お知らせがあります

2024/07/10
7月10日より「Web講演会」「CARENQ」の送信元メールアドレスを変更いたしました。
■変更前:seminar@carenet.co.jp、enquete@carenet.co.jp
■変更後:seminar@www.carenet.com、enquete@www.carenet.com
メールアドレスまたはドメインによる受信拒否や振り分けなどを設定されている方は、設定の変更をお願いいたします。

サイト内検索|page:4

検索結果 合計:4245件 表示位置:61 - 80

61.

UKPDS 91:診断直後の強化血糖コントロール、死亡リスクを生涯低減/Lancet

 2型糖尿病におけるスルホニル尿素またはインスリン、あるいはメトホルミン療法による早期の強化血糖コントロールは、従来の食事療法を主体とする血糖コントロールと比較して、死亡および心筋梗塞のリスクをほぼ生涯にわたって減少させ、診断後すぐに正常血糖値に近い状態を実現することは、生涯にわたる糖尿病関連合併症のリスクを可能な限り最小限に抑えるために不可欠である可能性があることが、英国・オックスフォード大学のAmanda I. Adler氏らによる英国糖尿病前向き研究(UKPDS)の10年後の結果から、14年間の追跡調査で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年5月18日号で報告された。10年後以降、24年後までの14年間の解析結果 本研究では、1977~91年に英国の23施設を受診した25~65歳の2型糖尿病患者4,209例を、強化血糖コントロール(スルホニル尿素またはインスリン、体重増加がみられる場合はメトホルミン)を受ける群、または従来の血糖コントロール(主に食事療法)を受ける群に無作為に割り付けた。 この20年間の介入試験の終了時に、3,277例の生存者が10年間の試験後モニタリング期間に参加し、2007年9月30日まで追跡が行われた。本研究の対象は、この10年間の試験後モニタリング期間の終了時に生存していた患者1,489例であった。 ベースラインの平均年齢は50.2(SD 8.0)歳で、41.3%が女性であった。10年間の追跡開始時の平均年齢は70.9(8.5)歳で、その14年後の2021年9月30日の時点(合計24年)の生存者は79.9(8.0)歳だった。ベースラインからの追跡期間の範囲は0~42年で、期間中央値は17.5年(四分位範囲[IQR]:12.3~26.8)だった。メトホルミンで、死亡と心筋梗塞の相対リスクが20%、31%低下 試験終了から最長24年間に、血糖値およびメトホルミンのレガシー効果には、減弱の徴候を認めなかった。 従来の血糖コントロールと比較して、スルホニル尿素またはインスリン療法による早期の強化血糖コントロールでは、全体的な相対リスクが全死因死亡で10%(95%信頼区間[CI]:2~17、p=0.015)、心筋梗塞で17%(6~26、p=0.002)、細小血管症で26%(14~36、p<0.0001)の減少を示した。絶対リスクは、それぞれ2.7%、3.3%、3.5%低下した。 また、従来の血糖コントロールに比べ、メトホルミン療法による早期の強化血糖コントロールは、全体的な相対リスクが全死因死亡で20%(5~32、p=0.010)、心筋梗塞で31%(同12~46、p=0.003)減少した。絶対リスクは、それぞれ4.9%および6.2%低下した。脳卒中、末梢血管疾患のリスク低減は認めず 試験中または試験後に、2つの強化血糖コントロールのいずれにおいても、脳卒中および末梢血管疾患の有意なリスクの低下は認めず、メトホルミン療法では細小血管症の有意なリスク低減はみられなかった。 著者は、「この研究結果は、2型糖尿病患者に対する早期の強化血糖コントロールの導入を支持し、長期的な糖尿病関連合併症のリスクを最小化するための治療指針として活用される可能性がある」としている。本研究は、オックスフォード大学Nuffield Department of Population Health Pump Primingの助成で行われた。

62.

