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慢性腰痛、背側枝神経根切断術は安全かつ有効

 椎間関節に由来する慢性腰痛に対する神経根切断術の有効性を、中国・人民解放軍総合病院第一付属病院のZhen-Zhou Li氏らが検討した。その結果、内視鏡下の背側枝神経根切断術は安全かつ有効であり、保存的治療よりも優れていると示唆されたことを報告した。Clinical Neurology and Neurosurgery誌オンライン版2014年8月18日号の掲載報告。 2011年4月~11月に、腰椎椎間関節に由来する慢性腰痛と診断された後、腰椎内側枝ブロック(MBB)で80%超の疼痛軽減が得られた58例を対象に検討を行った。 45例には内視鏡下で背側枝神経根切断を行い(手術群)、13例には保存的治療を行った(保存的治療群)。 術前および術後の、疼痛強度(視覚的アナログスケール[ VAS ]による)、疼痛改善率およびMacNabスコアを分析するとともに、解剖学的変化などを記録した。 主な内容は以下のとおり。・手術群では、術後の任意の時点における疼痛(腰および腰に起因する)のVASスコアがMBB前より有意に低かったが(p<0.05)、MBB後とは差がなかった。・保存的治療群では、同様に保存的治療後のVASスコアがMBB前より有意に低く(p<0.05)、MBB後より有意に高かった(p<0.05)。・手術群の術後の任意の時点における疼痛改善率は保存的治療群より有意に高かった(p<0.01)。・手術群における1年間の追跡調査において、MacNabスコアは、保存的治療群より高かった。・手術群では、内側枝に4ヵ所の解剖学的変化が観察された。

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統合失調症と強迫性障害の関連が明らかに

 統合失調症と強迫症/強迫性障害(OCD)が併存していることは少なくないが、これまで両障害の臨床的および病因学的な関連性はほとんど解明されていなかった。統合失調症と強迫性障害が共有する病因学的因子を調べることは、臨床医、研究者および患者に有用な情報の提供に結びつく可能性がある。デンマーク・オーフス大学のSandra M. Meier氏らは、統合失調症のリスク因子としての強迫性障害について、全国的な調査を行い、同国の強迫性障害の診断が統合失調症および統合失調症スペクトラム障害との関連性が高いことを報告した。著者は、「観察されたリスクの増大は、強迫性障害、統合失調症、統合失調症スペクトラム障害がおそらく共通の原因パスウェイ上に位置することを示すものである」と述べている。JAMA Psychiatry誌オンライン版2014年9月3日号の掲載報告。強迫性障害の既往歴が統合失調症のリスク増大と関連 著者らは、強迫性障害患者は統合失調症および統合失調症スペクトラム障害の発症リスクが強いのかを評価し、また、強迫性障害の家族歴が統合失調症と統合失調症スペクトラム障害のリスク因子であるかを調べた。デンマーク全国レジスターからの個人データを追跡し、総計4,500万人年を対象とした前向きコホート研究を行った。全生存解析は、性別、年齢、暦年、両親の年齢、出生地で補正して行った。主要アウトカムは、強迫性障害の既往歴、統合失調症および統合失調症スペクトラム障害の最初の診断(病院、外来クリニック、緊急医療部門での精神科による)のリスクで、発生率比(IRR)と95%信頼区間(CI)を算出して相対リスクを評価した。 統合失調症のリスク因子としての強迫性障害についての調査の主な結果は以下のとおり。・検討は、1955年1月1日~2006年11月30日に生まれた総計300万人を対象に行われ、1995年1月1日~2012年12月31日まで追跡した。・同期間中に、統合失調症または統合失調症スペクトラム障害の発症は、3万556例であった。・強迫性障害の既往歴は、後年の統合失調症(IRR:6.90、95%CI:6.25~7.60)、統合失調症スペクトラム障害(同:5.77、5.33~6.22)の発症リスク増大と関連していた。・同様に、両親に強迫性障害の診断歴があることは、統合失調症(同:4.31、2.72~6.43)、統合失調症スペクトラム障害(同:3.10、2.17~4.27)のリスク増大と関連していた。・これらの結果は、精神疾患の家族歴や本人の病歴で補正後も変わらなかった。

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原因不明の脳梗塞患者に潜む心房細動(解説:高月 誠司 氏)-247

 脳梗塞症例のうち20~40%は、適切な診断評価を行っても原因が不明とされ、これをCryptogenic stroke(原因不明の脳梗塞)という。心房細動による心原性脳梗塞は再発の頻度が高く、しかも重篤な症状を残すことが多い。初回脳梗塞発作時に適切に心房細動と診断し適切な抗血栓療法を行えば、患者の予後を改善する可能性がある。しかし発作性心房細動症例では脳梗塞発症時に洞調律に戻っていると、その診断に苦慮することがある。 本研究は55歳以上で心房細動と診断されたことがない、6ヵ月以内に原因不明の脳梗塞、一過性脳虚血発作を起こした症例を対象に、24時間ホルター心電図検査を施行する群(コントロール群)と30日間のループ式イベントレコーダーを施行する群(インターベンション群)に無作為に割り付け、30秒以上持続する心房細動の有無を比較した(EMBRACE試験1))。このイベントレコーダーは着用型で胸部に乾燥型の電極付きのベルトを巻き付け、イベント発生時最長2.5分の心電図を記録するものである。結果的に90日以内に30秒以上の心房細動はインターベンション群で280人中45人(16.1%)、コントロール群で277人中9人(3.2%)で検出(p<0.001)。2.5分以上持続する心房細動に関してはインターベンション群で284人中28人(9.9%)、コントロール群で277人中7人(2.5%)で検出された(p<0.001)。経口抗凝固薬による治療はインターベンション群で280人中52人(18.6%)、コントロール群で279人中31人(11.1%)に行われ、インターベンション群で有意に多かった。 New England Journal誌の同号には同じように原因不明の脳梗塞症例を対象にした植込み式ループレコーダーとホルター心電図による半年間の心房細動検出率を比較した研究(Crystal AF試験)が掲載されている2)。結果はループレコーダー群で221人中19人(8.9%)、ホルター群で220人中3人(1.4%)と有意にループレコーダー群で高かった。数値的にはCrystal AF試験の植込み型ループレコーダーよりも、EMBRACE試験で使用された着用型レコーダーのほうが心房細動の検出率が高い。これはEMBRACE試験の対象患者が72.5±8.5歳で、Crystal AF試験の対象患者の61.6±11.4歳より高齢であるということに主として起因するが、着用型レコーダーの実用性も十分に示されたと考えてよいだろう。 この研究は短時間の心房細動と脳梗塞の発症との因果関係を明らかにしたわけではなく、また結果的に抗凝固薬の使用が患者の予後改善に結び付くのかという点も明らかではない。ただし3ヵ月間の長期的なモニタリングは、原因不明の脳梗塞患者の潜在的な心房細動の診断に有用であることは明確に示された。今後の原因不明の脳梗塞患者のマネジメントに一石を投じる研究である。

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糖尿病高齢者に多い皮膚病変とは

 65歳以上高齢者における糖尿病と関連した皮膚疾患の有病率を調べた結果、慢性の皮膚潰瘍、脚部の褐色斑、かゆみが多いことが示された。台湾・高雄退役軍人総合病院のH-W. Tseng氏らが、退役軍人施設に入所する313例について調査し報告した。著者は、「糖尿病にみられる皮膚の特徴を観察することで、糖尿病患者の状態をより完全に評価することが可能である。糖尿病に関連した皮膚の情報は、適切な治療と看護を提供するための基本である」とまとめている。Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology誌オンライン版2014年9月1日号の掲載報告。 研究グループは、高齢の男性における皮膚疾患と糖尿病および糖尿病に関連した皮膚疾患の統計的な関連性を調べた。 台湾の退役軍人施設で断面調査を行い、入所者の皮膚の症状、主な全身性疾患を記録。年齢、BMI、顕著であった全身性疾患で補正後、単変量および多変量ロジスティック回帰分析を行い、オッズ比(OR)とp値を求めて統計的関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、65歳以上男性313例で、そのうち70例(22.4%)が糖尿病を有していた。・糖尿病被験者に最もよくみられた皮膚の症状は、真菌感染症(77%)、脚部の褐色斑(38.3%)であった。・補正後ORの評価により、糖尿病との有意な関連が認められたのは、慢性の皮膚潰瘍(AOR:4.90、95%CI:1.82~13.19、p=0.002)、脚部の褐色斑(同:6.82、3.60~12.89、p<0.001)、かゆみ(同:12.86、4.40~37.59、p<0.001)であった。・糖尿病被験者では、細菌感染症、疥癬、スキンタッグのリスクがわずかだが高かった。

