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2024/07/10
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英語勉強法2【Dr. 中島の 新・徒然草】(485)

四百八十五の段 英語勉強法2前回に引き続き、英語勉強法その2を述べたいと思います。今回はスピーキング、つまり「話す」技能です。まずは自分自身のニーズをはっきりさせておきましょう。どのような場面で英語を話すことを想定しているのか?それが大切です。私ならこんな感じでしょうか。外国人の診療国際学会での口演発表学会後の懇親会での初対面の外国人との会話とくに最後のものが一番難しいのではないかと思います。1つの対策としては、鉄板ネタを持っておくというのがあります。ここで皆さんは「そこまでやる?」思うかもしれません。でも、プロほど準備周到です。かつて吉本の芸人さんが述べていたのを聞いたことがあります。いきなり「面白い話して!」と一般人に無茶振りされることがあるのだとか。で、いつも原稿用紙30枚分の話を準備しているそうです。プロですらそこまでやるのですから、われわれ素人が準備するのは当然。体験談やエピソードを語る時のパターンも決まっています。前回も紹介したYouTubeの「ニック式英会話」では、こんな例が挙げられていました。出だしこないだ怖いことがあってね状況説明〜していたら出来事こういうことがありました。という形です。最初の「怖いこと」の部分は“Something scary happened.”となりますが、この部分は「恥ずかしいこと」とか「ラッキーなこと」という形でも応用できます。次の状況説明は、英語でも日本語でも過去進行形を使うのだとか。たとえば、“I was walking down the street,”(通りを歩いていたら)みたいな形になります。そして出来事は英語でも日本語でも過去形。先の例に続けてみると、“and a guy came up to me.”(男の人が話し掛けてきた)となります。こういったいろいろな場面でのスピーキングの練習は、オンライン英会話がピッタリ。私が利用しているレアジョブなら、1回25分のレッスンで講師はフィリピン人。まずはレッスンの冒頭で自分のニーズを明確に伝えます。時々ある英語での外国人診療が上手くなりたい、など。だから患者役となって練習に付き合ってほしい、と言えばいいですね。すると彼女らはここぞとばかり、自分の頭痛、母親の手術、親戚の病気など、ありとあらゆる医学的疑問をぶつけてきます。まるで無料医学コンサルタントみたいなもんで、心の中ではきっと「ラッキー!」と思っていることでしょう。で、医学的には簡単な話でも、英語となると出てきません。「片頭痛って何だったかな?」と苦しんだ挙句、日本語に引きずられてone-side headacheなどと言ったら意味が通じません。片頭痛はmigraineですね、正しく伝えましょう。痛みの性状を表現する「拍動性」というのも難しいです。パッと出てくるのはpulsatileですが、一般人に通じるのでしょうか?むしろpoundingのほうが良いかもしれません。レッスンで四苦八苦した後は、別の講師相手に同じ話題で臨むのがいいと思います。何しろ講師は3,000人以上いるので、毎日新しい人にレッスンを受けることも可能です。そうすれば「また同じ話か」と思われることは決してありません。きっと少しずつスムーズに話せるようになることでしょう。オンライン英会話も狙いを持ってやることが大切ですね。最後に1句汗かけど なかなか出ない 英単語

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COVID-19罹患前の睡眠状態が長期的な罹患後症状に影響

 多くのCOVID-19生存者が長期にわたる罹患後症状を経験しており、公衆衛生上の深刻な問題となっている。これまでのところ、COVID-19罹患後症状の状態に影響を及ぼすリスク因子の特定はあまり進んでいない。イタリア・ラクイラ大学のFederico Salfi氏らは、COVID-19の長期的な罹患後症状の発生に対する感染前の睡眠の質や時間、不眠症の重症度の影響について評価を行った。その結果、感染前の睡眠の質/量および不眠症重症度には、罹患後症状の発生数と用量依存的な関連性があることが示唆された。著者らは、「睡眠の健康状態の予防的な改善がCOVID-19の罹患後症状を軽減できるかを判断するためには、さらなる研究が必要である」としている。Brain, Behavior, and Immunity誌8月号の報告。  本研究は、2020年4月と2022年4月の2つの評価を含めたプロスペクティブ研究である。ベースライン時(2020年4月)に、SARS-CoV-2感染が現在または過去にない参加者において、睡眠の質/時間、不眠症状を評価した。睡眠状態の評価には、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、不眠症重症度質問票(ISI)を用いた。フォローアップ時(2022年4月)には、COVID-19生存者に対し、罹患後1ヵ月(713例、2020年4月~2022年2月に感染)および3ヵ月(333例、2020年4月~2021年12月に感染)の21症状の有無をレトロスペクティブに調査した。また、COVID-19から完全に回復するまでの期間も調査した。長期的な罹患後症状の数に対する感染前の睡眠状態の影響を推定するため、zero-inflated負の二項回帰モデルを用いた。睡眠変数、罹患後症状それぞれの発生率と、感染4週後/12週後の回復割合との関連性の評価には、二項ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・感染前の睡眠状態が、COVID-19後1ヵ月/3ヵ月の罹患後症状の数に大きく影響していることが明らかとなった。・過去にPSQIスコア、ISIスコアが高く、睡眠時間が短い人では、COVID-19後1ヵ月/3ヵ月の時点におけるほぼすべての長期的な罹患後症状のリスクが有意に高かった。・ベースライン時の睡眠障害は、COVID-19後、感染前の日常的な機能レベルに戻るまでの期間が長期化することとも関連していた。

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COVID-19関連の嗅覚・味覚障害はパンデミック初期の6%に減少

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの初期には、嗅覚や味覚の障害が罹患時の特徴的な症状の一つとして位置付けられていた。しかし、もはやそうではないことが明らかになった。現在ではCOVID-19罹患者に嗅覚・味覚障害を生ずる割合は、パンデミック初期のわずか約6~7%だという。米バージニア・コモンウェルス大学のEvan Reiter氏らの研究によるもので、詳細は「Otolaryngology-Head and Neck Surgery」に5月26日掲載された。 Reiter氏らはこの研究に、パンデミック発生以来、新型コロナウイルス検査が陽性と判定された700万人以上の患者の経過が記録されているデータベースを用いた。2020年4月27日~6月18日をベースラインとして、COVID-19発症後2週間以内に患者が嗅覚・味覚障害を訴えるオッズ比(OR)を算出。すると、アルファ株が主流となった時期はOR0.744、デルタ株が主流となった時期はOR0.637と、嗅覚・味覚障害を訴える患者が経時的に減少していた。 そしてさらに2022年以降、オミクロン株が主流になると、オミクロンKでOR0.139、オミクロンLでOR0.079、オミクロンCでOR0.061、オミクロンBではOR0.070と、オッズ比がより低下してきていた。Reiter氏は、「パンデミックの初期には、嗅覚と味覚の喪失がCOVID-19の一般的な症状と考えられていた。PCR検査を行える件数が限られていた時期、多くの医師がその症状を頼りに診断していた。しかしわれわれの研究結果は、嗅覚・味覚障害の有無がもはやCOVID-19診断の信頼できる指標ではないことを示している」と解説。続けて、「つまり今では、体調が不良でも嗅覚・味覚障害がないからといってCOVID-19の可能性を除外することはできず、反対に嗅覚・味覚障害があるからといってCOVID-19だと断定もできない」と話している。 COVID-19罹患時に嗅覚・味覚障害を生ずる人が減少している理由について、研究者らは「詳細は不明だが、人々の免疫力が高まっていることが関係している可能性がある」としている。Reiter氏は大学発のリリースの中で、「ワクチン接種、またはウイルスに一度感染することは、一般的には次に感染した際の重症度を軽減する」と述べている。 ただ、同氏は「パンデミック初期に比べればはるかに少なくなったとはいえ、現在でもCOVID-19のために嗅覚・味覚障害を生じている患者が依然として存在している。嗅覚・味覚障害はそれ自体が生活の質を大きく下げるとともに、健康的な食生活の妨げともなる」とし、COVID-19に伴う嗅覚・味覚障害がいまだ重要な問題であることを指摘。同氏は、「幸いなことに、この症状に苦しむ人々に対する効果的な治療法を見つけるため、現在多くの研究が行われている」と付け加えている。 なお、この研究には、医学研究を支援している財団であるMEDARVA財団が資金を提供した。

