お知らせがあります

2024/06/27
7月10日より「Web講演会」「CARENQ」の送信元メールアドレスを変更いたします。
■変更前:seminar@carenet.co.jp、enquete@carenet.co.jp
■変更後:seminar@www.carenet.com、enquete@www.carenet.com
メールアドレスまたはドメインによる受信拒否や振り分けなどを設定されている方は、設定の変更をお願いいたします。

サイト内検索|page:3

検索結果 合計:4227件 表示位置:41 - 60

41.

英語で「膿の切開と排膿」は?【1分★医療英語】第132回

第132回 英語で「膿の切開と排膿」は?《例文》医師To treat the abscess, the best course of action will be the I&D procedure, which stands for Incision and Drainage.(膿瘍を治療するために、最適な処置としてはI&Dです。これは切開排膿という意味です)患者Does the procedure hurt?(その処置は痛いですか?)《解説》今回は“I&D”という略語についての解説です。これは“abscess”(膿瘍)の切開排膿の処置を示す表現です。“Incision(切開)and Drainage(排膿)”という表現を略して、“I&D”と表現します。発音としては「アインディー」という感じです。“and”が文の間に入る際、英語だと「ン」のみしか発音しないので注意です。医療者間であれば、当たり前のように“I&D”という表現が使われます。口語のみでなく、カルテにも“I&D”と記載されることが多くあります。“I&D”のみでも“I&D procedure”でも構いません。ただし、医療に詳しい人でない限り患者さんはこの用語を知りませんので、使う際には《例文》のように、“Incision and drainage procedure”といった補足説明が必要でしょう。私が現場で働いている際にも「Please prepare the stuff forアインディー」といった感じで言われて「???」となった経験があるため、今回紹介させていただきました。この文は「切開排膿に必要なものを準備しておいて」という意味ですね。講師紹介

42.

CVDの1次予防にバイオマーカー追加は有用か/JAMA

 心血管イベントの1次予防において、5つの心血管バイオマーカーはいずれもアテローム性動脈硬化性心血管疾患の発生と有意に関連するものの、その関連性は小さく、心不全と死亡率についてはより強力な関連を認めるが、確立された従来のリスク因子と心血管バイオマーカーを組み合わせてもアテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスク予測能の改善はわずかであることが、ドイツ・University Heart and Vascular Center HamburgのJohannes Tobias Neumann氏らの検討で示された。研究の成果はJAMA誌オンライン版2024年5月13日号で報告された。28件の住民ベースのコホート研究の患者データを解析 研究グループは、日本を含む12ヵ国で行われた28件の住民ベースのコホート研究から得た個々の患者データを用いて、心血管バイオマーカーおよび従来のリスク因子に心血管バイオマーカーを加えた場合の予後予測能の評価を行った(European Union project euCanSHareの助成を受けた)。 これらのコホート研究では、心血管バイオマーカーとして、高感度心筋トロポニンI、高感度心筋トロポニンT、N末端プロ脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)、脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、高感度C反応性蛋白(hs CRP)を測定した。追跡期間中央値は11.8年だった。 主要アウトカムは、すべての致死的および非致死的なイベントを含む初発のアテローム性動脈硬化性心血管疾患(冠動脈性心疾患イベント[possibleまたはdefinite]、脳梗塞イベント[同]、冠動脈血行再建、冠動脈性心疾患死、脳梗塞死、分類不能の死亡)の発生とした。全バイオマーカーで有意な関連、全死因死亡、心不全との関連が強い 16万4,054例(年齢中央値53.1歳[四分位範囲[IQR]:42.7~62.9]、女性52.4%)を解析の対象とした。アテローム性動脈硬化性心血管疾患イベントは1万7,211件発生した。 すべてのバイオマーカーで、アテローム性動脈硬化性心血管疾患の発生と有意な関連を認めた。1SDの変化当たりのサブディストリビューション・ハザード比は、高感度心筋トロポニンIが1.13(95%信頼区間[CI]:1.11~1.16)、高感度心筋トロポニンTが1.18(1.12~1.23)、NT-proBNPが1.21(1.18~1.24)、BNPが1.14(1.08~1.22)、hs CRPが1.14(1.12~1.16)であった。 副次アウトカムである全死因死亡、心不全、脳梗塞、心筋梗塞の発生についても、同様の有意な関連がみられた。バイオマーカーと全死因死亡および心不全との関連は、アテローム性動脈硬化性心血管疾患との関連よりも強力であった。バイオマーカーの併用も有望 確立されたリスク因子を含むモデルに、それぞれ単一のバイオマーカーを加えると、C統計量が改善した。 また、高感度心筋トロポニンI、NT-proBNP、hs CRPを併用すると、10年間のアテローム性動脈硬化性心血管疾患発生のC統計量が、65歳未満では0.812(95%CI:0.8021~0.8208)から0.8194(0.8089~0.8277)へ、65歳以上では0.6323(0.5945~0.6570)から0.6602(0.6224~0.6834)へと改善した。 さらに、これらのバイオマーカーを組み合わせると、従来のモデルと比較して、リスクの再分類も改善された。 著者は、「すべてのバイオマーカーはアテローム性動脈硬化性心血管疾患の発生だけでなく、全死因死亡、心不全、脳梗塞、心筋梗塞の予測因子であった。いずれのバイオマーカーも、致死的または非致死的なアテローム性動脈硬化性心血管疾患イベントと比較して、全死因死亡および心不全と強い関連を示すという興味深い知見が得られた」とまとめている。

43.

風邪の予防・症状改善に亜鉛は有用か?~コクランレビュー

 風邪症候群の予防や症状持続期間の短縮に関して、確立された方法はいまだ存在しない。しかし、この目的に亜鉛が用いられることがある。そこで、システマティック・レビューおよびメタ解析により、風邪症候群の予防や症状改善に関する亜鉛の効果が検討された。その結果、亜鉛には風邪症候群の予防効果はないことが示唆されたが、症状持続期間を短縮する可能性が示された。Maryland University of Integrative HealthのDaryl Nault氏らがThe Cochrane Database of Systematic Reviews誌2024年5月9日号で報告した。 研究チームは、風邪症候群や上気道感染の予防または症状改善に関する亜鉛の効果をプラセボと比較した無作為化比較試験を検索した。検索には、CENTRAL、MEDLINE、Embase、CINAHL、LILACSを用い、2023年5月22日までに登録された試験を抽出した。また、Web of Science Core Collectionや臨床試験登録システムへ2023年6月14日までに登録された試験も検索した。エビデンスの確実性はGRADEを用いて評価した。また、有害事象についても調べた。 システマティック・レビューの結果、34試験(予防:15試験、治療:19試験)に参加した8,526例が対象となった。22試験が成人を対象としたもので、12試験が小児を対象としたものであった。 予防目的、治療目的での亜鉛の使用に関する主な結果は以下のとおり。【予防目的での使用】・風邪症候群の発症リスクは、プラセボと比較してほとんどまたはまったく低下しない可能性がある(リスク比[RR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.85~1.01、I2=20%、9試験[1,449例]、エビデンスの確実性:低い)。・風邪症候群を発症した場合、症状持続期間はプラセボと比較してほとんどまたはまったく短縮しない可能性がある(平均群間差:-0.63日、95%CI:-1.29~0.04、I2=77%、3試験[740例]、エビデンスの確実性:中程度)。・有害事象の発現リスクの違いは不明である(RR:1.11、95%CI:0.84~1.47、I2=0%、7試験[1,517例]、エビデンスの確実性:非常に低い)。・重篤な有害事象の発現リスクの違いも不明である(RR:1.67、95%CI:0.78~3.57、I2=0%、3試験[1,563例]、エビデンスの確実性:低い)。【治療目的での使用】・風邪症候群の症状持続期間は、プラセボと比較して短縮する可能性がある(平均群間差:-2.37日、95%CI:-4.21~-0.53、I2=97%、8試験[972例]、エビデンスの確実性:低い)。・非重篤な有害事象の発現リスクは、プラセボと比較して増加する可能性がある(RR:1.34、95%CI:1.15~1.55、I2=44%、16試験[2,084例]、エビデンスの確実性:中程度)。・重篤な有害事象に関する報告はなかった。 著者らは、本システマティック・レビューおよびメタ解析において、エビデンスの確実性が低いまたは非常に低い結果が多かったという限界を指摘しつつ、「亜鉛は風邪症候群の予防には、ほとんどまたはまったく効果がないことが示唆される。一方、治療に用いる場合は、非重篤な有害事象を増加させる可能性はあるが、風邪の罹病期間を短縮する可能性がある」とまとめた。

44.

