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2024/07/10
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英語で「利益が不利益を上回る」は?【1分★医療英語】第84回

第84回 英語で「利益が不利益を上回る」は?I feel my new medication is causing lots of problems. Can we stop it?(私の新しく始めた薬は問題が大きいように感じます。服用を中止してもよいですか?)I understand that this medication has side effects, but I still believe the benefits outweigh the harm.(この薬に副作用があることは理解しています。それでも、利益が不利益を上回っていると信じています)《例文1》We should continue this therapy as long as the benefits outweigh the harm.(利益が不利益を上回っている限りは、この治療を続けるべきです)《例文2》Unfortunately, the potential benefits do not seem to outweigh the obvious risks for that alternative medicine.(残念ながら、その代替療法の潜在的な利益は、明らかである不利益を上回らないと思います)《解説》“the benefits outweigh the harm”(利益が不利益を上回る)というこの表現は、さまざまな場面で頻用できて便利です。とくに医療現場では、利益と不利益を天秤にかけて議論する場面が多くあります。“the benefits outweigh the risks”も同様の文脈で頻用します。元になっている動詞は、“重さを測る”という意味の“weigh”(wayと同じ発音)であり、“outweight”ではないことに注意が必要です。同様に、“weigh the benefits and harms”もしくは、“weigh the risk-benefit balance”などのようにも言い換えられます。講師紹介

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第167回 帯状疱疹ワクチンで認知症発現率低下 / タウリンでより健康に長生きできるかも

無作為化試験様の解析で帯状疱疹ワクチンと認知症が生じ難いことが関連おのずと無作為化試験のようになった英国・ウェールズの2集団の比較で帯状疱疹ワクチンzostavax接種と認知症が生じ難いことの関連が示されました1)。同地では2013年9月1日からzostavaxの接種が始まりました。zostavaxは80歳までの人にどうやらより有効とのことで、1933年9月2日以降に生まれた80歳未満の人が接種の対象となり、1933年9月2日より前に生まれた人は対象外でした。その日を挟む1925~42年生まれの約30万人(29万6,603人)の電子診療情報が解析され、zostavax接種対象の人はそうでない人に比べて認知症の発現率が8.5%低いことが示されました。接種対象者のうち実際に接種したのは半数ほどであることを踏まえた解析結果によるとワクチン接種は認知症発現率の約20%(19.9%)低下をもたらしました。生まれが1933年9月2日以降かその前かで区切った2集団の誕生日以外の全般的な違いといえばzostavax接種対象かそうでないかのみであり、その2集団はおのずから無作為化試験のような集団となっています。とはいえあくまでも診療録の解析結果であり、その効果の確証には試験が必要です。より新しい帯状疱疹ワクチンの試験がいくつか進行中で、それらの被験者の認知機能を検査してみたらどうだろうと著者は言っています2)。アミノ酸・タウリン補給でマウスの寿命が伸び、中年サルの体調が改善真核生物の世界で最も豊富なアミノ酸の1つであるタウリンはイカやタコそれに貝類などに多く含まれ、多くの栄養ドリンクやエナジードリンクの成分としても知られ、サプリメントとしても販売されています。ヒトにとってタウリンは準必須アミノ酸で、合成できるものの発達に十分な量を作ることができない幼いころには体外から取り込まねばなりません3)。幼いころのタウリン不足は老化関連疾患と関連する骨格筋、眼、中枢神経系(CNS)機能障害を引き起こします。そのタウリンの体内の巡りが老化に伴って減ることがマウス、サル、さらにはヒトで認められ、タウリンの体内の巡りを増やすことでマウスの健康で生きられる期間や寿命が伸び、中年サルの体調が改善しました4,5,6,7)。マウスやサルで認められたようなタウリンの健康増進効果がヒトでも期待しうることも英国の試験の記録の解析で示唆されました。解析されたのは英国・ノーフォーク州でのEPIC-Norfolk試験の被験者1万人超(1万1,966人)の記録で、血中のタウリンやタウリン関連代謝物が多いことはより痩身であることを示す体型指標と関連しました。また、2型糖尿病の有病率が低いこと、糖濃度が低いこと、炎症指標であるC反応性タンパク質(CRP)が少ないことなどとも関連し、タウリン欠乏のヒトの老化への寄与に見合う結果が得られています。アスリートやそうでない人を募って実施した試験で運動が血中のタウリンやタウリン関連代謝物を増やしうることも確認され、運動の健康向上効果のいくらかにタウリンやタウリン関連代謝物が寄与しているという予想に沿う結果も得られています。しかし早まってタウリンを補給するのは得策ではありません。ヒトがタウリンを補給することで健康が改善するかどうかや寿命が伸びるかどうかはわかっておらず、店頭で売られているタウリン含有サプリメントを健康維持や老化を遅らせることを目当てに早まって服用すべきでないと著者は言っています7)。タウリンの健康や寿命への効果は無作為化試験で検証しなければなりません5)。参考1)Causal evidence that herpes zoster vaccination prevents a proportion of dementia cases, May 25 2023. medRxiv.2)Does shingles vaccination cut dementia risk? Large study hints at a link / Nature3)MCGAUNN J, et al. Science. 2023;1010:380.4)SINGH P, et al. Science. 1012;380:eabn9257.5)Taurine May Be a Key to Longer and Healthier Life / Columbia University6)Amino acid in energy drinks makes mice live longer and healthier / Science7)Taurine supplement makes animals live longer - what it means for people is unclear / Nature

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ベンゾジアゼピンの使用と中止の意思決定に関する患者と精神科医の認識比較

 ベンゾジアゼピン(BZD)やZ薬の長期使用は推奨されていないにもかかわらず、患者や医師がどのように認識しているかは、あまりよくわかっていない。聖路加国際大学の青木 裕見氏らは、精神科外来患者および精神科医において、BZDの使用と中止の意思決定に関する認識を評価し比較するため、横断調査を実施した。その結果、精神科外来患者の多くは、自分の意思に反して睡眠薬または抗不安薬を長期的に使用していることが示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年4月3日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・精神科外来患者104人のうち、1年以上睡眠薬を使用していた患者は92%、1年以上抗不安薬を使用していた患者は96%であった。また、開始後1年以内に睡眠薬または抗不安薬を漸減する意向を示していた患者は49%であった。・多くの精神科医が患者と比較し、医師と患者は対等な基準で共に意思決定していると感じていた(p<0.001)。・一方、多くの患者は精神科医と比較し、医師の意見を考慮し意思決定した(された)と感じていた(p<0.001)。・精神科医543人のうち79%が、患者は睡眠薬または抗不安薬の中止に消極的だったと報告した。・一方、患者は、睡眠薬または抗不安薬の中止に関して、精神科医が手順(18.3%)、タイミング(19.2%)、適切な状態(14.4%)について十分な説明をしなかったと報告した。 著者らは、「睡眠薬または抗不安薬の使用と中止の意思決定について、精神科外来患者と精神科医との間に認識の差があり、このギャップを埋めるにはさらなる研究が求められる」としている。

