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2024/06/27
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検索結果 合計:4227件 表示位置:101 - 120

101.

進行滑膜肉腫、T細胞受容体療法が有効/Lancet

 既治療のHLA-A*02およびMAGE-A4発現滑膜肉腫患者において、afamitresgene autoleucel(afami-cel)治療は持続的な奏効をもたらしたことが示された。米国・スローンケターリング記念がんセンターのSandra P. D'Angelo氏らが、カナダ、米国、欧州の23施設で実施された非無作為化非盲検第II相試験「SPEARHEAD-1試験」の3つのコホートのうち、主たる治験コホートであるコホート1の結果を報告した。afami-celは第I相試験において、忍容性および安全性が確認され有望な有効性が示されていた。著者は、「本研究は、T細胞受容体療法を用いて効果的に固形腫瘍を標的とした治療が可能であることを示し、このアプローチを他の固形悪性腫瘍にも広げる根拠を提供するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年3月27日号掲載の報告。afami-celを単回投与、主要評価項目は奏効率 研究グループは、HLA-A*02を有しMAGE-A4を発現する転移のあるまたは切除不能の滑膜肉腫または粘液型円形細胞型脂肪肉腫(細胞遺伝学的に確認)の16~75歳患者で、少なくとも1ラインのアントラサイクリンまたはイホスファミドを含む化学療法歴がある患者をコホート1として登録し、リンパ球除去後にafami-cel(導入用量範囲:1.0×109~10.0×109T細胞)を単回静脈内投与した。 主要評価項目は、修正ITT集団(afami-celの投与を受けた全患者)における奏効率(ORR)で、RECIST version1.1に基づき盲検下独立評価委員会によって評価された。また、とくに注目される有害事象(サイトカイン放出症候群、遷延性血球減少症、神経毒性)を含む有害事象がモニタリングされ、修正ITT集団について報告された。 なお、本試験のコホート1および2は追跡調査が現在も進行中であり、コホート3は募集中である。奏効率は全体で37%、滑膜肉腫39%、粘液型円形細胞型脂肪肉腫25% 2019年12月17日~2021年7月27日に、細胞遺伝学的に確認された滑膜肉腫(44例)および粘液型円形細胞型脂肪肉腫(8例)を有する患者52例がコホート1に登録され、afami-celが投与された。患者の化学療法歴は、中央値が3(四分位範囲[IQR]:2~4)であった。 追跡期間中央値32.6ヵ月(IQR:29.4~36.1)において、ORRは全体で37%(19/52例、95%信頼区間:24~51)、滑膜肉腫患者39%(17/44例、24~55)、粘液型円形細胞型脂肪肉腫患者25%(2/8例、3~65)であった。 サイトカイン放出症候群が、52例中37例(71%)に発現し、うち1例がGrade3であった。主なGrade3以上の有害事象は血球減少症で、52例中、リンパ球減少症が50例(96%)、好中球減少症が44例(85%)、白血球減少症が42例(81%)であった。治療に関連した死亡は報告されなかった。

102.

筋力パラメータは不安・抑うつの予測因子となりうるか

 うつ病や不安症は、主要な公衆衛生上の問題の1つである。そのため、うつ病や不安症の症状予測因子を特定することは、症状悪化を避けるうえで重要となる。筋力や筋機能(握力、timed-stands testなど)は、健康アウトカムの予測因子として広く知られているが、うつ病や不安症との関連性は、十分にわかっていない。ブラジル・Santo Amaro UniversityのGabriella Mayumi Tanaka氏らは、握力やtimed-stands testスコアとうつ病および不安症の症状との関連を調査するため、コミュニティベースの横断研究を実施した。また、筋力レベルの高い人は、低い人と比較し、不安や抑うつ症状が軽減されるかについても調査した。その結果、筋力パラメータは、不安および抑うつ症状に関連する重要な予測因子である可能性を報告した。Clinical Nursing Research誌2024年3月号の報告。 対象者は、ソーシャルメディアを通じて募集し、半構造化面接を実施し、社会人口学的特徴、併存疾患、タバコおよび薬物使用、不安症状(Beck's Anxiety Inventory[BAI])、抑うつ症状(Beck's Depressive Inventory[BDI])を評価した。その後、身体的特徴、握力、機能性(timed-stands test)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・評価対象者は216人。・調整済み回帰モデルでは、握力と不安症状(β=-0.22、95%CI:-0.38~-0.07、R2=0.07、p=0.005)および抑うつ症状(β=-0.25、95%CI:-0.42~-0.07、R2=0.05、p=0.006)との間に逆相関が認められた。・timed-stands testスコアと不安症状(β=-0.33、95%CI:-0.54~-0.13、R2=0.09、p=0.002)および抑うつ症状(β=-0.32、95%CI:-0.56~-0.09、R2=0.06、p=0.008)との間にも同様の関連が認められた。・筋力レベルが低い人は、高い人と比較し、BAI(9.5 vs.5.9、p=0.0008)およびBDI(10.8 vs. 7.9、p=0.0214)が高値であった。・timed-stands testスコアで層別化した場合、低スコア群は、高スコア群と比較し、BAI(9.9 vs.5.5、p=0.0030)およびBDI(11.2 vs.7.5、p<0.0001)が高値であった。

103.

高リスク局所進行子宮頸がん、ペムブロリズマブ追加でPFS改善/Lancet

 新規に診断された高リスクの局所進行子宮頸がん患者の治療において、PD-1阻害薬ペムブロリズマブを化学放射線療法と併用し、化学放射線療法終了後も継続投与することで、化学放射線療法単独と比較して統計学的に有意で臨床的に意義のある無増悪生存期間(PFS)の改善が得られ、安全性は各レジメンの既知のプロファイルと一致することが示された。イタリア・Fondazione Policlinico Universitario A Gemelli IRCCS and Catholic University of Sacred HeartのDomenica Lorusso氏らが「ENGOT-cx11/GOG-3047/KEYNOTE-A18試験」の結果を報告した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年3月20日号に掲載された。30ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 本研究は、日本を含む30ヵ国176施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年6月~2022年12月に、参加者の無作為割り付けを行った(Merck Sharp & Dohmeの助成を受けた)。 前治療歴がなく、新たに高リスクの局所進行子宮頸がんと診断された成人患者(年齢18歳以上)1,060例を登録した。これらの患者を、ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学放射線療法を5サイクル施行後に、ペムブロリズマブ(400mg、6週ごと)を15サイクル投与する群に529例(年齢中央値49歳)、プラセボ(3週ごと)+化学放射線療法を5サイクル施行後に、プラセボ(6週ごと)を15サイクル投与する群に531例(年齢中央値50歳)を無作為に割り付けた。 主要評価項目は、ITT集団(無作為化の対象となったすべての患者)におけるPFSおよび全生存期間(OS)であった。安全性の評価は、as-treated集団(少なくとも1回の試験薬の投与を受けたすべての患者)で行った。OSには差がない スクリーニング時に、1,060例中598例(56.4%)が2014年の国際産婦人科連合(FIGO)基準(FIGO 2014)のStageIII~IVAの子宮頸がんで、650例(61.3%)が骨盤リンパ節転移陽性、24例(2.3%)が傍大動脈リンパ節転移陽性であり、1,000例(94.3%)はPD-L1陽性であった。追跡期間中央値は両群とも17.9ヵ月だった。 PFS中央値は両群とも未到達で、24ヵ月時のPFS率はペムブロリズマブ群が68%、プラセボ群は57%であった。病勢進行と死亡のハザード比(HR)は0.70(95%信頼区間:0.55~0.89)であり、ペムブロリズマブ群で有意に優れた(p=0.0020)。 また、OS中央値も両群とも未到達で、24ヵ月時のOS率はペムブロリズマブ群が87%、プラセボ群は81%であった。死亡のHRは0.73(0.49~1.07)であり、統計学的に有意な差を認めなかった。重篤な有害事象発現は、ペムブロリズマブ群17%、プラセボ群12% 客観的奏効率は、ペムブロリズマブ群79%、プラセボ群76%、奏効期間中央値は両群とも未到達、奏効期間が12ヵ月以上の患者の割合はそれぞれ81%および77%であった。 試験薬投与下に発現したGrade3以上の有害事象の割合は、ペムブロリズマブ群75%(394/528例)、プラセボ群69%(364/530例)で、このうち試験薬関連と判定されたものはそれぞれ67%(354例)および61%(321例)であり、両群とも白血球数の減少(19%、21%)、貧血(19%、16%)、好中球数の減少(15%、15%)の頻度が高かった。重篤な有害事象は、それぞれ17%(91例)および12%(65例)で発現した。 著者は、「PFS率の曲線は、最初の画像評価(治療開始から約3ヵ月後)の時点で2群で乖離し始め、経時的にその状態が続いた。安全性プロファイルは予想どおりであり、有害事象は用量の調節や薬剤の投与により臨床的に管理可能であった」とし、「これらの知見は、この患者集団における化学放射線療法へのペムブロリズマブ追加の潜在的な役割を示唆する」と述べている。

104.

