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検索結果 合計:4227件 表示位置:361 - 380

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精神的苦痛の大きい白斑患者の特徴

 米国・Incyte CorporationのKristen Bibeau氏らが17ヵ国の白斑患者を対象に、白斑とQOL、メンタルヘルスとの関連性を調べる定性的研究を行った。その結果、世界的に白斑患者は、感情的幸福感(emotional well-being)、日常生活、心理社会的健康に大きな影響を受けていることが示された。その負荷は体表面積(BSA)5%超の病変を有する患者、肌の色が濃い患者、顔や手に病変がある患者で最も大きかった。また、本研究から、患者が振る舞いを変えたこと、明らかな不満を表出していたこと、うつ病と一致する症状を有していたことが示唆され、著者らは、これらが過小診断されている可能性があるとしている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年8月30日号掲載の報告。 2021年5月6日~6月21日の期間において、17ヵ国のオンラインパネルから白斑患者を募集した住民ベースの定性的研究「Vitiligo and Life Impact Among International Communities(VALIANT)試験」が実施された。 白斑の診断を受けた18歳以上の成人5,859例のうち、3,919例(66.9%)が調査を完了し、3,541例(60.4%)が解析に組み入れられた。対象患者は、Vitiligo Impact Patient scale(VIPs)を用いて、QOLやメンタルヘルスなどの感情的幸福感について質問を受けた。また、Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9)を用いてうつ症状が評価された。なお、本試験で用いられたVIPsスコアの範囲は0~60で、スコアが高いほど心理社会的負担が大きいことを示した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者3,541例の年齢中央値は38歳(範囲:18~95)、男性は1,933例(54.6%)、BSA 5%超の病変を有する患者は1,602例(45.2%)、FitzpatrickスキンタイプIV~VI(肌の色が濃い)は1,445例(40.8%)であった。・VIPsスコアの合計点(平均値±標準偏差[SD])は、全体では27.3±15.6点であり、インドの患者が40.2±14.1点と最も高スコアであった(すなわち最も負荷が大きかった)。・VIPsスコアに基づくQOL負荷は、BSA 5%超の病変を有する患者(平均32.6点[SD 14.2])、肌の色が濃い患者(31.2点[15.6])、病変が顔にある患者(30.0点[14.9])または手にある患者(29.2点[15.2])で大きかった。・白斑が日々の生活に大きな影響を及ぼしていると報告したのは、少なくとも全体の40%を占めた(衣服の選択に影響がある:55.2%[1,956/3,541例]など)。・白斑をメイクや衣服でよく隠すと報告した割合は59.4%であった。・精神科疾患の診断を受けていた割合は58.7%であった(不安症[28.8%]、うつ病[24.5%]など)。・PHQ-9に基づく中等度~重度のうつ症状は、55.0%に認められた。インドの患者(89.4%[271/303例])、BSA 5%超の病変を有する患者(72.0%[1,154/1,602例])、肌の色が濃い患者(68.3%[987/1,445例])、顔や手に病変がある患者(59.3%[1,607/2,712例])で高率に認められた。

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脂肪が効率よく燃焼される運動強度は個人差が大きい

 減量や疾患予防などの目的で脂肪を効率的に燃焼させる運動をしようとするなら、個別化されたアプローチに基づいて運動強度を設定する必要があるかもしれない。運動強度と脂肪燃焼との関係は個人差が大きいために、心拍数などから推計した“脂肪燃焼ゾーン”は、あまりあてにならない可能性があるという。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のHannah Kittrell氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrition, Metabolism and Cardiovascular Diseases」に7月14日掲載された。 脂肪組織以外への脂肪蓄積(異所性脂肪)は2型糖尿病の発症に関係している。代謝を正常に戻すためには異所性脂肪を減らす必要があり、それには運動が有効であって、特に脂肪の酸化速度が最大化する(maximal rate of lipid oxidation;MLO)強度での運動が最適と考えられる。Kittrell氏も、「減量を試みる人の多くがMLOに興味を持つようだ」と述べ、「大半の市販のエクササイズマシンには、年齢と性別、心拍数からMLOを推計してそれを“脂肪燃焼ゾーン”として表示するオプション設定がある」と解説する。ただし同氏によると、そのような“脂肪燃焼ゾーン”は精度検証が行われておらず、「多くの人が、その人のMLOとは異なる強度でエクササイズを行っている可能性がある」とのことだ。 Kittrell氏らの研究は、26人(女性11人)を対象として、運動強度を徐々に高めていきながら酸素摂取量と二酸化炭素排出量を測定するという運動負荷試験によって、正確なMLOを計測。その結果と、心拍数などから推計されるMLOとの比較を行った。解析の結果、両者はあまり一致しておらず、心拍数については平均23拍/分の乖離が認められた。 Kittrell氏は、「近年、MLOに該当する運動強度を『FATmax』と呼び、それを心拍数などから推計することがあるが、われわれの研究は、そのような推計に基づく心拍数は、MLOを引き出すための運動処方の目安としては不適切であることを示している。MLOは個人差が大きいため、正確な評価には個々に運動負荷試験を行い、脂肪の酸化速度を測定することが望ましい」と話している。 また、論文の上席著者であり同大学教授および米チャールズ・ブロンフマン個別化医療研究所所長であるGirish Nadkarni氏は、「本研究を契機に、今よりも多くの人々およびトレーナーが運動負荷試験を用いて、脂肪燃焼に最適な個別化された運動処方が行われるようになることを期待している。また、この研究は、データ駆動型アプローチ(データ収集とその分析に基づく意思決定)が、正確な運動処方に果たす役割を強調するものでもある」と述べている。 なお、研究グループでは現在、このような手法で個別化した運動処方が減量や異所性脂肪減少という点でより優れた効果を発揮し得るか、および、肥満や2型糖尿病、心臓病などに関連する検査指標に対して、従来の手法による運動介入よりも有意な改善をもたらすかを調べる研究を予定している。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ‐O(アウトカム)設定の要点と実際 その1【「実践的」臨床研究入門】第36回

今回はO(アウトカム)を設定する際の要点を解説します。これまでブラッシュアップしてきたわれわれのResearch Question(RQ)のOは下記のとおりです(連載第34回参照)。O:1)末期腎不全(透析導入)、2)糸球体濾過量(GFR)低下速度O(アウトカム)は測定可能で臨床的に意義があるかまず、ここで設定したOが測定可能で臨床的に意義があるものなのか、再考してみましょう。末期腎不全(透析導入)は明確なイベントであり、カルテ調査でその発症日も容易に確認できます。GFRは血清クレアチニン値(Cr)と年齢、および性別で算出される腎機能評価の指標で、日本人の集団でも確立された計算式が論文で公開されています1)。GFR低下速度は、複数回のCrの経時的評価が行われていれば計算できますので、客観的な測定が可能です。末期腎不全(透析導入)は患者さんにとって、生活が大きく変わるハードエンドポイントであり、臨床的にも大きな意義があるOと考えられます。一方、GFR低下速度はサロゲートエンドポイントです(連載第3回参照)。しかし、GFR低下速度の持続的な加速は、慢性腎臓病(CKD)患者さんの末期腎不全発症を含めたハードエンドポイントの予測因子であることが多くの臨床研究の結果から示されています。したがって、これも臨床的に重要なアウトカムと言えるでしょう。さて、われわれのRQの曝露要因(E)は、低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日の遵守という厳格な食事療法です。すでに設定した腎予後に関するOの臨床的重要性は前述したとおりですが、厳格な食事療法に伴う負担など、負の側面も気になりませんか。たとえば、厳格な低たんぱく食事療法によるQOL悪化の懸念は、診療ガイドラインなどでも指摘されていますが、明らかなエビデンスはこれまでに認められていないとされています。今回、われわれが実施を予定しているのは、カルテ調査をベースにした、いわゆる「後ろ向き」の観察研究です(連載第1回、第6回参照)。QOL尺度(連載第3回参照)の経時的な測定は、日常診療では一般的に行われていないと思いますし、われわれのカルテ調査データでも収集はできませんでした。このように、通常の臨床現場で測定されないOについては「後ろ向き」ではなく「前向き」研究でなければ検討できない、ということです。ちなみに、前回紹介したDOPPS(Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study)は、血液透析患者さんを対象とした「前向き」観察研究です。DOPPSでは多大なコストをかけて、経時的な健康関連QOL尺度(連載第3回参照)の測定と収集も行っています。また、前回説明したとおり、研究の効率や実施可能性の観点から、できればP(対象)はOを起こしやすい集団である方が望ましいです。つまり、発生頻度が多いOを設定した方が研究の効率が良いということです。そこで、今回の「後ろ向き」観察研究の解析で使用するデータをざっと確認してみたとしましょう。保存期CKD患者さん600例余り、最長5年間の観察期間のカルテ調査データを収集・調べてみたところ、全体の約30%の症例でプライマリのOである末期腎不全(透析導入)の発生が確認できました。実施可能性の高い解析データが収集できたものとホッとした次第です。1)Matsuo S, et al. Am J Kidney Dis. 2009;53;6:982-992.

