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学会のSNS発信はどうあるべき?JSMO2024でシンポジウム開催

 2024年2月22日(木)~24日(土)、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)が名古屋国際会議場とオンラインのハイブリッド形式で開催される。新薬開発や臨床課題に関する多くの演題が並ぶ中、一風変わったシンポジウムが企画されている。 テーマは「学会としてSNSをどう活用していくべきか」、昨年4月にJSMO広報渉外委員会の下部組織として「SNSワーキンググループ(SNS-WG)」が発足したことを契機に企画されたシンポジウムだ。SNS-WGは立候補制で、現在専攻医からがん薬物療法専門医まで、幅広い世代のJSMO会員メンバーが参加する。 SNS-WGの活動目的は下記のとおり。1)JSMO会員のSNS利用を活発にするための環境整備2)医学生・研修医や一般市民に向けた腫瘍内科・JSMOの認知度向上3)JSMOの国際化 今回のシンポジウムでは、SNS-WGの活動内容、米国臨床腫瘍学会(ASCO)、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)、国内でSNS活動を最も精力的に行っている学会の1つである日本循環器学会がSNSを活用するために行っている取り組みを共有し、今後のJSMOのSNS-WGが進むべき方向性やSNSの上手な使い方について討論する予定だという。SNS-WGメンバーのほか、X(旧Twitter)で長年医療情報の発信を続ける循環器内科医・岸 拓弥氏が、日本循環器学会と自身の取り組みを紹介する予定だ。JSMO2024では会場内での許可のない撮影は禁止されているが、本シンポジウムに限っては、スライドの撮影およびSNSへの投稿を自由としている。 SNS-WGのメンバーの1人である寺田 満雄氏(名古屋市立大学大学院 医学研究科 乳腺外科学分野/The University of Pittsburgh Medical Center)は、「海外と比べ、日本ではまだ腫瘍内科はマイナーな存在。SNSで医学生や研修医に向けて情報発信し、魅力を伝えて志望者を増やしたい」と語る。さらに「最大のイベントであるJSMO2024会期中にSNSでの発信を増やし、学術集会を盛り上げることも目指したい」と語る。さらに「国内での情報発信の基盤ができたあとは、ASCOやESMOのように発表スライドを撮影して即時にSNSに投稿、その場でディカッションが起きるような環境整備も進めたい」と今後の展望を語る。 学会のSNS活用においては、投稿が炎上する、といったリスクも指摘されるところだが、「海外学会を見ていると、情報公開、拡散は避けられない流れ。投稿規定を定め、リテラシーを高めて経験を重ねれば、不要なリスクは避けられるはず。日本のプレゼンスを高め、患者・市民参画(Patient and Public Involvement)を促進するためにSNSは欠かせない手段だと考えている」(寺田氏)。まずはSNSを使うJSMO会員を増やそうと、シンポジウムでは個人向けにSNSを使った上手な情報収集法、上手なセルフブランディングなどの話題も提供するという。 シンポジウムの詳細は以下のとおり。JSMO2024(名古屋国際会議場)委員会企画2(SNS-WGシンポジウム)2月22日(木)15:40~17:10Room 6(1号館3F 会議室131+132)【司会】後藤 知之氏(滋賀県立総合病院 腫瘍内科)【冒頭挨拶】武藤 学氏(京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学講座)【演者】山口 祐平氏(名古屋医療センター)上原 悠治氏(都立駒込病院 呼吸器内科) 岸 拓弥氏(国際医療福祉大学大学院医学研究科  循環器内科)【ディスカッサント】岸 拓弥氏(国際医療福祉大学大学院医学研究科  循環器内科)上原 悠治氏(都立駒込病院 呼吸器内科) 扇屋 大輔氏(東海大学医学部 内科学系 血液・腫瘍内科学)尾崎 由記範氏(がん研究会有明病院 乳腺内科)高見澤 重賢氏(NTT東日本関東病院 腫瘍内科)山口 祐平氏(名古屋医療センター) 学会はライブ配信のほか、3月1日(金)~29日(金)の期間にオンデマンド配信も行われる。

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ER陽性/HER2陽性乳がん、PR陽性vs.陰性で転帰の差は

 エストロゲン受容体(ER)陽性プロゲステロン受容体(PR)陽性HER2陽性(ER+/PR+/HER2+)乳がんとER+/PR-/HER2+乳がんは、異なる臨床病理学的特徴および生存転帰を示すことが示唆された。中国・Shaoxing Second HospitalのWu Ding氏らによるBreast Cancer誌オンライン版2024年1月17日号掲載の報告より。 本研究では、Shanghai Jiao Tong University Breast Cancer Data Baseと国立がん研究所のSEER(Surveillance、Epidemiology、and End Results)データベースを用いて分析。傾向スコア調整法により両サブタイプ間の患者特性のバランスが調整された。カプランマイヤー生存曲線により両サブタイプの無病生存期間(DFS)、乳がん特異的生存期間(BCSS)、全生存期間(OS)を推定したほか、多変量モデルを使用して閉経状態、病理学的分類(pN)、抗HER2療法および内分泌療法の有無についてサブグループ解析が行われた。 主な結果は以下のとおり。・ER+/PR+/HER2+乳がんは、とくに閉経後およびpN0の患者において、ER+/PR-/HER2+ 乳がんと比較して有意に良好なDFSおよびBCSSを示した。・抗HER2療法および内分泌療法後の生存転帰は両サブタイプで同様であった。・選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)治療を受けたER+/PR-/HER2+乳がん患者では、ER+/PR+/HER2+乳がん患者と比較して予後が有意に悪かった。 著者らは今回の結果を踏まえ、ホルモン受容体の状態と特定のモダリティについて考慮した個別の治療戦略を立てる必要があると結論付けている。

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抗真菌薬の過剰処方が薬剤耐性真菌感染症増加の一因に

 米国では、医師が皮膚症状を訴える患者に外用抗真菌薬を処方することが非常に多く、それが薬剤耐性真菌感染症の増加の一因となっている可能性のあることが、米疾病対策センター(CDC)のJeremy Gold氏らによる研究で示唆された。この研究結果は、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」1月11日号に掲載された。 抗真菌薬に耐性を示す白癬(カビの一種である皮膚糸状菌を原因菌とする感染症)は、新たに現れつつある非常に大きな脅威の一つである。例えば、南アジアでは近年、外用や経口の抗真菌薬が効かない白癬が大流行した。このような薬剤耐性白癬の症例は米国の11の州でも確認されており、患者には広範囲に及ぶ病変が現れ、診断が遅れる事態が報告されているという。 抗菌薬の乱用が薬剤耐性細菌の増加につながるように、真菌も抗真菌薬に曝露すればするほど、薬剤耐性真菌が自然に増えていく。CDCのチームは、世界中で報告されている薬剤耐性真菌感染症の増加は、外用の抗真菌薬の過剰処方が原因ではないかと考え、2021年のメディケアパートDのデータを用いて、外用抗真菌薬の処方状況を調べた。データには、抗真菌薬(ステロイド薬と抗真菌薬の配合薬も含める)の処方箋の数量や処方者などに関する情報が含まれていた。 その結果、2021年にメディケアパートD受益者に処方された外用抗真菌薬の件数は645万5,140件であることが明らかになった。最も多かったのは、ケトコナゾールの236万4,169件(36.6%)、次いでナイスタチンの187万1,368万件(29.0%)、クロトリマゾール・ベタメタゾンの94万5,838件(14.7%)が続いた。101万7,417人の処方者のうち、13万637人(12.8%)が外用抗真菌薬を処方していた。645万5,140件の処方箋の40.0%(257万9,045件)はプライマリケア医の処方によるものだったが、処方者1人当たりの処方件数は皮膚科医で最も多く(87.1件)、次いで、足病医(67.2件)、プライマリケア医(12.3件)の順だった。さらに、645万5,140件の処方箋の44.2%(285万1,394件)は、処方数が上位10%に当たる1万3,106人の処方者により処方されたものだった。 Gold氏らは、抗真菌薬処方にまつわる大きな問題は、ほとんどの医師が皮膚の状態を見ただけで診断しており、「確認診断検査」を行うことがほとんどない点だと指摘する。さらに研究グループは、ほとんどの外用抗真菌薬が市販されていることを指摘した上で、「この研究結果は、おそらくは外用抗真菌薬の過剰処方の一端を示しているに過ぎない」との見方を示している。外用抗真菌薬の中でも、特に、ステロイド薬と抗真菌薬を組み合わせたクロトリマゾール・ベタメタゾンの多用は、薬剤耐性白癬の出現の大きな要因であると考えられている。この薬は、鼡径部、臀部、脇の下など、皮膚が折り重なる部分に塗布すると、皮膚障害を引き起こす可能性がある上に、長期にわたって広範囲に使用すると、ホルモンバランスの異常を引き起こすこともあると、研究グループは説明している。 こうしたことを踏まえて研究グループは、「真菌による皮膚感染症が疑われる場合、医療従事者は慎重に抗真菌薬を処方すべきだ」と結論付けている。さらに、「過剰処方や薬剤耐性真菌感染症の危険性を減らすために、医師は外用抗真菌薬や抗真菌薬・ステロイド薬配合薬の正しい使用法について患者を教育すべきだ」と付言している。