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HR+/HER2-進行乳がん、CDK4/6阻害薬は1次治療か2次治療か(SONIA)/ASCO2023

 HR+/HER2-進行乳がんに対する1次治療でのCDK4/6阻害薬使用は、2次治療での使用と比較して、無増悪生存期間(PFS)の有意な減少や臨床的に意味のある有用性が認められなかったことが、オランダで全国的に実施された医師主導の第III相SONIA試験で示された。また、CDK4/6阻害薬を1次治療で使用すると使用期間が16.5ヵ月長くなり、毒性および治療費用が増加したという。オランダ・The Netherlands Cancer InstituteのGabe S. Sonke氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表した。 CDK4/6阻害薬の1次治療での使用は2次治療での使用より毒性が長期にわたり、治療費用も増加しているが、現在、ほとんどの世界的なガイドラインでは1次治療での使用を推奨している。しかし、1次治療での使用の2次治療での使用に対する優越性は、head-to-headの比較試験から得られているわけではない。本試験では、オランダの74病院におけるHR+/HER2-進行乳がんを対象に進行がんに未治療の患者において、1次治療もしくは2次治療の内分泌療法へのCDK4/6阻害薬追加の有効性、安全性、費用対効果を評価した。・対象:測定可能または評価可能な病変を有し、進行がんに未治療の閉経前・後のHR+/HER2-進行乳がん(WHO PS 0~2) 1,050例・A群:1次治療で非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬(アベマシクリブ、パルボシクリブ、リボシクリブから治験担当医師が選択)、進行後フルベストラント 524例・B群:1次治療で非ステロイド性AI単独、進行後フルベストラント+CDK4/6阻害薬 526例・評価項目:[主要評価項目]PFS2(2次治療でのPFS:無作為化から増悪/死亡まで)[副次評価項目]QOL、全生存期間(OS)、費用対効果 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2022年12月1日)時点の追跡期間中央値は37.3ヵ月だった。・CDK4/6阻害薬の投与期間中央値は、A群24.6ヵ月、B群8.1ヵ月で、A群が16.5ヵ月長かった。・1次治療におけるPFS(PFS1)中央値は、A群24.7ヵ月、B群(AI単独)16.1ヵ月だった(ハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.51~0.69、p<0.0001)。PFS2中央値はA群31.0ヵ月、B群26.8ヵ月で有意差は認められなかった(HR:0.87、95%CI:0.75~1.03、p=0.10)。これは、どのサブグループ解析でも同様だった。・OS中央値はA群45.9ヵ月、B群53.7ヵ月で、有意差は認められなかった(HR:0.98、95%CI:0.80~1.20、p=0.83)。・QOL(FACT-B合計スコア)に差はなかった。・安全性については、CDK4/6阻害薬の特徴的な有害事象が認められ、Grade3以上の有害事象はA群が42%多かった。・患者当たりの薬剤費用はA群のほうが20万ドル高かった。 本試験の結果から、Sonke氏は「1次治療において内分泌療法単独は優れた選択肢」と述べ、「SONIA試験のような試験は、効果的な薬剤の毒性を大きく減少でき、また、高価なために手の届かない患者が利用しやすくなる」と考察している。

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眼球運動と認知機能を用いた統合失調症診断の有用性

 統合失調症患者では、眼球運動異常や認知機能低下がみられる。奈良県立医科大学の岡崎 康輔氏らは、統合失調症患者と健康対照者における眼球運動および認知機能に関するデータを用いて、精神科医療における実践的なデジタルヘルスアプリケーションに流用可能な臨床診断マーカーの開発を目指して、本研究を実施した。その結果、眼球運動と認知機能データの7つのペアは、統合失調症患者を鑑別するうえで、臨床診断に支援につながり、統合失調症の診断の一貫性、早期介入、共通意思決定を促進するために、これらを利用したポータブルディバイスでも機能する客観的な補助診断方法の開発に役立つ可能性があることを報告した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年4月8日号の報告。 対象は、統合失調症患者336例および健康対照者1,254例。ウェクスラー成人知能検査第3版(WAIS-III)およびウェクスラー記憶検査改訂版(WMS-R)を用いて眼球運動と認知機能のパフォーマンスを確認し、ロジスティック回帰を用いた多変量解析を実施した。眼球運動と認知機能尺度を含む鑑別精度を測定し、診断基準に従って臨床上有用なペアを特定するためペア判別分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・多変量解析では、眼球運動と認知機能は、統合失調症患者と健康対照者を鑑別するうえで、有用であることが確認された。・ペア判別分析では、7つの眼球運動測定値と認知機能テストの7つのスコアに他の要素を1つ組み合わせることにより、高い鑑別精度が検出された。・7ペアのdigit-symbol codingまたはsymbol-searchおよび眼球運動測定による鑑別精度は、高く堅牢であった。

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英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(1)【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第17回

