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てんかん治療の改善は健康教育から始まる

 てんかん治療の格差は貧困国において最も大きい。ケニア・KEMRI(Kenyan Medical Research Institute)のFredrick Ibinda氏らは、健康教育プログラムにより治療アドヒアランスが改善するのか、無作為化試験にて評価を行った。農村地帯への1日の介入で行われた検討の結果、健康教育がてんかんに関する知識を向上することが示された。しかし1日だけの教育では、アドヒアランスの改善には結びつかなかったことも判明し、著者は「継続的な教育がアドヒアランスを改善する可能性があり、さらなる研究が必要である」と述べている。Epilepsia誌オンライン版2014年1月21日号の掲載報告。 ケニアの農村地帯への1日健康教育プログラム(キリフィてんかん教育プログラム)の有効性について検討した無作為化試験は、738例のてんかん患者を介入群と非介入(対照)群に割り付けて行われた。主要アウトカムは、抗てんかん薬(AED)のアドヒアランス状況で、血中薬物濃度(標準的な血液アッセイで測定、検査技師は割り付けをマスキング)にて評価した。副次アウトカムは、てんかん発作の頻度とKilifi Epilepsy Beliefs and Attitudes Scores(KEBAS)(訓練された介入スタッフにより行われた質問アンケートで評価)であった。データは、ベースライン時と介入群への教育介入後1年時点に集め分析した。また事後解析として、修正ポアソン回帰分析にて、アドヒアランス改善(AEDのベースライン時の非至適血中濃度からの変化で評価)、発作の減少、KEBASの改善に関連した因子を調べた。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時と介入後1年時点の両時点で評価が行われたのは581例であった。・試験終了時点で血液サンプルが入手できたのは、介入群105例、対照群86例であった。解析は、最もよく服用されていたAED(フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン)について行われた。・結果、AED血中濃度ベースのアドヒアランスについて、介入群と対照群で有意差はみられなかった(オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:0.74~2.90、p=0.28)。自己報告でみた場合も同様であった(同:1.00、0.71~1.40、p=1.00)。・一方で、介入群のほうが対照群よりも、てんかんの原因についての伝承、民間療法、ネガティブなステレオタイプに対する固定観念を持っている人が有意に少なかった。・発作の頻度については、差がなかった。・ベースライン時とフォローアップ時のデータを比較した結果、アドヒアランス(血中濃度で評価)は介入群(36%から81%、p<0.001)、対照群(38%から74%、p<0.001)ともに有意に増大した。・発作頻度が減少した(直近3ヵ月で3回以下)患者数は、介入群は62%から80%(p=0.002)、対照群67%から75%(p=0.04)と増大した。・治療アドヒアランスの改善(両群を統合して検討)は、てんかんリスクについてのポジティブな信条への変化(リスク比[RR]:2.00、95%CI:1.03~3.95)、および非伝統的宗教的信条への変化(同:2.01、1.01~3.99)と明らかな関連がみられた。・発作頻度の減少は、アドヒアランスの改善と関連していた(RR:1.72、95%CI:1.19~2.47)。・KEBASのポジティブな変化は、高次教育を受けたことと関連していた(非教育との比較でのRR:1.09、95%CI:1.05~1.14)。・以上のように、健康教育はてんかんについての知識を改善するが、1回だけではアドヒアランスは改善しないことが示された。しかしながら、将来的な検討で継続的教育はアドヒアランスを改善する可能性がある。関連医療ニュース ベンゾジアゼピン部分アゴニスト、新たなてんかん治療薬として期待 日本の高齢者てんかん新規発症、半数以上が原因不明:産業医大 難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か

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統合失調症患者は処理速度が著しく低下、日本人でも明らかに:大阪大学

 統合失調症患者は文化的要因が影響する神経心理学的検査において、統合失調症でない患者と比較してパフォーマンスが劣ることが報告されている。大阪大学の藤野 陽生氏らは、ウェクスラー成人知能検査(WAIS-III)日本語版を用いて、統合失調症患者のパフォーマンスを検討した。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2013年1月22日号の報告。 日本人統合失調症患者157例と健常者264例を対象に、WAIS-IIIでのパフォーマンスを評価した。WAIS-IIIから得られた、すべての知能指数スコアと4群指数(言語理解、知覚統合、作動記憶、処理速度)により比較検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は健常者と比較し、すべての知能指数スコアと4群指数が損なわれていた。・とくに処理速度は、健常者よりも約2SD低かった。・13のサブテストのなかで、理解(z = -1.70、d = 1.55)、符号(z =-1.84、d = 1.88)、記号探し(z-1.85、d = 1.77)は健常者と比較し著しく損なわれていた。・日本人統合失調症患者におけるWAIS-IIIによって評価された障害のタイプや程度は、これまで英語圏で報告されたものと同様であった。また、機能的転帰に関連するいくつかの神経心理学的分野の障害は、統合失調症の普遍的な特徴であると考えられる。関連医療ニュース 統合失調症の寛解に認知機能はどの程度影響するか:大阪大学 統合失調症の実行機能障害に関与する遺伝子を発見:獨協医大 統合失調症患者へのセロトニン作動薬のアドオン、臨床効果と認知機能を増大

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脂漏性皮膚炎への経口抗真菌薬の使用実態が明らかに

 カナダ・トロント大学のA.K. Gupta氏らは、脂漏性皮膚炎に対する経口薬治療について発表された文献数とその質について系統的レビューを行った。脂漏性皮膚炎は通常、局所ステロイドまたは抗真菌薬による治療が行われ、重症例もしくは治療抵抗性の場合には経口薬治療が可能とされている。Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology誌2014年1月号の掲載報告。 Gupta氏らによる系統的レビューは、MEDLINE、Embaseのデータベースおよび文献参照リストを探索して行われた。脂漏性皮膚炎の経口薬治療に関するあらゆる報告を対象とした。 文献の質について、Downs&Black修正27項目チェックリストを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・検索により、8つの経口薬治療(イトラコナゾール、テルビナフィン、フルコナゾール、ケトコナゾール、プラミコナゾール、プレドニゾン、イソトレチノイン(国内未承認)、ホメオパシー療法)をカバーした21本の報告(無作為化対照試験、非盲検試験、症例報告)が特定された。・大半の報告は、経口抗真菌薬について検討していたが、その質は概して低かった。・臨床的有効性アウトカムは、試験間でかなりのばらつきがあり、統計解析と治療間の直接比較は難しかった。・その中で、ケトコナゾール治療は、ほかの経口薬治療と比較して脂漏性皮膚炎再発との関連がより大きかった。・イトラコナゾールの投与量は通常、最初の1ヵ月の第一週は200mg/日、2~11ヵ月は、月初めの2日間に200mg/日が投与されていた。・テルビナフィンは、250mg/日を連続投与(4~6週)もしくは間欠投与(月に12日間を3ヵ月)で処方されていた。・フルコナゾールは、連日投与(50mg/日を2週間)もしくは毎週投与(200~300mg)を2~4週で設定されていた。・ケトコナゾールの投与レジメンは1日200mgを4週間であった。・プラミコナゾールは、200mg単回投与であった。・著者は、「今回のレビューにより、将来、試験をデザインする際に考慮すべきキー領域が明らかになった」とまとめている。

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イブプロフェン塩速効性製剤vs.標準製剤

 Cochraneレビューにおいて、速やかに吸収されるイブプロフェン塩(速効性製剤)は遊離酸形態のイブプロフェン(標準製剤)より優れた鎮痛効果を発揮することが示唆されている。英国・オックスフォード大学のR. Andrew Moore氏らは,イブプロフェンの各種経口製剤の薬物動態および臨床効果についてシステマティックレビューを行い、速効性製剤は有害事象の発現を増加させることなく速やかに吸収され、優れた鎮痛効果を発揮することをあらためて示した。鎮痛薬にとって製剤学は重要と考えられるとまとめている。PAIN誌2014年1月号(オンライン版2013年8月21日号)の掲載報告。 本レビューでは、イブプロフェン速効性製剤の利点を調べることを目的に、PubMedにて「イブプロフェン」「リジン」「アルギニン」「ナトリウム」「液剤」「可溶性」「発泡性」「薬物動態」などをキーワードにして論文検索が行われた。 薬物動態に関するレビューには30試験、被験者1,015例、臨床効果に関するレビューには被験者1万例以上のデータが組み込まれた。 主な結果は以下のとおり。・最大血漿中濃度中央値の到達時間は、標準製剤より速効性製剤は約50分も早かった(標準製剤:90分、アルギニン塩、リジン塩およびナトリウム塩製剤:29~35分)・間接比較および直接比較のいずれにおいても、速効性製剤は標準製剤より鎮痛効果が有意に優れ再投与も少なかった。・歯痛に関する研究では、鎮痛作用の発現は速効性製剤200mg(治療必要数[NNT]:2.1、95%信頼区間[CI]:1.9~2.4)と標準製剤400 mg(NNT:2.4、95%CI:2.2~2.5)が同程度で、投与後60分以内の疼痛強度の低下と投与後6時間の有効性に強い相関がみられた。・投与後初期の疼痛強度の速やかな低下は、再投与の減少と関連していた。 ・速効性製剤で有害事象を報告した患者の割合は、標準製剤より高くなかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」・腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識

