医療一般|page:16

不眠症と心血管リスクとの関連~メタ解析

 不眠症と心血管疾患(CVD)との関連性は、観察研究により示唆されているが、その原因やメカニズムは明らかになっていない。中国・The First Affiliated Hospital of Xinxiang Medical UniversityのXuejiao Zhang氏らは、不眠症とCVDの潜在的な因果関係を調査するため、システマティックメタレビューおよび観察研究のメタ解析とメンデルランダム化(MR)研究を組み合わせて分析を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2024年8月21日号の報告。  2023年7月11日までに公表された英語論文をPubMed、Web of Science、Embaseより検索した。独立した2人の査読者により論文をスクリーニングし、潜在的なバイアスを最小限に抑えた。観察研究のメタ解析とMR研究により、不眠症と冠動脈疾患(CAD)、心房細動(AF)、心不全(HF)、心筋梗塞(MI)、高血圧(HTN)、脳卒中との関連性を評価した現在のエビデンスをまとめた。

ALK陽性NSCLCにおける術後アレクチニブ、安全性の評価は?(ALINA)/WCLC2024

 切除可能なALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした国際共同第III相試験「ALINA試験」では、術後補助療法としてアレクチニブを用いた場合、プラチナベースの化学療法を用いた場合と比較して、無病生存期間(DFS)を有意に改善したことが報告されている。この結果を基に、本邦でもアレクチニブの術後補助療法での使用が承認されているが、ALINA試験におけるアレクチニブの用量は600mg×2/日であり、本邦における進行・再発時の使用および術後補助療法の承認用量とは異なっている。2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で、堀之内 秀仁氏(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)がALINA試験の安全性について詳細データを発表した。

体重増加による血管への悪影響、年齢で異なる

 歳とともに体重が増えることによる血管への悪影響は60歳未満で顕著であり、60歳を超えると有意なリスク因子でなくなる可能性を示唆するデータが報告された。名古屋大学大学院医学系研究科産婦人科の田野翔氏、小谷友美氏らの研究結果であり、詳細は「Preventive Medicine Reports」7月号に掲載された。  BMIで評価される体重の増加が、動脈硬化性疾患のリスク因子であることは広く知られている。しかし、体重増加の影響力は人によって異なり、体重管理により大きなメリットを得られる集団の特徴は明らかでない。田野氏らは、動脈硬化の指標である心臓足首血管指数(CAVI)とBMIの変化との関連を検討することで、体重増加の影響が大きい集団の特定を試みた。

子どもの成績向上には知能だけでなく非認知能力も必要

 子どもが学業で良い成績を収めるために重要なのは知能だけではないことが、英ロンドン大学クイーン・メアリー校心理学分野のMargherita Malanchini氏らの研究で示された。良い成績を収めるためには、知能に加えて意欲や自己管理能力などの非認知能力も知能と同じくらい重要であることが、遺伝的データで示されたという。この研究結果は、「Nature Human Behaviour」に8月26日掲載された。  Malanchini氏は、「われわれの研究は、知能こそが優れた学業成績の主な要因であるとする長年の仮説に疑問を投げかけるものだ」と言う。その上で、「われわれは、根性や忍耐力、学問への関心、学ぶことに対する価値観などの非認知能力が優れた学業成績を予測する重要な因子であること、さらに、その影響力は、時の経過とともに徐々に強くなることを示す説得力のあるエビデンスを得た」と付け加えている。

片頭痛は最初の兆候が現れたときのケアで抑制可能か

 片頭痛が始まる前の最初の兆候(プロドローム)が現れた時点で治療薬のubrogepantを使用すると、患者はほとんど症状を感じることなく普段通りの生活を送れる可能性のあることが、新たな臨床試験で明らかになった。Ubrogepantは、抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide;CGRP)受容体に結合し、痛みの伝達に重要な役割を果たしているCGRPを遮断することにより効果を発揮する。米アルバート・アインシュタイン医科大学のRichard Lipton氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に8月28日掲載された。

