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検索結果 合計:4227件 表示位置:4161 - 4180

4161.

モニタリング戦略による生存の差はわずか、抗レトロウイルス療法中のHIV感染例

抗レトロウイルス薬によるfirst-line治療を受けているHIV感染例においては、個々のモニタリング戦略(臨床観察、ウイルス量、CD4細胞数)のベネフィットはほぼ同等であることが、英国Royal Free and University College Medical SchoolのAndrew N Phillips氏らの検討で明らかとなった。WHOは、低所得国におけるHIV感染例の治療アプローチとして、標準化されたレジメンによる抗レトロウイルス治療とともに、ウイルス量よりもむしろ臨床観察あるいは可能な場合はCD4細胞数のカウントによるモニタリングを推奨している。同氏らはこれを検証し、Lancet誌2008年4月26日号で報告した。2nd-lineへの切り替えを決めるモニタリング法が、アウトカムに及ぼす影響を評価研究グループは、医療資源が限定的な状況において、HIV感染例に対する個々のモニタリング戦略がアウトカムに及ぼす影響についてコンピュータシミュレーションモデルを用いた検討を行った。臨床観察、ウイルス量、CD4細胞数に基づくモニタリング戦略を解析の対象とした。現在のHIV感染例に対するWHO推奨のfirst-lineレジメンは、スタブジン(国内商品名:ゼリット)、ラミブジン(ゼフィックス)、ネビラピン(ビラミューン)を用いた抗レトロウイルス療法である。これを2nd-lineレジメンに切り替える時期を決定する方法として、どのモニタリング法が優れるかを検討するために、生存率、耐性発現などのアウトカムの評価を行った。抗レトロウイルス薬への広範なアクセス可能性が最優先5年生存率の予測値は、ウイルス量のモニタリング(ウイルスコピー数>500コピー/mLとなった時点で2nd-lineレジメンに切り替え)が83%、CD4細胞数のモニタリング(ピーク値から50%低減した時点で切り替え)が82%、臨床的なモニタリング(WHO stage 3の新規イベントが2つあるいはWHO stage 4の新規イベントが1つ発現した時点で切り替え)が82%であった。20年生存率の換算値はそれぞれ67%、64%、64%であった。ウイルス量のモニタリングは生存期間がわずかに延長していたが、費用効果が最も優れるわけではなかった。Phillips氏は、「スタブジン、ラミブジン、ネビラピンによるfirst-lineレジメンを受けたHIV感染例において、2nd-lineレジメンへの切り替えを判断するモニタリング法としては、ウイルス量あるいはCD4細胞数のモニターが臨床観察を上回るベネフィットはわずかなものであった」と結論し、「安価で有効性の高い薬剤の開発が重要だが、現時点における最優先事項は、モニタリングの有無にかかわらず抗レトロウイルス薬への広範なアクセス可能性である」と考察している。(菅野守:医学ライター)

4162.

クラスター無作為化試験の内的妥当性は改善しているようだ

グループ・集団を無作為化して行われるクラスター無作為化試験は、保健サービス分野で介入の妥当性を調査するのに必須とされる。しかし、グループ構成がナーシングホームからであったり一般開業医からであったりといった違いがある。統計学者は設定デザインや解析法等の妥当性、特に盲検化について評価することの重要性を強調するが、研究者は必ずしもその点に留意していない。Barts and The London School of Medicine and Dentistry(英国)Sandra Eldridge氏らは、最近発表された34の治験(医学雑誌7誌で発表分)をレビューし、その内的妥当性、外的妥当性について評価を行った。BMJオンライン版2008年3月25日号、本誌2008年4月19日号より。医学雑誌7誌で発表された34試験をレビューMedlineを利用して行われたレビューの対象試験は、2004~2005年に医学雑誌7誌(「British Medical Journal」「British Journal of General Practice」「Family Practice」「Preventive Medicine」「Annals of Internal Medicine」「Journal of General Internal Medicine」「Pediatrics」)で発表された34治験。各治験の内的妥当性(サンプルサイズ、解析法、参加者の同定方法および集め方、盲検化について)と、外的妥当性(クラスターの適格性、クラスターの構成要因、クラスターを普遍化できる可能性、医療提供者の介入に対する実行可能性および受容性)が評価された。内的妥当性は改善、外的妥当性はまだあまり留意されていないサンプルサイズの妥当性が確認されたのは21治験(62%)、解析法については30治験(88%)で妥当性が評価できた。患者の集め方と同定法に関しては、約4分の1の治験に、偏りがある可能性が認められた。盲検化が妥当だったのは19治験(56%)、アウトカム対象者(outcome assessors)が盲検化されていたのは15治験(44%)だった。一方で、外的妥当性の評価項目のうち、クラスター普遍化の可能性は半分に満たなかった。また介入の実現可能性と許容性に関しては5分の2で妥当性が確認できなかった。Eldridge氏は、「内部妥当性(例えばサンプルサイズや解析法)については、改善がみられるが、盲検化は必ずしも妥当に行われているとは言えない。内部妥当性に問題があるのは、参加者が集まりにくい試験のようだ。外部妥当性は、介入の質を判断するのに内的妥当性同様重要と思われるが、現状ではあまり留意されていない」とまとめた。

4163.

