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検索結果 合計:4245件 表示位置:3781 - 3800

3781.

ロタウイルスワクチン承認後、胃腸炎関連の救急コールサービスが減少

 ロタウイルスワクチン承認前後の地域救急コールサービスの変化を調べた結果、承認後は胃腸炎関連コールが減少し、そのピークが従来のロタウイルスシーズンよりも前倒しとなり、ノロウイルスとの関連を示すものに変化していたことが報告された。米国・ヴァンダービルト医科大学のWilliams DJ氏らがテネシー州で調べた結果で、「現在の地域の胃腸炎の病原体はノロウイルスであることが強調されるところとなった」と述べている。Pediatrics誌オンライン版2012年9月10日号の報告。 テネシー州の広域電話トリアージ・サービスにおける胃腸炎関連コールについて、ロタウイルスワクチン接種導入の影響を評価した。2004年5月1日~2010年4月30日の間、Vanderbilt Telephone Triage Programによる全コールサービスおよび胃腸炎関連コールサービスを受けた5歳未満児について調べた。 時系列ポアソン回帰モデルを用いて、ワクチン承認前(2004年5月~2007年4月)と承認後(2007年5月~2010年4月)の胃腸炎関連コールの週間比率を比較した。また独立モデルで、ロタウイルスシーズン(2~4月)と非ロタウイルスシーズン(5~1月)についても比較した 主な結果は以下のとおり。・全コール件数は15万6,362件、胃腸炎関連コールは1万9,731件であった。・胃腸炎関連コールの年間比率は、ロタウイルスワクチン承認後8%(95%信頼区間:3~12%)減少した。承認後3年間のロタウイルスシーズン期間中に31%から23%へと低下した。・非ロタウイルスシーズンには、低下は起きていなかった。・ワクチン承認後、ロタウイルス活性の低下と、胃腸炎関連のコール比率低下との関連が認められた。・ワクチン承認後の胃腸炎関連コール比率のピークは、ワクチン承認以前よりも早い段階に起きていた。またロタウイルスとの強い関連は認められず、代わってノロウイルス流行とかなり相関関係があることが示された。

3782.

多発性硬化症に対する新規経口薬BG-12、年間再発リスクを低下

 再発寛解型多発性硬化症に対し、新規開発中の経口薬BG-12(フマル酸ジメチル)は、プラセボと比較して長期の年間再発リスクを低下し、神経放射線学的転帰が有意に改善したことが示された。BG-12に関する第3相無作為化プラセボ対照試験「Comparator and an Oral Fumarate in Relapsing-Remitting Multiple Sclerosis:CONFIRM」の結果、報告されたもので、米国・クリーブランドクリニックのRobert J. Fox氏らが、NEJM誌2012年9月20日号で発表した。再発寛解型多発性硬化症は、一般に非経口薬(インターフェロンやグラチラマー酢酸塩)で治療されている。1,400例超を4群に分け2年間追跡、年間再発率を比較試験は28ヵ国、200ヵ所の医療機関で、再発寛解型多発性硬化症の患者1,417例を登録して行われた。研究グループは被験者を4群に分け、1群にはBG-12 240mgを1日2回投与、別の群には同1日3回投与、さらに別の群にはグラチラマー酢酸塩20mgを1日1回皮下注射、もう一群にはプラセボをそれぞれ投与した。被験者の平均年齢は、36~37歳、女性被験者の割合が約7割だった。主要エンドポイントは、2年時点の年間再発率だった。試験は、グラチラマー酢酸塩に対するBG-12の優位性や非劣性を検証するようにはデザインされなかった。240mgを1日2回投与で再発の相対リスクは44%減、3回投与で51%減その結果、2年時点の年間再発率は、BG-12 1日2回投与群が0.22、同1日3回投与群が0.20、グラチラマー酢酸塩群が0.29、プラセボ群が0.40であり、試験薬および実薬群はいずれもプラセボより有意に低下した。相対リスク減少率はそれぞれ、44%(p<0.001)、51%(p<0.001)、29%(p=0.01)だった。MRI診断では、BG-12 1日2回群、同1日3回群、グラチラマー酢酸塩群ともに、プラセボと比較してT2強調画像による高信号部の新たな出現または増大(3群ともp<0.001)が有意に少なかった。T1強調画像による低信号部の新たな病変(各群p<0.001、p<0.001、p=0.002)の数も有意に減少した。有害事象としてプラセボ群に比べ高率に認められたのは、顔面紅潮、BG-12群での胃腸症状などだった。一方、BG-12群での悪性新生物や日和見感染は認められなかった。

3783.

多剤耐性結核、PA-824を含む3剤併用レジメンが有望

 薬剤感受性の多剤耐性結核の新規治療法として、PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミド併用療法は適切なレジメンであり、今後、開発を進める価値があることが、南アフリカ共和国Stellenbosch大学のAndreas H Diacon氏らの検討で示された。薬剤抵抗性の結核による世界的な疾病負担を軽減するには、投与期間が短く耐性になりにくい新規薬剤の開発が求められる。近年、種々の新規抗結核薬の臨床評価が進められ、なかでもbedaquiline(ジアリルキノリン、TMC207)とPA-824(nitroimidazo-oxazine)は用量依存性の早期殺菌活性(early bactericidal activity; EBA)が確認され有望視されている。Lancet誌2012年9月15日号(オンライン版2012年7月23日号)掲載の報告。6つのレジメンのEBAを無作為化試験で評価研究グループは、肺結核に対する新規多剤併用レジメン14日間投与法の将来的な開発の適合性を評価するために、EBAに関するプロスペクティブな無作為化試験を行った。2010年10月7日~2011年8月19日までに、南アフリカ・ケープタウン市の病院に入院した薬剤感受性の単純性肺結核患者(18~65歳)を対象とした。これらの患者が、bedaquiline単独、bedaquiline+ピラジナミド、PA-824+ピラジナミド、bedaquiline+PA-824、PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミドあるいは陽性対照としての標準的抗結核治療(イソニアジド+リファンピシン+ピラジナミド+エタンブトール)を施行する群に無作為に割り付けられた。治療開始前の2日間、夜間の喀痰を採取し、開始後は毎日、薬剤投与までに喀痰を採取した。喀痰の液体培養中のM tuberculosisのコロニー形成単位(CFU)および陽性化までの時間(TTP)を測定した。主要評価項目は14日EBAとし、喀痰1mL中のlog10CFUの毎日の変化率を評価した。3剤併用レジメンのEBAが最良、標準治療に匹敵85例が登録され、標準治療群に10例、各治療レジメン群には15例ずつが割り付けられた。平均14日EBAは、PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミド群(13例、0.233[SD 0.128])が最も優れ、bedaquiline単独群(14例、0.061[SD 0.068])やbedaquiline+ピラジナミド群(15例、0.131[0.102])、bedaquiline+PA-824群(14例、0.114[0.050])との間に有意差を認めたが、PA-824+ピラジナミド群(14例、0.154[0.040])とは有意な差はなく、標準治療(10例、0.140[SD 0.094])との同等性が確認された。いずれのレジメンも忍容性は良好で、安全性が確かめられた。PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミド群の1例が、プロトコールで事前に規定された判定基準に基づき、補正QT間隔の過度の延長で治療中止となった。著者は、「PA-824+モキシフロキサシン+ピラジナミド併用療法は少なくとも標準治療と同等の有効性を示し、薬剤感受性の多剤耐性結核菌の治療として適切なレジメンである可能性が示唆される」と結論し、「多剤併用療法のEBA試験は、新たな抗結核治療レジメンの開発に要する時間の短縮化に寄与する可能性がある」と指摘している。

3784.

早漏治療にはSSRI、トラマドールが有効?!

