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低リスク骨髄異形成症候群の貧血にluspaterceptは?/Lancet

 赤血球造血刺激因子製剤(ESA)による治療歴のない低リスクの骨髄異形成症候群(MDS)患者の貧血治療において、エポエチンアルファと比較してluspaterceptは、赤血球輸血非依存状態とヘモグロビン増加の達成率に優れ、安全性プロファイルは全般に既知のものと一致することが、ドイツ・ライプチヒ大学病院のUwe Platzbecker氏らが実施した「COMMANDS試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年6月10日号に掲載された。26ヵ国の第III相無作為化対照比較試験 COMMANDSは、26ヵ国142施設が参加した第III相非盲検無作為化対照比較試験であり、2019年1月~2022年8月の期間に患者の登録が行われた(CelgeneとAcceleron Pharmaの助成を受けた)。今回は、中間解析の結果が報告された。 対象は、年齢18歳以上、ESAによる治療歴がなく、WHO 2016基準でMDSと診断され、国際予後判定システム改訂版(IPSS-R)で超低リスク、低リスク、中等度リスクのMDSと判定され、赤血球輸血を要し、骨髄芽球割合<5%の患者であった。 被験者は、luspaterceptまたはエポエチンアルファの投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。luspaterceptは3週間に1回皮下投与され、1.0mg/kg体重から開始して可能な場合は最大1.75mg/kgまで漸増した。エポエチンアルファは週1回皮下投与され、450IU/kg体重から開始して可能な場合は最大1,050IU/kgまで漸増した(最大総投与量8万IU)。 主要エンドポイントは、intention-to-treat集団において、試験開始から24週までに、12週以上で赤血球輸血非依存状態が達成され、同時に平均ヘモグロビン量が1.5g/dL以上増加することであった。 356例(年齢中央値74歳[四分位範囲[IQR]:69~80]、男性 56%)が登録され、luspatercept群に178例、エポエチンアルファ群にも178例が割り付けられた。中間解析には、24週の投与を完遂、および早期に投与中止となった301例(luspatercept群147例、エポエチンアルファ群154例)が含まれた。主要エンドポイント達成率はluspatercept群59%、エポエチンアルファ群31% 主要エンドポイントを達成した患者は、エポエチンアルファ群が48例(31%)であったのに対し、luspatercept群は86例(59%)と有意に高率であった(奏効率の共通リスク差:26.6、95%信頼区間[CI]:15.8~37.4、p<0.0001)。 また、(1)24週のうち12週以上で赤血球輸血非依存状態を達成した患者(luspatercept群67% vs.エポエチンアルファ群46%、名目p=0.0002)、(2)24週のすべてで赤血球輸血非依存状態を達成した患者(48% vs.29%、名目p=0.0006)、(3)国際作業部会(IWG)基準で8週間以上持続する赤血球系の血液学的改善効果(HI-E)(74% vs.51%、名目p<0.001)は、いずれもluspatercept群で有意に良好だった。 投与期間中央値は、エポエチンアルファ群(27週[IQR:19~55])よりもluspatercept群(42週[20~73])が長かった。最も頻度の高いGrade3/4の治療関連有害事象(患者の≧3%)として、luspatercept群では高血圧、貧血、呼吸困難、好中球減少症、血小板減少症、肺炎、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、MDS、失神が、エポエチンアルファ群では貧血、肺炎、好中球数減少症、高血圧、鉄過剰症、COVID-19肺炎、MDSがみられた。 luspatercept群の1例(78歳)が、3回目の投与後に急性骨髄性白血病と診断されて死亡し、担当医により試験薬関連と判定された。 著者は、「これらの結果をより強固なものにし、低リスクMDSの他のサブグループ(SF3B1遺伝子の変異なし、環状鉄芽球なしなど)に関する知見をさらに精緻なものにするために、今後、長期のフォーアップと追加データが求められるだろう」としている。

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高い身体活動レベルは慢性疼痛の軽減に役立つ?

 余暇の時間に行う身体活動(physical activity;PA)が慢性疼痛を軽減する上で有効な可能性を示した研究結果が、ノルウェーの研究グループにより報告された。身体的に活発な人では、座りがちな人よりも痛みに対する耐性(以下、疼痛耐性)が高く、また、PAレベルが高い人ほど、疼痛耐性レベルも高いことが明らかになったという。北ノルウェー大学病院(ノルウェー)のAnders Arnes氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS ONE」に5月24日掲載された。 Arnes氏らは、ノルウェーで定期的に実施されている大規模な人口調査(トロムソ研究)のデータを用いて、余暇の時間に行う習慣的なPAレベルの経時的な変化が疼痛耐性に影響を及ぼすのか、また、疼痛耐性の経時的な変化がPAレベルにより異なるのかを検討した。用いたデータは第6次調査(2007〜2008年、ベースライン)と第7次調査(2015〜2016年)のもので、成人1万732人(女性51%)が参加していた。余暇に行うPAレベルは、調査参加者の報告に基づき「座りがち」「軽度」「中強度」「高強度」の4群に分類した。また疼痛耐性については、冷水の中に手を浸水させていられる時間を測定するコールドプレッサーテスト(CPT)で評価した。 その結果、2回の調査を通じて活動的だった人では、いずれの調査時も「座りがち」であった人に比べて、疼痛耐性が有意に向上することが示された。最も著しい向上が認められたのは2回の調査を通じてPAレベルが「中強度から高強度」であった人で、これらの人は、いずれの調査時も「座りがち」であった人よりも20.4秒長く冷水の中に手を浸していられるものと推定された。また、ベースラインよりも2回目の調査時にPAレベルが上昇していた人でも、疼痛耐性が向上する傾向が認められた。 2回の調査間で、対象者が冷水の中に手を浸していられる時間は平均54.7秒短縮していた。解析の結果、疼痛耐性の総体的なレベルはベースラインのPAレベルと有意な正の相関を示すことが明らかになった。ベースラインのPAレベルが「高強度」だった人が冷水の中に手を浸していられる時間は、「座りがち」だった人よりも16.3秒長いと推定された。ただし、PAレベルと2回の調査時期との間に統計学的に有意な交互作用は確認されず、疼痛耐性の経時的な変化がベースライン時のPAレベルにより異なるわけではないことが示唆された。 研究グループは、「これらの結果は、高いPAレベルの維持やPAレベルを高めることが疼痛耐性の向上につながり得ることを示唆するものだ」との見方を示す。そして、このことを踏まえ、「PAレベルを高めることは、慢性疼痛を和らげたり、食い止めたりするための戦略となる可能性がある」と述べている。 一方、Arnes氏も、「徐々にPAレベルを高めるか、高いPAレベルを維持することで、疼痛に対する耐性を高められる可能性がある。何よりも重要なのは、何であれ何かをすることだ」と強調している。 研究グループは、「PAレベルと疼痛耐性が本当に因果関係にあるのかどうかは、今後の研究で解明されていくだろう」と述べている。

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感染対策義務のない学会参加、コロナ感染はどれくらい?