第196回 6月からの生活習慣病管理料の導入、新たな事務負担と実質的な減収に/厚労省

<先週の動き>1.6月からの生活習慣病管理料の導入、新たな事務負担と実質的な減収に/厚労省2.iPhoneにマイナンバーカード機能を搭載、2025年春に実現へ/デジタル庁3.総合診療科の認知向上とオンライン診療の普及に向け提言を提出/規制改革推進会議4.グーグルマップの口コミ訴訟、眼科医院が名誉毀損で勝訴5.健康被害が急増の自由診療クリニック、名義貸しが横行6.出産費用の透明化進む、『出産なび』で安心の選択を/厚労省1.6月からの生活習慣病管理料の導入、新たな事務負担と実質的な減収に/厚労省2024年度の診療報酬改定が6月1日より適用される。高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療において「特定疾患療養管理料」から「生活習慣病管理料(I)」「生活習慣病管理料(II)」への移行が行われる。この改定は、質の高い疾病管理を進めることを目的とし、具体的には患者と医療者が共通の理解を持ち、療養計画書を作成して共有することが求められる。新たに導入される「生活習慣病管理料(II)」は333点となり、従来の「特定疾患療養管理料」225点より高く設定されている反面、算定回数が月2回から1回に減少する。また、「外来管理加算」や「処方箋料」が併算定できなくなり、全体の診療報酬は減少することになる。都内の開業医によれば、1日50人の患者のうち6割が特定疾患療養管理料を算定していた場合、年間で約115万円の減収が予測されている。改定のもう1つの大きな変更点は、療養計画書の作成と患者の同意・署名の取得が必須となる点で、これにより医師やスタッフの業務負担が増加する。療養計画書には、患者と相談した達成目標や行動目標、食事や運動の指導内容、血液検査の結果などが記載され、これを患者に説明し、同意を得て署名をもらう必要がある。一方、改定により「生活習慣病管理料(I)」も引き続き存在し、点数が引き上げられた。脂質異常症は610点、高血圧症は660点、糖尿病は760点となり、一定条件下で療養計画書の交付義務が免除される場合がある。また、生活習慣病管理料(II)の算定には多職種連携が推奨され、管理栄養士などの専門職との協力が求められる。外来栄養食事指導が必要な場合は、他の医療機関と連携し、指導記録を共有する体制を整備することが重要となる。厚生労働省は、生活習慣病管理料の導入により計画的な治療管理を促進し、疾病管理を求めている。その一方で、医療機関側には新たな文章作成など負担が増大するため、業務改善が必要となる。参考1)診療報酬の改定で開業医が年間115万円の減収? 生活習慣病の治療、6月から何が変わるのか(東京新聞)2)生活習慣病管理料(II)を新設し、2区分に(CB news)3)糖尿病・高血圧症等治療は特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料I・IIへシフト、計画的治療管理を(Gem Med)4)生活習慣病管理料への移行、当院の「療養計画書」の作成法(日経メディカル)2.iPhoneにマイナンバーカード機能を搭載、2025年春に実現へ/デジタル庁5月31日にデジタル庁は、2025年春をめどにiPhoneにマイナンバーカードの機能を搭載する計画を発表した。岸田 文雄首相と米アップル社のティム・クックCEOとの会談で、この計画が確認された。これにより、iPhoneを使って行政手続きや本人確認ができるようになる。すでにAndroid端末向けには2023年5月からスマホ用電子証明書の運用が開始されており、iPhoneへの対応が焦点となっていた。アップル社は、デジタル庁と協力してiPhoneのウォレット機能にマイナカードを追加する準備を進めており、物理的なカードがなくても、スマホだけで身分証明書として使用できるようになる。これによりコンビニエンスストアでの公的証明書の発行や、病院での本人確認などが可能となる。アップルウォレットの身分証明書機能が米国以外で展開されるのはわが国が初めてとなる。一方で、政府はマイナカード機能のスマホ搭載を進めるために法改正を行い、今回の法改正でマイナカードの全機能がスマホに搭載されることが可能となり、銀行口座や証券口座の開設がスマホだけで完結できるようになるほか、コンビニエンスストアなどでの年齢確認にも使用可能となる。さらに、マイナ保険証も2025年春以降にスマホで使用できるようになる見通し(なお現行の保険証は2024年12月に廃止され、マイナカードに1本化される)。しかし、マイナンバー制度には、個人情報の管理やセキュリティの面で課題が残っているため、政府は、デジタル庁が主体となり、個人情報の正確性を確保するための支援を行うことを新たに規定する。また、医療機関でのマイナ保険証の利用率が低いため、普及促進のための取り組みが必要とされている。iPhoneへのマイナンバーカード機能の搭載は、デジタル社会への移行を大きく進める重要な1歩となると予想され、今後も利用者が安心して使える環境を政府が整えることが求められる。参考1)マイナンバーカード機能のiPhoneへの搭載について(デジタル庁)2)iPhoneにマイナカードの機能搭載へ 来春を予定 デジタル庁(CB news)3)iPhoneにマイナ機能 かざして身分証明、病院などで アップル、来夏までに(日経新聞)3.総合診療科の認知向上とオンライン診療の普及に向け提言を提出/規制改革推進会議政府の規制改革推進会議は、規制改革推進に向けた答申をまとめ、5月31日に岸田 文雄首相に提出した。主な内容として、医療機関が「総合診療科」を標榜できるように広告規制の見直しを厚生労働省に求め、2025年までに結論を出す方針。これは、患者がプライマリケアにアクセスしやすくするための措置となる。現在の医療法の広告規制では、内科、外科、精神科など特定の診療科名しか単独で広告できないが、総合診療科はこの中に含まれていない。高齢化に伴い、複数の疾患を抱える高齢者が増える中、総合診療を提供する医療機関の認知度向上が求められ、これに対応するため規広告規制の見直しを求めたもの。また、在宅医療における薬物治療を円滑に提供するため、厚労省には、訪問看護ステーションにストックできる薬の種類を拡大することが検討されている。このほか、オンライン診療で精神療法が初診から利用できることにつき2025年までに結論を出し、診療報酬の見直しを行う方針。これは、オンライン診療の利用拡大を通じて、地域差を解消し、患者の利便性を高めることを目的としている。もう1つの重要な施策として、薬剤師が不在の店舗でもオンラインで市販薬を販売できるようにする規制改革が進められている。とくに、過疎地や深夜・早朝に薬剤師が常駐しない店舗に、遠隔で管理することで市販薬の販売を可能にする方針。これにより、薬剤師の人手不足を解消し、地域住民の利便性を向上させることを目指している。今回の答申を受け、政府は新たな規制改革実施計画を取りまとめ、近く閣議決定する予定。これにより、医療分野でのデジタル技術の活用などが具体的に進められることになる。参考1)規制改革推進に関する答申~利用者起点の社会変革~(規制改革推進会議)2)「総合診療科」の標榜容認検討へ、25年結論 規制改革推進の答申(CB news)3)人手不足、デジタルで解消 遠隔で薬販売/AIで要介護認定 規制改革会議が最終答申(日経新聞)4.グーグルマップの口コミ訴訟、眼科医院が名誉毀損で勝訴兵庫県尼崎市の眼科医院がグーグルマップの口コミ欄に一方的に悪評を投稿されたとして、損害賠償を求めた訴訟の判決が大阪地裁であった。5月31日に山中 耕一裁判官は、投稿者の大阪府豊能町の女性に対し、200万円の賠償と投稿の削除を命じた。訴えによると、眼科医院は3年前に「レーシック手術を受けたが左目だけで、右目はレンズを入れられた」や「何も症状がないのに勝手に一重まぶたにされた」といった内容の書き込みを受けた。医院の院長は、これらの内容に身に覚えがないとして、グーグルに情報開示を求めて投稿者を特定し、今年1月に女性を訴えた。山中裁判官は「書き込みは、眼科の医師が患者から承諾を得ずに勝手な医療行為をするという印象を与え、医院の社会的評価を低下させた」と述べ、投稿が名誉毀損にあたると判断した。眼科医院の代理人弁護士である壇 俊光氏は、「投稿者の特定には3年かかり、ネット社会における不当な投稿への対応の遅れを感じている。迅速な削除を求める司法判断が必要だ」と述べる。この判決により、インターネット上での名誉毀損行為に対する法的対応の重要性が再確認された。参考1)グーグルマップの口コミ欄で一方的に眼科医院の悪評、投稿者に200万円の賠償命じる判決(読売新聞)2)「クチコミ」投稿者に賠償命令 眼科医院長“評判落とされた”(NHK)5.健康被害が急増の自由診療クリニック、名義貸しが横行美容や健康への関心の高まりを背景に、公的な医療保険が適用されない自由診療を提供するクリニックが急増している。しかし、自由診療クリニックの増加に伴い、健康トラブルも多発しており、健康被害や契約上の問題が顕在化している。とくに、美容医療分野では、脱毛や薄毛治療、医療ダイエットなどの自由診療が行われ、患者は全額自己負担で利用している。NHKの報道によれば、都市部を中心に「一般社団法人」として設立された美容クリニックが急増し、その多くが自由診療を提供している。一般社団法人は、医師でなくても設立可能であり、登記のみで開業できるため、異業種からの参入が容易なために医師の「名義貸し」が横行、実際には医療行為に関与しない医師が管理者として名前を貸しているケースが多数報告されている。国民生活センターによると、美容医療に関するトラブルの相談件数は、2023年度に5,833件と、この5年間で約3倍に増加している。とくに健康被害の相談は839件に上り、過去5年間で約1.7倍に増加している。たとえば、高濃度のビタミン点滴によるアナフィラキシーショックなど、深刻な健康被害も報告されている。一般社団法人によるクリニックの運営に関しては、監督官庁がなく、医療法人のような規制も適用されないため、管理が不十分とされる。渋谷区保健所の熊澤 雄一郎生活衛生課長は、「一般社団法人のクリニックも医療法人と同様に業務内容の報告体制を整備する必要がある」と指摘する。厚生労働省は、専門家による検討会を立ち上げ、自由診療における美容医療の適切なあり方や対策を協議し、行政が事業内容を定期的にチェックできる制度について検討する予定。適切な監視体制の構築が急務となる。参考1)追跡“自由診療ビジネス”の闇 相次ぐ美容・健康トラブルの深層(NHK)2)一般社団法人のクリニック 都市部で増 医師「名義貸し」証言も(同)3)美容医療でトラブル増加 厚労省 検討会立ち上げ対策など協議へ(同)6.出産費用の透明化進む、『出産なび』で安心の選択を/厚労省5月30日に厚生労働省は、医療機関ごとの出産費用やサービス内容を比較できるウェブサイト「出産なび」を開設した。このサイトは、全国の病院や助産所など約2,000の出産施設を対象に、妊婦やその家族が適切な施設を選択できるよう情報を提供する。「出産なび」では、各施設の出産費用や分娩実績、サービス内容を一覧で確認でき、たとえば、無痛分娩の対応有無や24時間対応の可否、立ち会い出産の可否などが細かく紹介されている。施設の種類や希望するサービスにチェックを入れて検索すると、条件に合致する施設が一覧表示され、地図上で施設の位置を確認することもできる。出産費用の内訳も明示されており、基本的な分娩費用や個室の追加料金などがわかるようになっている。これにより、妊婦や家族が費用面での予測を立てやすくなり、出産に伴う経済的な負担を見通しやすくなる。「出産なび」の開設は、少子化対策の一環として、出産費用の透明化を図り、不透明な値上げを防ぐことを目的としている。また、正常分娩への保険適用に向けた議論の材料としても活用される予定。現在、正常分娩は保険適用外であり、費用は全額自己負担となっているが、2026年度をめどに保険適用を検討している。厚労省では、今後も「出産なび」の情報を定期的に更新し、利用者が最新の情報にアクセスできるよう努める。また、出産費用の保険適用についても議論を進め、妊婦や家族の負担軽減を図っていく方針。参考1)「出産なび」へようこそ(厚労省)2)お産の費用見える化サイト「出産なび」開設 全国の約2千施設が対象 厚労省(CB news)3)医療機関ごとの出産費用を検索「出産なび」開設…無痛分娩の対応有無や24時間対応可も紹介(読売新聞)4)出産費用丸わかり、厚労省が施設検索サイト「出産なび」(日経新聞)

63.

身体活動の指標、時間ではなく歩数でもOK?

 米国における身体活動のガイドラインでは、健康のために中~高強度の身体活動を週150分以上行うことを推奨しているが、歩数に基づく推奨はエビデンスが十分ではないため発表されていない。今回、米国・Brigham and Women's Hospital/Harvard Medical Schoolの浜谷 陸太氏らによる米国の62歳以上の女性を対象としたコホート研究において、中~高強度身体活動時間および歩数と全死亡率および心血管疾患(CVD)の関連が質的に同様であることが示唆された。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年5月20日号に掲載。 このコホート研究は、1992~2004年に米国で実施した無作為化試験であるWomen's Health Studyの参加者の追跡データを解析したもの。参加者はCVDやがんを罹患していない62歳以上の女性で、年1回アンケートに回答し、中~高強度身体活動に費やした時間と歩数を加速度計で連続7日間測定した。交絡因子調整後の中~高強度身体活動の時間および歩数と全死亡およびCVD(心筋梗塞・脳卒中・CVD死亡の複合)との関連を、Cox比例ハザード回帰モデル、制限付き平均生存時間の差、受信者動作特性曲線下面積(AUC)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・計1万4,399人の女性(平均年齢:71.8歳)が対象となった。・中~高強度身体活動時間の中央値は週62分(四分位範囲:20~149分)、歩数の中央値は1日5,183歩(同:3,691~7,001歩)であった。・追跡期間中央値9.0年で、全死亡の1標準偏差当たりのハザード比は、中~高強度身体活動時間が0.82(95%信頼区間[CI]:0.75~0.90)、歩数が0.74(同:0.69~0.80)であった。・中~高強度身体活動時間および歩数が多い(上位3四分位群vs.最低四分位群)ほど生存期間(period free from death)が長かった。・中~高強度身体活動時間および歩数での全死亡率のAUCは同様で、どちらの指標も0.55(95%CI:0.52~0.57)であった。CVDとの関連についても同様だった。 著者らは「今後のガイドラインにおいては、個々人の好みに対応できるよう、時間に基づく目標と共に歩数に基づく目標が検討されるべき」としている。

64.

