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検索結果 合計:4227件 表示位置:4141 - 4160

4141.

うつ病やPTSDが深刻なネパールの元少年兵

戦争や武力紛争で、戦闘への参加を強いられた少年兵経験者には、特別の精神保健的な介入が必要とされるが、徴兵されなかった一般の少年との精神保健面の違いに関する研究は十分ではない。エモリー大学(米国・ジョージア州アトランタ市)のBrandon A. Kohrt氏らはネパールにおける調査の結果、「元少年兵の精神保健面の問題は、徴兵されなかった少年に比べて、より重症である」と報告した。JAMA誌2008年8月13日号より。少年兵と徴兵未経験者を141例ずつ選定し比較ネパールで2007年3月から4月にかけて、元少年兵と徴兵されなかった少年をそれぞれ141例選定し、年齢、性別、教育水準、民族性を合わせた横断的コホート研究を行い、精神保健面を比較した。主要評価項目は、うつ病症状は「Depression Self Rating Scale」、不安障害は「Screen for Child Anxiety Related Emotional Disorders」、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状は「Child PTSD Symptom Scale」、一般的な心理的障害は「Strength and Difficulties Questionnaire」、日常的動作は「Function Impairment tool」、心的外傷要因への曝露は、情動障害と統合失調症に関する「PTSD Traumatic Event Checklist of the Kiddie Schedule」で評価した。PTSDは男子よりも女子で深刻研究参加時の平均年齢は15.75歳、少年兵徴用時の年齢は5歳~16歳だった。すべての参加者に、少なくとも1種類の心的外傷があった。元少年兵の症状別では、うつ病が75例(53.2%)、不安障害が65例(46.1%)、PTSDが78例(55.3%)、心理的障害が55例(39.0%)、機能障害が88例(62.4%)だった。心的外傷要因への曝露および他の要素で補正すると、うつ病(オッズ比:2.41、95%信頼区間:1.31~4.44)、PTSD(女子)(6.80、2.16~21.58)、PTSD(男子)(3.81、1.06~13.73)に有意な関連が認められた。一般的な心理的障害(2.08、0.86~5.02)、不安(1.63、0.77~3.45)、機能障害(1.34、0.84~2.14)との関連は有意ではなかった。Kohrt氏は「ネパールの元少年兵は、徴兵されなかった少年と比べて精神衛生的な問題はより重症で、うつ病とPTSD(特に女子)の形で心に焼きついている」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

4142.

慢性リンパ性白血病とモノクローナルB細胞リンパ球増加症の関係

慢性リンパ性白血病(CLL)の診断には、血中CLL表現型細胞数が1立方mm当たり5,000個以上必要であり、CLL表現型細胞が少なく無症候性の患者は、モノクローナルB細胞リンパ球増加症(MBL)とされる。MBLとCLLの関係を調べた、英国・リーズ教育病院のAndy C. Rawstron氏らは、「CLL表現型MBLとリンパ球増加症の患者で、治療を必要とするCLLの発現率は年間1.1%」と報告した。NEJM誌2008年8月7日号より。正常血球1,520例とリンパ球増加症2,228例を比較62~80歳で血球数が正常な1,520例と、リンパ球増加症(血中リンパ球が1立方mm当たり数4,000個以上)の2,228例について、フローサイトメトリ法(flow cytometry)でMBLの存在を検証。モノクローナルB細胞は細胞遺伝学的分析と分子解析によって、より詳しく特徴を検討した。CLL表現型MBLとリンパ球増加症の185例の代表コホートは、中央値6.7年(範囲:0.2~11.8年)にわたり観察した。治療を要するCLL発現率は年間1.1%CLL表現型モノクローナルB細胞は、正常血球数群の5.1%(1,520例中78例)と、リンパ球増加症群の13.9%(2,228例中309例)に認められた。CLL表現型MBLはCLLと同様、13q14染色体欠失と三染色体性12の検出頻度が高く、免疫グロブリン重変数群(IGHV)遺伝子のレパートリーが偏っていた。リンパ球増加症群の185例のうち、進行性は51例(28%)、CLLへの進行性は28例(15%)で認められ、13例(7%)には化学療法が必要だった。B細胞の絶対数は、進行性リンパ球増加症に伴う唯一の独立予後因子だった。中央値6.7年以上の追跡期間中、進行性リンパ球増加症群の34%(185例中62例)が死亡したが、CLLは4例だけだった。死亡の唯一の独立予後因子は、68歳以上の年齢と、1dL当たり12.5g未満のヘモグロビン値だった。Rawstron氏は「一般集団とリンパ球増加症の被験者に認められるCLL表現型細胞には、CLL細胞と同様の特徴がある。CLL表現型MBLとリンパ球増加症の患者に、治療を必要とするCLLの発現率は年間1.1%」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

4143.

重度の早期関節リウマチに対するエタネルセプト+MTX併用の有用性を確認

重度の早期関節リウマチ(RA)に対するエタネルセプト(商品名:エンブレル)+メトトレキサート(商品名:リウマトレックスなど)併用療法は、治療開始1年で早期RAの治療目標を十分に達成しうる優れた治療法であることが、国際的な無作為化試験(COMET試験)で明らかとなった。近年、新たな治療法の登場でRAの予後は改善したが、患者の多くは実質的に身体機能障害や就業不能に陥らざるをえず、長期的な予後の改善を可能とする強力かつ安全な治療法が求められていた。イギリスLeeds大学Leeds分子医学研究所のPaul Emery氏が、Lancet誌2008年8月2日号(オンライン版2008年7月16日号)で報告した。診断後2年以内のRAでMTX単剤とエタネルセプト+MTX併用を比較COMET(combination of methotrexate and etanercept in early rheumatoid arthritis)試験には、2004年10月~2006年2月にヨーロッパ、南米、アジア、オーストラリアの70施設から、試験登録前3~24ヵ月の間に中等度~重度の早期RAと診断され、メトトレキサート(MTX)治療を受けたことがない18歳以上の外来患者が登録された。これらの患者は、MTX単剤療法(7.5mg/週から20mg/週まで8週間かけて漸増)あるいはMTX(同様に漸増)+エタネルセプト(50mg/週)併用療法に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、治療52週における寛解率[28関節の疾患活動性(DAS28)で評価]およびX線画像上の関節破壊の進行抑制[総Sharpスコア変法(mTSS)で評価]とした。寛解は治療52週におけるDAS28が<2.6、関節破壊の進行抑制はベースラインからのmTTSの変化が≦0.5の場合と定義された。寛解率:50% vs. 28%、関節破壊進行抑制率:80% vs. 59%542例が登録され、エタネルセプト+MTX併用群に268例が、MTX単剤群に274例が割り付けられた。有効性の評価が可能であったのは528例で、そのうち487例(92%)が重度例(DAS28>5.1)であった。エタネルセプト+MTX併用群で有効性の評価が可能であった265例のうち132例(50%)が寛解を達成したのに対し、MTX単剤群では評価可能な263例中、寛解達成例は73例(28%)であった(p<0.0001)。X線画像上の関節破壊の進行抑制が確認されたのは、エタネルセプト+MTX併用群の80%(196/246例)に対し、MTX単剤群は59%(135/230例)であった(p<0.0001)。重篤な有害事象の発現状況は両群で同等であった。著者は、「重度の早期RAに対するエタネルセプト+MTX併用療法は、治療開始1年で早期RAの治療目標である臨床的寛解および関節破壊の進行抑制のいずれをも高い確率で達成した」と結論し、「臨床的病態や画像所見上の予後が良好な症例では身体機能も改善される傾向が見られたため、エタネルセプト+MTX併用療法の良好な臨床効果は仕事を継続する能力にも影響を及ぼすことが示唆される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

4144.

