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検索結果 合計:4245件 表示位置:361 - 380

361.

多くの人は受動喫煙に気が付いていない

 自分は副流煙(他人が吸っているタバコの燃焼部分から立ち上る煙)にさらされていないと思っている人の多くが、実際には副流煙にさらされている(受動喫煙)ことが、米国成人を対象に行われた新たな研究で明らかになった。血液検査では、調査対象者の半数以上が過去数日内に副流煙にさらされていたことが示されたにもかかわらず、大半はその自覚がなかったのだ。米フロリダ大学College of Public Health and Health ProfessionsのRuixuan Wang氏らによるこの研究の詳細は「Nicotine & Tobacco Research」に8月30日掲載された。 Wang氏は、「副流煙曝露に安全なレベルはなく、長期間の曝露は、冠動脈疾患や呼吸器疾患、がんなどの多くの慢性疾患のリスクを高める可能性がある。われわれは、人々が防御措置を講じることができるように、自分が副流煙に曝露していることに気付いてほしいと思っている」と同大学のニュースリリースで述べている。 今回の研究では、2013年から2020年にかけての米国国民健康栄養調査(NHANES)への参加者から抽出した非喫煙者1万3,503人のデータが分析された。参加者のうち、あらゆるタバコ製品への曝露(ニコチン曝露)はないと報告したが、血清中のコチニン(ニコチンの体内での代謝産物)が検出可能な値(>0.015ng/mL)であった場合を「ニコチン曝露の過小報告」と見なし、これに関連する社会人口統計学的因子や慢性疾患について検討した。 その結果、参加者の22.0%がニコチン曝露のあったことを自己報告し、51.2%で血清コチニンレベルからニコチン曝露が確認され、34.6%がニコチン曝露を過小報告していたことが明らかになった。血清中のコチニンが検出可能レベルだった参加者に占める過小報告者の割合は67.6%に上った。男性、非ヒスパニック系の黒人、その他の人種(アジア系米国人、ネイティブ・アメリカン、太平洋諸島系米国人)、心血管疾患のない人は、ニコチン曝露を過小報告する傾向が強かった。血清コチニンレベルの中央値は、ニコチン曝露を自己報告した人で0.107ng/mLであったのに対し、ニコチン曝露を過小報告した人で0.035ng/mLだった。 Wang氏は、「この研究結果は、ニコチン曝露リスクのあるグループに的を絞った介入の考案に役立つと思われる」と話す。 なぜ、参加者の多くがニコチンに曝露していることに気が付かなかったのだろうか。その理由について、論文の上席著者であるフロリダ大学健康アウトカム・生物医学情報学分野のJennifer H. LeLaurin氏は、「低レベルの曝露であれば、気付かない可能性もある。公共の場で、周囲の誰かがタバコを吸っていることに気が付かなかったという状況は考えられる。あるいは、わずかな曝露であれば、忘れてしまう可能性もある」と分析する。同氏はさらに、「研究参加者の中には、スティグマに対する懸念から、自分が副流煙にさらされていることに気付いていたにもかかわらず、それを報告しなかった人がいる可能性もある」と述べている。 なお、研究グループによると、今回の結果を米国全土に当てはめると、およそ5600万人が、気付かないうちに有害な副流煙に日常的にさらされていると計算されたとのことだ。

362.

クロザピン治療中の治療抵抗性統合失調症の喫煙患者、再発リスクにバルプロ酸併用が影響

 喫煙習慣とバルプロ酸(VPA)併用がクロザピンによる維持療法の臨床アウトカムに及ぼす影響を調査した研究は、これまでなかった。岡山県精神科医療センターの塚原 優氏らは、クロザピンを投与している治療抵抗性統合失調症患者の退院1年後の再発に対する喫煙習慣とVPA併用の影響を調査するため、本研究を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年9月8日号の報告。 日本国内の2つの3次精神科病院において入院中にクロザピン投与を開始し、2012年4月~2022年1月に退院した治療抵抗性統合失調症患者を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。再発の定義は、退院1年間の精神疾患増悪による再入院とした。喫煙習慣とVPA併用が再発に及ぼす影響の分析には、多変量Cox比例ハザード回帰分析を用いた。喫煙習慣とVPA併用との間の潜在的な相互作用を調査するため、サブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者192例中、69例(35.9%)が再発基準を満たした。・喫煙習慣は、独立して再発リスクを増加させたが(調整ハザード比[aHR]:2.27、95%信頼区間[CI]:1.28~4.01、p<0.01)、喫煙習慣とVPA併用の有無との間に再発リスクに関する有意な相互作用が認められた(p-interaction=0.015)。・VPAの併用を避けることで、喫煙習慣に関連する再発リスク増加を効果的に修正する可能性が示唆された。・喫煙患者のうち、VPAを併用している患者(aHR:5.32、95%CI:1.68~16.9、p<0.01)では、併用していない患者(aHR:1.41、95%CI:0.73~2.70、p=0.30)と比較し、再発リスクが高かった。 著者らは「この結果により、喫煙習慣とVPA併用により、退院後の再発リスクが高まる可能性が示唆された。クロザピンの血中濃度低下など、これらの所見の根底にあるメカニズムを解明するためにも、さらなる研究が求められる」としている。

363.

腫瘍径の小さいER+/HER2-乳がんへの術後ホルモン療法は必要か

 マンモグラフィ検査の普及により、腫瘍径の小さな乳がんの検出が増加した。エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性(ER+/HER2-)のT1a/bN0M0乳がんにおける術後内分泌療法(ET)の必要性は明らかでない。広島大学の笹田 伸介氏らは同患者における術後ETの有効性を評価、Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年9月9日号に報告した。 本研究では、2008年1月~2012年12月にJCOG乳がん研究グループ42施設で手術を受けたER+/HER2-のT1a/bN0M0乳がん患者のデータを後ろ向きに収集した。術前補助全身療法を受けた患者とBRCA陽性患者は除外された。主要評価項目は遠隔転移の累積発生率で、両側検定が用いられた。 主な結果は以下のとおり。・適格患者4,758例(T1a:1,202例、T1b:3,556例)中3,991例(83%)に標準的な術後ETが実施された。・追跡期間中央値は9.2年。遠隔転移の9年累積発生率はETありで1.5%、ETなしで2.6%だった(部分分布ハザード比[SHR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.32~0.93)。・多変量解析の結果、遠隔転移の独立したリスク因子は、ET歴なし、乳房切除術、高悪性度、およびリンパ管侵襲だった。・9年全生存率はETありで97.0%、ETなしで94.4%だった(調整ハザード比:0.57、95%CI:0.39~0.83)。・術後ETは同側(9年発生率:1.1% vs.6.9%、SHR:0.17)および対側の乳がん発生率を減少させた(9年発生率:1.9% vs.5.2%、SHR:0.33)。 ER+/HER2-のT1a/bN0M0乳がん患者の予後は良好であり、臨床リスクによって層別化されることが確認された。また術後ETは、小さな絶対リスク差で遠隔転移の発生率と全生存率を改善した。著者らは、とくに低悪性度でリンパ管侵襲のない患者において、術後ET省略の検討を支持する結果とまとめている。

364.

