医療一般|page:42

切除不能StageIIIのNSCLCにおけるCRTとデュルバルマブの同時併用の成績(PACIFIC-2)/ELCC2024

 切除不能StageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)におけるデュルバルマブと化学放射線療法(CRT)の併用は主要評価項目を達成できなかった。  切除不能StageIIIのNSCLCに対するCRT+デュルバルマブ地固め療法は、第III相PACIFIC試験において、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)の持続的な改善をもたらした。現在、PACIFICレジメンは切除不能なStageIIIのNSCLCにおける標準治療となっている。PACIFIC-2は同対象に対して、PACIFICレジメンの初回治療をデュルバルマブ+CRTとした治療シークエンスを評価する第III相試験である。欧州肺がん学会(ELCC2024)で最終結果が発表された。

日本人の遅発性ジスキネジアに対するバルベナジンの有効性と安全性

 アジア人精神疾患患者における遅発性ジスキネジア(TD)治療に対するバルベナジンの有効性および安全性が、患者の基礎精神疾患により異なるかを調査するため、田辺三菱製薬のMieko Nagano氏らは、多施設共同第II/III相ランダム化二重盲検試験の事後分析を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2024年3・4月号の報告。  多施設共同第II/III相ランダム化二重盲検試験であるJ-KINECT試験のデータを分析した。J-KINECT試験は、6週間のプラセボ対照期間とその後の42週間の延長試験で構成されており、日本人TD患者に対しバルベナジン40mgまたは80mgを1日1回投与した。統合失調症/統合失調感情障害患者(SCHZ群)と双極性障害/うつ病患者(MOOD群)において、異常不随意運動評価尺度(AIMS)合計スコアとTDの臨床全般改善度(CGI-TD)スコアのベースラインからの変化、および治療中に発生した有害事象の発生率を比較した。

怒りの感情をぶちまけても効果なし

 他人に不平や不満をぶつけるのは怒りを抑える効果的な方法ではないようだ。米バージニア・コモンウェルス大学のSophie Kjaervik氏とBrad Bushman氏による研究で、怒りの要因を吐き出すことで、そのときは気持ちが晴れるかもしれないが、それによって怒りの感情が弱まるわけではなく、それよりも深呼吸やマインドフルネス、瞑想、ヨガなどのストレス低減法の方がはるかに効果的であることが示唆された。この研究の詳細は、「Clinical Psychology Review」4月号に掲載された。  Bushman氏は、「怒りの感情は発散させるべきという定説を打ち壊すことが極めて重要だと思う。怒りの発散は良いアイデアのように思うかもしれないが、カタルシス理論を支持する科学的根拠は一つもない」と話している。カタルシス理論とは、ネガティブな感情やストレスの発散が心理的な安定やストレスの軽減につながるという考え方だ。

コロナよりもインフルエンザの方が脳への影響が大きい

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)よりもインフルエンザの方が、神経疾患により病院で治療を受ける可能性の高いことが、COVID-19またはインフルエンザにより入院した患者を追跡した新たな研究で明らかになった。米ミシガン大学アナーバー校のBrian Callaghan氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に3月20日掲載された。Callaghan氏は、「われわれが予測していた通りの結果ではなかったが、COVID-19で入院しても、インフルエンザで入院した場合と比べて、一般的な神経疾患に対する治療が増えるわけではないことが分かった点では心強い結果だった」と同大学のニュースリリースの中で述べている。

ホモ接合体家族性高コレステロール血症治療薬、エヴキーザ発売/ウルトラジェニクス

 Ultragenyx Japan(ウルトラジェニクスジャパン)は2024年4月17日付のプレスリリースで、ホモ接合体家族性高コレステロール血症(HoFH)に対する治療薬「エヴキーザ点滴静注液345mg(一般名:エビナクマブ[遺伝子組換え]、以下エヴキーザ)」の販売を同日より開始したことを発表した。  HoFHは、きわめてまれな遺伝性疾患であり、重度の高コレステロール血症(血清総コレステロール値450mg/dL超)により、早発性の心血管系疾患や未治療の患者における若年死亡を引き起こすことがある。わが国では、HoFHは指定難病の1つとされ、2022年度の特定医療費(指定難病)受給者証保持者数は全国で398例と報告されている。

