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2024/07/10
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検索結果 合計:4245件 表示位置:241 - 260

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緊急避妊薬、新年直後に販売数が増加/BMJ

 米国のドラッグストアや量販店で、レボノルゲストレル緊急避妊薬の販売数について調べたところ、新年の祝日後に顕著に増加することが、米国・テキサス工科大学のBrandon Wagner氏らが行った時系列分析で示された。そのほか、バレンタインデー、セントパトリックスデー、米国の独立記念日の後にも、新年の祝日後ほどではないが増加が認められたという。結果を踏まえて著者は、「新年の祝日後の緊急避妊薬の売上増加は、この時期が他の休日と比べて、無防備な膣性交のリスクが高いことを示唆している」と述べ、「行動リスクをターゲットとした性暴力を軽減するための予防戦略と、休日前後の避妊薬へのアクセスを改善することで、無防備な膣性交のリスクを制限できる可能性がある」とまとめている。BMJ誌2023年12月20日号クリスマス特集号「ANNUAL LEAVE」掲載の報告。新年直後とそれ以外の週の販売数を比較 研究グループは自己回帰統合移動平均(ARIMA)モデルを使用した時系列分析にて、大みそか・元旦休暇後の緊急避妊薬の売上増加を推計した。2016~22年の米国の従来型(実店舗)小売店(食料品店、ドラッグストア、量販店、クラブストア、1ドルショップ、軍用アウトレット)で集めた緊急避妊薬の週単位販売データ(362件)について、新年の祝日後(6件)とそれ以外(356件)に分け、ARIMAモデルを用いた時系列分析で比較した。 主要アウトカムは、米国の生殖可能年齢の女性1,000人当たりの、レボノルゲストレル緊急避妊薬の週間販売数とした。新年直後の週、緊急避妊薬販売数は0.63/女性1,000人の増加 レボノルゲストレル緊急避妊薬の販売数は、新年祝日後に顕著に増加した(15~44歳の女性1,000人当たり0.63単位増加、95%信頼区間:0.58~0.69)。 そのほか、バレンタインデー、セントパトリックスデー、米国の独立記念日で祝日後に同増加が認められた。 同増加は15~44歳の女性1,000人当たりそれぞれ、0.31(同:0.25~0.38)、0.14(同:0.06~0.23)、0.20(同:0.11~0.29)だった。 これら以外の祝日(イースター、母の日、父の日)後に、同増加は認められなかった。

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乾癬への生物学的製剤、逆説的反応リスクは?

 生物学的製剤による治療を受けた乾癬患者が湿疹を発症する逆説的反応のリスクは、IL-23阻害薬を投与された患者で最も低かった。リスク上昇と関連する因子は、年齢上昇、女性、アトピー性皮膚炎の既往、花粉症の既往であった。全体的には逆説的反応の発生率は低かった。英国・マンチェスター大学のAli Al-Janabi氏らが前向きコホート試験の結果を報告した。生物学的製剤を用いた尋常性乾癬患者の一部で、アトピー性皮膚炎の表現型の1つである湿疹を発症することが報告されている。しかし、そのリスク因子は不明であった。今回の検討結果を踏まえて著者は、「さらなる試験を行い、今回得られた結果を再現する必要がある」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年12月6日号掲載の報告。 研究グループは、生物学的製剤のクラス別の逆説的反応のリスク、リスク上昇と関連する因子を検討する前向きコホート研究を行った。 対象患者は、英国およびアイルランドの皮膚科を受診し、生物学的製剤による治療を受けた18歳以上の成人の尋常性乾癬患者で、データはBritish Association of Dermatologists Biologics and Immunomodulators Registerから入手した。2007年9月~2022年12月に少なくとも1回以上のフォローアップ受診のある患者を適格とした。 逆説的反応による湿疹の発症、治療中断、最終フォローアップまたは死亡までの生物学的製剤への曝露期間を調査。生物学的製剤はTNF阻害薬(アダリムマブ、セルトリズマブ ペゴル、エタネルセプト、インフリキシマブ)、IL-17阻害薬(ビメキズマブ、ブロダルマブ、イキセキズマブ、セクキヌマブ)、IL-12/23阻害薬(ウステキヌマブ)、IL-23阻害薬(グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ)を対象とした。逆説的反応の発生率、生物学的製剤のクラス別にみた逆説的反応のリスク、逆説的反応のリスク因子を、傾向スコア加重Cox比例ハザード回帰モデルを用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・1万3,699例が2万4,997件の生物学的製剤による治療を受けた。・2万4,997件の解析対象の年齢中央値は46歳(四分位範囲:36~55)、男性が57%、総曝露期間は8万1,441患者年であった。・逆説的反応の発生は、273件(1%)であった。・10万人年当たりの補正後発生率は、IL-17阻害薬1.22、TNF阻害薬0.94、IL-12/23阻害薬0.80、IL-23阻害薬0.56であった。・TNF阻害薬との比較において、IL-23阻害薬は逆説的反応のリスクが低かった(ハザード比[HR]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.19~0.81)。一方、IL-17阻害薬(同:1.03、0.74~1.42)、IL-12/23阻害薬(同:0.87、0.66~1.16)では逆説的反応との関連はみられなかった。・年齢上昇(HR:1.02、95%CI:1.01~1.03)、アトピー性皮膚炎の既往(同:12.40、6.97~22.06)花粉症の既往(同:3.78、1.49~9.53)は、逆説的反応のリスクを上昇させた。男性はリスクが低かった(同:0.60、0.45~0.78)。

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境界性パーソナリティ障害に合併する精神および身体疾患

 境界性パーソナリティ障害(BPD)とその併存疾患に関する情報は、BPDの診断数が少ないため、限られている。南デンマーク大学のL. H. Hastrup氏らは、初めてBPDと診断された患者における診断前後3年間の精神的および身体的併存疾患を調査し、対照群との比較を行った。その結果、BPD患者は、さまざまな身体的および精神的疾患を併発する可能性が高いことを報告した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年12月10日号の報告。 2002~16年にBPDを発症した患者2,756例とマッチさせた対照群1万1,024例を対象に、登録ベースのコホート研究を実施した。併存疾患に関するデータは、世界保健機構(WHO)のICD-10基準に従い、主要な疾患グループに分類した。 主な結果は以下のとおり。・BPD患者の約半数は、診断前に精神疾患および行動障害と診断されていたが、対照群では3%のみであった。・負傷、自傷行為、中毒などの外的要因による疾患併発は、対照群と比較し、診断前のBPD患者でより多く認められた。・BPD患者では、循環器系、呼吸器系、消化器系、筋骨格系、泌尿生殖器系の疾患を合併する割合が高かった。・診断後では、BPD患者のすべての疾患グループにおいて、併存疾患を有する患者の割合の有意な増加が認められた。・精神的および行動的疾患は、BPD患者87%、対照群3%で認められ、神経疾患は、BPD患者15%、対照群4%に認められた。・BPD患者は、体細胞性疾患、とくに消化器系、呼吸器系、循環器系、内分泌系の疾患を併発する可能性が高かった。・12年間の死亡率は、対照群よりもBPD患者で統計学的に有意に高かった。