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喫煙で男性型脱毛症リスク1.8倍、重症化も

 喫煙は、多くの場合、ニコチンを含むタバコを娯楽として摂取することを指し、男性型脱毛症(AGA)の発症および悪化の危険因子であると考えられている。その関連の程度を調べたメタアナリシスの結果が発表された。カナダ・Mediprobe ResearchのAditya K. Gupta氏らによる本研究の結果はJournal of cosmetic dermatology誌オンライン版2024 年1月4日号に掲載された。 研究者らは2023年8月4日、PubMedで「hair loss(脱毛)、alopecia(脱毛症)、bald(頭髪のない)、androgenetic alopecia(男性型脱毛症)」「tobacco(タバコ)、nicotine(ニコチン)、tobacco smoking(喫煙)」の用語で当てはまる研究を検索、その結果2003~21年に発表された8件の研究が同定された。全研究が観察研究で、症例対照または横断研究であり、対象は男性の現在喫煙者と過去に喫煙経験がある人だった。得られたデータから、男性AGAの発症と重症化(軽度:ステージI-IIIから重度:ステージIV-VII)における喫煙状態(喫煙vs.非喫煙)と喫煙強度(喫煙減少vs.喫煙増加)の影響についてメタ解析を行い、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・喫煙経験のある男性は喫煙経験のない男性に比べ、AGAを発症する率が有意に高かった(OR:1.82、95%CI:1.55~2.14)。・1日10本以上喫煙する男性は、1日10本未満の喫煙する男性に比べ、AGA発症する率が有意に高かった(OR:1.96、95%CI:1.17~3.29)。・AGA男性では、喫煙経験のある男性は喫煙経験のない男性に比べ、疾患進行のオッズが有意に高かった(OR:1.27、95%CI:1.01~1.60)。喫煙強度と疾患進行の間には有意な関連は認められなかった。 著者らは、「男性型脱毛症の患者には、喫煙が及ぼす悪影響について教育する必要があるだろう」としている。

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双極性障害患者における摂食障害の有病率

 摂食障害と双極性障害は症状が類似しており、摂食行動や感情制御に根付いた特定の類似点が認められる。摂食障害と双極性障害の併存に関する研究は増えているものの、両疾患の同時進行に関する科学的データは十分に体系化されていない。ロシア・V.M. Bekhterev National Medical Research Center for Psychiatry and NeurologyのYana V. Yakovleva氏らは、双極I型およびII型障害患者におけるさまざまなタイプの摂食障害の有病率について、性別および両疾患の同時進行の臨床的特徴を考慮したうえで、スコーピングレビューを実施した。Consortium Psychiatricum誌2023年7月10日号の報告。 スコーピングレビューのためのPRISMAガイドラインに従い分析を行った。研究の検索にはMEDLINEデータベースを用いた。双極性障害および摂食障害と診断された患者に焦点を当てた研究を分析に含めた。摂食障害および双極性障害の診断の検証には、DSM-IV、DSM-5またはICD-10を用いた。レビュー結果の要約には、記述的分析法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、41件の研究を含めた。・双極性障害患者における摂食障害の生涯有病率は2.2~31.1%、摂食障害患者における双極性障害の有病率は11.3~68.1%であった。・双極II型障害および女性において、摂食障害の有病率が高かった。・双極性障害患者における摂食障害の併存は、気分障害の早期発症、抑うつエピソードの増加、自殺企図、強迫症および不安症、依存症、各種代謝障害の併存率の増加と関連が認められた。 著者らは、「研究結果により違いがあるものの、摂食障害と双極性障害の併存率は非常に高いことが示唆された。双極性障害患者における摂食障害のスクリーニングまたはその逆のスクリーニングは、正確な診断や最も効果的な治療法を選択するうえで重要である」とし、「性別に応じた、さまざまな摂食障害と双極性障害との併存パターンについては、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。

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チョコレートを食べると脳機能が改善【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第251回

チョコレートを食べると脳機能が改善photoACより使用バレンタインデーが近づいてきました。コロナ禍になってから、飲み会とかこういう行事とか鳴りを潜めているように思います。私は、チョコレートなんてもう数年、誰からももらっていないです。いや、ひがんでいるわけではないです。さて、チョコレートの消費量とノーベル賞の相関関係が示された研究が2012年に発表され、話題になりました1)。しかしながら、いろいろなリミテーションがある研究だと指摘され、当時喧々囂々と議論されました。Sasaki A, et al. Cacao Polyphenol-Rich Dark Chocolate Intake Contributes to Efficient Brain Activity during Cognitive Tasks: A Randomized, Single-Blinded, Crossover, and Dose-Comparison fMRI Study. Nutrients. 2023 Dec 21;16(1):41.この研究は、機能的MRI(fMRI)を用いて、認知テスト中の脳機能改善に対するダークチョコレート摂取の効果を検討するという、珍しいランダム化単盲検クロスオーバー用量比較試験です。26人の健康な成人被験者が、低濃度(211.7mg)または高濃度(635mg)のカカオポリフェノール入りのダークチョコレート(25g)を摂取しました。いやー、美味しそう。摂取後25分、摂取後50分の2回、fMRIを用いて実行機能に関連するテスト中の脳活動を分析しました。チョコレート摂取と脳活動測定セッションの間に、左背外側前頭前皮質と左下頭頂小葉における有意な交互作用が観察され、ダークチョコレートを1回摂取することで、継続的かつ努力的な課題中の脳機能効率の向上に寄与することが示されました。これまでも、チョコレートと脳機能の関係はさまざまな研究で検証されています。今回はカカオポリフェノール入りのダークチョコレートでしたが、カカオフラバノール2)は血圧も低下させる作用があるとされています。こちらは、森永製菓がイチオシしている成分でもあります。1)Messerli FH. Chocolate consumption, cognitive function, and Nobel laureates. N Engl J Med. 2012 Oct 18;367(16):1562-1564.2)Tsukamoto H, et al. Flavanol-rich cocoa consumption enhances exercise-induced executive function improvements in humans. Nutrition. 2018 Feb;46:90-96.

