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膿疱性乾癬のフレア予防、高用量のスペソリマブが有効/Lancet

 膿疱性乾癬(汎発型)(GPP)の急性症状(フレア)の予防において、プラセボと比較して抗インターロイキン36受容体(IL-36R)モノクローナル抗体スペソリマブの高用量投与は、GPPの急性症状の発現を改善し、安全性プロファイルも良好であることが、名古屋市立大学の森田 明理氏らが実施した「Effisayil 2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年9月19日号で報告された。20ヵ国の無作為化プラセボ対照第IIb相試験 Effisayil 2試験は、日本を含む20ヵ国60施設で実施された無作為化プラセボ対照第IIb相試験であり、2020年6月~2022年11月に患者のスクリーニングを行った(Boehringer Ingelheimの助成を受けた)。 対象は、年齢12~75歳、European Rare and Severe Psoriasis Expert Network基準でGPPの既往歴が証明され、過去に少なくとも2回のGPPの急性症状の発生を認め、スクリーニング時と無作為割り付け時に「医師による膿疱性乾癬(汎発型)の全般的評価(GPPGA)」のスコアが0または1点の患者であった。 これらの患者を、プラセボ、低用量スペソリマブ(負荷用量300mgを投与後に12週ごとに150mgを投与)、中用量スペソリマブ(負荷用量600mgを投与後に12週ごとに300mgを投与)、高用量スペソリマブ(負荷用量600mgを投与後に4週ごとに300mgを投与)を48週間皮下投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、48週の投与期間における初回GPP急性症状の発生までの期間とし、用量反応曲線がnon-flatであることとした。 123例を登録し、スペソリマブ群に92例(低用量群31例、中用量群31群、高用量群30例)、プラセボ群に31例を割り付けた。123例中79例(64%)がアジア人、44例(36%)が白人で、76例(62%)が女性であり、平均年齢は40.4(SD 15.8)歳であった。ベースラインの4群の平均GPPGAスコアは同程度(範囲:3.03~3.92点)だった。高用量群で有意差を確認 急性症状は、48週目までに35例で発生した(低用量群7例[23%]、中用量群9例[29%]、高用量群3例[10%]、プラセボ群16例[52%])。 主要エンドポイントの発生は、プラセボ群に比べ高用量群で有意に優れた(ハザード比[HR]:0.16、95%信頼区間[CI]:0.05~0.54、p=0.0005)。一方、プラセボ群と比較した低用量群のHRは0.35(95%CI:0.14~0.86、名目上のp=0.0057[正式の検定は行っていない])、中用量群のHRは0.47(0.21~1.06、p=0.027[事前に規定された有意水準0.019を満たさない])であり、いずれも統計学的に有意な差は確認されなかった。 主要エンドポイントに関して、プラセボ群との比較において、スペソリマブ群でnon-flatな用量反応関係を認め、各モデルで統計学的に有意な差を示した(線形モデル:p=0.0022、emax1モデル:p=0.0024、emax2モデル:p=0.0023、指数モデル:p=0.0034)。 乾癬症状尺度(PSS)および皮膚疾患特異的QOL尺度(DLQI)の悪化リスクは、48週間でプラセボ群よりもスペソリマブ群で改善したが、いずれの用量群でも有意な差は確認されなかった。 有害事象の頻度はスペソリマブ群(90%)とプラセボ群(87%)で同程度であり、スペソリマブ群では用量依存性のパターンはみられなかった。重度(Grade3/4)の有害事象(19% vs.23%)や試験薬関連の有害事象(40% vs.33%)の頻度も同程度だった。感染症の発生にも差はなかった(33% vs.33%)。また、死亡および試験薬の投与中止の原因となった過敏反応の報告はなかった。 著者は、「GPPの慢性化の特性を考慮すると、急性反応の予防治療は臨床アプローチの重要な転換点となり、最終的に患者における合併症の発生や生活の質の改善つながる可能性がある」と指摘している。

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他の母親が実施する心理療法が産後うつ病の症状を軽減

 カナダのオンタリオ州ブラント郡に住むLee-Anne Mosselman-Clarkeさんは、産後のメンタルヘルス危機との闘いがどのようなものかを、身をもって知っている。なぜなら、Mosselman-Clarkeさん自身が、2人の子どもの出産後にそれを経験したからだ。「私には11歳と9歳の子どもがいるが、上の子のときには自分が不安を感じていることに気が付いていなかった。2人目を妊娠したときに初めて、助産師から『産後うつ病を再発するリスクがあるので誰かに相談してほしい』と言われた」と振り返る。 ソーシャルワーカーとしての経歴を持つMosselman-Clarkeさんは、現在は産後ドゥーラ(産前・産後ケアの専門家)として妊娠・出産を経験する女性をサポートしている。彼女は、産後うつ病と闘う人に対してピア(仲間)が実施する認知行動療法(CBT)の効果を検討するために、マクマスター大学(カナダ)精神医学分野のRyan Van Lieshout氏らが新たな研究を実施することを知るやすぐに応募し、ピアファシリテーターとしての参加を認められた。それ以来、このセッションに彼女は情熱を注いでいる。 Van Lieshout氏らの研究では、ピアによるCBTを受けた産後うつ病患者はCBTを受けていない患者に比べて、寛解を経験する可能性が11倍高いことが示されるなど、いくつかの重要な知見が得られた。Mosselman-Clarkeさんは、「ピアが実施するCBTプログラムは、人から判断されていると感じたり、あるいは罪悪感、恥ずかしさを感じたりすることなく、自分と同じように苦しんでいる人と話すことができる素晴らしい方法だ。自分は1人ではないと感じ、孤立感を和らげる機会を与えてくれる」と語っている。Van Lieshout氏らの研究の詳細は、「Acta Psychiatrica Scandinavica」に8月31日掲載された。 米国の非営利団体マーチ・オブ・ダイムスによると、産後うつ病とは、出産後の母親に悲しみ、不安、倦怠感などの感情が持続し、自身や赤ちゃんの世話が困難になる状態のことをいう。産後うつ病を放置すると、母子双方に感情的な問題を引き起こすリスクが高まるなど、深刻な結果をもたらす可能性があるとVan Lieshout氏らは指摘している。 Van Lieshout氏らの研究は、オンタリオ州在住の18歳以上の産後うつ病患者183人を対象に、産後うつ病から回復した母親(ピア)がオンラインで実施するCBTの効果を検討したもの。対象者は、ピアによるオンラインでの9週間のCBT+通常のケアを受ける介入群(92人)と、通常のケア+9週間後に同じ介入を受ける待機群(91人)にランダムに割り付けられた。介入は、プログラムの実施前に3日間のトレーニングを受け、専門家による9週間の介入を見学したピアファシリテーターが2人1組で行った。対象者の産後うつ病は、エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)により、試験登録時(T1)とランダム化から9週間後(T2)に評価した。介入群では介入の3カ月後(T3)にも評価を行った。 その結果、介入群ではT1からT2にかけてEPDSスコアが5.99点低下し、T3においてもそのスコアが維持されていたことが明らかになった。また、T2で介入群が大うつ病性障害(MDD)の基準を満たさないオッズは待機群の11倍であることも示された(オッズ比11.55、95%信頼区間3.53〜37.77)。T1でMDDの基準を満たした対象者の割合は、介入群で64%、待機群で66%であった。T2では、介入群で6%にまで減少したのに対して待機群では43%にとどまっていた。 Van Lieshout氏は、「この研究には重要な点がいくつかあるが、その一つは、出産を経験する母親の最大で5人に1人が産後うつ病を経験するにもかかわらず、必要な治療を受けているのは10人に1人に満たない点だ」と話す。そして、今回の研究で示したこの介入方法が、産後うつ病の母親が必要な治療を受けるための手段となる可能性があるとの見方を示している。 一方、米マウント・サイナイの精神科医であるThalia Robakis氏は、「心理療法は、一般的なうつ病や産後うつ病に対する重要かつ確立された介入方法だ。新米の母親が心理療法を受けるのは容易なことではない。なぜなら、セラピストとは高度に訓練を受けた専門家であり、その数が限られているため、見つけるのが困難だからだ。また、新米の母親は乳児の世話で手一杯で、心理療法に参加する時間が取れないこともある」と述べ、「この研究は、このようなアクセシビリティの問題に取り組んでいる点が非常に斬新だ」と評価している。

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放射線療法を受けたがん患者、精神疾患があると生存率が有意に低下

