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術後せん妄予防に対するスボレキサント+ラメルテオンの有効性

 スボレキサントとラメルテオンは、術後せん妄の予防に有用であると報告されている。これまでの研究では、せん妄誘発リスクと関連するベンゾジアゼピン系睡眠薬との比較が報告されているが、睡眠薬未使用患者との比較は、これまで報告されていなかった。静岡がんセンターの池内 晶哉氏らは、がん患者において、術前にスボレキサントとラメルテオンの併用投与を行った場合と睡眠薬未使用の場合を比較し、術後せん妄の発生率を評価した。Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences誌2023年12月1日号の報告。 対象は、2017年4月~2020年6月に静岡がんセンターの肝胆膵外科で手術を受けたがん患者110例。手術の7日前からスボレキサントとラメルテオンの併用を行った患者50例、スボレキサント、ラメルテオンを含む睡眠薬未使用患者60例を分析した。術後7日間、レトロスペクティブに観察し、術後せん妄の累積発生率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・術後7日間における術後せん妄の累積発生率は、スボレキサントとラメルテオン併用患者で7例(14.0%)、睡眠薬未使用患者で22例(36.7%)であり、両群間で有意な差が認められた(オッズ比:0.28、95%信頼区間:0.11~0.73、p=0.009)。 結果を踏まえ、著者らは「がん患者に対する術前のスボレキサントとラメルテオンの予防的併用投与は、術後せん妄の発生率を低下させるために、有効であることを示唆している」としている。

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病室ベッド横に椅子、医師の着席増え患者満足度アップ/BMJ

 米国・University of Texas Southwestern Medical SchoolのRuchita Iyer氏らによる無作為化二重盲検試験の結果、病室内の椅子の配置を工夫することで、ベッドサイドでの診察中に医師が着席する可能性が有意に高くなり、患者の満足度も高くなることが明らかになった。著者は、「椅子の配置は、簡単でコストがかからずローテクな介入であり、医師に不利益を与えることはない。医療現場でのケアの提供を改善するため、今後は行動的介入戦略を活用すべきである」とまとめている。BMJ誌2023年12月15日クリスマス特集号「MARGINAL GAINS」掲載の報告。椅子をベッドサイドに置くvs.キャビネット内に置いたまま、無作為化試験 研究グループは2022年4月~2023年2月に、米国テキサス州ダラスの郡立病院パークランド記念病院において、病院総合診察医51人による入院患者の診療について観察した。参加患者はオリエンテーションの4つの質問に正しく回答できた者とし、適格者125人の診療を介入群と対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 介入群(60人)では、病室内の椅子を患者のベッドサイド(ベッドから0.9m以内でベッドに向かって)に配置し、対照群(65人)では通常の位置(病室のキャビネット内)とした。 盲検化するため、本研究の目的を、病院総合診察医には診療のばらつきを観察するため、研究チームの医学生には入院患者の内科診療の経験を広げる機会を提供するため、患者には医師の診療パターンと患者の満足度を調査するためと説明し、椅子については言及しなかった。 主要アウトカムは診療中の医師の着席の有無、副次アウトカムはTAISCH(Tool to Assess Inpatient Satisfaction with Care from Hospitalists)質問票およびHCAHPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)質問票で評価した患者の満足度とし、探索的アウトカムとして医師の実際の在室時間、在室時間に関する医師と患者の認識を事前に規定した。介入群で医師が着席する確率は20倍、患者の満足度も向上 診療中に着席した医師は、介入群が60人中38人に対し、対照群は65人中5人であり、オッズ比(OR)は20.7(95%信頼区間[CI]:7.2~59.4、p<0.001)、介入群と対照群の絶対リスク差は0.55(95%CI:0.42~0.69)であった。全体として、医師が着席するために1.8脚の椅子を配置する必要があった。 平均TAISCHスコアは、介入群88.0%(標準偏差8.9%)、対照群84.1%(9.1%)であり、介入によりTAISCHスコアは3.9%改善した(効果推定値:3.9、95%CI:0.9~7.0、p=0.01)。また、HCAHPSの医師スコアが満点であった患者の割合は、介入群97%、対照群85%で、介入により満点のオッズは5.1%(95%CI:1.06~24.9、p=0.04)増加した。 介入は、実際の在室時間(介入群10.6分vs.対照群10.6分)、在室時間に関する医師(9.4分vs.9.8分)および患者(13.1分vs.13.5分)の認識とは関連していなかった。

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麻疹患者が世界的に急増、2022年の死者数は13万6,000人に

 麻疹(はしか)の予防接種率が数年にわたり低下し続けた結果、2021年と比較して、2022年には麻疹の患者数が18%、死亡者数が43%増加したことが、世界保健機関(WHO)と米疾病対策センター(CDC)が「Morbidity and Mortality Weekly Report」11月17日号に発表した報告書で明らかにされた。この報告書によると、2022年の麻疹患者数は900万人、死亡者数は13万6,000人と推定され、そのほとんどは小児であったという。 CDCの世界予防接種部門のディレクターであるJohn Vertefeuille氏は、「麻疹のアウトブレイク(突発的な発生)と死亡者数の増加は驚異的であるが、残念ながら、ここ数年の麻疹ワクチンの接種率の低下に鑑みると、予想された結果ではある」とCDCのニュースリリースで述べている。同氏はさらに、「場所を問わず、麻疹患者の発生は、ワクチン接種が不十分なあらゆる国や地域社会に危険をもたらす。麻疹の発生と死亡を予防するためには、緊急かつ的確な取り組みが重要となる」と語る。 報告書では、大規模または破壊的な麻疹のアウトブレイクが発生した国の数は、2021年には22カ国だったのが2022年には37カ国に増えたことが指摘されている。2022年にアウトブレイクが発生した国を地域ごとに見ると、最も多かったのはアフリカで28カ国、次いで、東地中海地域6カ国、東南アジア2カ国、ヨーロッパ1カ国の順だった。 麻疹は予防接種を2回受けることで予防可能な疾患だが、麻疹ワクチン未接種の小児の数は3300万人(初回接種を受けていない小児が約2200万人、2回目の接種を受けていない小児が約1100万人)に上ると推定されている。2022年の世界全体でのワクチン接種率は、初回が83%、2回目が74%であり、集団免疫を獲得し、地域社会を麻疹のアウトブレイクから守るのに必要な2回目接種率(95%)を大きく下回っていた。特に、低所得国では、麻疹ワクチンの初回接種率が、2019年から2021年の間に71%から67%へ低下し、2022年にはさらに低下して66%と、経時的に低下し続けている。 さらに、麻疹ワクチンの初回接種を受けなかった2200万人の小児の半数以上が、わずか10カ国に住んでいることも示された。それらの国は、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、インド、パキスタン、アンゴラ、フィリピン、インドネシア、ブラジル、マダガスカルである。 WHOの予防接種・ワクチン・生物製剤部門長であるKate O’Brien氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミック後、低所得国での麻疹ワクチン接種率が回復していないことは、行動を起こすべきことを伝える警鐘だと言える。麻疹ウイルスが不公平なウイルスと言われるのは、麻疹に罹患するのがワクチンによる保護を受けていない人だからだ。どこの国の子どもも、住んでいる場所にかかわりなく、命を救う麻疹ワクチンで守られる権利がある」と話している。

224.

赤ワインで頭痛が生じる人がいるのはなぜ?