胃癌手術でリンパ節拡大郭清を行っても生存率は改善しない

治療可能な胃癌に対して、2群リンパ節郭清を伴う胃切除術は、東アジアにおける標準治療である。しかし、2群郭清に加えて大動脈周囲リンパ節郭清(PAND)を行う3群郭清(拡大郭清)が、生存率を改善するかどうかは論争の的となっている。国立がんセンター中央病院の笹子三津留氏ら日本臨床腫瘍研究グループが、国内で大規模な比較試験を行った結果、3群郭清は生存率改善につながらないと報告した。NEJM誌2008年7月31日号より。日本胃癌学会の胃癌治療ガイドライン速報でも取り上げられた報告。胃癌患者523例を2群、3群郭清に割り付け5年間追跡1995年7月~2001年4月にかけて、国内24病院で、治療可能な2b期、3期、4期の胃癌患者523例に対して胃の切除術を行う際、無作為に2群郭清単独(263例)か3群郭清(260例)に割り付けた。癌再発までは、いかなる補助療法も許可しなかった。主要エンドポイントは全生存率。5年生存率、再発までの期間でも有意差なし手術関連の合併症発生率は、2群郭清単独群で20.9%、3群郭清群で28.1%だった(P=0.07)。手術による死亡率は各群とも0.8%。術後30日以内で、両群間には吻合部縫合不全、膵瘻、腹腔内膿瘍、肺炎、全死因死亡率に有意差は見られなかった。3群郭清群では、手術時間の中央値は63分間長く、失血の中央値は230mL多かった。5年生存率は、2群郭清単独群の69.2%に対して、3群郭清群では70.3%で、死亡ハザード比は1.03(95%信頼区間:0.77~1.37、P=0.85)だった。再発のない期間でも両群間に有意差はなく、再発ハザード比は1.08(0.83~1.42、P=0.56)だった。このため「2群リンパ節切除単独と比較して、2群リンパ節切除術にPANDを加える拡大郭清を行っても、治療可能な胃癌の生存率を改善しない」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

4145.

赤身肉の大量摂取は血圧上昇を招く

1981年に提示された「iron-heart」仮説では、男性と女性(閉経前)と冠疾患リスクの差は、鉄分蓄積量の差によって説明できるとされたが、その後の研究からその裏づけとなる結果は、得られていない。ロンドン大学疫学・公衆衛生部門Ioanna Tzoulaki氏らの研究グループは、食事による鉄分(総鉄、ならびにヘム鉄、非ヘム鉄)の摂取、サプリメントなどによる補足的な鉄分摂取、さらに赤身肉の摂取と血圧との関連を調査する横断的疫学研究を行った。BMJ誌2008年7月15日号より。鉄分摂取と血圧変動の関係を疫学調査収縮期血圧が120~130mmHgの正常高値血圧でも、心血管系疾患や死亡リスクが高いことは知られている。薬物療法以外の食事療法などで正常高値血圧を下げる要因を見いだそうと1997年に開始されたのが、栄養と血圧に関する国際共同研究INTERMAP(International study of Macro- and micronutrients and blood Pressure)と呼ばれる4ヵ国共同疫学研究である。今回の研究もINTERMAPに参加する日本、中国、イギリス、アメリカの、40歳から59歳までの17集団4,680例を対象に、食事による鉄分の摂取、サプリメントなどの補助的手段による摂取、さらに鉄分が最も効率的に摂取できる赤身肉による摂取――の3つの方法に分けて、鉄分摂取量が血圧の変動に与える影響について疫学調査が行われた。主要評価項目は、2日の連続受診時に各2回、およそ3週間後にも2日連続受診時に各2回の、計8回の血圧測定記録の平均値とした。赤身肉102.6g/24時間摂取で収縮期血圧1.25mmHg高まる重回帰分析によって、食事による全鉄と非ヘム鉄の摂取は血圧を下げることがわかった。摂取熱量1,000Kcal(4.2MJ)当たりの鉄摂取量の平均値は、アメリカと中国が7.8mg/4.2MJ、イギリス6.2mg/4.2MJ、日本5.3mg/4.2MJだった。総鉄の摂取量が、4.20mg/4.2 MJで標準偏差の2倍(2SD)多い場合は収縮期血圧を1.39mm Hg(P

4146.

末梢静脈カテーテルの交換はルーチンに行う必要はない

末梢静脈カテーテルの交換はルーチンに行うべきか、それとも臨床適応となった場合にだけ行えばよいか。CDC(疾病予防管理センター)では感染対策の観点から72~96時間ごとに変えるべきとしているが、そのエビデンスは乏しく、また近年、ルーチンに変えるほうが静脈炎の発症率が高いといった報告もある。そうしたなか王立ブリスベーン&ウーマンズ病院(オーストラリア)臨床看護センターのJoan Webster氏らは、静脈炎発症率とコストの面で検討を行い、「臨床適応の場合だけ行えばいいようだ」と報告した。BMJ誌オンライン版2008年7月8日号より。オーストラリアの3次機能病院から755例を集め無作為化試験試験はオーストラリアの3次機能病院(Tertiary hospital)を対象に行われた。対象者はmedical and surgical患者755例。379例が臨床適応の場合にのみカテーテルの交換が行われる群に(介入群)、376例がルーチンに交換する群(対照群)に無作為に割り付けられ検討された。主要転帰は、静脈炎や感染症発症によるカテーテル不全の複合的な度合い。ルーチン交換群と臨床適応群にカテーテル不全の有意差なし静脈炎や感染症発症によってカテーテルが取り外されたのは、対照群は123例(33%)、介入群は143例(38%)で有意な違いはなかった(相対リスク1.15、95%信頼区間:0.95~1.40)。留置1,000日間につき生じたカテーテル不全の割合に基づき比較しても、有意な違いは見出せなかった(0.98、0.78~1.24)。手技に関するコストは、対照群のほうが高く、平均41.02オーストラリアドル。介入群は平均36.40オーストラリアドルだった。静脈炎の発症率は、介入群4%、対照群3%で両群とも低かった。Webster氏は「臨床適応のときだけ交換を行ってもカテーテル不全の発生に影響はなかった。ただし今回の知見を検証するため、またより臨床的意義あるアウトカムを静脈炎単独で検証するなど、より大規模な試験を行う必要がある」と結論している。

4147.