糖尿病診療GL改訂、運動療法では身体活動量の評価と増加に注目/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会より、5年ぶりの改訂となる『糖尿病診療ガイドライン2024』1)が5月23日に発表された。5月17~19日に第67回日本糖尿病学会年次学術集会が開催され、シンポジウム9「身体活動増加を可能にする社会実装とは何か?」において、本ガイドラインの第4章「運動療法」を策定した加賀 英義氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院 糖尿病・内分泌内科)が本章の各項目のポイントについて解説した。 本ガイドライン第4章「運動療法」の構成は以下のとおり。・CQ4-1糖尿病の管理に運動療法は有効か?・Q4-2運動療法を開始する前に医学的評価(メディカルチェック)は必要か?・Q4-3具体的な運動療法はどのように行うか?・Q4-4運動療法以外の身体を動かす生活習慣(生活活動)は糖尿病の管理にどう影響するか? ※今回の改訂でQ4-4の項目が新たに追加された。CQ4-1糖尿病の管理に運動療法は有効か? 本ガイドラインではCQを作成する場合、基本的にメタ解析(MA)やシステマティックレビュー(SR)を行う必要がある。ただし、運動療法に関しては既存の有益なMA/SRが存在していたため、それらのアンブレラレビューにて評価された。 加賀氏は本発表にて、ガイドライン策定に当たり参考とした論文を紹介した。2型糖尿病患者の運動の効果については、有酸素運動またはレジスタンス運動のどちらもHbA1cを低下させる。とりわけ2011年のJAMA誌掲載の論文で、週150分以上の運動は、週150分未満と比較し、HbA1c低下効果が有意に高いという結果が示されており2)、現状、週150分が目安となっている。ただし、今回のアンブレラレビューに用いられた研究では、糖尿病の血糖コントロールに関しては、週100分以上の量反応関係はそれほどなく、週100分程度の運動でもHbA1cの低下効果が期待できるという結果が示されている3)。 近年、筋力トレーニングやレジスタンス運動に関するMA/SRが増え、エビデンスが蓄積しているという。レジスタンス運動をすることは、運動しない場合と比較すると、血糖コントロール、フィットネスレベル、体組成、脂質、血圧、炎症、QOLなどを有意に改善することが示されている。一方、レジスタンス運動群と有酸素運動群を比較すると、血糖コントロールに関しては有酸素運動のほうが効果が高く、筋量増加についてはレジスタンス運動のほうが効果的であることなどが示されている4)。 1型糖尿病に関しては、血糖コントロールに運動療法が有効かどうかは、成人と小児共に一定の見解が得られていないため「推奨グレードU」としている。1型糖尿病の場合、インスリン分泌能の残存度合いが異なることにより、運動療法の効果が個人間で異なる可能性がある。ただし、成人では体重、BMI、LDL-C、最大酸素摂取量、小児では総インスリン量、ウエスト、LDL-C、中性脂肪について、運動療法により有意に改善がみられたとする研究もあったという5)。Q4-2運動療法を開始する前に医学的評価(メディカルチェック)は必要か? Q4-2は基本的に2019年版を踏襲している。糖尿病の運動療法を開始する際に懸念されるのが有害事象であるが、とくに3大合併症の網膜症、腎症、神経障害についてきちんと評価し、整形外科的疾患の状態を把握して指導することが必要だと、加賀氏は解説した。心血管疾患のスクリーニングに関しては、軽度~中等度(速歩きなど日常生活活動の範囲内)の運動であれば必要ないが、普段よりも高強度の運動を行う場合や、心血管疾患リスクの高い患者、普段座っていることがほとんどの患者に対しては、中等度以上の強度の運動を開始する際はスクリーニングを行うのが有益な可能性もある。加賀氏は、低強度の運動から始めることが合併症を防ぐために最も有用な方法だと考えられると述べた。 運動療法を禁止あるいは制限したほうがよい場合については、『糖尿病治療ガイド2022-2023』に記載のとおりである6)。とくに注意すべきは、増殖前網膜症以上の場合と、高度の自律神経障害の場合であり、運動療法開始前にその状態を把握しておく必要がある。Q4-3具体的な運動療法はどのように行うか? Q4-3のポイントとして、有酸素運動は、中強度で週150分かそれ以上、週3回以上、運動をしない日が2日間以上続かないように行い、レジスタンス運動は、連続しない日程で週に2~3回行うことがそれぞれ勧められ、禁忌でなければ両方の運動を行うということが挙げられた。有酸素運動は、心肺機能の向上を主な目的とするため、最初は低強度から始め、徐々に強度と量を上げていく。高齢者においては柔軟・バランス運動がとくに重要となるという。Q4-4運動療法以外の身体を動かす生活習慣(生活活動)は糖尿病の管理にどう影響するか? 2024年版で新たにQ4-4が追加された。「身体活動量=生活活動+運動」であり、生活活動は「座位時間を減らす」という言葉に置き換えることが可能だという。本項のポイントは、現在の身体活動量を評価し、生活活動量を含めた身体活動の総量を増加させることにある。そのためには、日常の座位時間が長くならないように、合間に軽い活動を行うことが勧められる。 参考となる研究によると、食後に軽度の運動をすることで血糖値の改善効果を得られる。30分ごとに3分間、歩行やレジスタンス運動をすることによって、食後の血糖値が改善できる7)。CGMを用いた研究では、1日14時間の座位時間を、30分ごとに10分程度の立位や歩行で約4.7時間少なくすると血糖値が改善したことが示されている8)。国内における2型糖尿病患者の運動療法の実施率を調べた研究によると、患者の運動療法の実施率は約半数であり9)、糖尿病がある人の身体活動量を増やすことが課題となっている。 加賀氏は、米国糖尿病学会が毎年発表している「糖尿病の標準治療(Standards of Care in Diabetes)」を参考として挙げ10)、身体活動に対する指針の項目で、「現在の身体活動量および座位時間を評価し、身体活動ガイドラインを満たしていない人に対しては、身体活動量を現在より増やすこと」という記載が近年追加されたことを指摘した。2024年版から「2型糖尿病における24時間を通した身体活動の重要性(Importance of 24-hour Physical Behaviors for Type 2 Diabetes)」を示した表も掲載されており、座位/座り過ぎの解消、運動、身体機能の向上、筋力の強化、歩行/有酸素運動、睡眠の質や量といった24時間を通した評価が重視されている。運動療法ガイドラインの未来 加賀氏は講演の最後に、「現在、スマートフォンやスマートウォッチでかなり正確に生活活動量を測定できるため、まず自身の身体活動量を測定することから開始し、その次に行動することが重要であると考えている。今後は、ゲームやVRを使った運動について、2型糖尿病患者を対象としたRCTが増えれば、ガイドラインに組み込まれることになるかもしれない。そのほか、2型糖尿病患者の運動療法の老年疾患に関するMA/SRの充実、スポーツジムの有効な活用法など、エビデンスの蓄積に期待したい」と、運動療法ガイドラインの未来について見解を述べた。■参考文献1)日本糖尿病学会編著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂;2024.2)Umpierre D, et al. JAMA. 2011;305:1790-1799.3)Jayedi A, et al. Sports Med. 2022;52:1919-1938.4)Acosta-Manzano P, et al. Obes Rev. 2020;21:e13007.5)Ostman C, et al. Diabetes Res Clin Pract. 2018;139:380-391.6)日本糖尿病学会編著. 糖尿病治療ガイド2022-2023. 文光堂;2022.7)Dempsey PC, et al. Diabetes Care. 2016;39:964-972.8)Duvivier BM, et al. Diabetologia. 2017;60:490-498.9)佐藤祐造ほか. 糖尿病. 2015;58:850-859.10)American Diabetes Association Professional Practice Committee. Diabetes Care. 2024;47:S77-S110.

45.