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低Na血症、起こりやすい降圧薬と発症タイミング

 デンマーク国立血清研究所のNiklas Worm Andersson氏らが、サイアザイド系利尿薬による低ナトリウム血症(以下、低Na血症)の累積発生率について、その他薬効クラスの降圧薬と比較・推定を行った。その結果、治療開始から最初の数ヵ月間において、サイアザイド系利尿薬では添付文書等で示されている1)よりも低Na血症のリスクが高かったことが明らかになった。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2023年12月19日号掲載の報告。1.頻度不明/まれ/非常にまれ(10,000分の1~100分の1未満と定義)と記載されている。 本研究は2014年1月1日~2018年10月31日にデンマークで実施された人口登録ベースの観察研究を用いて、2つのtarget trial emulation2)を行った。主要評価項目は治療開始から2年以内の血中Na値130mmol/L未満の累積発生率。2.標的試験の模倣。観察研究データを用いて、仮想的なランダム化臨床試験を模倣すること。 対象者は直近で降圧薬が処方されておらず、低Na血症の既往歴のない40歳以上。1つ目のtarget trial emulationでは、bendroflumethiazide(BFZ、国内未承認)とカルシウム拮抗薬(CCB)の新規使用について比較し、2つ目のtarget trial emulationでは、ヒドロクロロチアジド・RA系阻害剤の配合剤とRA系阻害薬の新規使用について比較した。 主な結果は以下のとおり。・1つ目のtarget trial emulationではBFZ3万7,786例、CCB4万4,963例の新規処方患者を比較し、2つ目では配合剤1万1,943例とRA系阻害薬8万5,784例の新規処方患者を比較した。・2年間における低Na血症の累積発生率は、BFZで3.83%、配合剤で3.51%だった。リスク差は、BFZvs.CCBで1.35%(95%信頼区間:1.04~1.66)、配合剤vs.RA系阻害薬では1.38%(同:1.01~1.75)だった。・リスク差は、高齢、併存疾患の負荷が高いほど大きくなり、各ハザード比は、治療開始最初の30日間では3.56(同:2.76~4.60)および4.25(同:3.23~5.59)で、治療開始1年後のHRは1.26(同:1.09~1.46)および1.29(同:1.05~1.58)だった。 ただし、本研究の制限として、研究者らは「処方箋の記載と実際に使用された薬剤が同等という仮定に基づく交絡が残存する可能性が高い」としている。

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潜在的食物アレルギーが心血管死リスクと関連

 急性のアレルギー症状は現れないが、検査で反応が見つかる程度の潜在的な食物アレルギーが、心血管死のリスクと関連のあることが明らかになった。米バージニア大学保健システム(UVA)のJeffrey Wilson氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に11月9日掲載された。Wilson氏らは、「将来的には、既知のリスク因子を持たない人の中から心血管疾患リスクの高い人を探し出すために、食物アレルギー検査が役立つようになるかもしれない」と話している。 食物アレルギーの症状が現れない人にも、何らかの食物に対するアレルギー反応が生じていることが、抗体検査〔免疫グロブリンE(IgE)検査〕で示唆されることがある。従来、そのような検査所見は臨床的には意味がないものと考えられていたが、赤肉を摂取した後に、アレルギー症状が現れないにもかかわらずIgE抗体レベルが上昇する人は、心血管疾患のリスクが高い可能性のあることが最近指摘されている。これを背景としてWilson氏らは、そのような潜在的な食物アレルギー反応が、心血管疾患による死亡と関連しているかどうかを検討した。 研究には、2005~2006年の米国国民健康栄養調査(NHANES)と、アテローム性動脈硬化に関する多民族研究(MESA)のデータが用いられた。MESAは2000~2002年に研究参加登録が行われ、心血管疾患危険因子のない一般住民が登録されている。なお、IgEは総IgEと、牛乳、卵、ピーナッツ、エビなどの食品に対する特異的IgEが評価された。 NHANESでは4,414人の成人のうち229人の心血管死が確認され、MESAでは960人中56人の心血管死が記録されていた。性別、年齢、人種/民族、喫煙歴、教育歴、喘息の既往を調整したCox比例ハザードモデルでの解析の結果、NHANESでは、1種類以上の食品に対する感作が心血管死リスクの高さと有意に関連していた〔ハザード比(HR)1.7(95%信頼区間1.2~2.4)、P=0.005〕。特に牛乳への感作との関連が強く認められた〔HR2.0(同1.1~3.8)、P=0.026〕。同様の関連はMESAでも確認された〔HR3.8(同1.6~9.1)、P=0.003〕。 Wilson氏はUVA発のリリースの中で、「今回の研究対象者の大半は、明らかな食物アレルギーを有していたとは考えにくく、よって示された結果は、食物に対する潜在的なアレルギー反応の影響を示すものと言える。このような反応は急性アレルギー症状を来すほど強力ではないが、それでも炎症を惹起して時間の経過とともに、心臓病などの問題を引き起こす可能性がある」と解説している。この関連のメカニズムについては、現時点では推論の域を出ない。しかし、「アレルギー反応にかかわるマスト細胞と呼ばれる細胞は、血管や心臓にも存在する」と研究グループは指摘している。 ただし、未知の遺伝的要因または環境要因が関与している可能性も否定できず、より多くの研究が必要とされる段階だ。Wilson氏は、「この領域の研究は将来的に、アレルギー反応を評価する血液検査が、心臓の健康に良い食生活のアドバイスに役立てられる可能性につながるのではないか。とは言え、そのような推奨を実際に示すことができるようになるまでには、クリアすべき課題が多く残されている」と話している。

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くしゃみによる脾臓破裂の1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第248回

くしゃみによる脾臓破裂の1例KuKuKeKeより使用くしゃみは気道の内圧を急激に上昇させます。肺はデリケートな臓器なので、急に息を吸ったり吐いたりすると、肺が破れて気胸になってしまうことがあります。しかし、横隔膜を挟んだ脾臓が破裂したという世にも珍しい報告がありまして…。これはやはり腹圧が上がるからなのですが。Reinhold GW, et al. A Near Fatal Sneeze Spontaneous Splenic Rupture: A Case Report and Review of the Literature.Clin Pract Cases Emerg Med. 2017 May 24;1(3):190-193.79歳の女性が、左上腹部の痛みと背中・左肩への放散痛が3時間続いているという理由で救急車を呼びました。女性に外傷歴はなく、痛みの原因として唯一考えられることが、直前に「くしゃみを3回した」というのです。私の妻もそうですが、連続してくしゃみが出てしまう人っていますよね。女性には、腹部造影CT検査が行われました。その後、「脾臓破裂です!」と放射線科から診察医へ緊急連絡があったそうです。患者は当初、バイタルサインが正常で元気そうに見えましたが、その後、血圧が低下し、ショックバイタルに。こりゃいかん。外科医によって脾臓摘出術が行われ、この症例は無事に後遺症なく回復したそうです。脾臓破裂の発生率は脾臓の大きさと相関するという仮説がありますが、いまだにそのリスク因子はよくわかっていません。外傷はもちろんそうですが、それ以外の因子は不明と言わざるを得ません。この論文には、「くしゃみをしただけで脾臓が破裂したという世界初の報告である」と書かれており、原因としてはかなりまれと思われます。みなさんもくしゃみするときは、できるだけ1回で、あまり胸腔・腹腔内圧を高めないように注意してください。そういう意味では、大きな声でくしゃみをしたほうが、大気に開放されてリスクは低いのかもしれませんね。周囲の迷惑になってしまいますが。