 ホリデーシーズンには数え切れないほどのコルク栓が開けられ、たくさんのワインが飲まれることになるが、ほんの少しの飲酒でもひどい目にあう人がいる。それは、たとえ小さなグラス1杯でも赤ワインを飲んだときにだけ頭痛が起きる人だ。こうした中、米カリフォルニア大学デービス校ブドウ栽培・醸造学部のApramita Devi氏らが、このような「赤ワイン頭痛」が引き起こされる原因の解明につながり得る研究結果を、「Scientific Reports」に11月20日発表した。それによると、果物や野菜に含まれているフラボノールの一種であるケルセチンが、赤ワイン頭痛を引き起こしている可能性があるという。 アルコールは、まず肝臓でアセトアルデヒドに分解され、次いで、主にALDH2(2型アセトアルデヒド脱水素酵素)により酢酸に分解される。ALDH2遺伝子には多くの多型があるが、その中に、ALDH2の機能不全を引き起こす変異型アレルが存在する。この遺伝子を持つ人では、アセトアルデヒドが分解されずに蓄積し、これが頭痛を引き起こす。Devi氏は、「アセトアルデヒドは広く知られている有害物質の一つで、刺激性かつ炎症性の物質だ。研究者の間では、アセトアルデヒドの増加は顔が赤くなる原因や、頭痛や吐き気の原因となることが知られている」と説明する。一方、赤ワインには、白ワインに比べてはるかに多くのケルセチンとケルセチン配糖体が含まれている。そこでDevi氏らは、赤ワインに含まれるフラボノイド(ポリフェノールの一種)、特にケルセチン誘導体(ケルセチンから派生した化合物)が、ALDH2の活性に影響を与え、アセトアルデヒドの代謝に関与している可能性について検討した。 実験では、ケルセチンやケルセチン-グルクロニドなど13種類のフェノール類/フラボノイドに対するミトコンドリアALDH2活性の抑制について、in vitroで評価した。その結果、抑制効果が最も高いのはケルセチングルクロニド(78.69±1.21%)であり、逆に抑制効果が最も低いのはエピカテキン(0.34±0.12%)であることが明らかになった。また、ケルセチン誘導体の中でも、ケルセチン-3-グルクロニドはケルセチンよりもはるかに低い濃度でALDH2活性を50%まで低下させることも判明した(50%阻害濃度はケルセチンで26.5μM、ケルセチン-3-グルクロニドで9.62μM)。 論文の共著者である、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)頭痛センターのMorris Levin氏は、「赤ワイン頭痛を起こしやすいタイプの人、特に片頭痛などの一次性頭痛をもともと持っている人では、ごく少量であってもケルセチンを含有するワインを摂取することで頭痛が生じるというのがわれわれの考えだ」と説明し、「われわれは、この長年にわたる謎の解明に向かって正しい道を歩み始めたと感じている。次のステップは、こうした頭痛が生じる人を対象に科学的な検証を行うことだ」と述べている。研究グループは、今後はヒトを対象とした小規模な臨床試験を実施し、ケルセチンを多く含む赤ワインと、ほとんど含まない赤ワインの効果を比較する予定だとしている。 論文の上席著者で、カリフォルニア大学デービス校ブドウ栽培・醸造学部名誉教授のAndrew Waterhouse氏は、「ケルセチンはブドウが日光に曝されることで生成されるため、赤ワインに含まれるケルセチンの濃度は、ブドウが収穫前に浴びた日光の量によって劇的に変化する。ナパバレーのカベルネのように、ブドウの房を露出させて栽培するとケルセチンの濃度が高まり、時には4~5倍にまで増加する」と話す。また、赤ワインに含まれるケルセチンの濃度は、ワインの製法によっても変化するという。 ただ、臨床試験でケルセチンと頭痛の関連が明らかにされたとしても、なぜ一部の人が他の人と比べて赤ワイン頭痛を起こしやすいのかについては依然として不明だと研究グループは説明。考えられる要因として、こうした人は、ケルセチンによって阻害されやすい酵素を持っているか、アセトアルデヒドの蓄積による影響を受けやすいことなどが挙げられるとしている。Waterhouse氏は、「もし、われわれの仮説が実証されれば、これらの重要な問題に取り組むための手がかりを得ることになるだろう」と話している。

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食後に椅子に座らなければエネルギー消費が1割増える

 食後に立っているだけで、座って過ごすよりもエネルギー消費が1割増えるというデータが報告された。ただし、糖尿病でない人を対象に行われたこの研究では、食後の血糖値には有意差が認められなかったことから、代謝性疾患の予防という点では単に立っているだけでなく、軽い運動を加えた方が良い可能性があるという。岐阜大学教育学部保健体育講座の河野寛也氏、上田真也氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」に10月17日掲載された。 エネルギー収支がプラスの状態が続いていると、肥満やそれに伴う糖尿病、心血管疾患などのリスクが上昇する。最近の肥満や糖尿病の増加の一因として、人々の生活の中の座位行動が増えてエネルギー消費が減り、収支がプラスになりやすくなっていることとの関係が指摘されている。特に本研究で対象とした大学生は座学での講義が多いために、一般人口以上に座位行動が長いという報告がある。 一方、エネルギー消費を増やす方法として以前からスポーツや運動が推奨されているが、近年では座位行動を減らすだけでも健康上のメリットを得られることが分かってきた。ただし、食後の座位を立位に変えることの代謝への影響は、十分検討されていない。上田氏らは、食後に立位で過ごすことでエネルギー消費が増え、血糖上昇が抑制されるとの仮説の下、大学生を対象に以下の検討を行った。 研究参加者は15人の男子大学生(平均年齢21.6±1.1歳)で全て非喫煙者であり、代謝性疾患などの既往歴のある学生や何らかの薬剤が処方されている学生は除外されている。試験デザインはクロスオーバー法で、全員に対して食事摂取後に通常の椅子に座るか、身長に合わせて高さを調整したスタンディングデスクを使うという2条件を試行。試行順序は無作為化し、7日間のウォッシュアウト期間を設けて行った。 テスト前日からアルコールやカフェインの摂取と中強度以上の運動を禁止し、夕食は21時までに済ませて、それ以降は翌日の朝食以外、水以外の飲食を禁止した。テスト当日は8時までに、2条件共通の食事を取った上で、12時から300gの白米を食べてもらうという食事負荷テストを実施。食前から食後120分まで、間接熱量測定法に基づくエネルギー消費量、心拍数、血糖値、呼吸交換比(RER)、外因性グルコース代謝率などの推移を把握した。 その結果、食後30~120分のエネルギー消費量は、両条件ともに食前に比べて有意に増大し、食事誘発性熱産生が確認された。ただし、立位条件のエネルギー消費量の方がより高値で推移し、30分おきに測定した全てのポイントで有意差が認められた。条件間の差は1分当たり0.16±0.08kcalであり、立位条件では120分間でのエネルギー消費が10.7±4.6%多かった。 10分おきに測定された心拍数に関しては、食前は有意差がなかったものが、食後は10~120分の全てのポイントで立位の方が有意に高値だった。血糖値は30分おきに測定され、両条件ともに食後30分のみ食前より有意に高値となり、その他のポイントは食前値と有意差がなく、また全ポイントで条件間の有意差は見られなかった。 RERや外因性グルコース代謝率の推移にも、条件間の有意差は観察されなかった。なお、両条件ともに食後60~120分にかけて外因性グルコース代謝率が食前値より高値となり、糖質の酸化が同程度に亢進していたことが確認された。このことから、立位条件でのエネルギー消費の増大は、主として脂質酸化の亢進によるものと考えられた。 著者らは以上の総括として、「食後に立位で過ごすことで、糖代謝への影響は生じないが、エネルギー消費は有意に増大することが確認された」と結論付けている。なお、立位によりエネルギー消費が10.7±4.6%増えるという結果を基に、1日に4時間の座位を立位に置き換えた場合の影響を試算すると、エネルギー収支が38.4kcalマイナスになり、これを毎日続ければ1年間で体脂肪量1.6kg減という効果が予測されるという。 一方、血糖変動には有意差がなかったことに関連して、「食後の血糖上昇は非糖尿病者でも酸化ストレス亢進や血管内皮機能の低下などをもたらし得る。疾患予防のためには、例えば食後に座位と立位を繰り返すなどの運動を加えて糖質の酸化を刺激することが必要ではないか」との考察を付け加えている。

226.

