循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

STEMI合併心原性ショック、循環補助用心内留置型ポンプカテーテルは有用か?/NEJM

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)で心原性ショックを合併した患者の治療において、標準治療に加え循環補助用心内留置型ポンプカテーテルImpella CP(Abiomed製)を使用することにより、標準治療単独と比較して180日全死因死亡リスクは低下したが、有害事象の複合の発現率は増加した。デンマーク・コペンハーゲン大学病院RigshospitaletのJacob E. Moller氏らDanGer Shock Investigatorsが、デンマーク、ドイツおよび英国の計14施設で実施された無作為化比較試験「Danish-German Cardiogenic Shock trial:DanGer Shock試験」の結果を報告した。心原性ショックを呈したSTEMI患者に対する、微小軸流ポンプによる一時的な機械的循環補助の有用性は依然として不明であった。NEJM誌2024年4月18日号掲載の報告。

術後の静脈血栓塞栓リスク、最も高いがんは?

 がん手術後の静脈血栓塞栓のリスク増加を、がん種別に評価した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のJohan Bjorklund氏らによる本研究結果は、JAMA Network Open誌2024年2月2日号に掲載された。  本試験は1998~2016年のスウェーデンの全人口データを用いた後ろ向きコホート研究であった。膀胱がん、乳がん、大腸がん、婦人科がん、腎臓・上部尿路上皮がん、肺がん、前立腺がん、胃・食道がんの8種のがんで手術を受けた全患者を、非がんの一般集団と1対10の割合でマッチさせた。データは2023年2月13日~12月5日に解析された。

降圧薬を開始・追加した高齢者は〇〇に注意?

 高齢者は転倒リスクの1つである起立性低血圧が生じやすい。そこで、米国・Rutgers UniversityのChintan V. Dave氏らの研究チームは、降圧薬が高齢者の骨折リスクへ及ぼす影響を検討した。その結果、降圧薬の開始・追加は骨折や転倒、失神のリスクを上昇させた。本研究結果は、JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年4月22日号で報告された。  研究チームは、2006~19年に長期介護施設へ入所した米国の退役軍人2万9,648人を対象に、target trial emulationの手法を用いた後ろ向きコホート研究を実施した。50個以上の共変量について1:4の割合で傾向スコアマッチングを行い、降圧薬の開始・追加後30日以内の骨折の発生リスクを評価した。認知症の有無、収縮期血圧(140mmHg以上/未満)、拡張期血圧(80mmHg以上/未満)、降圧薬の使用歴、年齢(80歳以上/未満)別のサブグループ解析も実施した。さらに、入院または救急受診を要する重度の転倒、失神のリスクも評価した。なお、降圧薬の開始・追加は、過去4週間以内に降圧薬を使用していない患者の降圧薬の使用、または過去4週間に使用している降圧薬とは別のクラスの降圧薬の追加と定義した。

いくつかの腸内細菌はコレステロールを低下させる

 腸内細菌叢の組成が、肥満や2型糖尿病、炎症性腸疾患を含む、さまざまな疾患のリスクと関連していることが明らかになってきているが、新たにコレステロール値の低下に関連している可能性のある腸内細菌が見つかった。この細菌は、心血管疾患のリスク低減というメリットをもたらす可能性もあるという。米ブロード研究所のRamnik Xavier氏らの研究によるもので、詳細は「Cell」に4月2日掲載された。論文の上席著者である同氏は、「われわれの発見は、腸内細菌叢の組成をわずかに変えることによって、心血管の健康を改善させるというアプローチのスタートラインと言えるのではないか」と述べている。

DOAC投与中の心房細動患者への併用、ジルチアゼムvs. メトプロロール/JAMA

 アピキサバンまたはリバーロキサバンを投与中の65歳以上の心房細動患者において、ジルチアゼム併用はメトプロロール併用と比較して重篤な出血のリスクが高く、とくにジルチアゼムの投与量が120mg/日を超えるとさらにリスクが高まることを、米国・ヴァンダービルト大学のWayne A. Ray氏らが後ろ向きコホート研究の結果、報告した。心房細動患者に一般的に投与されるレートコントロール薬のジルチアゼムは、アピキサバンおよびリバーロキサバンの排泄を阻害し過剰な抗凝固作用を引き起こす可能性があることが示唆されていた。JAMA誌オンライン版2024年4月15日号掲載の報告。