コロナ後遺症は月経異常、QOLやメンタルヘルスに影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した人のうち、約3人に1人が悩まされるといわれる「コロナ後遺症(Long COVID)」。新たに、コロナ後遺症のある18~50歳の女性を対象とする研究が行われた。その結果、約20%の女性がさまざまな月経異常を訴え、それに伴いQOLやメンタルヘルスが悪化していることが明らかとなった。岡山大学病院 総合内科・総合診療科の櫻田泰江氏、大塚文男氏らによる研究であり、詳細は「Journal of Psychosomatic Obstetrics and Gynecology」に1月25日掲載された。 コロナ後遺症の症状は多岐にわたり、オミクロン株の流行期には、倦怠感、頭痛、不眠が増加傾向であると報告されている。また、女性の健康に焦点を当てた最近の研究では、COVID-19の流行が女性の月経にさまざまな悪影響を及ぼしていることなども示されている。そこで著者らは、日本人の女性を対象として、コロナ後遺症としての月経異常の臨床的特徴を明らかにする研究を行った。 この研究は、岡山大学病院のコロナ・アフターケア外来を2021年2月15日~2023年3月31日に受診した、コロナ後遺症の女性患者(18~50歳)を対象に行われた。コロナ後遺症の定義は、感染から4週間以上にわたり何らかの症状が持続している状態とした。患者の診療記録より、月経情報、健康関連QOL、抑うつ症状、ホルモン検査などの臨床データが解析された。 研究対象の女性223人のうち、月経異常を訴える女性は44人(19.7%、年齢中央値42.5歳)で、月経異常のない女性(同38歳)よりも有意に年齢が高かった。44人中34人(77.3%)は、オミクロン株の流行期(2022年1月以降)に感染していた。月経異常の中で最も多い症状は月経周期の不順(63.6%)であり、次いで月経痛の悪化(25%)、過多月経(20.5%)、更年期症状(18.2%)、月経前症候群(15.9%)などの症状が見られた。 また、月経異常のある女性では月経異常のない女性に比べて、倦怠感(75対58.1%)や抑うつ気分(9.1対1.1%)を伴う人の割合が有意に高かった。さらに、健康関連QOLの評価指標(FASおよびEQ-5D-5L)による評価では、月経異常のある女性の方が、倦怠感やQOLが有意に悪化していた。 ホルモン検査では、月経異常のある女性の方が、血清コルチゾール値(中央値8.5対6.7μg/dL)が有意に高かった。その他の検査結果に有意差はなかったものの、月経異常のある女性の方が、血清卵胞刺激ホルモン(FSH)値(同28.7対8.3mIU/mL)は高く、血清エストラジオール(E2)値(同12対17.95pg/mL)は低い傾向が認められた。 研究結果について著者らは、「コロナ後遺症は日本人女性の月経にも影響を及ぼし、QOLとメンタルヘルスの悪化につながるというエビデンスを提供するものである」と結論付けている。コルチゾール値が高かったことに関しては、月経異常などによるストレス状態が存在し、視床下部-下垂体-性腺軸を介してE2の産生障害につながる可能性を指摘。月経状態は心身の状態に影響を及ぼし得ることから、「正常な月経状態を維持することは重要である」と総括している。

105.