なぜ数字の口語表現の学習が重要か英語で科学的な内容の発表・議論をする際に意外な落とし穴となることが多いのが、「数字の口語表現」です。基本的な口語表現を理解して、正しく聞き取り、自信を持って使用できるようになることはきわめて重要です。1)数字情報の正確な伝達の重要性正しく数字の情報を伝達することは、科学者としてきわめて重要です。臨床家としては、相手が伝えている数字の情報が理解できない、もしくは自分の意図した数字が正しく伝わらない状況は、文字通り致命的なミスの原因となりえます。学会等での議論においても、数字の情報の伝達が不完全であると、科学者としての信頼を大きく損なうリスクがあります。2)日本での学習機会の不足一方で、英語における数字の口語表現というのは、日本での一般的な英語学習において、あまり重視されない内容でしょう。学校教育、TOEICやTOEFLなどの試験勉強、また英会話スクールなどでは、このような内容をリスニングまたはスピーキングで学習する機会は不足しがちだと思います。3)文脈に依存できないことが多い英語の日常会話においては、いわゆる“broken English”であっても、くじけずに話し続ければ正しく伝わることが多いです。ただし、数字の場合は文脈から推測することができないケースも多く、その表現自体を知らないと、誤って理解してしまう、伝わってしまうことが多いのです。4)口語的な慣用表現が多いさらに、数字の表現方法には、慣用的な口語表現(一種のスラング)が頻用されます。私たち日本人がスピーキングで慣用表現を積極的に使用する必要はありませんが、英語のネイティブスピーカーが日常的に使う表現を聞き取れないことは、時に致命的な障害になってしまいます。5)簡単なルールを理解すれば改善が期待でき、コスパが良い一方で、これらの内容は基本的なルールを覚えることで多くの状況に対応できるようになるため、単語・熟語の暗記に比べて、英語学習の時間対効果の効率は良いと感じます。ただし、耳で聞いた数字を瞬時に頭で理解して、自信を持って即座に返答できるまでには、かなりの反復練習が必要です。「1234567」この数字、英語ではどう表現するでしょう?“One million two hundred thirty-four thousand five hundred sixty-seven”というのが最も基本的な読み方です。英語では「1,234,567」とコンマの部分で区切って数字を表現します。“million”(100万)のさらに上位の単位は“billion”(10億)ですが、一般的な科学的な議論でそこまで使用することは多くはないでしょう。間違いやすいポイントは、“thousand”や“hundred”が単数形であることです。この読み方自体は、おそらく多くの読者にとっても常識かと思いますが、試しに、早口言葉のように口に出して、“1,234,567”を英語で2、3回読んでみてください。瞬発力が求められる英語の会話において、これをスムーズに読むことが簡単ではないことをご理解いただけると思います。「123」“One twenty-three”「1234」“twelve thirty-four”「1200」“twelve hundred”これらは、英語のネイティブスピーカーの慣習的な読み方です。「123」は、正しくは“one hundred twenty-three”ですが、口語的には“one twenty-three”として、“hundred”を省略することが多々あります。「1,234」は「"12" "34"」で区切って“twelve thirty-four”と読み、「1,200」は同様に「"12" "00"」で“twelve hundred”と読まれることも多いです。これらのルールは知らないと、パッと“twelve thirty-four”と言われた時に、「1,234」という数字を思い浮かべることができません。「1.234」“one point two three four”「0.123」“zero point one two three”, “point one two three”「0.012」“zero point zero one two”/ “point zero one two”/ “o point o one two”/ “point o one two”今度はカンマ「,」ではなく、小数点「.」です。小数点以下の数字も頻出なので必修事項です。小数点は、“decimal point”と呼ばれて、数字を読み上げるときは“point”と読みます。「1.234」は“one point two three four”であり、「0.123」は“zero point one two three”です。慣習的に小数点の前の“zero”を省略して、「0.123」を“point one two three”と読むことも多くあります。また“0”(ゼロ)を“o”(オウ)と読むことも多いです。この場合「0.012」は“o point o one two”もしくは“point o one two”となります。講師紹介

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向精神薬の頓服使用が統合失調症入院患者の転帰に及ぼす影響

 統合失調症治療では、興奮、急性精神症状、不眠、不安などの症状に対し、一般的に頓服薬が用いられる。しかし、頓服薬使用を裏付ける質の高いエビデンスは不足しており、これら薬剤の使用は、臨床経験や習慣に基づいて行われている。北里大学の姜 善貴氏らは、向精神薬の頓服使用の実態および患者の転帰に対する影響を評価するため、本研究を行った。その結果、向精神薬の頓服使用は、統合失調症入院患者の入院期間の延長、抗精神病薬の多剤併用、再入院率の増加と関連しており、精神症状のコントロールには、大量の向精神薬の頓服使用を避け、ルーチン処方で安定を目指す必要があることを報告した。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2023年5月30日号の報告。 入院での治療を受けた統合失調症患者205例を対象に、入院前および退院時の向精神薬使用状況、入院中の頓服薬の使用頻度を調査した。また、向精神薬の頓服使用が入院日数、抗精神病薬の多剤併用、再入院率に及ぼす影響も検討した。 主な結果は以下のとおり。・入院中に向精神薬の頓服使用を行った患者は、使用しなかった患者と比較し、入院日数が有意に長く(p=0.00075)、退院時の抗精神病薬の多剤併用率が有意に高かった(p=0.00024)。・1日当たりの向精神薬の頓服使用数が多いほど、退院3ヵ月以内の再入院率の増加が認められた(p=0.0044)。・頓服薬の使用をモニタリングし、再検討を促すシステムを構築する必要性が示唆された。

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母親の認知症歴が子供の認知症リスクに影響

 両親の認知症歴は、子供の認知症リスクを上昇させるともいわれているが、その結果に一貫性は見られていない。韓国・Sungkyunkwan University School of MedicineのDae Jong Oh氏らは、両親の認知症歴と子供の認知症リスクに関して、認知症サブタイプおよび性別の影響を調査するため、本検討を行った。その結果、母親の認知症歴は、男女ともに子供の認知症およびアルツハイマー病(AD)リスクとの関連が認められた。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年5月10日号の報告。 8ヵ国、9件の人口ベースコホート研究より抽出された高齢者1万7,194人のデータを用いて、横断的研究を実施した。対象研究では、認知症の診断のため、対面診断、身体検査、神経学的検査、神経心理学的評価が実施された。父親および母親の認知症歴と子供の認知症、認知症サブタイプのリスクとの関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象者の平均年齢は72.8±7.9歳、女性の割合は59.2%であった。・両親の認知症歴は、認知症およびADリスク上昇と関連が認められたが、非ADリスクとの関連は認められなかった。 【認知症】オッズ比(OR):1.47、95%信頼区間(CI):1.15~1.86 【AD】OR:1.72、95%CI:1.31~2.26・母親の認知症歴は、子供の認知症およびADリスクとの関連が認められたが、父親では認められなかった。 【認知症】OR:1.51、95%CI:1.15~1.97 【AD】OR:1.80、95%CI:1.33~2.43・子供の性別に分けた分析でも、同様の結果が認められた。 【男性】OR:2.14、95%CI:1.28~3.55 【女性】OR:1.68、95%CI:1.16~2.44・母親の認知症歴は、臨床試験においてADリスクの高い人を特定し、リスク層別化に有用なマーカーである可能性が示唆された。

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重症/治療困難なアトピー性皮膚炎、経口アブロシチニブvs.デュピルマブ

