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睡眠で認知症予防、良質な睡眠を誘う音楽とは?【外来で役立つ!認知症Topics】第13回

認知症予防の睡眠で注目される「グリンパティック系」多くの病気の予防因子として共通するのが、運動、栄養、休養である。認知症の場合は、これに知的刺激や社会交流が加わる。具体的な予防法に注目すると、運動なら有酸素運動やデュアルタスク、栄養なら地中海食など具体的な目玉項目がある。しかし休養ではそれがなかった印象がある。「そもそも休養とは何か?」も難しいのだが、これは睡眠のことと考えていいだろう。とはいえ、「認知症予防の睡眠とは?」となるとこれというものはなく、いまひとつであった。そこに現れたのが、「グリンパティック系」である。筆者が学生の頃には、代謝過程の老廃物の処分を担うリンパ系器官が脳にはないと教わった。確かに脳には解剖学的にリンパ系はないが、実は同じ役割を担うものがあると判明した。それがグリンパティック系である1)。これは血管周囲の星状膠細胞により形成されたトンネル様構造で、中枢神経系の廃棄物を脳脊髄液と共に除去する系である。アルツハイマー病等の変性疾患に関連する異常蓄積蛋白もこの系で除去される。そして除去は睡眠中に行われることがわかったことが重要だ。だから睡眠不足は悪者蛋白の除去効率を下げることになる。さて疫学的に睡眠時間と認知症発症の関係は注目され、7時間睡眠が最も発症に防御的だとした大規模メタアナリシスも報告されている。ところが、日本人は世界的にみて最も睡眠時間が短く、平均6時間程度とされる。このこともあってか、近年アルツハイマー病予防に関連して、グリンパティック系を軸にした睡眠に注目が集まりつつある。睡眠関連障害と認知症の関係ところで睡眠障害は不眠ばかりでない。たとえばレム睡眠行動障害、睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群(RLS)などいくつもの病気がある。こうしたさまざまな睡眠関連障害と認知症発症の関係もまた研究され、すでにメタアナリシスもある2)。そしてこれらの睡眠関連障害の多くが認知症発症に関係することが示されている。認知機能低下に関連する要因として代表的なものが、レム睡眠行動障害(リスク比[RR]=1.90、95%信頼区間[CI]=1.23~2.91、I2=0%)、睡眠時無呼吸症候群(RR=1.29、95%CI=1.12~1.48、I2=40%)、ベッドで長時間過ごすこと(RR=1.15、95%CI=1.02~1.30、I2=22%)である。なおレストレスレッグス症候群とは無関係であった。逆に認知症に防御的と思われるものもある。習慣的昼寝(high trend:RR=0.46、95%CI=0.21~1.01、I2=45%)については、有意に効果的な傾向が報告されている。良質な睡眠を誘う音楽さて認知症者における睡眠障害はありふれたものである。たとえば、睡眠の不連続性(中途覚醒)、日中の眠気、睡眠効率の悪さ(寝ている時間/ベッドにいる時間)がアルツハイマー病でみられやすい睡眠障害だとされる。そして症状の進行とともに睡眠・覚醒リズムが乱れ、昼夜逆転パターンに至る例が多い。それだけに睡眠の質を良くするという課題は、認知症当事者と家族、また医療者、ケアスタッフにとっても大切である。普通いわれるのは、就床に先立つ運動や入浴、寝室温度をいくらか低めに設定、適切な明るさの設定などである。これまであまり知られていないが、音楽によるスムーズな入眠への効果も検討されており、効果的だとしたメタアナリシスもある。ところが、「どのような音楽をどのように聴いたら、スムーズな入眠効果が生まれるのか?」はほとんど検討されておらず、エビデンスが乏しい3)。しかし経験論的には以下がポイントだとされる。耳に心地よい音楽歌詞のない音楽自然の音のヒーリングミュージック長調の音楽である。音楽の内容は、クラシックや歌謡曲などではない。チルアウト系、アンビエント・ミュージックなどが代表だが、波の音、雨音など自然で単調なものがいい人もいる。筆者の場合、炭がぱちぱちと燃える音を聴いていると自然に眠りに落ちやすい。さて就床してから睡眠への移行における自律神経の活動ぶりは、スムーズな入眠にとっておそらく生理学的な鍵だろう。ところが確立された所見は、意外なほど少ない。ただ副交感神経の働きが優位になることが重要なのは確かなようだ。睡眠と自律神経という観点から考えたとき、音楽的な規則性と不規則性の調和を意味する「1/fのゆらぎ」の音楽が注目され、これが心地よさを生み出すといわれる。そしてこの種の音楽が副交感神経活動を優位にするとの報告もある。マインドフルネス瞑想も認知症者の睡眠の質を向上させる一方で、現代社会で、ストレスを軽減する方法として、マインドフルネスなど自律神経に注目したものが有名である。つまり副交感神経の働きを高め、交感神経の働きを低下させることで、心身の安定を得ることが基本になる。マインドフルネスのみならず、ヨガ、瞑想、また座禅にも同様の効果があるとされる。これらに共通するのは、ペースド・ブリージング(paced breathing)と呼ばれる「1分間あたり10回以下」のゆったりとした呼吸方法である。この呼吸法によって、横隔膜に至る迷走神経が刺激を受けて、副交感神経の働きが高まるとされる。知的に正常の人はもとより、軽度認知障害や認知症の人でも、この方法は有効だとの報告がある。睡眠に関しては、マインドフルネス瞑想で睡眠の質が向上すると報告したメタアナリシスもある。こうした知見から、呼吸法、副交感神経という観点から、認知症者の不眠改善につながる音楽を追求するのも、これからの治療法になるかと思われる。参考1)Lohela TJ, et al. The glymphatic system: implications for drugs for central nervous system diseases. Nat Rev Drug Discov. 2022;21:763-779.2)Xu W, et al. Sleep problems and risk of all-cause cognitive decline or dementia: an updated systematic review and meta-analysis. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020;91:236-244.3)Jespersen KV, et al. Music for insomnia in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2015;2015:CD010459.

