は惹かれ合うという説は、心理学者のRobert Winch氏が1950年代に、いくつかの特性が「相補的」であり、人は自分に足りない部分を補ってくれる正反対の特性を持ったパートナーを選ぶ場合があると示唆したことに由来する可能性があるという。しかし、正反対の者同士が惹かれ合うという説を裏付ける科学的なデータはほとんどなかった。

若年期の心肺機能が高いと後年のがんリスクが低い可能性

 若い男性が心肺機能を高めておくと、後年にいくつかの部位のがんリスクを下げられるかもしれない。ヨーテボリ大学(スウェーデン)のAron Onerup氏らが、同国軍の兵士を対象とする大規模なコホート研究のデータを解析した結果であり、詳細は「British Journal of Sports Medicine」に8月15日掲載された。9種類のがんリスクが有意に低下する可能性があるという。  この研究の解析対象は、1968~2005年に同国で兵役についた16~25歳(平均18.3±0.7歳)の男性から、兵役以前または兵役後5年の間にがんと診断されていた人、兵役から5年以内に死亡した人、およびデータ欠落者を除外した107万8,000人。心肺機能は、徴兵検査で施行されていた兵士の適性検査に基づくスタニンスコアという指標から、低・中・高の3群に分けて評価。そのカテゴリーと18種類の部位別がんリスクとの関連を検討した。

自殺関連ツイート急増後に自殺した人の特徴

 マスメディアやソーシャルメディアでの自殺関連情報が、自殺リスクの高い人の自殺行動を促してしまう懸念が指摘される中、ツイッター(現:エックス)に自殺関連ツイート(同:ポスト)が急増した数日後に自殺に至った人の特徴を検討した研究結果が報告された。40歳以下、男性、失業中、都市生活者などは、ツイート件数増加後にハイリスクとなる可能性があるという。岡山大学病院新医療研究開発センターの三橋利晴氏の研究によるもので、詳細は「JMIR formative research」に8月10日掲載された。

ノーベル生理学・医学賞、mRNAワクチン開発のカリコ氏とワイスマン氏が受賞

 2023年のノーベル生理学・医学賞は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの開発を可能にしたヌクレオシド塩基修飾の発見に対して、カタリン・カリコ(Katalin Kariko)氏とドリュー・ワイスマン(Drew Weissman)氏に授与することを、スウェーデン・カロリンスカ研究所のノーベル委員会が10月2日に発表した。カリコ氏とワイスマン氏の画期的な発見は、mRNAがヒトの免疫系にどのように相互作用するかという理解を根本的に変え、人類に対して最大の脅威の1つとなったCOVID-19パンデミックにおいて、前例のないワクチン開発に貢献した。授賞式は12月10日にストックホルム市庁舎にて開催される。

認知症治療支援保険、東京海上日動とエーザイが共同開発

 東京海上日動火災保険とエーザイは認知症の早期発見や早期治療について経済的に支援するための「認知症治療支援保険」を共同で開発したことを、9月28日のプレスリリースにて発表した。アルツハイマー病による軽度認知障害またはアルツハイマー型認知症に特化した補償は業界初となる。  9月25日に、エーザイとバイオジェンが共同開発したヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ凝集体モノクローナル抗体レカネマブが、日本において「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」の効能・効果において厚生労働省より承認を取得した。

世界共通語「ダイアベティス」へ「糖尿病」の呼称変更を目指す/日本糖尿病学会・日本糖尿病協会

 9月22日、日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所])と日本糖尿病協会(理事長:清野 裕氏[関西電力病院])は都内でメディアセミナーを合同で開催した。セミナーでは、以前から活動が続けられている糖尿病のアドボカシー活動の現状や今後の展望、新たな呼称候補の発表などが語られた。  門脇 孝氏(IDF-WPR議長[虎の門病院])は、「糖尿病医療におけるアドボカシーの重要性」をテーマに講演した。糖尿病の病態解明や治療が進んでいる一方で、過去の負のイメージが社会に定着し、患者の不利益になっていることを指摘。