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早漏症にSSRI、NO濃度との関連を確認

 トルコ・Sisli Etfal研究教育病院のS. L. Kirecci氏らは、精漿中の一酸化窒素(NO)レベルと、早漏症に対するSSRIの有効性との関連について検討を行った。その結果、早漏症は精漿中NO濃度高値と関連しており、SSRI投与により精漿中NO濃度が減少し、さらに膣内挿入から射精までの時間が延長することを報告し、SSRIが早漏症に有効な可能性を示唆した。Andrologia誌オンライン版2013年12月20日号の掲載報告。 本研究の目的は、精漿中のNOレベルと、早漏症に対するSSRIの有効性との関連を明らかにすることであった。原発性早漏症(膣内挿入から射精までの時間[IELT]<1分)の男性16例(32.18±3.32歳)および健常男性11例(コントロール群)が登録された。健常男性はグループ1に、早漏症患者はグループ2と3の2群に無作為に割り付けられた。グループ2にはパロキセチン20mg/日、グループ3にはセルトラリン50mg/日がそれぞれ4週間投与された。ベースライン時および治療後の所見を3群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・早漏症患者におけるベースライン時の平均精漿中NO濃度は、健常男性と比較して有意に高かった(32.24±5.61μmL-1対19.71±3.50μmL-1)(p<0.001)。・IIEFスコア、IELTスコアとNO濃度との関連において、パロキセチンおよびセルトラリン群の間で有意な差は認められなかった。・最初の1ヵ月の最終日において、パロキセチンおよびセルトラリン群における平均IELTスコアは、ベースライン値と比較して有意に改善していた(p<0.001)。・パロキセチンおよびセルトラリンによる治療後、NO濃度はベースラインと比較し減少していた。・以上より、早漏症は精漿中NO濃度高値と有意に関連していることが示唆された。SSRI投与後の精漿中NO濃度の減少は、射精を遅らせる可能性がある。これらの結果を確認するため、また病態生理におけるNOの役割、早漏症治療について明らかにするためにさらなる研究が必要である。関連医療ニュース 早漏治療にはSSRI、トラマドールが有効?! 閉経期ホットフラッシュにSSRIが有効 片頭痛の予防に抗てんかん薬、どの程度有用か

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痩身クリームの効果は-0.46cm

 イタリア・ミラノ大学のF. Turati氏らは、塗るだけでセルライトを減らす(cellulite reduction)効果をうたうコスメ製品について、システマティックレビューとメタ解析を行った。同製品の有効性を調べたオリジナル研究論文は、過去10年間で急速に増加したが、これまでシステマティックレビューとメタ解析は行われていなかった。検討の結果、有効性は大腿囲減少についてわずかに認められるとする知見が得られたことを報告した。Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology誌2014年1月号の掲載報告。 研究グループは、PRISMAガイドラインを適用しているヒトに対するin vivo のシステマティックレビューを行った。また、メタ解析的アプローチを用いて、1アーム10例以上の被験者を組み込み、転帰尺度として大腿囲減少を用いていた対照試験から痩身クリームの全体的な有効性を推算した。 主な結果は以下のとおり。・Medline、Embaseにより2012年8月までに発表された論文から適格試験を検索した。・結果、オリジナル試験は21件であった。全試験が臨床試験であり、大半は女性だけを対象としており、67%は患者内試験として設計されたものであった。・検証されていた痩身クリーム製品の約半数は、キサンテン、ハーブあるいはレチノイドのうち1種類の活性成分を含むだけのものであった。・その他の試験では、痩身クリームをより複雑な手法で検証していたが、試験対象の大部分がキサンテンを含むものであった。・メタ解析の適格基準を満たした対照試験は計7件であった。・治療群と対照群間の大腿囲減少のプール平均差は、-0.46cm(95%信頼区間[CI]:-0.85~-0.08)であった。試験間の不均一性は有意であった(p<0.001)。・以上を踏まえて著者は、「本稿は、セルライトを減らすというコスメ製品の有効性について、科学的エビデンスの系統的な評価を示すとともに、大腿囲減少の効果がわずかにあることを支持するものである」とまとめている。

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変性椎間板の有病率、50歳以上で90%超:Wakayama Spine Study

 これまで、一般地域住民を対象に全脊柱レベルでMRIを撮像し変性椎間板の分布や有病率などについて調べた報告はなかった。和歌山県立医科大学の寺口 真年氏、同講師・橋爪 洋氏、同主任教授・吉田 宗人氏らは、初めてこの課題に取り組み、その結果、変性椎間板の有病率は非常に高く、頚椎、胸椎および腰椎の各部位で椎間板変性はそれぞれC5/6、T6/7およびL4/5に最も多く分布していることを明らかにした。今回の知見は、椎間板変性の原因やメカニズムを解明するうえで有益な情報になると考えられる。Osteoarthritis and Cartilage誌2014年1月号(オンライン版2013年12月5日号)の掲載報告。 研究グループは、MRIを用い全脊柱における変性椎間板の分布と有病率、ならびにその関連因子などについて調べた。 対象は、Wakayama Spine Studyに参加した21~97歳の一般住民975例(男性:324例、平均67.2歳/女性:651例、平均66.6歳)である。 MRIのT2強調矢状断面像をPfirrmann分類に従って評価し、グレード4および5を「椎間板変性あり」として、頚椎、胸椎、腰椎および全脊柱における変性椎間板の有病率を算出するとともに、症状ならびに関連因子について解析した。 主な結果は以下のとおり。・全脊柱における変性椎間板有病率は、50歳未満で男性71%、女性77%、50歳以上では男女ともに90%超であった。・各部位における変性椎間板の有病率は 、頚椎ではC5/6(男性:51.5%、女性:46%)、胸椎ではT6/7(男性:32.4%、女性:37.7%)、腰椎ではL4/5(男性:69.1% 、女性:75.8%)が最も高かった。・すべての部位で、年齢および肥満が変性椎間板の存在と関連していた。・腰痛は、腰椎において変性椎間板の存在と関連していた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」・腰痛診療の変化を考える~腰痛診療ガイドライン発行一年を経て~・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識

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ビタミンD不足の成人、アトピー性皮膚炎罹患が1.5倍

 韓国の一般成人において、ビタミンD不足の人にはアトピー性皮膚炎が多くみられる傾向が判明した。ビタミンD値が十分な人と比較して約1.5倍であった。同関連は、喘息やアレルギー性鼻炎、IgE感作とのあいだではみられなかった。オーストラリア・ロイヤル・パース病院のHui Mei Cheng氏らが報告した。アレルギー性疾患におけるビタミンDの影響は明らかではなく、とくに成人アジア人について大規模住民ベースで検討された研究はなかったという。Journal of Allergy and Clinical Immunology誌オンライン版2013年12月30日号の掲載報告。 韓国の一般成人におけるビタミンDとアレルギー性疾患との関連の評価は、断面調査にて行われた。具体的には、2008~2010年に国民健康栄養調査に参加した19歳以上の1万5,212人のデータを分析した。 交絡因子補正後血清25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]値とアレルギー性疾患(アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎と、増大した総血清IgEおよびアレルゲン特異的血清IgE値を含む)との関連を、重回帰分析法を用いて比較した。 血清25(OH)D値が十分、不十分、不足であるかを、交絡因子補正後の多重ロジスティック回帰分析を用いた推定オッズ比(OR)を算出して評価した。 主な結果は以下のとおり。・交絡因子補正後、平均血清25(OH)D値は、アトピー性皮膚炎と診断されている被験者が同診断をされていない被験者よりも、有意に低値であった(平均±SE値:18.58±0.29ng/mL対19.20±0.15ng/mL、p=0.02)。・ビタミンD値が十分であった被験者と比較して、アトピー性皮膚炎の補正後ORは、不十分であった被験者(12~19.99ng/mL、OR:1.50、95%CI:1.10~2.06)、不足していた被験者(<12 ng/mL、同:1.48、1.04~2.12)で有意に高値であった(いずれもp=0.02)。・これらの関連は、他のアレルギー性疾患を有する被験者ではみられなかった。

