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2024/07/10
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検索結果 合計:315件 表示位置:261 - 280

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統合失調症の再発予防、ω-3脂肪酸+α-LAは有用か

 統合失調症の抗精神病薬中止後の再発予防に、オメガ-3系多価不飽和脂肪酸(ω-3 PUFAs)と代謝抗酸化物質であるα-リポ酸(α-LA)の組み合わせが有効であるというエビデンスは、示されなかったことが報告された。南アフリカ共和国・ステレンボス大学のRobin Emsley氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。検討では、服薬中止後の再発率が75~90%と高かったことから、著者は「統合失調症の単回エピソード後の抗精神病薬の中止は再発のリスクが非常に高く、同プラクティスを支持するガイドラインを改訂すべきであろう」と述べている。Schizophrenia Research誌オンライン版2014年7月1日号の掲載報告。 統合失調症の維持治療として抗精神病薬は有効である一方、安全性および忍容性のリスクがある。本検討では、統合失調症または統合失調症様障害の初回エピソード後2~3年間、良好にコントロールされている患者における抗精神病薬中止後の再発防止に対し、ω-3 PUFAs+α-LAが有効であるか否かを検討した。抗精神病薬を漸減および中止後、被験者をω-3 PUFAs(エイコサペンタエン酸2g/日およびドコサヘキサエン酸1g/日)+α-LA(300mg/日)群またはプラセボ群に無作為化し、2年間あるいは再発が起こるまで追跡した。 主な結果は以下のとおり。・両群とも、再発率ならびに再発エピソードの重症度が高かったため、登録は時期を早めて終了となった。被験者は33例であった。・ω-3 PUFAs+α-LA 群に無作為化された21例中19例(90%)で再発が認められ、再発せずに2年間の試験を完了できたのは1例(5%)であった(p=0.6)。・プラセボ群に無作為化された12例中9例(75%)で再発が認められ、再発せずに2年間の試験を完了できた例はなかった。・再発までの期間中央値は、ω-3 PUFAs+α-LA群が39.8±25.4週、プラセボ群が38.3±26.6週であった(p=0.9)。・再発症状の重症度に、2群間に有意差は認められなかった。・小規模試験であったが、再発予防における抗精神病薬維持治療の代替として、ω-3 PUFAs+α-LAが適切な選択肢になりうるというエビデンスは得られなかった。関連医療ニュース 統合失調症“再発”の危険因子は 統合失調症の再発、どう定義とすべきか 統合失調症患者の再発を予測することは可能か  担当者へのご意見箱はこちら

262.

鎮痛薬+不眠症治療薬の併用、鎮痛薬単独より腰痛+不眠を改善

 米国・デューク大学医療センターのHarold W. Goforth氏らによる、不眠症治療の有効性を検証する二重盲検プラセボ対照並行群間試験の結果、標準的な鎮痛薬と不眠症治療薬の併用は、慢性腰痛患者の疼痛、睡眠、抑うつ症状を有意に改善することが明らかにされた。不眠症は、慢性腰痛患者によくみられる症状だが、これまで長い間、特別治療する必要はないとみなされてきた。しかし最近の研究で疼痛治療に不眠症治療を加えることにより予後が改善することが示唆されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「慢性腰痛患者の日常診療においては、睡眠と疼痛いずれもの治療が重要であることを意味している」と述べるとともに、さらに「睡眠障害の改善が疼痛を改善するというエビデンスが得られた」とまとめている。Sleep誌2014年6月1日号の掲載報告。 試験は、不眠症の診断基準を満たし3ヵ月以上腰痛が続いている慢性腰痛患者52例(平均年齢42.5歳、女性63%)を対象に行われた。 被験者を、エスゾピクロン(ESZ)3mg+ナプロキセン500mg1日2回投与群(ESZ群)とプラセボ+ナプロキセン500mg1日2回投与群(プラセボ群)に無作為に割り付け、1ヵ月間投与した。 主な結果は以下のとおり。・ESZ群はプラセボ群に比べ、主要評価項目とした総睡眠時間が有意に改善した(平均増加時間:ESZ群95分、プラセボ群9分)。・疼痛強度(視覚アナログスケール/ 平均減少量:ESZ群17mm、 プラセボ群2mm)、ならびに抑うつ症状(ハミルトンうつ病評価尺度/ 平均改善度:ESZ群3.8点、プラセボ群0.4点)も、プラセボ群に比べESZ群で有意に改善した。・疼痛強度の変化は、睡眠の変化と有意に相関していることが認められた。

263.

アトピー性皮膚炎治療に高周波超音波モニタリング導入を

 免疫抑制剤の一種でアトピー性皮膚炎(AD)に対するリアクティブおよびプロアクティブ治療の有効性が確立しているタクロリムスの塗布治療について、非侵襲的なモニタリング方法として高周波超音波検査法(HF-USG)を用いる検討が、ポーランド・ポズナン医科大学のAdriana Polanska氏らにより行われた。タクロリムス治療の安全性および有効性については、すでに無作為化試験で検討されているが、皮膚への作用の評価指標は異なるスコアや尺度によって行われてきたことから、本検討が計画された。Skin Research Technology誌オンライン版2014年6月4日号の掲載報告。 研究グループは、6ヵ月間のタクロリムス治療の観察を、HF-USG(真皮上層低エコー領域[SLEB]に定量)とエバポリメーターによる高周波の超音波検査で行う検討を行った。 AD患者39例(平均年齢26.3±12.8歳)を対象に、4週間ごとの外来受診時に同測定を行い(計7回)、右前肘窩で疾患重症度の評価を、医師の総合評価(IGA)に基づき行った。 主な結果は以下のとおり。・39例で試験を開始したが、6ヵ月間の試験を完了したのは22例(54.6%)であった。・39例のうち、31例(79.5%)が4週間以上のプロアクティブ治療を受けた。・治療期間中、IGA、SLEB、TEWLには統計的に有意な変化が観察された。・また、病変部と非病変部のSLEB、TEWLにも、統計的に有意な差がみられた。・以上のように、アトピー性皮膚炎のタクロリムス治療ではHF-USGが有用であることが示された。・同ツールは簡便で再現性があり、in vivoでの皮膚すべての病理学的な変化を想起させることが可能である。 これらを踏まえて著者は、「非侵襲性で客観的な判定方法として、HF-USGは、共通のスコアまたは尺度を有しており、とくにエビデンスベースの医療の時代であることから、アトピー性皮膚炎の疾患重症度のあらゆる評価に組み込むべきである」とまとめている。

264.

透析原因の4割は糖尿病

透析を始める患者さんの約4割は「糖尿病」が原因2012年に人工透析をはじめた患者さんのうち、44.1%は糖尿病性腎症を原因とした導入でした。%70年別透析導入患者の主要原疾患の割合推移2012年糖尿病性腎症:44.1%慢性糸球体腎炎:19.4%腎硬化症:12.3%多発性嚢胞腎:2.6%慢性腎盂腎炎:0.8%急速進行性糸球体腎炎:1.3%SLE腎炎:0.7%不明:11.2%60504030糖尿病性腎症慢性糸球体腎炎腎硬化症多発性嚢胞腎慢性腎盂腎炎急速進行性糸球体腎炎SLE腎炎不明201001983 8485868788989091929394959697989900010203040506070809101112年患者調査による集計『一般社団法人 日本透析医学会 統計調査委員会「図説 わが国の慢性透析療法の現況(2012年12月31日現在)」』Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

265.

統合失調症患者の睡眠状態を検証

 カナダ・Riviere-des-Prairies病院のFabian Guenole氏らは、睡眠期(dissociated stages of sleep:DSS)を定量化することで、統合失調症における睡眠の機能的不安定性を特徴づけること、およびそれら特徴と精神病理との相関性を調べる検討を行った。その結果、統合失調症とレム睡眠期にみられるニューロンコントロールメカニズムとに有意な相関が認められることを明らかにした。Schizophrenia Research誌2014年5月号(オンライン版2014年4月13日号)の掲載報告。  検討は、統合失調症の若年成人で投薬未治療の初発患者10例と、健常対照10例であった。睡眠紡錘波、急速眼球運動およびアトニーなどを測定した結果、基本的な4つのDSSが記録された。1)睡眠移行期であるEEG混合中間期(EMIS)2)急速眼球運動のみられないレム睡眠期(RSWR)3)アトニーのないレム睡眠期(RSWA)4)急速眼球運動がみられるノンレム睡眠期 EMISとRSWRスコアを合計した中間睡眠期(IS)スコアを算出し、レム睡眠期間のIS(IRSPIS)と、レム睡眠中にスコアしたIS(ISERS)の長さを測定した。患者は、記録時に簡易精神症状評価尺度(BPRS)で評価を受けた。総睡眠時間における各DSSの比率と、レム睡眠におけるIRSPISとISERSの割合を患者群と対照群で比較。また、DSSの変化とBPRSの総スコアとの関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・総DSSの割合は、患者群と対照群で変わらなかった。・DSSサブタイプ群において、アトニーのないレム睡眠期(RSWA)は患者群で比較群と比べて有意な増大が認められた。有意差は示されなかった。・睡眠全体およびレム睡眠期において、BPRSスコアとDSS、IS、RSWR、IRSPIS、ISERSの比率とには、有意な正の相関がみられた。・これらの結果は、統合失調症を有する若年成人の未治療初発患者では、レム睡眠の機能的不安定性を示すものであった。・それらは、レム睡眠行動障害を想起させるパターンを明らかにするものであった。・本検討により、統合失調症とレム睡眠期にみられるニューロンコントロールメカニズムには有意な相関があることが示された。関連医療ニュース 検証!統合失調症患者の睡眠状態とは 境界性パーソナリティ障害と睡眠障害は密接に関連 自殺と不眠は関連があるのか

266.

