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5歳未満でCOVID-19と他のウイルスに重複感染すると重症化しやすい

 米疾病対策センター(CDC)による新たな研究から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のために入院した5歳未満の子どもが他の呼吸器感染症に重複感染すると、重症化リスクが高くなることが明らかになった。5歳以上では有意なリスク上昇は認められないという。 子どもに多い呼吸器感染症の原因として、ライノウイルス、エンテロウイルス、RSウイルスなどがあり、これらは一般に「風邪」として扱われる。COVID-19パンデミックとともに、マスク着用、身体的距離の確保をはじめとする厳格な対策が実施されたことで、これらの感染症も一時は減少し、ほとんど患者が見られなくなったものもある。しかし規制緩和によって再び増加し、米国では通常のシーズン以上にRSウイルスの感染が拡大。子どもたちが、COVID-19とそれらのウイルス感染症に重複して罹患する可能性が高まっている。 米国内14の州でCDCが実施している、COVID-19関連の入院に関するサーベイランス「COVID-NET」の研究メンバーであるNickolas Agathis氏らは、COVID-NETのデータを利用して重複感染した子どもの転帰を検討。その結果の詳細が、「Pediatrics」に1月18日掲載された。それによると、COVID-19のために入院した5歳未満の子どもが他の呼吸器感染症ウイルスにも感染していた場合、重症化(ICU入室または機械的人工換気を要する)リスクが2倍以上に上昇することが分かったという。 小児感染症の専門家によると、この結果はパンデミック発生以来2年間の臨床での印象と一致しているが、今は少し事情が異なるとのことだ。その理由は主として、パンデミック初期にほとんど見られなかったインフルエンザの流行が始まったことだという。そのように語る専門家の1人、米マサチューセッツ総合病院で小児感染症部門のディレクターを務め、米国感染症学会(IDSA)のスポークスパーソンであるVandana Madhavan氏は、「この季節になってもまだRSウイルスの子どもが受診することがあり、COVID-19と重複感染する子どももいる。インフルエンザやその他のウイルスの感染症、または細菌感染症も増えてきた」と状況を説明する。 Agathis氏らが研究に用いたCOVID-NETには、2020年3月~2022年2月に18歳未満のCOVID-19による入院患者が4,372人記録されていた。このうちの62%に対してCOVID-19以外の呼吸器感染症の検査が行われており、その21%が何らかの検査で陽性と判定された重複感染だった。ICU入室を要したのは、重複感染群では37.8%、COVID-19単独感染群では26.9%、機械的人工換気を要したのは同順に10.2%、5.7%であり、いずれも重複感染群の方が有意に多かった(いずれもP<0.001)。 重症化リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種/民族、BMI、基礎疾患、未熟児で生まれた2歳未満の幼児、ワクチン接種状況など)を調整後、5~17歳では、重複感染群の重症化リスクはCOVID-19単独感染群と有意差がなかった。それに対して5歳未満の重複感染群では、COVID-19単独感染群よりも重症化リスクが有意に高いことが示された〔2歳未満は調整オッズ比(aOR)2.1(95%信頼区間1.5~3.0)、2~4歳はaOR1.9(同1.2~3.1)〕。 この研究報告について、米ルーリー小児病院の感染症専門医であるWilliam Muller氏は、「5歳未満の重複感染患児の重症化が、どのウイルスによって引き起こされるのかを特定することは困難だ。ただし、対策は単純明快である」と語る。その対策とは、「COVID-19と毎年のインフルエンザの予防接種を受けることだ。どちらも生後6カ月以上なら接種でき、重症化リスクを大幅に抑制する」と解説。また、Muller氏とMadhavan氏は、「1月中旬であっても、子どもたちがインフルエンザの予防接種を受けるのに遅すぎるということはない」と声をそろえる。なぜなら、インフルエンザは多くの場合、2月にピークを迎え、4~5月まで続くこともあるからだという。

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低体重と肥満が片頭痛の発症リスク上昇と関連

 低体重および肥満は片頭痛の発症リスクと関連しており、リスクはBMI 20kg/m2未満と29kg/m2超で上昇することが、「Headache: The Journal of Head and Face Pain」7/8月号に掲載されたレビューにおいて明らかになった。 過去のメタアナリシスからBMIと片頭痛との関連が示されているが、用量反応解析は行われておらず、また、緊張型頭痛(TTH)など、他の一次性頭痛疾患と肥満との関連は明らかにされていない。 そこで、テヘラン医科大学(イラン)のFahimeh Martami氏らは、BMIと一次性頭痛疾患との関連性を検討するため、システマティックレビューと用量反応メタアナリシスを実施した。2020年9月までにPubMedとScopusのデータベースに掲載された、BMIと7つの一次性頭痛疾患〔片頭痛、TTH、頭痛、慢性連日性頭痛(CDH;月15日以上の頭痛)、非片頭痛性頭痛(過去1年間で頭痛の症状はあるが、片頭痛の診断基準を満たさない頭痛)、慢性片頭痛、反復性片頭痛〕の発症リスクとの関連を報告した観察研究を検索した。BMIに基づき、肥満群(30.0kg/m2以上)、過体重群(25.0~29.9kg/m2)、正常体重群(18.5~24.9kg/m2)、低体重群(18.5kg/m2未満)の4群に分類し、ランダム効果モデルを用いてオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。研究間の異質性はQ検定およびI2検定で評価した。解析には、41件の研究(15万4,044症例、対象者79万2,500例)を含めた。 その結果、片頭痛の発症リスクは、正常体重群と比較して、低体重群(OR 1.21、95%CI 1.09~1.34、I2=6.2%、P=0.383)および肥満群(同1.28、1.15~1.43、I2=89.7%、P<0.0001)で上昇していた。一方、非片頭痛性頭痛では、正常体重群と比較して、過体重群(同1.06、1.02~1.11、I2=23.8%、P=0.252)および肥満群(同1.20、1.14~1.26、I2=0.0%、P=0.371)で発症リスクが高かった。TTH、CDH、頭痛全体ついては、いずれの群においてもリスク上昇は認められなかった。 また、用量反応メタアナリシスを行ったところ、BMIと片頭痛発症リスクとの間に非線形の関連が認められた(非線形性のP<0.0001)。ORはBMI 17kg/m2で1.12(95%CI 1.04~1.20)と高く、20~29kg/m2では1.0程度であり、29kg/m2超で上昇が認められ、30kg/m2では1.06(同0.98~1.15)、35kg/m2では1.26(同1.10~1.44)、40kg/m2では1.51(同1.23~1.84)であった。この非線形の関連は、効果量で調整していない研究を除外しても有意なままであった。 著者らは、「今回のメタアナリシスにより、低体重および肥満の人では片頭痛の発症リスクが上昇しており、BMIと片頭痛との関連は非線形であることが示唆された。これらの結果は、正常なBMIが片頭痛リスクを低減する可能性があるとの説を支持するものである」と述べている。

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第135回 ポスト2025年の医療・介護提供体制の確立に向けた総合確保方針を改定/厚労省

