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2024/07/10
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自分の仕事が社会的に無意味と感じている人はあなただけではない

 自分の仕事が無意味だと感じたことがあるだろうか。チューリッヒ大学(スイス)のSimon Walo氏による研究から、自分の仕事は社会にとってほとんど、あるいは全く重要ではないと感じている人の割合が19%にも上ることが示された。このような考えを持つ人は、特に金融、営業、管理職の人で多かったという。この研究結果は、「Work, Employment and Society」に7月21日掲載された。 自分の仕事が社会的に無意味だと考えている人が多いことは、過去の研究で報告されている。この現象の理由の説明として、さまざまな理論が提唱されているが、その代表格が、米国の人類学者であるDavid Graeber氏が提唱した「ブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)理論」である。この理論では、世の中には無意味な仕事が存在し、それが一部の職種に目立つことが主張されている。Walo氏は、「従業員が、自分の仕事が社会的に無意味と感じているかどうかを評価するのは非常に複雑な問題であり、さまざまな角度からアプローチする必要がある」と述べている。また、「それは、Graeber氏が主張するように、仕事の実際の有用性とは必ずしも関係のない、さまざまな要因に左右されるものだ。例えば、労働条件の悪さが原因で、自分の仕事に社会的な意味を見出せないケースも考えられる」と付け加える。一方、他の研究では、人々は、自分の仕事の内容ではなく、それが毎日、決まった手順で繰り返し行うルーチンワークであり、自律性や優れた管理のないことから無意味だと考える可能性が指摘されている。 今回のWalo氏の研究では、2015年に米国で21種類の職種に従事する1,811人の調査データの分析が行われた。調査では、「自分の仕事は、地域社会や社会全体に良い影響を与えていると感じているか」と「有用な仕事をしていると感じているか」が尋ねられていた。その結果、調査参加者の19%が、質問に対して「一度も感じたことがない」「ほとんど感じたことがない」と回答していたことが明らかになった。 そこでWalo氏は、仕事のルーチンの程度、自律性、管理の質が同等の参加者同士を比較するために、元データを調整して解析した。その結果、労働条件を要因として除外した後でも、仕事の性質(職種)が従業員の感じる仕事の無意味さに大きく影響していることが示された。また、Graeber氏が無意味と見なした職種に従事する参加者は、上記の質問に否定的に回答する傾向が強いことも判明した。具体的には、ビジネス・金融、営業に従事する人では、自分の仕事が無意味だと回答する人が他の職種の人より2倍以上多く、事務職と管理職でも同様の傾向が認められた(それぞれ、1.6倍、1.9倍)。このほか、民間企業の仕事に就く人では、非営利団体や公共部門の仕事に就く人よりも、自分の仕事が無意味だと思うと回答した人の割合が高かった。 Walo氏は、「Graeber氏が最初に示したエビデンスは、主に数字では表せない定性的なものであり、問題の大きさを評価するのは困難だった。それに対して本研究では、これまで十分に活用されていない豊富なデータセットを活用することで、これまでの分析結果を拡張し、新たなエビデンスを提供することができた。したがって、本研究論文は、仕事の無意味さを感じさせる決定的な要因が職種であるとの主張を裏付ける、初めての定量的なエビデンスだと言える」と述べている。

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熱傷の処置【漫画でわかる創傷治療のコツ】第12回

第12回 熱傷の処置《解説》今回は、熱傷の処置について解説します。熱傷の病態は、熱による皮膚の損傷とそれに続いて生じる炎症反応です。広範囲であれば全身性の炎症反応による多臓器障害を引き起こします。外来で処置できるものか、形成外科や皮膚科への紹介が必要なものか、さらに入院が必要なものか判断するのが重要です。ここでは主に外来で診ることができる範囲の熱傷について紹介します。熱傷深度と熱傷面積について判断できるようになりましょう!<熱傷の深度について>熱傷の深度の見極めにはUSA分類を用いるのが一般的です(図1)。深度によって局所の治療方法が変わります。主に症状や肉眼所見で推定しますが、精度の高い検査としてレーザードプラ血流計測法やビデオマイクロスコープが用いられたり、補助的な診断法として針刺法や抜毛法が用いられたりすることがあります。一般外来で診ることができるのは浅逹性II度熱傷までと考え、それ以上の深度の熱傷は形成外科や皮膚科へ紹介しましょう。図1画像を拡大するI度熱傷(EB)組織障害が表皮に留まり真皮に及ばないもの。局所の発赤、熱感、疼痛が主症状。→治療はステロイド軟膏(ワセリンのみ、創傷被覆材)による2~3日の経過で改善する。II度熱傷:真皮まで及ぶものを2つに分類浅逹性(SDB)-組織損傷が真皮の浅層に留まるもの。水疱形成がみられる。真皮深層の血流が保たれており、水疱基底部の真皮色調がピンク色や赤色を呈する(水疱は無理に破かないで!)。-真皮内の知覚神経受容体が刺激されるため極めて疼痛が強い。-毛根、汗腺、脂腺などの皮膚付属器が多数温存される。→治療は保存的治療(軟膏治療、創傷被覆材)で2週間以内にほとんど瘢痕を残さず上皮化する。深達性(DDB)-組織損傷が真皮の深層に至るもの。真皮の血行が障害されるため、水疱基底部は白色を呈する。-知覚神経受容体も損傷されるため、知覚は減退し疼痛も少ない。-皮膚付属器は温存されないことが多い。→上皮化までに3週間以上かかる。治療後に肥厚性瘢痕を形成する。→生命予後に影響を与える広範囲熱傷や機能障害が懸念される手や顔には手術を選択する。III度熱傷(DB)熱による損傷が皮膚全層に及ぶ。創面皮膚は乾燥、灰白色〜黄褐色を呈する。知覚は消失する。→上皮化は生じないため、極小範囲以外では壊死組織の切除と植皮(手術療法)が必要となる。<熱傷面積(%TBSA;%total body surface area)について>手掌法、9の法則(小児は5の法則)、Lund and Browderの法則があります(図2、3)。外来で簡易的にできるのは手掌法と9の法則(5の法則)でしょう。図2画像を拡大する図3画像を拡大する15%を超える場合の受け入れは皮膚科や形成外科など、熱傷の全身管理が可能な施設に依頼します。と言っても15%は外来で診ることができるギリギリの範囲です。実際は数%でも十分広範囲なので、近くに形成外科や皮膚科がある場合は早めに相談しましょう!熱傷深度、熱傷面積は受傷時の診断は経過によって変化していくことが多いため、毎回再度診断します。感染兆候、深度や面積の進行がある場合は、外科的なデブリードマンが必要になることもあるため、形成外科や皮膚科に紹介しましょう。<重症度について(予後指数)>どの施設で加療を行うかの基準としてBIやArtsの重症度判定があります。搬送医療機関の選定や治療方法の選択に必要です。BI:III度熱傷の体表に占める割合とII度熱傷の体表に占める割合を1/2にした数値との和で、目安として体表の15%以上がII度以上の熱傷を被ったら補液を伴う入院管理が必要。Artsの重症度判定:重症熱傷(熱傷センターなど熱傷専門施設のある総合病院に入院)-30%以上のII度熱傷-10%以上もしくは顔面、手足などの特殊部位のIII度熱傷-気道熱傷、広範囲軟部損傷、骨折などの合併症を伴う電撃傷中等度熱傷(形成外科のある一般総合病院に入院)-15~30%のII度熱傷-10%以下のIII度熱傷(顔、手足を除く)軽症熱傷(形成外科を有する外来治療施設を受診)-15%以下のII度熱傷-2%以下のIII度熱傷そのほか、皮膚科や形成外科に紹介すべき熱傷気道熱傷がある場合:気管内挿管と呼吸管理が必要なため、場合によっては救急や耳鼻科、皮膚科、形成外科のある総合病院へ紹介。体幹四肢の減張切開が必要:形成外科など専門医へ紹介。深度や面積を評価しデブリードマンが必要または感染の疑いがある:形成外科、皮膚科へ紹介。参考1)波利井 清紀ほか監修. 形成外科治療手技全書III 創傷外科. 克誠堂出版;2015.2)医療情報科学研究所編. 病気が見えるvol.14皮膚科第1版. メディックメディア;2020.3)日本熱傷学会編. 熱傷診療ガイドライン(改訂第3版).2021.

