第1回「どのがん検診を受けるべき?」
がん検診編では、癌の検診の是非について様々な角度から検討していきます。厚生労働省の推奨項目として、胃癌検診、肺癌検診、大腸癌検診があげられていますが、その根拠となった日本のデータはランダム化比較試験に基づくものでなく、さまざまなバイアスが指摘され、信頼性が疑問視されています。一方、米国のUSPSTF は多数のランダム化比較試験に基づいたエビデンスレベルの高いデータですが、果たしてそのデータをそのまま日本で当てはめられるのでしょうか。
さらに胃癌や肺癌の検査は欧米では有用性が認められず、あまり行われていません。CT で癌の診断率は向上するものの擬陽性の率がかなり高く、最終的に患者のメリットになっているのかは疑問が残るというわけです。この見識をどう捉えたらいいのか。
逆に、近年増加傾向にある大腸癌の検診については、欧米において有用性に関する明確なエビデンスが認められていますが、日本では全例に内視鏡検査を行うべきとされています。大腸癌の検診で便潜血が陰性だった場合、除外して大丈夫なのか、どのようなケースで除外できないのか、最終的にどのような精査を行うべきなのかを考えていきます。
X 線検査による発がんは日本が最も多いという報告(Lancet) もあり、それでもメリットがデメリットを上回っているのかを考えましょう。
その他、乳癌、子宮癌、前立腺癌についても取り上げます。
第2回「がんを疑う症候」
癌の早期発見のために最も重要なことは日常診療で症候を見逃さないことです。たとえば、あるケースでは痔核のある患者が軟便時に出血していて、適切に出血をスクリーニングしていれば癌を発見できた可能性は高かったにも関わらず見逃したために訴訟になり、敗訴しました。
またあるスタディによると、外来フォローの中から一定数の癌患者が確実に見つかっているといいます。今回は、癌の早期発見のための症候の見極め方を伝授します。まず癌が症候を起こす10 の機序、そして癌を疑う4つの主要症候と7つの準主要症候について解説します。不明熱、寝汗、腰痛…など、7つの準主要症候のなかにはすぐには癌に結びつかないものもあり、目から鱗の情報が満載です。