MC-1第3相試験、虚血再灌流障害抑制の有効性と安全性の評価得られず

冠動脈バイパス移植術(CABG)患者に対するピリドキサル5’-リン酸(MC-1)の投与が、心筋梗塞(MI)等周術期の合併症予防に効果があるかどうかを検証していたMEND-CABG II第3相試験の結果が発表された。JAMAオンライン版2008年4月1日号、本誌では2008年4月16日号で掲載されている。3ヵ国130施設で中~高リスク患者3023例を検証MC-1はプリン受容体阻害剤として作用することから、細胞内カルシウムのオーバーロードを予防して、虚血再灌流障害を抑制する効果が期待されており、第2相試験では、冠動脈バイパス移植術後の高リスク患者の死亡または心筋梗塞を減少させる可能性が示されていた。第3相試験では、冠動脈バイパス移植術を受ける患者に対して、手術直前から30日間にわたりMC-1を投与した場合の有効性と安全性の評価が行われた。2006年10月~2007年9月の間、米国、カナダ、ドイツの130施設でCABGを受けた中~高リスクの患者3,023例を対象に、MC-1(n=1,519)もしくはプラセボ(n=1,504)を投与(250mg/日)する多施設共同無作為二重盲検試験。主要な有効性転帰は心血管死または非致死性MIとし、その定義は、術後30日以内にクレアチンキナーゼ(CK-MB)が100ng/mL以上になるか、新規Q波の出現とした。術後4日目ではプラセボ群より高死亡率主要な有効性転帰は、MC-1群で9.3%(140/1,510例)、プラセボ群で9.0%(133/1,486例)で認められた(リスク比:1.04、95%信頼区間:0.83~1.30、P=0.76)。全原因死亡率は、術後4日目ではMC-1群のほうがプラセボ群より高かった(1.0%対0.3%、P=0.03)が、30日目では同程度だった(1.9%対1.5%、P=0.44)。術後8~24時間におけるCK-MB曲線(hours×ng/mL)でも、MC-1群とプラセボ群に差はなかった(中央値270対268、四分位数間領域:175~492対170~456、P=0.11)。Alexander氏らは「MC-1投与が、冠動脈バイパス移植術を受けた中~高リスク患者の非致死性心筋梗塞を減少させなかった」と結論づけている。(朝田哲明:医療ライター)

4164.

妊産婦と子どもの死亡に関するミレニアム開発目標の達成は楽観できない

妊産婦と子どもの死亡の97%を占める68ヵ国において、ミレニアム開発目標(MDG)の4(2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の1/3に削減)およびMDG5(妊産婦の死亡率を1/4に削減)の進捗状況を調査したところ、いずれも順調に進んでいるとはいえないことが明らかとなった。“Countdown to 2015 for Maternal, Newborn, and Child Survival”構想は、MDG4とMDG5の達成に向けた優先的な介入法の実施状況の評価を目的とする。運営組織であるCountdown to 2015 Core Groupの研究班がLancet誌2008年4月12日号で報告した。死亡率が高い国と介入法を選定し、追跡調査した研究グループは、妊産婦と子どもの死亡率が高い国とその死亡率を低下させる可能性の高い介入法を選定し、国ごとの死亡に関するデータと介入法の実施状況を解析した。死亡原因のプロフィール、栄養状態の指標、支持的な施策の有無、妊産婦・新生児・子どもの死亡に対する対策への資金投入、介入の実施状況について追跡調査が行われた。MDG4の進捗が順調な国は24%すぎず、MDG5はデータが不十分選定された68の優先国のうち、MDG4の達成に向け順調に進んでいるのは16ヵ国(24%)のみであった。そのうち7ヵ国はCountdown構想が始動した2005年には軌道に乗っており、2008年に「順調」のカテゴリーに加えられたのは中国を含む3ヵ国、残りの6ヵ国は2008年に初めてCountdown構想に選ばれた国である。今回の調査では、MDG5の進展を示す妊産婦死亡率の傾向に関する十分なデータは得られなかったが、68ヵ国中56ヵ国(82%)では妊産婦死亡率は「高い」あるいは「きわめて高い」であった。個々の介入法の実施状況は、各国間および国内でばらつきが大きかった。ルーチンに予定を立てることが可能な介入法(予防接種、妊娠管理など)は、機能的な医療システムや24時間体制の医療サービスに依存する介入法(高い技術を要する出産時の緊急ケア、罹病状態で出生した新生児や病気の子どものケアなど)に比べ、実施状況がはるかに良好であった。68ヵ国のほとんどにおいて、産後ケアのデータは得られないか、調査状況が不十分であった。もっとも迅速な進歩が見られたのは予防接種であり、調査期間中に多くの投資を受けていた。報告を行ったCountdown Coverage Writing Groupは、「MDG4、5の達成に向けた迅速な進展は可能だが、実施できることとなすべきことは、なお多く残されている」との見解を示し、「特に、避妊、出産ケア、産後ケア、罹病新生児や病気の子どもの臨床管理などの優先事項の実施状況を改善するには、集中的な取り組みが必要とされるだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

4165.

ミレニアム開発目標達成のための介入実施率の格差は、依然として大きい

ミレニアム開発目標(MDG)の4(2015年までに5歳児未満の死亡率を1990年の1/3に削減)およびMDG5(妊産婦の死亡率を1/4に削減)を達成するには、妊産婦、新生児、子どもの健康に対する介入の実施率の向上が必須であるが、対象国では1990年以降、徐々に改善してはいるものの、貧富の差に基づく実施率の格差は大きいままであることが明らかとなった。Countdown 2008 Equity Analysis GroupがLancet誌2008年4月12日号で報告した。5つの貧富の段階ごとに、4つの介入領域の実施率を評価本研究では、過去の動向および今後の展開に対する洞察を提供するために、集約的な指標を用いて主要な介入法の実施率(coverage)の公平性と傾向が評価された。実施率は、「特定の介入を要する集団のうち実際にその介入を受けた人々の割合」と定義され、健康サービスの重要な指標であり、プログラムの進捗状況のモニタリングにおいて不可欠な戦略とされる。1990~2006年に“Countdown to 2015 for Maternal, Newborn and Child Survival”構想の対象となった54ヵ国の家庭調査のデータを用いて、4つの介入領域(家族計画、妊産婦・新生児ケア、予防接種、病気の子どもの治療)の総合的な実施率の指標を計算した。4つの領域は指標の計算において同等に重み付けした。貧富の程度を5つの段階に分け、標準測定値を用いて各段階における実施率の差のレベルおよび傾向を評価した。介入実施率の差は、各国間、国内ともに、わずかしか短縮していない54ヵ国の最新の調査データでは、最貧困層と最富裕層間の実施率の差は、もっとも小さいタジキスタンやペルーが20%弱、もっとも大きいエチオピアやチャドが70%以上という範囲にあった。4つの介入領域を合わせた平均実施率の差は5段階の最貧困層が54.2%、最富裕層が28.9%であり、全体の平均は43.0%であった。最貧困層と最富裕層間の差は、妊産婦および新生児医療への介入がもっとも大きく、予防接種がもっとも小さかった。1回以上の調査が行われた40ヵ国では、実施率の差は1990年代初頭以降、毎年、平均0.9%ポイントずつ短縮していた。1995年以降、毎年、2%ポイント以上の差の短縮が見られたのは3ヵ国(コロンビア、モザンビーク、ネパール)のみであった。国レベルの格差のパターンは経時的に確固として持続しており、徐々にしか変化していなかった。研究グループは、「1990年以降、主要な介入法の実施率はほとんどの国でわずかずつしか進展しておらず、依然として国レベルで大きな差が見られた。MDG4、5の達成に必要な介入の実施率を実現するには、この格差の短縮ペースが現在の2倍以上になる必要がある。国内的にも、富裕層と貧困層の格差のパターンは持続しており、介入のターゲットとすることに重要性が認められる場合でさえ変化はわずかなものであった」と考察している。(菅野守:医学ライター)

4166.