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シスタチンC/クレアチニン比で骨粗鬆症性骨折のリスクを予測可能

 腎機能の指標であるシスタチンCとクレアチニンの比が、骨粗鬆症性骨折の発生リスクの予測にも利用可能とする研究結果が報告された。吉井クリニック(高知県)の吉井一郎氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of General and Family Medicine」に4月20日掲載された。 骨粗鬆症による骨折は、生活の質(QOL)を大きく低下させ、生命予後を悪化させることも少なくない。骨粗鬆症による骨折のリスク因子として、高齢、女性、喫煙、飲酒、糖尿病などの生活習慣病、ステロイドの長期使用などが知られているが、近年、新たなリスクマーカーとして、シスタチンCとクレアチニンの比(CysC/Cr)が注目されつつある。 シスタチンCとクレアチニンはいずれも腎機能の評価指標。これらのうち、クレアチニンは骨格筋量の低下とともに低値となるために腎機能低下がマスクされやすいのに対して、シスタチンCは骨格筋量変動の影響を受けない。そのため骨格筋量が低下するとCysC/Crが上昇する。このことからCysC/Crはサルコペニアのマーカーとしての有用性が示されており、さらに続発性骨粗鬆症を来しやすい糖尿病患者の骨折リスクも予測できる可能性が報告されている。ただし、糖尿病の有無にかかわらずCysC/Crが骨折のリスクマーカーとなり得るのかは不明。吉井氏らはこの点について、後方視的コホート研究により検討した。 解析対象は、2010年11月~2015年12月の同院の患者のうち、年齢が女性は65歳以上、男性は70歳以上、ステロイド長期投与患者は50歳以上であり、腰椎と大腿骨頸部の骨密度およびシスタチンCとクレアチニンが測定されていて、長期間の追跡が可能であった175人(平均年齢70.2±14.6歳、女性78.3%)。追跡中の死亡、心血管疾患や肺炎などにより入院を要した患者、慢性腎臓病(CKD)ステージ3b以上の患者は除外されている。 平均52.9±16.9カ月の追跡で28人に、主要骨粗鬆症性骨折〔MOF(椎体骨折、大腿骨近位部骨折、上腕骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折で定義)〕が発生していた。MOF発生までの平均期間は15.8±12.3カ月だった。 単変量解析から、MOFの発生に関連のある因子として、MOFの既往、易転倒性(歩行障害、下肢の関節の変形、パーキンソニズムなど)、生活習慣病(2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、心不全、COPD、不眠症など)、ステージ3a以上のCKDとともに、CysC/Cr高値が抽出された。年齢や性別、BMI、骨密度、飲酒・喫煙習慣、骨粗鬆症治療薬・ビタミンD・ステロイドの処方、ポリファーマシー、関節リウマチ、認知症などは、MOF発生と有意な関連がなかった。 多変量解析で有意性が認められたのは、易転倒性と生活習慣病の2項目のみだった。ただし、単変量解析で有意な因子についてROC解析に基づく曲線下面積(AUC)を検討したところ、全ての因子がMOFの有意な予測能を有することが確認された。例えば、易転倒性ありの場合のAUCは0.703(P<0.001)、生活習慣病を有する場合は0.626(P<0.01)であり、CysC/Crは1.345をカットオフ値とした場合に0.614(P<0.01)だった。また、カプランマイヤー法によるハザード比はCysC/Crが6.32(95%信頼区間2.87~13.92)と最も高値であり、易転倒性が4.83(同2.16~10.21)、MOFの既往4.81(2.08~9.39)、生活習慣病3.60(1.67~7.73)、CKD2.56(1.06~6.20)と続いた。 著者らは、本研究が単施設の比較的小規模なデータに基づく解析であること、シスタチンCに影響を及ぼす悪性腫瘍の存在を考慮していないことなどの限界点を挙げた上で、「CysC/Crが1.345を上回る場合、MOFリスクが6倍以上高くなる。CysC/CrをMOFリスクのスクリーニングに利用できるのではないか」と結論付けている。

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喫煙者/喫煙既往歴者でスパイロメトリー測定値がCOPD基準を満たさないTEPS群の中で呼吸器症状有群(FEV1/FVC<0.7かつCAT≧10)は臨床の視点からCOPD重症化予備群として対応すべき?―(解説:島田俊夫氏)

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)と喫煙に関する研究は、これまで数多くの研究が行われている。しかしながら、スパイロメトリー測定値がCOPDの定義を満たさない対象者に関する研究はほとんどなく、治療法も確立されていない1,2)。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のWilliam McKleroy氏らによる多施設共同長期観察試験(SPIROMICS II試験)の結果が、JAMA誌2023年8月1日号に掲載された。 対象者はSPIROMICS I試験登録後5~7年に、対面受診を1回実施。呼吸器症状はCOPD Assessment Test(CAT、スコア範囲:0~40重症ほど高値)で評価した。TEPS(tobacco exposure and preserved spirometry)群は、これまでCOPD治験対象から除外されており、治療のエビデンスは確立されていない。本研究はTEPS群の自然経過に照準を絞った研究として行われた。TEPS群のスパイロメトリー測定は気管支拡張薬投与後のFEV1/FVC>0.70でCATスコア10≧を有症状群、10<を無症状群の2群に分類した。 研究対象は1,397例で内訳は226例が有症状TEPS群(平均年齢60.1歳、女性59%)、269例が無症状TEPS群(平均年齢63.1歳、女性50%)、459例が有症状COPD(平均年齢65.2歳、女性47%)、279例が無症状COPD(平均年齢67.8歳)、164例が非喫煙対照群から構成。呼吸器症状の増悪は4ヵ月ごとに電話で自己申告。 主要アウトカム:FEV1の低下。副次アウトカム:COPD発症、呼吸器症状増悪頻度、CT検査での気道壁肥厚、気腫肺。 追跡期間中央値5.76年でTEPS両群にCOPDの発生を認めたが、両群間に差はなかった。TEPS群は非喫煙対照群よりも有意にCOPDの発生率が高かった。一方でTEPS有症状群はTEPS無症状群に比べ、症状増悪率は有意に高かった(0.23 vs.0.08件/人・年、率比:2.38、95%CI:1.71~3.31[p<0.001])。論文へのコメント TEPS両群に対して禁煙は最優先で行うべき治療である。喫煙者でスパイロメトリー正常範囲の対象者は通常は治験対象から除外されていたために治療法は確立されていない。COPDの診断基準を満たさないTEPS群を症状有群と無群に分け、経時的に追跡の結果、TEPS各群共にCOPD発生の増加を認めたが、有/無症状群の比較ではCOPD発生率に差はなかった。しかし、呼吸器症状の増悪は有症状群が無症状群に比べ顕著に症状が増悪した。臨床の視点から症状増悪は軽視できず、有症状TEPS群はCOPD重症化予備群として治療を行い、適正治療確立は喫緊の課題である。 COPD予備群に対する気管支拡張剤、抗コリン剤、ステロイド剤らの使用法は確立していない。近頃、注目を集めているPRISm(preserved ratio impaired spirometry)はFEV1/FVC≧0.7かつ%FEV1(FEV1/FEV1予測値)<80%を満たす予後不良の病態である3,4)。この病態も含めてCOPD近縁疾患相互の絡み解明が必要と考える。

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英語で「エビデンスがない」は?【1分★医療英語】第96回

第96回 英語で「エビデンスがない」は?The drug you are using does not seem to have any efficacy data in my disease. Why do you recommend it?(先生が使用している薬は私の病気での有効性のデータはないようですが、なぜそれを勧めるのですか?)The absence of evidence is not the evidence of absence.(エビデンスが存在しないことは、[有効性などの効果が]ないことの証明にはなりません)《例文1》 We do have anecdotal evidence in many patients that this drug works well.(われわれの経験的には、この薬はよく効きます)《例文2》That study data has many limitations and does not apply to your case.(その研究結果には多くの限界があり、あなたの病気には当てはまりません)《解説》正しく計画された臨床研究の結果(=エビデンス)に基づいて診療を行うことは現代の医療においては「常識」であり、“Evidence-based medicine (EBM)”という言葉は当たり前すぎて、米国の臨床の場ではあまり聞かれなくなりました。しかし、十分なエビデンスが存在しないことは多くあり、日常診療の多くの場面でエビデンスが十分にはない診療も行われていることは、皆さんもご存じのとおりです。会話例の医師のセリフ、“The absence of evidence is not the evidence of absence.”は語呂が良く、慣用句として重宝します(「ないこと」の証明にはnon-inferiority test[非劣性検定]などの特殊な検定が必要です)。2つの例文も、「エビデンス」がまだない診療を行う根拠として一般的なもので、患者さんへの説明によく使う表現です。講師紹介