<先週の動き>1.ポスト2025年の医療・介護提供体制の確立に向けた総合確保方針を改定/厚労省2.医療情報システムをサイバー犯罪から守れ、ガイドライン改定へ/厚労省3.マイナ保険証を持たない人に1年有効の「資格確認書」を発行へ/デジタル庁4.新型コロナウイルス接触確認アプリの開発、不備を認める/デジタル庁5.入院患者への暴行で、精神病院に立ち入り検査/東京都6.「サル痘」の名称を「エムポックス」に変更へ/厚労省1.ポスト2025年の医療・介護提供体制の確立に向けた総合確保方針を改定/厚労省厚生労働省は2月16日に「医療介護総合確保促進会議」を開催し、「団塊の世代」がすべて75歳以上となる2025年、さらにその後の医療・介護提供体制を見据えて、患者・利用者・国民の視点に立った医療・介護の提供体制を構築する必要があるとして「総合確保方針」の見直し案を討議し、承認された。この中で、入院医療については、令和7年に向けて地域医療構想を推進して、さらに医療機能の分化・連携を進めることで「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築を目指す。また、外来医療・在宅医療については、外来機能報告制度を用いて紹介受診重点医療機関の明確化を図り、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行っていくことが重要としている。厚生労働省は新たな「総合確保方針」を、今年度内に告示する見通し。(参考)第19回医療介護総合確保促進会議(厚労省)医療と介護の総合確保方針、改定案を大筋了承 3月中に告示、厚労省(CB news)医療・介護計画の上位指針となる総合確保方針を見直し!2025年から先を見据え「柔軟なサービス提供」目指す!-医療介護総合確保促進会議(Gem Med)厚労省、介護事業者の協働化・大規模化を推進 事業計画の指針に明記(JOINT)2.医療情報システムをサイバー犯罪から守れ、ガイドライン改定へ/厚労省厚生労働省は第14回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループを持ち回りで開催し、昨年4月に改定した医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6版の骨子案を示した。昨年、発生した大阪急性期・総合医療センターや徳島県つるぎ町立半田病院へのサイバー攻撃事件をきっかけに厚生労働省は医療機関に対して、医療機関へのサイバー攻撃に対してセキュリティー対策を呼びかけている。また、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」に対するパブリックコメントの募集を開始しており(締切は2023年3月7日)、募集を経て4月には公表したいとしている。なお、厚生労働省は、医療法を改正しており、令和5年4月より医療法第25条第1項の規定にされている立入調査の実施の際は、病院、診療所の管理者がサイバーセキュリティの確保を講じているかを確認するとしている。(参考)「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」の骨子(案)について〔概要〕(厚労省)「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」の骨子(案)に関する御意見の募集について(同)セキュリティー対策、役割ごとに整理 安全管理指針(CB news)3.マイナ保険証を持たない人に1年有効の「資格確認書」を発行へ/デジタル庁デジタル庁は2月17日に「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」を開き、中間とりまとめを発表した。来年の秋に、従来の健康保険証が原則廃止となるため「マイナ保険証」を持たない人に対して、無料で有効期間1年の「資格確認書」を発行するとともに「更新も可能」となる見込み。また、マイナンバーカードの取得についても、交付申請者が庁舎などに出向くことが困難な人については診断書、障害者手帳などを用いて、柔軟に代理交付の仕組みを活用することで交付をスムーズに行えるように自治体向けに指導するとした。このほか、マイナカードの紛失など緊急時には最短で5日で発行できる体制を作ることとした。(参考)マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会 中間とりまとめ(デジタル庁)マイナンバーカード、再発行最短5日で 24年秋までに(日経新聞)マイナカード最短5日で発行へ、保険証廃止で政府が中間取りまとめ(朝日新聞)4.新型コロナウイルス接触確認アプリの開発、不備を認める/デジタル庁厚生労働省とデジタル庁は、昨年11月に機能を停止した新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」の取組に関する総括報告書をまとめて、公表した。同アプリは、陽性者と接触した可能性を利用者に伝え、検査や保健所のサポートを早く受けることで、感染拡大の防止が期待されていたが、Android端末で接触通知が到達していないなどの不具合が発覚した。原因には、アプリの開発や運用などで体制の整備が十分でなかったことなどが指摘されており、さらにアプリの効果を検証できないなどの課題があった。デジタル庁は、将来のパンデミックに備えて、今後のアプリ開発などに活用していく方針であるとした。(参考)新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の取組に関する総括報告書(デジタル庁)河野デジタル相、「COCOA」開発不備認める…「政治のリーダーシップが欠如していた」(読売新聞)接触確認アプリ「COCOA」“課題あった” デジタル庁など報告書(NHK)5.入院患者への暴行で、精神病院に立ち入り検査/東京都2月14日に入院患者への暴行が行われたとして、東京都八王子市にある精神病院の滝山病院(288床)の看護師の男性職員が逮捕された。これまでも入院患者に対して、違法な身体拘束が行われているとして関係者から告発があり、翌日、警察は病院を家宅捜索した。また、厚生労働省は東京都に対して立ち入り調査を行うよう指導した。事件に対して、加藤厚生労働大臣は記者会見で「精神科病院での患者に対する虐待など人権侵害はあってはならない」とし、来年の4月に改正される精神保健福祉法では、精神科病院で虐待を発見した場合に都道府県などへの通報を義務付けられており、今後、指導していくことを明らかにしている。(参考)精神科病院 看護師逮捕“虐待疑われる場合 行政指導”厚労相(NHK)東京 八王子の精神科病院“少なくとも10人以上が虐待”弁護士(同)小池都知事「今後も立ち入り検査」 八王子の精神科病院患者暴行事件(産経新聞)精神科の入院患者に暴行か 看護師の男逮捕-警視庁(時事通信)6.「サル痘」の名称を「エムポックス」に変更へ/厚労省厚生労働省は、2月17日に天然痘に似た感染症「サル痘」の名称を、世界保健機関(WHO)が2022年11月28日に“mpox”の使用を推奨することを公表したため、これに従って「エムポックス」に変更する方針を決めた。サル痘は2022年5月以降、国際的に市中感染が拡大しており(110ヵ国・8万人以上)、2023年2月16日時点で国内でも20例の症例が確認されているが死者はなく、海外でも感染者の多くは軽症で回復している。(参考)サル痘の名称変更について(厚労省)「サル痘」を「エムポックス」に変更へ 厚生労働省(NHK)サル痘の名称、「エムポックス」に WHO推奨で変更へ(日経新聞)サル痘の名称を「エムポックス」に…厚労省が変更方針(読売新聞)

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加齢に伴う聴力低下は認知症と関連か

 聴力に問題のある高齢者では、問題のない高齢者と比べて認知症がある人の割合が高いことを、米ジョンズ・ホプキンス大学Cochlear Center for Hearing and Public HealthのNicholas Reed氏らが、「JAMA」1月10日号で報告した。この研究では、補聴器の使用が認知症リスクの抑制につながる可能性も示唆された。 Reed氏は、「難聴は脳の構造的な変化をもたらすとのエビデンスがある」と説明し、「脳の活力を維持するためのインプットが得られない状態になると、いくつかの脳領域が萎縮して認知症を発症する可能性がある」と指摘。また、難聴が続くと、脳の働きに負荷がかかって疲労し、思考力や記憶力の低下にもつながり得るとしている。さらに、社会との関わりの維持は認知症予防に有効であるが、難聴の人は社会的イベントから遠ざかるようになる可能性もあるとReed氏は付け加えている。 多くの人にとって今回の研究結果は重要だ。米国の国立聴覚・伝達障害研究所(NIDCD)によると、米国では65~74歳の年齢層で約3人に1人、75歳以上の年齢層では2人に1人が、生活の質(QOL)に影響を及ぼすレベルの重度の難聴を有すると推定されている。しかし、難聴を抱える人たちの大半は、補聴器を使用していない。 70歳以上の高齢者2,413人(半数以上が80歳以上)を対象としたこの研究では、中等度~重度の難聴がある人では、聴力に異常がない人たちと比べて認知症の有病率が61%高いことが示された。ただし、中等度~重度の難聴がある人のうち補聴器を使っていた人では、補聴器を使っていなかった人と比べて認知症の有病率が32%低く、認知症リスクは補聴器の使用により抑制できる可能性も示された。 なお、同様の関連性は先行研究でも示されていた。しかし、今回の研究は、超高齢者や黒人などを含む、米国国民を代表するサンプルのデータを用いたものであり、得られた結果は一般化できるものであるとReed氏は主張する。それでも、確固たる結論を導き出すにはさらなる研究が必要である。そのために現在同氏らは、難聴や、難聴と認知症の関連、補聴器の有用性などに関して解決していない疑問を明らかにするための、3年間に及ぶ臨床試験を実施している最中だという。 Reed氏は、認知症の予防や聴力の改善のために高齢者ができることはたくさんあると助言。「社会との関わりを維持して積極的に活動し続けることは極めて重要だ。聴力の面では、補聴器が保護的に働くと推測できる。補聴器がQOLを向上させることはわれわれも知っている。したがって、加齢に応じて難聴対策を講じることには価値がある」と話している。なお、幸運なことに、難聴に対処するための費用はかなり下がってきている上に、2022年8月の時点では、加齢に伴う難聴のほとんどを占める軽度~中等度の難聴の人たち向けの補聴器が市販されている。 今回の研究には関与していない専門家の一人で、米ニューヨーク大学ランゴンヘルス耳鼻咽喉科頭頸部外科のJ. Thomas Roland Jr.氏によると、難聴がさらに進行した人では、補聴器ではなく人工内耳が有効な場合があるという。 Roland氏は、騒々しい環境の中にいるときや電話での会話中に相手の言葉を聞き取りにくい場合には、検査を受けて補聴器あるいは人工内耳で改善できるかどうかを確認することを勧めている。同氏は、「よく聞こえないと、レストランや映画、劇場に出かけたり、家族の集まりに参加したりするなどの社会的な関わりから遠ざかってしまうことになる」と指摘し、「難聴は坂道を転がるようにどんどん悪化する場合もあるため、早めに対処すべきだ」と呼びかけている。