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日本における統合失調症患者の死亡率

 統合失調症患者は、一般集団と比較して、死亡率が高いといわれている。しかし、日本における統合失調症患者の死亡率を調査した最近の研究はなかった。ドイツ・ミュンヘン工科大学の野村 信行氏らは、日本における統合失調症患者の超過死亡率と死亡率に対するリスク因子を評価するため、レトロスペクティブ研究を実施した。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2024年1月20日号の報告。 対象は、2013年1月~2017年12月に山梨県立北病院で統合失調症または統合失調感情障害と診断された患者。統合失調症患者と一般集団の死亡率の比較には、標準化死亡率(SMR)を用いた。死亡率に対するリスク因子を推定するため、ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者1,699例(男性:893例、女性:806例)のうち、研究期間中に死亡が認められた患者は104例(男性:55例、女性:49例)であった。・すべての原因によるSMRは2.18(95%信頼区間[CI]:1.76~2.60)、自然死のSMRは2.06(1.62~2.50)、不自然死のSMRは5.07(2.85~7.30)であった。・死亡リスクと関連が認められた因子は、男性(調整オッズ比[aOR]:2.24、95%CI:1.10~4.56)、年齢(aOR:1.12、1.09~1.16)、バルビツール酸の使用(aOR:8.17、2.07~32.32)であった。 著者らは、「日本における統合失調症患者の死亡率は、依然として高いままであり、統合失調症患者の死亡率の傾向を評価するためには、さらなる研究が求められる」としている。

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母乳最低限の超早産児の神経発達、ドナーミルクvs.早産児用粉ミルク/JAMA

 最小限の母乳しか与えられなかった超早産児は、ドナーミルクまたは早産児用粉ミルクのいずれを与えられても、修正月齢22~26ヵ月時点の神経発達アウトカムに差異は認められなかった。米国・アイオワ大学のTarah T. Colaizy氏らが、Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development Neonatal Research Networkに参加している米国の大学医療センター15施設で実施した無作為化二重盲検臨床試験「MILK試験」の結果を報告した。出生後入院中の超早産児の母乳育児は、早産児用粉ミルクと比較して神経発達の良好なアウトカムと関連しているが、母乳をまったく与えていない、または最小限しか与えていない超早産児において、ドナーミルクが早産児用粉ミルクと同様の神経発達上の利点をもたらすかは不明であった。JAMA誌オンライン版2024年1月30日号掲載の報告。修正月齢22~26ヵ月でのBSID認知スコアを比較 研究グループは、2012年9月7日~2019年3月13日に、生後7日未満で参加施設に入院した在胎週数29週0日未満または出生時体重1,000g未満の新生児を登録した。主な登録基準は、(1)出産した母親が授乳を開始していない、(2)授乳は開始されたが出産後21日以前に母親が搾乳を中止、(3)出生後7~21日の間、母乳供給量が最小限(5日間の平均母乳量が3オンス/日以下)であった。 登録した新生児をドナーミルク群または早産児用粉ミルク群に無作為に割り付け、無作為化から生後120日時点か死亡または退院のいずれか早い日まで与えた。母乳の基準が満たされていれば、生後21日目までいつでも無作為化できるとした。 主要アウトカムは、修正月齢22~26ヵ月で測定されたBayley乳幼児発達検査(BSID)の認知スコアとした。無作為化から修正月齢22~26ヵ月の間に死亡した乳児には、54ポイント(スコア範囲:54~155、≧85は神経発達の遅れがないことを示す)を割り当てた。副次アウトカムは、BSIDの言語および運動スコア、院内での成長、壊死性腸炎、死亡などを含む24項目であった。修正月齢22~26ヵ月の追跡調査終了日は2021年11月15日であった。ドナーミルク群と早産児用粉ミルク群で神経発達アウトカムに有意差なし 適格新生児1,965例のうち、483例が無作為化された(ドナーミルク群239例、早産児用粉ミルク群244例)。在胎週数中央値は26週(四分位範囲[IQR]:25~27)、出生時体重中央値は840g(IQR:676~986g)、女児52%であった。出産した母親の人種は、自己申告で黒人52%(247/478例)、白人43%(206/478例)、その他5%(25/478例)であった。 追跡調査前に死亡した乳児は54例だった。生存乳児の88%(376/429例)は、修正月齢22~26ヵ月で評価された。 調整平均BSID認知スコアは、ドナーミルク群80.7(SD 17.4)、早産児用粉ミルク群81.1(SD 16.7)、補正後平均群間差は-0.77(95%信頼区間[CI]:-3.93~2.39)で、両群間に有意差はなかった。補正後平均BSID言語スコアおよび運動スコアにも有意差は認められなかった。 死亡率(追跡調査前の死亡)は、ドナーミルク群13%(29/231例)、早産児用粉ミルク群11%(25/233例)であった(補正後群間リスク差:-1%、95%CI:-4~2)。壊死性腸炎は、ドナーミルク群では4.2%(10/239例)に発生したが、早産児用粉ミルク群では9.0%(22/244例)に発生した(-5%、-9~-2%)。 体重増加は、ドナーミルク群22.3g/kg/日(95%CI:21.3~23.3)、早産児用粉ミルク群24.6g/kg/日(23.6~25.6)で、ドナーミルク群のほうが緩徐であった。

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第21回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2024