実臨床における日本人片頭痛患者に対するフレマネズマブ治療

 片頭痛治療に対する抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体フレマネズマブの有効性は、ランダム化比較試験で実証されているものの、実臨床での研究結果は、いまだ限られている。獨協医科大学の鈴木 紫布氏らは、リアルワールドにおける日本人片頭痛患者に対するフレマネズマブ治療の有効性および忍容性を明らかにするため、単一施設観察研究を実施した。Frontiers in Neurology誌2023年7月6日号の報告。  対象は、6ヵ月間、毎月または四半期ごとにフレマネズマブ投与を行った反復性片頭痛(EM)および慢性片頭痛(CM)患者。主要アウトカムは、フレマネズマブ治療後の1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)および治療反応率の変化とした。副次的アウトカムは、治療6ヵ月時点での治療反応患者の予測因子を特定とした。また、他の抗CGRP抗体から切り替えを行った患者におけるフレマネズマブ治療の有効性を評価し、毎月投与群と四半期投与群におけるフレマネズマブの有効性を比較した。MMDは、頭痛日誌を用いて評価した。

医療費の支払いに関わる事務作業の負担はがん患者の治療遅延を招く

 がん患者の一部は、医療費の支払いに関わる書類作成などの負担に直面し、それが必要な治療を受ける妨げになっているとする研究結果を、米ペンシルベニア大学School of Social Policy and PracticeのMeredith Doherty氏らが、「Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention」に8月30日発表した。医療費の支払いに関わる事務作業の負担が大きい患者は、負担が大きくない患者に比べて、治療が遅れたり、治療を計画通りに進められない可能性の高まることが示されたという。  Doherty氏は、米国の医療システムを利用するには、患者と医療提供者、保険会社の間で一連の複雑なコミュニケーションを取る必要があり、医療費を把握し、請求ミスを修正する責任は、しばしば患者が負うことになっていると話す。同氏は、「医療と資本主義が結び付いている米国では、ヘルスケアの商品やサービスを効果的に利用し、その質を担保するために必要な知識や技術を身に付ける責任を消費者が負うことになっている。これは、医療制度としてはかなり特殊だと言える」と説明する。

手術を頼むなら女性外科医、男性外科医?

 外科領域はいまだに男性中心の世界であるが、患者が手術後に長期にわたる良好な転帰を得たいのなら、女性外科医に執刀してもらうことが鍵であることを示唆する2件の研究結果が報告された。両研究とも、「JAMA Surgery」に8月30日掲載された。  1件目の研究は、トロント大学(カナダ)外科学分野のChristopher Wallis氏らが、2007年1月1日から2019年12月31日の間にカナダのオンタリオ州で実施された25種類の一般的な待機的手術または緊急手術を受けた成人患者116万5,711人を対象に、外科医の性別と術後90日および1年後の転帰(死亡、再入院、合併症の発生)との関連を検討したもの。

XBB.1.5対応コロナワクチン、新規剤形を申請/ファイザー

 ファイザーとビオンテックは9月29日付のプレスリリースにて、オミクロン株XBB.1.5系統対応新型コロナウイルス感染症(COVID-19)1価ワクチンの新規の剤形について、厚生労働省に承認申請したことを発表した。  今回申請した新規の剤形は以下のとおり。 ・12歳以上用:プレフィルドシリンジ製剤(希釈不要) ・5~11歳用:1人用のバイアル製剤(希釈不要) ・6ヵ月~4歳用:3人用のバイアル製剤(要希釈)  また、12歳以上用の1人用バイアル製剤(希釈不要)については2023年9月1日に承認を取得している。  これらの製剤は2024年以降の接種に向けたものであり、2023年9月開始の予防接種法上の特例臨時接種において使用されることはない。