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若~中年の急性心筋梗塞、退院後1年の再入院リスクに男女差/JACC

 急性心筋梗塞(AMI)で入院した若年成人期~中年期の女性患者は、男性患者よりも退院後1年間の再入院リスクが高いという研究結果が、「Journal of the American College of Cardiology」5月9日号に掲載された論文で明らかにされた。 米イェール大学の澤野充明氏らは、AMIで入院した18~55歳の患者を対象に、退院後1年間に発生した再入院の原因と時期を男女間で比較する研究を実施した。米国の病院103件のAMI患者が登録されたVIRGO(Variation in Recovery: Role of Gender on Outcomes of Young AMI Patients)研究の参加者のうち、本研究の組み入れ基準を満たした2,979例(女性2,007例、男性972例、平均年齢47.1±6.2歳)のデータを用いた。 全ての要因による再入院および原因別の再入院(「冠動脈に関連する有害事象」、「冠動脈疾患を除く心疾患または脳卒中」、「心臓とは無関係の有害事象」、または「死亡」による再入院)の発生率を、1,000人年当たりの発生率(IR)として算出して男女間で比較した。続いて、死亡(競合リスク)を考慮したFine and Grayモデルを用いて、再入院に関する男女間の部分分布ハザード 比(SHR)を求めた。 退院後1年間に1回以上再入院した患者は2,979例中905例(30.4%)であった。再入院の原因で最も多かったのは「冠動脈に関連する有害事象」〔IR;女性171.8(95%CI 153.6~192.2)対男性117.8(同97.3~142.6)〕、続いて多かったのは「心臓とは無関係の有害事象」〔IR;女性145.8(95%CI 129.2~164.5)対男性69.6(同54.5~88.9)〕であった。これらの再入院のリスクは女性の方が有意に高く、原因別のSHRは、「冠動脈に関連する有害事象」で1.33(95%CI 1.04~1.70、P=0.03)、「心臓とは無関係の有害事象」で1.51(同1.13~2.07、P=0.005)であった。 全ての要因による再入院および原因別の再入院の時期については、男女間で有意差がなかった。 付随論評で、著者らは、「比較的若い女性のAMI患者における有害事象のリスクが男性患者よりも高いことが、過去数十年間の先行研究で明らかにされているが、本研究の結果はこれを裏付けるものである。心血管治療において依然として見られるこの性差を早急に解消する段階に来ている」と述べている。 なお、2名の著者が製薬企業および医療技術企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしており、1名の著者が関連特許を開示している。

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PPIと認知症リスクの新たな試験、4.4年超の使用で影響か

 長年にわたってプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方されている高齢者では、認知症を発症するリスクが高まる可能性のあることが、新たな研究で示された。米ミネソタ大学公衆衛生学部教授で血管神経学者のKamakshi Lakshminarayan氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に8月9日掲載された。 この研究は、PPIの長期使用に伴う潜在的な危険性を明らかにした研究の中で最新のものだ。PPIは医師によって処方される医療用医薬品のほか、一般用医薬品(OTC医薬品)としても販売されている。PPIは慢性的に胃酸が食道に逆流し、胸やけの症状などをもたらす胃食道逆流症(GERD)に対して処方されてきた。しかし近年、PPIの長期使用が心筋梗塞や腎臓病、早期死亡などさまざまな健康リスクに関連することを示した研究結果が相次いで報告されている。2016年には認知症もこのリスクに含まれることを示唆する研究が発表されて話題となった。 問題はこれらの健康リスクの原因がPPIであることを証明した研究は一つもないという点だ。今回の研究には関与していない、米スクリプス・ヘルスの消化器専門医で米国消化器病学会(AGA)のスポークスパーソンでもあるFouad Moawad氏は、「過去の研究では、PPIと認知症との関連を否定する結果もあれば、PPIによる認知症リスクの低下を示す報告もあり、一貫していない。このことは患者と処方する側の双方に混乱を招いている」と指摘する。 Lakshminarayan氏らは今回、数千人の米国人の心臓の健康状態を追跡調査することを目的とした米政府による長期研究(ARIC研究)のデータを用いて、2011~2013年の調査時に認知症がなかった5,712人の参加者(平均年齢75.4±5.1歳、女性58%)を対象に解析を行った。なお、当時PPIを使用していた参加者の割合は4人に1人程度(25.4%)だった。 5.5年間(中央値)の追跡期間中に、585人が新たに認知症を発症していた。年齢や糖尿病、高血圧の有無などを調整して解析した結果、累積で4.4年を超えてPPIを使用していた長期使用者では、PPIを一度も使用したことがない人と比べて認知症を発症するリスクが33%有意に高いことが示された。これに対して、短期使用者(1日〜2.8年)や中期間の使用者(2.8年超〜4.4年)では、有意なリスク増加は認められなかった。ただし、この研究では、OTC医薬品のPPI使用者は解析対象から除外されていた点に注意が必要である。 Moawad氏は、過去のほとんどの研究と同様、今回の研究も観察研究であり、研究参加者を追跡してPPIの使用と認知症の新規発症との関連を調べたものであることを指摘。「PPIを長期間使用している高齢者と、そうでない高齢者の間にはさまざまな差異がある可能性があり、それらを全て考慮に入れるのは難しい」との見方を示している。Lakshminarayan氏も「研究では、因果関係ではなく関連が認められたに過ぎない」と説明。また、4.4年超という長期間のPPIの使用と認知症リスクの上昇との間に関連が認められだけであることも強調している。 実際にPPIの長期使用が認知症の発症を促すとしても、その機序は不明だ。機序に関しては、これまで、さまざまな説が提唱されている。そのうちの一つの説では、PPIはビタミンB12欠乏をもたらすことがあり、それが認知症の症状の要因となっている可能性が指摘されている。また、マウスの研究からは、PPIが脳内のアミロイドプラークの蓄積量を増加させることも示されている。しかし、これらは全て推測の域を出ていない。 最近、「Gastroenterology」に発表された約1万9,000人の高齢者を対象とした研究では、PPIの使用と認知症や認知機能の低下に関連は認められなかったとの結果が示されている。同研究を報告した米マサチューセッツ総合病院の消化器専門医のAndrew Chan氏は、Lakshminarayan氏らの研究で示されたPPIに関連する認知症リスクの上昇は「統計学的には五分五分である」と指摘し、結果を慎重に解釈する必要があると注意を促している。

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50歳未満のがん、この10年で急速に増加したがんは?

 1990年代以降、世界の多くの地域において50歳未満で発症する早期発症がんが増加して世界的な問題となっているが、特定のがん種に限定されない早期発症がんの新たなデータは限られている。そこで、シンガポール国立大学のBenjamin Koh氏らによる米国の住民ベースのコホート研究の結果、2010年から2019年にかけて早期発症がんの罹患率は有意に増加し、とくに消化器がんは最も急速に増加していたことが明らかになった。JAMA Oncology誌2023年8月16日号掲載の報告。 研究グループは、米国における早期発症がんの変化を明らかにし、罹患率が急増しているがん種を調査するために住民ベースのコホート研究を行った。解析には、2010年1月1日~2019年12月31日の米国国立がん研究所(NCI)のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)の17レジストリのデータを用い、人口10万人当たりの年齢標準化罹患率を算出した。年齢標準化罹患率の年間変化率(APC)はjoinpoint回帰法を用いて推定した。データ解析は2022年10月16日~2023年5月23日に行われた。 主な結果は以下のとおり。・解析には、早期発症がん患者56万2,145例が組み込まれた。うち57.7%が40~49歳で、62.5%が女性であった。・2010年から2019年にかけて、50歳未満の早期発症がんの罹患率は増加していたが(APC:0.28%、95%信頼区間[CI]:0.09~0.47、p=0.01)、50歳以上のがん罹患率は減少していた(APC:-0.87%、95%CI:-1.06~-0.67、p<0.001)。・早期発症がんは女性では増加していたが(APC:0.67%、95%CI:0.39~0.94、p=0.001)、男性では減少していた(APC:-0.37%、95%CI:-0.51~-0.22、p<0.001)。・2019年の早期発症がんの罹患数が最も多かったのは乳がん(1万2,649例)であった。・早期発症がんの罹患率が最も急速に増加したのは、消化器がん(APC:2.16%、95%CI: 1.66~2.67、p<0.001)であった。次いで泌尿器系がん(APC:1.34%、95%CI:0.61~2.07、p=0.003)、女性の生殖器系がん(APC:0.93%、95%CI:0.32~1.55、p=0.008)であった。・消化器がんのうち、罹患率が最も急速に増加していたのは、虫垂がん(APC:15.61%、95%CI:9.21~22.38、p<0.001)、肝内胆管がん(APC:8.12%、95%CI:4.94~11.39、p<0.001)、膵臓がん(APC:2.53%、95%CI:1.69~3.38、p<0.001)であった。・早期発症がんの罹患率が減少していたのは、呼吸器がん(APC:-4.57%、95%CI:-5.30~-3.83、p<0.001)、男性の生殖器系がん(APC:-1.75%、95%CI:-2.40~-1.10、p<0.001)、脳・神経系がん(APC:-0.99%、95%CI:-1.67~-0.32、p=0.01)であった。 これらの結果より、研究グループは「このコホート研究において、早期発症がんの罹患率は2010年から2019年にかけて増加していた。2019年の罹患数は乳がんが最も多かったが、消化器がんは最も急速に増加していた。これらのデータは、サーベイランスおよび資金調達の優先順位の策定に役立つ可能性がある」とまとめた。