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術後せん妄予防に対するスボレキサント+ラメルテオンの有効性

 スボレキサントとラメルテオンは、術後せん妄の予防に有用であると報告されている。これまでの研究では、せん妄誘発リスクと関連するベンゾジアゼピン系睡眠薬との比較が報告されているが、睡眠薬未使用患者との比較は、これまで報告されていなかった。静岡がんセンターの池内 晶哉氏らは、がん患者において、術前にスボレキサントとラメルテオンの併用投与を行った場合と睡眠薬未使用の場合を比較し、術後せん妄の発生率を評価した。Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences誌2023年12月1日号の報告。 対象は、2017年4月~2020年6月に静岡がんセンターの肝胆膵外科で手術を受けたがん患者110例。手術の7日前からスボレキサントとラメルテオンの併用を行った患者50例、スボレキサント、ラメルテオンを含む睡眠薬未使用患者60例を分析した。術後7日間、レトロスペクティブに観察し、術後せん妄の累積発生率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・術後7日間における術後せん妄の累積発生率は、スボレキサントとラメルテオン併用患者で7例(14.0%)、睡眠薬未使用患者で22例(36.7%)であり、両群間で有意な差が認められた(オッズ比:0.28、95%信頼区間:0.11~0.73、p=0.009)。 結果を踏まえ、著者らは「がん患者に対する術前のスボレキサントとラメルテオンの予防的併用投与は、術後せん妄の発生率を低下させるために、有効であることを示唆している」としている。

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病室ベッド横に椅子、医師の着席増え患者満足度アップ/BMJ

 米国・University of Texas Southwestern Medical SchoolのRuchita Iyer氏らによる無作為化二重盲検試験の結果、病室内の椅子の配置を工夫することで、ベッドサイドでの診察中に医師が着席する可能性が有意に高くなり、患者の満足度も高くなることが明らかになった。著者は、「椅子の配置は、簡単でコストがかからずローテクな介入であり、医師に不利益を与えることはない。医療現場でのケアの提供を改善するため、今後は行動的介入戦略を活用すべきである」とまとめている。BMJ誌2023年12月15日クリスマス特集号「MARGINAL GAINS」掲載の報告。椅子をベッドサイドに置くvs.キャビネット内に置いたまま、無作為化試験 研究グループは2022年4月~2023年2月に、米国テキサス州ダラスの郡立病院パークランド記念病院において、病院総合診察医51人による入院患者の診療について観察した。参加患者はオリエンテーションの4つの質問に正しく回答できた者とし、適格者125人の診療を介入群と対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 介入群(60人)では、病室内の椅子を患者のベッドサイド(ベッドから0.9m以内でベッドに向かって)に配置し、対照群(65人)では通常の位置(病室のキャビネット内)とした。 盲検化するため、本研究の目的を、病院総合診察医には診療のばらつきを観察するため、研究チームの医学生には入院患者の内科診療の経験を広げる機会を提供するため、患者には医師の診療パターンと患者の満足度を調査するためと説明し、椅子については言及しなかった。 主要アウトカムは診療中の医師の着席の有無、副次アウトカムはTAISCH(Tool to Assess Inpatient Satisfaction with Care from Hospitalists)質問票およびHCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)質問票で評価した患者の満足度とし、探索的アウトカムとして医師の実際の在室時間、在室時間に関する医師と患者の認識を事前に規定した。介入群で医師が着席する確率は20倍、患者の満足度も向上 診療中に着席した医師は、介入群が60人中38人に対し、対照群は65人中5人であり、オッズ比(OR)は20.7(95%信頼区間[CI]:7.2~59.4、p<0.001)、介入群と対照群の絶対リスク差は0.55(95%CI:0.42~0.69)であった。全体として、医師が着席するために1.8脚の椅子を配置する必要があった。 平均TAISCHスコアは、介入群88.0%(標準偏差8.9%)、対照群84.1%(9.1%)であり、介入によりTAISCHスコアは3.9%改善した(効果推定値:3.9、95%CI:0.9~7.0、p=0.01)。また、HCAHPSの医師スコアが満点であった患者の割合は、介入群97%、対照群85%で、介入により満点のオッズは5.1%(95%CI:1.06~24.9、p=0.04)増加した。 介入は、実際の在室時間(介入群10.6分vs.対照群10.6分)、在室時間に関する医師(9.4分vs.9.8分)および患者(13.1分vs.13.5分)の認識とは関連していなかった。

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麻疹患者が世界的に急増、2022年の死者数は13万6,000人に

 麻疹(はしか)の予防接種率が数年にわたり低下し続けた結果、2021年と比較して、2022年には麻疹の患者数が18%、死亡者数が43%増加したことが、世界保健機関(WHO)と米疾病対策センター(CDC)が「Morbidity and Mortality Weekly Report」11月17日号に発表した報告書で明らかにされた。この報告書によると、2022年の麻疹患者数は900万人、死亡者数は13万6,000人と推定され、そのほとんどは小児であったという。 CDCの世界予防接種部門のディレクターであるJohn Vertefeuille氏は、「麻疹のアウトブレイク(突発的な発生)と死亡者数の増加は驚異的であるが、残念ながら、ここ数年の麻疹ワクチンの接種率の低下に鑑みると、予想された結果ではある」とCDCのニュースリリースで述べている。同氏はさらに、「場所を問わず、麻疹患者の発生は、ワクチン接種が不十分なあらゆる国や地域社会に危険をもたらす。麻疹の発生と死亡を予防するためには、緊急かつ的確な取り組みが重要となる」と語る。 報告書では、大規模または破壊的な麻疹のアウトブレイクが発生した国の数は、2021年には22カ国だったのが2022年には37カ国に増えたことが指摘されている。2022年にアウトブレイクが発生した国を地域ごとに見ると、最も多かったのはアフリカで28カ国、次いで、東地中海地域6カ国、東南アジア2カ国、ヨーロッパ1カ国の順だった。 麻疹は予防接種を2回受けることで予防可能な疾患だが、麻疹ワクチン未接種の小児の数は3300万人(初回接種を受けていない小児が約2200万人、2回目の接種を受けていない小児が約1100万人)に上ると推定されている。2022年の世界全体でのワクチン接種率は、初回が83%、2回目が74%であり、集団免疫を獲得し、地域社会を麻疹のアウトブレイクから守るのに必要な2回目接種率(95%)を大きく下回っていた。特に、低所得国では、麻疹ワクチンの初回接種率が、2019年から2021年の間に71%から67%へ低下し、2022年にはさらに低下して66%と、経時的に低下し続けている。 さらに、麻疹ワクチンの初回接種を受けなかった2200万人の小児の半数以上が、わずか10カ国に住んでいることも示された。それらの国は、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、インド、パキスタン、アンゴラ、フィリピン、インドネシア、ブラジル、マダガスカルである。 WHOの予防接種・ワクチン・生物製剤部門長であるKate O’Brien氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミック後、低所得国での麻疹ワクチン接種率が回復していないことは、行動を起こすべきことを伝える警鐘だと言える。麻疹ウイルスが不公平なウイルスと言われるのは、麻疹に罹患するのがワクチンによる保護を受けていない人だからだ。どこの国の子どもも、住んでいる場所にかかわりなく、命を救う麻疹ワクチンで守られる権利がある」と話している。

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赤ワインで頭痛が生じる人がいるのはなぜ?

