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早期乳がん術前Dato-DXd+デュルバルマブ、33%が化学療法をスキップ可(I-SPY2.2)/ASCO2024

 70遺伝子シグネチャー(MammaPrint)で高リスクのStageII/IIIの早期乳がんの術前療法として、抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)+デュルバルマブ併用療法を4サイクル投与した第II相I-SPY2.2試験の結果、33%の患者が化学療法を行わずに手術が可能となったことを、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRebecca A. Shatsky氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。 I-SPY2.2試験は、高リスク早期乳がんの術前療法を評価する多施設共同第II相プラットフォーム連続多段階ランダム割付試験(Sequential Multiple Assignment Randomized Trials:SMART)※で、患者が最大の病理学的完全奏効(pCR)を得るための個別化医療を提供することを目的としている。ブロックAでDato-DXd+デュルバルマブを4サイクル投与し、MRIと生検でpCRが予測された場合は早期に手術を受けることができ、予測されない場合は化学療法や標的療法を行うブロックB/Cに進む。今回は、ブロックAの結果が報告された。※連続多段階ランダム割付試験:連続する多段階のランダム割り付けを通して、一連の動的治療計画を立てるためのデザイン 患者(すべてHER2-)は、免疫反応、DNA修復不全(DRD)、ホルモン受容体の状況に基づいて、(1)HR陽性/免疫陰性/DRD陰性、(2)HR陰性/免疫陰性/DRD陰性、(3)免疫陽性、(4)免疫陰性/DRD陽性、(5)HR+、(6)HR-の6つの腫瘍反応予測サブタイプ(RPS)に分類された。主要評価項目はpCRの達成であった。 主な結果は以下のとおり。・2022年9月~2023年8月に106例がブロックAに登録された。年齢中央値は50.0歳(範囲:25.0~77.0)、HR-が60.4%であった。・ブロックA終了後、33%(35例)が化学療法を受けることなく早期に手術に進むことができた。・Dato-DXd+デュルバルマブ治療後のRPS分類によるpCR率(95%信頼区間)と事前に設定された閾値は下記のとおり。 (1)HR陽性/免疫陰性/DRD陰性(25例):3%(0~7)、閾値15% (2)HR陰性/免疫陰性/DRD陰性(23例):13%(3~23)、閾値15% (3)免疫陽性(47例):65%(47~83)、閾値40% (4)免疫陰性/DRD陽性(11例):24%(4~44)、閾値40% (5)HR+(42例):18%(6~30)、閾値15% (6)HR-(64例):44%(32~56)、閾値40%・(3)の免疫陽性のサブタイプ(HR+もHR-も含む)のみが第III相試験へ進むための「卒業」の閾値に到達した。・安全性プロファイルは既知のものと同様であった。多く発現した有害事象(AE)は、悪心、口内炎、疲労、発疹、便秘、脱毛などで、Grade3以上のAEはまれであった。間質性肺疾患は1例に発現した。

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血液検査で危険なタイプの脳卒中を判別

 脳卒中を発症すると、ニューロンは数分で死滅し始めるため、脳卒中のタイプを迅速に特定して対処することが鍵となる。その特定プロセスを早めることができる血液検査の開発についての研究成果が、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJoshua Bernstock氏らにより報告された。この血液検査により、患者の発症した脳卒中が致死率の高い主幹動脈閉塞(LVO)を伴うものであるかどうかを高い精度で判定できることが示されたという。この研究結果は、「Stroke: Vascular and Interventional Neurology」に5月17日掲載された。 LVOを伴う脳梗塞であることが分かれば、医師は機械的血栓回収療法による治療を実施できる。これは、脳梗塞の原因となっている血栓を取り除く外科的手法だ。研究論文の上席著者であるBernstock氏は同病院のニュースリリースの中で、「機械的血栓回収療法のおかげで、この手術を行わなければ死亡するか重大な障害を負っていたであろう人が、あたかも脳卒中など経験しなかったかのように完全回復することができる」と説明している。同氏は続けて、「この治療は、迅速に行えば行うほど、患者の予後も良好になる」と指摘し、「われわれが開発したこの素晴らしい検査法は、世界中でより多くの人がより迅速にこの治療を受けられるようにする可能性を秘めている」と話している。 Bernstock氏らは以前、血液中に検出される2種類のタンパク質、すなわち出血性脳卒中や外傷性脳損傷とも関連するグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)と血栓形成の指標であるDダイマーに注目した研究を実施していた。今回の研究では、脳卒中の発症が疑われる323人の患者を対象に、これらの血液ベースのバイオマーカーのレベルを脳卒中の重症度を評価する5種類の指標と組み合わせることで、LVOを伴う脳梗塞の検出精度が向上するかどうかが検討された。対象患者の脳卒中のタイプは、LVOを伴う脳梗塞が9%、LVOを伴わない脳梗塞が15%、出血性脳卒中が4%、一過性脳虚血発作が3.9%、脳卒中ではないが脳卒中に似た症状を呈するstroke mimicsが68.1%を占めていた。 その結果、GFAPとDダイマーにFAST-ED(Field Assessment Stroke Triage for Emergency Destination、救急搬送先の現場評価脳卒中トリアージ)スコアを組み合わせた場合にLVOを伴う脳梗塞の検出精度が最も高くなり、脳卒中の発症から6時間以内に検査を行った場合の特異度は93%、感度は81%であることが示された。また、この検査により出血性脳卒中患者を除外できることも明らかになった。この結果は、将来的には出血性脳卒中を見つけるためにこの検査法を活用できる可能性のあることを示唆している。 Bernstock氏は、この新しい脳卒中の検査法は、「より多くの脳卒中患者が、適切なタイミングと場所で命を回復させるための重要な治療を受けられるようにするための、革新的で利用しやすいツールになる可能性を秘めている」と語っている。さらに同氏らは、この検査法が緊急事態における出血性脳卒中の発見や除外にも役立つだけでなく、ハイテクの診断スキャンが利用できないような貧困国で特に有用になると考えている。 Bernstock氏らは今後、救急車内でのこの検査の有効性を検証する予定であるとしている。Bernstock氏は、「患者を予防から回復までの適切な治療の流れに乗せるのが早ければ早いほど、予後は良好になる。それが出血性脳卒中を除外することであれ、介入を必要とする何かを除外することであれ、われわれが開発した技術によって病院到着前の環境で行うことができるようになれば、真に革新的なものになるだろう」と述べている。

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SMART療法を処方される喘息患者は少ない

 吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用型β2刺激薬(LABA)の合剤を、喘息の長期管理薬としても発作発現時の治療薬としても用いる治療法をSMART(スマート)療法という。この治療法は、全米喘息教育予防プログラムと喘息グローバルイニシアチブのそれぞれのガイドラインで使用が推奨されている。しかし、新たな研究で、中等度から重度の成人喘息患者のうち、SMART療法が処方されているのはわずか15%程度に過ぎず、呼吸器およびアレルギー専門医の40%以上がこの治療法を採用していないことが明らかになった。米イエール大学医学部の呼吸器・集中治療医であるSandra Zaeh氏らによるこの研究結果は、米国胸部学会(ATS 2024、5月17〜22日、米サンディエゴ)で発表された。 米国でのSMART療法には、ICSのブデソニドと、即効性の気管支拡張作用を併せ持つLABAであるホルモテロール配合のシムビコートや、モメタゾン(ICS)とホルモテロール配合のDuleraなどがある。SMART療法が登場する以前の喘息のガイドラインでは、長期管理薬として1日2回のICSの使用に加え、発作時には短時間作用型β2刺激薬(SABA)のアルブテロールのようなレスキュー薬の使用が推奨されていた。その後、2021年までに米国のガイドラインが更新され、維持療法とレスキュー療法の両方の目的でSMART療法を用いることが推奨されるようになった。研究グループは、2種類の吸入薬を使い分ける従来の治療法と比べて、両薬剤を一つに配合したSMART療法は喘息の症状や発作を有意に軽減することが示されていると説明する。 この研究では、米国北東部のヘルスケアシステムの電子カルテを用いて、中等度から重度の喘息患者におけるSMART療法の処方動向が調査された。対象は、2021年1月から2023年8月の間に1回以上呼吸器・アレルギークリニックで診察を受け、長期管理薬としてICSとLABA、またはICSのみを処方されていた喘息患者1,502人(平均年齢48.6歳、女性75.2%)であった。 その結果、44%(656/1,502人)の患者にICSとホルモテロールが長期管理薬として処方されており、SMART療法として処方されていたのはわずか15%(219/1,502人)に過ぎないことが明らかになった。また、SMART療法が処方されていた患者の89%(195/219人)は、SABAも同時処方されていた。さらに、SMART療法は、高齢患者とメディケア受益者に処方されにくい傾向のあることも示された。 Zaeh氏は、「これらの結果は、現行の喘息管理ガイドラインが臨床医によって日常的に実施または採用されていないことを示唆している」と述べている。イエール大学医学部のZoe Zimmerman氏は、「医療提供者は、高齢患者に対して新しい吸入レジメンを試すことに消極的だ。特に、患者が何年も同じ吸入薬を使用している場合、その治療レジメンを変更することに抵抗を感じやすい」との見方を示す。 研究グループによると、過去の研究では、ガイドラインが医師に広く採用されるようになるまでには15年以上かかることが指摘されているという。Zaeh氏は、「今回の研究結果は、臨床医によるガイドラインの採用には時間がかかるという考えを補強するものだ」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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大腸がん検診、検査方法の選択肢提示で受診率が向上