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血友病A治療は新時代へ、スーパーイロクテイトの発売間近(解説:長尾梓氏)

 BIVV001の名前で知られているefanesoctocog alfa(エフアネソクトコグ アルファ、国内で承認申請中)の第III相試験であるXTEND-1試験の結果がNEJM誌2023年1月26日号に掲載された。 注目ポイントは、50 IU/kg週1回の定期投与で投与から約4日間は第VIII因子活性が40%を上回っており、7日目のトラフも15%(平均)と非常に高いこと。その結果、もちろんABRは低く抑えられ、試験開始前の定期補充療法への優越性が示されたこと(p<0.001)。さらに、出血イベントは74%がオンデマンド群でみられたが、出血の97%がefanesoctocog alfa(50 IU/kg)の1回の注射により消失したことである。 第VIII因子製剤は何の加工もないと半減期が12時間程度で、2日に1回の注射でもトラフを1%保つことが困難だった。それを克服するためpegやFcといった結合タンパクで半減期を延長するよう設計されたのが半減期延長製剤(EHL)で4種類が発売中であるが、半減期は一律1.5倍程度である。第VIII因子の半減期はvon Willebrand因子(VWF)の半減期に規定されており、第VIII因子をいくら加工しても半減期の上限があった。同薬は、VWFによる半減期の上限を克服するためVWFの一部を第VIII因子に結合させるという発想のもと設計された新たなクラスの第VIII因子製剤である。 本論文の筆頭著者は米国・UCサンディエゴ校のDr. Annette von Drygalskiであり、筆者は本コメント記載中、ちょうどDr. von Drygalskiのセンターに臨床留学中。同薬のベースがイロクテイト(一般名:エフラロクトコグ アルファ、Sanofi、フランス)であることから、当センターでは“スーパーイロクテイト”と呼ばれている。

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小児の点滴ルート確保時の疼痛を減らすまさかの方法【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第228回

小児の点滴ルート確保時の疼痛を減らすまさかの方法Pixabayより使用奇抜なタイトルの論文だったので、まさかトップジャーナルとは思っていませんでした。読んだ後に気付きました、すいません。この連載では、私もあえて「誰も知らないマイナー医学雑誌」の論文を読みあさっているワケではないので、誤解なきよう。Lee HN, et al.Effect of a Virtual Reality Environment Using a Domed Ceiling Screen on Procedural Pain During Intravenous Placement in Young Children A Randomized Clinical Trial.JAMA Pediatr. 2023;177(1):25-31.VRゴーグルのゲームってやったことあります? 私は一度、家電量販店でVRゴーグルをかけて崖の上に立ったことがあるのですが、後ろから妻に押されて「殺す気か!」と思ってしまいました。没入感がすごいですよね。そんなVRの世界に入っているタイミングで小児の点滴ルートを確保したら、疼痛が少なくなるんじゃないか、あわよくばバレないんじゃないか、という研究立案をしたのがこの研究です。実際に、小児の気をそらすということが効果的であることは示されていて、VRはその最有力候補だったのです1)。かといって、小児にVRゴーグルを着用してもらうことは困難なので、ドーム型の天井スクリーンを使ったVR環境を実現するというなかなか大掛かりなランダム化比較試験です。対象となったのは、静脈ルート確保が必要な生後6ヵ月~4歳の小児です。主要評価項目は、ベッドに寝かせた後から針が皮膚を貫通するまでの4時点における疼痛スコアとしました。スケールはFLACCという小児用の疼痛スコアを用いました。88人の小児のうち、44人がVR環境、44人が非VR環境にランダム化されました。針を貫通した時点のFLACCスコアの中央値は介入群6.0(四分位範囲:1.8~7.5)、対照群7.0(5.5~7.8)という結果でした。中央値にはさほど差がないように見えますが、順序ロジスティック回帰モデルではVR介入群のほうが疼痛が少ないことが示されました(オッズ比:0.53、95%信頼区間:0.28~0.99、p=0.046)。SNSなどで、子供の気をそらしながらワクチンを一瞬で接種する小児科医の動画を見かけますが、これも同じロジックです。というわけで、小児救急でどんどんVR環境を広めていきましょう!1)Litwin SP, et al. Virtual Reality to Reduce Procedural Pain During IV Insertion in the Pediatric Emergency Department: A Pilot Randomized Controlled Trial. Clin J Pain. 2021 Feb 1;37(2):94-101.

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サブスペフェロー面接本番!日本人カテーテル医の魅力をどう売り込むか【臨床留学通信 from NY】第44回

第44回:サブスペフェロー面接本番!日本人カテーテル医の魅力をどう売り込むかさて、今回はマサチューセッツ総合病院(MGH)の面接当日の様子を紹介します。フェローシップ申請サイトのERASが12月7日にオープンする前にさっさと決めてしまいたいという思いもあって、先行して行われるMGHの面接に全力で臨みました。オンライン面接となれば、普通は部屋を明るくして自分の印象を良くするものですが、私は家の中が騒々しいため、やむなく病院の当直室で、やや暗めの光の中で行いました。Program Director、Associate Program Directorと呼ばれる2人との同時面接で、開始時間は先方が空いてる時間帯をいくつか提示され、その中から選ぶ形でした。多くのかしこまった面接はコーディネーターにあたる方から連絡が来て、何人かの候補者と同時に面接をするのが普通なのですが、今回はそれと異なり私1人だけであり時間もフレキシブルでした。おそらく内部候補者でスポットが埋まらず、ERASがオープンする前では私以外に候補者がいなかったのでしょう。逆にこれを大きなチャンスと捉え、少し気楽に、誰かとの比較ではなく自分自身の今までの日本での経験や、なぜ米国に来たのかということ、これから先何をしたいかということを純粋に伝えればいいという風に考えました。レジデントや通常のフェローの場合は、「なぜ内科なの? なぜ循環器なの? 循環器の何がしたいの?」とかいう質問も多いですし、“What are your strength and weakness?” “Why our program?”といった質問もあります。しかし、フェローシップのサブスペシャルティともなると、そのような細かいことは聞かれません。また、もし初めて米国に来るために内科の面接を受けるならば、経験がないため英語力も見られているでしょう。私の英語も問題はないとは言えませんが、そこはいわゆる“Tell me about yourself.”に対して、事前に用意して繰り返し練習した内容をスラスラと伝えました。Zoomのため、カンペのようにいくつかのポイントをPCのキーボードの上に置いておき、たとえば“What questions do you have?”といったよくある質問にも、焦らずいくつか答えられるようにしておきました。もちろん「バケーションはどれくらいですか?」とか、「夜終わるの遅いんですか?」といった質問は禁忌です。日本国内の医師はほぼ面接は皆無、どこの病院に行っても基本はウェルカムであることから、こういった就職面接というのは日本語でもやっていないのにどうしたもんだ、という心境でしたが何とか乗り切りました。今回は循環器の中のサブスペシャルティのカテーテル治療であり、一般のフェローとは違ったスキル、かつ日本的な丁寧なカテーテル治療ができる、というのも魅力的に思わせるようにしました。いかに自分を売り込むか、魅力的な候補者か、プログラム側がその候補者を取った場合にどんなメリットがあるかを伝える必要があり、日本人にはなかなか難しいところとも言えます。おおむねプログラム側も通常は和やかな雰囲気にしてくれますので、雰囲気が良かったかどうかで出来は決まりませんが、日本でのカテーテル治療、臨床研究の経験を活かし、米国に来たのはさらなるアカデミックキャリアを築くため、という一本道を伝えきりました。面接を終えると、その直後はサンクスギビングで連絡は途絶え、その間は次の面接の準備をしていました。そしてついに、休み明けの月曜に、“I would like to offer you the position of the interventional cardiology fellowship at MGH beginning 7/2024”というメールが来た時は、4年半の米国での苦労が少し報われたような、張り詰めていた緊張も少し和らいだ気がしました。Column5~11歳を対象としたCOVID-19のワクチンの有効性を述べた論文が、JAMA Pediatrics誌に掲載されたため紹介させていただきます。本誌には昨年にも2本掲載され、今回3本目になります。Reviewerもしっかりしていて、いろいろ学ぶことができました。この論文について、米国のトップニュースメディアの1つであるABCからも取材を受けました。Watanabe A, Kuno T, et al. Assessment of Efficacy and Safety of mRNA COVID-19 Vaccines in Children Aged 5 to 11 Years: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatr. 2023;e226243.ABC News:COVID-19 vaccines are safe and effective for kids, according to new data