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第80回 外来で増えた「私も抗MDA5抗体ですか?」

Unaplashより使用八代 亜紀さんが、抗MDA5抗体陽性の間質性肺炎増悪のため逝去されました。東日本大震災のときに被災地に行って歌っていたのが印象的でした。彼女が亡くなってからというもの、膠原病関連間質性肺疾患で通院している患者さんから「私も八代 亜紀さんのように肺炎が急速に悪化しないでしょうか?」「私も抗MDA5抗体陽性でしょうか?」という質問が増えました。確かに心配になりますよね。ただ、現在通院している人が実は抗MDA5抗体陽性でした、ということは今の日本の診療ではほとんどないと思います。たぶん。抗MDA5抗体陽性の皮膚筋炎は通称、CADM(Clinically amyopathic dermatomyositis:筋症状のない皮膚筋炎)と呼ばれていますが、その他の膠原病と比較して重症の間質性肺炎を起こしやすい特徴があります。この抗体が陽性になった場合、「スイッチが入る」と表現する医師が多いです。同抗体が測定されないと診断しようがないのは事実ですが、皮膚筋炎をみたときにはチェックしておきたいですし、手の潰瘍やGottron徴候・逆Gottron徴候があるのに抗核抗体が陰性ならば疑う必要があります1)。そして、この疾患を診療していくうえで、とにかく重要なのはフェリチンと考えられます。抗MDA5抗体陽性例では、フェリチン高値(≧500ng/mL)は死亡リスクが高くなり、高いほど予後不良になっていきます2)。「同じ病気」で死去したとされるのが美空 ひばりさんです。Wikipediaによると、最後の1年では「脚の激痛と息苦しさで、歌う時はほとんど動かないままの歌唱であった。この頃すでに、ひばりの直接的な死因となった『間質性肺炎』の症状が出始めていたとされており、立っているだけでも限界であったひばりは、歌を歌い終わるたびに椅子に腰掛け、息を整えていたという。」と記載されています。当時は抗MDA5抗体なんて知る由もなかった時代ですし、膠原病関連間質性肺疾患でさえ存在があまり知られていなかったと思われます。ただ、彼女は肝硬変やCOPDも合併していましたし、亡くなる数年前から症状が出ていることから、「同じ病気」とは断定できないと思っております。参考文献・参考サイト1)Chen F, et al. Anti-MDA5 antibody is associated with A/SIP and decreased T cells in peripheral blood and predicts poor prognosis of ILD in Chinese patients with dermatomyositis. Rheumatology international. 2012;32:3909-3915.2)Goto T, et al. Clinical manifestation and prognostic factor in anti-melanoma differentiation-associated gene 5 antibody-associated interstitial lung disease as a complication of dermatomyositis. Rheumatology. 2010 Sep;49(9):1713-1719.

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ROS1融合遺伝子陽性NSCLC、repotrectinibが有望/NEJM

 ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、repotrectinibはROS1チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の治療歴を問わず、持続的な臨床活性を示したことが、米国・スローンケターリング記念がんセンターのAlexander Drilon氏らが行った第I/II相試験(「TRIDENT-1試験」)で示された。有害事象は主にグレードが低く、長期の投与に適するものであった。ROS1融合遺伝子陽性NSCLCの治療に承認されている初期世代のROS1 TKIは、抗腫瘍活性を有するが、耐性が生じ、頭蓋内活性が最適とはいえない。repotrectinibは、前臨床試験においてROS1 G2032Rなどの耐性変異を含むROS1融合遺伝子陽性がんに対する活性が示された次世代のROS1 TKIであり、研究グループは承認申請のため本検討を行った。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。奏効率、奏効期間、無増悪生存期間などを評価 研究グループは、ROS1融合遺伝子陽性NSCLCを含む進行固形がん患者を対象に、repotrectinibの有効性と安全性を評価する第I/II相試験を行った。 第II相試験の有効性の主要評価項目は奏効率だった。有効性の解析は、第I相および第II相試験の被験者を対象に行った。第II相試験の副次評価項目は、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、および安全性であった。ROS1 TKI未治療患者のDOR中央値は34.1ヵ月 第I相試験の結果に基づき、第II相試験でのrepotrectinibの推奨用量は、160mg/日を14日間投与後、160mgを1日2回とされた。 ROS1 TKI未治療のROS1融合遺伝子陽性NSCLC患者において、奏効が認められたのは71例中56例(79%、95%信頼区間[CI]:68~88)であり、DOR中央値は34.1ヵ月(95%CI:25.6~推定不能)、PFS中央値は35.7ヵ月(27.4~推定不能)だった。 1種類のROS1 TKIによる治療歴があり、化学療法歴のないROS1融合遺伝子陽性NSCLC患者において、奏効が認められたのは56例中21例(38%、95%CI:25~52)であり、DOR中央値は14.8ヵ月(95%CI:7.6~推定不能)、PFS中央値は9.0ヵ月(6.8~19.6)だった。 ROS1 G2032R変異陽性の患者において、奏効が認められたのは17例中10例(59%、95%CI:33~82)だった。 第II相試験用量の投与を受けた426例のうち、頻度が高かった治療関連有害事象は、めまい(58%)、味覚障害(50%)、錯感覚(30%)であった。治療関連有害事象のためrepotrectinibを中止したのは3%だった。

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脂質異常症に対する遠隔栄養指導の効果は対面と同等

 脂質異常症の患者に対する管理栄養士によるオンラインでの栄養指導は、対面での指導と同等の効果があるとする研究結果が報告された。米ミシガン大学のShannon Zoulek氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Lipidology」に11月17日掲載された。 オンラインによる遠隔医療は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによって急速に普及した。その後、COVID-19は収束したが、引き続き遠隔医療を利用する患者が少なくない。本研究が行われたミシガン大学の心臓病予防のための栄養プログラムでは、2022年時点において受診者の約5人に1人が遠隔での指導を希望している。ただし、これまでのところ、脂質異常症に対する栄養指導の効果が、対面と遠隔で異なるのかどうかは十分検討されておらず、Zoulek氏らはその点を観察研究により検証した。 2019年3月末から2022年9月末に、同大学の心疾患予防プログラムの栄養指導を受けた274人のうち192人が解析対象とされた。このうち151人(78.6%)が対面、41人(21.4%)が遠隔で指導を受けていた。これら両群間で、性別、人種/民族、BMI、処方されているスタチンの強度、エゼチミブの処方率、およびその他の脂質異常症治療薬の使用状況などの群間差は非有意だった。 栄養指導の前と指導の後(間隔は中央値33日)に、血清脂質〔総コレステロール、善玉コレステロール(HDL-C)、中性脂肪〕を測定。それらの測定値からSampson式に基づき悪玉コレステロール(LDL-C)を算出し、また善玉以外のコレステロール(non-HDL-C)も算出した。これらの検査値の改善幅を両群間で比較したところ、総コレステロール、LDL-C、non-HDL-Cは、いずれも両群ともに指導後に有意に低下していて、低下幅に有意差は見られなかった。 この結果について論文の筆頭著者であるZoulek氏は、「われわれの研究は、バーチャルのフォーマットを利用した栄養指導でも、対面での介入と同等の短期的な臨床転帰を達成できるという考えを裏付けるものだ」と総括。その上で、「コレステロール値の改善は心血管イベントリスクの軽減につながると考えられ、治療アクセスの選択肢が増えることは、治療を受けようとしている患者にとってメリットとなるだろう」と付け加えている。 また、共著者の1人である同大学のBeverly Kuznicki氏は、「栄養ケアへのアクセスは非常に重要であり、われわれの研究はコレステロール値の改善に対してバーチャルケアがいかに効果的であるかを示している。バーチャルケアでは、栄養士が患者のキッチンの様子を覗き込み、2人が協力して冷蔵庫の中にある食材を使った献立を考えたりすることも可能だ」と、対面医療にはない遠隔医療の特色を強調している。 また研究グループによると、遠隔医療のそのほかのメリットとして、経済的弱者やマイノリティー、非都市部の居住者の医療アクセスが改善される可能性が、米国全土での調査結果として示されているという。さらに論文の上席著者である同大学のEric Brandt氏は、「バーチャルケアの推進は、COVID-19パンデミックという災禍の中から生まれた希望の光と言えるのではないか。従来型のケアにあった、いくつかの障壁の克服につながる多くのメリットが、バーチャルケアには存在している」と評している。

