ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:5

SGLT2阻害薬による長期治療、2型DMの認知症予防に有効/BMJ

 年齢40~69歳の2型糖尿病患者の治療において、DPP-4阻害薬と比較してSGLT-2阻害薬は認知症の予防効果が高く、治療期間が長いほど大きな有益性をもたらす可能性が、韓国・Seoul National University Bundang HospitalのAnna Shin氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年8月28日号に掲載された。  研究グループは、中高年の2型糖尿病患者における認知症リスクと、SGLT-2阻害薬およびDPP-4阻害薬との関連を比較する目的で住民ベースのコホート研究を行った(韓国保健産業振興院[KHIDI]の助成を受けた)。

重症インフルエンザに抗ウイルス薬は有効か/Lancet

 重症インフルエンザの治療に最適な抗ウイルス薬は未だ不明とされる。中国・蘭州大学のYa Gao氏らは、重症インフルエンザの入院患者において、標準治療やプラセボと比較してオセルタミビルおよびペラミビルは、入院期間を短縮する可能性があるものの、エビデンスの確実性は低いことを示した。研究の成果は、Lancet誌2024年8月24日号で報告された。  研究グループは、世界保健機関(WHO)のインフルエンザ診療ガイドラインの改訂を支援するために、重症インフルエンザ患者の治療における抗ウイルス薬の有用性を評価する目的で、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(WHOの助成を受けた)。

鉤虫症の治療、emodepside vs.アルベンダゾール/Lancet

 タンザニアで実施された第IIb相無作為化二重盲検実薬対照優越性試験において、カルシウム依存性カリウム(SLO-1)チャネルに作用し寄生虫の麻痺と咽頭ポンピング運動の阻害を引き起こすemodepsideは、アルベンダゾールと比較し高い有効性が認められた。スイス熱帯公衆衛生研究所のLyndsay Taylor氏らが報告した。ただし、emodepsideの安全性について、観察された有害事象はおおむね軽度であったものの、アルベンダゾールと比較して発現頻度が高かった。結果を踏まえて著者は、「emodepsideが有望な駆虫薬の候補であることが確固たるものとなったが、安全性と有効性のバランスを考慮する必要がある」とまとめている。

ホットフラッシュに新規NK-1,3受容体拮抗薬が有効/JAMA

 選択的ニューロキニン(NK)-1,3受容体拮抗薬elinzanetantは、中等度~重度の更年期血管運動神経症状(vasomotor symptoms:VMS)に対し有効で、忍容性も良好であった。米国・バージニア大学のJoAnn V. Pinkerton氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「OASIS 1試験」および「OASIS 2試験」の結果を報告した。更年期VMSに対する安全で効果的な非ホルモン治療が必要とされていた。JAMA誌オンライン版2024年8月22日号掲載の報告。  OASIS 1試験およびOASIS 2試験は、同一の試験方法により米国および欧州の異なる施設で並行して実施された(OASIS 1試験は2021年8月27日~2023年11月27日に米国、欧州、イスラエルの77施設、OASIS 2試験は2021年10月29日~2023年10月10日に米国、カナダ、欧州の77施設)。

がん関連適応の肝切除、トラネキサム酸で周術期合併症が増加/JAMA

 がん関連適応の肝切除を受ける患者において、トラネキサム酸は出血または輸血を減少させず周術期合併症を増加させることが示された。カナダ・Sunnybrook Health Sciences CentreのPaul J. Karanicolas氏らHPB CONCEPT Teamが、多施設共同無作為化プラセボ対照試験「HeLiX試験」の結果を報告した。トラネキサム酸は多くの種類の手術で出血および輸血を減少させることが知られているが、がん関連適応の肝切除を受ける患者における有効性は明らかにされていなかった。JAMA誌オンライン版2024年8月19日号掲載の報告。