モジュール式リードレスペーシング除細動システム、主要エンドポイント達成/NEJM

 皮下植込み型除細動器(S-ICD)と無線通信するリードレスペースメーカーは、植込み後6ヵ月時におけるリードレスペースメーカー関連主要合併症非発生率、リードレスペースメーカーとS-ICD間の通信成功率、およびパルス幅0.4msでペーシング閾値2.0V以下の患者の割合に関して、パフォーマンス目標を超えた。オランダ・アムステルダム大学医療センターのReinoud E. Knops氏らが、国際共同単群試験「Effectiveness of the EMPOWER Modular Pacing System and EMBLEM Subcutaneous ICD to Communicate Antitachycardia Pacing study:MODULAR ATP試験」の結果を報告した。S-ICDは、経静脈ICDよりリード関連合併症が少ないが、抗頻拍および徐脈ペーシングができない。リードレスペースメーカーとS-ICDの無線通信による抗頻拍および徐脈ペーシングを行うモジュール式ペーシング除細動システムの安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2024年5月18日号掲載の報告。心室性不整脈による突然死のリスクがある患者を登録 研究グループは、ICD植込みの適応があり単形性心室頻拍のリスクが高い18歳以上の患者でベースライン時にペーシングを必要とせず、変時性応答不全を有する、または心室同期不全のためにペーシングを必要とする患者を登録し、リードレスペースメーカー(商品名:EMPOWER)とS-ICDシステム(同:EMBLEM)を植え込み、退院前、1ヵ月、6ヵ月、12ヵ月時およびその後は6ヵ月ごとに追跡調査した。 安全性のエンドポイントは、植込み後6ヵ月時におけるリードレスペースメーカーに関連する主要合併症非発生率で、86%を目標として評価した。リードレスペースメーカー関連主要合併症は、ペースメーカーや手技または治療に関連した合併症で、システム交換、永久的ペースメーカー機能喪失、入院または死亡と定義した。 パフォーマンスの主要エンドポイントは、植込み後6ヵ月時におけるリードレスペースメーカーとS-ICD間の通信成功率(目標88%)、およびパルス幅0.4msでペーシング閾値2.0V以下の患者の割合(目標80%)であった。 2021年7月~2024年1月に、38施設において計293例が登録され、そのうち植込み後6ヵ月時の評価対象コホートには162例が含まれた。患者の平均年齢は60歳、女性が16.7%、平均左室駆出率は33.1(SD 12.6)%であった。162例のうち、151例が6ヵ月の追跡調査を完遂した。主要合併症の非発生率97.5% リードレスペースメーカー関連主要合併症非発生率は97.5%、片側98.8%信頼区間(CI)の下限値は94.2%で、事前に規定された目標を上回った。 リードレスペースメーカーとS-ICD間の通信成功率は98.8%、片側97.5%CIの下限値は97.0%で、事前に規定された目標を上回った。 パルス幅0.4msでペーシング閾値2.0V以下の患者の割合は97.4%(147/151例)、片側97.5%CIの下限値は93.4%で、事前に規定された目標を上回った。 抗頻拍ペーシング成功率は61.3%で、デバイスの通信障害により抗頻拍ペーシングが実施されなかったエピソードはなかった。 死亡は8例報告された。うち4例が植込み後6ヵ月以内であったが、死因がデバイスや手技に関連すると判定された死亡例はなかった。

65.

専属英会話講師の登場【Dr. 中島の 新・徒然草】(531)

五百三十一の段 専属英会話講師の登場もうすぐ衣替えの季節。最近は深緑と涼風の良い気候ですね。1年中こうだったらいいのですけど。さて、前回に引き続いて、今回もChatGPTと英語ですよ。「またかよ」という読者がおられたらすみません。でも皆さん、どちらか一方には興味をお持ちではないでしょうか。今回は「音声会話機能を使ったらChatGPTが専属英会話講師になってしまった」というお話です。スマホ版のChatGPTには音声会話機能があります。無料版のGPT-3.5でも、回数制限付きでGPT-4o(オムニ)の音声会話が可能なようです。試しに知り合いのスマホにChatGPTをダウンロードし、そのまま試してみたら、無料版でも音声でやりとりすることができました。ただ、途中で「また後でお試しください」という意味のメッセージが出てきて中断されました。無料版ゆえの使用時間の制限か、通信回線の混雑で接続が不安定になったのかもしれません。というわけで、実際にChatGPTを英会話講師として使う方法を紹介しましょう。まずプロンプトと呼ばれる入力は日本語でOK。ChatGPTの入力画面を開け、右下のヘッドホンマークを押します。そしたら画面中心の模様がグルグル回ってグレーの丸になり、「話し始める」という表示が出ます。そしたら「英会話の練習をしたいのでロールプレイのお相手をしてくれませんか?」と声を掛けましょう。5秒ほどすると「承知しました。どのような状況を考えていますか」みたいな返事があるので、日本語で適当な設定をしてください。たとえば、「私が医者でそちらが患者さん。めまいを主訴に受診したという設定で、一問一答でお願いします」と言っておいてから“What matters to you?”と英語で話し掛けると英会話開始です。ChatGPTのほうは「1週間ほど前からめまいがあります」とか「部屋がグルグル回ります」とかいろいろ訴えてくるので「何かめまいを誘発させたり悪化させたりするようなことはありますか?」などと聞くわけです。すると“When I move my head, it gets worse, but if I keep my head still, the vertigo slowly goes away.”(頭を動かすとめまいがひどくなり、頭を動かさないと徐々にめまいが去っていきます)といった答えが返ってきました。これは完全にBPPV(Benign Paroxysmal Positional Vertigo;良性発作性頭位めまい症)を意識している返答なので、こちらも「大人しくしていたら数日で改善しますよ」などとアドバイスをします。同じように頭痛のことでロールプレイをした時には、“Bright lights and loud noises definitely make my head worse. Sometimes strong smells can trigger them too.”(明るい光や大きな騒音で確かに頭痛が悪化します。時には強い匂いで頭痛が誘発されます)などという答えが返ってきました。典型的な偏頭痛ですね。診察室ではいつもの会話なので、英語でも何とか最後までやり通すことができました。問題があるとすれば、ChatGPTが時々暴走して医師のセリフを横取りしたり、日本語になったりすることです。こういった場合には「それは私のセリフなので、貴女は患者さんの役をしてください。それと英語でお願いします」と日本語で言うと、素直に元の設定に戻ってくれます。いろいろ試した結果、ChatGPTを使った英会話ロールプレイは、もう最強の英会話練習ではないかと思うようになりました。さて、ChatGPTで英会話ロールプレイをする時のいくつかの注意点を挙げておきましょう。若干のタイムラグがあるので、相手が話し始めるまで辛抱強く待つこと。プロンプトは日本語でOK。途中から条件を追加するのも問題なし。相手はAIなので、忖度する必要はまったくなし。先方が逆ギレしたり拗ねたりする場面には出くわしたことがありません。いつ始めてもOK、唐突に終わってもOK、相手が気を悪くする心配なし。10分ほどの隙間時間があれば、いつでもどこでも始めることができますが、周囲に人がいないところのほうがよさそうです。会話の記録はテキストで残っているので、後で復習するのも簡単。というわけで、ついに到達した最強の英会話勉強法。読者の皆さんもぜひお試しください。最後に1句衣替え 熱血勉強 AIと

66.

第99回 精巣にもすでにナノプラスチックが侵入

頸動脈だけではなかった以前、記事でも紹介したように、プラスチックの細片のうち、大きさが1μm~5mmのものをマイクロプラスチック、より小さくnm(ナノメートル)レベルのものをナノプラスチックと呼び、MNPs(Microplastics and Nanoplastics)と総称します。ペットボトル内にも存在することから、上記の頸動脈プラークへの侵入は衝撃的なニュースでした。私たち人類がどのようにしてプラスチックと向き合っていくのか、議論が必要になります。さて、MNPsはどこにでも存在することから、ヒトの生殖系に影響を与えるのではないかという話も当然出てくるわけです。イヌとヒトの精巣におけるマイクロプラスチックの頻度や組成を調べた研究が報告されました1)。この研究は、熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析計を使って、イヌの精巣47個とヒトの精巣23個に含まれる12種類のマイクロプラスチックを定量化したものです。残念ながら、いずれの精巣にもマイクロプラスチックの存在が明らかになりました。マイクロプラスチックの平均含有量はイヌ122.63μg/g、ヒト328.44μg/gという結果だったのです。ヒトとイヌの両者とも、主要なポリマータイプの割合は類似していて、最も多いのはポリエチレン(PE)でした。さらに、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンテレフタラート(PET)のような特定のポリマーと精巣重量との間には負の相関が観察されました。共存か削減・撤廃かもしかすると、男性の生殖能力にもMNPsはすでに影響を及ぼし始めているのかもしれません。ただ、プラスチックというのは人類にとってすでに長い付き合いになっている物質ですから、実はもううまく共存できていて、そこまで悪影響がないという結論になるかもしれませんし、中長期的には削減・撤廃していかないとまずいという結論になるかもしれません。都市部では、管理がうまくできていないプラスチック廃棄物が多いほどMNPsが多いというデータもあり2)、取り組むことになるなら、人口が多い地域ほど優先的に、ということになります。ただ、利便性を捨てて多大なコストをかけるほどのメリットが人類にあるのかどうかも、まだはっきりしていません。参考文献・参考サイト1)Hu CJ, et al. Microplastic presence in dog and human testis and its potential association with sperm count and weights of testis and epididymis. Toxicol Sci. 2024 May 15:kfae060.2)Talang R, et al. Influencing factors of microplastic generation and microplastic contamination in urban freshwater. Heliyon. 2024 Apr 25;10(9):e30021.