 重症および/または治療困難なアトピー性皮膚炎(AD)患者において、アブロシチニブはプラセボやデュピルマブよりも、迅速かつ大幅な皮疹消失とQOL改善をもたらした。米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らが、第III相無作為化試験「JADE COMPARE試験」のサブグループについて行った事後解析の結果を報告した。著者は、「これらの結果は、重症および/または治療困難なADへのアブロシチニブ使用を支持するものである」とまとめている。重症および/または治療困難なADに関するデータはこれまで限定的であった。JADE COMPARE試験では、外用薬治療を受ける中等症~重症ADへのアブロシチニブ併用がプラセボ併用と比べて症状改善が大きいこと、デュピルマブ併用と比べてそう痒の改善が大きいことが示されていた。American Journal of Clinical Dermatology誌オンライン版2023年5月22日号掲載の報告。 研究グループは、JADE COMPARE試験の事後解析において、重症および/または治療困難なAD患者のサブセットにおけるアブロシチニブ、デュピルマブの有効性と安全性を評価した。同試験では、中等症~重症ADの成人患者に対し、1日1回の経口アブロシチニブ200mgまたは100mg、2週ごとのデュピルマブ300mg皮下注、またはプラセボを、外用薬と併用して投与した。 研究グループは、重症および/または治療困難なAD患者サブグループを、ベースライン特性に基づき、以下の7つのサブグループに分類した。1)Investigator’s Global Assessment(IGA)スコア42)Eczema Area and Severity Index(EASI)スコア21超3)全身性薬物治療に失敗または不耐性(コルチコステロイドのみ服用患者は除く)4)体表面積に占めるAD病変の割合(%BSA)50超5)EASIスコア38超(EASIスコア上位25%)6)%BSA 65超7)IGAスコア4の統合サブグループ(EASIスコア21超、%BSA 50超、全身性薬物治療に失敗または不耐性[コルチコステロイドのみ服用患者は除く]をすべて満たす) 評価項目は以下のとおり。・16週時におけるIGAスコアに基づく奏効(0[消失]または1[ほぼ消失]かつベースラインから2ポイント以上改善]・16週時におけるEASI-75達成患者の割合・16週時におけるEASI-90達成患者の割合・16週時におけるPeak Pruritus-Numerical Rating Scaleのベースラインからの4ポイント以上の改善(PP-NRS4)達成患者の割合・PP-NRS4達成までの期間・14日間(15日目に評価)のPP-NRSの変化量(最小二乗平均値[LSM])・16週時におけるPatient-Oriented Eczema Measure(POEM)のベースラインからの変化量(LSM)・16週時におけるDermatology Life Quality Index(DLQI)のベースラインからの変化量(LSM)  主な結果は以下のとおり。・重症および/または治療困難なAD患者のすべてのサブグループにおいて、16週時におけるIGAスコアに基づく奏効、EASI-75、EASI-90を達成した患者の割合が、プラセボ群よりアブロシチニブ200mg群で高率であった(名目上のp<0.05)。・PP-NRS4達成患者の割合は、ほとんどのサブグループにおいて、プラセボ群と比べてアブロシチニブ200mg群で高率であった(名目上のp<0.01)。また達成に要した期間は、アブロシチニブ200mg群(範囲:4.5~6.0日)が、100mg群(5.0~17.0日)、デュピルマブ群(8.0~11.0日)、プラセボ群(3.0~11.5日)より短かった。・POEMとDLQIのベースラインからの変化量(LSM)は、すべてのサブグループにおいて、プラセボ群よりアブロシチニブ200mg群で大きく(名目上のp<0.001)、アブロシチニブ200mg群で改善が認められた。・複数のサブグループ(全身性薬物治療に失敗または不耐性であった患者を含む)において、ほとんどの評価項目について、アブロシチニブ群とデュピルマブ群の間に臨床的に意義のある差が観察された。

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大卒の社会人、ADHD特性レベルが高いのは?

 これまで、成人の注意欠如多動症(ADHD)と社会人口学的特徴を検討した研究の多くは、ADHDと診断された患者を対象としており、一般集団におけるADHD特性について調査した研究は、ほとんどなかった。また、大学在学中には問題がみられず、就職した後にADHD特性を発現するケースが少なくない。国際医療福祉大学の鈴木 知子氏らは、大卒の日本人労働者におけるADHD特性と社会人口学的特徴との関連について、調査を行った。その結果、大学を無事に卒業したにもかかわらず、大卒労働者ではADHD特性レベルは高いことから、ADHD特性レベルを適切に評価し、健康の悪化や予防をサポートする必要性が示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年4月5日号の報告。 日本全国から無作為に抽出された労働者1,240人を対象に、オンラインによる自己記入式調査を実施した。ADHD特性は、成人ADHD自己報告尺度(ASRS)を用いて測定し、DSM-5の基準を反映したスコアリングルールを適用した。性別、年齢、社会経済的地位、労働時間、健康関連行動などの社会人口学的特徴に関する情報を収集した。偏相関分析を用いて傾向の関連性を推定し、共分散分析を用いて調整平均を比較した。本モデルでは、すべての変数に対し調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・ADHD特性レベルは、女性よりも男性で高く(p=0.001)、より若いほど高かった(p<0.001)。・低所得者は、高所得者よりもADHD特性レベルが高かった(p=0.009)。・朝食、昼食、夕食の摂取とADHD特性との関連は認められなかったが、夜食をより頻繁に摂取する人ほど、ADHD特性レベルが高かった(p<0.001)。・睡眠により十分な休息が得られなかった人は、ADHD特性レベルが高かった(p=0.007)。