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退院後の統合失調症患者における経口剤と持効性注射剤の治療継続率

 退院後の統合失調症患者におけるその後の治療継続は、患者および医療関係者、医療システムにとって問題である。これまでの報告では、第2世代抗精神病薬(SGA)の長時間作用型注射剤(LAI)は、経口非定型抗精神病薬(OAA)と比較し、治療アドヒアランスの改善や再入院リスクの軽減に有効である可能性が示唆されている。米国・Janssen Scientific AffairsのCharmi Patel氏らは、米国におけるSGA-LAIとOAAで治療を開始した統合失調症患者における、アドヒアランスと再入院リスクの比較検討を行った。その結果、統合失調症患者は、入院中に開始した抗精神病薬を退院後も継続する可能性が低かったが、SGA-LAI治療患者では、抗精神病薬の順守や外来通院を継続する可能性が高く、OAA治療患者よりも退院後ケアの継続性が向上する可能性が示唆された。Current Medical Research and Opinion誌8月号の報告。 統合失調症関連で入院中に、新たにSGA-LAIまたはOAAによる治療を開始した成人統合失調症患者を、HealthVerityデータベースより抽出した。期間は2015~20年、インデックス日は退院日とした。対象は、入院前および入院時から退院後6ヵ月間、健康保険に継続加入しており、入院前の6ヵ月間でSGA-LAIまたはOAA以外の抗精神病薬の処方データが1件以上の患者。抗精神病薬の使用とアドヒアランス、統合失調症関連の再入院と外来通院について、退院後6ヵ月間の比較を行った。コホート間の特性は、逆確率重み付けを用いて調整した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は、SGA-LAI群は466例、OAA群は517例であった。・入院中に開始した抗精神病薬について、退院後に薬局または医療請求があった患者は、SGA-LAI群で36.9%、OAA群で40.7%であった。そのうち、SGA-LAI群は、OAA群と比較し、抗精神病薬を順守する可能性が4.4倍高かった(20.0% vs.5.4%、p<0.001)。・SGA-LAI群は、OAA群と比較し、薬局または医療請求を行う可能性が2.3倍高く(82.7% vs.67.9%、p<0.001)、いずれかの抗精神病薬を順守する可能性が3.0倍高かった(41.5% vs.19.1%、p<0.001)。・SGA-LAI群とOAA群の再入院率は、退院7日後で1.7% vs.4.1%、退院30日以内で13.0% vs.12.6%であった。・SGA-LAI群は、OAA群と比較し、外来受診する可能性が51%高かった(36.3% vs.27.4%、p=0.044)。

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コロナ後遺症、1年後は約半数、急性期から持続は16%/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)が実施したコロナ罹患後症状(コロナ後遺症、long COVID)に関する多施設共同研究において、COVID-19に罹患した人の約16%が、感染から12ヵ月後も何らかの症状が持続していると報告した。また、感染から一定期間を置いて何らかの症状が発症/再発した人を含めると、感染から12ヵ月時点での有病率は約半数にも上った。本結果はCDCのMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年8月11日号に掲載された。コロナ後遺症で何らかの症状が発症/再発した人は1年後で約半数に上った 本研究では、前向き多施設コホート研究であるInnovative Support for Patients with SARS-CoV-2 Infections Registry(INSPIRE)の2020年12月~2023年3月のデータが用いられた。米国8施設において、研究登録時に新型コロナ様症状を発症した18歳以上の1,296例(SARS-CoV-2検査陽性1,017例と検査陰性279例)を対象に、長期症状および転帰を評価した。ベースライン調査、3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月、12ヵ月時点の追跡調査を行い、継続する症状と、新たに発症/再発した症状を区別した。アウトカムは自己申告による8カテゴリーの症状:(1)頭、目、耳、鼻、喉(HEENT)、(2)体質、(3)肺、(4)筋骨格系、(5)消化器、(6)循環器、(7)認知障害、(8)極度の疲労。検査陽性群と検査陰性群の統計学的比較はχ2検定を用いて評価した。追跡期間中にSARS-CoV-2検査結果が陽性になった参加者は解析から除外した。 コロナ後遺症に関する多施設共同研究の主な結果は以下のとおり。・6,075例が登録され、12ヵ月間のすべての調査を完了し、追跡期間中にコロナに再感染しなかった参加者は1,296例。女性67.4%(842例)。非ヒスパニック系白人72%(905例)。年齢の比率は、18~34歳39.3%、35~49歳31.1%、50~64歳20.7%、65歳以上8.7%。・検査陽性群では、検査陰性群と比べて女性の割合が低く(陽性群:65.2% vs.陰性群75.2%、p<0.01)、既婚またはパートナーと同居(60.3% vs.48.9%、p<0.01)、コロナ急性期症状での入院(5.6% vs.0.4%、p<0.01)の割合が高かった。・症状の持続について、ベースライン時では陽性群のほうが陰性群よりも各症状カテゴリーの有病率が高く、3ヵ月時点で大幅に減少し、6~12ヵ月にかけて徐々に減少し続けた。・12ヵ月時点で、何らかの症状が急性期から持続していると報告したのは、陽性群18.3%、陰性群16.1%で、統計学的な有意差は認められなかった。・12ヵ月時点での「極度の疲労」の持続は、陰性群が有意に高かった(陽性群3.5% vs.陰性群6.8%)。・感染から一定期間を置いて何らかの症状が発症/再発した人は、陽性群と陰性群共に、12ヵ月時点で約半数に上った。・感染から一定期間後の症状の発症/再発について、症状カテゴリー別の有病率は、陽性群と陰性群共に、「極度の疲労」以外は各検査時点で同程度であった。・「極度の疲労」の有病率は、9ヵ月と12ヵ月時点において、陽性群よりも陰性群のほうが高かった。 著者は本結果について、「陽性群と陰性群を評価した本調査において、多くの参加者は急性期から6ヵ月以上経て新たな症状を経験しており、コロナ後遺症の有病率は相当なものである可能性が示唆された。認知障害と極度の疲労は、6ヵ月後に出現する一般的な症状だ。時間の経過とともに消失する症状と出現する症状を区別することは、コロナ後遺症を特徴付けるのに役立つ。一方、単一時点での測定は、疾病の真の影響を過小評価したり、誤った特徴付けをしてしまうことを示唆している」としている。