肺炎診療GL改訂~NHCAPとHAPを再び分け、ウイルス性肺炎を追加/日本呼吸器学会

 2024年4月に『成人肺炎診療ガイドライン2024』が発刊された。2017年版では、肺炎のカテゴリー分類を「市中肺炎(CAP)」と「院内肺炎(HAP)/医療介護関連肺炎(NHCAP)」の2つに分類したが、今回の改訂では、再び「CAP」「NHCAP」「HAP」の3つに分類された。その背景としては、NHCAPとHAPは耐性菌のリスク因子が異なるため、NHCAPとHAPを1群にすると同じエンピリック治療が推奨され、NHCAPに不要な広域抗菌治療が行われやすくなることが挙げられた。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を経て、ウイルス性肺炎の項目が設定された。第64回日本呼吸器学会学術講演会において、本ガイドライン関するセッションが開催され、進藤 有一郎氏(名古屋大学医学部附属病院 呼吸器内科)がNHCAPとHAPの診断・治療のポイントや薬剤耐性(AMR)対策の取り組みについて解説した。また、ウイルス性肺炎に関して宮下 修行氏(関西医科大学 内科学第一講座 呼吸器感染症・アレルギー科)が解説した。

精神疾患患者の不眠症と外来継続率との関連

 睡眠は、身体的および精神的な健康を維持するうえで重要な役割を果たしている。精神科を受診する外来患者は、不眠症を呈していることが多いが、各精神疾患における不眠症と抑うつ症状との関連は、依然として不明なままであった。また、不眠症と外来治療継続との関係についての研究も十分とはいえない。昭和大学の鎌田 行識氏らは、さまざまな精神疾患患者における抑うつ症状と不眠症には強い相関があると仮説を立て、不眠症が外来受診の継続率に及ぼす影響を評価した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2024年3月27日号の報告。

米国のインターンの半数以上がセクハラを経験

 #MeToo運動は、医療従事者のセクシュアルハラスメント(以下、セクハラ)の抑制にはほとんど役立っていないようだ。研修医最初の1年に当たるインターン期間中に半数以上がセクハラを受けていたとする研究結果が、米ミシガン大学神経科学研究所のElena Frank氏らにより、「JAMA Health Forum」に3月22日報告された。女性では4人に3人近く、男性では3人に1人以上のインターンがセクハラを受けたことが明らかになったという。研究グループが「JAMA Network Open」2023年12月26日に発表した研究でも、医学校や病院は、あらゆる形態のセクハラに関してより広範な教育を行い、対処する必要があることが示されていた。

認知症患者と介護者にとって重要なのは社会的なつながり

 認知症患者とその介護者が健康を保つためには活発な社会生活が必要であるが、認知症患者もその介護者も、患者の認知症が進行するにつれて社会的なつながりが失われていくことが、新たな研究で明らかにされた。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)医学部のAshwin Kotwal氏らによるこの研究の詳細は、「The Gerontologist」4月号に掲載された。  Kotwal氏は、「社会的なアンメットニーズは生活の質(QOL)に悪影響を及ぼし、うつ病や心血管疾患などの健康問題を引き起こし、医療費の増加や早期死亡につながる可能性がある」と述べる。そして、「先行研究では、社会的孤立度が高い高齢者は、介護施設に入所するオッズが2倍以上になることが示されている」と説明している。

短時間睡眠は糖尿病ハイリスク

 睡眠時間が6時間未満の人は、たとえ健康的な食習慣であったとしても、2型糖尿病の発症リスクが高いことを示すデータが報告された。ウプサラ大学(スウェーデン)のChristian Benedict氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に3月5日掲載された。論文の上席著者である同氏は、「われわれの研究は、睡眠不足による2型糖尿病発症リスクの増大を健康的な食習慣によって抑制可能かという視点で行った、初めての研究だ」としている。  この研究には、英国の一般住民対象の大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが用いられた。24万7,867人(平均年齢55.9±8.1歳、女性52.3%、BMI26.6±3.7、HbA1c5.4±2.5%)の睡眠時間および食習慣と2型糖尿病発症リスクとの関連を検討した。睡眠時間については7~8時間の群(全体の75.5%)、6時間の群(19.8%)、5時間の群(3.9%)、3~4時間の群(0.8%)という4群に分類。食習慣については、赤肉、加工肉、果物、野菜、魚の摂取量に基づき、0点(最も非健康的)から5点(最も健康的)の範囲にスコア化した。

食事からのメラトニン摂取、肝がんのリスク低下と関連

 食事からのメラトニン摂取と肝がん罹患との関連を評価する研究が、3万人以上の日本人を対象に行われた。その結果、メラトニンの摂取量が多いほど肝がんのリスクが低下することが明らかとなった。岐阜大学大学院医学系研究科疫学・予防医学分野の和田恵子氏らによる研究結果であり、「Cancer Science」に2月14日掲載された。  メラトニンは、概日リズムを調整し、睡眠を促す内因性ホルモンである。主に脳の松果体で生成されるが、体内組織に広く分布し、抗酸化、抗炎症、免疫調節などにも関与している。メラトニンは肝臓でも合成・代謝され、細胞保護や発がん予防などの作用があることも示されている。

ミドル~シニアの女性臨床医が直面するジェンダーの障壁とは?