 患者に大腸がんの検査方法の選択肢を与えることで、検診を受ける患者数が2倍以上に増えたとする研究結果が報告された。米ペンシルベニア大学医学部のShivan Mehta氏らによるこの研究結果は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に4月30日掲載された。 研究グループの説明によると、大腸がん検診は現在、リスクレベルが平均的な人には45歳からの受診が推奨されているが、大腸がんの既往歴や家族歴がある人は、より早い時期から検診を受けなければならない可能性もあるという。 大腸がん検診で使われる大腸内視鏡検査(コロノスコピー)は、侵襲的ではあるが時間とともにがん化する可能性のある前がん性のポリープを除去することができる。大腸内視鏡検査は10年に1回の頻度で受けることが推奨されているが、その代わりに免疫学的便潜血検査(FIT)を年に1回受けるという選択肢もある。これは、便検体の中に血液が含まれていないかどうかを調べる検査だ。便中の潜血は、大腸がんの初期症状である可能性があり、陽性と判定された場合は大腸内視鏡検査を受ける必要がある。 Mehta氏らは今回、ランダム化比較試験を実施し、患者に大腸がん検診の選択肢を提示することで、大腸内視鏡検査のみを提示した場合と比べて検診受診率が向上するのかどうかを検討した。対象者は、大腸がん検診を推奨通りに受けていない、ペンシルベニア州の地域医療センターの患者738人(平均年齢58.7歳、48.6%がメディケイド受益者)。研究グループによると、この医療センターでの大腸がん検診の受診率はわずか約22%であり、米国での平均受診率(72%)からかけ離れているという。 対象患者は、大腸がん検診の方法として、1)大腸内視鏡検査のみを提示される群、2)大腸内視鏡検査かFITのどちらかを患者が選択できる(アクティブチョイス)群、3)FITのみを提示される群の3群に1対1対1の割合でランダムに割り付けられた。対象患者には、検診受診を勧める手紙と該当者にはFIT用のキットが送付され、その2カ月後と3〜5カ月後にリマインダーのテキストメッセージまたは自動音声が送られた。 その結果、試験開始から6カ月後の時点で大腸がん検診を受けた患者の割合は、大腸内視鏡検査のみの群で5.6%、アクティブチョイス群で12.8%、FITのみの群で11.3%であることが明らかになった。大腸内視鏡のみの群と比べた検診受診率の絶対差は、アクティブチョイス群で7.1%、FITのみの群で5.7%であった。 研究グループは、患者に単純な選択肢を提供することで大腸がん検診の受診率が向上したが、選択肢の数をさらに増やすことが、検診受診者のさらなる増加につながる可能性があるとの考えを示している。 以上のように有望な結果は得られたものの、未解決の問題が残されている。Mehta氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミック中にがん検診の実施が減り、現在はその回復途上にあることや、若年層へのスクリーニング推奨の拡大により、全国的に大腸内視鏡検査へのアクセス問題が存在することは確かであり、とりわけ地域医療センターの患者はより大きな影響を受ける可能性がある」と話す。その上で同氏は、「大腸内視鏡検査は、スクリーニング、症状の診断、FIT後のフォローアップ検査のためのツールとして重要だが、スクリーニング率を向上させたいのであれば、より低侵襲な選択肢を患者に提供することを考えるべきだ」と付け加えている。

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和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科)【大学医局紹介~がん診療編】

山本 信之 氏(教授)赤松 弘朗 氏(准教授)村上 恵理子 氏(学内助教)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴当科は、病院標榜科名を呼吸器内科・腫瘍内科としています。このように呼吸器疾患と腫瘍全般を一括して扱う診療科はほとんどなく、それが当科の特色となっています。当科では、腫瘍内科として、原発不明がんや肉腫などpitfallとなりやすい腫瘍の薬物療法や、標準的治療が終了後の患者に対する臨床試験(第I相試験)等も積極的に取り組んでいますが、腫瘍内科だけでは専門的に学ぶことが難しい、感染症・呼吸管理などの内科医として必要不可欠な技量・知識を習得することが可能です。研究面では、上記の治験を含む臨床研究のみならずリキッドバイオプシー等のトランスレーショナルリサーチが積極的に行われており、その成果は、New England Journal of Medicine等の、世界的なメジャージャーナルに発表されています。また、当科では、病棟をチーム体制にすることや当直明けの休暇の取得等で、ライフスタイルに合わせた仕事をしていただける体制を整えています。当科にきていただければ、どの方向に進むにしても、多くの選択肢から選んでいただくことが可能です。ぜひ、われわれと一緒に、楽しい仕事をしましょう。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力「肺がんは個別化医療が最も成功したがんの1つ」と言われており、実地臨床でも免疫チェックポイント阻害薬・分子標的薬・細胞障害性抗がん剤を使いこなし、それらによる有害事象対策を多く経験する事で患者さんにとって最適な治療は何か? を常に考えながら、皆で議論しています。また多くの治験に参加しており、NEJMなどのbig journalにも当科医師が共著者として名を連ねています。同時に、地方の医大という事もあり、緩和領域の患者さんを看取る事も多く、「診断から緩和まで1人の患者さんと付き合っていく」経験ができます。医局の雰囲気、魅力若手が多く、中堅は国内留学帰りの先生が多いため、多彩なバックグラウンドを背景に最新の標準治療をどのように目の前の患者さんに適応していくか日々議論しています。また働き方改革にも対応しており、ワークライフバランスへの対応も兼ね備えています。医学生/初期研修医へのメッセージきちんとした日常臨床を身に付けることから始めて、最短での専門医取得を後押しします。また、若手同士の交流も盛んで楽しい医局です。ぜひ、皆で成長しましょう。若手が多く、交流も盛んこれまでの経歴和歌山県立医科大学を卒業し、同大学病院で初期研修を終えたのち呼吸器内科・腫瘍内科に入局しました。2回の産休・育休で診療から離れていた時期もありましたが、時短制度を利用して復職し大学院にも入学しました。子育ての都合で時間の制約があるため、研究日を設けてもらうなどしながら臨床研究を行ないつつ、一昨年がん薬物療法専門医を取得したところです。同医局を選んだ理由大学生のころの基礎実習で腫瘍に関連する研究に触れたことで抗がん剤に興味を持ちました。さまざまながんの治療に携わりたいと考えていたので、自分の目指すところに一致する診療科だと思い入局しました。実際入局してみると、抗がん剤の副作用管理から緩和ケアに至るまで幅広い知識と経験が必要な診療科であり、当初は大変でしたが今はそこもやりがいの1つです。今後のキャリアプラン下の子が1歳を過ぎたのを機に昨年からフルタイム勤務に復帰し、今年は大学院を卒業・学位取得を予定しています。一度に多くのタスクをこなすのは難しいですが、個々のライフスタイルや興味に応じて柔軟に対応してもらえる職場ですので、今後も内科関連の資格取得や新規臨床研究などを少しずつ進めていきたいと思っています。和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科)住所〒641-0012 和歌山県和歌山市紀三井寺811-1問い合わせ先h-akamat@wakayama-med.ac.jp医局ホームページ和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科)専門医取得実績のある学会日本内科学会日本呼吸器学会日本がん薬物療法学会日本呼吸器内視鏡学会研修プログラムの特徴(1)女性医師も多い、明るい雰囲気の科です(2)さまざまなバックグラウンドを持つ医師から教育を受けることができます(3)どこに出しても恥ずかしくない一人前の呼吸器内科医になれるよう、援助は惜しみません

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未治療HER2+進行乳がん、T-DXd±ペルツズマブの12ヵ月PFS率(DESTINY-Breast07)/ASCO2024