高知大学医学部 腫瘍内科学講座【大学医局紹介~がん診療編】

佐竹 悠良 氏(教授)栗岡 勇輔 氏(助教)佐藤 拓弥 氏(医員)坂本 秀男 氏(医員)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴現在確立されている推奨治療である「Standard Therapy」をエビデンスに基づき実践することに加え、国内外のがん専門施設や臨床試験グループと連携し、先進的な治療法を開発・提供できる国際共同治験・臨床試験を実施しています。また、希望者には国立がん研究センター東病院や静岡県立静岡がんセンター、神戸市立医療センター中央市民病院をはじめとするHigh volume centerでの研修が可能です。がん薬物療法を外来中心に提供しており、土日・夜間の救急時間帯などに緊急で呼び出されることも少なく、医局員のQOLに配慮していることも特徴です。今後医局をどのように発展させていきたいか私自身、恩師や周りの先生方からのご指導・ご支援に加え、多くの機会を頂き、現在の立場に至ることができたと感謝しています。医局の若い先生方には、さらに良い経験、活躍の場を提供できればと考えています。医師の育成方針若い先生方がエビデンスに基づき自分自身で考え導いた方針や結論を尊重しつつ、時には私の臨床経験も交えてより良い結果を導くことができるよう、各人の自主性を重んじ、サポートしたいと考えています。同医局でのがん診療/研究のやりがい高知県は高齢化が進んでおり、また地理的に東西に広いにもかかわらず、地域のがん診療病院が中心部に偏在している、という特徴があります。そのため当院では、大学病院さながらの数多くの臨床試験の実施やあまたの希少がん・原発不明がんの診療はもちろん、遠隔地域の高齢患者も非常に多く診療しており、市中病院で診るような日常的ながん診療も多く経験できます。また研究も臨床研究のみならず、高知ならではのテーマも多数あり、現在遠隔医療をがん診療に生かすことができないかとも考えております。幅広く腫瘍内科としての活躍ができること必至です。医局の雰囲気、魅力教授含め、非常に若い医局です。無用な束縛/上下関係はなく、できてまだ間もない医局のため、新しいことにチャレンジしたい先生や勤務に比較的自由度が欲しい先生にぴったりです。雰囲気はとても良く、院内外にかかわらず困りごとはすぐ相談できる、非常に良い環境だと思います。医学生/初期研修医へのメッセージがん治療は日進月歩で腫瘍内科医の必要性は今後さらに増えていきます。腫瘍内科に少しでも興味を持たれた方、高知の美食ついでにふらっと気軽に当科を見学してみたい方、ぜひご連絡お待ちしております!カンファレンスの様子これまでの経歴高校卒業後、大阪大学工学部に進学、研究のヒントを得るために高知大学医学部教授である父の研究室を訪ねました。研究や開発に関心を抱くと同時に、医師という職業にも興味を持ち、卒業後に関西医科大学に入り直しました。がんの新規治療を考えるレポート課題の際、「遺伝子組み換えウイルスを用いたがんの治療開発ができれば面白そうだ」と考えたことがきっかけで、腫瘍内科領域に関心を持ちました。同医局を選んだ理由佐竹教授とは関西医科大学在学中からご縁があり、当科をローテートしました。初期研修時代に、シンガポールで開催された国際的臨床腫瘍学会での発表機会に恵まれるとともに、名誉ある賞を頂けることとなり、入局の後押しとなりました。今後のキャリアについて臨床のほか、たくさん研究もしたいと考えています。2024年度には晴れて個人研究助成金の獲得がかなったため、より一層研究活動にいそしむ所存です。大学やがんセンターで経験を積み、最終的には高知県のがん診療に貢献できればと思っています。同医局を選んだ理由初期研修中、これからの進路に迷っていた時に、1学年上の先輩に誘われたことがきっかけです。勉強会および学会参加を通じて臓器横断的にがん治療に携わることに興味を抱くとともに、医局員の先生方がエネルギッシュに働いていることに感銘を受けて入局を決断しました。また同時期に祖父が胃がんStageIVと診断されましたが、医局員の先生方が親身に相談に乗ってくださり、家族に的確なアドバイスをすることができてやりがいを感じました。現在学んでいること主に入院患者の病棟業務に従事して、内科医としてスキルの向上に努めています。またカンファレンスで初診患者の治療方針をプレゼンしたり、エキスパートパネルに参加したりと、よりがん治療に関して専門的分野の見識も広げています。今後のキャリアプラン内科専門医、そしてがん薬物療法専門医取得のために研鑽を積んでいきます。また自分がより専門性を高めたいと思えるがん種の分野を探し、その専門性を磨くために国内留学ができればと考えています。高知大学医学部 腫瘍内科学講座住所〒783-8505 高知県南国市岡豊町小蓮問い合わせ先im92@kochi-u.ac.jp医局ホームページ高知大学医学部 腫瘍内科学講座専門医取得実績のある学会日本内科学会日本臨床腫瘍学会日本遺伝性腫瘍学会日本肉腫学会日本消化管学会日本消化器内視鏡学会日本消化器病学会日本肝臓学会日本救急医学会研修プログラムの特徴(1)内科標準タイプ:サブスペシャリティが未決定の場合にじっくりと幅広い内科研修が可能(2)サブスペシャリティ重点研修タイプ:より早期にサブスペシャリティ領域専門医として活躍したい人向け詳細はこちら高知大学医学部附属病院 医療人育成支援センター 専門研修プログラム高知地域医療支援センター

46.

frail(フレイル)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第5回

言葉の由来高齢者医療やケアの分野でよく耳にする「フレイル」は、英語の“frailty”から取り入れられた日本語です。日本語の「フレイル」は、「フレイルである」など名詞として使われていますが、それに対応する英語の“frail”は実際には形容詞です。無理やりカタカナを当てるのであれば「フレイルティ」が名詞、ということになります。“frailty”という単語は、古代フランス語の“frailete”などに起源を持ち、ラテン語の“fragilitas”から派生したものだといわれています。ラテン語の“fragilis”は「壊れやすい」「脆い」という意味であり、物理的なものだけでなく、健康や生命の脆弱性を指す場合にも使われます。このように、“frailty”は本質的な「脆さ」「弱さ」を表す意味合いを持つことから、高齢者が抱える身体的、心理的な「脆さ」や機能低下を指すのに使われるようになったようです。“frailty”を既存の日本語に置き換えると「脆弱性」または「虚弱」となりますが、医療現場や福祉の分野では主にカタカナの「フレイル」という表現が用いられます。「虚弱」という言葉も同様の状態を指すと思われますが、この言葉には加齢に伴う不可逆的な衰えという印象が定着しており、一般には「体力がない」という身体的な意味合いで用いられます。しかし、“frailty”はしかるべき介入によって可逆的になりうる問題であり、また身体的な側面に限定されず、心理的、社会的な側面をカバーする言葉であるため、あえて日本語では「フレイル」という言葉が選ばれた、という経緯があるそうです。併せて覚えよう! 周辺単語身体機能低下physical decline老年症候群geriatric syndrome脆弱性vulnerability高齢者総合的機能評価comprehensive geriatric assessment健常なrobust(frailの対義語として用いられる)この病気、英語で説明できますか?Frailty is a condition often seen in older adults, characterized by an aging-related decline in physical, psychological, and social functioning. It encompasses not just the loss of physical strength but also includes vulnerability to stressors, increased risk of falls, and a higher likelihood of hospitalization.参考日本老年医学会. “フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント”. 2014-05.(参照2024-05-09)講師紹介

47.