麻疹の流行、どう対応する

今年に入り患者数の増加が目立つ麻疹について、国立国際医療研究センター感染症内科/国際感染症センターの忽那賢志氏に、流行の現状と医療者の対応について聞いた。麻疹流行の現状本年第1~8週までの麻疹患者数は199例(2013年12月30日~2014年2月23日)と、すでに昨年1年間の麻疹患者数を超えている。昨年同期比では3.3倍と、季節性を考慮しても大きな増加である。この傾向は、昨年11月頃よりあらわれているという。麻疹は昨年からフィリピンで流行しているが、フィリピンから帰国感染者がわが国での流行の発端となっている。そこから拡大し、現在では海外渡航歴のない感染者も多い。参考:国立感染症研究所IDWRhttp://www.nih.go.jp/niid/ja/measles-m/measles-idwrc.html日本人における麻疹の問題日本人には麻疹の抗体がない方、あっても不十分な方は少なくないという。その原因のひとつは麻疹ワクチンの接種率である。麻疹ワクチンは、MMRワクチンの副作用の影響を受け、1990年代に接種率が減少している。また、ワクチン接種回数の問題もある。麻疹ワクチンは1976年に定期接種となったが、当初は1回接種であった。1回接種の場合、5%程度の方に抗体ができない、あるいは出来ても成人になって抗体が減衰することがある。2006年に麻疹ワクチンは2回接種となったものの接種率は高くなく、生涯ワクチン接種が1回で麻疹に罹患歴がないなど、麻疹ウイルスに対して免疫を持ってない成人が、わが国では7万人いるといわれる。麻疹はわが国における非常に重要な医療問題の一つだと忽那氏は訴える。麻疹の感染力は非常に強く、インフルエンザの約8倍、風疹の約2倍である(基本再生産数に基づく)。また、重症化することが多く、発展途上国では現在も年間50万人以上が死亡する。わが国でも、年間20~30人の麻疹関連死がある。さらに、肺炎、脳炎・脳症などの合併症を伴うこともあり予後も不良である。医療者の対応このような中、医療者はどう対応すべきであろうか。麻疹患者の受診に備え、忽那氏はいくつかの留意点を挙げた。医療者自身に麻疹の抗体があるか確認する麻疹(疑い)患者の診療は抗体のある医療者が行う当然のことではあるが、医療者自身が抗体価を測定し、基準値に達していなければワクチンを接種するべきである。ワクチン接種しても抗体価が上がらない方もいるが、これまでに1回しか接種していないのであれば、2回接種するべきであろう。疑い患者であっても陰圧個室で診察する麻疹は空気感染で伝播するため、周囲の患者さんや医療者に感染することも十分考えられる。疑い患者であっても隔離して陰圧個室で診療すべきである。東南アジア渡航歴があり発熱・上気道症状を呈している患者では麻疹を鑑別に加える麻疹は初期段階では診断が付けにくいケースもあるという。麻疹初期には発熱や上気道炎症状やといった症状(カタル症状)が出現するものの、皮疹が発現せず、数日後に皮疹が出てはじめて麻疹とわかることもある。このカタル症状の病期であっても感染力は強いため、皮疹が確認できなくとも、東南アジアなど麻疹が発生している国の渡航歴があり発熱がある場合は鑑別のひとつとして考えるべきである。また国内でも麻疹は増えており、渡航歴のない患者でも麻疹を疑う閾値を低くしておく必要がある。麻疹罹患歴があっても疑わしければ確認する幼少期の麻疹の診断は臨床症状のみに基いてで行っていることが多い。そのため、たとえ患者さんが麻疹の既往を訴えても、実際には麻疹ではなく風疹やその他の感染症であったということも考えられる。過去の罹患歴があるという場合も臨床的に麻疹が疑われる場合は、感染者との接触、ワクチン接種歴などを確認し、他の診断が確定するまでは麻疹として対応するのが望ましい。東南アジアでの麻疹は拡大し、現在はベトナムでも流行しているという。今後のわが国での大流行を防ぐためにも、流行の動向に留意しておくべきであろう。

267.

高度貧困地域からの転出、男児は精神障害リスクが増大/JAMA

 米国の高度貧困地域に住む子供が、家族と共に低所得者居住地域に引っ越すことで、男児では思春期におけるうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった精神障害の発症リスクが2~3倍増大することが報告された。一方で女児については、同引っ越しにより、思春期のうつ病や行為障害の発症リスクが4~9割減少した。米国・ハーバードメディカルスクールのRonald C. Kessler氏らが、小児約3,700例について行った前向き無作為化比較試験の結果、報告した。高度貧困地域の子供は思春期に心の問題を抱える青少年が多い。本検討は、地域への介入について、地域が与える影響を理解することを目的に、小児期への住環境介入とその後の思春期の精神障害との関連を調べた。JAMA誌2014年3月5日号掲載の報告より。小児と家族を低所得者地域、または地域制限なしで転出補助 研究グループは1994~1998年にかけて、米国の高度貧困地域に住む4,604家族とその子供たち3,689例を対象に試験を行った。対象家族を無作為に3群に分け、第1群には低所得者居住地域への引っ越しについて家賃補助を行うとともに、引っ越しに関するカウンセリングを強化した(対象小児は1,430例)。第2群には、引っ越し地域は設けず家賃補助を行った(同1,081例)。第3群はコントロール群として、何の介入も行わなかった(同1,178例)。 10~15年後(2008年6月~2010年4月)に、13~19歳の被験者(試験開始時には0~8歳)について追跡調査(面談調査)を行った。主要アウトカムは、「精神障害の診断と統計の手引き」(第4版)に基づく、過去12ヵ月間の精神障害症状の有無だった。男児はうつ病リスクが2.2倍、PTSD、行為障害は3倍以上 追跡時の面談調査を行ったのは、3,689例中2,872例で、そのうち男児は1,407例、女児は1,465例だった。 男児において、コントロール群では大うつ病罹患率は3.5%だったのに対し、低所得者居住地域転出群では7.1%と、2倍以上だった(オッズ比:2.2)。PTSDはそれぞれ1.9%と6.2%(オッズ比:3.4)、行為障害は2.1%と6.4%(オッズ比:3.1)と、いずれもリスクは3倍以上だった。 一方で女児では、地域制限なし転出群でコントロール群に比べ、大うつ病や行為障害の罹患率がそれぞれ4割と9割の減少がみられた。コントロール群では、大うつ病の罹患率は10.9%、行為障害は2.9%だったのに対し、地域制限なし転出群ではそれぞれ6.5%(オッズ比:0.6、p=0.04)と0.3%(同:0.1、p=0.02)だった。なお、低所得者居住地域転出群についてはそれぞれ6.5%(同:0.6、p=0.06)、1.5%(同:0.5、p=0.20)だった。