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NAFLDに対するペマフィブラート、よく効く患者の特徴

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に対するペマフィブラート※の投与は、BMI に関係なく肝炎症および線維化のマーカーを改善し、なかでもBMI 25未満の患者のほうがBMI 30以上の患者と比較して効果が高いことが、篠崎内科クリニックの篠崎 聡氏らの研究で明らかになった。Clinical and experimental hepatology誌2022年12月8日号の報告。※ペマフィブラート(商品名:パルモディア)の効能・効果は「高脂血症(家族性を含む)」(2023年2月3日現在)。 NAFLDは、世界で最も一般的な慢性肝疾患であり、近年発症率が増加している。日本では2018年に登場した選択的ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-αモジュレーター(SPPARMα)であるペマフィブラートは、NAFLDの改善が期待されている薬剤の1つである。本研究は、NAFLD患者におけるペマフィブラート投与後の炎症および線維化改善の予測因子を特定する目的で行われた。 対象は、ペマフィブラートで6ヵ月以上治療された非糖尿病のNAFLD患者71例。肝臓の炎症と線維化に関しては、それぞれアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値とMac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体(M2BPGi)値によって評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・ペマフィブラート投与6ヵ月後のALT値およびM2BPGi値は、ベースラインと比較して、BMIに関係なく、有意な改善が認められた。・BMI 25未満であることは、肝炎症患者のALTを50%以上減少させる有意な正の予測因子であることが認められた。・BMI 25未満の群におけるALT値は、BMI 30以上の群と比較して有意な減少が認められた (p=0.034)。・BMI 25未満であること、および50歳以上であることは、肝線維化の減少を示すM2BPGiを20%以上減少させる有意な正の予測因子であることが認められた。・BMI 25未満の群におけるM2BPGi値は、BMI 30以上の群と比較して有意な減少が認められた(p=0.022)。

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北京では22年11月以降、新たな変異株は認められず/Lancet

 中国・北京市で2022年11月14日以降に流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、その大部分がBA.5.2とBF.7で、新たな変異株出現のエビデンスはないことを、中国・Beijing Center for Disease Prevention and Control(北京市疾病予防管理センター)のYang Pan氏らが報告した。約3,000件のSARS-CoV-2について完全ゲノムシークエンスを行い明らかにした。著者は、「今回のデータは北京市のみのものだが、人流の頻度および伝染力が強い系統が循環していたことから、結果は“中国の現状”とみなすことができる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年2月8日号掲載の報告。2022年採取のSARS-CoV-2をゲノム解析、系統発生学的・人口動態的分析を実施 研究グループは、本検討の背景について次のように述べている。「中国でのダイナミックな国家的ゼロCOVID戦略によって、2022年12月以前の北京市では、SARS-CoV-2の持続的局地的感染は起きていなかった。しかし、外来ケースは過去3年にわたり、たびたび検出されてきた。最近、中国ではCOVID-19症例が急増しており、SARS-CoV-2の新たな変異株出現が懸念されているが、北京市では3年の間、ウイルスゲノムの監視をルーチンに行ってきている。なお続くCOVID-19パンデミックへの世界的対応には、世界的に収集された最新のウイルスゲノムシークエンスをローカルデータのそれと比較した時空間解析が重要である」。 本検討では過去3年間にルーチンに採取が行われた、北京市で発生したSARS-CoV-2(国内症例・外来症例の両者をカバー)の呼吸器検体の中から、2022年1月~12月の収集サンプルを用い、その中から無作為に抽出して分析を行った。 次世代シークエンシングによりSARS-CoV-2をゲノム解析し、さらに質の高い完全シークエンスを用いて、系統発生学的・人口動態的分析を行った。11月14日以降の国内症例、90%がBA.5.2またはBF.7 2,994件の完全SARS-CoV-2ゲノムシークエンスが得られ、そのうち2,881件について質の高い完全シークエンスとさらなる分析を行った。加えて2022年11月14日~12月20日にかけて、413件の新たな検体(国内症例350、外来症例63)のシークエンシングを行った。 シークエンシングを行ったSARS-CoV-2ゲノムは、すべて123 PANGO系統に属しており、それ以外の持続的優勢株や新系統は見つからなかった。北京市では、現在SARS-CoV-2のBA.5.2とBF.7が主流で、11月14日以降の国内症例の90%(350例中315例)を占めており、11月14日以降に、BA.5.2とBF.7の株保有者数が増加していた。