 がん患者に対する放射線療法の実施方法が患者の精神疾患(PD)の有無に影響されることはないが、PDがある患者の全生存率は、PDがない患者に比べて有意に低いとする研究結果が、「Clinical and Translational Radiation Oncology」5月号に掲載された。 ユトレヒト大学医療センター(オランダ)のMax Peters氏らは、matched-pair解析により、PDのあるがん患者とない患者での放射線療法のレジメンと全生存率の違いについて検討した。対象者は、電子患者データベース(EPD)より2015年から2019年の間に一カ所の三次医療機関で放射線療法を受けた患者の中から選出した、PDのあるがん患者88人(PD群)と、がんの種類とステージ、WHO-PS(World Health Organization Performance Status)またはKPS(Karnofsky Performance Status)で評価したパフォーマンスステータス、年齢、性別、放射線療法の前後に受けたがん治療を一致させたPDのない患者88人(対照群)。PD群には、統合失調症スペクトラム障害患者が44人、双極性障害患者が34人、境界性パーソナリティ障害患者が10人含まれていた。対象者の平均年齢(標準偏差)はPD群が61.0(10.6)歳、対照群が63.6(11.3)歳で、がん種は乳がん(27人、30.7%)、肺がん(16人、18.2%)、消化器がん(14人、15.9%)、頭頸部がん(10人、11.4%)、婦人科がん(6人、6.8%)、泌尿器がん(5人、5.7%)、脳腫瘍(4人、4.5%)、その他のがん(6人、6.8%)であった。 主要評価項目を、分割照射の回数と、1回2Gyの照射として換算した場合の生物学的等価線量(EQD2)とし、Wilcoxonの符号順位検定により両群間での放射線療法のレジメンの類似性を評価した。副次評価項目はKaplan-Meier曲線により推定した全生存率とし、Cox比例ハザードモデルを用いて死亡のハザード比(HR)を計算した。 放射線療法を終えてからの追跡期間中央値は、PD群で32.3〔四分位範囲(IQR)9.2〜53.8〕カ月、対照群で41.3(同12.7〜65.1)カ月であった。放射線分割の回数中央値はPD群で16(同3〜23)回、対照群で16(同3〜25)回であり、両群で有意な差は認められなかった(P=0.47)。EQD2についても両群間で有意差は認められず、晩期毒性に対するEQD2はともに48(同35〜63)Gy(P=0.18)、腫瘍のコントロール/急性毒性に対するEQD2はともに45(同24〜60)Gy(P=0.77)であった。 全生存率については、PD群、対照群の順に、1年生存率が68%〔95%信頼区間(CI)59〜79%〕、77%(同69〜87%)、3年生存率が47%(同37〜58%)、61%(同52〜72%)、5年生存率が37%(27〜50%)、56%(46〜67%)であり、有意な差があった(P=0.03)。Coxモデルによる単変量解析での対照群と比べたPD群の死亡のHRは1.57(95%CI 1.05〜2.35、P=0.03)であった。死因については、大部分が原疾患の進行によるもので、両群間に明確な差は認められなかった。 著者らは、「PDを有するがん患者は全生存率が有意に低かった。このような脆弱性を抱える患者に対して放射線治療を行う場合には、特に注意が必要であり、また、がんの治療を行っている間に改善できる要因がないかを探るため、さらなる研究が必要であろう」と述べている。

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フルチカゾン、コロナ軽~中等度の症状回復に効果なし/NEJM

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者をフルチカゾンフランカルボン酸エステル吸入薬で14日間治療しても、プラセボと比較して回復までの期間は短縮しないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV-6試験」の結果で示された。米国・ミネソタ大学のDavid R. Boulware氏らが報告した。軽症~中等症のCOVID-19外来患者において、症状消失までの期間短縮あるいは入院または死亡回避への吸入グルココルチコイドの有効性は不明であった。NEJM誌2023年9月21日号掲載の報告。持続的回復までの期間をフルチカゾンフランカルボン酸エステルvs.プラセボで評価 ACTIV(Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines)-6試験は、軽症~中等症のCOVID-19外来患者における既存治療転用を評価するようデザインされた分散型臨床試験で、2021年6月11日に参加者の募集を開始し現在も継続中である。 研究グループは、2021年8月6日~2022年2月9日に米国の91施設において、登録前10日以内に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が確認され、7日以内にCOVID-19の症状を2つ以上認めた30歳以上の外来患者を登録し、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群(1日1回200μg 14日間吸入)またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、持続的回復までの期間とし、3日連続で症状がない場合の3日目と定義された。副次アウトカムは、28日目までの入院または死亡、28日目までの入院・救急外来(urgent care)受診・救急診療部(emergency department)受診・死亡の複合などであった。持続的回復までの期間に有意差なし 登録患者1,407例がフルチカゾンフランカルボン酸エステル群(715例)とプラセボ群(692例)に無作為化され、それぞれ656例および621例が解析対象集団となった。平均(±SD)年齢は47±12歳、39%が50歳以上で、女性63%、ワクチン2回以上接種65%、症状発現から試験薬投与までの期間の中央値は5日(四分位範囲[IQR]:4~7)であった。 持続的回復までの期間に、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群とプラセボ群の有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.01、95%信用区間[CrI]:0.91~1.12、有効性[HRが>1と定義]の事後確率0.56)。 入院・救急外来受診・救急診療部受診・死亡の複合イベントは、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群で24例(3.7%)、プラセボ群で13例(2.1%)に認められた(HR:1.9、95%CrI:0.8~3.5)。各群で3例入院したが、死亡例はなかった。 有害事象の発現率は、フルチカゾンフランカルボン酸エステル群2.0%(13/640例)、プラセボ群2.5%(16/605例)であり、両群とも低率であった。

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神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症〔HDLS:hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroid〕