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英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(3)スムーズに伝えるコツ【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第19回

英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(3)スムーズに伝えるコツ前回、前々回で紹介したように、科学的な内容の発表・議論では、数字の口語表現を素早く正確に理解することがきわめて重要です。今回は、そのために個人的に有効だと感じている「コツ」を紹介します。1)桁数の多い数字は省略して読み上げる科学的な研究発表では、桁数が多い数字をスライドに表示することがよくあります。前々回で紹介したように、英語の数字の読み方は、単純なルールを覚えていればさほど難しくはありません。ただし、数字の桁数が多くなると、スムーズに読み上げることは簡単ではありません。たとえば、「1,234.56」という数字を、“one thousand two hundred thirty-four point five six”と読むためのルールを学習することは難しくはありませんが、これをプレゼンの中でスムーズに読み上げることは意外と困難です。試しに早口言葉のように口に出して2、3回読んでみてください。プレゼンの現場では、頭で計算して得られたこの数字を瞬時に口に出して伝える技能も必要です。この対策としては、シンプルですが、「省略して読み上げる」ことをお勧めします。スライドには実際の数字をすべて記載しますが、それを読み上げる際には省略しても問題はありません。むしろ、省略したほうが発表者の解釈を含むことができるので、聞きやすくなることも多いのです。以下の表のように、“more than”や“less than”の表現を使うと読みやすさは圧倒的に改善されますし、また「数字の大小のどちらに意義があるのか」を伝えることができます。たとえば、「1,234,567人の患者ががんに罹患している」というスライドがあり、その数字の大きさを伝える時に、“one million two hundred thirty-four thousand five hundred sixty-seven patients have cancer”とそのまま読み上げるよりも、“more than one million patients have cancer”と言ったほうが、話しやすく、伝わりやすく、理解もされやすいはずです。「おおよそ」「だいたい」「約」を表現する“about”、“approximately”、“roughly”は、主観や解釈を交えず客観的な数字として伝えたい場合に、より適しています。〈表〉画像を拡大する2)話しやすい表現を選択する数字の表現が行き交う英語の議論では、数字の概念のインプット、理解・考察、アウトプットまでを正確かつ遅滞なく行うことが必要です。そのためには、自分が理解して使いやすい表現を知っておくことも重要です。たとえば、割合の表現は「分数」でも「パーセント」でも表現できますが、個人的にはパーセントのほうが使いやすいと感じます。“two fifths of the cases”(このケースの5分の2は…)と言うよりも、“40% of the cases”(このケースの40%は…)と言ったほうが発音しやすく、多くの日本人にとって使いやすいでしょう。また、「患者23/30例(76.7%)」という表現は、臨床研究で頻用されます。私は“out of”の“v”音を明確に発音することが苦手なので、“23 out of 30”よりも、“23 in 30”を使います。また、その後の“76.7%”をそのまま読み上げているとスピーキングの流れが滞ってしまうので、省略した表現にします。よって、私であれば「患者23/30(76.7%)」というスライドの記載であれば、“23 in 30 patients, which is about 80%”と読み上げます。3)Practice makes perfect!英会話全般に共通することですが、単語・文法などの知識を詰め込むだけでは自然なスピードで会話や議論をすることは難しく、反復練習で耳と脳と構音機能を鍛えることがきわめて重要です。数字が飛び交う英語の議論に付いていくうえでは、スピーキング、リスニングの両方において、数字の概念と英語表現が頭の中で直接リンクして、日本語を介在させないで理解できることが不可欠です。私の経験では、この数字と英語の強固なリンクの形成には、臨床留学をして、日常的にバイタルサインや検査値などを回診で話し合う状況に身を置いてから、さらに数ヵ月を要したので、日本で習得をするためには十分な学習時間を確保する必要があるでしょう。講師紹介

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第171回 米国でフル承認のアルツハイマー病薬lecanemabの患者負担のほどは?

病状進行を抑制し、認知機能や日常生活機能の低下を遅らせることが第III相試験(Clarity AD)で裏付けられたことを受けて、エーザイとバイオジェンのアルツハイマー病薬lecanemab(商品名:LEQEMBI)が米国で晴れて承認されました1,2,3)。これまでは取り急ぎの承認でしたが、今回フル承認(traditional approval)に至ったことで同国政府の公的保険メディケアの支払対象になる道が開けます4)。メディケアの受給者は65歳以上の高齢者です。ゆえに、高齢者に多いアルツハイマー病の治療のほとんどはメディケアの支払い対象となります。lecanemabの取り急ぎの承認が不動になったら、医師が治療の経過を記録して提出することを条件に同剤の費用を負担するとメディケアは先月発表しています。ただし全額負担ではありません。同剤の薬価は1年当たり2万6,500ドル(約378万円)です。メディケアは同剤の費用の約80%を支払います。残りの20%ほどを患者は自腹か何らかの手段で捻出する必要があります。米国のもう1つの公的保険メディケイドの受給対象でもある一部の低所得の患者は自己負担が一切なく同剤を使えますが、保険がメディケアだけという患者の同剤使用の1年あたりの自腹出費は6,600ドル(約94万円)にも達します5,6,7)。その額はメディケア受給者の所得中央値の5分の1ほどに相当します。日本でlecanemabは今年1月16日に承認申請されて承認審査段階にあります。今回の米国フル承認までのFDAの扱いと同様に国内でも優先審査されており、間もなく9月までには承認される見込みです。いわゆる“太り過ぎ”レベルのBMIのほうがむしろ死亡率が低い話は変わって肥満未満の太り過ぎの人の死亡率は高くなく、どちらかというとむしろ低いことを示した試験結果を紹介します。試験では米国の成人約50万人を体重指標BMIで9つに区切って中央値9年(0~20年)の経過を比較しました。その結果、BMIが30以上で肥満の域の人では適正とされるBMI範囲(22.5~24.9)の人に比べてさすがに死亡率が高かったものの、肥満域未満の太り過ぎの範囲のBMIの人の死亡率は高くありませんでした8)。BMIが肥満の域に達していない範囲で高い人の死亡率はむしろ低く、BMIが25~27.4の人の死亡率はBMIが22.5~24.9の人より5%低いことが示されました9)。BMIが肥満域により近い27.5~29.9の人はなんともっと死亡率が低く、22.5~24.9の人の死亡率を7%下回りました。病気が原因の体重減少の影響を排除することを目的として追跡開始2年以内の死亡例を除外して解析しても同様の結果となりました。目下の分類で太り過ぎの域にあるBMIの人がそれ以下のBMIの人に比べてより健やかと今回の結果をもって結論するのは時期尚早であり、さらなる検討が必要です。今回の結果から言えることは、BMIは死亡率のうってつけの指標というわけではなさそうということであり、脂肪の体内分布などの他の指標の考慮も必要なようです9,10,11)。カロリー制限時の代謝低下を防ぐホルモンを同定太っていることを一概に不健康と決めつけることはできませんが、体重を減らすことは病気治療の有効な手段の1つでもあります。たとえば、食事のカロリーを抑えて体重を減らすことは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)治療の有効な手立ての1つですし、2型糖尿病患者のインスリンの効きを良くする効果もあります。しかし多くの人の体重減少はたいてい長続きしません。エネルギー消費を抑えるように体が順応してしまうことがその一因ですが、その順応の仕組みはこれまでよくわかっていませんでした。GDF15というホルモンを高脂肪食のネズミに与えると肥満が減り、GDF15の受容体であるGFRALを介した摂食(あるいは食欲)抑制のおかげで血糖値推移が改善することが先立つ研究で知られています。エネルギー消費を抑えてしまう順応をそのGDF15が食い止め、カロリー制限中でもエネルギー消費が維持されるようにする働きを担うことがカナダ・マクマスター大学のチームによる研究で示されました12)。GDF15を与えたマウスの体重は摂取カロリーが同じのGDF15非投与マウスに比べて減り続け、その作用は脂肪ではなく筋肉でのエネルギー消費亢進によることが判明しました。人ではどうかを今後の研究で検証する必要があります。人でのGDF15の働きを調べることで食事に気を付けても体重がなかなか減らない人に有益な手立てをやがて生み出せるかもしれません13)。また、肥満治療として注目を集めるGLP-1標的薬との相乗効果も期待できそうです。今回の研究には肥満治療のGLP-1標的薬を他に先駆けて世に送り出したNovo Nordiskが協力しています。参考1)「LEQEMBI®」(レカネマブ)、アルツハイマー病治療薬として、米国FDAよりフル承認を取得 / エーザイ2)FDA Converts Novel Alzheimer's Disease Treatment to Traditional Approval / PRNewswire3)FDA Grants Traditional Approval for LEQEMBI? (lecanemab-irmb) for the Treatment of Alzheimer's Disease / PRNewswire4)US FDA grants standard approval of Eisai/Biogen Alzheimer's drug / Reuters5)Annual Medicare spending could increase by $2 to $5 billion if Medicare expands coverage for dementia drug lecanemab / UCLA Health6)Explainer: Who is eligible for the new FDA-approved Alzheimer's drug? / Reuters7)Arbanas JC, et al. JAMA Intern Med. 2023 2023 May 11. [Epub ahead of print]8)Visaria A, et al. PLoS One. 2023;18:e0287218. 9)Having an 'overweight' BMI may not lead to an earlier death / New Scientist10)‘Overweight’ BMI might be set too low / Nature11)No increase in mortality for most overweight people, study finds / Eurekalert12)Dongdong Wang D, et al. Nature. 2023;619:143-150.13)Having an 'overweight' BMI may not lead to an earlier death / New Scientist