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脂の多い魚の摂取はCVDリスクを低下させる

 心血管疾患(CVD)の家族歴のある人は、サケ、サバ、ニシン、イワシなどの脂肪の多い魚の摂取を増やすと良いようだ。CVDの家族歴がありオメガ3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の血中濃度が低い人では、CVDの家族歴がなくEPA/DHAの血中濃度も低くない人に比べて、CVDのリスクが40%以上高いことが新たな研究で明らかになった。一方、EPA/DHAの血中濃度が十分であれば、CVDの家族歴があってもリスクは25%の増加にとどまることも示されたという。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のKarin Leander氏らによるこの研究の詳細は、「Circulation」に12月4日掲載された。 この研究では、4万885人の成人を対象に、多価不飽和脂肪酸(PUFA)の低血中濃度と、CVDの家族歴を有する人におけるCVDリスク(致死的または非致死的な冠動脈疾患と脳梗塞)との関連が検討された。対象者の血液および組織を用いて、n-6系PUFAであるリノール酸(LA)と、n-3(オメガ3)系PUFAであるα-リノレン酸(ALA)およびEPA/DHAのレベルを測定し、そのレベルが下位25%以下の場合を「低濃度」と定義した。これらのPUFAはいずれも体内では合成できないため、食事から摂取する必要がある。Leander氏は、「PUFA量は、自己申告による食事データよりも血液や組織中の脂肪酸レベルに基づいて推定する方が、より客観的で正確だ」と説明している。 関連因子を調整して解析した結果、EPA/DHAは、CVD家族歴との間に有意な交互作用のあることが示された。EPA/DHAが低濃度ではなくCVDの家族歴もない人に比べて、EPA/DHAが低濃度でCVDの家族歴がある人でのCVD発症の相対リスクは1.41(95%信頼区間1.30〜1.54)であった。同リスクは、EPA/DHAが低濃度またはCVDの家族歴のどちらかのみを有する場合には低下し、CVDの家族歴のみの場合で1.25(同1.16〜1.33)、EPA/DHA低濃度のみの場合で1.06(同0.98〜1.14)であった。 研究グループは、「これらの結果は、健康的な生活習慣により遺伝的リスクを克服できる可能性があることを示すものだ」と述べる。Leander氏も、「この研究は、CVDの家族歴がある人は、脂肪の多い魚の摂取を増やすことで得られるものが多いことを示唆している」と語る。 Leander氏は、「CVDは、双生児研究で示されているように、ある程度は遺伝性のものであり、その制御遺伝子を特定することは困難であった。現時点で考えられる有力な仮説は、CVDは遺伝と環境の組み合わせにより生じるというものだ」と話している。

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宴席などの誘いを断っても、相手は気にしていない

 年末年始は何かとイベントの誘いが増える。中にはあまり気の乗らないイベントがあるかもしれない。そのような時、「せっかく誘ってくれたのに断ったら、相手は嫌な思いをするのではないだろうか」と心配し、断り切れずに参加してしまうということがないだろうか。しかし、新たに発表された研究報告によると、そのような心配はあまり必要ないことが明らかになった。人々は一般的に、他人の誘いを断ることによる相手の心情への影響を気にしすぎる傾向があるという。 この研究は、米ウェストバージニア大学のJulian Givi氏と米ニューヨーク工科大学のColleen P. Kirk氏によるもので、詳細は「Journal of Personality and Social Psychology」に12月11日掲載された。調査によると、4人に3人以上(77%)は、イベントに誘われた際に参加を辞退した場合の影響を懸念して、参加したくない誘いへの招待に応じた経験があるとのことだ。 なぜ、人々は誘いを断ることに後ろめたさを感じ、無理をしてイベントに参加するのかという理由を探るために、Givi氏らは2,000人以上を対象とするいくつかの実験を行った。なお、同氏自身も、「絶対に参加したくないイベントに招待されたことがあるが、参加しなかったら招待してくれた人が機嫌を悪くするのではないかと不安だったので参加した経験がある」という。しかし一連の研究の結果、「誘いを断ることのマイナスの影響は、人々が考えているよりはるかに軽微であることが分かった」と同氏は述べている。 ある実験では、招待される側に設定された人には、レストランでの有名シェフによるディナーに友人から招待されたものの、その日は既に日中の予定が決まっていて夕方以降は自宅でくつろぎたいとの理由で、誘いを断るというシチュエーションを想像してもらった。その一方、招待する側に設定された人には、声をかけた友人から上記と同じ理由で断られたというシチュエーションを想像してもらった。すると、誘いを断った側の人は断られた人以上に、その後の友人関係への影響を懸念し、「これからはもう同じような誘いをしてくれなくなるのではないか」と心配しがちであることが分かった。 別の実験は、恋愛期間5年以上が74%、1~5年未満が21%を占める、付き合いの長いカップル160人を対象に行われた。カップルのうち1人に、今後数週間以内に二人でやってみたいこと(例えば映画鑑賞や外食、ハイキングなど)のパートナー宛の招待状を書いてもらった。その招待状を受け取ったパートナーには、「家でリラックスしたいから」という理由で断るように求めた。すると、断った側の人は、パートナーが実際に感じている以上に怒っているのではないかと懸念したり、または誘いを断ったことが相手の存在を軽視していると解釈されるのではないかと過度に心配したりすることが分かった。これにより研究者らは、たとえ互いに長年の親密な関係にあったとしても、誘いを断った側はその影響を過大評価すると結論付けている。 Givi氏は、無理をして誘いに乗るよりも時には断ることで、燃え尽き症候群のリスクが低下するというメリットがあるとする。同氏は、「休みの日にあまりに多くのイベントがあると、燃え尽き症候群になることが実際にあり得る。よって、誘いを断ることを恐れないでほしい。ただし、他者とともに過ごす時間によって人間関係が構築されることも確かであるため、全ての誘いを断ってよいということではない」とのアドバイスをしている。

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英語で「ICUに立ち寄る」は?【1分★医療英語】第113回