統合失調症とうつ病の治療ガイドライン普及に対するEGUIDEプロジェクトの効果

 国立精神・神経医療研究センターの長谷川 尚美氏らは、「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」を活用することによる、精神疾患の診療ガイドラインに関する教育のリアルワールドにおける効果を検証するため、本研究を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年9月8日号の報告。  EGUIDEプロジェクトは、「統合失調症薬物治療ガイドライン」と「うつ病治療ガイドライン」を日本国内で実践するための全国的なプロスペクティブ研究である。2016~19年、精神科病棟を有する176施設に所属する精神科医782人がプロジェクトに参加し、診療ガイドラインに関する講義を受講した。プロジェクト参加病院の統合失調症患者7,405例およびうつ病患者3,794例を対象に、ガイドラインが推奨する治療の実施割合を、プロジェクト参加者と非参加者から治療を受けている患者間で比較した。プロジェクト参加病院より毎年4~9月に退院する患者の臨床データおよび処方データも分析した。

ICS/LABA使用喘息の40%超が効果不十分、咳嗽に注目を

 日本において2018年に実施された横断的調査National Health and Wellness Survey(NHWS)の結果から、吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合薬(ICS/LABA)に対するアドヒアランスが高い喘息患者であっても、そのうち約40%は、症状をコントロールできていないことが報告されている1)。そこで、長瀬 洋之氏(帝京大学医学部内科学講座 教授)らの研究グループは、ICS/LABAを適切に使用している喘息患者を対象として、喘息が健康関連QOLや労働生産性などに及ぼす影響を調べた。その結果、ICS/LABAで喘息コントロール不十分・不良の患者が45.2%存在し、コントロール良好の患者と比べて健康関連QOLが低下していた。

BRCA遺伝子変異保持者の乳がんリスクは過大評価されている

 BRCA1またはBRCA2遺伝子変異を有する女性は、乳がんの発症リスクが高いことが知られている。しかし、40万人以上の英国成人を対象にした新たな大規模研究で、そのリスクは考えられているほど高くはなく、特に、近親者に乳がん患者がいない女性では大幅に下がる可能性が示唆された。英エクセター大学ゲノム医療分野のLeigh Jackson氏らによるこの研究結果は、「eClinicalMedicine」に9月14日掲載された。

日本人は肥満が重症コロナ転帰不良のリスク因子でない?

 アジア人の肥満は、人工呼吸器を要する重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、転帰不良のリスク因子ではないことを示唆するデータが、国内多施設共同研究の結果として報告された。東京医科大学病院救命救急センターの下山京一郎氏らによる論文が、「Scientific Reports」に7月24日掲載された。  COVID-19パンデミックの比較的初期の段階で、肥満が重症化リスク因子の一つであると報告された。しかし重症化して人工呼吸器を要した患者において、肥満が予後に影響を与えるのかは未解明であった。また、アジア人においては大規模なコホート研究がされておらず、知見がより少ない。これを背景として下山氏らは、国内のCOVID-19治療に関するレジストリである「J-RECOVER」のデータを用いた過去起点コホート研究により、ICUに収容され人工呼吸器を要した患者の転帰に肥満が関与しているか否かを検討した。J-RECOVERは国内66施設が参加して実施され、2020年1~9月に退院したCOVID-19症例4,700件の診療報酬包括評価(DPC)データや治療転帰などの情報が登録されている。

他の母親が実施する心理療法が産後うつ病の症状を軽減

 カナダのオンタリオ州ブラント郡に住むLee-Anne Mosselman-Clarkeさんは、産後のメンタルヘルス危機との闘いがどのようなものかを、身をもって知っている。なぜなら、Mosselman-Clarkeさん自身が、2人の子どもの出産後にそれを経験したからだ。「私には11歳と9歳の子どもがいるが、上の子のときには自分が不安を感じていることに気が付いていなかった。2人目を妊娠したときに初めて、助産師から『産後うつ病を再発するリスクがあるので誰かに相談してほしい』と言われた」と振り返る。