 日本臨床腫瘍学会は2024年1月31日にプレスセミナーを開催し、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(2024年2月22日~24日)の注目演題などを紹介した。 今回は、国・立場・専門分野・職種・治療手段などのあらゆる障壁をなくし、世界を1つにして皆で語り、議論をして、その先に続く未来を切り拓いていきたいという願いを込め、「Break the Borders and Beyond ~for our patients~」というテーマが設定された。演題数は1,258となり、そのうち海外演題数は511と過去最多になる予定である。プレジデンシャルシンポジウムなどの注目演題 能澤 一樹氏(愛知県がんセンター ゲノム医療センターがんゲノム医療室・乳腺科部 医長)が、本会で企画されているプレジデンシャルシンポジウムを紹介した。プレジデンシャルシンポジウムは8セッション、シンポジウムは30セッション企画されている。プレジデンシャルシンポジウムは以下のとおり。【プレジデンシャルシンポジウム】会長企画シンポジウム1:Real World Data(RWD)活用に向けた基盤整備2月22日(木)9:00~10:20会長企画シンポジウム2:ICIで変わる、周術期治療2月22日(木)10:30~11:30会長企画シンポジウム3:腫瘍内科医に知って欲しい外科治療の進歩2月22日(木)15:30~17:00会長企画シンポジウム4:多学際領域との協働で奏でる臨床腫瘍学の未来2月23日(金)8:20~9:50会長企画シンポジウム5:超高齢社会のがん医療、日本はどうすべきか2月23日(金)9:50~11:20会長企画シンポジウム6:臨床開発や日常診療のためのReal World Data活用を考える2月24日(土)8:20~9:50会長企画シンポジウム7:がん診療は集約化か均てん化か2月24日(土)13:45~15:15会長企画シンポジウム8:新規薬剤開発における新しいドラッグロス2月24日(土)9:50~11:50 また、岩田 広治氏(愛知県がんセンター副院長 兼 乳腺科部長)は、プレジデンシャルセッションが充実していることを強調した。プレジデンシャルセッションで発表されるデータは、過去に国際学会で発表されたものではなく、世界で初めて発表されるデータとなっている。紹介された演題は以下のとおり。【プレジデンシャルセッション】・肺がんグローバル試験の日本人サブセット解析:1演題・肺がんグローバル試験のアジア人サブセット解析:1演題・肺がんグローバル試験の全生存期間アップデート:1演題・消化器がん大規模コホート研究からの新規データ(SCRUM-Japan MONSTAR SCREEN2、GALAXY Trial):3演題・血液がんの新規薬剤第I相試験:1演題・乳がん新規抗体薬物複合体のグローバル試験のアジア人サブセット解析:1演題・乳がん新規グローバル試験のバイオマーカー解析:1演題・日本での新規抗体薬物複合体の第I相試験データ:1演題・消化器がんの日本での第III相試験のバイオマーカー解析:1演題・消化器がんのグローバル試験の日本人サブセット解析:1演題・肝胆膵領域でのJCOG試験の追加解析結果:1演題新規薬剤のドラッグロスへの取り組み 室 圭氏(愛知県がんセンター 薬物療法部 部長)がドラッグロスについて解説した。ドラッグロスは、欧米にて承認されている薬剤が日本では開発されず、使用できないという問題であり、ドラッグロスに該当する抗がん剤は2016年時点で21剤であったのに対し、2020年時点では44剤に増加している。この原因として、海外新興企業が開発する薬剤の増加、臨床試験に日本が組み入れられないことなどが挙げられる。 そこで、わが国が直面する喫緊の問題の解決に向けて、以下のシンポジウムが企画されている。会長企画シンポジウム8:新規薬剤開発における新しいドラッグロス2月24日(土)9:50~11:50リアルワールドデータの活用に向けた諸問題 武藤 学氏(京都大学大学院医学研究科 腫瘍薬物治療学講座 教授)がリアルワールドデータの活用法と現状の課題について紹介した。国際的には、リアルワールドデータを用いて薬剤の承認申請を行うことが検討されており、実際に活用され始めている。日本でもさまざまなデータベースが利用できるようになっているが、アウトカムのデータが存在しない、デジタル化が遅れている、電子カルテメーカーや施設によって情報のコードやデータ構造が異なる、医療者によって記載方法が異なるナラティブデータの取り扱い方が定まっていないなど、課題が山積している。 そこで、リアルワールドデータの活用に向けて、以下のシンポジウムが企画されている。会長企画シンポジウム1:Real World Data(RWD)活用に向けた基盤整備2月22日(木)9:00~10:20会長企画シンポジウム6:臨床開発や日常診療のためのReal World Data活用を考える2月24日(土)8:20~9:50

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乾癬の患者報告アウトカム、PSSDスコアの有意な改善とは?

 カナダ・Probity Medical ResearchのKim A. Papp氏らは、乾癬患者を対象とした第III相試験で用いられた患者報告に基づくPsoriasis Symptoms and Signs Diary(PSSD)スコアの変化を、Patient Global Impression of Change(PGI-C)スコアおよびPatient Global Impression of Severity(PGI-S)スコアに照らし合わせ、患者にとって臨床的に意義のある有意な改善を示すPSSDスコアの変化量を検討した。解析の結果、PSSDスコアのベースラインからの改善が15ポイント以上の場合、PGI-Cスコアに意義のある変化が示された。乾癬の臨床試験では、PSSDスコアのベースラインからの変化が、患者報告アウトカムとして広く用いられているが、臨床的に意義のあるスコア変化の閾値が、臨床試験の設定では確立されていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年12月20日号掲載の報告。 研究グループは、Program to Evaluate the Efficacy and Safety of Deucravacitinib, a Selective TYK2 Inhibitor(POETYK), PSO-1(POETYK PSO-1)試験のデータを用いて、PSSDの臨床的に意義のあるスコア変化の閾値を評価した。 POETYK PSO-1試験は、成人の中等症~重症の乾癬患者を対象に、選択的TYK2阻害薬デュークラバシチニブの有効性と安全性を評価した国際共同第III相多施設共同無作為化二重盲検試験。本試験は、2018年8月7日~2020年9月2日に行われた。対象患者には、デュークラバシチニブ6mg(1日1回)またはプラセボ、アプレミラスト30mg(1日2回)のいずれかを投与し、追跡調査した。 今回の解析では、PSSDを毎日報告していた成人患者を対象とし、ベースラインから16週時までのPSSDスコアの平均変化量を、PGI-CおよびPGI-Sの改善のカテゴリーに照らし合わせて、臨床的に意義のあるスコア変化の閾値を導出した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、666例が含まれた。平均年齢は46.1(標準偏差13.4)歳、男性が453例(68.0%)であった。・ベースラインでPGI-SとPSSDを報告していたのは601例であった。16週時点でPGI-SとPSSDを報告していたのは481例であり、PGI-CとPSSDを報告していたのは486例であった。・609例を対象とした解析により、以下の3つの閾値が特定された。・PSSDスコアのベースラインから16週までの変化が15ポイント以上の場合、PGI-Cの臨床的に意義のある改善のカテゴリーに該当することが示された。・PSSDスコアの変化が25ポイント以上の場合、PGI-SおよびPGI-Cの両方が臨床的に意義のある改善のカテゴリーに該当することが示された。・PSSDスコアの変化が30ポイント以上の場合、乾癬の症状が大きく改善(PGI-Cによる評価が非常に大きく改善/大きく改善)した患者が特定された。

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乳房温存術後の局所再発率、70遺伝子シグネチャーで予測可能か(MINDACT)/JCO

 乳房温存手術を受けた早期乳がん患者の局所再発リスクは、70遺伝子シグネチャー(MammaPrint)によるリスクと独立して関連しないことが、EORTC 10041/BIG 03-04 MINDACT試験の探索的サブ解析で示された。また、術後8年間の局所再発率は3.2%と推定された。オランダ・Netherlands Cancer Institute-Antoni van Leeuwenhoek HospitalのSena Alaeikhanehshir氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年1月19日号で報告。 本解析は、EORTC 10041/BIG 03-04 MINDACT試験において、乳房温存手術を受け、臨床的リスクおよび70遺伝子シグネチャーによるリスクが判明している女性を評価した。主要評価項目は累積発生率で推定した8年の局所再発率だった。 主な結果は以下のとおり。・登録患者6,693例中5,470例(81.7%)が乳房温存手術を受け、そのうち98%が放射線治療を受けていた。・8年間で189例に局所再発が発生し、8年累積発生率は3.2%(95%信頼区間[CI]:2.7~3.7)であった。・70遺伝子シグネチャーによる低リスク患者における8年累積発生率は2.7%(95%CI:2.1~3.3)であった。・単変量解析では、化学療法で調整後、12変数のうち70遺伝子シグネチャーを含む5変数が局所再発と関連した。多変量解析では、術後内分泌療法、腫瘍径、悪性度と関連していた。 著者らは「この探索的解析では、局所再発イベント数が少なかったためか、70遺伝子シグネチャーは独立して局所再発を予測するものではなく、現在のところ、局所再発に関する臨床的意思決定には使用できない」とした。