腎細胞癌に対する自己腫瘍由来ワクチンによる術補助療法の有効性示せず

腎細胞癌に対する腎摘出術後の自己腫瘍由来熱ショック蛋白ワクチン(HSPPC-96、vitespen)療法は無再発生存率を改善しないことが、米国M D Anderson癌センターのChristopher Wood氏が行った無作為化第III相試験で明らかとなった。限局性腎細胞癌の標準治療は局所あるいは根治的な腎摘出術であるが、有効な補助療法がないため患者は実質的に再発のリスクに晒されているという。Lancet誌2008年7月12日号(オンライン版2008年7月3日号)掲載の報告。術後補助療法としてのvitespen群と観察群を比較本研究は、局所進行腎細胞癌切除後の高再発リスク例に対する補助療法としての自己腫瘍由来ワクチンvitespenの有用性を評価するもの。vitespen群に409例が、術後に治療を行わない観察群に409例が無作為に割り付けられた。vitespenは週1回4 週間にわたって皮内投与され、その後はワクチン効果が消失するまで2週に1回投与された。主要エンドポイントは無再発生存率とした。全体の再発率、死亡数は同等、早期ステージ群で再発率が優れる傾向フォローアップ期間中央値1.9年における再発率はvitespen群が37.7%(136/361例)、観察群は39.8%(146/367例)であり、両群間に差は認めなかった(ハザード比:0.923、95%信頼区間:0.729~169、p=0.506)。2007年3月までフォローアップを継続したところ、vitespen群で70例が死亡し、観察群の死亡数は72例であったが(p=0.896)、全体の生存データとしてはまだ十分でなく、さらなるフォローアップを続けている。American Joint Committee on Cancer(AJCC)のステージ分類に基づく事前に規定された探索的解析では、ステージIあるいはIIの症例の再発率はvitespen群が15.2%(19例)、観察群は27.0%(31例)であった(ハザード比:0.576、95%信頼区間:0.324~1.023、p=0.056)。vitespen群で最も多く報告された有害事象は、注射部位の紅斑(158例)および硬化(153例)であった。重篤な有害事象としてはグレード2の自己免疫性甲状腺炎が1例で認められたが、治療に関連したグレード3/4の有害事象は見られなかった。Wood氏は、「腎細胞癌に対する腎摘出術後のvitespenによる補助療法は、観察群との間に無再発生存率の差を認めなかった」と結論し、「vitespen群のうち早期ステージの無再発生存率の改善効果を評価するには、さらなる検証が求められる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

4148.

rivaroxaban長期投与が有効、人工股関節全置換術後の静脈血栓塞栓症予防

新たな経口第Xa因子阻害薬rivaroxabanの長期投与は、人工股関節全置換術(THA)を施行後の静脈血栓塞栓症(VTE)の予防において低分子ヘパリンであるエノキサパリン(商品名:クレキサン)の短期投与よりも有効なことが、21ヵ国が参加した大規模臨床試験(RECORD 2)で確認された。周術期のヘパリンベースの血栓予防療法は致死的肺塞栓症を減少させるが、THA後のVTEのリスクは退院後も持続するため、簡便な長期的抗血栓療法の探索が進められてきた。イギリスBarts and the London医科歯科大学のAjay K Kakkar氏が、Lancet誌2008年7月5日号(オンライン版2008年6月24日号)で報告した。21ヵ国、2,509例が参加した二重盲検ダブルダミー無作為化試験RECORD 2(REgulation of Coagulation in ORthopaedic surgery to prevent Deep-vein thrombosis and pulmonary embolism 2)は、THA施行例を対象にrivaroxaban(10mg/日、1日1回、経口)を31~39日投与する群(プラセボ静注、10~14日)と、エノキサパリン(40mg/日、1日1回、皮下注)を10~14日投与後プラセボを投与する群(31~39日)を比較する二重盲検ダブルダミー無作為化試験。2006年2月~2007年4月に21ヵ国123施設から登録された2,509例が、rivaroxaban群(1,252例)あるいはエノキサパリン群(1,257例)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、深部静脈血栓(両側静脈造影で検出された症候性あるいは無症候性の病変)、非致死的肺塞栓症、30~42日までの全死亡の複合エンドポイントとした。主要評価項目が有意に改善、出血の頻度は同等主要評価項目の解析対象となったのは、rivaroxaban群864例、エノキサパリン群869例。複合エンドポイントの発現率は、エノキサパリン群の9.3%(81/869例)に対し、rivaroxaban群は2.0%(17/864例)と有意に低下した(絶対リスク低下率:7.3%、95%信頼区間:5.2~9.4%、p<0.0001)。安全性評価の対象はrivaroxaban群1,228例、エノキサパリン群1,229例。治療期間中の出血の発現率は、rivaroxaban群6.6%(81/1,228例)、エノキサパリン群5.5%(68/1,229例)と両群で同等であった(p=0.25)。Kakkar氏は、「THA後の症候性のイベントを含むVTEの予防において、rivaroxaban長期投与はエノキサパリン短期投与よりも有意に高い有効性を示した」と結論し、「長期的血栓予防療法をさらに確実なものにするには、THAの予後に影響を及ぼす可能性のある出血や他の有害事象について、高リスク群に重点を置いた評価を行うべき」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

4149.

高血圧管理にはインターネットによる薬剤師支援が有効

高血圧治療の進展は心血管系疾患の死亡率と身体機能障害を減少させはしたが、患者の大半はコントロール不十分な状態にいる。そこで米国・ワシントン大学のBeverly B. Green氏らは、薬剤師によるインターネットを利用した患者支援(血圧モニタリング、情報提供サービス)という新しいケアモデルを検討した。無作為化試験の結果、「インターネットによる薬剤師の管理は血圧管理を改善する」と報告している。JAMA誌2008年6月25日号より。25~75歳の参加者778例を約1年追跡本研究は「Chronic Care Model」に基づく3群無作為化試験「Electronic Communications and Home Blood Pressure Monitoring study」。対象は、ワシントン州で参加登録した、未治療の本態性高血圧でインターネット接続可能な25~75歳の参加者778例。2005年6月から2007年12月にかけて、ネット支援は患者専用ウェブサイトを利用して行われた。参加者は、一般的な治療を受けるグループ、自宅で血圧モニタリング+患者ウェブサイトを利用するグループ、自宅での血圧モニタリング+患者ウェブサイト利用+インターネットを通じた薬剤師の管理支援を受けるグループに、無作為に割り付けられた。主要評価項目は、血圧140~90mm Hg未満にコントロールできた患者比率と、12ヵ月間の収縮・拡張期血圧の変化とした。収縮期・拡張期血圧とも薬剤師管理群が改善778例のうち730例(94%)が、1年間の追跡調査を完了。正常血圧(140~90mm Hg未満)の比率は、通常ケア群の31%と比べ、在宅血圧モニタリング+ウェブ利用群は36%で、有意な上昇は確認されなかった(P=0.21)。しかし、在宅血圧モニタリング+ウェブ利用+薬剤師管理群は56%で、通常ケア群(P<0.001)、在宅血圧測定とウェブ利用群(P<0.001)と比べ高い改善が確認された。収縮期血圧は、通常ケア群→在宅血圧モニタリングとウェブ利用群→在宅血圧モニタリング+ウェブ利用・薬剤師管理群へと段階的に減少。拡張期血圧は、薬剤師管理のあった群でだけ減少した。ベースラインの収縮期血圧が160mm Hg以上で、在宅血圧モニタリング+ウェブ利用+薬剤師管理を受けた群は、通常ケア群より収縮期血圧で-13.2 mm Hg(P<0.001)、拡張期血圧で-4.6 mm Hg(P<0.001)と顕著な低下を達成し、血圧管理が改善した(相対リスク:3.32、P<0.001)。インターネットの専用患者ウェブサイトを通して行われる情報提供と薬剤師による管理は、高血圧患者の血圧改善に役立つと結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

4150.