高用量タンパク質投与、人工呼吸器装着患者には無益/Lancet

 人工呼吸器を要する重症患者への高用量タンパク質投与は標準量タンパク質投与と比較して、健康関連QOLを悪化させ、集中治療室(ICU)入室後180日間の機能的アウトカムを改善しなかった。オランダ・マーストリヒト大学のJulia L. M. Bels氏らPRECISe study teamが、同国とベルギーで実施した「PRECISe試験」の結果を報告した。先行研究で、重症患者へのタンパク質投与量の増加が、筋萎縮を緩和し長期的アウトカムを改善する可能性が示されていた。Lancet誌オンライン版2024年8月17日号掲載の報告。  PRECISe試験は、オランダの5病院とベルギーの5病院で行われた研究者主導の多施設共同並行群間二重盲検無作為化比較試験である。機械的人工呼吸器を装着した重症患者への経腸栄養によるタンパク質投与について、高用量(すわなち1日当たり2.0g/kg)が標準量(同1.3g/kg)と比較して、健康関連QOLと機能的アウトカムを改善するかどうかを評価した。試験組み入れ基準は、ICU入室後24時間以内に侵襲的人工呼吸器による管理を開始し、同装着期間が3日以上と予想されることとした。除外基準は、経腸栄養禁忌、瀕死状態、BMI値18未満、透析不要コードの腎不全、または肝性脳症であった。

幻覚成分シロシビンの抑うつ作用を抗うつ薬と比較/BMJ

 抑うつ症状に対するサイケデリックス薬による介入のうち、高用量のシロシビンの投与を受けた患者は、抗うつ薬(エスシタロプラム)の試験においてプラセボを投与された患者と比較して、抑うつ症状の改善において良好な反応を示すものの効果量は小さいことが、台湾・義守大学のTien-Wei Hsu氏らの調査で示された。研究の詳細はBMJ誌2024年8月21日号に掲載された。  研究グループは、抑うつ症状を有する患者において、4つのサイケデリックス薬またはエスシタロプラム(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を用いた経口単剤療法の有効性と受容性を、盲検化の失敗による効果の過大評価の可能性を考慮して比較することを目的に、文献の系統的レビューとベイズ流ネットワークメタ解析を行った(台湾国家科学技術委員会[NSTC]の助成を受けた)。

既治療の淡明細胞型腎細胞がん、belzutifan vs.エベロリムス(LITESPARK-005)/NEJM

 免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬による治療歴のある進行淡明細胞型腎細胞がん患者の治療において、エベロリムスと比較して低酸素誘導因子2α阻害薬belzutifanは、無増悪生存率と客観的奏効率を有意に改善し、新たな安全性シグナルの発現はみられないことが、米国・ダナファーバーがん研究所のToni K. Choueiri氏らLITESPARK-005 Investigatorsが実施した「LITESPARK-005試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年8月22・29日号で報告された。  LITESPARK-005試験は、世界6地域(日本を含む)の147施設で実施した非盲検無作為化実薬対照第III相試験であり、2020年3月~2022年1月の期間に参加者の無作為化を行った(Merck Sharp and Dohmeの助成を受けた)。

生後1~11ヵ月に限定したアジスロマイシン配布で死亡率は改善するか/NEJM

 ニジェールの生後1~59ヵ月の小児へのアジスロマイシンの配布により、全死因死亡率が有意に低下し、配布を生後1~11ヵ月の乳児に限定した介入と比較して有効性が高いことが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のKieran S. O'Brien氏らが実施した「AVENIR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年8月22・29日号に掲載された。  AVENIR試験は、抗菌薬耐性を防止するためにアジスロマイシンの配布を生後1~11ヵ月に制限する世界保健機関(WHO)の勧告の検証を目的に、ニジェールで実施した適応型クラスター無作為化試験であり、2020年11月~2023年7月に参加地域のスクリーニングを行った(ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成を受けた)。

NCCNガイドライン推奨の分子標的薬、臨床的有用性は?/BMJ

 精密医療に基づく腫瘍学(precision oncology)は、とくに進行性の治療抵抗性症例に対するがん治療を変革しつつあるが、多くの遺伝子変異の臨床的重要性は依然として不明とされる。米国・ハーバード大学医学大学院のAriadna Tibau氏らは、National Comprehensive Cancer Network(NCCN)が推奨する分子標的とゲノム標的がん治療薬を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の2つの枠組みを用いて評価し、固形がんに対するゲノムに基づく治療薬のうち、患者に高い臨床的有益性をもたらす可能性があるのは約8分の1で、約3分の1は有望ではあるが実質的な有益性は証明されていないことを示した。研究の詳細は、BMJ誌2024年8月20日号で報告された。

