精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

統合失調症発症後20年間における抗精神病薬使用の変化

 統合失調症に対する抗精神病薬の短期的な治療は、有益であることが証明されている。しかし、抗精神病薬の長期的な治療に関しては議論の余地が残っており、自然主義的な研究は不十分である。デンマーク・Mental Health Center CopenhagenのHelene Gjervig Hansen氏らは、初回エピソード統合失調症患者における20年後の抗精神病薬使用状況の変化を調査するため、本研究を実施した。Psychological Medicine誌オンライン版2024年11月18日号の報告。  本研究は、初回エピソード統合失調症患者496例を含むデンマークOPUS試験(1998~2000年)の一部である。対象患者には、20年にわたり4回の再評価を行った。主要アウトカムは、投薬日数、クロザピン使用歴、精神科入院、雇用とした。

アルツハイマー病最新治療薬の認知機能改善に対する有効性比較

 近年、新たなアルツハイマー病治療薬が登場し、臨床試験において認知機能および臨床症状に対する有望な結果が得られている。しかし、多くの薬剤の中から最も効果的な治療オプションを選択することについては、依然として議論が続いている。中国・西安交通大学のWeili Cao氏らは、新規アルツハイマー病治療薬の有効性を比較し、それらの薬剤をランク付けするために、ネットワークメタ解析を実施した。Neuroscience誌2025年1月号の報告。

うつ病、不安症、ADHD患者における双極症への移行率の比較

 一般的にみられる双極症の診断遅延は、アウトカム不良につながる可能性がある。ほとんどの研究では、主な前駆症状としてうつ病に焦点を当てているが、不安症や注意欠如多動症(ADHD)も、診断初期に高頻度で認められる。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のKevin Li氏らは、これらの前駆症状から双極症への移行率を調査し、相関関係を定量化するため、大規模な電子健康記録(EHR)を用いて、検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2024年11月13日号の報告。

アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール長期延長試験

 アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有用性が、12週間のランダム化比較試験において実証された。しかし、長期的な有用性については、これまで十分に検証されていなかった。米国・大塚製薬のSaloni Behl氏らは、ブレクスピプラゾールの長期的な安全性および忍容性を評価するため、長期延長試験の結果を報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌2024年11月号の報告。

向精神薬誘発性尿閉リスクの高い薬剤は〜国内医薬品副作用データベース

 向精神薬は、抗ムスカリン作動性およびその他のメカニズムにより尿閉を引き起こすことが報告されている。しかし、尿閉は致死的な問題ではないため、あまり気にされていなかった。東邦大学の植草 秀介氏らは、国内医薬品副作用(JADER)データベースを用いて、向精神薬に関連する尿閉の発生率を調査した。Drugs-Real World Outcomes誌2024年12月号の報告。  JADERデータベースを用いて、74種類の向精神薬における尿閉のレポートオッズ比を算出した。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、尿閉に対する性別、基礎疾患、年齢の影響を調整した。変数選択には、性別、年齢、前立腺肥大症、うつ病、各薬剤の段階的選択を含めた。

片頭痛治療をためらう理由とは〜OVERCOME研究

 片頭痛の治療法は、さまざまであるにもかかわらず、片頭痛患者の多くは、医療に消極的であり、診断および効果的な治療機会を逃し、疾病負担を軽減する機会を喪失している可能性がある。患者が片頭痛治療を躊躇する理由を明らかにすることは、医療専門家や支援者の障壁に対処し、アウトカム改善につながると考えられる。米国・バーモント大学のRobert E. Shapiro氏らは、片頭痛治療を躊躇することと関連する因子を特定するため、米国大規模サンプルを対象に、調査を行った。Neurology and Therapy誌オンライン版2024年11月2日号の報告。

うつ病に対する対人関係療法と抗うつ薬治療の比較〜IPDメタ解析

 成人うつ病に対する第1選択介入は、抗うつ薬治療と対人関係療法であるが、長期的および抑うつ症状以外に対するアウトカムにおける相対的な有効性は、不明である。個別被験者データ(IPD)を用いたメタ解析は、従来のメタ解析よりも、より正確な効果推定値を算出可能である。米国・アリゾナ大学のZachary D. Cohen氏らは、対人関係療法と抗うつ薬治療における治療後およびフォローアップ期間中のさまざまなアウトカムを比較するため、IPDメタ解析を実施した。Psychological Medicine誌オンライン版2024年11月4日号の報告。

GLP-1RAが飲酒量を減らす?

 血糖降下薬であり近年では減量目的でも使用されているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が、飲酒量を減らすことを示唆する新たな論文が報告された。特に肥満者において、この作用が高い可能性があるという。英ノッティンガム大学のMohsan Subhani氏らによるシステマティックレビューの結果であり、詳細は「eClinicalMedicine」に11月14日掲載された。なお、本研究で言及されているエキセナチド等、GLP-1RAの禁酒・節酒目的での使用は日本を含めて承認されていない。一方で同薬が作用するGLP-1受容体は脳内にも分布しており、同薬が飲酒量を抑制するという前臨床試験のデータがある。

アルツハイマー病に伴うアジテーションが医療負担に及ぼす影響

 アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションは、一般的な症状であるが、これに伴う医療負担はよくわかっていない。米国・Inovalon InsightsのChristie Teigland氏らは、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する患者とアジテーションのない患者におけるベースライン特性、医療資源の利用、コストの評価を行った。Journal of Health Economics and Outcomes Research誌2024年10月29日号の報告。  対象は、2009〜16年のメディケア有料請求データベースよりアルツハイマー病および認知症で30日以上の間隔で2件以上の請求があり、診断6ヵ月前および12ヵ月後に医療/薬局保険に継続加入していたメディケア受給者。重度の精神疾患患者は除外した。アジテーションの有無により2つの患者コホートを定義し、記述的探索分析により患者の特徴、医療資源の利用、コストの比較を行った。

英国の一般医を対象にした身体症状に対する介入の効果―統計学的な有意差と臨床的な有意差とのギャップをどう考えるか(解説:名郷直樹氏)

18〜69歳で、Patient Health Questionnaire-15(PHQ-15)スコア(30点満点で症状が重いほど点数が高い)が10~20の範囲、持続的な身体症状があり、過去36ヵ月間に少なくとも2回専門医に紹介されている患者を対象に、症状に対する4回にわたる認識、説明、行動、学習に要約できる介入の効果を、52週間後の自己申告によるPHQ-15スコアで評価したランダム化比較試験である。介入の性格上マスキングは不可能であるが、アウトカム評価と統計解析については割り付けがマスキングされているPROBE(Prospective Randomized Open Blinded Endpoint)研究である。ただPROBEであっても、アウトカムが症状であることからするとバイアスを避け難い面があり、効果を過大評価しやすいという限界がある。