1 疾患概要■ 概念・定義神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS:hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroid)は、大脳白質を病変の主座とする神経変性疾患である。ALSP(adult-onset leukoencephalopathy with spheroid and pigmented glia)やCSF1R関連脳症(CSF1R-related leukoencephalopathy)と呼ばれることもある。本稿では、HDLS/ALSPと表記する。常染色体顕性(優性)遺伝形式をとるが、約半数は家族歴を欠く孤発である。脳生検もしくは剖検による神経病理学的検査により、HDLSは従来診断されていたが、2012年にHDLS/ALSPの原因遺伝子が同定されて以降は、遺伝学的検査により確定診断が可能になっている。■ 疫学HDLS/ALSPは世界各地から報告されているが、日本人を含めたアジア人からの報告が多い。HDLS/ALSPの正確な有病率は不明である。特定疾患受給者証の保持者は、2015年13人、2016年25人、2017年35人、2018年43人、2019年54人、2020年65人と年々増加傾向にある。HDLS/ALSPの有病率が増加している可能性は否定できないが、診断基準の策定など疾患についての認知度が高まり、確定診断に至る症例が増えたことが、患者数増加の要因だと思われる。しかしながら、確定診断にまで至らないHDLS/ALSP患者が依然として少なからず存在すると推察される。■ 病因HDLS/ALSPは colony stimulating factor-1 receptor(CSF1R)の遺伝子変異を原因とする。既報のCSF1R遺伝子変異の多くは、チロシンキナーゼ領域に位置している。ミスセンス変異、スプライスサイト変異、微小欠失、ナンセンス変異、フレームシフト変異、部分欠失など、さまざまなCSF1R遺伝子変異が報告されている。ナンセンス変異、フレームシフト変異例では、片側アレルのCSF1Rが発現しないハプロ不全が病態となる。中枢神経においてCSF1Rはミクログリアに強く発現しており、HDLS/ALSPの病態にミクログリアの機能不全が関与していることが想定されている。そのためHDLS/ALSPは一次性ミクログリア病と呼ばれる。■ 症状発症年齢は平均45歳(18~78歳に分布)であり、40~50歳台の発症が多い。発症前の社会生活は支障がないことが多い。初発症状は認知機能障害が最も多いが、うつ、性格変化や歩行障害、失語と思われる言語障害で発症するなど多彩である(図1)。主症状である認知機能障害は、前頭葉機能を反映した意思発動性の低下、注意障害、無関心、遂行機能障害などの性格変化や行動異常を特徴とする。動作緩慢や姿勢反射障害を主体とするパーキンソン症状、錐体路徴候などの運動徴候も頻度が高い。けいれん発作は約半数の症例で認める。図1 HDLS/ALSPで認められる初発症状画像を拡大する■ 予後進行性の経過をとり、発症後の進行は比較的速い。発症後5年以内に臥床状態となることが多い。発症から死亡までの年数は平均6年(2~29年に分布)、死亡時年齢は平均52 歳(36~84歳に分布)である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)脳MRI検査により大脳白質病変を認めることが、診断の契機となることが多い。頭部MRI所見は、初期には散在性の大脳白質病変を呈することがあるが、病勢の進行に伴い対称性、融合性、びまん性となる。白質病変は前頭葉・頭頂葉優位で、脳室周囲の深部白質に目立つ(図2A、B)。病初期から脳梁の菲薄化と信号異常を認めることが多く、矢状断面・FLAIRの撮像が有用である(図2C)。ただし、脳梁の変化はHDLS/ALSP以外の大脳白質変性症でも認めることがある。内包などの投射線維に信号異常を呈することもある。拡散強調画像で白質病変の一部に、持続する高信号病変を呈する例がある(図2D)。ガドリニウム造影効果は認めない。CT撮像により、側脳室前角近傍や頭頂葉皮質下白質に石灰化病変を認めることがある(図2E)。この所見は“stepping stone appearance”と呼ばれ(図2F)、HDLS/ALSPに特異性が高い。石灰化は微小なものが多いため、1mm厚など薄いスライスCT撮像が推奨される。HDLS/ALSPの診断基準としてKonno基準が国内外で広く用いられている。Konno基準に基づき、厚生労働省「成人発症白質脳症の実際と有効な医療施策に関する研究班」において策定された診断基準が難病情報ホームページに掲載されている(表)。図2 HDLS/ALSPの特徴的な画像所見画像を拡大する両側性の大脳白質病変を認める(A、B:FLAIR画像)。脳梁は菲薄化している(C:FLAIR画像)。拡散強調画像で高信号領域を認める(D)。CTでは微小石灰化を認める(E、F)。表 HDLS/ALSPの診断基準主要項目1.60歳以下の発症(大脳白質病変もしくは2の臨床症状)2.下記のうち2つ以上の臨床症候a.進行性認知機能障害または性格変化・行動異常b.錐体路徴候c.パーキンソン症状d.けいれん発作3.常染色体顕性(優性)遺伝形式4.頭部MRIあるいはCTで以下の所見を認めるa.両側性の大脳白質病変b.脳梁の菲薄化5.血管性認知症、多発性硬化症、白質ジストロフィー(ADL、MNDなど)など他疾患を除外できる支持項目1.臨床徴候やfrontal assessment battery(FAB)検査などで前頭葉機能障害を示唆する所見を認める2.進行が速く、発症後5年以内に臥床状態になることが多い3.頭部CTで大脳白質に点状の石灰化病変を認める除外項目1.10歳未満の発症2.高度な末梢神経障害3.2回以上のstroke-like episode(脳血管障害様エピソード)。ただし、けいれん発作は除く。診断カテゴリーDefinite主要項目2、3、4aを満たし、CSF1R変異またはASLPに特徴的な神経病理学的所見を認めるProbable主要項目5項目をすべてを満たすが、CSF1R変異の検索および神経病理学的検索が行われていないPossible主要項目2a、3および4aを満たすが、CSF1R変異の検索および神経病理学的検索が行われていない鑑別診断としては、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体顕性(優性)脳動脈症(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarct and leukoencephalopathy:CADASIL)など多彩な疾患が挙げられる。HDLS/ALSPと診断された症例で、病初期に多発性硬化症が疑われ、ステロイド治療を受けた例が複数報告されている。HDLS/ALSPはステロイド治療に効果を示さないため、大脳白質病変と運動症状を呈する若年女性を診察した場合には、HDLS/ALSPを鑑別する必要がある。HDLS/ALSPのための診断フローチャートを図3に示した。臨床的な鑑別診断は必ずしも容易ではなく、遺伝学的検査により確定診断を行う。2022年4月にCSF1R遺伝学的検査が保険収載され、かずさ遺伝子検査室に検査委託が可能である。図3 HDLS/ALSP診断のフローチャート画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)系統的な治療法は確立していない。HDLS/ALSPの経過中に出現する症状に応じた対症療法が行われる。痙性に対しては抗痙縮薬、パーキンソニズムに対して抗パーキンソン薬の使用を考慮する。症候性てんかんには抗てんかん薬を単剤で開始し、発作が抑制されなければ、作用機序が異なる抗てんかん薬を併用する。4 今後の展望HDLS/ALSPに対する造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation:HSCT)が海外で行われている。現在までに15例のHDLS/ALSP患者がHSCTを受けている。HSCTを受けた約4割の症例で臨床的効果を認めている。ドナー由来の細胞がHDLS/ALSP患者脳に到達し、衰弱したミクログリアの機能を補完している可能性が考えられる。ミクログリア機能を回復される治験としてアゴニスト効果を有する抗TREM2抗体薬を用いた治験が海外で行われている。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)かずさ遺伝子検査室(本症の遺伝学的検査を受託している)患者会情報Sister’s Hope Foundation(米国のHDLS/ALSPの患者会の英語ホームページ)(米国の患者とその家族および支援者の会/ホームページは英語)1)Konno T, et al. Neurology. 2018;91:1092-1104. 2)下畑享良 編著. 脳神経内科診断ハンドブック. 中外医学社;2021.3)池内 健ほか. 日本薬理学雑誌. 2021;156:225-229.4)池内 健ほか. 実験医学. 2019;37:118-122.5)池内 健. CLINICAL NEUROSCIENCE. 2017;35:1354-1355.公開履歴初回2023年9月28日

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難治性慢性咳嗽に対するゲーファピキサント、9試験をメタ解析/JAMA

 選択的P2X3受容体拮抗薬ゲーファピキサント45mgの1日2回経口投与は、プラセボと比較し咳嗽頻度、咳嗽重症度および咳嗽特異的QOLを改善するもののその効果は小さい可能性が高く、一方で有害事象、とくに味覚に関連する有害事象のリスクが高いことが、カナダ・マクマスター大学のElena Kum氏らによるシステマティック・レビューおよびメタ解析の結果、明らかとなった。ゲーファピキサントは、難治性または原因不明の慢性咳嗽に対する初の治療薬として開発され、日本およびスイスでは承認されているが、米国、欧州、カナダなどでは規制当局の審査中である。JAMA誌2023年9月11日号掲載の報告。ゲーファピキサントの無作為化比較試験9件をメタ解析 研究グループは、2014年11月~2023年7月のMEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびWeb of Scienceを検索し、8週間以上持続する難治性または原因不明の慢性咳嗽患者において、ゲーファピキサントとプラセボ、またはゲーファピキサント2用量以上(用量間比較、プラセボありまたはなし)を比較した並行群間またはクロスオーバーの無作為化比較試験(RCT)を対象として解析した。 2人の研究者が独立してデータを抽出し、各結果について頻度論的ランダム効果用量反応メタ解析またはペアワイズメタ解析を行った。GRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation)を用いて、患者が効果を重要と感じるか(臨床的最小重要差[MID]より大きい)または小さいと感じるか(MIDより小さい)のエビデンスの確実性を評価した。 主要アウトカムは、VitaloJAK咳モニターを用いて測定された24時間、覚醒時および睡眠時の咳嗽頻度(MID:-20%)、咳嗽の重症度(視覚的アナログスケール[VAS]、範囲:0~100mm、高値ほど重症、MID:-30mm)、咳嗽特異的QOL(レスター咳質問票[LCQ]、スコア範囲:3~21、スコアが高いほどQOLは良好、MID:+1.3点)、治療関連有害事象、投与中止に至った有害事象、および味覚関連有害事象であった。 9件(合計2,980例)のRCTが主要解析に組み込まれた。プラセボとの比較で咳嗽頻度は17.6%減少、味覚関連有害事象が32%増加 ゲーファピキサント45mgの1日2回投与はプラセボと比較し、覚醒時の咳嗽頻度(17.6%減少、95%信頼区間[CI]:10.6~24.0%減少、エビデンスの確実性:中)、咳嗽の重症度(平均群間差:-6.2mm、95%CI:-4.1~-8.4、エビデンスの確実性:高)、および咳嗽特異的QOL(平均群間差:1.0点、95%CI:0.7~1.4、エビデンスの確実性:中)に対してわずかな効果を示した。 一方、ゲーファピキサント45mgの1日2回投与はプラセボと比較し、治療関連有害事象(32[95%CI:13~64]/100人当たり増加、エビデンスの確実性:中)および味覚関連有害事象(32[95%CI:22~46人]/100人当たり増加、エビデンスの確実性:高)に関して、重大な増加を引き起こすと思われた。 ゲーファピキサント15mgの1日2回投与は、味覚関連有害事象に及ぼす影響が小さいことが示唆された(6[95%CI:5~8人]/100人当たり増加、エビデンスの確実性:高)。