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英語で「付き添い人」は?【1分★医療英語】第99回

第99回 英語で「付き添い人」は?I require a chaperon for the physical examination. Could you please accompany me to the examination room?(身体検査の際に付き添い人が必要です。診察室に同席してもらえませんか?)Sure!(もちろんです!)《例文1》医師We will obtain consent for the surgery, and will have a chaperon present. Is that okay?(手術の同意を取るので付き添い人に同席してもらいます。よろしいですか?)患者OK.(わかりました)《解説》今回は英単語の紹介です。“chaperon”(シャペロン)は、英語で「付き添い人」という意味を持つ単語です。医療現場において、患者と医師の間で行われる診察や手続きの際に第三者として同席する役割を指します。これによって医療行為の透明性を保ち、誤解や不適切な行為を防ぐ目的があります。とくに“chaperon”を必要とする場面としては、医師が異性の患者の身体診察をする場合や、手術や延命処置などの重要な意思決定の際に自分や相手を守るための証人として第三者の目を必要とする場合があります。日本の医療現場でも、身体診察の際に看護師などに同席をお願いすることがありますよね。多くの病院では“chaperon”という特定の職業があるわけではなく、単に「付き添い人」という意味合いなので、私もよく看護師やほかの医療スタッフに“Could you stay here as a chaperon?”(chaperonとして同席してくれませんか?)と依頼しています。講師紹介

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アルツハイマー病の進行を予測するグリア活性化PETイメージング

 グリア活性化は、アルツハイマー病の病因であるといわれている。しかし、長期的な認知機能低下との関係は明らかになっていない。国立長寿医療研究センターの安野 史彦氏らは、アルツハイマー病患者の経年的な認知機能低下に対するグリア活性化PETイメージングとアミロイド/タウ病理の予後効果を比較するため、本研究を行った。その結果、グリア活性化PETイメージングは、脳脊髄液(CSF)によるアミロイド/タウ測定よりもアルツハイマー病の臨床的な進行の強力な予測因子であることを報告した。Brain, Behavior, and Immunity誌2023年11月号の報告。 対象は、軽度認知障害またはアルツハイマー病と診断された17例。全体的な認知機能の経時的な変化を評価した。ステップワイズ回帰分析を用いて、全体的な認知機能と記憶に対するCSFによるアミロイド/タウ測定とグリア活性化PETイメージング(11C-DPA-713-BPND)によるベースライン時の予測効果を評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体的な認知および記憶スコアの経時的変化の最終的な重回帰モデルでは、予測因子として11C-DPA-713-BPNDが含まれた。・CSF Aβ 42/40比およびp-タウ濃度は、最終モデルより除外された。・ステップワイズ回帰分析では、ベイズ因子に基づくモデル比較により、全体的な認知機能および記憶の低下の予測因子として、11C-DPA-713-BPNDが含まれることが示唆された。 著者らは、グリア活性化は、タウ誘発性の神経毒性や認知機能低下の主な原因であるため、アルツハイマー病の治療戦略として不適応なミクログリア反応を阻害できる可能性があるとしている。

366.

1型糖尿病リスクの高い小児、コロナ感染で発症しやすいか/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の時期に、小児で糖尿病の増加が観察されている。ドイツ・ドレスデン工科大学のMarija Lugar氏らは、「GPPAD試験」において、1型糖尿病の遺伝的リスクが高い小児では、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)抗体が検出されなかった場合と比較して、検出された集団は膵島自己抗体の発生率が高く、とくに生後18ヵ月未満でリスクが増大していることを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年9月8日号に掲載された。生後4~7ヵ月の幼児を追跡した欧州のコホート研究 GPPADは、欧州の5ヵ国(ドイツ、ポーランド、スウェーデン、ベルギー、英国)の施設が参加した進行中の縦断的コホート研究である(米国・Leona M. and Harry B. Helmsley Charitable Trustなどの助成を受けた)。 この研究では、2018年2月~2021年3月に、1型糖尿病発症の遺伝的リスクが10%以上の生後4~7ヵ月児1,050人(女児517人)を登録したPrimary Oral Insulin Trial(POINT)のデータを用いた。 SARS-CoV-2の感染は、2018年4月~2022年6月に、被験児が2歳になるまでに2~6ヵ月の間隔で行われた追跡調査の受診時にSARS-CoV-2抗体の発現を特定することで確認した。 主要アウトカムは、2つの連続した検体または単一の検体における2つ以上の膵島自己抗体の発現と、1型糖尿病の発症であった。 生後6ヵ月からの抗体測定について、血液検体を保管するバイオバンクの同意が得られた885人(女児441人)を解析の対象とした。膵島自己抗体陽性者の33.3%が1型糖尿病発症 年齢中央値18ヵ月(範囲:6~25)の時点で、170人にSARS-CoV-2抗体の発現を認めた。膵島自己抗体は60人(6.8%)で発現し、このうち6人はSARS-CoV-2抗体陽性と同時に、6人はSARS-CoV-2抗体陽性後の診察時に、膵島自己抗体陽性であった。これら60人の小児は最終受診時まで膵島自己抗体が陽性で、このうち20人(33.3%)が1型糖尿病を発症した。 SARS-CoV-2抗体陽性時の膵島自己抗体発現の、性・年齢・国で補正したハザード比(HR)は3.5(95%信頼区間[CI]:1.6~7.7、p=0.002)であった。また、膵島自己抗体発現の累積リスクは、SARS-CoV-2抗体陰性の場合は2.9%(95%CI:1.8~4.8)であったのに対し、陽性の場合の6ヵ月以内の累積リスクは7.3%(4.2~12.7)だった(p=0.01)。 膵島自己抗体の発生率は、SARS-CoV-2抗体陰性の場合は100人年当たり3.5(95%CI:2.2~5.1)であったのに対し、陽性の場合は同7.8(5.3~19.0)と有意に高かった(p=0.02)。 さらに、SARS-CoV-2抗体陽性の幼児における膵島自己抗体が陽性となるリスクは、生後18~24ヵ月と比較して、生後18ヵ月未満で有意に高かった(HR:5.30、95%CI:1.50~18.30、p=0.009)。 著者は、「膵島自己抗体の発現が、COVID-19の世界的流行の初期における1型糖尿病発症率の急激な上昇の原因とは考えにくいが、将来の1型糖尿病の発症率に関連すると考えられる」とし、「生後12ヵ月ごろに膵島自己抗体の発現がピークに達したが、これは糖尿病原性障害の原因への初期曝露が相対的に多いか、またはこの年齢での膵島自己免疫に対する脆弱性の増加のいずれかを反映すると推測され、本研究はこれらの仮説の評価に道を開くものである」と指摘している。

367.