 ホリデーシーズンには数え切れないほどのコルク栓が開けられ、たくさんのワインが飲まれることになるが、ほんの少しの飲酒でもひどい目にあう人がいる。それは、たとえ小さなグラス1杯でも赤ワインを飲んだときにだけ頭痛が起きる人だ。こうした中、米カリフォルニア大学デービス校ブドウ栽培・醸造学部のApramita Devi氏らが、このような「赤ワイン頭痛」が引き起こされる原因の解明につながり得る研究結果を、「Scientific Reports」に11月20日発表した。それによると、果物や野菜に含まれているフラボノールの一種であるケルセチンが、赤ワイン頭痛を引き起こしている可能性があるという。 アルコールは、まず肝臓でアセトアルデヒドに分解され、次いで、主にALDH2(2型アセトアルデヒド脱水素酵素)により酢酸に分解される。ALDH2遺伝子には多くの多型があるが、その中に、ALDH2の機能不全を引き起こす変異型アレルが存在する。この遺伝子を持つ人では、アセトアルデヒドが分解されずに蓄積し、これが頭痛を引き起こす。Devi氏は、「アセトアルデヒドは広く知られている有害物質の一つで、刺激性かつ炎症性の物質だ。研究者の間では、アセトアルデヒドの増加は顔が赤くなる原因や、頭痛や吐き気の原因となることが知られている」と説明する。一方、赤ワインには、白ワインに比べてはるかに多くのケルセチンとケルセチン配糖体が含まれている。そこでDevi氏らは、赤ワインに含まれるフラボノイド(ポリフェノールの一種)、特にケルセチン誘導体(ケルセチンから派生した化合物)が、ALDH2の活性に影響を与え、アセトアルデヒドの代謝に関与している可能性について検討した。 実験では、ケルセチンやケルセチン-グルクロニドなど13種類のフェノール類/フラボノイドに対するミトコンドリアALDH2活性の抑制について、in vitroで評価した。その結果、抑制効果が最も高いのはケルセチングルクロニド(78.69±1.21%)であり、逆に抑制効果が最も低いのはエピカテキン(0.34±0.12%)であることが明らかになった。また、ケルセチン誘導体の中でも、ケルセチン-3-グルクロニドはケルセチンよりもはるかに低い濃度でALDH2活性を50%まで低下させることも判明した(50%阻害濃度はケルセチンで26.5μM、ケルセチン-3-グルクロニドで9.62μM)。 論文の共著者である、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)頭痛センターのMorris Levin氏は、「赤ワイン頭痛を起こしやすいタイプの人、特に片頭痛などの一次性頭痛をもともと持っている人では、ごく少量であってもケルセチンを含有するワインを摂取することで頭痛が生じるというのがわれわれの考えだ」と説明し、「われわれは、この長年にわたる謎の解明に向かって正しい道を歩み始めたと感じている。次のステップは、こうした頭痛が生じる人を対象に科学的な検証を行うことだ」と述べている。研究グループは、今後はヒトを対象とした小規模な臨床試験を実施し、ケルセチンを多く含む赤ワインと、ほとんど含まない赤ワインの効果を比較する予定だとしている。 論文の上席著者で、カリフォルニア大学デービス校ブドウ栽培・醸造学部名誉教授のAndrew Waterhouse氏は、「ケルセチンはブドウが日光に曝されることで生成されるため、赤ワインに含まれるケルセチンの濃度は、ブドウが収穫前に浴びた日光の量によって劇的に変化する。ナパバレーのカベルネのように、ブドウの房を露出させて栽培するとケルセチンの濃度が高まり、時には4~5倍にまで増加する」と話す。また、赤ワインに含まれるケルセチンの濃度は、ワインの製法によっても変化するという。 ただ、臨床試験でケルセチンと頭痛の関連が明らかにされたとしても、なぜ一部の人が他の人と比べて赤ワイン頭痛を起こしやすいのかについては依然として不明だと研究グループは説明。考えられる要因として、こうした人は、ケルセチンによって阻害されやすい酵素を持っているか、アセトアルデヒドの蓄積による影響を受けやすいことなどが挙げられるとしている。Waterhouse氏は、「もし、われわれの仮説が実証されれば、これらの重要な問題に取り組むための手がかりを得ることになるだろう」と話している。

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食後に椅子に座らなければエネルギー消費が1割増える

 食後に立っているだけで、座って過ごすよりもエネルギー消費が1割増えるというデータが報告された。ただし、糖尿病でない人を対象に行われたこの研究では、食後の血糖値には有意差が認められなかったことから、代謝性疾患の予防という点では単に立っているだけでなく、軽い運動を加えた方が良い可能性があるという。岐阜大学教育学部保健体育講座の河野寛也氏、上田真也氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」に10月17日掲載された。 エネルギー収支がプラスの状態が続いていると、肥満やそれに伴う糖尿病、心血管疾患などのリスクが上昇する。最近の肥満や糖尿病の増加の一因として、人々の生活の中の座位行動が増えてエネルギー消費が減り、収支がプラスになりやすくなっていることとの関係が指摘されている。特に本研究で対象とした大学生は座学での講義が多いために、一般人口以上に座位行動が長いという報告がある。 一方、エネルギー消費を増やす方法として以前からスポーツや運動が推奨されているが、近年では座位行動を減らすだけでも健康上のメリットを得られることが分かってきた。ただし、食後の座位を立位に変えることの代謝への影響は、十分検討されていない。上田氏らは、食後に立位で過ごすことでエネルギー消費が増え、血糖上昇が抑制されるとの仮説の下、大学生を対象に以下の検討を行った。 研究参加者は15人の男子大学生(平均年齢21.6±1.1歳)で全て非喫煙者であり、代謝性疾患などの既往歴のある学生や何らかの薬剤が処方されている学生は除外されている。試験デザインはクロスオーバー法で、全員に対して食事摂取後に通常の椅子に座るか、身長に合わせて高さを調整したスタンディングデスクを使うという2条件を試行。試行順序は無作為化し、7日間のウォッシュアウト期間を設けて行った。 テスト前日からアルコールやカフェインの摂取と中強度以上の運動を禁止し、夕食は21時までに済ませて、それ以降は翌日の朝食以外、水以外の飲食を禁止した。テスト当日は8時までに、2条件共通の食事を取った上で、12時から300gの白米を食べてもらうという食事負荷テストを実施。食前から食後120分まで、間接熱量測定法に基づくエネルギー消費量、心拍数、血糖値、呼吸交換比(RER)、外因性グルコース代謝率などの推移を把握した。 その結果、食後30~120分のエネルギー消費量は、両条件ともに食前に比べて有意に増大し、食事誘発性熱産生が確認された。ただし、立位条件のエネルギー消費量の方がより高値で推移し、30分おきに測定した全てのポイントで有意差が認められた。条件間の差は1分当たり0.16±0.08kcalであり、立位条件では120分間でのエネルギー消費が10.7±4.6%多かった。 10分おきに測定された心拍数に関しては、食前は有意差がなかったものが、食後は10~120分の全てのポイントで立位の方が有意に高値だった。血糖値は30分おきに測定され、両条件ともに食後30分のみ食前より有意に高値となり、その他のポイントは食前値と有意差がなく、また全ポイントで条件間の有意差は見られなかった。 RERや外因性グルコース代謝率の推移にも、条件間の有意差は観察されなかった。なお、両条件ともに食後60~120分にかけて外因性グルコース代謝率が食前値より高値となり、糖質の酸化が同程度に亢進していたことが確認された。このことから、立位条件でのエネルギー消費の増大は、主として脂質酸化の亢進によるものと考えられた。 著者らは以上の総括として、「食後に立位で過ごすことで、糖代謝への影響は生じないが、エネルギー消費は有意に増大することが確認された」と結論付けている。なお、立位によりエネルギー消費が10.7±4.6%増えるという結果を基に、1日に4時間の座位を立位に置き換えた場合の影響を試算すると、エネルギー収支が38.4kcalマイナスになり、これを毎日続ければ1年間で体脂肪量1.6kg減という効果が予測されるという。 一方、血糖変動には有意差がなかったことに関連して、「食後の血糖上昇は非糖尿病者でも酸化ストレス亢進や血管内皮機能の低下などをもたらし得る。疾患予防のためには、例えば食後に座位と立位を繰り返すなどの運動を加えて糖質の酸化を刺激することが必要ではないか」との考察を付け加えている。