Supra-annularの自己拡張弁はバルーン拡張弁に対して狭小弁輪患者のTAVIで優位に立てるか?(解説:上妻謙氏)

重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は、低侵襲かつ有効な治療のため、ほとんどすべてのAS単独手術患者に関して標準的な医療となってきた。今まで自己拡張型バルブでもバルーン拡張型バルブでも外科手術に対する優位性を示してきたが、本論文は北米、欧州、中東の83施設で行われた重症大動脈弁狭窄症を登録して行われたメドトロニックが主導した臨床試験である。自己拡張型デバイスであるEvolut Pro/Pro+/FXとバルーン拡張型デバイスであるSAPIEN3/SAPIEN3 Ultraを1:1で無作為化して比較した現役の人工弁によるデータである。

TAVIとSAVRの比較試験をただちにやめてガイドラインを改訂すべき時である(解説:上妻謙氏)

重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は、低侵襲かつ有効な治療のため世界中で外科手術(Surgical AVR=SAVR)との無作為化試験が行われ、手術高リスクのみならず低リスクの患者においても明確な安全性を示し、ほとんどすべての生体弁を植え込むAS単独手術患者に関して標準的な医療となった。そういった無作為化試験は、メーカー主導で行われたものが代表的な試験2つと医師主導で行われたものがいくつかあるが、本論文はドイツの38施設で行われた症候性重症ASを登録して行われた医師主導の試験である。

心房細動の再発に歯周病が関与?

 心房細動のアブレーション治療後の再発に、歯周病が関与していることを示唆するデータが報告された。アブレーション治療のみを受けた人に比べて、歯周病の治療も受けた人では、心房細動の再発が61%少なかったという。広島大学保健管理センターの宮内俊介氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に4月10日掲載された。同氏は、「歯周病の適切な管理は心房細動の予後を改善する可能性があり、その恩恵を受ける人が世界中に多数存在しているのではないか」と述べている。

スタチンで糖尿病発症リスクは本当に増加する?

 スタチン療法により、糖尿病の新規発症リスクが約10%増加すると報告されているが、そのタイミングやどのような患者でリスクが高いかは明らかでない。英国・Cholesterol Treatment Trialists'(CTT)Collaborationの研究者らは、大規模な無作為化比較試験の個々の参加者データを用いたメタ解析を実施し、結果をLancet Diabetes & Endocrinology誌2024年5月号に報告した。  対象となったのは、追跡期間2年以上で1,000人以上が参加するスタチン療法に関する二重盲検無作為化比較試験。メタ解析では、糖尿病の新規発症(糖尿病関連有害事象、新規血糖降下薬の使用、血糖値[空腹時血糖値≧7.0mmol/Lまたは随時血糖値≧11.1mmol/Lが2回以上]、HbA1c値[≧6.5%が1回以上]により定義)、糖尿病患者における血糖値悪化(ケトーシス関連の有害事象または血糖コントロールの悪化、ベースラインから≧0.5%のHbA1c値上昇、血糖降下薬の強化で定義)に対するスタチン療法の影響を評価した。

心房細動の生涯リスク、直近10年で増加/BMJ

 デンマーク住民約357万人の追跡調査により、心房細動(AF)の生涯リスクは20年間で増大しており、AF発症後の残りの生涯において約5人に2人が心不全を、5人に1人が脳卒中を発症し、そのリスクは時間が経過しても変化がない、もしくはわずかな改善しかみられなかったことが示された。デンマーク・オールボー大学のNicklas Vinter氏らが、同国の患者登録データを用いた住民ベースのコホート研究の結果を報告した。AFを発症した場合、患者ケアは脳卒中のリスクに焦点が当てられるが、心不全や心筋梗塞も含めたAFに付随する長期的な影響について、さらなる検討が求められていた。結果を踏まえて著者は、「AF患者では、脳卒中リスクと心不全予防への戦略が必要である」とまとめている。BMJ誌2024年4月17日号掲載の報告。