第77回 mRNAワクチン技術でまさかの「がん治療」

悪性黒色腫・膵がんに対するmRNAワクチン技術Unsplashより使用mRNAワクチンは、新型コロナウイルスに対して有効性や安全性が検証されましたが、がん細胞を対象とした研究が世界各国で進められています。がん細胞に特異的なタンパクを作るmRNAを接種することで、がん細胞を攻撃する細胞性免疫が成立するというメカニズムです。さて、mRNA-4157/V940は、がんの遺伝子変異に基づいて設計された、腫瘍特異的変異抗原(ネオアンチゲン)をコードするmRNAベースの個別化ワクチンです。完全切除後の再発リスクが高い病期のStageIII/IVの悪性黒色腫において、ペムブロリズマブ単剤療法と比較して、疾患の再発または死亡のリスクを有意に減少させたことが1年前に話題となりました。2023年12月14日のModerna社(米国)のプレスリリースでは、当該追跡3年の結果が報告されています。mRNA-4157/V940とペムブロリズマブ併用による術後補助療法によって、ペムブロリズマブ単剤より無再発生存期間の延長が確認され、再発または死亡のリスクが49%減少したことが報告されました(ハザード比[HR]:0.510、95%信頼区間[CI]:0.288~0.906、片側p=0.0095)。また、無遠隔転移生存期間も有意に延長し、遠隔転移の発生または死亡リスクを62%減少させました(HR:0.384、95%CI:0.172~0.858、片側p=0.0077)。―――かなり効果があると言っても差し支えのない成績です。生存期間が非常に短い膵がんにおいても、mRNAベースの個別化ワクチンによってT細胞応答がみられた症例では、生存期間が長くなるのではないかと期待されています1)。「mRNAワクチンを接種したらターボがんになる」というデマmRNAワクチンといえば、「遺伝子が書き換えられて発がんする」という根も葉もないウワサが流れ、一部トンデモがん情報提供インフルエンサーで騒がれたことがありました。とくに、がんの急速な進行のことを独自に「ターボがん」などと名付け、デマが流布されました。そもそも「ターボがん」自体がコンセンサスのない概念なので、二重デマなわけですが…。何億回と接種されてきた新型コロナワクチンですが、現時点で発がんに関する安全性シグナルは検知されていません。アメリカの国立がん研究所においても、「新型コロナワクチンが発がんを引き起こし、再発やがんの進行につながることを支持するデータはない」と明記されています2)。そんなmRNAワクチン技術によって、発がんどころか、がんの治療が行えるというのは、誠に興味深い現象です。参考文献・参考サイト1)Rojas RA, et al. Personalized RNA neoantigen vaccines stimulate T cells in pancreatic cancer. Nature. 2023 Jun;618(7963):144-150.2)National Cancer Institute:COVID-19 Vaccines and People with Cancer

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肥満症へのチルゼパチドの効果、36週で中止vs.投与継続/JAMA

 過体重または肥満の集団において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)/グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)共受容体作動薬であるチルゼパチドは、36週間の投与で20%以上の体重減少をもたらし、投与を中止すると体重が大幅に増加したが、投与継続により初期の体重減少を維持あるいはさらに増強することが、米国・Weill Cornell MedicineのLouis J. Aronne氏らが実施した「SURMOUNT-4試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年12月11日号に掲載された。36週の導入期間後に、投与継続とプラセボに無作為化 SURMOUNT-4試験は、4ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、台湾、米国)の70施設が参加した第III相投与中止臨床試験であり、2021年3月~2023年5月に実施された(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 本試験では、非盲検下にチルゼパチド(最大耐用量として10mgまたは15mg、週1回)を36週間皮下投与する導入期間の後、被験者を盲検下にチルゼパチドを継続する群またはプラセボに切り換える群に無作為に割り付け、52週間投与した。 対象は、BMI値が30以上、またはBMI値27以上で糖尿病を除く体重関連合併症(高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸、心血管疾患)を少なくとも1つ有する、年齢18歳以上の患者であった。 主要エンドポイントは、無作為化(36週目)から88週目までの52週間の体重の平均変化量とした。主な副次エンドポイントは、導入期間中の体重減少分の80%以上を88週目に維持していた患者の割合などであった。投与継続で体重がさらに5.5%減少 670例(平均年齢48歳、女性473例[70.6%]、白人80.1%、平均体重107.3kg、平均BMI値38.4、平均ウエスト周囲長115.2cm)が36週の導入期間を完了し、チルゼパチド継続群335例、プラセボ群335例に割り付けられた。チルゼパチド導入期間中に、体重は平均で20.9%減少した。 36週目から88週目までの体重の平均変化量は、プラセボ群が14.0%増加したのに対し、チルゼパチド継続群は5.5%減少し、有意な差を認めた(群間差:-19.4%、95%信頼区間[CI]:-21.2~-17.7、p<0.001)。 88週目に、導入期間中の体重減少分の少なくとも80%を維持していた患者の割合は、プラセボ群が16.6%(55例)であったのに対し、チルゼパチド継続群は89.5%(300例)と有意に優れた(p<0.001)。また、36週目から88週目までのウエスト周囲長の変化量は、プラセボ群が7.8cm増加したのに対し、チルゼパチド継続群は4.3cm減少し、有意に良好だった(p<0.001)。88週投与で体重25.3%減少、ウエスト22.4cm減少 0週目から88週目までに、体重(チルゼパチド継続群25.3%減少vs.プラセボ群9.9%減少、p<0.001)とウエスト周囲長(22.4cm減少vs.9.0cm減少、p<0.001)は、チルゼパチド継続群で有意に改善した。 36週目から88週目までに最も頻度の高かった有害事象は消化器イベントで、プラセボ群よりもチルゼパチド継続群で高頻度(下痢[10.7% vs.4.8%]、悪心[8.1% vs.2.7%]、嘔吐[5.7% vs.1.2%])であったが、多くが軽度~中等度だった。とくに注目すべき有害事象として、チルゼパチド継続群では悪性腫瘍(3例[0.9%]、プラセボ群も3例[0.9%])、主要有害心血管イベント(3例[0.9%])、重度または重篤な消化器イベント(6例[1.8%])、低血糖症(2例[0.6%])を認めた。 著者は、「これらの結果は、体重の再増加を予防し、体重減少の維持とこれに伴う心代謝系への有益性を保持するためには、チルゼパチドの投与を継続する必要があることを強調するものである」とし、「1年間プラセボに切り換えた後でも、体重が9.9%減少していた点は注目に値するが、心代謝系のリスク因子の最初の改善効果はほぼ消失しており、このような短期治療による長期の有益性とリスクを解明するために、さらなる研究を要する」と指摘している。