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医師によるうつ病の重症度評価と患者本人の苦痛の乖離に、幼少期の逆境体験などが関与

 医師が臨床的に評価した重症度よりも強い苦痛を感じているうつ病患者には、幼少期の逆境体験や自閉症傾向などが多く見られるとする、国立精神・神経医療研究センターの山田理沙氏、功刀浩氏(現在の所属は帝京大学医学部精神神経科学講座)らの研究結果が、「Clinical Psychopharmacology and Neuroscience」に5月30日掲載された。著者らは、「うつ病の重症度評価において、患者の主観的な苦痛の強さを把握することが、より重要なケースが存在する」と述べている。 近年、患者中心の医療の重要性が認識されるようになり、精神科医療でも治療計画の決定などに患者本人の関与が推奨されるようになってきた。これに伴い、うつ病の重症度についても、医師が評価スケールなどを用いて判定した結果と、患者への質問票による評価結果が一致しないケースのあることが分かってきた。ただ、そのような評価の不一致に関連する因子はまだ明らかにされていない。 研究の対象は、2017年10月~2020年2月に国立精神・神経医療研究センター病院気分障害センターの外来を受診した、17歳以上の大うつ病性障害(MDD)患者60人および双極性障害(BD)患者40人、計100人〔年齢中央値33歳(四分位範囲24~46)、男性52%〕。診断は、米国精神医学会の診断基準の第4版(DSM-4)に即して行われた。 医師によるうつ病の重症度評価には「ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)」、患者自身の主観的評価には「ベック抑うつ質問票(BDI)」を用いた。両者の評価結果の関連を検討したところ、有意な正相関(r=0.624、P<0.001)が認められた。 次に、HAMD-17とBDIの回帰直線からBDIスコアまでの乖離の程度の四分位数で、全体を以下の3群に分類。BDIスコアが回帰直線より高値であり、その乖離幅の大きい25%の群を、医師の評価よりも主観的な苦痛の大きい群(BO群)とした。反対に、BDIスコアが回帰直線より低値であり、その乖離幅の大きい25%の群を、医師の評価よりも主観的な苦痛が少ない群(BU群)とし、残りの50%は両者の評価が一致している群(BC群)とした。これら3群間に、年齢、性別や疾患(MMD、BD)の分布、自殺未遂の既往、治療薬、教育歴、およびHAMD-17などに有意差はなかった。 医師の重症度評価と患者の主観的評価に関連する可能性のある因子としては、幼少期の逆境体験(CTQ-6)、成人用対人応答性尺度(SRS-A)、問題への対処行動の傾向(WCCL)を評価した。それらの評価結果をBO群、BU群、BC群で比較すると、一部のスコアに有意な群間差が認められた。 例えばCTQ-6については、合計スコア、および精神的虐待を表す下位尺度が、BU群よりBO群の方が高値だった。下位尺度のうち身体的虐待および情緒的ネグレクトについては、3群間に有意差がなかった。また、SRS-Aについては、合計スコアと自閉症傾向を表す下位尺度などが、BC群やBU群よりBO群の方が高値だった。WCCLに関しては、自責スコアはBC群やBU群よりBO群が高く、希望的観測と回逃・避避のスコアはBC群よりBU群の方が低かった。 著者らは本研究の限界点として、サンプル数が十分でなく比較的若年の患者が多いこと、大半の患者が既に薬物療法が開始された状態で検討していること、BD患者の躁症状については主観的評価を行っていないことなどを挙げている。その上で、「幼少期の逆境体験や自閉症傾向、問題に対して自責の念を抱きやすい傾向などを有するうつ病患者は、臨床医が客観的に評価するよりも大きな苦痛を感じている可能性がある」と結論付け、「そのような懸念のある患者では、主観的評価を積極的に行うべきではないか」と提言している。

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バイアグラと酒の併用が生んだ悲劇【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第237回

バイアグラと酒の併用が生んだ悲劇illust ACより使用シルデナフィル(商品名:バイアグラ)は、海綿体の血管系に存在するホスホジエステラーゼ5を阻害することで陰茎の勃起を助ける働きがあります。シルデナフィルとアルコールを併用しても、ネットでは「とくに相互作用があるわけではないため安全」という見解が主流で、適度の飲酒の内服は可能と書いているウェブサイトのほうが多いと思います。Pandit JN, et al.Rare fatal effect of combined use of sildenafil and alcohol leading to Cerebrovascular Accident.J Forensic Leg Med. 2023;95:102504.これはインドから報告された法医学の症例報告です。インドでは、とくに若年層におけるシルデナフィルの無認可の流通が増えており、不適切な使用が懸念されています。シルデナフィルの副作用として、頭痛、顔面紅潮、鼻づまり、血圧低下などが報告されています。軽度の頭痛であれば心配不要ですが、今回紹介するのは脳出血によって死亡した症例です。とくに既往歴のない41歳男性が、女性とホテルの一室に宿泊していました。夜にシルデナフィル50mgを2錠、そしてアルコールを摂取していました。翌朝、彼は気分不良を訴え病院に搬送されましたが、残念ながら到着時にはもう死亡していました。解剖では、右大脳基底核から両側脳室、大脳皮質にかけて約300gの凝血塊を伴う脳浮腫が観察されました。ミクロでは、心室壁の肥大、肝臓の脂肪変性、急性尿細管壊死、高血圧性変化などが確認されました。40代の男性がシルデナフィルとアルコールを併用して、脳出血を起こし搬送された症例がトルコからも報告されています1)。こちらの症例は一命を取りとめています。シルデナフィルをアルコールと併用することはそもそも推奨されているわけではありませんが、常識的な低量アルコールによる大きな副作用は報告されていません。本当に両者の併用に何らかのリスク上昇はないのか、規模の大きな検討が必要かと思われます。1)Antar V, et al. Subarachnoid and intracerebral hemorrhage after alcohol ingestion and illicit use of sildenafil. Turk Neurosurg. 2015;25(3):485-487.