症候性閉塞性肥大型心筋症へのaficamten、酸素摂取量や身体機能が改善/NEJM

 症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)患者において、経口選択的心筋ミオシン阻害薬aficamtenはプラセボと比較し最大酸素摂取量を有意に改善させたことが示された。米国・Lahey Hospital and Medical CenterのMartin S. Maron氏らSEQUOIA-HCM Investigatorsが、14ヵ国101施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「SEQUOIA-HCM試験」の結果を報告した。閉塞性HCM患者における運動耐容能低下や症状の主な原因の1つは、左室流出路(LVOT)閉塞による心内圧の上昇である。aficamtenは、心筋の過剰収縮を軽減することによってLVOT圧較差を減少させることが示唆されていた。NEJM誌オンライン版2024年5月13日号掲載の報告。aficamten vs.プラセボ、主要エンドポイントは最大酸素摂取量 研究グループは、HCMと確定診断された、スクリーニング時の左室駆出率が60%以上、LVOT圧較差が安静時30mmHg以上、バルサルバ負荷時50mmHg以上、NYHA機能分類IIまたはIII度、推定最大酸素摂取量(pVO2)が90%以下の患者(18~85歳)を、β遮断薬の使用の有無および心肺運動負荷試験の方法(トレッドミルまたは自転車エルゴメーター)で層別化し、aficamten群またはプラセボ群に無作為に割り付け、1日1回24週間経口投与した。投与量は1回5mgから開始し、心エコー検査の結果に基づき2週目、4週目および6週目に5mgずつ増量可とし、最大用量は20mgであった。 主要エンドポイントは、心肺運動負荷試験で評価したpVO2のベースラインから24週時までの変化とした。また、副次エンドポイントは、カンザスシティ心筋症質問票の臨床サマリースコア(KCCQ-CSS:0~100で数値が高いほど症状と身体的制限が少ない)のベースラインから24週時までの変化、24週時のNYHA機能分類のベースラインから1以上の改善、バルサルバ負荷時LVOT圧較差のベースラインから24週時までの変化、24週時のバルサルバ負荷時LVOT圧較差が30mmHg未満の割合、中隔縮小治療の対象となる日数などの10項目で、階層的に検定を行うことが事前に規定された。24週時のpVO2の変化、1.8mL/kg/分vs.0.0mL/kg/分 2022年2月1日~2023年5月15日に計543例がスクリーニングを受け、うち282例が無作為化された(aficamten群142例、プラセボ群140例)。平均年齢は59.1歳、男性が59.2%、ベースラインの平均LVOT圧較差は55.1mmHg、平均左室駆出率は74.8%であった。 主要エンドポイントであるpVO2のベースラインから24週時までの変化は、aficamten群1.8mL/kg/分(95%信頼区間[CI]:1.2~2.3)、プラセボ群0.0mL/kg/分(-0.5~0.5)であった(最小二乗平均値の群間差:1.7mL/kg/分[95%CI:1.0~2.4]、p<0.001)。 副次エンドポイントは、10項目すべてでプラセボ群と比較してaficamten群の有意な改善が示された。 重篤な有害事象は、aficamten群で8例(5.6%)、プラセボ群で13例(9.3%)に認められた。有害事象の発現率はそれぞれ73.9%および70.7%であり、両群で同程度であった。 なお、著者は、治療期間が比較的短期間であり、長期的な心血管アウトカムについては評価できないことなどを研究の限界として挙げている。

48.

1回の肉抜きの食事が肝硬変患者のアンモニア濃度を抑制

 進行した肝硬変では、血液中のアンモニア濃度が危険なレベルまで上昇することがあるが、1食でも肉を抜くことで、そのリスクを抑制できる可能性が新たな研究で示された。論文の上席著者で、米バージニアコモンウェルス大学の消化器内科医であるJasmohan Bajaj氏らによるこの研究結果は、「Clinical and Translational Gastroenterology」に5月2日掲載された。Bajaj氏は、「たまに食事を肉なしにするというようなちょっとした食生活の変化でも、肝硬変患者の体内で有害な血液中のアンモニア濃度が下がり、肝臓に良い影響がもたらされる可能性のあることが分かり、心躍る思いだった」と話している。 アンモニアは、腸内細菌が食物中のタンパク質を分解する際に発生する。健康な人では、アンモニアは肝臓で無毒化されて腎臓に送られ、尿とともに排泄される。しかし肝硬変になると、肝機能が低下してアンモニアが処理されなくなる。そのためアンモニアは、有毒な状態のままで体内に蓄積する。このような有毒なアンモニアが脳に達すると、錯乱やせん妄の症状を引き起こし(肝性脳症)、放っておくと昏睡状態に陥り、死に至ることもある。 体内でのこのようなアンモニアの生成には、食事が大きな影響を及ぼしていると研究グループは指摘する。食物繊維が少なく、肉や炭水化物が多い欧米型の食事は、腸で生成されるアンモニアのレベルを高めるからである。 そこでBajaj氏らは今回、基本的な食生活が肉食である、米リッチモンドVA医療センターの肝硬変患者30人を対象にランダム化比較試験を実施し、1回の肉食ベースの食事を、タンパク質量が同等の肉を含まない食事に置き換えた場合の、アンモニアの代謝とメタボロミクスへの影響を評価した。対象者は、肉、ビーガン用の代用肉、またはベジタリアン用の豆を使った3種類のハンバーガーのいずれかを摂取する群にランダムに割り付けられた。いずれのハンバーガーも、含まれているタンパク質の量は同じ20gだった。試験開始時と食事の摂取から1時間おきに3回血液を採取し、液体クロマトグラフィー質量分析法によるメタボロミクス分析と、血清アンモニア濃度の測定を行った。 その結果、肉バーガー群では、食後に血清アンモニア濃度が上昇していたのに対し、代用肉バーガー群や豆バーガー群ではそのような上昇は認められないことが明らかになった。また、肉バーガー群では他の2群に比べて、必須アミノ酸である分岐鎖アミノ酸やアシル・カルニチンの代謝物が減少したほか、脂質プロファイルが変化(スフィンゴミエリンが増加、リゾリン脂質が減少)したことが確認された。 Bajaj氏は、「長期的に食事や行動を変えるのは非常に難しいことだが、われわれは、たまに食事を変えることが肝硬変患者にとって有効な選択肢となるのではないかと考えた。肝硬変を抱えている人は、自分の食事療法に前向きな変化をもたらすことが、無理や困難なことではないと知るべきだ」と話している。 ただしBajaj氏らは、非常に小規模の患者を対象にした本研究の結果はあくまで予備的なものである点を強調している。それでも同氏らは、医師が、肝硬変患者にこの新しい知見を伝え、肉食からの離脱を勧めても損はないとの考えを示している。

49.

第98回 激辛チップスでなぜ死亡したのか?

ココイチは何辛を食べます?キャロライナリーパー私はわりと辛いものが好きだと思って42年生きてきました。子供の頃から湖池屋のカラムーチョが大好きで、あれが「辛さの標準」だと信じて疑いませんでした。大学の頃、カレーのココイチで初めて「1辛」を食べたときのこと。私にとっては衝撃的な辛さだったのですが、一緒に来ていた友人が涼しい顔で「3辛」を食べていたのを見て唖然としました。井の中の蛙大海を知らず。ココイチの「2辛」は、「1辛」の約2倍、「3辛」は約4倍、「5辛」は約12倍、その先は上限20辛まで選択肢は広がっています。途中から辛さの指標が公開されていないので、何十倍も辛いのではと想像しますが、私が挑戦したらきっと入院する羽目になるでしょう。辛さの指標として有名なスコヴィル値で見てみると、10辛が約1,200スコヴィル値とのこと。ハラペーニョが最大で8,000スコヴィル値程度ですから、1万スコヴィル値はまさにガチでヤバイでしょう。ケタ違いのスコヴィル値さて、2023年9月、SNSで激辛チップスを食べる様子を投稿した10代の少年が、食べた直後に死亡するという悲劇がありました。使用されていたのはキャロライナリーパーとナーガヴァイパーという唐辛子です。キャロライナリーパーは、その形から大型の鎌を持った死神という意味で「リーパー」と名付けられています。ナーガヴァイパーは、キャロライナリーパーが登場する前にギネス世界記録だった唐辛子です。どちらも世界トップクラスの激辛唐辛子というわけです。これまで最も辛い唐辛子として長らく君臨していたキャロライナリーパーは、ここから交配して作られたスコヴィル値が約2倍のペッパーXにその座を奪われています。ペッパーXのスコヴィル値は、なんと318万です。スカウターが「ボンッ!」って破裂するやつです。唐辛死の原因唐辛子が原因で命を落とす「唐辛死」となってしまった少年。彼の死因は何だったのでしょうか。報告書によれば、彼は大量のカプサイシン摂取後に心停止に陥り、心臓が肥大していたとされています。急性に心肥大を起こすのは難しいことから、基礎疾患が影響し、心拍数の急激な上昇が関連しているのかもしれません。あるいは、アナフィラキシーや喘息の急性悪化により心停止に至った可能性も考えられます。唐辛子の摂取が心筋梗塞の原因となった症例1)や、キャロライナリーパーによって強烈な頭痛(可逆性脳血管攣縮症候群:RCVS)を起こした症例2)(下記参照)が報告されています。辛さに慣れていない人は無理せず、自分の限界を守ることが大切です。間違ってもペッパーXに挑戦しないようにしましょう。参考文献・参考サイト1)Sogut O, et al. Acute myocardial infarction and coronary vasospasm associated with the ingestion of cayenne pepper pills in a 25-year-old male. Int J Emerg Med. 2012 Jan 20;5:5.2)Boddhula SK, et al. An unusual cause of thunderclap headache after eating the hottest pepper in the world - "The Carolina Reaper" BMJ Case Rep. 2018 Apr 9;2018:bcr2017224085.

50.