第188回 専門医の資格広告は厳格な基準で、学会認定の専門医は広告不可に/厚労省

<先週の動き>1.専門医の資格広告は厳格な基準で、学会認定の専門医は広告不可に/厚労省2.駆け込み「宿日直許可」で、分娩医療は守れるか/産婦人科医会3.教育水準が命を左右する? 学歴の差で死亡率が上昇/国立がんセンター4.広がる紅麹サプリメントによる健康被害、問われる安全性/小林製薬5.勤務実態なしの事務職に2,000万円、特別背任容疑で捜索/東京女子医大6.過重労働で医師がくも膜下出血に、労災認定を求めて国を提訴/東京1.専門医の資格広告は厳格な基準で、学会認定の専門医は広告不可に/厚労省厚生労働省は、医療機能情報提供制度・医療広告等に関する分科会を3月25日に開催し、専門医の資格広告に関する新たな方針を定めた。これにより、2029年度末からは、日本専門医機構が認定する19の基本領域の専門医資格に限り広告が可能となり、現在59の学会が認定する56の専門医資格のうち、基本領域と重なる16の学会認定専門医の広告ができなくなる。ただし、2028年度末までにこれらの資格を取得または更新した医師は、認定・更新から5年間広告が認められる。また、基本領域の研修中に始めることができる15領域のサブスペシャリティー(サブスペ)の専門医資格については、研修制度の整備基準や認定・更新基準、専門医の名称が整ったものから個別に広告が認められることになる。これに対して、連動研修を行わないサブスペの12領域については、新たな判断基準を設定し、それをクリアすることを条件に広告を認める。厚労省は、広告に関する判断基準として「わかりやすさ」「質の担保」「社会的・学術的意義」の3点を挙げ、専門医の名称と提供する医療の内容が広く普及していること、ほかの専門医との区別が明確であることなどを条件に設定した。また、専門医資格の広告が大病院志向を促すことなく、国民へのわかりやすさを重視する方針を示している。この方針は、国民へのわかりやすい情報提供と医療の質の担保を目的とし、医療現場における専門医資格の乱立と混乱を防ぎつつ、患者・国民の健康と生命を守ることを意図している。この方針変更は、医療機能情報提供制度の全国統一システムの運用開始や医療広告規制におけるウェブサイトなどの事例解説書のバージョンアップと同時に議論され、医療機関選択における国民の誤解を防ぎつつ、適切な情報が提供されることが期待されている。参考1)専門医に関する広告について(厚労省)2)学会認定16の専門医、29年度から広告不可に 専門医機構の基本領域に一本化(CB news)3)日本外科学会認定の「外科専門医」などの広告は2028年度で終了、「機構専門医」への移行を急げ-医療機能情報提供制度等分科会[1](Gem Med)2.駆け込み「宿日直許可」で、分娩医療は守れるか/産婦人科医会日本産婦人科医会が行った調査によると、分娩を扱う全国の病院947施設のうち、半数を超える479施設が夜間宿直や休日の日直を休息とみなし、労働時間として計上しない「宿日直許可」を労働基準監督署から取得している、または申請中であることが明らかになった。この宿日直許可により、実際には医師が夜間や休日に頻繁に診察や緊急手術を行い、妊婦の経過観察に当たるなど、休息とは言えない激務にも関わらず、残業時間としての計上が避けられている。医師の「当直」勤務は月平均7.9回、1回当たり16時間として、年間約1,500時間の労働になるが、これを労働時間とみなさなければ、残業時間は年平均230時間となり、規制上限の960時間を下回る。こうした宿日直許可の乱用は、4月から始まる残業規制と医師の働き方改革の実効性に疑問を投げかけている。とくに病院側は、残業規制による業務への支障を避けるため、また医師の派遣元の大学病院などから敬遠される恐れがあるために、このような「苦肉の策」を取ったとみられる。しかし、実際の医師の労働環境は、十分な睡眠を取ることができず、夜間も救急車の受け入れや外来患者の対応に追われるなど、非常に過酷な現状が続いている。この宿日直許可の乱用は、医師の過労自殺や医療安全の脅威を招く可能性があり、医療界における長時間労働の問題と医師を労働者として適切に扱う必要性を改めて浮き彫りにしている。医療需要の高まりと医師数不足が続く中、医師の働き方改革が名ばかりに終わらず、実効性を伴う改革が求められている。参考1)持続可能な周産期医療体制の実現に向けて~産婦人科医療資源と医師の働き方改革の影響について~(日本産婦人科医会)2)分娩病院の半数、夜間宿直・休日日直を「休息」扱い 労働時間とせず 産婦人科医団体調査(産経新聞)3)医師の働き方改革は名ばかりか…労基署の「宿日直許可」が残業規制の抜け道に(中日新聞)3.教育水準が命を左右する? 学歴差で死亡率が上昇/国立がんセンター国立がん研究センターによる最新の研究が、教育水準とがんの死亡率の間に顕著な関連性を明らかにした。この研究は、日本国内で初めて学歴別の全死因による死亡率を推計し、その結果を公表したもの。約800万人の人口データと33万人の死亡データを基に、教育水準が低い人々(とくに中学卒業で終えた者)は、より高い教育を受けた人々と比較し死亡率が約1.4倍高いことが判明した。この格差は、脳血管疾患、肺がん、虚血性心疾患、胃がんといった特定の死因でとくに顕著だった。一方で、乳がんに関しては、より高い教育水準を持つ女性で死亡率が高く、これは出産歴の少なさと関連していると考えられている。研究チームは、教育歴と死亡率の関係が直接的なものではなく、喫煙やがん検診の受診率の低さなど、生活習慣や環境要因によるものであると指摘している。また、わが国での教育水準による健康格差は、欧米諸国と比較して小さいものの、社会全体としてはがん検診の受診率を向上させるなど、健康格差を縮小するための対策が必要であると述べている。参考1)Educational inequalities in all-cause and cause-specific mortality in Japan: national census-linked mortality data for 2010-15(International Journal of Epidemiology)2)平均寿命前後までの死亡率、学歴で差 国立がんセンター(日経新聞)3)学歴別死亡率、中卒は大卒以上の1.4倍 「喫煙など影響」- がんセンター初推計(時事通信)4)「死亡率、中卒は1.4倍」 大卒以上と比較 国立がん研究センター(毎日新聞)5)教育期間の短い人は死亡率高い傾向 喫煙率など影響か 研究班が推計(朝日新聞)4.広がる紅麹サプリメントによる健康被害、問われる安全性/小林製薬小林製薬(大阪市)の機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」の摂取後に健康被害が発生している問題で、腎機能障害や急性腎障害の発症が確認されている。摂取者の114人が入院したほか、5例の死亡症例も報告され、厚生労働省と大阪府は原因究明を同社に求めている。このサプリメントの原料に含まれる紅麹には、青カビが生み出すプベルル酸が含まれていたとの指摘がされており、この成分が健康被害の原因である可能性が高いとされ、具体的な影響や摂取によるリスクについての検証が急がれている。摂取した患者の中には、症状の改善後にサプリメントの再摂取によって再び健康被害を受けた事例も報告されている。この問題は、同社以外に原料として紅麹を購入し使用していた他の企業や製品にも影響を及ぼしており、同社は製造プロセスの見直しや、健康被害を受けた消費者への対応に追われている。さらに、この問題は、機能性表示食品の制度見直しを求める声を高めており、政府はこの問題を受けてコールセンターや省庁間連携室の設置を予定している。参考1)小林製薬社製の紅麹を含む食品に係る確認結果について(厚労省)2)小林製薬「紅麹コレステヘルプ」における腎障害に関しまして(日本腎臓学会)3)小林製薬 紅麹問題「プベルル酸」健康被害の製品ロットで確認(NHK)4)腎機能に異常の患者3人「共通点は紅麹」 医師は小林製薬に報告した(朝日新聞)5)小林製薬「紅麹」サプリ、摂取の再開後に再入院…治療の医師「サプリ含有物質が原因の可能性高い」(読売新聞)6)倦怠感、尿の異常…紅麹サプリを摂取 男性が訴える体の異変(毎日新聞)5.勤務実態なしの事務職に2,000万円、特別背任容疑で捜索/東京女子医大東京女子医科大学(東京都新宿区)およびその同窓会組織「至誠会」に関連する一連の不正給与支給疑惑について、警視庁が特別背任の容疑で捜索を行った事件。この事件では、勤務実態のない元職員に約2,000万円の給与が不正に支払われた疑いが浮上している。報道によると、この元職員は2020年5月~2022年3月まで別のコンサルティング会社からも給与を受け取っていたと報じられている。至誠会は、岩本 絹子理事長が代表理事を務めていた時期に、この不正が行われたとみられ、元事務長との共謀が疑われている。この問題は、東京女子医科大学および至誠会による不透明な資金支出をめぐり、一部の卒業生らが岩本理事長を背任容疑で警視庁に刑事告発し、2023年3月に受理されていた。東京女子医科大学は、1900年に東京女醫學校を母体として設立され、長年にわたり女性医学教育の先駆者として知られてきた。しかし、近年では大学病院での医療事故や経営悪化が報じられるなど、栄光に影を落とす出来事が続いていた。この事件に関する捜査は、岩本理事長および元職員らによる資金の不正流用や背任の可能性に焦点を当てているとともに、大学の経営統括部の業務が外部のコンサルティング会社に委託された背景や、その過程での資金の流れも問題の核心に迫る重要なポイントとなっている。参考1)本学関係者の皆様へ(東京女子医科大学)2)同窓会から不正給与2,000万円支出か、東京女子医大(日経新聞)3)東京女子医大 勤務実態ない職員 給与約2,000万円不正支給か(NHK)4)東京女子医科大と岩本絹子理事長宅など一斉捜索、理事長側近に不正給与2,000万円支払いか(読売新聞)5)名門に捜査のメス 医療事故続き再建担った理事長 東京女子医大捜索(朝日新聞)6.過重労働で医師がくも膜下出血に、労災認定を求めて国を提訴/東京2018年11月、過重労働の末にくも膜下出血を発症し、寝たきり状態となった50代の男性医師が、労災認定を求めて国を提訴することが判明した。男性医師は、都内の大学病院で緩和医療科に勤務しており、発症前6ヵ月間の時間外労働は、月に4日程度の宿直を含むと毎月126~188時間に上っていた。これは、過労死ラインとされる月80時間を大幅に超えるものであった。しかし、三田労働基準監督署および厚生労働省の労働保険審査会は、宿直を労働時間としてほぼ認めず、労災申請を棄却した。審査では、宿直中の患者対応やカルテ作成など、わずかな時間のみが労働時間として認められ、その結果、発症前3ヵ月の時間外労働は月50時間前後と評価された。男性医師側はこの決定に対し、宿直中も高いストレス下での業務に従事していたと主張し、労働時間の過小認定の問題点と時間外労働の上限規制の形骸化に警鐘を鳴らすため訴訟を提起する構えをみせている。参考1)くも膜下出血で寝たきりの医師 労災認定を求め国を提訴へ(毎日新聞)2)医師の宿直を労働時間から除外、労災認められず 「ここまでやるか」(同)3)医者の宿直、労働時間「ゼロ」扱いで労災認定されず 月100h超の残業でくも膜下出血発症…妻「理解に苦しむ」(弁護士ドットコム)

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うつ病に対する17種類の抗うつ薬の治療反応比較

 うつ病に対する抗うつ薬の治療反応を比較した長期的研究は不足している。デンマーク・Psychiatric Center CopenhagenのLars Vedel Kessing氏らは、うつ病患者に対する6つの抗うつ薬クラス17薬剤における2年間の治療反応を比較するため、システマティック人口ベース全国レジストリデータを報告した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2024年2月20日号の報告。 対象は、1995~2018年にデンマークの精神科病院で初めてうつ病と診断され、その後抗うつ薬治療を行った入院患者または外来患者10万6,920例。2年間の研究期間において、最初の抗うつ薬治療に反応しなかった患者の定義は、他の抗うつ薬への切り替え、抗精神病薬・リチウムへの切り替えまたは追加、入院とした。分析では、年齢、性別、社会経済的地位、精神症状・身体症状の併存に従って標準化された集団を対象とした試験を参照した。 主な結果は以下のとおり。・セルトラリンと比較し、citalopramは差がみられなかったが、fluoxetine、パロキセチン、エスシタロプラムは、治療無反応のリスク比が高かった。【citalopram】RR:1.00(95%信頼区間[CI]:0.98~1.02)【fluoxetine】RR:1.13(95%CI:1.10~1.17)【パロキセチン】RR:1.06(95%CI:1.01~1.10)【エスシタロプラム】RR:1.22(95%CI:1.18~1.25)・選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の中では、セルトラリンはreboxetineを上回っていた。・セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の中では、ベンラファキシンはデュロキセチンを上回っていた。・ノルアドレナリン作動性および特異的セロトニン作動性抗うつ薬の中では、ミルタザピンはミアンセリンよりも良好な成績を示し、他の抗うつ薬クラスでは、セルトラリンがagomelatineおよびボルチオキセチンよりも良好な成績を示した。・三環系抗うつ薬では、アミトリプチリンと比較し、ノルトリプチリン、ドスレピン、クロミプラミンの治療無反応率が高かったのに対し、イミプラミンには差が認められなかった。 著者らは「リアルワールドデータを用いた分析では、抗うつ薬使用2年間の長期的な治療無反応は、一部の抗うつ薬において増加している可能性が示唆された」としている。