治療抵抗性うつ病、esketamine点鼻薬vs.クエチアピン/NEJM

 治療抵抗性うつ病に対し、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)との併用において、esketamine点鼻薬はクエチアピン徐放剤と比較して8週時の寛解率が有意に高かった。ドイツ・Goethe University FrankfurtのAndreas Reif氏らが、24ヵ国171施設で実施された第IIIb相無作為化非盲検評価者盲検実薬対照試験「ESCAPE-TRD試験」の結果を報告した。治療抵抗性うつ病(一般的に、現在のうつ病エピソード中に2つ以上の連続した治療で有効性が得られないことと定義される)は、寛解率が低く再発率が高い。治療抵抗性うつ病患者において、SSRIまたはSNRIとの併用投与下で、クエチアピン増強療法と比較したesketamine点鼻薬の有効性と安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌2023年10月5日号掲載の報告。SSRIまたはSNRIへのesketamine点鼻薬併用をクエチアピン増強療法と比較 試験対象者は、30項目の観察者評価によるうつ病症候学評価尺度(IDS-C)(スコア範囲:0~84、高スコアほど重症)のスコアが34以上、現在使用中のSSRIまたはSNRIを含め、少なくとも2つの異なるクラスの抗うつ薬による治療を2~6回連続して受けるも無効(症状の改善が25%未満)の、18~74歳の治療抵抗性うつ病患者であった。 研究グループは、被験者をesketamine群またはクエチアピン群に1対1の割合で割り付け、現在使用中のSSRIまたはSNRIと併用投与した(初期治療期8週間、維持期24週間、計32週間)。esketamine群への点鼻薬投与(鼻腔内噴霧)は可変用量(製品特性の概要に即して)にて、クエチアピン群には徐放剤を投与した。 主要エンドポイントは、無作為化後8週時点における寛解で、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)(範囲:0~60、高スコアほど重症)のスコアが10点以下と定義した。また、重要な副次エンドポイントは、8週時点で寛解後32週時まで再発がないこととした。 有効性解析対象集団は無作為化されたすべての患者(ITT)集団とし、治療を中止した患者は非寛解または再発とみなした。主要エンドポイントおよび重要な副次エンドポイントの解析は、年齢(18~64歳vs.65~74歳)および前治療数(2 vs.3以上)で調整したCochran-Mantel-Haenszelカイ二乗検定を用い治療群間を比較した。8週時点の寛解率、esketamine群27.1%vs.クエチアピン群17.6% 2020年8月26日~2021年11月5日の間に、676例がesketamine群(336例)およびクエチアピン群(340例)に割り付けられた。 8週時の寛解率は、esketamine群27.1%(91/336例)、クエチアピン群17.6%(60/340例)であり、esketamine群が有意に高かった(補正後オッズ比[OR]:1.74、95%信頼区間[CI]:1.20~2.52、p=0.003)。また、8週時に寛解後32週時まで再発が確認されなかった患者も、esketamine群が336例中73例(21.7%)、クエチアピン群が340例中48例(14.1%)で、esketamine群が多かった(補正後OR:1.72、95%CI:1.15~2.57)。 32週間の治療期間において、寛解した患者の割合、奏効(MADRSスコアがベースラインから50%以上の改善、またはMADRSスコアが10点以下)した患者の割合、およびベースラインからのMADRSスコアの変化量も、esketamine群のほうが好ましい結果であった。 有害事象の発現率はesketamine群91.9%、クエチアピン群78.0%、重篤な有害事象の発現率はそれぞれ5.7%および5.1%で、安全性プロファイルは既報と一致していた。

365.

早期静脈栄養なしのICU患者、厳格な血糖コントロールは有用か?/NEJM

 集中治療室(ICU)に入室した早期静脈栄養を受けていない重症患者では、非制限的で寛容な血糖コントロールと比較して厳格な血糖コントロールは、ICUでの治療を要した期間や死亡率に影響を及ぼさないことが、ベルギー・ルーベン・カトリック大学病院のJan Gunst氏らが実施した「TGC-Fast試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2023年9月28日号に掲載された。ベルギーの医師主導型の無作為化対照比較試験 TGC-Fast試験は、ベルギーの2つの大学病院と1つの地区病院の11のICUで実施された医師主導型の無作為化対照比較試験であり、2018年9月~2022年8月に参加者のスクリーニングを行った(Research Foundation-Flandersなどの助成を受けた)。 早期静脈栄養を受けていないICU入室患者を、非制限的血糖コントロール群または厳格血糖コントロール群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。非制限的血糖コントロール群では、血糖値が215mg/dL(11.9mmol/L)を超えた場合にのみインスリンの投与を行い、厳格血糖コントロール群では、LOGICインスリンアルゴリズムを用い、目標血糖値を80~110mg/dL(4.4~6.1 mmol/L)に設定した。静脈栄養は両群とも、1週間実施しなかった。 主要アウトカムは、ICUでの治療を要した期間とし、ICUから生存退室するまでの期間に基づいて算出した。安全性アウトカムは90日死亡率であった。 9,230例を登録し、4,622例を非制限的血糖コントロール群(年齢中央値67歳[四分位範囲[IQR]:56~75]、男性62.8%)、4,608例を厳格血糖コントロール群(67歳[57~75]、63.6%)に割り付けた。ベースラインの血糖値中央値は、非制限的血糖コントロール群が143 mg/dL(IQR:120~170)、厳格血糖コントロール群は142mg/dL(121~168)であった。朝の血糖値が低く、1日インスリン用量が多い 非制限的血糖コントロール群に比べ厳格血糖コントロール群は、ICU入室中の朝の血糖値中央値が低く(140mg/dL[IQR:122~161]vs.107mg/dL[98~117]、群間差:-32mg/dL[95%信頼区間[CI]:-33~-32])、インスリンの用量中央値が高かった(0.0単位/日[IQR:0.0~5.6]vs.24.8単位/日[14.8~39.9]、群間差:21.0単位/日[95%CI:20.5~21.5])。 重症低血糖(<40mg/dL[<2.2mmol/L])の発生は、非制限的コントロール群のほうが少なかった(31例[0.7%]vs.47例[1.0%]、相対リスク:1.52[95%CI:0.97~2.39])。 ICUでの治療を要した期間(主要アウトカム)は、両群間に差を認めなかった(厳格血糖コントロールで生存退室が早くなるハザード比[HR]:1.00、95%CI:0.96~1.04、p=0.94)。また、90日死亡率にも差はなかった(非制限的血糖コントロール群468例[10.1%]vs.厳格血糖コントロール群486例[10.5%]、HR:1.04、95%CI:0.92~1.17、p=0.51)。 事前に規定された8項目の副次アウトカムの解析では、新規感染症の発生率、呼吸補助の時間、血行動態補助の時間、生存退院までの期間、ICU内死亡、院内死亡は、いずれも両群間に差はなかったのに対し、重症急性腎障害および胆汁うっ滞性肝機能障害は、厳格血糖コントロール群で少ないことが示唆された。 著者は、「本研究でICUに入室した早期静脈栄養を受けていない重症患者では、先行研究で静脈栄養を受けた重症患者に比べ、低血糖の重症度が軽度であった。また、コンピュータアルゴリズムによって空腹時血糖値を正常範囲に低下させることで、ICUでの治療を要した期間や死亡率に影響を及ぼさずに、医原性低血糖を回避できた」としている。

366.