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CKDに対する集学的治療で腎機能低下が抑制される

 慢性腎臓病(CKD)に対する集学的治療(MDC)の有効性を示すエビデンスが報告された。MDC介入後には腎機能(eGFR)低下速度が有意に抑制されるという。国内多施設共同研究の結果であり、日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科の阿部雅紀氏らによる論文が「Clinical and Experimental Nephrology」に3月31日掲載された。MDCに携わるスタッフの職種数や介入回数が多いほど、腎代替療法や全死亡のリスクが低下するというデータも示されている。 CKDが進行すると生命維持のために腎代替療法(透析または腎移植)が必要となるなど、患者本人のQOLが低下するだけでなく医療経済的な負担も大きくなる。日本は人口当たりの透析患者数が台湾に次いで世界2位であり、CKDの進行を抑える治療戦略の確立が喫緊の課題となっている。CKDの進行抑制には、薬物療法に加えて食事療法や運動療法が重要で、それらをサポートする看護師、管理栄養士、薬剤師や理学療法士などを含む多職種によるMDCが有効と考えられる。国内では2017年に腎臓病療養指導士制度がスタートするなど、MDCを積極的に行う環境が整ってきた。阿部氏らは、国内24施設の多施設共同後方視的コホート研究として、MDCがどのように行われているかという実態の把握と、その有効性を評価した。 2015~2020年に本研究参加施設でMDCが行われたCKD患者のうち、MDC介入前の12カ月と介入後24カ月のeGFRのデータがあり、除外基準(20歳未満、eGFR60mL/分/1.73m2以上、活動性の悪性腫瘍、観察開始時点で腎代替療法が施行または予定されていたなど)に該当しない3,015人を解析対象とした。主要評価項目は、MDC前後でのeGFR低下率の変化であり、そのほかに腎代替療法と全死亡で構成される複合エンドポイントの発生率に関連のある因子などが検討された。 解析対象者のMDC介入時点(ベースライン)の主な特徴は、平均年齢70.5±11.6歳、男性74.2%、eGFRは中央値23.5mL/分/1.73m2(四分位範囲15.1~34.4)、尿タンパクは同1.13g/gCr(0.24~3.1)であり、CKDステージは3が34.5%、4が41.4%、5が24.1%だった。 MDC介入は58.7%が入院で行われ、41.3%は外来で行われていた。入院日数または介入回数(外来)は、入院の場合は中央値7日(四分位範囲6~12)、外来では4回(1~11)で、関与していたスタッフの職種は4職種(3~5)であり、医師以外のスタッフでは管理栄養士(90.4%)、看護師(86.2%)、薬剤師(62.3%)、理学療法士(25.9%)、臨床検査技師(5.9%)、ソーシャルワーカー(2.3%)などが関与していた。 MDC介入前の1年当たりのeGFR低下速度(mL/分/1.73m2/年)は平均-6.02だった。それに対してMDC介入後の6カ月は-0.34、12カ月では-1.40、24カ月では-1.45であり、いずれの時点でも介入前より低下速度が有意に抑制されていた。CKDの原因(糖尿病と糖尿病以外)やベースライン時のCKDステージで層別化した解析でも、全てのサブグループでMDC介入後にeGFR低下速度が有意に抑制されていた。副次的評価項目として設定されていた尿タンパク(g/gCr)も、MDC介入時点で中央値1.13であったものが、介入6カ月後は0.96、12カ月後は0.82、24カ月後は0.78と、いずれの時点でも有意に改善を示していた。 中央値35カ月(20~50)の観察期間中に、24.8%に腎代替療法が行われ、4.9%が死亡していた。それら両者を複合エンドポイントとしたCox比例ハザードモデルによる解析の結果、MDCに関与するスタッフの職種〔1職種多いごとにハザード比(HR)0.85(95%信頼区間0.80~0.89)〕や、介入回数〔1回多いごとにHR0.97(同0.96~0.98)〕の多さが、エンドポイント発生リスクの低さと関連していた。また、MDCに栄養士〔HR0.49(0.36~0.66)〕、理学療法士〔HR0.46(0.22~0.93)〕が関与している場合は、それらのスタッフが関与していない場合よりもエンドポイント発生リスクが有意に低いことが分かった。 以上より著者らは、「CKD患者に対するMDCは、原疾患にかかわりなく効果的であり、また比較的初期の段階での介入も有効と考えられる」と結論付けている。

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Long COVIDは5タイプに分類できる

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急性期を過ぎた後に何らかの症状が遷延する、いわゆる「long COVID」は、5タイプに分類可能であるとする論文が「Clinical and Experimental Medicine」に4月7日掲載された。聖マリアンナ医科大学総合診療内科の土田知也氏らによる研究によるもので、就労に影響が生じやすいタイプも特定された。 Long COVIDは長期間にわたり生活の質(QOL)を低下させ、就労にも影響が及ぶことがある。現在、治療法の確立が急がれているものの、long COVIDの病態の複雑さや多彩な症状を評価することの困難さなどのために、新規治療法の有効性を検討する臨床試験の実施にも高いハードルがある。そのため、まずlong COVIDをいくつかのタイプに分類して、それぞれのタイプを特徴付けるという試みが始まっており、海外発のそのような研究報告も存在する。ただし、QOL低下につながりやすい就労への影響という点を勘案した分類は、まだ提案されていない。土田氏らの研究は、以上を背景として行われた。 2021年1月18日~2022年5月30日に同院のCOVID-19後外来を受診した患者のうち、PCR検査陽性の記録があり、感染後に症状が2カ月以上続いている15歳以上の患者497人(平均年齢41.6歳、男性43.1%)を解析対象とした。対象者の中には甲状腺機能低下症やうつ病が疑われる患者も含まれていたが、症状にlong COVIDの影響はないと明確には判断できないことから、除外せずに解析した。 対象者には、23項目から成る自覚症状のアンケート(該当するものを○、強く該当するものを◎で回答する)と、慢性疲労症候群の評価に使われている9項目から成るパフォーマンスステータス(PS)質問票に答えてもらった。就労状況については、罹患前と同様に勤務継続、職務内容の変更、休職、退職という四つに分類した。 結果について、まず自覚症状に着目すると、○または◎のいずれかが最も多かった症状は倦怠感(59.8%)で、次いで不安(42.3%)、嗅覚障害(41.9%)、抑うつ(40.2%)、頭痛(38.6%)などだった。◎が最も多かったのは同じく倦怠感(40.2%)で、次いで嗅覚障害(26.6%)、味覚障害(18.1%)、脱毛(14.9%)、呼吸困難(13.7%)、頭痛(11.1%)などだった。 次に、特徴の似ているデータをグループ化するクラスター分析という手法により、long COVIDのタイプ分類を行った結果、以下の5タイプに分けられることが分かった。 タイプ1は倦怠感が強いことが特徴で全体の21.8%が該当。タイプ2は倦怠感のほかにも呼吸困難、胸痛、動悸、物忘れを訴える群で14.9%が該当。タイプ3は倦怠感、物忘れ、頭痛、不安、抑うつ、不眠症、モチベーション低下を訴える群で20.8%が該当。タイプ4は倦怠感が少なく脱毛を主症状とする群で19.8%が該当。タイプ5も倦怠感が少なく味覚障害や嗅覚障害が主体の群で22.8%が該当。 これらの群を比較すると、タイプ4は他群より高齢で、タイプ2や4は女性が多く、タイプ2はCOVID-19急性期に肺炎合併症を来していた割合が高いといった有意差が認められた。外来初診時のPSスコア(点数が高いほど生活の支障が強い)は、タイプ2が最も高く中央値4点(四分位範囲2~6)、続いてタイプ3が3点(同2~5)、タイプ1が2点(1~5)であり、タイプ4と5は0点(0~1)だった。症状発現から受診までの期間はタイプ5が最も長く、BMIについてはタイプによる有意差がなかった。 就労状況に関しては、発症以前と変更なしの割合がタイプ1から順番に50.0%、41.9%、43.7%、77.6%、84.1%、職務内容の変更を要した割合は、24.1%、13.5%、9.7%、2.0%、7.1%、休職中は20.4%、36.5%、39.8%、16.3%、7.1%、退職に至った割合は5.6%、8.1%、6.8%、4.1%、1.8%であり、タイプ2や3で休職中の割合が高く、タイプ4や5はその割合が低いという差が認められた。 このほか、自律神経機能検査によって体位性起立性頻拍症候群〔POTS(立ち上がると脈拍が大きく変化する)〕と診断された割合が、自覚症状に倦怠感が含まれているタイプ1~3で高く、特にタイプ2では33.8%と3人に1人が該当することが分かった。 以上を基に著者らは、「long COVIDはその臨床症状から5タイプに分類可能」と結論付け、また倦怠感を訴えるタイプにはPOTSが多く、POTSは治療により改善も認められるケースがあることから、「タイプ1~3に該当する患者では自律神経機能の評価が重要ではないか」と付け加えている。なお、研究の限界点としては、単施設の外来患者を対象としたものであり、外来通院も困難な重症long COVID患者が含まれていないこと、解析対象期間が異なれば異なる変異株の感染患者が含まれるため、クラスター分析の結果も変わってくる可能性のあることなどを挙げている。