 対面式の学術集会参加後の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率を調べた報告はあるが1,2)、オミクロン株流行期に開催された感染対策義務のない学術集会参加後のSARS-CoV-2感染率は報告されていない。そこで、Saarland University Medical CenterのAlaa Din Abdin氏らは、オミクロン株流行期に感染対策義務なしで開催された、ドイツ眼科学会年次総会2022の参加者4,463人を対象として、学術集会参加後のSARS-CoV-2感染率と感染に関連する因子を検討した。その結果、調査対象者の8%が学術集会後にSARS-CoV-2検査陽性となり、ほかの研究1,2)で報告されている割合(0~1.7%)よりも高かった。また、過去にSARS-CoV-2感染歴があると学術集会での感染は少なく、民泊利用者は感染が多かった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年6月13日号のリサーチレターで報告された。 ドイツ眼科学会年次総会2022は、2022年9月28日~10月2日にドイツ・ベルリンで開催された。参加にあたり、SARS-CoV-2感染の自己検査やワクチン接種、マスク着用などは求められなかった。学術集会後の2022年10月22日に、参加者にオンラインでアンケートを送付し、SARS-CoV-2検査陽性率、SARS-CoV-2感染に関連する因子を検討した。 主な結果は以下のとおり。・学術集会参加者4,463人のうち、38.2%(1,709人)がアンケートに回答し、有効回答率は30.4%(1,355人)であった。・学術集会後にSARS-CoV-2陽性になったと回答したのは8.0%(109人)であった。・SARS-CoV-2検査を実施した786人の検査実施時期は、学術集会後1週間以内が88%(690人)であった。・SARS-CoV-2感染歴ありは、学術集会後にSARS-CoV-2陽性になった参加者の17.4%(19人)であったのに対し、陰性の参加者では62.5%(423人)であり、学術集会後のSARS-CoV-2陰性と関連していた(p<0.001)。・民泊の利用は、学術集会後のSARS-CoV-2検査陽性と関連していた(p=0.01)。・ワクチン接種者(2回以上の接種)の割合は97.8%(1,342人)であり、ワクチン接種歴は、学術集会後のSARS-CoV-2検査結果と関連がなかった。・移動手段、移動中・学術集会中のマスク着用、学術集会への参加期間は、いずれも学術集会後のSARS-CoV-2検査結果と関連がなかった。

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肝細胞がんデュルバルマブ+トレメリムマブの1次治療、免疫介在性有害事象とOS の関係(HIMALAYA)/ASCO2023

 切除不能肝細胞がん(uHCC)に対する1次治療として抗PD-L1抗体デュルバルマブと抗CTLA-4抗体トレメリムマブの併用は、免疫介在性有害事象(imAE)発生の有無にかかわらず、全生存期間(OS)の延長を示していた。第III相のHIMALAYA試験の探索的解析の結果として、香港humanity and health clinical trial centerのGeorge Lau氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)にて発表した。 HIMALAYA試験はuHCCを対象とした国際多施設共同オープンラベル第III相試験である。デュルバルマブとトレメリムマブを併用するSTRIDEレジメンはソラフェニブに比べて有意なOS改善を、デュルバルマブ単剤はソラフェニブに対して非劣性を示していた。・対象:局所療法の適応とならない未治療のuHCC・試験群1:トレメリムマブ300mg 単回+デュルバルマブ1,500mg 4週ごと(STRIDE群、388例)・試験群2:デュルバルマブ1,500mg 4週ごと(Dur群、389例)・対照群:ソラフェニブ400mg×2/日(Sora群、389例)・評価項目:[主要評価項目]OS(STRIDE群対Sora群)[副次評価項目]OS(Dur群対Sora群、非劣性)、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、全奏効率(ORR)、安全性など 今回は、HIMALAYA試験の探索的解析から、imAEとOSの関連について、STRIDE群とDur群で検討されている。 主な結果は以下のとおり。・STRIDE群およびDur群のimAEの多くは低Gradeであり、ほとんどが治療開始から3ヵ月以内に発現していた。・STRIDE群でのimAE発現は139例(35.8%)、非発現は249例(64.2%)、Dur群のimAE発現は64例(16.5%)、非発現は324例(83.5%)であった。・STEIDE群のimAE発現グループにおけるOS中央値は23.2ヵ月、非発現グループでは14.1ヵ月であり、ハザード比(HR)は0.727(95%信頼区間[CI]:0.557~0.948)であった。・STRIDE群におけるimAE発現および非発現グループの6ヵ月OS率は、それぞれ36.2%と27.7%であった。・Dur群でのimAE発現グループにおけるOS中央値は17.8ヵ月、非発現グループでは16.5ヵ月であり、HRは1.136(95%CI:0.820〜1.574)であった。 Lau氏は「imAEの発現はSTRIDEレジメンによるOSの延長を妨げず、また、STRIDEレジメンでは、imAE発現の有無にかかわらず長期生存が観察された」と述べた。

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難治性うつ病に対するケタミンの効果、ショック療法に劣らず

 治療抵抗性の大うつ病性障害(以下、うつ病)に対する治療法として、ケタミンの静脈内投与が電気けいれん療法(ECT)の代わりになり得る可能性のあることが、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のAmit Anand氏らによる臨床試験で示された。詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に5月24日掲載された。 現在、さまざまな薬物療法や精神療法を試しても奏効しない治療抵抗性のうつ病患者に対しては、「ショック療法」とも呼ばれているECTが施行されることがある。これは、脳に電気刺激を与えて一時的なけいれんを誘発する治療法だ。ECTは、これまで80年にわたってうつ病の治療に用いられてきており、有効かつ即効性があると考えられている。しかし、認知面への副作用や社会的スティグマなどが原因で十分に活用されていない。その一方で、強力な麻酔薬であり、以前から違法な「パーティードラッグ」としても使用されてきた静注用ケタミンを抗うつ薬として使用できるかどうかについても、これまで研究が行われてきた。 今回報告された臨床試験には、2017年3月から2022年9月の間に治療抵抗性のうつ病患者403人が登録された。Anand氏によると、本試験は、ケタミンとECTを比較した臨床試験の中では最大規模であるという。参加者は、1週間に3回ECTを施行する群と、1週間に2回、体重1kg当たり0.5mgのケタミンを40分かけて投与する群のいずれかにランダムに割り付けられた。最終的に195人がケタミンの投与、170人がECTを3週間にわたって受け、その後、6カ月にわたって追跡された。主要評価項目は治療に対する反応とし、これは、治療終了時の自己報告による簡易抑うつ症状尺度16項目(QIDS-SR-16)のスコアの初回治療時から50%以上の改善とした。QIDS-SR-16のスコアは0〜27点で、高スコアほど抑うつ症状が重いことを意味する。 その結果、抑うつ症状が50%以上改善した患者の割合は、ECT施行群の41.2%に対してケタミン投与群では55.4%と半数を超えていた。また、ケタミン投与群では治療中の一過性の解離感を除けば副作用は認められなかった。一方、ECT施行群には、ホプキンス言語学習テスト改訂版による評価で想起力に低下が認められ、また、筋骨格系の問題と関連していた。 研究責任者で米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のJames Murrough氏は、「これらは驚くべき結果だったと言わざるを得ない」と話す。ただし、この試験では、ECTに対するケタミンの優位性の評価は行われておらず、結果が意味するのは「数値上は、ケタミンの成績は極めて良好であったこと」として、慎重な解釈を求めている。 うつ病患者の多くでは、フルオキセチン(米国での商品名プロザック、日本国内未承認)といった選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などのファーストライン(第一選択薬)の抗うつ薬による治療が奏効する。しかし、残念ながら一部の患者はファーストライン治療薬による治療を繰り返してもうつ病を克服できない。 解離性麻酔薬のケタミンは現在、鎮痛薬および全身麻酔薬として米食品医薬品局(FDA)に承認されているが、抗うつ薬としては未承認であるため、うつ病に対しては適応外使用となる。また、ケタミンは規制薬物であり、「乱用につながる危険性もある」とMurrough氏は言う。さらに、うつ病治療として使用可能な期間がどの程度なのかについても現時点では不明であるほか、今回の試験は精神病のないうつ病患者を対象としていたが、ケタミンは精神病を悪化させる可能性がある点にも留意しておく必要がある。 この臨床試験には関与していない米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)精神医学教授のAndrew Leuchter氏は、治療抵抗性うつ病患者が家庭や仕事、生活の中での機能を取り戻す上でケタミンにどの程度の効果があるのか、また効果の持続期間がどの程度であるのかを知りたいという。その背景について同氏は、「ECTの臨床試験では、再発予防を目的とした適切な薬物治療が行われない限り、最初の6カ月間の再発率は驚くほど高いことが示されている」と説明している。