第113回 英語で「ICUに立ち寄る」は?《例文1》Could you swing by the office?(オフィスに立ち寄っていただけますか?)《例文2》I will stop by the floor and talk to the patient.(病棟に立ち寄って、その患者さんと話をしておきます)《解説》“swing by~”は「~に立ち寄る」「顔を出す」という意味になり、病棟やICU、ナースステーションなどに立ち寄ることを伝えるときに使える表現です。“swing”は「揺れる」という意味の動詞ですが、「ブランコが揺れるようにふらっと立ち寄る」というイメージを持ってもらうとよいでしょう。「立ち寄る」という意味を表すほかの表現には“stop by”や“drop by”という熟語がありますが、“stop by”よりも“swing by”や“drop by”のほうが、「より短時間で立ち寄る」というイメージになります。また、例文に出てきた表現の“check on”は「様子を見る」「無事を確かめる」という意味になり、こちらも臨床現場で頻繁に使うフレーズです。講師紹介

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第197回 セマグルチドと自殺念慮は関連せず

セマグルチドと自殺念慮は関連せずGLP-1受容体作動薬の自殺リスクが取り沙汰されていますが、併せて180万例強の電子カルテ解析で幸いにもノボ ノルディスク ファーマのセマグルチド使用患者の自殺念慮はほかの糖尿病薬や抗肥満薬使用患者に比べて多くなく、むしろ少なめでした。今月5日にNature Medicine誌に掲載された解析結果です1)。2つの集団が解析され、その1つは2021年6月~2022年12月にセマグルチドかほかの抗肥満薬が処方された米国の肥満か太り過ぎの約24万例(24万618例)の医療記録の解析です2)。被験者の大半の23万2,771例は先立って自殺念慮を被ったことがなく、残り7,847例は過去に自殺念慮を生じたことがありました。自殺念慮の経験がなかった患者にセマグルチド処方後6ヵ月間に認められた自殺念慮の発生率、すなわち初発率は0.11%、自殺念慮の経験があった患者のセマグルチド処方後6ヵ月間のその再発率は7%ほどでした。一方、ほかの抗肥満薬処方患者の自殺念慮の初発率と再発率はどちらもより高く、それぞれ0.43%と14%でした。2017年12月~2021年5月にセマグルチドかほかの糖尿病薬が投与された2型糖尿病患者160万例弱(158万9,855例)の医療記録を使ったもう1つの解析も同様の結果となりました。セマグルチド投与群の自殺念慮の初発率と再発率はそれぞれ0.13%と10%、ほかの糖尿病薬投与群の自殺念慮の初発率と再発率はより高くそれぞれ0.36%と18%でした。2型糖尿病へのセマグルチド使用は2017年に米国で承認されているので、より長期の経過の比較が可能です。そこで最大3年間の経過を比較したところ、差は縮まってはいたもののセマグルチド投与群の自殺念慮初発率はやはりより低く保たれていました。セマグルチドと自殺念慮が生じ易くなることの関連をそれらの結果は支持していません。一方、セマグルチドが自殺念慮を生じ難くすると決めつけることはできなさそうですが、もしそうであるなら体重減少が心理的によい影響をもたらすことによるのかもしれませんし、まだ知られていないメカニズムによるのかもしれません3)。先週11日に米国FDAはセマグルチドなどのGLP-1作動薬と自殺念慮や自殺行為の関連の調査の途中経過を発表しました。幸い、Nature Medicine誌の報告と一致し、GLP-1作動薬と自殺念慮や自殺行為の因果関係は示されていないとひとまず判断されています4)。ただし若干のリスクの恐れ(small risk may exist)の払拭には至っておらず、FDAの検討は続いています。今後の課題としてより長期のセマグルチド使用と自殺念慮の関連を調べる必要があるとNature Medicine誌報告の著者は言っています2)。また、自殺念慮から一線を越えた自殺企図(suicide attempt)との関連の検討も必要です。参考1)Wang W, et al. Nature Medicine. 2024 January 5. [Epub ahead of print] 2)Semaglutide associated with lower risk of suicidal ideations compared to other treatments prescribed for obesity or type 2 diabetes / NIH3)No link between popular weight loss drugs and suicidal thoughts, health records suggest / Science4)Update on FDA’s ongoing evaluation of reports of suicidal thoughts or actions in patients taking a certain type of medicines approved for type 2 diabetes and obesity / FDA

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エムポックスワクチン、5分の1の投与量でも有効

 コンゴ民主共和国では2023年に入って以来、エムポックス(サル痘)の感染例が例年より大幅に多く、すでに何百人もの人が死亡している。こうした中、米ニューヨーク大学(NYU)の研究グループが、エムポックスワクチン(Jynneos)の5分の1の量を皮内接種することでも十分な感染予防効果が得られるとする研究結果を報告した。筆頭著者であるNYUグロスマン医学部の感染症専門医であるAngelica C. Kottkamp氏は、「ワクチン不足に直面した際の緊急措置として少量のワクチンを投与することの有効性が確認された」と述べている。この研究結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」12月14日号に掲載された。 2022年にLGBTQ+の人やHIV感染者を中心に世界各国でエムポックスが流行し、それに伴い、エムポックスワクチンの供給が限界にまで逼迫した。この事態に対処するために、米食品医薬品局(FDA)は2022年8月9日、より多くのワクチンを行き渡らせるために、通常は皮下投与するJynneosの5分の1の量を皮内投与する接種法に緊急使用許可を与えた。NYUのニュースリリースによると、この年の夏にニューヨークでエムポックスが流行した際に約15万5,000人のニューヨーカーがワクチンを接種したが、その大部分は5分の1用量の接種だったという。しかし、HIV感染者におけるワクチンの皮内投与の効果やJynneos接種後のエムポックスウイルスに対する抗体の持続期間は明らかになっていない。 この研究では、エムポックス罹患歴のない145人のニューヨーカー(男性80.7%)を対象に、Jynneosの皮内投与後の抗体の持続期間が調査された。対象者の24%はHIV感染者で、20%は天然痘ワクチンの接種歴があり、89%(うち85%が男性)はLGBTQ+を自認していた。Kottkamp氏らは、エムポックスウイルス中和の指標として、エムポックスウイルスのH3Lタンパク質に対するIgG抗体価を測定した。 その結果、天然痘ワクチンの接種歴がない人では、Jynneosの2回接種後にH3Lタンパク質に対するIgG抗体価がピークに達した後、低下していくことが明らかになった(抗体半減期107.9日)。一方、天然痘ワクチンの接種歴がある人では2回目接種後3カ月にわたり、より高い抗体価を維持していた。天然痘ワクチンの接種歴がない人では、Jynneosの2回接種後の幾何平均抗体価が1回接種後の4倍だった(199.4対49.6)。Jynneosの2回接種後のIgG抗体価に、投与経路(皮内/皮下投与)やHIVの状態による違いは認められなかった。 主任研究者であるNYUグロスマン医学部のMark Mulligan氏は、「この研究結果は、エムポックスウイルスへの感染リスクが最も高い人には貴重なサポート情報を提供し、また、感染症の専門家には、エムポックスが再流行した場合に、それを短期間で効果的に対処するためのワクチン接種の手段と知識があることの裏付けとなるだろう」と述べている。