 早漏の原因として、ノルアドレナリンやセロトニンなどの自律神経のバランス異常があると考えられている。これらノルアドレナリンやセロトニンの調整にはSSRIやSNRIなどの抗うつ薬が有する薬理作用が有効であるとも考えられる。中国のTao Wu氏らは、ノルアドレナリンやセロトニンの再取り込み阻害作用を有するがん疼痛治療剤トラマドールの早漏治療に対する有効性および安全性に関してメタアナリシスを行い検討した。Urology誌2012年9月号(オンライン版2012年7月26日号)の報告 Cochrane Library、MEDLINE、EMBASE、Science Citation Index Expandedを用いメタアナリシス、ランダム化および非ランダム化前向き試験を含む文献の検索を行った。エンドポイントは膣内射精潜時(分単位)、有害事象、患者報告によるアウトカム評価。膣内射精までの平均延長時間の差(mean difference)と有害事象を測定するためのオッズ比を算出した。オッズ比はランダム効果モデルまたは固定効果モデルを用いてプールし、異質性に関しても検証した。分析にはコクランのReview Manager (RevMan) 5.1ソフトを用いた。主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たす報告は7報あった。・抽出データのメタアナリシスでは、トラマドールはプラセボと比較し膣内射精潜時を3分延長したが(mean difference:2.77分、95%CI:1.12~4.47、p=0.001)、有害事象発現率は有意に多かった(オッズ比:2.89、95%CI:1.88~4.43、p

3785.

初回エピソード統合失調症患者、長期予後予測に新基準!

 統合失調症治療においては、初回エピソードでの治療が長期予後に影響を与える。そのため、初回エピソード統合失調症患者では早期改善を目指したより良い治療が求められる。ドイツ Schennach氏らは、1年間の追跡調査により初回エピソード統合失調症における早期治療反応の予測妥当性を評価し、現在用いられているカットオフ値(2週間で20%改善)による結果と比較した。Acta Psychiatr Scand誌オンライン版2012年9月8日号の報告。対象は初回エピソード統合失調症患者132例。治療後、第1~8週目までの精神病理学的改善の妥当性を予測し、52週目までの治療反応を検証した。同様に、最も合理的なカットオフ値を定義した。分析にはROC分析(Receiver operator characteristic)を用いた。新旧の早期治療反応定義の比較にはYouden指数を用いた。主な結果は以下のとおり。・予後を予測するための合理的なカットオフ値として、6週目でのPANSSトータルスコア51.6%改善が最も適切であることが確認された(曲線下面積:0.721)。・このカットオフ値を使用した74例の患者(56%)は、適切な治療反応が得られ、予後も良好であった(感度:0.747)。・「6週目のPANSSトータルスコア51.6%改善」は良好な長期予後を維持するための、早期治療反応に対するカットオフ値として妥当であると考えられる関連医療ニュース ・検証!日本人統合失調症患者の脂質プロファイル ・統合失調症患者における持効性注射剤:80文献レビュー ・認知機能への影響は抗精神病薬間で差があるか?

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(22)〕 苦悩のない人生なんて

今回は精神科医という立場からあえて批判的に検討してみよう。 BMJは素晴らしいジャーナルであるが、ご存知の通りしばしば英国式ジョークが掲載される。(今でも載っているのだろうか? 私はそれほど熱心な読者ではないので、間違っていたらごめんなさい)たとえば、タイタニック号の生存者が有意に長生きだったかどうか?(ご丁寧に「タイタニックスタディ」と名付けてある。Hanley JA et al. How long did their hearts go on? A Titanic study. BMJ. 2003; 327: 1457-1458.)とか、祈りの治療効果(過去の診療記録上の患者さんたちに対して、改めて祈ってみるという、衝撃のデザインである。Leibovici L. Effects of remote, retroactive intercessory prayer on outcomes in patients with bloodstream infection: randomized controlled trial. BMJ. 2001; 323: 1450-1451.)とかのことである。もちろん本論文はジョークではないようだ。 感情障害(うつ病等)が高い死亡率と関連することはすでに周知であろう。さらにそれが後年の脳梗塞や認知症の発症の危険因子であることも示されている(Framingham Studyなど)。なぜか悪性腫瘍を発症するという報告も多々ある。ここまでは精神科医としても納得できる。しかし本論文では、疾病と認知されない程度の苦悩が、死亡率を上げていると述べている。何点か疑問点を提示したい。 第1点は、GHQ-12はカットオフが3/4で妥当性が確認されているとあるのは、構造化面接による精神疾患診断の有無を外的基準としたと思われるが、カットオフ以下をさらに症候なし(0点)、潜在的(1~3点)に分けることに論理的に意味があるのかという素朴な疑問。第2点は、関連要因として重要と思われる失職、負債、離婚歴、ソーシャルサポート等が検討されていない点。これはデータがないから仕方ないのかもしれないが。第3点、この主張を敷衍すると苦悩は悪であると解釈しうるが(著者らがそこまで意図したかどうかはわからない)、ごく小さな苦悩を治療対象にすることには釈然としない点がある。というのは、今よりも少しよい生活を求めて努力する、あるいはリスクテイキングを行う場合、苦悩は一定の割合で避けられないのではないか? そしてそれはケインズがアニマルスピリットと呼んだような、われわれの生存維持に必要な本能なのではないだろうか(たとえ公衆衛生学的には死亡率の上昇として可視化されるにしても…)。精神科医としては「苦悩のない人生はない」と言いたい。 と、厳しいことを述べたが、批判のための批判をすることは本意ではない。このような議論を喚起した時点で、この論文は有意義である。そして私も苦悩を推奨しているわけではない。最後に、医師とは苦悩の多い職業であるが、読者諸兄にあられては死亡率の上昇と関連することを念頭に、死亡することなく息の長い社会貢献をしていただきたい、とうまくまとめておくことにしようか。

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HIV患者の抗レトロウイルス療法、プライマリ・ケア看護師への移行は可能か?

 HIV患者に対する抗レトロウイルス療法(ART)の導入や再処方を医師に代わって看護師が行うアプローチは安全に遂行可能であり、健康アウトカムやケアの質を改善することが、南アフリカ・ケープタウン大学肺臓研究所のLara Fairall氏らが実施したSTRETCH試験で示された。南アフリカにおけるART普及の主な障壁は治療医の不足であり、ART導入の遅れによりART待機患者の死亡率が上昇することが知られている。ARTの医師から他の医療職への職務移行の可能性に期待が寄せられているが、その有効性に関するエビデンスは十分でないという。Lancet誌2012年9月8日号(オンライン版2012年8月15日号)掲載の報告。STRETCHプログラムの効果をクラスター無作為化試験で評価STRETCH(Streamlining Tasks and Roles to Expand Treatment and Care for HIV)試験は、訓練を受けた看護師がARTの導入および再処方を行って治療の分散化を図るアプローチ(STRETCHプログラム)が、HIV患者の死亡、ウイルス抑制などの健康アウトカムに及ぼす効果を評価するクラスター無作為化試験。2008年1月28日~2009年6月30日までに、南アフリカの31のプライマリ・ケア施設を登録し、STRETCHプログラムを行う群(介入群)あるいは標準治療を継続する群(対照群)に無作為に割り付けた。それぞれの施設で治療を受けた患者を2010年6月30日までフォローアップした。2つのコホートが登録された。コホート1は16歳以上のCD4陽性リンパ球細胞数<350個/μLでARTを受けていない患者で、コホート2は試験開始時にすでに6ヵ月以上のARTを受けていた患者であった。主要評価項目は、コホート1が死亡までの期間、コホート2は登録後12ヵ月におけるウイルス量の検出不能率とした。検出不能は、ウイルス量が<400コピー/mLの場合とした。コホート1の死亡率:20% vs 19%、コホート2の検出不能率:71% vs 70%コホート1の5,390例およびコホート2の3,029例が介入群に、コホート1の3,862例およびコホート2の3,202例が対照群に割り付けられた。フォローアップ期間中央値はコホート1が16.3ヵ月、コホート2は18.0ヵ月だった。コホート1では、試験終了時までに介入群の20%(997/4,943例)、対照群の19%(747/3,862例)が死亡し、死亡までの期間は両群間に有意な差は認めなかった(ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.76~1.15)。ベースラインのCD4陽性リンパ球細胞数が201~350/μLの患者に関する事前に計画されたサブグループ解析では、死亡率が対照群に比べ介入群で低い傾向がみられた(HR:0.73、95%CI:0.54~1.00、p=0.052)。一方、<200/μLの患者では両群間で同等だった(HR:0.94、95%CI:0.76~1.15、p=0.577)。コホート2では、登録後12ヵ月の時点におけるウイルス量の検出不能率は介入群が71%(2,156/3,029例)、対照群は70%(2,230/3,202例)であり、両群間で同等であった(リスク差:1.1%、95%CI:−2.4~4.6)。著者は、「ARTの導入および再処方を含むプライマリ・ケア看護師の職務拡大は安全に遂行可能であり、健康アウトカムやケアの質を改善するが、未治療例のART導入に要する時間や死亡率は改善しないことが示された」と結論し、「このアプローチを南アフリカよりも医師へのアクセスに制限がある地域や無医地区に適用可能かという問題については別の試験を行う必要があるが、われわれの看護師訓練法やガイドライン作成法はすでにガンビアやマラウィに導入されている」という。

