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Dr.倉原の 喘息治療の不思議:テオフィリンとコーヒーの関係って?

はじめにテオフィリンは、1888年にドイツ人の生物学者であるアルブレヒト・コッセルが茶葉から気管支拡張作用のある物質を抽出したことから開発が始まりました。テオフィリン、アミノフィリンなどのキサンチン誘導体の作用機序としては、ホスホジエステラーゼ阻害による細胞内cAMPの増加、アデノシン受容体拮抗作用、細胞内カルシウムイオン分布調節による気管支拡張作用、ヒストン脱アセチル化酵素を介した抗炎症作用などの説がありますが、いまだにそのすべては解明されていません。そんな難しいことはさておき、キサンチン誘導体は主に喘息に対して使用されます。慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対しても有効と考えられていますが、欧米諸国ではその効果に懐疑的である医師が多く、日本ほど汎用されていません。Town GI. Thorax. 2005 ;60:709.日本ではテオフィリンは主に長期管理薬として、アミノフィリンは主に発作時の点滴として使われているのが現状です。これらのうち、とくにテオフィリン徐放製剤の処方頻度が高いと思います。当院は他院から紹介される患者さんが多いため、閉塞性肺疾患の患者さんの3割程度はテオフィリン徐放製剤をすでに内服している印象があります。テオフィリンに構造が近いカフェインは、昔から喘息に効果的であると報告されています。Wikipediaによれば、1850年頃には認識されていたようです(大規模な臨床試験はありませんでした)。イギリスのヘンリー・ハイド・サルターが1860年に書いた『On Asthma : Its Pathology and Treatment』の中にコーヒーが気管支喘息に有効であるという記載があります。また、ある地域では小児喘息に対してコーヒーが多用されたという歴史もあるそうです。Sakula A. Thorax. 1985 ; 40: 887–888.私たち若手呼吸器科医にとっては、1980年代にCHEST誌に立て続けに報告された、コーヒーが喘息に対して有効であるという論文が有名です。Gong H Jr, et al. Chest. 1986 ;89:335-342.Pagano R, et al. Chest. 1988;94:386-389.ただ、実臨床で喘息患者さんとコーヒーの関連を意識する状況は皆無です。コーヒー好きにはキサンチン誘導体は禁忌?しかし、呼吸器科を勉強したことがある人ならば「コーヒーを飲んでいる患者さんには、キサンチン誘導体は投与しない方がよい」という格言を一度は聞いたことがあるはずです。これは「テオフィリン中毒」を惹起するからだといわれています。テオフィリンの血中濃度が20~30μg/mLを超え始めると、嘔吐、下痢、頻脈といった症状があらわれることがあります(急性と慢性の中毒で異なる動態を示すのですが詳しいことは割愛します)。重症のテオフィリン中毒になると、痙攣や致死的不整脈をきたすことがあります(図)。高齢者のテオフィリン中毒の場合、抑うつ症状と間違えられることがあるため、怪しいと思ったら必ずテオフィリンの血中濃度を測定してください。Robertson NJ. Ann Emerg Med. 1985;14:154-158.画像を拡大する図. テオフィリン血中濃度と中毒域ちなみに私は呼吸器内科医になってまだ5年しか経っていませんが、有症状のテオフィリン中毒は1例しか診たことがありません。かなりまれな病態だろうと思います。諸説ありますが、カフェインの致死量は約10g程度だろうと考えられています。コーヒー1杯には50 mg、多くて200 mgくらいのカフェインが含まれています。そのため、単純計算では濃いコーヒーならば50杯ほど服用すれば、致死的になりうるということになります。ただし、上記のGongらの報告によればかなり短時間で飲み干さないとダメそうです。どんぶり勘定ですが、1杯あたり30秒~1分くらいの速度で飲み続けると危険な感じがします。わんこそばではないので、そんなコーヒーを次々に飲み干す人はいないと思いますが……。テオフィリンを定期内服している患者さんでは、アミノフィリンの点滴投与量は調節しなければならないことは研修医にとっても重要なポイントです。また、喘息発作を起こす前後にコーヒーを大量に飲んだ患者さんの場合でも同様に、アミノフィリンの点滴は避けたほうがよさそうです。ただし、致死的なテオフィリンの急性中毒に陥るには、想定している血中濃度よりもかなり高いポイントに到達する必要があるのではないかという意見もあります。私自身キサンチン誘導体とカフェインの関連についてあまり気にしていなかったのですが、今年のJAMAから出版された「ビューポイント」を読んで、少し慎重になったほうがよいのかもしれないと感じました。5,000の司法解剖のうち、カフェイン血中濃度10μg/mLを超えるものが1%程度にみられたとのこと。これはカフェイン含有エナジードリンク(コーヒーよりもカフェイン濃度が多い)に対する警鐘なので、一概にコーヒーがよくないと論じているわけではありませんが。Sepkowitz KA. JAMA. 2013;309:243-244.おわりに循環器科医がジギタリスの投与に慎重になるのと同じように、呼吸器科医はキサンチン誘導体の投与に慎重な姿勢をとっています。それはひとえに治療域と中毒域が近接しているからにほかなりません。高齢や肥満の患者さん、マクロライド系・ニューキノロン系抗菌薬を内服している患者さんではテオフィリンの血中濃度が上昇することが知られているため、なおさら注意が必要です。カフェインが含まれている飲料には、コーヒーやエナジードリンク以外にも、緑茶や紅茶があります。もちろんお茶にはそこまで多くのカフェインは含まれていませんが、キサンチン誘導体とカフェインの関連については注意してもし過ぎることはありません。今後の報告に注目したいところです。

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セックスが苦痛に…分娩による肛門括約筋損傷

 分娩時の肛門括約筋損傷(OASI)により持続的な便失禁を認める女性は、大半が性機能障害を抱えていることがオランダ・VU 大学医療センターのA.P.Visscher氏らによる研究で明らかになった。また、内部・外部両方の肛門括約筋裂傷をもつ症例は、外部のみの例よりも便失禁の重症度が高く、肛門の圧力値も低かった。女性たちの今後の人生を考えると、これらの症状の緩和を念頭に置いて治療を行う必要がある。International Urogynecology Journal誌2013年11月7日号の報告。 本研究の目的は、分娩による重症度3のOASI患者における肛門括約筋形成術後の肛門機能の変化を評価することであった。 重症度3a、3b、3cのOASIのために持続的な便失禁(FI)を抱える女性を対象に、1998年から2008年まで記述式の後ろ向き横断的研究を実施した。肛門括約筋形成術から3ヵ月後に肛門内圧測定と超音波内視鏡検査を実施し、直腸肛門機能評価(AFE)を行った。2011年に、便失禁(Vaizey/Wexner)、尿失禁(尿失禁症状・QOL評価質問票:ICIQ-SF)、性機能(女性性機能指数:FSFI)、QOL(36項目健康調査:Rand-36)についてアンケートを行い、再度AFEを受けるか尋ねた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップは平均5.0年であった。・66例がAFEを受け、そのうち40例(61%)が便失禁と尿失禁に関するアンケートに回答した。・便失禁の有病率は、放屁63%、液状便50%、固形便20%であった。・40例中32例がQOLと性機能のアンケートにも回答した。性機能不全は回答した女性の大半が抱えており、OASIの重症度が高いほど顕著であった(カットオフ値26.55)。・40例中16例は、再度AFEを受けた。・内部・外部両方の肛門括約筋裂傷を抱える6例は、外部のみの10例より便失禁の重症度が高く(p<0.050)、肛門の圧力値も低かった(p=0.040)。