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睡眠検査の最新技術 睡眠の質を手軽に可視化

小さなデバイスが、睡眠へのアプローチに大きな変化をもたらす小型睡眠脳波測定器「スリープスコープ」医療機器として認証された、手の平に納まる小型睡眠脳波測定器があることを、ご存知だろうか。日常生活の中で手軽に測定できるというだけでなく、様々な可能性がそこにあった。この小型睡眠脳波測定器「スリープスコープ」を開発したスリープウェル株式会社代表 吉田政樹氏に聞いた。睡眠の質の客観的評価へのニーズが増加近年、睡眠は医療・健康分野において、その重要性が大いに注目されている。従来、睡眠の質を客観的に捉えるには終夜睡眠ポリグラフ(以下 PSG)を行う必要あった。しかし、この検査が実施可能なのは少数の専門機関に限られ、またその実施には多くの制約があった。そのため、ニーズはあるもののエビデンスが取得しにくく、なかなか研究が進まない状況であった。このようななか、小型で高性能のスリープスコープが開発され、睡眠の質を容易に可視化できるようなった。睡眠の質の客観的評価へのニーズが増加スリープウェル株式会社の出発点は、大阪市などが母体となる公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所(以下OBI)。同研究所の研究者たちが小型脳波計の製品化を目的に設立した睡眠基礎研究発のベンチャー企業である。つまり、スリープスコープは睡眠研究の専門家が開発した機器である。ヒトでは30カ所以上の電極を付けPSGを行う。OBIではマウス、ラットの睡眠実験をしていたが、マウスの脳は小さく2つの電極で睡眠を評価していた。睡眠の実態を考えると、大脳の活動レベルは全体に低下する。大脳全体の活動さえ拾い上げられれば、2つの電極で、睡眠情報は正確にわかるという考えのもと、スリープスコープは開発された。スリープスコープの特徴と精度スリープスコープは小型脳波計では初めて、高度管理医療機器(クラスⅡ)に認証された。10x6cmの小さなボディで、睡眠時の脳波を計測し、その脳波の状況から、睡眠に関する客観的、定量的アウトプットを提供する。具体的には、就床時間、睡眠潜時、熟眠度、中途覚醒、睡眠効率、睡眠リズム、デルタ波*量の推移も測定可能である。精度も高く、スリープスコープとPSGを同時計測して性能検証を行った結果、PSGで取得したものと同様の脳波形を各睡眠ステージで示し、PSGとのステージ判定一致率は86.89%であった。さらに、装着も簡単で、特殊なトレーニングも必要ない。自宅で被験者本人が計測できる。*デルタ波:周波数の低い脳波で、深い睡眠時に出現、成長ホルモンとも相関する。スリープスコープとPSGの睡眠グラフ比較スリープスコープの現在の用途は、研究開発と実臨床スリープスコープの現在の用途は、研究開発と実臨床である。研究開発では、医薬品・医療機器企業、食品企業の活用が多い。たとえば、睡眠薬、快眠食品、快眠グッズなどの効果検証などに用いられる。また、医学研究では、睡眠を悪化させる原疾患や症状(GERD、睡眠時無呼吸症候群、痒み、痛みetc)と睡眠の相関についての研究に活用されている。実臨床においても人間ドッグや、一般臨床科で徐々に使われるようになってきている。とくに、人間ドックでは、検査項目のオプションとして、スリープスコープを活用した睡眠検査を行い、睡眠検査報告書で睡眠の質をわかりやすく説明するサービスを導入している施設もある。睡眠検査報告書では、スリープウェルが有する2万例の健康成人の睡眠データを利用した熟眠年齢(睡眠時に出現するデルタ波量年齢平均値から算出)という指標を提供している。スリープスコープでわかる「睡眠脳波検査結果」スリープスコープの持つ可能性スリープスコープはPSGと異なり、日常の睡眠状態を長期間連続して計測できる。その特性が簡便さ以外のさまざまな可能性をもたらす。その一つが、睡眠脳波と精神疾患の関係解明である。睡眠時の脳波は夜間の無自覚・無意識下の神経活動である。実際、スリープスコープを用いて精神疾患患者の脳波を測定したところ、うつ病をはじめとする精神疾患患者には徐波睡眠がほとんどみられず、入眠潜時、中途覚醒、睡眠効率に関しても大きな差異がみられることがわかった。また、精神疾患患者では、健康成人と異なる特徴的な脳波を示すことも判明した。そこで、スリープスコープ社では、うつ病や双極性障害の診断についての脳波形データ解析の特許を、2013年5月に取得した。さらに、滋賀医大と共同で臨床試験を行い、精神疾患の診断マーカーとしての臨床での実用化を目指している。精神疾患の診断は医師の問診による判断に委ねられており、客観的データとしてはやや乏しい。脳波分析による客観的データが早期診断に貢献できれば画期的だといえよう。また、古川飛行士、星出飛行士の二人が国際宇宙ステーション滞在中にスリープスコープを使用し実験データをとるなど宇宙医療研究にも応用されている。スリープスコープの登場により、今まで特定の施設でしかとれなかった睡眠脳波が多くの医療機関で測定可能となった。今後、睡眠脳波を用いた研究は加速化し、多くのデータが臨床に応用される日も遠くはないであろう。スリープスコープについての問い合わせはスリープウェル株式会社へhttp://sleepwell.co.jp/スリープスコープの取り扱い方法http://sleepwell.co.jp/411/テレビ東京ワールドビジネスサテライト「拡大する快眠ビジネス」http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/feature/post_52627

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エキスパートに聞く!「睡眠障害」Q&A Part1

レストレスレッグス症候群におけるドパミンアゴニストの使い方のコツは?本邦でレストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)治療薬として承認されているドパミンアゴニストには、プラミペキソール(商品名:ビ・シフロール)とロチゴチン(同:ニュープロパッチ)がある。プラミペキソールが錠剤(内服)で、ロチゴチンが経皮吸収剤(貼付)と投与方法が異なる点が使い分けの大きなポイントとなる。どちらの薬剤も、RLSならびにRLSに高頻度に伴う周期性四肢運動の両者に有効性が高い点は共通であるが、夜間の症状を主体とする場合には、プラミペキソールを夜に1回内服することで十分効果が得られる。日中症状を有する場合は、プラミペキソールを日中にも追加して服用する、あるいは血中濃度が一日を通じて一定となる貼付剤(ロチゴチン)が良い適応となる。副作用の観点からは、消化器症状は共通してみられる。ただし、ロチゴチンでは、初回の貼付時に消化器症状が出現しても、血中濃度が安定すると以後は消化器症状がみられなくなる場合もある。貼付剤に特有の問題としては、貼付部位の適応部位反応があり、貼付部位を毎日変える、適度な保湿をするなどの対策が必要である。両薬剤は代謝・排泄経路が異なっており、プラミペキソールが腎排泄性の薬剤であるのに対し、ロチゴチンは肝臓で代謝される。腎不全患者ではRLSは高頻度にみられ、日中症状もしばしば伴うが、肝臓で代謝されるロチゴチンは、腎不全患者においても血中濃度が健常者とほぼ同様に推移することから、安全に使用できると考えられる。レストレスレッグス症候群の原因として、鉄不足以外にどういったものがありますか?レストレスレッグス症候群(RLS)は、特発性と二次性に大別される。RLSはあらゆる年齢層でみられるが、中年期以降のRLSでは二次性RLSの可能性が高まる。二次性RLSの原因疾患としては、鉄欠乏性貧血、胃切除後のほかに、慢性腎不全、妊娠、神経疾患(パーキンソン病、末梢神経障害、脊髄疾患等)、リウマチ性疾患などがあげられる。薬剤性RLSの原因としては、ドパミンに拮抗する薬剤(抗精神病薬、メトクロプラミド)、抗うつ薬(選択的セロトニン再取込み阻害薬)などがあり、アルコール、カフェイン、ニコチンもRLSの増悪因子である。慢性腎不全、とくに透析患者においてはRLSは高頻度で、国内外の報告では約2~4割にRLSがみられ、周期性四肢運動障害の合併も多い。妊娠中のRLSは、妊娠後期に増悪する傾向があり、出産前後に消失もしくは改善することが多い。妊娠を繰り返すごとに症状が増悪するケースもある。神経疾患に伴うRLSでは、下肢の異常感覚が神経疾患に伴うものか、神経疾患による二次性RLSによるものかの判断が時に困難であり、両者が併存する場合もある。こうした症例では、RLS治療薬の効果が必ずしも十分得られない。不眠症は薬物療法で改善する症例が少ないように感じるのですが、いかがでしょうか?プライマリ・ケアにおける不眠症治療は、(非)ベンゾジアゼピン系薬剤を中心とする薬物療法に偏りがちであるが、不眠の背景にある睡眠習慣や睡眠衛生の問題、不眠を呈する睡眠障害が見過ごされているケースも多い。不眠≠不眠症であり、不眠の背景要因の把握がまず不可欠といえる。たとえば、不眠があり夜眠れないからと日中に2時間以上も昼寝をしていれば、日中の長時間の昼寝が夜の入眠を妨げ、不眠の解消を阻害してしまう。高齢者では夜間の睡眠時間は減少する傾向となるが、9時間以上も寝床で過ごすことで、夜中に何度も目が覚める、熟眠感が得られないといった訴えにつながっている場合もあり、睡眠習慣の見直しが先決である。また、睡眠時無呼吸症候群では夜間の覚醒や熟眠障害を生じうるが、本人は多くの場合いびきや無呼吸を自覚しておらず、原因をそのままに睡眠薬を処方されても不眠は解消しない。薬物治療で改善がみられない多くの症例では、このような背景が見過ごされており、うつ病等の精神疾患による不眠の可能性も含めて、睡眠障害、睡眠衛生の問題にも留意する必要がある。不眠症治療薬についても、現状では薬剤の使い分けが必ずしも十分なされていない。たとえば、体内時計の乱れが不眠の背景にある場合には、睡眠・覚醒リズムの調整を図りつつ、体内時計機構に作用する薬剤を選択することが有用である。脳の覚醒システムであるオレキシンをターゲットとした新たな不眠症治療薬も現在承認申請中であり、治療の選択肢も増えつつある。高血圧や糖尿病などでは薬剤のタイプによる使い分けが一般的に行われており、不眠症治療においても病状に応じた薬剤の選択が行われるようになることが期待される。外来で睡眠時無呼吸症候群を疑うチェックポイントなどありますか?睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome : SAS)は、睡眠中の無呼吸・低呼吸といった呼吸イベントにより、睡眠の質的低下、低酸素状態を生じる疾患である。心疾患および循環疾患リスクを高めることが知られており、生活習慣病のマネジメントのうえでも注目すべき疾患といえる。しかし、患者の多くはいびきや無呼吸を症状として自覚しておらず、多くは周囲がこれらの症状に気づくことで受診につながっている。SASが注目されるようになったきっかけの一つは、新幹線運転手の居眠り事故である。これにより、SASと眠気の関連がクローズアップされたが、眠気を自覚していないSAS患者も少なくないことから、眠気の有無は必ずしもSASを疑う(あるいは否定する)ポイントとはなりえない。SASを疑ううえでは、いびきや無呼吸に気づいている可能性が高いベッドパートナーへの問診は非常に有用である。本人のみが受診している場合には、周囲からそのような指摘があるかどうかを尋ねるとよい。いびきによる覚醒、窒息感を伴う覚醒を本人が自覚している場合もある。無呼吸を指摘されたことがなくても、習慣的な大きないびきの指摘があれば、SASを疑い精査することが望ましい。本人が自覚しうるその他の症状としては、夜間頻回の(トイレ)覚醒、熟眠感の欠如、起床困難、起床時の頭痛、日中の眠気、集中力の低下などがあげられる。いびきの指摘に加えてこうした自覚症状を伴っていれば、SASを疑うポイントとなりうる。理学的所見も重要である。SASのリスクとして肥満はよく知られているが、扁桃腺肥大、顎顔面形態(小顎や下顎後退)も必ず確認する。とくにアジア人において非肥満のSASも多いことに留意する。逆に、不眠や夜間の異常行動といった何らかの睡眠の訴えがある場合には、その背景にSASが存在する可能性を常に考慮する必要があるともいえる。必ずしも自覚症状が明らかではない患者も多いこと、終夜パルスオキシメトリ等のスクリーニング検査が比較的安価に施行できることを考慮すれば、SASが多少なりとも疑わしい場合には積極的にスクリーニングすることが望ましい。※エキスパートに聞く!「睡眠障害」Q&A Part2はこちら