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ブタからヒトへ、腎臓異種移植後の免疫反応/Lancet

 ブタからヒトへの腎臓異種移植は、短期アウトカムは良好で超急性拒絶反応はみられなかったが、再灌流から54時間後の腎臓異種移植片では主に糸球体に抗体関連型拒絶反応が生じていることを、フランス・パリ・シテ大学のAlexandre Loupy氏らがマルチモーダルフェノタイプ解析の結果で明らかにした。異種間の免疫学的不適合がブタ-ヒト間の異種移植の妨げとなっていたが、ブタのゲノム工学によって、最近、初のブタ-ヒト間の腎臓異種移植が成功した。しかし、ブタの腎臓をヒトレシピエントに移植した後の免疫反応についてはほとんどわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、次世代のブタ遺伝子編集を改良し、異種移植臨床試験における拒絶反応の液性機序を最適に制御するための研究の道筋や方向性を開くものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年8月17日号掲載の報告。ブタ腎臓異種移植片のマルチモーダルフェノタイプ解析 研究グループは、脳死のヒト2例に移植された遺伝子改変ブタ腎臓異種移植片について完全なフェノタイプ解析を行った。異種移植片の検体は再灌流から54時間後に採取し、解析では形態学的評価、免疫フェノタイピング(IgM、IgG、C4d、CD68、CD15、NKp46、CD3、CD20、フォン・ヴィレブランド因子)、遺伝子発現プロファイリング、全トランスクリプトームデジタル空間プロファイリングおよび細胞デコンボリューションを組み合わせたマルチモーダル戦略を使用した。 対照として、移植前の異種移植片、野生型ブタ腎臓自家移植片、および虚血再灌流あり/なしの野生型非移植ブタ腎臓を使用した。異種移植片の糸球体で抗体関連型拒絶反応を確認 異種移植片から得られたデータは、免疫沈着を伴う微小血管炎症、内皮細胞の活性化、および異種反応性クロスマッチ陽性を特徴とする、抗体関連型拒絶反応の初期兆候を示唆した。 毛細血管炎症は、主に血管内のCD68+およびCD15+自然免疫細胞、ならびにNKp46+細胞で構成されていた。どちらの異種移植片でも、単球およびマクロファージの活性化、NK細胞負荷、内皮活性化、補体活性化、T細胞発生など、液性反応に生物学的に関連する遺伝子の発現増加が示されたという。 全トランスクリプトームデジタル空間プロファイリングでは、抗体関連型拒絶反応は主に異種移植片の糸球体に位置し、単球、マクロファージ、好中球、NK細胞に関連する転写産物の有意な濃縮が示された。この表現型は、対照であるブタの自家移植片や虚血再灌流モデルでは観察されていない。

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4年ぶりの一時帰国、変わるもの、変わらないもの【臨床留学通信 from NY】第51回

第51回:4年ぶりの一時帰国、変わるもの、変わらないもの8月上旬に、日本に一時帰国しました。実に4年ぶり、2019年7月以来です。2020年2~3月から新型コロナが猛威を振るい始め、2022年9月までは日本入国時に陰性証明書も必要であったことから、一時帰国は控えていました。また、帰らなくなるとだんだんと米国に適合し、日本の良さを忘れてきてしまい、帰らなくてもいいかな、と思ってきてしまいます。両親などとはビデオチャットで話しているとはいえ、さすがに4年も帰らないのは、ということもあり、一念発起して家族共々一時帰国しました。昨今の物価上昇と、夏休みの時期というのもあり、直行便で2,000ドル(8月18時点で1ドル145円なので29万円!)とかなり高額です。そこはやむを得ません。帰国時にはビザの更新も原則必要で、円安の影響もあり家族4人で10万円以上かかります。実際に帰ると久々の時差ボケもありますが、とにかく暑かったです。連日35度を超えて干からびそうな日々でした。車の免許も切れてしまったため、更新するまで移動は歩きも多く疲弊してしまいました。コロナの影響のため、期限が切れてしまっていても特別処置で更新程度の手続きで済んだのはよかったです。ほかには暴飲暴食ではありませんが、普段あまり食べられない新鮮な納豆、生卵はもちろん、お寿司、焼肉、うなぎ、日本酒といったものを食べ過ぎてしまいました。日本ではマスクが多いと聞いておりましたが、電車でも予想よりマスクをしている人が少なかった印象で、暑さの影響もあるのでしょうか。滞在は2週間の休暇で子供たちと両親や親戚、祖母、姉家族と過ごしておりましたが、やはり両親や祖母が4年分歳を取ってしまったな、というところは認識せざるを得ませんでした。それでも孫、ひ孫を見せることができたのはよかったと思います。また少ない時間ではありますが、大学や初期研修の同期たちとも久々に会うことができ、そこはやはり変わらないなと思いました。日本の物価の安さも変わらないという印象で(それでも昨年以降は上がっているようですが)、ビッグマックの価格が欧米の6割程度とよく言われるように、欧米諸国からは安くて良いものが手に入る国として見なされてしまっているようです。私としては米国で働き続けるのか、選択肢を迫られた時にいろいろ考えさせられます。といっても、現在ドル建てでお給料をもらっていても余るどころか減る一方なので、足りない分を円から補おうとすると、現状では円安がつらいところです。一般的な臨床研究の留学は2~3年、基礎研究で3~5年でしょうか。渡米して6年目に突入するといろいろ考えることが増えてきます。ColumnCirculation誌の姉妹誌であるCirculation Cardiovasc Imaging 誌(IF 8.5)に、Montefioreの研究チームで投稿した冠動脈石灰化スコアに関する論文が、先日発表されました。私は主に解析を担当し、共同筆頭著者として参加しました。米国では予防循環器学(preventive cardiology)が発達しており、このような冠動脈の石灰化と予後をみるような研究が盛んに行われています。発症してしまったものを治すだけでなく、ならないようにどう予防するかが重要な時代になってきています。私のいる病院はマンハッタン島から北東にあるブロンクスというエリアで、ヒスパニック系や黒人が患者の4分の3を占めており、米国大都市の現状を反映していると思います。Fattouh M, Kuno T, et al. Interplay Between Zero CAC, Quantitative Plaque Analysis, and Adverse Events in a Diverse Patient Cohort. Circ Cardiovasc Imaging. 2023;16:e015236.

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英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(6)知って得する豆知識【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第22回

英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(6)知って得する豆知識今回は数字の表現において、知っておくと便利な「豆知識」をご紹介します。知っていなくてもコミュニケーションに支障がないものもありますが、覚えておけば、英語レベルを一段上げることができるはずです。画像を拡大する1)要注意発音:13 vs.30音の似ている“thirteen”、“thirty”。区別のためには、発音する際に「強調する位置」がきわめて重要です(13は後半、30は前半を強調します)。この2つの数字、伝達ミスの原因となりやすいことは広く認識されており、米国人同士の会話でも、比較的ゆっくり、明確に強調を置いて話されることが多いです。また、区別をより明確にするため、“thirteen, which is one-three”などのように、“thirteen”、“thirty”に続けて、一桁ずつ数字を読み上げることもよくあります。2)形容詞としての数字の使用:A 30-year-old man, a 30-minute infusion数字は、形容詞の一部として使用する場合は「単数形」です。日本語では基本的に複数形の概念がなく、「30歳の男性」と「その男性は30歳です」では「30歳」の部分には変化がないので、間違いに気付きにくいようです。複数形にしてしまっても多くの場合は文脈から通じますが、ネイティブには明確に違和感を持たれるので、英語の上級者になれば気を付けたい表現です。3)数字の表記:数字記号vs.単語学会上など英語のフォーマルな場では、「1~9(または10)までは単語で記載」し、「それ以上は数字記号で記載」する、という伝統的なルールがあります。たとえば、“There are 5 patients”ではなく、“There are five patients”と記載し、“There are 11 patients”はそのままです。日本でも米国でも、このルールに固執するベテラン医師はいます。しかし、近年ではなるべく数字記号で記載することが推奨されています。たとえば、医学論文執筆のルールブックとされる『AMA(American Medical Association) Manual of Style 11th edition』(2020年)では、以下のように記載されています。ただ実際は、医学雑誌ごとに推奨方法が異なっており、学会発表スライドは論文ほどにはフォーマルではないため、聴衆が読みやすいと思うほうを選択すればよいと思います。『AMA Manual of Style 11th edition』(2020年)より抜粋詳細は原文を参照Because numerals convey quantity more efficiently than spelled-out numbers, they are generally preferable in technical writing.(数字記号は数量をより効率的に伝達できるため、科学的な執筆においては、文字での記載よりも一般的に好ましい)In scientific writing, numerals are used to express numbers in most circumstances (eg, 5 not five).(科学的な執筆では数字を表現する多くの場合で数字記号が使用される[例:Fiveではなく5])Exceptions are the following:(以下を例外とする:)Numbers that begin a sentence, title, subtitle, or heading(文章、タイトルなどの先頭が数字の場合)Accepted usage, such as idiomatic expressions and numbers used as pronouns(一般に許容されている使用方法、たとえば、イディオムとしての数字表現や、代名詞としての使用)Ordinals first through ninth(1から9までの序数)4)慣習的な表現:1,000 vs.K英語のコミュニケーションでは、しばしば“K”という1文字で1,000を意味することがあります(“kilo”に由来)。論文などのフォーマルな場では避けるべきですが、米国のカルテなどでは多用されていますし、英会話でも、“5,000”を「ファイブ ケー」と読み上げる人も多くいるので、これも知っておいたほうがよい表現です。講師紹介

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中等症~重症の尋常性乾癬へのリサンキズマブ、5年追跡結果