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有酸素運動が喘息における白血球を不活性化

 アレルギー性喘息のマウスモデルにおいて、有酸素運動が気管支周辺の白血球を不活性化し、気道炎症やTh2反応を抑制することが、ブラジル・サンパウロのNove de Julho大学のRicardo P. Vieira氏らにより報告された。International Journal of Sports Medicine誌オンライン版2013年11月20日の掲載報告。 白血球は喘息の生理病態学において中心的な役割を果たしており、有酸素運動が喘息により気道に集まる白血球を減少させることが知られている。しかしながら、喘息における白血球活性に対する有酸素運動の効果については、明らかになっていない部分もある。 そこで、気道炎症、肺や全身のTh2サイトカインレベル、炎症促進性・抗炎症性の白血球発現、線維化促進性のメディエーター、酸化体や抗酸化メディエーターに対する有酸素運動の効果を4週にわたり、喘息のマウスによる実験で調査した。 主な結果は以下のとおり。有酸素運動は・気管支肺胞洗浄液中のIL-4、IL-5、IL-13と血清中のIL-5を有意に減少させた(それぞれ、p<0.001)。・気管支肺胞洗浄液中と血清中のIL-10を有意に増加させた(p<0.001)。・白血球の活性化を抑制し、下記項目を有意に減少させた。  Th2サイトカイン(IL-4, IL-5, IL-13; p<0.001)  ケモカイン(CCL5, CCL10; p<0.001)  接着分子(VCAM-1, ICAM-1; p<0.05)  活性酸素種、活性窒素種(GP91phox and 3-nitrotyrosine; p<0.001)  誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS; p<0.001)  核内因子kB (NF-kB; p<0.001) ・抗炎症サイトカインであるIL-10の発現を有意に増加させた(p<0.001)。・増殖因子の発現を減少させた(TGF-beta, IGF-1, VEGF and EGFr; p<0.001)。

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慢性腎臓病における2つのエンドポイントを予防するために

 わが国の慢性腎臓病(CKD)患者数は2005年に1,330万人に達し、成人の8人に1人がCKDといわれている。CKDは、腎機能が悪化すると透析が必要な末期腎不全に進行するだけではなく、心血管疾患の発症リスクが高まる。そのリスク因子であるリンの管理について、2013年11月19日に都内にてプレスセミナーが開催された(主催・バイエル薬品株式会社)。そのなかで、東京大学医学部附属病院 腎疾患総合医療学講座 特任准教授の花房 規男氏は、CKDという概念が提唱された経緯やCKD治療の目的、リンコントロールを介したCKD-MBD(CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常)対策について講演した。CKDの概念とは CKDには糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などさまざまな疾患があるが、どの疾患においても、腎機能の低下は最終的に共通の経路をとる。そのため、CKDとして共通の対策がとられることになる。また、CKDは末期腎不全や心血管合併症という予後に関連する疾患である。CKDの治療目的はこれら2つのエンドポイントの予防であり、早期の対策が望まれる。 CKDは「わかりやすく」をモットーに提唱された概念であり、大きく分けて3つの条件(尿所見をはじめとする腎疾患に関連する異常、eGFR 60mL/min/1.73m2未満、3ヵ月以上継続)を満たす場合に診断される。従来明らかになっていなかった数多くのCKD患者が存在するため、花房氏は「診療は腎臓専門医だけでは難しく、かかりつけ医による診療が重要」と訴えた。CKD対策には生活習慣関連が多い CKDに対する治療介入のなかには、「生活習慣の改善」「食事指導」「高血圧治療」「糖尿病の治療」「脂質異常症の治療」「骨・ミネラル代謝異常に対する治療」「高尿酸血症に対する治療」といった生活習慣に関連する項目が多い。 近年、生活習慣に起因する腎疾患が増加しており、透析患者の原疾患も糖尿病性腎症が増加している。また、BMIが高い患者は末期腎不全に移行しやすいなど、生活習慣とCKDは深く関わっている。そのため、「生活習慣を最初の段階で改善することがポイントである」と花房氏は指摘した。CKD-MBD(CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常)という新たな概念が提唱される 骨・ミネラルについても腎臓と深く関連している。CKDで生じるミネラル代謝異常は、骨や副甲状腺の異常のみならず、血管の石灰化を介して、生命予後に大きな影響を与えることが認識され、CKD-Mineral and Bone Disorder(CKD-MBD:CKDに伴う骨・ミネラル代謝異常)という新しい概念が提唱されている。リンの高値が血管の石灰化をもたらし心血管合併症の原因となるため、CKD-MBD対策として、リンをコントロールし、生命予後の改善および末期腎不全への進行を予防することが重要である。リンをコントロールするには CKD患者のリンをコントロールするには、食事中のリンを減らしたり、リン吸着薬で腸からの吸収を減らすことにより、体の中に入ってくるリンを減らすことが重要である。リンはタンパク質を多く含む食物に多いため、タンパク質を制限すればリンも制限されるはずである。しかし、実際には食事制限だけでは十分ではなく、また食事量低下による低栄養のリスクもあるため、必要に応じてリン吸着薬を使用することが有効である。リン吸着薬には、カルシウム含有リン吸着薬(炭酸カルシウム)とカルシウム非含有吸着薬(炭酸ランタン、セベラマー、ビキサロマー)がある。このうち、炭酸カルシウムが以前より使用されているが、花房氏は「持続的なカルシウム負荷は異所性石灰化を生じ、心血管合併症が発症する可能性がある」と指摘し、「保存期の長い過程においては、カルシウム非含有吸着薬が有効なのかもしれない」と述べた。

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食生活の改善は本当にうつ病予防につながるか

 これまで行われた単体の栄養成分とうつ病との研究では、相反する結果が報告されており、また栄養成分間の複雑な相互作用を考慮することができなかった。最近の研究では、食事の構成要素全体とうつ病の関連を検討している試験が増えている。オーストラリア・Priority Research Centre for Gender, Health and AgeingのJun S Lai氏らが、成人住民ベースで、食事構成とうつ病との関連を評価するシステマティックレビューとメタ解析を行った。American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2013年11月6日号の掲載報告。 研究グループは、2013年8月までに発表された、成人を対象として食事(全構成)とうつ病との関連を調べていた試験を、6つの電子データベースを使って検索した。試験は方法論が厳密であるもののみを対象とした。2名の独立したレビュワーが、試験の選択、質の評価、データの抽出を行い、適格となった試験の効果サイズをランダム効果モデルを用いてプールした。所見サマリーが、試験概要を示しただけのものであったものはメタ解析から除外した。 主な結果は以下のとおり。・合計21試験が特定され、13件の観察研究の結果がプールされた。・食事パターンは、2つが特定された。・解析の結果、健康食(healthy diet)は、うつ病リスクの低下と有意に関連していた(オッズ比[OR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.76~0.92、p<0.001)。・西洋風の食事(Western diet)とうつ病には統計学的に有意な関連はみられなかった(OR:1.17、95%CI:0.97~1.68、p=0.094)。しかしながら、試験数が少なく効果を正確に推定できなかった。・著者は、「果物、野菜、魚、全粒穀物の高摂取は、うつ病リスクの低下と関連している可能性があることが示唆された」と述べたうえで、「より質の高い無作為化比較対照試験とコホート研究を行い、今回の知見、とくに時間的連続性の関連について確認する必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 日本人のうつ病予防に期待、葉酸の摂取量を増やすべき 1日1杯のワインがうつ病を予防 うつ病患者の食事療法、ポイントは「トリプトファン摂取」