心房細動と心不全患者には心拍コントロールを主要戦略とすべき

心房細動および心不全患者の治療は、洞調律を回復し維持する方法が一般的である。これは、心房細動が心不全患者の死亡の予測因子であり、心房細動を抑制すれば転帰に有利な影響を及ぼす可能性があるというデータに基づいているが、この方法の利点とリスクについては、これまで十分に検討されなかった。カナダ・モントリオール大学心臓研究所のDenis Roy氏らAtrial Fibrillation and Congestive Heart Failure 共同研究グループは、心調律コントロールと心拍コントロールを比較検証した結果、心調律コントロールは死亡率減少に結びつかず、心拍コントロールが主要アプローチであると結論付けた。NEJM誌2008年6月19日号より。患者1,376例を37ヵ月間にわたり追跡調査本研究では、左室駆出率35%以下で、うっ血性心不全の症状と心房細動の既往歴を有する患者について、洞調律維持(心調律コントロール)と、心室拍動数制御(心拍コントロール)を比較する多施設共同無作為試験を行った。登録患者計1,376例を(心調律コントロール群682例、心拍コントロール群694例)、平均37ヵ月間にわたり追跡調査した。主要評価項目は、心血管系原因による死亡までの時間とした。主要・副次転帰とも両治療に有意差はないが心血管系原因での死亡は、心調律コントロール群182例(27%)、心拍コントロール群175例(25%)だった(心調律コントロール群のハザード比:1.06、95%信頼区間:0.86~1.30、log-rank検定によるP=0.59)。全死因死亡(心調律コントロール群32%、心拍コントロール群33%)、脳卒中(同じく各3%、4%)、心不全悪化(同じく各28%、31%)、心血管系原因・脳卒中または心不全悪化の複合死亡(同じく各43%、46%)であり、主要・副次転帰とも同程度だった。あらかじめ定義したサブグループでも、両治療戦略のいずれかを支持する有意差はなかった。この結果、心房細動とうっ血性心不全の患者に対して、ルーティンに心調律コントロール治療を行っても、心拍コントロール治療より心血管原因による死亡率を低下させないことが判明したとして、「心拍コントロール戦略は、電気的除細動を繰り返す必要性を排除し、入院率を低下させる。心拍コントロールが心房細動とうっ血心不全患者のための主要なアプローチと考えるべき」と強調している。(武藤まき:医療ライター)

4151.

重篤な心不全患者へのdronedarone治療で死亡率は上昇

国際的な第III相試験が進められている抗不整脈薬dronedaroneは、強い副作用が問題とされているアミオダロン(商品名:アンカロン)に代わる心不全患者の治療薬として期待されている。本報告は、コペンハーゲン大学(デンマーク)のLars Kober氏らのdronedarone研究グループによるANDROMEDA試験(Antiarrhythmic Trial with Dronedarone in Moderate to Severe CHF Evaluating Morbidity Decrease)の結果で、「重症の心不全患者にdronedaroneを投与した場合、死亡率が上昇する」との警告が報告された。NEJM誌2008年6月19日号より。欧州6ヵ国72施設1,000例を予定してスタートしたがANDROMEDA試験は、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、ポーランド、オランダ、ハンガリーの72施設で実施された多施設二重盲検試験で、症候性心不全と重篤な左室収縮機能不全で入院した患者1,000例を、dronedarone投与群とプラセボ投与群(400mg、1日2回)に無作為に割り付ける予定でスタートした。主要エンドポイントは、全死因死亡の複合または心不全のための入院。追跡試験中に死亡者が増えたため研究中止試験は、患者627例(dronedarone群310例、プラセボ群317例)が登録された時点で、データ・安全性監視委員会の勧告を受け、研究終了についての事前規定に従い安全上の理由から早期中止となった。これは、中央値2ヵ月の追跡期間中に、dronedarone群で25例(8.1%)、プラセボ群で12例(3.8%)の死亡が発生したためである(dronedarone群のハザードリスク:2.13、95%信頼区間:1.07~4.25、P=0.03)。超過死亡は主に心不全悪化との関連が認められ、dronedarone群で10例、プラセボ群では2例が該当した。主要エンドポイントは、dronedarone群53例(17.1%)、プラセボ群40例(12.6%)で両群間に有意差はなかった(ハザード比:1.38、95%信頼区間:0.92~2.09、P=0.12)。しかしクレアチニン濃度上昇が、dronedarone群のほうがプラセボ群より多く、深刻な有害事象として報告されている。以上の結果から、「重篤な心不全と左心収縮機能不全の患者へのdronedarone投与は、心不全悪化に関連する早期死亡率上昇と関係していた」と結論付けた。(武藤まき:医療ライター)

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強化血糖コントロールは血管系転帰を改善:ADVANCE

本論は、2型糖尿病の大規模試験ADVANCE(the Action in Diabetes and Vascular Disease:Preterax and Diamicron Modified Release Controlled Evaluation)研究グループによる、2型糖尿病患者に対する強化血糖コントロールの、血管系転帰に与える影響の検討結果。NEJM誌2008年6月12日号(オンライン版2008年6月6日号)に掲載された。同日掲載されたACCORD研究グループでは、「血糖降下強化療法は死亡率を高め心血管イベント減へのベネフィットはない」と結論していたが、ADVANCE研究グループからは反対の見解が報告されている。経口血糖降下薬で強化血糖コントロール2型糖尿病患者1万1,140例を、標準血糖コントロールと強化血糖コントロールに無作為に割り付け、強化コントロールでは、糖化ヘモグロビン値が6.5%以下になるように、SU系経口血糖降下薬グリクラジドと、必要に応じて他剤を併用した。主要転帰は、主要大血管イベント(心血管系の原因による死亡、非致死的な心筋梗塞または脳卒中)と主要細小血管イベント(腎症、網膜症の発現または悪化)の複合とし、合同評価と個別評価を行っている。腎症発生率21%低下で主要血管系イベントの複合転帰10%低下中央値5年の追跡調査の結果、糖化ヘモグロビン平均値は、強化コントロール群(6.5%)のほうが標準コントロール群(7.3%)より低く、主要大血管と細小血管イベントの複合発生率も、強化群(18.1%)のほうが標準群(20.0%)より低下した(ハザード比:0.90、95%信頼区間:0.82~0.98、P=0.01)。主要細小血管イベント単独でみた場合も、強化群のほうが標準群より低下した(9.4%対10.9%、ハザード比:0.86、95%信頼区間:0.77~0.97、P=0.01)。これは主に、腎症発生率が低下したためで(4.1%対5.2%、0.79、0.66~0.93、P=0.006)、網膜症に対する有意な効果は認められていない(P=0.50)。血糖コントロール方法が違っても、主要大血管イベントや心血管系の原因による死亡に有意な影響はなかったことも確認された。強化コントロール群の主要大血管イベントのハザード比0.94(95%信頼区間:0.84~1.06、P=0.32)、同心血管系の原因による死亡のハザード比0.88(0.74~1.04、P=0.12)、同全死因死亡は0.93(0.83~1.06、P=0.28)。ただし重篤な低血糖症は、件数はまれだが強化群のほうが、発生率が高かった(2.7%対1.5%、ハザード比:1.86、95%信頼区間:1.42~2.40、P