2型糖尿病患者への積極的治療は動脈硬化を退縮するが…

心血管疾患(CVD)リスクの高い2型糖尿病患者の、リスク因子コントロールの目標値について、MedStar Research Institute(米国)のBarbara V. Howard氏らの検証結果が発表された。JAMA誌2008年4月9日号より。動脈硬化進行を「積極的治療群」と「標準治療群」とで比較本研究は2型糖尿病を有する40歳以上の米国原住民(American Indians)男女が対象。「SANDS」(Stop Atheroschlerosis in Native Diabetics Study)と呼ばれる。CVD履歴のない参加者499例をLDLコレステロールと収縮期血圧(SBP)の目標値をそれぞれ、「70mg/dL以下」「115mmHg以下」に定めた「積極的治療群」(n=252)と、「100mg/dL以下」「130mmHg以下」に定めた「標準目標治療群」(n=247)とに無作為に割り付け、無症状アテローム性動脈硬化症の進行が比較された。実施場所はオクラホマ州1、アリゾナ州2、サウスダコタ州1の計4つのクリニカルセンター。追跡期間は2003年4月~2007年7月にわたる間の3年。主要エンドポイントは総頸動脈内膜中膜厚(IMT)により評価されるアテローム性動脈硬化の変化。副次エンドポイントは、他の頸動脈、心臓超音波検査、CVDイベント発生とされた。介入後のLDL・SBPの平均値(最低12カ月間)は、「積極的治療群」では72mg/dL・117mmHg(95%信頼区間:69~75、115~118)、「標準目標治療群」は104mg/dL・129mm Hg(101~106、128~130)で、両群とも治療目標値はほぼ達成維持された。CVDイベント発生に有意差なし、「積極群」の降圧薬に関する有害事象多しで…「積極的治療群」ではIMTの退縮(-0.012mm)が認められた。一方の「標準目標治療群」は進行(0.038mm)していた(P

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女性に対するDVは、人権侵害かつ深刻な公衆衛生上の問題を引き起こす

「女性に対する親密な男性パートナーによる暴力は、人権侵害だけでなくその帰結として深刻な公衆衛生上の問題を引き起こす」――WHO主導の研究グループが日本を含む10ヵ国のデータをまとめ、Lancet誌2008年4月5日号で報告した。女性の外傷の主原因が身体的虐待であることを示す多くの報告がある一方で、男性パートナーによる虐待がもたらす不良な健康アウトカムは外傷に限らず、はるかに広範囲に及ぶことが指摘されている。WHOとの共同研究に当たったPATH(Program for Appropriate Technology in Health)のMary Ellsberg氏による報告。暴力行為の経験、特定の症状、暴力で負った外傷についてインタビュー本試験は、“WHO Multi-country Study on Women’s Health and Domestic Violence against Women(VAW)”の研究チームによる観察研究である。2000~2003年に、標準化された地域住民ベースの調査が実施された。15~49歳の女性を対象に、現在あるいは以前の親密な男性パートナーによる身体的、性的な暴力行為の経験および身体的、精神的健康に関連する特定の症状についてインタビューを行った。パートナーによる身体的暴力を報告した女性には、その暴力で負った外傷について質問した。身体的な健康問題だけでなく、精神的苦痛の頻度も高い10ヵ国15地域の2万4,097名の女性にインタビューし、これまでにパートナーがいたことがある1万9,568人のデータについてプール解析を行った。パートナーによる暴力の経験と自己報告による不良な健康状態との間には有意な相関が認められた(補正オッズ比:1.6、95%信頼区間:1.5~1.8)。これらの女性には、過去4週間における特定の健康問題として、歩行困難(1.6、1.5~1.8)、日常動作困難(1.6、1.5~1.8)、疼痛(1.6、1.5~1.7)、記憶喪失(1.8、1.6~2.0)、目まい(1.7、1.6~1.8)、膣分泌物異常(1.8、1.7~2.0)が見られた。少なくとも1回以上のパートナーによる暴力を報告した女性は精神的苦痛の頻度も有意に高く、虐待を受けたことがない女性に比べ自殺念慮(2.9、2.7~3.2)、自殺企図(3.8、3.3~4.5)が有意に多く見られた。これらの有意な相関はほとんどの調査地域で維持されており、身体的虐待を受けた女性の19~55%が外傷を負った経験をもっていた。Ellsberg氏は、「生活地域や文化的、人種的背景にかかわらず、ひいてはその地域や女性自身が暴力を許容したとしても、パートナーによる身体的、性的な暴力は不良な身体的、精神的健康状態の頻度を増大させた」と指摘したうえで、「女性に対する親密な男性パートナーによる暴力は、人権侵害だけでなくその帰結として深刻な公衆衛生上の問題を引き起こす。国およびグローバルな健康関連組織による施策やプログラムの検討が急務なことが浮き彫りとなった」と結論している。ちなみに、日本からの参加者1,276人のうち虐待経験者は196人(15.4%)と15の調査地区中最も低く、不良な健康状態のオッズ比は全体より高いものの有意差はなかった(1.9、0.9~4.0)。(菅野守:医学ライター)

4168.

乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎の予防に経口生ワクチンRIX4414が有効

2歳までの乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎に対しロタウイルスワクチンRIX4414が有効なことが、ラテンアメリカ10ヵ国で実施されたHuman Rotavirus Vaccine Study Groupの検討で明らかとなった。ロタウイルスは世界的に乳幼児の重症胃腸炎の主たる原因とされる。下痢関連入院の1/3以上に関与し、年に約52万7,000人の5歳以下の乳幼児が死亡し、開発途上国では最も頻度の高い死亡原因であるという。ブラジル保健省Evandro Chagas研究所のAlexandre C Linhares氏がLancet誌2008年4月5日号で報告した。RIX4414あるいはプラセボを2回接種する群に無作為に割り付け本研究は、2003年8月~2005年10月にラテンアメリカの10か国から生後6~13週の健常乳児1万5,183人が登録された二重盲検プラセボ対照第III相試験。ほぼ生後2~4か月の時点でRIX4414あるいはプラセボを2回接種する群に無作為に割り付けられた。1次評価項目は2回目の投与の2週間後から1歳までのワクチンの有効性とした。治療の割り付けは研究者および幼児の両親ともに知らされず、胃腸炎に対する効果のフォローアップは約2歳になるまで行われた。重症胃腸炎発生率は、RIX4414群0.4%、プラセボ群2.3%897人がaccording-to-protocol解析から除外された。2年間に記録された重症ロタウイルス胃腸炎は、プラセボ群が7,081人中161例(2.3%)に対しRIX4414群では7,205人中32例(0.4%)であり、ワクチン群で有意に少なかった(p<0.0001)。ワクチンの有効率は80.5%であり、そのうち野生型G1株では82.1%、非G1株では77.5%、非G1 P[8]株では80.5%ではあった。ロタウイルス胃腸炎による入院に対するワクチンの有効率は83.0%であり、下痢による入院に対しては39.3%であった。フォローアップ期間の2年目における腸重積は報告されなかった。Linhares氏は、「RIX4414の2回接種は、ラテンアメリカの生後2年までの乳幼児における重症ロタウイルス胃腸炎の予防に有効であった」と結論し、「小児のルーチンな予防接種にRIX4414を用いれば、ロタウイルス胃腸炎による世界的な負担が軽減される可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

4169.

ACE阻害薬とARBの併用療法は心血管疾患発症抑制においてもはや有用でない-ARB史上最大規模の試験「ONTARGET試験」は何をもたらしたか(1)-

 4日、先頃、発表されたONTARGET試験の発表を受けて、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、アステラス製薬株式会社は、ARBテルミサルタン(販売名:ミカルディス)が心血管疾患のハイリスク患者に対して、既に心血管疾患の発症抑制効果が確立しているACE阻害薬ラミプリルと同等の効果を有することを発表し、同日、檜垣實男氏(愛媛大学大学院 病態情報内科学 教授)はその意義についてプレスセミナーにおいて講演した。ここではその内容を基にONTARGET試験に関していくつかの観点からレビューする。ONTARGET試験では心血管イベントハイリスク患者を対象にARB(ミカルディス、一般名:テルミサルタン)単独投与のACE阻害薬(一般名:ラミプリル)単独投与に対する非劣性と、テルミサルタンとACE阻害薬併用療法のACE阻害薬単独投与に対する優越性を検証された。その結果は3月31日、第57回米国心臓病学会(ACC)にて発表された。また、この内容はNew England Journal of Medicine誌4月10日号に発表される予定である(インターネット上には31日、掲載されている)。(1)ACE阻害薬とARBの併用療法はもはや有用でない ONTARGET試験の中で、最も注目した結果は、ACE阻害薬とARBの併用療法が、ACE阻害薬単独投与に比べて優越性を示せなかったことである。ONTARGET試験では、1次評価項目として「心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院のいずれかの発現」と複合心血管イベントが設定されたが、その発現率は、ACE阻害薬単独投与群で16.5%、ACE阻害薬とARBの併用群で16.3%であった。1次評価項目における併用療法のACE阻害薬に対するハザード比は0.99(95%信頼区間:0.92-1.07)であり、ACE阻害薬にARBを併用しても有意な心血管系イベントの改善には至らなかったのだ。 そもそも、なぜ、この試験が行われたか。ACE阻害薬はアンジオテンシンIからアンジオテンシンIIへの変換を促進させる酵素ACEを阻害することによってアンジオテンシンIIの産生を抑制する。しかし、アンジオテンシンIIはキマーゼなどACE以外の酵素によっても産生され、完全にはレニン・アンジオテシン系(RAS)をブロックできない。ARBはアンジオテンシンII受容体を直接遮断する。したがってACE阻害薬とARBの併用によるRASのデュアルブロックによって、ACE阻害薬で証明されている数々の心血管疾患発症抑制効果がさらに増強されると期待されていた。 これまでにACE阻害薬とARBの併用療法の有用性を検証した臨床試験はONTARGET試験が初めてではない。大規模な試験としては、心筋梗塞後の左室収縮不全または心不全例に対してバルサルタン(販売名:ディオバン)とカプトプリル(カプトリル)の併用療法の有用性を検証したVALIANT試験と、慢性心不全例に対してカンデサルタン(販売名:ブロプレス)とACE阻害薬(どのACE阻害薬を選択するかは医師の判断:エナラプリル27%、リシノプリル19%、カプトプリル17%)の併用療法の有用性を検証したCHARM-Added試験がある。 これらの結果は対照的なものとなった。すなわち、VALIANT試験では併用療法がACE阻害薬単独投与に対して優越性を示せず、CHARM-Added試験では併用療法が単独療法に対して優越性を示したのである。 Yusuf氏らはONTARGET試験やVALIANT試験の対象は、他の薬剤によって治療が成功している集団であったため、ACE阻害薬とARBの最大投与量を用いたRASのデュアルブロックによる臨床ベネフィットはほとんど得られなかったのではないかと考察している。 また、安全性面に目を向けてみると、ONTARGET試験では、ACE阻害薬とARBの併用療法によって低血圧、失神、腎機能障害、高カリウム血症が有意に増加し、透析を必要とする腎不全も増加傾向にあった。これらを受け、檜垣氏は「ハイリスク例では副作用が増加するだけで、併用療法の有用性は心不全例を除いては期待できない」と述べた。 血圧値は141.8/82.1mmHgからACE阻害薬投与によって6.4/4.3mmHg降下し、ACE阻害薬とARBの併用療法によって9.8/6.3mmHg降下した。すなわち、その差は2.4/1.4mmHg。この血圧差からは4-5%のイベント抑制が期待できるとしているが、今回はそこまでの結果に至らなかった。テルミサルタンを併用しても血圧差が2.4/1.4mmHgであったこと、血圧差があったにも関わらず、一次評価項目で全く差がなかったのはなぜか、まだ疑問は残る。 一方、わが国で保存期腎不全例を対象にACE阻害薬(トランドラプリル)とARB(ロサルタン)の併用療法は、それぞれの単独療法に比べ腎不全への進行を抑制することができたことがCOOPERATE試験より証明されており、我々もLancet誌発表直後に著者の中尾尚之氏に独占インタビューした。心血管疾患発症抑制ではなく、腎疾患の進展抑制における併用療法の効果について期待できるかもしれない。 2007年6月に弊社が独自に調査した結果によると、高血圧症例を10例/月に診察している医師(n=503)がCa拮抗薬およびARBが投与されている例で降圧効果が不十分な場合、増量、切り換え、追加などの中から、ACE阻害薬を追加投与し、3剤併用を選択する割合は平均5.2%であった。まだ、臨床においてはARBとACE阻害薬の併用投与が行われている。今回のONTARGETの結果は、ハイリスク患者における心血管疾患発症抑制を目的としたACE阻害薬とARBの併用療法の臨床意義は期待できないことを証明したといえる。 次回は「ARB投与による冠動脈疾患発症抑制」についてレビューする。