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幹細胞治療が進行性心不全患者のQOLを改善

 進行した心不全患者には幹細胞治療が有効であることが、臨床試験で明らかになった。損傷した心臓組織を修復するようにプログラムされた幹細胞の注入を受けた患者では、シャム治療を受けた患者と比べて全体的な生活の質(QOL)が改善することが示されたのだ。米メイヨークリニックの循環器専門医である山田さつき氏らによるこの研究の詳細は、「Stem Cell Translational Medicine」に11月24日掲載された。 心筋梗塞後に心不全が生じる例は珍しくない。これは、心筋が損傷を受けることで心臓から全身に血液を送り出す力が弱まるためだと研究グループは説明する。心不全患者の多くには、息切れ、疲労、足のむくみなどの症状が現れる。病状が進行すると、日常生活が制限され、QOLが低下する。論文の上席著者である、メイヨークリニック再生医療センター長のAndre Terzic氏は、「心不全は急増しつつある疾患で、新規の治療法の開発が必要だ」と同クリニックのニュースリリースで述べている。 今回の研究では、10カ国、39カ所の病院から、食事療法、薬物療法、血行再建療法などの標準的な治療が奏効しない進行性慢性心不全患者315人を試験対象者として登録。患者は、自身の骨髄から採取した幹細胞を損傷した心筋を修復するように再プログラムした後に心臓に注入する治療を受ける群(157人、幹細胞治療群)とシャム治療を受ける群(158人、シャム治療群)にランダムに割り付けられた。アウトカムとした心不全に関連するQOLは、治療開始前と治療後26、39、52週目の時点でMinnesota Living With Heart Failure Questionnaire(MLHFQ)により評価した。MLHFQは21項目の質問で構成され、総スコア(0〜105点)が高いほどQOLが不良であることを意味する。 最終的に、幹細胞治療群の120人、シャム治療群の151人の合計271人が割り当てられた治療を受け、前者で104人、後者で132人が52週目の追跡調査を完了した。1年間の追跡期間中のMLHFQ総スコアの変化(平均)は、幹細胞治療群、シャム治療群の順に、26週時点で−15.9点と−10.4点、39週目時点で−14.9点と−11.0点、52週目時点で−15.6点と−11.5点と、両群とも低下していた。1年間の追跡期間全体での両群間の総スコアの差は−4.6点と幹細胞治療の方が改善効果が大きく、統計学的にも有意であった。さらに、幹細胞治療群は死亡率や入院率も低かった。 山田氏は、「メイヨークリニックで開発された再生技術を検証した最大規模の心血管細胞治療の試験データから、進行性心不全患者に対する幹細胞治療は、生存期間の面でもQOLの面でも有益であることが示された」と話す。また同氏は、「再生医療の有用性は、これまで臨床医が報告する転帰に基づいて評価されてきた。それに対してこの研究では、患者の経験に耳を傾けるようにデザインされており、その点が他の研究とは異なっている」と付言している。

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統合失調症の神経認知プロファイルに対するアリピプラゾールとオランザピンの有効性比較

 統合失調症は、重篤な神経認知障害を引き起こす疾患である。統合失調症に対する抗精神病薬治療は、精神病理および神経認知機能の改善をもたらすことが期待される。インド・Government Medical College and HospitalのSanya Sharma氏らは、統合失調症患者の神経認知プロファイルに対するアリピプラゾールとオランザピンの有効性を比較するため、プロスペクティブ介入比較研究を行った。その結果、アリピプラゾールとオランザピンは、神経認知プロファイルの改善に有効であり、それぞれ特定の領域に対してより有効であることが示唆された。Indian Journal of Psychiatry誌オンライン版2023年10月号の報告。 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-V)に従い、統合失調症患者をベースライン時の簡易精神症状評価尺度(BPRS)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)および神経心理学的検査で評価した。対象患者は、コンピューターで生成したランダムナンバーに基づき、アリピプラゾール群(1日当たり10~30mgを経口投与)とオランザピン群(1日当たり5~20mgを経口投与)にランダムに割り付けられ、10週目に再評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者40例が、10週間の研究期間を終了した。・ベースライン時、大多数の患者において、1つ以上の神経認知領域の重大な欠損が認められた。・アリピプラゾール群、オランザピン群のいずれにおいても、精神症状および神経認知プロファイルの改善が認められた。・アリピプラゾール群では、オランザピン群と比較し、処理速度の有意な改善が認められた。・アリピプラゾールによるストループ効果(p=0.000)および視空間認識能力(p<0.001)の非常に有意な改善が認められた。・オランザピン群では、意味流暢性(p<0.01)、言語流暢性(p<0.01)において非常に有意な改善が認められた。

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現行のHbA1c糖尿病判定値は閉経前女性にとって高すぎる可能性

 性差が考慮されていない現在のHbA1cの糖尿病判定値は、閉経前女性には高すぎる可能性を示すデータが報告された。仮に性特異的なカットオフ値を適用したとすると、50歳未満の女性糖尿病患者が17%増加する可能性があるという。英国の臨床検査関連企業であるBenchmarking Partnership社のDavid Holland氏らの研究によるもので、第59回欧州糖尿病学会(EASD2023、10月2~6日、ドイツ・ハンブルク)で発表されるとともに、「Diabetes Therapy」に9月30日掲載された。 耐糖能の評価や糖尿病の診断には経口ブドウ糖負荷試験が行われるが、血糖コントロールの指標であるHbA1cも糖尿病の判定ツールとして利用されている。そのHbA1cは溶血や失血、鉄欠乏性貧血からの回復期などの赤血球寿命が短縮する状態において、低値となりやすい。閉経前女性は同年代の男性よりHbA1cが低いことが報告されているが、これには月経による鉄欠乏の反復のためにHbA1cが低値となっている女性が一定数存在していることの影響も考えられる。一方、女性糖尿病患者の診断時年齢は平均すると男性よりも高齢である反面、死亡率は男性よりも高い。この事実に、糖尿病の診断の遅れが関与している可能性がある。 これらの点を検討するためHolland氏らはまず、英ノースミッドランド大学病院で2012~2019年にHbA1c検査を1回のみ受け、その値が50mmol/mol(約6.8%)以下だった14万6,907人のデータを解析。このうち50歳未満のHbA1cを性別で比較すると、女性は男性よりも平均1.6mmol/mol有意に低値であり(P<0.0001)、HbA1cの中央値である36mmol/molに該当する年齢は、男性では34~36歳であるのに対して女性は46~47歳だった。これにより、50歳未満の女性の糖尿病診断年齢が、男性より最大10年遅くなる可能性のあることが分かった。なお、50歳以上の集団でも女性の方が平均HbA1cは低値だったが、男性との差は0.9mmol/molだった(P<0.0001)。 次に、同大学病院とは別の英国内6件の医療機関、計93万8,678人のデータを用いた解析を実施したところ、上記と同様の結果が再現された。現行の糖尿病判定のためのHbA1c基準値は国際的に48mmol/mol(6.5%)とされているが、これを仮に46mmol/molに下げた場合、16~50歳の女性の0.26%が新たに糖尿病と判定される可能性が示唆された。 続いて、イングランドとウェールズで実施された一般住民対象糖尿病実態調査のデータを援用した解析を施行。HbA1cの判定値を性特異的なものとし、女性に対しては46mmol/molという値を適用したとすると、50歳未満の糖尿病女性患者数は現在よりも17%増加すると試算された。また、16~50歳の糖尿病患者における死亡リスクの差(女性が男性より26.7%高値との報告がある)の最大64%は、診断遅延の影響により発生している可能性が考えられた。 著者らは、「われわれの研究結果は、50歳未満の女性にとって現行のHbA1cによる糖尿病の判定値が、約2mmol/mol高すぎる可能性があることを示唆している。判定値を再検討し、性特異的なカットオフ値を設定すべきかもしれない。それによって女性の糖尿病を早期に見いだし介入することができ、将来的には女性患者の予後改善につながるのではないか」と述べている。