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変形性膝関節症による軟骨下骨の骨量減少は、高血圧症や糖尿病と関連

 変形性膝関節症における軟骨下骨の骨量減少が、高血圧症や2型糖尿病と関連している可能性があることが明らかとなった。中国・香港大学李嘉誠医学院のChun Yi Wen氏らが報告したもので、因果関係を確認するために大規模なコホート研究が必要であるとまとめている。Osteoarthritis and Cartilage誌2013年11月号(オンライン版2013年7月29日号)の掲載報告。 研究グループは、高血圧症や2型糖尿病に合併する変形性膝関節症(膝OA)の特性を明らかにすることを目的に、進行期膝OA患者43例を対象として、患者の同意を得たうえで、手術中に脛骨プラトーを採取しマイクロCTならびに組織学的検査等により軟骨下骨の損傷を評価した。 主な結果は以下のとおり。・高血圧症または2型糖尿病を合併している膝OA患者(28例)では、合併していない膝OA患者(15例)と比較して、軟骨下骨の骨量減少[内側脛骨プラトーにおける骨密度低下(p=0.034)およびより高い多孔性(p=0.032)]が認められた。・多変量線形回帰分析の結果、年齢、性別およびBMIで調整後も、高血圧症または2型糖尿病の存在が軟骨下骨の骨密度低下(r2=0.551、p=0.004)および多孔性の増大(r2=0.545、p=0.003)と関連していた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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片頭痛の予防に抗てんかん薬、どの程度有用か

 片頭痛はしばしば慢性化・難治化する疾患である。海外では、重要の片頭痛患者に対し、抗てんかん薬が使用されている。インド・UP Rural Institute of Medical Sciences and ResearchのArchana Verma氏らは、成人の片頭痛予防に対する、抗てんかん薬レベチラセタム(商品名:イーケプラ、本疾患には国内未承認)の有効性および忍容性を評価した。Clinical neuropharmacology誌2013年11-12月号の報告。 片頭痛患者65例を対象とした、前向き無作為化プラセボ対照試験。対象患者は、レベチラセタム(LEV)群32例、プラセボ群33例に無作為に割り付けられた。試験完了症例数は、LEV群25例、プラセボ群27例であり、13例は早期に試験を中止した。LEVは250mg/日から投与を開始し、1週間おきに250mgずつ追加し、最終投与量である1000mg/日まで増量した。観察期間は3ヵ月間。 主な結果は以下のとおり。・LEV群ではプラセボ群と比較し、片頭痛の頻度(1ヵ月当たりの回数)が有意に減少し(ベースライン時5.17回[SD:1.19]→最後の4週間2.21回[1.47])、重症度も有意に減少した(2.75[0.44]→1.29[0.75])。・また、LEV群ではプラセボ群と比較し、症状コントロールのために使用する対症療法薬の投与量も有意に減少した(p<0.0001)。・頭痛頻度が50%以上減少した患者の割合は、LEV群64%、プラセボ群22%であった。・成人片頭痛患者へのレベチラセタム投与は、頭痛の頻度や重症度を改善し、対症療法薬の使用も軽減できることが示された。関連医療ニュース てんかん患者の頭痛、その危険因子は:山梨大学 抗てんかん薬による自殺リスク、どう対応すべきか 「片頭痛の慢性化」と「うつ」の関係

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出生後1年間の抗菌薬暴露が小児期~若年成人期の湿疹に影響

 出生後1年の間に抗菌薬に曝露された小児は、0~25歳時に湿疹を有するリスクが1.4倍高く、出生前の胎児期の曝露よりも湿疹を呈する頻度が高いことが明らかにされた。英国・Guy's and St Thomas' Hospital NHS財団トラストのT. Tsakok氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。これまで先行研究の多くで、誕生後間もない時期に抗菌薬に曝露されると、湿疹を呈するリスクが高まることが示唆されていた。British Journal of Dermatology誌2013年11月号の掲載報告。 研究グループは、先行研究で示唆された、抗菌薬曝露と湿疹リスクの増大について、胎児期の曝露または生後12ヵ月間での曝露について調べることを目的に、本検討を行った。 レビューは、両期間の曝露が、0~25歳の小児期~若年成人期にもたらす影響について評価していた観察研究を対象に行った。 主な結果は以下のとおり。・検索にて選定した20試験について、抗菌薬の出生前および出生後曝露と、湿疹発生との関連を調べた。・出生後の抗菌薬治療と湿疹発生との関連を評価していた試験は17件あった。それらのプールオッズ比(OR)は、1.41(95%信頼区間[CI]:1.30~1.53)であった。・追跡調査にて検討していた10試験のプールORは、1.40(95%CI:1.19~1.64)であった。それに対して、断面調査にて検討していた7件のプールORは、1.43(同:1.36~1.51)であった。・出生後の曝露には、有意な用量反応関係が認められた。・出生後1年の間に抗菌薬投与を受けるたびに、湿疹リスクは7%上昇することが示された(プールOR:1.07、95%CI:1.02~1.11)。・出産前の抗菌薬曝露と湿疹発生との関連を評価していた試験は4件で、プールORは1.30(95%CI:0.86~1.95)であった。・上記の結果を踏まえて著者は、「抗菌薬の曝露が、出生前ではなく出生後の1年間にあるほうが、湿疹を有する小児の頻度は高いと結論する」とまとめている。

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精神症状を有するパーキンソン病にピマバンセリンは有用/Lancet