 HER2+(IHC 3+またはIHC 2+/ISH+)の進行・転移乳がんの1次療法として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)単独療法とT-DXd+ペルツズマブ併用療法の有用性を検討した第Ib/II相DESTINY-Breast07試験の中間解析の結果、両群ともに12ヵ月無増悪生存(PFS)率は80%以上であり、薬剤性間質性肺疾患(ILD)による死亡は認められなかったことを、フランス・Gustave RoussyのFabrice Andre氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。 DESTINY-Breast07試験は、HER2+の進行・転移乳がん患者を対象に、T-DXd単独または他の抗がん剤との併用による安全性、忍容性および抗腫瘍活性を検討する国際共同無作為化非盲検第Ib/II相試験。用量漸増パートと用量拡大パートで構成され、今回は1次療法としてのT-DXd±ペルツズマブを評価した用量拡大パートの中間解析の結果が報告された。 対象は、術後補助療法から12ヵ月以上の無病期間があり、測定可能な病変があり、脳転移がない/または既治療で安定状態で、進行・転移に対する治療を受けていないHER2+の進行・転移乳がん患者であった。T-DXd単独群(5.4mg/kgを3週間間隔)とT-DXd+ペルツズマブ併用群(T-DXd:5.4mg/kg+ペルツズマブ:初回840mg、2回目以降420mgを3週間間隔)に無作為化された。主要評価項目は安全性と忍容性、主要副次評価項目は、治験責任医師評価による奏効率(ORR)およびPFS、奏効期間(DOR)であった。 主な結果は以下のとおり。・T-DXd単独群75例、T-DXd+ペルツズマブ併用群50例が治療を受けた。両群の患者プロファイルはおおむねバランスがとれていたが、HR+(62.7%および68.0%)、de novo(64.0%および60.0%)の割合で差がみられた。追跡期間中央値はそれぞれ23.9ヵ月(治療継続中が62.7%)、25.3ヵ月(56.0%)であった(データカットオフ:2023年12月22日)。・12ヵ月PFS率は、単独群80.8%(80%信頼区間[CI]:73.7~86.1)、併用群89.4%(81.9~93.9)であった。・ORRは、単独群76.0%(80%CI:68.5~82.4)、併用群84.0%(75.3~90.5)であった。CRはそれぞれ8.0%、20.0%であった。・DOR中央値は両群とも評価不能(NE)であったが、範囲は単独群2.1~28.5ヵ月、併用群4.5~28.3ヵ月であった。12ヵ月DOR率はそれぞれ76.0%、84.0%であった。・有害事象(AE)は両群ともに100%に発現した。Grade3以上のAEの発現率は、単独群52.0%、併用群62.0%であった。単独群では、治療に関連しない死亡が1例報告された(新型コロナウイルス感染症の罹患後症状)。・頻度の高いAEは、悪心(単独群71%[うちGrade3以上が4%]、併用群68%[0%])、好中球減少症(36%[27%]、38%[24%])、嘔吐(36%[3%]、40%[0%])、下痢(35%[3%]、62%[6%])などであった。ILDは、それぞれ9.3%、14.0%に認められたが、死亡例は認められなかった。新たな安全性シグナルはみられなかった。 DESTINY-Breast07試験は進行中であり、第III相DESTINY-Breast09試験の解析結果により、HER2+の進行・転移乳がんの1治療法としてのT-DXd±ペルツズマブに関する確定的なデータが得られる予定。

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セマグルチド、CKDを伴う2型DMの腎機能低下や心血管死亡を抑制/NEJM

 慢性腎臓病(CKD)を伴う2型糖尿病患者は、腎不全、心血管イベント、死亡のリスクが高いが、GLP-1受容体作動薬セマグルチドによる治療がこれらのリスクを軽減するかは知られていない。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のVlado Perkovic氏らFLOW Trial Committees and Investigatorsは「FLOW試験」において、プラセボと比較してセマグルチドは、主要腎疾患イベントの発生が少なく、腎特異的イベントや心血管死、全死因死亡のリスクを低減することを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月24日号に掲載された。28ヵ国387施設の無作為化プラセボ対照試験 FLOW試験は、28ヵ国387施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2019年6月~2021年5月に参加者を募集した(Novo Nordiskの助成を受けた)。 対象は、2型糖尿病とCKDを有する患者とし、推算糸球体濾過量(eGFR)が50~75mL/分/1.73m2で尿中アルブミン-クレアチニン比(アルブミンはミリグラム、クレアチニンはグラムで測定)が>300~<5,000、またはeGFRが25~50mL/分/1.73m2で尿中アルブミン-クレアチニン比が>100~<5,000と定義した。 被験者を、セマグルチド1.0mgを週1回皮下投与する群、またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、主要腎疾患イベント(major kidney disease event)であり、腎不全(透析、移植、eGFR<15mL/分/1.73m2)の発生、eGFRのベースラインから50%以上の低下、腎臓関連の原因または心血管関連の原因による死亡の複合と定義した。主要アウトカムの相対リスクが有意に低下 3,533例(平均[±SD]年齢66.6±9.0歳、女性30.3%)を登録し、セマグルチド群に1,767例、プラセボ群に1,766例を割り付けた。中間解析の結果に基づき、独立データ安全性監視委員会は有効性について試験の早期終了を勧告し、試験終了時の追跡期間中央値は3.4年だった。 主要アウトカムのイベント発生の頻度は、セマグルチド群で低く(初回イベント:セマグルチド群331件[5.8/100人年]vs.プラセボ群410件[7.5/100人年])、主要アウトカムの相対リスクはセマグルチド群で24%低かった(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.66~0.88、p=0.0003)。 また、主要アウトカムの腎特異的構成要素の複合(HR 0.79、95%CI 0.66~0.94)および心血管死(0.71、0.56~0.89)についても、結果は主要アウトカムと同様であった。eGFR年間変化率の勾配、主な心血管イベント、全死因死亡も良好 3つの確認のための主な副次アウトカムは、いずれもセマグルチド群で良好だった。eGFRの無作為化から試験終了までの平均年間変化率の傾きの程度(eGFR slope)は、プラセボ群に比べセマグルチド群で1.16mL/分/1.73m2(95%CI:0.86~1.47)低く、減少の仕方が緩徐であった(p<0.001)。主な心血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死の複合)のリスクは、セマグルチド群で18%低く(HR:0.82、95%CI:0.68~0.98、p=0.029)、全死因死亡のリスクは20%低かった(0.80、0.67~0.95、p=0.01)。 重篤な有害事象の報告は、プラセボ群に比しセマグルチド群で少なかった(49.6% vs.53.8%)。一方、試験薬の恒久的な投与中止の原因となった有害事象の頻度はセマグルチド群で高かった(13.2% vs.11.9%)。 著者は、「これらの知見に基づくと、2型糖尿病とCKDを有する患者に対するセマグルチドの使用は、腎保護作用とともに、心血管リスクの低減に有効である可能性がある」としている。

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ハゲタカジャーナルの査読をしているのは誰?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第258回

ハゲタカジャーナルの査読をしているのは誰?世の中にはハゲタカジャーナルというものがあります。著者が論文投稿料を支払うことで、誰でも論文を読むことができるオープンジャーナルのモデルを悪用した医学雑誌のことで、すみやかに出版したい著者をだまして高額な投稿料をせしめるとんでもないジャーナル群のことを指します。ハゲタカジャーナルは、査読は形式的に行われるか、あるいはまったく行わないため、投稿された論文の質は極めて低いものが多いです。そんなハゲタカジャーナルにまつわる珍しい論文を紹介しましょう。Severin A, et al. Characteristics of scholars who review for predatory and legitimate journals: linkage study of Cabells Scholarly Analytics and Publons data.BMJ Open. 2021 Jul 21;11(7):e050270.この論文はPublonsに登録された査読が対象となっています。Publonsは世界における査読者の査読実績を集める事業を展開しています。Publonsのアカウントを取得した研究者は、Publonsに自分が担当した論文の査読歴を登録・管理することができます。まあ、この事業のことは今回の本旨とは異なりますので割愛します。この論文では、1万9,598人のレビュアーによってPublonsに投稿された18万3,743件の査読が分析対象となりました。このうち、67件のレビューがハゲタカジャーナル(1,160誌が該当)に対するもの(レビュー全体の3.31%)、1万7,766件のレビューが非ハゲタカジャーナル(6,403誌が該当)に対するもの(96.69%)であることがわかりました。全体の90%の査読者は、これまでハゲタカジャーナルに関与したことはない、と回答しています。ハゲタカジャーナルの査読を行っている人は、学歴が若く、研究・出版物や査読数自体も少ないということがわかりました。つまり、まだまだ研究の世界では未熟とされる若者たちが査読を行っているという現状が浮き彫りになったわけです。また、ハゲタカジャーナルの査読のほとんどが、アフリカから行われていることも示されています。査読というのは、闇が存在します、闇が。私のもとにもハゲタカジャーナルの査読依頼はよく来ますが、すべて断っています。というか、スパムメールフォルダに入っているので、基本的に無視しています。

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syphilis(梅毒)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第6回