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せん妄管理における各抗精神病薬の違いは

 せん妄の管理において、定型抗精神病薬と各非定型抗精神病薬ではどのような違いがあるのか。スイス・チューリッヒ大学病院のSoenke Boettger氏らは、せん妄に対する定型抗精神病薬(ハロペリドール)と非定型抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾール)の有効性と副作用プロファイルを比較検討した。その結果、有効性は同程度であったが、副作用プロファイルに関しては相違がみられ、ハロペリドールでは錐体外路症状(EPS)、オランザピンでは鎮静の発現頻度が高いことを報告した。Palliative and Supportive Care誌オンライン版2014年9月5日号の掲載報告。 研究グループは、せん妄の管理において、定型抗精神病薬のハロペリドールと非定型抗精神病薬のリスペリドン、オランザピンおよびアリピプラゾールの有効性ならびに副作用プロファイルを比較検討した。ベースライン時(T1)、2~3日後(T2)、4~7日後(T3)に、The Memorial Delirium Assessment Scale(MDAS)、the Karnofsky Performance Status(KPS)scaleおよび副作用の程度を評価した。解析対象症例は、年齢、認知症の既往、ベースラインのMDASスコアをマッチさせた21例とした。 主な結果は以下のとおり。・各薬剤群でベースライン特性に差はなかった。・平均年齢は64.0~69.6歳の範囲であり、認知症を23.8~28.6%に認め、ベースラインのMDASスコアはハロペリドール19.9、リスペリドン18.6、オランザピン19.4、アリピプラゾール18.0であった。・T3時の投与量はハロペリドール5.5mg、リスペリドン1.3mg、オランザピン7.1mg、アリピプラゾール18.3mgであった。・1週間を通して、各薬剤とも同程度のMDASスコア低下を示し、T2またはT3時点でMDASスコア間に差はみられなかった。・1週間後のMDASスコアはハロペリドール6.8、リスペリドン7.1、オランザピン11.7、アリピプラゾール8.3であった。・T2時点においてせん妄の回復が42.9~52.4%に、T3時点では61.9~85.7%の症例に認められ、薬剤間で評価の差はみられなかった。・副作用としてEPSがハロペリドールで19%、リスペリドンで4.8%に、また、鎮静がオランザピンで28.6%に報告された。・せん妄の管理において、ハロペリドール、リスペリドン、オランザピンおよびアリピプラゾールの有効性は同程度であった。ただし、副作用プロファイルは異なり、ハロペリドールではEPSが、オランザピンでは鎮静が、それぞれ最も高頻度に発現した。関連医療ニュース 定型vs.非定型、せん妄治療における抗精神病薬 高齢者のせん妄に対する抗精神病薬のリスクは? 高力価vs低力価、有効性の違いは

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一般市民に皮膚科医はどう思われている?

 米国市民の約半数は、皮膚科医は皮膚がんの治療に大半の時間を費やしており、プライマリ・ケア医よりも職業的重要性は低いと認識していることなどが、米国・カリフォルニア大学デービス校のElizabeth A. Brezinski氏らによる調査の結果、明らかにされた。収入についてはプライマリ・ケア医よりも多いが心臓外科医や形成外科医よりは少ないと思っていることなども示された。著者は、「皮膚科医の専門性についてよりきちんと知らしめる必要がある」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2014年8月27日号の掲載報告。 皮膚科医とその他専門医に対する一般市民の認識を比較することを目的とした調査は、全米市民を対象に、RDD(random digit dialing)方式での電話調査で行われた。  主な結果は以下のとおり。・10個の市外局番から無作為に選択した2,353件に電話をかけ、計800人(34%)の成人から回答を得られた。・全体的に回答者の46%が、皮膚科医は皮膚がんの治療に大半の時間を費やしていると認識していた。・皮膚科医が審美的な処置を行うことに大半の時間を費やしていると認識していた回答者は27%であった。・プライマリ・ケア医のほうが皮膚科医と比較して、重大な職業であると回答したのは63%(より難しい仕事であるとの回答は54%)、また92%がより長時間働いていると認識していることが示された。・心臓専門医との比較においても、同様の結果がみられた。・また市民は、皮膚科医はプライマリ・ケア医よりも収入が多いが、心臓専門医や形成外科医よりは少ないと認識していた。・なお本調査結果について著者は、回答者と非回答者の間にpotential differencesが存在する可能性を指摘している。

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Vol. 2 No. 4 オメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤の臨床応用 そのエビデンスと各種ガイドラインにおける位置づけ