 精神症状を有するパーキンソン病患者に対し、セロトニン5-HT2A受容体選択的拮抗薬ピマバンセリンは陽性症状を改善することが、第3相臨床試験の結果、報告された。米国・Cleveland Clinic Lou Ruvo Center for Brain HealthのJeffrey Cummings氏らが発表した。パーキンソン病患者では精神症状(幻覚や妄想を含む)を有する頻度が半数以上と高く、同患者の衰弱の要因になっているが難治性である。今回の結果を受けて著者は「治療法がほとんどない精神症状を有するパーキンソン病患者に、ピマバンセリンは有用である可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2013年11月1日号掲載の報告より。試験開始後43日目のSAPS-PDスコアの変化を比較 研究グループは、2010年8月~2012年8月にかけて、米国とカナダの医療機関を通じ、パーキンソン病で精神症状のある40歳以上の患者199例を対象に、二重盲検無作為化比較試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはピマバンセリンを40mg/日、もう一方にはプラセボを、それぞれ投与した。 試験開始後15日、29日、43日にそれぞれ評価を行った。主要評価項目は、試験開始43日後のパーキンソン病患者向けに改変した陽性症状評価尺度(SAPS-PD)スコアの変化だった。 被験者の平均年齢は72.4歳、女性の割合はプラセボ群が42%、ピマバンセリンが33%だった。ピマバンセリン群でプラセボ群に比べSAPS-PDスコアが約3ポイント減少 被験者のうち、プラセボ群90例、ピマバンセリン群95例について分析を行った。その結果、ピマバンセリン群では試験開始43日後のSAPS-PDスコアの変化は-5.79だったのに対し、プラセボ群では-2.73と、その格差は-3.06だった(95%信頼区間:-4.91~-1.20、p=0.001、Cohen's d=0.50)。 有害作用により服用を中止したのは、ピマバンセリン群では10例で、そのうち4例は服用後10日以内の精神障害または幻覚によるものだった。一方プラセボ群では、服用を中止したのは2例だった。 全体としては、ピマバンセリンの忍容性は良好で、安全性や運動機能悪化に対する有意な懸念はみられなかった。

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日本人における膝痛・腰痛の有病率と危険因子~全国9地域1万2,019人のデータより

 超高齢社会となったわが国では、高齢者のQOL維持や健康寿命の延長、医療費低減のために、筋骨格系疾患の予防対策が急がれる。しかしながら、本疾患の疫学エビデンスの集積はまだ十分ではない。東京大学医学部附属病院22 世紀医療センターの吉村 典子氏らは、全国9地域の1万2,019人の情報を統合したThe Longitudinal Cohorts of Motor System Organ(LOCOMO)スタディのデータを用い、膝痛と腰痛(およびその共存)について、有病率や関連因子を報告した。Journal of Bone and Mineral Metabolism誌オンライン版2013年11月9日号に掲載。 LOCOMOスタディは、筋骨格系疾患の予防を目的に設けたいくつかのコホートからの情報を統合するために、厚生労働省より助成金を受け2008年に開始された研究である。 著者らは、東京(2地域)、和歌山(2地域)、広島、新潟、三重、秋田、群馬の各都県に位置する9地域を含むコホートで1万2,019人(男性3,959人、女性8,060人)の情報を統合し、評価した。LOCOMOスタディのベースライン調査では、インタビュアーによるアンケート、身体計測、医療情報の記録、X線撮影、骨密度測定が行われた。 ベースライン調査の主な結果は以下のとおり。・膝痛の有病率は32.7%(男性27.9%、女性35.1%)、腰痛の有病率は37.7%(男性34.2%、女性39.4%)であった。・ベースライン調査で膝痛・腰痛の両方について調査された9,046人のうち、どちらの痛みもある人は12.2%(男性10.9%、女性12.8%)であった。・ロジスティック回帰分析により、「高齢」「女性」「高BMI」「農村地域居住」「腰痛あり」が、「膝痛あり」に有意に影響していることが示された。同様に、「高齢」「女性」「高BMI」「農村地域居住」「膝痛あり」は、「腰痛あり」に有意に影響していた。

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うつ病患者の予後を予測するセロトニン関連遺伝子多型

 セロトニン経路は、抗うつ薬が効果を発揮する際にきわめて重要な役割を担っており、セロトニン受容体およびトランスポーター遺伝子の多型が重要な因子として特定されてきた。ドイツ・ミュンヘン工科大学のJulia Staeker氏らは、うつ病患者の臨床アウトカムの予測に有用な遺伝子多型を明らかにするため、自然的臨床試験のデータを用いて検討を行った。その結果、セロトニン経路の受容体およびトランスポーター多型が、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の効果ならびに副作用と関連していることを報告した。Genetic Testing and Molecular Biomarkers誌オンライン版2013年11月5日号の掲載報告。 研究グループは、臨床アウトカムの予測に有用な遺伝子多型を明らかにするため、自然的臨床試験において検討を行った。精神科入院患者273例の効果と副作用に関して、5-hydroxytryptamine transporter(5-HTT)の縦列反復変数(variable number of tandem repeats:VNTR)、5-HTTLPR/rs25531、5-HTR2A intron 2 SNPの影響を調べた。Clinical Global Impression(CGI)、Paranoid-Depression Scale (PD-S)、自己評価尺度およびDosage Record, and Treatment Emergent Symptoms(DOTES)Scaleなどの尺度を用いて評価した。  主な結果は以下のとおり。・SSRIによる治療を受けている患者100例において、5-HTTLPR/rs25531 S/LGアレルと効果および副作用との間に有意な関連が認められた(CGI-I≦2:0%vs. 19%、p=0.037/DOTES cluster c:0.76 vs. 0.19、p=0.0005)。・5-HTT VNTRおよび5-HTR2A intron 2 多型は、選択的および非選択的SRIの治療を受けている患者の副作用と有意に関連していた(5-HTT VNTR 12/12:170例、副作用発現率:51% vs. 19%、p=0.0001/rs7997012[A/A]:50例、副作用発現率:43% vs. 11%、p=0.020)。・ミルタザピン治療に関しては、遺伝子多型の影響はみられなかった。・セロトニン経路の受容体およびトランスポーターの遺伝子多型が、SSRIの効果と副作用に影響を及ぼすことが確認された。今回の結果は、さまざまな試験デザインで実施されたこれまでの試験の結果を支持するものであった。今回のような自然的研究でも明確な結果が臨床的に確認されたが、遺伝子多型の状況を治療前にスクリーニングすることの臨床的有用性に関しては、無作為化対照試験により明らかにする必要があると、著者は最後にまとめている。関連医療ニュース 各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学 うつ病の寛解、5つの症状で予測可能:慶應義塾大学 抗うつ薬の効果発現を加速するポイントは

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膝関節の軟骨変性や関節炎を関節表面の電位で評価する新しい技術

 electroarthrography(EAG)は、関節負荷によって誘発される膝表面の電位を測定する新しい方法である。カナダ・モントリオール理工科大学のAnne-Marie Preville氏らは、EAGの信号は、圧縮された関節軟骨において生成された流動電位から発生していることを明らかにした。そのうえで「EAGは関節軟骨の変性や関節炎を非侵襲的に評価するための有望な新技術である」とまとめている。Osteoarthritis and Cartilage誌2013年11月号(オンライン版2013年7月9日号)の掲載報告。 研究グループは、EAGが関節軟骨の変性の評価に有用かどうかを検討する目的で臨床試験を行った。 対象は、無症状の被験者(対照群)20例、片側のみ人工膝関節置換術(TKR)を受けた両側性変形性膝関節症患者(OA群)20例であった。 片膝の内側4ヵ所(関節ラインに2ヵ所、その上に1ヵ所および下に1ヵ所)、外側4ヵ所(同上)、計8ヵ所に電極を装着し、関節に負荷がかかるよう他方の足から体重を移動してEAGを記録した。OA群では、TKRを施行した膝と、もう一方の膝の両方でEAGを測定した。 主な結果は以下のとおり。・反復測定によりEAGの再現性が確認された。・内側の3ヵ所(関節ラインの2ヵ所と、その下の1ヵ所)の電位はOA群に比べ対照群で有意に高かった。・TKRを施行した膝の電位はゼロであった。・対照群において、EAG振幅と年齢、体重、身長またはBMIとの間の相関関係や、EAG平均値の男女差は認められなかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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変形性関節症への全人工関節置換術、心血管保護効果を確認/BMJ