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早期乳がんの死亡率、どのくらい下がったのか/BMJ

 英国・オックスフォード大学のCarolyn Taylor氏らは、National Cancer Registration and Analysis Service(NCRAS)のデータを用いた観察コホート研究を行い、早期浸潤性乳がん女性の予後は1990年代以降大幅に改善され、ほとんどの人が長期がんサバイバーとなっているものの、依然として少数例で予後不良リスクが伴うことを報告した。早期浸潤性乳がん診断後の乳がん死亡リスクは、過去数十年間で低下しているが、その低下の程度は不明であり、また低下は特定の特性を持つ患者に限定されるのか、すべての患者に当てはまるのか不明であった。BMJ誌2023年6月13日号掲載の報告。英国の早期浸潤性乳がん患者約51万例について解析 研究グループは、NCRASのデータを用いて、1993年1月~2015年12月に英国において早期浸潤性乳がん(乳房のみ、または腋窩リンパ節陽性であるが遠隔転移なし)の診断で登録された患者51万2,447例を特定し、2020年12月まで追跡調査を行った。 主要評価項目は、乳がん年間死亡率および累積死亡リスクとした。診断時暦年、診断時年齢、エストロゲン受容体(ER)陽性/陰性、HER2陽性/陰性、腫瘍径、腫瘍悪性度、リンパ節転移数、スクリーニングの有無などにより層別し解析を行った。診断時暦年は1993~99年、2000~04年、2005~09年、2010~15年のカテゴリーに分けた。診断特性の違いで、5年累積乳がん死亡率は3%未満群~20%以上群とばらつき 乳がん年間粗死亡率は、いずれの診断年カテゴリーでも、診断後2年間に増加し3年目にピークとなり、その後は低下した。また、乳がん年間死亡率ならびに累積死亡リスクは、診断時暦年が近年になるほど低下した。 乳がん5年粗死亡率は、1993~99年に診断された女性で14.4%(95%信頼区間[CI]:14.2~14.6)であったが、2010~15年に診断された女性では4.9%(4.8~5.0)であった。 ER陽性/陰性別の補正後乳がん年間死亡率も、全体およびほぼすべてのサブグループ(診断時年齢層、スクリーニングの有無、腫瘍径、リンパ節転移数、悪性度別)で診断時暦年が近年になるほど低下し、1993~99年に診断された群に比べて2010~15年に診断された群では、ER陽性で約3分の1、ER陰性で約2分の1であった。 2010~15年に診断された女性のみについて解析した場合、5年累積乳がん死亡率は異なる特性の組み合わせによって大きなばらつきがあり、女性の62.8%(15万3,006例中9万6,085例)を占める特性群の5年累積乳がん死亡率は3%未満である一方、4.6%(15万3,006例中6,962例)の特性群では20%以上であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「より最近の年代に診断された患者群の5年乳がん死亡リスクは、今日の患者の乳がん死亡リスクの推定に使用できるだろう」とまとめている。

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COPD患者の生存率向上につながり得る治療標的が明らかに

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の多くに気道の閉塞をもたらす粘液栓(粘液の塊)が、COPD治療の新たな標的となり得ることが、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院呼吸器・救命医療部門のAlejandro Diaz氏らによる研究で示された。この研究結果は、米国胸部学会(ATS 2023、5月19〜24日、米ワシントン)で発表され、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に5月21日同時掲載された。 米国では、COPDは4番目に多い死因であり、その有病者数は1590万人に上る。COPDの原因としては、喫煙や長期間にわたる大気汚染への曝露などが挙げられる。COPDはそうしたものへの曝露を避けることで進行を遅らせることはできるが、治癒は不可能だ。さらに、研究グループによると、COPD患者の死亡に影響を与える要因に関しては、現時点ではほとんど分かっていない。その上、死亡に関係する要因の全てが症状として現れるわけではないという。 研究グループは今回、COPDに関する遺伝疫学研究(Genetic Epidemiology of COPD;COPDGene)に2007年から2011年の間に登録された、喫煙歴が10パックイヤー以上の1万198人のうち、4,363人のさまざまな重症度のCOPD患者のデータを用いて解析を行い、初診時の胸部CT検査で確認された気道の粘液栓と全死亡リスクとの関係について調べた。対象者は、年齢中央値が63歳(四分位範囲57〜70歳)で、女性が44%を占めていた。粘液栓が検出された肺の区域数(0〜18区域)で患者を分類すると、0区域が2,585人(59.3%)、1〜2区域が953人(21.8%)、3区域以上が825人(18.9%)だった。 中央値9.5年に及ぶ追跡期間中に1,769人(40.6%)が死亡した。粘液栓が検出された肺の区域数が0区域だった患者の全死亡率は34%だったのに対して、1〜2区域の患者では46.7%、3区域以上の患者では54.1%と高かった。粘液栓が検出された肺の区域数が0区域の患者と比べた全死亡の調整ハザード比は、1〜2区域の患者で1.15(95%信頼区間1.02〜1.29)、3区域以上の患者で1.24(同1.10〜1.41)だった。 Diaz氏は、「これらは粘液栓の増加と全死亡率に関連があることを示した説得力のあるデータだ。ただし、その関連要因については、現時点では何も明らかになっていない」と指摘する。その上で、「COPDを治癒に導くことはできないが、われわれの研究では、粘液栓を壊す治療によってCOPD患者の予後を改善できる可能性のあることが示された。これは、治癒の次に良いことだ」と述べている。 Diaz氏によると、粘液が作られるのは体の正常な免疫反応の一つであるが、通常、作られた粘液は回復過程で咳によって吐き出される。しかしCOPDでは、粘液が過剰に分泌されて排出されにくい状態になり、その結果、粘液栓が形成される。こうした粘液栓は、特定の症状とは強く関連しないため、看過されやすいのだという。 Diaz氏は、「過去40年間にわたってCOPDの治療にはわずか二つの標的しかなかった。一つは気管支拡張の促進、もう一つは気管支の炎症の抑制だ」と言う。一方、粘液に関しては、「COPD以外の疾患に対しては、粘液を標的とした治療法が既に数多く存在しており、開発段階のものもある。したがって、粘液はCOPDの治療標的としても極めて有望だ」との見方を示す。 研究グループは、既存の治療法をCOPD患者に試し、粘液栓を標的とした治療が患者の予後に影響を与えるかどうかを検討する研究を計画中だ。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 1次情報源の活用 実際にPubMed検索式を作ってみる その8【「実践的」臨床研究入門】第33回