3788.

経口アンドロゲン受容体阻害剤XTANDI 米国で新発売

 アステラス製薬株式会社は14日、米国メディベーション社と共同で開発・商業化を進めているXTANDI(米国製品名、p-INN:エンザルタミド、開発コード:MDV3100)について、米国で発売したことを発表した。なお、XTANDIは専門薬局等を通じて提供されるとのこと。  米国食品医薬品局(FDA)は、2012年8月31日に、ドセタキセルによる化学療法施行歴を有する転移性去勢抵抗性前立腺がんの効能・効果で、XTANDIを承認した。また、同社とメディベーション社は、処方された薬剤の入手および保険償還に関する患者へのサポートを目的とした、患者アクセス支援プログラム「XTANDI Access Services」を開始している。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/xtanditm.html

3789.

心筋梗塞後のクロピドグレルの効果は、糖尿病合併の有無で違いがあるか?

 心筋梗塞発症後のクロピドグレル(商品名:プラビックス)服用について、糖尿病がある人は、ない人に比べ、全死亡リスクや心血管死リスクへの有効性が低下することが報告された。デンマーク・コペンハーゲン大学のCharlotte Andersson氏らが、心筋梗塞発症患者約6万人について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2012年9月5日号で発表した。糖尿病患者は、クロピドグレルを服用しているにもかかわらず、薬力学試験において高い血小板反応性が認められている。臨床試験においては、糖尿病患者へのクロピドグレル服用効果が非糖尿病患者と同等であるか否かについて、明らかな結果は出ていなかったという。被験者の12%が糖尿病、6割がクロピドグレル服用研究グループは、2002~2009年にかけて、デンマークで心筋梗塞により入院後、生存退院し、退院後30日以内には冠動脈バイパス術を行わなかった5万8,851人を対象に、退院後1年時点まで追跡した。クロピドグレルの服用とアウトカムについて、糖尿病の有無により比較した。主要アウトカムは、全死亡率、心血管死と、心筋梗塞または全死亡の複合アウトカムだった。被験者のうち、糖尿病が認められたのは7,247人(12%)だった。また、試験開始時点でクロピドグレルを服用していたのは3万5,380人(60%)だった。結果、心筋梗塞または全死亡の複合アウトカム発生は、糖尿病患者では25%(1,790人)、非糖尿病患者は15%(7,931人)だった。そのうち死亡は、糖尿病患者17%(1,225人)、非糖尿病患者は10%(5,377人)だった。死亡において心血管系イベントに起因する死亡は、糖尿病患者80%(978人)、非糖尿病患者は76%(4,100人)だった。死亡リスク、クロピドグレルで糖尿病患者は0.89倍、非糖尿病患者は0.75倍に糖尿病患者について、クロピドグレル服用群の補正前全死亡率は13.4/100人・年に対し、クロピドグレル非服用群の同死亡率は29.3/100人・年だった。一方、非糖尿病患者では、クロピドグレル服用群の補正前全死亡率は6.4/100人・年に対し、クロピドグレル非服用群の同死亡率は21.3/人・年だった。クロピドグレル服用の死亡率低下についての有効性について糖尿病の有無で比較したところ、糖尿病群の死亡ハザード比は0.89(95%CI:0.79~1.00)であったのに対し、非糖尿病群は0.75(同:0.70~0.80)で、糖尿病群の有効性の低下が認められた(相互作用に関するp=0.001)。心血管死についても、クロピドグレル服用糖尿病群のハザード比が0.93(同:0.81~1.06)であったのに対し、非糖尿病群は0.77(同:0.72~0.83、同p=0.01)だった。しかし、複合エンドポイントに関するクロピドグレルの有効性は両群で有意差はなく、ハザード比はそれぞれ1.00(同:0.91~1.10)、0.91(同:0.87~0.96)だった(p=0.08)。傾向スコア適合モデルでも同程度の結果が得られた。

3790.

変形性関節症の関連遺伝子座を同定:arcOGEN試験

 変形性関節症と強い関連を示す5つの遺伝子座の存在が、英国・Wellcome Trust Sanger InstituteのEleftheria Zeggini氏らarcOGEN Consortium and arcOGEN Collaboratorsの検討で明らかとなった。変形性関節症は世界的に最も高頻度にみられる関節炎で、高齢者における痛みや身体障害の主要原因であり、その医療経済的な負担は肥満の増加や加齢に比例して増大する。変形性関節症には強力な遺伝要因がみられるが、以前に行われた遺伝子解析はサンプル数が少なく、表現型の不均一性のためその限界が指摘されていた。Lancet誌2012年9月1日号(オンライン版2012年7月3日号)掲載の報告。関連遺伝子領域を重症患者のゲノムワイド関連研究で探索arcOGEN(Arthritis Research UK Osteoarthritis Genetics)試験は、レトロスペクティブおよびプロスペクティブに選出された非血縁の重症変形性関節症患者7,410人(80%が関節全置換術施行例、非血縁対照1万1,009人)を対象に、英国で実施された大規模な症例対照ゲノムワイド関連研究(GWAS)。arcOGEN試験の結果をdiscovery dataとし、アイスランド(deCODE試験)、エストニア(EGCUT試験)、オランダ(GARP試験、RSI試験、RSII試験)、英国(TwinsUK試験)から収集した最大7,473人の非血縁患者と4万2,938人の対照において、最も関連性が高いと考えられる遺伝子領域の同定を目的に再現性の検討を行った(replication data)。さらに、discovery dataとreplication dataのメタ解析を実施した。すべての患者と対照が欧州の家系だった。治療介入に適したシグナル伝達経路の同定の可能性も変形性関節症との有意な関連を示す5つの遺伝子座[二項検定:p≦5.0×10-8]と、これらよりも閾値がわずかに低い3つの遺伝子座を同定した。変形性関節症と最も強い関連を示したのは第3染色体のrs6976[オッズ比:1.12、95%CI:1.08~1.16、p=7.24×10-11]で、rs11177との完全な連鎖不平衡が確認された。このSNPには、ヌクレオステミンのコード遺伝子であるGNL3(Guanine Nucleotide-binding protein-Like 3)内のミスセンス多型がコードされ、ヌクレオステミンは変形性関節症患者の軟骨細胞で高度に発現していた。そのほか、第9染色体のASTN2近傍、第6染色体のFILIP1とSENP6の間、第12染色体のKLHDC5とPTHLHの近傍、第12染色体CHST11近傍の領域が、変形性関節症と有意な関連を示した。体重は変形性関節症の強力なリスク因子だが、体重調節に関与するFTO遺伝子内にも、変形性関節症と密接な関連を示す領域がみつかった。著者は、「これらの知見は、関節炎の遺伝子研究に本質的な洞察をもたらし、治療介入に適した新たな遺伝子シグナル伝達経路の同定に道を開くものだ」と結論づけている。