 股関節または膝関節の中等度~重度変形性関節症患者に対する待機的全人工関節置換術により、重症心血管イベントの発生リスクが低下することが、カナダ・トロント大学のBheeshma Ravi氏らの検討で示された。身体活動性の低下は心血管リスクを増大させる因子であることが示唆されている。65歳以上の40%以上に身体活動性の低下がみられ、その原因の多くを変形性関節症が占める。全人工関節置換術は変形性関節症患者の疼痛、運動能、歩行能、QOL、全般的な身体機能を改善するが、心血管リスクへの影響は不明であった。BMJ誌オンライン版2013年10月30日号掲載の報告。心血管リスクの抑制効果をランドマーク解析で評価 研究グループは、股関節または膝関節に対する全人工関節置換術が、中等度~重度の変形性関節症患者における重症心血管イベントを抑制するかを検証するために、傾向スコア・マッチング法を用いたランドマーク解析を行った。 1996~1998年に、カナダ・オンタリオ州で年齢55歳以上の股関節または膝関節の変形性関節症患者2,200例(年齢中央値71歳、女性72.0%)を登録し、死亡または2011年まで前向きに追跡した。ベースラインから3年以内に、待機的な初回全人工関節置換術を受けた患者と、受けなかった患者において、重症心血管イベントの発生状況を比較した。 傾向スコアをマッチさせたコホートとして、153組の置換術施行例と非施行例、合計306例が解析の対象となった。試験開始日をランドマークとして、中央値7年間追跡した。イベントが約40%低下、絶対リスク減少率は約12% 7年間に、全体で111件(36.3%)の心血管イベントが発生した。 3年以内に全人工関節置換術を受けた患者は、非施行群に比べ重症心血管イベントの頻度が有意に低かった(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.43~0.74、p<0.001)。また、7年間の絶対リスク減少率は12.4%(95%CI:1.7~23.1)で、治療必要数(NNT)は8例(95%CI:4~57)であった。 膝関節の全人工関節置換術を受けた94例は、非施行の94例に比べ重症心血管イベントの頻度が有意に低かった(HR:0.46、95%CI:0.29~0.75、p=0.0017)。しかし施行群で男性が有意に多く(26.6 vs 19.1%、standardized difference:18%)、両群間のバランスがとれていなかった。一方、股関節の全人工関節置換術を受けた49例は、非施行の49例に比べ重症心血管イベントの頻度が有意に低かった(HR:0.61、95%CI:0.38~0.99、p=0.0442)が、施行群で年齢が高く(70 vs 68歳、standardized difference:16%)、また平均BMIも高い値を示し(32.8 vs 29.2、standardized difference:32%)、バイアスの可能性が残された。 著者は、「股関節または膝関節の中等度~重度変形性関節症患者に対する3年以内の待機的初回全人工関節置換術の心血管保護効果が確認された」とまとめ、「本研究は観察試験であるが、傾向スコア・マッチング法を用いることで交絡因子を調整し、有効性を示すことができた。われわれの知る限り、これは全人工関節置換術の心血管保護効果を示した初めての研究である」と報告している。

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糖尿病患者、約8割に皮膚疾患

 糖尿病患者の皮膚疾患と皮膚以外の疾患との関連について、同患者における皮膚疾患は約8割に認められ、そのうち半数近くが皮膚感染症であったこと、また腎障害との関連が深い皮膚疾患の特徴や、血糖値と皮膚疾患との関連などが明らかにされた。トルコ・Ataturk Training and Research HospitalのDuriye Deniz Demirseren氏らが、患者750例を前向きに登録調査し報告した。結果を踏まえて著者は、「皮膚疾患は、糖尿病患者において微小血管合併症の有無を知る手がかりとなりうるだろう」と結論している。American Journal of Clinical Dermatology誌オンライン版2013年10月18日号の掲載報告。 糖尿病患者における皮膚疾患とそれ以外の疾患との関連は明らかになっていない。研究グループは、同患者における皮膚疾患と糖尿病性神経障害、腎症、網膜症との関連を調べることを目的に、750例の患者を前向きに登録し分析した。 人口統計学的および臨床的特性、皮膚疾患、HbA1c値および神経障害、腎症、網膜症について調べた。 主な結果は以下のとおり。・被験者(750例)のうち、38.0%の患者が神経障害を、23.3%が腎症を、22.9%が網膜症を有していた。・皮膚疾患を有していた患者は79.2%(594例)であった。・皮膚疾患のうち最も多かったのは、皮膚感染症(47.5%)、次いで乾皮症(26.4%)、炎症性皮膚疾患(20.7%)であった。・腎症を有する患者においては、皮膚感染症、真菌性感染症、糖尿病性足病変、ルベオーシス(顔面)、色素性紫斑が、腎症を有さない患者と比べて多かった。・神経障害を有する患者では概して、皮膚感染症、糖尿病性足病変、ルベオーシス(顔面)、糖尿病性皮膚障害がみられた。・網膜症を有する患者では、真菌性感染症、糖尿病性足病変、ルベオーシス(顔面)、糖尿病性皮膚障害、色素性紫斑の頻度が高かった。・HbA1c値が8mmol/mL以上の患者では、同値が8mmol/mL未満の患者より皮膚疾患を有する患者が有意に多かった(p<0.05)。

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第20回 診療ガイドライン その3:望まれる診療ガイドラインのかたち