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ミシガン州の5人の女性で眼梅毒、感染源は同一の無症候性梅毒男性

 「Morbidity and Mortality Weekly Report」11月24日号に、米ミシガン州で2022年3月から7月の間に5人の女性において確認された眼梅毒の症例に関する報告書が掲載された。この報告書をまとめた、米カラマズー郡保健地域サービス局(KCHCSD)のWilliam Nettleton氏らは、これらの女性がいずれも、無症候性梅毒の同一の男性と性的関係を持っていたこと、および眼梅毒自体が非常にまれなことから、この男性が持っていた梅毒菌(Treponema pallidum)の株が眼合併症のリスクを高めたのではないかと見ている。 梅毒菌は、感染しても多くの場合、症状がすぐに現れることはないため、気付かないうちに他者を感染させてしまうことがある。梅毒の症状は、時間とともに全身に進行していき、視力の永久的な損傷など深刻な神経症状を引き起こす可能性がある。 残念ながら梅毒は、地域を問わず、特に性的に活発な米国人の間で復活を遂げつつある。Nettleton氏らによると、ミシガン州では人口10万人当たりの症例数が2016年の3.8人から2022年には9.7人にまで増加しており、特にミシガン州南西部(カラマズー周辺)での増加が顕著だという。 2022年のミシガン州のアウトブレイクでは、上記の40〜60歳の女性5人が眼梅毒で入院した。患者の詳細は以下の通り。患者A:梅毒トレポネーマ抗体検査で陽性が判明したことから、眼科医により3月にKCHCSDへ紹介された。患者は目のかすみと失明の恐怖を訴え、また、単純ヘルペスウイルス感染症の再発との見立てでバラシクロビルを使用していたが病変が改善しなかったことを報告した。患者B:4月に頭痛、軽度の難聴、目のかすみの悪化と複視の悪化を訴え、神経梅毒と診断されて入院した。患者C:5月に梅毒検査で陽性が判明。患者には、全身の発疹、手のひらの皮むけ、視界に浮遊する斑点が見える(飛蚊症)などの症状が現れていた。患者D:膣潰瘍と、手および腹部に発疹が現れており、6月に眼科医から眼梅毒の診断を受けた。患者E:5月に飛蚊症などを訴えて眼科で診察を受け、7月に眼梅毒と神経梅毒と診断されて入院した。 保健員が5月にこれらの女性と性的関係を持った男性を探し出し、梅毒検査を行ったところ、陽性であったが、梅毒の症状は現れていなかった。この男性と5人の女性は、最終的にペニシリン治療を受け、全員が治癒した。 眼梅毒のアウトブレイクは他にも記録されているが、研究グループによると、ミシガン州のアウトブレイクは、「異性間性的接触に起因する症例として初めて記録されたもの」であるという。また、梅毒の合併症は、通常、病状がより進行した段階で生じるにもかかわらず、今回の症例では、「全ての患者が梅毒の初期段階にあった」ことを懸念すべき点として挙げている。さらに、過去に確認された多くのクラスターと異なり、注射薬の使用やトランザクションセックスを報告した患者はおらず、全員がHIV陰性であったことにも言及している。 報告書ではこのほかにも、2022年のミシガン州における梅毒症例の大半は男性であるものの、梅毒症例に女性が占める割合は、2016年には9%だったのが2022年には23%に増加している点も指摘されている。 Nettleton氏らは、「梅毒は、迅速に診断して治療すれは、永続的な視覚障害や聴覚障害を含む全身合併症を予防できる疾患だ」と述べ、医師に、梅毒の症例に注視するよう助言している。

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インターネットの使用はメンタルヘルスに有害か

 ネットサーフィンはメンタルヘルスに悪影響を与えると考えられがちだが、インターネットの使用が心理的ウェルビーイングやメンタルヘルスに大きな脅威を与えることはないことを明らかにした、画期的な研究結果が報告された。これは、国レベルでのインターネットおよびブロードバンドの利用状況を、世界各国の数百万人の心理的ウェルビーイングやメンタルヘルスと比較した上で導き出された結果であるという。英オックスフォード大学インターネット研究所のAndrew Przybylski氏らによるこの研究の詳細は、「Clinical Psychological Science」に11月27日掲載された。 この研究は、インターネットの使用と心理的ウェルビーイングおよびメンタルヘルスとの関連を二つの研究で検討したもの。一つ目の研究では、まず2005年から2022年の間に実施された調査データを基に、168カ国、243万4,203人(15〜89歳)の心理的ウェルビーイングを、人生に対する満足度、ポジティブな経験、およびネガティブな経験の3つの側面から評価。得られた結果を、国民1人当たりのインターネット利用者数とモバイルブロードバンドの契約者数の時系列データと照らし合わせ、過去20年におけるインターネットとモバイルブロードバンドの使用が心理的ウェルビーイングにどのような影響を与えたのかを検討した。 その結果、インターネット技術の使用が広がるにつれ、心理的ウェルビーイングが経時的に変化したことを支持するエビデンスはほとんど/まったく認められないことが明らかになった。ポジティブな経験とネガティブな経験は経時的に増加していたが、この変化は統計学的には、ほぼゼロに等しいことが示された。 二つ目の研究では、保健指標評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation;IHME)のGBD(疾病負荷研究)2019で報告されている、2000年から2019年における世界204カ国での不安障害とうつ病、自傷行為の有病率に関するデータを用いて、これらとインターネットおよびモバイルブロードバンドの使用との関連について検討された。その結果、不安障害の有病率には増加が、うつ病と自傷行為の有病率には低下が認められたものの、統計学的には、こうした変化はほぼゼロに等しいことが明らかになった。 Przybylski氏は、「われわれは、年齢や性別によって結果が異なる可能性を考えて詳細に検証したが、特定のグループでよりリスクが高いとする一般的な考えを支持する証拠は見つからなかった」と同大学のニュースリリースで述べている。 このような結果が得られたとはいえ、研究グループは、インターネット利用の影響についての理解を深めるためには、テクノロジー企業からより多くのデータを提供してもらう必要があると主張している。また、「インターネット技術が与える影響に関する研究が停滞している原因は、そのような研究に欠かせない重要なデータが、テクノロジー企業やオンラインプラットフォームによって収集され、非公開で保管されているせいだ」と指摘する。そして、「人々がインターネット技術をどの程度取り入れ、使用しているかに関するデータを、全ての関係者がより詳細に、より透明性をもって研究することが極めて重要だ。これらのデータは、世界的なテクノロジー企業によって、マーケティングや製品改良のために収集され、継続的に分析されてはいるが、残念ながら、個々の研究のために利用することはできないのが現状だ」と述べている。

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英語で「(薬の)用量の調節」は?【1分★医療英語】第111回