67.

小児期の運動不足が若年成人期の心肥大と関連

 子どもの頃の運動量と若年成人期の心臓の大きさとの間に有意な関連があり、運動不足だった子どもは成人後に心肥大が見られるとする研究結果が報告された。東フィンランド大学のAndrew Agbaje氏の研究によるもので、詳細は「European Journal of Preventive Cardiology」に5月7日掲載された。 心肥大とは心臓のサイズや重量が過度に増大した状態であり、成人の心肥大は心血管疾患や早期死亡といったイベントのリスクを高める。小児期にはそのようなイベントの発生は少ないものの、心肥大自体は後年のリスク上昇につながる可能性がある。一方、成人では適度な運動が心血管の健康増進に役立つことが広く認識されている。しかし、小児期の運動習慣が心臓の形態に与える影響についてはよく分かっていない。これらを背景としてAgbaje氏は、子どもの運動習慣が、その後の心臓の形態や機能に及ぼす影響について、縦断的に検討した。 この研究は、英国の子どもとその親を対象に行われている出生コホート研究(ALSPAC)のデータを用いた二次分析として行われた。平均年齢11.75±0.24歳の子ども1,682人(女児62.7%)を約13年間にわたって追跡。日常の運動量は、11歳、15歳、24歳の時点で加速度計を4~7日間、身に着けて生活してもらい把握した。心臓の形態と機能については、17歳、24歳の時点で行った心エコー検査により、左室心筋重量係数(LVMI)や左室拡張能などを評価した。 研究参加者全体の座位行動時間を平均すると、ベースライン(11歳時点)が6時間だったものが、24歳時点では9時間となり、13年間で3時間増加していた。またLVMIは、17歳から24歳の7年間で平均3g/m2.7上昇していた。 運動量とLVMIの変化との関連性を解析した結果、小児期からの座位行動の累積時間の長さは、性別や肥満の有無、血圧レベルにかかわらず、LVMIの上昇幅が最大40%増えることと関連していた。その反対に、小児期からの軽強度運動の累積時間の長さは、LVMIの上昇幅が最大49%減ることと関連していた。また、軽強度運動の累積時間が長いと、左室拡張能などの指標も良好だった。なお、小児期からの中~高強度運動の累積時間が長いことは、LVMIの上昇幅が最大5%増えることと関連していたが、これは運動負荷に伴う生理的な変化と考えられるという。 Agbaje氏は、「子どもの頃の座位行動が成人後の健康上の脅威となるという報告が増えてきており、それらの知見を真剣に受け止める必要がある」と述べている。一方で同氏は、「軽強度運動は座位行動の弊害を打ち消す効果的な手段だ。毎日3~4時間の軽強度運動を続けるということは、それほど困難なことではない」と解説。子ども向きの軽強度運動の具体的な例として、外遊び、犬の世話、おつかい、徒歩または自転車での通学、公園の散歩、ガーデニングなどのほかに、バスケットボール、サッカー、ゴルフ、フリスビーといった競技性の高くないカジュアルなスポーツなどが該当するとのことだ。

68.

英語で「膿の切開と排膿」は?【1分★医療英語】第132回

第132回 英語で「膿の切開と排膿」は?《例文》医師To treat the abscess, the best course of action will be the I&D procedure, which stands for Incision and Drainage.(膿瘍を治療するために、最適な処置としてはI&Dです。これは切開排膿という意味です)患者Does the procedure hurt?(その処置は痛いですか?)《解説》今回は“I&D”という略語についての解説です。これは“abscess”(膿瘍)の切開排膿の処置を示す表現です。“Incision(切開)and Drainage(排膿)”という表現を略して、“I&D”と表現します。発音としては「アインディー」という感じです。“and”が文の間に入る際、英語だと「ン」のみしか発音しないので注意です。医療者間であれば、当たり前のように“I&D”という表現が使われます。口語のみでなく、カルテにも“I&D”と記載されることが多くあります。“I&D”のみでも“I&D procedure”でも構いません。ただし、医療に詳しい人でない限り患者さんはこの用語を知りませんので、使う際には《例文》のように、“Incision and drainage procedure”といった補足説明が必要でしょう。私が現場で働いている際にも「Please prepare the stuff forアインディー」といった感じで言われて「???」となった経験があるため、今回紹介させていただきました。この文は「切開排膿に必要なものを準備しておいて」という意味ですね。講師紹介

69.

CVDの1次予防にバイオマーカー追加は有用か/JAMA

 心血管イベントの1次予防において、5つの心血管バイオマーカーはいずれもアテローム性動脈硬化性心血管疾患の発生と有意に関連するものの、その関連性は小さく、心不全と死亡率についてはより強力な関連を認めるが、確立された従来のリスク因子と心血管バイオマーカーを組み合わせてもアテローム性動脈硬化性心血管疾患のリスク予測能の改善はわずかであることが、ドイツ・University Heart and Vascular Center HamburgのJohannes Tobias Neumann氏らの検討で示された。研究の成果はJAMA誌オンライン版2024年5月13日号で報告された。28件の住民ベースのコホート研究の患者データを解析 研究グループは、日本を含む12ヵ国で行われた28件の住民ベースのコホート研究から得た個々の患者データを用いて、心血管バイオマーカーおよび従来のリスク因子に心血管バイオマーカーを加えた場合の予後予測能の評価を行った(European Union project euCanSHareの助成を受けた)。 これらのコホート研究では、心血管バイオマーカーとして、高感度心筋トロポニンI、高感度心筋トロポニンT、N末端プロ脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)、脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、高感度C反応性蛋白(hs CRP)を測定した。追跡期間中央値は11.8年だった。 主要アウトカムは、すべての致死的および非致死的なイベントを含む初発のアテローム性動脈硬化性心血管疾患(冠動脈性心疾患イベント[possibleまたはdefinite]、脳梗塞イベント[同]、冠動脈血行再建、冠動脈性心疾患死、脳梗塞死、分類不能の死亡)の発生とした。全バイオマーカーで有意な関連、全死因死亡、心不全との関連が強い 16万4,054例(年齢中央値53.1歳[四分位範囲[IQR]:42.7~62.9]、女性52.4%)を解析の対象とした。アテローム性動脈硬化性心血管疾患イベントは1万7,211件発生した。 すべてのバイオマーカーで、アテローム性動脈硬化性心血管疾患の発生と有意な関連を認めた。1SDの変化当たりのサブディストリビューション・ハザード比は、高感度心筋トロポニンIが1.13(95%信頼区間[CI]:1.11~1.16)、高感度心筋トロポニンTが1.18(1.12~1.23)、NT-proBNPが1.21(1.18~1.24)、BNPが1.14(1.08~1.22)、hs CRPが1.14(1.12~1.16)であった。 副次アウトカムである全死因死亡、心不全、脳梗塞、心筋梗塞の発生についても、同様の有意な関連がみられた。バイオマーカーと全死因死亡および心不全との関連は、アテローム性動脈硬化性心血管疾患との関連よりも強力であった。バイオマーカーの併用も有望 確立されたリスク因子を含むモデルに、それぞれ単一のバイオマーカーを加えると、C統計量が改善した。 また、高感度心筋トロポニンI、NT-proBNP、hs CRPを併用すると、10年間のアテローム性動脈硬化性心血管疾患発生のC統計量が、65歳未満では0.812(95%CI:0.8021~0.8208)から0.8194(0.8089~0.8277)へ、65歳以上では0.6323(0.5945~0.6570)から0.6602(0.6224~0.6834)へと改善した。 さらに、これらのバイオマーカーを組み合わせると、従来のモデルと比較して、リスクの再分類も改善された。 著者は、「すべてのバイオマーカーはアテローム性動脈硬化性心血管疾患の発生だけでなく、全死因死亡、心不全、脳梗塞、心筋梗塞の予測因子であった。いずれのバイオマーカーも、致死的または非致死的なアテローム性動脈硬化性心血管疾患イベントと比較して、全死因死亡および心不全と強い関連を示すという興味深い知見が得られた」とまとめている。

70.