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炎症性乳がんへのNAC、1ラインvs.2~3ラインで転帰の差は

 多くのStageIII炎症性乳がん患者は、第1選択治療として術前化学療法(NAC)を受け、十分な反応を示し手術可能となるが、追加のNACが必要となるケースもある。米国・ハーバード大学医学大学院のFaina Nakhlis氏らは、1ラインvs.2~3ラインのNACを受けた患者における臨床転帰を評価した。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2023年12月28日号への報告。 2施設において、1ラインまたは2~3ラインのNACを受けたStageIII炎症性乳がん患者が特定された。ホルモン受容体とHER2の状態、グレード、および病理学的完全奏効(pCR)が評価され、乳がんのない生存期間(BCFS)および全生存期間(OS)はKaplan-Meier法により評価された。多変数Coxモデルを用いてハザード比(HR)が推定された。 主な結果は以下のとおり。・808例の適格患者が特定された(1997~2020年、年齢中央値:51歳、追跡期間中央値:69ヵ月)。・733例(91%)が1ライン、75例(9%)が2~3ラインのNACを受けていた。2~3ラインのNACを受けた患者において、グレード3、トリプルネガティブ、HER2陽性の乳がんがより多かった。・1ラインの患者178例(24%)、2~3ラインの患者14例(19%)でpCRを達成した。・5年BCFSは2~3ラインの患者で不良であったが(33% vs.46%、HR:1.37、95%信頼区間[CI]:0.99~1.91)、pCRを達成した192例では同様であった(1ラインの患者:76% vs.2~3ラインの患者:83%)。・308例(1ラインの患者:276例、2~3ラインの患者:32例)が死亡した。・5年OSは1ラインの患者:60% vs.2~3ラインの患者:53%(HR:1.32、95%CI:0.91~1.93)、 pCR達成例では1ラインおよび2~3ラインの患者でともに83%であった。 著者らは、「StageIII炎症性乳がん患者において、pCR率はNACのライン数によらず同様であり、pCRを達成した患者におけるBCFSおよびOSは同程度であった」としている。

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コロナ外来患者への高用量フルボキサミン、症状期間を短縮せず/JAMA

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、高用量フルボキサミン(100mgを1日2回投与)を12日間投与しても、プラセボと比較してCOVID-19症状期間を短縮しなかった。米国・バージニア大学のThomas G. Stewart氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV(Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines)-6試験」の結果を報告した。JAMA誌2023年12月26日号掲載の報告。発症から7日以内の軽症~中等症患者を対象に、高用量フルボキサミンvs.プラセボ ACTIV-6試験は、軽症~中等症のCOVID-19外来患者における既存治療転用を評価するようデザインされた分散型臨床試験である。 研究グループは、2022年8月25日~2023年1月20日に米国103施設において、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染確認後10日以内で、COVID-19の症状(疲労、呼吸困難、発熱、咳、悪心、嘔吐、下痢、体の痛み、悪寒、頭痛、喉の痛み、鼻の症状、味覚・嗅覚の異常)のうち2つ以上の症状発現後7日以内の、30歳以上の外来患者を、フルボキサミン群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 フルボキサミン群では、1日目にフルボキサミン50mg錠1錠を2回投与し、その後50mg錠2錠(100mg)を1日2回12日間投与した。 主要アウトカムは持続的回復までの期間(少なくとも3日間連続して症状がないことと定義)、副次アウトカムは28日以内の死亡、入院または死亡、あるいは入院・救急外来(urgent care)/救急診療部(emergency department)受診・死亡の複合などであった。持続的回復までの期間中央値、両群とも10日 無作為化されて治験薬の投与を受けた1,208例は、年齢中央値50歳(四分位範囲[IQR]:40~60)、女性65.8%、ヒスパニック系/ラテン系45.5%、SARS-CoV-2ワクチンの2回以上接種者76.8%であった。 有効性解析対象集団のフルボキサミン群589例およびプラセボ群586例において、持続的回復までの期間の中央値は両群とも10日(IQR:10~11)であり、持続的回復までの期間に差は確認されなかった(ハザード比[HR]:0.99、95%信用区間[CrI]:0.89~1.09、有効性の事後確率p=0.40)。 副次アウトカムついては、死亡例の報告はなく、入院はフルボキサミン群1例およびプラセボ群2例、入院・救急外来/救急診療部受診はそれぞれ14例および21例(HR:0.69、95%CrI:0.27~1.21、有効性の事後確率p=0.86)であった。 重篤な有害事象は、6例(フルボキサミン群2例、プラセボ群4例)で7件報告された。