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ダウン症患者の睡眠時無呼吸症候群は体位や睡眠状態と関係するのか

 ダウン症の子供ではノンレム睡眠時の無呼吸低呼吸指数がとくに仰向けの体位で高く、これはダウン症による筋緊張低下が影響していることが理由である可能性を、オーストラリアのリッチー•センターのLauren C Nisbet氏らが報告した。Journal of clinical sleep medicine誌オンライン版2014年1月15日の掲載報告。 本研究の目的は、ダウン症の子供の睡眠時無呼吸症候群の重症度が睡眠時の体位や睡眠状態と関係しているかを調べることである。三次医療センターの睡眠障害研究所でレトロスペクティブに調査を行った。 対象はダウン症の子供と標準的発達の子供[年齢、性別、無呼吸低呼吸指数(AHI)、年間の睡眠ポリグラフなどで適合]である。睡眠変数は睡眠ポリグラフのベースラインをもとにした。センサーで記録された体位(仰向け、うつ伏せ、横向き)の割合を総睡眠時間から算出した。無呼吸低呼吸指数は睡眠状態(ノンレム睡眠もしくはレム睡眠)、体位、または睡眠状態と体位の両方で計算した。 主な結果は以下のとおり。・76例のダウン症患者(男性が55%)の年齢の中央値は4.6歳(0.2歳~17.8歳)であった。・無呼吸低呼吸指数の中央値は7.4回/時間(0~133回/時間)であった。・被験者全体でみると、無呼吸低呼吸指数はノンレム睡眠よりレム睡眠で高かったが(p<0.05)、ノンレム睡眠時の無呼吸低呼吸指数はコントロール群に比べ、ダウン症患者で高かった(p<0.05)。・コントロール群と比べ、ダウン症患者では、うつ伏せ睡眠の割合が有意に高かったが(p<0.05)、仰向けと仰向け以外(うつ伏せと横向き)の割合には、有意差が認められなかった。・ダウン症患者について、ノンレム睡眠時の無呼吸低呼吸指数は仰向け以外と比べ、仰向けの体位で有意に高かった(p<0.05)。・ダウン症の子供とそうでない子供における呼吸器イベントは、どちらも主としてレム睡眠と関係していた。本研究で得られた知見は、ダウン症患者におけるノンレム睡眠時の呼吸器イベントの臨床的な重要性や治療選択の可能性を説明するものである。

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エキスパートに聞く!「うつ病診療」Q&A Part2

CareNet.comではうつ病特集を配信するにあたって、事前に会員の先生方からうつ病診療に関する質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、産業医科大学 杉田篤子先生にご回答いただきました。今回は、うつ病患者に対する生活指導、うつ病患者の自殺企図のサインを見落とさないポイント、仕事に復帰させるまでの手順・ポイント、認知症に伴ううつ症状の治療法、リチウム(適応外)による抗うつ効果増強療法の効果についての質問です。うつ病患者に対する生活指導について具体的に教えてください。生活習慣の改善といった患者自身ができる治療的対処行動を指導することは非常に有用です。とくに、睡眠・覚醒リズムを整えることは重要です。具体的には、毎日同じ時刻に起床し、朝、日光を浴びること、規則正しく3回食事摂取をすること、昼寝をするのは15時までに20~30分以内にすること、不眠のため飲酒するのは治療上逆効果であることを伝えます。また、医師の指示通りきちんと服薬するよう、指導することも大切です。うつ病の症状が軽快したからといって、自己判断で内服を中止する患者さんもいますが、再燃の危険性があることをあらかじめ説明しておきます。症状が悪化した際や副作用の心配が生じた際は、主治医にきちんと相談するように伝えます。軽症のうつ病の場合は、定期的な運動もうつ症状の改善の効果を期待できるため、負担のかからない範囲での運動を勧めます1)。1)National Institute for Health and Clinical Excellence. Depression: management of depression in primary and secondary care: NICE guidance. London: National Institute for Health and Clinical Excellence; 2007.うつ病患者の自殺企図のサインを見落とさないポイントを教えてください。自殺の危険率が高いうつ病患者の基本的特徴として、男性(5~10倍)、65歳以上、単身者(とくに子供がいない)、病歴・家族歴として、自殺企図歴あり、精神科入院歴あり、自殺の家族歴あり、合併疾患として、アルコール・薬物依存の併発、パニック障害の併存・不安の強さ、がんなどの重症身体疾患の併発などが挙げられます1)。自殺企図のサインを見落とさないため、とくに注意すべき点は、希死念慮を何らかの形で表明する際に注意を払うことです。希死念慮は、言語的に表出されるだけでなく、非言語的に伝えられることもあります。“死にたい”、“自殺する”と直接的に言葉にするだけでなく、“生きている意味がない”、“どこか遠くへ行きたい”などと言ったり、不自然な感謝の念を表したり、大切にしていた持ち物を人にあげてしまうこともあります。具体的な自殺の方法を考え、自殺に用いる手段を準備し、自殺の場所を下見に行く場合は自殺のリスクが切迫していると考えるべきです。さらに、自傷行為や過量服薬を行う患者さんも、長期的には自殺既遂のリスクが高い状態です2)。1)Whooley MA, et al. N Engl J Med. 2000;343:1942-1950.2)Skegg K. Lancet. 2005;366:1471-1583.仕事に復帰させるまでの手順、ポイントについて教えてください。職場復帰までの手順は、厚生労働省が「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」 に示しており、第1から第5のステップに沿った支援を行います。第1ステップは、病気休業開始および休業中のケアを行う段階です。主治医による治療はもちろん、家族のサポートや管理監督者や産業医・産業保健スタッフによる病気休業期間中の労働者に安心を与えるような対応が必要です。うつ病が軽快し、家庭での日常生活ができる状態となれば、職場復帰に向けて、生活リズムの立て直し、コミュニケーションスキルの習得、職場ストレスへの対処法の獲得などを目的としたリワークプログラムを行うことがあります。これは、都道府県の障害者職業センターで行われていますが、ほかに、精神保健福祉センター、精神科病院や診療所でも復職デイケアとして行われているところもあります。第2ステップは、休業している労働者本人の職場復帰の意思表示と職場復帰可能の主治医の判断が記された診断書を提出する段階です。この際、主治医が的確に判断を下せるように、産業医が主治医へ会社の職場復帰の制度や本人の置かれている職場環境について情報提供を行います。第3ステップは、職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成を行います。職場復帰支援プランとは、職場復帰を支援するための具体的なプラン(職場復帰日、管理監督者による業務上の配慮、配置転換や異動の必要性など)であり、主治医からの意見を参考に、産業医、管理監督者、人事労務担当者らが協力して作成します。第4ステップは、最終的な職場復帰の決定の段階で、労働者の状態の最終確認が行われ、就業上の配慮に関する意見書が作られ、事業者によって職場復帰の決定がなされます。第5ステップは、職場復帰後のフォローアップで、病気が再燃、再発したり、新たな問題が生じたりしていないかを注意深く見守る段階です。管理監督者や人事担当者が勤務状況や業務遂行能力の評価を行ったり、産業医、産業保健スタッフが病状、治療状況の確認を行ったりし、職場復帰支援プランの実施状況の確認を行います。さらに必要に応じて、見直しを行い、職場環境の改善や就業上の配慮を行っていきます。これらの5つのステップに従い、本人を取り巻く家族、主治医、産業医、産業保健スタッフ、管理監督者、人事担当者などがしっかり連携してサポートすることが大切です。認知症に伴う、うつ症状の治療法を教えてください。認知症の抑うつに対して、抗うつ薬とプラセボを使用した19本のランダム化比較試験(RCT)のうち、11本でシタロプラム(国内未承認)、パロキセチン、セルトラリン、トラゾドンなどの抗うつ薬の有用性が報告されています1)。さらに、エスシタロプラム、シタロプラム、セルトラリン、パロキセチンなどの抗うつ薬を継続して使用することで抑うつ症状の再燃を予防するといったデータもあります2)。しかし、認知症の抑うつに対するセルトラリンまたはミルタザピンの効果を検証した大規模RCTでは、有効性がプラセボに対して差が出ず、有害作用は有意に増加したというデータがあります3)。三環系抗うつ薬に比して有害事象が少ないため、新規抗うつ薬が使用されることが多いですが、常にリスクとベネフィットを常に慎重に勘案しながら、慎重に治療する必要があります。薬物療法以外の治療として、日常生活において活動性を向上させるようなデイサービスなどの枠組みを提供したり、介護者が目標指向的な行動を促したりすることも選択肢に挙がります。1)Henry G, et al. Am J Alzheimers Dis Other Demen, 2011;26:169-183.2)Bergh S, et al. BMJ. 2012;344:e1566.3)Banerjee S, et al. Lancet. 2011;378:403-411.リチウム(適応外)による抗うつ効果増強療法はどの程度の効果があるのでしょうか?リチウムと抗うつ薬の併用による抗うつ効果増強作用は、10本中8本のRCTで支持されています1)。リチウムによる増強療法の有効率は44~83%とされています2)。11本のRCTを用いたメタ解析3)では、リチウムが有効となるには、0.5mEq/Lに達する血中濃度が必要であり、最低1週間の併用を要すると報告されています。通常、効果発現には抗うつ薬より時間がかかり、最低6週間以上の投与を推奨する見解もあります4)。リチウム併用による再発予防効果を示すメタ解析もあります5)。リチウムの増強効果は三環系抗うつ薬で発揮され、エビデンスも確立されています。SSRIでは、シタロプラムをリチウムで増強したRCTも報告されており、プラセボと比較して有害作用は認めなかったという報告もあります6)。パロキセチンとアミトリプチリンをリチウムで増強したRCTによると、有害作用や血中リチウム濃度に差は認めず、パロキセチン+リチウム群ではアミトリプチリン+リチウム群に比べて抗うつ効果発現が早かったとされています7)。2013年のEdwardsらの系統的レビューでは、SSRI単独とSSRI+リチウムの比較では有効性に有意差はなく、SSRI単独とSSRI+抗精神病薬の比較では、SSRI+抗精神病薬の有効性が高く、SSRI+リチウムとSSRI+抗精神病薬の比較では有意差は認めなかったとされています8)。1)Crossley NA, et al. J Clin Psychiatry. 2007;68:935-940.2)Thase ME, et al. Treatment-resistant depression. In: Bloom FE et al, eds. Psychopharmacology: The Fourth Generation of Progress. New York: Raven Press;1995. p.1081-1097.3)Bauer M, et al. J Clin Psychopharmacol. 1999;19:427-434.4)井上 猛ほか. 臨床精神医学. 2000;29:1057-1062.5)Kim HR, et al. Can J Psychiatry. 1990;35:107-114.6)Baumann P, et al. J Clin Psychopharmacol. 1996;16:307-314.7)Bauer M, et al. J Clin Psychopharmacol. 1999;19:164-171.8)Edwards S, et al. Health Technol Assess. 2013;17:1-190.※エキスパートに聞く!「うつ病診療」Q&A Part1はこちら