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新型コロナ、軽症でも精子に長期ダメージ

 欧州ヒト生殖医学会(European Society of Human Reproduction and Embryology:ESHRE)第39回年次総会で発表された新たな知見によると、COVID-19に感染した男性は、3ヵ月以上が経過しても精子の濃度が低下し、泳ぐことのできる精子も減少していたという。同学会が2023年6月26日付のプレスリリースで発表した。 スペイン・IERA財団の生殖専門家であるRocio Nunez-Calonge氏は、COVID-19感染後、平均100日が経過しても精子の質と濃度に改善はみられなかった、と述べた。 「COVID-19感染後、短期的に精液の質が影響を受けることを示した研究は過去にあるが、私たちが知る限り、長期間追跡調査した研究はなかった。新しい精子が生成されれば、精液の質は改善すると考えられていたがそうではなかった。精液の質が回復するのにどれくらい時間がかかるかは不明であり、たとえ軽症の感染であっても、永久的なダメージを受けた可能性もある。」 Nunez-Calonge氏は、生殖補助医療のためにスペインのクリニックに通院している一部の男性において、COVID-19感染後に回復し、軽症であったにもかかわらず、精液の質が悪化している患者がいることを確認していた。そこで、COVID-19感染が精液の質の低下に影響しているかどうかを調査した。 「新しい精子を作るまで 約78日かかるので、COVID-19から回復して少なくとも3ヵ月後に精液の質を評価するのが適切だと考えた」とNunez-Calonge氏は述べた 2020年2月~2022年10月、スペインの6つの生殖クリニックに通う男性45例が組み入れられた。全員が軽症のCOVID-19と診断されており、クリニックには感染前に採取された精液サンプルの分析データがあった。感染後17~516日に別の精液サンプルを採取した。患者の平均年齢は31歳、感染前と感染後のサンプル採取の経過日数中央値は238日だった。研究者らは、感染後100日以内の全サンプルを分析し、その後100日以上が経過したサンプルのサブセットを分析した。 その結果、精液量:2.5mL→2mL(20%減)、精子濃度:射精液1mLあたり6,800万→5,000万(26.5%減)、精子数:精液1mLあたり1億6,000万→1億(37.5%減)、総運動率:49%→45%(9.1%減)、生きた精子の数:80%→76%(5%減)に統計学的有意差を認めた。 Nunez-Calonge氏によれば、運動性と総精子数が最も深刻な影響を受けたという。半数の男性の総精子数は、感染前後で57%減少していた。そして、感染後100日以上経過してサンプルを提供した男性グループを調査したところ、精子の濃度と運動性は依然として改善されていなかった。 「軽度の感染であっても、ウイルスによる永続的なダメージが原因である可能性がある。臨床医はSARS-CoV-2が男性の生殖能力に及ぼす有害な影響について認識すべきだ。」 SARS-CoV-2が睾丸や精子に影響を与えることは知られているが、そのメカニズムはまだわかっていない。Calonge氏によれば、Long COVID患者にみられる炎症や免疫系の損傷が関与している可能性があるという。 本研究に関与していない、ESHRE委員長であるリスボン北部病院センターのCarlos Calhaz-Jorge 氏は「本研究はCOVID-19感染後の不妊患者の長期フォローアップの重要性を示している。しかし、感染後の患者の精液の質は、世界保健機関(WHO)が定める『正常な』精液と精子の基準内であることに注意する必要がある。COVID-19感染後の精液の質の低下が生殖能力の低下につながるかどうかは不明であり、さらなる研究の対象とすべきである」とコメントしている。

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IL-6R阻害薬、irAE改善効果とICIの効果への影響

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、広範ながん種において生存率の向上をもたらし、使用が拡大している。しかし、ICIによって生じる免疫関連有害事象(irAE)が治療の中断・中止の原因となるため、その管理が重要である。irAEに対する標準治療は副腎皮質ステロイドであるが、高用量かつ長期間の使用は、抗腫瘍免疫の減弱や有害事象の原因となる可能性がある。そこで、米国・Laura and Isaac Perlmutter Cancer CenterのFaisal Fa'ak氏らは、後ろ向き研究によりIL-6受容体(IL-6R)阻害薬のirAEに対する有効性と、ICIの抗腫瘍効果への影響を検討した。その結果、IL-6R阻害薬は、ICIの抗腫瘍効果を減弱せずにirAEを改善することが示唆された。本研究結果は、Journal for ImmunoTherapy of Cancer誌2023年6月11日号で報告された。 がん治療のためにICIを投与された患者のうち、ICI投与後にirAEが発現または自己免疫疾患が再燃し、IL-6R阻害薬(トシリズマブまたはサリルマブ)が投与された患者92例を対象に、後ろ向き解析を実施した。主要評価項目は、irAEの臨床的改善(irAEや自己免疫疾患の再燃の消失、またはGrade1以下への改善)であった。副次評価項目は、IL-6R阻害薬に関連する有害事象、RECIST v1.1に基づくICIの奏効率(ORR)であった。 主な結果は以下のとおり。・主な患者背景は、ICI投与開始時の年齢中央値61歳、男性63%で、ICIによる治療は抗PD-1抗体薬単剤が69%、抗CTLA-4抗体薬と抗PD-1抗体薬の併用療法が26%であった。主ながん種(5%以上)は、悪性黒色腫(46%)、泌尿生殖器がん(35%)、肺がん(8%)であった。・IL-6R阻害薬投与の理由となった主なirAE(2例以上に発現)は、炎症性関節炎(73%)、胆管炎/肝炎(7%)、筋炎/重症筋無力症/心筋炎(5%)、脳炎(5%)、リウマチ性多発筋痛症(4%)であった。・irAEの発現からIL-6R阻害薬投与開始までの期間の中央値は3ヵ月(範囲:0.03~51.0)であった。対象患者のうち91%は、副腎皮質ステロイドや疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)による十分な治療効果が得られなかったことから、IL-6R阻害薬が投与された。・IL-6R阻害薬によりirAEの臨床的改善に至った患者の割合は73%であり、IL-6R阻害薬による治療開始からirAEの臨床的改善までの期間の中央値は2.0ヵ月(範囲:0.03~23.0)であった。・ICIのORRは、IL-6R阻害薬投与前66%、投与後66%であったが、完全奏効の割合はIL-6R阻害薬投与後が投与前と比較して8%高かった。・IL-6R阻害薬投与後のICIのORRは、50歳超が50歳以下と比較して高かった(調整オッズ比:3.53、95%信頼区間:1.17~10.65、p=0.02)。同様に、IL-6R阻害薬を24週間以上投与した群は24週間未満の群と比較してICIのORRが高かった(同:3.21、1.03~9.96、p=0.04)・評価可能な病変を有する悪性黒色腫患者34例におけるICIのORRは、IL-6R阻害薬投与前56%から投与後68%に上昇した(p=0.04)。・IL-6R阻害薬の投与中止に至った有害事象は6例(7%)に認められた。 著者らは、「IL-6Rを標的としたアプローチは、抗腫瘍免疫を減弱させることなくirAEを効果的に治療することが可能な手法であると考えられる。本研究結果は、抗IL-6R抗体薬トシリズマブとICIの併用の有効性および安全性の評価を目的とした、現在進行中の臨床試験を支持するものである」とまとめた。

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軽症脳梗塞、4.5時間以内DAPT vs.アルテプラーゼ/JAMA