仕事のストレスは男性の心疾患リスクを高める

 過酷なのにやりがいの感じられない仕事は、男性の心臓の健康に大きな打撃を与える可能性のあることが、6,400人以上を対象にした大規模研究で示唆された。仕事にストレスを感じている男性の心疾患発症リスクは、仕事への満足度がより高い同世代の男性の最大で2倍に達することが明らかになったという。CHU de Quebec-Universite Laval Research Center(カナダ)のMathilde Lavigne-Robichaud氏らによるこの研究の詳細は、「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に9月19日掲載された。 この研究は、心疾患のない6,465人(男性3,118人、女性3,347人)のホワイトカラー(平均年齢45.3±6.7歳)を2000年から2018年まで追跡して、職場ストレイン(仕事の要求度は高いが裁量権や支援が不足している状態)や、努力報酬不均衡(effort-reward imbalance;ERI、努力が適切な報酬や昇進に結び付いていないと感じている状態)と心疾患発症との関連を検討したもの。職場ストレインとERIはそれぞれ信頼性と妥当性が示されている質問票により評価された。 中央値18.7年の追跡期間中に男性571人と女性265人に冠動脈疾患(CHD)が生じた。解析の結果、職場ストレインまたはERIのいずれかを感じている男性では、仕事のストレスに曝露していない(軽度の職場ストレインはあるが報酬は低くない)男性に比べて、CHDの発症リスクが49%(ハザード比1.49、95%信頼区間1.07〜2.09)、職場ストレインとERIの両方を感じている男性では103%(同2.03、1.38〜2.97)、有意に高かった。これらの結果は、教育レベルや婚姻状態、喫煙や飲酒の習慣、糖尿病や高血圧などの健康状態を考慮しても変わらなかった。これに対して、女性では、職場ストレインやERIとCHD発症との間に有意な関連は認められなかった。 研究グループは、これらの結果は、仕事のストレスが男性の心臓には打撃を与えるが、女性の心臓には影響を及ぼさないことを証明するものではないと話す。それでも、成人が1日の大半の時間を費やす職場でのストレスが心疾患の原因になり得る理由はあるという。その一つとしてLavigne-Robichaud氏は、慢性的なストレスが心血管系に直接的に影響を及ぼし得ることを指摘する。「職場ストレインとERIは、心拍数の増加、血圧の上昇、心血管の狭窄を含む身体的反応を引き起こす。これらが直接的に心臓に負荷をかけ、血流や心拍リズムに問題が生じ、最終的に心疾患の発症リスクが高まる」と説明する。 仕事のストレスが、それほど直接的でない方法で心臓に害を与えることもあるという。Lavigne-Robichaud氏は、「仕事でストレスを抱えていると、健全な食生活を送り、定期的に運動を行い、リラックスする時間を見つける能力が妨げられる可能性がある」と指摘し、「健康的なライフスタイルを送ることが困難な状況下では、ストレスが心血管系に及ぼす直接的な影響がいっそう顕著になる可能性がある」と付け加えている。同氏は、この研究結果は、職場は従業員の心臓の健康を促進することができ、また促進すべきであるとする、すでに山と積み上げられたエビデンスに加わるものだと述べている。 なお、本研究で、女性では仕事のストレスとCHDとの間に関連が認められなかった点についてLavigne-Robichaud氏は、「この研究での女性のCHD症例が男性の半分程度だったように、女性は、人生の後半に心疾患を発症する人が男性よりも多い。そのため、仕事のストレスと心疾患との間に明確な関連性を見出しにくくなっている可能性がある」と説明している。 Lavigne-Robichaud氏によると、米国心臓協会(AHA)などの団体は、すでに雇用主に対して、健康診断の実施や栄養価の高い食事選択肢の提供などを含む「包括的なウェルネスプログラム」を推奨しているとのことだ。「われわれの研究は、これらのプログラムに仕事のストレス軽減を目的とした介入を取り入れることが、心疾患の予防に役立つ可能性を示唆するものだ」と述べている。

367.

第184回 熟睡を促す音刺激で心機能が向上しうる

熟睡を促す音刺激で心機能が向上しうる生きていくのに睡眠は不可欠で、ぐっすりと眠ることは健康を保つのにとりわけ重要です。より深い眠りに落ちていることを示す脳の活動である徐波(slow wave)を音で増やすことで高齢者の記憶を改善しうることが先立つ研究で示されています1)。また、軽度認知障害(MCI)患者の睡眠中にピンクノイズ※というかすかな音を流したところ徐波が増え、44の単語対を覚える記憶検査成績が改善しました2)。※ピンクノイズ:周波数が高いほどよりもの静か(周波数が1オクターブ上がるごとに音圧が3デシベルずつ下がる)という特性がある音(擦れる木の葉、雨、滝、心拍の音など)。そのピンクノイズがどうやら心臓機能の改善効果も有するらしいことがスイスの連邦工科大学やチューリッヒ大学のチームによる新たな試験で示されました3)。試験に参加した健康な男性18人には睡眠研究所で間を置いて3泊してもらい、そのうちの2泊ではピンクノイズを流し、1泊ではそうしませんでした。寝ている間の被験者の脳の活動、血圧、心臓の活動が記録され、深い睡眠に至ったことを示す合図があった時点から10秒間のピンクノイズが10秒間の間を挟んで4時間繰り返しコンピューターから発せられました。その結果、ピンクノイズが発せられている間は徐波が増え、翌朝の心エコー検査で左心室の伸縮機能の向上が示唆されました。今回の試験の被験者は全員男性で、年齢は30~57歳でした。男性に限ったのは女性に比べてより均一だからです。被験者と同年齢層の女性は睡眠に大きな影響を及ぼす月経周期や閉経があり、今回のような取っ掛かりの試験ではせっかくの効果がそれらの影響で検出できない恐れがありました4)。今後の試験では女性を含めた検討が必要なことを研究者は承知しています。睡眠や心血管の調子の明らかな性差が判明しつつあり、そういう性差を考慮した治療の開始が重要視されるようになっています。ピンクノイズやそれに似た脳刺激手段で将来的には心血管疾患の治療を向上させることができるかもしれません。また、心血管分野の治療のみならず運動選手にとっても意義があると研究者は考えています。ピンクノイズのような徐波睡眠の亢進手技で心機能を改善し、きつい練習や競技の後の回復を早めてより好調にできる可能性があります。研究者らはさらに先を見据えており、ピンクノイズよりもっと強力な刺激で心血管系を上向かせる手段も目指しています。今回の試験の筆頭著者であるStephanie Huwiler氏は試験を指揮したCaroline Lustenberger氏らとともに睡眠刺激の事業EARDREAMを立ち上げています。上述したとおり徐波睡眠を底上げすることは認知機能障害患者の記憶改善効果があるかもしれず、EARDREAMはアルツハイマー病患者の早期診断や睡眠不調を回復させる睡眠亢進手段に取り組んでいます5)。また、アルツハイマー病のみならず今回の成果の臨床応用に向けた開発も目指しています4)。参考1)Papalambros NA, et al. Front Hum Neurosci. 2017;11:109.2)Papalambros NA, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2019;6:1191-1201.3)Huwiler S, et al. Eur Heart J. 2023 Oct 05. [Epub ahead of print]4)Increased deep sleep benefits your heart / ETH Zurich5)Startups developing tailored sleep interventions for Alzheimer disease, aquafarming using mycellium technology, regeneration through protein engineering, a vital patient data stream, and revolutionizing open source each win CHF 10,000 / Venture Kick

368.