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強迫症患者に多い/少ない死因は?/BMJ

 強迫症(OCD)患者はOCD非罹患者と比較して、さまざまな自然死因による死亡のリスクが上昇しており、その多くは非伝染性で予防可能なものである一方で、自殺や事故といった外因死の寄与が大きく、新生物による死亡リスクはむしろ低いことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のLorena Fernandez de la Cruz氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月17日号で報告された。スウェーデンの2つのコホートで、罹患者と非罹患者を比較 研究グループは、スウェーデンのOCD患者における全死因死亡と原因別死亡のリスクの評価を目的に、2つのコホートでOCD罹患者と非罹患者の比較を行った(Swedish Research Council for Healthなどの助成を受けた)。 住民ベースのコホートには、1対10の割合で、性別、出生年、居住地でマッチさせたOCD患者6万1,378人と非罹患者61万3,780人を含めた。また、同胞コホートは、OCD患者3万4,085人とその非罹患同胞4万7,874人であった。これらのコホートを、1973年1月1日~2020年12月31日に、中央値8.1年間追跡した。全死因、自然死因、非自然死因による死亡ともに高リスク 住民ベースのコホートでは、研究期間中にOCD患者のうち4,787人(粗死亡率8.1人/1,000人年)と非罹患者のうち3万619人(粗死亡率5.1人/1,000人年)が死亡した。 出生年、性別、居住地、移住者か否か(スウェーデン生まれか外国生まれか)、社会人口統計学的変数(最新の学歴、婚姻状況、世帯収入)で補正した層別化Cox比例ハザードモデルによる解析では、非罹患者と比較してOCD患者は全死因死亡(ハザード比[HR]:1.82、95%信頼区間[CI]:1.76~1.89)、自然死因による死亡(1.31、1.27~1.37)、非自然死因による死亡(3.30、3.05~3.57)のリスクが高かった。同胞コホートでも同様の結果 自然死因のうち、内分泌・栄養・代謝疾患(HR:1.54、95%CI:1.28~1.86)、精神・行動障害(1.63、1.42~1.87)、神経系(1.20、1.01~1.43)、循環器系(1.36、1.28~1.43)、呼吸器系(1.69、1.51~1.90)、消化器系(1.20、1.01~1.43)、泌尿生殖器系(1.52、1.15~2.02)の疾患などによる死亡リスクが、OCD患者で高かった。 一方、新生物による死亡リスクは、非罹患者に比べOCD患者で低かった(HR:0.87、95%CI:0.80~0.94)。また、非自然死因死亡では、OCD患者は自殺(4.90、4.40~5.46)のリスクが最も高く、次いで事故(1.92、1.68~2.19)の順であった。これらの結果は、精神疾患の併存や家族関連の交絡因子で補正しても強固に維持されていた。 同胞コホートの解析では、全死因死亡(HR:1.85、95%CI:1.67~2.03)、自然死因死亡(1.51、1.35~1.68)、非自然死因死亡(3.10、2.52~3.80)のリスクは、いずれもOCD患者で高く、住民ベースコホートの結果と類似していた。 著者は、「OCD患者における致死的なアウトカムのリスクを低減するには、より優れたサーベイランスや予防策、早期介入戦略を実施する必要がある」としている。

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第200回 非オピオイド鎮痛薬が米国承認申請へ

まずは急性痛第III相試験が成功本連載で2年ほど前に取り上げた依存やその他のオピオイドにつきものの副作用の心配がない経口の非オピオイド鎮痛薬が2つの第III相試験で術後痛を有意に緩和し、いよいよ米国FDAの承認申請に進みます1)。試験の1つには腹部の脂肪を除去する腹壁形成手術患者1,118例、もう1つには外反母趾の瘤(バニオン)を取る手術患者1,073例が参加しました。それら2試験のどちらでも米国のバイオテック企業Vertex Pharmaceuticalsの神経ナトリウムチャネル阻害薬VX-548の時間加重合計(SPID48)がプラセボを有意に上回りました。SPID48は点数が大きいほど48時間に痛みがより鎮まったことを意味し、腹壁形成手術患者と外反母趾手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はプラセボ群をそれぞれ有意に48点と29点上回りました。しかしながら、定番のオピオイド薬との比較ではVX-548は勝てませんでした。腹壁形成手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はオピオイド薬(ヒドロコドンとアセトアミノフェンの組み合わせ)より高めでしたが勝ったとはいえず、外反母趾手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はオピオイド薬未満でした。オピオイド薬との比較は残念な結果となりましたが、第一の目標であるプラセボとの比較で勝利したことを受けてVX-548はいよいよ今年中頃までに米国FDAに承認申請されます。手術や手術以外も含む多様な患者へのVX-548の効果や安全性を調べた別の第III相試験の結果も踏まえ、急な痛みの治療薬として承認申請される予定です。対照群なしのその第III相試験ではVX-548使用患者の83%が好転(good, very good, or excellent)したと自己評価しました。慢性痛の用途も目指すVX-548は慢性痛への効果の検討も進んでおり、去年の12月には糖尿病患者の神経痛(糖尿病神経障害)への効果を調べた第II相試験での有望な結果が報告されています2)。点数が大きいほどより痛いことを意味する下限0で上限10の数値的疼痛評価尺度(Numeric Pain Rating Scale:NPRS)が一日一回のVX-548投与で有意に2点強下がり、糖尿病神経障害の治療薬プレガバリンの1日3回投与と同程度の効果がありました。プレガバリンと効果が同程度でもVX-548の1日1回投与は強みになるかもしれません。Vertex社はFDAとの協議の後に糖尿病神経障害へのVX-548の大詰め試験を始める予定です。糖尿病神経障害は末梢神経痛の2割を占めます。Vertex社はさらに患者数が多い腰仙部神経根障害への同剤の第II相試験も昨年の12月に開始しています3)。腰仙部神経根障害は末梢神経痛の実に4割を占めます。装い新たなオピオイド薬も健闘オピオイド薬はとくに慎重な扱いが必要とはいえ、VX-548が勝てなかったことも示すように頼りになる薬として引き続き出番は多そうです。それゆえより安全に使えるようにする取り組みが脈々と続いています。米国のサンディエゴを拠点とするEnsysce Biosciences社が開発している半減期が長いオピオイド薬PF614はその1つで、第II相試験後のFDAとの協議結果を踏まえたうえで今年後半に第III相試験が始まります4)。VX-548の試験でも使われたhydrocodoneとアセトアミノフェンの合剤の製品Vicodinは4~6時間ごとの服用が必要ですが5)、PF614は半減期が12時間と長いので1日2回の服用で事足ります。また、乱用されやすさを確認する試験でPF614はオキシコドンに比べて好まれず、再び使いたいという欲求の程がより低くて済むことが確認されています。米国のオピオイド乱用の惨禍は深刻で、2021年のオーバードーズによる死者10万例(10万6,699例)の75%が処方用オピオイドを含む何らかのオピオイドに関連するものでした6)。ゆえにオピオイドの代わりとして使いうるVX-548やPF614のようなより安全な新しい処方薬の役割は大きいに違いなく、同国のオピオイド惨禍を落ち着けることに役立つでしょう。参考1)Vertex Announces Positive Results From the VX-548 Phase 3 Program for the Treatment of Moderate-to-Severe Acute Pain / BUSINESS WIRE 2)Vertex Announces Positive Results From Phase 2 Study of VX-548 for the Treatment of Painful Diabetic Peripheral Neuropathy / BUSINESS WIRE3)Evaluation of Efficacy and Safety of VX-548 for Painful Lumbosacral Radiculopathy (PLSR)4)Ensysce Biosciences Announces Positive End of Phase 2 Meeting with FDA for PF614 to Treat Severe Pain / ACCESSWIRE5)Vicodin / FDA6)Drug Overdose Death Rates / NIH

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双極性障害に対するリチウムの国際的な使用傾向と臨床的相関