田中 知明 氏千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学 千葉大学医学部附属病院糖尿病・内分泌代謝内科はじめにグリーンランドや千葉県下でのエイコサペンタエン酸(EPA)の有効性を明らかにした疫学調査をきっかけに、わが国では魚油をエチルエステル化した高純度EPA製剤が開発され、1990年には「閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛および冷感の改善」、1994年には「高脂血症」に対する医療用医薬品として臨床の現場に登場した。さらに、欧州、米国などで「高トリグリセライド血症」の効能・効果を有する医薬品として承認されていた高濃度オメガ3製剤(主成分としてEPA・DHAを含有)も2013年に国内で承認され、日常臨床に広く普及しつつある。これらオメガ3製剤の臨床応用におけるエビデンスとしては、高純度EPA製剤の冠動脈疾患に対する発症予防効果を検証した日本人対象の大規模臨床試験JELIS1)に加えて、Circulation、Lancetに報告されたイタリアのGISSI-Prevenzione Trial、GISSI-HF Trialなど、多くのエビデンスが蓄積されている。そこで、本稿ではオメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤の臨床応用の骨格となる重要な大規模臨床試験とそのメタ解析におけるエビデンスを解説し、EPA製剤の各種ガイドラインにおける位置づけについて概説する。EPA製剤が推奨される各種ガイドライン本邦においてEPAに関してその臨床的有用性が明記されている各ガイドラインについて、表にまとめる。これまでの大規模臨床試験のエビデンス基づき、現在では『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』、『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』、『心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)』、『脳卒中治療ガイドライン2009』の4種類のガイドラインに医療医薬品としての有用性が推奨グレードとともに記載されている。以下に具体的内容とエビデンスグレードを記す。『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版』の第7章「治療法 B 薬物療法におけるステートメント」として、「高リスクの高LDL-C(low density lipoprotein cholesterol)血症においては、スタチン投与に加えてEPAの投与を考慮する」とされている。推奨レベルIIa、エビデンスレベルAである。『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』の「Ⅲ. 各疾患における抗凝固・抗血小板療法 11 心血管疾患高リスク症例の一次予防」においては、「高リスクの脂質異常症におけるエイコサペント酸エチル投与の考慮」が記載され、クラス1のエビデンスレベルとして推奨されている。『心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)』における「II. 薬物療法 3 脂質異常症改善薬」の項目では、「2. 高LDLコレステロール血症にはスタチンに加え高純度EPA製剤も考慮する」と記載され、エビデンスグレードはBである。『脳卒中治療ガイドライン2009』における「Ⅱ. 脳梗塞・TIA 4-1. 脳梗塞再発予防 (3)脂質異常症」の項目の中で、「3. 低用量スタチン系薬剤で脂質異常症を治療中の患者において、EPA製剤の併用が脳卒中再発予防に有用である」と記載されている。エビデンスグレードはBである。高濃度オメガ3製剤(EPA+DHA)に関しては、欧州(ノルウェー)では1994年に、アメリカでは2004年に使用されるようになっていたが、日本では2013年から使われるようになった。したがって、国内では高純度EPA製剤が主流であった過去の経緯から、各ガイドラインにおける記載は高純度EPA製剤のみなのが現状である。海外ガイドラインにおけるオメガ3系脂肪酸の臨床的位置づけとして、欧州・米国ではEPA・DHA製剤が中心であり、脂質異常症の管理および心不全の治療ガイドラインにおいて推奨されている(推奨レベルIIb、エビデンスレベルB)。今後、本邦においてもエビデンスのさらなる蓄積とガイドラインにおける位置づけが新たに追加されることが期待される。表 各種ガイドラインにおける脂質異常症治療薬の記載画像を拡大するJELISの概要と1次予防・2次予防サブ解析JELISは、日本人を対象に実臨床に近い条件の下で実施された前向き大規模臨床試験であり、各ガイドライン記載の根拠となる重要なエビデンスである1)。JELISは、日本人の脂質異常症患者(総コレステロール250mg/dl以上)において40~75歳の男性と、閉経後~75歳の女性18,645人(冠動脈疾患の1次予防14,981例、2次予防3,664例)を対象としている。プラバスタチン10mg/日またはシンバスタチン5mg/日を基本として、1.8gの高純度EPA製剤の投与群と非投与群を無作為に割り付けて、5年間の追跡調査し、主要冠動脈イベント(致死性心筋梗塞、非致死性心筋梗塞、心臓突然死、心血管再建術、新規狭心症の発症、不安定狭心症)について検討を行った試験である。その結果、主要冠動脈イベントを19%低下させ、EPA投与群では対象群に比べ虚血性心疾患の発症リスク比(95% CI)が0.81(0.68-0.96)であり、非致死性では0.81(0.68-0.96)と有意であった(本誌p.23図を参照)。興味深いことに、血清脂質変化を検討すると、EPA群と対象群においてLDLコレステロールの変化率に有意差を認めなかった。このことから、高純度EPA製剤の心血管イベント抑制効果は、LDLコレステロール値以外による機序が大きいと考えられている。<JELIS 1次予防サブ解析>冠動脈疾患の既往がない1次予防サブ解析(14,981例)では、主要冠動脈イベントの発生はEPA投与群で18%減少するものの、有意差を認めなかった。肥満・高TG (triglyceride)血症・低HDL(high density lipoprotein)血症・糖尿病・高血圧を、冠動脈イベントリスク因子としてそれらの重積と冠動脈イベント発生を検討した結果、対照群/EPA群の両者において発症率の上昇を認め、EPA群で抑制している傾向が見られた2)。また、登録時のTG値とHDL値の組み合わせで4群に分けて、冠動脈イベント発症リスクを比較検討した結果、高TG/低HDL-C血症群ではTG/HDL-C正常群に比較して、冠動脈イベント発生リスクはEPA投与群で53%もの低下を示し、高リスク群での抗動脈硬化作用による心血管イベントの発症抑制が期待されている1, 2)。<JELIS 2次予防サブ解析>冠動脈疾患の既往がある患者(3,664例)の2次予防サブ解析では、EPA投与群で23%のイベント発症抑制効果を認めた3)。インターベンション施行症例や心筋梗塞既往症例においても、EPA投与群でそれぞれ35%、27%のイベント発症の抑制を認めた3)。これらの結果は、高純度EPA製剤の投与はインターベンション施行例や心筋梗塞既往例の2次予防薬としての有用性を示している。血漿EPAとアラキドン酸(AA)の比の変化を観察すると、試験開始時に両群共にEPA/AA比は0.6であったのに対して、EPA投与群では1年後に1.3まで上昇していた3)。試験終了時のEPA/AA比と冠動脈イベント再発の関連性を解析した結果、EPA/AA比が高いほど、イベント発生の相対リスクが低下していることが明らかとなった。<JELIS脳卒中サブ解析>JELIS試験においては、2次評価項目として脳卒中(脳血栓、脳塞栓、判別不能の脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳出血、くも膜下出血)の発症が検討された。患者背景として、脳卒中の既往はEPA群で485例(5%)であり、対照群で457例(5%)に認められ、その内訳は閉塞性脳血管障害がそれぞれ74%、75%で、両群間に有意差を認めなかった4)。脳卒中の1次予防に関しては、対照群およびEPA投与群ともに、脳卒中発症頻度が低かったため、両群間に明らかな差を認めなかった。実際、対照群における脳卒中累積発症率が5年間で1.3%ととても低値であったことが大きな要因と考えられている。また、JELIS以外に国内で施行された冠動脈疾患や脳卒中の既往のない高コレステロール患者を対象としたMEGA試験では、プラバスタチンの投与で有意に発症を抑制したことが報告されている。つまり、JELISにおけるスタチン投与の背景がすでに脳卒中発症をかなり予防していたことが推察され、EPAの有用性を否定するものではない結果といえよう。脳卒中既往歴のある2次予防については、EPA投与群において20%の有意な脳卒中発症抑制効果(発症リスク比0.80、95% CI:0.64-0.997)が認められた4)。この脳卒中発症抑制に関しては、number to treat(NNT=疫学の指標の1つで、エンドポイントに到達する患者を1人減らすために何人の患者の治療を必要とするかを表したもの)は27であった。興味深いことに、同時期に欧米で施行されたSPARCL試験5)では、アトルバスタチンの5年間の投与による脳卒中2次予防効果のNNTは46であり、高用量スタチンより優れた結果を示唆するものであった。単純比較はできないが、EPA製剤(スタチン併用)の脳卒中2次予防効果における臨床的有用性を示すと考えられている。登録時のHDL-C値と脳卒中発症の関係を解析した結果、対照群ではHDL-C値が低いことに相関して脳卒中再発率が有意に増加するが、EPA投与群ではHDL-C値と独立して脳卒中再発予防効果を認めた。また臨床的なポイントとして、JELISにおける脳卒中の疾患別検討では、EPA効果がより高い群として脳梗塞、特に脳血栓症の抑制が明らかであった。またEPA服薬良好群では、36%の顕著な再発低下(5年間のNNTは16)を示した6)。EPAの特徴の1つである血小板凝集抑制作用を介したアテローム血栓予防効果が大きな役割を果たしている可能性が高い。GISSI-Prevenzione Trial7)と海外のエビデンスイタリアで行われたGISSI-Prevenzione Trialは、急性心筋梗塞発症後3か月以内の高リスク患者11,324症例を対象とした2次予防試験であり、オメガ3系多価不飽和脂肪酸1g/日のカプセルと抗酸化作用を持つビタミンE 300mg/日を内服する群を、オメガ3系多価不飽和脂肪酸のみ内服する群、ビタミンEのみ内服する群、両方内服する群、両方内服しない群に分けて3.5年間介入し検討を行った試験である7)。その結果、オメガ3系多価不飽和脂肪酸を内服している群は対象群に比べ、全死亡の相対リスク(95% CI)が0.80(0.67-0.94)と低下を認め、特に突然死においては0.55(0.40-0.76)と大きく抑制され、突然死においては治療開始後早期の120日ですでに有意な相対リスクの低下(0.47(0.22-0.99)、p=0.048)が認められた(本誌p.24図を参照)7)。また、心不全患者を対象に行ったGISSI-HF Trialでも、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の投与は、有意に心血管イベントの発症を抑制した8)。コホート試験である13試験を用いて、魚摂取・魚食頻度と冠動脈疾患による死亡率との関連について検討した結果(222,364症例のメタ解析)、魚摂取は冠動脈疾患による死亡率を有意に低下させることが明らかとなった9)。さらに、脂質低下療法に関する97ランダム化大規模臨床試験のメタ解析の結果から、スタチンとオメガ3系多価不飽和脂肪酸製剤は、心臓死および総死亡のイベントリスクを低下させることが示された10)。これらのエビデンスから、ハイリスクの脂質異常患者に対してスタチンにEPA製剤を加えることで、さらなる心血管イベント抑制効果が期待できると考えられる。おわりに高純度EPA製剤は、心血管イベントおよび脳血管イベントの1次予防・2次予防戦略を考えるうえで重要な薬剤であることはいうまでもない。大規模臨床試験のエビデンスをベースとした各ガイドラインを見てわかるように、脂質異常症のゴールデンスタンダードであるスタチンに加えて、EPA製剤の併用効果が証明され、臨床的意義づけが確立している。JELISによる日本人のエビデンスに裏づけされた内科的戦略の1つとして、心血管・脳血管イベントのハイリスク症例やスタチン投与による脂質管理下でもイベント発生を抑制できない症例に対して、積極的な使用が推奨される。またEPA・DHA製剤についても、ようやく国内で使用することができるようになった。日本人のエビデンスはまだ十分ではなく、ガイドラインにおける位置づけは現時点では明確ではないが、欧米におけるエビデンスと使用経験から本邦でも十分に期待できるものと思われる。EPA製剤との違いや臨床的使い分けなど、今後のさらなるエビデンスの蓄積が必要であろう。文献1)Yokoyama M et al. Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis. Lancet 2007; 369: 1090-1098.2)Saito Y et al. Effect of EPA on coronary artery disease in hypercholesterolemic patients with multiple risk factors: sub-analysis of primary prevention cases from the Japan EPA Lipid Intervention Study (JELIS). Atherosclerosis 2008; 200: 135-140.3)Matsuzaki M et al. Incremental effect of eicosapentaenoic acid on cardiovascular events in statin-treated patients with coronary artery disease. Circ J 2009; 73: 1283-1290.4)Tanaka K et al. Reduction in the recurrence of stroke by eicosapentaenoic acid for hypercholesterolemic patients : subanalysis of the JELIS trial. Stroke 2008; 39: 2052-2058.5)Amarenco P et al. High-dose atrovastatin after stroke or transient ischemic attack. N Engl J Med 2006; 355: 549-559.6)田中耕太郎ほか. 高コレステロール血症患者の脳卒中発症に対するEPAの効果-JELISサブ解析結果. 脳卒中2007; 29: 762-766.7)Marchioli R et al. Early protection against sudden death by n-3 polyunsaturated fatty acids after myocardial infarction: time-course analysis of the results of the Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell'Infarto Miocardico (GISSI)-Prevenzione. Circulation 2002; 105: 1897-1903.8)Gissi HFI et al. Effect of n-3 polyunsaturated fatty acids in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 2008; 372: 1223-1230.9)He K et al. Accumulated evidence on fish oil consumption and coronary heart disease mortality : a meta-analysis of cohort studies. Circulation 2004; 109: 2705-2711.10)Studer M et al. Effect of different antilipidemic agents and diets on mortality : a systematic review. Arch Intern Med 2005; 165: 725-730.