 中等症~重症の尋常性乾癬患者に対するリサンキズマブ治療の長期安全性と有効性が報告された。最長5年の継続投与の忍容性は良好であり、持続的かつ高い有効性が示された。ベルギー・Alliance Clinical Research and Probity Medical ResearchのKim A. Papp氏らが、進行中の第III相非盲検延長試験「LIMMitless試験」の中間解析の結果をJournal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2023年8月6日号で報告した。乾癬は慢性の炎症性皮膚疾患で、長期にわたる治療が必要になることが多い。リサンキズマブはヒト化抗ヒトIL-23p19モノクローナル抗体製剤で、IL-23のp19サブユニットに結合し、IL-23の作用を中和することで乾癬による皮膚症状や関節炎などを改善する。 LIMMitless試験は、中等症~重症の尋常性乾癬患者を対象に、リサンキズマブ150mg(12週ごとに皮下注射)の長期安全性と有効性を評価する国際共同単群評価試験。日本を含む17の国と地域で、先行する複数の第II/III相試験のいずれかを完了した患者が登録された。今回の中間解析では、304週間にわたる安全性(治療中に発生した有害事象[TEAE])を評価した。有効性は、256週間にわたって評価した。Psoriasis Area and Severity Index(PASI)スコアが90%以上または100%減少(PASI 90/100)、static Physician's Global Assessment(sPGA)スコアで皮膚病変が消失/ほぼ消失(sPGA 0/1)、およびDermatology Life Quality Index(DLQI)で生活への影響なし(DLQI 0/1)を達成した患者の割合を評価した。 主な結果は以下のとおり。・先行研究でリサンキズマブ群に無作為化された897例のうち、データカットオフ時点で治療を継続していたのは706例であった。・TEAE、投与中止に至ったTEAE、とくに注目すべきTEAEの発現率は、いずれも低率であった。・256週時点において、PASI 90、PASI 100達成患者の割合は、それぞれ85.1%、52.3%であり、sPGA 0/1達成患者の割合は85.8%、DLQI 0/1達成患者の割合は76.4%であった。

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旬をグルメしながらCVIT誌のインパクトファクター獲得を祝福する【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第63回

論文にも「旬」がある!?野菜や魚介類などの食材には「旬」が存在します。特定の食材がほかの時季と比べて収穫量が多く、新鮮でおいしく食べることができる時季のことです。各時季、各地域での旬の食材に精通することが、グルメの第一歩です。では、旬の期間はどの程度かご存じでしょうか。旬という言葉の本来の意味は10日間です。1ヵ月を3分し、それぞれの10日間を上旬、中旬、下旬というのは馴染みがあると思います。旬は思ったよりも短いのです。旬が存在するのは食材だけではありません。論文にも旬が存在します。論文の旬を強く意識するのがインパクトファクター(Impact Factor:IF)について考えるときです。IFは、第42回「インパクトファクターのインパクトを考える」でも紹介したとおり、学術誌の影響度を評価する指標です。IFの算出法を復習しましょう。ある学術誌Aは、2022年の掲載論文の総数が140件、2023年が160件であったとします。2年間で計300件です。この300件から、2024年の1年間に計600回引用されたとします。ジャーナルAの2024年のIFは、600÷300=2.0となります。つまり被引用論文数が分子に、掲載論文数が分母になります。IFの高いジャーナルは被引用論文数が多い、すなわち引用に値する質の高い論文が掲載されていることを意味します。CVIT誌が悲願のインパクトファクター獲得日本心血管インターベンション治療学会は、心血管疾患患者に対する有効かつ安全なカテーテル治療の開発と発展、臨床研究の推進などを目的とする学会です。私も学会役員として発展を願っております。本学会が刊行している英文の学術誌が「Cardiovascular Intervention and Therapeutics誌」(以下:CVIT誌)です。このように学会が発行する学会誌をofficial journalといいます。CVIT誌は、和文の学術誌として創刊時からVol.24まで発行され、2010年1月に上梓されたVol.25から英文誌になりました。英文誌の編集長は、初代が住吉 徹哉先生、次いで伊苅 裕二先生、現在は3代目の小林 欣夫先生です。学術誌の価値を意義付ける大きなステップとしてIF獲得があります。CVIT誌は、長年にわたり価値ある論文を発信してきましたが、IFを持っていなかったのです。IF獲得は学会員すべての悲願でした。ここで不思議に感じる人もいることでしょう。前述の計算式に従えば、すべての学術誌は、新規刊行から3年を経れば、各々のIF値を算出することは可能だからです。しかし、これは正式なIFではないのです。実は世界的に通用し評価の対象となるIFは、正しくはジャーナル・インパクトファクター(Journal Impact Factor:JIF)を指しているのです。JIFは、Clarivate社という企業が作成するWeb of Science Core Collectionのデータを土台としてIF値が算出され、同社がJIFとして認定したもののみが正式にIFを持つ雑誌として公表することができます。2023年6月に吉報が届きました。CVIT誌にJIF 3.2が認められたのです。CVIT誌の歴代の編集長と編集委員に敬意を表します。何よりも質の高い論文を投稿してくださった皆の努力の結集によって成し遂げたことです。心より祝福いたします。Congratulations!日本発ジャーナルの価値を高める方法は?まだここで満足して立ち止まってはいけません。JIFをさらに上げてCVIT誌の価値を高め、世界と戦う素地を作っていくべきです。具体的には何をすれば良いのか。それは、皆さんが執筆する論文にCVIT誌に掲載された論文を引用することです。論文の投稿先はCVIT誌である必要はありません。2023年8月に投稿すれば、順調にいったとしても、論文が実際に掲載されるのは2024年になる可能性が高いです。その論文に引用された文献がCVIT誌のJIFの向上に貢献するのは、CVIT誌に2022~23年に掲載された論文を引用した場合のみです。ここで最初に紹介した「旬」というキーワードが効いてくるのです。IFの観点からは、論文の旬は2年間しかないのです。とにかく、最新の論文を引用することが重要です。最近、どの学術誌でもガイドラインの改訂やコンセンサスドキュメントが増えています。これは最新の論文として引用してもらい、IFの向上を狙う意味もあるのです。もちろん、引用したくなるような質の高い論文をより多く掲載することが王道です。CVIT誌と同時に、日本不整脈心電学会の発行する「Journal of Arrhythmia誌」もJIFを認められました。おめでとうございます。このほか日本に編集本拠地があるJIFを持つ循環器領域ジャーナルとして「Circulation Journal 誌」「Journal of Cardiology誌」「Heart and Vessels誌」そして「International Heart Journal誌」などがあります。掲載論文に、同誌の過去号の論文を引用することを、自己引用(self-citation)といいます。自己引用はJIFの向上につながるとはいえ、ジャーナルの国際認知度向上にはあまり効果を発揮しません。同誌での引用ではなく他誌からの引用のほうが高評価だからです。過度の自己引用は、JIFの取り消しにもつながりかねません。ジャーナルの価値を高めるには、JIFを持つほかのジャーナルに論文が引用されることが大切です。日本人が運営している学術誌に複数の英文誌があることが、アジアの中でも日本の大きな強みです。日本人は日本人の論文をあまり引用しないと言われます。制度を十分に理解したうえで、日本人が相互の論文を積極的に引用し合うことによって、お互いのジャーナルの価値を高めていくことが可能となります。ひいては日本の研究活動の学術的意義の向上に結び付くことを期待します。

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アロマターゼ欠損症〔AD:Aromatase Deficiency〕