重度の精神疾患に対する入院リハビリテーションの有用性

 精神疾患や気分障害は、重度の機能障害、早期死亡リスク、社会的および経済的負担と関連している。イタリア・"G. D'Annunzio" UniversityのStefania Chiappini氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者と気分障害患者を対象に、イタリアの精神科入院施設で実施された心理社会的、心理的、リハビリテーション的な介入の有効性を評価した。その結果、重度の精神疾患患者に対する入院リハビリテーション介入は、効果的かつ有用である可能性が示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年8月30日号の報告。 本件は、イタリア・ローマの精神科病院であるVilla Maria Piaにおいて、2022年に実施されたレトロスペクティブ観察研究である。ICD-9-CMで統合失調症スペクトラム障害および気分障害と診断された患者を対象に、入院時と治療終了時に簡易精神症状評価尺度(BPRS)および機能の全体的評価尺度(GAF)を用いて評価を行った。介入には、学術的チームが関与して行われ、個人および集団による介入を分析に含めた。群間の連続変数の比較は、独立サンプルによるt検定を用い、変数間の相関はスピアマン相関係数を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・研究対象患者数は141例(平均年齢:51.3±12.4歳、男性患者:73例、女性患者:68例)であった。・心理社会的介入およびリハビリテーション介入に積極的に参加した患者は85例(60.3%)であり、参加していない患者と比較し、退院時に機能や症状の改善が認められた(delta GAFは、心理社会的介入に参加した参加者において有意に高かった。t=-2.095、p=0.038)。・介入回数/入院日数を指標とし分析すると、心理社会的介入の頻度は、活動に参加したサンプルにおける患者の機能の改善と正の相関が認められた(r=0.272、p=0.012)。とくに、心理療法(r=0.202、p=0.017)と集団サポート(r=0.188、p=0.025)において、顕著であった。・統合失調症スペクトラム障害(37例)と気分障害(48例)をそれぞれ評価すると、GAFの改善と心理社会的介入との正の相関は、統合失調症スペクトラム障害のみで認められた。・BPRSに関しては、全体または疾患別において、これらの相関が認められなかった。 著者らは「重度の精神疾患患者に対する入院リハビリテーション介入の長期的なQOL、社会機能への効果を明らかにするためには、さらなる調査が求められる」としている。

369.

運動誘発性ホルモンがアルツハイマー病の抑制に有望か

 運動中に分泌されるホルモンを用いた治療法が、アルツハイマー病(AD)に対する次の最先端治療となるかもしれない。運動により骨格筋から分泌されるイリシン(irisin)が、ADの特徴であるアミロイドβの蓄積を減少させる可能性が、米マサチューセッツ総合病院(MGH)Genetics and Aging Research UnitのSe Hoon Choi氏らの研究で示唆された。この研究の詳細は、「Neuron」に9月8日掲載された。 運動がアミロイドβの蓄積を減少させることは、ADモデルマウスを用いた研究によりすでに示されていたが、そのメカニズムは不明だった。運動をすると、骨格筋からのイリシン分泌が促されて、その血中濃度が上昇する。イリシンには脂肪組織中の糖と脂質の代謝を調節し、また、白質脂肪組織の褐色脂肪化を促すことでエネルギー消費量を増大させる働きがあると考えられている。過去の研究で、イリシンはヒトやマウスの脳に存在するが、AD患者やADモデルマウスではそのレベルが低下していることが報告されている。 Choi氏らは以前の研究で、ADの3次元細胞培養モデルを開発し、ADの主要な特徴であるアミロイドβの蓄積とタウタンパク質のもつれを再現させることに成功していた。今回の研究では、この3次元細胞培養モデルを用いて、イリシンが脳内のアミロイドβの蓄積に及ぼす影響について検討した。 その結果、イリシンを投与することで、脳のグリア細胞であるアストロサイトから分泌されるアミロイドβ分解酵素のネプリライシンのレベルと活性化が上昇し、これによりアミロイドβレベルが著しく低下することが明らかになった。過去の研究では、運動やアミロイドβの減少につながるその他の条件にさらされたADモデルマウスの脳では、ネプリライシンのレベルが上昇することが確認されている。 イリシンがアミロイドβレベルを低下させる、より詳細なメカニズムも明らかになった。例えば、インテグリンαVβ5という受容体を介したイリシンのアストロサイトへの結合が引き金となって、アストロサイトからのネプリライシンの分泌量が増えることが確認された。さらに、イリシンがこの受容体と結合することで、重要な2つのタンパク質〔ERK(細胞外シグナル制御キナーゼ)、STAT3(シグナル伝達兼転写活性化因子3)〕に関わるシグナル伝達経路が阻害されることも示され、これがネプリライシンの活性化を増強させる上で重要なことが示唆された。 マウスを用いた過去の研究では、血流に注入されたイリシンが脳内に到達することが示されている。このことは、イリシンが治療薬として有用となる可能性のあることを意味する。論文の責任著者であり、Genetics and Aging Research UnitのディレクターであるRudolph Tanzi氏は、「われわれが得た結果は、運動により誘発されたイリシンの分泌が主要なメディエーターとなってネプリライシンレベルが上昇し、アミロイドβの蓄積が減少することを示すものだ。この結果は、ADの予防法や治療法の開発において、イリシンとネプリライシンに関わる経路が新たなターゲットとなり得ることを示唆している」と述べている。

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妻の迅速な対応で脳梗塞から完全に回復した郵便配達員

 月曜日の午前5時15分、米国カリフォルニア州に住む男性、Levan Singletaryさんの目覚ましが鳴った。道路の清掃が始まる前に、路上に止めてある車を移動しなければいけない時間だった。アパートのドアを出て2階から階段を駆け下り、約200メートル歩いた所にあった車を移動。自宅に戻ってから、郵便局への出勤前にもう1時間、ひと眠りしようとベッドに入った。妻のAngelaさんは既に目を覚ましていたが、まだベッドの中にいた。「Van? 今日は休みじゃなかったの?」と彼女は尋ねた。彼女は夫のことを普段、Vanと呼んでいる。 Levanさんは普段、月曜日は非番だったが、その日は出勤を指示されていることを妻に伝えた。彼は郵便配達員としての仕事以外に、市営公園などで週に4日、夜間の仕事もしていた。Angelaさんは、Levanさんが仕事を抱え過ぎていると感じ、「非番の日の出勤など断ればよかったのに」と語った。すると、LevanさんがAngelaさんへ腕を伸ばし、身を寄せようとしてきた。Angelaさんは、会話の内容と脈絡のない夫の行動を、奇妙なものに感じた。 次の瞬間、Levanさんが何か言いたげに、言葉にならない声を発し、同時に体が痙攣した。「どうしたの?」との妻の問いに答えはなかった。「Van、大丈夫?」と重ねて問うと、夫は「大丈夫だよ」と答えた。確かに普段と変わらない様子だったが、体が硬直しているような感じもした。そこでAngelaさんは、夫に「座ってみて?」と、ベッドに腰掛けるように指示した。Levanさんは、その動作ができなかった。 Angelaさんは、自分の年老いた父親が以前、脳梗塞になった時のことを思い出した。Levanさんはまだ54歳で健康上の問題はなかったが、彼女の頭に浮かんだのは父親のその時の症状だった。「Van、あなたは脳梗塞を起こしているみたいよ」と彼女は夫に語った。Levanさん自身はいつも通りだと思ったが、数秒後に左半身が麻痺し始めた。Angelaさんはすぐに911番に通報し、「夫が脳梗塞を起こしているようだ」と状況を伝えた。 救急要請後、彼女は夫を病院に連れて行く準備に大わらわとなった。パジャマ姿だったため、とりあえず靴下を履かせ、タオルで顔を拭きローションを塗って、ひげを剃った。「どうなるのかな?」という夫の質問には、「大丈夫よ」とだけ言葉を返した。一方でLevanさんは、「救急治療室で治療が終わったら、すぐに仕事に行けるように服を整えておいて」と妻に頼んだ。Angelaさんは、「今日は仕事には行かないことになると思うよ」と答えた。 救急隊は15分かからずに到着し、約15分離れた脳卒中センターのある病院に彼を搬送した。病院到着後、血栓溶解薬による治療が行われた。血栓溶解薬は、脳梗塞発症から3~4.5時間以内であれば投与可能な薬剤で、この治療が行われた場合、良好な予後を期待できる。Levanさんの場合、発症から約1時間後の投与だった。 変化はすぐに現れた。Angelaさんが病院に到着した時、Levanさんは既に起き上がって朝食を食べていた。医師たちは、Angelaさんの素早い的確な行動を称賛した。脳梗塞発症から治療開始までの時間が短かったことが、Levanさんの回復に大きな違いをもたらしたという。 医師の説明によると、Levanさんの脳梗塞の原因は頸動脈の裂傷とのことで、いくつかの治療選択肢が示された。翌日、夫婦2人で保険会社からの連絡を待つ間に、Levanさんに二度目の脳梗塞が発生した。そばにいたAngelaさんは、その兆候に気付き直ちに看護師を呼んだ。緊急手術が施行され、頸動脈の裂傷の修復とステントの留置が行われた。 Levanさんはその後、経過観察のために数日間入院した。ただし、理学療法士や言語療法士が関与すべき障害は起こらず、同じ週の土曜日には自宅に戻っていた。翌日曜日、Levanさんは自宅周辺を歩き回り、月曜日の出勤に向けて体調を整えようとした。しかし、Angelaさんは「仕事のことは考えないで」と伝え、彼の母親も彼女の考えに同意した。 5週間後、Levanさんは郵便配達の任務に復帰した。その日、自宅に帰った時刻は、以前の帰宅時刻よりも2時間半ほど遅かった。帰宅が遅れた理由は、休んでいる最中に職場の人々から寄せられていた応援メッセージを読み、そしてその人たち全員に感謝を述べていたためだった。 この出来事以来、LevanさんとAngelaさんの生活にはいくつかの変化があった。まず、Levanさんの仕事内容が郵便配達から、ほかのスタッフをトレーニングするポジションに変わった。ただし、公園での夜間業務などはまだ続けている。「私は生来、一労働者として生きてきたが、これからは少し仕事のペースを落とすつもりだ」と彼は語っている。一方、Angelaさんは、2人の息子を育てた後は仕事を離れていたため、今後は夫への依存を減らす必要があると考えている。「私たちは結婚して33年、その5年前からともに暮らしてきたが、その間、主に彼の収入に頼っていた。これからは私も仕事に就いて家計を支えなければいけない」と彼女は話す。 Levanさんは今、機会があるごとに脳卒中という疾患に対する認識向上と、「time is brain(時は脳なり)」というフレーズの周知啓発に努めている。250人の郵便職員の前で、それらの重要性を語ったこともある。「脳卒中の兆候が見られたら、それを軽視しないでほしい。私は、妻が迅速に行動してくれたおかげで、完全に回復することができた」。[2023年8月21日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.利用規定はこちら