■今回のテーマのポイント1.検察官には診療ガイドラインの「行間」を読むことはできない2.したがって、素人が読んでも理解できるようなガイドラインを作成することが肝要である3.システムエラー型であることを明記した事故報告書を作成しても、刑事訴追されるのがわが国の現状である。速やかにWHOドラフトガイドラインに即した事故調査制度に変更しなければならない事件の概要44歳女性(X)。乳がんと診断されたため、平成20年4月、左乳房部分切除術実施目的にてA病院に入院しました。手術当日午前8時55分。Xに対し、麻酔科医であるY医師が麻酔導入を行いました。その結果、Xは、人工呼吸器管理下に置かれ、自発呼吸のできない意識消失・鎮痛・筋弛緩状態となりました。Y医師は、Xに対する麻酔導入が終わり、バイタルサインも安定したことから、インチャージ(責任者)として別の手術室で後期研修医の麻酔導入を指導・補助するため、9時7分頃、手術室を出ました。なお、Y医師は、連絡用のPHSを携帯しており、手術室を出る際、看護師に対し、「インチャージのため退室するが、何かあったら知らせてほしい」と告げていました。9時15分頃、執刀医であるZ医師は、Y医師が不在のまま、看護師に手術台の高さおよび角度の調整をさせ、手術を開始しました。9時16分頃、Xに酸素を供給していた蛇管が麻酔器の取付口から脱落し、Xへの酸素供給が遮断されてしまいました。しかし、蛇管の脱落あるいはそれによるXの状態の異変に気が付く者はいませんでした。9時31分頃、看護師が、モニター上にSpO2の表示がないことに気付き、執刀医であるZ医師に伝えるとともに、PHSでその旨をY医師に伝えました。連絡を受けたY医師は、直ちに手術室に引き返したところ、蛇管が麻酔器から脱落しているのを発見しました。9時34分頃、直ちに用手換気に切り替えるなど応急措置を行いましたが、9時37分頃、Xは心肺停止となりました。Z医師や応援に駆け付けた医師らによる蘇生措置により、心拍の再開は得られたものの、Xには、低酸素脳症による高次脳機能障害および四肢不全麻痺が残ることとなりました。これに対し、横浜区検は、Y医師を「Xの身体の状態を目視するほか、同人に装着されたセンサー等により測定・表示された心拍数・血圧・酸素飽和度等を注視するなどの方法で同人の全身状態を絶え間なく看視し、異変があれば適切に対処すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、同日午前9時7分頃、漫然と同室から退室して約27分間にわたって前記手術室を不在にし、その間、同人の全身状態を看視するなどせずに放置した過失により、Xに完治不能の低酸素脳症に基づく高次脳機能障害及び四肢不全麻痺の傷害を負わせた」として、起訴(刑事訴追)しました。事件の判決検察官は、(1)麻酔担当医である被告人は、Xに全身麻酔を施したことにより、Xを自発呼吸のできない意識消失・鎮痛・筋弛緩状態にしたのであるから、Xの生命維持のため、呼吸管理をするなどして、Xの全身状態を適切に維持・管理することが不可欠となった、(2)したがって、被告人には、Xの身体の状態を目視するほか、Xに装着されたセンサー等により測定・表示された心拍数等を注視するなどの方法で、Xの全身状態を絶え間なく看視すべき業務上の注意義務があると主張するので、これについて付言する。(1)の点は、一般論としては、全くそのとおりである。しかも、(1)でいう、患者の全身状態を適切に維持・管理することが、麻酔担当医の役割であることも、異論はない。ここまでは、弁護人も認めるところである。しかし、そうであるからといって、(2)のように、麻酔担当医が、常時、手術室にいて、患者の全身状態を絶え間なく看視すべきであるとして、具体的な注意義務を導くのは、余りにも論理が飛躍しているというほかない。(1)のような事情は、別に本件に特有のものではなく、他の全身麻酔が行われる場合にも、共通していえることである。それでは、我が国の麻酔担当医が、当該医療機関での職務の体制や患者の容態、麻酔や手術の進行状況を問わず、全身麻酔をした患者に対し、手術室にいて絶え間ない看視をしているかといえば、決してそうではない(少なくとも、そうであるとの立証は、本件では全くされていない。)。確かに、検察官が援用する日本麻酔科学会作成の「安全な麻酔のためのモニター指針」によると、麻酔中の患者の安全を維持確保するため、「現場に麻酔を担当する医師が居て、絶え間なく看視すること。」という指針の記載がある。しかし、このモニター指針は、モニタリングの整備を病院側に促進させようという目的から作成されたものであり、麻酔科学会として目標とする姿勢、望ましい姿勢を示すものと位置づけられている(甲医師証言)。すなわち、この指針に適合せず、絶え間ない看視をしなかったからといって、許容されないものになるという趣旨ではない。なお、乙医師及び丙医師は、麻酔科医は絶え間ない看視を行うべきであるとの見解を、証人として述べているが、これは、麻酔科医が専門家として追求すべき手術中の役割は何かといった観点からの見解であって、我が国での麻酔科医の実情を述べるものではない。以上みてきたところによると、手術室不在という被告人の行動は、その不在時間の長さ(手術室に戻るまでに約27分間、蛇管が外れたときまででも、約9分間)からして、インチャージの担当として後期研修医の指導・補助をしていたという事情があったとはいえ、いささか長過ぎたのではないかとの問題がなくはないが、被告人の置かれた具体的状況、更には当時の我が国の医療水準等を踏まえてみたとき、刑事罰を科さなければならないほどに許容されない問題性があったとは、到底いいがたい。したがって、本件事故について、被告人には、検察官が主張するような、常時在室してBの全身状態を絶え間なく看視すべき業務上の注意義務を認めることはできない。以上のとおりであるから、被告人には、本件事故について過失は認められないから、本件公訴事実については、犯罪の証明がないことに帰着し、刑訴法336条により、被告人には無罪の言渡しをする。(*判決文中、下線は筆者による加筆)(横浜地判平成25年9月17日)ポイント解説予定では、各論の4回目となるところでしたが、診療ガイドラインに関する重要な判決が出ましたので、今回は「診療ガイドライン その3」として紹介させていただきます。本事例では、日本麻酔科学会が作成した「安全な麻酔のためのモニター指針」に、麻酔中の患者の安全を維持確保するため、「現場に麻酔を担当する医師が居て、絶え間なく看視すること」と記載されていたことから、検察は、Y医師を刑事訴追したものと考えられます。しかしながら、判決にも記載されているように、医師不足が問題となっているわが国の医療現場において、同ガイドラインが勧告する「麻酔科医が絶え間なく看視すること」をすべての医療機関・手術室において実施することが不可能であることはご存じのとおりです。したがって、少しでも医療現場を知っている者が本ガイドラインを読めば、このガイドラインが述べているのは「あるべき理想的な姿」であって、将来的にそれに近づくことが望まれるものの、現在の医療現場においてそれを義務づけると、行える手術件数が著しく低下する結果、手術が受けられず死亡する患者が多数生じてしまうことから、現状における本ガイドラインの記載は、あくまで「目標」、「道標」に過ぎないと読み取ることができます。ですが、検察は、医療の素人ですし、医療現場を知りませんので、この医療従事者ならば当然把握できる「行間」を読むことができません。その結果、検察は、本ガイドラインの字面だけを捉え、Y医師を刑事訴追してしまったのです。裁判の結果、Y医師は無罪となりましたが、裁判中のY医師の心労は計り知れないものであったと思われます。このような不幸な事態が生じないよう、ガイドラインの作成に当たっては、その記載内容が医療従事者以外の者、特に検察官、弁護士に読まれることを十分に意識して作成する必要があるといえます。なお、報道によると、「毛利晴光裁判長は、言い渡しの後、『捜査が十分ではないのに起訴した疑いが残る。このような捜査処理がないことを望む』と検察側に注文をつけた」(読売新聞 2013年9月17日)と報道されており、現在でも裁判所が、医療現場に対する刑事司法の介入に謙抑的な姿勢を持っていることがうかがえます。本事例では、院内事故調査が行われ、事故調査報告書が公表されています。平成20年12月に作成された事故調査報告書では、「7.再発防止に向けた提言」において、1麻酔科医、外科医、看護師間の役割分担、連携が十分でなかったこと。さらに、麻酔科医不在時における全身管理の取り決めがないこと2麻酔器及び生体情報モニターに関する教育が不足していたこと3医師は経験を優先し、マニュアル等を重要視しないことがあること以上3つの根本原因を前提に、次のとおり再発防止策を提言する。と示しており、「8.終わりに」において、「今回の事故は、技術の巧拙の問題ではなく、それぞれの職種間あるいは個人の間の連携や意思疎通が十分でなかったこと、麻酔器モニターなど機器への慣れや過信等が根本的な原因であると考え、再発防止策を提言した。今後、病院をあげてこうした取組を進め、安全で安心な医療を確立しなければならない。特に医師は、指針やマニュアルが継続して遵守され、質の高い医療を提供していくよう、その中心となって取り組むよう要請する」と示し、本事例は、システムエラー型の事案であり、誰か特定の個人の責任に帰せしめることは適当ではない旨を示していたものの、残念ながら刑事訴追がなされてしまいました。本事故調査報告書に記載されているように、今後、同種事例が発生しないためにも、医療機関において改善すべき点はいくつもあります。したがって、本事例は広く知識として共有されるべきものと思われます。しかしながら、当事者が正直に話した結果、刑事訴追されるとすれば、だれも事故調査において正直に話せなくなってしまいます。本事例のような事故調査報告書の記載でも、刑事訴追がなされるのであれば、現状の事故調査システム自体に欠陥があると言わざるを得ません。「WHO draft guidelines for adverse event reporting and learning systems」にも明記されているとおり、報告制度によって処罰されないこと(non-punitive)、そのためには情報が秘匿(confidential)されなければならないことという世界標準に沿った事故調査システムが、速やかに構築されなければいけません。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)横浜地判平成25年9月17日