言葉の由来梅毒は英語で“syphilis”といい、「スィフィリス」という発音になります。近年、日本では感染者が急増していますが、その歴史や語源はご存じでしょうか?世界で初めて梅毒が確認されたのは15世紀の後半です。梅毒の起源については、コロンブスがアメリカ大陸から欧州に持ち帰ったなど諸説ありますが、15世紀末にフランス軍がイタリアに侵攻した際に、性的接触を介してイタリアで大流行が起こりました。このことからフランスでは「イタリア病」や「ナポリ病」、イタリアでは「フランス病」と呼ばれました。この呼び方は当時の国家間の政治的対立を反映したものであり、一種のプロパガンダとして利用されたともいえます。“syphilis”という名前は、イタリアの詩人、ジローラモ・フラカストロによって1530年に書かれたラテン語の詩「梅毒またはフランスの病」(Syphilis sive morbus gallicus)で初めて登場しました。この詩では、羊飼いの“syphilis”という英雄が、神を冒涜した罰としてこの病気に初めて感染した、と描かれています。このフラカストロは医師でもあり、新しい病気の名前をこの主人公からとって医学論文を発表したことから、“syphilis”という名前が広まったとされています。なお、日本で梅毒が最初に記録されたのは1512年といわれており、欧州での大流行から程なくして日本に伝わったことがわかります。日本語の「梅毒」という病名は症状として見られる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来しているという説が一般的です。併せて覚えよう! 周辺単語性感染症sexually transmitted diseases下疳chancre扁平コンジロームcondylomata lataゴム腫gumma神経梅毒neurosyphilisこの病気、英語で説明できますか?Syphilis is a sexually transmitted disease that can may lead to severe health complications if left untreated. Infection develops in stages, including primary, secondary, latent, and tertiary, and each stage can have different signs and symptoms.講師紹介

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がんの臨床試験への参加でOSが延長するか?/JAMA

 カナダ・マギル大学のRenata Iskander氏らは、がんの臨床試験に参加した患者と参加しなかった患者の全生存期間(OS)を比較した研究についてシステマティック・レビューとメタ解析を行い、全体として試験参加群におけるOSの改善が示唆されたが、バイアスや交絡因子を考慮した研究に限定するとOSに対するベネフィットは認められなかったことを示した。がん患者が臨床試験に参加することが、試験に参加せず通常の治療を受けた場合と比較してOSの延長と関連するかどうかは明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2024年5月20日号掲載の報告。OSを比較した研究をメタ解析 研究グループは、PubMedおよびEmbaseを用い、がん患者を対象とし、臨床試験参加者(試験参加群)と試験に参加せず通常の治療を受けた患者(通常治療群)の生存転帰を比較した研究のうち、2000年1月1日~2022年8月31日に発表された英語の論文を検索した。主なキーワードは、cancer、oncology、clinical trial、retrospective cohort、trial participation、trial effect、participation bias、nonparticipant、nontrialなどである。また、検索で得られた文献に引用されている文献、ならびに検索で得られた文献を引用している文献についても調査した。 適格基準は、ハザード比(HR)を用いて試験参加群(無作為化試験かは問わない)と通常治療群のOSを比較していること、治療には薬剤/生物学的製剤が含まれることであった。2人の研究者が独立して、Covidenceソフトウエアを用いて解析対象とする研究のスクリーニング、データの抽出および方法論的な質の評価を行った。 主要アウトカムは、試験参加群と通常治療群のOSのHRで、DerSimonian-Lairdランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施した。バイアスや交絡因子を考慮した研究では、試験参加によるOSに対する有益性は減少  174件の論文について適格性を評価した結果、39件の研究(計85件の比較)がメタ解析に含まれた。 85件の比較のうち、32件は試験効果の測定を目的としたものであった(本論文において、試験効果とは、治療効果[臨床試験における介入群への割り付けによってもたらされたアウトカムに対する試験参加の効果]と、参加効果[臨床試験における介入群への割り付けによって媒介されない試験参加の効果]を組み合わせたものと定義されている)。また、通常治療群のデータソースは、レジストリが67件、医療記録が18件であり、サンプルサイズの中央値は試験参加群が209例、通常治療群が409例であった。 メタ解析の結果、試験デザインや質に関係なくすべての研究をプールした場合、試験参加群と通常治療群のOSのHRは0.76(95%信頼区間[CI]:0.69~0.82)であり、試験参加群でOSが有意に改善した。 一方、試験参加群と通常治療群を適格基準に一致させた研究のみをプールすると、試験参加群のOSに対するベネフィットは減少した(HR:0.85、95%CI:0.75~0.97)。また、質の高い研究のみをプールした場合、試験参加群でOSの改善は認められず(0.91、0.80~1.05)、潜在的な出版バイアスにより推定値を調整した場合も同様であった(0.94、0.86~1.03)。

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重症大動脈弁狭窄症へのTAVI、Myvalは既存THVに非劣性/Lancet

 症候性重症大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)において、バルーン拡張型の経カテーテル心臓弁(THV)であるMyval(Meril Life Sciences・インド)は、術後30日時の複合エンドポイントに関して既存のTHV(Sapienシリーズ[Edwards Lifesciences・米国]、またはEvolutシリーズ[Medtronic・米国])に対し非劣性であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のAndreas Baumbach氏らLANDMARK trial investigatorsが実施した「LANDMARK試験」で示された。バルーン拡張型弁(BEV)であるMyval THVシリーズは直径が1.5mm刻みであることから、通常の3mm刻みの生体弁と比較し、大動脈弁輪との正確なサイズ合わせが容易となる。Myval THVの安全性と有効性は、これまで症候性重症大動脈弁狭窄症患者および二尖弁患者を対象とした単群試験または傾向スコアマッチング試験において示されていた。Lancet誌2024年オンライン版5月22日号掲載の報告。欧州・南米など16ヵ国31施設で無作為化非盲検非劣性試験を実施 LANDMARK試験は、16ヵ国(ドイツ、フランス、スウェーデン、オランダ、イタリア、スペイン、ニュージーランド、ポルトガル、ギリシャ、ハンガリー、ポーランド、スロバキア、スロベニア、クロアチア、エストニア、ブラジル)の31施設で実施された、前向き無作為化非盲検非劣性試験である。 研究グループは、TAVIの適応を有する18歳以上の症候性重症大動脈弁狭窄症患者を、Myval群または既存群に1対1の割合に無作為に割り付けた。患者の適格性は、2021年欧州心臓病学会のガイドラインに従い地域のハートチームが評価した。 有効性および安全性の主要エンドポイントは、VARC-3の定義に基づく術後30日時の全死亡、脳卒中、出血(VARCタイプ3および4)、急性腎障害(ステージ2、3および4)、主要血管合併症、中等度以上の人工弁逆流および新たに恒久的なペースメーカー植込みを必要とする伝導系障害の複合エンドポイントであった。Myval THVの既存THVに対する非劣性は、ITT集団において、非劣性マージン10.44%、両群のイベント発生率26.10%と仮定して検証した。既存の生体弁に対する非劣性を検証 2021年1月6日~2023年12月5日に、症候性重症大動脈弁狭窄症患者768例がMyval THV群(384例)および既存THV群(384例)に割り付けられた。患者背景は、平均年齢がそれぞれ80.0歳(SD 5.7)と80.4歳(5.4)、女性が193例(50%)と176例(46%)で、米国胸部外科医学会の予測死亡リスク(STS-PROM)スコアの中央値は両群とも2.6%(四分位範囲[IQR]:1.7~4.0)であった。 複合エンドポイントのイベントは、Myval THV群で25%(94/381例)、既存THV群で27%(103/381例)に発生した。群間リスク差は-2.3%(95%信頼区間[CI]:NA~3.8)であり、95%CIの上限が事前に設定された非劣性マージンを超えなかったことから、Myval THVの既存THVに対する非劣性が示された(非劣性のp値<0.0001)。 複合エンドポイントの各要素の発生率に、両群で有意差はみられなかった。

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致死率がより高いエムポックスウイルスの感染がコンゴで拡大

 コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)は、エムポックス(サル痘)ウイルス(MPXV)の感染者数の記録的な増加に直面している。その背景にあるのは、2022年に欧米で感染が拡大した型のMPXVよりも致死率が高いクレード(系統群)のウイルスである「クレードI」の発生だ。米疾病対策センター(CDC)のChristina Hutson氏らは、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」5月16日号に掲載された報告書で、「クレードIのコンゴでの感染拡大は、このウイルスが国外にも拡大する可能性を懸念させるものであり、ウイルスを封じ込めるためのコンゴの取り組みを全世界で協調的かつ緊急に支援することの重要性を示している」と主張している。 2年前にアフリカから欧州や北米へと広がったMPXVは、クレードIIと呼ばれるものであった。エムポックスは痛みを伴い、重症化することもあるが、死亡率は0.1~3.6%程度であることがさまざまな研究で示されている。しかし、Hutson氏らによると、クレードIのMPXVは致死率がより高く、その死亡率は1.4~10%に上るという。 コンゴで流行中のクレードIのMPXVは、すでに多くの犠牲者を出している。同国の報告によると、2023年初頭から2024年4月14日までに「複数の地方でアウトブレイクが発生」し、推定患者数は1万9,919人、死亡者数は975人に上り、患者20人当たり1人程度が死亡したと推定されている。 今回のアウトブレイクはおそらく最も広範囲に及んでおり、「2023年から2024年にかけて、26州中25州から、そして初めて首都キンシャサからもクレードIのMPXVの症例が報告された」とHutson氏らは指摘している。特に、小児はエムポックスに対して脆弱で、報告書によると「MPXVの感染が疑われる症例の3分の2(67%)と、MPXVによる死亡が疑われる症例の4分の3以上(78%)を15歳以下の小児が占めている」という。 MPXVは密接な接触を介して感染する。通常、感染には皮膚と皮膚の接触が伴うため、性行為が感染経路となることが多い。初期症状は発熱、悪寒、疲労感、頭痛、筋力低下などで、多くの場合、こうした症状の発現後に病変を伴う発疹ができ、かさぶたになって数週間のうちに徐々に治癒する。感染する可能性は誰にでもあるが、特に男性と性行為をする男性はリスクが高く、またHIV感染者は重症化しやすい。 MPXVはサルなどの動物との接触を介してヒトに感染する可能性があり、長い間アフリカの風土病であった。最近コンゴで発生したアウトブレイクに関しては、「動物宿主からの複数回にわたるウイルスの伝播がアウトブレイクに関与していることがデータから示唆された」とHutson氏らは説明している。ただ、幸いなことに、Jynneosという商品名で製造されているMPXVのワクチンがある。同ワクチンは約1カ月の間隔を空けて2回接種する。 Hutson氏らによると、CDCは長年にわたってコンゴのMPXVのアウトブレイクとの闘いを支援する取り組みを続けてきた。今回のアウトブレイクに関しては、コンゴおよびその周辺国におけるMPXVの封じ込めとともに、米国人の間にクレードIのMPXVの感染者が発生した場合の備えを強化するための取り組みも行っているという。 Hutson氏らは、「米国や、MPXVの流行が発生していない他の国では、クレードIのMPXVの症例は報告されていない」と述べている。また、米国では動物がMPXVを保有していないこと、米国の一般的な家庭ではコンゴの家庭よりも衛生状態が良好であることなどから、米国の小児がクレードIのMPXVに感染するリスクは低いと強調している。ただし、「ゲイやバイセクシュアルの男性などのハイリスク集団では、米国においてもクレードIのMPXV感染者が発生するリスクはある」と同氏らは指摘している。

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臨床留学通信、ニューヨーク最終章【臨床留学通信 from NY】第61回

第61回:臨床留学通信、ニューヨーク最終章ニューヨークからボストンのハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院(MGH)に移るに当たって、書類処理に追われています。まず、アメリカの病院で働く際には、健康診断がかなりきっちりしています。過去のワクチンの証明書やMMRなどの抗体価、日本人だとツベルクリン反応が陽性になってしまうので、クォンティフェロンの採血結果(3ヵ月以内)の提出などです。日本で働いてると、友達に採血オーダーしてもらってちょっとした合間に採血して、ということは簡単ですが、こちらだとそうはいきません。自身のプライマリケアにMyChartと呼ばれるウェブサイトから、その都度ラインのように担当医に連絡してオーダーしてもらい、通ってるプライマリケアまで行って採血をする形で、結構不便です。多くの場合、かかりつけの病院と自身の勤務先の病院は離れているため、勤務先の病院で採血、というわけにはいかないのです。今回、ニューヨーク州からマサチューセッツ州へ州が変わることもあり、州用のライセンス取得のために申請が必要で、過去のUSMLEの合格証明を、発行機関にお金を払って送ってもらったりします。新しい病院で働く場合多くはHIPPA(Health Insurance Portability and Accountability Act)と呼ばれる、病院で働く際の医者の守秘義務等を履行するために、オンラインコースを延々と受けなければいけません。そのほかに、もし銃撃事件に巻き込まれたら、といった恐ろしいシミュレーションを想定したオンラインコースもあります。隠れることもできず、退路を断たれたらどうする?という質問に対して、“Fight”という選択肢をどうしても選ぶことはできませんでしたが、どうやらそれが正解のようです…。ACLS/BLSも必要で、コースを受けなければいけませんが、病院側が用意してくれたコースがあるのでお金は掛かりません。引っ越しもなかなか大変で、不動産会社を経由して、古くて狭い2LDKが現在とほぼ同等の1ヵ月2800ドル、光熱費込みで約3,000ドル(45万円)です。引っ越し料金は、引っ越し業者に頼むと1,800ドル(27万円)も掛かります。米国では小学校の格差が激しく、学区の良い地域に住むと、どうしても古くて狭くても家賃が高くなってしまうのです。現在のニューヨーク郊外も、今度のボストン郊外も、そこだけはなんとか守るようにしています。なお、皇后雅子さまが住まわれたBelmontと呼ばれる地域の近くで、この地域の公立の高校からハーバード大学に入ることも多いようです。なお、6月下旬に引っ越すのですが、家賃を6月1日から払わないとなかなか良い物件は借りられないと不動産会社に言われたこともあり、6月はほぼ2倍の家賃を払うことになってしまいます。また夏休みに日本に一時帰国するのですが、ボストンから東京への直航便は、ニューヨークより便が少ないせいか高額で、エコノミークラスでも往復で3,200ドル(48万円)もして、なんじゃこりゃと言いたいところです。フェローの給料ではなかなか厳しいものです。そんなこんなで日々追われていますが、ニューヨークのNプログラム※の会合でBBQなどがあり、最後のニューヨークステイを楽しみたいと思います。アイコンの自由の女神のあるリバティ島には大学生の時に行きましたが、この6年間は行かずじまいになりそうです。7月以降は、施設を変わると最初はどうしても大変だったりしますが、comfort zoneに甘んじることなく、いろいろな施設の違いを感じ、世界最高峰の病院の1つと呼ばれるMGHを楽しんでいきたいと思います。※Nプログラムは、東京海上日動火災保険株式会社が実施する、米国の教育病院における臨床医学レジデンシー・プログラムに日系の若手医師を派遣するプログラム。

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UKPDS 91:診断直後の強化血糖コントロール、死亡リスクを生涯低減/Lancet

 2型糖尿病におけるスルホニル尿素またはインスリン、あるいはメトホルミン療法による早期の強化血糖コントロールは、従来の食事療法を主体とする血糖コントロールと比較して、死亡および心筋梗塞のリスクをほぼ生涯にわたって減少させ、診断後すぐに正常血糖値に近い状態を実現することは、生涯にわたる糖尿病関連合併症のリスクを可能な限り最小限に抑えるために不可欠である可能性があることが、英国・オックスフォード大学のAmanda I. Adler氏らによる英国糖尿病前向き研究(UKPDS)の10年後の結果から、14年間の追跡調査で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年5月18日号で報告された。10年後以降、24年後までの14年間の解析結果 本研究では、1977~91年に英国の23施設を受診した25~65歳の2型糖尿病患者4,209例を、強化血糖コントロール(スルホニル尿素またはインスリン、体重増加がみられる場合はメトホルミン)を受ける群、または従来の血糖コントロール(主に食事療法)を受ける群に無作為に割り付けた。 この20年間の介入試験の終了時に、3,277例の生存者が10年間の試験後モニタリング期間に参加し、2007年9月30日まで追跡が行われた。本研究の対象は、この10年間の試験後モニタリング期間の終了時に生存していた患者1,489例であった。 ベースラインの平均年齢は50.2(SD 8.0)歳で、41.3%が女性であった。10年間の追跡開始時の平均年齢は70.9(8.5)歳で、その14年後の2021年9月30日の時点(合計24年)の生存者は79.9(8.0)歳だった。ベースラインからの追跡期間の範囲は0~42年で、期間中央値は17.5年(四分位範囲[IQR]:12.3~26.8)だった。メトホルミンで、死亡と心筋梗塞の相対リスクが20%、31%低下 試験終了から最長24年間に、血糖値およびメトホルミンのレガシー効果には、減弱の徴候を認めなかった。 従来の血糖コントロールと比較して、スルホニル尿素またはインスリン療法による早期の強化血糖コントロールでは、全体的な相対リスクが全死因死亡で10%(95%信頼区間[CI]:2~17、p=0.015)、心筋梗塞で17%(6~26、p=0.002)、細小血管症で26%(14~36、p<0.0001)の減少を示した。絶対リスクは、それぞれ2.7%、3.3%、3.5%低下した。 また、従来の血糖コントロールに比べ、メトホルミン療法による早期の強化血糖コントロールは、全体的な相対リスクが全死因死亡で20%(5~32、p=0.010)、心筋梗塞で31%(同12~46、p=0.003)減少した。絶対リスクは、それぞれ4.9%および6.2%低下した。脳卒中、末梢血管疾患のリスク低減は認めず 試験中または試験後に、2つの強化血糖コントロールのいずれにおいても、脳卒中および末梢血管疾患の有意なリスクの低下は認めず、メトホルミン療法では細小血管症の有意なリスク低減はみられなかった。 著者は、「この研究結果は、2型糖尿病患者に対する早期の強化血糖コントロールの導入を支持し、長期的な糖尿病関連合併症のリスクを最小化するための治療指針として活用される可能性がある」としている。本研究は、オックスフォード大学Nuffield Department of Population Health Pump Primingの助成で行われた。

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第196回 6月からの生活習慣病管理料の導入、新たな事務負担と実質的な減収に/厚労省