騒音曝露は心臓の健康に影響を及ぼし心筋梗塞後のMACEリスクを高める

 ドイツとフランスの住民を対象にした2件の研究から、都会の騒音は心臓の健康に悪影響を及ぼす可能性のあることが明らかになった。これらの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2024、8月30日~9月2日、英ロンドン)で発表された。  1件目の研究は、ブレーメン心臓血管研究所(ドイツ)のHatim Kerniss氏らが、急性心筋梗塞(MI)によりブレーメン市の心臓センターに入院した50歳以下の患者430人を対象に実施したもの。研究グループが対象者の居住地の騒音レベルを調べたところ、これらの対象者は、同じ地域に居住する一般住民よりも高いレベルの騒音に曝露していることが判明した。また、糖尿病や喫煙などの従来の心血管疾患(CVD)リスク因子に関する評価指標(LIFE-CVD)のスコアから低リスクと判定されるMI患者では、スコアが高い人に比べて騒音レベルが有意に高いことも示された。

HPV感染は男性の生殖機能を損なう可能性

 HPV(ヒトパピローマウイルス)は、ほぼ全例(95%)の子宮頸がんの原因であることから、これまで女性の健康問題と考えられてきた。しかし、男性にもHPVを恐れる理由と予防接種を受けるべき理由のあることが新たな研究で明らかになった。男性が高リスク型のHPVに感染すると、生殖機能が障害される可能性のあることが示されたのだ。国立コルドバ大学(アルゼンチン)化学学部教授のVirginia Rivero氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Cellular and Infection Microbiology」に8月23日掲載された。

人間なら死んでしまうほどの高血糖にコウモリはどう対応している?

 コウモリの中には、人間なら死に至るほどの高血糖状態で生存している種がいる。これは、コウモリがどんな環境でも生き延びられるように適応してきた結果と考えられ、このような変化は糖尿病治療に役立つ可能性があるという。米ストワーズ医学研究所のJasmin Camacho氏らの研究の結果であり、詳細は「Nature Ecology & Evolution」に8月28日掲載された。同氏は、「ある種のコウモリの血糖値が、自然界でこれまで見られた中で最も高いことが分かった。その血糖値は哺乳類にとっては致命的で昏睡を引き起こすレベルだ。われわれは、これまであり得るとは思いもよらなかった事実を目にしている」と語っている。

日本人の高リスクStage I NSCLCへの術前ニボルマブ(POTENTIAL)/ESMO2024

 Stage Iの非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の有用性に関するエビデンスは乏しい。そこで、再発リスクの高いStage IのNSCLC患者を対象として、ニボルマブ単剤による術前補助療法の有用性を検討する国内第II相試験「POTENTIAL試験」が実施された。津谷 康大氏(近畿大学医学部 外科学教室 呼吸器外科部門 主任教授)が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において本試験の結果を発表した。 ・試験デザイン:多施設共同国内第II相試験 ・対象:再発リスクの高いStage I(充実型または充実成分径2~4cm)の日本人NSCLC患者52例(EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子はいずれも陰性) ・治療方法:ニボルマブ(240mg、2週ごと3サイクル)→肺葉切除+ND2a-1またはND 2a-2郭清を術前補助療法最終投与日から10週以内に施行

高悪性度のHR+/HER2-進行乳がん1次治療、化学療法と比べアベマシクリブ+ETが早期ORR良好(ABIGAIL)/ESMO2024

 予後不良の関連因子を有する、悪性度の高いホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する1次治療として、アベマシクリブと内分泌療法(ET)の併用は、化学療法に続いて同併用療法を実施する場合と比較して早期の奏効率(ORR)が高いことが示された。スペイン・Hospital San Juan de Dios de CordobaのJuan De la Haba Rodriguez氏は、非盲検無作為化多施設共同非劣性試験である第II相ABIGAIL試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。