風邪の予防・症状改善に亜鉛は有用か?~コクランレビュー

 風邪症候群の予防や症状持続期間の短縮に関して、確立された方法はいまだ存在しない。しかし、この目的に亜鉛が用いられることがある。そこで、システマティック・レビューおよびメタ解析により、風邪症候群の予防や症状改善に関する亜鉛の効果が検討された。その結果、亜鉛には風邪症候群の予防効果はないことが示唆されたが、症状持続期間を短縮する可能性が示された。Maryland University of Integrative HealthのDaryl Nault氏らがThe Cochrane Database of Systematic Reviews誌2024年5月9日号で報告した。 研究チームは、風邪症候群や上気道感染の予防または症状改善に関する亜鉛の効果をプラセボと比較した無作為化比較試験を検索した。検索には、CENTRAL、MEDLINE、Embase、CINAHL、LILACSを用い、2023年5月22日までに登録された試験を抽出した。また、Web of Science Core Collectionや臨床試験登録システムへ2023年6月14日までに登録された試験も検索した。エビデンスの確実性はGRADEを用いて評価した。また、有害事象についても調べた。 システマティック・レビューの結果、34試験(予防:15試験、治療:19試験)に参加した8,526例が対象となった。22試験が成人を対象としたもので、12試験が小児を対象としたものであった。 予防目的、治療目的での亜鉛の使用に関する主な結果は以下のとおり。【予防目的での使用】・風邪症候群の発症リスクは、プラセボと比較してほとんどまたはまったく低下しない可能性がある(リスク比[RR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.85~1.01、I2=20%、9試験[1,449例]、エビデンスの確実性:低い)。・風邪症候群を発症した場合、症状持続期間はプラセボと比較してほとんどまたはまったく短縮しない可能性がある(平均群間差:-0.63日、95%CI:-1.29~0.04、I2=77%、3試験[740例]、エビデンスの確実性:中程度)。・有害事象の発現リスクの違いは不明である(RR:1.11、95%CI:0.84~1.47、I2=0%、7試験[1,517例]、エビデンスの確実性:非常に低い)。・重篤な有害事象の発現リスクの違いも不明である(RR:1.67、95%CI:0.78~3.57、I2=0%、3試験[1,563例]、エビデンスの確実性:低い)。【治療目的での使用】・風邪症候群の症状持続期間は、プラセボと比較して短縮する可能性がある(平均群間差:-2.37日、95%CI:-4.21~-0.53、I2=97%、8試験[972例]、エビデンスの確実性:低い)。・非重篤な有害事象の発現リスクは、プラセボと比較して増加する可能性がある(RR:1.34、95%CI:1.15~1.55、I2=44%、16試験[2,084例]、エビデンスの確実性:中程度)。・重篤な有害事象に関する報告はなかった。 著者らは、本システマティック・レビューおよびメタ解析において、エビデンスの確実性が低いまたは非常に低い結果が多かったという限界を指摘しつつ、「亜鉛は風邪症候群の予防には、ほとんどまたはまったく効果がないことが示唆される。一方、治療に用いる場合は、非重篤な有害事象を増加させる可能性はあるが、風邪の罹病期間を短縮する可能性がある」とまとめた。

71.

糖尿病診療GL改訂、運動療法では身体活動量の評価と増加に注目/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会より、5年ぶりの改訂となる『糖尿病診療ガイドライン2024』1)が5月23日に発表された。5月17~19日に第67回日本糖尿病学会年次学術集会が開催され、シンポジウム9「身体活動増加を可能にする社会実装とは何か?」において、本ガイドラインの第4章「運動療法」を策定した加賀 英義氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院 糖尿病・内分泌内科)が本章の各項目のポイントについて解説した。 本ガイドライン第4章「運動療法」の構成は以下のとおり。・CQ4-1糖尿病の管理に運動療法は有効か?・Q4-2運動療法を開始する前に医学的評価(メディカルチェック)は必要か?・Q4-3具体的な運動療法はどのように行うか?・Q4-4運動療法以外の身体を動かす生活習慣(生活活動)は糖尿病の管理にどう影響するか? ※今回の改訂でQ4-4の項目が新たに追加された。CQ4-1糖尿病の管理に運動療法は有効か? 本ガイドラインではCQを作成する場合、基本的にメタ解析(MA)やシステマティックレビュー(SR)を行う必要がある。ただし、運動療法に関しては既存の有益なMA/SRが存在していたため、それらのアンブレラレビューにて評価された。 加賀氏は本発表にて、ガイドライン策定に当たり参考とした論文を紹介した。2型糖尿病患者の運動の効果については、有酸素運動またはレジスタンス運動のどちらもHbA1cを低下させる。とりわけ2011年のJAMA誌掲載の論文で、週150分以上の運動は、週150分未満と比較し、HbA1c低下効果が有意に高いという結果が示されており2)、現状、週150分が目安となっている。ただし、今回のアンブレラレビューに用いられた研究では、糖尿病の血糖コントロールに関しては、週100分以上の量反応関係はそれほどなく、週100分程度の運動でもHbA1cの低下効果が期待できるという結果が示されている3)。 近年、筋力トレーニングやレジスタンス運動に関するMA/SRが増え、エビデンスが蓄積しているという。レジスタンス運動をすることは、運動しない場合と比較すると、血糖コントロール、フィットネスレベル、体組成、脂質、血圧、炎症、QOLなどを有意に改善することが示されている。一方、レジスタンス運動群と有酸素運動群を比較すると、血糖コントロールに関しては有酸素運動のほうが効果が高く、筋量増加についてはレジスタンス運動のほうが効果的であることなどが示されている4)。 1型糖尿病に関しては、血糖コントロールに運動療法が有効かどうかは、成人と小児共に一定の見解が得られていないため「推奨グレードU」としている。1型糖尿病の場合、インスリン分泌能の残存度合いが異なることにより、運動療法の効果が個人間で異なる可能性がある。ただし、成人では体重、BMI、LDL-C、最大酸素摂取量、小児では総インスリン量、ウエスト、LDL-C、中性脂肪について、運動療法により有意に改善がみられたとする研究もあったという5)。Q4-2運動療法を開始する前に医学的評価(メディカルチェック)は必要か? Q4-2は基本的に2019年版を踏襲している。糖尿病の運動療法を開始する際に懸念されるのが有害事象であるが、とくに3大合併症の網膜症、腎症、神経障害についてきちんと評価し、整形外科的疾患の状態を把握して指導することが必要だと、加賀氏は解説した。心血管疾患のスクリーニングに関しては、軽度~中等度(速歩きなど日常生活活動の範囲内)の運動であれば必要ないが、普段よりも高強度の運動を行う場合や、心血管疾患リスクの高い患者、普段座っていることがほとんどの患者に対しては、中等度以上の強度の運動を開始する際はスクリーニングを行うのが有益な可能性もある。加賀氏は、低強度の運動から始めることが合併症を防ぐために最も有用な方法だと考えられると述べた。 運動療法を禁止あるいは制限したほうがよい場合については、『糖尿病治療ガイド2022-2023』に記載のとおりである6)。とくに注意すべきは、増殖前網膜症以上の場合と、高度の自律神経障害の場合であり、運動療法開始前にその状態を把握しておく必要がある。Q4-3具体的な運動療法はどのように行うか? Q4-3のポイントとして、有酸素運動は、中強度で週150分かそれ以上、週3回以上、運動をしない日が2日間以上続かないように行い、レジスタンス運動は、連続しない日程で週に2~3回行うことがそれぞれ勧められ、禁忌でなければ両方の運動を行うということが挙げられた。有酸素運動は、心肺機能の向上を主な目的とするため、最初は低強度から始め、徐々に強度と量を上げていく。高齢者においては柔軟・バランス運動がとくに重要となるという。Q4-4運動療法以外の身体を動かす生活習慣(生活活動)は糖尿病の管理にどう影響するか? 2024年版で新たにQ4-4が追加された。「身体活動量=生活活動+運動」であり、生活活動は「座位時間を減らす」という言葉に置き換えることが可能だという。本項のポイントは、現在の身体活動量を評価し、生活活動量を含めた身体活動の総量を増加させることにある。そのためには、日常の座位時間が長くならないように、合間に軽い活動を行うことが勧められる。 参考となる研究によると、食後に軽度の運動をすることで血糖値の改善効果を得られる。30分ごとに3分間、歩行やレジスタンス運動をすることによって、食後の血糖値が改善できる7)。CGMを用いた研究では、1日14時間の座位時間を、30分ごとに10分程度の立位や歩行で約4.7時間少なくすると血糖値が改善したことが示されている8)。国内における2型糖尿病患者の運動療法の実施率を調べた研究によると、患者の運動療法の実施率は約半数であり9)、糖尿病がある人の身体活動量を増やすことが課題となっている。 加賀氏は、米国糖尿病学会が毎年発表している「糖尿病の標準治療(Standards of Care in Diabetes)」を参考として挙げ10)、身体活動に対する指針の項目で、「現在の身体活動量および座位時間を評価し、身体活動ガイドラインを満たしていない人に対しては、身体活動量を現在より増やすこと」という記載が近年追加されたことを指摘した。2024年版から「2型糖尿病における24時間を通した身体活動の重要性(Importance of 24-hour Physical Behaviors for Type 2 Diabetes)」を示した表も掲載されており、座位/座り過ぎの解消、運動、身体機能の向上、筋力の強化、歩行/有酸素運動、睡眠の質や量といった24時間を通した評価が重視されている。運動療法ガイドラインの未来 加賀氏は講演の最後に、「現在、スマートフォンやスマートウォッチでかなり正確に生活活動量を測定できるため、まず自身の身体活動量を測定することから開始し、その次に行動することが重要であると考えている。今後は、ゲームやVRを使った運動について、2型糖尿病患者を対象としたRCTが増えれば、ガイドラインに組み込まれることになるかもしれない。そのほか、2型糖尿病患者の運動療法の老年疾患に関するMA/SRの充実、スポーツジムの有効な活用法など、エビデンスの蓄積に期待したい」と、運動療法ガイドラインの未来について見解を述べた。■参考文献1)日本糖尿病学会編著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂;2024.2)Umpierre D, et al. JAMA. 2011;305:1790-1799.3)Jayedi A, et al. Sports Med. 2022;52:1919-1938.4)Acosta-Manzano P, et al. Obes Rev. 2020;21:e13007.5)Ostman C, et al. Diabetes Res Clin Pract. 2018;139:380-391.6)日本糖尿病学会編著. 糖尿病治療ガイド2022-2023. 文光堂;2022.7)Dempsey PC, et al. Diabetes Care. 2016;39:964-972.8)Duvivier BM, et al. Diabetologia. 2017;60:490-498.9)佐藤祐造ほか. 糖尿病. 2015;58:850-859.10)American Diabetes Association Professional Practice Committee. Diabetes Care. 2024;47:S77-S110.