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エキスパートに聞く!「うつ病診療」Q&A Part2

CareNet.comではうつ病特集を配信するにあたって、事前に会員の先生方からうつ病診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、産業医科大学 杉田篤子先生にご回答いただきました。今回は、うつ病患者に対する生活指導、うつ病患者の自殺企図のサインを見落とさないポイント、仕事に復帰させるまでの手順・ポイント、認知症に伴ううつ症状の治療法、リチウム(適応外)による抗うつ効果増強療法の効果についての質問です。うつ病患者に対する生活指導について具体的に教えてください。生活習慣の改善といった患者自身ができる治療的対処行動を指導することは非常に有用です。とくに、睡眠・覚醒リズムを整えることは重要です。具体的には、毎日同じ時刻に起床し、朝、日光を浴びること、規則正しく3回食事摂取をすること、昼寝をするのは15時までに20~30分以内にすること、不眠のため飲酒するのは治療上逆効果であることを伝えます。また、医師の指示通りきちんと服薬するよう、指導することも大切です。うつ病の症状が軽快したからといって、自己判断で内服を中止する患者さんもいますが、再燃の危険性があることをあらかじめ説明しておきます。症状が悪化した際や副作用の心配が生じた際は、主治医にきちんと相談するように伝えます。軽症のうつ病の場合は、定期的な運動もうつ症状の改善の効果を期待できるため、負担のかからない範囲での運動を勧めます1)。1)National Institute for Health and Clinical Excellence. Depression: management of depression in primary and secondary care: NICE guidance. London: National Institute for Health and Clinical Excellence; 2007.うつ病患者の自殺企図のサインを見落とさないポイントを教えてください。自殺の危険率が高いうつ病患者の基本的特徴として、男性(5~10倍)、65歳以上、単身者(とくに子供がいない)、病歴・家族歴として、自殺企図歴あり、精神科入院歴あり、自殺の家族歴あり、合併疾患として、アルコール・薬物依存の併発、パニック障害の併存・不安の強さ、がんなどの重症身体疾患の併発などが挙げられます1)。自殺企図のサインを見落とさないため、とくに注意すべき点は、希死念慮を何らかの形で表明する際に注意を払うことです。希死念慮は、言語的に表出されるだけでなく、非言語的に伝えられることもあります。“死にたい”、“自殺する”と直接的に言葉にするだけでなく、“生きている意味がない”、“どこか遠くへ行きたい”などと言ったり、不自然な感謝の念を表したり、大切にしていた持ち物を人にあげてしまうこともあります。具体的な自殺の方法を考え、自殺に用いる手段を準備し、自殺の場所を下見に行く場合は自殺のリスクが切迫していると考えるべきです。さらに、自傷行為や過量服薬を行う患者さんも、長期的には自殺既遂のリスクが高い状態です2)。1)Whooley MA, et al. N Engl J Med. 2000;343:1942-1950.2)Skegg K. Lancet. 2005;366:1471-1583.仕事に復帰させるまでの手順、ポイントについて教えてください。職場復帰までの手順は、厚生労働省が「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」 に示しており、第1から第5のステップに沿った支援を行います。第1ステップは、病気休業開始および休業中のケアを行う段階です。主治医による治療はもちろん、家族のサポートや管理監督者や産業医・産業保健スタッフによる病気休業期間中の労働者に安心を与えるような対応が必要です。うつ病が軽快し、家庭での日常生活ができる状態となれば、職場復帰に向けて、生活リズムの立て直し、コミュニケーションスキルの習得、職場ストレスへの対処法の獲得などを目的としたリワークプログラムを行うことがあります。これは、都道府県の障害者職業センターで行われていますが、ほかに、精神保健福祉センター、精神科病院や診療所でも復職デイケアとして行われているところもあります。第2ステップは、休業している労働者本人の職場復帰の意思表示と職場復帰可能の主治医の判断が記された診断書を提出する段階です。この際、主治医が的確に判断を下せるように、産業医が主治医へ会社の職場復帰の制度や本人の置かれている職場環境について情報提供を行います。第3ステップは、職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成を行います。職場復帰支援プランとは、職場復帰を支援するための具体的なプラン(職場復帰日、管理監督者による業務上の配慮、配置転換や異動の必要性など)であり、主治医からの意見を参考に、産業医、管理監督者、人事労務担当者らが協力して作成します。第4ステップは、最終的な職場復帰の決定の段階で、労働者の状態の最終確認が行われ、就業上の配慮に関する意見書が作られ、事業者によって職場復帰の決定がなされます。第5ステップは、職場復帰後のフォローアップで、病気が再燃、再発したり、新たな問題が生じたりしていないかを注意深く見守る段階です。管理監督者や人事担当者が勤務状況や業務遂行能力の評価を行ったり、産業医、産業保健スタッフが病状、治療状況の確認を行ったりし、職場復帰支援プランの実施状況の確認を行います。さらに必要に応じて、見直しを行い、職場環境の改善や就業上の配慮を行っていきます。これらの5つのステップに従い、本人を取り巻く家族、主治医、産業医、産業保健スタッフ、管理監督者、人事担当者などがしっかり連携してサポートすることが大切です。認知症に伴う、うつ症状の治療法を教えてください。認知症の抑うつに対して、抗うつ薬とプラセボを使用した19本のランダム化比較試験(RCT)のうち、11本でシタロプラム(国内未承認)、パロキセチン、セルトラリン、トラゾドンなどの抗うつ薬の有用性が報告されています1)。さらに、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、パロキセチンなどの抗うつ薬を継続して使用することで抑うつ症状の再燃を予防するといったデータもあります2)。しかし、認知症の抑うつに対するセルトラリンまたはミルタザピンの効果を検証した大規模RCTでは、有効性がプラセボに対して差が出ず、有害作用は有意に増加したというデータがあります3)。三環系抗うつ薬に比して有害事象が少ないため、新規抗うつ薬が使用されることが多いですが、常にリスクとベネフィットを常に慎重に勘案しながら、慎重に治療する必要があります。薬物療法以外の治療として、日常生活において活動性を向上させるようなデイサービスなどの枠組みを提供したり、介護者が目標指向的な行動を促したりすることも選択肢に挙がります。1)Henry G, et al. Am J Alzheimers Dis Other Demen, 2011;26:169-183.2)Bergh S, et al. BMJ. 2012;344:e1566.3)Banerjee S, et al. Lancet. 2011;378:403-411.リチウム(適応外)による抗うつ効果増強療法はどの程度の効果があるのでしょうか?リチウムと抗うつ薬の併用による抗うつ効果増強作用は、10本中8本のRCTで支持されています1)。リチウムによる増強療法の有効率は44~83%とされています2)。11本のRCTを用いたメタ解析3)では、リチウムが有効となるには、0.5mEq/Lに達する血中濃度が必要であり、最低1週間の併用を要すると報告されています。通常、効果発現には抗うつ薬より時間がかかり、最低6週間以上の投与を推奨する見解もあります4)。リチウム併用による再発予防効果を示すメタ解析もあります5)。リチウムの増強効果は三環系抗うつ薬で発揮され、エビデンスも確立されています。SSRIでは、シタロプラムをリチウムで増強したRCTも報告されており、プラセボと比較して有害作用は認めなかったという報告もあります6)。パロキセチンとアミトリプチリンをリチウムで増強したRCTによると、有害作用や血中リチウム濃度に差は認めず、パロキセチン+リチウム群ではアミトリプチリン+リチウム群に比べて抗うつ効果発現が早かったとされています7)。2013年のEdwardsらの系統的レビューでは、SSRI単独とSSRI+リチウムの比較では有効性に有意差はなく、SSRI単独とSSRI+抗精神病薬の比較では、SSRI+抗精神病薬の有効性が高く、SSRI+リチウムとSSRI+抗精神病薬の比較では有意差は認めなかったとされています8)。1)Crossley NA, et al. J Clin Psychiatry. 2007;68:935-940.2)Thase ME, et al. Treatment-resistant depression. In: Bloom FE et al, eds. Psychopharmacology: The Fourth Generation of Progress. New York: Raven Press;1995. p.1081-1097.3)Bauer M, et al. J Clin Psychopharmacol. 1999;19:427-434.4)井上 猛ほか. 臨床精神医学. 2000;29:1057-1062.5)Kim HR, et al. Can J Psychiatry. 1990;35:107-114.6)Baumann P, et al. J Clin Psychopharmacol. 1996;16:307-314.7)Bauer M, et al. J Clin Psychopharmacol. 1999;19:164-171.8)Edwards S, et al. Health Technol Assess. 2013;17:1-190.※エキスパートに聞く!「うつ病診療」Q&A Part1はこちら

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Postneoadjuvant treatment with zoledronate in patients with tumor residuals after anthracyclines-taxane-based chemotherapy for primary breast cancer - The phase III NATAN study (GBG 36/ABCSG XX) -- von Minckwitz G, et al.

術前化学療法後の腫瘍残存例に対するゾレドロン酸の効果 ほか1題ドイツからの報告である。術前化学療法後、腫瘍が残存した症例に対して、ゾレドロン酸使用群と観察群を無作為化割付し、プライマリーエンドポイントとして無再発生存率をみた。ゾレドロン酸(4mg静注)は最初の6回は4週間毎、次の8回は3ヵ月毎、その後の5回は6ヵ月毎に投与した。サンプルサイズは、無再発率が観察群58.0%、ゾレドロン酸群67.2%、α=0.05、β=0.20、脱落5%と仮定して、654例の患者数と316のイベントが必要とされた。最終的に693例がリクルートされ、ゾレドロン酸群343例、観察群350例であった。それぞれ65例、60例が5年未満の観察であり、まだ試験継続中である。エストロゲン受容体陽性(10%以上)は約79%、HER2陽性は約17%であった。結果として無再発生存率、全生存率ともにまったく有意差はなかった。ただし、閉経後では、ゾレドロン酸群で乳癌による死亡率は改善していた(HR=0.83、SE:0.06)。閉経後の定義の記載がなかったので、おそらく術前化学療法と手術後の割付時での評価だと考えられるが、どのように基準を設けていたかは不明である。最終結果はまだであるが、今後大きな変化はなさそうにみえる。次はビスフォスフォネート治療に関するメタ分析の報告であり、こちらがより重要である。Effect of bisphosphonate treatment on recurrence and cause-specific mortality in women with early breast cancer: A meta-analysis of individual patient data from randomized trials -- Coleman R , et al.2012年ASCOでもビスフォスフォネートの術後補助療法に関するメタ分析の結果が2演題報告されていたが、今回はEarly Breast Cancer Clinical Trials Collaborative Group(EBCTCG)'s Bisphosphonate Working Groupから一般演題で採用されていた。現在まで15年にわたり、ビスフォスフォネートの術後補助療法の臨床試験データが蓄積されてきた。これらの臨床試験から、ビスフォスフォネートは局所よりも遠隔転移を主に抑制し、骨転移に対して最大の効果が期待できそうである、女性ホルモン値の低い状況でのみ有効である、閉経前では非骨転移に対しては逆効果である可能性がある、といった仮説が予想される。そこで静注および経口ビスフォスフォネートとプラセボの無作為化比較試験からのデータを収集し、メタ分析を行った。プライマリーアウトカムは再発までの期間と遠隔再発までの期間、そして乳癌関連死である。あらかじめ計画されたサブグループ解析として、再発部位、初発遠隔再発部位(骨とそれ以外)、閉経状態、ビスフォスフォネートの種類、組織学的異型度、ビスフォスフォネートのスケジュール、年齢、エストロゲン受容体、リンパ節転移、ビスフォスフォネートの投与期間、化学療法の有無、各期間毎の再発率が検討された。全36試験(22,982例)のうち、22試験(17,791例、77%)でデータを収集できた。全再発率では有意差はなかったが(p=0.08)、遠隔転移ではビスフォスフォネート使用群で再発リスクが低かった(p=0.03)。遠隔転移のうち骨転移での再発率は有意差がみられたが(p=0.0009)、非骨転移では差がなかった(p=0.71)。局所再発、対側乳癌発生率も差はなかった。閉経後に限ってみると、遠隔転移による再発率(p=0.0003)と骨転移(p

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EC followed by paclitaxel(T) versus FEC followed by T, all given every 3 weeks or 2 weeks, in node-positive early breast cancer(BC) patients(pts). Final results of the Gruppo Italiano Mammella(GIM)-2 randomized phase III study -- Cognetti F, et al.