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睡眠に関する記事 まとめ

 高知県四万十市で国内の観測史上最高の41℃が観測されるなど、2013年は例年にない猛暑に見舞われている。連日の熱帯夜に寝苦しい思いをされている方も多いのではないか。医学論文にも睡眠にまつわる文献が多数投稿されている。今回は睡眠に関する記事をまとめて紹介する。寝室での夜間光曝露がうつ病に関連 現代生活では夜間光曝露が増加しているが、夜間光曝露はサーカディアンリズム(生体の概日リズム)の変調に関連している。しかし、家庭における夜間光曝露がうつ病と関連しているかどうかは不明である。今回、奈良県立医科大学地域健康医学講座の大林 賢史氏らが高齢者を対象とした研究の横断解析を行った結果、一般の高齢者において自宅の夜間光曝露が抑うつ症状に有意に関連することが示唆され、寝室を夜間暗く保つことによってうつ病のリスクが低下する可能性が示された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2013年7月12日号に報告。http://www.carenet.com/news/general/carenet/35649境界性パーソナリティ障害と睡眠障害は密接に関連 Edward A. Selby氏は、境界性パーソナリティ障害(BPD)と睡眠障害の関連について、レトロスペクティブに検討を行った。その結果、BPDと睡眠障害との間に関連が認められ、両者が相互に悪影響を及ぼし合っている可能性が示唆された。これまで、BPDにおける慢性睡眠障害の状況を検討した研究は少なかった。Journal of Consulting and Clinical Psychology誌オンライン版2013年6月3日号の掲載報告。http://www.carenet.com/news/general/carenet/35263閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と閉塞性肺疾患の有病率の関係は? 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と閉塞性肺疾患の有病率に関係はあるのか。OSAを有する成人患者とOSAのない成人患者において、COPD、喘息、COPDと喘息の合併、それぞれの有病率を検討した。http://www.carenet.com/news/population/carenet/35168メラトニン分泌の低下が2型糖尿病発症リスクを増大/JAMA メラトニン分泌の低下と2型糖尿病発症リスクの増大が独立して関連していることが明らかにされた。米国・ハーバード公衆衛生大学院のCiaran J. McMullan氏らが行った症例対照研究の結果で、夜間のメラトニン分泌低下とインスリン抵抗性の増大との関連も明らかになったという。メラトニンは体内時計のコントロール下にあり、一般的には夜間の就寝後3~5時間で分泌はピークに達し日中はほとんど産生されない。先行研究において、メラトニンの糖代謝における役割の可能性が示唆され、またゲノムワイド研究ではメラトニン受容体の機能喪失と2型糖尿病発症率との関連などが報告されていたが、メラトニン分泌と2型糖尿病との関連を前向きに検討した報告はなかった。JAMA誌2013年4月3日号掲載の報告。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/34333長距離ドライバーのカフェイン摂取、事故リスク減少と関連/BMJ 商業用自動車の長距離ドライバーにとって、お茶やコーヒー、カフェイン錠剤などの法的に認められているカフェイン添加物は、事故のリスクを6割強減少することが、オーストラリア・ジョージ国際保健研究所のLisa N Sharwood氏らによる症例対照研究の結果、明らかになった。長距離ドライバーに関しては、疲労対策として違法な刺激物(コカインなど)の使用が知られる。一方で、カフェインは法的に認められた刺激物で広く消費されており、シミュレーションでは運転者の敏捷性や作業効率を亢進することが示されていたが、リアルワールドでの研究は行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2013年3月18日号の掲載報告。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/34105閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療、プライマリ・ケアでも提供可能/JAMA 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療について、プライマリ・ケアでの提供が、睡眠専門医療施設での提供に匹敵することが、オーストラリア・フリンダース大学のChing Li Chai-Coetzer氏らによる無作為化非劣性試験の結果、示された。睡眠障害への気づきと受診を促す啓発活動や肥満者の増大でOSA治療のために専門施設を受診する患者が増え、戦略的な外来治療への関心が高まってきている。プライマリ・ケア受診患者の約3分の1にOSAの疑いがあるとの報告もあり、Chai-Coetzer氏らは、適切な訓練と簡便なマネジメントツールで、プライマリ・ケアでのOSA治療が提供可能か本検討を行った。JAMA誌2013年3月13日号掲載の報告より。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/33989ナルコレプシーのリスクが約16倍に、インフルワクチン接種の子ども/BMJ ASO3アジュバント添加パンデミックA/H1N1 2009インフルエンザワクチン(Pandemrix)の接種を受けた英国の子どもで、接種後6ヵ月以内に睡眠障害であるナルコレプシーを発症するリスクが約16倍に増大したことが、同国健康保護局(HPA)のElizabeth Miller氏らの調査で明らかとなった。2010年8月、フィンランドとスウェーデンで同ワクチンの接種とナルコレプシーの関連を示唆するデータが提示され、2012年にはフィンランドの疫学調査により、ワクチン接種を受けた小児/青少年でリスクが13倍に増大したことが判明した。現在、北欧諸国以外の国での検証が進められている。BMJ誌オンライン版2013年2月26日号掲載の報告。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/33889統合失調症の陰性症状有病率、脳波や睡眠状態が関連か 統合失調症の研究では、臨床的な不均一性が混乱を招いていることを踏まえ、米国・ウェイン州立大学のNash N. Boutros氏らは、Deficit Syndrome(DS)を考慮した統合失調症の陰性症状集団の特定を試みた。統合失調症症候群に含まれる疾患として欠損型統合失調症(deficit schizophrenia)が提唱されており、欠損症候群診断基準(SDS;Scale for the Deficit Syndrome)の活用により持続的な陰性症状を特徴とするサブグループの特定が可能とされている。しかし長年にわたり、統合失調症の陰性症状集団の電気生理学的な相互作用を検討した研究は報告されているが、DSに焦点を当てた研究はごくわずかしかないのだという。Clinical Schizophrenia & Related Psychoses誌オンライン版2013年2月21日号の掲載報告。http://www.carenet.com/news/general/carenet/33732てんかん患者の50%以上が不眠症を合併! てんかん患者では睡眠障害が頻繁にみられるものの、不眠症とてんかんとの関係はほとんど明らかとなっていない。ボストン大学のMartina Vendrame氏らは、てんかん患者における睡眠状態に関して調査した。Journal of clinical sleep medicine誌オンライン版2013年2月1日号の報告。http://www.carenet.com/news/population/carenet/33636むずむず脚症候群と統合失調症、遺伝子の関連が示唆 脚がむずむずして眠れない、といった症状を呈するむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)。その原因は明らかになってはいないが、脳内のドパミン調節機能障害や鉄分の不足が大きく影響していると言われている。また、ゲノムワイド関連解析やいくつかのレプリケーション研究により、RLSとBTBD9遺伝子の一塩基多型との関連も示されている。韓国のSeung-Gul Kang氏らは抗精神病薬誘発性のRLSと統合失調症患者のBTBD9遺伝子多型との関連を調査した。Human psychopharmacology誌オンライン版2013年1月30日号の報告。http://www.carenet.com/news/general/carenet/33516低用量ゾルピデム舌下錠、不眠症患者における中途覚醒後の入眠潜時を短縮 米国・ヘンリーフォード病院(デトロイト)のThomas Roth氏らは、中途覚醒後の入眠困難を訴える不眠症患者を対象に、新規低用量ゾルピデム舌下錠の有用性をプラセボと比較検討した。その結果、低用量ゾルピデム舌下錠は中途覚醒後の入眠潜時を有意に短縮することを報告した。Sleep誌2013年2月1日号の掲載報告。http://www.carenet.com/news/head/carenet/33494検証!統合失調症患者の睡眠状態とは 統合失調症患者では、睡眠状態に問題を抱えることがしばしば見られる。また、睡眠状態が統合失調症の各症状に影響を及ぼす可能性もある。ポルトガル・リスボン精神病院センターのPedro Afonso氏らは、睡眠パターンや睡眠の質、QOLに関して、統合失調症患者と健常者で違いがあるかを検討した。The world journal of biological psychiatry : the official journal of the World Federation of Societies of Biological Psychiatry誌オンライン版2013年1月15日号の報告。http://www.carenet.com/news/head/carenet/33323