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第77回 mRNAワクチン技術でまさかの「がん治療」

悪性黒色腫・膵がんに対するmRNAワクチン技術Unsplashより使用mRNAワクチンは、新型コロナウイルスに対して有効性や安全性が検証されましたが、がん細胞を対象とした研究が世界各国で進められています。がん細胞に特異的なタンパクを作るmRNAを接種することで、がん細胞を攻撃する細胞性免疫が成立するというメカニズムです。さて、mRNA-4157/V940は、がんの遺伝子変異に基づいて設計された、腫瘍特異的変異抗原(ネオアンチゲン)をコードするmRNAベースの個別化ワクチンです。完全切除後の再発リスクが高い病期のStageIII/IVの悪性黒色腫において、ペムブロリズマブ単剤療法と比較して、疾患の再発または死亡のリスクを有意に減少させたことが1年前に話題となりました。2023年12月14日のModerna社(米国)のプレスリリースでは、当該追跡3年の結果が報告されています。mRNA-4157/V940とペムブロリズマブ併用による術後補助療法によって、ペムブロリズマブ単剤より無再発生存期間の延長が確認され、再発または死亡のリスクが49%減少したことが報告されました(ハザード比[HR]:0.510、95%信頼区間[CI]:0.288~0.906、片側p=0.0095)。また、無遠隔転移生存期間も有意に延長し、遠隔転移の発生または死亡リスクを62%減少させました(HR:0.384、95%CI:0.172~0.858、片側p=0.0077)。―――かなり効果があると言っても差し支えのない成績です。生存期間が非常に短い膵がんにおいても、mRNAベースの個別化ワクチンによってT細胞応答がみられた症例では、生存期間が長くなるのではないかと期待されています1)。「mRNAワクチンを接種したらターボがんになる」というデマmRNAワクチンといえば、「遺伝子が書き換えられて発がんする」という根も葉もないウワサが流れ、一部トンデモがん情報提供インフルエンサーで騒がれたことがありました。とくに、がんの急速な進行のことを独自に「ターボがん」などと名付け、デマが流布されました。そもそも「ターボがん」自体がコンセンサスのない概念なので、二重デマなわけですが…。何億回と接種されてきた新型コロナワクチンですが、現時点で発がんに関する安全性シグナルは検知されていません。アメリカの国立がん研究所においても、「新型コロナワクチンが発がんを引き起こし、再発やがんの進行につながることを支持するデータはない」と明記されています2)。そんなmRNAワクチン技術によって、発がんどころか、がんの治療が行えるというのは、誠に興味深い現象です。参考文献・参考サイト1)Rojas RA, et al. Personalized RNA neoantigen vaccines stimulate T cells in pancreatic cancer. Nature. 2023 Jun;618(7963):144-150.2)National Cancer Institute:COVID-19 Vaccines and People with Cancer

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肥満症へのチルゼパチドの効果、36週で中止vs.投与継続/JAMA

 過体重または肥満の集団において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)/グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)共受容体作動薬であるチルゼパチドは、36週間の投与で20%以上の体重減少をもたらし、投与を中止すると体重が大幅に増加したが、投与継続により初期の体重減少を維持あるいはさらに増強することが、米国・Weill Cornell MedicineのLouis J. Aronne氏らが実施した「SURMOUNT-4試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年12月11日号に掲載された。36週の導入期間後に、投与継続とプラセボに無作為化 SURMOUNT-4試験は、4ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、台湾、米国)の70施設が参加した第III相投与中止臨床試験であり、2021年3月~2023年5月に実施された(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 本試験では、非盲検下にチルゼパチド(最大耐用量として10mgまたは15mg、週1回)を36週間皮下投与する導入期間の後、被験者を盲検下にチルゼパチドを継続する群またはプラセボに切り換える群に無作為に割り付け、52週間投与した。 対象は、BMI値が30以上、またはBMI値27以上で糖尿病を除く体重関連合併症(高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸、心血管疾患)を少なくとも1つ有する、年齢18歳以上の患者であった。 主要エンドポイントは、無作為化(36週目)から88週目までの52週間の体重の平均変化量とした。主な副次エンドポイントは、導入期間中の体重減少分の80%以上を88週目に維持していた患者の割合などであった。投与継続で体重がさらに5.5%減少 670例(平均年齢48歳、女性473例[70.6%]、白人80.1%、平均体重107.3kg、平均BMI値38.4、平均ウエスト周囲長115.2cm)が36週の導入期間を完了し、チルゼパチド継続群335例、プラセボ群335例に割り付けられた。チルゼパチド導入期間中に、体重は平均で20.9%減少した。 36週目から88週目までの体重の平均変化量は、プラセボ群が14.0%増加したのに対し、チルゼパチド継続群は5.5%減少し、有意な差を認めた(群間差:-19.4%、95%信頼区間[CI]:-21.2~-17.7、p<0.001)。 88週目に、導入期間中の体重減少分の少なくとも80%を維持していた患者の割合は、プラセボ群が16.6%(55例)であったのに対し、チルゼパチド継続群は89.5%(300例)と有意に優れた(p<0.001)。また、36週目から88週目までのウエスト周囲長の変化量は、プラセボ群が7.8cm増加したのに対し、チルゼパチド継続群は4.3cm減少し、有意に良好だった(p<0.001)。88週投与で体重25.3%減少、ウエスト22.4cm減少 0週目から88週目までに、体重(チルゼパチド継続群25.3%減少vs.プラセボ群9.9%減少、p<0.001)とウエスト周囲長(22.4cm減少vs.9.0cm減少、p<0.001)は、チルゼパチド継続群で有意に改善した。 36週目から88週目までに最も頻度の高かった有害事象は消化器イベントで、プラセボ群よりもチルゼパチド継続群で高頻度(下痢[10.7% vs.4.8%]、悪心[8.1% vs.2.7%]、嘔吐[5.7% vs.1.2%])であったが、多くが軽度~中等度だった。とくに注目すべき有害事象として、チルゼパチド継続群では悪性腫瘍(3例[0.9%]、プラセボ群も3例[0.9%])、主要有害心血管イベント(3例[0.9%])、重度または重篤な消化器イベント(6例[1.8%])、低血糖症(2例[0.6%])を認めた。 著者は、「これらの結果は、体重の再増加を予防し、体重減少の維持とこれに伴う心代謝系への有益性を保持するためには、チルゼパチドの投与を継続する必要があることを強調するものである」とし、「1年間プラセボに切り換えた後でも、体重が9.9%減少していた点は注目に値するが、心代謝系のリスク因子の最初の改善効果はほぼ消失しており、このような短期治療による長期の有益性とリスクを解明するために、さらなる研究を要する」と指摘している。