EC→T vs FEC→T:アンスラサイクリンへの5-FUの上乗せ及びタキサンdose denseの意義イタリアからの報告である。4群の無作為化比較試験(2×2要因計画)であり、リンパ節転移陽性の乳癌術後補助療法としてアンスラサイクリンとタキサンを用いる場合、1つは5-FUをアンスラサイクリンに上乗せすることの意義、もう1つはdose denseの意義を確かめるものである。レジメンとしてはEC(90/600)またはFEC(600/75/600)を4サイクル行った後、タキサンとしてパクリタキセル(P 175)を4サイクル行うものである。A群:EC x 4 → P x 4 q. 3 wB群:FEC x 4 → P x 4 q. 3 wC群:EC x 4 → P x 4 q. 2 w + PegfilgrastimD群:FEC x 4 → P x 4 q. 2 w + Pegfilgrastimプライマリエンドポイントは無再発生存率であり、セカンダリーエンドポイントは全生存率と安全性である。再発と第2の腫瘍、あるいは死亡について、20%のリスク低減が検出(OR=0.8)でき、α=0.05,1-β=0.80と仮定して、平均5.5~9年の観察期間で2,000例の必要症例数で、635例のイベントが要求された。最終的に2,091例が登録された(A:545例、B:544例、C:502例、D:500例)。閉経前後がほぼ半数ずつ、リンパ節転移1~3個が約60%、4~9個約25%、10個以上約15%であった。組織学的異型度はグレード1が6~8%、HER2陽性が20%以上に認められた。ホルモン受容体は約80%で陽性であった。治療完遂率はいずれもほぼ同様で、88~89%であった。EC(A+C)とFEC(B+D)を比較したとき、無再発生存率に差はなかった(p=0.526)。2週毎のdose denseと3週毎のstandardと比較したとき、dose denseのほうが有意に無再発生存率が高かった(p=0.002)。全生存率もdose denseで有意に良好であった。グレード3以上の有害事象は、好中球減少がdose denseに比べstandardで有意に多かったが、貧血はdose denseで有意に多かった。その他はほぼ変わりなかった。これらの結果からアンスラサイクリンとタキサンを逐次投与で併用するとき、5-FUによる生存率改善効果はないようにみえる。逆に5-FUが加わることによって、特有の有害事象が上昇する可能性はある。若干解釈を難しくしているのは、各薬剤の投与量の差である。さらに本邦の多くの施設ではFEC(500/100/500)が用いられており、EC(90/600)と比較するとE10、F500の増加および、C100の減少となる。参考になる過去の報告を挙げてみる。転移性乳癌390例におけるFEC3週毎6サイクルで、投与量500/50/500と500/100/500の比較では、奏効率はE100のほうが良いものの、無増悪生存期間、全生存期間にはまったく差がなかった(Brufman G, et al. Ann Oncol. 1997; 8: 155-162.)。このようなデータも加味すると、FEC(600/75/600、500/100/500あるいは500/50/500など)が、EC(90/600)に対して優越性をもっているとはいえない。タキサンが加わると投与量のわずかな差はさらに意味を持たなくなるだろう。またdose denseの意義であるが、本試験でのコントロールがパクリタキセル3週投与であり、これは標準とはいえない。通常臨床では術後補助療法でも転移性乳癌でもパクリタキセルの12回毎週投与が行われており、そのほうが効果も高いことが知られている(Sparano JA, et al. N Engl J Med.2008; 358:1663-1671. / Seidman AD, et al. J Clin Oncol. 2008;26: 1642-1649.)。そのことから本試験におけるdose denseが、効果面で真に現在のスタンダードレジメンより優れているかどうかは、少なくとも本試験からは不明である。後は治療期間、毒性、コスト、QOL評価も加味して今後の臨床での意義を議論していく必要があろう。過去の報告でも投与薬剤、投与量、投与スケジュールが一定していないため、何ら結論的なことを言うことはできない。本試験とは直接関係ないが、AC(60/600)とEC (90/600)ではどうだろうか。過去に治療効果と毒性の両面からしっかりした大規模な試験は残念ながら存在しない。小規模な臨床試験データを解釈するとエピルビシンのほうが毒性面(心毒性)で若干よいようにもみえるのだが、試験によって投与量や投与スケジュールが異なり、エピルビシンの明らかな優越性も証明できていない。エピルビシンはドキソルビシンに比べ高価であるという事実も加味して、日常臨床での使用を考えることが必要であろう。参考にdose denseに関する論文を2つ紹介するので、参考にしてほしい。Citron ML, et al. J Clin Oncol. 2003; 21: 1431-1439.米国からの報告で、リンパ節転移陽性乳癌に対する4群の無作為化比較試験(2×2要因計画)。1)sequential A(60) x4 → P(175) x4 → C(600) x4 with doses every 3 weeks2)sequential Ax4 → Px4 → Cx4 every 2 weeks with filgrastim3)concurrent ACx4 → Px4 every 3 weeks 4)concurrent ACx4 → Px4 every 2 weeks with filgrastim観察期間中央値36ヵ月,リンパ節転移1~3個59~60%、エストロゲン受容体陽性64~66%。無再発生存期間、全生存期間とも dose-dense>3週毎(p=0.010、p=0.013)。sequentialかconcurrentかでは差なし。Venturini M, et al. J Natl Cancer Inst. 2005; 97: 1724-1733.イタリアからの報告である。FEC(600/60/600) 6サイクルを2週毎(604例、Filgrastim使用)と3週毎(610例)で比較。リンパ節転移陰性36%、腫瘍のグレード15%、エストロゲン受容体陽性52%。観察期間中央値10.4年。死亡222例。10年生存率80%対78%(p=0.35)。無再発生存率63%対57%(p=0.31)。グレード1以上の有害事象はFEC2週群で多かったが、白血球減少は3週群で多かった(G-CSF)。グレード3以上の心毒性は両群とも0.2%。

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アリピプラゾールは急性躁病治療のファーストラインになりうるか

 急性躁病のファーストライン治療は薬物療法であり、まず初めに興奮、攻撃性、危険な行動を迅速にコントロールすることが目的とされている。非定型抗精神病薬アリピプラゾールは、躁病治療において、単独また他剤との併用いずれもが行われている。また、英国精神薬理学会(British Association of Psychopharmacology)のガイドラインでは、単独療法プラセボ対照試験において、アリピプラゾールを含む非定型抗精神病薬は急性躁病また混合性エピソードに有効であることが示唆されたとしている。そこで、英国・Oxford Health NHS Foundation TrustのRachel Brown氏らは、急性躁病症状または混合性エピソードの軽減について、アリピプラゾールの単独または他の抗躁薬との併用治療の有効性と忍容性を評価するとともに、プラセボまたは他剤との比較を行った。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2013年12月17日号の掲載報告。 研究グループは、急性躁病症状または混合性エピソードの軽減について、アリピプラゾールの単独または他の抗躁薬との併用治療の有効性と忍容性を評価するとともに、プラセボまたは他剤との比較を行った。また、アリピプラゾール治療に対する受容性、有害反応、またアリピプラゾール治療患者における全死亡率なども調べた。 評価は、Cochrane Depression, Anxiety and Neurosis Group's Specialised Registerにて2013年7月末以前に発表された文献を検索して行った。また、Bristol-Myers Squibb臨床試験レジスタ、WHO試験ポータル、ClinicalTrials.gov(2013年8月まで)の検索も行った。文献の適格基準は、急性躁病もしくは混合性エピソードの治療において、アリピプラゾールをプラセボあるいは他剤と比較した無作為化試験とした。2人のレビュワーがそれぞれ、有害事象など試験報告データを抽出し、バイアスを評価した。欠落データについては、医薬品製造会社または文献執筆者に問い合わせを行った。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、10試験(被験者3,340例)のデータが組み込まれた。・7試験(2,239例)が、アリピプラゾール単独療法とプラセボを比較したものであった。そのうち2試験が3比較アームを含んだ試験で、1試験はリチウムを(485例)、もう1つはハロペリドール(480例)を用いていた。・2試験は、アリピプラゾールを、バルプロ酸またはリチウムもしくはプラセボに追加した場合を比較したものであった(754例)。1試験は、アリピプラゾールとハロペリドールを比較したものであった(347例)。・全体のバイアスリスクは不明であった。また、大半の試験で被験者の脱落率が高く(8試験の各介入において20%超)、相対的な有効性の推定に影響がある可能性があった。・以上を前提とした解析の結果、アリピプラゾールは、プラセボと比べて、成人と小児・若者の躁症状の軽減に有効であることを示すエビデンス(格差はわずか)が認められた。軽減効果は、3週、4週時点でみられ6週時点ではみられなかった(Young Mania Rating Scale[YMRS]の3週時点のランダム効果による平均差[MD]:-3.66、95%信頼区間[CI]:-5.82~-2.05、6試験・1,819例、エビデンスの質:中程度)。・アリピプラゾールと他剤療法との比較は3試験(1試験は、成人対象のリチウム投与、2試験はハロペリドール)であった。躁症状の軽減について、アリピプラゾールと他剤療法との統計的な有意差は、3週時点(3週時点のランダム効果のYMRS MD:0.07、95%CI:-1.24~1.37、3試験・972例、エビデンスの質:中程度)、および12週までのいかなる時点においても示されなかった。・プラセボと比較して、アリピプラゾールは、運動障害をより多く引き起こしていた(Simpson Angus Scale[SAS]、Barnes Akathisia Scale[BAS]の測定と、参加者が報告したアカシジアによる、エビデンスの質:高度)。抗コリン作用性の薬物による治療を必要としていた患者で、より多く認められた(ランダム効果によるリスク比:3.28、95%CI:1.82~5.91、2試験:730例、エビデンスの質:高度)。・また、アリピプラゾール服用群は、胃腸障害(悪心[エビデンスの質:高度]、便秘)が多く、小児・若者でプロラクチン値の正常下限値以下への低下がみられた。・アリピプラゾールとその他治療とを比較した運動障害との関連に関するメタ解析には有意な不均一性があり、多くはリチウムとハロペリドールのさまざまな副作用プロファイルによるものであった。・3週間時点のメタ解析は、データ不足のためできなかった。しかし12週時点の解析において、ハロペリドールはアリピプラゾールよりも、有意に運動障害の発生が多かったことが、SAS、BASとAbnormal Involuntary Movement Scale(AIMS)、被験者報告のアカシジアの測定によって認められた。・一方12週時点までに、アリピプラゾールとリチウムとの差について、被験者報告のアカンジア(RR:2.97、95%CI:1.37~6.43、1試験・313例)を除き、SAS、BAS、AIMSに関しては研究者による報告はなかった。関連医療ニュース バイポーラの躁症状に対するアリピプラゾールの位置付けは? アリピプラゾールが有用な双極性障害の患者像とは? うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける?