1 疾患概要■ 定義エストロゲン合成酵素(アロマターゼ)の活性欠損・低下により、エストロゲン欠乏とアンドロゲン過剰とによる症状を呈する遺伝性疾患である。染色体核型が女性型の場合は、性分化疾患(46,XX DSD)に分類される。生理的にエストロゲン合成が亢進する妊娠中と思春期~性成熟期に症状が顕性化する。女性患者と男性患者とで表現型が異なる。■ 疫学10万人に1人以下のまれな疾患である。これまでに30家系50人を超える患者が報告されている。当初はヨーロッパとヨーロッパからアメリカ大陸への移民者の報告が多かったが、最近ではアジア(中国やインド)からの報告も増えている。わが国からの報告はこれまでのところ1例のみである。■ 病因アロマターゼは、アンドロゲンを基質としてエストロゲンを産生する酵素である。アロマターゼ活性欠損により、エストロゲンが産生されずアンドロゲンが蓄積する。その結果、女性でエストロゲンの欠乏と男性ホルモンの過剰による症状が生じる。これに対し、男性ではエストロゲン欠乏による症状のみが生じる。■ 症状1)胎児ヒト胎児副腎は大量の副腎性アンドロゲン(dehydroepiandrosterone)を産生し、これが胎盤(胎児に由来する)のアロマターゼによりエストロゲンに転換される。胎児がアロマターゼ欠損症の場合には、アンドロゲンが蓄積して母体と胎児に男性化が生じる。胎児が女性の場合は、外性器が男性化する。母体では、妊娠中に男性化症状が増悪し、分娩後に軽快する。残存するアロマターゼ活性が1%を越えると、母体に男性化はみられないとされる。2)女性エストロゲンによって生じる二次性徴(初経や乳腺発育・女性型の皮下脂肪など)は欠如する。しかし、活性低下が軽い変異を有する症例では、初経発来や規則月経を呈することがある。エストロゲン補充が行われていない女性では、リモデリングの亢進を示す骨粗鬆症が認められる。女児では、外性器の男性化(Prader 分類II~IV/IV)が全例に認められる。ゴナドトロピンが上昇する前思春期頃から、卵巣に多房性嚢胞(一部は出血性)をみることがある。活性低下の強い症例(truncated type)では索状性腺をみることがある。3)男性男性患者では、出生時に症状はない。思春期に生理的な身長急伸を欠如するとともに、その後の伸長停止(骨端閉鎖)も欠如するのが特徴である。本来伸長が停止する16歳頃を過ぎても身長が伸び続け、高身長(時に2mを超える)・骨粗鬆症となって20歳台後半で診断される例が多い。しばしば、外反膝・類宦官症体型が認められる。肥満、内臓脂肪の増加、インスリン抵抗性、脂質異常症などの代謝異常を示すことも少なくない。また、巨精巣症・小精巣の報告もある。精子数減少を示唆する報告もあるが妊孕性の喪失はない。■ 分類初期の報告例は、アロマターゼ活性低下が高度でエストロゲンがほぼ欠損し、二次性徴を完全に欠如する症例(古典型)であった。その後、エストロゲン欠乏が軽度で、乳腺発育や月経発来といった二次性徴が部分的にみられる症例(非古典型)が報告された。遺伝子変異をtruncated variantsとnon-truncated variantとに分けて検討し、前者ではエストロゲン欠乏に関連する症状(原発性無月経や索状性腺)が強く、後者では症状が軽いとする報告もある。■ 予後本症の長期予後については不明であるが、これまでの情報を総合すると生命予後に直接影響を与えないと思われる。その一方で、エストロゲン低下に伴って生じる骨粗鬆症や脂質異常症などの代謝異常に対して、適切な管理を行い予防する必要がある。アロマターゼ活性低下の強い症例では、女性の妊孕能は低下する。活性低下の軽い症例の女性の妊孕性については不明である。男性患者では妊孕性の低下はみられない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床症状1)女性女性患者では、本症と診断されないまま無月経に対してエストロゲン投与が継続されていることがあり、その場合、臨床症状から本症を想定することは困難である。患児が本症に罹患している場合、妊娠中に母体の進行性男性化(活性低下の軽い例では欠如)と胎児外陰の男性化(全例にみられる)が診断の手掛かりになる。妊娠母体の男性化は、P450酸化還元酵素欠損症や妊娠黄体腫(母体卵巣)にもみられ鑑別が必要である。P450酸化還元酵素欠損症では、アロマターゼのほか複数のステロイド産生酵素の活性も低下し、性ステロイド以外のホルモンによる症状が出現する。2)男性妊娠母体の男性化症状とエストロゲン低値から胎児の罹患が疑われて、出生後早期に診断された男性患者も報告されているが、実際に出生時に診断される例は少ない。弟妹の女性発端者が手がかりとなって診断されることもある。思春期以降に身長の伸びが止まらず、高身長となって成人期に初めて診断されることが多い。思春期の身長急伸の欠如、成人期の骨端線閉鎖の欠如、高身長、骨粗鬆症が、本症を推定する手がかりとなる。肥満、内臓脂肪の増加、インスリン抵抗性、脂質異常症などの代謝異常の合併も診断の参考となる。■ ホルモン検査1)女性ゴナドトロピン値(FSH、LH)は成人に至るまで一貫して高値を示す。とくにFSH優位の高値を示すのが特徴である。一般に、出生後数週~6ヵ月頃にかけて、視床下部下垂体性腺系は生理的活性化(mini-puberty)を示し、ゴナドトロピンは一過性に上昇する。その後、視床下部下垂体性腺系は強く抑制される時期に入り、ゴナドトロピンは低値となる。前思春期に入ると抑制が徐々に解除され、ゴナドトロピンは上昇に転ずる。アロマターゼ欠損症のゴナドトロピンも同様の二相性変動を示すが、常に同年齢対照より高値を示す。アンドロゲン値も同年齢対照者より高く、同様の二相性の変動を示す。血中エストラジオールは一貫して同年齢対照より低値を示すが、基準域に近い値を示す症例もみられる。測定感度の問題もあり、エストラジオール単独での診断は難しい。FSH値の上昇は、エストロゲン欠乏や表現型の強さを反映し治療効果の指標になる可能性がある。2)男性FSHが高値を示す例は男性では60%で女性よりFSHの診断意義は低い。E2が測定感度以下となるのは男性患者の80%であり、除外診断には注意を要する。LHが高値を示す例は20%、Tが高値となるのは30%と少なく、除外診断には使いにくい。■ 遺伝子型本症の確定診断には、15q21.2にあるCYP19A1に活性喪失変異(loss-of-function mutation)を同定する。これまでに、1塩基置換によるミスセンス変異、ナンセンス変異、スプライシング異常の他、1〜数塩基の欠失や挿入などさまざまな変異が報告されている。ヘテロは無症状で、ホモまたは複合ヘテロで症状が認められ、常染色体潜性(劣性)遺伝を示す。変異は酵素活性に関連するエクソン9に比較的多く認められるが、エクソン2を除きすべてのエクソンにほぼ均等に認められる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)根本的な治療法はない。欠乏するエストロゲンによる諸症状・疾病の発生を予防するために長期のエストロゲン補充が行われる。■ 46,XX DSDほとんどが女性として育てられている。性自認は女性である。外陰形成術が施行される。性腺摘除が併施されることもある。二次性徴や骨量の獲得と維持を目的にエストロゲン(子宮を有する性成熟期女性ではプロゲスチンを併用)投与を行う。エストロゲン投与により、血清ゴナドトロピン値が正常化し、卵巣嚢胞は消失する。骨量も増加する。■ 46,XY最終身長の適正化と骨量増加・骨粗鬆症の予防を目的にエストロゲン投与を行う。思春期前からの治療では、少量のエストロゲン投与から開始し、漸増させて生理的時期での骨端閉鎖を促す。骨端閉鎖後は、経皮的にエストラジオール25μg/日を生涯にわたって投与する。思春期症例にエストロゲンを投与すると、身長の急伸、骨端閉鎖、骨量の増加といった生理的骨成長と同様の変化が認められる。成人では維持量の投与により、ゴナドトロピン値の正常化、脂質異常の改善、インスリン抵抗性の改善なども期待できる。4 今後の展望本症の発見は、骨におけるエストロゲンの生理的役割などの解明に大きく貢献した。エストロゲン補充により、症状の多くは軽減されるが、女性患者の妊孕性については回復が認められていない。本症の患者数は少なく、系統的な研究が困難である。5 主たる診療科内科、小児科、婦人科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター アンドロゲン過剰症(ゴナドトロピン依存性思春期早発症及びゴナドトロピン非依存性思春期早発症を除く)アロマターゼ欠損症は、小児慢性特定疾病対策事業においてアンドロゲン過剰症(ゴナドトロピン依存性思春期早発症およびゴナドトロピン非依存性思春期早発症を除く)の原因疾患の1つに包含されている。(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Shozu M, et al. J Clin Endocrinol Metab. 1991;72:560-566.2)Singhania P, et al. Bone Reports. 2022;17:101642.3)Stumper NA, et al. Clin Exp Rheumatol. 2023;41:1434-1442.4)Rochira V,et al. Nature Reviews Endocrinology 2009;5:559-568.公開履歴初回2023年8月29日

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PCI後のステント血栓症、P2Y12阻害薬+コルヒチンで減少~MACT Pilot Study