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出生率は世界的に低下、2100年までの予測/Lancet

 世界的に出生率が低下しており、2021年は、半数以上の国・地域で人口置換水準値を下回っていたこと、2000年以降の傾向として出生率の下がり方には大きな不均一性がみられ、最低出生率が観察された後にわずかでも回復した国はごく少数であり、人口置換水準値へと回復した国はなかったことが示された。さらには、世界中の出生数の分布が変化しており、とりわけ低所得国が占める割合が増加していたという。米国・ワシントン大学のSimon I. Hay氏らGBD 2021 Fertility and Forecasting Collaboratorsが解析結果を報告した。今回の結果を踏まえて著者らは、「出生率は、将来的に世界中で低下し続け、出生促進政策の実施が成功したとしても低いままとなるだろう。これらの変化は、高所得国における高齢化の進展と労働力の減少に加え、すでに最貧地域で出生率が増加していることで、広範囲にわたる経済的および社会的な影響をもたらすだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年3月20日号掲載の報告。GBD 2021のデータを用いて解析 研究グループは、8,709国年の人口動態登録と標本登録、1,455件の調査と国勢調査、および150のその他の情報源から得られたデータを統合し、混合効果回帰モデルおよび時空間ガウス過程回帰モデルを用いて、10歳から54歳までの5歳ごとの年齢別出生率(ASFR)を算出し、ASFRより合計特殊出生率(TFR)を推計するとともに、ASFRと年齢別の女性人口を掛けて出生数を算出した。 保健指標評価研究所(IHME)の予測モデルを用いて2100年までの将来の出生率を予測するとともに、参照シナリオと政策に依存する重要な代替シナリオに基づいて、2100年までの出生率指標を予測した。出生率は1950年以降、すべての国・地域で低下 1950~2021年に、世界のTFRは4.84(95%不確定区間[UI]:4.63~5.06)から2.23(2.09~2.38)へ減少した。世界の年間出生数は、2016年に1億4,200万人(95%UI:137~147)とピークに達した後、2021年には1億2,900万人(121~138)まで減少した。 出生率は1950年以降すべての国・地域で低下し、2021年にTFRが2.1(人口置換水準出生率)を上回ったのは94の国・地域(46.1%)であった。この94の中には、サハラ以南のアフリカ46ヵ国中44ヵ国が含まれ、2021年の出生数の割合が最も多いsuper-region(29.2%、95%UI:28.7~29.6)であった。 1950~2021年に、推定出生率の最低値が人口置換水準を下回った47の国・地域では、その後1年以上出生率が上昇したが、人口置換水準以上に回復したのは3つの国・地域のみであった。TFR予想、2050年に1.83、2100年に1.59 将来にわたって出生率は世界的に低下を続け、参照シナリオでは世界全体のTFRは2050年に1.83(95%UI:1.59~2.08)、2100年に1.59(95%UI:1.25~1.96)と予測された。出生率が人口置換水準を上回る国・地域は、2050年には49(24.0%)、2100年にはわずか6(2.9%)と予測され、この6ヵ国・地域のうち3ヵ国・地域は2021年の世界銀行の定義する低所得グループに含まれ、すべてがサハラ以南のアフリカのGBD super-regionに位置していた。 出生数の割合は、サハラ以南のアフリカで2050年には41.3%(95%UI:39.6~43.1)、2100年には54.3%(47.1~59.5)と、世界の半数以上を占めると予測された。出生数の割合は、他の6つのsuper-regionのほとんどは2021年から2100年の間に減少すると予測され、たとえば、南アジアでは2021年24.8%(95%UI:23.7~25.8)から2050年16.7%(14.3~19.1)、2100年7.1%(4.4~10.1)に減少するが、北アフリカ、中東、および高所得のsuper-regionでは緩やかに増加すると予測された。 代替複合シナリオの予測では、教育と避妊に関するSDGs目標の達成と出生促進政策の実施により、世界のTFRが2050年には1.65(95%UI:1.40~1.92)、2100年には1.62(1.35~1.95)になることが示唆された。

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妊娠後期の抗てんかん薬、薬剤ごとの児への影響は?/NEJM

 出生前に抗てんかん薬に曝露された児は、曝露されていない児より自閉症スペクトラム障害の発生率が高いことが示された。ただし、適応症やその他の交絡因子で調整すると、トピラマートとラモトリギンへの曝露児では実質上その関連がみられなくなったのに対し、バルプロ酸への曝露児ではリスクが高いままであった。米国・ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院のSonia Hernandez-Diaz氏らが、米国の2つの医療利用データベースを用いた解析結果を報告した。母親の妊娠中のバルプロ酸使用は、児の神経発達障害のリスク上昇との関連が示されている。一方で母親のトピラマート使用に関連した児の自閉症スペクトラム障害のリスクに関しては、限定的だが相反するデータが示されていた。NEJM誌2024年3月21・28日号掲載の報告。曝露群vs.非曝露群で、自閉症スペクトラム障害のリスクを比較 研究グループは、米国のメディケイド受給者の医療利用に関するデータを含むMedicaid Analytic eXtract-Transformed Medicaid Statistical Information System Analytic Files(MAX-TAF)の2000~18年のデータ、および民間医療保険に関するデータを含むMerative MarketScan Commercial Claims and Encounters Database(MarketScan)の2003~20年のデータを用い、妊婦とその児を同定した。 解析対象は、推定最終月経日の3ヵ月以上前から出産1ヵ月後まで保険に加入していた12~55歳の女性(とその児)を全体集団とし、てんかんと診断されている女性に限定した集団についても解析を行った。 妊娠19週目から出産まで(妊娠後期)にトピラマートの投薬を1回以上受けた妊婦とその児を曝露群(トピラマート群)、最終月経の90日前から出産まで抗てんかん薬の投薬を受けていない妊婦とその児を非曝露群とした。また、トピラマート群の陽性対照としてバルプロ酸、陰性対照としてラモトリギンの投薬を1回以上受けた妊婦とその児を設定した。 主要アウトカムは、児の自閉症スペクトラム障害の臨床診断(自閉症スペクトラム障害のコードが2回以上の受診で記載されていること)で、曝露群の児と非曝露群の児について自閉症スペクトラム障害のリスクを比較した。トピラマート群6.2%、バルプロ酸群10.5%、ラモトリギン群4.1%、非曝露群4.2% 解析対象の全体集団は429万2,539例で、このうち2,469例がトピラマート群、1,392例がバルプロ酸群、8,464例がラモトリギン群、非曝露群が419万9,796例であった。また、てんかんの診断を有する女性の限定集団は2万8,952例で、トピラマート群1,030例、バルプロ酸群800例、ラモトリギン群4,205例、非曝露群8,815例であった。 全体集団において、非曝露群の児(419万9,796例)における8歳時の自閉症スペクトラム障害の推定累積発症率は1.9%(95%信頼区間[CI]:1.87~1.92)であった。 てんかんと診断されている母親の限定集団では、8歳時の自閉症スペクトラム障害の推定累積発症率は、非曝露群4.2%に対して、トピラマート群6.2%、バルプロ酸群10.5%、ラモトリギン群4.1%であった。ベースラインの交絡因子を補正した傾向スコア加重ハザード比は、トピラマート群0.96(95%CI:0.56~1.65)、バルプロ酸群2.67(1.69~4.20)、ラモトリギン群1.00(0.69~1.46)であった。