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統合失調症の発症は予測できるか、ポイントは下垂体:富山大学

 富山大学の高橋 努氏らは、精神病発症危険状態(at-risk mental state:ARMS)の人においても、統合失調症患者でみられるような下垂体体積の増大が認められることを、MRIを用いた調査の結果、明らかにした。統合失調症で報告されている下垂体体積の増大は、視床下部-下垂体-副腎機能の亢進を示すものとされている。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌2013年11月号の掲載報告。 研究グループは、ARMSの22例(男性11例、女性11例)と初回エピソード統合失調症患者64例(FE統合失調症群:男性37例、女性27例)、健常対照86例について、MRIを用いて下垂体の体積を調べた。対照群の被験者は、年齢および性を適合させて、ARMS群(男性11例、女性11例)とFE統合失調症群(男性37例、女性27例)に分けられた。  主な結果は以下のとおり。・ARMS群とFE統合失調症群は、適合対照群と比較して、下垂体体積がより大きかった。・下垂体体積について、ARMS群とFE統合失調症群の間に差は認められなかった。・ARMS群とFE統合失調症群いずれにおいても、下垂体体積と臨床変数(スキャニング時の症状、抗精神病薬の1日投薬量または期間)との間に関連性はなかった。・下垂体体積は、その後に統合失調症を発症したARMS被験者(5例)と、発症しなかったARMS被験者(17例)の間に有意な差はなかった。・下垂体体積は、全被験者(ARMS群とFE統合失調症群)において、男性よりも女性のほうがより大きかった。・以上の結果から、ARMSとFE統合失調症の両者において認められる下垂体体積の増大は、精神疾患早期のストレスに対する一般的な脆弱性の指標となる可能性が示唆された。・大集団ARMSを対象としたさらなる検討を行い、下垂体体積と精神疾患発症との関連について調べる必要がある。関連医療ニュース 統合失調症、双極性障害の家族特性を検証! 初回エピソード統合失調症患者に対する薬物治療効果の予測因子は 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定

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非定型うつ病ではメタボ合併頻度が高い:帝京大学

 抑うつ症状とメタボリックシンドローム(MetS)との関連については依然議論のあるところである。帝京大学医学部衛生学公衆衛生学講座の竹内 武昭氏らは、日本人男性における抑うつ症状とMetSの関連について、非定型うつ病またはそれ以外の大うつ病性障害(MDD)に分けて検討を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌2013年11月号(オンライン版2013年10月23日号)の掲載報告。 本研究は、MetSと抑うつとの関連を明らかにし、非定型うつ病の特徴を考察することを目的とした。対象は、20~59歳の日本人男性1,011例。Metは、International Diabetes Federation (IDF)の基準に従い診断した。MDDは、DSM-IVに基づく面接で診断し、非定型とそれ以外に分類した。MDDなし群、非定型うつ病群、非定型以外のMDD群におけるMetSの頻度を傾向解析により比較検討した。多重ロジスティック回帰解析により、MetSと非定型うつ病との関連ならびにその特徴を検討した。 主な結果は以下のとおり。・141例(14.0%)がMetS、57例(5.6%)がMDD(非定型うつ病群14例、非定型以外のMDD群43例)と診断された。・MetSの頻度は非定型うつ病群で最も高く、次いで非定型以外のMDD群、MDDなし群の順であり、わずかに有意な傾向がみられた(p=0.07)。・MetSが抑うつに関連する補正後オッズ比は、非定型うつ病群では3.8(95%信頼区間[CI]:1.1~13.2)、非定型以外のMDD群では1.6(95%CI:0.7~3.6)であった。・非定型うつ病の5つの特徴の中で、MetSと関連が認められたのは過食のみであった(オッズ比:2.7、95%CI:1.8~4.1)。・以上より、MetSと非定型うつ病の間に正の関連が認められたが、非定型以外のMDDとの間には関連がみられなかった。過食は、MetSと非定型うつ病の関連に影響を及ぼす明らかに重要な因子だと思われた。関連医療ニュース うつ病に対するアリピプラゾール強化療法、低用量で改善 ヨガはうつ病補助治療の選択肢になりうるか 各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学

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関節への培養幹細胞注入は安全

 整形外科領域において、関節病変に対する幹細胞治療が期待されている。筋骨格系障害は非致命的な疾患であるため、幹細胞治療は安全性が必要条件となるが、オランダ・エラスムス大学医療センターのC.M.M. Peeters氏らはシステマティックレビューにより、関節への培養幹細胞注入は安全であることを報告した。潜在的な有害事象に十分注意しながら、幹細胞の関節内注入療法の開発を続けることは妥当と考えられる、と結論している。Osteoarthritis and Cartilage誌2013年10月号(オンライン版2013年7月4日号)の掲載報告。 システマティックレビューは、PubMed、EMBASE、Web of ScienceおよびCINAHLを用い、2013年2月までに発表された培養増殖幹細胞の関節内注入療法に関する論文を検索して行った。 条件を満たした論文は8本特定され、合計844例の有害事象を解析した(平均追跡期間21ヵ月間)。 主な結果は以下のとおり。・すべての研究で、軟骨修復および変形性関節症の治療のために自家骨髄間葉系幹細胞が使用されていた。・重篤な有害事象は4例報告された。骨髄穿刺後の感染症1例(おそらく関連あり、抗菌薬で回復)、骨髄穿刺2週後に発生した肺塞栓症1例(おそらく関連あり)、腫瘍2例(2例とも注入部位とは異なる場所に発生、関連なし)。・治療に関連した有害事象は、ほかに22例報告され、うち7例が幹細胞生成物と関連ありとされた。・治療に関連した主な有害事象は、疼痛や腫脹の増加と骨髄穿刺後の脱水であった。・疼痛や腫脹の増加は、幹細胞生成物と関連ありと報告された唯一の有害事象であった。・以上を踏まえて著者は、「直近の文献レビューの結果、関節病変に対する幹細胞治療は安全であると結論する」と述べ、「潜在的な有害事象への注意は引き続き必要と考えるが、幹細胞の関節内注入療法の開発を続けることが妥当と考えられる」とまとめている。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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栄養補助食品は産後のうつ病予防に有用か