 日常生活や仕事上の障害につながらない(非障害性)軽症脳梗塞患者において、発症後4.5時間以内の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は90日後の機能的アウトカムに関して、アルテプラーゼ静注に対して非劣性であることが示された。中国・General Hospital of Northern Theatre CommandのHui-Sheng Chen氏らが、多施設共同無作為化非盲検評価者盲検非劣性試験「Antiplatelet vs R-tPA for Acute Mild Ischemic Stroke study:ARAMIS試験」の結果を報告した。軽症脳梗塞患者において、静脈内血栓溶解療法の使用が増加しているが、軽症非障害性脳梗塞患者における有用性は不明であった。JAMA誌2023年6月27日号掲載の報告。中国38施設で760例を、DAPT群とアルテプラーゼ群に無作為化 研究グループは中国の38施設において、18歳以上で発症後4.5時間以内、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコア(範囲:0~42)が5以下およびNIHSSのいくつかの主要項目スコアが1以下、かつ無作為化時に意識項目スコアが0の軽症非障害性の急性脳梗塞患者を、DAPT群またはアルテプラーゼ群に1対1の割合で無作為に割り付け、追跡評価した。 DAPT群では、クロピドグレルを1日目に300mg負荷投与、その後75mgを1日1回12(±2)日間投与+アスピリンを1日目に100mg、その後100mgを12(±2)日間、以降90日目まではガイドラインに基づいた抗血小板薬単剤療法またはDAPTを行った。 アルテプラーゼ群では、ガイドラインに従いアルテプラーゼ0.9mg/kg、最大90mgを静脈内投与し、その24時間後からガイドラインに基づいた抗血小板療法を行った。 主要エンドポイントは、無作為化され1回以上の有効性評価を受けた全患者(full analysis set:FAS)における90日時点の修正Rankinスケール(mRS)スコア(範囲:0~6)が0~1で定義される優れた機能的アウトカムで、DAPT群のアルテプラーゼ群に対する非劣性マージンは群間リスク差の片側97.5%信頼区間(CI)下限値が-4.5%とした。 安全性エンドポイントは、90日間の症候性頭蓋内出血およびあらゆる出血とした。 2018年10月~2022年4月に760例がDAPT群(393例)またはアルテプラーゼ群(367例)に無作為化された。最終追跡調査日は2022年7月18日であった。mRSスコア0~1のアウトカム達成、DAPTの非劣性を確認 無作為化された適格患者760例(年齢中央値64歳[四分位範囲[IQR]:57~71]、女性223例[31.0%]、NIHSSスコア中央値2[IQR:1~3])で、同意撤回者などを除く719例(94.6%)が試験を完遂した。 90日時点で優れた機能的アウトカムを達成したのは、DAPT群93.8%(369例中346例)、アルテプラーゼ群91.4%(350例中320例)で、両群のリスク差は2.3%(95%CI:-1.5~6.2)、粗相対リスクは1.38(95%CI:0.81~2.32)であった。片側97.5%CI(両側95%CI)の補正前下限値は-1.5%で、非劣性マージン-4.5%を上回っていた(非劣性のp<0.001)。 90日時点での症候性頭蓋内出血の発現は、DAPT群で371例中1例(0.3%)、アルテプラーゼ群で351例中3例(0.9%)であった。

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第52回 「電動キックボード外傷」が急増しませんか?

電動キックボード解禁Unsplashより使用7月1日から改正道路交通法が施行され、最高時速20km以下で一定の要件を満たす電動キックボードに関して新制度がスタートしました。これまでは電動キックボードは「原動機付自転車」(原付バイク)の位置付けでしたが、今回から「特定小型原動機付自転車」となり、自転車と同じ交通ルールが適用されるようになります(図)。図.電動キックボード新ルール(政府広報オンライン)図.電動キックボード新ルール(政府広報オンライン)つまり、運転免許は不要で、車道を走行し、自転車と同じようにヘルメット着用については努力義務扱いとなっています。街中を走る電動キックボードがノーヘルで走ることになり、自転車が逆走してもよい一方通行も逆走可能になります。要は時速20kmが出る原付が、自転車と同じ扱いになる点が懸念材料とされており、世間は賛否両論です。私個人としては電動キックボードを車で轢きそうになったことがあるので、解禁する方向へ動くのは、どちらかといえば反対なんですよね。いや私見で申し訳ないんですが。外傷リスク上記の速度で歩道を走ることはできず、最高時速を6km以下に設定し、緑色のライトを点滅させれば走行可能です。でも現時点で歩道をビュンビュン走っている電動キックボードが多いので、無法地帯になるのではと懸念しています。電動キックボードはタイヤが小径です。段差などの衝撃の影響は自転車よりもはるかに受けやすく、転倒リスクが高いです。自転車が乗れなくなった高齢者が電動キックボードを利用するようにならないか不安もあります。「今後高齢者の足として電動キックボードを利用してみたらどうか」という声もありますが、自転車に乗れなくなった人がスケボーに乗れるはずがないので、外傷リスクが増すだけだと思います。そして、電動キックボードで頭頚部外傷を起こした症例の2~3割は飲酒運転とされており1,2)、これが一番懸念されることかなと思っています。自転車も当然飲酒運転はダメなのですが、「まいっか」みたいな風潮がどこかにあります。参考文献・参考サイト1)Clough RA, et al. Major trauma among E-Scooter and bicycle users: a nationwide cohort study. Inj Prev. 2023 Apr;29(2):121-125.2)Kowalczewska J, et al. Characteristics of E-Scooter-Related Maxillofacial Injuries over 2019-2022-Retrospective Study from Poznan, Poland. J Clin Med. 2023 May 26;12(11):3690.

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暑くても脳卒中が増加?~メタ解析

 暑さと寒さの両方が脳卒中の罹患率および死亡率を増大させ、発展途上国よりも先進国のほうが暑さによるリスクが高いことが、中国・Tongji Medical CollegeのJing Wen氏らによって明らかになった。Brain and Behavior誌オンライン版2023年6月2日号掲載の報告。 これまでの研究で、気温は脳卒中の罹患率および死亡率と関連することが示唆されているが、そのエビデンスは十分ではない。そこで研究グループは、気温と脳卒中の罹患率および死亡率との関連を評価するためにメタ解析を行った。 研究グループは、PubMed、Embase、Web of Scienceを用いて、データベース開設から2022年4月13日までに発表された研究を検索した。高温環境と低温環境のプール推定値は、ランダム効果モデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・20件の研究が解析に含まれた。12件はアジアで実施され、6件はヨーロッパと北米、南米とオーストラリアは1件ずつであった。すべての研究における気温は-33.1℃(カナダ)~40.9℃(中国)で、高温環境は90パーセンタイル以上、低温環境は10パーセンタイル以下とされた。ほとんどの研究で気温のラグ効果は0~28日であると考えられていた。・高温環境では、脳卒中罹患率の相対リスク(RR)は1.10(95%信頼区間[CI]:1.02~1.18、I2=74.2%)、脳卒中死亡率のRRは1.09(1.02~1.17、85.6%)で有意な関連を示した。・低温環境では、脳卒中罹患率のRRは1.33(95%CI:1.17~1.51、I2=72.4%)、脳卒中死亡率のRRは1.18(1.06~1.31、85.5%)で有意な関連を示した。・サブグループ解析では、社会経済的地位で層別化すると、高温環境における脳卒中の罹患率および死亡率は、発展途上国よりも先進国で高かった。しかし、低温環境では、先進国よりも発展途上国のほうが罹患率および死亡率が高かった。 これらの結果より、研究グループは「本研究は、暑さと寒さの両方が脳卒中の罹患率および死亡率と正の相関があるという仮説を支持している。脳卒中リスクを低減するために、公衆衛生において的を絞った対策を推進すべきである」とまとめた。