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高骨量と股関節OAは正の相関

 英国・ブリストル大学のS.A. Hardcastle氏らによる住民ベース研究の結果、高骨量(HBM)例で変形性股関節症(股関節OA)や骨棘症の有病率が有意に高いことが明らかにされた。これまで疫学研究において、骨密度(BMD)増大とOAの関連は示唆されていた。著者は「今回の所見はHBMとOAには正の関連性があり、HBMにおけるOAは肥大性表現型であることを示すものだ」とまとめている。Osteoarthritis and Cartilage誌2014年8月号(オンライン版2014年6月24日号)の掲載報告。 研究グループは、HBMの人では対照群と比べ股関節OAの有病率が高いかを調べるため、新たな質問アプローチを用いた本検討を行った。 BMD Zスコアで定義されたHBM症例を、英国での研究例から集め、一方でファミリー対照として、指数に影響がない関連症例を集めた。さらに、年齢で層別化されたランダム検体をChingford and Hertfordshireコホート研究の一般集団から選定して分析に含んだ。 骨盤X線像を、症例-対照について盲検化された観察者1人がプールし評価を行った。分析はロジスティック回帰法を用いて、年齢、性別、BMIで補正をして行われた。 主な結果は以下のとおり。・分析に含まれたのは、症例群が272人・HBM股関節530例、対照群が863人・1,702例であった。平均年齢は64.8歳、女性が84%であった。・X線画像診断(Croftスコアで3以上)によるOA有病率は、症例群20.0%、対照群13.6%で前者が有意に高かった(補正後オッズ比[OR]:1.52、1.09~2.11、p=0.013)。・骨棘症(OR:2.12、1.61~2.79、p<0.001)、軟骨下骨硬化(同:2.78、1.49~5.18、p=0.001)も症例群での有病率が有意に高値であった。・一方で、関節腔狭小化(JSN)有病率の差は有意ではなかった(OR:0.97、0.72~1.33、p=0.869)。

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どの尺度が最適か、てんかん患者のうつ病検出

 てんかん患者のうつ病併発検出には、一般的なスクリーニングツールが用いられているが、現在使用されている尺度について、ゴールドスタンダードによる検証は行われていなかった。カナダ・カルガリー大学のKirsten M. Fiest氏らは、てんかん患者のうつ病併発を見つけるために一般的に用いられている3つのスクリーニング尺度について、検証と新たなカットポイント値の評価を行った。結果、感度が最も高かったのは、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)、特異度が最も高かったのはPatient Health Questionnaire(PHQ)-9であったことなどを報告した。Epilepsia誌オンライン版2014年8月28日号の掲載報告。 研究グループは、大都市のてんかん専門クリニックで300例を対象に、質問調査(社会人口統計、有害事象プロファイル)と、3つのうつ病スクリーニングツール(HADS、PHQ-9、PHQ-2)による評価を行った。うつ病評価のためのゴールドスタンダードの構造化臨床面接には、185例が参加。うつ病尺度の診断精度について、種々のスコアリングカット値とうつ病診断のゴールドスタンダードとを比較評価した。 主な結果は以下のとおり。・本集団におけるうつ病有病率は、ゴールドスタンダードでは14.6%であった。・最も感度が高かったのはHADSのカット値6による尺度であった(84.6%)。最も特異度が高かったのは、PHQ-9によるアルゴリズム評価においてであった。・全体的に、PHQ-9のカット値9と、HADSのカット値7が、感度と特異度のバランスが最も良かった(AUCはそれぞれ88%、90%)。・スクリーニング目的には、PHQ-9アルゴリズム評価が理想的である(特異度が最適)。一方で、症例を見つけるにはHADSのカット値6が最良であった(感度が最適)。・これらを踏まえて著者は、「適切な尺度のカット値は、試験目的と入手したリソースに基づき選ぶことが必要である」とまとめている。関連医療ニュース てんかん患者のうつ病有病率は高い てんかんを持つ人のうつ病発症を理解することが急務 うつ病診断は、DSM-5+リスク因子で精度向上  担当者へのご意見箱はこちら

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抗PD-1抗体は卵巣がんの新たな治療となるか

 卵巣がんは婦人科がん死亡の第1位であり、罹患率は8,000人/年、死亡者4,500人/年と年々増加している。2014年8月28日~30日、横浜市で開催された日本癌治療学会学術集会にて、京都大学医学部附属病院 産科婦人科の濱西 潤三氏は「抗PD-1抗体(ニボルマブ)を用いた卵巣がんに対する第II相医師主導治験」 と題し、自施設での臨床試験の結果を紹介した。 標準治療の第一選択薬はパクリタキセル+カルボプラチンであるが、この治療に抵抗性を持つと60%以上が再発し、5年生存率30%、10年生存率10%ときわめて予後が悪い。第二選択薬もあるものの、いずれも単独での奏効率は低い。そのため、新たな治療法が求められている。 2000年代に入り、“がん免疫逃避機構”学説が解明され、この機構を標的とする新しい免疫治療が、臨床に応用されるようになった。なかでも特徴的なのは、イムノチェックポイント経路ともいわれるPD-1(Programmed cell Death-1)/PD-L1(PD-1 Ligand1)経路である。免疫抑制補助シグナルPD-1/PD-L1経路をブロックすることで、T細胞の免疫抑制が解除され、T細胞が活性化し腫瘍の抑制が起こる。 このPD-1/PD-L1経路が卵巣がんでも関連しているのか、京都大学内で共同研究を行ったところ、卵巣がんの約70%に、PD-L1が高発現していることがわかった。また、この発現の強度が卵巣がんの独立予後不良因子であることも明らかになった。 そこで、抗PD-1抗体ニボルマブの第II相試験を医師主導で開始した。対象は、プラチナ抵抗性でタキサンを含む2レジメン以上の治療歴を有する上皮性卵巣がん。試験当時、ニボルマブの安全用量が決定していなかったため、1mg/kgの低用量コホートと3mg/kgの高用量コホートの2用量コホート(各10例ずつ計20例)を登録した。 これらの患者に、ニボルマブを2週ごとに最大1年間投与して評価した。主要エンドポイントは奏効率、副次エンドポイントは有害事象、無増悪生存期間、全生存期間、疾患制御率とした。被験者の平均年齢は62歳、ステージIII~IVが多く、先行レジメンは4レジメン以上が半数以上であった。 奏効率は17%(3/20例)。1mg/kg群では10例中1例PRが認められ、3mg/kg群では8例中2例にCRが認められた。3mg/kgのCR2例のうち1例は、卵巣がんの中でもとくに抗がん剤治療が奏効しにくい明細胞がんであったが、多発性の腹膜播種も完全に腫瘍が消失。もう1例も多発性骨盤内転移が消失した。また、CR例については長期間効果が持続する傾向にある。 全有害事象のうちグレード3が半数以上に認められたが、用量依存的ではなかった。免疫製剤に共通するものが多かったが、甲状腺の異常や不整脈、好中球減少を伴わないリンパ球減少など、特徴的なものも認められた。重篤な有害事象は2例に認められたが、いずれも改善している。 ニボルマブは卵巣がんに対する新たな治療法として期待できる。今後は、効果予測、有害事象のバイオマーカー、無効例や耐性例に対する対策、抗がん剤や分子標的薬などとの併用療法など、次相試験による検証が必要になってくるであろう。