<先週の動き>1.6月からの生活習慣病管理料の導入、新たな事務負担と実質的な減収に/厚労省2.iPhoneにマイナンバーカード機能を搭載、2025年春に実現へ/デジタル庁3.総合診療科の認知向上とオンライン診療の普及に向け提言を提出/規制改革推進会議4.グーグルマップの口コミ訴訟、眼科医院が名誉毀損で勝訴5.健康被害が急増の自由診療クリニック、名義貸しが横行6.出産費用の透明化進む、『出産なび』で安心の選択を/厚労省1.6月からの生活習慣病管理料の導入、新たな事務負担と実質的な減収に/厚労省2024年度の診療報酬改定が6月1日より適用される。高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療において「特定疾患療養管理料」から「生活習慣病管理料(I)」「生活習慣病管理料(II)」への移行が行われる。この改定は、質の高い疾病管理を進めることを目的とし、具体的には患者と医療者が共通の理解を持ち、療養計画書を作成して共有することが求められる。新たに導入される「生活習慣病管理料(II)」は333点となり、従来の「特定疾患療養管理料」225点より高く設定されている反面、算定回数が月2回から1回に減少する。また、「外来管理加算」や「処方箋料」が併算定できなくなり、全体の診療報酬は減少することになる。都内の開業医によれば、1日50人の患者のうち6割が特定疾患療養管理料を算定していた場合、年間で約115万円の減収が予測されている。改定のもう1つの大きな変更点は、療養計画書の作成と患者の同意・署名の取得が必須となる点で、これにより医師やスタッフの業務負担が増加する。療養計画書には、患者と相談した達成目標や行動目標、食事や運動の指導内容、血液検査の結果などが記載され、これを患者に説明し、同意を得て署名をもらう必要がある。一方、改定により「生活習慣病管理料(I)」も引き続き存在し、点数が引き上げられた。脂質異常症は610点、高血圧症は660点、糖尿病は760点となり、一定条件下で療養計画書の交付義務が免除される場合がある。また、生活習慣病管理料(II)の算定には多職種連携が推奨され、管理栄養士などの専門職との協力が求められる。外来栄養食事指導が必要な場合は、他の医療機関と連携し、指導記録を共有する体制を整備することが重要となる。厚生労働省は、生活習慣病管理料の導入により計画的な治療管理を促進し、疾病管理を求めている。その一方で、医療機関側には新たな文章作成など負担が増大するため、業務改善が必要となる。参考1)診療報酬の改定で開業医が年間115万円の減収? 生活習慣病の治療、6月から何が変わるのか(東京新聞)2)生活習慣病管理料(II)を新設し、2区分に(CB news)3)糖尿病・高血圧症等治療は特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料I・IIへシフト、計画的治療管理を(Gem Med)4)生活習慣病管理料への移行、当院の「療養計画書」の作成法(日経メディカル)2.iPhoneにマイナンバーカード機能を搭載、2025年春に実現へ/デジタル庁5月31日にデジタル庁は、2025年春をめどにiPhoneにマイナンバーカードの機能を搭載する計画を発表した。岸田 文雄首相と米アップル社のティム・クックCEOとの会談で、この計画が確認された。これにより、iPhoneを使って行政手続きや本人確認ができるようになる。すでにAndroid端末向けには2023年5月からスマホ用電子証明書の運用が開始されており、iPhoneへの対応が焦点となっていた。アップル社は、デジタル庁と協力してiPhoneのウォレット機能にマイナカードを追加する準備を進めており、物理的なカードがなくても、スマホだけで身分証明書として使用できるようになる。これによりコンビニエンスストアでの公的証明書の発行や、病院での本人確認などが可能となる。アップルウォレットの身分証明書機能が米国以外で展開されるのはわが国が初めてとなる。一方で、政府はマイナカード機能のスマホ搭載を進めるために法改正を行い、今回の法改正でマイナカードの全機能がスマホに搭載されることが可能となり、銀行口座や証券口座の開設がスマホだけで完結できるようになるほか、コンビニエンスストアなどでの年齢確認にも使用可能となる。さらに、マイナ保険証も2025年春以降にスマホで使用できるようになる見通し(なお現行の保険証は2024年12月に廃止され、マイナカードに1本化される)。しかし、マイナンバー制度には、個人情報の管理やセキュリティの面で課題が残っているため、政府は、デジタル庁が主体となり、個人情報の正確性を確保するための支援を行うことを新たに規定する。また、医療機関でのマイナ保険証の利用率が低いため、普及促進のための取り組みが必要とされている。iPhoneへのマイナンバーカード機能の搭載は、デジタル社会への移行を大きく進める重要な1歩となると予想され、今後も利用者が安心して使える環境を政府が整えることが求められる。参考1)マイナンバーカード機能のiPhoneへの搭載について(デジタル庁)2)iPhoneにマイナカードの機能搭載へ 来春を予定 デジタル庁(CB news)3)iPhoneにマイナ機能 かざして身分証明、病院などで アップル、来夏までに(日経新聞)3.総合診療科の認知向上とオンライン診療の普及に向け提言を提出/規制改革推進会議政府の規制改革推進会議は、規制改革推進に向けた答申をまとめ、5月31日に岸田 文雄首相に提出した。主な内容として、医療機関が「総合診療科」を標榜できるように広告規制の見直しを厚生労働省に求め、2025年までに結論を出す方針。これは、患者がプライマリケアにアクセスしやすくするための措置となる。現在の医療法の広告規制では、内科、外科、精神科など特定の診療科名しか単独で広告できないが、総合診療科はこの中に含まれていない。高齢化に伴い、複数の疾患を抱える高齢者が増える中、総合診療を提供する医療機関の認知度向上が求められ、これに対応するため規広告規制の見直しを求めたもの。また、在宅医療における薬物治療を円滑に提供するため、厚労省には、訪問看護ステーションにストックできる薬の種類を拡大することが検討されている。このほか、オンライン診療で精神療法が初診から利用できることにつき2025年までに結論を出し、診療報酬の見直しを行う方針。これは、オンライン診療の利用拡大を通じて、地域差を解消し、患者の利便性を高めることを目的としている。もう1つの重要な施策として、薬剤師が不在の店舗でもオンラインで市販薬を販売できるようにする規制改革が進められている。とくに、過疎地や深夜・早朝に薬剤師が常駐しない店舗に、遠隔で管理することで市販薬の販売を可能にする方針。これにより、薬剤師の人手不足を解消し、地域住民の利便性を向上させることを目指している。今回の答申を受け、政府は新たな規制改革実施計画を取りまとめ、近く閣議決定する予定。これにより、医療分野でのデジタル技術の活用などが具体的に進められることになる。参考1)規制改革推進に関する答申~利用者起点の社会変革~(規制改革推進会議)2)「総合診療科」の標榜容認検討へ、25年結論 規制改革推進の答申(CB news)3)人手不足、デジタルで解消 遠隔で薬販売/AIで要介護認定 規制改革会議が最終答申(日経新聞)4.グーグルマップの口コミ訴訟、眼科医院が名誉毀損で勝訴兵庫県尼崎市の眼科医院がグーグルマップの口コミ欄に一方的に悪評を投稿されたとして、損害賠償を求めた訴訟の判決が大阪地裁であった。5月31日に山中 耕一裁判官は、投稿者の大阪府豊能町の女性に対し、200万円の賠償と投稿の削除を命じた。訴えによると、眼科医院は3年前に「レーシック手術を受けたが左目だけで、右目はレンズを入れられた」や「何も症状がないのに勝手に一重まぶたにされた」といった内容の書き込みを受けた。医院の院長は、これらの内容に身に覚えがないとして、グーグルに情報開示を求めて投稿者を特定し、今年1月に女性を訴えた。山中裁判官は「書き込みは、眼科の医師が患者から承諾を得ずに勝手な医療行為をするという印象を与え、医院の社会的評価を低下させた」と述べ、投稿が名誉毀損にあたると判断した。眼科医院の代理人弁護士である壇 俊光氏は、「投稿者の特定には3年かかり、ネット社会における不当な投稿への対応の遅れを感じている。迅速な削除を求める司法判断が必要だ」と述べる。この判決により、インターネット上での名誉毀損行為に対する法的対応の重要性が再確認された。参考1)グーグルマップの口コミ欄で一方的に眼科医院の悪評、投稿者に200万円の賠償命じる判決(読売新聞)2)「クチコミ」投稿者に賠償命令 眼科医院長“評判落とされた”(NHK)5.健康被害が急増の自由診療クリニック、名義貸しが横行美容や健康への関心の高まりを背景に、公的な医療保険が適用されない自由診療を提供するクリニックが急増している。しかし、自由診療クリニックの増加に伴い、健康トラブルも多発しており、健康被害や契約上の問題が顕在化している。とくに、美容医療分野では、脱毛や薄毛治療、医療ダイエットなどの自由診療が行われ、患者は全額自己負担で利用している。NHKの報道によれば、都市部を中心に「一般社団法人」として設立された美容クリニックが急増し、その多くが自由診療を提供している。一般社団法人は、医師でなくても設立可能であり、登記のみで開業できるため、異業種からの参入が容易なために医師の「名義貸し」が横行、実際には医療行為に関与しない医師が管理者として名前を貸しているケースが多数報告されている。国民生活センターによると、美容医療に関するトラブルの相談件数は、2023年度に5,833件と、この5年間で約3倍に増加している。とくに健康被害の相談は839件に上り、過去5年間で約1.7倍に増加している。たとえば、高濃度のビタミン点滴によるアナフィラキシーショックなど、深刻な健康被害も報告されている。一般社団法人によるクリニックの運営に関しては、監督官庁がなく、医療法人のような規制も適用されないため、管理が不十分とされる。渋谷区保健所の熊澤 雄一郎生活衛生課長は、「一般社団法人のクリニックも医療法人と同様に業務内容の報告体制を整備する必要がある」と指摘する。厚生労働省は、専門家による検討会を立ち上げ、自由診療における美容医療の適切なあり方や対策を協議し、行政が事業内容を定期的にチェックできる制度について検討する予定。適切な監視体制の構築が急務となる。参考1)追跡“自由診療ビジネス”の闇 相次ぐ美容・健康トラブルの深層(NHK)2)一般社団法人のクリニック 都市部で増 医師「名義貸し」証言も(同)3)美容医療でトラブル増加 厚労省 検討会立ち上げ対策など協議へ(同)6.出産費用の透明化進む、『出産なび』で安心の選択を/厚労省5月30日に厚生労働省は、医療機関ごとの出産費用やサービス内容を比較できるウェブサイト「出産なび」を開設した。このサイトは、全国の病院や助産所など約2,000の出産施設を対象に、妊婦やその家族が適切な施設を選択できるよう情報を提供する。「出産なび」では、各施設の出産費用や分娩実績、サービス内容を一覧で確認でき、たとえば、無痛分娩の対応有無や24時間対応の可否、立ち会い出産の可否などが細かく紹介されている。施設の種類や希望するサービスにチェックを入れて検索すると、条件に合致する施設が一覧表示され、地図上で施設の位置を確認することもできる。出産費用の内訳も明示されており、基本的な分娩費用や個室の追加料金などがわかるようになっている。これにより、妊婦や家族が費用面での予測を立てやすくなり、出産に伴う経済的な負担を見通しやすくなる。「出産なび」の開設は、少子化対策の一環として、出産費用の透明化を図り、不透明な値上げを防ぐことを目的としている。また、正常分娩への保険適用に向けた議論の材料としても活用される予定。現在、正常分娩は保険適用外であり、費用は全額自己負担となっているが、2026年度をめどに保険適用を検討している。厚労省では、今後も「出産なび」の情報を定期的に更新し、利用者が最新の情報にアクセスできるよう努める。また、出産費用の保険適用についても議論を進め、妊婦や家族の負担軽減を図っていく方針。参考1)「出産なび」へようこそ(厚労省)2)お産の費用見える化サイト「出産なび」開設 全国の約2千施設が対象 厚労省(CB news)3)医療機関ごとの出産費用を検索「出産なび」開設…無痛分娩の対応有無や24時間対応可も紹介(読売新聞)4)出産費用丸わかり、厚労省が施設検索サイト「出産なび」(日経新聞)