72.

高知大学医学部 腫瘍内科学講座【大学医局紹介~がん診療編】

佐竹 悠良 氏(教授)栗岡 勇輔 氏(助教)佐藤 拓弥 氏(医員)坂本 秀男 氏(医員)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴現在確立されている推奨治療である「Standard Therapy」をエビデンスに基づき実践することに加え、国内外のがん専門施設や臨床試験グループと連携し、先進的な治療法を開発・提供できる国際共同治験・臨床試験を実施しています。また、希望者には国立がん研究センター東病院や静岡県立静岡がんセンター、神戸市立医療センター中央市民病院をはじめとするHigh volume centerでの研修が可能です。がん薬物療法を外来中心に提供しており、土日・夜間の救急時間帯などに緊急で呼び出されることも少なく、医局員のQOLに配慮していることも特徴です。今後医局をどのように発展させていきたいか私自身、恩師や周りの先生方からのご指導・ご支援に加え、多くの機会を頂き、現在の立場に至ることができたと感謝しています。医局の若い先生方には、さらに良い経験、活躍の場を提供できればと考えています。医師の育成方針若い先生方がエビデンスに基づき自分自身で考え導いた方針や結論を尊重しつつ、時には私の臨床経験も交えてより良い結果を導くことができるよう、各人の自主性を重んじ、サポートしたいと考えています。同医局でのがん診療/研究のやりがい高知県は高齢化が進んでおり、また地理的に東西に広いにもかかわらず、地域のがん診療病院が中心部に偏在している、という特徴があります。そのため当院では、大学病院さながらの数多くの臨床試験の実施やあまたの希少がん・原発不明がんの診療はもちろん、遠隔地域の高齢患者も非常に多く診療しており、市中病院で診るような日常的ながん診療も多く経験できます。また研究も臨床研究のみならず、高知ならではのテーマも多数あり、現在遠隔医療をがん診療に生かすことができないかとも考えております。幅広く腫瘍内科としての活躍ができること必至です。医局の雰囲気、魅力教授含め、非常に若い医局です。無用な束縛/上下関係はなく、できてまだ間もない医局のため、新しいことにチャレンジしたい先生や勤務に比較的自由度が欲しい先生にぴったりです。雰囲気はとても良く、院内外にかかわらず困りごとはすぐ相談できる、非常に良い環境だと思います。医学生/初期研修医へのメッセージがん治療は日進月歩で腫瘍内科医の必要性は今後さらに増えていきます。腫瘍内科に少しでも興味を持たれた方、高知の美食ついでにふらっと気軽に当科を見学してみたい方、ぜひご連絡お待ちしております!カンファレンスの様子これまでの経歴高校卒業後、大阪大学工学部に進学、研究のヒントを得るために高知大学医学部教授である父の研究室を訪ねました。研究や開発に関心を抱くと同時に、医師という職業にも興味を持ち、卒業後に関西医科大学に入り直しました。がんの新規治療を考えるレポート課題の際、「遺伝子組み換えウイルスを用いたがんの治療開発ができれば面白そうだ」と考えたことがきっかけで、腫瘍内科領域に関心を持ちました。同医局を選んだ理由佐竹教授とは関西医科大学在学中からご縁があり、当科をローテートしました。初期研修時代に、シンガポールで開催された国際的臨床腫瘍学会での発表機会に恵まれるとともに、名誉ある賞を頂けることとなり、入局の後押しとなりました。今後のキャリアについて臨床のほか、たくさん研究もしたいと考えています。2024年度には晴れて個人研究助成金の獲得がかなったため、より一層研究活動にいそしむ所存です。大学やがんセンターで経験を積み、最終的には高知県のがん診療に貢献できればと思っています。同医局を選んだ理由初期研修中、これからの進路に迷っていた時に、1学年上の先輩に誘われたことがきっかけです。勉強会および学会参加を通じて臓器横断的にがん治療に携わることに興味を抱くとともに、医局員の先生方がエネルギッシュに働いていることに感銘を受けて入局を決断しました。また同時期に祖父が胃がんStageIVと診断されましたが、医局員の先生方が親身に相談に乗ってくださり、家族に的確なアドバイスをすることができてやりがいを感じました。現在学んでいること主に入院患者の病棟業務に従事して、内科医としてスキルの向上に努めています。またカンファレンスで初診患者の治療方針をプレゼンしたり、エキスパートパネルに参加したりと、よりがん治療に関して専門的分野の見識も広げています。今後のキャリアプラン内科専門医、そしてがん薬物療法専門医取得のために研鑽を積んでいきます。また自分がより専門性を高めたいと思えるがん種の分野を探し、その専門性を磨くために国内留学ができればと考えています。高知大学医学部 腫瘍内科学講座住所〒783-8505 高知県南国市岡豊町小蓮問い合わせ先im92@kochi-u.ac.jp医局ホームページ高知大学医学部 腫瘍内科学講座専門医取得実績のある学会日本内科学会日本臨床腫瘍学会日本遺伝性腫瘍学会日本肉腫学会日本消化管学会日本消化器内視鏡学会日本消化器病学会日本肝臓学会日本救急医学会研修プログラムの特徴(1)内科標準タイプ:サブスペシャリティが未決定の場合にじっくりと幅広い内科研修が可能(2)サブスペシャリティ重点研修タイプ:より早期にサブスペシャリティ領域専門医として活躍したい人向け詳細はこちら高知大学医学部附属病院 医療人育成支援センター 専門研修プログラム高知地域医療支援センター

73.

frail(フレイル)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第5回

言葉の由来高齢者医療やケアの分野でよく耳にする「フレイル」は、英語の“frailty”から取り入れられた日本語です。日本語の「フレイル」は、「フレイルである」など名詞として使われていますが、それに対応する英語の“frail”は実際には形容詞です。無理やりカタカナを当てるのであれば「フレイルティ」が名詞、ということになります。“frailty”という単語は、古代フランス語の“frailete”などに起源を持ち、ラテン語の“fragilitas”から派生したものだといわれています。ラテン語の“fragilis”は「壊れやすい」「脆い」という意味であり、物理的なものだけでなく、健康や生命の脆弱性を指す場合にも使われます。このように、“frailty”は本質的な「脆さ」「弱さ」を表す意味合いを持つことから、高齢者が抱える身体的、心理的な「脆さ」や機能低下を指すのに使われるようになったようです。“frailty”を既存の日本語に置き換えると「脆弱性」または「虚弱」となりますが、医療現場や福祉の分野では主にカタカナの「フレイル」という表現が用いられます。「虚弱」という言葉も同様の状態を指すと思われますが、この言葉には加齢に伴う不可逆的な衰えという印象が定着しており、一般には「体力がない」という身体的な意味合いで用いられます。しかし、“frailty”はしかるべき介入によって可逆的になりうる問題であり、また身体的な側面に限定されず、心理的、社会的な側面をカバーする言葉であるため、あえて日本語では「フレイル」という言葉が選ばれた、という経緯があるそうです。併せて覚えよう! 周辺単語身体機能低下physical decline老年症候群geriatric syndrome脆弱性vulnerability高齢者総合的機能評価comprehensive geriatric assessment健常なrobust(frailの対義語として用いられる)この病気、英語で説明できますか?Frailty is a condition often seen in older adults, characterized by an aging-related decline in physical, psychological, and social functioning. It encompasses not just the loss of physical strength but also includes vulnerability to stressors, increased risk of falls, and a higher likelihood of hospitalization.参考日本老年医学会. “フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント”. 2014-05.(参照2024-05-09)講師紹介

74.