検索式で研究デザインを限定する その3前回は、PubMedの「Filterサイドバー」(連載第31回参照)を利用して、検索式で「研究デザイン」を「観察研究」に限定する方法について説明しました。「Filterサイドバー」を用いる方法は簡便ですが、Publication typeが“Observational Study(観察研究)”であるという情報が付与されていない論文は、検索式から漏れてしまいます。そこで、今回は「観察研究フィルター」の検索式を紹介します。また、実際にわれわれのResearch Question(RQ)の関連研究レビューの検索式に「観察研究フィルター」の検索式を加えて、「Filterサイドバー」を使う方法と検索結果を比較してみたいと思います。Journal of the Medical Library Associationという医学図書館学についての専門学術誌があります。この雑誌に掲載された論文1)で、「研究デザイン」を「観察研究」に絞る、PubMed用の「観察研究フィルター」の検索式が紹介されています。ちなみにこの論文1)では、「観察研究フィルター」以外にも、「システマティックレビューフィルター」と「介入研究フィルター」のPubMedおよびEmbaseの検索式が提示されていますので、ご関心があれば参照してください。下記に、この論文1)で紹介されたPubMed用の「観察研究フィルター」検索式の例を示します。“Epidemiologic Studies”[mh] OR “case control”[tiab] OR “case-control”[tiab] OR ((case[tiab] OR cases[tiab]) AND (control[tiab] OR controls[tiab)) OR “cohort study”[tiab] OR “cohort analysis”[tiab] OR “follow up study”[tiab] OR “follow-up study”[tiab] OR “observational study”[tiab] OR longitudinal[tiab] OR retrospective[tiab] OR “cross sectional”[tiab] OR questionnaire[tiab] OR questionnaires[tiab] OR survey[tiab]それでは、Advance Search Builderを用いて(連載第27回参照)、われわれのRQの関連研究レビューのための検索式に、この「観察研究フィルター」検索式を加えてみましょう。検索結果は下記の表1のようになりました(本稿執筆2023年6月時点)。表1画像を拡大する前回解説した、「Filterサイドバー」の“article type”で“Observational Study(観察研究)”に絞り込んだ検索結果の10倍以上の文献数がヒットしました。この検索結果に、改めて「Filterサイドバー」を用いて“Observational Study(観察研究)”に限定すると、下記の表2のとおりとなり、前回ヒットした文献がすべて検索されました。表2画像を拡大するこのように、今回解説した「研究デザインフィルター」の検索式を用いた方が、「Filterサイドバー」を使うよりも、さらに網羅的な検索ができることがわかります。1)Avau B, et al. J Med Libr Assoc. 2021;109:599-608.

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がん遺伝子検査、よく受けるがん種・人種は?/JAMA

 米国・スタンフォード大学のAllison W. Kurian氏らは、2013~19年に同国カリフォルニア州とジョージア州でがんと診断された患者のうち、生殖細胞系列遺伝子検査を受けた患者の割合が6.8%とごくわずかであり、非ヒスパニック系白人に比べ、黒人、ヒスパニック系、アジア系の患者ではより低いことを示した。同検査は遺伝性のがんリスクを明らかにし、遺伝学的な標的治療を可能にすることで、がん患者の生存率を向上させるが、米国ではどのくらいの患者が受けているかは、これまで知られていなかった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年6月5日号で報告された。SEERレジストリを用いた米国2州の観察研究 研究グループは、Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)レジストリのデータを用いて、カリフォルニア州とジョージア州でがんの診断を受けた年齢20歳以上の患者を対象に、生殖細胞系列遺伝子検査の実施状況とその結果を調査する目的で観察研究を行った(米国国立がん研究所[NCI]などの助成を受けた)。 主要アウトカムは、がんの診断から2年以内の生殖細胞系列遺伝子検査の実施であった。がんリスクの上昇と関連するバリアント(病原性バリアント)およびがんリスクとの関連が知られていないバリアント(不確実なバリアント)を含む、各遺伝子のシークエンシングの結果を評価した。 遺伝子は、乳がんや卵巣がん、消化器がん、その他のがんなどの主要ながんとの関連、および診療ガイドラインが生殖細胞系列遺伝子検査を推奨しているか否かによって分類された。検査実施率、全体6.8%、大腸がん5.6%、肺がん0.3% 2013年1月1日~2019年3月31日の期間に、2州でがんと診断された136万9,602例のうち、生殖細胞系列遺伝子検査を受けていたのは9万3,052例(6.8%、95%信頼区間[CI]:6.8~6.8)であった。 同検査を受けた患者の割合は、がん種によってばらつきがみられ、男性乳がんが50.0%と最も高く、次いで卵巣がん38.6%、女性乳がん26.0%、多重がん7.5%、子宮体がん6.4%、膵がん5.6%、大腸がん5.6%、前立腺がん1.1%、肺がん0.3%の順であった。 ロジスティック回帰モデルによる解析では、男性乳がん、卵巣がん、女性乳がんの患者のうち検査を受けた患者の割合は、非ヒスパニック系白人が31%(95%CI:30~31)であったのに対し、他の人種・民族では低く、黒人25%(24~25)、ヒスパニック系23%(23~23)、アジア系22%(21~22)であった(χ2検定のp<0.001)。 病原性バリアントの67.5~94.9%は、診療ガイドラインで検査が推奨されている遺伝子で同定され、68.3~83.8%は、診断されたがん種と関連する遺伝子で同定された。 著者は、「遺伝子検査の実施率は経時的に上昇したが、2021年においても、診療ガイドラインで推奨されている卵巣、男性乳房、膵臓などの特定のがん種については100%を大幅に下回っていた。生殖細胞系列の遺伝子のがんスクリーニング、予防的手術、標的治療により生存率が向上することは臨床試験で実証されていることから、生殖細胞系列遺伝子検査の実施率の低さが、がん死亡率の上昇に寄与している可能性がある」と指摘している。

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腎細胞がん1次治療のペムブロリズマブ+アキシチニブ、5年超追跡でも生存改善を維持(KEYNOTE-426)/ASCO2023 

 進行/再発の淡明細胞型腎細胞がん(RCC)に対する1次治療としてのペムブロリズマブとアキシチニブの併用療法は、5年間以上の追跡結果においても有用性が確認できた。米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で、米国・Vanderbilt-Ingram Cancer CenterのBrian I. Rini氏が発表したKEYNOTE-426試験の結果である。 KEYNOTE-426は国際共同非盲検第III相試験であり、ペムブロリズマブとアキシチニブによるRCCの有意な生存延長を報告している。今回は60ヵ月以上の追跡期間(中央値67.2ヵ月)の最終結果報告となる。・対象:未治療の局所進行もしくは転移を有するRCC・試験群:ペムブロリズマブ3週ごと最長35サイクル(2年間)投与+アキシチニブ連日投与(PemAxi群:432例)・対照群:スニチニブ4週投与2週休薬(Suni群:429例)・評価項目:[主要評価項目]ITT集団の全生存期間(OS)および盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]BICRによるITT集団の全奏効率(ORR)、BICRによる奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値は、PemAxi群で15.7ヵ月、Suni群で11.1ヵ月、ハザード比(HR)は0.69(95%信頼区間[CI]:0.59~0.81)とPemAxi群の優越性は保たれており、60ヵ月PFS率は、PemAxi群18.3%、Suni群7.3%であった。・ORRはPemAxi群60.6%、Suni群39.6%であった。・OS中央値は、PemAxi群で47.2ヵ月、Suni群で40.8ヵ月、HRは0.84(95%CI:0.71~0.99)で、60ヵ月OS率は、PemAxi群41.9%、Suni群37.1%であった。・全症例の約70%を占めるintermediate riskとpoor riskグループにおける、PFSのHRは0.68(95%CI:0.56~0.82)、OSのHRは0.76(95%CI:0.62~0.93)と、PemAxi群が良好な結果であった。・後治療として抗PD-1/L1抗体の投与を受けたのは、PemAxi群の27%、Suni群の80%、抗VEGF薬の投与を受けたのは、それぞれ87%と72%であった。・これら後治療の影響を調整してOS解析を実施したところ、OS中央値はPemAxi群38.8ヵ月、Suni群25.3ヵ月、HRは0.67(95%CI:0.52~0.84)となった。・PemAxi群でペムブロリズマブの35サイクルを完遂できた割合は27.8%で、完遂例はfavorable risk群と肉腫様腎細胞がんに多く、遠隔転移2ヵ所以上の群では少なかった。・同完遂例におけるPemAxi群のPFS中央値は37.4ヵ月、OS中央値は未到達と良好な結果だった。 演者は「5年を越える長期のフォローアップデータでも、これまでの報告と同様に、ペムブロリズマブ+アキシチニブ併用療法が標準治療であることを支持し続けている」と述べた。

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第168回 かつてのプラセボがいまや米国承認の勃起不全治療製品