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変形性膝関節症の痛み、男女差が明らかに

 米国・アイオワ大学のNatalie A Glass氏らは、変形性関節症(OA)およびそのハイリスク患者を対象とした多施設変形性関節症研究MOST(Multicenter Osteoarthritis Study)の解析から、Kellgren-Lawrence(KL)グレードに関係なく女性は男性より膝痛が強く、とくに膝蓋大腿OAで性差が大きいことを明らかにした。また、膝痛の性差には広範痛(widespread pain:WSP)が大きく影響しており、中枢性痛覚過敏の関与が示唆されたという。Osteoarthritis and Cartilage誌2014年8月号(オンライン版2014年7月4日号)の掲載報告。 研究グループは、X線学的変形性膝関節症(膝OA)が同等の場合、男性より女性のほうが膝痛の重症度が大きいかどうかを調べることを目的とした。 対象は、膝関節置換術または最近ステロイド注射を行っていない膝OA患者2,712例(60%が女性)であった。 一般化推定方程式を用い、年齢、鎮痛剤の使用、BMI、施設、併存疾患、うつ病スコア、教育、人種および広範痛(WSP)について調整後または未調整時の、疼痛強度(視覚アナログスケール[VAS]および西オンタリオ大学・マクマスター大学変形性関節症指数[WOMAC]による)の性差をKLグレードごとに評価した。 主な結果は以下のとおり。・VASスコアは、すべてのKLグレードで未調整時(効果量[d]=0.21~0.31、p<0.0001~0.0038)およびWSPを除く全共変量で調整後(d=0.16~0.22、p<0.0001~0.0472)も、女性が大きかった。・VASスコアの性差はWSPで調整すると減少したが、KLグレードが≦2(p=0.0015)および2(p=0.0200)で有意であった。・WSPなしと比較して有りの場合、全KLグレードで膝痛が有意に大きかった(d=0.32~0.52、p<0.0001~0.0008)。・VASスコアの性差は各KLグレードにおいて膝蓋大腿OA患者で大きく(d=0.45~0.62、p=0.0006~0.0030)、共変量で調整後も全KLグレードで有意差がみられた(d=0.31~0.57、p=0.0013~0.0361)。・WOMACによる評価でも結果は同様であった。

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福島原発事故は甲状腺がんを増加させたか?

 東日本大震災による東京電力福島原発事故で大量の放射性物質が放出された。事故はチェルノブイリと同じレベル7に評価されたが、環境中に放出された放射性物質の量は7分の1程度、小児甲状腺がん発症の可能性は少ないと考えられている。しかし、住民の不安は解消されていない。 2014年8月28日~30日、横浜市で開催された日本癌治療学会学術集会にて、福島県立医科大学医学部 甲状腺内分泌学講座 鈴木 眞一氏は、「県民健康調査データに見る甲状腺超音波検査と放射線被ばくについて」と題し、福島県における小児甲状腺がん発症の現状調査の結果を紹介した。 住民の不安を解消するためには、まず現在の甲状腺がん発症状態を把握することが重要である。そこで、福島県民健康管理調査の詳細調査の1つとして、事故当時18歳以下の全県民36万人に対する甲状腺検査が、事故7ヵ月後の2011年10月9日より実施されている。 検査は一次検査と二次検査からなる。 一次検査は超音波検査により嚢胞、結節をスクリーニングすることが目的であり、二次検査は一次検査でB判定以上の住民を精査することが目的である。一次検査の判定基準は、A:正常範囲と思われるもの(A1:嚢胞や結節を認めない、A2:5.0mm以下の結節 or/and 20.0mm以下の嚢胞)B:5.1mm以上の結節 or/and 20.0mm以上の嚢胞C:ただちに二次検査が必要と思われるものである。 A判定であれば2年後の検診となり、B判定以上では二次検査に進み、高精度超音波検査などを行い診断基準を用いて判断される。 2014年6月30日現在、調査対象36万7,707人の80.5%に当たる、29万6,026人が一次検査を受診している。 結果、A1判定が51.5%、A2が47.7%、Bが0.8%であり、Cは1人のみであった。A2は大半が20mm以下の嚢胞であり、Bはほとんどが結節であった。 二次検査は、2012年3月~2014年6月までに1,951人が受診した。結果、B判定からA判定にダウンステージした例が34%、細胞診不要となった例が40%、細胞診実施例が26%であった。細胞診実施例のうち104人が悪性ないしは悪性疑いという結果となった。平均年齢は17.1歳(震災当時14.8歳)、男女比36:68、平均腫瘍径14.3㎜であった。58人の手術例中、乳頭がん55人、低分化がん2人、良性結節1人であった。 また、これら悪性ないし悪性疑い例の実効線量の状況をみると、最大が2.2mSvで67.4%が1mSv以下であった。 甲状腺がんは原発事故後の影響で起こったのか?今回の先行調査の結果からは、地域差が認められていない、発症年齢の分布が非被曝群と変わらない、従来本邦で報告されている腫瘍径よりも小さい、チェルノブイリで認められた乳頭がん亜型は認められていない、などが明らかとなった。 これらのことから、現時点で発見されている甲状腺がんは、超音波による高精度の検診の影響で、より早期に発見された可能性が高く、放射線被曝の影響とは考えにくいという。今後はこの先行調査を甲状腺がん頻度のベースラインとして、引き続き見守っていくことが重要である。

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急性腰痛にデキサメタゾン静注は有効か

 神経根障害を伴う腰痛はデキサメタゾン単回静脈内投与により軽減するのだろうか。オーストラリア・ボンド大学のRavichandra Balakrishnamoorthyらが、救急診療部の患者を対象にプラセボ対照二重盲検比較試験を行い、上記治療の通常治療への追加により神経根障害を伴う腰痛患者の疼痛を短期的に改善することを明らかにした。6週後では効果に有意差はみられなかったものの、デキサメタゾン投与により救急診療部滞在時間が減少することが示唆され、著者は「デキサメタゾン単回静脈内投与は標準的治療の補助療法として安全と考えられる」とまとめている。Emergency Medicine Journal誌オンライン版2014年8月13日号の掲載報告。 試験は、3次救急病院1施設および都市部の救急診療部1施設にて行われた。 対象は、救急診療部の神経根障害を伴う腰痛患者58例で、通常の治療にデキサメタゾン8mgまたはプラセボを単回静脈内投与した。 主要評価項目は24時間後における疼痛強度(視覚アナログスケール[VAS])の試験開始時からの変化量、副次的評価項目は6週後の疼痛強度(VAS)、救急診療部滞在時間、下肢伸展挙上テスト(SLR)、およびオスウェストリー機能スコアであった。  主な内容は以下のとおり。・24時間後におけるVASスコア変化量は、デキサメタゾン群-2.63(95%信頼区間[CI]:-3.63~-1.63)、プラセボ群-0.77(同:-2.04~0.51)で、デキサメタゾン群がプラセボ群より1.86ポイント(95%CI:0.31~3.42、p=0.019)有意に大きかった。・6週後も試験開始時に比べVASスコアの有意な減少が持続していたが、両群で類似していた。・デキサメタゾン群はプラセボ群より救急診療部滞在時間が有意に短く(中央値:3.5時間 vs 18.8時間、p=0.049)、退院時のSLRも改善していた(14.7度、p=0.040)。・オスウェストリー機能スコアは、両群で差はなかった。■「デキサメタゾン」関連記事術前デキサメタゾン追加で術後24時間の嘔吐が低減/BMJ

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40年ぶりの新規抗結核薬の有効性/NEJM

 多剤耐性結核に対して、推奨基本レジメンに抗結核薬ベダキリン(国内未承認)を追加し24週間治療を行った結果、プラセボ追加と比較して120週時点の評価で、培養陰性化がより速やかかつ有意に高率に認められたことが報告された。死亡例はプラセボ群よりもベダキリン追加群が多かったが、因果パターンは示されなかったという。南アフリカ共和国・ステレンボス大学のAndreas H. Diacon氏らによる第2b相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験ステージ2の結果、報告された。ベダキリン(Sirturo、TMC207)は40年ぶりとなる新規の抗結核薬で、結核菌のATP合成酵素を阻害するジアリルキノリン系薬である。第2b相試験ステージ1の8週投与の検討において、ベダキリンの追加投与群では、喀痰培養陰性化までの期間が短縮したことが報告されていた。NEJM誌2014年8月21日号掲載の報告より。推奨基本レジメン+ベダキリンの24週投与について検討 試験は、新たに多剤耐性結核と診断された18~65歳の喀痰スミア陽性患者160例を対象に行われた。被験者は、推奨されている基本レジメンに追加してベダキリン(79例)またはプラセボ(81例)を受ける群に無作為化され24週間投与を受けた(ベダキリンの投与は1日1回400mgを2週間、週3回200mgを22週間)。その後96週間は両群とも基本レジメンのみを投与され、計120週間フォローアップを受けた。 主要有効性エンドポイントは、液体培地での喀痰培養陰性化までの期間であった。24週時点、120週時点ともに、培養陰性率は有意に上昇 喀痰培養陰性化までの期間中央値は、プラセボ群125日に対しベダキリン群83日で、有意に短縮したことが認められた(ベダキリン群のハザード比:2.44、95%信頼区間[CI]:1.57~3.80、Cox回帰分析によるp<0.001)。培養陰性率も24週時点(79% vs. 58%、p=0.008)、120週時点(62% vs. 44%、p=0.04)ともに、ベダキリン群が有意に高かった。 120週時点におけるWHOのアウトカム定義に基づいた多剤耐性結核の治癒率は、ベダキリン群58%、プラセボ群32%であった(p=0.003)。 全体の有害事象の発現率は両群で同程度だった。死亡はベダキリン群10例、プラセボ群2例が報告されたが、投与薬との明らかな因果関係は認められなかった。