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ダニ媒介の新種のフレボウイルス、米国で特定

 米国・ミズーリ州北部で発生した重症熱性疾患は、ダニを媒介として人へと感染した、新種のウイルスによるものであることが特定されたと、米国CDCのLaura K. McMullanらが報告した。このウイルスを「ハートランドウイルス(Heartland virus)」と命名したという。NEJM誌2012年8月30日号の短信報告より。血清、PCR、培養で特定できず、電子顕微鏡検査にてブニヤウイルス科のウイルスと確認発生の報告は2009年初期で、男性2人が発熱、倦怠感、下痢、血小板減少症と白血球減少症で医療施設に搬送されたことだった。2人は見ず知らずの他人であったが、両者とも症状発症5~7日前にダニにかまれていた点が共通していた。当初は、病原体としてEhrlichia chaffeensisが疑われたが、血清、PCR、培養においても特定できず、電子顕微鏡検査にてブニヤウイルス科に属するウイルスであることが確認された。研究グループは、その後の次世代シーケンサーと系統発生学的分析から、このウイルスをフレボウイルス属の新種と特定した。フレボウイルス属には抗原が異なる70種以上のウイルスがあるが、大きくスナバエ、蚊、ダニが媒介するタイプに分類される。このうちスナバエを媒介としたフレボウイルスは、アメリカ、アジア、アフリカ、地中海沿岸部で広く特定されていたが、ダニが媒介となりヒトへと感染し血小板減少症候群を伴う重度発熱(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome:SFTS)を発症したことが特定されたフレボウイルスは、2009年に中国中・北東部で特定された報告例が唯一だという。「ハートランドウイルス」と命名研究グループの今回の調査では、ダニから新規ウイルスは分離できず、患者に付着していたダニは入手できなかったなどいわゆる「コッホの原則」は不完全であったが、「患者の臨床症状からアメリカにおける新種のフレボウイルスであると信じるに足りる」と報告した。そして、「ハートランドウイルス」と命名したたこの新種のウイルスに関して、人から人へ感染する可能性があるのかも含め、発生率、疾患重症度や詳しい臨床経過が明らかではないが、媒介の可能性が高い背中の1つ星模様が特徴のダニA. americanumがミズーリ州中南部に多く存在し、北大西洋に面するメイン州まで生息が確認されていることなどを踏まえて、現在認められるよりも発生が広がっている可能性を指摘。「この新種のウイルスの疾患負荷、感染のリスク、自然宿主を特定する疫学的および生態学的研究が必要だ」と報告をまとめている。

3792.

抗がん剤Halaven、オーストラリアで承認取得

 エーザイ株式会社は7日、オーストラリアにおける医薬品販売会社「エーザイ・オーストラリア・プライベート・リミテッド」が、抗がん剤「Halaven(一般名:エリブリンメシル酸塩)」について、「アントラサイクリン系及びタキサン系抗がん剤を含む少なくとも2種のがん化学療法による前治療歴のある局所進行性・転移性乳がん」に係る効能・効果でオーストラリア保健・高齢化省(Department of Health and Aging)の承認を取得したと発表した。 Halavenは、同社が自社創製・開発した新規抗がん剤であり、前治療歴のある進行又は再発乳がんを対象とした臨床第III相試験(EMBRACE試験)において、単剤で統計学的に有意に全生存期間を延長した世界で初めてのがん化学療法剤である。現在、今回のオーストラリアでの承認を含めて世界39カ国で承認を取得している。 今回の承認によって、オーストラリアにおいてもアンメット・メディカル・ニーズの高い後期転移性乳がんの患者がこの革新的な治療薬にアクセスすることが可能となるという。詳細はプレスリリースへhttp://www.eisai.co.jp/news/news201260.html

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認知症治療にいま必要とされていること~症状改善のカギは?

 小野薬品工業株式会社は、認知症の啓発活動の一環として、アルツハイマー型認知症の“バアちゃん”とその家族を描いたヒューマンドラマ「バアちゃんの世界」を制作し、インターネット上に公開した。http://www.egaotokokoro.jp/ba-chan/  このドラマの公開を機に、2012年9月3日にプレスセミナーが開催され、京都大学医学部附属病院 老年内科 診療科長の武地 一氏と、山形厚生病院 理事長/東北大学老年内科 臨床教授の藤井昌彦氏が、「認知症治療にいま必要とされていること」をテーマに講演した。その内容をレポートする。薬剤の処方だけではなく、周囲との関係性修復も欠かせない 武地氏は「認知症治療の地域連携とトータルケア」について、その重要性を紹介した。 ある試算によると、2人に1人は生涯の間に認知症に罹患すると推定されており、誰もが身近に経験する可能性がある。認知症では、知的障害、精神障害、身体障害という3つの障害をすべて併せ持つ可能性があり、かかりつけ医、サポート医、専門医、介護関係者、地域包括支援センターなど多くの連携が求められる。しかし、それらの関係づくりは難しく、今後は地域連携が重要である、と武地氏は述べた。 一方、認知症の治療では、単に薬剤を処方するだけではなく、患者と周囲との関係性の破壊の予防やすでに壊れた関係性の修復、きめ細かな知識の普及により偏見に陥らないように支援することが欠かせない。認知症という疾患の特性から、「診断→治療」という従来の医学モデルだけでは対応できないこと、周囲の人々との関係性に障害が生じやすいこと、日常生活のさまざまな動作・場面や意思能力も含め、生活全般に関わってくることなどから、トータルケアが必要となる。 認知症治療薬については、ドネペジルに加えて、昨年、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンが発売され、この4剤を1日投与回数、剤形、薬理作用などで使い分けることができるようになった。武地氏は、平成17年度国内基盤技術調査報告書ではアルツハイマー型認知症の治療満足度は5%ほどであったことを紹介し、今後は、4剤の登場、地域連携、トータルケアによって大いに向上するのではないか、と期待を示した。抗認知症薬と身柱マッサージの併用でBPSDが改善 次いで藤井氏が、「ふれる優しさ:介護負担軽減~リバスタッチとスキンシップの相乗効果~」と題し、BPSD(認知症の行動・心理症状)をスキンシップによって軽減させる取り組みを紹介した。 藤井氏によると、BPSDはその出現以前に、介護者に自分の要求をきいてもらえないなどの些細なストレスの積み重ねがあり、ついにはそれがコントロールできなくなって引き起こされるという。また、介護者の行動精神異常状態を指すBPSC(behavioral and psychological symptoms of the caregiver)とBPSDは相関関係にあり、介護者が否定・拒否するとBPSDが増大し、寄り添うことによりBPSDは軽減される。介護者の態度がBPSDを誘発しているため、介護者が患者とよりよい関わりを持つことが重要である、と藤井氏は述べた。  認知症患者には「知」よりも「情」に語りかけることが重要である。「情」を活性化するには、大脳辺縁系に心地よい刺激を与える必要があるが、触るという刺激が最もよい。患者は介護者に触れられることで、心地よい、大切にされていると感じ、BPSDが軽減する。藤井氏は、自施設において足浴療法、抱擁療法により、良好な効果が得られていることを紹介した。 さらに藤井氏は、薬物療法と非薬物療法を組み合わせた「ハイブリッド療法」の有効性について自験例を紹介した。施設入所者を対象に、リバスチグミンを貼付するのみの群(10例)と、介護従事者が「身柱」(正中線上の第3胸椎棘突起と第4胸椎棘突起の間)と言われる背中のツボを1~2分マッサージした後にリバスチグミンを貼付する群(10例)に分け、BPSDをNPIスコアで評価したところ、身柱マッサージを組み合わせた群でNPIスコアが有意に改善し(p<0.05、Wilcoxon検定)、スタッフの印象もよくなったとのことである。 このことから、藤井氏は、薬物療法と身柱マッサージのような非薬物療法を組み合わせたハイブリッド医療により、BPSDについても効率的に解決し得るのではないかと述べ、今後、さまざまなハイブリッド療法の組み合わせを行い、実際の臨床の場に活かしていきたい、と締めくくった。