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原発性骨髄線維症〔 primary myelofibrosis 〕

1 疾患概要■ 概念・定義原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis)は、造血幹細胞レベルで生じた遺伝子異常により骨髄で巨核球と顆粒球系細胞が増殖し、骨髄に広範な線維化を来す骨髄増殖性腫瘍である。本疾患は骨髄組織における異型性のある巨核球の過形成を伴う、広範かつ過剰な反応性の膠原線維の増生による造血巣の縮小と骨硬化、および脾腫を伴う著明な髄外造血を特徴とする。■ 疫学わが国における推定新規発症例は年間40~50例で、患者数は全国で約700人と推定される。本疾患は高齢者に多く、発症年齢中央値は65歳、男女比は1.96:1である。■ 病因原発性骨髄線維症の40~50%には、サイトカインのシグナル伝達に必須なチロシンキナーゼであるJAK2において、617番目のアミノ酸がバリンからフェニルアラニンへ置換(V617F)される遺伝子変異が生じ、JAK2の活性が恒常的に亢進する。その結果、巨核球が腫瘍性に増殖し、transforming growth factor-β(TGF-β)やosteoprotegerin(OPG)を過剰に産生・放出し、二次的な骨髄の線維化と骨硬化を生じるものと考えられる。JAK2以外には、c-MPL(トロンボポエチンのレセプター)に遺伝子変異を有する症例が5~8%存在し、ほかにはTET2、C-CBL、ASXL1、EZH2などの遺伝子変異が報告されている。■ 症状初発症状のうち最も多いのが動悸、息切れ、倦怠感などの貧血症状であり、40~60%に認められる。脾腫に伴う腹部膨満感、食欲不振、腹痛などの腹部症状を20~30%に認め、ときに臍下部まで達する巨脾を来すことがある。ほかには紫斑、歯肉出血などの出血傾向や、発熱、盗汗、体重減少が初発症状になりうる。一方、20~30%の症例は診断時に無症状であり、健康診断における血液検査値異常や脾腫などで発見される。■ 分類骨髄線維症は骨髄に広範な線維化を来す疾患の総称であり、骨髄増殖性腫瘍に分類される原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis)と、基礎疾患に続発する二次性骨髄線維症(secondary myelofibrosis)に分けられる。二次性骨髄線維症は、骨髄異形成症候群、真性多血症、原発性血小板血症などの血液疾患に続発することが多く、ほかには固形腫瘍、結核などの感染症、SLEや強皮症などの膠原病に続発することもある。本稿では原発性骨髄線維症を中心に述べる。■ 予後わが国での原発性骨髄線維症466例(1999~2009年)の後方視的な検討では、5年生存率38%、平均生存期間は3.4年である。しかし、原発性骨髄線維症の臨床経過は均一ではなく、症例間によるばらつきが大きい。わが国での主な死因は、感染症27%、出血6%、白血化15%である。2008年にInternational Working Group for Myelofibrosis Research and Treatmentから発表された予後不良因子と、後方視的に集積したわが国での70歳以下の症例を用いた特発性造血障害に関する調査研究班(谷本ほか)による解析を表1に示す1,2)。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)増殖した巨核球や単球から産生される種々のサイトカインが骨髄間質細胞に作用し、骨髄の線維化、血管新生および骨硬化、髄外造血による巨脾、無効造血、末梢血での涙滴状赤血球(tear drop erythrocyte)の出現、白赤芽球症(leukoerythroblastosis)などの特徴的な臨床症状を呈する。骨髄穿刺の際、骨髄液が吸引できないことが多く(dry tap)、このため骨髄生検が必須であり、HE染色にて膠原線維の増生を、あるいは鍍銀染色にて細網線維の増生を証明する。2008年のWHO診断基準を表2に示す。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)低リスク群は支持療法のみでも長期の生存が期待できるために、無症状であればwatchful waitingの方針が望ましい。中間群および高リスク群では、適切なドナーが存在する場合には、診断後早期の同種造血幹細胞移植を念頭に治療にあたる。■ 薬物療法症状を有する低リスク群、移植適応のない中間群および高リスク群では、貧血や脾腫の改善などの症状緩和を期待して薬物療法を選択する。蛋白同化ホルモンであるダナゾール(商品名: ボンゾール:600mg/日)や酢酸メテノロン(同: プリモボラン:0.25~0.5mg/kg/日)は、30~40%の症例で貧血改善に有効である。少量メルファラン(同:アルケラン、1日量2.5mg、週3回投与)、サリドマイド(同:サレド、50mg/日)+プレドニゾロン(0.5mg/kg/日)、レナリドミド(同:レブラミド、5~10mg/日、21日間投与、7日間休薬)+プレドニゾロン(15~30mg/日)は、貧血、血小板減少、脾腫の改善効果が報告されている(保険適用外)。■ 脾臓への放射線照射・脾臓摘出脾腫に伴う腹部症状の改善を目的に脾臓への放射線照射を行うと、93.9%に脾腫の縮小が認められ、その効果は平均6ヵ月(1~41ヵ月)持続した。主な副作用は血球減少であり、23例中10例(43.5%)に出現した。脾摘に関しては、脾腫による腹部症状の改善や貧血に対し効果が認められているが、周術期の死亡率が9%と高く、合併症も31%に生じていることから、適応は慎重に判断すべきである。■ 同種造血幹細胞移植原発性骨髄線維症は薬物療法による治癒は困難であり、同種造血幹細胞移植が唯一の治癒的治療法である。しかし、移植関連死亡率は27~43%と高く、それに伴い全生存率は30~40%前後にとどまっている。治療関連毒性がより少ない骨髄非破壊的幹細胞移植(ミニ移植)は、いまだ少数例の検討しかなされておらず長期予後も不明ではあるが、移植後1年の治療関連死亡は約20%、予測5年全生存率も67%であり、期待できる成績が得られている。現時点では、骨髄破壊的前治療と骨髄非破壊的前治療のどちらを選択すべきかの結論は出ておらず、今後の検討課題である。4 今後の展望今後、わが国での臨床試験を経て実地医療として期待される治療としては、pomalidomide、JAK2阻害薬などがある。新規のサリドマイド誘導体であるpomalidomideの第II相試験が行われており、pomalidomide(0.5mg/日)+プレドニゾロン投与により、22例中8例(36%)に貧血の改善がみられた。現在開発中のJAK2阻害薬であるINCB018424(Ruxolitinib)は、腫瘍クローンの著明な減少・消失は来さないものの、脾腫の改善、骨髄線維症に伴う自覚症状の改善がみられている。ただし、生命予後の改善効果の有無は、今後の検討課題である。わが国での臨床試験が待たれる薬剤として、ほかにはCEP-701(Lestautinib)、TG101209などがある。5 主たる診療科血液内科、あるいは血液・腫瘍内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)特発性造血障害調査に関する調査研究班(診療の参照ガイドがダウンロードできる)1)Cervantes F, et al. Blood. 2009; 113: 2895-2901.2)Okamura T, et al. Int J Hematol. 2001; 73: 194-198.