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精神的苦痛の大きい白斑患者の特徴

 米国・Incyte CorporationのKristen Bibeau氏らが17ヵ国の白斑患者を対象に、白斑とQOL、メンタルヘルスとの関連性を調べる定性的研究を行った。その結果、世界的に白斑患者は、感情的幸福感(emotional well-being)、日常生活、心理社会的健康に大きな影響を受けていることが示された。その負荷は体表面積(BSA)5%超の病変を有する患者、肌の色が濃い患者、顔や手に病変がある患者で最も大きかった。また、本研究から、患者が振る舞いを変えたこと、明らかな不満を表出していたこと、うつ病と一致する症状を有していたことが示唆され、著者らは、これらが過小診断されている可能性があるとしている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年8月30日号掲載の報告。 2021年5月6日~6月21日の期間において、17ヵ国のオンラインパネルから白斑患者を募集した住民ベースの定性的研究「Vitiligo and Life Impact Among International Communities(VALIANT)試験」が実施された。 白斑の診断を受けた18歳以上の成人5,859例のうち、3,919例(66.9%)が調査を完了し、3,541例(60.4%)が解析に組み入れられた。対象患者は、Vitiligo Impact Patient scale(VIPs)を用いて、QOLやメンタルヘルスなどの感情的幸福感について質問を受けた。また、Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9)を用いてうつ症状が評価された。なお、本試験で用いられたVIPsスコアの範囲は0~60で、スコアが高いほど心理社会的負担が大きいことを示した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者3,541例の年齢中央値は38歳(範囲:18~95)、男性は1,933例(54.6%)、BSA 5%超の病変を有する患者は1,602例(45.2%)、FitzpatrickスキンタイプIV~VI(肌の色が濃い)は1,445例(40.8%)であった。・VIPsスコアの合計点(平均値±標準偏差[SD])は、全体では27.3±15.6点であり、インドの患者が40.2±14.1点と最も高スコアであった(すなわち最も負荷が大きかった)。・VIPsスコアに基づくQOL負荷は、BSA 5%超の病変を有する患者(平均32.6点[SD 14.2])、肌の色が濃い患者(31.2点[15.6])、病変が顔にある患者(30.0点[14.9])または手にある患者(29.2点[15.2])で大きかった。・白斑が日々の生活に大きな影響を及ぼしていると報告したのは、少なくとも全体の40%を占めた(衣服の選択に影響がある:55.2%[1,956/3,541例]など)。・白斑をメイクや衣服でよく隠すと報告した割合は59.4%であった。・精神科疾患の診断を受けていた割合は58.7%であった(不安症[28.8%]、うつ病[24.5%]など)。・PHQ-9に基づく中等度~重度のうつ症状は、55.0%に認められた。インドの患者(89.4%[271/303例])、BSA 5%超の病変を有する患者(72.0%[1,154/1,602例])、肌の色が濃い患者(68.3%[987/1,445例])、顔や手に病変がある患者(59.3%[1,607/2,712例])で高率に認められた。

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脂肪が効率よく燃焼される運動強度は個人差が大きい

 減量や疾患予防などの目的で脂肪を効率的に燃焼させる運動をしようとするなら、個別化されたアプローチに基づいて運動強度を設定する必要があるかもしれない。運動強度と脂肪燃焼との関係は個人差が大きいために、心拍数などから推計した“脂肪燃焼ゾーン”は、あまりあてにならない可能性があるという。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のHannah Kittrell氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrition, Metabolism and Cardiovascular Diseases」に7月14日掲載された。 脂肪組織以外への脂肪蓄積(異所性脂肪)は2型糖尿病の発症に関係している。代謝を正常に戻すためには異所性脂肪を減らす必要があり、それには運動が有効であって、特に脂肪の酸化速度が最大化する(maximal rate of lipid oxidation;MLO)強度での運動が最適と考えられる。Kittrell氏も、「減量を試みる人の多くがMLOに興味を持つようだ」と述べ、「大半の市販のエクササイズマシンには、年齢と性別、心拍数からMLOを推計してそれを“脂肪燃焼ゾーン”として表示するオプション設定がある」と解説する。ただし同氏によると、そのような“脂肪燃焼ゾーン”は精度検証が行われておらず、「多くの人が、その人のMLOとは異なる強度でエクササイズを行っている可能性がある」とのことだ。 Kittrell氏らの研究は、26人(女性11人)を対象として、運動強度を徐々に高めていきながら酸素摂取量と二酸化炭素排出量を測定するという運動負荷試験によって、正確なMLOを計測。その結果と、心拍数などから推計されるMLOとの比較を行った。解析の結果、両者はあまり一致しておらず、心拍数については平均23拍/分の乖離が認められた。 Kittrell氏は、「近年、MLOに該当する運動強度を『FATmax』と呼び、それを心拍数などから推計することがあるが、われわれの研究は、そのような推計に基づく心拍数は、MLOを引き出すための運動処方の目安としては不適切であることを示している。MLOは個人差が大きいため、正確な評価には個々に運動負荷試験を行い、脂肪の酸化速度を測定することが望ましい」と話している。 また、論文の上席著者であり同大学教授および米チャールズ・ブロンフマン個別化医療研究所所長であるGirish Nadkarni氏は、「本研究を契機に、今よりも多くの人々およびトレーナーが運動負荷試験を用いて、脂肪燃焼に最適な個別化された運動処方が行われるようになることを期待している。また、この研究は、データ駆動型アプローチ(データ収集とその分析に基づく意思決定)が、正確な運動処方に果たす役割を強調するものでもある」と述べている。 なお、研究グループでは現在、このような手法で個別化した運動処方が減量や異所性脂肪減少という点でより優れた効果を発揮し得るか、および、肥満や2型糖尿病、心臓病などに関連する検査指標に対して、従来の手法による運動介入よりも有意な改善をもたらすかを調べる研究を予定している。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その1【「実践的」臨床研究入門】第36回

今回はO(アウトカム)を設定する際の要点を解説します。これまでブラッシュアップしてきたわれわれのResearch Question(RQ)のOは下記のとおりです(連載第34回参照)。O:1)末期腎不全(透析導入)、2)糸球体濾過量(GFR)低下速度O(アウトカム)は測定可能で臨床的に意義があるかまず、ここで設定したOが測定可能で臨床的に意義があるものなのか、再考してみましょう。末期腎不全(透析導入)は明確なイベントであり、カルテ調査でその発症日も容易に確認できます。GFRは血清クレアチニン値(Cr)と年齢、および性別で算出される腎機能評価の指標で、日本人の集団でも確立された計算式が論文で公開されています1)。GFR低下速度は、複数回のCrの経時的評価が行われていれば計算できますので、客観的な測定が可能です。末期腎不全(透析導入)は患者さんにとって、生活が大きく変わるハードエンドポイントであり、臨床的にも大きな意義があるOと考えられます。一方、GFR低下速度はサロゲートエンドポイントです(連載第3回参照)。しかし、GFR低下速度の持続的な加速は、慢性腎臓病(CKD)患者さんの末期腎不全発症を含めたハードエンドポイントの予測因子であることが多くの臨床研究の結果から示されています。したがって、これも臨床的に重要なアウトカムと言えるでしょう。さて、われわれのRQの曝露要因(E)は、低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日の遵守という厳格な食事療法です。すでに設定した腎予後に関するOの臨床的重要性は前述したとおりですが、厳格な食事療法に伴う負担など、負の側面も気になりませんか。たとえば、厳格な低たんぱく食事療法によるQOL悪化の懸念は、診療ガイドラインなどでも指摘されていますが、明らかなエビデンスはこれまでに認められていないとされています。今回、われわれが実施を予定しているのは、カルテ調査をベースにした、いわゆる「後ろ向き」の観察研究です(連載第1回、第6回参照)。QOL尺度(連載第3回参照)の経時的な測定は、日常診療では一般的に行われていないと思いますし、われわれのカルテ調査データでも収集はできませんでした。このように、通常の臨床現場で測定されないOについては「後ろ向き」ではなく「前向き」研究でなければ検討できない、ということです。ちなみに、前回紹介したDOPPS(Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study)は、血液透析患者さんを対象とした「前向き」観察研究です。DOPPSでは多大なコストをかけて、経時的な健康関連QOL尺度(連載第3回参照)の測定と収集も行っています。また、前回説明したとおり、研究の効率や実施可能性の観点から、できればP(対象)はOを起こしやすい集団である方が望ましいです。つまり、発生頻度が多いOを設定した方が研究の効率が良いということです。そこで、今回の「後ろ向き」観察研究の解析で使用するデータをざっと確認してみたとしましょう。保存期CKD患者さん600例余り、最長5年間の観察期間のカルテ調査データを収集・調べてみたところ、全体の約30%の症例でプライマリのOである末期腎不全(透析導入)の発生が確認できました。実施可能性の高い解析データが収集できたものとホッとした次第です。1)Matsuo S, et al. Am J Kidney Dis. 2009;53;6:982-992.