レビー小体型認知症に対する抗認知症薬の10年間フォローアップ調査

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のHong Xu氏らは、レビー小体型認知症(DLB)に対するコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)とメマンチンの使用が、認知機能、主要心血管イベント、死亡率に及ぼす影響を評価した。Alzheimer's & Dementia誌オンライン版2024年8月23日号の報告。  対象は、スウェーデンの認知症レジストリより抽出したDLB患者1,095例。DLB診断90日以内にChEIまたはメマンチンを開始した場合と抗認知症薬を使用しない場合の認知機能の軌跡、主要心血管イベント、死亡リスクに及ぼす影響を評価した。分析には、治療確率逆重み付けを用いた。

インフルワクチン接種と急性腎障害の関連~高齢者での検討

 インフルエンザワクチン接種後に急性腎障害(AKI)を発症した症例が報告されているが、その関連を示す集団レベルのエビデンスはない。韓国・Ewha Womans UniversityのHaerin Cho氏らによる大規模データベースを用いた自己対照ケースシリーズ研究の結果、インフルエンザワクチンの接種は65歳以上の高齢者のAKIリスク低下と関連することが明らかになった。Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌2024年9月号掲載の報告より。  本研究では、韓国疾病管理庁の予防接種登録データと国民健康保険サービスの請求データを組み合わせた大規模データベースが使用された。ワクチン接種時に65歳以上で、2018~19年または2019~20年インフルエンザシーズン(それぞれ9月1日~翌4月30日まで)に、インフルエンザワクチンを1回以上接種し、接種後にAKIで入院した患者が対象。腎疾患の既往がある症例は除外された。

セマグルチドを使用しても自殺リスクは上昇せず

 肥満症治療薬であるGLP-1受容体作動薬のセマグルチドの人気が急上昇する一方で、その潜在的な副作用に対する懸念も高まりを見せている。しかし、新たな研究により、そのような懸念の一つが払拭された。米ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院ペン自殺予防センター所長のGregory Brown氏らによる研究で、セマグルチドの使用により抑うつ症状や自殺念慮、自殺行動のリスクは増大しないことが示されたのだ。セマグルチドを有効成分とするオゼンピックやウゴービを製造するノボ ノルディスク社の資金提供を受けて実施されたこの研究の詳細は、「JAMA Internal Medicine」に9月3日掲載された。  2型糖尿病治療薬として開発されたセマグルチドは、臨床試験で肥満症治療薬としての有効性が明らかにされて以降、大きな注目を集め、今や医師が患者に週1回のセマグルチドの皮下注射を処方することは珍しいことではなくなっている。実際に、2023年には500万人もの米国人がセマグルチドを処方されており、そのような人の10人に4人は体重管理のために同薬を使用しているという。

愛情に関わる脳領域を科学的に証明

 愛情は脳のどこに存在するのだろうか。また何に対する愛情が最も強いのだろうか。機能的MRI(fMRI)を用いた新たな研究で、その答えが示唆された。それによると、愛情を感じているときには主に社会的手掛かりの処理に関連する脳領域が活性化し、最も強い脳活動を引き起こしたのは子どもに対する愛情であったという。アアルト大学(フィンランド)のParttyli Rinne氏らによるこの研究の詳細は、「Cerebral Cortex」に8月26日掲載された。  この研究は、6つの対象(恋人や配偶者、自分の子ども、友人、見知らぬ人、ペット、自然)に対する愛情に関する短い物語を聞き、それぞれについてじっくり考えている間の脳活動をfMRI検査により調査したもの。対象は、1人以上の子どもを持ち、愛情を注ぐ配偶者や恋人などがいることを報告した、28〜53歳の成人55人(平均年齢40.3歳、女性29人)だった。55人中27人はペットを飼っていた。