うつ病の既往歴がある人はネガティブ情報にとらわれがち

 寛解しても再発することが多い大うつ病性障害(以下、うつ病)の既往歴を持つ人では、うつ病の既往歴のない人に比べて、ネガティブな情報を処理する時間が長い一方で、ポジティブな情報を処理する時間が短い傾向があり、それがうつ病の再発リスクにつながっている可能性のあることが示唆された。米メリーランド大学ボルチモアカウンティ校心理学分野のLira Yoon氏らによるこの研究結果は、「Journal of Psychopathology and Clinical Science」に8月21日掲載された。 Yoon氏は、「われわれは、うつ病患者がネガティブな情報をどう処理するかだけでなく、ポジティブな情報をどう処理するかも検討すべきではないかということに気が付いた。ネガティブな感情や気分の落ち込みの持続との関わりにおいては、もしかするとポジティブな情報の方が重要なのかもしれない」と述べている。 今回の研究でYoon氏らは、44件の研究を対象にメタアナリシスを実施し、うつ病の既往歴のある人がネガティブ情報とポジティブ情報の処理にどれだけの時間を費やすのかを、健常者との比較で検討した。これらの研究では、例えば、幸福や悲嘆、または無感情の表情を浮かべた人の顔や、ポジティブ、ネガティブ、または中立的な単語を刺激として参加者に提示し、それに対する応答時間が調査されていた。解析対象者の総計は、うつ病の既往歴のある2,081人と、既往歴のない健常者2,285人であった。 その結果、健常者はうつ病の既往歴がある人よりも、提示された刺激に対して、その内容がポジティブかネガティブか、あるいは中立的かに関わらず、より迅速に反応する傾向のあることが明らかになった。これに対して、うつ病の既往歴がある人は健常者に比べて、ポジティブな刺激よりもネガティブな刺激の処理に費やす時間の方が長いことが確認された。さらに、両群間で、ネガティブな刺激と中立的な刺激、およびポジティブな刺激と中立的な刺激の処理に費やされる時間に有意な差は認められなかった。 Yoon氏は、「ストレスになることが生じ、それに動揺するのは人間の自然な反応だ。しかし、何か作業をしている間はその問題を脇に置いてその作業に集中できる人がいる一方で、その問題が気に掛かって作業に集中できなくなる人もいる。われわれの研究が示しているのは、うつ病の既往歴がある人は、たとえうつ病が寛解していても、現在取り組んでいることとは無関係なネガティブ情報から距離を置くことが、無関係なポジティブ情報から距離を置くよりも困難だということだ」と述べる。そして、「うつ病の既往がある人では、そのようなネガティブ思考に支配されて、今やるべきことができなくなっている可能性がある。その状態がさらにネガティブな感情を増幅させ、再びストレスのかかるような出来事が生じると、うつ病を再発させてしまうのかもしれない」との見方を示す。 うつ病とは、2週間以上続く抑うつと日常生活における興味や喜びの喪失と定義される。米国国立精神衛生研究所によると、2021年には、米国人口の約8%に当たる約2100万人の成人が、この定義を満たすうつ病を1回以上発症したという。 では、うつ病の再発はどうすれば防げるのだろうか。うつ病の最も効果的な治療法は、認知行動療法(CBT)に代表される心理療法と薬物療法である。米ノースウェル・ヘルスの精神科医であるGeorge Alvarado氏によると、主なCBTの一つは、認知再構成法だという。これは、否定的な思考パターンや信念を特定し、それをより健全で現実的なものに変容させることを目指すものだ。同氏はさらに、抑うつの改善には、仕事、人間関係、ライフスタイルを変えることも有益だと話し、質の良い睡眠、運動、健康的な食事の重要性を強調している。 Yoon氏は、「CBTのような既存の治療法に加えて、うつ病の既往歴のある人が、無関係な情報から距離を置くのを助けるトレーニングプログラムを開発することも可能かもしれない」と話す。同氏は、「人によって反応する治療アプローチは異なるため、ツールの選択肢が増えるのは良いことだ」と述べる。そして、「まだ道半ばだが、CBTやマインドフルネスのような既存のツールは、無関係な情報、特にネガティブな情報を自分の中で切り離すのに役立つ可能性がある」との考えを示している。

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酒を飲むと相手が魅力的に見える「ビール・ゴーグル効果」認められず

 酒の席で会った誰かと一夜限りの関係を持ってしまったことを、酒を飲むと相手が実際よりも魅力的に見える「ビール・ゴーグル効果」のせいにする人は多い。しかし実際には、アルコールにそのような効果はないようだ。飲酒によりもたらされるのは、すでに魅力を感じていた人にアプローチする勇気、いわゆる「liquid courage(酒の力を借りて出る勇気)」であることが、米スタンフォード予防研究センターのMolly Bowdring氏と米ピッツバーグ大学心理学分野のMichael Sayette氏の研究で示された。この研究結果は、「Journal of Studies on Alcohol and Drugs」に8月29日掲載された。 一般的には、酒を飲むと周囲の人がより魅力的に見えると考えられている。しかし、そのような現象を体系的に検討した研究は実施されていない。Sayette氏は、「広く知られているアルコールの『ビール・ゴーグル効果』に関する文献はあるが、その内容はそれほど一貫していない」と説明する。 先行研究の多くで実施されたのは、研究参加者に、飲酒した状態と飲酒していない状態で誰かの写真を見せ、その人の魅力度を評価してもらうという実験だった。一方、今回Bowdring氏らが実施した研究では、この手法に、魅力を感じた相手に実際に会える可能性を示すという、より現実的な要素を付け加えた。具体的には、男性とその同性の友人18組(計36人、21〜27歳)に2回にわたり、アルコール飲料(1回目の実験)と非アルコール飲料(2回目の実験)を摂取してもらいながら、写真や動画の中の人物の魅力度を評価してもらった。友人関係にある2人組に参加してもらったのは、飲酒を交えた社交的な状況を模倣するのが目的だった。参加者は、その後の実験で魅力度の評価対象となった人と交流する機会が持てる可能性があるとの説明を受けた。また、魅力度を評価してもらった後には、最も会ってみたい人を4人選んでもらった。 その結果、参加者の魅力度の評価に対する飲酒の影響は確認されず、つまり「ビール・ゴーグル効果」を裏付けるエビデンスは認められないことが示された。しかし、参加者は、飲酒していないときに比べて、飲酒しているときには、その後の実験で会えるかもしれない4人を、魅力度を高く評価した上位4人から選ぶ傾向が強く、そのオッズは飲酒していない場合の1.71倍だった。 このことから、アルコールは他者に対する感じ方を変化させるのではなく、他者との交流への自信を高めるのではないかと研究グループは結論付けている。Bowdring氏は、「飲酒をする人は、飲酒によって社会的なモチベーションや意図が、短期的には好ましい方向に向かうが、長期的には有害な方向に変化する可能性があることを認識しておくと有益かもしれない」との見解を示している。