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統合失調症診断の指標となりえる唾液中ガレクチン3レベル

 精神疾患を特定する生物学的マーカーはほとんどなく、精神疾患患者に対する侵襲的なサンプリング手法は困難なケースも少なくないため、非侵襲的な手法である唾液サンプルの活用は、有用であると考えられる。パキスタン・Islamic International Medical CollegeのSaba Shoukat氏らは、統合失調症患者と健康対照者における血清および唾液中のガレクチン3レベルの比較を行った。Journal of the College of Physicians and Surgeons Pakistan誌2024年2月号の報告。 2022年9月~2023年5月に、Islamic International Medical CollegeとBenazir Bhutto Hospitalの精神医学研究所と共同で横断的研究を実施した。対象は、統合失調症患者30例および年齢性別がマッチした健康対照者30例。統合失調症の診断は、DSM-Vの診断基準に従った。対象者から無刺激で口腔内全体から唾液を摂取するため、唾液を吐きだす方法により収集した。EDTAチューブを用いて血液サンプルを収集し、統合失調症患者の唾液および血清中のガレクチン3レベルを測定した。ガレクチン3の検出にはELISA法を用いた。独立サンプルのt検定およびピアソン相関分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者の唾液中の平均ガレクチン3レベルは、健康対照者と比較し、有意に高かった(1,324±74ng/mL vs. 68.4±336ng/mL、p<0.001)。・統合失調症患者の唾液および血清中のガレクチン3レベルには正の相関が認められた(p=0.03)。 著者らは「統合失調症患者の唾液中ガレクチン3レベルは上昇しており、血清中レベルとの正の相関が確認されたことから、統合失調症の診断確定に、唾液中ガレクチン3レベル測定が有用な指標となりえる可能性が示唆された」としている。

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乳児HIV感染予防、母親のウイルス量に基づくラミブジン単剤投与が有望/Lancet

 小児の新規HIV感染の半数以上が母乳を介したものだという。ザンビア・University Teaching HospitalのChipepo Kankasa氏らは「PROMISE-EPI試験」において、ポイントオブケア検査での母親のウイルス量に基づいて、乳児へのラミブジンシロップ投与を開始する予防的介入が、小児のHIV感染の根絶に寄与する可能性があることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年3月11日号で報告された。ザンビアとブルキナファソの無作為化対照比較第III相試験 研究グループは、母親への抗レトロウイルス療法(ART)に加えて、母親のウイルス量のポイントオブケア検査に基づく乳児へのラミブジンによる出生後予防治療の期間を延長することで、出生後の感染の抑制が可能との仮説を立て、これを検証する目的で、ザンビアとブルキナファソの8施設で非盲検無作為化対照比較第III相試験を行った(英国保健省[DHSC]によるEDCTP2プログラムの助成を受けた)。 HIVに感染している母親と、Expanded Programme of Immunisation(EPI-2)に参加しており2回目の受診時にHIV未感染であった母乳による育児を受けている乳児(生後6~8週)を、介入群または対照群に無作為に割り付けた。 介入群は、Xpert HIVウイルス量検査を用いて母親のウイルス量を測定し、即座に得られた結果に基づき、母親のウイルス量が1,000コピー/mL以上の乳児には12ヵ月間、または授乳中止後1ヵ月間、1日2回のラミブジンシロップの投与を開始した。 対照群は、出生後のHIV感染予防のための国のガイドラインに準拠して対応した。 主要アウトカムは、出生後12ヵ月の時点での乳児のHIV感染とし、6ヵ月および12ヵ月時にHIV DNAのポイントオブケア検査を行った。評価は修正ITT集団を対象に行った。介入群のHIV感染乳児は1例、有意差はなし 2019年12月12日~2021年9月30日に、3万4,054例の母親がHIV検査を受けた。このうち、HIVに感染している母親と感染していない乳児の組み合わせ1,506組を登録し、介入群に753組、対照群にも753組を割り付けた。 ベースラインの母親の年齢中央値は30.6歳(四分位範囲[IQR]:26.0~34.7)であった。1,504例の母親のうち1,480例(98.4%)がARTを受けており、1,466例の母親のうち169例(11.5%)はウイルス量が1,000コピー/mL以上だった。 追跡期間中にHIVに感染した乳児は、介入群が1例、対照群は6例であった。100人年当たりのHIV感染の発生率は、介入群が0.19(95%信頼区間[CI]:0.005~1.04)、対照群は1.16(0.43~2.53)であり、両群間に統計学的に有意な差を認めなかった(p=0.066)。重篤な有害事象、HIV非感染生存にも差はない 重篤な有害事象を発症した乳児の割合は、介入群が8.2%、対照群は7.0%で、両群間に有意な差はなかった(p=0.44)。また、12ヵ月時のHIV非感染生存割合は、介入群が99.4%(95%CI:98.4~99.8)、対照群は98.2%(96.8~99.1)で、有意差はみられなかった(p=0.071)。 一方、探索的解析では、乳児におけるHIV感染が高リスク(母親のウイルス量≧1,000コピー/mL、出生後に予防治療を受けていない状態)の累積期間は、100人年当たり対照群が6.38年であったのに対し、介入群は0.56年と有意に優れた(p<0.001)。 著者は、「これらの結果は、既存の方法の組み合わせによって、母乳を介した感染をほぼゼロにすることが可能であることを強く示唆する」と述べるとともに、「本試験により、受診時にウイルス量の結果が得られるポイントオブケア検査の重要性が示された。出生後の感染を実質的に防止することで、小児のHIV感染の根絶が手の届くところに来ている」としている。

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ナイアシンの取り過ぎは心臓に悪影響

 ナイアシンは必須ビタミンB群の一つだが、取り過ぎは心臓に良くないようだ。何百万人もの米国人が口にする多くの食品に含まれるナイアシンの過剰摂取が炎症を引き起こし、血管にダメージを与える可能性のあることが、米クリーブランド・クリニック、ラーナー研究所の心血管・代謝科学主任研究員であるStanley Hazen氏らの研究で示唆された。この研究結果は、「Nature Medicine」2月19日号に掲載された。 Hazen氏は、「ナイアシンの過剰摂取により心血管疾患の発症リスクが高まる可能性が示された以上、平均的な人はナイアシンのサプリメントの摂取を控えるべきだ」とNBCニュースに対して語った。 米メイヨークリニックによれば、ナイアシンの推奨摂取量は男性で1日16mg、妊娠していない女性では1日14mgである。米国では、穀物やシリアルにナイアシンが強化され始めた1940年代以来、その摂取量が増加している。Hazen氏によると、食品にナイアシンを強化する動きは、ナイアシンが不足するとペラグラと呼ばれる致命的な疾患を引き起こす可能性があることを示唆した研究を受けて助長されたと説明する。皮肉なことに、ナイアシンのサプリメントは、かつてはコレステロール値を改善するために医師によって処方されていた。 本研究には関与していない、米ヴァンダービルト大学医療センター循環器内科のAmanda Doran氏は、ナイアシンが心血管疾患リスクを高める可能性があることを知って驚いたと話す。同氏はNBCニュースに対し、「ナイアシンに炎症促進作用があると予想していた人はいないのではないかと思う」と語り、「この研究結果は、臨床データ、遺伝子データ、マウス実験を組み合わせて多角的に検討して導き出されたものであり、説得力がある」と述べている。 Hazen氏らはまず、心血管疾患の評価のために心臓病センターを訪れた患者1,162人(女性422人)の空腹時血漿のメタボロミクス解析を行った。その結果、ナイアシンの代謝産物である2PY(N1-メチル-2-ピリドン-5-カルボキサミド)と4PY(N1-メチル-4-ピリドン-3-カルボキサミド)の血中濃度が主要心血管イベント(MACE)の発生と関連していることが明らかになった。この結果は、米国人2,331人とヨーロッパ人832人から成る2つの検証コホートでも確認された。また、遺伝子変異体rs10496731は2PYおよび4PYレベルと有意に関連しており、さらに、この変異と血漿中の血管細胞接着分子(VCAM-1)である可溶性VCAM-1(sVCAM-1)レベルが関連することも示された。 マウスを用いた実験からは、生理学的レベルの4PYの投与によりVCAM-1の発現が促進されるとともに、血管内皮における白血球の付着が増加し、炎症が亢進していることが示唆された。このような変化は、2PYの投与では確認されなかった。 米マウントサイナイ・ヘルスシステム代謝・脂質部門でディレクターを務めるRobert Rosenson氏は、この結果は「魅力的」で「重要だ」とし、「食品業界がパンのような製品にナイアシンを大量に添加するのをやめることを期待している。これは、体に良いとされるものの取り過ぎが、かえって悪影響を及ぼすことの一例だ」とNBCニュースに語った。 Rosenson氏は、「この結果は、ナイアシンの食事からの摂取推奨量にも影響を与える可能性がある」との見方を示す。一方、前述のDoran氏は、「この結果は、血管の炎症を抑える新たな方法の開発につながる可能性もある」との見方を示し、「大きな可能性を秘めた、ワクワクするような結果だ」と話している。