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英語で「患者を椅子に座らせる」は?【1分★医療英語】第83回

第83回 英語で「患者を椅子に座らせる」は?Would you be able to get the patient up on the chair ?(患者さんを[ベッドから]椅子に座らせることはできますか?)Definitely.(もちろんです)《例文1》医師Let’s get the patient up and walking today.(今日は患者さんに立って歩いてもらいましょう)看護師Understood.(わかりました)《例文2》医師No worries. We will get you ready for the surgery.(手術に臨めるように手配します)患者Thank you so much.(ありがとうございます)《解説》この表現は、日々の診療の中で患者さんの状態について話すときに非常によく使われます。“get”の後に目的語である“the patient”(この患者さん)、その後に状態を表す形容詞や動名詞を続けることで、「この患者さんを~の状態にする」という意味になります。《例文》のように、治療の過程で状態変化を伴うときによく使われます。日常会話でも“get”の後にさまざまな名詞と形容詞を付けることでいろんな使い方ができます。たとえば、“get you dressed”だと「服を着てきなさい」という意味になります。非常に使いやすいのでぜひマスターしてください。講師紹介

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第166回 現金給付と死亡率低下が関連

世界銀行の推定によると2019年には世界人口の10人に1人近く(8.4%)が極度の貧困の指標である1日当たり2.15ドル未満での暮らしを強いられていました1)。また、今や世界人口の70%を占める“中の上”(upper middle-income)所得国の人々の貧困の指標である1日当たり6.85ドル未満での生活を強いられている人の割合は世界の半数ほどの47%にも上ります。新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」)の流行で貧困層は拡大し、世界の極度の貧困者数は2020年に1億人近く(9,700万人超)増えたと推定されています。貧困を減らして治安を守る取り組みの1つとして100を超える低~中所得国が過去20年間に個人や家庭への現金給付を行いました。コロナ流行中に現金給付の裾野はさらに広がりました。世界銀行の昨年(2022年)2月の報告によると203ヵ国での962種類の現金給付のうち672の取り組みはコロナ流行中に新たに導入されたものであり、世界人口の実に17%に相当する13.6億人がコロナ流行中に現金給付を受け取ったと推定されています。政府が運営する大規模な現金給付は貧困の減少に成功し、受給者の経済的自立、就学、小児の栄養、女性の地位向上、保健サービス使用の改善をもたらしています。また、現金給付の導入で新たな感染症が減ったこともいくつかの試験で示されています。現金給付のそういった数々の効果が明らかになっている一方で究極の転帰である死亡率への効果はあまりはっきりしていません。そこで米国・ペンシルバニア大学のチームは低~中所得の37ヵ国の2000~19年の小児や成人700万人超の記録を使って現金給付の死亡率への影響を検討しました2,3)。それら37ヵ国のうち29ヵ国はサハラ以南のアフリカ、3ヵ国はラテンアメリカとカリブ諸国、4ヵ国はアジアパシフィック地域、1ヵ国は北アフリカに位置します。調査期間に成人約433万人(432万5,484人)と小児約287万人(286万7,940人)のうちそれぞれ約13万人(12万6,714人)と約16万人(16万2,488人)が死亡し、解析の結果、現金給付は成人女性の死亡率の20%低下、5歳未満小児の死亡率の8%低下と関連しました。現金をよりあまねく給付することやより高額を給付することは死亡率の一層の低下をもたらしました。現金給付と死亡率低下の関連が男性に認められず女性に限られたのは妊娠関連死亡の大幅な低下が主な要因でした。今回の解析で認められた幼い小児の死亡率低下も加味すると現金給付による貧困の減少は若い家族をとりわけ助けるのでしょう。現金給付などの貧困防止の取り組みで世間の人々の健康を改善して死亡を減らしうることを今回の解析は裏付けています。参考1)Half of the global population lives on less than US$6.85 per person per day / World Bank2)Richterman A et al. Nature. 2023 May 31. [Epub ahead of print]3)Social science: Cash transfer programmes reduce risk of death in low- and middle-income countries / Nature

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日本人2型糖尿病の100人に1人が寛解、達成しやすい人は?/新潟大

 従来、糖尿病を発症すると、一生にわたって治療が必要といわれてきた。しかし、実際には2型糖尿病と診断され、治療を開始した患者のうち、血糖値が正常値近くまで改善し、薬物治療が不要な状態となる患者が存在する。そこで、2021年に米国糖尿病学会(ADA)を中心とする専門家グループは、「薬物療法を行っていない状態でHbA1c値6.5%未満が3ヵ月以上持続している状態」を糖尿病の「寛解」と定義した1)。しかし、日本人2型糖尿病患者において、寛解を達成する割合や、達成する患者の特徴、寛解の持続状況は明らかになっていない。そこで、藤原 和哉氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野 特任准教授)らの研究グループは、全国の糖尿病専門施設に通院中の2型糖尿病患者4万8,320例を対象として、臨床データを後ろ向きに解析した。その結果、約100人に1人が寛解を達成していたことが明らかになった。本研究結果は、Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2023年5月8日号に掲載された。 研究グループは、糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)が保有する日本全国の糖尿病専門施設に継続して通院している2型糖尿病患者4万8,320例の1989~2022年の臨床データを後ろ向きに解析した。寛解の発生率、寛解後の再発(1年間寛解を維持できない状態)の発生率、寛解と再発に関連する因子などを検討した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間(中央値:5.3年)において、3,677例が寛解を達成し、寛解の発生率は10.5/1,000人年であった。・HbA1c値が6.5~6.9%、ベースライン時の薬物治療なし、BMIが1年間で5~9.9%低下、10%以上低下の群で寛解の発生率が高く、それぞれ27.8/1,000人年、21.7/1,000人年、25.0/1,000人年、48.2/1,000人年であった。・寛解の関連因子を検討した結果、以下の7つの因子が特定された。 -男性 -ベースライン時の年齢が40歳未満 -糖尿病罹病期間1年未満 -ベースライン時のHbA1c値7.0%未満 -ベースライン時のBMI高値 -BMIが1年間で5%以上低下 -ベースライン時の薬物治療なし・寛解を達成した3,677例のうち、2,490例(67.7%)が再発した。・再発の関連因子を検討した結果、以下の3つの因子が特定された。 -糖尿病罹病期間が長い(1年以上) -ベースライン時のBMI低値 -BMIが1年間で0.1%以上増加 本研究結果について、著者らは「これまで、糖尿病は治らないといわれていたが、糖尿病と診断されても、早期から生活習慣改善や薬物治療に取り組み、減量を行うことで2型糖尿病の寛解は可能だということが示された。また、一度寛解に至った場合でも、体重を適正に管理し、定期的に診察を受けることが、寛解後の再発予防に重要である可能性が示された。なお、今回の研究は観察研究であることから、原因と結果の関係を示したものではなく、今後、生活指導や薬物による介入研究を行うことで実際にどの程度の人が寛解し、寛解の状態が持続するかを確認する必要がある」とまとめた。