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認知症改善のため日光浴を

多くの認知症高齢患者と介護者を苦しめる、認知低下や気分障害、行動・睡眠障害およびADL(日常生活動作)の制限は、サーカディアンリズム障害が関連している。オランダ神経科学研究所(Netherlands Institute for Neuroscience)のRixt F. Riemersma-van der Lek氏らは、サーカディアンリズムの2大同調因子である「明るい光」と「メラトニン」を長期間、単独もしくは組み合わせることで、認知症状の進行を改善できるかどうかを検証する長期2×2因子二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った。JAMA誌2008年6月11日号より。オランダの12施設で最長3.5年間にわたり比較試験は1999年から2004年にかけて、オランダのグループケア施設12ヵ所の居住者計189例を対象に行われた。平均年齢は85.8歳(SD:5.5年)、90%が女性、87%は認知症だった。対象を、平均15ヵ月間(SD:12ヵ月間、最長3.5年間)、全日明るい(±1000ルクス)もしくは薄暗い(±300ルクス)状況、夕方にメラトニン(2.5mg)またはプラセボを、施設ごとに無作為に割り付けた。主要転帰尺度は、6ヵ月ごとに、標準的な評価検査や指標[認知機能検査のMini-Mental State Examination (MMSE)、うつ症状を評価するCornell Scale for Depression in Dementia(CSDD)、看護情報に基づく日常生活動作スケールなど]を用いて認知症状の進行状況やADLの制限、および有害事象に関する評価を行った。光+メラトニン療法は攻撃的態度や夜間不穏もやや改善結果、光療法は、認知症状をMMSEで平均0.9ポイント改善させたほか、うつ症状はCSDDで1.5ポイント寛解、ADLの制限は年1.8ポイント改善した。メラトニン投与は睡眠開始までの時間を8.2分短縮し、睡眠時間を27分延長した。ただしメラトニン投与をPhiladelphia Geriatric Centre Affect Rating Scaleを用いて行った評価では、ポジティブ感情がマイナス0.5ポイント、ネガティブ感情がプラス0.8ポイントだった。またMulti Observational Scale for Elderly Subjects scaleを用いた評価では、引きこもり行動が1.02ポイント増加していたが、光療法との併用では増加はみられなかった。併用療法については、Cohen-Mansfield Agitation Indexの評価で、攻撃的態度が3.9ポイント減少させ、睡眠効率を3.5%増加し、夜間不穏を年間1時間当たり1分間改善させた。Lek氏は「光療法は、認知症高齢者の症状をある程度改善する効果がある。一方メラトニン投与は気分障害の副作用が出るため、光療法との併用のみ推奨される」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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糖尿病臨床試験の多くは患者にとって重要な転帰と無関係

米国・メイヨー・クリニック医科大学(ミネソタ州)のGunjan Y. Gandhi氏らは、糖尿病治療の安全性や有効性への懸念が消えない理由の一つとして、糖尿病に関する無作為化対照臨床試験(randomized clinical trial=RCT)が、患者にとって重要な転帰(patient-important outcomes)、すなわち死あるいはQOL(疾患状態、疼痛、身体機能)を検証してこなかったことにあると指摘。現在進行中の多数の試験を検証し、「患者にとって重要な転帰を評価しているものは少ない」と報告した。JAMA誌2008年6月4日号より。データベースに登録された臨床研究436件を検証本研究の目的は、現在進行中か今後予定されている糖尿病RCTの範囲・限界を系統的に検証し、患者にとって重要な転帰が含まれているかどうかを確認すること。2007年11月10日時点で、主要なRCTが登録されている臨床研究データベースのClinicalTrials.gov(http://www.clinicaltrials.gov)、International Standard Randomized Controlled Trial Number Register(http://isrctn.org)、Australian New Zealand Clinical Trials Registry(http://www.anzctr.org.au)を検索した。条件に適合した第2相~第4相のRCT は2,019件中1,054件。無作為に50%(527件)のサンプルをとり、登録が義務化された2004年以降の登録研究436件を選定した。それら対象試験で測定される転帰と、それが(1)生理学的転帰、(2)代替転帰(患者にとって重要な転帰のリスク上昇を反映すると考えられる)、(3)患者にとって重要な転帰、のいずれに該当するかを決定した。「患者に重要」18%、「生理学的」16%、「代替」61%対象試験436件のうち24件(6%)は被験者登録をしていなかったが、109件(25%)は積極的に登録を行い、303件(69%)は登録を完了していた。試験の主要転帰が、患者にとって重要な転帰だったのは78件(18%、95%信頼区間:14~22%)で、生理学的転帰またはラボレベルの評価が69件(16%、13~20%)、代替転帰は268件(61%、57~66%)だった。患者にとって重要な転帰が主要またはそれに次ぐ転帰として報告されていたのは201件(46%、41~51%)。多変量解析の結果、患者100例以上の大規模試験(オッズ比:1.10、95%信頼区間:1.02~1.19)と30日以上の長期試験(1.03、1.01~1.06)は、患者にとって重要な転帰を評価する傾向があると言えたが、パラレルデザインのRCT(0.15、0.05~0.44)、2型糖尿病試験(0.23、0.09~0.61)はあまり測定されていない。この結果からGandhi氏らは「現在、登録され進行中の糖尿病RCTのうち、患者にとって重要な転帰を含んでいる試験は18%にすぎない」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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「厳格な血圧コントロール」と「腎機能の改善」によって糖尿病合併高血圧例の予後が改善 -Challenge DM study CKDサブ解析より-

CKD治療のポイントは「厳格な血圧コントロール」と「腎機能改善」5月31日、第51回日本腎臓学会学術総会において梅村敏氏(横浜市立大学大学院医学研究科病態制御内科学)は、腎機能の低下と不十分な血圧コントロールが糖尿病を合併した高血圧症例の心血管系イベントの発症を増加させることを示し、血圧コントロールと腎保護の重要性を訴えた。これは『Candesartan antiHypertensive Assessment for Long Life Enrolled by General practitioners - target on hypertension with Diabetes Mellitus (Challenge-DM) study』に参加した16,860例(有効性評価対象症例数)のうち、登録時から酵素法によって血清クレアチニン値を測定していた4,799例を用いたCKDサブ解析の結果によるもの。Challenge-DM studyは、糖尿病を合併した高血圧症例にカンデサルタンをベースとした治療を施行し、平均2年5ヵ月追跡した観察研究であり、総イベントは突然死、脳血管系イベント、心血管系イベント、脳・心血管疾患系イベント、重篤な不整脈、重篤な腎障害、その他の血管障害と設定された。eGFRが60mL/min/1.73m2未満をCKDと定義した場合、糖尿病を合併した高血圧症例4,799例中、1,704例(35.5%)が登録時にCKDであった。糖尿病合併高血圧にCKDを併発すると、心血管系イベントの発現がさらに高率になるCKD群では非CKD群と比べると、総イベントが有意に多く発現した。これをCKDのステージ分類別にみると、ステージ4(eGFR15以上30未満)群で14.6%と総イベント発現率が高く、ステージ3(eGFR30以上60未満)群と比較すると有意に高かった。CKDの放置は心血管系イベントの発症を招くまた、「登録時におけるCKDの有無」と「経過観察時におけるCKDの有無」によって、「登録時も経過観察時もCKDが認められなかった群(無→無群)」、「経過観察中にCKDが発症した群(無→有群)」、「経過観察中にCKDが改善した群(有→無群)」、「登録時も経過観察時も継続してCKDが認められた群(有→有群)」の4群に分けて解析した。「有→有群」は「無→無群」より有意に総イベント発現率が高く(p