 米国のミドルからシニアクラスの女性臨床研究医を対象とした定性的インタビュー調査によると、アカデミックな医学界は男性中心的な制度であり、構造的不公平が女性のキャリア全体にわたって持続し、キャリアアップにおけるジェンダー格差のパターンに陥っていることが示唆された。本研究は、米国・ミシガン大学のLauren A. Szczygiel氏らによって実施された。JAMA Network Open誌2024年4月11日号に掲載。  本研究は、ミドルからシニアのキャリアを有する女性臨床研究医の日常的な職業経験において、キャリアを通じて経験したジェンダーに関連する障壁についての認識を調査することを目的とした。2006~09年に米国国立衛生研究所の若手臨床研究医のキャリア支援のグラントであるK08またはK23を受賞した女性臨床研究医で、調査に同意した60人のうち、無作為選択的サンプリングで31人が選ばれた。2022年1~5月に半構造化面接を実施し、テーマ分析のフレームワークアプローチを用いて2023年8~10月に解析した。

レビー小体型認知症、受診診療科により治療ニーズが異なる

 大阪大学の池田 学氏らは、レビー小体型認知症(DLB)患者とその介護者の治療ニーズおよびその治療ニーズに対する主治医の認識が、患者が受診している診療科により異なるかを調査した。Alzheimer's Research & Therapy誌2024年3月14日号の報告。  多施設共同横断的観察調査研究のサブ解析を実施した。患者が受診している診療科に応じて、精神科群、老年内科群、神経内科群に分類した。患者と介護者の治療ニーズを「最も苦痛を感じている症状」と定義し、それぞれの回答頻度をまとめた。

肺炎診療GL改訂~市中肺炎の改訂点は?/日本呼吸器学会

 2024年4月に『成人肺炎診療ガイドライン2024』が発刊された。2017年版からの約7年ぶりの改訂となる。第64回日本呼吸器学会学術講演会において、本ガイドライン関するセッションが開催され、岩永 直樹氏(長崎大学病院 呼吸器内科)が市中肺炎(CAP)に関する改訂のポイントを解説した。  CAPへの初期の広域抗菌薬投与や抗MRSA薬のエンピリックな使用は予後を改善せず、むしろ有害であるという報告がある。そのため、エンピリックな耐性菌カバーは予後を改善しない可能性がある。そこで、今回のガイドラインでは、非定型肺炎の鑑別を大切にするという方針を前版から継承し、CAPのエンピリック治療薬の考え方を示している。そこでは、外来患者や一般病棟入院患者では抗緑膿菌薬や抗MRSA薬は使用せず、これらの薬剤は重症例や免疫不全例に検討することとしている(詳細は本ガイドラインp.34図4を参照されたい)。

あなたの睡眠のタイプは?四つの睡眠パターンを特定

 平日は睡眠不足で週末に寝だめしたり、あるいは一晩中寝返りを打って過ごし、朝は頭がはっきりしないといったことがないだろうか。それとも、睡眠時間は十分に確保できているだろうか。米ペンシルベニア州立大学、睡眠・ストレス・健康(STEALTH)研究室のSoomi Lee氏らが、米国の全国調査参加者約3,700人を対象に、およそ10年の間隔を空けた二つの時点のデータを分析したところ、睡眠習慣は四つの異なるパターンに分類できることが明らかになった。この研究結果は、「Psychosomatic Medicine」に2月16日掲載された。  Lee氏は、「睡眠は、毎日繰り返し行う行動である。より良い睡眠習慣は、社会的な関係や仕事のパフォーマンスの向上から、長期的な健康行動や健康的な老化の促進まで、多くの重要な違いを生み出すことにつながる」と話す。