症候性閉塞性肥大型心筋症へのaficamten、酸素摂取量や身体機能が改善/NEJM

 症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)患者において、経口選択的心筋ミオシン阻害薬aficamtenはプラセボと比較し最大酸素摂取量を有意に改善させたことが示された。米国・Lahey Hospital and Medical CenterのMartin S. Maron氏らSEQUOIA-HCM Investigatorsが、14ヵ国101施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「SEQUOIA-HCM試験」の結果を報告した。閉塞性HCM患者における運動耐容能低下や症状の主な原因の1つは、左室流出路(LVOT)閉塞による心内圧の上昇である。aficamtenは、心筋の過剰収縮を軽減することによってLVOT圧較差を減少させることが示唆されていた。NEJM誌オンライン版2024年5月13日号掲載の報告。aficamten vs.プラセボ、主要エンドポイントは最大酸素摂取量 研究グループは、HCMと確定診断された、スクリーニング時の左室駆出率が60%以上、LVOT圧較差が安静時30mmHg以上、バルサルバ負荷時50mmHg以上、NYHA機能分類IIまたはIII度、推定最大酸素摂取量(pVO2)が90%以下の患者(18~85歳)を、β遮断薬の使用の有無および心肺運動負荷試験の方法(トレッドミルまたは自転車エルゴメーター)で層別化し、aficamten群またはプラセボ群に無作為に割り付け、1日1回24週間経口投与した。投与量は1回5mgから開始し、心エコー検査の結果に基づき2週目、4週目および6週目に5mgずつ増量可とし、最大用量は20mgであった。 主要エンドポイントは、心肺運動負荷試験で評価したpVO2のベースラインから24週時までの変化とした。また、副次エンドポイントは、カンザスシティ心筋症質問票の臨床サマリースコア(KCCQ-CSS:0~100で数値が高いほど症状と身体的制限が少ない)のベースラインから24週時までの変化、24週時のNYHA機能分類のベースラインから1以上の改善、バルサルバ負荷時LVOT圧較差のベースラインから24週時までの変化、24週時のバルサルバ負荷時LVOT圧較差が30mmHg未満の割合、中隔縮小治療の対象となる日数などの10項目で、階層的に検定を行うことが事前に規定された。24週時のpVO2の変化、1.8mL/kg/分vs.0.0mL/kg/分 2022年2月1日~2023年5月15日に計543例がスクリーニングを受け、うち282例が無作為化された(aficamten群142例、プラセボ群140例)。平均年齢は59.1歳、男性が59.2%、ベースラインの平均LVOT圧較差は55.1mmHg、平均左室駆出率は74.8%であった。 主要エンドポイントであるpVO2のベースラインから24週時までの変化は、aficamten群1.8mL/kg/分(95%信頼区間[CI]:1.2~2.3)、プラセボ群0.0mL/kg/分(-0.5~0.5)であった(最小二乗平均値の群間差:1.7mL/kg/分[95%CI:1.0~2.4]、p<0.001)。 副次エンドポイントは、10項目すべてでプラセボ群と比較してaficamten群の有意な改善が示された。 重篤な有害事象は、aficamten群で8例(5.6%)、プラセボ群で13例(9.3%)に認められた。有害事象の発現率はそれぞれ73.9%および70.7%であり、両群で同程度であった。 なお、著者は、治療期間が比較的短期間であり、長期的な心血管アウトカムについては評価できないことなどを研究の限界として挙げている。

75.

1回の肉抜きの食事が肝硬変患者のアンモニア濃度を抑制

 進行した肝硬変では、血液中のアンモニア濃度が危険なレベルまで上昇することがあるが、1食でも肉を抜くことで、そのリスクを抑制できる可能性が新たな研究で示された。論文の上席著者で、米バージニアコモンウェルス大学の消化器内科医であるJasmohan Bajaj氏らによるこの研究結果は、「Clinical and Translational Gastroenterology」に5月2日掲載された。Bajaj氏は、「たまに食事を肉なしにするというようなちょっとした食生活の変化でも、肝硬変患者の体内で有害な血液中のアンモニア濃度が下がり、肝臓に良い影響がもたらされる可能性のあることが分かり、心躍る思いだった」と話している。 アンモニアは、腸内細菌が食物中のタンパク質を分解する際に発生する。健康な人では、アンモニアは肝臓で無毒化されて腎臓に送られ、尿とともに排泄される。しかし肝硬変になると、肝機能が低下してアンモニアが処理されなくなる。そのためアンモニアは、有毒な状態のままで体内に蓄積する。このような有毒なアンモニアが脳に達すると、錯乱やせん妄の症状を引き起こし(肝性脳症)、放っておくと昏睡状態に陥り、死に至ることもある。 体内でのこのようなアンモニアの生成には、食事が大きな影響を及ぼしていると研究グループは指摘する。食物繊維が少なく、肉や炭水化物が多い欧米型の食事は、腸で生成されるアンモニアのレベルを高めるからである。 そこでBajaj氏らは今回、基本的な食生活が肉食である、米リッチモンドVA医療センターの肝硬変患者30人を対象にランダム化比較試験を実施し、1回の肉食ベースの食事を、タンパク質量が同等の肉を含まない食事に置き換えた場合の、アンモニアの代謝とメタボロミクスへの影響を評価した。対象者は、肉、ビーガン用の代用肉、またはベジタリアン用の豆を使った3種類のハンバーガーのいずれかを摂取する群にランダムに割り付けられた。いずれのハンバーガーも、含まれているタンパク質の量は同じ20gだった。試験開始時と食事の摂取から1時間おきに3回血液を採取し、液体クロマトグラフィー質量分析法によるメタボロミクス分析と、血清アンモニア濃度の測定を行った。 その結果、肉バーガー群では、食後に血清アンモニア濃度が上昇していたのに対し、代用肉バーガー群や豆バーガー群ではそのような上昇は認められないことが明らかになった。また、肉バーガー群では他の2群に比べて、必須アミノ酸である分岐鎖アミノ酸やアシル・カルニチンの代謝物が減少したほか、脂質プロファイルが変化(スフィンゴミエリンが増加、リゾリン脂質が減少)したことが確認された。 Bajaj氏は、「長期的に食事や行動を変えるのは非常に難しいことだが、われわれは、たまに食事を変えることが肝硬変患者にとって有効な選択肢となるのではないかと考えた。肝硬変を抱えている人は、自分の食事療法に前向きな変化をもたらすことが、無理や困難なことではないと知るべきだ」と話している。 ただしBajaj氏らは、非常に小規模の患者を対象にした本研究の結果はあくまで予備的なものである点を強調している。それでも同氏らは、医師が、肝硬変患者にこの新しい知見を伝え、肉食からの離脱を勧めても損はないとの考えを示している。

76.

第98回 激辛チップスでなぜ死亡したのか?

ココイチは何辛を食べます?キャロライナリーパー私はわりと辛いものが好きだと思って42年生きてきました。子供の頃から湖池屋のカラムーチョが大好きで、あれが「辛さの標準」だと信じて疑いませんでした。大学の頃、カレーのココイチで初めて「1辛」を食べたときのこと。私にとっては衝撃的な辛さだったのですが、一緒に来ていた友人が涼しい顔で「3辛」を食べていたのを見て唖然としました。井の中の蛙大海を知らず。ココイチの「2辛」は、「1辛」の約2倍、「3辛」は約4倍、「5辛」は約12倍、その先は上限20辛まで選択肢は広がっています。途中から辛さの指標が公開されていないので、何十倍も辛いのではと想像しますが、私が挑戦したらきっと入院する羽目になるでしょう。辛さの指標として有名なスコヴィル値で見てみると、10辛が約1,200スコヴィル値とのこと。ハラペーニョが最大で8,000スコヴィル値程度ですから、1万スコヴィル値はまさにガチでヤバイでしょう。ケタ違いのスコヴィル値さて、2023年9月、SNSで激辛チップスを食べる様子を投稿した10代の少年が、食べた直後に死亡するという悲劇がありました。使用されていたのはキャロライナリーパーとナーガヴァイパーという唐辛子です。キャロライナリーパーは、その形から大型の鎌を持った死神という意味で「リーパー」と名付けられています。ナーガヴァイパーは、キャロライナリーパーが登場する前にギネス世界記録だった唐辛子です。どちらも世界トップクラスの激辛唐辛子というわけです。これまで最も辛い唐辛子として長らく君臨していたキャロライナリーパーは、ここから交配して作られたスコヴィル値が約2倍のペッパーXにその座を奪われています。ペッパーXのスコヴィル値は、なんと318万です。スカウターが「ボンッ!」って破裂するやつです。唐辛死の原因唐辛子が原因で命を落とす「唐辛死」となってしまった少年。彼の死因は何だったのでしょうか。報告書によれば、彼は大量のカプサイシン摂取後に心停止に陥り、心臓が肥大していたとされています。急性に心肥大を起こすのは難しいことから、基礎疾患が影響し、心拍数の急激な上昇が関連しているのかもしれません。あるいは、アナフィラキシーや喘息の急性悪化により心停止に至った可能性も考えられます。唐辛子の摂取が心筋梗塞の原因となった症例1)や、キャロライナリーパーによって強烈な頭痛(可逆性脳血管攣縮症候群:RCVS)を起こした症例2)(下記参照)が報告されています。辛さに慣れていない人は無理せず、自分の限界を守ることが大切です。間違ってもペッパーXに挑戦しないようにしましょう。参考文献・参考サイト1)Sogut O, et al. Acute myocardial infarction and coronary vasospasm associated with the ingestion of cayenne pepper pills in a 25-year-old male. Int J Emerg Med. 2012 Jan 20;5:5.2)Boddhula SK, et al. An unusual cause of thunderclap headache after eating the hottest pepper in the world - "The Carolina Reaper" BMJ Case Rep. 2018 Apr 9;2018:bcr2017224085.