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タバコ規制、精神疾患患者には効力弱い/JAMA

 2004~2011年の間に、精神疾患患者においても喫煙率の低下はみられたが、精神疾患を有さない人の低下と比べるとその割合は有意に少なかったことが示された。一方で精神疾患患者の禁煙率は、精神科治療を受けている人が受けていない人と比べて有意に高率だったという。米国・ハーバード・メディカル・スクール/ケンブリッジ・ヘルスアライアンスのBenjamin Le Cook氏らが報告した。米国では大幅な喫煙率低下が進んできたが、「タバコ規制運動」は精神疾患患者よりも一般集団にフォーカスされてきた。精神疾患患者では喫煙率やニコチン依存の割合が高いという背景がある。JAMA誌2014年1月8日号掲載の報告より。精神疾患患者の喫煙率低下の傾向と治療と禁煙の関連を調査 精神疾患患者における喫煙率の低下傾向と、治療と禁煙との関連を調べる調査は、全米対象で行われた2つの代表的な住民サーベイ「MEPS(Medical Expenditure Panel Survey:2004~2011)」と「NSDUH(National Survey of Drug Use and Health:2009~2011)」を用いて行われた。MEPSは、精神疾患等の患者と非患者の喫煙率の傾向を比較しており、NSDUHは精神疾患治療を受けた人と受けなかった人の喫煙率を比較していた。MEPSには3万2,156例の精神疾患患者(重度の精神的苦痛、うつ病の可能性あるいは治療を受けている)と、非精神疾患の回答者13万3,113例が含まれていた。NSDUHには、精神疾患患者で生涯喫煙者である1万4,057例が含まれていた。 主要評価項目は、現在の喫煙状態(主要解析、MEPS対象)と、過去30日間喫煙しなかった生涯喫煙者の禁煙率(副次解析、NSDUH対象)であった。精神疾患のない人と比べて減少率に2.3%の有意な差 補正後喫煙率は、精神疾患のない人では有意に低下したが(19.2%から16.5%、p<0.001)、精神疾患患者ではわずかな低下にとどまった(25.3%から24.9%、p=0.50)。両者間の減少率には有意な差がみられた(2.3%、95%信頼区間[CI]:0.7~3.9%、p=0.005)。 前年までに精神科治療を受けた人は受けていない人と比べて、禁煙者の割合が多い傾向がみられた(37.2%対33.1%、p=0.005)。 以上を踏まえて著者は、「2004~2011年に、精神疾患患者の喫煙率低下は、精神疾患を有さない人と比べて有意に少なかった。一方で、喫煙率は、精神科治療を受けている人のほうが高率であった」とまとめ、「この結果は、一般集団をターゲットとするタバコ規制政策と禁煙介入が、精神疾患を有する人には効力を発揮していないことを示唆するものである」と指摘している。

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冠動脈プラーク評価におけるフッ化ナトリウムおよびFDG‐PETの比較(コメンテーター:近森 大志郎 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(170)より-

近年の基礎研究の発展により、動脈硬化は慢性的な炎症性疾患であると理解されるようになってきた。そして、分子生物学的にはマクロファージ・血管新生・細胞アポトーシス・サイトカインなどが重要な役割を果たしており、これらの反応過程をイメージングするmolecular imagingの進歩が著しい。 なかでも、活性化したマクロファージの代謝を利用してイメージングするfluorodeoxyglucose(FDG) 陽電子放射断層撮影(PET)が、高リスク動脈硬化病変の検出に有用である。とくにFDGは、施設へのデリバリーが可能であるため、非常に高額なサイクロトロンを設置する必要がなく、臨床的汎用性に優れている。 しかしながら、FDG‐PETによる動脈硬化病変の評価ができるのは、動きが少なく、ある程度の大きさを持つ動脈、すなわち、大動脈や頸動脈に限られる。とくに心臓については、冠動脈の周囲は心筋であり、グルコース代謝によるFDGの取り込みがあることから、プラーク病変のイメージングは困難であるとされていた。 エジンバラ大学のNikhil V Joshi氏らは18Fを利用したPETによる高リスク・プラーク病変の検出・特定能について、2種の放射性トレーサー、フッ化ナトリウム(18F-NaF)と18F-FDGの検出・特定能を比較検討した。なお18F-NaF PET-CTは、費用は高いが骨新生のイメージング化の手段として優れており、サイクロトロンが装備された一部の施設では、がんの骨転移の早期診断などに利用されている。 この研究は、18F-NaF PET-CT、18F-FDG PET-CTおよび侵襲的冠動脈造影を受けた心筋梗塞(40例)および安定狭心症(40例)の患者を対象としている。主要エンドポイントは、急性心筋梗塞患者の責任または非責任冠動脈プラークの、18Fフルオライドの組織/バックグランド比とした。 心筋梗塞患者のうち37例(93%)の検討では、責任プラークへの集積は18F-NaFが最も高かった(最大組織/バックグランド比の中央値:責任プラーク1.66[IQR:1.40~2.25]vs. 最大非責任プラーク1.24[同:1.06~1.38]、p<0.0001)。対照的に、18F-FDGは心筋に集積され概して不明瞭であり、責任プラークと非責任プラークについて識別の有意差はみられなかった(同:1.71 [1.40~2.13] vs. 1.58 [1.28~2.01]、p=0.34)。安定狭心症患者18例(45%)での検討では、18F-NaFのプラークへの集積は局在的で(最大組織/バックグランド比の中央値:1.90[IQR:1.61~2.17])、血管内超音波における高リスク所見と関連していた。 なお、18F-NaFの集積の組織学的意味付けを考察するために、症候性頸動脈疾患患者からの頸動脈内膜剥離術検体を用いて組織学的に比較検討した。その結果、著明な18F-NaFの集積がすべての頸動脈プラーク破綻部位で認められ、石灰化活性の組織学的エビデンス、マクロファージ浸潤、アポトーシス、壊死との関連がみられた。 本研究は、動脈硬化の過程においてカルシウムが中膜に沈着すること、18F-NaF PETが骨新生に対して高い感度を示すイメージング方法であること、正常の心筋ではカルシウム代謝は関与しないこと、心電図同期PETの融合画像を用いればmotion artifactを低減できることなどに着目して実施されたのであろう。そして、仮説通りに18Fフルオライド集積の組織/バックグランド比は18F-NaFの方が18F-FDGよりも優れていた。正常心筋でもFDGの取り込みがあることを考慮すれば当然ともいえる。 しかしながら、イメージングを主題とした研究論文の常ではあるが、急性心筋梗塞症例や頸動脈内膜剥離手術症例のfigureとして提示されたPET-CT融合画像・病理組織・冠動脈造影の対比は説得力を持つ。ただし、すべてがこのような明瞭な画像とは思えず、境界領域の画像についてどのようにデータ処理がなされているかについても考慮する必要がある。とくに、PETは陽電子カウントの客観的な定量化に優れているが、この基礎となるstandard uptake value(SUV)について18F-NaFでは確立しておらず、論文のsupplementary appendixにも詳細は記載されていない。 次に、動脈硬化の分子イメージングでは、まずターゲットとする生化学反応および細胞・分子が明確化される必要がある。フッ化ナトリウムは動脈硬化のどの時点でどの反応に関与するのかは不明であり、筆者らもカルシウム沈着による細胞アポトーシスの誘導という一般的な仮説しか提示できていない(Ewence AE et al. Circ Res. 2008; 103: e28-34.)。この弱点を補強するために、頸動脈摘出標本からイメージングと組織像の対比のデータが追加されている。 筆者らは、論文タイトルにもあるように、冠動脈への18F-NaFの集積を高リスク・プラークと提案している。しかしながら、安定狭心症における血管内超音波の個々の指標との比較による横断的検討を基にして、上記の仮説を出すのは尚早と思われる。なぜならば、安定狭心症と診断された症例中の約5割にも高リスク・プラークがあるというのは、臨床の実情とは大きな乖離があるからでる。冠動脈CTのプラーク評価と予後についての重要な研究では、892人中で不安定プラークの特徴を有していたのは72人(8%)でしかない(Motoyama S et al. J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 49-57.)。しかも約2年間の経過観察中、CTにて特徴的な不安定プラークを有する症例の15%で急性冠症候群を発症したのに対して、このようなプラークを持たない症例では僅か0.5%と著しく低い発症率であった(p

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An international study to increase concordance in Ki67 scoring -- Nielsen TO, et al.