かつてのプラセボがいまや米国承認の勃起不全治療製品英国の製薬会社Futura Medical社が開発した処方箋不要の勃起不全治療外用ジェル(商品名:Eroxon)の店頭販売が米国で承認されました1,2)。かつて同社は同社独自の経皮粘液(ジェル)DermaSysの一種(以下「DermaSys」)に血管拡張成分として知られるニトログリセリンを混ぜた塗り薬を開発していました。その開発品名はMED2005で、先々週の火曜日9日に承認されたEroxonの中身は本命だったMED2005ではなく、意外にもその単なる下地にすぎなかったDermaSysのほうです。ニトログリセリンを含まないDermaSysはFM57という名称の第III相試験でプラセボの役割を担いました。その試験結果は2019年12月に発表され、どういうわけかDermaSysはニトログリセリン入りのMED2005と同様の勃起機能改善効果を示しました。MED2005高用量投与群は元に比べて23.27%多い被験者が性交の間勃起を保つことができ、DermaSys投与群のその割合もほぼ同じで23.16%でした3)。というわけで残念なことにMED2005はDermaSysを上回る効果は認められませんでした。しかしDermaSys投与群のどの重症度の患者も勃起不全が元に比べて改善したことにFutura Medical社は勇気づけられ、新たな第III相試験に踏み切ります。米国FDA了承の計画に沿って実施された新たな第III相試験でDermaSysは幸いにもFutura Medical社の期待に見事に応え、勃起不全の有意な改善をもたらしました4)。被験者数96例の同試験で対照薬として使われた飲み薬(タダラフィル錠)に比べて効果の発現は早く、今やEroxonという商品名を冠するDermaSysは塗ってから10分以内に勃起を感じ取れるようになることが示されました。タダラフィル錠にその効果はありませんでした。試験の成功を受け、ニトログリセリンを含まないEroxonは医薬品ではなく事前の予定どおり医療機器の扱いで承認されました。主な成分は水とエタノール(アルコール)であり、処方箋不要で店頭で購入できます。勃起不全を患う22歳以上の成人男性が使えます。Eroxonを塗った部分はその揮発性成分(エタノールと水)の蒸発によって冷え、続いてゆっくりと温まります。その冷温反応が亀頭の神経末端を刺激することでペニスを膨らませ、性交に必要な固さの勃起を達成して維持できるようにします2,5)。米国でタダラフィルやシルデナフィルなどの経口薬(PDE5阻害薬)は医師の処方が必要で、たいていは事に及ぶ少なくとも30分前に服用する必要があります。一方、Eroxonは塗ってから10分以内に勃起できるようにします。Eroxonは米国に先立って欧州全域ですでに承認されており、ベルギーと英国で販売されています。Eroxonのホームページによると同剤使用者の約65%が勃起を維持して性交をやりおおせるようです6)。参考1)US FDA Grants for Over-the-Counter Marketing Authorization to Futura for Fast-Acting Topical Gel, MED3000, to Treat Erectile Dysfunction / BusinessWire 2)FDA Roundup: June 13, 2023 / PRNewswire3)Futura Announces Top-Line Results from MED2005 Phase 3 study in Erectile Dysfunction / GlobeNewswire4)Highly positive FM71 Phase 3 study results with all primary and secondary endpoints achieved, MED3000 remains on track to submit for FDA marketing authorization / BusinessWire5)Eroxon Product Leaflet6)Eroxonのホームページ

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XBB.1対応コロナワクチン、秋接種から導入へ/厚労省

 厚生労働省は6月16日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会を開催し、2023年度秋冬の接種に使用する新型コロナワクチンについて、XBB.1系統を含有する1価ワクチンを用いることが妥当であるという方針を示した1)。現在の主流であるオミクロン株XBB.1系統に対して、現行のBA.4/5対応2価ワクチンでは中和抗体価の上昇が低く、移行しつつある主流流行株に対してより高い中和抗体価を誘導するためには、最も抗原性が一致したワクチンを選択することが適切であるという。XBB.1系統を含むワクチンを秋接種に用いることが妥当 6月16日に国立感染症研究所が公表した、民間検査機関の検体に基づくゲノムサーベイランスによる系統別検出状況によると、XBB.1.16(25.13%)、XBB.1.9.1(7.04%)、FL.4(XBB.1.9.1の下位系統、5.53%)といった、いずれもXBB.1系統が上位3位を占めている2)。今秋以降もXBB系統の流行が続くことが想定され、XBB.1系統内におけるさまざまな変異体の抗原性の差は小さいことがこれまでの調査で確認されていることから、本会議では秋冬の接種にXBB.1系統を含むワクチンを用いることが妥当とされた。 また、従来株成分の必要性については、免疫刷り込み現象を理由として従来株成分を排除すべき状況ではないものの、現時点では、今後にわたり、従来株を含める必要性はないため、新たなワクチンはXBB.1系統に対する1価でよいという見解が示されている。なお、今年度春開始の重症化リスクが高い者に対する接種では、重症化予防の観点から現在入手可能な既存の2価ワクチンを用いて引き続き実施される。 XBB.1系統を含むワクチンに関する知見は限られているが、製薬企業から提出されたマウスを用いた非臨床試験によると、XBB.1.5の成分を含む1価ワクチンは、追加接種として、既存の2価ワクチンと比較して、XBB.1.5に対する中和抗体価が約4倍高かったという。 今後のコロナワクチン接種についてXBB系統の使用を推奨する動きは、世界保健機関(WHO)3)や、欧州医薬品庁(EMA)/欧州疾病予防管理センター(ECDC)4)、米国食品医薬品局(FDA)5)が、5月から6月にかけて相次いで出した声明にも同様にみられる。■参考1)第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料(令和5年6月16日)2)国立感染症研究所:新型コロナウイルス感染症サーベイランス週報 2023年第22週(2023年5月29日~2023年6月4日)3)WHO:Statement on the antigen composition of COVID-19 vaccines4)EMA and ECDC statement on updating COVID-19 vaccines to target new SARS-CoV-2 virus variant5)FDA:Updated COVID-19 Vaccines for Use in the United States Beginning in Fall 2023

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気が散りやすいのは若年者と高齢者のどちら?

 買い物袋の持ち運びや車の運転のような努力を要する身体動作を行う際に、高齢者は若年者よりも、その動作とは関係のない物事に気を取られやすいことが、米カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)のLilian Azer氏らの研究で示唆された。この研究結果は、「Psychology and Aging」に4月27日掲載された。 この研究には65~86歳の高齢者19人と18~28歳の若年成人31人が参加した。全ての参加者に、短期記憶の課題に取り組みながら、同時に握力計を最大努力時の5%または30%の力で握ってもらった。握力の強さは、階段を上るときや車の運転時、食料品の入った袋の運搬時に発揮する力を想定したもので、視覚的尺度により参加者にリアルタイムで発揮している力の強さをフィードバックした。なお、車の運転では最大努力時の約30%、買い物袋を持ち運ぶ際には最大努力時の約20%の握力が使われることが多いという。 参加者が受けた短期記憶テストは、妨害が入らないパターンと妨害が入るパターンの2パターンが用意された。妨害が入らないパターンのテストは、3本の赤色の棒が配置された図を一瞬だけ見た後に、それらの棒の配置(向き)を思い出すという内容。一方、妨害が入るパターンのテストは、赤色の棒3本と青色の棒5本が配置された図を見て、赤色の棒の配置のみを覚えるという内容。青色の棒は、色鮮やかな看板や車のクラクション、自分には関係のない会話などに近いレベルの妨害要因を想定している。 その結果、高齢者では、高い運動努力を要する状況下で妨害が入ると、それを無視する能力と、課題に集中して正確な回答を出す能力が低下することが明らかになった。若年成人ではこのような能力低下は認められなかった。 Azer氏は、「今回の研究から、高齢者は若年成人と比べて、認知力を要する課題と努力を要する身体動作の課題に同時に取り組んでいる最中に、周囲からの妨害を無視できにくいことが明らかになった。人は加齢に伴い、取り組んでいる課題には関係のないことを無視する力は低下していく。特に、日常生活で遭遇するような身体的な課題を行っている最中には、その低下が顕著になる」と説明している。 論文の上席著者でUCR心理学准教授のWeiwei Zhang氏によると、人間は加齢に伴い、短期記憶力や情報処理速度の低下、注意散漫さの程度の増大などの認知機能の変化を経験する可能性が高いという。同氏は、「認知機能と身体動作の相互作用を解明することで、周囲からの気が散る情報がいかにわれわれのワーキングメモリ(作業記憶)を低下させ得るのかに対する意識を高められる可能性がある」と付け加えている。 Azer氏は、努力を要する身体動作の多くは認知力も要するものであると指摘。「そのような課題を周囲からの妨害が全くない状況で取り組めることはまれであるため、できるだけ妨害を少なくすることが重要だ」と話す。その上で同氏は、「それが不可能であるなら、努力を要する身体的課題によって、ワーキングメモリの課題を実行する能力と、周囲からの気が散る情報を無視する能力が低下する可能性があることを、認識しておく必要がある」と述べている。