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疼痛に有効な抗うつ薬は?/BMJ

 オーストラリア・シドニー大学のGiovanni E. Ferreira氏らは、成人の疼痛において抗うつ薬とプラセボを比較した試験に関する26件の系統的レビューのデータの統合解析を行った。抗うつ薬の有効性を示す確実性が「高」のエビデンスは得られなかったが、4種の疼痛において、セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)の有効性を示す確実性が「中」のエビデンスが確認された。研究の成果は、BMJ誌2023年2月1日号に掲載された。系統的レビューのデータを統合して要約 研究グループは、病態別の疼痛に対する抗うつ薬の有効性、安全性、忍容性に関して、包括的な概要を提示する目的で、系統的レビューのデータを統合して要約した(特定の研究助成は受けていない)。 医学関連データベース(PubMed、Embase、PsycINFO、Cochrane Central Register of Controlled Trials)に、その創設から2022年6月20日までに登録された文献を検索した。対象は、成人の疼痛について、抗うつ薬とプラセボを比較した系統的レビューとされた。 主要アウトカムは疼痛であった。疼痛の連続アウトカムは、0(痛みなし)~100(最悪の痛み)の尺度に変換され、平均差(95%信頼区間[CI])が示された。また、2値アウトカムはリスク比(95%CI)が提示された。副次アウトカムは、安全性と忍容性(有害事象による投与中止)であった。 得られた結果は、「有効」「有効でない」「結論に至らない」に分類された。エビデンスの確実性は、GRADE(grading of recommendations assessment, development, and evaluation)で評価した。痛みへの抗うつ薬処方では、より微妙なアプローチが必要 2012~22年に発表された26件の系統的レビュー(156試験、参加者2万5,000例以上)が解析の対象となった。これらのレビューには、22種の疼痛について、8クラスの抗うつ薬とプラセボの42の比較が含まれた。疼痛に対する抗うつ薬の有効性に関して、確実性が「高」のエビデンスを示すレビューは認められなかった。 9件のレビューで、11の比較において、9種の疼痛に対していくつかの抗うつ薬がプラセボと比較して「有効」とのエビデンスが示された。その多くはSNRIの有効性を示すもので、6件のレビューで7種の疼痛に有効であった。 このうち確実性が「中」のエビデンスが得られたのは、いずれもSNRIの有効性が示された次の4つの疼痛であった。背部痛(平均差:-5.3、95%CI:-7.3~-3.3)、術後疼痛(多くが整形外科手術)(-7.3、-12.9~-1.7)、神経障害性疼痛(-6.8、-8.7~-4.8)、線維筋痛症(リスク比:1.4、95%CI:1.3~1.6)。 これ以外の31の比較のうち、5の比較で抗うつ薬は「有効でない」、26の比較では「結論に至らない」であった。 安全性および忍容性のデータのほとんどは不明確だった。SNRIは、化学療法による疼痛、背部痛、坐骨神経痛、変形性関節症の患者において、あらゆる有害事象のリスクを増加させたが、術後疼痛や緊張型頭痛では、そのようなことはなかった。 また、背部痛、坐骨神経痛、変形性関節症、機能性ディスペプシア、神経障害性疼痛、線維筋痛症のレビューでは、SNRIはプラセボより忍容性が低かった。 著者は、「これらの知見は、痛みに対して抗うつ薬を処方する際には、より微妙なアプローチが必要であることを示唆する」としている。

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ADHDスクリーニング、親と教師の精度に関する調査

 注意欠如多動症(ADHD)のスクリーニング精度について、小学生の親または学校教師による違いを明らかにするため、中国・The First Hospital of Jilin UniversityのHong-Hua Li氏らは検討を行った。また、ADHDに対する親の認識や情報源に影響を及ぼす因子、ADHD陽性スクリーニング率へのそれらの影響についても併せて調査した。その結果、小学生の親と教師ではADHD症状の認識が異なっており、ADHDスクリーニング陽性率は親よりも教師において有意に高いことが明らかとなった。親のADHDの認識に影響を及ぼす因子として、親の性別・教育レベル、子供の性別・年齢・学年、ADHDに関する情報源が挙げられた。結果を踏まえ著者らは、父親、教育レベルの低い両親、小学2年生・3年生の両親においては、ADHD症状の早期認識を向上させるために、ADHDに関するより多くの知識の習得が必要であるとしている。Frontiers in Psychology誌2022年12月23日号の報告。 2020年9月~2021年1月、中国・長春市の小学校の生徒1,118人の両親および校長24人を対象に横断的研究を実施した。データの収集には、構造化された自己記入式の質問票を用いた。調査項目には、社会人口統計学的特徴、ADHD症状スクリーニング質問票、親の認識、ADHDに関する情報源を含めた。 主な結果は以下のとおり。・Swanson, Nolan, and Pelham Rating Scale(SNAP-IV)によるスクリーニングで陽性であった小学生は、親のバージョンで30人(2.7%)、教師のバージョンでは60人(5.4%)であった。・親は、教師よりもADHDスクリーニング陽性率が低かった。・ADHDに対する親の認識と関連する因子として、以下が挙げられた。 ●母親における子供との関係 OR:1.552(95%CI:1.104~2.180) ●両親の大学卒業以上の学歴 OR:1.526(同:1.054~2.210) ●女児 OR:1.442(同:1.093~1.904) ●子供の年齢 OR:1.344(同:1.030~1.754) ●子供の学年  小学2年生 OR:0.522(同:0.310~0.878)  小学3年生 OR:0.388(同:0.185~0.782) ●ADHDに関する情報源  医療スタッフ OR:1.494(同:1.108~2.015)  家族、親族、友人 OR:1.547(同:1.148~2.083)  テレビ、インターネット OR:3.200(同:2.270~4.510)

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第58回 標準正規分布とは?【統計のそこが知りたい!】

第58回 標準正規分布とは?今回は、標準正規分布(Standard normal distribution)について解説します。標準正規分布とは、平均値0、分散1の正規分布のことです。標準偏差は分散の平方根ですから、標準正規分布においては標準偏差、分散とも1になります。それでは、第56回の正規分布で登場した、ある看護大学の学生40人の統計のテストの得点を例にみていきましょう。まず、基準値を表1のように算出しました。表1基準値について階級幅1の度数分布と相対度数のグラフを作成すると表2と図1のようになります。表2と図1画像を拡大する基準値の相対度数の形状が正規分布であるとき、この曲線分布を標準正規分布と言います。変数x、平均値m、標準偏差σの正規分布において、とすると標準正規分布になります。標準正規分布をz分布ということもあります。■z分布(標準正規分布)の性質z分布(標準正規分布)の形状はデータの平均、標準偏差によって決まります。基準値の平均値は0、標準偏差は1なので、z分布(標準正規分布)の平均は0、標準偏差は1となり、グラフの形状は図2のようになります。図2では、z分布の特徴をみてみましょう。平均値0を中心に左右対称となる。曲線は平均値で最も高くなり、左右に広がるにつれて低くなる。曲線と横軸で囲まれた面積を100%とした場合、曲線の中の区間の面積は表3のようになる。表3z分布の区間の確率(面積)は図3のExcelの関数で求められます。図3画像を拡大する■度数分布が正規分布であるかどうか調べる方法度数分布のグラフの形状が、左右対称な釣り鐘型の分布、富士山型になっていれば正規分布であると言いましたが、富士山型になっていても、尖りすぎた山、平らすぎる山の形状は正規分布とは言えません。そこで、度数分布の形状が正規分布であるかを見極めるために、統計学的に判定しなければなりません。●正規分布かどうかを見極めるためによく使われる判定(1)歪度、尖度による判定(2)正規確率プロットによる判定(3)正規性の検定つまり、(1)、(2)観測されたデータ(サンプルという)から作成した度数分布が正規分布であるかを調べる方法(3)アンケート調査や実験によって観測されたデータから作成した度数分布を基に、母集団についても度数分布は正規分布といえるかを調べる方法となります。図4に概念を表します。図4なお、本文で登場した歪度、尖度については次回第59回で、正規確率プロットについては第60回で、サンプルの度数分布から母集団も正規分布であるかどうかの正規性の検定については第61回で解説します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第41回 外れ値とは?第54回 スピアマン順位相関係数とは?第55回 スピアマン順位相関係数の計算方法は?

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日本人のサルコペニア予防には地中海食より日本食?