4170.

スタチンは慢性腎疾患患者の心血管死を低減する

スタチンは、慢性腎疾患(CKD)患者の心血管死を一般人口と同程度にまで低減することが、無作為化試験のメタ解析の結果から明らかとなった。オーストラリアSydney大学公衆衛生学腎臓臨床研究センターのGiovanni F M Strippoli氏らが、BMJ誌2008年3月22号(オンライン版2008年2月25日版)で報告した。CKD患者は心血管病のリスクが増大している。スタチンは一般人口において心血管死や全原因死亡を低減することがわかっているが、CKD患者におけるスタチンの役割については不明な点が多い。CKDを対象としたスタチンの無作為化/準無作為化対照比較試験を抽出研究グループは、CKD患者(血清クレアチニン上昇、透析、腎移植)に対するスタチンのベネフィットおよび有害作用の評価を目的としたメタ解析を実施した。データベース(Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、Embase、Renal Health Library)を検索して、CKDを対象にスタチンをプラセボあるいは他のスタチンと比較した無作為化/準無作為化対照比較試験を抽出した。2名の研究者が別個に、個々の試験の症例選択基準や得られたデータを検討し、試験の質を評価した。見解が異なる場合は協議により解決した。治療効果は、変量効果モデル(random effects model)を用いて相対リスクあるいは加重平均差(WMD)で表し、95%信頼区画を算出した。心血管イベントが低下、全原因死亡の改善効果は不明50試験に登録された3万144例が解析の対象となった。プラセボに比べ、スタチンは総コレステロール、LDL-コレステロール、蛋白尿を低下させたが、糸球体濾過値は改善しなかった。致死的および非致死的心血管イベントもスタチンにより低下したが、全原因死亡に対する有意な効果は認めなかった。メタ回帰分析では、CKDのステージによる有意な治療効果の差は確認されなかった。また、スタチンの副作用プロフィールはプラセボと同等であった。解析した試験の多くが小規模で質が高いものではなく、死亡に関するデータの拠出は少数の大規模試験に限られた。Strippoli氏は、「スタチンは、CKD患者の心血管死をステージにかかわりなく一般人口と同程度にまで低減する」と結論し、「腎保護効果が明確にならなかった原因は、相対的なデータ不足およびアウトカム報告バイアスによると考えられる。全原因死亡の改善効果や1次予防効果は現在進行中の無作為化試験(SHARP、AURORA)の結果によりある程度明らかになるだろう」と考察している。(菅野守:医学ライター)

4171.

iPodなどのデジタル音楽プレーヤーは心臓ペースメーカーに影響するのか

iPodをはじめとするデジタル音楽プレーヤーの心臓ペースメーカーへの影響が指摘されていたが、その影響はないとの研究が「Heart Rhythm」4月号に発表された。それによると、ペースメーカーまたは埋め込み型除細動器(ICD)を使用する患者51人を対象に検査を実施、4機種のデジタル音楽プレーヤー(Apple Nano, Apple Video, SanDisk Sansa, Microsoft Zune)をペースメーカーおよびICDの近くで再生した結果、影響は一切認められなかった、という。ただし、医師がペースメーカーを調整時にデジタル音楽プレーヤーを使用していると影響がでるとの指摘。詳細はアブストラクトへDigital music players cause interference with interrogation telemetry for pacemakers and implantable cardioverter-defibrillators without affecting device function

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治療選択肢で異なるQOLが治療転帰の満足度に影響:前立腺癌

前立腺癌患者の初回治療の転帰に対する満足度は、治療後の健康関連QOLの変化にかかっており、患者だけでなく配偶者やパートナーの治療転帰への満足度にも影響することを、アメリカ・ボストンにあるベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの Martin G. Sanda氏らがNEJM誌2008年3月20日号に報告した。術前術後に患者1,201例と配偶者ら625例を調査対象は複数の医療機関から集められた患者1,201例(前立腺癌に対する根治治療:前立腺切除術、密封小線源療法、外部放射線療法いずれかを受療)と、配偶者・パートナー625例。治療を受ける前と後に報告された転帰を前向きに測定することで、QOL変化に関係する要因を評価し、その要因が治療転帰に対する満足度にどうかかわっているかが判定された。神経温存術で性機能への副作用を緩和密封小線源療法もしくは放射線療法を受けた患者にとって、術後補助ホルモン療法は、複数のQOL領域で、より不良な転帰を伴った。密封小線源療法を受けた患者からは、持続的な排尿刺激と腸機能、性機能症状に加えて、活力やホルモン機能に一時的な障害があると報告。前立腺切除術による性機能への副作用は、神経温存術によって緩和されたこと、前立腺切除術の後で尿失禁が認められたが、前立腺が特に大きい患者では頻尿と尿閉が改善したことも報告されている。処置の関連死は発生しておらず、深刻な有害事象はまれだったが、処置関連の症状が、肥満、前立腺肥大、前立腺特異抗原(PSA)スコア上昇、高齢なほど増悪していた。満足度に関して、黒人患者では全体的な治療転帰の度合に比して低く、患者と配偶者・パートナーの治療転帰に対する満足度は、QOL変化と有意な関係がみられた。Sanda氏らは、「それぞれの前立腺癌治療は、尿機能や腸機能、性機能、ホルモン機能に関係するQOL領域で異なる変化パターンを伴い、その変化は、患者と配偶者・パートナーの治療転帰に対する満足度に影響を及ぼしている」とまとめた。(武藤まき:医療ライター)