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適切な運動でがん患者の死亡リスク25%減、がん種別にみると?/JCO

 がんと運動の関係について、さまざまな研究がなされているが、大規模な集団において、がん種横断的に長期間観察した研究結果は報告されていない。そこで、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのJessica A. Lavery氏らの研究グループは、がん種横断的に1万1,480例のがん患者を対象として、がんと診断された後の運動習慣と死亡リスクの関係を調べた。その結果、適切な運動を行っていた患者は非運動患者と比べて、全生存期間中央値が5年延長し、全死亡リスクが25%低下した。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年8月31日号に掲載された。 前立腺がん、肺がん、大腸がん、卵巣がんのスクリーニング研究(Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian [PLCO] Cancer Screening Trial)に参加したがん患者1万1,480例(11がん種)を対象とした。対象患者のがんと診断された後の運動の頻度と死亡の関係を検討した。運動について、米国のガイドラインの基準(中強度以上の運動を週4日以上×平均30分以上および/または高強度の運動を週2回以上×平均20分以上)を満たす患者(適切な運動群)と基準未満の患者(非運動群)の2群に分類し、比較した。主要評価項目は全死亡、副次評価項目はがん死亡、非がん死亡であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値16年時点において、死亡が認められたのは4,665例であった。内訳は、がん死亡が1,940例、非がん死亡が2,725例であった。・全生存期間中央値は、適切な運動群が19年であったのに対し、非運動群は14年であった。・多変量解析の結果、適切な運動群は非運動群と比べて、全死亡リスクが有意に25%低下した(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.70~0.80)。・また、適切な運動群は非運動群と比べて、がん死亡リスク(HR:0.79、95%CI:0.72~0.88)と非がん死亡リスク(HR:0.72、95%CI:0.66~0.78)が有意に低下した。・がん種別のサブグループ解析において、全死亡リスクの有意な低下が認められたがん種は、以下のとおりであった。 -子宮体がん(HR:0.41、95%CI:0.24~0.72) -腎がん(同:0.50、0.31~0.81) -頭頸部がん(同:0.62、0.40~0.96) -血液がん(同:0.72、0.59~0.89) -乳がん(同:0.76、0.63~0.91) -前立腺がん(同:0.78、0.70~0.86)・一方、適切な運動群でがん死亡リスクの有意な低下が認められたがん種は、腎がん(HR:0.34、95%CI:0.15~0.75)、頭頸部がん(HR:0.49、95%CI:0.25~0.96)のみであった。

370.

心房細動患者のうつ・不安の改善、アブレーションvs.薬物療法/JAMA

 症候性心房細動(AF)を有する患者において、不安や抑うつなど精神症状の改善はカテーテルアブレーション施行患者では観察されたが、薬物療法のみの患者では認められなかったことを、オーストラリア・Royal Melbourne HospitalのAhmed M. AI-Kaisey氏らが、医師主導の無作為化評価者盲検比較試験「Randomized Evaluation of the Impact of Catheter Ablation on Psychological Distress in Atrial Fibrillation:REMEDIAL試験」の結果、報告した。AFカテーテルアブレーションがメンタルヘルスに及ぼす影響についてはよくわかっていなかった。JAMA誌2023年9月12日号掲載の報告。AF患者100例を、カテーテルアブレーション群と薬物療法のみ群に無作為化 研究グループは、2018年6月~2021年3月にオーストラリアのAFセンター2施設において、発作性または持続性AFを有し少なくとも2種類の抗不整脈薬治療の対象となる18~80歳の患者を登録。アブレーション群または薬物療法群に1対1の割合で無作為に割り付け、AFカテーテルアブレーションが薬物療法のみと比較して、精神的苦痛を改善するかどうかを、評価尺度を用いて調べた。 薬物療法群では洞調律を維持するため最適な抗不整脈薬治療が行われ、アブレーション群では無作為化後1ヵ月以内にカテーテルアブレーションが行われた。 主要アウトカムは、12ヵ月時の病院不安抑うつ尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS)スコア、副次アウトカムは重度の精神的苦痛(HADS合計スコア>15)を有する患者の割合、HADS不安スコア、HADSうつ病スコア、うつ病自己評価尺度(Beck Depression Inventory-II:BDI-II)スコアであった。不整脈再発およびAF負荷のデータも解析した。 計100例(平均[±SD]年齢59±12歳、女性31例[32%]、発作性AF54%)が登録され、アブレーション群(52例)および薬物療法群(48例)に割り付けられた。このうち、4例(それぞれ3例および1例)が追跡不能または脱落となり、96例が試験を完遂した。アブレーション群の全例(49例)で肺静脈隔離に成功した。アブレーション群で、12ヵ月時の病院不安抑うつ尺度の合計スコアが有意に低下 12ヵ月時(主要アウトカム)のHADS合計スコア(平均±SD)は、アブレーション群7.6±5.3、薬物療法群11.8±8.6、群間差は-4.17(95%信頼区間[CI]:-7.04~-1.31、p=0.005)であり、アブレーション群が薬物療法群より有意に低かった。なお6ヵ月時もそれぞれ8.2±5.4、11.9±7.2で、有意差が認められた(p=0.006)。 アブレーション群と薬物療法群において、重度の精神的苦痛を有する患者の割合はそれぞれ6ヵ月時14.2%、34%(p=0.02)、12ヵ月時10.2%、31.9%(p=0.01)であり、HADS不安スコアは6ヵ月時4.7±3.2、6.4±3.9(p=0.02)、12ヵ月時4.5±3.3、6.6±4.8(p=0.02)であった。HADS抑うつスコアは3ヵ月時3.7±2.6、5.2±4.0(p=0.047)、6ヵ月時3.4±2.7、5.5±3.9(p=0.004)、12ヵ月時3.1±2.6、5.2±3.9(p=0.004)。また、BDI-IIスコアは6ヵ月時7.2±6.1、11.5±9.0(p=0.01)、12ヵ月時6.6±7.2、10.9±8.2(p=0.01)であった。 AF負荷の中央値も、アブレーション群0%(四分位範囲[IQR]:0~3.22)、薬物療法群15.5%(1.0~45.9)であり、アブレーション群が有意に低かった(p<0.001)。

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スマホゲームで慢性期統合失調症患者の認知機能が改善

 中国・安徽医科大学のShengya Shi氏らは、慢性期統合失調症患者の認知機能改善に対するビデオゲームの有効性を調査し、認知機能に対するビデオゲームのバイオマーカーを評価するため、予備的研究を行った。その結果、ビデオゲーム介入は、慢性期統合失調症患者の認知機能を改善することが示唆され、血清BDNFレベルがこの効果を予測するバイオマーカーである可能性を報告した。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2023年8月18日号の報告。 ゲーム群には、1人用のスマートフォンビデオゲームを1時間/日、週5回プレーを6週間行った。対照群は、1時間/日、週5回のテレビ視聴を6週間行った。認知機能の評価には、神経心理検査アーバンズ(RBANS)およびストループ色彩単語検査(SCWT)を用いた。臨床症状の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、機能の全体的評価尺度(GAF)、一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSE)、モバイルゲーム依存アンケート(PMGQ)、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・ゲーム群では、試験期間中にRBANS合計スコアの改善が認められた。・すべてのSCWTスコアにおいて、両群間の差は認められなかった。・ゲーム群では、PANSSの陰性症状およびGAFの全体的機能のより大きな改善が認められた。・PMGQスコアは、両群ともにすべての時点において、カットオフスコアよりも低値であった。・PHQ-9およびGSEスコアは、両群間で差は認められなかった。・6週間のビデオゲーム介入後、ゲーム群では、血清BDNFレベルが有意に高かった。・すべての参加者において、血清BDNF レベルとRBANS合計スコアとの正の相関が認められた。