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双極性障害ラピッドサイクラーの特徴

 双極性障害(BD)におけるラピッドサイクリング(RC、1年当たりのエピソード回数:4回以上)の存在は、1970年代から認識されており、治療反応の低下と関連する。しかし、1年間のRCと全体的なRC率、長期罹患率、診断サブタイプとの関連は明らかになっていない。イタリア・パドヴァ大学のAlessandro Miola氏らは、RC-BD患者の臨床的特徴を明らかにするため、プロスペクティブに検討を行った。その結果、BD患者におけるRC生涯リスクは9.36%であり、女性、高齢、BD2患者でリスクが高かった。RC患者は再発率が高かったが、とくにうつ病では罹患率の影響が少なく、エピソードが短期である可能性が示唆された。RC歴を有する患者では転帰不良の一方、その後の再発率の減少などがみられており、RCが持続的な特徴ではなく、抗うつ薬の使用と関連している可能性があることが示唆された。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月4日号の報告。 RCの有無にかかわらずBD患者1,261例を対象に、記述的および臨床的特徴を比較するため、病例および複数年のフォローアップによるプロスペクティブ調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・1年前にRCであったBD患者の割合は9.36%(BD1:3.74%、BD2:15.2%)であり、男性よりも女性のほうが若干多かった。・RC-BD患者の特徴は以下のとおりであった。 ●年間平均再発率が3.21倍高い(入院なし) ●罹患率の差異は小さい ●気分安定に対する治療がより多い ●自殺リスクが高い ●精神疾患の家族歴なし ●循環性気質 ●既婚率が高い ●兄弟や子供がより多い ●幼少期の性的虐待歴 ●薬物乱用(アルコール以外)、喫煙率が低い・多変量回帰モニタリングでは、RCと独立して関連した因子は、高齢、抗うつ薬による気分変調、BD2>BD1の診断、年間エピソード回数の増加であった。・過去にRC-BDであった患者の79.5%は、その後の平均再発率が1年当たり4回未満であり、48.1%は1年当たり2回未満であった。

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第170回 糖尿病の細胞移植治療を米国が承認

死亡した人の膵臓から単離したランゲルハンス島を成分とする1型糖尿病の細胞治療Lantidra(donislecel-jujn)が専門家一堂の承認賛成から約2年の歳月を経て米国FDA承認に漕ぎ着けました1)。Lantidraの開発はさかのぼること20年ほど前の2004年に米国・イリノイ大学で始まり2)、同大学育ちの細胞治療研究会社CellTrans社に2016年に引き継がれ、締めて30例ばかりが参加した第I~III相試験の結果をよりどころにして今から3年前の2020年にFDAに承認申請されました。その申請の翌年2021年4月15日に米国FDAが招集した専門家17人のうち大半の12人がLantidraの効果は害を押して余りあると判断し3)、それから2年後の先週6月28日についに承認されました。Lantidraを使えるのは徹底的な治療や教育にも関わらず重度低血糖を繰り返すがためにHbA1c目標未達成の1型糖尿病患者に限られます。第I~III相試験もそのような1型糖尿病患者を募って実施されました。第I~III相試験では30例にLantidraが1~3回肝門脈に投与されました。残念ながら5例はインスリン不要になった日がありませんでしたが、大半の21例がインスリン要らずで1年以上を過ごしました。また、それら21例の約半数10例は5年を超えてインスリン不要な状態を保っており、移植細胞の10年間体内生存率は60%超と推定されています4)。幹細胞起源の治療の開発も進むFDAはシカゴにあるイリノイ大学病院の一画でLantidraを作ることを認可しています5)。Lantidraは死亡者の膵臓から作るゆえ供給は限定的になりそうです。一方、嚢胞性線維症治療薬で一時代を築いて今や屈指のバイオテクノロジー企業へと成長したVertex Pharmaceuticals社はよりあまねく供給しうる細胞治療を目指しており、先月末の米国糖尿病協会(ADA)年次総会で有望な第I/II相試験途中成績を披露しています。Vertex社の開発品はVX-880と呼ばれ、患者以外の他者の幹細胞(同種幹細胞)から作るインスリン生成島細胞を成分とします。第I/II相試験ではこれまでに1型糖尿病患者7例にVX-880が投与されています。そのうち1例は途中で同意を撤回して試験を離脱しましたが、残りの6例の体内には島細胞が定着してインスリンを生成しました。6例中2例は移植から1年が経過し、両者とも重度低血糖なしでHbA1c低下(7.0%未満に落ち着いているか元から差し引きで少なくとも1%減少)を達成し、さらにはインスリンに頼らず過ごせています6)。有望な成績を上げているVX-880ですがLantidraと同様の欠点もあります。それは免疫に排除されないようにするために免疫抑制薬がずっと必要ということです。そこでVertex社はさらに先を見据え、免疫抑制薬の継続が不要の細胞治療VX-264の開発も進めています。VX-264もVX-880と同様に同種幹細胞から作った島細胞を成分としますが、免疫が手出しできないようにする包みで覆うという一工夫が施されています。VX-264もVX-880と同様に第I/II相試験が進行中で、被験者の組み入れが行われています。およそ17例が組み入れられる予定です。参考1)FDA Approves First Cellular Therapy to Treat Patients with Type 1 Diabetes / PRNewswire2)Piemonti L, et al. Transpl Int. 2021;34:1182-1186. 3)Food and Drug Administration Center for Biologics Evaluation and Research Office of Tissues and Advanced Therapies Cellular, Tissue and Gene Therapies Advisory Committee Meeting April 15, 2021 69th Meeting Summary Minutes OPEN Session / FDA4)Cellular, Tissue, and Gene Therapies Advisory Committee April 15, 2021 Meeting Presentation- Clinical / FDA5)June 28, 2023 Approval Letter - LANTIDRA / FDA6)Vertex Presents Positive VX-880 Results From Ongoing Phase 1/2 Study in Type 1 Diabetes at the American Diabetes Association 83rd Scientific Sessions / BUSINESS WIRE

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臨床試験で有意差なし、本当に効果なし?/JAMA

 無作為化臨床試験の多くは統計学的に有意でない結果をもたらすが、このような知見は一般的な統計学的枠組みで解釈することは困難とされる。スイス・ジュネーブ大学のThomas Perneger氏らは、尤度比を適用することで、有意でない主要アウトカムの結果のうち、効果なしとする帰無仮説を支持するエビデンスの強度と、事前に規定された有効であるとする対立仮説を支持するエビデンスの強度を推定した。その結果、対立仮説(尤度比<1)が支持されたのは8.9%に過ぎず、91.1%では帰無仮説(尤度比>1)が支持された。研究の成果は、JAMA誌2023年6月20日発行号に掲載された。2021年の有意でないアウトカム169件の横断研究 研究チームは、2021年に主要医学ジャーナル6誌(JAMA、New England Journal of Medicine[NEJM]、PLoS Medicine、BMJ、Lancet、Annals of Internal Medicine)に掲載された無作為化臨床試験の論文130件の、統計学的に有意でない主要アウトカムの結果169件について横断研究を行った。 これら169件の結果について、効果なしとする帰無仮説と、試験プロトコールに記載された有効性の仮説(対立仮説)の尤度比を算出した。また、ベイズの定理を用いて治療が有効でない事後確率を計算した。 尤度比は、これらの仮説に対する支持を定量化するもので、>1の場合は帰無仮説を、<1の場合は対立仮説を支持し、たとえば尤度比5はそのデータが対立仮説の5倍の強度で帰無仮説を支持することを意味する。尤度比10は「強いエビデンス」、100は「決定的なエビデンス」であり、尤度比100以上の場合は一般的な事前信念(prior belief)のレベルでは特定の対立仮説ではなく、帰無仮説が真である事後確率が高いことを示唆する。約7割で強い、約5割で決定的な帰無仮説のエビデンス 130件の論文のうち掲載数が最も多かったジャーナルはJAMA(41件[31.5%])で、次いでNEJM(26件[20.0%])であった。105件(80.8%)は2群の比較試験で、62件(47.7%)は化学物質(薬剤、栄養補助食品、バイオ医薬品、ワクチン)、52件(40.0%)は薬物以外の介入(デバイス、手術、診断法、行動介入など)に関する試験であり、49件(37.7%)は通常治療との比較、45件(34.6%)はactive controlとの、36件(27.7%)はプラセボ/シャムとの比較だった。 解析の結果、有意でない主要アウトカム169件のうち、15件(8.9%)は有効であるとする対立仮説(尤度比<1)を支持し、154件(91.1%)は効果なしの帰無仮説(尤度比>1)を支持した。117件(69.2%)では尤度比が10(強いエビデンス)を超え、88件(52.1%)では100(決定的なエビデンス)を、50件(29.6%)では1,000を上回った。 一方、尤度比とp値との間には弱い相関しかなかった(Spearman相関係数 r=0.16、p=0.45)。また、信頼区間(CI)内に対立仮説の有効性のパラメータが含まれたのは39件(23.1%)で、残り130件(76.9%)では含まれていなかった。95%CI内に両仮説のパラメータの値が含まれる場合の尤度比は0.2~6.2の範囲であり、含まれない場合の範囲は3.0~10146だった。 著者は、「多くの統計学的に有意でない臨床試験の結果は、新たな治療法は効果がないという決定的なエビデンスを示している」と結論し、「主要アウトカムの差に統計学的有意差がない場合は、尤度比を報告することで、臨床試験の解釈が改善される可能性がある」と指摘している。