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深部静脈血栓症発症に関与するSNPを同定

 深部静脈血栓症(DVT)の遺伝的素因を突き止めようと、ライデン大学医療センター(オランダ)臨床疫学部門Irene D. Bezemer氏らは、DVTと関連する一塩基多型(SNP)の同定を試みた。SNPは、DNAの4種類の塩基の並び方が人により部分的に異なっているもので、遺伝子の個人差を示すものとして疾病発症との関わり等の研究に応用されている。JAMA誌2008年3月19日号にて掲載。19,682人分の遺伝子からDVTに強く関連する3つのSNPを同定 Bezemer氏らはSNP同定のため3つの患者対照試験、すなわちLETS(1988~1992年:Leiden Thrombophilia Study)とMEGA-1、MEGA-2(MEGAスタディを分割:1999~2004年:Multiple Environmental and Genetic Assessment of Risk Factors for Venous Thrombosis)を用いた。 まず計19,682人が参加したLETSを検討し、DVTと関連する1,206のSNPを同定。それら1,206のSNPをMEGA-1で検討(患者群1,398例と対照群1,757例)し、LETSとMEGA-1に共通する危険対立遺伝子として18のSNPを同定した。さらにそれらをMEGA-2で検討(患者群1,314例と対照群2,877例)し、9つのSNPを同定。そのうち3つのSNPにDVTとの強い関連が見いだされた[P

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末期COPDに対する肺移植、片肺よりも両肺移植で生存期間が延長

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の末期例に対する肺移植では、片肺移植よりも両肺移植のほうが生存期間が長いことが、パリ第7大学Bichat病院肺移植部のGabriel Thabut氏らの研究で明らかとなった。2006年のInternational Society for Heart and Lung Transplantationの国際登録に関する報告では、1995年1月~2005年6月に実施された肺移植のうち46%がCOPDの治療として行われているが、片肺と両肺移植のいずれがより有効かは不明であった。Lancet誌2008年3月1日号掲載の報告。1987~2006年に肺移植を受けたCOPD患者9,883例のデータを解析研究グループは、International Society for Heart and Lung Transplantationの登録データを解析、片肺移植と両肺移植ではいずれの生存期間が長いか検討した。1987~2006年の間に肺移植を受けた9,883例のCOPD患者のうち、3,525例(35.7%)が両肺移植を、6,358例(64.3%)が片肺移植を施行されていた。選択バイアスを解決する統計手法として、共分散分析、傾向スコア(propensity-score)によるリスク補正、傾向ベースのマッチングを用いた。生存期間中央値が両肺移植で有意に延長肺移植を受けたCOPD患者全体の生存期間中央値(MST)は5.0年であった。1998年以前に移植を受けた症例のMSTが4.5年であったのに対し、1998年以降に受けた症例では5.3年と有意な差が認められた(p<0.0001)。両肺移植例は1993年の21.6%(101/467例)から2006年には56.2%(345/614例)に増加していた。両肺移植後のMSTは6.41年であり、片肺移植の4.59年に比べ有意に延長していた(p<0.0001)。移植前の患者背景は両群間で異なっていたが、ベースラインの差の補正をいずれの統計手法で行った場合も、片肺移植より両肺移植でMSTが長かった。すなわち、ハザード比の範囲は共変量解析の0.83(95%CI:0.78~0.92)から傾向ベースのマッチングの0.89(0.80~0.97)までであり、いずれも有意差を認めた。しかし、60歳以上の患者では、両肺移植のベネフィットはほとんど見られなかった(0.95、0.81~1.13)。Thabut氏は、「COPD患者に対する肺移植では、片肺移植よりも両肺移植のほうがMSTが長く、特に60歳以下の症例で延長していた」と結論し、「進行肺疾患に対する移植臓器の割り当ての社会的ベネフィットを検討する際は、COPD患者に対する両肺移植の生存ベネフィットに重きを置くべきであろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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高齢者に対する複合的介入が、安全で自立的な生活を可能にする

高齢者は、身体機能の低下によって自立性が失われることで、入院や介護施設での長期的なケアが必要となり、早期の死亡につながる。英国Bristol大学社会医学科のAndrew D Beswick氏らは、高齢者に対する身体的、機能的、社会的、心理学的な因子を考慮した複合的介入により安全で自立的な生活が可能となることを明らかにした。Lancet誌2008年3月1日号掲載の報告。地域ベースの複合的介入の効果を評価する系統的レビューとメタ解析研究グループは、高齢者における身体機能や自立性の維持を目的とした地域ベースの複合的介入の効果を評価するために、系統的なレビューを行い抽出されたデータについてメタ解析を実施した。解析の対象は、自宅で生活する高齢者(平均年齢65歳以上)に対し地域ベースの多因子的な介入を行い、少なくとも6ヵ月以上のフォローアップを実施した無作為化対照比較試験とした。評価項目は、自宅での生活、死亡、介護施設入所や病院入院、転倒、身体機能であった。自宅生活不能、介護施設入所、病院入院、転倒のリスクが低下89試験に登録された9万7,984人について解析した。多因子的な複合的介入により、自宅生活不能(相対リスク:0.95、95%信頼区間:0.93~0.97)、介護施設入所(同0.87、0.83~0.90)のリスクが有意に低下したが、死亡リスクには有意差は認めなかった(同1.00、0.97~1.02)。病院への入院(同0.94、0.91~0.97)および転倒(同0.90、0.86~0.95)のリスクも介入群で有意に低下し、身体機能も良好な傾向が見られた。介入法の特定のタイプや強度によるベネフィットの差は認めなかった。ただし、死亡率が増加した集団では、介入により介護施設入所率が低下していた。また、1993年以前に開始された試験で特にベネフィットが高いことが明らかとなった。Beswick氏は、「複合的介入は高齢者の安全で自立的な生活を支援できることが判明した。個々人の必要や好みに合わせたテーラーメイドな介入も可能かもしれない」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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「空腹時血糖値≧126mg/dL」に合理性なし?