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成人心臓移植待機患者の移植到達前死亡を予測するリスクスコアの開発と検証(解説:小野稔氏)

 2018年10月に、米国において6段階に分けた新しい心臓移植待機患者への臓器配分モデルが適用された。これは登録時に受けている治療の濃厚さに応じて階層化されたもので、待機中死亡を減少させ、かつ移植後の予後を最適化するという目的を有している。この臓器配分モデルが適用されて5年が経過したが、すでに適切性に疑問が呈され始めていて、より公正な新しい配分モデルの策定が議論されている。本論文は新たな配分モデルに適用されうる可能性を念頭に置いて、フランスで運用されているFrench Candidate Risk Score (French-CRS)にヒントを得て、心不全重症度を反映した血液検査データと機械的循環補助(MCS)状態を因子として用いて開発されたUS-CRSの優れた移植登録患者の待機死亡予測精度を報告している。 2019年1月~2022年12月までに米国で心臓移植登録された1万9,680例のうち、18歳以上の成人1万6,905例を解析対象とした。70%に相当する1万2,362例(97病院)を分析対象、30%に相当する4,543例(分析コホートと地理的分布等を一致させた41病院)を検証対象として、移植登録後6週以内の移植未到達死亡の予測モデルを構築した。US-CRSに組み込むパラメータは感度分析に基づいて最終的に、血清アルブミン、ビリルビン、eGFR、血清ナトリウム、LVADの有無、短期MCSの既往、BNP(またはNT-ProBNP)となった。移植登録後6週以内の移植未到達死亡の予測精度のROC解析を行ったところ、US-CRSのAUC 0.79、French-CRSでは0.72、現行の6段階モデルでは0.68であった。C-indexについては、US-CRS 0.76、French-CRS 0.69、6段階モデル0.67であり、US-CRSが最も優れた移植待機中6週以内死亡の予測精度を示した。なお、短期MCSにIABPやカテーテル型VADを含めると予測効果量が54%低下する結果となった。 現在、米国OPTN(臓器摘出・移植ネットワーク)では臓器配分を新しい配分システムに移行しつつある。このシステムでは、個々のドナーと移植候補者の組み合わせに医学的緊急度や移植後生存期待値などから導かれた複合連続数スコアを当てはめることを目指している。本論文で提案されたUS-CRSは現行の6段階配分モデルより医学的重症度(つまり移植の必要性)の識別力が優れており、今後開発される新たなドナー配分モデルのための医学的緊急度評価指標として検討されるべきであると結論されている。

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第207回 コーヒーの成分トリゴネリンが老化に伴う筋肉消耗を防ぐ

コーヒーに豊富な成分トリゴネリンが老化に伴う筋肉の減少や筋力の低下(サルコペニア)の治療効果を担いうることが示されました1-3)。サルコペニアは筋肉、筋力、歩く速度の病的な減少/低下を特徴とし、分子や細胞の老化病変の組み合わせと筋線維消耗が筋収縮を障害することで生じます。それら数ある病変の中でもミトコンドリア機能不全は顕著であり、ミトコンドリアの新生が減ることやミトコンドリア内での呼吸反応やATP生成が減ることなどが筋肉老化の特徴に寄与することが明らかになっています。サルコペニア患者の筋肉はそのようなミトコンドリア機能不全に加えて、補酵素の1つニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の減少を示すことがシンガポール、英国、ジャマイカの高齢者119人を調べた先立つ試験で示されています4)。NAD+は代謝に不可欠で、ビタミンB3の類いから作られます。新たな研究では筋肉のミトコンドリア機能不全やNAD+代謝異常と全身の変化の関連を目指してサルコペニア患者と健康な人の血清代謝物が比較されました。その結果、コーヒーなどの植物に存在し、ヒトの体内でもNAD+と同様にビタミンB3からいくらか作られるアルカロイドであるトリゴネリンがサルコペニア高齢者の血中には少ないことが判明しました。また、トリゴネリンの血清濃度がより高い人ほど筋肉がより多く、握力がより強く、より早く歩けました。サルコペニア患者とそうでない健康な人から採取した筋肉組織(筋管)にトリゴネリンを加えたところ、サルコペニアかどうかを問わずNAD+が増加しました。続いて個体レベルでの効果が検討され、線虫やマウスにトリゴネリンが与えられました。するとミトコンドリア活性が向上し、筋力が維持され、老化に伴う筋肉消耗を防ぐことができました。また、トリゴネリンで線虫はより長生きになり、老化マウスの筋肉は強度の収縮時の疲労が少なくて済むようになりました。今回の研究によるとトリゴネリンはサルコペニアやその他の老化病態に有効かもしれず、サルコペニアの予防や治療の効果を臨床試験で検討する価値があるようです3)。コーヒーでトリゴネリンは増やせる?コーヒーを飲んでトリゴネリンが増えるならコーヒー好きには朗報ですが、話はそう簡単ではないようです。今回の試験の一環で調べられた高齢者186人の血清トリゴネリン濃度はカフェインやビタミンB3摂取レベルと無関係でした。また、トリゴネリン血清濃度と握力の関連はカフェインやビタミンB3摂取の補正の影響を受けませんでした。試験の被験者がコーヒーをあまり飲まない中東地域(イラン)であったことがトリゴネリン血清濃度とカフェイン摂取の関連が認められなかったことの原因かもしれないと著者は言っています。トリゴネリンとコーヒーの関連はまだ検討の余地があるようですが、お隣の韓国での試験でコーヒーをよく飲む人にサルコペニアが少ないことが示されています5)。トリゴネリンの寄与のほどは定かではありませんが、コーヒーを1日3杯以上飲む人は1日1杯未満の人に比べてサルコペニアの有病率が60%ほど低いという結果が得られています。参考1)Membrez M, et al. Nat Metab. 2024 Mar 19. [Epub ahead of print] 2)Natural molecule found in coffee and human body increases NAD+ levels, improves muscle function during ageing / Eurekalert3)Substance in coffee may improve muscle health in older age / Universities of Southampton4)Migliavacca E, et al. Nat Metab. 2019;10:5808.5)Chung H, et al. Korean J Fam Med. 2017;38:141-147.

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がん罹患数が著増、がん死は減少~英国の25年/BMJ

 英国の年齢35~69歳の集団では、1993~2018年の25年間にがん罹患数が大きく増加したのに対し、がんによる死亡率は減少しており、この減少にはがんの予防(喫煙防止策、禁煙プログラムなど)と早期発見(検診プログラムなど)の成功とともに、診断検査の改善やより有効性の高い治療法の開発が寄与している可能性があることが、英国・Cancer Research UKのJon Shelton氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2024年3月13日号に掲載された。23部位のがんの後ろ向き調査 研究グループは、1993~2018年の英国の年齢35~69歳の集団における、23の部位のがんの診断数および死亡数を後ろ向きに調査した(特定の研究助成は受けていない)。 解析には、国家統計局、ウェールズ公衆衛生局、スコットランド公衆衛生局、Northern Ireland Cancer Registry、イングランド国民保健サービスなどのデータを用いた。 主要アウトカムは、がんの年齢調整罹患率と年齢調整死亡率の経時的変化とした。前立腺がんと乳がんが増加、ほかは安定的に推移 35~69歳の年齢層におけるがん罹患数は、男性では1993年の5万5,014例から2018年には8万6,297例へと57%増加し、女性では6万187例から8万8,970例へと48%増加しており、年齢調整罹患率は男女とも年平均で0.8%上昇していた。 この罹患数の増加は、主に前立腺がん(男性)と乳がん(女性)の増加によるものだった。これら2つの部位を除けば、他のすべてのがんを合わせた年齢調整罹患率は比較的安定的に推移していた。 肺や喉頭など多くの部位のがんの罹患率が低下しており、これは英国全体の喫煙率の低下に牽引されている可能性が高いと推察された。一方、子宮や腎臓などのがんの罹患率の増加を認めたが、これは過体重/肥満などのリスク因子の保有率が上昇した結果と考えられた。 また、罹患数の少ない一般的でないがんの傾向については、たとえば悪性黒色腫(年齢調整年間変化率:男性4.15%、女性3.48%)、肝がん(4.68%、3.87%)、口腔がん(3.37%、3.29%)、腎がん(2.65%、2.87%)などの罹患率の増加が顕著であった。男女とも胃がん死が著明に減少 25年間のがんによる死亡数は、男性では1993年の3万2,878例から2018年には2万6,322例へと20%減少し、女性では2万8,516例から2万3,719例へと17%減少しており、年齢調整死亡率はすべてのがんを合わせて、男性で37%(年平均で-2.0%)低下し、女性で33%(-1.6%)低下していた。 死亡率が最も低下したのは、男性では胃がん(年齢調整年間変化率:-5.13%)、中皮腫(-4.17%)、膀胱がん(-3.24%)であり、女性では胃がん(-4.23%)、子宮頸がん(-3.58%)、非ホジキンリンパ腫(-3.24%)だった。罹患率と死亡率の変化の多くは、変化の大きさが比較的小さい場合でも統計学的に有意であった。 著者は、「喫煙以外のリスク因子の増加が、罹患数の少ない特定のがんの罹患率増加の原因と考えられる」「組織的な集団検診プログラムは、がん罹患率の増加をもたらしたが、英国全体のがん死亡率の減少にも寄与した可能性がある」「この解析の結果は、新型コロナウイルス感染症の影響を含めて、がんの罹患率およびアウトカムの今後10年間の評価基準となるだろう」としている。