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緊急避妊薬、新年直後に販売数が増加/BMJ

 米国のドラッグストアや量販店で、レボノルゲストレル緊急避妊薬の販売数について調べたところ、新年の祝日後に顕著に増加することが、米国・テキサス工科大学のBrandon Wagner氏らが行った時系列分析で示された。そのほか、バレンタインデー、セントパトリックスデー、米国の独立記念日の後にも、新年の祝日後ほどではないが増加が認められたという。結果を踏まえて著者は、「新年の祝日後の緊急避妊薬の売上増加は、この時期が他の休日と比べて、無防備な膣性交のリスクが高いことを示唆している」と述べ、「行動リスクをターゲットとした性暴力を軽減するための予防戦略と、休日前後の避妊薬へのアクセスを改善することで、無防備な膣性交のリスクを制限できる可能性がある」とまとめている。BMJ誌2023年12月20日号クリスマス特集号「ANNUAL LEAVE」掲載の報告。新年直後とそれ以外の週の販売数を比較 研究グループは自己回帰統合移動平均(ARIMA)モデルを使用した時系列分析にて、大みそか・元旦休暇後の緊急避妊薬の売上増加を推計した。2016~22年の米国の従来型(実店舗)小売店(食料品店、ドラッグストア、量販店、クラブストア、1ドルショップ、軍用アウトレット)で集めた緊急避妊薬の週単位販売データ(362件)について、新年の祝日後(6件)とそれ以外(356件)に分け、ARIMAモデルを用いた時系列分析で比較した。 主要アウトカムは、米国の生殖可能年齢の女性1,000人当たりの、レボノルゲストレル緊急避妊薬の週間販売数とした。新年直後の週、緊急避妊薬販売数は0.63/女性1,000人の増加 レボノルゲストレル緊急避妊薬の販売数は、新年祝日後に顕著に増加した(15~44歳の女性1,000人当たり0.63単位増加、95%信頼区間:0.58~0.69)。 そのほか、バレンタインデー、セントパトリックスデー、米国の独立記念日で祝日後に同増加が認められた。 同増加は15~44歳の女性1,000人当たりそれぞれ、0.31(同:0.25~0.38)、0.14(同:0.06~0.23)、0.20(同:0.11~0.29)だった。 これら以外の祝日(イースター、母の日、父の日)後に、同増加は認められなかった。

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乾癬への生物学的製剤、逆説的反応リスクは?

 生物学的製剤による治療を受けた乾癬患者が湿疹を発症する逆説的反応のリスクは、IL-23阻害薬を投与された患者で最も低かった。リスク上昇と関連する因子は、年齢上昇、女性、アトピー性皮膚炎の既往、花粉症の既往であった。全体的には逆説的反応の発生率は低かった。英国・マンチェスター大学のAli Al-Janabi氏らが前向きコホート試験の結果を報告した。生物学的製剤を用いた尋常性乾癬患者の一部で、アトピー性皮膚炎の表現型の1つである湿疹を発症することが報告されている。しかし、そのリスク因子は不明であった。今回の検討結果を踏まえて著者は、「さらなる試験を行い、今回得られた結果を再現する必要がある」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年12月6日号掲載の報告。 研究グループは、生物学的製剤のクラス別の逆説的反応のリスク、リスク上昇と関連する因子を検討する前向きコホート研究を行った。 対象患者は、英国およびアイルランドの皮膚科を受診し、生物学的製剤による治療を受けた18歳以上の成人の尋常性乾癬患者で、データはBritish Association of Dermatologists Biologics and Immunomodulators Registerから入手した。2007年9月~2022年12月に少なくとも1回以上のフォローアップ受診のある患者を適格とした。 逆説的反応による湿疹の発症、治療中断、最終フォローアップまたは死亡までの生物学的製剤への曝露期間を調査。生物学的製剤はTNF阻害薬(アダリムマブ、セルトリズマブ ペゴル、エタネルセプト、インフリキシマブ)、IL-17阻害薬(ビメキズマブ、ブロダルマブ、イキセキズマブ、セクキヌマブ)、IL-12/23阻害薬(ウステキヌマブ)、IL-23阻害薬(グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ)を対象とした。逆説的反応の発生率、生物学的製剤のクラス別にみた逆説的反応のリスク、逆説的反応のリスク因子を、傾向スコア加重Cox比例ハザード回帰モデルを用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・1万3,699例が2万4,997件の生物学的製剤による治療を受けた。・2万4,997件の解析対象の年齢中央値は46歳(四分位範囲:36~55)、男性が57%、総曝露期間は8万1,441患者年であった。・逆説的反応の発生は、273件(1%)であった。・10万人年当たりの補正後発生率は、IL-17阻害薬1.22、TNF阻害薬0.94、IL-12/23阻害薬0.80、IL-23阻害薬0.56であった。・TNF阻害薬との比較において、IL-23阻害薬は逆説的反応のリスクが低かった(ハザード比[HR]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.19~0.81)。一方、IL-17阻害薬(同:1.03、0.74~1.42)、IL-12/23阻害薬(同:0.87、0.66~1.16)では逆説的反応との関連はみられなかった。・年齢上昇(HR:1.02、95%CI:1.01~1.03)、アトピー性皮膚炎の既往(同:12.40、6.97~22.06)花粉症の既往(同:3.78、1.49~9.53)は、逆説的反応のリスクを上昇させた。男性はリスクが低かった(同:0.60、0.45~0.78)。

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境界性パーソナリティ障害に合併する精神および身体疾患

 境界性パーソナリティ障害(BPD)とその併存疾患に関する情報は、BPDの診断数が少ないため、限られている。南デンマーク大学のL. H. Hastrup氏らは、初めてBPDと診断された患者における診断前後3年間の精神的および身体的併存疾患を調査し、対照群との比較を行った。その結果、BPD患者は、さまざまな身体的および精神的疾患を併発する可能性が高いことを報告した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2023年12月10日号の報告。 2002~16年にBPDを発症した患者2,756例とマッチさせた対照群1万1,024例を対象に、登録ベースのコホート研究を実施した。併存疾患に関するデータは、世界保健機構(WHO)のICD-10基準に従い、主要な疾患グループに分類した。 主な結果は以下のとおり。・BPD患者の約半数は、診断前に精神疾患および行動障害と診断されていたが、対照群では3%のみであった。・負傷、自傷行為、中毒などの外的要因による疾患併発は、対照群と比較し、診断前のBPD患者でより多く認められた。・BPD患者では、循環器系、呼吸器系、消化器系、筋骨格系、泌尿生殖器系の疾患を合併する割合が高かった。・診断後では、BPD患者のすべての疾患グループにおいて、併存疾患を有する患者の割合の有意な増加が認められた。・精神的および行動的疾患は、BPD患者87%、対照群3%で認められ、神経疾患は、BPD患者15%、対照群4%に認められた。・BPD患者は、体細胞性疾患、とくに消化器系、呼吸器系、循環器系、内分泌系の疾患を併発する可能性が高かった。・12年間の死亡率は、対照群よりもBPD患者で統計学的に有意に高かった。