WHOならびにADAが採用している空腹時血糖値(FPG)正常上限「126mg/dL」は、これを超えると細小血管症のリスクが増加する値だとWHOでは解説している(WHO/NCD NCS/99.2) 。これに対しUniversity of MelbourneのTien Y Wong氏らは、Lancet 誌2008年3月1日号において、そのような閾値は存在しないと主張している。 3つの横断研究でFPGと網膜症の関係を検討同氏らが依って立つのは、大規模な横断的住民研究3件、Blue Mountains Eye(BME)研究(3,162例)、Australian Diabetes、Obesity and Lifestyle(ADOL)研究(2,182例)とMulti-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA:6,079例)──である。これらのデータより糖尿病性網膜症の発症が増加するFPG閾値を求めたが、MESAでは明白な値が得られず、BMS研究では93.6mg/dL、ADOL研究では113.4mg/dLだった。モデルを変更して解析し直しても、閾値はやはり得られなかったという。また「FPG≧126mg/dL」の糖尿病性網膜症に対する感度は40%しかなかった。規準の見直しが必要だこれらよりWong氏らは、FPG規準の見直しが必要だと主張している。しかしWHOガイドラインが126mg/dLをFPG閾値としているのは糖負荷後2時間値の200mg/dLと相関するというのが主たる理由であり、細小血管症との相関は副次的な扱いとなっている。(宇津貴史:医学レポーター)

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死亡率は低下しなかった:敗血症性ショックでのvasopressin投与

vasopressinは、難治性敗血症性ショックにおいて血圧低下を改善するカテコールアミン製剤の補助薬として一般的に用いられるが、死亡率への影響は明らかにされていない。カナダのJames A. Russell氏らVASST研究グループ(Vasopressin and Septic Shock Trial)は、低用量vasopressin投与はノルエピネフリン(ノルアドレナリン)投与と比較して死亡率を低下させる、との仮説を立て臨床試験を行った。NEJM誌2008年2月28日号より。敗血症性ショック患者に2剤を無作為に割り付け敗血症性ショックでノルエピネフリンを最小用量5μg/分の投与を受けていた計778例の患者を、低用量vasopressin(0.01~0.03U/分)を投与する群396例と、ノルエピネフリン(5~15μg/分)を投与する群382例に無作為に割り付けた多施設共同無作為化二重盲検試験が行われた。いずれもプロトコルに従い、目標血圧を維持するために漸増・漸減。主要エンドポイントは注入開始から28日後の死亡率とした。28日後、90日後の死亡率などで有意差見いだせず結果は、vasopressin群とノルエピネフリン群の投与開始28日後死亡率(それぞれ35.4%と39.3%、P = 0.26)、90日後死亡率(同43.9%と49.6%、P = 0.11)のいずれでも有意差は認められなかった。また、少なくとも1つの深刻な有害事象の発生率においても、全体として有意差は確認できなかった(同10.3%と10.5%、P = 1.00)。敗血症性ショックの重症度がより低いとされていた患者群では、vasopressin群はノルエピネフリン群より28日後の死亡率が低かった(26.5%対35.7%、P = 0.05)。一方、重篤とされていた患者群では、28日後死亡率に有意差はなかった(同44.0%と42.5%、P = 0.76)。この2階層間に不均質性の有意性は見いだされなかった(P = 0.10)。これらの結果から研究グループは、カテコールアミン系昇圧薬の投与を受けている敗血症性ショック患者に、低用量vasopressinの投与を用いても、ノルエピネフリン投与と比較して死亡率は低下しなかったと報告した。

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外傷性脳損傷の臨床使用可能な予後予測モデルが開発。ネットで利用可能

臨床で使用できる外傷性脳損傷の簡便な予後モデルが、Medical Research Council(MRC) CRASH(corticosteroid randomisation after significant head injury)試験の研究グループによって開発された。BMJ誌2008年2月23日号(オンライン版2008年2月12日号)で報告され、すでにインターネット上で利用可能だ(www.crash2.lshtm.ac.uk/)。毎年、世界で約150万人が外傷性脳損傷で死亡し、数百万人が緊急治療を受けているが、その90%が低~中所得国の事例という。既存のモデルは一般に方法論的な質が低く、サンプルサイズが小さく、低~中所得国を含むものは少ない。14日死亡率、6ヵ月死亡/重度身体障害率を予測MRC CRASH試験は、外傷性脳損傷患者を対象とした大規模なプロスペクティブ研究。研究グループは、14日死亡率および6ヵ月死亡/重度身体障害率を算出する臨床的な予後予測モデルを開発、その妥当性を検証した。対象は、Glasgow coma scale≦14、発症後8時間以内の外傷性脳損傷患者。2つのアウトカムに関連する変数を抽出するために多変量ロジスティック回帰分析を行った。基本モデルは背景因子および臨床所見に関連する変数に限定し、CTモデルは基本モデルにCT所見を付加した。いずれのモデルも高所得国と低~中所得国に分けて検討した。基本モデルの4つの指標、CTモデルの5つの指標を同定1万8例が登録され、8,509例で外的妥当性の検証を行った。基本モデルの予後指標は、年齢、Glasgow coma scale、瞳孔反応、大きな頭蓋外損傷(入院を要する損傷)の4つであった。また、CTモデルによる付加的指標は、点状出血、第3脳室あるいは基底槽の閉塞、くも膜下出血、正中線偏位(mid-line shift)、non-evacuatedな血腫の5つであった。誘導群(derivation sample)では、モデルの判別(discrimination)はexcellent(C統計>0.80)、較正(calibration)はgoodであった。Hosmer-Lemeshow検定でも、低~中所得国のCTモデルを除き較正はgoodと判定された。高所得国における6ヵ月の不良なアウトカムの外的妥当性は、基本およびCTモデルともにgood discrimination(両モデルともC統計=0.77)であったが、較正はpoorerであった。以上により、研究グループは「外傷性脳損傷のアウトカムを予測する簡便な予後モデルが確立された。アウトカム予測の強度は、その国の所得の高低によって変化する」と結論している。なお、インターネット上では、国名を指定したうえで、基本モデルの4つの指標を選択し、CT所見がある場合は5つの指標の有無を指定すれば、2つのアウトカムの確率と95%信頼区間が自動的に算出される。(菅野守:医学ライター)