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英語で「付き添い人」は?【1分★医療英語】第99回

第99回 英語で「付き添い人」は?I require a chaperon for the physical examination. Could you please accompany me to the examination room?(身体検査の際に付き添い人が必要です。診察室に同席してもらえませんか?)Sure!(もちろんです!)《例文1》医師We will obtain consent for the surgery, and will have a chaperon present. Is that okay?(手術の同意を取るので付き添い人に同席してもらいます。よろしいですか?)患者OK.(わかりました)《解説》今回は英単語の紹介です。“chaperon”(シャペロン)は、英語で「付き添い人」という意味を持つ単語です。医療現場において、患者と医師の間で行われる診察や手続きの際に第三者として同席する役割を指します。これによって医療行為の透明性を保ち、誤解や不適切な行為を防ぐ目的があります。とくに“chaperon”を必要とする場面としては、医師が異性の患者の身体診察をする場合や、手術や延命処置などの重要な意思決定の際に自分や相手を守るための証人として第三者の目を必要とする場合があります。日本の医療現場でも、身体診察の際に看護師などに同席をお願いすることがありますよね。多くの病院では“chaperon”という特定の職業があるわけではなく、単に「付き添い人」という意味合いなので、私もよく看護師やほかの医療スタッフに“Could you stay here as a chaperon?”(chaperonとして同席してくれませんか?)と依頼しています。講師紹介

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アルツハイマー病の進行を予測するグリア活性化PETイメージング

 グリア活性化は、アルツハイマー病の病因であるといわれている。しかし、長期的な認知機能低下との関係は明らかになっていない。国立長寿医療研究センターの安野 史彦氏らは、アルツハイマー病患者の経年的な認知機能低下に対するグリア活性化PETイメージングとアミロイド/タウ病理の予後効果を比較するため、本研究を行った。その結果、グリア活性化PETイメージングは、脳脊髄液(CSF)によるアミロイド/タウ測定よりもアルツハイマー病の臨床的な進行の強力な予測因子であることを報告した。Brain, Behavior, and Immunity誌2023年11月号の報告。 対象は、軽度認知障害またはアルツハイマー病と診断された17例。全体的な認知機能の経時的な変化を評価した。ステップワイズ回帰分析を用いて、全体的な認知機能と記憶に対するCSFによるアミロイド/タウ測定とグリア活性化PETイメージング(11C-DPA-713-BPND)によるベースライン時の予測効果を評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体的な認知および記憶スコアの経時的変化の最終的な重回帰モデルでは、予測因子として11C-DPA-713-BPNDが含まれた。・CSF Aβ 42/40比およびp-タウ濃度は、最終モデルより除外された。・ステップワイズ回帰分析では、ベイズ因子に基づくモデル比較により、全体的な認知機能および記憶の低下の予測因子として、11C-DPA-713-BPNDが含まれることが示唆された。 著者らは、グリア活性化は、タウ誘発性の神経毒性や認知機能低下の主な原因であるため、アルツハイマー病の治療戦略として不適応なミクログリア反応を阻害できる可能性があるとしている。

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1型糖尿病リスクの高い小児、コロナ感染で発症しやすいか/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の時期に、小児で糖尿病の増加が観察されている。ドイツ・ドレスデン工科大学のMarija Lugar氏らは、「GPPAD試験」において、1型糖尿病の遺伝的リスクが高い小児では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)抗体が検出されなかった場合と比較して、検出された集団は膵島自己抗体の発生率が高く、とくに生後18ヵ月未満でリスクが増大していることを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年9月8日号に掲載された。生後4~7ヵ月の幼児を追跡した欧州のコホート研究 GPPADは、欧州の5ヵ国(ドイツ、ポーランド、スウェーデン、ベルギー、英国)の施設が参加した進行中の縦断的コホート研究である(米国・Leona M. and Harry B. Helmsley Charitable Trustなどの助成を受けた)。 この研究では、2018年2月~2021年3月に、1型糖尿病発症の遺伝的リスクが10%以上の生後4~7ヵ月児1,050人(女児517人)を登録したPrimary Oral Insulin Trial(POINT)のデータを用いた。 SARS-CoV-2の感染は、2018年4月~2022年6月に、被験児が2歳になるまでに2~6ヵ月の間隔で行われた追跡調査の受診時にSARS-CoV-2抗体の発現を特定することで確認した。 主要アウトカムは、2つの連続した検体または単一の検体における2つ以上の膵島自己抗体の発現と、1型糖尿病の発症であった。 生後6ヵ月からの抗体測定について、血液検体を保管するバイオバンクの同意が得られた885人(女児441人)を解析の対象とした。膵島自己抗体陽性者の33.3%が1型糖尿病発症 年齢中央値18ヵ月(範囲:6~25)の時点で、170人にSARS-CoV-2抗体の発現を認めた。膵島自己抗体は60人(6.8%)で発現し、このうち6人はSARS-CoV-2抗体陽性と同時に、6人はSARS-CoV-2抗体陽性後の診察時に、膵島自己抗体陽性であった。これら60人の小児は最終受診時まで膵島自己抗体が陽性で、このうち20人(33.3%)が1型糖尿病を発症した。 SARS-CoV-2抗体陽性時の膵島自己抗体発現の、性・年齢・国で補正したハザード比(HR)は3.5(95%信頼区間[CI]:1.6~7.7、p=0.002)であった。また、膵島自己抗体発現の累積リスクは、SARS-CoV-2抗体陰性の場合は2.9%(95%CI:1.8~4.8)であったのに対し、陽性の場合の6ヵ月以内の累積リスクは7.3%(4.2~12.7)だった(p=0.01)。 膵島自己抗体の発生率は、SARS-CoV-2抗体陰性の場合は100人年当たり3.5(95%CI:2.2~5.1)であったのに対し、陽性の場合は同7.8(5.3~19.0)と有意に高かった(p=0.02)。 さらに、SARS-CoV-2抗体陽性の幼児における膵島自己抗体が陽性となるリスクは、生後18~24ヵ月と比較して、生後18ヵ月未満で有意に高かった(HR:5.30、95%CI:1.50~18.30、p=0.009)。 著者は、「膵島自己抗体の発現が、COVID-19の世界的流行の初期における1型糖尿病発症率の急激な上昇の原因とは考えにくいが、将来の1型糖尿病の発症率に関連すると考えられる」とし、「生後12ヵ月ごろに膵島自己抗体の発現がピークに達したが、これは糖尿病原性障害の原因への初期曝露が相対的に多いか、またはこの年齢での膵島自己免疫に対する脆弱性の増加のいずれかを反映すると推測され、本研究はこれらの仮説の評価に道を開くものである」と指摘している。