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低Na血症、起こりやすい降圧薬と発症タイミング

 デンマーク国立血清研究所のNiklas Worm Andersson氏らが、サイアザイド系利尿薬による低ナトリウム血症(以下、低Na血症)の累積発生率について、その他薬効クラスの降圧薬と比較・推定を行った。その結果、治療開始から最初の数ヵ月間において、サイアザイド系利尿薬では添付文書等で示されている1)よりも低Na血症のリスクが高かったことが明らかになった。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2023年12月19日号掲載の報告。1.頻度不明/まれ/非常にまれ(10,000分の1~100分の1未満と定義)と記載されている。 本研究は2014年1月1日~2018年10月31日にデンマークで実施された人口登録ベースの観察研究を用いて、2つのtarget trial emulation2)を行った。主要評価項目は治療開始から2年以内の血中Na値130mmol/L未満の累積発生率。2.標的試験の模倣。観察研究データを用いて、仮想的なランダム化臨床試験を模倣すること。 対象者は直近で降圧薬が処方されておらず、低Na血症の既往歴のない40歳以上。1つ目のtarget trial emulationでは、bendroflumethiazide(BFZ、国内未承認)とカルシウム拮抗薬(CCB)の新規使用について比較し、2つ目のtarget trial emulationでは、ヒドロクロロチアジド・RA系阻害剤の配合剤とRA系阻害薬の新規使用について比較した。 主な結果は以下のとおり。・1つ目のtarget trial emulationではBFZ3万7,786例、CCB4万4,963例の新規処方患者を比較し、2つ目では配合剤1万1,943例とRA系阻害薬8万5,784例の新規処方患者を比較した。・2年間における低Na血症の累積発生率は、BFZで3.83%、配合剤で3.51%だった。リスク差は、BFZvs.CCBで1.35%(95%信頼区間:1.04~1.66)、配合剤vs.RA系阻害薬では1.38%(同:1.01~1.75)だった。・リスク差は、高齢、併存疾患の負荷が高いほど大きくなり、各ハザード比は、治療開始最初の30日間では3.56(同:2.76~4.60)および4.25(同:3.23~5.59)で、治療開始1年後のHRは1.26(同:1.09~1.46)および1.29(同:1.05~1.58)だった。 ただし、本研究の制限として、研究者らは「処方箋の記載と実際に使用された薬剤が同等という仮定に基づく交絡が残存する可能性が高い」としている。

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潜在的食物アレルギーが心血管死リスクと関連

 急性のアレルギー症状は現れないが、検査で反応が見つかる程度の潜在的な食物アレルギーが、心血管死のリスクと関連のあることが明らかになった。米バージニア大学保健システム(UVA)のJeffrey Wilson氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に11月9日掲載された。Wilson氏らは、「将来的には、既知のリスク因子を持たない人の中から心血管疾患リスクの高い人を探し出すために、食物アレルギー検査が役立つようになるかもしれない」と話している。 食物アレルギーの症状が現れない人にも、何らかの食物に対するアレルギー反応が生じていることが、抗体検査〔免疫グロブリンE(IgE)検査〕で示唆されることがある。従来、そのような検査所見は臨床的には意味がないものと考えられていたが、赤肉を摂取した後に、アレルギー症状が現れないにもかかわらずIgE抗体レベルが上昇する人は、心血管疾患のリスクが高い可能性のあることが最近指摘されている。これを背景としてWilson氏らは、そのような潜在的な食物アレルギー反応が、心血管疾患による死亡と関連しているかどうかを検討した。 研究には、2005~2006年の米国国民健康栄養調査(NHANES)と、アテローム性動脈硬化に関する多民族研究(MESA)のデータが用いられた。MESAは2000~2002年に研究参加登録が行われ、心血管疾患危険因子のない一般住民が登録されている。なお、IgEは総IgEと、牛乳、卵、ピーナッツ、エビなどの食品に対する特異的IgEが評価された。 NHANESでは4,414人の成人のうち229人の心血管死が確認され、MESAでは960人中56人の心血管死が記録されていた。性別、年齢、人種/民族、喫煙歴、教育歴、喘息の既往を調整したCox比例ハザードモデルでの解析の結果、NHANESでは、1種類以上の食品に対する感作が心血管死リスクの高さと有意に関連していた〔ハザード比(HR)1.7(95%信頼区間1.2~2.4)、P=0.005〕。特に牛乳への感作との関連が強く認められた〔HR2.0(同1.1~3.8)、P=0.026〕。同様の関連はMESAでも確認された〔HR3.8(同1.6~9.1)、P=0.003〕。 Wilson氏はUVA発のリリースの中で、「今回の研究対象者の大半は、明らかな食物アレルギーを有していたとは考えにくく、よって示された結果は、食物に対する潜在的なアレルギー反応の影響を示すものと言える。このような反応は急性アレルギー症状を来すほど強力ではないが、それでも炎症を惹起して時間の経過とともに、心臓病などの問題を引き起こす可能性がある」と解説している。この関連のメカニズムについては、現時点では推論の域を出ない。しかし、「アレルギー反応にかかわるマスト細胞と呼ばれる細胞は、血管や心臓にも存在する」と研究グループは指摘している。 ただし、未知の遺伝的要因または環境要因が関与している可能性も否定できず、より多くの研究が必要とされる段階だ。Wilson氏は、「この領域の研究は将来的に、アレルギー反応を評価する血液検査が、心臓の健康に良い食生活のアドバイスに役立てられる可能性につながるのではないか。とは言え、そのような推奨を実際に示すことができるようになるまでには、クリアすべき課題が多く残されている」と話している。

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くしゃみによる脾臓破裂の1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第248回

くしゃみによる脾臓破裂の1例KuKuKeKeより使用くしゃみは気道の内圧を急激に上昇させます。肺はデリケートな臓器なので、急に息を吸ったり吐いたりすると、肺が破れて気胸になってしまうことがあります。しかし、横隔膜を挟んだ脾臓が破裂したという世にも珍しい報告がありまして…。これはやはり腹圧が上がるからなのですが。Reinhold GW, et al. A Near Fatal Sneeze Spontaneous Splenic Rupture: A Case Report and Review of the Literature.Clin Pract Cases Emerg Med. 2017 May 24;1(3):190-193.79歳の女性が、左上腹部の痛みと背中・左肩への放散痛が3時間続いているという理由で救急車を呼びました。女性に外傷歴はなく、痛みの原因として唯一考えられることが、直前に「くしゃみを3回した」というのです。私の妻もそうですが、連続してくしゃみが出てしまう人っていますよね。女性には、腹部造影CT検査が行われました。その後、「脾臓破裂です!」と放射線科から診察医へ緊急連絡があったそうです。患者は当初、バイタルサインが正常で元気そうに見えましたが、その後、血圧が低下し、ショックバイタルに。こりゃいかん。外科医によって脾臓摘出術が行われ、この症例は無事に後遺症なく回復したそうです。脾臓破裂の発生率は脾臓の大きさと相関するという仮説がありますが、いまだにそのリスク因子はよくわかっていません。外傷はもちろんそうですが、それ以外の因子は不明と言わざるを得ません。この論文には、「くしゃみをしただけで脾臓が破裂したという世界初の報告である」と書かれており、原因としてはかなりまれと思われます。みなさんもくしゃみするときは、できるだけ1回で、あまり胸腔・腹腔内圧を高めないように注意してください。そういう意味では、大きな声でくしゃみをしたほうが、大気に開放されてリスクは低いのかもしれませんね。周囲の迷惑になってしまいますが。

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