 日本人中高齢者の食生活と握力との関連を検討したところ、より日本食らしい食事パターンの人ほど、握力低下が少ないことが明らかになった。一方、地中海食らしい食事パターンは、握力低下に対する保護的な効果は見られなかったという。長野県立大学健康発達学部の清水昭雄氏、神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部の遠又靖丈氏、三重大学医学部附属病院リハビリテーション部の百崎良氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」に10月3日掲載された。 日本食と地中海食はどちらも健康的な食事パターンとして知られており、それらを順守している人ほど心血管疾患や全死亡リスクが低いことが報告されている。ただ、日本を含む先進諸国では人口の高齢化を背景に、筋力や筋肉量が低下した状態であるサルコペニアを予防することの重要性が増している。そこで清水氏らは、日本食または地中海食の順守と、サルコペニアの主要な関連因子である握力低下との関連を横断的に検討した。 研究には、独立行政法人経済産業研究所などが行っている中高齢者対象調査「くらしと健康の調査(JSTAR)」のデータを用いた。JSTARは、国内10都市の50歳以上の地域住民から無作為に抽出された人を対象とするパネル調査であり、その参加者のうち今回の研究で解析に必要なデータがそろっている6,031人(平均年齢62.8±7.0歳、女性53.6%、BMI23.1±3.1)が対象とされた。 日本食らしさは、「日本食指数改訂版(rJDI12)」という指標で評価。これは、12種類の食品群の摂取量を基に0~12点の範囲でスコア化し、高得点であるほどより日本食らしい食事パターンと判定する。地中海食らしさは、「代替地中海食(aMED)スコア」という指標で評価。これは、9種類の食品群の摂取量を基に0~8点の範囲でスコア化し、高得点であるほどより地中海食らしい食事パターンと判定する(ただし、aMEDスコアの算出に必要なナッツの摂取量が本調査では把握されていなかったため、8種類の食品群の摂取量で評価した)。握力は、アジアサルコペニアワーキンググループのサルコペニア診断基準に基づき、男性は28kg未満、女性は18kg未満を「握力低下」と判定した。 rJDI12スコアの四分位数で4群に分類すると、より日本食らしい食事パターンの群は、高齢で喫煙者が少なく、歩行時間が長く、摂取エネルギー量が多かった(傾向性P<0.001)。性別(女性の割合)やBMI、飲酒習慣とは有意な関連がなかった。一方、aMEDスコアの四分位数で4群に分類すると、より地中海食らしい食事パターンの群は、高齢で摂取エネルギー量が多く(傾向性P<0.001)、喫煙者が少ない(傾向性P=0.001)という点ではrJDI12スコアでの分類と同様だが、女性の割合が少なく、習慣的飲酒者が多かった(傾向性P<0.001)。また歩行時間とは有意な関連が認められなかった。 握力低下の該当者率を、rJDI12スコアの第1四分位群を基準として、年齢と性別のみを調整して比較すると、第2四分位群でもオッズ比が有意に低く、全体としてrJDI12スコアが高い群ほどオッズ比が低下するという有意な関連が認められた(傾向性P<0.001)。一方、aMEDスコアの第1四分位群を基準として比較すると、第3四分位群のオッズ比のみが有意に低く、全体としてaMEDスコアと握力低下該当者率との関連は有意性が認められなかった(傾向性P=0.191)。 次に、握力低下に影響を及ぼし得る交絡因子〔年齢、性別、BMI、手段的日常生活動作(IADL)スコア、歩行時間、飲酒・喫煙習慣、摂取エネルギー量、脳血管疾患・冠動脈性心疾患・糖尿病・がんの既往〕を調整するモデルで検討。その結果、rJDI12では第4四分位群で有意に低いオッズ比となり、年齢・性別のみを調整した解析結果と同様に、rJDI12スコアが高い群ほどオッズ比が低下するという有意な関連が認められた(傾向性P=0.031)。aMEDスコアと握力低下該当者率との関連は、年齢・性別のみを調整したモデル同様、非有意だった(傾向性P=0.242)。 以上より著者らは、「地中海食ではなく、日本食らしい食事パターンが、筋力低下の該当者率の低さと関連していた。日本人の食生活の評価にはaMEDスコアよりもrJDI12スコアの方が優れている可能性がある」と結論付けている。ただし、本研究が横断研究であること、aMEDスコアでの評価にナッツの摂取量を考慮しなかったことなどの限界点を挙げ、「日本食らしい食事パターンが日本人の筋力低下につながるのか否か、さらなる研究が必要とされる」と付け加えている。

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がん診断後の急速な身体機能低下はいつまで続く?

 高齢がん患者の身体機能の推移をがん診断の前後10年にわたって調査したところ、がん患者の身体機能はがん診断後に加速度的に低下し、5年後であっても非がん患者のコントロール群と比べて低いままであることが、Elizabeth M. Cespedes Feliciano氏らによって明らかになった。JAMA Oncology誌オンライン版2023年1月19日号掲載の報告。 これまで、非がん患者と比較して、がん患者のがん部位や進行度、治療が身体機能へ与える長期的な影響を調べた研究はなかった。そこで研究グループは、がん診断の前後10年間の身体機能を調査するために前向きコホート研究を実施した。 研究には、一般閉経後女性を対象とした臨床試験である「The Women's Health Initiative」から9,203例のがん患者(乳がん5,989例、大腸がん1,352例、子宮体がん960例、肺がん902例)と年齢でマッチさせた非がん患者(コントロール群)4万5,358例が組み込まれた。参加者は1993~98年に登録され、2020年12月まで追跡された。がん診断時と1年後のRAND-36項目健康調査(0~100、点数が高いほど身体機能が良好)による身体機能を線形混合モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・がん患者群のがん診断時の平均年齢は73.0歳(±7.6歳)であった。・臨床進行度が限局のがん患者の身体機能の低下は、がん診断前はコントロール群と同程度であったが、がん診断後はコントロール群と比較して加速度的に低下し、RAND-36項目健康調査のスコアは年1~2ポイント低下した。・がん診断の翌年の身体機能の低下は、臨床進行度が領域浸潤のがん患者で最も顕著であった(限局の乳がん患者−2.8ポイント/年[95%信頼区間[CI]:−3.4~−2.3]vs.領域浸潤の乳がん患者−5.3ポイント/年[同:−6.4~−4.3])。・また、全身療法を受けている患者でも身体機能の低下が顕著であった(何らかの化学療法を受けている限局の子宮体がん患者−7.9ポイント[95%CI:−12.2~−3.6]vs.放射線療法単独の限局の子宮内膜がん患者−3.1ポイント[同:−6.0~−0.3])。・がん患者の身体機能の低下は診断後の追跡後期に緩徐になったが、5年後であってもコントロール群の身体機能を大幅に下回っていた。 これらの結果から、研究グループは「本前向きコホート研究において、がん患者群ではがん診断後に加速度的に身体機能が低下し、数年後であってもコントロール群よりも低かった。がん患者には身体機能を維持するための支持的介入が有用である可能性がある」とまとめた。

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6つの“健康的な生活習慣”で高齢者の記憶力低下が遅延/BMJ

 健康的な生活習慣(喫煙をしない、飲酒をしない、健康的な食事、定期的な運動、活発な認知活動と社会的接触を組み合わせた)は、アポリポ蛋白E(APOE)ε4遺伝子型保有者においても、記憶力低下の進行を遅らせることを、中国・首都医科大学のJianping Jia氏らが地域住民を対象とした10年間の前向きコホート研究「China Cognition and Ageing Study(COAST)」の結果、報告した。健康的な生活習慣が認知機能に及ぼす影響に関する研究は増えているが、記憶力への影響に目を向けた研究は少なく、長期にわたる健康的な生活習慣と記憶力低下との関係を評価するには不十分なものであり、また遺伝的リスクとの相互作用は考慮されていなかった。著者は、「今回の研究は、記憶力の低下から高齢者を守るための重要な情報を提供するだろう」とまとめている。BMJ誌2023年1月25日号掲載の報告。10年間追跡、6つの健康的な生活習慣と記憶力低下の関連を検討 研究グループは、中国・北部、南部および西部の代表的な12省の計96地域(都市部48地域、農村部48地域)において、2009年5月8日より認知機能が正常でAPOE遺伝子型の検査を受けた60歳以上の個人を登録し、2019年12月26日まで追跡した。ベースラインおよび各追跡調査時(2012、2014、2016および2019年)に、記憶力(WHO/UCLA聴覚性言語学習検査[AVLT])、認知機能(ミニメンタルステート検査[MMSE])、生活習慣(健康行動質問票による)を評価した。 主要アウトカムは、健康的な生活習慣6項目の記憶力への影響で、生活習慣について好ましい(健康的な生活習慣の該当項目が4~6項目)、平均的(2~3項目)、好ましくない(0~1項目)に分類し、線形混合モデルを用いて解析した。 健康的な生活習慣とは、健康的な食事(12品目[果物、野菜、魚、肉、乳製品、塩、油、卵、穀類、豆類、ナッツ、茶]中7品目以上を毎日推奨された量を摂取)、定期的な運動(中強度150分/週以上、または強強度75分/週以上)、活発な社会的接触(週2回以上)、活発な認知活動(週2回以上)、喫煙なし(喫煙未経験または少なくとも3年前に禁煙)、飲酒なし(まったく飲まない、または時々飲む)とした。APOEε4遺伝子型有無にかかわらず、健康的な生活習慣で記憶力低下が遅延 5万6,894例がスクリーニングされ、ベースラインでAPOE遺伝子型検査を受けた認知機能が正常な2万9,072例が登録された(平均年齢72.23歳、女性48.54%、APOEε4保有者20.43%)。 10年の追跡期間において、全体集団では生活習慣が好ましくない群と比較して好ましい群で記憶力の低下が遅かった(0.028点/年、95%信頼区間[CI]:0.023~0.032、p<0.001)。 APOEε4を保有している集団では、好ましくない群と比較して、好ましい群(0.027点/年、95%CI:0.023~0.031)および平均的な群(同:0.014、0.010~0.019)で記憶力の低下が遅かった。APOEε4を保有していない集団でも同様の結果がみられ、好ましくない群と比較し、好ましい群(同:0.029、0.019~0.039)ならびに平均的な群(同:0.019、0.011~0.027)で記憶力の低下が遅かった。 APOEε4の保有状況と生活習慣は、記憶力低下に対する有意な相互作用を示さなかった(p=0.52)。