 PCI後の急性冠症候群(ACS)患者において、PCI翌日からアスピリンを中止、P2Y12阻害薬(チカグレロルまたはプラスグレル)に低用量コルヒチン(0.6mg/日)の併用が有効であることがMACT (Mono Antiplatelet and Colchicine Therapy) Pilot Studyより明らかになった。Journal of the American College of Cardiology Cardiovascular Interventions誌2023年8月14日号掲載の報告。 韓国・高麗大学九老病院のSeung-Yul Lee氏らは、ACS患者に対しPCI直後のP2Y12阻害薬単独療法へのコルヒチン併用は実行可能性があるものなのかを調査するために本研究を行った。対象者は薬剤溶出性ステントで治療されたACS患者を含む200例。PCI翌日、アスピリンは中止し、P2Y12阻害薬による維持療法に加え低用量コルヒチンを投与した。 主要評価項目は、3ヵ月後のステント血栓症の発生で、重要な副次評価項目は、退院前にVerifyNowで測定した血小板反応性と、高感度C反応性蛋白(hs-CRP)の1ヵ月後の減少率。 主な結果は以下のとおり。・登録症例200例中190例(95.0%)で3ヵ月の追跡調査を完了し、その間にステント血栓症(1例)とステント血栓症疑い(1例)が発生した(計2例、1.0%)。・全体の血小板反応性レベル(P2Y12反応単位[PRU]で測定)は27±42 PRUであり、血小板反応性が高い(>208 PRU)患者は1例のみだった。・hs-CRPレベルは、PCI後24時間の6.1mg/L(IQR:2.6~15.9)から1ヵ月後の0.6mg/L(IQR:0.4~1.2)に減少した(p<0.001)。・高炎症(hs-CRP≧2mg/L)の発生率は81.8%から11.8%に減少した(p<0.001)。

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ネオアジュバント/サンドイッチ療法レビュー【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第16回

第16回 ネオアジュバント/サンドイッチ療法レビュー参考John V Heymach JV,et al. Design and Rationale for a Phase III, Double-Blind, Placebo-Controlled Study of Neoadjuvant Durvalumab + Chemotherapy Followed by Adjuvant Durvalumab for the Treatment of Patients With Resectable Stages II and III non-small-cell Lung Cancer: The AEGEAN Trial. Clin Lung Cancer.2022;233:e247-e251. 術前デュルバルマブ・NAC併用+術後デュルバルマブによるNSCLCのEFS延長(AEGEAN)/AACR2023Wakelee H, et.al.Perioperative Pembrolizumab for Early-Stage Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med.2023;389:491-503.NSCLC周術期のペムブロリズマブ、EFS改善が明らかに(KEYNOTE-671)/ASCO2023Patrick M Forde PM,et.al. Neoadjuvant Nivolumab plus Chemotherapy in Resectable Lung Cancer. N Engl J Med.2022;386:1973-1985.NSCLCの術前補助療法、ニボルマブ追加でEFS延長(CheckMate-816)/NEJM周術期非小細胞肺がんに対する化学療法+toripalimabのEFS中間解析(Neotorch)/ASCO2023

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スマホによる介入、不健康な飲酒を抑制/BMJ

 不健康なアルコール使用を自己申告した大学生において、アルコール使用に対する介入としてスマートフォンのアプリケーションへのアクセスを提供することは、12ヵ月の追跡期間を通して平均飲酒量の抑制に有効であることが、スイス・ローザンヌ大学のNicolas Bertholet氏らが実施した無作為化比較試験の結果で示された。若年成人、とくに学生において、不健康なアルコール使用は発病や死亡の主な原因となっている。不健康なアルコール使用者に対する早期の公衆衛生的アプローチとして、世界保健機関(WHO)はスクリーニングと短期的介入を推奨しているが、スマートフォンによる介入の有効性については明らかではなかった。BMJ誌2023年8月16日号掲載の報告。スイスの大学生1,770例を介入群と対照群に無作為化 研究グループは、スイスの4つの高等教育機関(ローザンヌ大学、スイス連邦工科大学ローザンヌ校、エコール・オテリエール・ド・ローザンヌ、University of Applied Sciences and Arts Western Switzerland’s School of Health)において参加者を募集した。アルコール使用障害特定テスト-簡易版(AUDIT-C)によるスクリーニングで不健康なアルコール使用が陽性(スコアが男性4点以上、女性3点以上)と判定され、試験への参加に同意した18歳以上の学生1,770例を、ブロック法で介入群(884例)と対照群(886例)に1対1の割合で無作為に割り付けた(盲検化)。介入群では、スマートフォンを用いたアルコール使用に対する簡単な介入(アプリケーションの提供)を行った。 主要アウトカムは、6ヵ月後における標準アルコール飲料(基準飲酒量[ドリンク]、スイスの1ドリンクは純粋エタノール10~12g相当)の1週間の飲酒数量。副次アウトカムは過去30日間の大量飲酒日数(男性5ドリンク以上、女性4ドリンク以上)、その他のアウトカムは、1回の最大飲酒量、アルコール関連事象、学業成績。それぞれ3ヵ月後、6ヵ月後および12ヵ月後に評価した。スマホによる介入で、1週間の基準飲酒量、大量飲酒日数、1回の最大飲酒量が低下 2021年4月26日~2022年5月30日の間に、1,770例が無作為化された(介入群884例、対照群886例)。平均年齢は22.4歳(SD 3.07)、女性が958例(54.1%)、学部生1,169例(66.0%)、修士課程533例(30.1%)、博士課程43例(2.4%)、その他の高等教育課程25例(1.4%)で、ベースラインの1週間の平均基準飲酒量は8.59ドリンク(SD 8.18)、大量飲酒日数は3.53日(同4.02)であった。 1,770例の追跡率は、3ヵ月後96.4%(1,706例)、6ヵ月後95.9%(1,697例)、12ヵ月後93.8%(1,660例)であった。 介入群の学生884例のうち、738例(83.5%)がアプリケーションをダウンロードした。介入は、1週間の基準飲酒量(発生率比:0.90、95%信頼区間[CI]:0.85~0.96)、大量飲酒日数(0.89、0.83~0.96)、1回の最大飲酒量(0.96、0.93~1.00)に関して有意な全体的効果を示し、追跡期間中の飲酒アウトカムは介入群で対照群より有意に低かった。一方、介入はアルコール関連事象や学業成績には影響しなかった。

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アルツハイマー病関連遺伝子の保有者では認知機能に先立ち嗅覚が低下か

 アルツハイマー病に関連するApoE遺伝子のε4アレル(ApoE ε4)を保有する人は、記憶や思考に問題が生じるはるか前に嗅覚が低下している可能性のあることが、米シカゴ大学のMatthew GoodSmith氏らによる研究で示唆された。GoodSmith氏は、「においを感知する能力の検査が、後年になって認知機能に生じる問題を予測する上で有用な可能性がある」と述べている。研究の詳細は、「Neurology」に7月26日掲載された。 ApoEはアミロイドβの蓄積や凝集に関わるタンパク質である。ApoEには、3つの主要なアイソフォーム(ApoE2、ApoE3、ApoE4)が存在し、それぞれ、ε2、ε3、ε4の3種類のアレルによりコードされている。ε4アレルを保有する人ではアルツハイマー病発症のリスクが大幅に上昇することが知られている。 GoodSmith氏らは今回、米国の在宅高齢者を対象にした調査研究であるNational Social Life, Health and Aging Project(NSHAP)のデータを用いて、ApoE ε4と嗅覚の感度、嗅覚の同定能力、および認知機能との関連を調査した。 対象者の認知機能と嗅覚の感度については2010年と2015年に、嗅覚の同定能力については2005年、2010年、および2015年に評価されていた。また、2010年に採取されたDNAサンプルから、遺伝子型の判定も行われていた。865人が嗅覚の感度、1,156人が嗅覚の同定能力、864人が認知機能に関する評価を受けていた。対象者をApoE ε4の保有者と非保有者で二分し、さらに年齢層により層別化して解析を行った。 その結果、ApoE ε4保有者では、嗅覚の感度が65〜69歳ですでに顕著に低下していたが、その後の経時的な低下速度は非保有者の方が速いことが明らかになった。これに対し、ApoE ε4保有者で嗅覚の同定能力に明らかな低下が認められたのは75〜79歳になってからだったが、その後の低下速度は、非保有者よりも速かった。さらに、研究開始時点では、ApoE ε4保有者と非保有者の認知機能は同等であったが、予想された通り、認知機能の経時的な低下速度は、ApoE ε4保有者の方が速かった。 GoodSmith氏は、「これらの関連の根底にあるメカニズムを明らかにすることは、神経変性における嗅覚の役割を理解する上で役立つだろう」と話す。同氏はさらに、「嗅覚がどの程度低下すれば将来の認知機能の低下が予測できるのかを明らかにするには、さらなる研究でこれらの結果を検証する必要がある。しかし、今回得られた結果は、特に認知症の早期発見を目的とした研究においては、有望なものとなるだろう」と述べている。

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