日本人高齢者の認知症発症を予測するバイオマーカー

 九州大学の小原 知之氏らは、血漿アミロイドβ(Aβ)42/40、リン酸化タウ(p-τ)181、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)と認知症リスクとの関連を評価し、これらの血漿バイオマーカーが、一般的な高齢者集団の認知症発症予測の精度向上につながるかを調査した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2024年4月12日号の報告。 非認知症の65歳以上の地域在住日本人高齢者1,346人を対象に、5年間のプロスペクティブフォローアップ調査を実施した。血漿バイオマーカーは、超高感度オートELISA Simoa HD-X Analyzerを用いて、定量化した。認知症リスクに対する各血漿バイオマーカーレベルのハザード比を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は、151例(アルツハイマー病:108例、非アルツハイマー病:43例)であった。・血漿Aβ42/40レベルの低下および血漿p-τ181レベルの上昇は、アルツハイマー病発症と有意な関連が認められたが(p for trend<0.05)、非アルツハイマー病との関連は認められなかった。・一方、GFAPおよびNfLの血漿レベルの高さは、アルツハイマー病および非アルツハイマー病のいずれにおいても、有意な関連が認められた(p for trend<0.05)。・これら4つの血漿バイオマーカーを認知症リスクモデルの合計スコアからなるモデルに追加した場合、認知症発症の予測精度が有意に向上した。 著者らは、「日本人高齢者において、血漿Aβ42/40およびp-τ181は、アルツハイマー病の特異的マーカーであり、血漿GFAPおよびNfLは、すべての原因による認知症の潜在的なバイオマーカーである可能性が示唆された。さらに、これらのバイオマーカーの測定は、臨床現場における認知症発症リスクの特定に有用であり、比較的低侵襲な方法であると考えられる」としている。

51.

人々が考える老年期の開始年齢は高齢化している

 老いに対する概念そのものが老化しているようだ。何歳からを「老年」と見なすかという質問の回答を分析したところ、中高年の人は、数十年前の同世代の人よりも老年期の開始年齢を高く考えていることが、新たな研究で明らかになった。フンボルト大学(ドイツ)の心理学者であるMarkus Wettstein氏らによるこの研究の詳細は、「Psychology and Aging」に4月22日掲載された。 この研究では、German Ageing Survey(ドイツ加齢研究)の参加者1万4,056人のデータを用いて、老年期の開始年齢についての個人の認識が歴史的にどのように変遷したのかが調査された。対象者は、1911年から1974年の間に生まれ、1996年から2021年までの25年の間に最大で8回、調査に回答していた。なお、German Ageing Surveyには、研究期間を通して、中高年に達した新たな世代の調査参加者(40〜85歳)も新規登録されていた。 その結果、64歳の時点で対象者が答えた老年期開始の平均年齢は75歳であり、実年齢が4〜5年上がるごとに、対象者の考える老年期の開始年齢が1年ずつ上がる傾向が認められた。例えば、64歳時点で、老年期の始まりを75歳と答えていた人は、自分が74歳に達すると、老年期は77歳頃から始まると答えていた。 また、出生年が遅めの世代の人が考える老年期の開始年齢は、早めの世代の人よりも高いことも明らかになった。例えば、1911年に生まれた人が考える老年期の開始年齢は71歳であったのに対し、1956年に生まれた人では74歳であった。ただしこの傾向は、より最近の世代では緩やかであった。Wettstein氏はこの結果について、「老年期の開始年齢を後ろ倒しにする傾向は直線的ではなく、今後も続くとは限らない」と指摘している。 さらに、性別や健康状態などの個人特性が老年期の開始年齢に対する認識に与える影響を調べたところ、女性は平均して、男性よりも老年期の始まりを2年遅く感じており、男女間でのこの差は経時的に拡大していくことが示された。このほか、孤独感が強く、健康状態が不良で、老いを感じている人ほど、老年期の開始年齢が低くなる一方で、孤独感が少なく、健康状態が良好で、若々しく感じている人ほど、老年期の開始年齢が高くなる傾向があることも示された。 Wettstein氏は、「最近の人が考える老年期の開始年齢がなぜ高くなったのか、その理由は不明だ」と話す。そして、「平均寿命が延びたことが、老年期の始まりを遅く感じさせる一因なのかもしれない」と推測している。同氏はさらに、「その上、人々の健康状態も経時的に改善され、昔は老年と見なされていた年齢の人が、現在では、そうは見なされないようになっている可能性もある」と話す。 Wettstein氏は、「老いを後ろ倒しにする傾向がどの程度、高齢者や加齢に対する肯定的な見方を反映しているのか、あるいはむしろその逆なのかは不明だ。老いることを望ましくないことと見なす否定的な考え方から、老年期の開始年齢を遅く見ている可能性も考えられる」と話している。

52.

米国での精神疾患の経済的コストは年間2820億ドル

 米国での精神疾患の経済的コストは年間2820億ドル(1ドル154円換算で43兆4280億円)であり、一般に経済不況とされるレベルに達していることが、新たな研究で明らかにされた。この金額は、米国の歳出の約1.7%に相当し、米国における精神疾患の全体的なコストを概算した過去の試みよりも約30%大きいという。米イェール大学経済学分野教授のAleh Tsyvinski氏らによるこの研究は、全米経済研究所(National Bureau of Economic Research;NBER)の「Working Paper」として作成され4月に公開された。 米国物質乱用・精神衛生サービス局(U.S. Substance Abuse and Mental Health Services Administration)によると、成人の約5人に1人が精神疾患を抱えており、約5.5%の人は重度の精神疾患に罹患しているという。精神疾患が米国経済に及ぼす影響を算出する試みはこれまでにもなされているが、それらは収入減と治療費に焦点を当てたものであったと研究グループは説明する。 今回の研究では、精神疾患に関連する多くの追加的な経済的影響に焦点を当てた、より微妙なアプローチが取られた。例えば、精神疾患のある人はお金をあまり使わず、家や株などの資産に投資する傾向も低いほか、より負担の少ない仕事を選びがちであることも考えられるとTsyvinski氏は指摘する。本研究では、古典的、および現代の精神医学理論に基づいてマクロ経済学と精神保健を統合したモデルが開発された。このモデルでは、反復的で制御不能な悲観的な思考などのネガティブ思考をする状態にある場合を精神疾患と見なした。 このモデルを用いて、精神疾患の治療を向上させる政策が取られた場合の潜在的な効果を推測した。その結果、精神疾患の専門医の不足を解消するなどして精神保健サービスの利用可能性を拡大することにより、米国の精神疾患が3.1%減少する可能性が示された。これによりもたらされる社会的コストは、米国の歳出の1.1%に相当すると見積もられた。また、16歳から25歳までの全ての精神疾患患者に治療を提供することでもたらされる社会的コストは、米国の歳出の1.7%に相当すると推計された。しかし、精神保健サービスの自己負担額を引き下げても、精神疾患患者の数は実質的には減らないため、得られる経済的な利益はわずかであることも示された。これは、精神保健サービスにかかる費用が比較的低いため、費用を削減しても治療を求める人の数が増えたり、精神疾患の症例が大幅に減ったりすることはないからだと研究グループは説明している。 Tsyvinski氏は、「これらの結果は、精神疾患が人々の消費、貯蓄、ポートフォリオの選択や、国の労働供給量を変化させ、経済に莫大なコストを生み出していることを示すものだ」と述べている。 Tsyvinski氏はまた、イェール大学のニュースリリースの中で、「経済学と精神医学は50年以上にわたって発展してきたが、両者が連携することはあまりなかった。本研究では、経済学と精神医学を連携させることで両者の対話を促した。それにより、精神疾患の社会的コストと、精神医学を拡大・改善する政策により得られるものについての認識を深めることができたと言えよう」と述べている。

53.