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交代勤務で血管イベントが増加、200万人以上の国際的メタ解析

 交代勤務制の労働形態により、血管イベントが有意に増加することが、カナダ・ウェスタン大学のManav V Vyas氏らの検討で示された。交代勤務は、一般に規則的な日中勤務(おおよそ9~17時の時間帯)以外の勤務時間での雇用と定義され、高血圧、メタボリック症候群、脂質異常症、糖尿病のリスクを増大させることが知られている。さらに、概日リズムの乱れにより血管イベントを起こしやすいとの指摘があるが、相反するデータもあるという。BMJ誌2012年8月25日号(オンライン版2012年7月26日号)掲載の報告。交代勤務と血管イベントの関連をメタ解析で評価研究グループは、交代勤務と主要な血管イベントの関連を文献的に検討するために、系統的なレビューとメタ解析を行った。主な文献データベースを検索し、主要論文、レビュー論文、ガイドラインの文献リストに当たった。解析の対象は、非交代勤務者または一般住民を対照群とし、交代勤務に関連する血管疾患、血管死、全死因死亡のリスク比について検討している観察試験とした。試験の質はDowns and Blackスケールで評価し、主要評価項目は心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈イベントとした。試験の異質性はI2統計量で評価し、メタ解析にはランダム効果モデルを用いた。心筋梗塞23%、虚血性脳卒中5%、冠動脈イベント24%増加、死亡率との関連はない日本の4試験を含む34試験(前向きコホート試験11件、後ろ向きコホート試験13件、症例対照試験10件)に参加した201万1,935人が解析の対象となった。交代時間は早期夜間が4件、不規則で不特定な時間が6件、混合勤務時間が11件、夜間が9件、ローテーション制が10件で、7件は複数のカテゴリーを比較していた。30件は非交代の日中勤務を、4件は一般住民を対照群としていた。心筋梗塞の発生数は6,598件(10試験)、虚血性脳卒中は1,854件(2試験)、冠動脈イベントは1万7,359件(28試験)だった。交代勤務は心筋梗塞[リスク比:1.23、95%信頼区間(CI):1.15~1.31、I2=0%]および虚血性脳卒中(同:1.05、1.01~1.09、I2=0%)と有意な関連があり、試験間に有意な異質性(I2=85%)を認めたものの冠動脈イベント(同:1.24、1.10~1.39)も有意な関連を示した。統合リスク比は、未調整解析およびリスク因子で調整後の解析の双方で有意差を認めた。早期夜間の交代勤務以外の勤務形態はいずれも冠動脈イベントのリスクが有意に高かった。死亡率の上昇と交代勤務には関連はなかった。成人勤労者の有病者の32.8%を交代勤務者が占めるカナダのデータに基づき、交代勤務の人口寄与リスクを算出したところ、心筋梗塞が7.0%、虚血性脳卒中が1.6%、冠動脈イベントは7.3%であった。著者は、「交代勤務は血管イベントを増加させる。これらの知見は社会政策や職業医学に示唆を与えるものだ」と結論し、「交代勤務者には心血管疾患の予防のために最初期の症状に関する教育が行われるべきである。今後、最も罹病しやすいサブグループを同定し、交代時間の改善戦略が全般的な血管の健康に及ぼす効果を検討する研究が求められる」と指摘する。

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診療科の垣根を越えNon Cancer Pain治療の啓発

 医師を対象とした慢性疼痛学習プログラムJ-PAT(Japan Pain Assessment and Treatment/企画・運営:ヤンセンファーマ)が、8月25〜26日開催された。このプログラムは医師の慢性疼痛に対する薬物療法の理解を深め、患者さんの治療満足度向上を目的に全国主要7都市で行われており、今回は大阪国際会議場を会場として実施された。 休みにも関わらず、プログラムには約40名の医師が参加した。参加者の内訳は整形外科医が半数以上と最も多く、次に麻酔科医、そして内科、外科系医であった。参加者の傾向も整形外科における疼痛治療の盛り上がりを反映しているようである。J-PATは整形外科、麻酔科、精神科、薬理専門家など多領域の専門医による監修を受けて企画・運営されているが、今回は西宮市立中央病院 麻酔科・ペインクリニック科 前田倫氏、尼崎中央病院 整形外科 三木健司氏、愛媛大学医学部 脊椎センター・整形外科 尾形直則氏、徳島赤十字病院 麻酔科 井関明生氏、ヤンセンファーマ サイエンティフィックアフェアーズ 川井康嗣氏の5人の講師がテーマ毎に講義を行った。講演内容は痛みの概念・定義、痛みの評価法、薬物療法の全般、オピオイドの適正使用、治療法の疾患各論など幅広く、2日目後半は実症例をもとに薬物療法の実際をケーススタディ形式で紹介した。セッション後の質疑応答では、各疾患領域での疼痛治療の実際、オピオイドの使い方、鎮痛補助薬の使い方など参加者から多くの質問が寄せられ、活発な議論が行われた。 日本の慢性疼痛患者は約2,200万人に達すると推計されている。しかし、患者さんの受診科は痛みの専門家であるペインクリニック以上に整形外科や一般内科に多く、専門外の知識が必要とされているのが現状である。 慢性疼痛においては、手術療法、薬物療法、リハビリテーション、心理療法などの多面的なアプローチが必要である。薬物療法が注目される傾向があるが、あくまで治療の一部である。痛みの原因となっている疾患の診断、がんなどリスク因子の鑑別、手術など適切な治療手段選択を検討した上で、初めて薬物療法を考慮することとなる。ここ数年、有効な薬剤が数多く登場し、薬物療法の適応は広がったものの、安易な薬物治療によるトラブルも少なくはないという。上記の原則を守った上で、適切に薬剤を使用する事が重要である。 一方で、日本における慢性疼痛に対する医学教育も十分とは言い難い。疼痛治療薬の選択を例にとっても欧米がNSAIDs、オピオイド、抗けいれん薬、抗うつ薬などの薬剤を疾患により使い分けているのに対し、日本ではどの疾患でもNSAIDsの使用比率が圧倒的に高いという結果もこの現れといえるかも知れない。痛みは、数値化しにくく、また患者さんの主観的な症状であるため、治療は非常に難しい。また、診療科や疾患によって痛みの背景も異なり、医師の捉え方も異なる。十分な知識を持ち合わせた医師を育成し、適正使用を推進する事が急務といえよう。そういう意味で、J-PATのようなセミナーを通じて、慢性疼痛を診る機会が多い麻酔科医、整形外科医、内科医が一堂に会し痛みおよびその治療についての理解を深めていくことは重要であり、画期的だといえる。慢性疼痛に対する薬物療法の理解が深まり、治療満足度の向上されることを期待したい。J-PATに関する問い合わせ先:ヤンセンファーマ株式会社 コミュニケーション・アンド・パブリックリレーションズ部(電話:03-4411-5046)または営業担当者まで