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うつ病の既往歴がある人はネガティブ情報にとらわれがち

 寛解しても再発することが多い大うつ病性障害(以下、うつ病)の既往歴を持つ人では、うつ病の既往歴のない人に比べて、ネガティブな情報を処理する時間が長い一方で、ポジティブな情報を処理する時間が短い傾向があり、それがうつ病の再発リスクにつながっている可能性のあることが示唆された。米メリーランド大学ボルチモアカウンティ校心理学分野のLira Yoon氏らによるこの研究結果は、「Journal of Psychopathology and Clinical Science」に8月21日掲載された。 Yoon氏は、「われわれは、うつ病患者がネガティブな情報をどう処理するかだけでなく、ポジティブな情報をどう処理するかも検討すべきではないかということに気が付いた。ネガティブな感情や気分の落ち込みの持続との関わりにおいては、もしかするとポジティブな情報の方が重要なのかもしれない」と述べている。 今回の研究でYoon氏らは、44件の研究を対象にメタアナリシスを実施し、うつ病の既往歴のある人がネガティブ情報とポジティブ情報の処理にどれだけの時間を費やすのかを、健常者との比較で検討した。これらの研究では、例えば、幸福や悲嘆、または無感情の表情を浮かべた人の顔や、ポジティブ、ネガティブ、または中立的な単語を刺激として参加者に提示し、それに対する応答時間が調査されていた。解析対象者の総計は、うつ病の既往歴のある2,081人と、既往歴のない健常者2,285人であった。 その結果、健常者はうつ病の既往歴がある人よりも、提示された刺激に対して、その内容がポジティブかネガティブか、あるいは中立的かに関わらず、より迅速に反応する傾向のあることが明らかになった。これに対して、うつ病の既往歴がある人は健常者に比べて、ポジティブな刺激よりもネガティブな刺激の処理に費やす時間の方が長いことが確認された。さらに、両群間で、ネガティブな刺激と中立的な刺激、およびポジティブな刺激と中立的な刺激の処理に費やされる時間に有意な差は認められなかった。 Yoon氏は、「ストレスになることが生じ、それに動揺するのは人間の自然な反応だ。しかし、何か作業をしている間はその問題を脇に置いてその作業に集中できる人がいる一方で、その問題が気に掛かって作業に集中できなくなる人もいる。われわれの研究が示しているのは、うつ病の既往歴がある人は、たとえうつ病が寛解していても、現在取り組んでいることとは無関係なネガティブ情報から距離を置くことが、無関係なポジティブ情報から距離を置くよりも困難だということだ」と述べる。そして、「うつ病の既往がある人では、そのようなネガティブ思考に支配されて、今やるべきことができなくなっている可能性がある。その状態がさらにネガティブな感情を増幅させ、再びストレスのかかるような出来事が生じると、うつ病を再発させてしまうのかもしれない」との見方を示す。 うつ病とは、2週間以上続く抑うつと日常生活における興味や喜びの喪失と定義される。米国国立精神衛生研究所によると、2021年には、米国人口の約8%に当たる約2100万人の成人が、この定義を満たすうつ病を1回以上発症したという。 では、うつ病の再発はどうすれば防げるのだろうか。うつ病の最も効果的な治療法は、認知行動療法(CBT)に代表される心理療法と薬物療法である。米ノースウェル・ヘルスの精神科医であるGeorge Alvarado氏によると、主なCBTの一つは、認知再構成法だという。これは、否定的な思考パターンや信念を特定し、それをより健全で現実的なものに変容させることを目指すものだ。同氏はさらに、抑うつの改善には、仕事、人間関係、ライフスタイルを変えることも有益だと話し、質の良い睡眠、運動、健康的な食事の重要性を強調している。 Yoon氏は、「CBTのような既存の治療法に加えて、うつ病の既往歴のある人が、無関係な情報から距離を置くのを助けるトレーニングプログラムを開発することも可能かもしれない」と話す。同氏は、「人によって反応する治療アプローチは異なるため、ツールの選択肢が増えるのは良いことだ」と述べる。そして、「まだ道半ばだが、CBTやマインドフルネスのような既存のツールは、無関係な情報、特にネガティブな情報を自分の中で切り離すのに役立つ可能性がある」との考えを示している。

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酒を飲むと相手が魅力的に見える「ビール・ゴーグル効果」認められず

 酒の席で会った誰かと一夜限りの関係を持ってしまったことを、酒を飲むと相手が実際よりも魅力的に見える「ビール・ゴーグル効果」のせいにする人は多い。しかし実際には、アルコールにそのような効果はないようだ。飲酒によりもたらされるのは、すでに魅力を感じていた人にアプローチする勇気、いわゆる「liquid courage(酒の力を借りて出る勇気)」であることが、米スタンフォード予防研究センターのMolly Bowdring氏と米ピッツバーグ大学心理学分野のMichael Sayette氏の研究で示された。この研究結果は、「Journal of Studies on Alcohol and Drugs」に8月29日掲載された。 一般的には、酒を飲むと周囲の人がより魅力的に見えると考えられている。しかし、そのような現象を体系的に検討した研究は実施されていない。Sayette氏は、「広く知られているアルコールの『ビール・ゴーグル効果』に関する文献はあるが、その内容はそれほど一貫していない」と説明する。 先行研究の多くで実施されたのは、研究参加者に、飲酒した状態と飲酒していない状態で誰かの写真を見せ、その人の魅力度を評価してもらうという実験だった。一方、今回Bowdring氏らが実施した研究では、この手法に、魅力を感じた相手に実際に会える可能性を示すという、より現実的な要素を付け加えた。具体的には、男性とその同性の友人18組(計36人、21〜27歳)に2回にわたり、アルコール飲料(1回目の実験)と非アルコール飲料(2回目の実験)を摂取してもらいながら、写真や動画の中の人物の魅力度を評価してもらった。友人関係にある2人組に参加してもらったのは、飲酒を交えた社交的な状況を模倣するのが目的だった。参加者は、その後の実験で魅力度の評価対象となった人と交流する機会が持てる可能性があるとの説明を受けた。また、魅力度を評価してもらった後には、最も会ってみたい人を4人選んでもらった。 その結果、参加者の魅力度の評価に対する飲酒の影響は確認されず、つまり「ビール・ゴーグル効果」を裏付けるエビデンスは認められないことが示された。しかし、参加者は、飲酒していないときに比べて、飲酒しているときには、その後の実験で会えるかもしれない4人を、魅力度を高く評価した上位4人から選ぶ傾向が強く、そのオッズは飲酒していない場合の1.71倍だった。 このことから、アルコールは他者に対する感じ方を変化させるのではなく、他者との交流への自信を高めるのではないかと研究グループは結論付けている。Bowdring氏は、「飲酒をする人は、飲酒によって社会的なモチベーションや意図が、短期的には好ましい方向に向かうが、長期的には有害な方向に変化する可能性があることを認識しておくと有益かもしれない」との見解を示している。

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適切な運動でがん患者の死亡リスク25%減、がん種別にみると?/JCO

 がんと運動の関係について、さまざまな研究がなされているが、大規模な集団において、がん種横断的に長期間観察した研究結果は報告されていない。そこで、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのJessica A. Lavery氏らの研究グループは、がん種横断的に1万1,480例のがん患者を対象として、がんと診断された後の運動習慣と死亡リスクの関係を調べた。その結果、適切な運動を行っていた患者は非運動患者と比べて、全生存期間中央値が5年延長し、全死亡リスクが25%低下した。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年8月31日号に掲載された。 前立腺がん、肺がん、大腸がん、卵巣がんのスクリーニング研究(Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian [PLCO] Cancer Screening Trial)に参加したがん患者1万1,480例(11がん種)を対象とした。対象患者のがんと診断された後の運動の頻度と死亡の関係を検討した。運動について、米国のガイドラインの基準(中強度以上の運動を週4日以上×平均30分以上および/または高強度の運動を週2回以上×平均20分以上)を満たす患者(適切な運動群)と基準未満の患者(非運動群)の2群に分類し、比較した。主要評価項目は全死亡、副次評価項目はがん死亡、非がん死亡であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値16年時点において、死亡が認められたのは4,665例であった。内訳は、がん死亡が1,940例、非がん死亡が2,725例であった。・全生存期間中央値は、適切な運動群が19年であったのに対し、非運動群は14年であった。・多変量解析の結果、適切な運動群は非運動群と比べて、全死亡リスクが有意に25%低下した(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.70~0.80)。・また、適切な運動群は非運動群と比べて、がん死亡リスク(HR:0.79、95%CI:0.72~0.88)と非がん死亡リスク(HR:0.72、95%CI:0.66~0.78)が有意に低下した。・がん種別のサブグループ解析において、全死亡リスクの有意な低下が認められたがん種は、以下のとおりであった。 -子宮体がん(HR:0.41、95%CI:0.24~0.72) -腎がん(同:0.50、0.31~0.81) -頭頸部がん(同:0.62、0.40~0.96) -血液がん(同:0.72、0.59~0.89) -乳がん(同:0.76、0.63~0.91) -前立腺がん(同:0.78、0.70~0.86)・一方、適切な運動群でがん死亡リスクの有意な低下が認められたがん種は、腎がん(HR:0.34、95%CI:0.15~0.75)、頭頸部がん(HR:0.49、95%CI:0.25~0.96)のみであった。

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心房細動患者のうつ・不安の改善、アブレーションvs.薬物療法/JAMA