65歳未満の心房細動患者は想定よりも多い

 心房細動と呼ばれる危険な心臓のリズム障害が中高年に増えつつあることを警告する研究結果が発表された。米ピッツバーグ大学医療センター(UPMC)で過去10年間に心房細動の治療を受けた患者の4分の1以上が65歳未満であったことが明らかになったという。UPMCの心臓電気生理学者であるAditya Bhonsale氏らによるこの研究結果は、「Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology」に4月22日掲載された。 これは、高齢者以外の患者における心房細動の有病率とされている2%よりはるかに高い数値である。Bhonsale氏は、「循環器医の間では、65歳未満の人に心房細動が生じることはまれであり、発症してもそれほど有害ではないというのが常識である。しかし、それを裏付けるデータはこれまで存在しなかった」と話す。同氏はさらに、「UPMCでは近年、若年の心房細動患者を診察することが増えていることから、これらの患者の実際の臨床経過を理解することに興味があった」と同大学のニュースリリースで述べている。 今回の研究では、2010年1月から2019年12月までの間にUPMCで心房細動の治療を受けた患者6万7,221人(平均年齢72.4±12.3歳、女性45%)の電子カルテを用いて、65歳未満での心房細動と全死亡リスクとの関連が検討された。対象患者の26%近く(1万7,335人)が65歳未満であり、その大半が男性だった(男性の割合は50歳未満で73%、50〜65歳で66.3%)。 65歳未満の患者には、現喫煙者、肥満、高血圧、糖尿病、心不全、冠動脈疾患、脳卒中の既往歴などの心血管疾患のリスク因子を有している人が多かった。これらの患者の入院理由としては、心房細動、心不全、心筋梗塞が多く、50歳未満では同順で31%、12%、2.7%、50〜65歳では38%、19%、4.7%を占めていた。平均5年超に及ぶ追跡期間中に、50歳未満で204人(6.7%)、50〜65歳で1,880人(13.1%)の計2,084人が死亡していた。 解析の結果、心房細動のない内部患者コホート(91万8,073人)と比べて、心房細動のある65歳未満の患者では死亡リスクの増加が有意であった。死亡のハザード比は、50歳未満の男性で1.49(95%信頼区間1.24〜1.79)、女性で2.40(同1.82〜3.16)、50〜65歳の男性で1.34(同1.26〜1.43)、女性で1.75(同1.60〜1.92)であり(全てP<0.001)、女性のリスクの方がはるかに高いことが示された。 論文の上席著者であるUPMC心血管研究所のSandeep Jain氏は、「本研究で得られた知見が今後、心房細動患者に対する最適な治療法を評価する研究の実施を促すものと期待している」と話している。

54.

腕に貼る麻疹・風疹ワクチンは乳幼児に安全かつ有効

 予防接種の注射を嫌がる子どもに、痛みのないパッチを腕に貼るという新たなワクチンの接種方法を選択できるようになる日はそう遠くないかもしれない。マイクロニードルと呼ばれる微細な短針を並べたパッチ(microneedle patch;MNP)を腕に貼って経皮ワクチンを投与する方法(マイクロアレイパッチ技術)で麻疹・風疹ワクチン(measles and rubella vaccine;MRV)を単回接種したガンビアの乳幼児の90%以上が麻疹から保護され、全員が風疹から保護されたことが、第1/2相臨床試験で示された。英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の医学研究評議会ガンビアユニットで乳児免疫学の責任者を務めるEd Clarke氏らによるこの研究結果は、「The Lancet」に4月29日掲載された。 Clarke氏は、「マイクロアレイパッチ技術による麻疹・風疹ワクチン投与(MRV-MNP)はまだ開発の初期段階にあるが、今回の試験結果は非常に有望であり、多くの関心や期待を呼んでいる。本研究により、この方法で乳幼児にワクチンを安全かつ効果的に投与できることが初めて実証された」と語る。 この臨床試験では、18〜40歳の成人45人と、生後15〜18カ月の幼児と生後9〜10カ月の乳児120人ずつを対象に、MRV-MNPの安全性と有効性、忍容性が検討された。これらの3つのコホートは、MRV-MNPとプラセボの皮下注射を受ける群(MRV-MNP群)とプラセボのMNPとMRVの皮下注射(MRV皮下注群)を受ける群に、2対1(成人コホート)、または1対1(幼児・乳児コホート)の割合でランダムに割り付けられた。 その結果、ワクチン接種から14日後の時点で、MRV-MNP群に安全性の懸念は生じておらず、忍容性のあることが示された。MRV-MNPを受けた幼児の77%と乳児の65%に接種部位の硬化が認められたが、いずれも軽症で治療の必要はなかった。乳児コホートのうち、ベースライン時には抗体を保有していなかったが接種後42日時点で麻疹ウイルスと風疹ウイルスに対する抗体の出現(セロコンバージョン)が確認された対象者の割合は、MRV-MNP群でそれぞれ93%(52/56人)と100%(58/58人)、MRV皮下注群では90%(52/58人)と100%(59/59人)であった。接種後180日時点でも、MRV-MNP群では91%(52/57人)と100%(57/57人)の対象者で麻疹ウイルスと風疹ウイルスに対するセロコンバージョンを維持していた。 一方、幼児コホートで、ベースライン時には抗体を保有していなかったが、接種後42日時点で麻疹ウイルスと風疹ウイルスに対するセロコンバージョンが確認された割合は、MRV-MNP群で100%(5/5人)、MRV皮下注群で80%(4/5人)であった。風疹ウイルスに対しては、研究開始時から全ての対象児が抗体を保有していた。 こうした結果を受けてClarke氏は、「マイクロアレイパッチ技術によるワクチン接種としては麻疹ワクチンが最優先事項だが、この技術を用いて他のワクチンを投与することも今や現実的になった。今後の展開に期待してほしい」と話す。 研究グループは、マイクロアレイパッチ技術によるワクチン接種が貧困国でのワクチン接種を容易にする可能性について述べている。この形のワクチンなら、輸送が容易になるとともに冷蔵保存が不要になる可能性もあり、医療従事者による投与も必要ではなくなるからだ。論文の筆頭著者であるロンドン大学衛生熱帯医学大学院の医学研究評議会ガンビアユニットのIkechukwu Adigweme氏は、「この接種方法が、恵まれない人々の間でのワクチン接種の公平性を高めるための重要な一歩になることをわれわれは願っている」と話す。 研究グループは、今回の試験で得られた結果を確認し、さらに多くのデータを提供するために、より大規模な臨床試験を計画中であることを明かしている。

55.

ワクチン接種、50年間で約1億5,400万人の死亡を回避/Lancet

 1974年以降、小児期の生存率は世界のあらゆる地域で大幅に向上しており、2024年までの50年間における乳幼児の生存率の改善には、拡大予防接種計画(Expanded Programme on Immunization:EPI)に基づくワクチン接種が唯一で最大の貢献をしたと推定されることが、スイス熱帯公衆衛生研究所のAndrew J. Shattock氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年5月2日号に掲載された。14種の病原菌へのワクチン接種50年の影響を定量化 研究グループは、EPI発足50周年を期に、14種の病原菌に関して、ワクチン接種による世界的な公衆衛生への影響の定量化を試みた(世界保健機関[WHO]の助成を受けた)。 モデル化した病原菌について、1974年以降に接種されたすべての定期および追加ワクチンの接種状況を考慮して、ワクチン接種がなかったと仮定した場合の死亡率と罹患率を年齢別のコホートごとに推定した。 次いで、これらのアウトカムのデータを用いて、この期間に世界的に低下した小児の死亡率に対するワクチン接種の寄与の程度を評価した。救われた生命の6割は麻疹ワクチンによる 1974年6月1日~2024年5月31日に、14種の病原菌を対象としたワクチン接種計画により、1億5,400万人の死亡を回避したと推定された。このうち1億4,600万人は5歳未満の小児で、1億100万人は1歳未満であった。 これは、ワクチン接種が90億年の生存年数と、102億年の完全な健康状態の年数(回避された障害調整生存年数[DALY])をもたらし、世界で年間2億年を超える健康な生存年数を得たことを意味する。 また、1人の死亡の回避ごとに、平均58年の生存年数と平均66年の完全な健康が得られ、102億年の完全な健康状態のうち8億年(7.8%)はポリオの回避によってもたらされた。全体として、この50年間で救われた1億5,400万人のうち9,370万人(60.8%)は麻疹ワクチンによるものであった。生存可能性の増加は、成人後期にも 世界の乳幼児死亡率の減少の40%はワクチン接種によるもので、西太平洋地域の21%からアフリカ地域の52%までの幅を認めた。この減少への相対的な寄与の程度は、EPIワクチンの原型であるBCG、3種混合(DTP)、麻疹、ポリオワクチンの適応範囲が集中的に拡大された1980年代にとくに高かった。 また、1974年以降にワクチン接種がなかったと仮定した場合と比較して、ワクチン接種を受けた場合は、2024年に10歳未満の小児が次の誕生日まで生存する確率は44%高く、25歳では35%、50歳では16%高かった。このように、ワクチン接種による生存の可能性の増加は成人後期まで観察された。 著者は、「ワクチン接種によって小児期の生存率が大幅に改善したことは、プライマリ・ヘルスケアにおける予防接種の重要性を強調するものである」と述べるとともに、「とくに麻疹ワクチンについては、未接種および接種が遅れている小児や、見逃されがちな地域にも、ワクチンの恩恵が確実に行きわたるようにすることが、将来救われる生命を最大化するためにきわめて重要である」としている。

56.