第111回 英語で「(薬の)用量の調節」は?《例文1》The titration will likely take a few weeks.(用量の調節には、数週間かかりそうです)《例文2》We will need to taper off gradually and monitor the response.(様子を見ながら、少しずつ用量を減らす必要があります)《解説》“titration”(タイトレーション)は、日本語では「滴定(てきてい)投与」に当たり、医療現場でこの用語を使うときは「薬の用量を少しずつ変えて調整する」ことを指します。少しずつ上げる“up-titration”や少しずつ下げる“down-titration”、ゆっくり変更する“slow titration”と、ほかの言葉と組み合わせて使うことも多いです。医療従事者同士の会話やカルテに記載するときはそのまま“titration”を使いますが、専門用語なので、患者さんによっては“titration”の意味がわからない場合もあります。そうした場合には、“gradually adjusting the dose”(徐々に投与量を調整します)や、“slowly changing your medication amount”(薬の量を少しずつ変えていきます)などと言い換えて説明します。また、例文にあるように、徐々に薬の用量を減らすとき、“taper down”や“taper off”という言い方もします。“taper”とは「先細り」という意味で、とくに徐々に減らして最終的には服用をやめる意図を含む際に使います。講師紹介

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中年期日本人のBMIや体重変化と認知症リスク

 中年期のBMIや体重変化と認知症発症リスクとの性別特異的相関性に関するエビデンスは、とくにアジア人集団において不足している。高知大学の田代 末和氏らは、40~59歳の日本人を対象にBMIや体重変化と認知症発症リスクとの関連を調査した。その結果、中年期の肥満は認知症発症のリスク因子であり、中年後期の体重減少は体重増加よりも、そのリスクを高める可能性があることを報告した。Alzheimer's & Dementia(Amsterdam、Netherlands)誌2023年11月23日号の報告。 40~59歳の地域在住日本人3万7,414人を対象にベースライン時(1990年または1993年)およびフォローアップ期間10年間のBMIデータを収集した。体重変化は、ベースライン時と10年間フォローアップ調査の測定結果より算出した。2006~16年の認知症発症を確認するため、介護保険認定を用いた。ハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の肥満、10年フォローアップ調査の低体重において、認知症リスクの増加が確認された。・ベースライン後の体重減少は、体重増加よりも高リスクであった。・これらの関係に性差は認められなかった。 著者らは「男女ともに、中年期の肥満は認知症発症リスクを増加させ、その後の体重減少は、リスクを増大させることから、成人期を通じて健全な体重を保つことは、認知症予防につながるであろう」としている。

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糖尿病とうつ病の併存で死亡リスクがより高まる

 2型糖尿病患者はうつ病を併発していることが少なくないこと、そして両者の併存により死亡リスクが4倍以上高くなることを示すデータが報告された。米ニューメキシコ州立大学のJagdish Khubchandani氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes & Metabolic Syndrome: Clinical Research & Reviews」11月号に掲載された。 Khubchandani氏によると、「米国では3500万人以上が糖尿病に罹患し、9500万人以上が前糖尿病状態にあって、糖尿病は米国における主要な死因の一つに挙げられる」という。また同氏は、「残念ながら、これらの人の多くがうつ病や不安症などのメンタルヘルス上の問題を抱えている。しかし、2型糖尿病とうつ病を併発した場合の死亡リスクに及ぼす影響は、これまでのところ十分に検討されていない」と、研究の背景を説明している。 研究では、2005~2010年の米国国民健康栄養調査(NHANES)と2019年までの同国の死亡統計のデータが解析に用いられた。NHANESの解析対象は1万4,920人の米国人成人であり、そのうち約10人に1人がうつ病(9.08%)または2型糖尿病(10%)に罹患していた。うつ病患者は、女性、喫煙者、肥満者、低所得者、および教育歴の短い人に多く、また2型糖尿病患者や心血管疾患の有病率が有意に高かった。 交絡因子調整後、2型糖尿病患者は糖尿病でない人に比べて死亡リスクが1.70倍高いことが明らかになった。この結果をうつ病の併発の有無別に見ると、うつ病のない2型糖尿病患者では1.55倍のリスク上昇であるのに対して、うつ病と2型糖尿病を併発している患者は死亡リスクが4.24倍であることが示された。 このような結果の背景をKhubchandani氏は、「糖尿病という病気は衰弱をもたらしやすい病気だが、うつ病を併発するとその状態がより悪化しやすくなる。さらに不運なことに、糖尿病を患う多くの米国人は、経済的にも精神的にも負担の生じやすい生活を強いられており、そのために病気の治療が困難な状況にある」と解説。また著者らは、「心理・社会的因子や生物学的メカニズムが、うつ病と糖尿病の併発の原因となっている可能性がある」と述べている。 具体的には、不十分な治療、遺伝的背景、ライフスタイル関連因子、うつ病や2型糖尿病以外の疾患を併発するリスクの高さ、ストレス、医療アクセスの低下、経済的負担の増加、免疫や血管系の機能不全などが、共通の原因として挙げられるとのことだ。実際、今回の研究では、うつ病と糖尿病を併発している人には、いくつかの共通する特徴があることも示された。例えば、収入が少ないことや教育歴が短いこと、人種/民族的マイノリティーであること、および不健康なライフスタイルであること、その他の慢性疾患の併存などが認められた。 先進国では、一般的に糖尿病患者の約75%が血糖管理のための治療を受けているとされる。しかし、何らかのメンタルヘルス上の問題を抱えている患者の50%以上が、その適切なケアを受けられていないと、著者らは指摘している。Khubchandani氏も、「糖尿病と併発することの多いメンタルヘルス上の問題に関するケアの質を向上させることで、糖尿病とともに生きる人々の幸福感の向上とともに、寿命を延長できる可能性がある」と語っている。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップ ‐E(要因)およびC(比較対照)設定の要点と実際 その2【「実践的」臨床研究入門】第39回

C(比較対照)をおかなければ因果関係(影響や効果など)はわからないまずは、よくある? CMのお話です。 ◯◯サプリメントを飲み続けてやせた人の経験談をもとに、◯◯サプリメントを飲んだ! やせた! ◯◯サプリメントはダイエットに効いた!? 「※個人の感想です」誰もが「眉唾」な話、と思うのではないでしょうか。なぜなら、ダイエットに成功したのは、サプリメント(だけ)ではなく、食事制限や運動などによる効果の結果かもしれないからです。このような3段論法まがいの誤った論理展開を、(雨乞い)3「た」論法、と呼びます。これは、東京医科歯科大学名誉教授(臨床薬理学・生物統計学)であられた故佐久間 昭先生が著書で述べられた、以下の文章に由来するようです。雨乞いの太鼓を叩いた、雨が降った、故に雨乞いの太鼓が雨を降らせた?雨乞いの太鼓は雨が降るまで続けられるでしょうし、降り止まない雨はありませんよね。したがって、雨乞いの太鼓と降雨に因果関係があると言うのは問題がある、とすることには異論はないでしょう。臨床現場における薬剤などの治療効果判定でも同じです。なんらかの疾患(症状)に、ある薬剤を投与し、効果? がみられたケースだけを取り上げて、単純に「使った、治った、効いた」とするのも、また3「た」論法です。C(比較対照)をおかなければ、E(曝露要因)もしくはI(介入)とO(アウトカム)との関連や因果関係(影響や効果)は検証できないのです。それでは、理想的なCとはどのようなものでしょうか。理想的なC、比較対照群とは、臨床研究でOとの関連や因果関係(影響や効果)を検証したいEもしくはI以外の「背景要因」がまったく同じ集団、となります。「背景要因」は測定可能なものと測定できないものに分けられます。測定可能な背景要因には、臨床研究論文のTabel 1.でよく記述されている以下のような要因が挙げられます。年齢、性別、併存疾患、BMI、各種検査所見、等々一方、背景要因には、日常臨床では測定不可能なものも多々あります。たとえば、以下のような要因です。遺伝的背景、生活習慣、社会経済因子、等々理想的なC、比較対照群を設定するためには「ドラえもん」のひみつ道具のひとつである「コピーロボット」が必要だよね、と筆者はよく説明しています。「コピーロボット」はその鼻を押すことで、押した人間(動物)とそっくりなコピーとなるロボットです。「ドラえもん」どんぴしゃり世代の筆者にとっては、わかり易い説明だと思っているのですが、最近の若い方にはピンとこないかもしれません…。今のところ「コピーロボット」が存在しないこの世の中では、同じ個人が「同時にあるE」もしくは「Iがあった場合となかった場合」を比較することはできません(反事実モデル)。ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)では、ランダム(無作為)割付により、IとCの間の背景要因が測定可能なものだけでなく測定不可能なものも均衡化することが期待され、反事実モデルを推定しているのです(連載第6回参照)。われわれが計画しているのは観察研究のひとつである(後ろ向き)コホート研究です(連載第37回参照)。観察研究でも、皆さんが大好きな多変量解析やマッチングなどの手法を用いてRCTと同様に、反事実モデルの推定を試みています。言い換えると、多変量解析モデルなどの統計学的手法を用いて、いわゆる「交絡因子」を制御し、EとOとの関連や因果関係を検証しているのです。次回からは、架空の臨床シナリオに基づいた仮想データ・セットや実際に英語論文化した臨床研究の実例を用いて、具体的な統計解析手法についても解説していきます。