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Challenge DM study発表される! -血糖管理に加えて徹底した血圧管理が心血管系イベントを抑制する重要な戦略-

17,000例を超える糖尿病合併高血圧例の観察研究がお披露目 23日、第51回日本糖尿病学会年次総会において河盛隆造氏(順天堂大学医学部)は、17,000例を超える糖尿病を合併した高血圧症例に関する観察研究『Candesartan antiHypertensive Assessment for Long Life Enrolled by General practitioners - target on hypertension with Diabetes Mellitus (Challenge-DM) study』の結果を初めて公表し、血糖管理に加えて血圧を130/80mmHg未満にコントロールすることで、さらに30%の心血管疾患系イベントの発症を抑制できることを示した。Challenge-DM studyは、糖尿病を合併した高血圧症例17,622例にカンデサルタンをベースとした治療を施行し、平均2年5ヵ月追跡した観察研究である。総イベントは突然死、脳血管系イベント、心血管系イベント、脳・心血管疾患系イベント、重篤な不整脈、重篤な腎障害、その他の血管障害と設定された。130/80mmHg未満にコントロールされていた症例は20%に満たない 『高血圧治療ガイドライン2004年版』(JSH2004)では糖尿病を合併した高血圧症の降圧目標を130/80mmHg未満と設定しているが、Challenge-DM studyにおいてこの目標値に到達した割合は1年後で13.6%、3年後で18.0%に留まった。降圧目標未達例における使用降圧薬数は平均1.9剤、カンデサルタンの平均用量は7.3mg/日と、標準用量の8mgを下回っていた。 一方、血糖管理については『糖尿病治療ガイド2008-2009』では、HbA1c<6.5%を「良」とし、まずは「良」を目指すべき管理目標値として定めているが、この推奨値に到達した割合は1年後で44.8%、3年後で45.4%であった。血圧値、HbA1c値、総コレステロール値、トリグリセリド値の全てがガイドライン推奨値に到達した割合は3年後においてもわずか3.2%に過ぎなかった。血糖管理+血圧管理によって、さらに30%のイベント抑制が可能に 有効性評価対象症例数16,869例中、826例に総イベントが認められ、これは年間1,000人あたり20.7人が発現することになり、この成績について河盛氏は、「10年も前に発表された久山町研究と大きく変化していない」と治療の選択が増えたにも関わらず改善していない状況を問題視した。 これをHbA1c値が6.5%未満に到達した7,651例と、6.5%以上であった9,017例に分けて解析すると、6.5%未満にコントロールすることで総イベント発現率が15%有意に低下することが示された。さらに6.5%未満にコントロールされていた7,651例を血圧値が130/80mmHg未満であった1,391例と130/80mmHg以上であった6,260例に分けて解析すると、降圧目標に達していた130/80mmHg未満群では、達していなかった群に比べて30%有意に軽減できることが明らかにされた。このことは日本人の糖尿病を合併した高血圧症例においてHbA1c値を6.5%未満にコントロールすることの重要性を示した初のエビデンスであるとともに、血圧を130/80mmHg未満に低下させることの意義を示した。 >総イベントの発現率を使用されていた糖尿病治療薬別にみると、インスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾンが投与されていた群では、非投与群に比べ有意に少なかったという糖尿病を治療する医師の立場にとって非常に興味深い結果が得られたと発表した。 以上、Challenge-DM studyについて発表された内容をまとめてみたが、ここからは既報の糖尿病合併高血圧症に関する知見より、今回発表されたChallenge-DM studyも交えて考察してみる。糖尿病と高血圧は合併しやすく、合併することで危険度が高まる 糖尿病症例では高血圧を併発しやすく、端野・壮瞥町研究によると糖尿病の実に62%が高血圧を伴っている1)。またその逆も然りで、高血圧患者において糖尿病の頻度は2~3倍高い。糖尿病患者は非糖尿病患者に比べ、心血管系疾患が2~3倍高率に発症する。高血圧の合併は心血管系疾患の発症率をさらに2~3倍増加させる。厳格な血圧管理によって心血管系イベントが抑制できることは証明済み このような糖尿病合併高血圧に対し、厳格な血圧管理(平均144/82mmHg)を行った群と、通常の血圧管理(平均154/87mmHg)を行った群を比較した介入試験UK Prospective Diabetes Study Group(UKPDS)試験において、厳格な血圧管理によって心血管系疾患の発症率が有意に少ないことが示された2)。また、最適な降圧目標を検証するために実施されたHypertension Optimal Treatment (HOT)試験では、拡張期血圧80mmHg以下を降圧目標にした群で、85mmHg以下群、90mmHg以下群に比べて心血管系イベントの発現リスクが有意に低かったことが示された3)。これらの試験結果より「糖尿病を合併した高血圧」においては130/80mmHg未満を降圧目標として設定されている。糖尿病患者さんの血圧コントロールは難しい しかし、この降圧目標はReal Worldでは20%も達成されておらず、わが国で2002年に実施された疫学研究によると、糖尿病合併高血圧症例のわずか11.3%しか130/80mmHg未満に達成していない4)。また、降圧薬を服用中の高血圧症例のうち、糖尿病を合併していた症例における解析においては、家庭血圧計において130/80mmHg未満に到達していた割合は18%に過ぎなかったことも報告されている5)。Challenge-DM studyにおいても目標血圧到達率は20%未満であり、目標到達の難しさを支持している。8割以上の医師が「糖尿病患者さんの血圧は130/80mmHg以下に!」と考えている 弊社が高血圧症例を10例/月以上診察しているケアネット会員医師を対象に実施した2007年6月に実施したアンケート調査によると、回答した81%の医師が糖尿病合併高血圧症に対しては130/80mmHg以下を治療目標としており、この点ではガイドラインが推奨する目標値との乖離はそれほど大きくない(ただし、58%の医師が130/80mmHgと回答)。心血管イベント発現抑制のカギは「徹底した血圧管理」 前述のUKPDS試験は収縮期血圧を10mmHg、拡張期血圧を5mmHg低下させることにより、HbA1c値を0.9%低下させるよりも、合併症のリスク低下が大きい傾向が認められ、糖尿病患者における血圧管理の重要性も示した。この結果は、糖尿病患者において血圧のコントロールが血糖のコントロールに勝るとも劣らない効果を有することと、血圧は低ければ低いほどよいことを示した。Challenge-DM studyは、血糖値に加えて血圧値もガイドラインで推奨されている範囲にコントロールできた場合、血糖値だけがコントロールできている場合よりさらにイベントの発現を30%低下させられることを証明した。この研究では血糖値と血圧値が目標レベルに達していたのは8%ほどであったが、とくに達成率が低かった血圧値をより厳格に管理することで心血管系疾患の発症を抑制されることができるのではないだろうか。カンデサルタンとピオグリタゾンの併用に新たな可能性 「HbA1c値を6.5%未満に管理した上で血圧を厳格にコントロールする」、Challenge-DM studyはもう1つイベントの発現を低下させる戦略を示している。ピオグリタゾン投与例では、非投与例に比べ、総イベント発現率が有意に少なかった。 これに関連して、最近、熊本大学 中村・光山氏のグループは、脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)においてピオグリタゾンの糖代謝改善作用と独立した心筋における抗炎症作用、線維化抑制作用、血管内皮機能改善作用、心筋・血管に対する抗酸化作用があることをHypertension誌に発表した6)。そしてこれらの作用はカンデサルタンの併用により増強されるというのである。 今回、Challenge-DM studyにおいてピオグリタゾン投与例でイベント発症率が低かったことは、基礎研究の結果が臨床においてその有効性が窺えたと考えられる。今後、無作為化比較試験が実施され、この新しいレジメンの有用性が証明されることを期待したい。1) Iimura O:Hypertens Res.1996;19(Suppl 1):S1-S82) UK Prospective Diabetes Study Group:BMJ.1998;317:703-7133) Hansson L et al:Lancet.1998;351:1755-17624) Mori H et al:Hypertens Res.2006;29:143-1515) Obara T et al:Diabetes Res Clin Pract.2006;73:276-2836) Nakamura T et al:Hypertensio