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Vol. 2 No. 4 オメガ3系多価不飽和脂肪酸の作用機序 動脈硬化抑制の多面的作用を考える

佐田 政隆 氏徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部はじめにオメガ3系多価不飽和脂肪酸が動脈硬化性疾患の罹病率、死亡率を低下させることは、疫学ならびに前向き臨床研究で明らかとなった。また、オメガ3系多価不飽和脂肪酸がいかにして動脈硬化を予防するかについても、さまざまな研究が行われてきた。本稿では、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の多面的な薬理作用に関して、特に動脈硬化予防の観点から概説したい。オメガ3系多価不飽和脂肪酸による心血管イベント抑制オメガ3系多価不飽和脂肪酸が動脈硬化を抑制する機序については、さまざまな研究が行われてきた。急性心筋梗塞の発症原因として、軽度な狭窄しかきたさない動脈硬化病変の破裂やびらんに起因する急性血栓性閉塞が注目されている。破綻した病変では、脂質コアの増大、被膜の菲薄化、平滑筋細胞数の減少、凝固能の亢進、コラーゲン含有量の減少、炎症細胞浸潤、タンパク分解酵素の発現亢進、プラーク内血管新生などが認められる。最近の分子生物学的研究から、オメガ3系脂肪酸が血管内皮細胞、炎症細胞、血小板に対して多面的作用を及ぼし、病変形成とプラークの不安定化を抑制して、プラーク破綻ならびにそれに引き続いて生ずる血栓性閉塞を予防している機序が解明されてきている。オメガ3系多価不飽和脂肪酸による内皮機能の改善オメガ3系多価不飽和脂肪酸の血管内皮機能改善効果は広く知られている。血管内皮細胞は、血管壁の管腔側を覆う一層の細胞群である。かつては単なる血液と血管壁との境界として考えられていたが、その後、多彩な生理的な機能を有することが明らかにされた。その代表的な機能には、抗血栓作用、血管透過性の制御、さらに血管緊張度や内腔径の調節作用がある。血管内皮細胞は、一酸化窒素(NO)をはじめとする血管拡張物質やエンドセリンなどの血管収縮物質を分泌し、血管の恒常性維持に大きな役割を果たす。生活習慣病は、この内皮機能を障害することによって動脈硬化発症の契機になると考えられている。各種の動脈硬化危険因子は、血管機能を障害することが知られている。現在、いろいろな血管機能検査が開発されてきているが、その中でも、血管内皮機能検査は動脈硬化性の早期の変化を検出するのに有用である。冠動脈疾患患者を対象にして、オメガ3系多価不飽和脂肪酸6週間投与の前後に前腕血流を測定した臨床研究が報告されている。オメガ3系多価不飽和脂肪酸の長期投与により前腕血流の増加がみられ、この効果は、L-NMMAを用いて一酸化窒素合成酵素(NOS)を阻害することでキャンセルされた。EPAの長期投与により内皮機能が改善し、NO産生が亢進したと考えられる1)。オメガ3系不飽和脂肪酸が内皮機能を改善する機序に関しては、内皮型NO合成酵素(eNOS)のタンパクレベルならびに活性が増加することが報告されている(本誌p.14図を参照)2)。また、培養内皮細胞を用いた検討では、オメガ3系多価不飽和脂肪酸によってeNOSが細胞膜のカベオラから解離し、細胞質に移行することでCa2+非依存性に活性化され、NO産生を亢進させると報告されている3)。オメガ3系多価不飽和脂肪酸による抗血小板作用プラークが破綻して血栓性閉塞が生ずると急性心筋梗塞が発症する。オメガ3系多価不飽和脂肪酸は、この血栓形成の足場となる血小板凝集を抑制することにより血栓形成を抑制し、心血管イベントの発生抑制に寄与すると考えられる。Ex vivoにおいて、コラーゲンならびにADPによって誘発される血小板凝集をオメガ3系脂肪酸は抑制する。オメガ3系多価不飽和脂肪酸単独でも血小板凝集能を抑制するが、クロピドグレルなどのチエノピリジン系薬剤に対する上乗せ効果も認められている。注目すべきことには、オメガ3系不飽和脂肪酸は、単独投与ならびにチエノピリジン系薬剤との併用において、出血時間を延長させることがなかったと報告されている。出血の危険性を増加させることなく、血小板凝集を抑制することができることになり、オメガ3系多価不飽和脂肪酸は臨床的に大変有用であると考えられる。オメガ3系多価不飽和脂肪酸による抗血小板作用の機序としては、トロンボキサンA2 (TXA2)の産生抑制が報告されている。血小板内でオメガ6系多価不飽和脂肪酸であるアラキドン酸からTXA2が生成され、血小板内のCa2+濃度が上昇することで凝集することが知られている。アスピリンの抗血小板作用は、TXA2の産生に関与するシクロオキシゲナーゼ(COX)を抑制することによる。オメガ3系多価不飽和脂肪酸は、アラキドン酸と競合することでTXA2の産生を減少させ、抗血小板機能を発揮すると考えられている。オメガ3系脂肪酸による抗炎症作用オメガ3系多価不飽和脂肪酸が、マクロファージの内皮細胞への接着やローリングを抑制し、抗炎症作用を有することは広く知られている4)。その分子機序としては、VCAM-1、ICAM-1、E-selectinなどの接着因子4)やIL-1、IL-8などのケモカインの発現を低下させることが報告されている。近年、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の抗炎症効果の機序としては、いろいろな分子機構が報告されている。オメガ6系多価不飽和脂肪酸であるアラキドン酸は、炎症惹起物質として知られるTXA2や、ロイコトリエンB4(LTB4)などの脂質メディエーターに変換される。一方、オメガ3系多価不飽和脂肪酸からは、TXA2の代わりにTXA3、LTB4の代わりにLTB5が産生される。TXA3やLTB5は、生理活性をほとんど有さないことが報告されている。また、オメガ3系多価不飽和脂肪酸からは、抗血小板作用、血管拡張作用を有するプロスタサイクリン(PGI)2の代わりにPGI3が生成されるが、PGI3はPGI2と同等の生理活性作用を有している(図)。また最近では、脂肪酸代謝物の包括的メタボローム解析から、オメガ3系不飽和脂肪酸由来の、新しい抗炎症性脂質メディエーターも同定されている。オメガ3系不飽和脂肪酸に、チトクロームP450あるいはメチル化されたCOX-2が作用することで生成される18R-HEPEに、5-リポキシゲナーゼが働くとレゾルビンEが生成する5)。レゾルビンEは強力な抗炎症作用を発揮する5)。オメガ3系多価不飽和脂肪酸からは、この他にもレゾルビンDやプロテクチンDなどの抗炎症性の生理活性物質が生成される。これらの物質は急性炎症の収束への関与が示唆されており、オメガ3系不飽和脂肪酸の多彩な動脈硬化抑制作用に関与している可能性が示唆されている。Peroxisome proliferator-activated receptor(PPAR)αは、炎症のさまざまなシグナル伝達との相互作用により炎症反応を調節している核内受容体であるが、EPAは血管内皮細胞やマクロファージのPPARαの発現や活性を強めているという報告がある6)。野生型のマウスでは、EPAが血管内皮においてNF-κBの活性を抑制したが、PPARα欠損マウスではこの現象は認められなかったという7)。さらに最近では、各種脂肪酸が細胞膜表面の受容体のリガンドとして特異的に作用することも報告されている。GPR120では、オメガ3系多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)を含む長鎖脂肪酸がアゴニストとして作用し、腸管細胞からインクレチンの1つであるglucagon-like peptide(GLP)-1の分泌を促すことが報告されている8)。GLP-1は膵臓からグルカゴンの分泌を抑制し、インスリンの分泌を促進して血糖値の上昇を抑制するほか、心血管系などにさまざまな生理作用を持つことで、最近特に注目されている。また、マクロファージや脂肪細胞におけるGPR120の新たな作用が報告され、オメガ3系脂肪酸による抗炎症作用機序の一端が明らかになった9)。マクロファージ細胞株RAW264.7にもGPR120の発現が認められ、GPRアゴニスト(GW9508)、あるいはDHAによる刺激をしたところ、lipopolysaccharide(LPS)依存性の炎症性サイトカイン分泌が有意に抑制された9)。この作用機序として、GPR120に結合するβ-arrestin-2を介するシグナルが、LPS受容体TLR4による炎症性シグナルを阻害することが報告されている。GPR120欠損マウスの腹腔内脂肪組織から単離した間質性血管分画では、野生型と比較して、オメガ3系多価不飽和脂肪酸による炎症性サイトカイン分泌抑制作用が著しく減弱していた。生体内でも同様のことが起こっており、炎症性マクロファージの活性抑制作用によって、インスリン抵抗性改善につながることが示唆された9)。また、オメガ3系多価不飽和脂肪酸によって、脂肪細胞からアディポネクチンの分泌が増加するという報告もある10)。アディポネクチンには、抗炎症作用やインスリン感受性改善作用が報告されており、オメガ3系多価不飽和脂肪酸による血中アディポネクチン上昇も、生体における抗炎症効果に反映しているのかもしれない。図 プロスタノイドの代謝経路細胞膜からアラキドン酸が切り出され、プロスタノイドと総称される、プロスタグランジンやロイコトリエンといった生理活性物質が生成される。オメガ3系不飽和脂肪酸は、TXA2の代わりに活性の少ないTXA3、LTB4の代わりにLTB5に変換される。血管拡張作用や抗炎症効果を持つPGI2の代わりにPGI3が作成されるが、PGI3はPGI2と同等の強い活性を有している。画像を拡大する抗動脈硬化作用われわれは高純度EPAが動脈硬化モデルマウスであるApoE欠損マウスならびにLDL受容体欠損マウスで、動脈硬化の進展を抑制することを報告した4)。高純度EPAの投与により大動脈壁の動脈硬化領域が減少し(本誌p.18図3を参照)、プラークの質が変化した。プラークの不安定性を規定する重要な因子の1つは、プラークの表面を覆う線維性被膜の厚さであり、線維性被膜の菲薄化がプラークの破綻につながる。線維性被膜は、EPA群で対照群に比べ有意に肥厚し、マクロファージの浸潤はEPA群で対照群に比べ有意に低下した。またSirius-red染色では、対照群に比べてEPA群では動脈硬化病変のコラーゲン含有量が有意に増加し、プラークの安定化に寄与していることが示された(本誌p.18図4を参照)。その機序として、EPAを前投与した細胞では、VCAM-1、ICAM-1などの接着因子の発現が抑制された。また、プラークの不安定化に寄与すると考えられるマクロファージからのMMP-2、MMP-9の発現はオメガ3系不飽和脂肪酸によって抑制された4)。さらに、ヒトの頸動脈プラークの内膜切除標本を組織学的に解析した研究でも、オメガ3系多価不飽和脂肪酸の投与によって、動脈病変が安定化することが示されている11, 12)。おわりにオメガ3系多価不飽和脂肪酸は、このように多岐にわたって心血管系に望ましい効果をもたらす。スタチンやレニン・アンジオテンシン系抑制薬の2次予防、1次予防効果は確立しているが、その抑制効果には限界があり、現在“残余リスク”として問題になっており、適切な追加治療法を見いだす必要がある。今後は、血中LDL濃度、HbA1c、血圧などと並んで血中オメガ3系多価不飽和脂肪酸濃度が測定されて、低い人には有効な補充療法が行われる時代が到来するかもしれない。食品から補充しなくても、高純度製剤が医薬品として処方されることは大変ありがたい。オメガ3系不飽和脂肪酸の薬理作用をよく理解して、必要な症例に有効な処方がなされ、イベント抑制につながることが期待される。文献1)Tagawa H et al. Long-term treatment with eicosapentaenoic acid augments both nitric oxide-mediated and non-nitric oxide-mediated endothelium-dependent forearm vasodilatation in patients with coronary artery disease. J Cardiovasc Pharmacol 1999; 33: 633-640.2)Chen J et al. Omega-3 fatty acids prevent pressure overload-induced cardiac fibrosis through activation of cyclic gmp/protein kinase g signaling in cardiac fibroblasts. Circulation 2011;123: 584-593.3)Omura M et al. Eicosapentaenoic acid (epa)induces ca(2+)-independent activation and translocation of endothelial nitric oxide synthase and endothelium-dependent vasorelaxation. FEBS Lett 2001; 487: 361-366.4)Matsumoto M et al. Orally administered eicosapentaenoic acid reduces and stabilizes atherosclerotic lesions in apoe-deficient mice.Atherosclerosis 2008; 197: 524-533.5)Arita M et al. Stereochemical assignment,antiinflammatory properties, and receptor for the omega-3 lipid mediator resolvin e1. J Exp Med 2005; 201: 713-722.6)Michaud SE, Renier G. Direct regulatory effect of fatty acids on macrophage lipoprotein lipase:Potential role of ppars. Diabetes 2001; 50: 660-666.7)Mishra A et al. Oxidized omega-3 fatty acids inhibit nf-kappab activation via a pparalphadependent pathway. Arterioscler Thromb Vasc Biol 2004; 24: 1621-1627.8)Hirasawa A et al. Free fatty acids regulate gut incretin glucagon-like peptide-1 secretion through gpr120. Nat Med 2005; 11: 90-94.9)Oh DY et al. Gpr120 is an omega-3 fatty acid receptor mediating potent anti-inflammatory and insulin-sensitizing effects. Cell 2010; 142: 687-698.10)Itoh M et al. Increased adiponectin secretion by highly purified eicosapentaenoic acid in rodent models of obesity and human obese subjects.Arterioscler Thromb Vasc Biol 2007; 27: 1918-1925.11)Cawood AL et al. Eicosapentaenoic acid (epa)from highly concentrated n-3 fatty acid ethyl esters is incorporated into advanced atherosclerotic plaques and higher plaque epa is associated with decreased plaque inflammation and increased stability. Atherosclerosis 2010;212: 252-259.12)Thies F et al. Association of n-3 polyunsaturated fatty acids with stability of atherosclerotic plaques: A randomised controlled trial. Lancet 2003; 361: 477-485.