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細胞診で確定されない甲状腺結節、遺伝子発現分類法が評価を改善

 診断的手術によってその大半が良性と判明するものの通常の細胞診では確定されない良性の甲状腺結節について、167個の遺伝子の表現型を尺度とした新しい診断法である遺伝子発現分類法を術前検査に用いることで、診断的手術をより多く回避するよう示唆されることが、米国・ハーバードメディカルスクール/ブリガム&ウィメンズ病院のErik K. Alexander氏らによる大規模前向き検証試験の結果、明らかにされた。穿刺吸引によって評価される甲状腺結節の約15~30%は、良性なのか悪性なのかが判然とせず診断的手術となることが多い。遺伝子発現分類法は、術前リスク評価を改善することが有望視されていた。NEJM誌2012年8月23日号(オンライン版2012年6月25日号)掲載報告より。大規模前向き多施設共同試験で、遺伝子発現分類法の妥当性を検証研究グループが行ったのは、診断不確定の甲状腺結節患者における遺伝子発現分類法の妥当性を検証することを目的とした、大規模前向き二重盲検多施設共同検証試験。19ヵ月間にわたり49の臨床施設の協力を得て、患者3,789例、穿刺吸引で評価が必要とされた1cm以上の甲状腺結節検体4,812個を対象とした。細胞診では診断されなかった検体577個が入手でき、うち413個は切除病変からの病理組織学的検体だった。検証は、中央の盲検下で行われた病理組織学的レビューの結果を参照基準として行われ、試験の包含基準を満たした265個の不確定結節検体を用いて遺伝子発現分類を行い、その分類精度を評価した。悪性の感度92%、特異度52%、陰性適中率は85~95%結果、265の不確定結節のうち、悪性のものは85個だった。遺伝子発現分類により、疑わしかった結節85個のうち78個を正確に同定した。感度は92%(95%信頼区間:84~97)、特異度は52%(同:44~59)だった。「臨床的重要性未定の異型(または濾胞性病変)である」「濾胞性腫瘍または濾胞性腫瘍が疑われる病変である」「疑わしい細胞学的所見」についての陰性適中率は、それぞれ95%、94%、85%だった。結果的に陰性だった吸引検体7個について解析した結果、6個で甲状腺濾胞細胞が不足していて、結節標本が不十分であることが示唆された。結果を踏まえ著者は、「今回のデータによって、穿刺吸引による細胞診で不確定の甲状腺結節を有し遺伝子発現分類法で良性である患者の大半は、より保存的なアプローチを考慮する必要性が示唆された」と結論している。

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急性期の新たな治療選択となりうるか?非定型抗精神病薬ルラシドン

 現在、国内でも開発が進められている非定型抗精神病薬 ルラシドン。本剤の統合失調症の急性増悪期に対する有効性および安全性を評価した試験結果がPsychopharmacology (Berl)誌オンライン版2012年8月19日号で発表された。大日本住友製薬 小笠氏らは「ルラシドンは統合失調症の急性増悪期に有効であり、体重や脂質代謝への影響も少ない」と報告した。 急性期増悪期の統合失調症患者を対象としたプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験。ルラシドン40㎎群50例、ルラシドン120㎎群49例、プラセボ群50例に無作為に割り付け、1日1回固定用量にて6週間投与した。有効性の主要評価項目は、BPRS(簡易精神症状評価尺度)、PANSS(陽性・陰性症状評価尺度)のベースラインからの変化量とした。主な結果は以下のとおり。・ルラシドン40㎎群および120㎎群におけるBPRSの平均変化量は、プラセボ群と比較し有意に高かった(-9.4 and -11.0 vs -3.8、各々 p=0.018 、 p=0.004)。・ルラシドン120㎎群は副次評価を含めたすべての評価項目でプラセボ群よりも優れていた(PANSS総合スコア:p=0.009、PANSS陽性尺度:p=0.005、PANSS陰性尺度: p=0.011、PANSS総合精神病理尺度:p=0.023、CGI-S[臨床全般印象・重症度尺度]:p=0.001)。・ルラシドン40㎎群はPANSS陽性尺度(p=0.018)およびCGI-S(p=0.002)においてプラセボ群より優れていた。・ルラシドン群における最も一般的な有害事象は、悪心(16.2% vs 4.0%[プラセボ群])、鎮静(16.2% vs 10.0%[プラセボ群])であった。・体重、コレステロール、トリグリセリド、グルコース濃度の変化は最小限であった。関連医療ニュース ・統合失調症患者における「禁煙」は治療に影響を与えるか? ・デポ剤使用で寛解率は向上するのか? ・ルラシドンの長期投与試験

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『ボストン便り』(第41回)「世界の主流としての当事者参画」