 双極性障害治療において、リチウムによる治療は依然として重要な治療選択肢の1つである。シンガポール・Nanyang Technological UniversityのYao Kang Shuy氏らは、国際的なリチウム使用の薬理学的疫学的パターンを経時的に特徴づけ、双極性障害に関連する臨床的相関を解明するため、スコーピングレビューを実施した。Brain Sciences誌2024年1月20日号の報告。 Arksey and O'Malley(2005)による方法論的枠組みを用いて、スコーピングレビューを実施した。2023年12月までに報告された双極性障害に対するリチウム使用と臨床的相関を調査した研究を、各種データベースより収集した。 主な結果は以下のとおり。・1967~2023年に報告された55件の研究をレビューに含めた(北米:24件[43.6%]、欧州:20件[36.4%]、アジア:11件[20.0%])。・全体でのリチウム使用率は、3.3~84%(中央値:33.4%[カットオフ前]、30.6%[カットオフ後])の範囲であった。・時間の経過とともに、北米、欧州のリチウム使用が減少、アジアでは緩やかな増加が認められた。【北米】2010年以前:27.7%→2010年以降:17.1%【欧州】2003年以前:36.7%→2003年以降:35.7%【アジア】2003年以前:25.0%→2003年以降:26.2%・リチウム使用は、特定の人口統計学的因子(たとえば、年齢、男性)や臨床的因子(たとえば、自殺リスクの低下)と関連が認められた。 著者らは「リチウム使用は、欧米で減少している傾向が確認された。特定の臨床的相関は、リチウム使用の継続に関する臨床上の意思決定をサポートするうえで有用であろう」とまとめている。

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妊娠中期のEPA/DHA摂取量が少ないと低出生体重児の割合が高い

 日本人女性では、妊娠中期の食事やサプリメントから摂取するエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)といったn-3系脂肪酸の摂取量が少ないと、低出生体重(low birth weight;LBW)児の割合が高いという研究結果を、山形大学大学院看護学専攻の藤田愛氏、吉村桃果氏らの研究グループが「Nutrients」に11月18日発表した。妊娠中期までのn-3系脂肪酸の摂取不足は、LBWの危険因子の一つだとしている。 これまでの研究から、妊娠中の母親の栄養不足はLBWの危険因子であり、中でも食事中のEPAやDHA不足はLBWリスクの上昇と関連することが報告されている。ただし、これまでの解析では、EPA、DHAの摂取量は食事からのものに限られており、サプリメントによる摂取量は考慮されていなかった。そこで、研究グループは、The Japan Pregnancy Eating and Activity Cohort Study(J-PEACH Study、代表:春名めぐみ氏)の一環として、妊娠中期(妊娠14~27週)におけるEPA/DHAの摂取量とLBWとの関連を検討する前向きコホート研究を実施した。 J-PEACH Studyは、妊娠中の食事摂取や身体活動などのライフスタイルと、妊娠中および産後1年間の健康状態との関連を明らかにすることを目的とした多施設共同の前向きコホート研究だ。今回は、2020年2月から10月までに、J-PEACH Studyに参加した504人の妊婦から収集した妊娠中期(妊娠14~27週)と分娩時のデータを用いて分析した。 研究では、まず、参加者に2種類の質問票に回答してもらった。一つは、簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いて58種類の食品や飲料の摂取量を尋ね、EPA/DHAの摂取量を算出した。もう一つは、自記式質問票を用いて、過去1カ月以内のDHAおよび/またはEPAサプリメントの摂取頻度(毎日、週に5~6回、3~4回、1~2回、時々、まったく摂取しない)を尋ねた。さらに、医療記録から、分娩時のアウトカムに関する情報を得た。参加者を、食事とサプリメントからのEPA/DHA総摂取量に基づき、低摂取群(172.3mg未満)、中摂取群(172.3mg以上374.9mg未満)、高摂取群(374.9mg以上)の3つに分けた上で、EPA/DHA摂取量とLBWとの関連を分析した。 分娩時の母親の平均年齢は34.2歳、妊娠中の体重増加は平均9.9kg、妊娠週数は平均38.9週だった。生まれた児は男児が47.0%、平均出生体重は3068.6gで、33人(うち男児8人)はLBW(2500g未満)だった。解析の結果、妊娠中期のEPA/DAH総摂取量が低い群ではLBW児の割合が高かった(P=0.04)。LBW児の割合には、男児、女児ともに有意な傾向は認められなかった。 以上の結果を踏まえ、研究グループは「妊娠中期までにn-3系脂肪酸の摂取量が少ない妊婦では、LBW児の割合が高くなる可能性がある。妊娠後期に十分量のEPAとDHAを胎児に移行するためにも、妊娠中期のうちにこれらを十分に摂取し、蓄積しておくことが重要ではないか」と強調。「そのためには、少なくとも妊娠中期までには食習慣を改善し、EPAやDHAなどの必要な栄養素を自ら摂取できるようにするため、妊婦一人ひとりの生活習慣や考え方に合わせた栄養指導を行うことが必要だ」と述べている。

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何はさておき記述統計 その1【「実践的」臨床研究入門】第40回

いきなり!多変量解析?臨床研究における統計解析というと、みなさんはいきなり多変量解析を行ったり、臨床研究といえば多変量解析というようなイメージを持っていないでしょうか。重回帰分析、ロジスティック回帰分析、Cox回帰分析などの多変量解析のさまざまな手法を用いたことがある方や、学会などでこれらの統計解析手法を聞いたこと、論文で目にしたことがある方は多いでしょう。しかし、統計解析手法を正しく選択するためには、変数やアウトカム指標の型をよく知ることが必要となります。また、いきなり多変量解析に飛びつく前に、まずは変数やアウトカム指標の型を意識して正しく記述すること(記述統計)が重要です。今回からは、具体的な統計解析手法について、筆者らが行い英文論文化された臨床研究の実例などを引用して解説します。また、架空の臨床シナリオを元に立案したClinical Question(CQ)とResearch Question(RQ)に基づいた仮想データ・セットを用いて、統計解析の実際についても実践的に説明したいと思います。まずはここで、これまでブラッシュアップしてきたわれわれのRQの研究デザイン、セッティング、およびPECOについて整理します。CQ:食事療法を遵守すると非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうかD(研究デザイン):(後ろ向き)コホート研究S(セッティング):単施設外来P(対象):慢性腎臓病(CKD)患者組み入れ基準:診療ガイドライン1)で定義されるCKD患者除外基準:ネフローゼ症候群、透析導入(または腎移植)された患者E(曝露要因):推定たんぱく質摂取量 0.5g/kg標準体重/日未満C(比較対照):推定たんぱく質摂取量 0.5g/kg標準体重/日以上*外来受診ごとに行った連続3回の24時間蓄尿検体を用いてMaroniの式より算出O(アウトカム):1)末期腎不全(慢性透析療法への導入もしくは先行的腎移植)*打ち切り(末期腎不全発症前の死亡、転院、研究参加同意撤回などによる研究からの離脱)2)糸球体濾過量(GFR)低下速度われわれのRQのプライマリアウトカムは末期腎不全であり、アウトカム指標はその発生率となります。発生率は下記の計算式で求められるのでした(連載第37回参照)。発生率=一定の観察期間内のアウトカム発生数÷at risk集団の観察期間の合計実際の臨床研究論文では、発生率は人年法という手法を用いて、1,000人を1年間観察すると(1,000人年)何件アウトカム(イベント)が発生したか、という形式で記述されることが多いです。以下に、筆者らが2023年に出版した臨床研究論文2)の実際の記述を示します。CKD患者において血清鉄代謝マーカーの1つであるトランスフェリン飽和度(TSAT)レベルと心血管疾患(CVD)およびうっ血性心不全(CHF)の発生リスクの関連を検討した論文です。Resultsの”Incidence of outcome measures"という小見出しで以下のように記載しました。"Supplementary Fig. S1 shows the incidence rates of CVD and CHF events based on serum TSAT levels. The overall incidence rates of CVD and CHF in the analysed participants were 26.7 and 12.0 events/1000 person-year, respectively. Participants with TSAT 40% (17.2 and 6.2 events/1000 person-year, respectively)."「補足図S1は、血清TSAT値に基づくCVDおよびCHFイベントの発生率を示している。全解析対象者におけるCVDおよびCHFの発生率は、それぞれ26.7および12.0イベント/1,000人年であった。TSATが20%未満の参加者でCVDおよびCHFの発生率が最も高かった(それぞれ33.9と16.5イベント/1,000人年)。一方、CVDとCHFの発症率はTSATが40%以上の患者で最も低かった(それぞれ17.2および6.2イベント/1,000人年)。(筆者による意訳)」この論文記載のポイントは、血清TSAT値20%未満(診療ガイドライン3)で鉄補充療法開始が推奨される基準値)のCKD患者において、CVDおよびCHFの発症率が最も高い、という記述統計の結果がまず示されたということです。次回からは仮想データ・セットを用いて、具体的な統計解析方法についても解説をしていきます。1)日本腎臓学会編集. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023. 東京医学社;2023.2)Hasegawa T, et al. Nephrol Dial Transplant. 2023;38:2713-2722.3)日本透析医学会編集.2015 年版 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン.