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急性心筋梗塞患者の予後は、所得に関連するのか? (解説:三浦伸一郎氏)

 急性心筋梗塞(AMI)は、急性期の早期治療として冠動脈に対する血行再建術の有効性のエビデンスが確立し、わが国においても広く普及してきた。2020年のわが国における死因の第1位は悪性新生物、第2位が心疾患であり、その41%が心不全、33%が虚血性心疾患(その15%がAMI)となっている1)。AMIによる死亡率は年々低下してきているが、その後、心不全へ移行する患者もいるため、今なお、重要な心疾患である。最近、「脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画」が発表され、心血管疾患に対する多くの計画が進行中である。  今回、Landon氏らは、JAMA誌に66歳以上の高齢者AMI患者における興味深い報告をした2)。高齢AMI患者の予後と所得との関連性について、米国、カナダ、イングランド、オランダ、イスラエル、台湾について分析している。AMI患者で高所得者のほうが低所得者よりも、経皮的冠動脈形成術を受けた割合が高く、30日死亡率や1年死亡率が低率であったというものであった。わが国のAMI発症後の早期治療は、確立しているが、院内死亡率は依然として5~10%であり、患者の所得により血行再建術を受ける割合や予後に差異があれば問題である。JAMA誌では、「国民皆保険と強固な社会セーフティーネットシステムがある国であっても、所得に基づく格差が存在することを示唆する」となっている。理由は、低所得者では喫煙率が高いこと、地理的条件にも関連する高度医療施設へのアクセスが悪いこと、他の併存疾患の多い可能性などが挙げられている。わが国では、高額療養費制度があり、所得に応じて一定の医療費が払い戻される制度があり、いまだに地域差はあるが救急医療が整備されつつある。また、AMIの好発年齢は、男性で60歳、女性で70歳程度であり、男女差や年齢層別化による検討、ST上昇型AMIと非ST上昇型AMIの差異の検討も必要であり、わが国がJAMA誌の報告と同様の結果となるかは、今後の課題である。

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脳卒中後の妻とその夫をテコンドーの「不屈の精神」が支える

 米国ノースカロライナ州に住むCecile Boyntonさんは、5カ月前に結婚したばかりの夫に、「仕事が終わって今から帰るところ」とメールした。帰宅後は夫婦でパーソナルトレーナーを訪ね、トレーニングを受ける予定だった。2人は数年前に、自宅近くのテコンドー教室で出会った。夫婦ともに黒帯で、夫のMarkさんは10代の頃から格闘技を習い、Cecileさんもトレーニング歴10年に達していた。 車で家に帰る途中、Cecileさんは頭痛とともに吐き気とめまいを感じ、いったん高速道路を降りた。数分たつと気分が良くなったので、再び車を走らせた。そして彼女が次に覚えていることは、道端に座って救急隊員の質問に答えようとしているシーンだ。乗っていた車は逆さまにひっくり返っていた。 家ではMarkさんが心配していた。Cecileさんの電話はつながらなかった。ネット検索をしてみると、Cecileさんがいつも走行している道筋で、大きな事故が発生し通行止めになっていることが分かった。ちょうどそのとき、自宅のドアベルが鳴った。外には2人の警察官が立っていて、そのうちの1人がこう言った。「あなたの奥さんは重大な事故に遭い入院しています。奥さんは頭に怪我をした可能性があります」。 Markさんが病院に駆けつけると、CecileさんはERに収容されていた。彼女は話すことができなかった。Markさんは、妻の目に恐怖が宿っているのを見た。そして彼女の顔の右側がゆがんでいて、右半身を動かせず、左目は見えないようだった。まだ43歳でそれまで健康だった妻が、脳卒中を発症したことは明らかだった。 Markさんは、偶然にもテコンドー教室で知り合いになっていた神経内科医に電話を入れてみた。その医師は、「彼女から離れずにいて」と答えて電話を切った。時を置かず、医師が看護師とともに駆け込んできた。画像検査の結果、Cecileさんの頸動脈に血栓があることが判明し、血栓除去術を要すると判断された。 血栓除去術の途中で血栓の一部が崩れてしまい、再び発作が発生してしまったが、血流を回復させることには成功した。ただし、Cecileさんにどの程度の後遺症が残るかは不明だった。Markさんは、自分たちの人生は終わったように感じた。しかし、「自分には、自分たちには選択肢がある。あきらめるか、それとも良くなるかだ」と、自分自身に言い聞かせた。 術後のCecileさんは怯えているように見えた。それでもMarkさんの姿を見て、夫であることを認識できた。Markさんが妻の右手を取ると、わずかな指の動きを感じ取れた。それは彼に希望を与えた。「君が話せないことは分かっているし、君が混乱していることも分かっている。でも大丈夫」と彼は妻に言った。その夜、弁護士であるMarkさんは自宅に戻ると、訴訟の準備をする時と同じように、Cecileさんの状態について詳しく調べてみた。そして後遺症を抑えるには、できるだけ早くリハビリテーションを始めるべきであることを学んだ。 翌日、Markさんは医師の許可を得た上で、Cecileさんの全身の筋肉を動かしてみた。少しずつ、力と動きが戻ってきたと感じた。Cecileさんは、言葉を理解することはできたが、自分の言いたいことを伝えるための言葉を探し出せずにいた。表出性失語症と呼ばれる状態だ。Markさんは彼女から言葉を引き出すために歌や詩、祈りなどを口にした。 CecileさんがICUに収容されてから数日後、Markさんは看護師からある話を聞かされた。彼がそばにいる時は元気そうにしているCecileさんも、彼が帰った後に毎晩泣いているという。そして、結婚したばかりのMarkさんが自分から離れていってしまうのではないかとの不安を、困難な発語で訴えるのだという。Markさんは次の面会の時、「僕は君から絶対に離れない」と妻に告げた。そして、「しかし君には成すべき仕事がある。君の体と心を動かす力を持っているのは君だけだ」とも語った。 ICUで2週間過ごした後、Cecileさんはリハビリ施設に転院した。2011年4月から1カ月にわたり毎日、言語療法、作業療法、理学療法を受けた。一方、その間に医師たちは、Cecileさんの脳卒中は抗リン脂質抗体症候群(APS)が原因だったと突き止めた。APSは自己免疫疾患の一つで、血栓症のリスクを高める疾患だ。 退院後もCecileさんは自宅でのリハビリを続けた。右手の麻痺の改善のために、MarkさんはCecileさんの黒帯を使って彼女の左腕の動きを制限して、できるだけ右手を使わざるを得ないようにするなどした。互いにいらつくこともあった。しかし、チームとして力を合わせ、回復を目指した。同じ年の7月までにCecileさんは、Markさんの実家のあるニューヨークに飛行機で行けるほどになっていた。しかし、左目の視力は戻らず、疲れやすくなっていた。 2011年10月、彼女はマーケティングの仕事にパートタイムとして戻り、電車などの公共交通機関を利用するようになった。さらに2013年には失効していた運転免許証を再取得した。ところが翌年、彼女の状態にあわせて就労環境を整備し、回復をサポートしてくれていた勤め先が、ほかの企業に売却された。彼女は職を失っただけでなく、愛する家族を失ったように感じた。憂うつになり、自宅にこもりがちになった。 そんな彼女をそばで見守っていたMarkさんは、2カ月後、妻に言った。「家にいるばかりではいけない。このままでは、僕たちが戦って得てきたものが全て消え去ってしまう」と。彼はテコンドーの教義にある「百折不撓(不屈の精神)」をCecileさんに思い出させて励ました。やがてCecileさんは、友人に会うようになり、新しい職にも就いた。 今年に入り、夫婦でテコンドー教室を訪れた。Cecileさんは視力と平衡感覚の障害のため、トレーニングには参加できなかった。しかし彼女は、「私にとっては、ここに戻ってくることに重要な意味がある。体の麻痺は徐々に改善してきている。まだできないこともあるが、挑戦することに気持ちの昂りを感じている」と語っている。[2023年5月15日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.利用規定はこちら