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カナダ政府がタバコ1本1本に健康被害警告の表示を義務化

 カナダ政府でメンタルヘルス・依存症担当大臣兼保健副大臣を務めるCarolyn Bennett氏は、世界禁煙デーに当たる5月31日に、カナダでは間もなく、紙巻きタバコ1本1本への健康被害警告の表示が義務付けられるようになると発表した。このような警告表示の義務化に踏み切るのは、世界でカナダが初めての国となる。 Bennett氏は、「この思い切った措置により、タバコ製品を使用する誰もが健康被害に関する警告を目にすることになる。こうした警告は、パッケージにともに表示される最新画像とともに、喫煙がもたらす健康被害について、リアルで衝撃的な注意を喚起することになるだろう」と述べる。同氏はさらに、「われわれは今後も、より多くの人が喫煙をやめ、また、若者がタバコを吸うことなく健康的な生活を送るのに役立つことは、何であれするつもりだ」と話した。 カナダでは、喫煙により毎年約4万8,000人が死亡しているとBennett氏は指摘する。今回の「Tobacco Products Appearance, Packaging and Labelling Regulations(タバコ製品の外観、パッケージ、表示に関する規制)」は、成人の禁煙を支援し、また若者や非喫煙者をニコチン中毒から守り、さらにはタバコ製品の魅力を減じるようとする、カナダ政府のたゆまぬ努力の成果の一つだ。また、この規制は、Canada’s Tobacco Strategy(カナダのタバコ戦略)と2035年までに喫煙率を5%未満にするという同戦略の目標を支援するものでもある。 規制は、2023年8月1日より段階的に施行される。小売業者は、2024年4月末までに新しい健康に関するメッセージを付したタバコ製品のパッケージを取り扱うことになる。次いで、2024年7月末までにキングサイズのタバコで健康被害警告の表示が義務化される予定だ。その後、2025年4月末までに、同様の警告が表示されたレギュラーサイズのタバコ、チッピングペーパー付きリトルシガー(葉巻の一種)、およびチューブ(手巻きタバコ用のさや紙)も販売されることになる。 AP通信は、メッセージには、「タバコの煙は子どもに有害」「吸うごとに毒も吸入」などの文言が使われる予定だと報じている。そのほか、健康被害に関わるメッセージの義務化には、1)タバコ製品のパッケージへのメッセージを強化・更新すること、2)健康被害のメッセージをあらゆるタバコ製品のパッケージに表示すること、3)メッセージを定期的に変えること、の要件を満たすことが求められる。 カナダ肺協会の会長兼CEOであるTerry Dean氏は、「本日発表されたタバコ製品の表示強化のための大胆な措置は、肺の健康に対するタバコ製品の危険性を喫煙者が確実に目にするようにするためのものだ。紙巻きタバコの1本1本に直接、警告を表示することには、タバコの魅力を減じる効果があり、特に若者に対する効果は高いだろう」と述べる。そして、「カナダは、タバコの使用を減らすために断固とした行動を取り続ける必要がある」と強調している。

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危険な心筋梗塞は月曜日に多く発生する

 週末が休みの人にとって、仕事や学校に戻らなければならない月曜日は憂うつなものだ。しかし、月曜日は人を憂うつにさせるだけではないようだ。アイルランドの患者データを分析した新たな研究で、月曜日は、緊急性の高いST上昇型心筋梗塞(STEMI)が1週間のうちで最も多く発生する曜日である可能性が示された。英Belfast Health and Social Care Trustの循環器専門医であるJack Laffan氏らによるこの研究結果は、英国心臓血管協会(BCS)年次会議(6月5〜7日、英マンチェスター)で発表された。 STEMIは血栓により冠動脈が閉塞して生じる心筋梗塞で、閉塞した血管を速やかに開通させなければ、心筋全層に壊死が生じる。英国でのSTEMIによる入院患者数は、毎年3万人以上に上る。STEMIでは、患者の心臓へのダメージを最小限に抑えるために、緊急度を迅速に評価し、必要に応じて閉塞した冠動脈を再開通させるための治療(経皮的冠動脈形成術)を行うことが必要だ。 今回の研究では、2013年1月から2018年3月の間にSTEMIを発症して入院した、アイルランド共和国と北アイルランドの患者1万528人のデータが分析された。対象者は、入院した日の曜日によりグループ分けされた。 STEMIの各曜日の発生件数と1週間の平均発生件数を比較すると、STEMIは月曜日と日曜日に有意に多く発生していることが明らかになった。また、各曜日のSTEMI発生のオッズを当該曜日以外の6日の平均と比べたところ、月曜日のみSTEMI発生のオッズが有意に高いことが示された(オッズ比1.13、P=0.015)。 ただし、この研究では、なぜ月曜日にSTEMIの発生が増えるのか、その理由は明確になっていない。過去の研究では、1日ごとの周期で繰り返される概日リズム(体内時計)が関わっていることが示唆されている。 Laffan氏は、「われわれの研究から、1週間の仕事を開始する日である月曜日は、STEMI発生と統計学的に強い関連を示すことが明らかになった。このような結果は以前にも報告されているが、今でも好奇心をそそるものであることに変わりはない。月曜日にSTEMIの発生が多い理由には複数の要因が絡んでいる可能性が高いが、過去の研究で示唆されたように、概日リズムを一要因として検討するのは妥当ではないかと思う」と述べている。 一方、英国心臓財団(BHF)のメディカルディレクターを務めるNilesh Samani氏は、「英国では、5分に1人が命を脅かす心筋梗塞により入院している。そのため、今後も研究を続け、心筋梗塞がどのように、また、なぜ起こるのかを解明することが重要だ」と述べる。その上で同氏は、「今回の研究結果は、特に緊急性の高い心筋梗塞の発生時期に関する新たなエビデンスとなるものだ。今後は、1週間のうちの特定の曜日になぜ心筋梗塞が起こりやすいのか、その理由を明らかにする必要がある。それにより、この致命的な疾患に対する医師の理解が深まり、それがより多くの命を救うことにつながるかもしれない」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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COVID-19緊急事態は過ぎたが依然として対策意識の維持・向上を―AHAニュース