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アンドロゲン遮断療法後に狭心症を発症した症例【見落とさない!がんの心毒性】第27回

※本症例は、実臨床のエピソードに基づく架空のモデル症例です。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別70代・男性主訴ECG異常、NT-proBNP高値既往歴高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙歴(+)、飲酒歴(-)家族歴父親:大腸がん、母親:狭心症現病歴X-9年の人間ドック受診時にPSA上昇を指摘されたため精査目的で泌尿器科を受診、前立腺生検を施行した。初回ならびに2回目(X-7年)の生検では陰性であったが、X-5年のドック検査でPSAがさらに上昇したことからMRI検査ならびに3回目の生検を施行し、前立腺がんと診断された。がん治療はアンドロゲン遮断療法(androgen deprivation therapy:ADT)と放射線の併用療法が選択された。X-5年3月から同年12月まで第一世代抗アンドロゲン薬が投与され、X-5年4月からX-4年6月までGnRHアゴニストが併用された。さらに、放射線療法(78Gy)をX-5年10~12月まで施行された。その結果、PSAは正常化した。がん治療終了後に心臓CT検査を施行したが、冠動脈に有意な狭窄は認めなかった。その後、泌尿器科の定期的な受診とかかりつけ医で生活習慣病の治療を受けており、引き続き年1回の人間ドックは当院を受診していた。X年に受診した人間ドックで運動負荷試験陽性(図1)、NT-pro BNP高値を指摘された。胸痛などの自覚症状は認めなかったが糖尿病などのリスク因子を有しており、虚血性心疾患の合併を疑い、精査加療目的で循環器内科を紹介し受診された。(図1)X年の人間ドックでの運動負荷心電図試験(マスターダブル負荷)画像を拡大するX年に受診した人間ドック時運動負荷心電図ではV4-V6でST低下を認め、NT-proBNP 152pg/mLの上昇を認めた。本例は、前立腺がん治療終了後に心臓CT検査が施行されるも、冠動脈に有意狭窄は認められず、前年までの運動負荷心電図所見の異常はなかった。心電図変化は比較的軽く、自覚症状も認めなかったが、高齢かつ複数の動脈硬化危険因子を有していたこと、ADTを施行されていたことから心血管疾患の合併を疑い精査を行った。循環器専門病院で施行した冠動脈造影検査では左冠動脈#7に75~90%狭窄を認めたため、同部位に冠動脈形成術(ステント留置術)を施行した。【問題】本症例の治療に際して注意する点として、適切な答えを選択せよ。a.前立腺がん症例の多くは、治療前より高齢、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙などの心血管リスクを複数有している事が多く、がん治療を施行する際には心血管毒性に対する注意が必要である。b.ADTの施行後は肥満症、糖尿病、脂質異常症を来すことがあり、その後の動脈硬化症や冠動脈疾患の発症に注意が必要である。c.症候性冠動脈疾患の既往を有する症例に対し、ADTを施行する際には、心血管リスクの有無を考慮したがん治療薬の選択が重要である。d.ADTにおける筋肉系合併症としてはサルコペニア・運動耐容能の低下、骨関連合併症としては骨粗鬆症・骨折などを認めることがあるので注意を要する。e.すべて正しい1)Studer UE, et al. J Clin Oncol. 2006;24:1868–1876.2)Calais da Silva FE, et al. Eur Urol. 2009;55:1269–1277.3)Weiner AB, et al. Cancer. 2021;127:2895-2904.4)Klimis H, et al. J Am Coll Cardiol CardioOnc. 2023;5:70-81.5)Narayan V, et al. J Am Coll Cardiol CardioOnc. 2021;3:737-741.6)Chen DY, et al. Prostate. 2021;81:902-912.7)Okwuosa TM, et al. Circulation. 2021;14:e000082.8)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;432:4229-4361.講師紹介

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統合失調症外来患者におけるアリピプラゾール月1回製剤治療のフォローアップ結果

 統合失調症治療における重要な目標は、症状、心理社会的機能、ウェルビーイングなどのさまざまな問題を寛解状態に導くことである。米国・ザッカーヒルサイド病院のChristoph U. Correll氏らは、ドイツの75施設で実施されたアリピプラゾール月1回製剤を用いた6ヵ月間の非介入研究に登録された安定期統合失調症の外来患者を対象に、臨床アウトカムデータの事後分析を実施した。Schizophrenia(Heidelberg、Germany)誌2023年11月8日号の報告。 主要アウトカムは次の3つ。(1)症状寛解(横断的Andreasenらの基準:BPRSにおける陽性・陰性主要症状が軽度以下)、(2)機能的寛解(GAFスコア70超)、(3)24週目のウェルビーイングの寛解(WHO-5スコア13以上)。登録患者242例中、完全なデータを有する194例(80.2%)を分析した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象患者194例は、平均年齢43.9±15.3歳、男性の割合51.5%、平均罹病期間14.0±12.0年であった。・症状寛解達成患者は61.3%、ウェルビーイングの寛解達成患者は76.8%であったが、6ヵ月時点で心理社会的機能寛解達成患者は24.7%であった。・寛解率は、男女ともに同様であり、罹病期間の階層別でも同様であったが、平均罹病期間が長い患者ほど寛解率は低かった。・BPRSとGAFの改善の相関は弱かった。BPRSの抑うつ症状とGAFスコアとの相関が最も低かったが、BPRS下位尺度および抑うつ症状とウェルビーイングとの相関は高かった。 著者らは「アリピプラゾール月1回製剤による治療は、症状やウェルビーイングの寛解につながるが、機能的寛解を達成するためには、心理社会療法や雇用支援、教育などの追加介入が必要になる可能性が示唆された」としている。