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肺炎への抗菌薬、静注から経口に早期切り替えで入院期間短縮か

 肺炎により入院した患者は、通常、状態が安定するまで静脈注射(IV)用の抗菌薬(以下、IV抗菌薬)を投与される。しかし、市中肺炎に罹患した患者の多くでは、もっと早い段階でIV抗菌薬から経口抗菌薬に切り替えた方が早期退院につながる可能性のあることが新たな研究で示された。米クリーブランドクリニック・コミュニティーケアのAbhishek Deshpande氏らによるこの研究結果は、「Clinical Infectious Diseases」に4月3日掲載された。 米国での肺炎による入院患者数は毎年100万人以上に上り、5万人以上が肺炎により死亡している。Deshpande氏によると、市中肺炎は、入院と抗菌薬使用の主要な原因であるという。同氏は、「長期にわたる抗菌薬の投与は、薬剤耐性菌の増加と医療関連感染(院内感染)につながる可能性があるため、抗菌薬投与を最適化することは重要だ」と述べる。 今回の研究では、2010年から2015年の間に米国の642カ所の病院で市中肺炎により入院した37万8,041人の成人患者のデータが分析された。これらの患者は、最初にIV抗菌薬による治療を受けていた。入院3日目までにIV抗菌薬から経口抗菌薬に切り替えられた場合を、「早期切り替え患者」として対象患者を分類し、入院期間、14日間での院内死亡率、症状悪化によるICU(集中治療室)入室率、入院費を比較した。 37万8,041人のうち2万1,784人(6%)が「早期切り替え患者」に該当し、切り替えられた経口抗菌薬で最も多かったのはフルオロキノロン系薬剤であった。「早期切り替え患者」では、それ以外の患者に比べて、IV抗菌薬による治療日数、入院中の抗菌薬による治療期間、および入院期間が短く、入院費が低かった。しかし、両群間で、14日間での院内死亡率とICU入室率に有意差は認められなかった。死亡リスクの高い患者では、経口抗菌薬への切り替えが行われにくかった。しかし、経口抗菌薬への切り替え率が比較的高かった医療機関においてでさえ、死亡リスクの低い患者のうち実際に経口抗菌薬に切り替えられた患者の割合は15%に満たなかった。 米国胸部学会(ATS)/米国感染症学会(IDSA)の現行のガイドラインでは、患者が臨床的に安定した時点で、IV抗菌薬投与から経口抗菌薬投与に切り替えることを推奨している。このガイドラインに従うと、IV抗菌薬を3日間ほど投与した後に、経口抗菌薬に切り替えることになるが、実際にそのような治療が行われることは少ないという。 研究グループは、「医療機関は、臨床的に安定している市中肺炎患者に対する治療法を変更するよう臨床医を促すことで、抗菌薬の使用によりもたらされるさまざまな弊害を軽減することができる」と述べている。

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大腸がんを予防するコーヒーの摂取量は?~アンブレラレビュー

 1日5杯以上のコーヒー摂取により、大腸がんのリスクが有意に低減することが、米国・Cleveland Clinic FloridaのSameh Hany Emile氏らのアンブレラレビューによって明らかになった。Techniques in Coloproctology誌オンライン版2023年5月2日掲載の報告。 コーヒーの摂取によって、全死亡リスクおよび心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクの低減が報告されている。また、大腸がんや一部のがん種を予防する可能性も示唆されている。しかし、コーヒー摂取が大腸がんのリスク低減と関連するエビデンスは十分ではない。 そこで研究グループは、過去のシステマティックレビューを対象とするアンブレラレビューによって、コーヒー摂取と大腸がんリスクとの関連を評価した。研究の方法論的質の評価にはAMSTAR-2ツールを用いた。主要アウトカムとして、コーヒー摂取と大腸がん、結腸がん、直腸がんとの関連を個別に評価した。 主な結果は以下のとおり。・本アンブレラレビューには、14件のシステマティックレビューが含まれた。・コーヒー摂取により大腸がんのリスクが11~24%低減し(報告数5件)、結腸がんは9~21%の低減(2件)、直腸がんは25%の低減(1件)であった。・1件のレビューでは1日6杯以上のコーヒー摂取で大腸がんのリスクが7%低減し、別のレビューでは1日5杯で8%、1日6杯で12%低減していた。・カフェインレスコーヒーは、3件のレビューで有意なリスク低減と関連していた。 これらの結果より、研究グループは「カフェイン入りコーヒー摂取と大腸がんリスク低減のエビデンスは一貫していないが、用量依存関係分析によると、コーヒー摂取による大腸がんのリスク低減効果は1日5杯以上の摂取で生じると考えられる」とまとめた。

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医学生は感染症専門医に興味がない【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第235回