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身体活動の指標、時間ではなく歩数でもOK?

 米国における身体活動のガイドラインでは、健康のために中~高強度の身体活動を週150分以上行うことを推奨しているが、歩数に基づく推奨はエビデンスが十分ではないため発表されていない。今回、米国・Brigham and Women's Hospital/Harvard Medical Schoolの浜谷 陸太氏らによる米国の62歳以上の女性を対象としたコホート研究において、中~高強度身体活動時間および歩数と全死亡率および心血管疾患(CVD)の関連が質的に同様であることが示唆された。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年5月20日号に掲載。 このコホート研究は、1992~2004年に米国で実施した無作為化試験であるWomen's Health Studyの参加者の追跡データを解析したもの。参加者はCVDやがんを罹患していない62歳以上の女性で、年1回アンケートに回答し、中~高強度身体活動に費やした時間と歩数を加速度計で連続7日間測定した。交絡因子調整後の中~高強度身体活動の時間および歩数と全死亡およびCVD(心筋梗塞・脳卒中・CVD死亡の複合)との関連を、Cox比例ハザード回帰モデル、制限付き平均生存時間の差、受信者動作特性曲線下面積(AUC)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・計1万4,399人の女性(平均年齢:71.8歳)が対象となった。・中~高強度身体活動時間の中央値は週62分(四分位範囲:20~149分)、歩数の中央値は1日5,183歩(同:3,691~7,001歩)であった。・追跡期間中央値9.0年で、全死亡の1標準偏差当たりのハザード比は、中~高強度身体活動時間が0.82(95%信頼区間[CI]:0.75~0.90)、歩数が0.74(同:0.69~0.80)であった。・中~高強度身体活動時間および歩数が多い(上位3四分位群vs.最低四分位群)ほど生存期間(period free from death)が長かった。・中~高強度身体活動時間および歩数での全死亡率のAUCは同様で、どちらの指標も0.55(95%CI:0.52~0.57)であった。CVDとの関連についても同様だった。 著者らは「今後のガイドラインにおいては、個々人の好みに対応できるよう、時間に基づく目標と共に歩数に基づく目標が検討されるべき」としている。

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モジュール式リードレスペーシング除細動システム、主要エンドポイント達成/NEJM

 皮下植込み型除細動器(S-ICD)と無線通信するリードレスペースメーカーは、植込み後6ヵ月時におけるリードレスペースメーカー関連主要合併症非発生率、リードレスペースメーカーとS-ICD間の通信成功率、およびパルス幅0.4msでペーシング閾値2.0V以下の患者の割合に関して、パフォーマンス目標を超えた。オランダ・アムステルダム大学医療センターのReinoud E. Knops氏らが、国際共同単群試験「Effectiveness of the EMPOWER Modular Pacing System and EMBLEM Subcutaneous ICD to Communicate Antitachycardia Pacing study:MODULAR ATP試験」の結果を報告した。S-ICDは、経静脈ICDよりリード関連合併症が少ないが、抗頻拍および徐脈ペーシングができない。リードレスペースメーカーとS-ICDの無線通信による抗頻拍および徐脈ペーシングを行うモジュール式ペーシング除細動システムの安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2024年5月18日号掲載の報告。心室性不整脈による突然死のリスクがある患者を登録 研究グループは、ICD植込みの適応があり単形性心室頻拍のリスクが高い18歳以上の患者でベースライン時にペーシングを必要とせず、変時性応答不全を有する、または心室同期不全のためにペーシングを必要とする患者を登録し、リードレスペースメーカー(商品名:EMPOWER)とS-ICDシステム(同:EMBLEM)を植え込み、退院前、1ヵ月、6ヵ月、12ヵ月時およびその後は6ヵ月ごとに追跡調査した。 安全性のエンドポイントは、植込み後6ヵ月時におけるリードレスペースメーカーに関連する主要合併症非発生率で、86%を目標として評価した。リードレスペースメーカー関連主要合併症は、ペースメーカーや手技または治療に関連した合併症で、システム交換、永久的ペースメーカー機能喪失、入院または死亡と定義した。 パフォーマンスの主要エンドポイントは、植込み後6ヵ月時におけるリードレスペースメーカーとS-ICD間の通信成功率(目標88%)、およびパルス幅0.4msでペーシング閾値2.0V以下の患者の割合(目標80%)であった。 2021年7月~2024年1月に、38施設において計293例が登録され、そのうち植込み後6ヵ月時の評価対象コホートには162例が含まれた。患者の平均年齢は60歳、女性が16.7%、平均左室駆出率は33.1(SD 12.6)%であった。162例のうち、151例が6ヵ月の追跡調査を完遂した。主要合併症の非発生率97.5% リードレスペースメーカー関連主要合併症非発生率は97.5%、片側98.8%信頼区間(CI)の下限値は94.2%で、事前に規定された目標を上回った。 リードレスペースメーカーとS-ICD間の通信成功率は98.8%、片側97.5%CIの下限値は97.0%で、事前に規定された目標を上回った。 パルス幅0.4msでペーシング閾値2.0V以下の患者の割合は97.4%(147/151例)、片側97.5%CIの下限値は93.4%で、事前に規定された目標を上回った。 抗頻拍ペーシング成功率は61.3%で、デバイスの通信障害により抗頻拍ペーシングが実施されなかったエピソードはなかった。 死亡は8例報告された。うち4例が植込み後6ヵ月以内であったが、死因がデバイスや手技に関連すると判定された死亡例はなかった。

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専属英会話講師の登場【Dr. 中島の 新・徒然草】(531)