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食塊による食道完全閉塞、コーラで改善するか/BMJ

 オランダ・アムステルダム大学医療センターのE G Tiebie氏らは、多施設共同無作為化非盲検比較試験において、コーラの摂取は食塊による完全な食道閉塞の改善率を高めないことを報告した。食塊による完全な食道閉塞に対しては、現在、侵襲的で高額な医療費を伴う緊急内視鏡治療が望ましいとされ、ガイドラインでは内視鏡の施行が遅れないとの前提で内視鏡前の内科的治療が認められている。一方で、コホート研究や症例シリーズで、コーラの摂取により59~100%の患者で食塊による食道閉塞が改善したことが報告されていた。BMJ誌2023年12月11日クリスマス特集号「FOOD AND DRINK」掲載の報告。介入(コーラ摂取)群vs.対照(自然通過)群の無作為化試験で評価 研究グループは、2019年12月22日~2022年6月16日に、オランダの2次および3次救急病院5施設において、食塊による完全な食道閉塞(食物摂食後に突然唾液を飲み込めなくなることと定義)で受診した18歳以上の成人51例を、介入群と対照群に1対1の割合に無作為に割り付けた。骨を含む肉を食べた患者、および米国麻酔学会(ASA)による全身状態分類がIV以上の患者は除外した。 介入群(28例)にはコーラを1分間隔で25mL、最大合計200mLまで摂取するように指示し、対照群(23例)では自然通過を待った。いずれも、閉塞が完全に消失しなかった場合、現行ガイドラインに従い、完全閉塞の場合は6時間以内、部分閉塞の場合は24時間以内に内視鏡による食塊の除去を実施し、症状が完全に消失した場合は待機的な診断内視鏡検査を行った。 主要アウトカムは、患者報告の食塊による食道閉塞の改善(完全通過と一部通過の合計)、および完全通過。副次アウトカムは介入に関連した有害事象とした。食道閉塞の改善率は両群で同じ 食塊による食道閉塞の改善は、介入群で61%(17/28例)、対照群で61%(14/23)に認められ、食塊による食道閉塞の改善にコーラは有意な効果を示さなかった(オッズ比[OR]:1.00[95%信頼区間[CI]:0.33~3.1]、相対リスク低下:0.0[95%CI:-0.55~0.36]、p>0.99)。 介入群では完全通過を報告した患者の割合が高かったが、有意差はなかった(介入群43%[12/28例]vs.対照群35%[8/23例]、OR:1.4[95%CI:0.45~4.4]、相対リスク低下:-0.23[95%CI:-1.5~0.39]、p=0.58)。 重篤な有害事象は報告されなかったが、介入群の6例(21%)でコーラ摂取後の一時的な不快感を認めた。 著者は、盲検化されなかったこと、症例数が非常に少ないことなどを研究の限界として挙げたうえで、「介入群では有害事象がなく、治療後に消失した症状もあることから、第1選択の治療法としてコーラを考慮するかもしれないが、内視鏡的治療の選択肢は用意しておくべきである」とまとめている。

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外用薬【アトピー性皮膚炎の治療】

外用薬ではステロイド、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストを用います。外用薬はFTU(finger tip unit)を考えて使用します。やさしく、すりこまないように塗ることが大切です。私はステロイド外用薬を使わなくても良い状態まで改善させることを、治療目標の1つにしていますが、ステロイドを完全に止めてしまうのではなく、継続して治療することで再燃を防ぐことに心がけています。デルゴシチニブ(商品名:コレクチム)デルゴシチニブは、2020年6月24日から使用できる外用薬であり、プロトピック(タクロリムス)以来約20年ぶりの新発売です。ヤヌスキナーゼ阻害薬という、新しいメカニズムの外用薬で、発売から1年が経過し、小児用の0.25%製剤が発売されました。デルゴシチニブは、さまざまな種類のJAKを抑える働きがあります。その効果として、IL-4/13を代表とするサイトカインを抑えることや皮膚バリア機能を回復させることに役立つという基礎研究データがあります1)。デルゴシチニブの安全性について、副作用は比較的少なく、長期投与による皮膚萎縮、多毛などといったステロイドの弱点はまだありません。適用部位の刺激感はまれにありますが、使えなくなるほどのヒリヒリ感は経験しません。また、第III相臨床試験でも副作用発現頻度は、19.6%(69/352例)であり、主な副作用として適用部位毛包炎3.1%(11/352例)、適用部位ざ瘡2.8%(10/352例)、適用部位刺激感2.6%(9/352例)などが報告されています。デルゴシチニブの用法・用量通常、成人には、1日2回、適量を患部に塗布する。なお、1回当たりの塗布量は5gまで、体表面積の30%までとする。そのほか、生後6ヵ月以上のアトピー性皮膚炎の小児にも適応がとれ、小児には2021年6月21日に発売された0.25%製剤の使用が望ましいとされています。ただし、妊婦、授乳婦への使用は「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること」と注意も記載されています。デルゴシチニブの薬価0.25%:1g 139.70円0.5%:1g 144.9円〔ワンポイント〕効果の強さに関してはストロングクラス、すなわちベタメタゾンやタクロリムスと同等程度と位置付けられ、症状がかなり強く、急速に寛解導入したい場合には向いていないことがあります。一方、デルゴシチニブの副作用は比較的少なく、長期投与によるものがないため、プロアクティブ療法などでの使用に向いています。また、光線療法、シクロスポリン、デュピルマブとの併用が可能で、ステロイド外用薬の副作用があるときには、光線療法と併用することでステロイド外用薬の減薬に期待できます。1)Wataru Amano W, et al. J Allergy Clin Immunol. 2015;136:667-677.2)コレクチム軟膏 電子添文(2023年1月改訂(第6版))ジファミラスト(商品名:モイゼルト軟膏)ジファミラストは、2022年6月1日に発売されたホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤の新しい外用薬です。PDE4阻害薬は、細胞の中の細胞内のサイクリックAMP(cAMP)濃度を回復させる薬で、cAMP濃度が回復することで免疫細胞の活性化が抑えられます。また、ジファミラストの第III相臨床試験結果について、投与開始後4週間でInvestigator’s Global Assessment(IGA)が0または1かつベースラインから2点以上減少を達成した患者さんの割合は、38.46%とプラセボ(12.64%)に比べて有意に高く1)、小児では0.3%製剤で44.6%、1%製剤で47.1%といずれもプラセボ(18.1%)に比べて有意に高い効果を得ていました2)。病勢の指標であるeczema area andseverity index(EASI)が50%減少した指標であるEASI50は、4週間の投与で58.24%とプラセボ(25.82%)に比べ、有意に高くなりました。同様にEASI75は42.86%(プラセボ13.19%)、EASI90は24.73%(プラセボ5.49%)でした。4週後の平均EASI改善率は−49.1%(プラセボ−10.5%)でした1)。ジファミラストの安全性としては、色素沈着障害(1.1%)、毛包炎、そう痒症、膿痂疹、ざ瘡、接触皮膚炎が記載されています3)が、明らかに多い副作用は認められませんでした1,2)。ジファミラストの用法・用量15歳以降は1%製剤を使用します。14歳以下は0.3%か1%製剤を使用します。通常、成人には1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します。小児は0.3%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します。また、症状に応じて、1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布することができます3)。ジファミラストの薬価0.3%:1g 142.00円1%:1g 152.10円〔ワンポイント〕使用感について患者さんからの評価は良く、塗った際の刺激感を訴えられることはありませんでした。効果に関しても総じて好印象でした。1)Saeki H, et al. J Am Acad Dermatol. 2022;86:607-614.2)Saeki H, et al. Br J Dermatol. 2022;186:40-49.3)モイゼルト軟膏 電子添文(2023年6月改訂(第3版))