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境界性パーソナリティ障害と睡眠障害は密接に関連

 Edward A. Selby氏は、境界性パーソナリティ障害(BPD)と睡眠障害の関連について、レトロスペクティブに検討を行った。その結果、BPDと睡眠障害との間に関連が認められ、両者が相互に悪影響を及ぼし合っている可能性が示唆された。これまで、BPDにおける慢性睡眠障害の状況を検討した研究は少なかった。Journal of Consulting and Clinical Psychology誌オンライン版2013年6月3日号の掲載報告。 睡眠と感情の制御およびストレス管理との関連を明らかにしてこれらの関係を立証することは、現在の治療の向上につながりうる。本研究で著者は、パーソナリティ障害と睡眠障害について評価しているNational Comorbidity Survey-Replication(NCS-R)Part IIの母集団(Kessler & Merikangas、2004のデータ[5,692例])を解析し、慢性睡眠障害の程度(入眠困難、睡眠維持困難、早期覚醒)と、その結果としての浅眠について検討した。 慢性的な健康の問題、Axis Iの合併症、過去1年間の自殺企図および社会人口統計学的な項目を踏まえたうえで、BPDの診断項目と症状を用いてロジスティックおよび線形回帰解析を行い、睡眠と関連する問題の予測を行った。 主な結果は以下のとおり。・BPDは、慢性の睡眠に関連する3つの問題すべてと有意に関連しており、その結果として不眠症とも関連していた。・BPDと睡眠の問題との関連の程度は、従来より示されているAxis I障害と睡眠の問題との関連の程度に匹敵するものであった。・BPDの症状は慢性の睡眠の問題と相互に作用し、社会的/感情障害、認知障害、自己管理障害に関連していることが予測された。・以上より著者は、「睡眠障害とBPD症状との間には一貫した関連がみられ、日中の浅眠につながっている。そして浅眠によりBPD症状が悪化するという悪循環が、高レベルの機能障害につながっている」とまとめ、「BPD患者の睡眠状況を日常的に評価すべきであり、慢性の睡眠問題の解決は、感情コントロールの改善、治療スキルの実施を通して治療の向上につながる可能性がある」と考察している。関連医療ニュース 境界性パーソナリティ障害患者の自殺行為を減少させるには 双極性障害の自殺予防に求められるのは・・・ 検証!統合失調症患者の睡眠状態とは

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脳卒中およびTIAのリスク評価に有効な新アルゴリズム「Q Strokeスコア」/BMJ

 英国・パーク大学のJulia Hippisley-Cox氏らは、脳卒中やTIA非既往の一般集団の同リスクを推定するための新たなアルゴリズム「Q Strokeスコア」を開発した。同スコアは、プライマリ・ケアで用いることを目的としたもので、従来のCHADS2などと比較検証した結果、より有効であることを報告した。特に抗凝固療法が必要となる可能性がある心房細動を有する患者においてリスクスコアを改善することが示された。今後は、プライマリ・ケアでの使用に値するのか費用対効果の検証が必要であるとまとめている。BMJ誌オンライン版2013年5月2日号掲載の報告より。初発脳卒中を定量化することを目的とした新たなアルゴリズム CHADS2やCHA2DS2VAScなどは統計学的モデルに基づいたものではなく、確立したリスク因子が少なく、脳卒中の絶対推定リスクを提供できるものではないことから、研究グループは、新たなリスクアルゴリズムの開発を試みた。 新たなアルゴリズムは、初発脳卒中を定量化することを目的としたもので、心血管疾患アルゴリズム「QRISK2」を参考にデザインした。 本検討では、新たに開発した「Q Stroke」について、(1)心房細動患者においてCHADS2およびCHA2DS2VAScスコアとの比較を行うこと、(2)脳卒中またはTIAを有さない一般集団においてフラミンガム脳卒中スコアと比較したパフォーマンスを調べることを目的とした。 アルゴリズムの開発は、全英QResearchデータベースにリンクしているイングランドとウェールズの451人の開業医(GP)のデータに基づき行われ、検証は同データベースから異なる225人のデータを用いて行った。 主要評価項目は、フォローアップ中のGPの脳卒中またはTIA発生の診断記録あるいは死亡診断記録とした。Q Strokeアルゴリズムは心房細動患者についても従来スコアよりも識別を改善 開発コホートには、25~84歳の350万人の患者、計2,480万人・年が組み込まれた。脳卒中イベント件数は7万7,578件であった。検証コホートには、25~84歳の190万人の患者、計1,270万人・年が組み込まれた。試験登録時に、脳卒中またはTIAの既往がある患者、経口抗凝固薬の処方記録がある患者は除外した。 リスク因子は、「自己申告の人種」「年齢」「性」「喫煙状態」「収縮期血圧」「血清総コレステロール/HDL比」「BMI」「冠動脈心疾患の家族歴(一親等60歳未満)」「タウンゼンドうつ病スコア」「高血圧症治療歴」「1型糖尿病」「2型糖尿病」「腎疾患」「関節リウマチ」「冠動脈心疾患」「うっ血性心不全」「心臓弁膜症」「心房細動」の有無とした。 結果、Q Strokeアルゴリズムにより、脳卒中非既往の女性では57%、男性では55%の生存データに関する変動が示された。 D統計値は、女性2.4、男性2.3で、識別が改善されたことが明らかになった。 脳卒中非既往患者においてフラミンガムスコアと比較して、QStrokeはすべての識別および検定において改善が示された。 心房細動患者においては、QStrokeの識別能は低かったが、CHADS2およびCHA2DS2VAScよりもすべての識別指標についてパフォーマンスの改善が示された。

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治療抵抗性の双極性障害、認知機能への影響は?

 双極性障害患者では認知機能障害を呈することが少なくないが、これらの関係については十分に報告されていない。Ute Kessler氏らは、治療抵抗性の双極性障害I型およびII型の患者における、神経認知障害を評価した。その結果、認知障害はII型と比べてI型患者でより多く、とくに処理速度に関する障害の頻度が高かった。所見を踏まえて著者は「本結果は、臨床家は、とくに双極性障害I型の治療抵抗性の患者において神経認知障害が重度であることに留意すべきであることを示すものである」と述べている。BMC Psychiatryオンライン版2013年4月号の掲載報告。 本研究は、治療抵抗性の急性双極性障害が認められた入院患者の神経認知プロファイルを評価し、同I型とII型患者の神経認知について比較を行い、人口統計学的および臨床的疾患特性と認知機能との関連を特定することを目的とした。DSM-IV-TRで大うつ病エピソードが認められた急性期の双極性障害I型(19例)と同II型(32例)の入院患者について、MATRICS Consensus Cognitive Battery(MCCB)、Wechsler Abbreviated Scale of Intelligence(WASI)、National Adult Reading Testなどで評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・神経認知障害は、MCCBの全評価において双極性障害I型およびII型の患者で明らかであった。・すべてのMCCB測定スコアが、II型群よりI型群で低値であった。あるカテゴリーについて名詞をどれだけ言えるか(category fluency)についての測定スコアは有意差が認められた。・I型患者の68.4%で、2つ以上の領域で障害(標準平均値より>1.5 SD低下)がみられ、これはII型患者の37.5%と比べて有意に多かった(p=0.045)。・発症前から直近にかけてのIQ低下は、I型患者では有意であったが、II型患者では有意ではなかった。・年齢が高いと、神経認知障害は年齢調整後標準値に比して大きかった。関連医療ニュース ・難治性双極性障害患者への併用療法は? ・双極性障害の再発予防に対し、認知療法は有効か? ・双極性障害の治療アドヒアランスを改善するには?