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ボールペンで輪状甲状靭帯切開は可能か?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第242回

ボールペンで輪状甲状靭帯切開は可能か? Unsplashより使用どの医療系マンガか忘れましたが、ボールペンを使って胸腔ドレナージや輪状甲状靭帯切開を行うというのは、なかなかドラマティックなものです。日本酒を口に含んでブーっと消毒するシーンもカッコよく見えてきますが、あれはさすがに汚いかもしれません。既存の消毒剤と「日本酒ブー」のランダム化比較試験を誰かやっていただきたいところです。さて、ボールペンが緊急輪状甲状靭帯切開に使えるシロモノかどうかを検討した珍しい研究があります。Kisser U, et al.Bystander cricothyrotomy with ballpoint pen: a fresh cadaveric feasibility study.Emerg Med J. 2016 Aug;33(8):553-556.この研究は、3種類のボールペンが緊急輪状甲状靭帯切開に有用かどうか調べたものです。マネキンではなく、新鮮な死体を用いておこなわれた実臨床的なものとなっています。まずボールペンの特性です。内径が狭すぎると、そもそも切開しても呼吸ができないというジレンマに陥ります。3本のうち2本の内径が3mm以上ということで、気管切開のカニューレとしては妥当な水準だったようです。私たちが行っているようなセルジンガー法のキットは、輪状甲状靭帯切開の内径がだいたい4mmなので、2mmになってくると、さすがに呼吸がちょっとしんどいですね。さて、問題は皮膚から気管まで到達できるかどうかです。ボールペンは、先がメスになっているわけではないので、気管を貫通できたのは10例中1例という、残念な結果でした。この1例も、5分以上かけて3回気管切開を試みていますので、簡単にブスっというわけではなさそうです。そのため、ボールペンがあっても、緊急輪状甲状靭帯切開を行うことは事実上不可能であると思っておいたほうがよいです。ちなみに、「ナイフを併用してもよい」という条件であれば、10例中8例という成功率だったと報告されています1)。ただし、メスを持ち歩くと逮捕されそうなので、街中でドラマティックに緊急輪状甲状靭帯切開を行うのは難しいかもしれません。1)Braun C, et al. Bystander cricothyroidotomy with household devices - A fresh cadaveric feasibility study. Resuscitation. 2017 Jan;110:37-41.

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死亡率と相関する肥満の指標、BMIではなく…

 BMIとは、ご存じのとおり肥満度を表す指標として国際的に用いられている体格指数1)である。しかし、同じBMIを持っていても体組成と脂肪分布によって個人間でばらつきがあるため、“死亡リスクが最も低いBMI”については議論の余地がある。そこで、カナダ・Vascular and Stroke Research InstituteのIrfan Khan氏らが死亡率に最も強く相関する肥満に関する指数を検証するため、全死因死亡および原因別(がん、心血管疾患[CVD]、呼吸器疾患、またはその他原因)の死亡率とBMI、FMI(脂肪量指数)、WHR(ウエスト/ヒップ比、体型を「洋なし型」「リンゴ型」と判断する際に用いられる)2)の関連性を調査した。その結果、WHRはBMIに関係なく、死亡率と最も一貫性を示した。ただし、研究者らは「臨床上の推奨としては、質量と比較した脂肪分布に焦点を当てることを考慮する必要がある」としている。JAMA Network Open誌2023年9月5日号掲載の報告。 本研究は、英国全土の臨床評価センター22施設のデータを含む、英国バイオバンク(UKB)に登録された2006~22年における死亡者データ(38万7,672例)を発見コホート(33万7,078例)と検証コホート(5万594例:死亡2万5,297例と対照2万5,297例)にわけて調査が行われた。発見コホートは遺伝的に決定付けられた肥満度を導出するために使用され、観察分析およびメンデルランダム化(MR)解析が行われた。 主な結果は以下のとおり。・観察分析の対象者は平均年齢[±SD]56.9±8.0歳、男性17万7,340例(45.9%)、女性21万332例(54.2%)、MR解析の対象者は平均年齢[±SD]61.6±6.2歳、男性3万31例(59.3%)、女性2万563例(40.6%)だった。・BMIおよびFMIと全死因死亡との関係はJ字型であった一方で、WHRと全死因死亡との関係は直線的だった(WHRのSD増加あたりのHR:1.41、95%信頼区間[CI]:1.38~1.43)。・遺伝的に決定付けられていたWHRは、BMIよりも全死因死亡と強い関連を示した(WHRのSD増加あたりのオッズ比[OR]:1.51[95%CI:1.32~1.72]、BMIのSD増加あたりのOR:1.29[95%CI:1.20~1.38]、異質性のp=0.02)。・この関連は女性よりも男性のほうが強く(OR:1.89[95%CI:1.54~2.32]、異質性のp=0.01)、BMIやFMIとは異なり、遺伝的に決定付けられていたWHRと全死因死亡の関連はBMIに関係なく一貫していた。