星槎大学共生科学部教授ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー細田 満和子(ほそだ みわこ)2012年8月31日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。紹介:ボストンはアメリカ東北部マサチューセッツ州の州都で、建国の地としての伝統を感じさせるとともに、革新的でラディカルな側面を持ち合わせている独特な街です。また、近郊も含めると単科・総合大学が100校くらいあり、世界中から研究者が集まってきています。そんなボストンから、保健医療や生活に関する話題をお届けします。(ブログはこちら→http://blog.goo.ne.jp/miwakohosoda/)*「ボストン便り」が本になりました。タイトルは『パブリックヘルス 市民が変える医療社会―アメリカ医療改革の現場から』(明石書店)。再構成し、大幅に加筆修正しましたので、ぜひお読み頂ければと思います。●マサチューセッツ慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎と繊維筋痛症(CFIDS/ME and FM)の会「この夏、ME/CFSの研究は大きく前進するための舵を切った」と、半年ぶりに再会したナンシーは、いつものように低いトーンの落ち着いた声で静かに言いました。彼女は、「マサチューセッツ CFIDS/ME and FMの会」の理事の一人です。この病気に30年以上も罹っていて、病気についての専門知識は深く、医学研究の進捗状況や医師たちの動向、さらにアメリカ内外の他の患者団体の動きにも精通しています。ナンシーは患者のための地域活動もしていて、地区患者会の例会の場所をとったり、会員に連絡したりしています。例会当日の会場設営もしていて、会員に和やかな楽しい時間を過ごしてもらおうと、スーツケース2つにお茶やお菓子を準備し、季節にちなんだ飾りつけもします。私が同行させて頂いた2月のバレンタインの月の例会は、ピンクと赤がテーマで、テーブルクロスは赤、紙皿や紙コップやナプキンはハートの模様で、ハート形の置物も用意されていました。ナンシーから手渡された、最近のアメリカ政府のME/CFS対策についての書類には、次のようなことが書かれていました。2012年6月13日と14日に、HHS(The Health and Human Services)は、慢性疲労症候群諮問委員会(The Chronic Fatigue Syndrome Advisory Committee: CFSAC)を開催しました。委員には10人のメンバーが選ばれましたが、臨床の専門家、FDA(食品医薬品局)代表を含む7人の元HHSメンバーのほかに、患者アドボケイトもメンバーとして入りました。そして、3時間にわたる公聴会が行われました。その他にも7つの患者団体の代表が報告をする機会が設けられました。さらに、このCFSACとは別に、HHSは所属を越えて協働できるために慢性疲労症候群の特別作業班(Ad Hoc Working Group on CFS)も結成しました。そこには、CDC(疾病予防管理センター)、NIH(国立健康研究所)、FDA(食品医薬品局)など各部局の代表も含まれています。こうした委員会や作業班が作られた背景には、オバマ大統領の意向があるといいます。インディアナ・ガジェットというオンライン新聞によると、ネバダ州のリノに住むME/CFS患者の妻は、2011年5月にオバマ大統領に、ME/CFS患者の救済、特にこの病因も分からず治療法もない病気の解明の為に、研究予算を付けて助けて欲しいという手紙を出しました。これに対してオバマ氏は、NIHを中心に研究を進めるための努力をすると回答しました。また、オバマ氏は、偏見を呼ぶCFSという病名にも配慮を示し、MEと併記したとのことでした。新聞記事は「これでオバマは新しい友人を何人か作った」と結ばれています。全米で約100万人いると推計されているこの病気の患者が味方になるなら、目前に大統領選を控えたオバマ氏にとって政治的に大きな力になることでしょう。●スウェーデンにおける自閉症とアスペルガーの会スウェーデンのストックホルム県に住むブルシッタとシュレジンは、ふたりとも「自閉症とアスペルガーの会」の有給職員です。ブルシッタには33歳になる自閉症の息子さんがいて、シュレジンには20歳になる自閉症と発達障害の息子さんがいます。8月に発達障害児・者への施策や医療を視察するためにスウェーデンを訪れたのですが、その際にこの二人にお会いしました。「自閉症とアスペルガーの会」は、患者も患者家族も、医療提供者も社会サービス提供者も学校関係者も、関心がある人がすべて入れる会です。親が中心になって1975年に設立され、ストックホルム県内では会員が3,000人います。全国組織もあって、こちらは会員が12,000人います。活動としては、メンバーのサポートをしたり、子どもたちの合宿を企画したりしています。ホームページがあり、機関誌も出しています。ブルシッタによれば現在の会の中心的な活動は、政治的な動きだといいます。確かに会の活動が様々な施策を実現してきたことは、色々なところで実感しました。今回、ストックホルム県内の、様々な制度を見聞したり施設(発達障害センター)を訪れたりしました。その際に、こうした制度や施設をコミューン(地方自治体)に作らせるように働きかけてきたのは、「自閉症とアスペルガーの会」のような親たちや専門職が加入している自閉症や発達障害の患者会だったということを、何人もの施設の長の方々から聞きました。さらには、自閉症に対する大学の研究にも、こうした患者会は大きな役割を果たしています。カロリンスカ研究所に付属する子ども病院における自閉症研究グループであるKIND(発達障害能力センター)は、企業やEU科学評議会などからの資金援助を受けていますが、その時大きな後押しになったのが、「自閉症とアスペルガーの会」だったといいます。KINDのディレクターのスティーブン・ボルト氏は、会からの大きな支えを強調していました。スウェーデンでは1980年代にハビリテーションのシステムが作られ、生きてゆくうえで支援が必要な人々に対する支援が整えられてきましたが、十分とは言えないままでした。それが1994年に施行されたLLS(特別援護法)によって、支援の制度は大きく前進しました。この法律の制定にも、患者団体などの利益団体の働き掛けが大きな後押しになったそうです。2004年にスタートした自閉症のハビリテーションセンターや、2007年にスタートしたADHD(注意欠陥・多動性障害)センターでも、責任者の方は口々に、患者会が政治家に働きかけることでセンターが誕生したと言っていました。そして、このような支援を受けることは、ニーズのある人々の権利なのだと繰り返していました。●各国での患者会の現状スウェーデンに先立って訪れたアルゼンチンで開かれた国際社会学会でも、各国で患者会が医療政策決定において重要な役割を担っていることが報告されました。私が発表した医療社会学のセッションでは、イギリスからは「当事者会・患者会とイングランドのNHS(National Health Service:筆者挿入)の変化」、イタリアからは「トスカーナ地方における健康保健サービスの向上と社会運動の役割」と題される研究成果が紹介されました。それぞれ、地域におけるヘルスケア改革に、当事者団体や患者団体のアドボカシー活動が大きな役割を果たしたことに関する実証研究でした。最後に私の発表の番となり、「日米における患者と市民の参加」と題した、日本とアメリカの合わせて7つの患者会に対する、アンケート調査とインタビュー調査の結果を報告しました。この調査は、2010年から2011年にかけて行われたもので、患者会の意味と役割について、メンバーに意識を尋ねたものです。アンケートに対しては、日本では132票、アメリカでは109票の有効回答が寄せられ、インタビューの方では23人の方が対象者になってくださいました。患者会は、脳障害、脳卒中、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群、ポストポリオ症候群、卵巣がんなどでした。当初は、アメリカの患者会の方が日本よりも、政治的問題に発言してゆくアドボカシー活動への関心が高く、実際に活動も行っているという仮説を立てましたが、どちらの国も同程度に関心が高く、活動をしているという結果が認められました。ただし日米とも、患者会がアドボカシー活動を積極的に行うようになってきたのは、ここ10年から20年のことだといいます。それまでは、患者や親たちは問題を個人で抱え込むしかなかったといいます。患者や親たちは、病気による身体的あるいは生活上の苦しさを理解されず、ましてや支援など受けることもできませんでした。そして逆に、病気のことをよく知らない一般の人や医療者から、非難するような言葉や態度を浴びせられてきたといいます。30年以上も筋痛性脳脊髄炎の患者であったナンシーの言葉を借りれば、「社会からは理解されず、医療者から虐待されてきた」というのです。それは発達障害を持つ子や親も同様でした。スウェーデンでも80年代くらいまでは、ADHDや自閉症を持つこども達は、さまざまな失敗をしては親や教師から叱られ、親の方も育て方が悪いと周囲から非難されてきたといいます。●日本の患者会昨年9月に、東京で開催されたランセットの医療構造改革に関するシンポジウムでは、タイからの登壇者に「日本では患者会との協働はどのようになっているのですか」と聞かれ、「患者会は、自分たちの半径5メートルしか見ていない」ので意見を聞いても仕方ないというようなことを権威ある立場の日本人医師が答え、椅子から転げ落ちるほどびっくりしました。ランセットの会議に招待されるような方が、そのようなことを国際社会の場で発言するとは、日本の医師をはじめとする医療界の認識の浅さや遅れではないか忸怩たる思いがしたものです。このことは、以前にMRICにも書きましたが、この状況は今後変わってゆくでしょうか。日本でも、いくつかの患者会はアドボカシー活動をしています。例えばNPO法人筋痛性脳脊髄炎の会(通称、ME/CFSの会)は、偏見に満ちた病名を変更させるために患者会の名前を変えました。そして、この病気の研究を推進してもらいように、厚労副大臣や元厚労大臣を始め、何人もの国会議員や厚労省職員に面会し、研究の重要性と必要性を訴えかけました。さらに、ME/CFS患者が適切な社会サービスを受けられるようにするため、いくつもの地方自治体の長や議会に要望書を提出し、複数において採択されてきています。さらにME/CFSの会は、この病気の世界的権威ハーバード大学医学校教授のアンソニー・コマロフ氏に、会が11月4日に開催するシンポジウムに向けてのメッセージも頂きました。ME/CFSは、未だに日本では医療者からも家族からも想像上の病気や精神的なものと誤解され、患者が苦しんでいることをご存知のコマロフ氏は、この病気が器質的なものであることを繰り返し、日本でも研究が進められるように呼びかけました。実際に研究が進んだり、社会サービスが受けられるようになったりといった具体的な成果はなかなか上がって来ていませんが、この様に患者会は、様々な活動を行い、続けていればいつか実現すると信じて続けられています。●当事者参画の可能性アルゼンチンの国際社会学会で同じセッションに参加していらしたシドニー大学教授のステファニー・ショート氏は、「私たち社会学者は、特に私の世代は、マルクス主義の影響が大きかったから、体制批判とか、社会運動とか、っていう視点で見ちゃうのよね。でも、今は時代が変わったわね」、とおっしゃっていました。彼女はまた、私の行った日米調査の調査票を使って、今度はオーストラリアでやろうという共同研究の話を持ちかけてくれました。もちろんぜひ調査を実施してみたいと思っています。次の国際社会学会の大会は横浜で開催されます。ちょうど私の所属する星槎大学も横浜に事務局がありますので、医療社会学の面々のパーティ係を任命されました。会場探しもしますが、その時までに、日本の行政や医療専門職が患者会の役割を重視し、患者のための医療体制ができてきたという報告をこの学会で発表できるようになればいいと思いました。謝辞:スウェーデンの患者会は、セイコーメディカルブレーンの主催する研修で知り合いました。研修を企画して下さった同社会長の平田二郎氏、研修参加を推奨し財政的支援をして下さった星槎グループ会長の宮澤保夫氏に感謝いたします。また、日米患者会調査の実施に当たって、資金の一部を助成して下さった安倍フェローシップ(Social Science Research Councilと日本文化交流基金)に感謝の意を表します。<参考資料>インディアナ・ガジェット オバマ、CFSについて応えるhttp://www.indianagazette.com/b_opinions/article_75b181eb-bd88-5fe4-bc90-f7b09f869ffd.html略歴:細田満和子(ほそだ みわこ)星槎大学教授。ハーバード公衆衛生大学院リサーチ・フェロー。博士(社会学)。1992年東京大学文学部社会学科卒業。同大学大学院修士・博士課程の後、02年から05年まで日本学術振興会特別研究員。コロンビア大学公衆衛生校アソシエイトを経て、ハーバード公衆衛生大学院フェローとなり、2012年10月より星槎大学客員研究員となり現職。主著に『「チーム医療」の理念と現実』(日本看護協会出版会)、『脳卒中を生きる意味―病いと障害の社会学』(青海社)、『パブリックヘルス市民が変える医療社会』(明石書店)。現在の関心は医療ガバナンス、日米の患者会のアドボカシー活動。