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子宮外妊娠、MTXへのゲフィチニブ上乗せ効果は?/Lancet

 卵管異所性妊娠(子宮外妊娠)の女性において、MTX(メトトレキサート)筋肉内投与にゲフィチニブ経口投与を上乗せしても、メトトレキサートを超える臨床的有用性は認められない一方、軽度の副作用が増加した。英国・エディンバラ大学のAndrew W. Horne氏らが、英国の病院50施設において実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Gefitinib for Ectopic pregnancy Management:GEM3」試験の結果を報告した。卵管異所性妊娠は、重大な病的状態の原因となる可能性があり、死に至ることさえある。現在の治療法はメトトレキサートまたは手術であるが、メトトレキサートの治療では約30%が失敗し、その後レスキュー手術が必要となる。EGFRチロシンキナーゼ阻害薬ゲフィチニブは、メトトレキサートの有効性を改善させる可能性が示唆されていた。Lancet誌オンライン版2023年2月1日号掲載の報告。ゲフィチニブ250mg/日7日間経口投与上乗せをプラセボと比較 研究グループは、卵管異所性妊娠と診断された18~50歳の女性で、メトトレキサートによる内科的管理が適切と判断された患者を、メトトレキサート(50mg/m2単回筋肉内投与)+ゲフィチニブ(250mg 1日1回7日間経口投与)群、またはメトトレキサート(同)+プラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、異所性妊娠に対する外科的介入(腹腔鏡または開腹による卵管切除術または卵管開口術)とし、intention-to-treat解析を行った。副次評価項目は、内科的管理による異所性妊娠の治癒(血清hCG値が妊娠前最低値15 IU/L以下に低下)までの期間、重篤な有害事象などとした。外科的介入率は、ゲフィチニブ群30% vs.プラセボ群29% 2016年11月2日~2021年10月6日の期間に、計328例をメトトレキサート+ゲフィチニブ群(165例、以下ゲフィチニブ群)またはメトトレキサート+プラセボ群(163例、以下プラセボ群)に割り付けた。プラセボ群の3例が同意を撤回したため、有効性解析対象集団はゲフィチニブ群165例、プラセボ群160例となった。 主要評価項目である外科的介入率は、ゲフィチニブ群30%(50/165例)、プラセボ群29%(47/160例)であり、両群に有意差は認められなかった(補正後リスク比:1.15[95%信頼区間[CI]:0.85~1.58]、補正後群間リスク差:-0.01[95%CI:-0.10~0.09]、p=0.37)。 内科的管理による異所性妊娠の治癒までの期間(中央値)は、ゲフィチニブ群28.0日(四分位範囲[IQR]:23.5~36.0、108例)、プラセボ群28.0日(21.0~36.5、108例)であった(原因特異的ハザード比[HR]:0.96[95%CI:0.69~1.33]、部分分布HR:1.03[95%CI:0.75~1.40])。 重篤な有害事象は、ゲフィチニブ群165例中5例(3%)、プラセボ群162例中6例(4%)が認められた。下痢および発疹の発現率は、プラセボ群に比べ、ゲフィチニブ群で高かった。

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4人に1人近くの患者が入院中に有害事象を経験

 入院患者のほぼ4分の1が入院中に有害事象を経験することが、新たな研究で明らかにされた。このような有害事象の多くは、薬剤の副作用や手術リスクに起因するものであるため、防止することは困難だという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のDavid Bates氏らが実施したこの研究の詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」1月12日号に掲載された。 Bates氏らは、患者の診療録データを用いて後ろ向きコホート研究を実施し、入院中の患者に生じた有害事象の発生頻度、予防可能性、および重症度を検討した。対象は、米マサチューセッツ州の11施設の病院に2018年に入院した患者からランダムに抽出した2,809人(平均年齢59.9歳)とした。 その結果、対象患者の23.6%(663人)が入院中に1件以上の有害事象を経験していたことが明らかになった。生じた有害事象の総数は978件で、そのうちの222件(22.7%)は予防可能であり、316件(32.3%)は重症度が重篤、またはそれ以上(生命を脅かすもの、致死的なもの)と判断された。対象患者のうちの191人(6.8%)に予防可能な有害事象が1件以上生じ、29人(1.0%)の患者に予防可能な重篤で生命を脅かすあるいは致死的な有害事象が1件以上生じていた。死亡件数は7件で、そのうちの1件は予防可能と考えられた。有害事象として最も多かったのは薬剤に関連するもので39.0%、次いで手術やその他の処置に関連する有害事象が30.4%を占めていた。そのほか、転倒や褥瘡などの患者のケアに関わる有害事象が15.0%、ケアに関連して生じた感染症が11.9%発生していた。 Bates氏は、「これらの数字は残念ではあるが、衝撃的なものではない」とし、「これらの結果は、われわれがなすべきことがまだ山積みであることを如実に示すものだ」と話す。 感染症に関わる有害事象の発生率に関しては、過去数十年の発生率に鑑みれば、大きな改善だと研究グループは述べている。それでもBates氏は、「入院中の有害事象が深刻な問題の一つであることに変わりはない」と強調する。 米ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院保健サービス・研究成果センターのディレクターであるAlbert Wu氏は、「われわれは、有害事象の原因のいくつかを排除した。だが、効果の高い新薬や新しい処置に関連して、これまでにないタイプの有害事象が生じている」と指摘する。 他の専門家たちもWu氏に同意を示す。そのうちの一人である、本研究論文の付随論評を執筆した、ボストンの医療改善研究所の名誉会長兼シニアフェローであるDonald Berwick氏は、「1991年と比較すると、今日では利用可能な薬剤が豊富になった。ただ、いくつかの薬剤は、治療効果と危険な用量の差である治療マージンが小さい」と懸念を示している。