知見のupdateを絶えず重ね続ける【国試のトリセツ】第40回

§3 decision making知見のupdateを絶えず重ね続けるQuestion〈111G57〉82歳の女性。肺炎で入院中である。抗菌薬が投与され肺炎の症状は軽快していたが、3日前から頻回の水様下痢が続いている。高血圧症で内服治療中である。意識は清明。体温37.6℃。脈拍76/分、整。血圧138/78mmHg。腹部は平坦、軟。下腹部に軽い圧痛を認める。血液所見赤血球380万、Hb12.0g/dL、Ht 36%、白血球9,800、血小板26万。腹部X線写真で異常所見を認めない。便中Clostridium difficileトキシン陽性。この患者に有効と考えられる薬剤はどれか。2つ選べ。(a)バンコマイシン(b)クリンダマイシン(c)エリスロマイシン(d)メトロニダゾール(e)ベンジルペニシリン(ペニシリンG)※2016年に、Clostridium difficileはClostridioides difficileに名称が変更されました。第111回医師国家試験は2017年に実施されましたが、まだ以前のままの表記になっています。以降の解説では、このupdateを汲み、新しい表記で統一します。Lawson PA, et al:Reclassification of Clostridium difficile as Clostridioides difficile(Hall and O’Toole 1935) Prevot 1938. Anaerobe, 40:95-99, 2016

57.

変形性肩関節症の人工肩関節置換、リバース型vs.解剖学的/BMJ

 変形性肩関節症を有する60歳以上の患者において、リバース型人工肩関節全置換術(RTSR)は解剖学的人工肩関節全置換術(TSR)の許容可能な代替術であることが、英国・オックスフォード大学のEpaminondas Markos Valsamis氏らによる住民ベースのコホート研究で示された。経時的な再置換術のリスクプロファイルに有意差は認められたが(最初の3年間はRTSRが良好)、一方で長期的な再置換術、重篤な有害事象、再手術、入院期間の長期化、生涯医療コストについて、統計学的な有意差および臨床的に重要な差は認められなかった。RTSRの施術は、直近20年間で世界的に急増しているが、高い質的エビデンスのないまま、本来の病理学的対象患者にとどまらず、手術適応の症例に幅広く施術されている現状がある。そうした治療の不確実性は英国の研究機関において重要な優先事項と認識されており、完了までに数年がかかる国際的な試験に対して資金提供がされているという。BMJ誌2024年4月30日号掲載の報告。RTSR vs.TSRの再置換術の発生を評価 研究グループは国の研究の優先事項に応えるために、イングランドのNational Joint Registry and Hospital Episode Statisticsのデータを用いた住民ベースコホート研究を行った。変形性肩関節症に対する待機的初回肩関節全置換術を受けた患者における、RTSRとリスクベネフィットおよびコストとの関連を、TSRとのそれと比較した。 2012~20年にイングランドの公立病院と私立病院で公的資金により行われた手術例から、腱板断裂のない変形性肩関節症に対するRTSRまたはTSRを受けた60歳以上の患者を研究対象とした。患者はNational Joint RegistryとNHS Hospital Episode Statisticsおよび住民登録死亡データを結び付け、傾向スコアマッチングと逆確率重み付け(IPTW)を用いて試験コホートを均一化した。 主要アウトカムは、再置換術の発生。副次アウトカムは、術後90日間の重篤な有害事象、術後12ヵ月間の再手術、入院の長期化(3泊超)、Oxford Shoulder Scoreの変化(術前から術後6ヵ月時点)、医療サービスの生涯コストなどであった。RTSRのTSRに対する再置換術の最小ハザード比は0.33 試験コホートは、患者1万1,961例における選択的初回肩関節置換術1万2,986件から構成された。このうち傾向スコアマッチドコホートは7,124件(RTSR例、TSR例それぞれ3,562例)で構成された。同コホートの再置換術例は126件(1.8%、RTSR例41件、TSR例85件])であった。 IPTWコホートは手術例1万2,968件(RTSR例3,576件、TSR例9,410例)で構成された。最長追跡期間8.75年において、再置換術例は294件(2.3%、RTSR例41件、TSR例253件])であった。 RTSRの再置換術リスクは、最初の3年間で大幅に低下した(最小ハザード比:0.33、95%信頼区間[CI]:0.18~0.59)。再手術のない制限付き平均生存期間(RMST)に臨床的に重要な差はみられなかった。 傾向スコアマッチドコホートにおいて、12ヵ月時点でRTSRの再手術の相対リスクは低下し(オッズ比:0.45、95%CI:0.25~0.83)、絶対リスク差は-0.51%(95%CI:-0.89~-0.13)であったが、IPTWコホートでは相対リスクに有意差はなかった(0.58、0.31~1.08)。 重篤な有害事象、長期入院のリスク、Oxford Shoulder Scoreの変化、モデル化した平均生涯コストのアウトカムは、傾向スコアマッチドコホートにおいて類似しており、IPTWコホートでも一貫していた。

58.

マジックマッシュルーム成分の抗うつ効果は?~メタ解析/BMJ

 数種類のキノコに含まれるセロトニン作動性の幻覚成分であるpsilocybinの抗うつ治療効果を検証するため、英国・オックスフォード大学のAthina-Marina Metaxa氏らは、これまで発表された研究論文についてシステマティック・レビューとメタ解析を行った。うつ症状の測定に自己報告尺度を用いており、以前に幻覚剤を使用したことがある二次性うつ病患者において、psilocybinの治療効果は有意に大きかったという。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、抗うつ薬としてのpsilocybinの治療可能性を最大化する因子を明らかにする必要がある」と述べている。近年、うつ病治療の研究は、古典的な抗うつ薬の欠点がなく強力な抗うつ作用を示す幻覚剤に焦点が当てられており、psilocybinもその1つに含まれる。直近の10年間に、複数の臨床試験、メタ解析、システマティック・レビューが行われ、そのほとんどにおいてpsilocybinに抗うつ効果がある可能性が示されたが、うつ病のタイプ、幻覚剤の使用歴、投与量、アウトカム尺度、出版バイアスなど、psilocybinの効果に作用する可能性がある因子については調査されていなかった。BMJ誌2024年5月1日号掲載の報告。メタ解析で、psilocybinの有効性をプラセボまたは非向精神薬と比較 研究グループは、psilocybinの抗うつ薬としての有効性をプラセボまたは非向精神薬と比較し明らかにするため、システマティック・レビューとメタ解析で検証した。 5つの出版文献データベース(Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、Embase、Science Citation Index、Conference Proceedings Citation Index、PsycInfo)、4つの非出版・国際的文献データベース(ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registry Platform、ProQuest Dissertations and Theses Global、PsycEXTRA)、手動検索による参考文献リスト、カンファレンス議事録および要約をデータソースとした。 適格としたのは、臨床的に重大なうつ症状を有する成人に対し単独治療としてpsilocybinが投与され、症状の変化を臨床医による検証済み評価尺度または患者の自己報告尺度を用いて評価した無作為化試験。指示的心理療法を有する試験は、介入条件と対照条件の両方に心理療法の要素が認められた場合に包含した。参加者は、併存疾患(がんなど)に関係なく、うつ病を有する場合に適格とした。 治療効果に作用する可能性のある因子として、うつ病のタイプ(原発性または二次性)、幻覚剤の使用歴、psilocybin投与量、アウトカム尺度のタイプ(臨床医による評価または患者の自己報告)、個人の特性(年齢、性別など)を抽出。データはランダム効果メタ解析モデルを用いて統合し、観察された不均一性および共変量の効果をサブグループ分析とメタ回帰法で調べた。小さなサンプル効果、包含した試験間のサンプルサイズの実質的な差を示すため、Hedges' gを用いて治療効果サイズを評価した。psilocybinに有意な有益性あり、エビデンスの確実性は低い 包含した9試験のうち7試験の被験者436例(女性228例、平均年齢36~60歳)を対象としたメタ解析で、対照治療群と比較したうつ病スコアの変化において、psilocybinの有益性が有意であることが示された(Hedges' g=1.64、95%信頼区間[CI]:0.55~2.73、p<0.001)。 サブグループ解析およびメタ回帰法により、二次性うつ病であること(Hedges' g=3.25、95%CI:0.97~5.53)、Beck depression inventoryのような自己報告うつ病スケールで評価されていること(3.25、0.97~5.53)、高齢で幻覚剤使用歴があること(それぞれのメタ回帰係数:0.16[95%CI:0.08~0.24]、4.2[1.5~6.9])が、症状の大幅な改善と関連していた。 すべての試験は、バイアスリスクが低かったが、ベースライン測定値からの変化は高い不均一性と小規模試験のバイアスリスクと統計学的に有意に関連しており、エビデンスの確実性は低かった。

59.