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適切な冠動脈造影を受けていない狭心症疑い例は冠動脈イベントリスクが高い

英国では狭心症が疑われる早期例のうち高齢者、女性、南アジア系、貧困地区住民には冠動脈造影が十分に実施されておらず、適切な冠動脈造影を受けていない症例は冠動脈イベントのリスクが高いことが、Barts and the London NHS Trust心臓病部門のNeha Sekhri氏らによる調査で明らかとなった。心血管疾患の管理における不平等が予後に影響を及ぼす可能性がある。これまでの心臓病検査へのアクセスの不平等に関する研究の多くは検査の適切性を考慮していないという。BMJ誌2008年5月10日号(オンライン版2008年4月24日号)掲載の報告。冠動脈造影の実施状況と冠動脈イベントの発生を評価するコホート研究本試験は、安定狭心症が疑われる症例に対する冠動脈造影が公平に行われているか否かを評価し、実施状況が不十分な場合はそれが冠動脈イベント発生率を上昇させているかを検討するための多施設共同コホート研究である。対象は、2003年1~12月の間に英国の6つの外来診療施設を受診し、Rand consensus法で冠動脈造影の施行が適切とされた1,375例。主要評価項目は冠動脈造影の受療状況、冠動脈死、急性冠症候群のイベント発生とし、5年間のフォローアップが行われた。冠動脈造影へのアクセスの不平等、未受療例の予後不良が明らかに冠動脈造影の施行が適切とされた症例のうち、実際に受療していたのは420例(31%)であり、69%が受療していなかった。多変量解析では、冠動脈造影の施行率は50歳以下よりも64歳以上の症例で有意に低かった(ハザード比:0.60、95%信頼区間:0.38~0.96)。また、男性よりも女性(0.42、0.35~0.50)、白人よりも南アジア系(0.48、0.34~0.67)、Townsend indexによる貧富の5段階のうちの上位4段階よりも最貧困層(0.66、0.40~1.08)で有意に低かった。冠動脈イベントは230例に見られた。冠動脈造影の施行が適切とされたが受療しなかった症例は、受療した症例に比べ冠動脈イベントの発生率が有意に高かった(1.71、1.24~2.34)。Sekhri氏は、「狭心症が疑われる早期例のうち高齢者、女性、南アジア系、最貧困層には冠動脈造影が十分に実施されておらず、適切な冠動脈造影を受けていない症例は冠動脈イベントのリスクが高かった」と結論し、「個々の症例の管理法の決定を支援する臨床ガイダンスに基づく介入を行えば、必要な検査へのアクセスおよびアウトカムが改善される可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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妊娠糖尿病の治療にはインスリンよりメトホルミンが有利

妊娠糖尿病の女性に対するメトホルミン投与はロジカルな治療だが、その有効性と安全性を評価する無作為試験はない。ニュージーランド・オークランド市National Women's Health, Auckland City HospitalのJanet A. Rowan氏らは、妊娠糖尿病の女性を対象にメトホルミンとインスリンの比較試験を実施。周産期合併症の発生率では両者に差はないが、インスリン注射より経口のメトホルミンによる治療のほうが、患者には好まれると報告している。NEJM誌2008年5月8日号より。妊娠20~33週の女性751例と新生児を調査試験は、妊娠20~33週の妊娠糖尿病の女性751例を、メトホルミン(必要ならインスリンを追加)またはインスリンの治療に無作為に割り付けて行われた非盲検試験。主要転帰は、新生児低血糖、呼吸困難、光線療法の必要性、分娩時外傷、5分後アプガースコアが7点未満、未熟児とする複合転帰とした。副次的転帰は、新生児の身体測定値、母体の血糖コントロール、母体の高血圧合併症、分娩後耐糖能および治療許容性とした。メトホルミン群363例のうち92.6%は分娩までメトホルミン投与を受け続け、46.3%はインスリン追加投与を受けた。周産期合併症に差はなく、妊婦は「次回もメトホルミン」主要複合転帰の発生率はメトホルミン群32.0%、インスリン群32.2%で両者に差はなかった(相対リスク:1.00、95%信頼区間:0.90~1.10)。しかしメトホルミン群はインスリン群より多数の女性が、次の妊娠時にも今回自分たちが割り付けられた治療を選択すると答えた(76.6%対27.2%、P

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ARBは心筋梗塞の発症抑制についてACE阻害薬より劣るのか? -ARB史上最大規模の試験「ONTARGET試験」は何をもたらしたか(2)-