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米FDAが喘息の2剤配合吸入薬を承認

 米食品医薬品局(FDA)は1月11日、気管支収縮の治療または予防と喘息発作リスクの低減を目的に、18歳以上の成人喘息患者が利用できる吸入薬Airsupra(一般名albuterol and budesonide)を新たに承認した。 Airsupraは、β2アドレナリン受容体作動薬であるalbuterol(アルブテロール、日本ではサルブタモール)と副腎皮質ステロイドのブデソニドの合剤。吸入ステロイド薬(ICS)と短時間作用型β2刺激薬の合剤の米国での承認は、今回が初めてである。また、喘息症状の長期管理薬としてではなく、発作治療薬として吸入ステロイド薬を含有する薬剤が米国で承認されたのも、今回が初めてである。 喘息は、気道の炎症および狭窄を引き起こす長期的な疾患で、発作が起こると、咳、喘鳴、胸部圧迫感、息切れなどが生じる。米国での喘息患者の数は2400万人に上る。症状は患者によってさまざまであり、時間とともに変化することもある。 今回の承認に先立ち、FDAは中等症から重症の喘息患者を対象とする多施設共同ランダム化二重盲検対照試験(MANDALA試験)で、重度の喘息発作の低減に対する同薬の有効性を評価した。対象患者を、Airsupra(180μg/160μg)、またはalbuterol(180μg)を投与する群にランダムに割り付け、24週間以上にわたり治療を実施した。Airsupraは2回の経口吸入により投与した。有効性の主要評価項目は、重度の喘息発作が生じるまでの時間とされた。重度の喘息発作は、3日以上のステロイド薬の全身投与を要する喘息症状の悪化または発症、救急外来受診とその後の3日以上のステロイド薬の全身投与、喘息による24時間以上の入院と定義された。最初の重度の喘息発作が起きるまでの時間で評価した結果、Airsupra群ではalbuterol群に比べて、重度の喘息発作が起きるリスクが28%低減したことが明らかになった。 Airsupra群に特によく生じた副作用は、頭痛、口腔カンジダ症、咳嗽、発話困難であった。FDAによると、Airsupraは24時間に6回(計12回の吸入)を超えて使用すべきではないという。また、心血管疾患、けいれん性疾患、甲状腺機能亢進症、糖尿病およびケトアシドーシスのある患者は慎重に使用する必要がある。さらに、albuterol、ブデソニド、その他の添加成分に対する過敏症のある患者も、Airsupraの使用を避ける方がよいとされている。

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COVID-19の2価ワクチン接種でXBB系統の感染リスクが半減

 新型コロナウイルスオミクロン株のBA.4とBA.5に対応した2価ワクチンのブースター接種により、現在流行中のオミクロン株XBB系統への感染リスクが半減する可能性が、新たなデータで示された。米疾病対策センター(CDC)が実施したこの研究結果は、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」に1月25日掲載された。NBCニュースは、CDCのCOVID-19 Emergency Response Teamの責任者であるBrendan Jackson氏がこの知見について、「非常に心強いものだ」とコメントしたことを報じている。 この研究は、2022年12月1日から2023年1月13日の間に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状が現れ、薬局でRT-PCR検査を受けた18歳以上の米国成人2万9,175人を対象としたもの。これらの人の検査結果を分析し、オミクロン株のXBBおよびXBB.1.5への感染に対するワクチンの有効性を、2価ワクチンのブースター接種者と未接種者との間で比較した。なお、XBBおよびXBB.1.5は、オミクロン株BA.2系統の2種類(BJ.1株とBM.1.1.1株)が組み合わさった、組み換え体と呼ばれる変異ウイルスである。 対象者の47%(1万3,648人)が新型コロナウイルス陽性の判定を受けていた。解析の結果、2価ワクチンのブースター接種の症候性BA.5感染に対する予防効果は、49歳以下では52%、50~64歳で43%、65歳以上で37%であり、症候性のXBB/XBB.1.5感染に対する予防効果は同順に、49%、40%、43%であった。このような2価ワクチンの有効性は、ファイザー社製かモデルナ社製かを問わずに認められた。 ブースターワクチンは2022年の夏に、オミクロン株BA.4およびBA.5に対応するものに更新された。しかし、CDCによると、米国でこの2価ワクチンのブースター接種を受けた人は15%程度にとどまっているという。米テキサス・チルドレンズ病院のPeter Hotez氏はNBCニュースに対して、「このCDCのデータを見れば、2価ワクチンのブースター接種を受けることのベネフィットは明らかだ」と語っている。 CDCは、2価ワクチンのこの防御効果は、インフルエンザ予防接種の効果(40~60%のリスク低減)に近いものだと述べている。ただし、今回のCDCのデータには、無症候の患者や、薬局で検査を受けずに入院した患者は含まれていない。また、米メイヨー・クリニック、ワクチン研究グループのGreg Poland氏は、「ブースター接種を受けた人は、室内でのマスク着用や外出を控えるなど、別の方法でも自己防御している可能性がある」と指摘している。 Hotez氏は、「5~6カ月後のブースター接種の効果や入院予防効果に関するデータについても見てみたい」と話している。Jackson氏によると、まもなく発表予定のCDCのデータでは、2価ワクチンをブースター接種した場合、死亡リスクがワクチン未接種の人に比べて13分の1に、ワクチンを接種したがブースター未接種の人に比べて2分の1に低減したことが示されているという。また、近く米食品医薬品局(FDA)のワクチン諮問委員会が開かれ、COVID-19の2価ワクチンのブースター接種をインフルエンザワクチンのように毎年とする案が検討されるということだ。

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コロナワクチン接種者と未接種者、情報源の違いは?/筑波大

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンを接種するかどうかを決定しておらず「様子見」していた人のうち、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報を「職場/学校」「LINE」から得ている人はその後のワクチン接種率が高く、「インターネットニュース」「動画共有サイト(YouTubeなど)」から得ている人は接種率が低かったことを、筑波大学の堀 大介氏らが明らかにした。Environmental health and preventive medicine誌オンライン版2023年2月2日掲載の報告。 過去の研究によって、COVID-19に関する情報をテレビのニュース番組や新聞から得ている人はワクチン接種意向が高いなど、情報源の種類と接種意向との関連が報告されていた。しかし、ワクチンが接種可能になった後に実際にワクチンを接種したかどうかは不明のため、ワクチン接種の意思決定プロセスにおける情報源の種類の影響は明らかではなかった。そこで研究グループは、ワクチンを接種するかどうかまだ決めていない人において、使用しているCOVID-19に関する情報源とその後のワクチン接種の有無との関連を明らかにするため調査を実施した。 研究グループは、「日本におけるCOVID-19問題による社会・健康格差評価研究(JACSIS)」で得られたデータを解析した。対象は、医療者ではなく、健康な、18~64歳のインターネット調査会社の登録モニターであった。 本研究は2段階で行われ、まずワクチンの集団接種開始前の2021年2月8日~25日に「様子見してから接種したい」と回答した2万6,000人が組み込まれた。除外基準(年齢、基礎疾患、すでにワクチンの接種意向を決めていた、など)を満たしている人を除外した後、集団接種開始後の2021年9月27日~10月29日にCOVID-19に関する情報の入手源や接種状況などを5,139人(年齢中央値42.8歳[±12.2歳]、女性55.7%)に聴取した。情報入手源は、家族、友人、職場/学校、医療者、著名人、専門家、官公庁のホームページ、学術機関のホームページ、動画共有サイト、LINE、Twitter、Facebook、Instagram、インターネットニュース、新聞、雑誌、書籍、テレビのニュース番組、テレビのワイドショー、ラジオの20種類であった。 主な結果は以下のとおり。・解析対象となった5,139人中、実際にワクチンを接種した人(予約済み、接種意向あり含む)は85.7%であった。・COVID-19に関する情報の入手源は、テレビのニュース番組(78.8%)、インターネットニュース(69.1%)の順で多かった。最も少なかったのは、Facebook(4.0%)であった。・多変量ロジスティック回帰分析の結果、職場/学校から情報を得ている人のワクチン接種の調整オッズ比[aOR]が1.49(95%信頼区間[CI]:1.18~1.89)、LINEのaORが1.81(同:1.33~2.47)と高く、インターネットニュースのaORが0.69(同:0.55~0.86)、動画共有サイトのaORが0.62(同:0.48~0.82)と低かった。・若年、失業、低学歴、低収入、インフルエンザワクチン未接種、COVID-19ワクチンへの不安の強さが、COVID-19ワクチン未接種と関連していた。 これらの結果から、研究グループは「COVID-19ワクチンの接種を様子見していた人の意思決定において、情報源の種類が重要な役割を果たしていた。ワクチン接種を促すにあたって、情報源の特性を理解し、適切に活用することが重要である」とまとめた。

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