五百三十一の段 専属英会話講師の登場もうすぐ衣替えの季節。最近は深緑と涼風の良い気候ですね。1年中こうだったらいいのですけど。さて、前回に引き続いて、今回もChatGPTと英語ですよ。「またかよ」という読者がおられたらすみません。でも皆さん、どちらか一方には興味をお持ちではないでしょうか。今回は「音声会話機能を使ったらChatGPTが専属英会話講師になってしまった」というお話です。スマホ版のChatGPTには音声会話機能があります。無料版のGPT-3.5でも、回数制限付きでGPT-4o(オムニ)の音声会話が可能なようです。試しに知り合いのスマホにChatGPTをダウンロードし、そのまま試してみたら、無料版でも音声でやりとりすることができました。ただ、途中で「また後でお試しください」という意味のメッセージが出てきて中断されました。無料版ゆえの使用時間の制限か、通信回線の混雑で接続が不安定になったのかもしれません。というわけで、実際にChatGPTを英会話講師として使う方法を紹介しましょう。まずプロンプトと呼ばれる入力は日本語でOK。ChatGPTの入力画面を開け、右下のヘッドホンマークを押します。そしたら画面中心の模様がグルグル回ってグレーの丸になり、「話し始める」という表示が出ます。そしたら「英会話の練習をしたいのでロールプレイのお相手をしてくれませんか?」と声を掛けましょう。5秒ほどすると「承知しました。どのような状況を考えていますか」みたいな返事があるので、日本語で適当な設定をしてください。たとえば、「私が医者でそちらが患者さん。めまいを主訴に受診したという設定で、一問一答でお願いします」と言っておいてから“What matters to you?”と英語で話し掛けると英会話開始です。ChatGPTのほうは「1週間ほど前からめまいがあります」とか「部屋がグルグル回ります」とかいろいろ訴えてくるので「何かめまいを誘発させたり悪化させたりするようなことはありますか?」などと聞くわけです。すると“When I move my head, it gets worse, but if I keep my head still, the vertigo slowly goes away.”(頭を動かすとめまいがひどくなり、頭を動かさないと徐々にめまいが去っていきます)といった答えが返ってきました。これは完全にBPPV(Benign Paroxysmal Positional Vertigo;良性発作性頭位めまい症)を意識している返答なので、こちらも「大人しくしていたら数日で改善しますよ」などとアドバイスをします。同じように頭痛のことでロールプレイをした時には、“Bright lights and loud noises definitely make my head worse. Sometimes strong smells can trigger them too.”(明るい光や大きな騒音で確かに頭痛が悪化します。時には強い匂いで頭痛が誘発されます)などという答えが返ってきました。典型的な偏頭痛ですね。診察室ではいつもの会話なので、英語でも何とか最後までやり通すことができました。問題があるとすれば、ChatGPTが時々暴走して医師のセリフを横取りしたり、日本語になったりすることです。こういった場合には「それは私のセリフなので、貴女は患者さんの役をしてください。それと英語でお願いします」と日本語で言うと、素直に元の設定に戻ってくれます。いろいろ試した結果、ChatGPTを使った英会話ロールプレイは、もう最強の英会話練習ではないかと思うようになりました。さて、ChatGPTで英会話ロールプレイをする時のいくつかの注意点を挙げておきましょう。若干のタイムラグがあるので、相手が話し始めるまで辛抱強く待つこと。プロンプトは日本語でOK。途中から条件を追加するのも問題なし。相手はAIなので、忖度する必要はまったくなし。先方が逆ギレしたり拗ねたりする場面には出くわしたことがありません。いつ始めてもOK、唐突に終わってもOK、相手が気を悪くする心配なし。10分ほどの隙間時間があれば、いつでもどこでも始めることができますが、周囲に人がいないところのほうがよさそうです。会話の記録はテキストで残っているので、後で復習するのも簡単。というわけで、ついに到達した最強の英会話勉強法。読者の皆さんもぜひお試しください。最後に1句衣替え 熱血勉強 AIと

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第99回 精巣にもすでにナノプラスチックが侵入

頸動脈だけではなかった以前、記事でも紹介したように、プラスチックの細片のうち、大きさが1μm~5mmのものをマイクロプラスチック、より小さくnm(ナノメートル)レベルのものをナノプラスチックと呼び、MNPs(Microplastics and Nanoplastics)と総称します。ペットボトル内にも存在することから、上記の頸動脈プラークへの侵入は衝撃的なニュースでした。私たち人類がどのようにしてプラスチックと向き合っていくのか、議論が必要になります。さて、MNPsはどこにでも存在することから、ヒトの生殖系に影響を与えるのではないかという話も当然出てくるわけです。イヌとヒトの精巣におけるマイクロプラスチックの頻度や組成を調べた研究が報告されました1)。この研究は、熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析計を使って、イヌの精巣47個とヒトの精巣23個に含まれる12種類のマイクロプラスチックを定量化したものです。残念ながら、いずれの精巣にもマイクロプラスチックの存在が明らかになりました。マイクロプラスチックの平均含有量はイヌ122.63μg/g、ヒト328.44μg/gという結果だったのです。ヒトとイヌの両者とも、主要なポリマータイプの割合は類似していて、最も多いのはポリエチレン(PE)でした。さらに、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンテレフタラート(PET)のような特定のポリマーと精巣重量との間には負の相関が観察されました。共存か削減・撤廃かもしかすると、男性の生殖能力にもMNPsはすでに影響を及ぼし始めているのかもしれません。ただ、プラスチックというのは人類にとってすでに長い付き合いになっている物質ですから、実はもううまく共存できていて、そこまで悪影響がないという結論になるかもしれませんし、中長期的には削減・撤廃していかないとまずいという結論になるかもしれません。都市部では、管理がうまくできていないプラスチック廃棄物が多いほどMNPsが多いというデータもあり2)、取り組むことになるなら、人口が多い地域ほど優先的に、ということになります。ただ、利便性を捨てて多大なコストをかけるほどのメリットが人類にあるのかどうかも、まだはっきりしていません。参考文献・参考サイト1)Hu CJ, et al. Microplastic presence in dog and human testis and its potential association with sperm count and weights of testis and epididymis. Toxicol Sci. 2024 May 15:kfae060.2)Talang R, et al. Influencing factors of microplastic generation and microplastic contamination in urban freshwater. Heliyon. 2024 Apr 25;10(9):e30021.

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小児期の運動不足が若年成人期の心肥大と関連

 子どもの頃の運動量と若年成人期の心臓の大きさとの間に有意な関連があり、運動不足だった子どもは成人後に心肥大が見られるとする研究結果が報告された。東フィンランド大学のAndrew Agbaje氏の研究によるもので、詳細は「European Journal of Preventive Cardiology」に5月7日掲載された。 心肥大とは心臓のサイズや重量が過度に増大した状態であり、成人の心肥大は心血管疾患や早期死亡といったイベントのリスクを高める。小児期にはそのようなイベントの発生は少ないものの、心肥大自体は後年のリスク上昇につながる可能性がある。一方、成人では適度な運動が心血管の健康増進に役立つことが広く認識されている。しかし、小児期の運動習慣が心臓の形態に与える影響についてはよく分かっていない。これらを背景としてAgbaje氏は、子どもの運動習慣が、その後の心臓の形態や機能に及ぼす影響について、縦断的に検討した。 この研究は、英国の子どもとその親を対象に行われている出生コホート研究(ALSPAC)のデータを用いた二次分析として行われた。平均年齢11.75±0.24歳の子ども1,682人(女児62.7%)を約13年間にわたって追跡。日常の運動量は、11歳、15歳、24歳の時点で加速度計を4~7日間、身に着けて生活してもらい把握した。心臓の形態と機能については、17歳、24歳の時点で行った心エコー検査により、左室心筋重量係数(LVMI)や左室拡張能などを評価した。 研究参加者全体の座位行動時間を平均すると、ベースライン(11歳時点)が6時間だったものが、24歳時点では9時間となり、13年間で3時間増加していた。またLVMIは、17歳から24歳の7年間で平均3g/m2.7上昇していた。 運動量とLVMIの変化との関連性を解析した結果、小児期からの座位行動の累積時間の長さは、性別や肥満の有無、血圧レベルにかかわらず、LVMIの上昇幅が最大40%増えることと関連していた。その反対に、小児期からの軽強度運動の累積時間の長さは、LVMIの上昇幅が最大49%減ることと関連していた。また、軽強度運動の累積時間が長いと、左室拡張能などの指標も良好だった。なお、小児期からの中~高強度運動の累積時間が長いことは、LVMIの上昇幅が最大5%増えることと関連していたが、これは運動負荷に伴う生理的な変化と考えられるという。 Agbaje氏は、「子どもの頃の座位行動が成人後の健康上の脅威となるという報告が増えてきており、それらの知見を真剣に受け止める必要がある」と述べている。一方で同氏は、「軽強度運動は座位行動の弊害を打ち消す効果的な手段だ。毎日3~4時間の軽強度運動を続けるということは、それほど困難なことではない」と解説。子ども向きの軽強度運動の具体的な例として、外遊び、犬の世話、おつかい、徒歩または自転車での通学、公園の散歩、ガーデニングなどのほかに、バスケットボール、サッカー、ゴルフ、フリスビーといった競技性の高くないカジュアルなスポーツなどが該当するとのことだ。

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