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monarchEの適格基準でも検討、POTENT試験の探索的解析結果

 第III相POTENT試験では、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性乳がんにおける術後ホルモン療法へのS-1の上乗せ効果が示された。今回、同試験のリスク分類別の探索的解析結果を京都大学の高田 正泰氏らがBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年9月7日号に報告した。 POTENT試験の対象は、StageI~IIIBのER陽性HER2陰性乳がん患者。S-1併用群(S-1[1日2回経口、3週ごと]+標準的ホルモン療法)と標準的ホルモン療法群に無作為に割り付けられた。 再発リスク(複合リスク)は、年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、グレード、ER発現、Ki-67発現レベルを組み込んだCoxモデルで決定した。複合リスクスコアにより低リスク群(下位四分位数以下、677例)、中リスク群(四分位範囲、767例)、高リスク群(上位四分位数超、453例)に分け、各群におけるS-1の上乗せ効果を評価した。また、monarchE試験の適格基準を満たした患者におけるS-1の上乗せ効果も推定された。 主な結果は以下のとおり。・内分泌療法にS-1を追加することで、無浸潤疾患生存(iDFS)イベントは、中リスク群では49%(ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.33~0.78)、高リスク群では29%(HR:0.71、95%CI:0.49~1.02)減少した。・低リスク群では、S-1の上乗せ効果は確認できなかった。・monarchEコホート1基準のうちリンパ節転移1~3個の患者(290例)において、S-1上乗せはiDFSの改善を示した(HR:0.47、95%CI:0.29~0.74)。 著者らはS-1の上乗せ効果はとくに中リスク群で顕著だったとし、最適な使用法を探るため、さらなる研究が必要とまとめている。

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機械学習モデルで心筋梗塞の診断能が向上

 心筋トロポニン値と臨床的特徴を組み込んだ機械学習モデルによって、心筋梗塞の診断能が改善されたという研究結果が、「Nature Medicine」に5月11日掲載された論文で明らかにされた。 心筋梗塞の診断の目安として心筋トロポニンの閾値を設定するようにガイドラインで推奨しているが、心筋トロポニン値は、年齢、性別、併存疾患、発症時からの経過時間などの影響を受けやすい。そこで、英エジンバラ大学のDimitrios Doudesis氏らは、心筋梗塞の診断能の改善を目的として、初診時または定期的な検査時の心筋トロポニンI値と臨床的特徴を統合し、心筋梗塞発症の確率を予測するCoDE-ACSスコア(Collaboration for the Diagnosis and Evaluation of Acute Coronary Syndrome score、0~100点)を算出する機械学習モデルとしてCoDE-ACSモデルを開発した。 CoDE-ACSモデルの訓練は、心筋梗塞の疑いで英スコットランドの2~3次病院を受診したコホート1万38例(年齢中央値70歳、女性48%)のデータを用いて実施した。このモデルの外部検証は、別のコホート研究の参加者で心筋梗塞の疑いがあるコホート1万286例(年齢中央値60歳、女性35%)のデータを用いて実施した。CoDE-ACSモデルによる心筋梗塞の診断能を、心筋トロポニンI閾値による診断能と比較した。 外部検証の結果、CoDE-ACSモデルによる心筋梗塞の診断能は高く、初診時の曲線下面積は0.953〔95%信頼区間(CI)0.947~0.958〕、定期検査時の曲線下面積は0.966(同0.961~0.970)であり、年齢、性別、虚血性心疾患の有無などのサブグループ間で診断能に大きな差はなく、どのサブグループでも良好な診断能を示した。 初診時において、心筋梗塞発症の確率が低いと判定された患者の割合は、CoDE-ACSモデル(CoDE-ACSスコア3点未満)の方が心筋トロポニンI閾値(5ng/L未満)と比べて高く(61%対27%)、陰性的中率はいずれも99.6%と高かった。同様に、初診時において心筋梗塞発症の確率が高いと判定された患者の割合は、CoDE-ACSモデル(同スコア61点以上)の方が心筋トロポニンI閾値(女性16ng/L、男性34ng/L)と比べて低く(10%対16%)、陽性的中率はCoDE-ACSモデルの方が高かった(75.5%対49.4%)。 CoDE-ACSモデルで初診時に心筋梗塞発症の確率が低い(CoDE-ACSスコア3点未満)と判定された患者における心臓死の発生率は、中程度(同スコア3~60点)または高い(同スコア61点以上)と判定された患者と比べて有意に低かった〔30日後(0.1%対0.5%対1.8%)および1年後(0.3%対2.8%対4.2%)のいずれもP<0.001〕。 著者らは、「CoDE-ACSモデルが医療現場で採用されれば、救急科での滞在時間の短縮、不必要な入院の防止、および心筋梗塞の早期治療の改善につながり、患者と医療提供者の双方にとって有益であると考えられる」と述べている。 なお、数名の著者が、あるバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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1歳時の長いスクリーンタイムは発達の遅れをもたらす?

 1歳時のテレビやスマートフォンを見る時間(スクリーンタイム)は、特定の領域の発達の遅れと関連することが、日本の研究で明らかにされた。1歳時の1日当たりのスクリーンタイムが4時間以上だった子どもでは、2歳時と4歳時に、コミュニケーション領域と問題解決領域に発達の遅れが見られる可能性の高いことが確認されたという。東北大学大学院医学系研究科の高橋一平氏らによるこの研究結果は、「JAMA Pediatrics」に8月21日掲載された。 この研究では、東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査に参加している母子7,097組(子どもの51.8%は男児)を対象に、子どもが1歳時のスクリーンタイムと2歳時および4歳時の5つの発達領域における遅れとの関連が検討された。親への調査から子どもが1歳時のスクリーンタイムに関する情報を入手し、1時間未満、1時間以上2時間未満、2時間以上4時間未満、4時間以上の4つに分類した。また、子どもが2歳時と4歳時に、日本語版ASQ-3(Ages and Stages Questionnaires, Third Edition)を用いて発達の遅れについて評価した。ASQ-3は、コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人的・社会的スキルの5領域について、それぞれ0〜60点で評価するもので、総スコアが平均から−2標準偏差以下だった場合を「発達に遅れがある」とみなした。 1歳時の1日当たりのスクリーンタイムは、1時間未満が48.5%(3,440人)、1時間以上2時間未満が29.5%(2,095人)、2時間以上4時間未満が17.9%(1,272人)、4時間以上が4.1%(290人)だった。スクリーンタイムが長い子どもの母親には、年齢が若い、初産である、学歴が低い、所得や世帯の教育水準が低い、産後うつ病を有する率が高いという特徴があった。解析の結果、1歳時の4時間以上のスクリーンタイムは、2歳時および4歳時のコミュニケーション領域(2歳時:オッズ比4.78、95%信頼区間3.24〜7.06、4歳時:同2.68、1.68〜4.27)と問題解決領域(2歳時:同2.67、1.72〜4.14、4歳時:同1.91、1.17〜3.14)における発達の遅れと有意に関連することが示された。 この研究報告を受けて、米イェール大学児童研究センターの発達心理学者であるDavid Lewkowicz氏は、「スクリーンを見ること自体が悪いのではなく、スクリーンが何の代わりに使われているかが問題なのかもしれない。赤ちゃんは、対面での対話の中で、親の表情、言葉、声のトーン、身体的フィードバックを通して言語と意味に関する情報を得ている。これらは、スクリーンを見ているときには得られないものだ」と同氏はNew York Times紙に語っている。 その上でLewkowicz氏は、「赤ちゃんにはできるだけたくさん対面で話しかけるべきだ。私は、赤ちゃんにどれくらいのスクリーンタイムを許していいのかと尋ねられたときには、いつもそう答えている」と話す。さらに同氏は、「子どもにスクリーンタイムを許すべきではないと親に助言するのは現実的ではない。そう助言しても、それに従う親などいないだろう。それでも、スクリーンタイムは適量にとどめ、より多くの時間を現実世界での社会的交流に費やすべきことは確かだ」と主張している。 研究グループは、本研究では、娯楽目的と教育目的でのスクリーンタイムの比較を行っていないことに言及し、今後の研究ではその点を追求すべきだとの考えを示している。