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ミシガン州の5人の女性で眼梅毒、感染源は同一の無症候性梅毒男性

 「Morbidity and Mortality Weekly Report」11月24日号に、米ミシガン州で2022年3月から7月の間に5人の女性において確認された眼梅毒の症例に関する報告書が掲載された。この報告書をまとめた、米カラマズー郡保健地域サービス局(KCHCSD)のWilliam Nettleton氏らは、これらの女性がいずれも、無症候性梅毒の同一の男性と性的関係を持っていたこと、および眼梅毒自体が非常にまれなことから、この男性が持っていた梅毒菌(Treponema pallidum)の株が眼合併症のリスクを高めたのではないかと見ている。 梅毒菌は、感染しても多くの場合、症状がすぐに現れることはないため、気付かないうちに他者を感染させてしまうことがある。梅毒の症状は、時間とともに全身に進行していき、視力の永久的な損傷など深刻な神経症状を引き起こす可能性がある。 残念ながら梅毒は、地域を問わず、特に性的に活発な米国人の間で復活を遂げつつある。Nettleton氏らによると、ミシガン州では人口10万人当たりの症例数が2016年の3.8人から2022年には9.7人にまで増加しており、特にミシガン州南西部(カラマズー周辺)での増加が顕著だという。 2022年のミシガン州のアウトブレイクでは、上記の40〜60歳の女性5人が眼梅毒で入院した。患者の詳細は以下の通り。患者A:梅毒トレポネーマ抗体検査で陽性が判明したことから、眼科医により3月にKCHCSDへ紹介された。患者は目のかすみと失明の恐怖を訴え、また、単純ヘルペスウイルス感染症の再発との見立てでバラシクロビルを使用していたが病変が改善しなかったことを報告した。患者B:4月に頭痛、軽度の難聴、目のかすみの悪化と複視の悪化を訴え、神経梅毒と診断されて入院した。患者C:5月に梅毒検査で陽性が判明。患者には、全身の発疹、手のひらの皮むけ、視界に浮遊する斑点が見える(飛蚊症)などの症状が現れていた。患者D:膣潰瘍と、手および腹部に発疹が現れており、6月に眼科医から眼梅毒の診断を受けた。患者E:5月に飛蚊症などを訴えて眼科で診察を受け、7月に眼梅毒と神経梅毒と診断されて入院した。 保健員が5月にこれらの女性と性的関係を持った男性を探し出し、梅毒検査を行ったところ、陽性であったが、梅毒の症状は現れていなかった。この男性と5人の女性は、最終的にペニシリン治療を受け、全員が治癒した。 眼梅毒のアウトブレイクは他にも記録されているが、研究グループによると、ミシガン州のアウトブレイクは、「異性間性的接触に起因する症例として初めて記録されたもの」であるという。また、梅毒の合併症は、通常、病状がより進行した段階で生じるにもかかわらず、今回の症例では、「全ての患者が梅毒の初期段階にあった」ことを懸念すべき点として挙げている。さらに、過去に確認された多くのクラスターと異なり、注射薬の使用やトランザクションセックスを報告した患者はおらず、全員がHIV陰性であったことにも言及している。 報告書ではこのほかにも、2022年のミシガン州における梅毒症例の大半は男性であるものの、梅毒症例に女性が占める割合は、2016年には9%だったのが2022年には23%に増加している点も指摘されている。 Nettleton氏らは、「梅毒は、迅速に診断して治療すれは、永続的な視覚障害や聴覚障害を含む全身合併症を予防できる疾患だ」と述べ、医師に、梅毒の症例に注視するよう助言している。

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インターネットの使用はメンタルヘルスに有害か

 ネットサーフィンはメンタルヘルスに悪影響を与えると考えられがちだが、インターネットの使用が心理的ウェルビーイングやメンタルヘルスに大きな脅威を与えることはないことを明らかにした、画期的な研究結果が報告された。これは、国レベルでのインターネットおよびブロードバンドの利用状況を、世界各国の数百万人の心理的ウェルビーイングやメンタルヘルスと比較した上で導き出された結果であるという。英オックスフォード大学インターネット研究所のAndrew Przybylski氏らによるこの研究の詳細は、「Clinical Psychological Science」に11月27日掲載された。 この研究は、インターネットの使用と心理的ウェルビーイングおよびメンタルヘルスとの関連を二つの研究で検討したもの。一つ目の研究では、まず2005年から2022年の間に実施された調査データを基に、168カ国、243万4,203人(15〜89歳)の心理的ウェルビーイングを、人生に対する満足度、ポジティブな経験、およびネガティブな経験の3つの側面から評価。得られた結果を、国民1人当たりのインターネット利用者数とモバイルブロードバンドの契約者数の時系列データと照らし合わせ、過去20年におけるインターネットとモバイルブロードバンドの使用が心理的ウェルビーイングにどのような影響を与えたのかを検討した。 その結果、インターネット技術の使用が広がるにつれ、心理的ウェルビーイングが経時的に変化したことを支持するエビデンスはほとんど/まったく認められないことが明らかになった。ポジティブな経験とネガティブな経験は経時的に増加していたが、この変化は統計学的には、ほぼゼロに等しいことが示された。 二つ目の研究では、保健指標評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation;IHME)のGBD(疾病負荷研究)2019で報告されている、2000年から2019年における世界204カ国での不安障害とうつ病、自傷行為の有病率に関するデータを用いて、これらとインターネットおよびモバイルブロードバンドの使用との関連について検討された。その結果、不安障害の有病率には増加が、うつ病と自傷行為の有病率には低下が認められたものの、統計学的には、こうした変化はほぼゼロに等しいことが明らかになった。 Przybylski氏は、「われわれは、年齢や性別によって結果が異なる可能性を考えて詳細に検証したが、特定のグループでよりリスクが高いとする一般的な考えを支持する証拠は見つからなかった」と同大学のニュースリリースで述べている。 このような結果が得られたとはいえ、研究グループは、インターネット利用の影響についての理解を深めるためには、テクノロジー企業からより多くのデータを提供してもらう必要があると主張している。また、「インターネット技術が与える影響に関する研究が停滞している原因は、そのような研究に欠かせない重要なデータが、テクノロジー企業やオンラインプラットフォームによって収集され、非公開で保管されているせいだ」と指摘する。そして、「人々がインターネット技術をどの程度取り入れ、使用しているかに関するデータを、全ての関係者がより詳細に、より透明性をもって研究することが極めて重要だ。これらのデータは、世界的なテクノロジー企業によって、マーケティングや製品改良のために収集され、継続的に分析されてはいるが、残念ながら、個々の研究のために利用することはできないのが現状だ」と述べている。