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閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療、プライマリ・ケアでも提供可能/JAMA

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療について、プライマリ・ケアでの提供が、睡眠専門医療施設での提供に匹敵することが、オーストラリア・フリンダース大学のChing Li Chai-Coetzer氏らによる無作為化非劣性試験の結果、示された。睡眠障害への気づきと受診を促す啓発活動や肥満者の増大でOSA治療のために専門施設を受診する患者が増え、戦略的な外来治療への関心が高まってきている。プライマリ・ケア受診患者の約3分の1にOSAの疑いがあるとの報告もあり、Chai-Coetzer氏らは、適切な訓練と簡便なマネジメントツールで、プライマリ・ケアでのOSA治療が提供可能か本検討を行った。JAMA誌2013年3月13日号掲載の報告より。同一の介入について6ヵ月時点の睡眠障害改善を専門施設と比較 先行研究では、専門施設でのOSAの外来治療について、受診治療と自宅でのモニタリングおよび自動持続的気道陽圧法(CPAP)による治療との比較は行われている。しかしそうした外来アプローチについて、プライマリ・ケアでの提供の可能性については不明であった。 Chai-Coetzer氏らは本検討で、簡易診断・ケアモデルの効果とコストについて、プライマリ・ケアと、専門医がいる睡眠医療センターとを比較することを目的とした。コストについては本試験限定とした。 対象は、2008年9月~2010年6月の間、南オーストラリア州の州都アデレードと同州3つの地方都市のプライマリ・ケア施設(16のプライマリ・ケアクリニックと5つの地域看護師クリニック)で治療を受けたOSA患者81例と、アデレードの大学病院で治療を受けたOSA患者74例の合計155例であった。両群ともに、CPAP、OSA治療用マウススプリント(mandibular advancement splints)、保存療法のみの計画で介入を受けた。 主要アウトカムは、Epworth Sleepiness Scale(ESS)スコア[範囲:0(日中に眠気がない)~24(日中の眠気が高レベル)]の6ヵ月間の変化とした(非劣性マージン-2.0)。副次アウトカムは疾患特異的・一般的QOL、OSA症状、CPAP使用のアドヒアランス、患者満足度、医療コストなどだった。ESSスコアの平均変化値に有意差なし 結果、6ヵ月時点のESSスコアは両群とも大きく改善していた。プライマリ・ケア群は、平均スコアがベースラインの12.8から7.0に減少し(p<0.001)、専門医群は同12.5から7.0へ減少した(p<0.001)。ESSスコアの補正後の平均変化値は、プライマリ・ケア群は5.8であり、専門医群の同値5.4に対して非劣性であることが示された(補正後格差:-0.13、95%信頼区間下限値:-1.5、p=0.43)。 副次アウトカムについても両群間で有意な差はなかった。 ただし、試験途中での脱落が、プライマリ・ケア群で17例(21%)、専門医群で6例(8%)みられた。

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グルタミン酸トランスポーター遺伝子と統合失調症・双極性障害の関係

 米国・ニューヨーク州立大学SUNYアップステート医科大学のMarina Myles-Worsley氏らは、統合失調症と双極性障害の間に遺伝的な重複がみられることに着目し、グルタミン酸トランスポーター遺伝子であるSLC1A1遺伝子変異について検討を行った。その結果、SLC1A1遺伝子の欠失が認められ、家系内で共分離していることを報告した。American Journal of Medical Genetics Part B: Neuropsychiatric Genetics誌2013年3月号(オンライン版2013年1月22日号)の掲載報告。 統合失調症と双極性障害の間に遺伝的な重複がみられるというエビデンスが蓄積されており、疾患発症リスクに大きな影響を及ぼす原因変異は、従来から診断の境界とされる部分とクロスしている可能性が示唆される。研究グループは、多世代にわたり統合失調症と双極性障害の両方を有する家系は、背景にある遺伝子破壊の自然経過およびその表現型を明らかにできるため、疾患の発症に関連する共通の生物学的経路を明らかにするうえで有意義な対象であるとして、本検討を行った。5世代のパラオ人家系が保有する遺伝子コピー変異としてしばしば特定される、グルタミン酸トランスポーター遺伝子「SLC1A1遺伝子」の欠失について検討を行った。家系内の21人の検体を用いて定量PCR法を実施した。 主な結果は以下のとおり。・精神障害を有する7人全員で遺伝子欠失を確認した。内訳をみると、「両親が絶対保因者」が3人、「表現型を有さない兄弟姉妹」が1人、「両親が非保因者」が4人であった。・常染色体優性モデルを用いた連鎖解析により、LOD値3.64という結果が得られ、精神障害者においては遺伝子欠失が共分離していることが判明した。・遺伝子欠失の正確な局在を明らかにするため、1人の欠失保因者に対して次世代シーケンスデータ配列を用い、PCR産物であるアンプリコンすべての欠失遺伝子座を評価して正確な欠失エンドポイントを決定した。・その結果、欠失spanは84,298 bpであり、翻訳開始部位の全プロモーター領域が欠落していることが示唆された。その部位は、タンパク質を構成する59アミノ酸の先端であり、グルタミン酸輸送作用を示すドメインの1つである膜貫通Na2+/ジカルボキシル酸共輸送体ドメインを含んでいた。・機能的に関連するSLC1A1変異の発見と、多世代にわたり共分離がみられる家系の存在は、精神障害の病態生理においてグルタミン酸伝達が重要な役割を果たしていることをさらに支持する知見と言えた。関連医療ニュース ・グルタミン酸ドパミンD3受容体遮断による統合失調症の新たな創薬の可能性 ・統合失調症の遂行機能改善に有望!グルタミン酸を介した「L-カルノシン」 ・グルタミン酸作動性システムは大うつ病の効果的な治療ターゲット

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統合失調症の陰性症状有病率、脳波や睡眠状態が関連か

 統合失調症の研究では、臨床的な不均一性が混乱を招いていることを踏まえ、米国・ウェイン州立大学のNash N. Boutros氏らは、Deficit Syndrome(DS)を考慮した統合失調症の陰性症状集団の特定を試みた。統合失調症症候群に含まれる疾患として欠損型統合失調症(deficit schizophrenia)が提唱されており、欠損症候群診断基準(SDS;Scale for the Deficit Syndrome)の活用により持続的な陰性症状を特徴とするサブグループの特定が可能とされている。しかし長年にわたり、統合失調症の陰性症状集団の電気生理学的な相互作用を検討した研究は報告されているが、DSに焦点を当てた研究はごくわずかしかないのだという。Clinical Schizophrenia & Related Psychoses誌オンライン版2013年2月21日号の掲載報告。 研究グループは、PubMedおよびMedlineにて、「陰性症状」および「Deficit Syndrome」、電気生理学的評価ツール(「脳波検査(EEG)」「Evoked Potentials(EPs)」「睡眠ポリグラフ(PSG)」のうち1つ)が、インデックスとして付けられているすべての研究報告を検索した。 主な知見は以下のとおり。・この研究はまだ揺籃期にあるが、2つの有意な傾向が明らかになった。・第1に、EEGのスペクトル研究により、覚醒中の徐派(slow wave)活性の増大と陰性症状の有病率が結び付くこと。・第2に、睡眠研究が、徐波睡眠(slow-wave sleep)の減少と陰性症状の有病率との関連を示していることである。・また、数例の研究で陰性症状とα派活性の低下との関連も示されていた。・感覚情報のゲーティングやP300 attenuationなどその他の異常については、ほとんど報告がなかった。・DSの電気生理学的特性を対象としていた研究は2件であった。いずれの研究も、DSは統合失調症とは異なる疾患であり、単なる重症型ではない可能性を示唆するエビデンスが示されていた。関連医療ニュース ・抗精神病薬投与前に予後予測は可能か? ・長時間作用型注射製剤は、統合失調症患者の入院減少と入院期間短縮に寄与 ・統合失調症患者の再発を予測することは可能か?

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てんかん患者の50%以上が不眠症を合併!

 てんかん患者では睡眠障害が頻繁にみられるものの、不眠症とてんかんとの関係はほとんど明らかとなっていない。ボストン大学のMartina Vendrame氏らは、てんかん患者における睡眠状態に関して調査した。Journal of clinical sleep medicine誌オンライン版2013年2月1日号の報告。 対象はてんかん患者152例(平均年齢:46歳)。目的は(1)てんかん患者における不眠症の有病率や程度を分析する(2)臨床的特徴と不眠症との相関を調査する(3)質の低い睡眠がQOLに及ぼす影響を検討する。調査項目は不眠重症度評定尺度、ピッツバーグ睡眠質問票、ベック抑うつ質問票、てんかん患者用QOL質問票(QOLIE-31)によるQOL評価とした。除外対象は閉塞性睡眠時無呼吸症候群など他の睡眠障害を有する患者。年齢、てんかんの罹病期間、抗てんかん薬の数、併存疾患、抑うつスコアで調整し、回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・てんかん患者の半数以上(55%)は不眠症であった。また、70%以上の患者は睡眠の質が低下していた。・不眠症や睡眠の質の低下は、抗てんかん薬の数や抑うつスコアと有意な相関が認められた。・不眠症や睡眠の質の低下は、QOL低下の有意な予測因子であった(共変量にて調整)。・これらの結果から、てんかん患者では、不眠症や睡眠の質の低下を有しており、QOLに悪影響を与えることが示唆された。・さらなる研究により、てんかん患者における睡眠の改善が発作のコントロールやQOL向上につながるかを検討する必要がある。関連医療ニュース ・検証!統合失調症患者の睡眠状態とは ・不眠症の人おすすめのリラクゼーション法とは ・睡眠薬、長期使用でも効果は持続

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