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むしろ死亡率が上昇、重症急性膵炎に対するプロバイオティクス予防投与

 急性膵炎の感染合併症に対する予防治療としてのプロバイオティクス腸内投与はむしろ死亡率を高めることが、オランダUtrecht大学医療センター外科のMarc G H Besselink氏らDutch Acute Pancreatitis Study Groupの研究によって明らかとなった。急性膵炎では感染合併症とその関連死が大きな問題となるが、プロバイオティクスは細菌の過増殖を抑制することで感染合併症を予防し、消化管のバリア機能を修復して免疫系を調整する可能性が指摘され、期待を集めていた。Lancet誌2008年2月23日号(オンライン版2008年2月14日付け)掲載の報告。多菌種混合プロバイオティクス製剤腸内投与の感染合併症予防効果を評価 本研究は、重症急性膵炎に対するプロバイオティクス予防投与の効果を評価する多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験。対象は、急性膵炎と診断され、重症化が予測される[Acute Physiology and Chronic Health Evaluation (APACHE II)スコア≧8、Imrie/modified Glasgowスコア≧3、C反応性蛋白>150mg/L]症例とした。 症例は発症72時間以内に、多菌種混合プロバイオティクス製剤(153例)あるいはプラセボ(145例)に無作為に割り付けられ、28日間にわたり1日2回腸内投与された。主要評価項目は、入院期間およびフォローアップ期間(90日)における複合感染合併症(感染性膵壊死、菌血症、肺炎、尿路性敗血症、感染性腹水)の発現とした。プロバイオティクス群で感染合併症が低下せず、死亡率は有意に上昇 プロバイオティクス群152例、プラセボ群144例が解析の対象となった。両群間でベースライン時の患者背景および疾患重症度に差は見られなかった。 感染合併症の発症率はプロバイオティクス群が30%(46例)、プラセボ群が28%(41例)であった(相対リスク:1.06、95%信頼区間:0.75~1.51)。死亡率はそれぞれ16%(24例)、6%(9例)とプロバイオティクス群で有意に高かった(2.53、1.22~5.25)。プロバイオティクス群の9例が腸虚血をきたし、そのうち8例が死亡したのに対し、プラセボ群では腸虚血は認めなかった(p=0.004)。 Besselink氏は、「今回用いた菌種の組み合わせによるプロバイオティクス製剤の予防投与は重症急性膵炎の感染合併症のリスクを低減させず、死亡リスクはむしろ上昇した」と結論し、「他の菌種を用いた場合は異なる結果が得られる可能性があるが、基礎的メカニズムが明らかとなるまでは使用すべきでない。最も重要な点は、もはやプロバイオティクスは経腸栄養の補助療法として無害とはいえないことだ」と考察している。

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PTSD発症率は非派遣兵の3倍、戦闘に曝露したイラク/アフガニスタン帰還兵

米軍のイラク/アフガニスタン帰還兵のうち実際に戦闘に曝露した兵士の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症率は非派遣兵の約3倍にも達することが、BMJ誌2008年2月16日号(オンライン版2008年1月15日号)に掲載された米国海軍健康研究所(サンディエゴ)のTyler C Smith氏らの研究結果で明らかとなった。最近の報告では帰還兵の10%にPTSDの症状が見られるとされるため、同氏らは大規模な米軍コホートにおいて自己報告によるPTSDの実態調査を行った。約5万人の兵士のデータを解析本試験は、イラク/アフガニスタン戦争に先立つ2001年7月~2003年6月に7万7,047人の米軍兵士および予備兵/州兵を登録したミレニアムコホートのデータを用いたプロスペクティブな大規模コホート研究。2004年6月~2006年2月に実施されたフォローアップにより、5万184人から健康関連のアウトカムに関するデータが収集された。主要評価項目は自己報告によるPTSD発症率とし、PTSDチェックリストとして“Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders”第4版の一般向け判定規準を用いた。派兵そのものよりも戦闘への曝露が重大な影響2001~2006年にミレニアムコホートの40%以上が派兵され、ベースラインとフォローアップの間に初めての派兵としてイラク/アフガニスタン戦争の支援に赴任したのは24%であった。ミレニアムコホートのうち、1,000人年当たりのPTSDの新規発症率は10~13人であった。自己報告によるPTSDの症状発現率あるいは診断率は、戦闘に曝露したと報告した兵士が7.6~8.7%、戦闘に曝露しなかったと報告した兵士が1.4~2.1%、派遣されなかった兵士は2.3~3.0%であった。ベースライン時にPTSDの症状を報告した兵士においては、派兵が症状の持続に影響を及ぼすことはなかった。また、全般に女性兵士、離婚経験者、下士官兵、およびベースライン時に喫煙あるいはアルコール依存を報告した兵士で新たにPTSDの症状を訴えるリスクが高かった。Smith氏は、「ベースライン時の背景因子で補正したところ、派兵されて戦闘に曝露した兵士における自己報告によるPTSDの新規症状発現/診断率は、非派遣兵の約3倍にものぼった」と結論している。また、「これらの知見は、戦闘曝露兵におけるPTSDの重要性を明確化し、派兵後のPTSDの発症には派兵そのものもよりも特定の戦闘への曝露が有意な影響を及ぼすことを強調するものだ」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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