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専門用語の発音に慣れよう【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第29回

専門用語の発音に慣れよう1)YouTubeなどのリソースを活用する2)「YouGlish」で専門用語の発音を確認する3)Podcastで専門用語に慣れておく英語での学会発表や質疑応答をスムーズに行うためには、専門用語の英語に慣れ親しんでおく必要があります。日本で仕事をしていると慣れるのは難しいと感じるかもしれませんが、今ではYoutubeなどにレクチャーや教育的な動画が数多くアップロードされているため、日本にいても学ぶチャンスは十分あるといえます。YouTubeを活用する場合に知っておきたいのは、特定のワードが含まれた動画を無料で検索できる、「YouGlish」というウェブサイトです。発音が難しい専門用語の発音を確認するだけでなく、どういう文脈でその単語が使われているかを確認したり、関連する背景知識を収集したりするためにも役立ちます。使い方ですが、ウェブサイトにアクセスし、検索窓に検索したい単語を入力します〈図1〉。たとえば、“paracentesis”(腹水穿刺)と入力してみましょう。検索する際、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど好みの英語のなまりを選ぶこともできますが、とくにこだわりがなければ「All」を選択します。〈図1〉画像を拡大する検索すると、“paracentesis”を含む動画が字幕付きで表示され、単語が使われている少し前の場面から再生されます。再生するスピードは細かく調整できるため、発音を確認したい場合は遅めに設定します。なお、再生される動画の周辺部分を見ることで、“ascites”(腹水)や“catheter”(カテーテル)といった、関連する単語の発音も併せて確認することができます。〈図2〉画像を拡大する専門用語以外にも、自分がプレゼンで使ってみたいけれどなじみのないフレーズを検索すると、実際にどういう文脈やトーンで使用されているのかがわかります。また、いわゆるネットラジオである「Podcast」も専門用語の学習に有効です。スマホアプリで簡単に利用ができ、好きな番組を登録しておくことで手軽に情報収集を行えます。Podcastは日本ではあまり一般的ではないかもしれませんが、米国では医療分野のPodcastがかなり発達しており、ジャンルも幅広く、医療者のリスナーも多くいます。例として、内科医にお勧めのPodcastを〈図3〉にまとめています。〈図3〉「New England Journal of Medicine」のような有名雑誌は、その週に出版された論文のサマリーを流すPodcastを用意している場合が多くあります。「The Curbsiders」は各内科疾患の専門家が登場し、低ナトリウム血症や肺炎といったトピックについてレクチャーしてくれます。また、「The Clinical Problem Solvers」は米国の医学生や研修医が症例プレゼンを行い、指導医と一緒に臨床推論をしていくという番組で、臨床留学を目指す人にはプレゼンの練習に役立つでしょう。ほかにも、外科や産婦人科など、学会が運営している各専門分野のPodcastがたくさんあるので、通勤途中などに習慣的に聴くようにすれば、自身の分野の専門用語にも慣れることができ、学会発表もスムーズに行えるようになるはずです。講師紹介

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新規統合失調症患者に使用される抗精神病薬の有効性と忍容性~メタ解析

 英国・ウルバーハンプトン大学のZina Sherzad Qadir氏らは、PRISMA-P声明に従って、統合失調症治療に使用される経口抗精神病薬の有効性および忍容性を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Pharmacy(Basel、Switzerland)誌2023年11月10日号の報告。 主要アウトカムは、症状の改善、副作用に対する忍容性、治療中止理由により測定された臨床反応とした。 主な結果は以下のとおり。・21件の研究を分析に含めた。・個々の患者における治療反応は、アリピプラゾールvs.ziprasidoneおよびクエチアピン(CDSS:p=0.04、BPRS:p=0.02、YMRS:p=0.001)、ziprasidone vs.クエチアピン(CGI:p=0.02、CDSS:p=0.02)で認められた。・アリピプラゾールは、リスペリドン、ziprasidone、クエチアピンよりも忍容性が高かった(p<0.05)。・クエチアピンは、アリピプラゾール、ziprasidone、リスペリドンよりも忍容性が高かった(p<0.05)。・ziprasidoneは、クエチアピン、ハロペリドール、オランザピンよりも忍容性が高かった(p<0.05)。・リスペリドンは、オランザピンよりも忍容性が高かった(p=0.03)。・ハロペリドールは、オランザピン、クエチアピンよりも忍容性が高かった(p<0.05)。・オランザピンは、クエチアピンよりも治療中止リスクが低かった(p<0.05)。・クエチアピンは、ziprasidone、アリピプラゾール、ハロペリドールよりも治療中止リスクが低かった(p<0.05)。・ziprasidoneは、クエチアピン、アリピプラゾール、ハロペリドールよりも治療中止リスクが低かった(p<0.05)。・アリピプラゾールは、クエチアピン、ziprasidone、オランザピンよりも治療中止リスクが低かった(p<0.05)。・オランザピンは、ziprasidone、ハロペリドールよりも治療中止リスクが低かった(p<0.05)。 著者らは「個々の患者の臨床反応、副作用に対する忍容性、生命を脅かす可能性のある副作用は、経口抗精神病薬の選択および継続において最も信頼できる根拠であると結論付けられる」としている。

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コーヒーや炭酸飲料、潰瘍性大腸炎リスクを減少/日本人での研究

 食事は潰瘍性大腸炎リスクに影響する可能性があるが、日本人でのエビデンスは乏しい。今回、日本潰瘍性大腸炎研究グループが、コーヒーやその他のカフェインを含む飲料・食品の摂取、カフェインの総摂取量と潰瘍性大腸炎リスクとの関連を症例対照研究で検討した。その結果、欧米よりコーヒーの摂取量が少ない日本においても、コーヒーやカフェインの摂取が潰瘍性大腸炎リスクの低下と関連することが示された。愛媛大学の田中 景子氏らがJournal of Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2023年12月10日号で報告。 本研究では、潰瘍性大腸炎の症例群として384人、対照群として665人が参加した。コーヒー、カフェインレスコーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、炭酸飲料、チョコレート菓子の摂取量について半定量的食物摂取頻度調査票を用いて調査し、性別、年齢、喫煙、飲酒量、虫垂炎既往、潰瘍性大腸炎の家族歴、学歴、BMI、ビタミンC、レチノール、総エネルギー摂取量で調整した。なお、本研究は厚生労働科学研究費補助金の「潰瘍性大腸炎の発症関連及び予防要因解明を目的とした症例対照研究」班として実施された。 主な結果は以下のとおり。・コーヒーと炭酸飲料の摂取量が多いほど潰瘍性大腸炎リスクが減少し、有意な用量反応関係が認められた。一方、チョコレート菓子の摂取量が多いほど潰瘍性大腸炎リスクが有意に高かった。・カフェインレスコーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶の摂取量と潰瘍性大腸炎リスクとの関連は認められなかった。・カフェインの総摂取量は潰瘍性大腸炎リスクと逆相関し、両極の四分位間の調整オッズ比は0.44(95%信頼区間:0.29~0.67)であった。

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