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肩関節脱臼のリハビリテーション、理学療法は有効か?/BMJ

 外傷性肩関節前方脱臼の急性期リハビリテーションにおいて、自己管理を支援する助言のみを受けた患者と比較して、助言に加えて個々の患者の病態に合わせて調整した理学療法を行っても、6ヵ月後の肩関節機能は改善せず、合併症プロファイルは両群で同程度であることが、英国・ブリストル大学のRebecca S. Kearney氏らが実施した「ARTISAN試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2024年1月17日号で報告された。英国41施設の無作為化対照比較試験 ARTISAN試験は、英国の国民保健サービス(NHS)トラストが運営する41施設で実施した実践的な無作為化対照比較試験であり、2018年11月~2022年3月に参加者を募集した(英国国立衛生研究所[NIHR]の助成を受けた)。 X線所見で初発の外傷性肩関節前方脱臼と確定し、非手術的に管理されている成人患者482例(平均年齢44.9[SD 19.6]歳、女性34%)を登録した。両肩脱臼や神経血管合併症がみられる患者、外科的治療が考慮されている患者は除外した。 全患者で、負傷した腕にスリングを装着し、自己管理のための助言(1回)を行った。その後、この助言以外の介入は行わないが、回復しない場合に自己申告で理学療法を選択するための連絡先の提供を受ける群(助言単独群、240例)、または追加介入として個々の患者の病態に合わせて調整した理学療法(1回最大30分、最長4ヵ月)を受ける群(助言+理学療法群、242例)に、無作為に割り付けた。  主要アウトカムは、割り付け日から6ヵ月後のオックスフォード肩関節不安定性スコア(Oxford shoulder instability score)(0~48点、点数が高いほど機能が良好)とした。6週、3ヵ月の時点でも有意差はない 354例(73%)がオックスフォード肩関節不安定性スコアの評価を完了した(助言単独群180例、助言+理学療法群174例)。合計96人の理学療法士が介入を行った。 6ヵ月の時点でのITT集団におけるオックスフォード肩関節不安定性スコアの平均値は、助言単独群が36.2(SD 10.7)点、助言+理学療法群は38.4(SD 9.2)点であり、両群間に有意な差を認めなかった(補正後群間差:1.5点、95%信頼区間[CI]:-0.3~3.5、p=0.11)。 6週(助言単独群23.3[SD 10.4]点vs.助言+理学療法群24.4[SD 9.9]点、補正後群間差:0.7点、95%CI:-1.0~2.4、p=0.44)および3ヵ月(30.0[SD 11.4]点vs.32.2[SD 10.4]点、1.6点、-0.5~3.6、p=0.13)の時点でも、オックスフォード肩関節不安定性スコアに関して両群間に有意差はなかった。QuickDASH、EQ-5D-5Lにも差はない 6ヵ月時のQuickDASH(disabilities of the arm, shoulder and hand[DASH]の短縮版、0~100点、点数が高いほど機能障害が重度)(助言単独群14.4[SD 17.5]点vs.助言+理学療法群12.7[SD 16.9]点、補正後群間差:0.8点、95%CI:-4.0~2.5、p=0.65)および健康関連QOL(EQ-5D-5L、-0.594~1点、点数が高いほど健康状態が良好)(0.797[SD 0.217]点vs.0.815[SD 0.183]点、0.010点、-0.026~0.047、p=0.59)も、両群間に差はみられなかった。 事前に予測した合併症のプロファイルは、以下のとおり両群間で類似しており、肩腱板断裂(助言単独群9% vs.助言+理学療法群9%、p=0.87)、圧迫骨折(3% vs.2%、p=0.26)、肩関節再脱臼(3% vs.1%、p=0.22)、凍結肩(五十肩)(1% vs.3%、p=0.34)、神経損傷(<1% vs.0%、p=1.00)の発生率は、いずれも有意差を認めなかった。 著者は、「個別に調整された理学療法プログラムは有効ではないと知ることで、臨床医と患者は、手術を行わないリハビリテーションの最良のアプローチについて、エビデンスに基づいた話し合いを行うことができるだろう。今後は、自己管理戦略の最適化に向けた研究が求められる」としている。

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中年期のタンパク質摂取が多いほど、健康寿命が延びる

 世界中で高齢化が進む中、健康寿命を延ばすことが求められており、栄養はその中の重要な要素である。中でもタンパク質は身体の健康維持に大きな役割を果たしているが、中年期にタンパク質を多く摂取した人ほど、疾病なく健康的に加齢する可能性があることが新たな研究でわかった。米国・タフツ大学のAndres V. Ardisson Korat氏らによる本研究の結果はThe American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2024年1月17日号に掲載された。 研究者らは、Nurses' Health Study(NHS)コホートの女性参加者を対象とし、登録時の年齢が30~55歳の12万1,700人に対し、ベースライン時およびその後2年ごとに追跡調査を実施した。初回調査の回答に不備がなく、ベースライン時に該当疾患のない4万8,762人が対象となった。 調査票から総タンパク質、動物性タンパク質、乳製品タンパク質(動物性タンパク質のサブセット)、植物性タンパク質の摂取量を調べた。「健康的な加齢」は、11の主要な慢性疾患がなく、精神状態が良好で、認知機能または身体機能のいずれにも障害がないことと定義した。ライフスタイル、人口統計学、健康状態を調整した多変量ロジスティック回帰を用いて、健康的な加齢に関連するタンパク質摂取量のオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の平均(SD)年齢は48.6(6.3)歳、38.6%がBMI値25以上、22.9%が現在喫煙者、88.2%が既婚者であった。・総タンパク質摂取量の平均値(エネルギー百分率)は18.3%であり、内訳は動物性タンパク質13.3%(うち乳製品タンパク質3.6%)、植物性タンパク質4.9%であった。・3,721/4万8,762人(7.6%)が健康的な加齢の定義に合致した。タンパク質の摂取は、健康的な加齢のORと有意に関連していた。エネルギー3%増加あたりの健康的な加齢のORは、総タンパク質1.05(95%CI:1.01~1.10)、動物性タンパク質1.07(95%CI:1.02~1.11)、乳製品タンパク質1.14(95%CI:1.06~1.23)、植物性タンパク質1.38(95%CI:1.24~1.54)であった。・植物性タンパク質の摂取は、身体機能の制限がないことや精神状態が良好であることのOR上昇とも関連していた。動物性または乳製品タンパク質、炭水化物、または脂肪を植物性タンパク質に同等のカロリーで置き換えた場合、健康的な加齢との有意な正の関連が観察された(3%のエネルギーを植物性タンパク質に置き換えた場合のOR:1.22~1.58)。・主な植物性タンパク源は、パン、野菜、果物、ピザ、シリアル、焼き菓子、マッシュポテト、ナッツ類、豆類、ピーナッツバター、パスタであった。 著者らは、女性看護師の大規模コホートにおいて、中年期の食事からのタンパク質摂取、とくに植物性タンパク質摂取は、健康的な加齢の高いORおよび健康状態のいくつかの領域と関連しているようだ、と結論付けている。