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やはり果糖は高血圧に関連せず

 血圧における果糖の悪影響はほとんどの試験で示されていないが、高血圧における果糖の影響が懸念され続けている。そこで、カナダ・Clinical Nutrition and Risk Factor Modification CenterのViranda H Jayalath氏らは、果糖を含む糖(異性化糖、ショ糖、果糖)摂取と高血圧発症との関連を定量化するため、米国の男女における3つの大規模前向きコホート研究の系統的レビューとメタ解析を行った。その結果、果糖全体の摂取量は高血圧リスク増加と関連していなかったことが報告された。Journal of the American College of Nutrition誌オンライン版2014年8月21日号に掲載。 著者らは、2014年2月5日までMEDLINE、EMBASE、CINAHL、Cochrane Libraryから関連研究を検索した。2人のレビュワーがそれぞれ独立して関連データを抽出した。リスク推定値は、逆分散の変量効果モデルを用いて、摂取量の最も低い五分位(基準)と最も高い五分位を比較し、リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)で表した。また、試験間異質性を評価(コクランQ検定)、定量化(I2統計)し、研究の質をNewcastle-Ottawa スケールで評価した。 主な結果は以下のとおり。・3つの前向きコホート(男性3万7,375人、女性18万5,855人)が適格基準を満たし、5万8,162例の高血圧症例が250万2,357人年にわたり追跡された。・果糖摂取量の中央値は、最低五分位では総エネルギーの5.7~6.0%、最高五分位では13.9~14.3%であった。・果糖摂取量は、高血圧発症と関連しておらず(RR:1.02、95%CI:0.99~1.04)、異質性も認められなかった(I2=0%、p=0.59)。・スプライン曲線モデルでは、摂取量が50パーセンタイル以下で負の相関、それ以上で正の相関となるU字型の関係を示した。