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英語で「(薬の)用量の調節」は?【1分★医療英語】第111回

第111回 英語で「(薬の)用量の調節」は?《例文1》The titration will likely take a few weeks.(用量の調節には、数週間かかりそうです)《例文2》We will need to taper off gradually and monitor the response.(様子を見ながら、少しずつ用量を減らす必要があります)《解説》“titration”(タイトレーション)は、日本語では「滴定(てきてい)投与」に当たり、医療現場でこの用語を使うときは「薬の用量を少しずつ変えて調整する」ことを指します。少しずつ上げる“up-titration”や少しずつ下げる“down-titration”、ゆっくり変更する“slow titration”と、ほかの言葉と組み合わせて使うことも多いです。医療従事者同士の会話やカルテに記載するときはそのまま“titration”を使いますが、専門用語なので、患者さんによっては“titration”の意味がわからない場合もあります。そうした場合には、“gradually adjusting the dose”(徐々に投与量を調整します)や、“slowly changing your medication amount”(薬の量を少しずつ変えていきます)などと言い換えて説明します。また、例文にあるように、徐々に薬の用量を減らすとき、“taper down”や“taper off”という言い方もします。“taper”とは「先細り」という意味で、とくに徐々に減らして最終的には服用をやめる意図を含む際に使います。講師紹介

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中年期日本人のBMIや体重変化と認知症リスク

 中年期のBMIや体重変化と認知症発症リスクとの性別特異的相関性に関するエビデンスは、とくにアジア人集団において不足している。高知大学の田代 末和氏らは、40~59歳の日本人を対象にBMIや体重変化と認知症発症リスクとの関連を調査した。その結果、中年期の肥満は認知症発症のリスク因子であり、中年後期の体重減少は体重増加よりも、そのリスクを高める可能性があることを報告した。Alzheimer's & Dementia(Amsterdam、Netherlands)誌2023年11月23日号の報告。 40~59歳の地域在住日本人3万7,414人を対象にベースライン時(1990年または1993年)およびフォローアップ期間10年間のBMIデータを収集した。体重変化は、ベースライン時と10年間フォローアップ調査の測定結果より算出した。2006~16年の認知症発症を確認するため、介護保険認定を用いた。ハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の肥満、10年フォローアップ調査の低体重において、認知症リスクの増加が確認された。・ベースライン後の体重減少は、体重増加よりも高リスクであった。・これらの関係に性差は認められなかった。 著者らは「男女ともに、中年期の肥満は認知症発症リスクを増加させ、その後の体重減少は、リスクを増大させることから、成人期を通じて健全な体重を保つことは、認知症予防につながるであろう」としている。

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糖尿病とうつ病の併存で死亡リスクがより高まる

 2型糖尿病患者はうつ病を併発していることが少なくないこと、そして両者の併存により死亡リスクが4倍以上高くなることを示すデータが報告された。米ニューメキシコ州立大学のJagdish Khubchandani氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes & Metabolic Syndrome: Clinical Research & Reviews」11月号に掲載された。 Khubchandani氏によると、「米国では3500万人以上が糖尿病に罹患し、9500万人以上が前糖尿病状態にあって、糖尿病は米国における主要な死因の一つに挙げられる」という。また同氏は、「残念ながら、これらの人の多くがうつ病や不安症などのメンタルヘルス上の問題を抱えている。しかし、2型糖尿病とうつ病を併発した場合の死亡リスクに及ぼす影響は、これまでのところ十分に検討されていない」と、研究の背景を説明している。 研究では、2005~2010年の米国国民健康栄養調査(NHANES)と2019年までの同国の死亡統計のデータが解析に用いられた。NHANESの解析対象は1万4,920人の米国人成人であり、そのうち約10人に1人がうつ病(9.08%)または2型糖尿病(10%)に罹患していた。うつ病患者は、女性、喫煙者、肥満者、低所得者、および教育歴の短い人に多く、また2型糖尿病患者や心血管疾患の有病率が有意に高かった。 交絡因子調整後、2型糖尿病患者は糖尿病でない人に比べて死亡リスクが1.70倍高いことが明らかになった。この結果をうつ病の併発の有無別に見ると、うつ病のない2型糖尿病患者では1.55倍のリスク上昇であるのに対して、うつ病と2型糖尿病を併発している患者は死亡リスクが4.24倍であることが示された。 このような結果の背景をKhubchandani氏は、「糖尿病という病気は衰弱をもたらしやすい病気だが、うつ病を併発するとその状態がより悪化しやすくなる。さらに不運なことに、糖尿病を患う多くの米国人は、経済的にも精神的にも負担の生じやすい生活を強いられており、そのために病気の治療が困難な状況にある」と解説。また著者らは、「心理・社会的因子や生物学的メカニズムが、うつ病と糖尿病の併発の原因となっている可能性がある」と述べている。 具体的には、不十分な治療、遺伝的背景、ライフスタイル関連因子、うつ病や2型糖尿病以外の疾患を併発するリスクの高さ、ストレス、医療アクセスの低下、経済的負担の増加、免疫や血管系の機能不全などが、共通の原因として挙げられるとのことだ。実際、今回の研究では、うつ病と糖尿病を併発している人には、いくつかの共通する特徴があることも示された。例えば、収入が少ないことや教育歴が短いこと、人種/民族的マイノリティーであること、および不健康なライフスタイルであること、その他の慢性疾患の併存などが認められた。 先進国では、一般的に糖尿病患者の約75%が血糖管理のための治療を受けているとされる。しかし、何らかのメンタルヘルス上の問題を抱えている患者の50%以上が、その適切なケアを受けられていないと、著者らは指摘している。Khubchandani氏も、「糖尿病と併発することの多いメンタルヘルス上の問題に関するケアの質を向上させることで、糖尿病とともに生きる人々の幸福感の向上とともに、寿命を延長できる可能性がある」と語っている。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その2【「実践的」臨床研究入門】第39回