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急速に進行する認知症(後編)【外来で役立つ!認知症Topics】第6回

急速に進行する認知症(後編)「うちの家族の認知症は進行が速いのでは?」と問われる付き添い家族の対応には、とくに注意して臨む。筆者が働く認知症専門のクリニックでよくある急速進行性認知症(RPD:Rapid Progressive Dementia)は、やはり基本的にアルツハイマー病(AD)やレビー小体型認知症(DLB)が多いようだ。こうした質問に対する説明では、次のようにお答えする。まず変わった治療や指導法をしているわけではないこと。また一言でADやDLBと言っても、進行速度などの臨床経過は多彩であること。そのうえで、処方薬の変更などの提案をする。しかし、時に難渋する例がある。それは、aducanumabやlecanemabなど新規薬の治験を行っている症例が、たまたまRPDだったと考えざるを得ないケースである。こちらが何を言おうと、ご家族としては治験薬に非があるという確固とした思いがある。筆者は経験的に、ADでは個人ごとにほぼ一定の進行速度があり、肺炎や大腿骨頸部骨折などの合併症がない限りは、速度はそうそう変わらないと思ってきた。つまり、固有の速さでほぼ直線的に落ちると考えていた。今回、RPDを論じるうえで、改めてADの臨床経過を確認してみた。まずあるレビュー論文によれば、認知機能の低下具合は、病初期はゆっくりと立ち上がり、その後ほぼ直線的に経過し終末期には水平に近づくことが示されていた1)。次に神経心理学所見のみならず、バイオマーカーの観点からも、ADの経過の多彩性を扱った論文があった。ここでは、「代償的なメカニズムも働くが、進行具合は遺伝子が強く規定している」と述べられていた2)。とすると、筆者の経験則は「当たらずとも遠からず」であろう。単純にADもしくはDLBで急速悪化する例では、その速度はプリオン病ほど速くはないが、半年ごとの神経心理学テストで、「えーっ、こんなに低下した?」と感じる。こういうケースは一定数あるし、そんな例にはこれという臨床的な特徴がないことが多いと思ってきた。それだけに低下速度は遺伝子により強く規定されているという報告には、なるほどと思う。そうはいっても、RPDのADには中等度から強度のアミロイドアンギオパチーが多いと述べられていた。このことは、血管障害が発生する危険性が高いと解釈される。なお有名なAPOE4遺伝子の保有との関りも述べられていたが、非RPDのものと変わらないとする報告が多く、なかには有意に少ないとする研究もあるとのことであった。ADに別の疾患を併発することで急速悪化することもADなどの変性疾患に別の疾患が加わることもある。上に述べた脳血管障害や硬膜下血腫の場合には、かなり急性(秒から週単位)に悪化する。麻痺や言語障害など目立った神経学的徴候があればわかりやすいが、必ずしもそうではない。また、せん妄など意識障害が前景に立つ場合も少なくない。こうした例では、せん妄の特徴である急性増悪と意識障害の変動への注目が重要である。次に、正常圧水頭症は、潜行性に失禁、歩行障害が現れてくる。その「いつの間にか」の進行ゆえに、ある程度長期に診ていると、逆に合併の出現には気付きにくくなることに要注意である。一方であまり有名でないが、よく経験するのが夏場の熱中症、あるいは脱水である。7月の梅雨明け頃から9月下旬にかけて、「このごろ急に認知症が悪化した」とご家族が申告される例は多い。主因は、当事者が暑いと感じにくくなっていて窓開けやエアコン使用など環境調整ができないこと、また高齢化とともに進行しがちな喉の渇きを感知しにくくなることによる水分摂取の低下である。典型的な熱中症ではない、比較的軽度な例が多いので、家族からは「認知症が最近になって悪化した」と訴えられやすい。なお初歩的かもしれないが、若い時からうつ病があった人では、老年期に至って新たなうつ病相が加わることがある。これが半年から1年も続くとRPDと思われるかもしれない。ごくまれながら、認知症に躁病が加重されることもあって、周囲はびっくりする。なお誤嚥性肺炎、複雑部分発作のようなてんかんもRPDに関与しうる。どのように悪化したかを聞き出すことが第一歩さて、これまでADやDLBとして加療してきた人が、RPDではないかと感じたり、家族から訴えられたりした時の対応が問題である。多くの家族は「悪化した、進んだ」という言い方をされるので、何がどのように悪いのかを聞き出すことが第一歩だろう。普通は記憶や理解力などの低下だろうが、たとえば正常圧水頭症が加わった場合なら、失禁や歩行障害という外から見て取れる変化なのかもしれない。次に治療法の変更は、本人や家族が安心されるという意味からもやってみる価値があるだろう。まずは薬物の変更、あるいは未使用ならデイサービス、デイケアも有効かもしれない。さらに大学病院の医師等への紹介という選択肢もある。それには、まずプリオン病など希少疾患の検索依頼の意味がある。またADのRPDかと思われるケースでは、認知症臨床に経験豊かな先生に診てもらうことは、患者・家族のみならず、非専門医の先生にとっても良いアドバイスが得られるだろう。参考1)Hermann P, et al. Rapidly progressive dementias - aetiologies, diagnosis and management. Nat Rev Neurol. 2022;18:363-376.2)Koval I, et al. AD Course Map charts Alzheimer’s disease progression. Sci Rep. 2021 13;11:8020.