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前立腺がん治療10年後の排尿・性機能、治療法による違いは?/JAMA

 限局性前立腺がん患者の治療後10年間の追跡調査の結果、ベースラインで受けた治療に応じて予後良好群に分類した患者では、前立腺全摘除術は外照射放射線療法(EBRT)または積極的監視療法と比較し、尿失禁が悪化したが性機能の悪化は認められなかった。予後不良群に分類した患者では、前立腺全摘除術はEBRT+アンドロゲン除去療法(ADT)併用療法と比較し、尿失禁が悪化したが性機能の悪化は認められなかった。しかし、EBRT+ADT併用療法は前立腺全摘除術と比較し、排便およびホルモン機能の悪化がみられたという。米国・バンダービルト大学医療センターのBashir Al Hussein Al Awamlh氏らが、観察コホート研究「CEASAR研究」の結果を報告した。JAMA誌2024年1月23・30日号掲載の報告。ベースラインで受けた治療法別に患者を分類、10年後の機能的アウトカムを比較 研究グループは、米国のSEER(Surveillance、Epidemiology、and End Results Program)の5つの登録デ-タを用い、2011~12年に限局性前立腺がん(cT1~T2c、cN0、cM0、前立腺特異抗原[PSA]<50ng/mL)と診断された80歳以下の男性を特定し、3,434例を診断後6ヵ月以内にCEASAR研究に登録した(解析対象は2,445例)。 対象患者をベースラインで、予後良好群(cT1またはT2a/bN0M0、PSA:≦20ng/mL、グレードグループ1~2[低リスクおよび予後良好な中間リスク])(1,877例)と、予後不良群(cT2cN0M0、PSA:20~50ng/mL、グレードグループ3~5[予後不良な中間リスクおよび高リスク])(568例)に分け、2022年2月1日まで追跡調査を行った。 予後良好群では根治的前立腺全摘除術(1,043例)、ADTを伴わないEBRT(359例)、低線量率小線源療法(96例)および積極的監視療法(379例)が、予後不良群では根治的前立腺全摘除術(362例)およびEBRT+ADT併用療法(206例)が実施された。 主要アウトカムは、限局性前立腺がん患者の特異的QOL尺度であるEPIC-26(スコア範囲:0~100、100が最良)に基づく、自己報告による性機能、尿失禁、排尿刺激症状、排便およびホルモン機能であった。 特定の治療法と各評価項目との関連を推定し、各ベースラインスコア、患者および腫瘍特性を補正して治療後10年時点で比較した。臨床的に重要な最小変化量(MCID)は、性機能10~12、尿失禁6~9、排尿刺激症状5~7、排便およびホルモン機能4~6とした。治療法によって尿失禁、排便機能、ホルモン機能が悪化 解析対象2,445例の患者背景は、年齢中央値64歳、黒人14%、ヒスパニック系8%で、追跡期間中央値は9.5年間であった。 予後良好群1,877例では、根治的前立腺全摘除術は積極的監視療法と比較し、尿失禁の悪化がみられたが(補正後平均群間差:-12.1、95%信頼区間[CI]:-16.2~-8.0)、性機能の悪化はみられなかった(-7.2、-12.3~-2.0)。 予後不良群568例では、根治的前立腺全摘除術はEBRT+ADT併用療法と比較し、尿失禁の悪化がみられたが(補正後平均群間差:-26.6、95%CI:-35.0~-18.2)、性機能の悪化はみられなかった(-1.4、-11.1~8.3)。一方、予後不良群では、EBRT+ADT併用療法は根治的前立腺全摘除術と比較し、排便機能(-4.9、-9.2~-0.7)およびホルモン機能(-4.9、-9.5~-0.3)の悪化が認められた。

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CD55欠損症(CHAPLE症候群)、pozelimabが有効/Lancet

 補体因子C5に対する完全ヒト型IgG4P抗体であるpozelimabの皮下投与は、補体の過剰活性化を阻害し、CD55欠損症(CHAPLE症候群)の臨床症状および検査所見を消失させたことが、トルコ・マルマラ大学のAhmet Ozen氏らによる第II相および第III相多施設共同非盲検単群ヒストリカル対照試験の結果で示された。CD55欠損症は、CHAPLE(CD55 deficiency with hyperactivation of complement, angiopathic thrombosis, and protein-losing enteropathy)症候群とも呼ばれ、補体の過剰な活性化による腸管のリンパ管障害、リンパ管拡張症および蛋白漏出性胃腸症を特徴とするきわめてまれな生命を脅かす遺伝性疾患である。この希少遺伝性疾患であるCHAPLE症候群に対して、pozelimabは現時点での最初で唯一の治療薬として見いだされ、有効性と安全性の評価が行われた。著者は、「既知の原因が除外された蛋白漏出性胃腸症の患者では、CD55欠損症の検査を考慮し、CHAPLE症候群と診断された場合は早期にpozelimabによる治療を検討すべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年1月23日号掲載の報告。タイ、トルコ、米国の3施設で10例を登録 研究グループは、タイ、トルコおよび米国の3施設において、CHAPLE症候群と臨床診断され、遺伝子検査で同定され末梢血細胞のCD55フローサイトメトリーまたはウェスタンブロット法で確認されたCD55機能喪失変異を有する1歳以上の患者を登録した。 pozelimabは、負荷用量として30mg/kgを1回静脈内投与し、その後は週1回、体重が40kg未満の患者には200mg/mL×1、40kg以上の患者には200mg/mL×2を皮下投与した。 主要エンドポイントは、24週時において、血清アルブミンが正常化し(12~24週に測定値の70%以上が3.5g/dL以上かつ2.5g/dL未満であったことがない、またはアルブミン投与がないことと定義)、次の4つの臨床症状が改善または悪化しなかった患者の割合とした。 4つの臨床症状とは、問題となる腹痛の頻度、排便の頻度、顔面浮腫の重症度、末梢浮腫の重症度で、顔面および抹消浮腫の重症度は、医師による評価スコア(5点満点、ベースラインで3点以上の場合に測定可能)が2点以上減少を改善、2点以上増加を悪化、などと定義した。 2020年1月27日~2021年5月12日に11例が募集され、そのうち10例を登録し解析集団に組み込んだ。pozelimab治療後、10例全例が主要評価項目を達成 有効性の解析は、48週時の評価を完了し、少なくとも52週間の治療を受けた患者を対象とした。また、安全性の解析は、さらに90日間の追跡調査と、少なくとも72週間の治療を受けた患者について行った。 患者は主に小児(年齢中央値8.5歳)で、トルコ、シリア、タイ、ボリビアの出身であり、ベースラインにおいて、年齢に対する体重および身長が著しく低かった。また、ベースラインのアルブミン値は平均2.2g/dLで、現地の検査基準範囲よりかなり低値であった。 pozelimab治療後、10例全例が血清アルブミンの正常化を認め、臨床症状の悪化はなく改善した。また、総補体活性は完全に阻害された。 有害事象は9例で発現した。重篤な有害事象は2例(嘔吐および下痢が1例、外傷性四肢骨折1例)に認められ、うち嘔吐および下痢の1例はpozelimabに関連すると考えられた。

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