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血栓高リスクの肺・消化器がん、エノキサパリンによる血栓予防で生存改善(TARGET-TP)

 肺がんや消化器がん患者において、バイオマーカーに基づく血栓リスクの分類と、高リスクに分類された患者に対するエノキサパリンによる血栓予防は、血栓塞栓症の発生を抑制するだけでなく、生存も改善することが報告された。本研究結果は、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのMarliese Alexander氏らによって、JAMA Oncology誌オンライン版2023年9月21日号で報告された。 2018年6月~2021年7月に第III相非盲検無作為化比較試験「Targeted Thromboprophylaxis in Ambulatory Patients Receiving Anticancer Therapies(TARGET-TP)」が実施された。本試験はオーストラリアの5施設において、肺がんまたは消化器がんに対する抗がん剤治療を開始する18歳以上の患者328例が対象となった。フィブリノゲン値とDダイマー値に基づき、血栓塞栓症リスクを低リスクと高リスクに分類した※。高リスクに分類された患者について、エノキサパリン40mg(1日1回、皮下投与)を90日間投与する群(エノキサパリン群)、血栓予防薬を投与しない群(高リスク対照群)に1対1に割り付け、比較した。なお、エノキサパリン群は血栓塞栓症リスクに応じて、180日まで投与期間を延長可能とした。主要評価項目は180日後までの血栓塞栓症の発生、副次評価項目は、血栓塞栓症リスクモデルの検証、出血、全死亡などであった。※ 以下の(1)~(3)のいずれかを満たすものを高リスクとした。(1)ベースライン時のフィブリノゲン値4g/L以上かつDダイマー値0.5mg/L以上、(2)ベースライン時のDダイマー値1.5mg/L以上、(3)1ヵ月後のDダイマー値1.5mg/L以上。 主な結果は以下のとおり。・対象患者328例(年齢中央値[範囲]:65歳[30~88]、男性:176例[54%])のうち、肺がんは127例(39%)、消化器がんは201例(61%)であった。転移を有していたのは132例(40%)、高リスクと判定されたのは200例であった。・血栓塞栓症は高リスク対照群で23例(23%)に発生したのに対し、エノキサパリン群では8例(8%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.31、95%信頼区間[CI]:0.15~0.70)。低リスク群では10例(8%)に発生したが、高リスク対照群よりも有意に少なかった(同:3.33、1.58~6.99)。・血栓塞栓症リスクモデルの感度は70%、特異度は61%であった。・大出血の発生に群間差は認められなかった(エノキサパリン群:1例[1%]、高リスク対照群:2例[2%]、低リスク群:3例[2%])。・6ヵ月死亡率は高リスク対照群が26%であったのに対し、エノキサパリン群では13%(HR:0.48、95%CI:0.24~0.93、p=0.03)、低リスク群では7%(同:4.71、2.13~10.42、p<0.001)であり、高リスク対照群と比較して有意に低かった。

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COVID-19パンデミックによる面会制限は産後うつ病リスクと関連するか

 COVID-19パンデミックによる面会制限は産後うつ病のリスク因子であるかどうかを明らかにするため、舞鶴共済病院の工藤 渉氏らは調査を行った。その結果、著者らは「COVID-19パンデミック中に出産した女性は、入院期間中の家族面会制限が行われていたものの、産後1ヵ月のエジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)スクリーニングスコアの悪化が認められず、一部の女性では、精神状態の安定が認められた」としている。BMC Pregnancy and Childbirth誌2023年9月9日号の報告。 COVID-19パンデミック中に出産した女性(面会制限群)とパンデミック前に出産した女性(対照群)を比較したケースコントロール研究を実施した。産後うつ病の評価には、EPDSを用いた。出産後2週間、1ヵ月時点でのEPDSを評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、面会制限群200例、対照群200例。・面会制限群(8.5%)は、対照群(18.5%)と比較し、EPDS陽性率が有意に低かった(p=0.002)。・1ヵ月検診におけるEPDS陽性を目的変数とした多変量解析の結果では、EPDSスクリーニング陽性のリスク増加に影響を及ぼす因子は、面会制限(オッズ比[OR]:0.35、95%信頼区間[CI]:0.18~0.68)、新生児の入院(OR:2.17、95%CI:1.08~4.35)、分娩延長(OR:2.87、95%CI:1.20~6.85)であった。

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複雑性黄色ブドウ球菌菌血症へのceftobiprole、ダプトマイシンに非劣性/NEJM

 複雑性黄色ブドウ球菌菌血症の成人患者において、ceftobiproleはダプトマイシンに対し、全体的治療成功に関して非劣性であることが示された。米国・デューク大学のThomas L. Holland氏らが、390例を対象に行った第III相二重盲検ダブルダミー非劣性試験の結果を報告した。ceftobiproleは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの複雑性黄色ブドウ球菌菌血症の治療に効果的である可能性が示されていた。NEJM誌オンライン版2023年9月27日号掲載の報告。ceftobiproleまたは、ダプトマイシンと必要に応じアズトレオナム投与 研究グループは、複雑性黄色ブドウ球菌菌血症の成人被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはceftobiprole(500mgを静脈内投与、8日間は6時間ごと、その後は8時間ごと)、もう一方の群にはダプトマイシン(6~10mg/kg体重を静脈内投与、24時間ごと)を投与し、ダプトマイシン群では必要に応じてアズトレオナムも投与した。 主要アウトカムは、無作為化70日後の全体的治療成功(生存、血液培養陰性化、症状改善、新たな黄色ブドウ球菌菌血症関連の合併症がない、他の効果がある可能性のある抗菌薬を非投与)だった。非劣性マージンは15%とし、データ評価委員会が判断した。安全性についても評価した。全体的治療成功率、両群ともに69~70% 無作為化された390例のうち、黄色ブドウ球菌菌血症が確認され実薬を投与されたのは387例(ceftobiprole群189例、ダプトマイシン群198例)だった(修正ITT集団)。 全体的治療成功を達成したのは、ceftobiprole群189例中132例(69.8%)、ダプトマイシン群198例中136例(68.7%)であった(補正後群間差:2.0%ポイント、95%信頼区間[CI]:-7.1~11.1)。主なサブグループ解析および副次アウトカムの評価についても、両群の結果は一貫しており、死亡率はそれぞれ9.0%と9.1%(95%CI:-6.2~5.2)、菌消失率は82.0%と77.3%(-2.9~13.0)だった。 有害事象は、ceftobiprole群191例中121例(63.4%)、ダプトマイシン群198例中117例(59.1%)で報告された。重篤な有害事象は、それぞれ36例(18.8%)と45例(22.7%)で報告された。消化器関連の有害事象(主に軽度の悪心)は、ceftobiprole群でより発現頻度が高かった。

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医療費の支払いに関わる事務作業の負担はがん患者の治療遅延を招く