化学物質を扱う労働者のがんリスクの実態

 国内で化学物質を取り扱う職業に就いている労働者は、がんに罹患するリスクが有意に高く、勤務歴が長いほどそのリスクが上昇する可能性を示すデータが報告された。東海大学医学部衛生学公衆衛生学の深井航太氏らの研究によるもので、詳細は「Occupational & Environmental Medicine」に6月9日掲載された。  がんリスクを高める因子として加齢や遺伝素因のほかに、喫煙や飲酒、運動不足といった生活習慣が知られており、がん予防のため一般的には後者のライフスタイル改善の重要性が強調されることが多い。一方、複数の先進国から、全てのがんの2~5%程度は職業に関連するリスク因子が関与して発生しているという研究結果が報告されている。それに対してわが国では、労災認定される職業がんは年間1,000件ほどにとどまり、約100万人とされる1年当たりの全国のがん罹患数に比べて極めて少ない。さらに、労災認定されるがんはアスベスト曝露による肺がんや中皮腫が大半を占めていて、多くの職業がんが見逃されている可能性がある。深井氏らはそのような職業がんの潜在的リスク因子として、化学物質への曝露の影響に着目し、以下の検討を行った。

新型コロナBA.2.86「ピロラ」、きわめて高い免疫回避能/東大医科研

 2023年9月時点、新型コロナウイルスの変異株は、オミクロン株XBB系統のEG.5.1が世界的に優勢となっている。それと並行して、XBB系統とは異なり、BA.2の子孫株のBA.2.86(通称:ピロラ)が8月中旬に世界の複数の地域で検出され、9月下旬時点で、主に南アフリカにおいて拡大し、英国やヨーロッパでも広がりつつある。BA.2.86は、BA.2と比較して、スパイクタンパク質に30ヵ所以上の変異が認められる。世界保健機構(WHO)は、BA.2.86を「監視下の変異株(VUM)」に指定した。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、BA.2.86の流行拡大のリスク、ワクチンやモノクローナル抗体薬の効果を検証し、その結果がThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月18日号に掲載された。

豆乳が認知症リスク低下と関連

 これまでの研究において、ミルク(milk)の摂取は認知機能低下を予防可能であるかが調査されてきた。しかし、その結果は一貫していない。その理由として、これまで研究の多くは、ミルクそれぞれの役割を無視していることが重要なポイントであると考えられる。そこで、中国・中山大学のZhenhong Deng氏らは、各種ミルクの摂取と認知症リスクとの関連を調査した。その結果、豆乳(soy milk)の摂取と認知症(とくに非血管性認知症)リスク低下との関連が認められた。Clinical Nutrition誌オンライン版2023年8月31日号の報告。

HER3-DXd、EGFR-TKIおよび化療耐性のEGFR陽性NSCLCに良好な抗腫瘍活性(HERTHENA-Lung01)/WCLC2023

 抗HER3抗体薬物複合体patritumab deruxtecan(HER3-DXd)のEGFR-TKI、プラチナ化学療法耐性のEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する有効性が発表された。  EGFR‐TKIはEGFR変異のある進行期NSCLCの標準治療であるが、最終的に耐性が発現する。EGFR‐TKI耐性後はプラチナベースの化学療法が用いられるが、その効果は限定的である。  HER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)であるHER3-DXdは、第I相結果でEGFR‐TKI に対する多様な耐性機構を持つEGFR変異陽性NSCLC において、管理可能な安全性と抗腫瘍活性が示されている。

夜型生活は糖尿病リスクを高める

 生活パターンが夜型の女性は、糖尿病になりやすいことを示すデータが報告された。生活習慣関連リスク因子の影響を調整しても、有意な差が認められるという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のSina Kianersi氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に9月12日掲載された。  この研究は、米国で行われている看護師対象研究(Nurses’ Health Study II)のデータを用いて行われた。2009年時点で、がん、心血管疾患、糖尿病の既往歴のなかった45~62歳の女性看護師6万3,676人を2017年まで追跡。アンケートで把握したクロノタイプは、35%が朝型、11%が夜型で、その他は朝型でも夜型でもないと判定されていた。