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バイスタンダーによるAEDの使用で心肺停止後の生存率が向上

 心肺が突然停止した人に対して、バイスタンダー(その場に居合わせた人)が心肺蘇生(CPR)の実施に加えて自動体外式除細動器(AED)を使用すると、たとえ救急車が現場に到着するまでに2分しかかからなかった場合でも、その人の30日生存率が向上することが、新たな研究で示された。Nordsjaelland病院(デンマーク)のMathias Hindborg氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会(ESC Congress 2023、8月25〜28日、オランダ・アムステルダム)で発表された。 心肺停止の主な原因の一つに心室細動がある。これは、心臓から全身に血液を送り出す心室が不規則にけいれんすることで心臓のポンプ機能が異常を来し、脳も含めた全身への血液供給が停止してしまう状態を指す。心室細動が生じた人は意識を消失し、血流を速やかに回復させなければ10〜20分で死に至る。 Hindborg氏は、「心肺停止に陥った人に対してバイスタンダーができる最善のことは、CPRの実施とAEDの使用だ。AEDの最適な設置場所については過去の研究で検討されているが、救急車が現場に到着するまでにかかる時間がAEDの設置場所に及ぼす影響についての情報は欠如しているといっても過言ではない。われわれは、今回の研究でその点を検討した」と説明している。 この研究では、デンマーク心肺停止レジストリから抽出した、2016年から2020年の間に院外心肺停止を起こし、バイスタンダーからCPRを受け、25分以内に救急車が到着した成人7,471人のデータを用いて、救急車が現場に到着する前に、バイスタンダーからAEDによる除細動(AEDの電気ショックで心臓を正常な状態に戻すこと)を受けた人と受けていない人の生存率を比較した。比較は、救急車が到着するまでの時間を8つのカテゴリーに分類し、年齢や性別、心肺停止を起こした場所、心筋梗塞や脳卒中などの既往歴などの関連因子で調整した上で行った。対象者の14.7%(1,098/7,471人)は、救急車が到着する前にAEDによる除細動を受けていたが、残りの85.3%(6,373/7,471人)はAEDによる処置を受けていなかった。 解析の結果、心肺停止から30日後の生存率は、救急車が到着する前にAEDによる除細動を受けた人で44.5%(489/1,098人)であったのに対し、除細動を受けなかった人では18.8%(1,200/6,373人)にとどまっていたことが明らかになった。救急車の到着時間別に見ると、AEDによる除細動を受けた人の30日後の生存率は、到着時間が2〜4分で37%、4〜6分で55%、それぞれ除細動を受けなかった人よりも高かった。同様に、救急車の到着時間が6〜8分、8〜10分、10〜12分、12〜15分、15〜25分のいずれの時間カテゴリーでも、除細動を受けた人の生存率は受けなかった人の約2倍であった(相対リスクは同順で2.23、1.99、1.89、1.86、1.98)。ただし、救急車の到着時間が0〜2分の場合でのみ、両群間に有意差は認められなかった。 こうした結果を踏まえてHindborg氏は、「バイスタンダーによる除細動の実施が生存率に最も良い影響を与えたのは、救急車の現場への到着時間が6~8分の場合であった。この結果は、資源に限りがある場合には、救急車の現場への到着時間が6分以上かかる可能性のある地域に優先的にAEDを設置すべきことを示すものだ」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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英語で「治療に当たる」は?【1分★医療英語】第98回

第98回 英語で「治療に当たる」は?This acute respiratory failure is likely due to heart failure exacerbation. Should we call cardiology?(この急性呼吸不全は心不全増悪による可能性が高いと思います。循環器内科にコンサルトすべきでしょうか?)Cardiology has already been on board.(循環器内科もすでに[この患者の]治療に当たっていますよ)《例文1》Both GI and general surgery are on board.(消化器内科と一般外科が共に[この患者の]治療に当たっています)《例文2》Is palliative care team on board?(緩和ケアチームは治療に当たって[コンサルト済み]ですか?)《解説》ここで出てくる“on board”の“board”は、もともとは「board=船などの床板」に由来しています。乗船時や飛行機の搭乗の際に、“Welcome on board.”という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。すなわち、“on board”は「(船や飛行機などの)乗り物に乗り込む」という意味合いで、“Welcome on board.”と言えば、「ご搭乗ありがとうございます」という意味になります。そこから転じて、「研修医のローテーターや医学生が、病院やチームに新しく加入してきた」というようなシーンで、“Welcome on board.”(新しいチームにようこそ)という意味で使うことができるフレーズです。この“on board”は一般的な表現ですが、今回の例のように、医療者同士でのコミュニケーションでもよく使われます。“XX is on board.”という言い回しで、「XX科がフォローしています」「コンサルト済みです」といった意味になるのです。イメージとしては、「患者さんという船」に、「主治医チーム」のほかに「コンサルタントとして他科(たとえば循環器内科)」も乗船してきた、という感じです。そんなイメージを持って“Cardiology is on board.”と聞くと、「循環器内科も患者の診療に参加している」という意味合いがつかめるのではないでしょうか。もちろん、もっと直接的に“We consulted cardiology.”、“Cardiology is following this case.”などと言うこともできますが、英語はイディオム(習慣的な言い回し)が好まれる言語なので、このような表現も医療現場ではよく使われています。講師紹介

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脳トレゲームで認知症を防げるか?【外来で役立つ!認知症Topics】第9回