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ナイアシン/laropiprant併用の忍容性に疑問符。導入期間を含めおよそ1万5千例が脱落:HPS2-THRIVE試験

8月26日の「クリニカルトライアル&レジストリ・アップデート I」セッションでは、HPS2-THRIVE試験の安全性中間解析が報告された。今回の発表は主に安全性に関する中間解析報告であり、忍容性に疑問を投げかけるものとなった。オックスフォード大学(英国)のJane Armitage氏が報告した。本試験は、ナイアシンによる動脈硬化性イベント抑制効果を検討する試験である。「LDL-C低下療法+ナイアシン」による心血管系イベント抑制作用は、昨年のAHAで報告された二重盲検試験AIM-HIGH (Atherothrombosis Intervention in Metabolic Syndrome with Low HDL/High Triglycerides and Impact on Global Health Outcomes)で、すでに否定されている。しかしAIM-HIGHの試験規模は登録数3,424例であり、HPS2-THRIVEに比べると小さい。またナイアシンによる顔面潮紅で二重盲検化が破られぬよう、対照群にも低用量のナイアシンを服用させていた。一方、HPS2-THRIVEは、laropiprant(ナイアシンによる顔面潮紅抑制剤)で潮紅抑制を図っているため、プラセボ群はナイアシンを全く服用していない。AIM-HIGHと異なり、純粋な「ナイアシン vs プラセボ」の比較が企図されている。HPS2-THRIVE試験の対象は、心筋梗塞、脳卒中、PVDあるいは冠動脈疾患合併糖尿病例である。ナイアシン/laropiprant(2g/日)群とプラセボ群に無作為化された。HDLコレステロール(HDL-C)を増加させるナイアシンが血管系イベントを抑制させるか、現在も二重盲検法で追跡中である(ただし全例、シンバスタチン 40mg/日(±エゼチミブ 10mg/日)によるLDLコレステロール(LDL-C)低下療法を受けている)。本試験では無作為化前、適格となった38,369例に、導入期間として8週間ナイアシン療法(ナイアシン/laropiprant)を行った。その結果、33.1%にあたる12,696例が脱落(服用中止)していた。うち76.9%(9,762例)は、薬剤が脱落の原因とされた。脱落理由として明らかな症状は、皮膚症状、消化管症状、筋症状などである。上記を経て、最終的に25,673例が無作為化された。42.6%は中国からの登録である。平均年齢は64.4歳、83%が男性だった。78%に冠動脈疾患、32%に脳血管障害、13%に末梢動脈疾患を認め、33%が糖尿病例(重複あり)だった。今回、「中間安全性解析」として報告されたのは、無作為化後平均3.4年間における試験薬服用中止例の割合とその理由である。ナイアシン療法群では、無作為化後さらに、24.0%(3,084例)が新たに脱落していた(15.7%が服用薬関連)。プラセボ群は15.4%である(服用薬関連は7.5%)。群間差の検定なし。ナイアシン療法群で発現率の高かった有害事象は、「皮膚症状」(5.1%)、「消化器症状」(3.6%)、「骨格筋症状」(1.6%)、「糖尿病関連」(0.9%)、「肝障害」(0.7%)である。いずれもプラセボ群よりも高い数値だった。ただし「肝障害」には一過性のものが含まれている。そのため重篤な肝障害に限れば、ナイアシン療法群、プラセボ群とも発現率は0.1%となった。また、ナイアシン療法群では「筋障害」発現率が0.54%と、プラセボ群の0.09%に比べ有意に高かった(リスク比:5.8、95%信頼区間:3.1~10.7)。この「筋障害」の増加は、主として中国人におけるリスク増加の結果だった(ナイアシン療法群:1.13% vs プラセボ群:0.18%)。Armitage氏によれば、2013年には臨床転帰を含む最終報告が行われるという。来年の結果報告が待たれる。関連リンク

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抗凝固療法下の抗血小板療法DAPTよりもクロピドグレル単剤が出血リスクが低い:WOEST試験

心房細動(AF)など、抗凝固療法が必要な患者にステント留置を行う場合、抗血小板療法はアスピリン・クロピドグレル併用(DAPT)よりもクロピドグレル単剤のほうが、心血管系イベントを増加させることなく出血性合併症を有意に抑制することを、WOEST (What is Optimal antiplatelet and anticoagulant therapy in patients with oralanticoagulation and coronary stenting) 試験が明らかにした。この点を検討した初の無作為化試験である。8月28日の「ホットラインIII」セッションにて、聖アントニオ病院(オランダ)のWillem Dewilde氏が報告した。WOEST試験の対象は、抗凝固療法を1年以上継続し、無作為化後すぐに経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が予定されていた18歳以上の563例である。重篤な出血既往例は除外されている。平均年齢は70歳、約8割が男性だった。抗凝固療法を必要とする疾患の70%近くをAFが占めた。また抗凝固薬は7割がワルファリンだった。PCIの内訳は、薬物溶出ステントDES(ベアメタルステント [BMS]との併用含む )が70%弱、BMS単独が30%となっていた。これら563例は抗凝固療法を継続のうえ、DAPT群(284例)とクロピドグレル単剤群(279例)に無作為に割り付けられた。DAPT群ではアスピリン80mg/日+クロピドグレル75mg/日、クロピドグレル単剤群では75mg/日を服用した。抗血小板薬の服用期間は、BMS留置例では最低1ヵ月間(最大でも1年間)、DES留置例では最低1年間とした。その結果、一次評価項目である「1年間の全TIMI出血」は、DAPT群:44.9%に対しクロピドグレル単剤群では19.5%と有意に低値となっていた(ハザード比:0.36、95%信頼区間:0.26~0.50;p

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