IBSの治療、食事法の効果が薬を上回る?

 腹痛などの過敏性腸症候群(IBS)の症状を軽減する最善の治療法は適切な食事法であることを示唆する結果が、ヨーテボリ大学サールグレンスカアカデミー(スウェーデン)のSanna Nybacka氏らが実施した臨床試験で示された。同試験では、IBSの症状に対する治療法として2種類の食事法の方が標準的な薬物治療よりも優れていることが示された。詳細は、「The Lancet Gastroenterology and Hepatology」に4月18日掲載された。 IBSは、消化器疾患の中で最も高頻度に生じる上に、治りにくい疾患の一つだ。米国人のIBSの有病率は約6%で、患者数は男性よりも女性の方が多い。IBSの症状は、腹痛、腹部膨満感、下痢、便秘などの無視しがたいもので、死に至る場合もある。IBSに対しては、食事の改善のほか、便秘薬や下痢止め薬、特定の抗うつ薬、腸管内の水分の分泌を促し腸の動きを活発にする作用があるリナクロチドやルビプロストンなどの薬物による治療が行われる。 この試験で標準的な薬物治療と比較された食事法の一つは、FODMAPと呼ばれる糖質の摂取を制限する低FODMAP食だ。FODMAPは特定の乳製品や小麦、果物、野菜に含まれている、小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖類のことである。もう一つの食事法は、食物繊維を多く摂取しつつ炭水化物の摂取は抑える糖質制限食だった。Nybacka氏は、「時間をかけて食べる、1回の食事の量を減らし食事の回数を増やす、コーヒーや紅茶、炭酸飲料、アルコール、脂肪分や香辛料の多い食品を制限するなど、食生活をよりシンプルなものに変えることを支持する研究もある。また、糖質制限食によってIBSの症状が軽減した患者がいるとの報告もあることから、いくつかの治療選択肢を比較する臨床試験を計画することにした」と説明している。 この臨床試験は、サールグレンスカアカデミーの外来クリニックで、中等度から重度のIBSに罹患している18歳以上の294人(女性241人、男性53人、平均年齢38歳)を対象に実施された。試験参加者は4週間にわたって、1)主な症状に応じて8種類のIBS治療薬のうちの1種類を投与する群(薬物治療群、101人)、2)米、ジャガイモ、キヌア、小麦を含まないパン、乳糖を含まない乳製品、魚、卵、鶏肉、牛肉、さまざまな果物や野菜などの食品から成る低FODMAP食を摂取し、IBS患者向けに伝統的に推奨されている食事法のアドバイスを受ける群(低FODMAP食群、96人)、3)牛肉、豚肉、鶏肉、魚、卵、チーズ、ヨーグルト、野菜、ナッツ類、ベリー類などの食品を中心とした低糖質かつ高脂質の食事を摂取する群(低糖質食群、97人)の3群のいずれかにランダムに割り付けられた。 その結果、介入から4週間後、低FODMAP食群の76%(73/96人)と、低糖質食群の71%(69/97人)で症状の有意な改善が認められたのに対し、薬物治療群で改善が認められたのは58%(59/101人)にとどまっていた。また、症状が改善した患者のうち低FODMAP食群と低糖質食群に割り付けられた患者では、薬物治療群に割り付けられた患者と比べて症状の改善度が大きかったという。 本研究には関与していない、米ミシガン大学医学部の消化器専門医であるWilliam Chey氏は、「この研究では、低FODMAP食がほとんどの患者のIBS症状を軽減することが示された。ただ、低FODMAP食は極めて厳しい制限を伴うことに加え、自分に合わない食品を見極めるために慎重にFODMAPが含まれる食品を一つずつ試す必要があるため、この食事法を続けるのは容易ではない」とニューヨーク・タイムズ紙に語っている。 Chey氏は、この試験によって「薬物治療と比較して食事法の効果は少なくとも同等であり、より優れている可能性もある」という臨床で多くの医師が経験していることを裏付ける「リアルデータ」が得られたと話す。その上で、今回の試験は、スウェーデンの単施設で比較的小規模な集団を対象に実施されたものであることを指摘し、「今後、より大規模かつより多様な集団で結果を検証する必要がある」と付け加えている。

60.

看護師主導の多職種連携により高齢心不全患者の死亡率が低下

 高齢化により心不全の有病率は上昇し、マルチモビディティ(多疾患併存)の状態にある患者が増えている。このような患者を対象に、看護師が主導し多職種介入を行ったところ、死亡率が有意に低下したという結果が示された。これは大阪大学大学院医学系研究科老年看護学教室の竹屋泰氏、齊前裕一郎氏らによる研究結果であり、「American Heart Journal Plus: Cardiology Research and Practice」に1月20日掲載された。 異なる専門分野を有する医療従事者が関与する多職種連携は、患者に関わる職種の数が多い(multidisciplinary intervention)だけでは不十分で、多職種が互いに連携して協働する(interprofessional work)必要がある。看護師は、患者の疾患と生活の両方に携わり、24時間体制でケアを提供し、他の職種との関わりも多いことから、看護師主導による多職種連携の有効性についてはこれまでにも研究されている。しかし、複数の併存疾患を有し、複雑な管理を要する患者に対する効果は明らかになっていなかった。 そこで著者らは、急性期病院に入院し、チャールソン併存疾患指数(CCI)が2点以上の心不全患者を対象に、看護師主導による多職種連携の導入前後で患者の死亡率や緊急入院率を比較する後方視的症例対照研究を行った。導入後の2017年4月~2020年3月に入院した患者351人を多職種連携群、2014年4月~2016年3月の患者412人を通常ケア群とし、各群から年齢・性別・NYHA心機能分類でマッチングさせた200人ずつ(平均年齢80歳、男性62%)を評価対象とした。 導入された多職種連携は3ステップからなる。ステップ1では入院3日以内に看護師がスクリーニングを実施し、日常生活動作(ADL)低下リスク、在宅医療や福祉制度の必要性など、退院後の問題を評価。ステップ2はスクリーニング基準を満たす患者への標準的支援であり、入院7日以内に看護師が情報を収集。看護師がファシリテーターとなり多職種カンファレンスを行い、退院支援の必要性などを検討。退院目標を策定し、患者と家族の同意を得て、目標達成に向けて介入した。ステップ3は、標準的支援では不十分と看護師が判断した場合に実施し、看護師が必要と判断した多職種が関与。再入院のリスクが高い場合や在宅医療が必要な場合には、在宅医や訪問看護師と協働した。 対象患者のNYHA心機能分類の内訳は、クラスIが32.5%、クラスIIが46.5%、クラスIIIが20.5%、クラスIVが0.5%であり、CCIは平均6点だった。多職種連携群では通常ケア群と比べて、ポリファーマシー(6種類以上の薬剤を使用)および医療ソーシャルワーカーの関与の割合が有意に低く、訪問看護や在宅医への移行の割合が有意に高かった。要介護度や入院期間については両群間で有意差はなかった。 また、全ての死因による死亡リスクは、多職種連携群の方が通常ケア群よりも有意に低いことが明らかとなり(ハザード比0.45、95%信頼区間0.29~0.69)、退院後1年時点での死亡率には7%の有意差が認められた(9%対16%)。退院後6週間以内の緊急入院のリスクも、多職種連携群の方が有意に低かった(ハザード比0.16、95%信頼区間0.08~0.30)。 今研究における多職種介入の特長として著者らは、疾患に加え患者の生活機能に精通した看護師がファシリテーターとなり、適時適切な専門職と連携する、入院初期から退院まで、1人の入退院支援看護師が継続的に関与する、必要に応じ、患者の同意を得て地域の専門職と情報を共有・連携するといった、看護師主導の包括的な多職種連携を挙げている。研究の結論として、「看護師主導の多職種連携により、心不全と複数の併存疾患を有する患者の死亡率が低下する可能性がある」と述べている。

検索結果 合計:4227件 表示位置:41 - 60