Ki67スコアの一致率を高めるための国際的な研究 ほか1題2012年のサン・アントニオ乳癌シンポジウムでも報告された内容の続きであり、Ki67スコアの一致度を高めるための国際研究である。増殖マーカーはエストロゲン受容体陽性乳癌において予後因子と考えられている。Ki67は免疫染色にて、サブタイプ、予後、治療予測、術前化学療法の評価項目などで広く用いられている。EGAPP(Evaluation of Genomic Applications in Practice and Prevention)ワーキンググループでは、分析的妥当性が臨床的有用性の側面から重要であることを述べており、ASCO(米国臨床腫瘍学会)は再現性の面からKi67を日常臨床として用いることを推奨していない。Ki67評価に関する推奨についてはDowsett M, et al.J Natl Cancer Inst.2011; 103: 1656-1664.に記載されている。中央で染色された乳癌100症例のTMA(tissue microarrays)連続切片でのローカルのスコア法(第1相)から学んだことは、観察者内の一致率は良好(級内相関係数、ICC=0.94、95%CI: 0.93~0.97)だが、観察者間の再現性は満足すべきものではなかった(ICC=0.71、95%CI: 0.47~0.78)。Ki67の相違は主にスコアリングの方法によるものであった。正式な測定法がより一致した結果をもたらした(Polley MY, et al. J Natl Cancer Inst. 2013; 105: 1677-1683.)。第2相(a)では、トレーニングにより再現性が改善するかどうか検討された。共通の可視化スコアリング法でKi67をスコアする者を訓練できるか、臨床研究のために共通のツールを開発できるかが課題である。まずガラス上のTMAスライドで標準的なスコアリングを行い、次にWebベースで補正を行った。補正は、webベースのTMAイメージ(9のトレーニングと9の試験)で、Ki67は中央で染色され、スコアの範囲を評価している。良好な内的一致性を示す実際的なスコアリング法、陽性と陰性の核を可視化したサンプルからなるシンプルな構成、2つの関連施設を含む世界から19施設で評価を一致させるためにあらかじめ確立された特定の基準が設けられた。補正結果:施設によって茶色(陽性と判断する濃さ)の閾値が異なっていた。そのため、さらに陽性/陰性を考えるための染色サンプルイメージを追加した。スコアを行う者は、ばらつきと異常値が、あらかじめ決められた基準を満たすまでトレーニングセット分析を繰り返した。その結果、新たな症例でのテストにより17のうち12の施設で一致基準を満たした。結論として、施設はトレーニング可能であり、webベースの補正ツールを用いることで成績は改善傾向を示した。第2相(b)では、補正され、トレーニングされ、標準的な公式の可視化測定法をもった観察者により、一貫性のあるKi67インデックスを提供することは可能かどうかが評価された。第1相で用いられた50例の中央で染色された1mm TMAブロックを用いて、同一標本から3切片作成し、カナダ、英国、欧州、日本の16施設において、最初にウェブイメージで補正を完了し、同様のスコアリング法をガラス上で適応し、キーボードで入力したカウントデータを収集した。500の細胞核をカウントするまでの時間は中央値5.6分であった。ICCの目標値は0.9で有意に0.7を超えることである。結果はICC 0.92(95%CI: 0.88~0.95)であり、第1相でICC 0.75であった7施設も第2相でICC 0.90と上昇していた。施設間での個々の症例でのKi67インデックス10~20%のばらつきも、第2相ではかなり一致していた。Ki67のよく知られたカットオフ値のためのカッパ値(一致性の指標、1に近いほど一致)は、たとえば14%のカットオフ値ではカッパ0.73と良好であるにもかかわらず、17%において、ある施設でhighと判定されたものが、別の施設ではlowと判定されることになっていた。結論として、webベースの補正システムは有用なツールである。Ki67のカウント法は実臨床に適用できそうであり、研究デザインにおいてICCが0.7より有意に高いことを目標としたが、実施は0.9以上であった。これらの結果は、中央で染色されたTMAを適用したものであり、針生検(第3相)、全切片、染色の多様性の追加でも同様の成績が得られるか、が挙げられ、このスコアリング法の臨床的な妥当性はまだ確定されていない。本邦では病理医が非常に不足している。そのため病理医にかかっている負担は大変なものであり、その上に繊細な測定が求められるKi67はさらに負担を上乗せすることになろう。このような研究によって、世界的に基準が統一され、良好な一致率がみられるようになることが理想だが、一般病理医のレベルにこれらが適応されたときどうなるか、非常に疑問ではある。以下、個人的意見ではあるが、Ki67については病理医が測定部位を選定し、訓練された細胞検査士がカウントするのがよいのではないかと考える次第である。なぜなら一般的傾向として、細胞検査士は医師より基準に忠実であり、また細胞や核をよく見慣れている。臨床細胞学会などが主導で測定訓練を行い、基準を満たしたものをKi67測定認定検査士とすれば、技師の雇用にもつながり、病理医の負担軽減にもなり、Ki67測定の質も上がり、乳腺医にとっても依頼しやすくなるであろう。Ki67の染色性に関して、本邦から以下の報告があったが大切な内容であると考えられるため紹介する。Pre-analytical setting is critical for an assessment of the Ki-67 labeling index for breast cancer -- Arima N, et al.本邦からの報告である。本研究では、一般にKi-67の染色に関して組織管理の重要性についての注意が不十分であることから、組織固定の影響について検討している。(1)固定のタイプ:665例の切除標本は10%中性緩衝ホルマリンまたは15%で固定。(2)固定時間:A:固定までの時間:数時間から一晩。B:固定時間B-1.短い固定時間:腫瘍の一部を3時間ホルマリン固定後パラフィンブロックへ。48時間の固定と比較B-2.長い固定時間:腫瘍の一部を長時間固定(3)外科的に切除された腫瘍のKi-67ラベリングインデックス値への影響A:固定の前に新鮮な腫瘍組織の中央をカットした時の影響B:136例のコア針生検と外科的切除標本の比較結果:Ki-67値は15%よりも10%ホルマリン固定で有意に高かった。固定までの時間が長いと徐々に値は低下した。不十分な固定は劇的な低下の原因となった。逆に過固定は徐々に低下する原因となった。固定の直前に腫瘍の中央に割を入れた場合、コントロールと比べて有意に値が高かった。コア針生検と外科的切除標本とで有意な差はなかった。本報告ではいくつかの例を供覧し、Ki-67の染色性はエストロゲン受容体やHER2タンパクよりもはるかに固定条件の影響を受けやすいことを示していた。まとめると、最も良くないのは固定不良であり、固定の直前に腫瘍に割を入れること、標本を長時間(たとえば半日)固定しないまま放置しないことが大切である。過固定も望ましくないが、48時間くらいでは大きな変化はないようである。しかし、1週間も固定しているとやや染色性が低下してくるので注意が必要である。ホルマリンは10%の濃度が望ましいようである。意外だったのはエストロゲン受容体やHER2タンパクの染色性はかなり安定していたことであった。Ki-67は染色も評価も繊細であることを臨床医、病理医ともに肝に命じる必要がある。少なくとも記載された数値を、臨床医が盲目的に信じ臨床適応することだけはしてはならない。

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ステージ4乳がんの原発巣切除について

Surgical removal of primary tumor and axillary lymph nodes in women with metastatic breast cancer at first presentation: A randomized controlled trial -- Badwe R, et al. India転移性乳がんにおける原発巣切除の影響インドで行われた臨床試験である。従来より緩和のための外科治療としては潰瘍と出血のコントロールが挙げられる。動物実験では原発巣の切除は有害かもしれないというデータがある(Fisher B, et al. Cancer Res. 1989; 49: 1996-2001.)。一方で、最近の後ろ向きレビューでは、局所領域の治療が有効かもしれないことが示されている。本試験の目的は転移性乳癌において原発巣の切除が与える生存率への影響を評価することである。サンプルサイズはベースラインの中央生存期間が18ヵ月、生存期間の改善が6ヵ月とし、α=0.05、1-β=80%と仮定したとき、N=350が必要であると考えられた。転移性乳癌に対しアンスラサイクリン+/-タキサンを行ってCRまたはPRのとき無作為化割付を行い、局所領域治療を行う群と行わない群に割り付けた。無作為化は転移部位、転移個数、ホルモン受容体の有無で層別化した。350例のうち、手術群は173例で乳房部分切除術または乳房切除術を行い、卵巣切除を40例に行った。さらに放射線治療と内分泌療法を84例に行った。無手術群は177例で内分泌療法は96例に行い、卵巣切除は34例に行った。全生存率(中央観察期間の記載がないが5年は観察しているものと思われる)は、手術群(19.2%)、無手術群(20.5%)であり、有意差はなかった(p=0.79)。閉経状況、転移部位、ホルモン受容体の有無、HER2発現の有無でサブグループ解析を行ったが、いずれも差はみられなかった。遠隔転移の初回進行までの期間は手術群で有意に短かった(p=0.01)。以上から、局所領域治療は生存率への寄与はなく、転移性乳癌においてルーチンに行うことは控えるべきであり、局所コントロールと転移部の進行とのバランスの中で得失を考えながら行うべきと結んでいる。Early follow up of a randomized trial evaluating resection of the primary breast tumor in women presenting with de novo stage 4 breast cancer; Turkish Study (Protocol MF07-01) -- Soran A, et al.新規ステージ4乳がんにおける局所療法の評価(早期観察)トルコの臨床試験である。新規のステージ4乳癌における外科治療に関する試験のメタ分析では、外科治療を行ったほうが生存率は良好であったが、外科治療を行わなかったほうで予後不良因子が多い傾向がみられている(Harris E, et al. Ann Surg Oncol 2013; 20: 2828-2834)。すなわち選択バイアスがあるということである。本試験(MF07-01)の試験デザインとしては、新規のステージ4乳癌を全身治療群と初回局所治療(乳房+/-腋窩)+全身治療群に分け、プライマリーエンドポイントとして全生存期間、セカンダリーエンドポイントとして局所の無増悪生存期間、QOL、局所治療に伴う合併症を評価した。過去の後ろ向き研究から、3年生存率の違いが18%であることが想定され、脱落率は10%、α=0.05、β=0.9と仮定して、サンプルサイズは271例が必要であると考えられた。312例がリクルートされ、293例が適格であり、278例(局所治療群140例、全身治療のみ138例)が評価可能であった。局所治療は患者と医師の好み/癌の広がりによって乳房部分切除か乳房切除が選択され、腋窩リンパ節転移が臨床的/生検/センチネルリンパ節生検のいずれかで確認されたときには腋窩郭清が行われた。断端陰性であることが必要であり、乳房部分切除後は全乳房照射が行われ、乳房切除後は癌の進行度や施設の方針で照射が追加された。化学療法は、局所治療群ではその後に、全身治療群は割付後すぐに開始された。ホルモン受容体陽性のすべての患者は内分泌療法を受けた。C-erb-B2陽性(IHC3+ or FISH+)ではトラスツズマブが投与された。転移巣の局所治療(手術-放射線)は研究者の判断によって決められた。ビスフォスフォネートは治療する臨床医の判断によって使用された。全生存率は中央観察期間(局所治療群46ヵ月、全身治療群42ヵ月)において両群で有意差はなかった(HR=0.76、95%CI: 0.490~1.16、p=0.20)。ホルモン受容体別、HER2発現別、さらにトリプルネガティブに限ってみても差はなかった。年齢別、転移臓器1つのみ、骨転移のみに限っても差はなかったが、骨転移1ヵ所のみに限ると局所治療群のほうが有意に生存期間が長かった(p=0.02)。逆に多発肝転移/多発肺転移では局所治療群のほうが生存期間が短かい可能性がある。結論として、早期経過観察では全生存率に有意差はなく、さらに長期間の観察が必要である。サブグループの検討から、局所療法群は骨転移において生存期間が長い傾向かもしれない。とくに1つの骨転移でその傾向がより強い。55歳以下で生存期間を改善する可能性がある。進行の早いフェノタイプではベネフィットを得にくいようにみえる。多発肝転移/多発肺転移ではむしろ予後を有意に悪化させる可能性がある、ことが示唆された。TBCRC 013: A prospective analysis of the role of surgery in stage IV breast cancer -- King TA, et al.ステージ4乳がんにおける原発巣切除の役割(TBCRC 013)前向きの無作為化比較試験の結果が明らかになるまでの間、私たちはステージ4乳癌におけるマネージメントの前向きデータを集めることが求められた。TBCRC 013は、新規ステージ4乳癌の原発巣切除の役割を評価する多施設前向きレジストリー研究である。新規ステージ4乳癌をコホートA、原発巣術後3ヵ月以内に同定された転移性乳癌をコホートBとした。初回全身治療で効果があった場合には、外科治療について患者と話し合い決定され、無増悪生存期間、局所の緩和治療の必要性、生存期間が評価された。2009年7月から2012年4月までに14の施設から127例の患者がエントリーされた(コホートA:112例、コホートB:15例)。年齢中央値52歳、原発巣の腫瘍径中央値3.2cmであった。観察期間中央値は28ヵ月であった。多変量解析にて全生存期間は外科治療(p=0.01)、エストロゲン受容体陽性(p=0.01)、HER2陽性(p=0.01)で有意に予後良好であった。しかし、全身治療に反応した症例に限ると外科治療はもはや有意差はなかった。この結果は、初回またはセカンドライン以降の全身治療に反応せず、緩和的に外科治療を行った場合に予後改善効果がみられる、という解釈になると思われたのだが、その記載はなかった。いずれにしても症例数が少なく、外科治療の有効性を考えるには至らない研究であると考えられる。転移性乳癌における外科治療の役割については、以前にASCO 2012の報告で一度述べたが、それらはいずれも後ろ向きの研究結果である。今回のRCTの結果をみても、やはりやみくもに局所治療すべきはない。しかし、局所における癌の進行は患者のQOLを低下させるため、外科医と腫瘍内科がよく協議して、手術や放射線治療との組み合わせについて、そのタイミングを逸することなく、適応を考えていくべきであろう。本邦でも岡山大学の枝園忠彦先生が研究代表者として臨床試験(JCOG1017、PRIM-BC)が行われているので、それが完遂され、さらに有意義な結果が加わることを期待したい。