C(比較対照)をおかなければ因果関係(影響や効果など)はわからないまずは、よくある? CMのお話です。 ◯◯サプリメントを飲み続けてやせた人の経験談をもとに、◯◯サプリメントを飲んだ! やせた! ◯◯サプリメントはダイエットに効いた!? 「※個人の感想です」誰もが「眉唾」な話、と思うのではないでしょうか。なぜなら、ダイエットに成功したのは、サプリメント(だけ)ではなく、食事制限や運動などによる効果の結果かもしれないからです。このような3段論法まがいの誤った論理展開を、(雨乞い)3「た」論法、と呼びます。これは、東京医科歯科大学名誉教授(臨床薬理学・生物統計学)であられた故佐久間 昭先生が著書で述べられた、以下の文章に由来するようです。雨乞いの太鼓を叩いた、雨が降った、故に雨乞いの太鼓が雨を降らせた?雨乞いの太鼓は雨が降るまで続けられるでしょうし、降り止まない雨はありませんよね。したがって、雨乞いの太鼓と降雨に因果関係があると言うのは問題がある、とすることには異論はないでしょう。臨床現場における薬剤などの治療効果判定でも同じです。なんらかの疾患(症状)に、ある薬剤を投与し、効果? がみられたケースだけを取り上げて、単純に「使った、治った、効いた」とするのも、また3「た」論法です。C(比較対照)をおかなければ、E(曝露要因)もしくはI(介入)とO(アウトカム)との関連や因果関係(影響や効果)は検証できないのです。それでは、理想的なCとはどのようなものでしょうか。理想的なC、比較対照群とは、臨床研究でOとの関連や因果関係(影響や効果)を検証したいEもしくはI以外の「背景要因」がまったく同じ集団、となります。「背景要因」は測定可能なものと測定できないものに分けられます。測定可能な背景要因には、臨床研究論文のTabel 1.でよく記述されている以下のような要因が挙げられます。年齢、性別、併存疾患、BMI、各種検査所見、等々一方、背景要因には、日常臨床では測定不可能なものも多々あります。たとえば、以下のような要因です。遺伝的背景、生活習慣、社会経済因子、等々理想的なC、比較対照群を設定するためには「ドラえもん」のひみつ道具のひとつである「コピーロボット」が必要だよね、と筆者はよく説明しています。「コピーロボット」はその鼻を押すことで、押した人間(動物)とそっくりなコピーとなるロボットです。「ドラえもん」どんぴしゃり世代の筆者にとっては、わかり易い説明だと思っているのですが、最近の若い方にはピンとこないかもしれません…。今のところ「コピーロボット」が存在しないこの世の中では、同じ個人が「同時にあるE」もしくは「Iがあった場合となかった場合」を比較することはできません(反事実モデル)。ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)では、ランダム(無作為)割付により、IとCの間の背景要因が測定可能なものだけでなく測定不可能なものも均衡化することが期待され、反事実モデルを推定しているのです(連載第6回参照)。われわれが計画しているのは観察研究のひとつである(後ろ向き)コホート研究です(連載第37回参照)。観察研究でも、皆さんが大好きな多変量解析やマッチングなどの手法を用いてRCTと同様に、反事実モデルの推定を試みています。言い換えると、多変量解析モデルなどの統計学的手法を用いて、いわゆる「交絡因子」を制御し、EとOとの関連や因果関係を検証しているのです。次回からは、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、具体的な統計解析手法についても解説していきます。

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アンドロゲン遮断療法後に狭心症を発症した症例【見落とさない!がんの心毒性】第27回

※本症例は、実臨床のエピソードに基づく架空のモデル症例です。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別70代・男性主訴ECG異常、NT-proBNP高値既往歴高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙歴(+)、飲酒歴(-)家族歴父親:大腸がん、母親:狭心症現病歴X-9年の人間ドック受診時にPSA上昇を指摘されたため精査目的で泌尿器科を受診、前立腺生検を施行した。初回ならびに2回目(X-7年)の生検では陰性であったが、X-5年のドック検査でPSAがさらに上昇したことからMRI検査ならびに3回目の生検を施行し、前立腺がんと診断された。がん治療はアンドロゲン遮断療法(androgen deprivation therapy:ADT)と放射線の併用療法が選択された。X-5年3月から同年12月まで第一世代抗アンドロゲン薬が投与され、X-5年4月からX-4年6月までGnRHアゴニストが併用された。さらに、放射線療法(78Gy)をX-5年10~12月まで施行された。その結果、PSAは正常化した。がん治療終了後に心臓CT検査を施行したが、冠動脈に有意な狭窄は認めなかった。その後、泌尿器科の定期的な受診とかかりつけ医で生活習慣病の治療を受けており、引き続き年1回の人間ドックは当院を受診していた。X年に受診した人間ドックで運動負荷試験陽性(図1)、NT-pro BNP高値を指摘された。胸痛などの自覚症状は認めなかったが糖尿病などのリスク因子を有しており、虚血性心疾患の合併を疑い、精査加療目的で循環器内科を紹介し受診された。(図1)X年の人間ドックでの運動負荷心電図試験(マスターダブル負荷)画像を拡大するX年に受診した人間ドック時運動負荷心電図ではV4-V6でST低下を認め、NT-proBNP 152pg/mLの上昇を認めた。本例は、前立腺がん治療終了後に心臓CT検査が施行されるも、冠動脈に有意狭窄は認められず、前年までの運動負荷心電図所見の異常はなかった。心電図変化は比較的軽く、自覚症状も認めなかったが、高齢かつ複数の動脈硬化危険因子を有していたこと、ADTを施行されていたことから心血管疾患の合併を疑い精査を行った。循環器専門病院で施行した冠動脈造影検査では左冠動脈#7に75~90%狭窄を認めたため、同部位に冠動脈形成術(ステント留置術)を施行した。【問題】本症例の治療に際して注意する点として、適切な答えを選択せよ。a.前立腺がん症例の多くは、治療前より高齢、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの心血管リスクを複数有している事が多く、がん治療を施行する際には心血管毒性に対する注意が必要である。b.ADTの施行後は肥満症、糖尿病、脂質異常症を来すことがあり、その後の動脈硬化症や冠動脈疾患の発症に注意が必要である。c.症候性冠動脈疾患の既往を有する症例に対し、ADTを施行する際には、心血管リスクの有無を考慮したがん治療薬の選択が重要である。d.ADTにおける筋肉系合併症としてはサルコペニア・運動耐容能の低下、骨関連合併症としては骨粗鬆症・骨折などを認めることがあるので注意を要する。e.すべて正しい1)Studer UE, et al. J Clin Oncol. 2006;24:1868–1876.2)Calais da Silva FE, et al. Eur Urol. 2009;55:1269–1277.3)Weiner AB, et al. Cancer. 2021;127:2895-2904.4)Klimis H, et al. J Am Coll Cardiol CardioOnc. 2023;5:70-81.5)Narayan V, et al. J Am Coll Cardiol CardioOnc. 2021;3:737-741.6)Chen DY, et al. Prostate. 2021;81:902-912.7)Okwuosa TM, et al. Circulation. 2021;14:e000082.8)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;432:4229-4361.講師紹介

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