健康的な食事による生物学的な老化の遅れが認知症予防に

 科学者たちはこれまで、健康的な食生活を送っている人には年を取っても脳の健康を維持している人が多いことは知っていたが、その理由は不明だった。このほど、その答えとなり得る研究結果が発表された。この研究によると、健康的な食事は生物学的な老化を遅らせ、それが脳機能の保護に役立っている可能性があるという。論文の筆頭著者である、米コロンビア大学アルツハイマー病・加齢脳タウブ研究所のAline Thomas氏は、「われわれの研究では、より緩徐な老化速度が、健康的な食事と認知症リスク低下との関係の一部を媒介していることが示唆された」と述べている。この研究の詳細は、「Annals of Neurology」に2月26日掲載された。  Thomas氏らは今回、健康的な食事は生物学的な老化を遅らせ、それにより認知症の発症リスクが低下するという仮説を立て、フラミンガム心臓研究のデータを用いてこの仮説を検討した。フラミンガム心臓研究は、3世代のコホートを対象に1948年に開始された継続中の研究である。今回の研究では、1971年に開始された第二世代コホートから、60歳以上で認知症がなく、食事、エピジェネティクス、および追跡データのそろう1,644人(平均年齢69.6歳、女性54%)が対象とされた。これらの対象者は、4〜7年おきに9回の追跡調査を受けており、調査ごとに身体診察を受け、ライフスタイルに関連した質問票へ回答するとともに、血液採取と、1991年以降は神経認知テストも受けていた。5回目(1991〜1995年)から8回目(2005〜2008年)の調査時の食事内容から、MIND(マインド)食の遵守状況の指標となるMIND食スコアが算出された。

心筋細胞障害により心筋梗塞を4つの病期に分類

 心筋梗塞(MI)は心筋細胞障害に基づいて4つの病期に分類され、最終的には心筋細胞死と微小血管死に至るとした専門家の共同声明が、「Canadian Journal of Cardiology(CJC)」に10月28日掲載された。  Northern Ontario School of Medicine University(カナダ)のAndreas Kumar氏らは、再灌流療法を伴うアテローム性MIに関する数十年にわたるデータに基づいた、カナダ心臓血管協会の急性MI分類について概説した。  同分類において、段階的に悪化する心筋細胞障害の4つの病期が特定された。すなわち、(1)心筋細胞壊死がないまたは最小限である防がれた心筋梗塞(aborted MI)、(2)明らかな心筋細胞壊死があるが微小血管障害はないMI、(3)心筋細胞壊死と微小血管機能障害に起因する微小血管閉塞(no-reflow)、(4)心筋細胞と微小血管の壊死による再灌流出血である。障害が進行すると、リモデリングが悪化し、臨床上の有害転帰が増加することが、臨床研究で認められている。微小血管障害は特に重要であり、出血性MIは梗塞の拡大と機械的合併症のリスクにつながる。

インスリン以外の血糖降下薬も先天奇形のリスクでない

 インスリン以外の血糖降下薬を妊娠中に使用しても、先天奇形リスクの有意な上昇は生じない可能性を示唆するデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のCarolyn E. Cesta氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に12月11日掲載された。  世界的に晩婚化が進み、妊娠時に2型糖尿病を発症している女性が増加している。2型糖尿病の血糖管理には一般的にまず非インスリン製剤が選択されるが、妊娠中は胎児の奇形リスクの懸念などのため、通常、催奇形性のないインスリン製剤が用いられる。しかし、計画妊娠によらずに妊娠が成立した場合には、妊娠に気付くまでの妊娠初期に、非インスリン製剤に曝露されることになる。このような場合に胎児の先天奇形リスクがどのように変化するのかは、これまで明らかにされていない。以上を背景としてCesta氏らは、妊娠成立時から妊娠初期の非インスリン製剤の使用が、先天性の大奇形(major congenital malformations;MCM)のリスク上昇と関連しているかどうかを検討した。

PNHに対するC5阻害薬と併用する世界初の経口薬、ボイデヤ発売/アレクシオン

 アレクシオンファーマは2024年4月17日、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療薬としてボイデヤ(一般名:ダニコパン)を同日より発売開始したことを発表した。  PNHは、血管内溶血として知られる血管内の赤血球破壊と、白血球および血小板の活性化を特徴とするまれで重度の血液疾患であり、血栓症を引き起こし、臓器障害や早期死亡に至る可能性がある。C5阻害薬のユルトミリス(一般名:ラブリズマブ[遺伝子組換え])またはソリリス(一般名:エクリズマブ[遺伝子組換え])は、補体C5を阻害して終末補体を抑制することで症状および合併症を軽減し、PNH患者の生存率への影響が期待できる薬剤である。

統合失調症における安静状態と作業状態の機能的接続異常

 統合失調症の主な病理学的仮説として、聴覚処理障害と大脳ネットワーク内の接続不全が挙げられる。しかし、多くの神経画像研究では、統合失調症患者の安静状態またはタスクに関連した機能接続障害に焦点が当てられている。九州大学の高井 善文氏らは、統合失調症患者の聴覚定常状態応答(ASSR)タスク中の血中酸素濃度依存性(BOLD)シグナル、安静状態およびASSRタスク中の機能的接続性、安静状態とASSRタスクの状態変化について、検討を行った。The European Journal of Neuroscience誌オンライン版2024年3月5日号の報告。