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小児の原発性多汗症におけるイオントフォレーシス療法は有用?

 小児の原発性多汗症における水道水イオントフォレーシス(イオン導入)療法の有効性と安全性が、トルコのSeval Dogruk Kacar氏らにより調査・報告された。その結果、イオントフォレーシス療法は、有効性および信頼性において小児の原発性掌蹠多汗症、原発性腋窩多汗症に有用な治療であることが示された。これまで、小児におけるイオントフォレーシス療法の有効性について調査した研究は限られていた。 なお、日本においても水道水イオントフォレーシス療法は、原発性局所多汗症診療ガイドラインにより推奨されている。Cutaneous and Ocular Toxicology誌オンライン版2014年1月9日掲載の報告。 調査は、イオントフォレーシス療法を施行する18歳未満の原発性掌蹠多汗症患者21例を対象に、レトロスペクティブに実施された。多汗の程度は、VAS(視覚的評価スケール:visual analogue scale)を用いて評価され、0が症状の継続、10が症状の消失とされた。評価には、カルテより収集した臨床データと患者が回答したアンケートを用いた。 主な結果は以下のとおり。・水道水イオントフォレーシス療法を週5回の施行から開始し、5週目に週1回の施行に減少させた。さらに、維持療法として週1回の施行を6週間実施することが推奨された。・19例の被験者が所定の21回の施行を完遂した。・施行15回目のVAS中央値は5.89±1.49、治療終了時点では6.36±2.06であった。・7例では、治療終了後3ヵ月が経過しても多汗症が抑制された。・VASによる治療満足度の中央値は4.95±2.38であった(0が不満足、10が大いに満足)。・副作用の忍容性は良好であった。・イオントフォレーシス療法は、小児の原発性掌蹠多汗症、原発性腋窩多汗症に有用な治療法である。しかし、最大限の効果を得るためのセッション間隔やプロトコルについての解は得られていない。

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SSRI/SNRIへの増強療法、コストパフォーマンスが良いのは

 うつ病患者において、抗うつ薬単独療法で寛解が得られるのは約3分の1にすぎず、その他の抗うつ薬に変更した場合でも累積寛解率は50~55%にとどまる。このような背景から、治療抵抗性うつ病のマネジメントとして増強療法への関心が高まっている。米国・IMS HealthのRolin L. Wade氏らは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬/ 選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SSRI/SNRI)に、第二世代非定型抗精神病薬(SGAs)またはL-メチルフォレートを併用する増強療法時のアドヒアランス、ならびに医療コストについて比較検討した。その結果、L-メチルフォレートのほうがSGAと比べて、抗うつ薬のアドヒアランスが高く保たれ、うつ病に特化したコストおよび全医療コストが低いことが示されたことを報告した。Journal of managed care pharmacy誌2014年1月号の掲載報告。 本研究では、以下の2点について検討を行った。・SGAsまたはL-メチルフォレートを併用する増強療法時のSSRI/SNRIのアドヒアランスについて。アドヒアランスは、Healthcare Effectiveness Data and Information Set(HEDIS)急性薬物マネジメント(AMM)の改訂アプリケーションにより評価。・2種類の増強療法について、うつ病に特化したコストおよび全医療コストを比較する。 2006年1月1日~2009年12月31日(index date)にうつ病と診断され、SSRI/SNRIが投与され、SGAまたはL-メチルフォレートのいずれか(augmentation date)を併用した患者をMarketScan databaseにより特定し、231日間追跡した。index date前90日に抗うつ薬またはSGAを服用した者、index date前6ヵ月にL-メチルフォレートを服用した者、index date時18歳未満、index date前12ヵ月に妊娠していた、または認知症、精神病に関連する精神障害、アルツハイマー病、パーキンソン病と診断された者は除外した。 最終的な試験コホートの選択に当たり、年齢、性別、併存症、index SSRI/SNRIおよび index SSRI/SNRI 用量を共変数とし、傾向スコアマッチング(非定型抗精神病薬とL-メチルフォレートの比率は3:1)を行った。抗うつ薬のアドヒアランスは、augmentation date以降から測定し、改訂HEDIS(mHEDIS)AMMアプリケーションの急性期、慢性期、6ヵ月治療期を含めた。保険利用とコストの状況については、増強療法開始後6ヵ月間評価し、うつ病に特化したコストと、全医療コストを算出した。SGAおよびL-メチルフォレートコホート間の比較は、バイナリ変数に関してはカイ二乗検定で、連続変数に関してはt検定で比較した。 主な結果は以下のとおり。・傾向スコアマッチング後、index date 12ヵ月以内のindex SSRI/SNRIにおいて、SGAによる増強療法が4,053例、L-メチルフォレートによる増強療法が1,351例に行われた。・比較グループは年齢、性別、併存症およびSSRI/SNRI の種類・用量において偏りがなくバランスがとれていた。・両群で効果増強が行われた主な抗うつ薬は、エスシタロプラム、デュロキセチン、ベンラファキシン(国内未承認)であった。・index dateからaugmentation dateまでの平均日数(標準偏差:SD)は、SGAが73.5(96.7)日、L-メチルフォレートが105.9(108.7)日であった(p <0.001)。・増強療法に最も多く使用されたSGAsは、クエチアピン、アリピプラゾール、リスペリドンであった。・L-メチルフォレートに関しては、主に7.5mg/日の用量が使用された。・mHEDIS AMM 急性期のアドヒアランスは、SGAコホートが68.7%、L-メチルフォレートコホートが78.7%であった(p<0.001)。・増強療法後のmHEDIS継続期のアドヒアランスは、SGAコホートが50.3%、L-メチルフォレートコホートが62.1%であった(p <0.001)。・医療費(入院、救急、外来)はSGA群で有意に高かったが、合計処方数はL-メチルフォレート群で有意に高かった。・増強療法後6ヵ月間の平均(SD)コストは、SGA群が8,499(1万3,585)ドル、L-メチルフォレート群が7,371(1万2,404)ドルであった(p=0.005)。・増強療法後6ヵ月間のうつ病関連コストは、SGA群が2,688(4,201)ドル、L-メチルフォレート群が1,613(2,315)ドルであった(p<0.001)。・以上より、SGAまたはL-メチルフォレート併用による増強療法において、mHEDIS AMM急性期のSSRI/SNRIのアドヒアランスは69~79%、継続期では50~62%であった。・これらのスコアは、2012年に国のベンチマークとして示された改訂前HEDIS AMMの値を上回るものであった。・以上のように、L-メチルフォレートによる増強療法は、SGAによる増強療法と比較して抗うつ薬のアドヒアランスが高く保たれることが示された・さらに、L-メチルフォレート増強療法群はSGAによる増強量群に比べてうつ病に特化したコストおよび全医療コストが低いことも示された。関連医療ニュース 日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき SSRI+非定型抗精神病薬の併用、抗うつ作用増強の可能性が示唆 難治性うつ病にアリピプラゾールはどの程度有用か