子宮移植、成功率は70%で全例生児出産/JAMA

 子宮移植は技術的に可能であり、移植子宮生着後の生児出産率は高かった。米国・ベイラー大学医療センターのGiuliano Testa氏らが、「Dallas Uterus Transplant Study:DUETS試験」の結果を報告した。有害事象は一般的で、医学的および外科的リスクはドナーだけでなくレシピエントにも影響を及ぼしたが、現在までのところ出生児に先天異常や発育遅延は発生していないという。絶対的子宮性不妊症は500人に1人の割合で発生し、生殖医療における障壁となっているが、子宮移植により妊娠・出産できる可能性が示されている。JAMA誌オンライン版2024年8月15日号掲載の報告。  研究グループは、2016年9月14日~2019年8月23日に子宮移植を行った。レシピエントの適格基準は、絶対的子宮性不妊症で、少なくとも1つの卵巣は機能しており、体外受精を受ける意思があり、医学的・心理学的基準を満たした20~40歳の女性であった。ドナーは、25~65歳で少なくとも1回の正期産の出産経験があり、医学的・心理学的合併症がないこととした。

ドナー心臓の低温酸素化灌流で心臓移植は改善するか/Lancet

 心臓移植において、ドナー心臓の持続的低温酸素化機械灌流(hypothermic oxygenated machine perfusion:HOPE)は単純冷却保存(static cold storage:SCS)と比較して、主要エンドポイントに有意差はなかったものの、1次エンドポイントのイベントリスクを44%減少させ、移植後合併症が減少するとともに原発性移植片機能不全(primary graft dysfunction:PGD)の低減に有益であることが示唆された。ベルギー・University Hospitals LeuvenのFilip Rega氏らNIHP2019 investigatorsが、欧州8ヵ国(ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、英国、スペイン、オーストリア、スウェーデン)の移植センター15施設で実施した国際共同無作為化非盲検比較試験「NIHP2019試験」の結果を報告した。SCSは、ドナー心臓保存のゴールドスタンダードであるが、虚血、嫌気的代謝、臓器損傷を伴い、患者の合併症と死亡につながっていた。著者は、「HOPEによるドナー心臓の保存は、移植片保存に関連する既存の課題と、ドナーおよび心移植レシピエントにおける複雑性の増大に対処するもので、今後の研究によりHOPEの有益性がさらに明らかになるであろう」とまとめている。Lancet誌2024年8月17日号掲載の報告。

医師の自殺率は高い?男女で違いは?/BMJ

 オーストリア・ウィーン医科大学のClaudia Zimmermann氏らは、医師の自殺による死亡を一般集団と比較した研究について、システマティックレビューおよびメタ解析を行い、男性医師と女性医師の年齢調整自殺率比は時間の経過と共に減少したが、女性医師では高い水準のままであったことを報告した。著者は、「メタ解析に組み込まれた研究は主に欧州、米国、オーストラリア・ニュージーランドで行われたもので、これら以外の地域での研究が乏しいという限界はあるが、今回の結果は、とくに女性医師および高リスク群における、自殺による医師死亡の研究と予防について継続的な努力が求められることを示唆している」とまとめている。BMJ誌2024年8月21日号掲載の報告。

コロナ後遺症、6~11歳と12~17歳で症状は異なるか/JAMA

 米国・NYU Grossman School of MedicineのRachel S. Gross氏らは、RECOVER Pediatric Observational Cohort Study(RECOVER-Pediatrics)において、小児(6~11歳)と思春期児(12~17歳)の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の罹患後症状(postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC)を特徴付ける研究指標を開発し、これらの年齢層で症状パターンは類似しているものの区別できることを示した。これまでPASC(またはlong COVID)に関する研究のほとんどは成人を対象としたもので、小児におけるPASCの病態についてはあまり知られていなかった。JAMA誌オンライン版2024年8月21日号掲載の報告。

ナロキソン併用で、オピオイド使用障害妊婦と新生児の転帰改善の可能性/JAMA

 米国では過去20年間に、一般市民におけるオピオイド使用障害の増加に伴い、妊婦での本疾患の発生も著明に増えているが、併用薬の周産期の安全性データが不十分であるためブプレノルフィンの単独投与が推奨されている。米国・ハーバード大学医学大学院のLoreen Straub氏らは、妊娠初期のブプレノルフィン単剤投与と比較してブプレノルフィンとナロキソンの併用投与は、新生児および母体の転帰が同程度か、場合によってはより良好であり、オピオイド使用障害の安全な治療選択肢であることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年8月12日号に掲載された。