オシメルチニブ耐性NSCLCへのamivantamab+化学療法、第2回OS中間解析(MARIPOSA-2)/ESMO2024

 オシメルチニブ単剤療法で病勢進行が認められたEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、amivantamab+化学療法±lazertinibの併用療法は、化学療法単独と比べて無増悪生存期間(PFS)を改善したことが、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA-2試験」で報告されている。また、同時に実施された全生存期間(OS)の第1回中間解析において、amivantamab+化学療法の併用療法はOSも良好な傾向にあった。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において、英国・Royal Marsden HospitalのSanjay Popat氏がOSの第2回中間解析の結果を発表した。

未治療TN乳がんへのカピバセルチブ、化学療法への上乗せ効果示さず(CAPItello-290)/ESMO2024

 切除不能な局所進行または転移を有する未治療のトリプルネガティブ(TN)乳がん患者を対象に、1次治療としてのカピバセルチブ+パクリタキセル併用療法の有効性および安全性を、プラセボ+パクリタキセルと比較した第III相CAPItello-290試験の結果、全生存期間(OS)は有意に改善しなかったものの、無増悪生存期間(PFS)の改善は認められたことを、米国・UT Southwestern Medical CenterのHeather L. McArthur氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表した。

局所進行直腸がん、TNT+非手術的管理後の遠隔転移とctDNAによる予後予測(NO-CUT)/ESMO2024

 局所進行直腸がんでは、術前に化学療法や放射線療法を集中的に行って腫瘍縮小を最大限に図り、局所制御と遠隔転移のリスクを低減するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)が登場し、世界的な標準治療となりつつある。TNT後に臨床学的完全奏効(cCR)が得られた患者では非手術的管理も検討され、その後の局所転移は19~34%程度と報告されている。非手術的管理後の遠隔転移率と、ctDNA解析によるTNT後の奏効率のバイオマーカー探索を目的とした多施設単群第II相NO-CUT試験が行われ、イタリア・Niguarda Cancer CenterのAlessio Amatu氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)のPresidential Symposiumで初回の結果報告をした。

オンコマインDx、EGFRエクソン20挿入変異肺がんに対するamivantamab+化学療法のコンパニオン診断として承認/サーモフィッシャ

 サーモフィッシャーサイエンティフィックは2024年9月10日、次世代シーケンシングコンパニオン診断システム「オンコマインDx Target Test マルチCDxシステム(オンコマインDx)」に関して、Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)が申請中の「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異を有する手術不能又は再発非小細胞肺癌に対するアミバンタマブと化学療法の併用療法」を対象としたコンパニオン診断システムとして、一部変更承認を取得したことを発表した。

精神疾患患者の認知機能と自殺リスクとの関連~メタ解析

 うつ病や双極症などの治療可能な精神疾患は、自殺リスク因子の大部分を占めており、これらの患者は神経認知機能障害を伴うことが少なくない。カナダ・トロント大学のGia Han Le氏らは、統合失調症感情障害、双極症、うつ病患者における認知機能と自殺念慮/自殺企図との関連を調査した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2024年8月19日号の報告。  2024年4月までに公表された研究をPubMed、Ovid、Scopusのデータベースよりシステマティックに検索した。認知機能と自殺念慮/自殺企図との関連についてエフェクトサイズが報告された適格研究を、ランダム効果モデルを用いてプールした。

米国の2型糖尿病有病率が過去10年で2割近く上昇

 米国では過去10年間で2型糖尿病有病率が約20%上昇したとする論文が、「Diabetes, Obesity and Metabolism」に7月18日掲載された。論文の筆頭著者である、米ジョージア大学のSulakshan Neupane氏は同大学発のリリースの中で、「米国では糖尿病患者数が日々増加していて、今後数年間でさらに増加するだろう。糖尿病のために発生する経済的負担は、直接的な医療費のほかに生産性の低下などの間接的なものも含めれば、約4120億ドルに上る。既に莫大な額だが、糖尿病患者の増加を背景に、今後さらに増大するだろう」との予測を述べている。