 症候性心房細動(AF)を有する患者において、不安や抑うつなど精神症状の改善はカテーテルアブレーション施行患者では観察されたが、薬物療法のみの患者では認められなかったことを、オーストラリア・Royal Melbourne HospitalのAhmed M. AI-Kaisey氏らが、医師主導の無作為化評価者盲検比較試験「Randomized Evaluation of the Impact of Catheter Ablation on Psychological Distress in Atrial Fibrillation:REMEDIAL試験」の結果、報告した。AFカテーテルアブレーションがメンタルヘルスに及ぼす影響についてはよくわかっていなかった。JAMA誌2023年9月12日号掲載の報告。AF患者100例を、カテーテルアブレーション群と薬物療法のみ群に無作為化 研究グループは、2018年6月~2021年3月にオーストラリアのAFセンター2施設において、発作性または持続性AFを有し少なくとも2種類の抗不整脈薬治療の対象となる18~80歳の患者を登録。アブレーション群または薬物療法群に1対1の割合で無作為に割り付け、AFカテーテルアブレーションが薬物療法のみと比較して、精神的苦痛を改善するかどうかを、評価尺度を用いて調べた。 薬物療法群では洞調律を維持するため最適な抗不整脈薬治療が行われ、アブレーション群では無作為化後1ヵ月以内にカテーテルアブレーションが行われた。 主要アウトカムは、12ヵ月時の病院不安抑うつ尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS)スコア、副次アウトカムは重度の精神的苦痛(HADS合計スコア>15)を有する患者の割合、HADS不安スコア、HADSうつ病スコア、うつ病自己評価尺度(Beck Depression Inventory-II:BDI-II)スコアであった。不整脈再発およびAF負荷のデータも解析した。 計100例(平均[±SD]年齢59±12歳、女性31例[32%]、発作性AF54%)が登録され、アブレーション群(52例)および薬物療法群(48例)に割り付けられた。このうち、4例(それぞれ3例および1例)が追跡不能または脱落となり、96例が試験を完遂した。アブレーション群の全例(49例)で肺静脈隔離に成功した。アブレーション群で、12ヵ月時の病院不安抑うつ尺度の合計スコアが有意に低下 12ヵ月時(主要アウトカム)のHADS合計スコア(平均±SD)は、アブレーション群7.6±5.3、薬物療法群11.8±8.6、群間差は-4.17(95%信頼区間[CI]:-7.04~-1.31、p=0.005)であり、アブレーション群が薬物療法群より有意に低かった。なお6ヵ月時もそれぞれ8.2±5.4、11.9±7.2で、有意差が認められた(p=0.006)。 アブレーション群と薬物療法群において、重度の精神的苦痛を有する患者の割合はそれぞれ6ヵ月時14.2%、34%(p=0.02)、12ヵ月時10.2%、31.9%(p=0.01)であり、HADS不安スコアは6ヵ月時4.7±3.2、6.4±3.9(p=0.02)、12ヵ月時4.5±3.3、6.6±4.8(p=0.02)であった。HADS抑うつスコアは3ヵ月時3.7±2.6、5.2±4.0(p=0.047)、6ヵ月時3.4±2.7、5.5±3.9(p=0.004)、12ヵ月時3.1±2.6、5.2±3.9(p=0.004)。また、BDI-IIスコアは6ヵ月時7.2±6.1、11.5±9.0(p=0.01)、12ヵ月時6.6±7.2、10.9±8.2(p=0.01)であった。 AF負荷の中央値も、アブレーション群0%(四分位範囲[IQR]:0~3.22)、薬物療法群15.5%(1.0~45.9)であり、アブレーション群が有意に低かった(p<0.001)。

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スマホゲームで慢性期統合失調症患者の認知機能が改善

 中国・安徽医科大学のShengya Shi氏らは、慢性期統合失調症患者の認知機能改善に対するビデオゲームの有効性を調査し、認知機能に対するビデオゲームのバイオマーカーを評価するため、予備的研究を行った。その結果、ビデオゲーム介入は、慢性期統合失調症患者の認知機能を改善することが示唆され、血清BDNFレベルがこの効果を予測するバイオマーカーである可能性を報告した。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2023年8月18日号の報告。 ゲーム群には、1人用のスマートフォンビデオゲームを1時間/日、週5回プレーを6週間行った。対照群は、1時間/日、週5回のテレビ視聴を6週間行った。認知機能の評価には、神経心理検査アーバンズ(RBANS)およびストループ色彩単語検査(SCWT)を用いた。臨床症状の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、機能の全体的評価尺度(GAF)、一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSE)、モバイルゲーム依存アンケート(PMGQ)、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・ゲーム群では、試験期間中にRBANS合計スコアの改善が認められた。・すべてのSCWTスコアにおいて、両群間の差は認められなかった。・ゲーム群では、PANSSの陰性症状およびGAFの全体的機能のより大きな改善が認められた。・PMGQスコアは、両群ともにすべての時点において、カットオフスコアよりも低値であった。・PHQ-9およびGSEスコアは、両群間で差は認められなかった。・6週間のビデオゲーム介入後、ゲーム群では、血清BDNFレベルが有意に高かった。・すべての参加者において、血清BDNF レベルとRBANS合計スコアとの正の相関が認められた。

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monarchEの適格基準でも検討、POTENT試験の探索的解析結果

 第III相POTENT試験では、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性乳がんにおける術後ホルモン療法へのS-1の上乗せ効果が示された。今回、同試験のリスク分類別の探索的解析結果を京都大学の高田 正泰氏らがBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年9月7日号に報告した。 POTENT試験の対象は、StageI~IIIBのER陽性HER2陰性乳がん患者。S-1併用群(S-1[1日2回経口、3週ごと]+標準的ホルモン療法)と標準的ホルモン療法群に無作為に割り付けられた。 再発リスク(複合リスク)は、年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、グレード、ER発現、Ki-67発現レベルを組み込んだCoxモデルで決定した。複合リスクスコアにより低リスク群(下位四分位数以下、677例)、中リスク群(四分位範囲、767例)、高リスク群(上位四分位数超、453例)に分け、各群におけるS-1の上乗せ効果を評価した。また、monarchE試験の適格基準を満たした患者におけるS-1の上乗せ効果も推定された。 主な結果は以下のとおり。・内分泌療法にS-1を追加することで、無浸潤疾患生存(iDFS)イベントは、中リスク群では49%(ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.33~0.78)、高リスク群では29%(HR:0.71、95%CI:0.49~1.02)減少した。・低リスク群では、S-1の上乗せ効果は確認できなかった。・monarchEコホート1基準のうちリンパ節転移1~3個の患者(290例)において、S-1上乗せはiDFSの改善を示した(HR:0.47、95%CI:0.29~0.74)。 著者らはS-1の上乗せ効果はとくに中リスク群で顕著だったとし、最適な使用法を探るため、さらなる研究が必要とまとめている。

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機械学習モデルで心筋梗塞の診断能が向上

 心筋トロポニン値と臨床的特徴を組み込んだ機械学習モデルによって、心筋梗塞の診断能が改善されたという研究結果が、「Nature Medicine」に5月11日掲載された論文で明らかにされた。 心筋梗塞の診断の目安として心筋トロポニンの閾値を設定するようにガイドラインで推奨しているが、心筋トロポニン値は、年齢、性別、併存疾患、発症時からの経過時間などの影響を受けやすい。そこで、英エジンバラ大学のDimitrios Doudesis氏らは、心筋梗塞の診断能の改善を目的として、初診時または定期的な検査時の心筋トロポニンI値と臨床的特徴を統合し、心筋梗塞発症の確率を予測するCoDE-ACSスコア(Collaboration for the Diagnosis and Evaluation of Acute Coronary Syndrome score、0~100点)を算出する機械学習モデルとしてCoDE-ACSモデルを開発した。 CoDE-ACSモデルの訓練は、心筋梗塞の疑いで英スコットランドの2~3次病院を受診したコホート1万38例(年齢中央値70歳、女性48%)のデータを用いて実施した。このモデルの外部検証は、別のコホート研究の参加者で心筋梗塞の疑いがあるコホート1万286例(年齢中央値60歳、女性35%)のデータを用いて実施した。CoDE-ACSモデルによる心筋梗塞の診断能を、心筋トロポニンI閾値による診断能と比較した。 外部検証の結果、CoDE-ACSモデルによる心筋梗塞の診断能は高く、初診時の曲線下面積は0.953〔95%信頼区間(CI)0.947~0.958〕、定期検査時の曲線下面積は0.966(同0.961~0.970)であり、年齢、性別、虚血性心疾患の有無などのサブグループ間で診断能に大きな差はなく、どのサブグループでも良好な診断能を示した。 初診時において、心筋梗塞発症の確率が低いと判定された患者の割合は、CoDE-ACSモデル(CoDE-ACSスコア3点未満)の方が心筋トロポニンI閾値(5ng/L未満)と比べて高く(61%対27%)、陰性的中率はいずれも99.6%と高かった。同様に、初診時において心筋梗塞発症の確率が高いと判定された患者の割合は、CoDE-ACSモデル(同スコア61点以上)の方が心筋トロポニンI閾値(女性16ng/L、男性34ng/L)と比べて低く(10%対16%)、陽性的中率はCoDE-ACSモデルの方が高かった(75.5%対49.4%)。 CoDE-ACSモデルで初診時に心筋梗塞発症の確率が低い(CoDE-ACSスコア3点未満)と判定された患者における心臓死の発生率は、中程度(同スコア3~60点)または高い(同スコア61点以上)と判定された患者と比べて有意に低かった〔30日後(0.1%対0.5%対1.8%)および1年後(0.3%対2.8%対4.2%)のいずれもP<0.001〕。 著者らは、「CoDE-ACSモデルが医療現場で採用されれば、救急科での滞在時間の短縮、不必要な入院の防止、および心筋梗塞の早期治療の改善につながり、患者と医療提供者の双方にとって有益であると考えられる」と述べている。 なお、数名の著者が、あるバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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第2章 資格試験の観点からの医師国家試験【国試のトリセツ】Introduction