産後の抑うつ症状を予防するとされる代表的な栄養補助食品として、ω-3脂肪酸、鉄、葉酸、s-アデノシル -L-メチオニン、コバラミン、ピリドキシン、リボフラビン、ビタミンD、カルシウムなどが挙げられる。オーストラリア・Flinders Medical CentreのBrendan J Miller氏らは、産前・産後における抑うつ症状の予防に有益な栄養補助食品を探索するため、Cochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Registerから抽出した2件の無作為化対照試験のデータをレビューした。その結果、セレニウム、DHAあるいはEPAに関する産後抑うつ予防におけるベネフィットは示されず、現時点において、推奨されるエビデンスのある栄養補助食品はないと報告した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2013年10月24日号の掲載報告。 2013年4月30日時点のCochrane Pregnancy and Childbirth Group's Trials Registerを用い、妊娠中の女性または出産後6週以内の女性で、試験開始時に抑うつ症状なし、または抗うつ薬を服用していない者を対象とした無作為化対照試験を検索した。栄養補助食品の単独使用、またはその他の治療と併用して介入した場合の成績を、その他の予防治療、プラセボ、標準的なケアと比較した。主な結果は以下のとおり。・2件の無作為化対照試験が抽出された。【試験1の概要】・酵母由来セレニウム錠100µgとプラセボを、妊娠初期3ヵ月から出産まで経口投与した際の有用性を検討した比較試験。・179人が登録され、セレニウム群とプラセボ群にそれぞれ83人が無作為化された。アウトカムデータが得られたのは85人にとどまった。 ・セレニウム群では61人が試験を完了し、44人でエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)による評価が得られた。プラセボ群では64人が試験を完了し、41人でEPDSによる評価が得られた。・セレニウム群ではEPDSスコアに影響がみられたが、統計学的に有意ではなかった(p=0.07)。・産後8週間以内の自己報告EPDSにおける平均差(MD)は、-1.90(95%信頼区間[CI]:-3.92~0.12)であった。・脱落例が多かったこと、EPDSを完了しなかった者が多数であったため、大きなバイアスが確認された。・副次アウトカムに関する報告はなかった。 【試験2の概要】・EPA、DHA、プラセボの比較試験。・産後抑うつのリスクにさらされている126人を、EPA群42人、DHA群42人、プラセボ群42人の3群に無作為化した。・EPA群の3人、DHA群の4人、プラセボ群の1人は追跡不能であった。登録時に大うつ病性障害、双極性障害、薬物乱用または依存、自殺企図または統合失調症を有する女性は除外された。ただし、介入中止例(EPA群5人、DHA群4人、プラセボ群7人)は、追跡可能であったためintention-to-treat解析に含めた。・服用期間(栄養補助食品またはプラセボ)は、妊娠12~20週から最後の評価時である出産後6~8週までであった。主要アウトカムは、5回目(出産後6~8週)の受診時におけるベックうつ病評価尺度(BDI)スコアであった。・産後抑うつの予防について、EPA-リッチ魚油サプリメント(MD:0.70、95%CI:-1.78~3.18)、DHA-リッチ魚油サプリメント(同:0.90、-1.33~3.13)のベネフィットは認められなかった。・産後抑うつへの影響について、EPAとDHAの間で差はみられなかった(同:-0.20、-2.61~2.21)。・副次アウトカムは「出産後6~8週時における大うつ病障害の発症」、「抗うつ薬を開始した女性の人数」、「分娩時における母親の出血」、または「新生児特定集中治療室(NICU)への入室」としたが、いずれにおいてもベネフィットはみられず、有意な影響も認められなかった。【結論】・セレニウム、DHAあるいはEPAが産後抑うつを防ぐというエビデンスは不十分である。・現時点において、産後抑うつの予防に推奨されるエビデンスのある栄養補助食品はない。関連医療ニュース 1日1杯のワインがうつ病を予防 日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき 日本語版・産後うつ病予測尺度「PDPI-R-J」を開発

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低出力レーザー照射で男性型脱毛症を有意に改善

 男性の男性型脱毛症において、655nmの低出力レーザー療法(LLLT)は毛髪数を有意に改善することが、米国・ロチェスターの開業医Raymond J. Lanzafame氏らによる、二重盲検無作為化試験の結果、報告された。研究グループは、発毛促進に用いられているLLLTについて、安全性と生理学的効果を明らかにするため、本検討を行った。Lasers in Surgery and Medicine誌2013年10月号の掲載報告。 試験は、男性44例(18~48歳、Fitzpatrick I~IV、Hamilton-Norwood IIa~V)を集めて行われた。照射部スカルプ部位を選択し、髪の毛は3mmに刈り揃え、照射部はタトゥーを施し撮影をしておいた。 被験者は、照射群とプラセボ群に割り付けられた。照射群は、自転車のヘルメットのような装置による「TOPHAT655」ユニット21 5mWレーザー(655±5nm)と、30 LEDS(655±20nm)の照射を受けた。プラセボ群は、一見同一に見える白熱灯の赤ランプの照射を受けた。 患者は自宅で1日おきに16週間治療を受け(治療60回、25分間の治療当たり照射量67.3J/cm2)、16週時点でフォローアップと写真撮影を受けた。その際、撮影領域のなかでマスキングされていた2.85cm2部分については、ほかの盲検の研究者が評価した。 主要エンドポイントは、ベースライン時からの毛髪数の増大(パーセントで評価)であった。 主な結果は以下のとおり。・44例のうち41例(照射群22例、プラセボ群19例)が試験を完了した。・有害事象や副作用は報告されなかった。・ベースライン時の毛髪数は、プラセボ群(22例)は162.7±95.9、照射群(19例)は142.0±73.0で有意差はなかった(p=0.426)。・治療後の毛髪数は、プラセボ群(19例)162.4±62.5、照射群(22例)228.7±102.8で有意差が認められた(p=0.0161)。・照射群のほうが、39%の毛髪の有意な増大が認められた(プラセボ群:28.4±46.2、照射群:67.2±33.4、p=0.001)。・ベースライン時の毛髪数が最高値で最大値の低下を有したプラセボ群の1例の被験者を除外すると、毛髪数はプラセボ群(21例)151.1±81.0、照射群(22例)142.0±73.0で有意差はなかった(p=0.680)。・治療後の毛髪数は、プラセボ群(18例)158.2±61.5、照射群(22例)228.7±102.8で有意差が認められ(p=0.011)、照射群のほうが35%の有意な増大が認められた(プラセボ群:32.3±44.2、照射群67.2±33.4、p=0.003)。

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