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S状結腸鏡での大腸がん検診、発症・死亡を抑制/JAMA

 1回のS状結腸鏡検査、または+便潜血検査を行うスクリーニングは、大腸がんの発生および死亡を抑制したことが示された。ノルウェー・Sorlandet病院のOyvind Holme氏らが50~64歳の一般集団レベルを対象に、スクリーニングをしない集団と比べた無作為化試験の結果、報告した。JAMA誌2014年8月13日号掲載の報告より。ノルウェーで約10万例を対象に無作為化試験 無作為化試験は、ノルウェーのオスロ市とテレマルク県の住民から特定した50~64歳の10万210例を対象に行われた。スクリーニングを1999~2000年(55~64歳群)と2001年(50~54歳群)に行い、2011年12月31日まで追跡した。特定対象者のうち1,415例は、大腸がん、移住、死亡のため除外され、3例は集団レジストリにおいて追跡ができなかった。 スクリーニング群に割り付けられ、受診を促された被験者は、1対1の割合で、1回限りのS状結腸鏡検査を受ける群、または1回限りのS状結腸鏡検査+便潜血検査を受ける群に無作為化された。 スクリーニングで陽性であった被験者(がん、腺腫、10mm以上ポリープ、または便潜血陽性)には大腸内視鏡検査が行われた。対照群には何も介入が行われなかった。 主要評価項目は、大腸がんの発生率および死亡率であった。中央値10.9年後、発生率、死亡率ともにスクリーニング実施群が低値 解析には9万8,792例が組み込まれた。そのうち対照群は7万8,220例、スクリーニング群は2万572例(S状結腸鏡検査群1万283例、S状結腸鏡検査+便潜血検査群1万289例)であった。スクリーニングの受診アドヒアランスは63%だった。 中央値10.9年後、大腸がん死亡例は、スクリーニング群71例に対し対照群330例で、死亡率は10万人年当たり31.4例vs. 43.1例、絶対率差は11.7(95%信頼区間[CI]:3.0~20.4)、ハザード比(HR)0.73(95%CI:0.56~0.94)だった。 大腸がんと診断されたのは、スクリーニング群253例、対照群1,086例だった(10万人年当たり112.6例vs. 141.0例、絶対率差:28.4、95%CI:12.1~44.7、HR:0.80、95%CI:0.70~0.92)。 大腸がんの発生率は、50~54歳群(HR:0.68、95%CI:0.49~0.94)、55~64歳群(同:0.83、0.71~0.96)ともに低下が認められた。また、S状結腸鏡検査単回実施のみ群と、合わせて便潜血検査を行った群で差はみられなかった。

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Na摂取増による血圧上昇、高血圧・高齢者で大/NEJM

 ナトリウム・カリウム摂取量と血圧とには、非線形の相関がみられ、それらは高塩分食摂取者や、高血圧症、高齢者で顕著であることが、カナダ・マックマスター大学のAndrew Mente氏らPURE研究グループによる検討の結果、明らかにされた。ナトリウム摂取量が高値であるほど血圧値が高値である相関性は報告されている。しかし同関連が、ナトリウムまたはカリウム摂取量の違いや集団の違いで異なるのかについては、これまで検討されていなかった。NEJM誌2014年8月14日号掲載の報告より。18ヵ国10万2,216人の成人について分析 PURE(Prospective Urban Rural Epidemiology)研究グループは、18ヵ国10万2,216人の成人について、電解質排泄量と血圧との関連を評価する検討を行った。 単回採取の早朝空腹時尿検体から24時間尿中ナトリウム・カリウム排泄量を推定し、ナトリウム・カリウムの摂取量の代替指標として用いた。血圧の測定は自動血圧計で行った。 被験者は、年齢51.0±9.7歳、女性は57.2%、低位中所得国者が53.6%(うち中国が42.1%)、高位中所得国25.1%、高所得国14.2%、またBMI値26.1±5.1、糖尿病7.1%、自己申告の高血圧症または≧140/90mmHgの人は42.0%などの特性を有していた。平均ナトリウム摂取量は4.93±1.73g、カリウムは2.12±0.60gと推定され、女性よりも男性で摂取量が多い傾向がみられた(いずれもp<0.001)。相関の傾きは、ナトリウム高摂取、高血圧症、高齢者ほど急に 回帰分析の結果、推定ナトリウム排泄量が1g増加するごとに、収縮期血圧は2.11mmHg、拡張期血圧は0.78mmHgの上昇が示された。この相関の傾きは、ナトリウム摂取量が多いほど急であり、ナトリウム排泄量が5g/日超において収縮期血圧は2.58mmHg/g、同3~5g/日では1.74mmHg/g、3g/日未満では0.74mmHg/gの上昇が示された(交互作用についてp<0.001)。 また相関の傾きは、高血圧症者(2.49mmHg/g)のほうが非高血圧症者(1.30mmHg/g)よりも急であり(交互作用p<0.001)、年齢が高いほど大きくなった。すなわち55歳超では2.97mmHg/g、45~55歳では2.43mmHg/g、45歳未満では1.96mmHg/g(交互作用p<0.001)だった。 一方、カリウム排泄量と収縮期血圧とには、負の相関が認められた。相関の傾きは高血圧症者のほうが非高血圧症者よりも急であり(p<0.001)、年齢が高いほど大きかった(p<0.001)。

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6分間歩行で統合失調症患者の身体評価

 フランス・モンペリエ第1大学のP. Bernard氏らは、統合失調症患者を対象とした研究での6分間歩行試験(6MWT)の意義について、システマティックレビューにて評価を行った。その結果、統合失調症患者が6分間に早歩きできる距離(6MWD)は健常成人と比べ概して短いこと、BMIが高値、喫煙量が多い、高用量の抗精神病薬服用、身体的な自己認識が低いことと負の関係にあることなどを報告した。そのうえで著者は、統合失調症患者の身体的健康モニタリングに6MWTが使用可能であるとし、「今後の研究において、その予測因子としての役割を検討するとともに、その測定特性の評価を継続すべきである」と述べている。Disability and Rehabilitation誌オンライン版2014年8月7日号の掲載報告。 6MWTは、6MWDを測定する亜最大運動負荷試験である。研究グループは、介入効果を測定する際の6MWTの適合性を評価し、統合失調症患者の6MWDを一般集団およびマッチさせたコホートと比較、また6MWD決定要因の特定、6MWTの測定特性や品質手順などを調査した。5つのデータベースを用いて、2013年8月に公表されたフルテキスト文献をシステマティックレビューした。 主な結果は以下のとおり。・16件の研究が選択された。・6MWDの有意な増加を報告した介入研究がなかったため、介入の影響を測定する際の6MWTの適合性については評価を行わなかった。・成人統合失調症患者の歩行距離は、健常成人と比較して全般的に短いようであった。・レビュー対象となった研究の平均6MWDは、421~648mの範囲にあった。・統合失調症患者において、通常、6MWDはBMI高値、喫煙量が多い、高用量の抗精神病薬、低い身体的自己認識と負の関係にあった。・6MWTの信頼性は高かったが、これまで、その基準の妥当性について検討されていなかった。・ガイドラインが存在するにもかかわらず、レビュー対象の研究で用いられていた6MWTの方法には大きなばらつきがあった。・将来、統合失調症患者に対して推奨される身体的健康モニタリングに6MWT を含めるべきであることが示唆された。・6MWTはリハビリテーションに影響を及ぼし、統合失調症患者における機能的運動能力を評価するものであった。・治療介入の影響を6MWTで測定した患者は確認できなかった。・以上の結果を踏まえて著者は、「臨床医は、統合失調症における機能的運動能力を考える際、過体重、抗精神病薬の使用、身体に関する自己認識などを考慮に入れるべきである。また、重篤な精神疾患患者に6MWTを施行する際には、米国胸部学会などによる国際標準に従うべきである」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症に対し抗精神病薬を中止することは可能か 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか 統合失調症患者の突然死、その主な原因は  担当者へのご意見箱はこちら

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暴力的なゲームが子供の心に与える影響は

 米国・UTHealth公衆衛生院のTortoleroSusan R氏らは、前思春期において、暴力的なビデオゲームを毎日することと、うつ病との関連を調べた。結果、両者間には有意な相関性があることが判明した。著者は、「さらなる検討で、この関連における因果関係を調査し、症状がどれほどの期間持続するのか、また根底にあるメカニズムと臨床的な関連性を調べる必要がある」と報告している。Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking誌オンライン版2014年7月9日号の掲載報告。 検討では前思春期において、ここ1年間に毎日、暴力的なビデオゲームを行っていたことと、うつ症状例増大との関連が認められるかを調べた。5,147人の小学5年生とその保護者から断面調査にて集めたデータを分析した。被験者は、米国3都市で行われたコミュニティベースの縦断調査Healthy PassagesのWave I(2004-2006)の参加者だった。 主な結果は以下のとおり。・線形回帰分析の結果、暴力的なビデオゲームの接触と抑うつ症状が関連していることが認められた。性別、人種/民族、仲間いじめ(peer victimization)、暴力を目撃すること、暴力で脅されていること、攻撃性、家族構成、世帯所得で補正後も変わらなかった。・「非常に暴力的(high-violence)なテレビゲームを1日2時間超する」と回答した児童では、「それほど暴力的ではない(low-violence)テレビゲームを1日2時間未満する」と回答した児童と比べて、抑うつ症状が有意に強いことが判明した(p<0.001)。・この関連性の強さは小さかったが(Cohen's d=0.16)、人種/民族の全サブグループ、および男児で認められた(Cohen's d:0.12~0.25)。関連医療ニュース ゲームのやり過ぎは「うつ病」発症の原因か 大うつ病性障害の若者へのSSRI、本当に投与すべきでないのか 小児および思春期うつ病に対し三環系抗うつ薬の有用性は示されるか  担当者へのご意見箱はこちら

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