 がん患者の一部は、医療費の支払いに関わる書類作成などの負担に直面し、それが必要な治療を受ける妨げになっているとする研究結果を、米ペンシルベニア大学School of Social Policy and PracticeのMeredith Doherty氏らが、「Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention」に8月30日発表した。医療費の支払いに関わる事務作業の負担が大きい患者は、負担が大きくない患者に比べて、治療が遅れたり、治療を計画通りに進められない可能性の高まることが示されたという。 Doherty氏は、米国の医療システムを利用するには、患者と医療提供者、保険会社の間で一連の複雑なコミュニケーションを取る必要があり、医療費を把握し、請求ミスを修正する責任は、しばしば患者が負うことになっていると話す。同氏は、「医療と資本主義が結び付いている米国では、ヘルスケアの商品やサービスを効果的に利用し、その質を担保するために必要な知識や技術を身に付ける責任を消費者が負うことになっている。これは、医療制度としてはかなり特殊だと言える」と説明する。 今回の研究では、非営利団体CancerCareが収集した510人の米国のがん患者およびがんサバイバーの調査データを分析し、調査参加者が治療中に直面した医療費の支払いに関わる事務作業の負担と、治療の遅れや治療計画の不遵守との関連について検討した。調査では、治療の遅れや治療計画の不遵守、治療の同意や処方箋の受理、臨床検査受診の前に自己負担額を見積もる必要が生じた頻度などのほか、保険会社に補償内容を理解するために説明を求めた経験や、給付の否認に異議を唱えた経験についても尋ねられた。 分析からは、参加者の約45%が、がん治療の一環として、時々、しばしば、または常に、医療費の支払いに関わる事務作業に携わっていると回答し、そのような作業負担が大きいほど、がん治療の遅延リスクも上昇することが示された。支払いに関わる作業負担が1単位増えるごとに、治療の遅れや治療計画の不遵守が生じる頻度は32%増加していた。患者が報告した医療費の支払いに関わる作業を多い順に挙げると、処方薬の費用の見積もり(28%)、検査費用の見積もり(20%)、治療計画の費用の見積もり(20%)、保険会社への補償内容に関する問い合わせ(18%)、給付否認の異議申し立て(17%)であり、これらの全てが治療遅延のリスクの増加と関連していた。このほか、44歳以下の人は55歳以上の人よりも、また黒人は白人よりも、医療費の支払いに関わる事務作業が多く、治療遅延や治療計画の不遵守を経験する傾向が強かった。 こうした結果を受けてDoherty氏は、「このデータは、がん治療における医療費支払いのための事務作業の負担が、すでに健康格差に直面している集団に最も重くのしかかっていることを示している」と指摘する。そして、「このような負担を負っている人は、フラストレーションや疲労に加え、疎外感も感じているのではないだろうか。もし間違った請求書が送り付けられ、相手がその内容を正すのに協力しないのなら、それは自分のことなど気にかけていないと言っているのと同然だ」と話す。 この研究には関与していない、米国の医療政策シンクタンクであるコモンウェルス基金の代表を務めるJoe Betancourt氏は、「がん患者は信じられないほどのストレスを抱えており、心身ともに到底ベストとはいえない状態にあることが多い。そのような患者にとって、医療費の支払いに関わる事務作業の負担はとても大きく、率直に言って、受け入れがたいものとなる」と述べる。そして、「われわれは、慢性疾患を患い、ケアが必要な患者にかかるこのような負担を減らすよう訴えていく必要がある」と主張している。 Doherty氏は、がん患者の医療費の支払いに関わる事務作業の負担を軽減した場合に、アウトカムがどの程度改善されるかを数値化したいと話している。

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成人先天性心疾患、それは循環器専門医の中でも難しい領域【臨床留学通信 from NY】第52回

第52回:成人先天性心疾患、それは循環器専門医の中でも難しい領域私の所属するMontefiore Medical CenterのFellowshipのプログラムの中には、成人先天性心疾患のローテーションが4週間あります。というのも米国循環器専門医での出題範囲に含まれているからです。心房中隔欠損(ASD)、心室中隔欠損(VSD)、動脈管開存症(PDA)、ファロー四徴症であれば成人循環器専門医でも診ることはあります。しかし複雑心奇形でフォンタン手術後となると、臨床研究に関わったことがある程度で、実際の臨床はかなり難しい印象です1)。20年前、学生の頃にポリクリで小児科をローテートした際にこのような疾患群を診たりしておりましたが、当時は成人の患者さんは少なかった印象です。現在は複雑な成人先天性心疾患が医療の発達に伴い増えてきており、その患者さんたちを診ることができる医師が少ないともいわれています。日本との違いもいろいろ感じました。重症の患者さんに関しては、移植も選択肢になってきます。そのような選択肢がより多くあるのも米国ならではかと思います2)。また、日本にはほとんどが日本人しかおりませんが、ここは人種のるつぼのアメリカ、ニューヨーク。先天性心疾患の多い人種、家系もあり、複雑です3)。Interventional CardiologyはASD、PDA、卵円孔開存(PFO)、などの治療もしますし、また成人先天性心疾患は動脈硬化性の病気になりやすいともいわれており、私の分野であっても知見を深めていく必要がありそうです。参考1)Yasuhara J, et al. Predictors of Early Postoperative Supraventricular Tachyarrhythmias in Children After the Fontan Procedure. Int Heart J. 2019;60:1358-1365.2)松田 暉, et al. 成人先天性心疾患に対する心臓移植:Failed Fontanからみた海外の現状と我が国の課題. 日本成人先天性心疾患学会雑誌. 2017;6:6-15.3)早野 聡. 先天性心疾患における網羅的遺伝学的解析の歴史と展望. 日本小児循環器学会雑誌. 2021;37:193-202.ColumnCirculation誌の姉妹誌であるCirculation Cardiovascular Interventions誌9月号に、抗血小板薬2剤併用療法(Dual Antiplatelet Therapy)について調べた論文が掲載されました。Kuno T, et al. Short-Term DAPT and DAPT De-Escalation Strategies for Patients With Acute Coronary Syndromes: A Systematic Review and Network Meta-Analysis. Circ Cardiovasc Interv. 2023;16:e013242.日本の先生方のみならず、主にニューヨークで培った人脈を基に、Mount Sinai、ニューヨーク大学の先生方にも共同著者としてご参加いただきました。自信作ではありましたが、循環器四大雑誌であるJACC、Circulation、European Heart Journal、JAMA Cardiologyにはすべて断られ、Circulationの姉妹誌になんとか落ち着きました。追い追い、このようなメタ解析についてもお話しできればと思います。なお、米国のTCT(Transcatheter Cardiovascular Therapeutics)学会に付属するTCTMDというメディアからインタビューを受け、コメントを掲載していただきました。Maxwell YL. Unguided De-escalation, Short DAPT the Best Strategies in ACS: Meta-analysis. TCTMD. 2023 Sep 5.