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酒で顔が赤くなる人は、コロナ感染リスクが低い?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時、日本は欧米などと比較して人口当たりの感染率・死亡率が低かったことが報告されている1,2)。この要因としては、手洗いやマスクなどの感染予防策が奏効した、日本の高い衛生・医療水準によるものなどの要因が考えられているが、アジア人に多い遺伝子型も一因となっている可能性があるとの報告がなされた。佐賀大学医学部 社会医学講座の高島 賢氏らによって国内で行われた本研究の結果は、Environmental Health and Preventive Medicine誌に2024年3月5日掲載された。 日本人をはじめとした東アジア人には、アルコールを分解するアルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)の活性が弱く、飲酒時に顔が赤くなる特性を持つ人(rs671変異体)が多い。研究者らは、遺伝子型と新型コロナウイルス感染の防御効果の関連を検証するため、rs671変異体の代替マーカーとして飲酒後の皮膚紅潮現象を用い、後ろ向きに解析した。調査はWebツールを使って2023年8月7~27日に行われ、参加者は感染歴、居住地、喫煙・飲酒歴、既往症などの質問に回答した。 主な結果は以下のとおり。・計807例(女性367例、男性440例)から有効回答を得た。362例が非紅潮群、445例が紅潮群だった。・2019年12月~23年5月の42ヵ月間の観察期間全体で、非紅潮群は40.6%、紅潮群は35.7%がCOVID-19に感染した。年齢、性別、居住地等で調整後、初感染までの時間は紅潮群のほうが遅い傾向があった(p=0.057)。・COVID-19による入院例は、非紅潮群は2.5%、紅潮群は0.5%であった。COVID-19感染および関連した入院リスクは、紅潮群で低かった(p=0.03および<0.01)。・日本人の多くがCOVID-19ワクチンの2回接種を終える前である2021年8月31日までの21ヵ月間では、紅潮群の非紅潮群に対するCOVID-19感染のハザード比は0.21(95%信頼区間:0.10~0.46)と推定された。 研究者らは、「本研究は、飲酒後の皮膚紅潮現象とCOVID-19の感染および入院のリスク低下との関連を示唆しており、rs671変異体が防御因子であることを示唆している。本研究は感染制御に貴重な情報を提供するとともに、東アジア人特有の体質の多様性を理解する一助となる」としている。

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第89回 頸動脈プラークにすでにナノプラスチックが侵入

イラストボックスより使用プラスチックは私たちの生活の一部として、なくてはならないものになっています。日持ちしない食品の安全性を高め、重い荷物の輸送費用を削減し、脆弱な物質を保護する役割もあります。何より、低コストで生産できるメリットは無視できません。しかし、プラスチックが環境に与える影響は深刻です。使用量を減らし、環境汚染を改善する試みが行われていますが、プラスチックの代替物を利用するには高いコストがかかり、経済的に厳しい状況に陥ることは容易に想像できます。私たちは、プラスチックの問題を認識しつつも、使用をやめることができないジレンマに直面しているのです。プラスチックがよくないことはわかっていても、使用をやめられないというのが現実です。さて、プラスチックが体内に蓄積するということは通常想定されていません。これは、プラスチックが吸収されずに、排泄されていくと考えられているためです。しかし、プラスチックがきわめて小さな細片となり、体内に侵入することがありえます。このプラスチックの細片のうち、大きさが1μm~5mmのものをマイクロプラスチック、より小さくnm(ナノメートル)レベルのものをナノプラスチックと呼び、MNPs(Microplastics and Nanoplastics)と総称します。最近、MNPsがペットボトルの水の中に一定レベル存在しているということが話題となっています1)。MNPsが体内に存在する可能性があるとはいえ、「まあ健康被害といえるほどではないっしょ」と楽観視していた人が多かったと思います。しかしながら、頸動脈の動脈硬化病変に対して、血管内治療を行った症例を解析したところ、対象となった257例のうち、全体の58.4%でポリエチレンが頸動脈プラークから検出されたと報告されています2)。この研究では、約3年の観察期間中に、心筋梗塞や脳卒中を発症したか、死亡した症例は、MNPsが検出されなかった症例では7.5%だったのに対し、検出症例では20.0%と有意なリスクが認められたと報告されています(ハザード比:4.53、95%信頼区間:2.00〜10.27、p<0.001)。これは衝撃的な報告です。新しい治療法の進歩や医療アクセスの向上などによる健康寿命延伸の効果のほうが大きく、MNPsよりも生活習慣や運動のほうが大事かもしれません。他のリスクとまだ比較できる段階にはないのですが、もしMNPsが人類の大きな敵であるとわかったなら、世界はこの対策をすみやかに進めなければいけません。参考文献・参考サイト1)Qian N, et al. Rapid single-particle chemical imaging of nanoplastics by SRS microscopy. Proc Natl Acad Sci USA. 2024 Jan 16;121(3):e2300582121.2)Marfella R, et al. Microplastics and Nanoplastics in Atheromas and Cardiovascular Events. N Engl J Med. 2024 Mar 7;390(10):900-910.

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統合失調症の認知機能に対する抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、抗コリン作用負荷の影響

 統合失調症は、日常生活に影響を及ぼす認知機能障害を特徴とする疾患である。これまでの研究では、抗うつ薬が認知機能改善と関連している可能性があるとの仮説が立てられていたが、その結果に一貫性は見られていない。フィンランド・ヘルシンキ大学のVille Makipelto氏らは、臨床サンプルにおける反応時間と視覚学習の観点から、抗うつ薬の使用と認知機能との関連を調査した。また、ベンゾジアゼピン使用と抗コリン薬負荷との関連も調査した。Schizophrenia Research誌2024年4月号の報告。 参加者は、2016~18年にフィンランドの精神疾患患者を対象に実施されたSUPER-Finlandコホートより抽出された1万410例。分析には、統合失調症と診断された成人患者のうち認知機能評価結果が含まれていた3,365例を含めた。薬物治療および心理社会的要因に関する情報は、アンケートとインタビューを通じて収集した。認知機能は、返納時間と視覚学習を測定する2つのサブテストを備えたCambridge Neuropsychological Test Automated Battery(CANTAB)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・1種類以上の抗うつ薬を使用していた参加者は、36%であった。・全体として、抗うつ薬の使用と反応時間や視覚学習課題のパフォーマンスとの関連は認められなかった。・SNRI使用と反応時間短縮との関連が認められた。・ベンゾジアゼピン使用と高い抗コリン薬負荷は、反応時間と視覚学習のパフォーマンス低下と関連が認められた。 結果を踏まえ、著者らは「これまでの知見と同様に、統合失調症患者に対する抗うつ薬使用と認知機能との関連が認められないことが示唆された。ただし、SNRIと反応時間の改善との関連については、さらなる研究が必要である。さらに、統合失調症患者は、ベンゾジアゼピンの継続使用を避けるだけでなく、抗コリン作用負荷を軽減することにも注意を払うべきであることが明らかとなった」としている。