 世界保健機関(WHO)と米国政府の公式見解によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はもはや緊急事態には当たらないという。これは大きな変化ではあるが、誰もがパンデミックを意に介さずに行動できるようになったわけではないと、多くの専門家が指摘している。その1人、米ミシガン大学のPreeti Malani氏は、「誰にとってもリスクがなくなったわけではない。ただ、3年以上前に緊急事態宣言が発出された時とは、大きく状況が変化した」と語る。 WHOが2020年1月30日に初めて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した時点で、COVID-19による死亡者はわずか213人しか判明していなかった。しかしその後、その数は世界中で700万人近くに増加した。WHOは今年5月5日に、緊急事態の終了を宣言し、5月11日には米国で公衆衛生上の緊急事態宣言が解除された。これに伴い、COVID-19のモニタリング体制や検査・ワクチン接種費用の公費負担も終了しつつある。とはいえ、COVID-19のウイルスが消え去ったわけではなく、WHOのMaria Van Kerkhove氏も、「緊急事態は終了したがCOVID-19の流行はまだ終わっていない」と、警戒の継続を呼びかけている。 米疾病対策センター(CDC)は、今年5月13日までの1週間で、米国内で281人がCOVID-19で死亡し、9,204人が入院したと報告している。週当たりの死亡者数が約2万6,000人だったピーク時から著減しているがゼロではない。一部の人々は依然、COVID-19重症化や死亡リスクが高い。CDCによれば、高齢者や心臓病、糖尿病、肥満、慢性腎臓病などの基礎疾患を抱えている人、および現喫煙者・元喫煙者がそれに該当するという。 米ヒューストン・メソジスト・デベイキー心臓血管センターのSafi U. Khan氏は、「健康を守るためにすべきことの中で、ワクチン接種はリストの最上位にある」と話す。CDCは、生後6カ月以上の全ての人に対してCOVID-19のワクチン接種を推奨している。これまでに米国人口の81%が少なくとも1回は接種を受けているが、最新の2価ワクチンのブースター接種を受けた人はわずか17%だという。 ワクチン接種以外にも、「屋内の混雑した空間でのマスク着用、手指衛生の実践は良い習慣であり、継続すべきだ」とKhan氏は語る。COVID-19流行の動向監視も忘れてはならない。Malani氏は、「CDCはモニタリングを放棄したわけではないが、緊急事態の終了によりデータ収集方法が変化し、以前より報告が遅れることになるだろう」と話す。ただ、Malani氏自身、「以前は毎日、検査陽性率などの指標を確認していたが、今はもう見ることはない」と述べ、それらのデータの価値が時とともに低下しているとしている。一方で同氏は今、下水中のウイルスレベルのモニタリングデータに注目しており、「多くの地域社会では依然として下水の監視が続けられていて、医療現場からの報告で症例数の増加が明らかになる前に、感染拡大を把握できるだろう」とのことだ。 Malani氏は、「ワクチン接種やCOVID-19感染によって免疫を有している人が増えたことを考えれば、人々がパンデミックの初期の頃ほど厳格に警戒する必要はないが、注意は必要であり、『前に進め。ただし、賢く行動せよ』というメッセージが適切ではないか」と語っている。例えば、混雑した空間で誰かが咳をした時に、すぐにマスクを着けられるように常時携帯するといった対策を提案している。またこのような対策とともに、外出を控え続けることによって社会的孤立の状態に陥り、健康上の懸念をかえって高めたりしないよう注意を呼び掛けている。同氏によると、孤独感を訴える高齢者の割合は、いまだパンデミック以前の水準より高いという。 Malani氏はまた、COVID-19の感染リスクに配慮して人生の大事なイベントを取りやめるという判断は、今後は慎重に行うように呼び掛けている。「誰もこの病気を永遠に避け続けることはできないし、家族との特別な行事、卒業式、結婚式などの重要なライフイベントを、感染リスクがあるから中止するという判断は適切でなく、その時の状況によって判断すべき」と語る。そして、「COVID-19のリスクは依然として残っているが、リスクをコントロールしながら人生に重要なことを行えるようにはなった。これは3年前にはできなかったことだ」と付け足している。 一方、Khan氏は、「COVID-19のパンデミックは、いくつかの重要な教訓をもたらした」と総括している。具体的には、「第1に、ワクチン接種や定期的な医師の診察など、予防医療の重要性を明確に示したことであり、第2に、健康的なライフスタイルの重要性も以前に増して明確に示された。体に良い食事、習慣的な運動、十分な睡眠は全て、免疫システムの良好な状態の維持に役立つ」としている。その上で同氏は、「しかし、おそらく最も強調されるべき点は、公衆衛生対策の重要性が再確認されたことだ。マスクの着用、ワクチン接種などが自分自身の安全を守るだけでなく、周囲の人々の安全にもつながることが明確になった」と述べている。[2023年5月25日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.利用規定はこちら

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認知症患者に処方される抗精神病薬と併用薬の分析

 さまざまな問題が指摘されているにもかかわらず、抗精神病薬が認知症患者に対し、依然として一般的に処方されている。北里大学の斉藤 善貴氏らは、認知症患者に対する抗精神病薬の処方状況および併用薬の種類を明らかにするため、本検討を行った。その結果、認知症患者への抗精神病薬の処方と関連していた因子は、精神科病院からの紹介、レビー小体型認知症、NMDA受容体拮抗薬の使用、多剤併用、ベンゾジアゼピンの使用であった。著者らは、抗精神病薬の処方の最適化には、正確な診断のための地域の医療機関と専門医療機関の連携強化、併用薬の効果の評価、処方カスケードの解決が必要であるとしている。Dementia and Geriatric Cognitive Disorders誌オンライン版2023年5月26日号の報告。 対象は、2013年4月~2021年3月に受診した認知症外来患者1,512例。初回外来受診時に、人口統計学的データ、認知症のサブタイプ、定期処方薬の調査を行った。抗精神病薬の処方と、紹介元、認知症のサブタイプ、抗認知症薬の使用、多剤併用、潜在的に不適切な薬物(PIM)の使用との関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬が処方されていた認知症患者は11.5%であった。・認知症のサブタイプで比較すると、レビー小体型認知症患者は、他のすべての認知症サブタイプの患者よりも、抗精神病薬の処方率が有意に高かった。・併用薬については、抗認知症薬使用、多剤併用、PIM使用の患者において、これらの薬物を使用していない患者と比較し、抗精神病薬処方の可能性が高かった。・多変量ロジスティック回帰分析では、精神科病院からの紹介、レビー小体型認知症、NMDA受容体拮抗薬の使用、多剤併用、ベンゾジアゼピンの使用が、抗精神病薬の処方と関連していることが示された。

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英語で「難しい選択でした」は?【1分★医療英語】第86回

第86回 英語で「難しい選択でした」は?Though I said yes to surgery, I’m still quite anxious.(手術を受けますとは言ったものの、まだかなり不安です)I understand your concern. It was a tough call.(お気持ちお察しします。難しい選択でしたよね)《例文1》Making a medical decision can often be a tough call.(医療上の意思決定はしばしば難しくなり得るものです)《例文2》We needed to continue a blood thinner despite the stomach bleeding. That was a tough call.(胃からの出血がありながらも、血をサラサラにする薬を続ける必要がありました。難しい選択でした)《解説》“call”といえば、真っ先に「電話をかける」を思い浮かべる方が多いかもしれません。“I’ll make a quick phone call.”と言えば、「ちょっと短い電話をしてきます」という意味になります。この“call”という単語を名詞で使った場合、電話のほかに「選択肢」という意味で用いることができます。たとえば、“It’s your call.”と言えば、「それはあなたの選択です」という意味になりますし、“good”や“bad”と合わせて、“good call”(良い選択肢)、“bad call”(悪い選択肢)といった使い方もできます。医療の現場では、しばしば難しい選択を迫られるシーンに出合います。たとえば、「治療法Aと治療法Bのどちらを選択するか」、「相反する2つの病態をどう治療していくか、そもそも治療をするのかしないのか」…。こういった場面で、「難しい選択です」と伝えたいとき、“tough”という形容詞と合わせて、“It is a tough call.”と表現することもできます。講師紹介

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