 “ARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させるのか?”、“ARBの心筋梗塞発症抑制はACE阻害薬より劣るのか?”-これらの疑問に対する答えを一身に背負わされてきた試験が先ごろ発表された。冠動脈疾患ハイリスク例に対してACE阻害薬とARB テルミサルタン、そしてその2剤併用療法を比較したONTARGET試験1)だ。ARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させる!? この疑問について注目を集めるきっかけを2004年に発表されたVALUE試験2)にまで遡ってみた。ハイリスク高血圧患者に対して、バルサルタンを投与した場合、アムロジピンより心筋梗塞の発症率が有意に高かったのである。VALUE試験において心筋梗塞の発症は二次評価項目ではあったが、このような結果が発表前に誰が予想しただろうか。 その年の11月、米国トロント総合病院心臓外科のVerma氏は、この結果を受け、「Angiotensin receptor blockers and myocardial infarction –These drugs may increase myocardial infarction and patients may need to be told」というタイトルの論文をBMJ誌に発表した3)。ここでは前述のVALUE試験以外にもCHARM-Alternative試験などの結果からARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させる可能性があり、ONTARGET試験の結果が発表されるまで、「ARBが咳の出ないACE阻害薬」と考えることに慎重になる必要があると言及した。そしてこの論争を投げかけたVerma氏も結論をONTARGET試験に委ねたのであった。ARBは心筋梗塞の発症リスクを高めない! その半年後、2005年夏にはARBの有用性を検証した無作為化比較試験のメタアナリシスが2報発表された4,5)。いずれの論文においても「ARBは心筋梗塞の発症リスクを有意に高めない」という結論に達し、Verma氏の仮説を支持するものとはならなかった。そしてここでもONTARGET試験がこの問題を解決する結果を導いてくれるものだと、ONTARGET試験に期待が寄せられた。ACE阻害薬は降圧効果と独立した冠動脈疾患発症抑制作用が認められる 一方、降圧薬の違いによるのアウトカムの格差に関するいくつかのメタアナリシスを発表してきたBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration (BPLTTC)は、2007年にACE阻害薬とARBのメタアナリシスを発表した6)。これによると5mmHgの降圧に対して冠動脈疾患の発症リスクをACE阻害薬は16%、ARBは17%減少させると推算されている。一方、降圧効果と独立した冠動脈疾患発症抑制作用はACE阻害薬だけに認められることを示した。 しかし、BPLTTCのメタアナリシスにおいては解析対象となった26の比較試験のうち、ACE阻害薬とARBをhead-to-headで比較した試験はわずか3つしか含まれていなかった。ELITEII7)(慢性心不全3,152例、カプトプリル vsロサルタン)、OPTIMAAL8)(急性心筋梗塞5,477例、カプトプリル vsロサルタン)、VALIANT9)(急性心筋梗塞9,818例、カプトプリル vsバルサルタン)の3つだ。これら個々の比較試験における心筋梗塞発症率や、これら3試験のメタアナリシス6)における冠動脈疾患発症率においてはACE阻害薬カプトプリルとARBの間には有意な差を認めてない。この有名なメタアナリシスもまた「ACE阻害薬とARBを直接比較した非常に大規模な比較試験であるONTARGET試験がこの疑問に対して何らかの重要な情報を与えてくれる」だろうとONTARGET試験への期待を抱かせたのであった。 「ARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させる」のではと懸念される中、慢性心不全例へのARBカンデサルタンの有用性を検証したCHARM試験のOverall解析においてカンデサルタンの投与によって慢性心不全例の心筋梗塞の発症率が有意に抑制されたとの報告10)もあったことは押さえておきたい。 ARBと心筋梗塞発症の議論を一身に背負わされたONTARGET試験 このようにONTARGET試験は「脳心血管イベントの高リスク患者におけるARBテルミサルタンのACE阻害薬に対する非劣性を検証する」といった主要目的とは別のところで、「心筋梗塞の発症抑制に関してARBがACE阻害薬より劣るか否か(もしかすると優るのか)」も明らかしてくれるのではないかと期待された試験でもあった。 そして2008年春、ONTARGET試験は発表された1)。この試験では〈1〉冠動脈疾患、〈2〉末梢動脈疾患、〈3〉脳血管疾患、〈4〉臓器障害を伴う糖尿病の4つのうちいずれかを有する55歳以上の者を対象として、〈1〉ARBテルミサルタン、〈2〉ACE阻害薬ラミプリル、〈3〉その併用の3群のうちいずれかの治療が施され、〈1〉心血管死、〈2〉非致死的心筋梗塞、〈3〉非致死的脳卒中、〈4〉うっ血性心不全による入院のいずれかが発症率が主要評価項目として検証された。中央値56ヵ月、すなわち4年と8ヵ月において主要評価項目はテルミサルタン群とラミプリル群でそれぞれ16.7%、16.5%発症し、テルミサルタンのラミプリルに対する非劣性が証明された。 一方、主要評価項目の構成要素の1つとされた「非致死的心筋梗塞」は25,620例中1,291例(5.0%)に発症した。治療群別に見ると、ラミプリル群で4.8%、テルミサルタン群で5.2%であり、テルミサルタンによる治療を受けた場合、5年弱の間に心筋梗塞を発症する危険性はラミプリルと差がないという結果となった(相対リスク1.07、95%信頼区間:0.94-1.22)。すなわち、心筋梗塞発症抑制効果はテルミサルタンとラミプリルで同程度であり、Verma氏の論説から始まった「ARB投与、少なくともテルミサルタン投与の懸念」を払拭するものとなったとみている。1) ONTARGET Investigators:N Engl J Med. 2008;358:1547-15592) Julius S et al.: Lancet. 2004;363:2022-20313) Verma S et al:BMJ. 2004 ;329:1248-12494) McDonald MA et al.: BMJ. 2005;331:873.5) Verdecchia P et al:Eur Heart J. 2005;26:2381-2386.6) Blood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration:J Hypertens. 2007;25:951-9587) Pitt B et al:Lancet. 2000;355:1582-1587.8) Dickstein K et al:Lancet. 2002;360:752-760.9) Pitt B et al:N Engl J Med. 2003;348:1309-1321.10) Demers C et al:JAMA. 2005;294:1794-1798.

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入院時のPCR法によるMRSA迅速検査は感染率を低減しない

入院時にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の全数スクリーニングとしてpolymerase chain reaction(PCR)法による迅速検査を実施しても一般病棟のMRSA感染率は低減しないことが、英国Guy's and St Thomas' NHS Foundation Trust感染症科のDakshika Jeyaratnam氏らの検討で明らかとなった。MRSA感染症は罹患率および死亡率が高く、入院期間を延長し、医療コストの増加をもたらす。英国では、MRSAを含む感染症関連保健医療の低減が政府の優先課題とされる。BMJ誌2008年4月26日号(オンライン版2008年4月16日号)掲載の報告。迅速PCR法と従来の培養検査のMRSA感染率を比較研究グループは、MRSAスクリーニングへの迅速検査の導入が一般病棟のMRSA感染率を低減させるか否かを評価するために、クラスター無作為化クロスオーバー試験を実施した。試験期間は2006年1月~2007年3月。3ヵ月のベースライン期間、5ヵ月の介入期間ののち、1ヵ月のウォッシュアウト期間を置いてクロスオーバーを行い、さらに5ヵ月間の介入を行った。対象はロンドン市の2つの地区(Guy's、St Thomas')の教育病院に入院した症例であり、入院時にMRSA陰性で、退院時にスクリーニング検査を受けた患者とした。MRSAの入院時スクリーニング検査としての迅速PCR法を従来の培養検査と比較した。主要評価項目はMRSA感染率(入院時MRSA陰性例が退院時に陽性となった割合)とした。退院時のMRSA感染率は両群間で有意差なし病棟に入院した9,608例のうち8,374例が症例選択基準を満たし、データをすべて取得できたのは6,888例(82.3%)であった。そのうち3,335例が培養検査群(対照群)に、3,553例が迅速検査群に割り付けられた。全体の入院時MRSA感染率は6.7%であった。入院から検査結果の報告までの所要時間(中央値)は、対照群の46時間に対し迅速検査では22時間と有意に短縮した(p<0.001)。不適切な予防的隔離の日数も、対照群の399日に対し迅速検査では277日と有意に減少した(p<0.001)。退院時のMRSA感染率は対照群が3.2%(108例)、迅速検査群は2.8%(99例)であった(非補正オッズ比:0.88、p=0.61)。事前に規定された交絡因子を考慮した場合の補正オッズ比は0.91(p=0.63)と両群間に有意な差は見られなかった。MRSA感染、創傷感染、菌血症の発現率も両群間に差を認めなかった。Jeyaratnam氏は、「迅速検査は検査結果の報告を速やかにし、病床稼働率にもインパクトを与えたが、MRSA感染率を低減させるというエビデンスは得られなかった」と結論し、「従来の培養検査との比較において、迅速検査に伴う医療コストの上昇は正当化されない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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