臨床意思決定支援システム導入で、プライマリケアでの降圧治療が改善/BMJ

 中国のプライマリケアでは、通常治療と比較して臨床意思決定支援システム(clinical decision support system:CDSS)の導入により、ガイドラインに沿った適切な降圧治療の実践が改善され、結果として血圧の緩やかな低下をもたらしたことから、CDSSは安全かつ効率的に高血圧に対するよりよい治療を提供するための有望なアプローチであることが、中国・National Clinical Research Centre for Cardiovascular DiseasesのJiali Song氏らLIGHT Collaborative Groupが実施した「LIGHT試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年7月23日号で報告された。

心筋梗塞既往の糖尿病患者へのキレーション療法、有効性は?/JAMA

 50歳以上の心筋梗塞既往の糖尿病患者において、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)キレーション療法はプラセボと比較し、血中鉛濃度が有意に低下したが、心血管イベントは減少しなかった。米国・マウントサイナイ医療センターのGervasio A. Lamas氏らが、米国とカナダの88施設で実施した「Trial to Assess Chelation Therapy 2:TACT2試験」の結果を報告した。2013年には、心筋梗塞既往患者1,708例を対象とした「TACT試験」で、EDTAキレーション療法により心血管イベントが18%有意に減少したことが報告されていた。JAMA誌オンライン版2024年8月14日号掲載の報告。  研究グループは、登録の少なくとも6週間前に心筋梗塞の既往がある50歳以上の糖尿病患者を、2×2要因デザイン法を用いて、EDTAキレーション療法群とプラセボ点滴静注群(いずれも週1回3時間の点滴静注を計40回)、または高用量マルチビタミン・ミネラル経口投与群とプラセボ経口投与群(1日2回60ヵ月間経口投与)に無作為に割り付けた。本論文ではキレーション療法群とプラセボ点滴静注群の比較について報告されている。

昏睡・植物状態の患者、25%はfMRIまたはEEGで脳活動あり/NEJM

 昏睡、植物状態または最小意識状態マイナスの患者において、約4例に1例は言葉による指示に対するfMRIまたは脳波(EEG)上の活動、すなわち認知と運動の解離(cognitive motor dissociation:CMD)が認められたという。米国・Spaulding Rehabilitation HospitalのYelena G. Bodien氏らが国際共同前向きコホート研究の結果を報告した。一方、意識障害を有するが言葉による指示に対して観察可能な反応があった患者において、CMDが認められたのは約3例に1例であった。脳損傷により指示に反応しない患者が認知課題を行い、fMRIやEEGで検出される場合がある。CMDとして知られるこの現象については、これまで意識障害患者の大規模コホートにおいて体系的な研究はなされていなかった。NEJM誌2024年8月15日号掲載の報告。

スピーチ・ニューロプロテーゼ、ALS患者の発話を実現/NEJM

 米国・カリフォルニア大学デービス校のNicholas S. Card氏らは、重度の構音障害を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者1例において、皮質内に埋め込んだ電極を介して発話の神経活動を文字に変換し出力するスピーチ・ニューロプロテーゼ(speech neuroprosthesis)が、短時間のトレーニングで会話に適したレベルの性能に達したことを報告した。ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)は、発話に関連する皮質活動を文字に変換しコンピュータの画面上に表示することにより、麻痺を有する人々のコミュニケーションを可能にする。BCIによるコミュニケーションは、これまで広範なトレーニングが必要で精度も限られていた。NEJM誌2024年8月15日号掲載の報告。

重篤な薬疹を起こしやすい経口抗菌薬は?/JAMA

 一般的に処方される経口抗菌薬の中には、マクロライド系薬と比較して救急外来受診または入院に至る重篤な皮膚有害反応(cADR)のリスクが高い薬剤があり、とくにスルホンアミド系とセファロスポリン系で最も高いことが、カナダ・トロント大学のErika Y. Lee氏らによるコホート内症例対照研究の結果で示された。重篤なcADRは、皮膚や内臓に生じる生命を脅かす可能性のある薬物過敏症反応である。抗菌薬はこれらの原因として知られているが、抗菌薬のクラス間でリスクを比較した研究はこれまでなかった。結果を踏まえて著者は、「処方者は、臨床的に適切な場合はリスクの低い抗菌薬を優先して使用すべきである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年8月8日号掲載の報告。