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エキスパートに聞く!「うつ病診療」Q&A Part1

CareNet.comではうつ病特集を配信するにあたって、事前に会員の先生方からうつ病診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、産業医科大学 杉田篤子先生にご回答いただきました。2回に分けて掲載します。今回は、精神科に行きたがらない患者さんへの対応、最初の抗うつ薬が効果不十分な場合の対応、抗うつ薬の減量・中止のタイミング、抗うつ薬と睡眠薬との併用、認知行動療法の効果についての質問です。精神科に紹介しても行きたがらない患者さんに対して、どのように対応したらよいでしょうか?うつ病では、睡眠欲、食欲、性欲などといった人間が生きていくうえで基本となる本能が損なわれていることが多く、その結果、さまざまな身体症状が出現するため、うつ病患者が最も多く受診するのは、内科といわれています。さらに、身体疾患のある患者さんはうつ病を高率に合併しています。希死念慮や自殺企図のリスクが高いとき、精神病像を伴うとき、双極性障害が疑われるとき、慢性化しているとき、抗うつ薬の反応が通常と異なるとき、産後うつ病などの際は、精神科へ紹介するタイミングです1)。しかし、専門医を受診させようと、「身体的問題がないから精神科を受診しなさい」という説明をすると、患者さんが「かかりつけ医から見捨てられるのではないか」と不安になり、拒否することがあります。さらに、精神的な問題が生じているという病識がないこともしばしばありますし、精神科への偏見を持っている方もいます。したがって、紹介する際は、主治医と精神科が協力して心身両面を支えていくという姿勢を示し、「専門家の意見を聞いてみましょう」、「主治医として今後も関わっていきます」ということを丁寧に説明するとよいでしょう。また、うつ病患者では不眠が生じる頻度が高いため、「睡眠障害について詳しい先生に診てもらいましょう」というのも方策です。自殺の危険性があるなど緊急時は、家族にも状況を説明して、協力を得る必要があります。1)堀 輝ほか. Medical Practice. 2011;28:1720-1729.最初の抗うつ薬の効果が不十分な場合、増量、薬剤変更、併用のうち、いずれがよいのでしょうか? また、併用療法について具体的に(相性のよい薬剤の組み合わせなど)お教えください。抗うつ薬を使用する際は、合理性のない抗うつ薬の多剤併用は行わず、第一選択薬を十分量・十分期間使用し、用量不足や観察期間不足による見かけの難治例をつくらないようにしなければなりません。抗うつ薬を低用量で使用して反応がない場合は、1)有害作用が臨床上問題にならない範囲で添付文書に従って十分量まで増量、2)十分量まで増やしてから4週間程度を目安に、ほとんど反応がない場合は薬物変更、3)一部の抑うつ症状に反応がみられるがそれ以上の改善がない場合(部分反応)は増強療法を行います。増強療法には、リチウムや甲状腺ホルモン、ラモトリギン、バルプロ酸、カルバマゼピン、非定型抗精神病薬が挙げられます(アリピプラゾールを除き、適応外)。原則は単剤ですが、場合によっては、例外的に、4)抗うつ薬の併用を考慮します。その場合は、ミルタザピンとSSRI/ SNRI1)、ミアンセリンとSSRI/ SNRI2)の併用がよいでしょう。1)Carpenter LL, et al. Biol Psychiatry. 2002;51:183-188.2)Maes M, et al. J Clin Psychopharmacol. 1999;19:177-182.抗うつ薬の減量・中止のタイミングを教えてください。早期に抗うつ薬を減量・中止することは再燃の危険性を高めます。薬物療法に反応後4~5ヵ月以内に抗うつ薬を中止した場合の再燃率は50~70%で、同時期に抗うつ薬を継続した群では0~20%であったと報告されています1)。とくに、寛解後4ヵ月までは再燃の危険性が高く、副作用が管理できれば、寛解後6ヵ月以上は急性期と同用量でコンプライアンスを保つことが重要です2,3)。寛解後26週は抗うつ薬の再燃予防効果が立証されており4)、欧米のガイドラインでは、副作用の問題がなければ初発の寛解後4~9ヵ月、またはそれ以上の期間、急性期と同用量で維持すべきとしています5~7)。うつ病相を繰り返す患者さんは再発危険率が高いですが、これらの再発性うつ病の患者に対して抗うつ薬を1~3年、急性期と同用量で継続使用した場合の再発予防効果が立証されています8)。したがって、再発例では2年以上にわたる抗うつ薬の維持療法が強く勧められています7)。なお、漸減中に抑うつ症状が悪化した場合は、減薬前の量にいったん戻すとよいでしょう。1)Zajecka J, et al. J Clin Psychiatry. 1999;60:389-394.2)Peretti S, et al. Acta Psychiatr Scand Suppl. 2000;403:17-25.3)Paykel ES, et al. J Affect Disord. 1988;14:83-95.4)Reimherr FW, et al. Am J Psychiatry. 1998;155:1247-1253.5)American Psychiatric Association. Am J Psychiatry. 2000;157:1-45.6)American Psychiatric Association. Practice guideline for the treatment of patients with major depressive disorder. 3rd ed. 2010. 7)Lam RW, et al. J Affect Disord. 2009;117(Suppl1):S26-43.8)Geddes JR, et al. Lancet. 2003;361:653-661.抗うつ薬と睡眠薬との併用について教えてください。不眠を有するうつ病患者の治療において、抗うつ薬の中で、アミトリプチリン、トラゾドン、ミアンセリン、ミルタザピンなどのような鎮静的な作用があり睡眠を改善させる薬剤は、抗うつ薬単剤で治療可能です。しかし、SSRIやSNRIなどのように鎮静作用が弱く、睡眠状態の悪化を招く可能性を有する抗うつ薬を使用する際は、睡眠薬を併用することになります。うつ病の不眠への効果がランダム化比較試験によって示されているのは、ゾルピデム1)とエスゾピクロン2)です。睡眠薬の使用時は、依存性、認知機能障害、閉塞性睡眠時無呼吸症状の悪化、奇異反応などの可能性がある点に留意し、漫然と長期間処方することは慎み、睡眠衛生的なアドバイスを積極的に行うべきです。とくに、不眠の改善のためには、朝は一定の時間に起床して外の光にあたることや飲酒を控えることなどは、睡眠薬を投与する前に指導したほうがよい事柄です。1)Asnis GM. J Clin Psychiatry. 1999;60:668-676.2)Fava M, et al. Biol Psychiatry. 2006;59:1052-1060.認知行動療法の効果について教えてください。認知行動療法は、人の感情や行動が、状況をどうとらえるか(認知の仕方)によって規定されるという理解のもとに、患者のうつ状態の発生や維持に関連している認知や行動を同定し、必要に応じた修正を行うことで気分を改善させる治療法です。認知行動療法は、うつ病に対して薬物療法と同等の効果を有し、とくに再発予防効果は、薬物療法に優るというエビデンスがあります1~6)。英国の診療ガイドラインでは、軽症~中等症のうつ病治療では薬物療法より優先して認知行動療法を実施することが推奨されています7)。また、薬物療法を行う場合に患者さんが精神科治療薬の服用を拒絶することがあり、薬物に対する認知に注意を払わなくてはなりませんが、認知行動療法を用いて薬物療法に対する非機能的認知を修正することにより、患者さんの服薬アドヒアランスを高める可能性もあり、薬物療法との併用の意義も大きいと考えられます8)。1)DeRubeis RJ, et al. Arch Gen Psychiatry. 2005;62:409-416.2)Miller IW, et al. Behav Ther. 1989;20:25-47.3)Stuart S, et al. Gen Hosp Psychiatry. 1997;19:42-50.4)Dobson KS, et al. J Consult Clin Psychol. 2008;76:468-477.5)Wampold BE, et al. J Affect Disord. 2002;68:159-165.6)Persons JB, et al. Arch Gen Psychiatry. 1996;53:283-290.7)National Institute for Health and Clinical Excellence. Depression (amended): management of depression in primary and secondary care: NICE guidance. London: National Institute for Health and Clinical Excellence; 2007.8)井上和臣. Pharma Med. 2002;20:41-45.※エキスパートに聞く!「うつ病診療」Q&A Part2はこちら

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人工股関節、24%が臨床的有用性不明/BMJ

 整形外科医が現在、臨床で使用可能な人工股関節のうち、24%は臨床的有用性についてエビデンスがないものであることが、英国・クイーン・エリザベス病院のF Kynaston-Pearson氏らによるシステマティックレビューの結果、判明した。一部のmetal-on-metal人工股関節で高頻度の再置換発生率がみられることから、インプラントの十分なエビデンスを求める声が高まっていることを受けて本検討は行われた。整形外科医が使用可能なインプラントは多数あるが、その使用を支持する臨床的有用性エビデンスを有するものが、どれくらいあるのかはこれまで不明であったという。BMJ誌オンライン版2013年12月19日号掲載の報告より。エビデンスがただちに入手できない人工股関節がどれくらいあるかをレビュー 本レビューでは、初回の人工股関節全置換術において、使用を支持するエビデンスがただちに入手できない人工関節が、どれくらい使用されているかを明らかにすることを目的とした。 まず、National Joint Registry of England and Wales(NJR)の第9年次報告を分析して、Orthopaedic Data Evaluation Panel評価で「非分類」「プレエントリー」であった人工関節で、2011年に人工股関節全置換術に用いられていたものを特定した。 次にそれらの人工股関節について、PubMed、Cochrane、Embase、OVID、Googleデータベースを用いてシステマティックレビューを行い分析した。文献は、人工股関節の名称を含むものだけを適格として組み込み、動物試験、非整形外科、非全置換術、および非デバイス関連試験は除外した。2011年の全置換術のうち7.8%がエビデンスなし システマティックレビューの結果、英国の手術医が入手可能なすべての人工股関節置換インプラントのうち、24%(57/235)は臨床的有用性のエビデンスがないことが判明した。 また、2011年に行われた人工股関節全置換術13万6,593例のうち、1万617例(7.8%)が、臨床的有用性のエビデンスがないインプラントでの施術であった。内訳は、セメントステム157/3万4,655例(0.5%)、非セメントステム936/3万3,367例(2.8%)、セメントカップ1,732/2万24,349例(7.1%)、非セメントカップ7,577/4万4,222例(17.1%)であった。 著者は、「今回の検討で、整形外科医が入手可能な人工関節のうち、かなりのものがその使用を支持する臨床的有用性のエビデンスがないものであることが示された」とまとめ、「現状のデバイス供給システムには懸念を示さざるを得ず、新たな人工関節デバイスの導入プロセスの方法について、修正を要することは明らかである」と指摘している。

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