医学生は感染症専門医に興味がないUnsplashより使用私は一応感染症専門医ですが、どちらかといえば抗酸菌感染症をたくさん診療しているので、性感染症や小児感染症については疎いです。オールラウンダーであるべき資格だとは思いますが…。コロナ禍で非常に重宝されましたが、全国には2023年4月10日時点で1,770人しかいないレアな資格でございまして。Hagiya H, et al.Interest in Infectious Diseases specialty among Japanese medical students amidst theCOVID-19 pandemic: A web-based, cross-sectional study.PLoS One. 2022 Apr 21;17(4):e0267587.もともと感染症専門医の数は、適正数と比べて非常に少ないことが指摘されていますが、COVID-19のパンデミックによってこの意向がどうなったか、ウェブアンケートを用いて調査されました。2021年3月に岡山大学医学部医学科に在学している医学生717名を対象に実施されました。回収率は45.7%と高く、解析対象者は328名でした。感染症専門医を認識している学生227名(69.2%)のうち、「パンデミック後に知った」が99名(43.6%)でした。低学年と高学年を比較すると、クリニカルクラークシップの経験がある医学生では、感染症専門医の認知度が高かったようです(19.5% vs. 57.4%、p <0.001)。やはり、現場をみてもらえれば、感染症専門医ってきっとカッコイイと思ってもらえるはず!さて、COVID-19パンデミックによって感染症専門医への興味が生じた人が多いとありがたいわけですが、「感染症専門医への興味が生じた」が12名(3.7%)、「むしろ感染症専門医にはなりたくない」が36名(11.0%)という残念な結果でした。(´・ω・`) ショボン以上のことから、現時点では日本の感染症専門医への関心度が非常に低いことが示されてしまいました。

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境界性パーソナリティ障害に有効な治療は~リアルワールドデータより

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者の多くは精神薬理学的治療を受けているが、BPDに関する臨床ガイドラインには、薬物療法の役割についてのコンセンサスはない。東フィンランド大学のJohannes Lieslehto氏らは、BPDに対する薬物療法の有効性について比較検討を行った。その結果、注意欠如多動症(ADHD)の治療薬が、BPD患者の精神科再入院、すべての原因による入院または死亡のリスク低下と関連していることが示唆された。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年4月24日号の報告。 2006~18年に治療を行ったBPD患者をスウェーデンの全国レジストリデータベースより抽出した。選択バイアスを排除するため、個別(within-individual)デザインを用いて、薬物療法の有効性を比較した。各薬剤に関して、精神科入院、すべての原因による入院または死亡に対するハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、BPD患者1万7,532例(男性:2,649例、平均年齢:29.8±9.9歳)。・精神科再入院リスクの増加と関連した治療は、ベンゾジアゼピン(HR:1.38、95%信頼区間[CI]:1.32~1.43)、抗精神病薬(HR:1.19、95%CI:1.14~1.24)、抗うつ薬(HR:1.18、95%CI:1.13~1.23)による治療であった。・同様に、すべての原因による入院または死亡リスクにおいても、ベンゾジアゼピン(HR:1.37、95%CI:1.33~1.42)、抗精神病薬(HR:1.21、95%CI:1.17~1.26)、抗うつ薬(HR:1.17、95%CI:1.14~1.21)による治療で増加が認められた。・気分安定薬による治療は、両アウトカムと統計学的に有意な関連が認められなかった。・ADHD治療薬による治療は、精神科入院リスクの減少(HR:0.88、95%CI:0.83~0.94)およびすべての原因による入院または死亡リスクの減少(HR:0.86、95%CI:0.82~0.91)との関連が認められた。・精神科再入院リスクの低下と関連した薬剤は、クロザピン(HR:0.54、95%CI:0.32~0.91)、リスデキサンフェタミン(HR:0.79、95%CI:0.69~0.91)、bupropion(HR:0.84、95%CI:0.74~0.96)、メチルフェニデート(HR:0.90、95%CI:0.84~0.96)であった。

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ウパダシチニブ、中等~重症クローン病に有効/NEJM

 中等症~重症のクローン病患者において、ウパダシチニブによる寛解導入療法および維持療法はプラセボと比較し優れることが、43ヵ国277施設で実施された第III相臨床開発プログラム(2件の寛解導入療法試験「U-EXCEL試験」「U-EXCEED試験」と1件の維持療法試験「U-ENDURE試験」)の結果で示された。米国・Mayo Clinic College of Medicine and ScienceのEdward V. Loftus氏らが報告した。ウパダシチニブは経口JAK阻害薬で、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、関節症性乾癬、アトピー性皮膚炎および強直性脊椎炎に対して承認されており、クローン病治療薬としても開発中であった。NEJM誌2023年5月25日号掲載の報告。ウパダシチニブvs.プラセボ、寛解導入療法と維持療法の有効性および安全性を比較 研究グループは、中等症~重症のクローン病で18~75歳の患者を対象とし、「U-EXCEL試験」では1剤以上の既存治療または生物学的製剤で効果不十分または不耐容の患者を、「U-EXCEED試験」では1剤以上の生物学的製剤で効果不十分または不耐容の患者を、ウパダシチニブ45mg群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、1日1回12週間投与する寛解導入療法試験を行った(二重盲検期)。さらに、両試験において臨床的奏効が認められた患者は、維持療法試験「U-ENDURE試験」に移行し、ウパダシチニブ15mg、同30mgまたはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、1日1回52週間の投与を受けた。 主要エンドポイントは、寛解導入療法(12週)、維持療法(52週)のいずれにおいても、臨床的寛解および内視鏡的改善とした。臨床的寛解は、クローン病活動指数(CDAI、スコア範囲:0~600、高スコアほど疾患活動性が重症であることを示す)のスコアが150点未満と定義した。内視鏡的改善は、中央判定による簡易版クローン病内視鏡スコア(SES-CD、スコア範囲:0~56、高スコアほど重症度が高いことを示す)が、ベースラインから50%超減少(ベースラインのSES-CDが4点の患者ではベースラインから2点以上の減少)と定義した。 U-EXCEL試験では526例、U-EXCEED試験では495例、U-ENDURE試験では502例が各群に無作為に割り付けられた。臨床的寛解、内視鏡的改善ともにウパダシチニブが有意に優れる 臨床的寛解を達成した患者の割合(ウパダシチニブ45mg群vs.プラセボ群)は、U-EXCEL試験で49.5% vs.29.1%、U-EXCEED試験で38.9% vs.21.1%、同じく内視鏡的改善は、U-EXCEL試験で45.5% vs.13.1%、U-EXCEED試験で34.6% vs.3.5%であり、プラセボ群と比較してウパダシチニブ45mg群で有意に高かった(すべての比較でp<0.001)。 また、U-ENDURE試験の52週時において、臨床的寛解を達成した患者の割合はウパダシチニブ15mg群37.3%、同30mg群47.6%、プラセボ群15.1%、同じく内視鏡的改善はそれぞれ27.6%、40.1%、7.3%であり、いずれもウパダシチニブの両用量群がプラセボ群より有意に高かった(すべての比較でp<0.001)。 安全性については、帯状疱疹の発現率は、ウパダシチニブ45mg群および30mg群がプラセボ群より高く、肝障害ならびに好中球減少症の発現率は、ウパダシチニブ30mg群が他の維持療法群より高かった。消化管穿孔が、ウパダシチニブ45mg群で4例、ウパダシチニブ30mg群ならびに15mg群で各1例に発現した。

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