Introduction第2 章は「資格試験の観点からの医師国家試験」を取り扱います。医師国家試験は、第95回(2001年実施)以降、第111回(2017年実施)までは出題問題数が500問でした。第112回(2018年実施)より400問となり、3日間実施だった日程が2日間になっています。問題の分類は、一般問題、臨床実地問題、必修問題の3区分を踏襲しており、本章ではそれぞれの傾向と対策を講じていきます。§1一般問題§2臨床実地問題§3必修問題§4演習の工夫§1 一般問題一般問題は、「設問文」→「選択肢」という構造で成り立っています。「単純な知識の想起によって解答できる問題」が大半を占めているのが特徴です。医師国家試験の問題作成のプロセスの中には「主題を定める」という留意事項があります。つまり、提示された問題には出題背景やテーマが存在しているのが通常です。問題作成者は「受験生が●●について■■できる」という到達目標を設計しているので、過去問の演習では、その到達目標に沿うことができれば学習効率が高まります(#8 出題者の意図を汲む)。設問文以外には、選択肢に一般問題の特徴が現れます。したがって、選択肢がどのような制約で作成されているのかを事前に知っていれば、選択肢を吟味する際に役に立つのです(#9 選択肢のつくり方を意識する)。正解の選択肢は、唯一であるように作られています。ここが医療現場と最も矛盾する点であり、医師国家試験と実臨床とが乖離する要因を担っています(第3 章の#42 実臨床と資格試験との乖離を知る / #47 臨床には正解がない参照)。また、提示された選択肢は、それぞれが「最もらしいもの」であることが望ましいとされており、「ナンセンス肢」を含まないように配慮されています。例えば、生後18時間の新生児がチアノーゼを呈して頻呼吸に陥っているときに考えるべき疾患は何かと問うた場合に、選択肢に「乳児肥厚性幽門狭窄症」が含まれていた場合には「ナンセンス」となるのです。この選択肢を「肥厚性幽門狭窄症」として差し替えれば、肥厚性幽門狭窄症が乳児の疾患であることを知っていなければ除外できなくなるので選択肢の適正化を図れます。医師国家試験は、多肢選択式問題の形式をとっているので、選択肢の吟味は避けられない行程となります。地道な作業ではありますが、復習の際には選択肢をひとつひとつ大切に扱うことで、効率を高めることができます(#10 正しい内容を述べた選択肢から要点を抽出する / #11 誤った内容を述べた選択肢では誤りの箇所を正す)。このように、一般問題を演習する場合には、背景に存在している出題テーマを汲み取ろうとするプロセスと、選択肢をどのように扱っていくかという2点が重要になります。ここでまずは、臨床実地問題を解く上でも重要になる一般問題へのアプローチ方法について考えていきましょう。§2 臨床実地問題臨床実地問題は、図のような構造で成り立っています。すなわち、「本文」→「画像」→「設問文」→「選択肢」という順での配置です。このセクションでは以下のように、それぞれの要素ごとに取扱原則を設けています。画像を拡大するこれらに加え、第1章 七大原則の#2〜6を組み合わせると、第112回医師国家試験から問題数の割合が増えた臨床実地問題への対策が可能となるのです。臨床実地問題では、単に知識を問うような形式ではなく、(a)与えられた情報をどのように解釈・評価するのか、(b)知識を応用してどのように問題解決するのか、を問うような形式が好んで選ばれます。(a)は「アセスメント」と呼ばれる思考過程であり、第3章の§1で重点的にとり上げます。一方、(b)は問題解決能力を要するという点で(a)よりも高次的な形式となります。この形式では、医師の思考に沿った出題が可能になるという点で、より「臨床色の強い」問題が出来上がります。医師の思考については第3章の§2と§3で触れます。このように、第2章では資格試験でのテクニカルな切り口で、(そして第3章では実臨床の要素を踏まえた切り口で)医師国家試験を多角的に眺めることを意図しています。§3 必修問題必修問題は、医師として必ず知っておくべき基本が問われます。したがって、1問あたりの難易度は一般問題・臨床実地問題と比べると平易な問題が多く配置されるのが特徴となっています。合格基準は、80%以上の得点という絶対基準が適用されています。そのため「みんなが解ける問題を確実に得点する」という原則をいかに保てるかが、基準クリアの条件となります。大学入試の試験当日には「魔物が潜んでいる」と喩えられることがありますが、医師国家試験も同様に普段通りの自分を出せないような状況が起こりえます。このセクションでは、本番でのパフォーマンスを著しく低下させるような代表的なケースを取り上げて、リスクヘッジを行うことを目指します。例えば、本番では通常の演習とは異なり、正解を確認する術がないので見直しをした後で答えを変更したり、あるいは変更しようかどうか迷う状況が起こり得ます(#17 見直しで迷ったときは最初の答えを優先させる)。禁忌問題を気にしすぎて、「みんなが解ける問題」を間違ってしまうことも有り得ます(#18 禁忌問題は治療・緊急性・倫理的配慮で察知する)。他には、自信満々で答えた問題が、実は自大学での常識に過ぎず、Global Standard から掛け離れているがために失点することもあります(#19 local factor は排除する)。また、必修問題には高正解率の問題が大半を占めますが、中には正解率が5割に満たないような難問・奇問も紛れ込んでいるのが通常です。そのような問題に対面して生じたモヤモヤとした感情をいかに切り替えるかが大事なのです(#20 モヤモヤ問題をいち早く察知して適切に対応する)。医師国家試験を解くのは人間なので、エラーがどうしても付きまといます。統計上、エラーのパターンは比較的限られており、エラーが生じるメカニズムとその対応策を事前に知っていれば、本番のパフォーマンスを普段通りに近づけることができるはずです。巻末の付録に、遭遇頻度が高く、時に致命的になりやすいエラーを集めたコラムを配置しているので、必修問題に不安を覚える受験生は、そのエラー集も参考にすると良いでしょう。合格圏に達している受験生は、普段通りに解ければ何ら心配する必要がないのが必修問題です。しかし、試験本番に潜む魔物に対して、どのような事前準備が行えるかが合否の鍵を握っているといっても過言ではありません。§4 演習の工夫まず、医師国家試験の過去問演習における鉄則から§4はスタートします(#21 過去問は直近3カ年分を徹底的に研究・演習する)。どのような理由で直近3カ年を重視するかについて言及しています。次に、学習効率を高めるためには演習の量と質について考える必要があります。つまり、一問の演習あたりの精度と速度が効率を規定しているとも換言できます。量に重きを置き過ぎたせいで結果として押さえるべきポイントを反復する機会が少なくなってしまいがちな受験生は、演習のフォームを修正する必要があります(#22 30秒サマリーで反復の回数を増やす)。一方で、質に重きを置き過ぎたせいで結果として進捗が遅くなる傾向になる受験生は、演習速度を改善することが求められます(#23 速読では(1)診断、(2)根拠、(3)治療を確認する)。演習のフォームという点では、七大原則の#3、#4、#5を徹底することで、一問あたりから得られる学びを増幅させることができます。しかし、#3、#4、#5は演習の負荷を上げる効果があり、演習の質が高まる一方で、演習速度を低下させるという欠点があります。質にしろ、量にしろ、度が過ぎた場合には成績が伸び悩む現象が起こります。適宜、演習フォームを見直して、精度と速度のバランスをうまく調整することが重要です。このように、§4では普段のトレーニングをどのように最適化すればよいかについて考察します。第2章以降は、問題ごとにCheckpointを設けています。いずれも本書に登場する「基本ルール」で構成されています。その問題を解くときに有用と思われる記述をpickupしています。解いた後で「基本ルール」を意識してアプローチしたかどうかを確認する目的で適宜利用してください。より詳しい理解が必要であれば、該当するナンバー(#)を参照できるような配置にしているので、うまく活用していただけると幸いです。

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