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日本人慢性片頭痛患者におけるフレマネズマブの有効性と安全性

 慢性片頭痛(CM)患者に対し、抗CGRPモノクローナル抗体製剤フレマネズマブによる治療は有効であり、効果発現が早く、忍容性が良好であることが臨床試験で示されている。近畿大学の西郷 和真氏らは、日本人CM患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価するため、2つの臨床試験(Japanese and Korean CM Phase 2b/3、HALO CM Phase 3)のサブグループ解析を実施した。著者らは、「サブグループ解析の限界にもかかわらず一貫した結果が得られており、日本人CM患者に対するフレマネズマブの有効性および忍容性が裏付けられた」と報告している。Journal of Pain Research誌2023年4月20日号の報告。 両試験では、適格基準を満たしたCM患者を、フレマネズマブ皮下投与月1回群、同3ヵ月に1回群、プラセボ群(4週間隔)にランダムに割り付けた(1:1:1)。主要エンドポイントは、初回投与から12週間における、1ヵ月(28日間)当たりの中等度~重度の頭痛日数のベースラインからの平均変化であった(最初の4週間:MMRM分析、12週間:ANCOVA分析)。副次エンドポイントには、薬物使用や障害など、有効性以外の項目も含まれた。 主な結果は以下のとおり。・日本人患者は、Japanese and Korean CM Phase 2b/3試験に479例、HALO CM Phase 3試験に109例が含まれていた。・両試験ともに、ベースラインおよび治療の特徴は、治療群間で類似していた。・ANCOVA分析による主要エンドポイントのサブグループ解析では、日本人CM患者に対するフレマネズマブ治療はプラセボよりも優れていることが実証された(両試験とも、フレマネズマブ3ヵ月に1回:p=0.0005、フレマネズマブ月1回:p=0.0002)。・MMRM分析では、フレマネズマブ治療の効果発現の早さが確認された。・副次エンドポイントの結果では、日本人CM患者に対するフレマネズマブ治療の有効性がさらに裏付けられた。・フレマネズマブは、最も一般的な有害事象である上咽頭炎および注射部位反応に対する忍容性が良好であった。

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薬、運動、食事―減量に最も効果的なのはどれ?

 流行のダイエット法や薬剤は、持続的な減量を保証するものではないとする研究結果が発表された。それらによらずに、健康的な食生活を送り習慣的な運動をしている人が、より良好に体重を維持しているという。米オハイオ州立大学のColleen Spees氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association」に4月7日掲載された。 現在、米国では数多くの人々がGLP-1受容体作動薬の処方を求めたり、断続的断食などの新しい食事療法を始めたりしている。しかし、それらの方法は、良好な体重管理を維持する近道ではない可能性が、解析対象2万人以上の研究の結果として示された。Spees氏は、「ほとんどの人は成人後の数十年をかけてゆっくりと体重が増えていくにもかかわらず、体重を減らそうとするときはしばしば大胆で危険な手段に頼ろうとする。ソーシャルメディア上のインフルエンサーや人気タレントの影響力が大きく、エビデンスに基づいていない減量法を始める人が増加している」としている。 同氏によると、例えば米食品医薬品局(FDA)はGLP-1受容体作動薬(オゼンピック)の減量目的での使用を、肥満に伴う合併症のある場合にのみ承認しているにもかかわらず、糖尿病や肥満関連合併症のない人も使用しているのが実情だとのことだ。同氏は、「GLP-1受容体作動薬の使用を中止すると、使用中に減少した体重が元に戻り、食欲も元に戻る」との解説を付け加えている。 今回のSpees氏らの研究では、2007~2016年の米国国民健康栄養調査に参加した19歳以上の成人2万305人のデータが用いられた。過去12カ月間に、意図的に5%以上の減量を達成していた群2,840人と、その他の群1万7,465人とに二分して、生活習慣や行っている体重管理法などを比較した。その結果、5%以上の減量を達成していた群は、食事の質(P=0.014)、身体活動(P<0.001)、および血清脂質(P<0.001)の指標が、対照群より有意に優れていた。また、対照群は、食事を抜いたり(P=0.002)、減量目的で薬剤を使用している(P<0.001)人の割合が有意に高かった。 Spees氏は、「健康目的で減量を試みようとしている人に対して強調したいことは、たとえ小さな行動の変化であっても、臨床的に意味のある改善をもたらす可能性があるということだ。多くの場合、著しい減量を目指すのではなく、わずか5%ほど減らすことを目標に掲げた方が現実的ではないか」と述べている。 この研究結果は「減量に近道はない」ということを示しているが、本研究に関与していない複数の専門家が、そのような考え方に同意を示している。その1人でワシントンDCにある体重・ウェルネスセンターの所長であるScott Kahan氏は、「多くの人々が、健康的とは言えない流行の減量法に取り組んでいる。それらの中には効果が実証されておらず、危険な方法も存在するという現状を改める必要がある」と語っている。 また、ニューヨークで活動している管理栄養士のRobin Foroutan氏は、「万能の減量法などない」と述べた上で、「今回の報告により、体重管理に成功している人は総じて食事の質が良く、習慣的な運動を行っていることが示された。ただし、果物や野菜の摂取量に関しては、どちらの群にも改善の余地がある」と指摘している。なお同氏は、「このような研究からは実際のところ、どの食品が最も健康に良いのかという情報はあまり得られない。しかしその一方で、健康と長寿に対する運動の重要性は明らかに示されている」と話している。[2023年4月7日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.利用規定はこちら

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自殺念慮の検出に有用な兆候は

 自殺の兆候を有するうつ病患者は、プライマリケアの臨床現場で見逃されることが少なくない。久留米大学の藤枝 恵氏らは、初診から6ヵ月間の中年期プライマリケア患者における自殺念慮を伴ううつ病の予測因子を調査した。その結果、起床時の疲労感、睡眠状態不良、職場の人間関係の問題は、プライマリケアにおける自殺念慮を伴ううつ病の予測因子である可能性が示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年4月17日号の報告。 対象は、日本の内科クリニックを受診した35~64歳の新規患者。自己記入式アンケートと医師のアンケートを用いて、ベースライン特性を収集した。自殺念慮を伴ううつ病は、登録時および6ヵ月後にZungうつ病自己評価尺度(SDS)、気分プロフィール検査(POMS)を用いて評価した。自殺念慮を伴ううつ病の調整オッズ比(aOR)を算出するため、多重ロジスティック回帰分析を用いた。関連因子の感度、特異性、尤度比も算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者387例中13例(3.4%)が6ヵ月時点で自殺念慮を伴ううつ病であると評価された。・性別、年齢、関連因子で調整した後、統計学的に有意な自殺念慮を伴ううつ病のaORが認められた因子は以下のとおりであった。 ●1回/月以上の起床時の疲労感(aOR:7.90、95%CI:1.06~58.7) ●1回/週以上の起床時の疲労感(aOR:6.79、95%CI:1.02~45.1) ●睡眠状態の悪さ(aOR:8.19、95%CI:1.05~63.8) ●職場における人間関係の問題(aOR:4.24、95%CI:1.00~17.9)・本調査は、サンプルサイズが小さかったため、本結果を確認するためには、より多くのサンプルサイズを用いた研究が必要とされる。

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20年間で同じ統合失調症患者に対する薬物治療はどう変化したか

 最近の薬理学的疫学データによると、第2世代抗精神病薬(SGA)単剤療法で治療されている患者の割合が増加していると報告されているが、同じ患者を長期間にわたって分析した研究は、これまでほとんどなかった。獨協医科大学の古郡 規雄氏らは、同じ統合失調症患者に対する薬物療法が20年間でどう変化したかを検討するため、20年間のデータが入手可能な患者を対象とし、レトロスペクティブに評価を行った。その結果、同じ統合失調症患者であっても、20年間でゆっくりではあるが確実に第1世代抗精神病薬(FGA)からSGAへ切り替わっていることが明らかとなった。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年4月17日号の報告。 本研究は、2021年4月に日本の精神科病院15施設で実施された。同じ病院で20年以上治療を行った統合失調症患者を対象に、2001、06、11、16年(5年ごと)の処方データをレトロスペクティブに解析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は716例、2021年時点での平均年齢は61.7歳、女性の割合は49.0%であった。・抗精神病薬単剤療法率は、過去20年間でわずかな増加を認めた。・SGA使用率は、過去20年間で28.9%から70.3%へ顕著な増加がみられたが、SGA単剤療法率は緩やかな増加傾向を示すにとどまった。・過去20年間で抗コリン薬併用率は減少傾向を示したが、抗うつ薬、抗不安薬/睡眠薬、気分安定薬の併用率に変化は認められなかった。

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