デジタル化で急成長を遂げた「脳トレ」市場「脳トレ」は、今では日本におけるいわば現代用語として定着した観がある。大型書店に行けば、幅が数メートルになるような「脳トレ」コーナーの展示棚もある。そうした本をめくってみると、四字熟語、算数、間違い探し、点つなぎなどが主流である。これらは、どうも懐かしさや、勉強したという満足感をその読者に与えるようだ。実際、学習塾系や受験参考書を扱う出版社から発行されたものが少なくない。蛇足ながら、山川出版の日本史の教科書、研究社の『新々英文解釈研究』なども同じような意味からか、高齢者がよく購入すると聞く。いずれにしても、こうした脳トレ関連現象は日本独自なものかとも思われる。ところで認知症予防や軽度認知障害(MCI)・認知症の治療としての脳トレはさておき、記憶の鍛錬法には歴史がある。たとえば、記憶術として指や場所を用いるもの、記憶を高める儀式や香などは紀元前からあったようだ。筆者が1980年代以降の欧米や日本で経験したものでは、見当識障害を改善し現実認識を深めることを目的とするリアリティ・オリエンテーションや、場所法と呼ばれる記憶術などがあった。もっともどれもその実行は容易ではなかった。多くは紙を媒体としたドリル、またメモ書きとその習慣的見返しなどの指導が行われてきた。個人的には、どれもそう簡単に身に付くものではなかったという印象がある。現在、欧米における脳トレの主体はBrain TrainingとかCognitive Trainingと呼ばれ、その多くはインターネットを媒体とする。これらはComputer Based Cognitive Training (CBCTとか CCTと略)と総称される。そして高齢者のみならず働く現役世代も広く対象としている。加えて、うつ病や統合失調症のような精神疾患にみられる認知機能障害への効果も数多く報告されている。ゲームを製造する欧米の主立った会社は2000年以降に創立されたが、産業としての脳トレは短期間に急成長している。2005年当時にはわずかに200万ドルであった市場規模が、2013年には13億ドル、2022年には78億ドルの巨大産業にのし上がっている。脳トレによる認知症予防の検証が活発にとくに高齢者の認知症予防はこの市場の中でも大きな部分を占めるだろう。その大きな契機となったのが、2016年7月の国際アルツハイマー病学会(AAIC)で米国国立衛生研究所(NIH)と民間会社であるPosit Science社が行ったアメリカ国内での臨床試験の報告だろう。そこでは脳エクササイズである「スピードトレーニング」により、認知症のリスクが半減したと報告された。その後にも、退役軍人協会の会員を対象に運転技術についての効果が検証されている。ここでもこうしたトレーニングをやることで自損事故が半減したと報告されたのである。さて過去20年ほどの間に、高齢者を対象に多くのCCTによる介入研究がなされてきた。一言で高齢者と言っても、対象は認知症やMCIの人、あるいは知的健康人である。最近ではこうした研究のレビューやメタアナリシスも報告されている1,2,3)。その結果、概して「小さいながらも統計学的に有意な効果」が報告されている。そしていくつかに分類される認知機能のうち、非言語性の記憶、言語性記憶、作動記憶、視空間技術、処理速度に効果があるとされる。しかし遂行機能や注意については、有意な効果はほぼ得られていない。一方で、CCTの運営・実施方法についても検討されている。やっぱり、と思うのは、グループでやるトレーニングに比べ、個別トレーニングでは効果がないということである。一体感とか競争心などが大切だということだろう。また一見逆説的ながら、週に3回以上のトレーニングは3回以下に比べて効果が劣るとのことである。筋トレなどでも類似の注意をする指導者がいる。これは毎日のようにやると、飽きて新鮮味がなくなり、注意力や集中力が欠けてくるということなのだろうか?長期的な介入、認知機能分野の複合的な効果に期待一方で多くの問題点や課題も指摘されている。まず介入期間の問題である。多くはせいぜい3ヵ月程度であり、例外的に長いものでも1年程度である。これでは短期的な効果はともかく、年単位の長期効果、まして認知症予防効果などにはとても言及できない。次にタスク、つまり介入の内容や問題は、伝統的に、注意、記憶、地誌的機能など神経心理学的な観点に基づいて作成されてきた。そこでわかっているのは、たとえば注意のタスクをやれば注意の機能で改善があるというように、やった分野は確かに伸びることである。しかし注意をやれば記憶というほかの認知機能分野も伸びるのかといったトランスファー(転移)効果の問題が注目されてきた。これまでのところ、この効果は難しそうだと考えられている。そうしたことから、タスクは伝統的な個々の神経心理学的分野から発展させた複合的なものが、より効果的だと考えられつつある。終わりに、2018年にアメリカの神経学会によりなされたMCIについてのガイドライン4)では、具体的な対応法として2つだけが述べられている。まず、週2回、6ヵ月以上の運動である。そして「数は少ないが、認知トレーニングの有効性も報告されている」と記されている。このようなことから「脳トレ」には、臨床医学としてさらなる成長が期待される。参考1)Lampi A, et al. Computerized cognitive training in cognitively healthy older adults: A systematic review and meta-analysis of effect modifiers. Pros Med 2014;11: e1001756.2)Bonnechere B, et al. The use of commercial computerised cognitive games in older adults: a meta-analysis. Sci Rep. 2020;10:15276.3)Lampit A, et al. Computerized Cognitive Training in Cognitively Healthy Older Adults: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. medRxiv. 2020 Oct 11.4)Petersen RC, et al. Practice guideline update summary: Mild cognitive impairment: Report of the guideline development, dissemination, and implementation subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology. 2018;90:126-135.

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Incident Response(IR)-油断大敵、攻撃された後もやるべきこと【サイバー攻撃の回避術】第4回

「攻撃後の対応」:初動対応により、被害範囲や侵入経路の特定・分析、復旧作業が一段落した後、改めて再評価を行い、再発防止を含めたセキュリティーの強化を図ることが重要。ランサムウェアを始めとするマルウェア感染は、どんなに対策を講じていても起こる時には起こってしまうものです。それは世界中で多くの大企業が次々と被害に遭っていることからも明白です。また、わが国でも大都市圏の大病院のみならず、地方の中小病院、医科・歯科の診療所が被害に遭っていることから、正に「明日はわが身」なのです。今回は前回、前々回に引き続き、コンピュータシステム感染対策として、考えるべきIncident Response(IR)のうち「攻撃後」について概説します。(3)攻撃後これまでご説明したように「攻撃前」「攻撃中」における危機のピークが過ぎても、多くの作業が残っています。i)見直しと強化PCやサーバなどの環境内に残存する脅威を発見するため、徹底的なセキュリティー評価を行うことを推奨します。セキュリティーツールや手順、そしてどこが不十分だったかをしっかりと確認してください。ii)クリーンアップ一部のランサムウェアは、将来の攻撃の下地となるバックドア型トロイの木馬やその他の脅威を経由して送られてきます。多くの場合、被害者の環境はランサムウェア感染前にすでに侵害されていて、いつでもランサムウェアが入り込める状態になっています。 混乱の中で見落としている可能性があり、隠れた脅威を見つけなければなりません。バックアップも感染している可能性がある場合は、とくに注意が必要です。ランサムウェア感染の場合、バックアップデータ内にランサムウェアが潜むかたちで残っており、復旧した後に再感染を起こした事例なども報告されているため、漏れなく確認することが肝要です。また、外部からの侵入口などが残っていることもあり、再度オンライン化した際に再侵入される恐れもあるため、これらの経路を塞ぐことも重要です。具体的な例)不要なポートの閉鎖、脆弱性が存在するソフトウェアのアップデートなどiii)事後レビュー脅威対策、感染につながった一連のイベント、そして対応をレビューします。ランサムウェア攻撃がどのように発生したかを判明できなければ、再び侵入を許してしまうことになります。このためには攻撃の履歴(ログ)が保存されている必要がありますが、複数の医療機関で感染後の端末やサーバを再起動してしまったため、結局、攻撃の全容が解明できなかったケースが知られています。iv)ユーザ意識の評価十分な情報を提供され、教育を受けている従業員は、攻撃に対する最後の砦になることができます。従業員、スタッフ、職員がその役割を担えるかどうか確認してください。定期的なユーザ評価とフィッシングシミュレーションを行うことで、誰がどのようなメール攻撃や戦術に騙されやすいかを判別できます。Verizon社の「2023 Data Breach Investigation Report」によれば、ユーザ意識の調査の前提となるデータとして、侵害の22%はソーシャルアクションか、ユーザや従業員の行動に働きかけることを意図する行為によって生じています。これらのソーシャルアクションの96%はEメールで送られており、そのうちの90%はフィッシングに分類されています。さらに心配なことに、攻撃者がフィッシングを成功させて得るものの62%はログイン情報であることもわかっています。v)教育とトレーニング従業員にサイバー攻撃への耐性をつけるための教育を計画してください。教育は全職員を対象とした研修、関係職員を対象とした図上訓練、マネージメント層を対象とした研修等の組合せで企画することが推奨されます。実際の攻撃キャンペーンや戦術に基づいた教育・トレーニングが効果的です。攻撃にあったときの連絡方法を確立し、訓練や侵入テストでフォローアップします。これらにより、普段から一般職員が個人で留意すべきID/PWの管理や標的型メール攻撃、私物のUSBメモリの持ち込みなどの課題から、実際に被害が発生した際の当事者としての初動対応、経営者としてのBCPや再発防止策の策定などを組織一体となって行うことができ、組織全体のリテラシーの向上が期待できます。vi)技術的な防御能力の強化日々変化する脅威状況に対応するには、ランサムウェアの主な侵入口となる悪質なURLや添付ファイルをリアルタイムで分析、特定、阻止するセキュリティソリューションが必要です。EDR(Endpoint Detection & Response)やXDR(Extended Detection & Response)などの新しい脅威にも対応し迅速に対処できるセキュリティソリューションも検討してください。昨今のランサムウェアなどのマルウェアは、従来のアンチウイルスソフトでは対応できないことも多いことが知られています。それはマルウェアに非常に多くの亜種が発生しており、既知のマルウェアをファイルベースで検索して対応するアンチウイルスソフトでは対応できないことなどに起因します。この状況に対応し、未知のマルウェアに対しても対応可能なのがEDRやXDRであり、主に「振舞い検知」といった手法で対応します。たとえば、電子カルテの端末から電子カルテのサーバに対する通信は、通常の業務で頻回に行われるものですが、開業医の電子カルテシステムで休日や夜間に通信が行われた場合、これを異常と検知する、といった仕組みです。これにより、自動的に“怪しい”通信を検知して、その端末やサーバを隔離した上で、担当者にアラートメールを発出することができます。ランサムウェアコンピュータウイルスの一種で、ファイルなどを暗号化し身代金(ランサム)を要求するもの。マルウェア感染コンピュータ上で動作するソフトウェアのうち、悪意を持ったものを一般にマルウェアと称する。クリーンアップ感染した可能性のある端末やサーバ類を、オフライン化した上でアンチウイルスソフト等など用いて、“無菌化”する処置を指す。EDREndpoint Detection & Responseの略。端末保護の仕組みの一つで、“振舞い検知”という手法により、正常の業務ではありえない挙動を自動的に検知し、隔離、通知を行うもの。XDRExtended Detection and Responseの略。これは、ネットワーク、クラウド、エンドポイント、アプリケーション全体のデータを可視化し、分析と自動化を適用して、現在および将来の脅威を検出、分析、ハンティング、および修復するもので、EDRの進化版と考えればよいでしょう。中にはAIによる分析により、ごく初期の不自然な挙動や通信を検知し、侵入後数秒での検知を可能にできる、とされるソリューションも登場しています。