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第183回 認知症を阻止するらしい神経細胞2種類を同定

認知症を阻止するらしい神経細胞2種類を同定アルツハイマー病(AD)の病変であるアミロイド蓄積がたとえあっても認知機能が維持されて認知症になりにくいことと関連する脳の神経細胞2種類が同定されました1,2)。それらの神経細胞が死なないようにする手段を新たな成果を頼りに開発できるかもしれません。ねばねばしたアミロイドタンパク質の脳での蓄積がADの病因と広く言われています。その蓄積がやがて垢のような塊になって神経を死なせ、ついには記憶や意識を損なわせるという考えです。しかし認知機能障害を被る高齢者の誰もが脳にアミロイド塊を有するというわけではありませんし、脳にアミロイドが蓄積していると必ずADが生じるというわけでもありません。それはなぜなのかを調べるべく米国・ピッツバーグ大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らは数千人の高齢者の認知や振る舞いの推移を1994年から追っている試験・Religious Orders Study/Memory and Aging Project(ROSMAP)に目を向けました。AD病変や認知機能障害の程度がまちまちな死亡被験者427例の脳組織の前頭前皮質の細胞が活動遺伝子の配列を頼りに分類され、どこにどの細胞があるかを示す地図が作られました。その結果、認知機能全般がすこぶる良好な人に多く、逆に低下している人では乏しい細胞の集団2つが同定されました。その1つは統合失調症などの脳疾患と関連するタンパク質・リーリン(reelin)の遺伝子が発現している神経細胞、もう1つは体のあちこちの営みを調節するホルモン・ソマトスタチン(somatostatin)の遺伝子を発現する神経細胞です。認知機能が損なわれていない人ではADの特徴である脳のアミロイド大量蓄積があったとしてもそれらの神経細胞が脳に豊富に残っており、それらの細胞はAD発症を防ぐ役割をどうやら担うようです。ADの研究では電気信号を伝えて別の神経を活性化する興奮性神経細胞がもっぱら注目されてきました。しかし今回の研究で見つかった2種は興奮性神経とは正反対の抑制性神経です。抑制性神経は神経間の通信を止める働きを担います。少なくともいくらかの人のそれらリーリン/ソマトスタチン発現抑制性神経はAD病変によってとりわけ壊れやすいのではないかと研究者は考えています。今年の早くにNature Medicine誌に掲載されたリーリン遺伝子変異の報告3)はその考えを支持しています。リーリンの機能を底上げするその変異を有する男性は脳のアミロイド蓄積が半端なく大量にもかかわらず67歳になっても認知機能が正常でAD症状を示しませんでした。そういう先立つ成果があるのでリーリン発現神経に辿りついた今回の成果はそれほど驚くものではなく、一貫した成果が得られていることに安心していると研究者は言っています4)。これまでAD治療手段の開発といえば脳のアミロイド蓄積をどうにかする手段にもっぱら目が向けられていました。今回の結果はそうではなくADで壊れやすい脳細胞を守る手段を見つける取り組みを後押しするでしょう。個々の細胞の配列を読み取ってそれらの地図(atlas)を作った今回の成果は最新技術の賜物であるとカリフォルニアの研究所Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Instituteの神経科学者Jerold Chun氏は言っています4)。AD患者は神経が発火しすぎて生じる発作を生じやすいことが知られますが、それは抑制性神経損失のせいかもしれないと同氏は想定しています。今回の研究で作られた脳細胞の地図はどの研究者も使えるように公開5)されており、それを出発点にして研究の裾野が一層広まるでしょう。参考1)Mathys H, et al. Cell. 2023;186:4365-4385.2)Decoding the complexity of Alzheimer’s disease / Massachusetts Institute of Technology3)Lopera R, et al. Nat Med. 2023;29:1243-1252.4)The brain cells linked to protection against dementia / Nature5)Single-cell transcriptomic atlas of the aged human prefrontal cortex

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ICS/LABA使用喘息の40%超が効果不十分、咳嗽に注目を

 日本において2018年に実施された横断的調査National Health and Wellness Survey(NHWS)の結果から、吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合薬(ICS/LABA)に対するアドヒアランスが高い喘息患者であっても、そのうち約40%は、症状をコントロールできていないことが報告されている1)。そこで、長瀬 洋之氏(帝京大学医学部内科学講座 教授)らの研究グループは、ICS/LABAを適切に使用している喘息患者を対象として、喘息が健康関連QOLや労働生産性などに及ぼす影響を調べた。その結果、ICS/LABAで喘息コントロール不十分・不良の患者が45.2%存在し、コントロール良好の患者と比べて健康関連QOLが低下していた。また、咳嗽の重症度が健康関連QOLと相関していた。本研究結果は、Advances in Therapy誌オンライン版2023年9月12日号に掲載された。 ICS/LABAを4週間以上使用し、アドヒアランス良好であった20歳以上の喘息患者454例を対象に、インターネット調査を実施した。対象患者を喘息コントロールテスト(ACT)スコアに基づき、コントロール不十分・不良(19点以下)、コントロール良好(20点以上)に分類して評価した。主要評価項目はAsthma Health Questionnaire-33(AHQ-33)に基づく健康関連QOL(スコアが高いほど不良)であった。副次評価項目は日本語版レスター咳質問票(J-LCQ)に基づく咳嗽の重症度(スコアが高いほど良好)、Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire(WPAI)-asthmaに基づく労働生産性であった。 主な結果は以下のとおり。・ICS/LABAを使用している喘息患者の45.2%(205/452例)がコントロール不十分・不良であった。・健康関連QOLは、コントロール不十分・不良群がコントロール良好群と比べて低かった(AHQ-33合計スコア:39.3点vs.11.5.点、p<0.0001)。喘息症状、喘息症状の増悪因子など、AHQ-33のすべてのドメインスコアがコントロール不十分・不良群で有意に悪化していた(いずれもp<0.0001)。・咳嗽の重症度は、コントロール不十分・不良群がコントロール良好群と比べて高かった(J-LCQ合計スコア:15.2点vs.19.1点、p<0.0001)。J-LCQの身体面、精神面、社会面のいずれのドメインスコアもコントロール不十分・不良群が有意に悪化していた(いずれもp<0.0001)。・咳嗽の症状を有している患者の割合は、コントロール良好群が22.1%(55/249例)であったのに対し、コントロール不十分・不良群は63.9%(131/205例)であった。・J-LCQ合計スコアはAHQ-33合計スコアと強い相関が認められ(r=-0.8020)、咳嗽が健康関連QOLに大きな影響を及ぼすことが示唆された。・労働生産性に関して、アブセンティーズム、プレゼンティーズム、総労働損失、日常生活における活動障害のいずれの項目についても、コントロール不十分・不良群がコントロール良好群と比べて有意に悪化していた(いずれもp<0.0001)。 本研究結果について、著者らは「ICS/LABAに対するアドヒアランスが良好であったにもかかわらず、喘息コントロールが不十分・不良であった喘息患者は、喘息コントロールが良好であった喘息患者と比べて、症状の負荷が大きく、健康関連QOLと労働生産性が損なわれていた。咳嗽症状は大きな負荷であり、健康関連QOLの低下との相関も認められたことから、咳嗽は喘息患者の個別化治療戦略における重要なマーカーの1つである可能性が示された」とまとめた。

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統合失調症とうつ病の治療ガイドライン普及に対するEGUIDEプロジェクトの効果

 国立精神・神経医療研究センターの長谷川 尚美氏らは、「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」を活用することによる、精神疾患の診療ガイドラインに関する教育のリアルワールドにおける効果を検証するため、本研究を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2023年9月8日号の報告。 EGUIDEプロジェクトは、「統合失調症薬物治療ガイドライン」と「うつ病治療ガイドライン」を日本国内で実践するための全国的なプロスペクティブ研究である。2016~19年、精神科病棟を有する176施設に所属する精神科医782人がプロジェクトに参加し、診療ガイドラインに関する講義を受講した。プロジェクト参加病院の統合失調症患者7,405例およびうつ病患者3,794例を対象に、ガイドラインが推奨する治療の実施割合を、プロジェクト参加者と非参加者から治療を受けている患者間で比較した。プロジェクト参加病院より毎年4~9月に退院する患者の臨床データおよび処方データも分析した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症に対する3つの質的指標(他の向精神薬の使用とは無関係の抗精神病薬単剤療法、他の向精神薬を使用しない抗精神病薬単剤療法、抗不安薬や睡眠薬の使用なし)の割合は、プロジェクト参加者のほうが非参加者よりも高かった。・うつ病治療ガイドラインでも同様な結果が得られた。・ガイドラインの推奨治療の普及におけるEGUIDEプロジェクトの有用性が確認された。 著者らは結果を踏まえて「精神疾患の診療ガイドラインに関する教育を実施することで、精神科医の治療に関連した行動を改善可能であることが示唆された。メンタルヘルス治療のギャップを解消するためには、EGUIDEプロジェクトのような教育ベースの戦略が重要であろう」としている。

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