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医学生の英語力、コロナ禍のオンライン授業で向上

 2020年のコロナ禍以降、オンライン教育が取り入れられてきた。今回、新たな研究で、医学部2年生の英語力に関するオンライン教育の効果が検証された。その結果、「対面授業」と比べて、「オンライン授業」や「オンラインと対面の併用授業」を受けた医学生の英語力は向上していたという。北海道大学大学院医学研究院 医学教育・国際交流推進センターの高橋誠氏らによるこの研究は、「BMC Medical Education」に1月17日掲載された。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、大学や医療機関における教育は混乱に陥った。現場では「オンライン授業」に切り替えることで教育活動を維持してきたが、オンライン教育が医学教育に及ぼした影響については、まだ十分に解明されていない。そこで著者らは、北海道大学医学部における医学英語のコースを受講した大学2年生の成績を3年分調査し、オンライン教育の影響を検証した。 同コースでは毎年4~7月に、計15回の授業が行われた。全てが対面授業だった2019年、オンライン授業のみの2020年、オンラインと対面が半分ずつ併用された2021年の各年、受講した医学部2年生のうち計321人が対象となった。医学のための英語として、医学用語、問診・診察、根拠に基づいた医療(EBM)などの内容が、日本語と英語で指導された。 まず、コース前後に質問紙を用いて、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングのスキルを主観的に評価した。また、客観的な評価項目を3つ設定。1つ目は「医学用語」として、各授業の前後で知識を評価。2つ目の「EBM」は、学生を6~7人のグループに分け、「The New England Journal of Medicine」誌の論文を読んで分析し、最新の医学情報を抽出する方法を指導。コース終了後に、レポート提出、論文の要約、ポスター作成、ポイントの口頭発表を課した。3つ目の「最終試験」では、コース終了後に筆記試験を実施した。 解析対象の学生は、2019年が106人(女性19人)、2020年が104人(同19人)、2021年が111人(同27人)だった。各年で、女性の割合や、大学入学試験の英語の点数に有意差はなかった。主観的評価の結果、コース開始時に比べて、「対面授業」の2019年はリスニングとスピーキングの2つが有意に向上した。「オンライン授業」の2020年は、有意に向上していたのはライティングのみだった。「併用授業」の2021年には、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングの全てのスキルが有意に向上していた。 客観的な評価項目のうち、「医学用語」と「EBM」は、各年とも成績が有意に向上し、授業形態による違いは認められなかった。「最終試験」については、各年の平均点(100点満点)が2019年は78.6±8.8、2020年は82.8±8.2、2021年は79.7±12.1だった。すなわち、「オンライン授業」の方が、「対面授業」や「併用授業」よりも点数が有意に高かった。ただし、「対面授業」と「併用授業」の間では、点数の差は有意ではなかった。 著者らは研究論文の考察において、特筆すべきこととして、オンラインと対面の併用授業で全ての英語スキルが向上したことを挙げている。また今後、医学英語の他にも、多くの臨床前コースを対象とした大規模な研究が必要とした上で、「オンライン授業や併用授業による教育は、対面授業に劣らず効果的だった」と総括している。

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日本における片頭痛患者の治療パターンと特徴

 日本における片頭痛患者にみられる実際の臨床的特徴や治療実践については、十分に調査されていない。慶應義塾大学の滝沢 翼氏らは、近年の片頭痛の臨床実態、現在の治療選択肢では十分にコントロールできていない可能性のある患者の特徴を明らかにするため、レセプトデータベースを用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。The Journal of Headache and Pain誌2024年2月8日号の報告。 大規模レセプトデータシステムJMDCデータベースを用いて調査を行った。2018年1月~2022年7月に頭痛または片頭痛と診断された患者を対象とした頭痛コホート、頭痛コホート内で片頭痛と診断され片頭痛治療薬を使用した患者を対象とした片頭痛コホートとして定義し、検討を行った。頭痛コホートでは、医療機関の特徴、二次性頭痛を鑑別するための画像検査の状況を検討した。片頭痛コホートでは、急性期およびまたは予防的治療では十分にコントロールできていない可能性のある患者の治療パターン、および特徴を評価した。 主な結果は以下のとおり。・頭痛コホートには、98万9,514例(女性の割合:57.0%、平均年齢:40.3歳)が含まれた。1次診断のために診療所(19床以下)を受診した患者の割合は77.0%、CTおよびまたはMRIによる画像診断を行った患者の割合は30.3%であった。・片頭痛コホートでは、16万5,339例(女性の割合:65.0%、平均年齢:38.8歳)が含まれ、95.6%が急性期治療を行い、20.8%が予防的治療を実施していた。・片頭痛治療の初回選択肢は、アセトアミノフェン/非ステロイド系抗炎症薬(54.8%)が最も高く、次いでトリプタン(51.4%)であった。・初回治療では、15.6%に予防的治療が含まれていた。4回目治療時には、予防的治療の実施割合が82.2%へ増加していた。・12ヵ月以上のフォローアップ調査を行った患者のうち、薬物乱用頭痛のリスクが示唆される処方パターンが3.7%に認められた。これらの患者の特徴として、女性の割合が高い、併存疾患の有病率が高いが挙げられた。 著者らは「この研究により、医療機関に来院する片頭痛患者の約5分の1は、予防薬を使用していることが明らかとなった」とし、また、薬物乱用頭痛のリスクがある潜在的患者と片頭痛治療における診療所の役割についても述べた。

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尋常性乾癬の生物学的製剤、費用対効果の評価

 効率的フロンティア(efficiency frontier:EF)と呼ばれる費用対効果の評価方法を用いることで、尋常性乾癬の生物学的製剤の価格の大幅な引き下げと、臨床的な費用対効果の最適化が実現可能であることを、米国・ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のAlexander C. Egilman氏らが示した。検討の結果を踏まえて著者は、「EFは政策立案者にとって従来の費用対効果分析手法に代わるアプローチとなるものである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年2月21日号掲載の報告。 研究グループは、EFにより尋常性乾癬の生物学的製剤の薬価と臨床ベネフィットの適正化をどれほど図れるのかを評価した。また、米国における薬価の引き下げ幅について4ヵ国(オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ)と比較することにより推定した。 EFを用いた医療経済評価では、上記5ヵ国における尋常性乾癬の生物学的製剤11剤とバイオシミラー2剤の薬価と臨床ベネフィットを比較。EFは各生物学的製剤の有効性(Psoriasis Area and Severity Index[PASI]90達成率で評価)と2023年1月時点の年間治療コストをベースに構築し、EFに基づく薬価と従来の費用対効果分析に基づく価格を比較した。従来の費用対効果分析に基づく薬価は、1質調整生存年(QALY)当たり15万ドルを基準とした。 主な結果は以下のとおり。・13剤の生物学的製剤におけるPASI 90達成率は、17.9%(エタネルセプト)~71.6%(リサンキズマブ)の範囲にわたっていた。・米国の年間治療コストは、1,664ドル(infliximab-dyyb[インフリキシマブのバイオシミラー])~7万9,277ドル(リサンキズマブ)の範囲にわたっていた。・年間治療コストの中央値(四分位範囲[IQR])は、米国が3万4,965ドル(2万493~4万8,942)であり、オーストラリア(9,179ドル[6,691~1万2,688])、カナダ(1万5,556ドル[1万3,017~1万6,112])、フランス(9,478ドル[6,637~1万1,678])、ドイツ(1万3,829ドル[1万3,231~1万5,837])よりも高かった。・米国のEFで臨床的な費用対効果が良好であったのは、infliximab-dyyb(PASI 90達成率:57.4%、年間コスト:1,664ドル)、イキセキズマブ(同:70.8%、3万3,004ドル)、リサンキズマブ(同:71.6%、7万9,277ドル)であった。・米国の乾癬の生物学的製剤の価格について、EFを用いて推算した価格(最適価格)と一致させるためには中央値71%(IQR:31~95)引き下げる必要があった。同様のアプローチを用いた場合の他の4ヵ国の引き下げ幅はより小さく、カナダ41%(同:6~57)、オーストラリア36%(同:0~65)、フランス19%(同:0~67)、ドイツ11%(同:8~26)であった。・リサンキズマブを除き、EFに基づく薬価は従来の費用対効果分析に基づく薬価よりも低かった。

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