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第181回 コロナ起源の結論を賄賂でねじ曲げたと米国CIA職員が密告

決着が付かずにくすぶり続ける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の起源問題。米国で新たな事態が勃発しています。米国議会の委員会の発表によると、COVID-19流行は中国・武漢の研究所にどうやら端を発するとの米国中央情報局(CIA)解析担当官6人の結論がほかでもないCIAからの袖の下によって変えさせられたとの密告がありました1)。密告した人物はかなり信用できる(highly credible)CIA上級職員であると委員会は言っています。CIAは豊富な科学的見識を有する7人をCOVID Discovery Teamに任命してCOVID-19の起源の検討に当たらせました。その検討の結果、最上級職の1人は野生動物をCOVID-19の起源と判断しましたが、ほかの6人全員は信頼性こそ低いものの武漢の研究所がおそらくCOVID-19の出どころであると結論しました。密告者によるとその後CIAから横槍が入り、野生動物起源説を支持するようにそれら6人の結論が変えさせられました。6人には相当の額の袖の下が支払われたと密告者は言っています。密告者から話を聞いた委員会をまとめる2人の議員、Brad Wenstrup氏とMike Turner氏はCOVID-19起源の検討に関する資料ややり取りのすべてを今月26日までに提供することをCIA長官William Burns氏に要求しています。また、COVID-19が盛んだったときにCIA最高執行責任者(COO)だったAndrew Makridis氏に事情聴取への出頭を求めています。事情聴取は情報提供の締切日26日に予定されています。CIAの広報担当者は密告者の主張に反論しており、特定の結論になるように解析担当者に金を払うことはないと述べています。とはいえCIAは密告を非常に深刻に受け止めており、調査を進め、議会には適切に情報を提供すると約束しています。ScienceのニュースにはCIA職員への研究者の印象が紹介されています2)。COVID-19の野生動物起源説を支持する検討結果をいくつか報告している米国有数の研究所Scripps Researchの進化生物学者Kristian Andersen氏はその1人です。その起源の研究で同氏はCIAの職員と何度か話をしており、密告のようなことはまったくあり得ない(obviously is bullshit)と言っています。それら報告の共著者のRobert Garry氏もAndersen氏と似た意見です。話を聞きに来たCIA職員の分子生物学の知識は確かなもので、偏りは一切感じなかったとGarry氏は言っています。米国の情報機関のほとんどは新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が感染動物からヒトに移ってCOVID-19流行が始まったらしいとみています。しかしエネルギー省とFBI(連邦捜査局)はそうではなく研究所起源説を支持しています。CIAはというと結論に至っておらず、起源が動物か研究所かどうかという判断はできないとの見解を繰り返し表明しています。 参考1)Testimony From CIA Whistleblower Alleges New Information on COVID-19 Origins / Committee On Oversight and Accountability2)CIA bribed its own COVID-19 origin team to reject lab-leak theory, anonymous whistleblower claims / Science

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椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛にはパルス高周波とステロイド注射の併用が有効

 腰椎椎間板ヘルニアにより坐骨神経痛を来した患者の疼痛緩和と障害改善において、パルス高周波(PRF)と経椎間孔ステロイド注射(TFESI)の併用療法は、TFESI単独よりも優れていることが、「Radiology」に3月28日報告された。 ローマ・ラ・サピエンツァ大学付属ポリクリニコ・ウンベルト・プリモ病院(イタリア)のAlessandro Napoli氏らは、12週間以上続く腰椎椎間板ヘルニアにより坐骨神経痛を来し、保存治療に反応しない患者を、CTガイド下でのPRFとTFESIの併用療法1回を受ける群(174人)と、TFESI単独療法1回を受ける群(177人)にランダムに割り付けた。治療後1週目と52週目に、下肢痛の重症度を数値評価スケール(NRS)で測定した。 ベースライン時のNRSは、併用群で8.1±1.1、単独群で7.9±1.1だった。治療後1週目のNRSは併用群で3.2±0.2、単独群で5.4±0.2(平均治療効果2.3)、治療後52週目のNRSはそれぞれ1.0±0.2、3.9±0.2だった(平均治療効果3.0)。52週目の平均治療効果は、オスウェストリー障害指数(ODI)が11.0、ローランド・モリス障害質問票スコアが2.9で、併用群の方が良好だった。 著者らは、「腰椎椎間板ヘルニアにより持続性坐骨神経痛を来した患者に対するPRFとTFESIの併用は、TFESI単独に比較して、治療1年後の疼痛緩和と機能回復の面で良好な臨床結果を示した」と述べている。 なお、1人の著者が医療機器企業と、別の1人が出版企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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