77.

日本人高齢者の認知症発症を予測するバイオマーカー

 九州大学の小原 知之氏らは、血漿アミロイドβ(Aβ)42/40、リン酸化タウ(p-τ)181、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、ニューロフィラメント軽鎖(NfL)と認知症リスクとの関連を評価し、これらの血漿バイオマーカーが、一般的な高齢者集団の認知症発症予測の精度向上につながるかを調査した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2024年4月12日号の報告。 非認知症の65歳以上の地域在住日本人高齢者1,346人を対象に、5年間のプロスペクティブフォローアップ調査を実施した。血漿バイオマーカーは、超高感度オートELISA Simoa HD-X Analyzerを用いて、定量化した。認知症リスクに対する各血漿バイオマーカーレベルのハザード比を推定するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に認知症を発症した高齢者は、151例(アルツハイマー病:108例、非アルツハイマー病:43例)であった。・血漿Aβ42/40レベルの低下および血漿p-τ181レベルの上昇は、アルツハイマー病発症と有意な関連が認められたが(p for trend<0.05)、非アルツハイマー病との関連は認められなかった。・一方、GFAPおよびNfLの血漿レベルの高さは、アルツハイマー病および非アルツハイマー病のいずれにおいても、有意な関連が認められた(p for trend<0.05)。・これら4つの血漿バイオマーカーを認知症リスクモデルの合計スコアからなるモデルに追加した場合、認知症発症の予測精度が有意に向上した。 著者らは、「日本人高齢者において、血漿Aβ42/40およびp-τ181は、アルツハイマー病の特異的マーカーであり、血漿GFAPおよびNfLは、すべての原因による認知症の潜在的なバイオマーカーである可能性が示唆された。さらに、これらのバイオマーカーの測定は、臨床現場における認知症発症リスクの特定に有用であり、比較的低侵襲な方法であると考えられる」としている。

78.

人々が考える老年期の開始年齢は高齢化している

 老いに対する概念そのものが老化しているようだ。何歳からを「老年」と見なすかという質問の回答を分析したところ、中高年の人は、数十年前の同世代の人よりも老年期の開始年齢を高く考えていることが、新たな研究で明らかになった。フンボルト大学(ドイツ)の心理学者であるMarkus Wettstein氏らによるこの研究の詳細は、「Psychology and Aging」に4月22日掲載された。 この研究では、German Ageing Survey(ドイツ加齢研究)の参加者1万4,056人のデータを用いて、老年期の開始年齢についての個人の認識が歴史的にどのように変遷したのかが調査された。対象者は、1911年から1974年の間に生まれ、1996年から2021年までの25年の間に最大で8回、調査に回答していた。なお、German Ageing Surveyには、研究期間を通して、中高年に達した新たな世代の調査参加者(40〜85歳)も新規登録されていた。 その結果、64歳の時点で対象者が答えた老年期開始の平均年齢は75歳であり、実年齢が4〜5年上がるごとに、対象者の考える老年期の開始年齢が1年ずつ上がる傾向が認められた。例えば、64歳時点で、老年期の始まりを75歳と答えていた人は、自分が74歳に達すると、老年期は77歳頃から始まると答えていた。 また、出生年が遅めの世代の人が考える老年期の開始年齢は、早めの世代の人よりも高いことも明らかになった。例えば、1911年に生まれた人が考える老年期の開始年齢は71歳であったのに対し、1956年に生まれた人では74歳であった。ただしこの傾向は、より最近の世代では緩やかであった。Wettstein氏はこの結果について、「老年期の開始年齢を後ろ倒しにする傾向は直線的ではなく、今後も続くとは限らない」と指摘している。 さらに、性別や健康状態などの個人特性が老年期の開始年齢に対する認識に与える影響を調べたところ、女性は平均して、男性よりも老年期の始まりを2年遅く感じており、男女間でのこの差は経時的に拡大していくことが示された。このほか、孤独感が強く、健康状態が不良で、老いを感じている人ほど、老年期の開始年齢が低くなる一方で、孤独感が少なく、健康状態が良好で、若々しく感じている人ほど、老年期の開始年齢が高くなる傾向があることも示された。 Wettstein氏は、「最近の人が考える老年期の開始年齢がなぜ高くなったのか、その理由は不明だ」と話す。そして、「平均寿命が延びたことが、老年期の始まりを遅く感じさせる一因なのかもしれない」と推測している。同氏はさらに、「その上、人々の健康状態も経時的に改善され、昔は老年と見なされていた年齢の人が、現在では、そうは見なされないようになっている可能性もある」と話す。 Wettstein氏は、「老いを後ろ倒しにする傾向がどの程度、高齢者や加齢に対する肯定的な見方を反映しているのか、あるいはむしろその逆なのかは不明だ。老いることを望ましくないことと見なす否定的な考え方から、老年期の開始年齢を遅く見ている可能性も考えられる」と話している。

79.

米国での精神疾患の経済的コストは年間2820億ドル

 米国での精神疾患の経済的コストは年間2820億ドル(1ドル154円換算で43兆4280億円)であり、一般に経済不況とされるレベルに達していることが、新たな研究で明らかにされた。この金額は、米国の歳出の約1.7%に相当し、米国における精神疾患の全体的なコストを概算した過去の試みよりも約30%大きいという。米イェール大学経済学分野教授のAleh Tsyvinski氏らによるこの研究は、全米経済研究所(National Bureau of Economic Research;NBER)の「Working Paper」として作成され4月に公開された。 米国物質乱用・精神衛生サービス局(U.S. Substance Abuse and Mental Health Services Administration)によると、成人の約5人に1人が精神疾患を抱えており、約5.5%の人は重度の精神疾患に罹患しているという。精神疾患が米国経済に及ぼす影響を算出する試みはこれまでにもなされているが、それらは収入減と治療費に焦点を当てたものであったと研究グループは説明する。 今回の研究では、精神疾患に関連する多くの追加的な経済的影響に焦点を当てた、より微妙なアプローチが取られた。例えば、精神疾患のある人はお金をあまり使わず、家や株などの資産に投資する傾向も低いほか、より負担の少ない仕事を選びがちであることも考えられるとTsyvinski氏は指摘する。本研究では、古典的、および現代の精神医学理論に基づいてマクロ経済学と精神保健を統合したモデルが開発された。このモデルでは、反復的で制御不能な悲観的な思考などのネガティブ思考をする状態にある場合を精神疾患と見なした。 このモデルを用いて、精神疾患の治療を向上させる政策が取られた場合の潜在的な効果を推測した。その結果、精神疾患の専門医の不足を解消するなどして精神保健サービスの利用可能性を拡大することにより、米国の精神疾患が3.1%減少する可能性が示された。これによりもたらされる社会的コストは、米国の歳出の1.1%に相当すると見積もられた。また、16歳から25歳までの全ての精神疾患患者に治療を提供することでもたらされる社会的コストは、米国の歳出の1.7%に相当すると推計された。しかし、精神保健サービスの自己負担額を引き下げても、精神疾患患者の数は実質的には減らないため、得られる経済的な利益はわずかであることも示された。これは、精神保健サービスにかかる費用が比較的低いため、費用を削減しても治療を求める人の数が増えたり、精神疾患の症例が大幅に減ったりすることはないからだと研究グループは説明している。 Tsyvinski氏は、「これらの結果は、精神疾患が人々の消費、貯蓄、ポートフォリオの選択や、国の労働供給量を変化させ、経済に莫大なコストを生み出していることを示すものだ」と述べている。 Tsyvinski氏はまた、イェール大学のニュースリリースの中で、「経済学と精神医学は50年以上にわたって発展してきたが、両者が連携することはあまりなかった。本研究では、経済学と精神医学を連携させることで両者の対話を促した。それにより、精神疾患の社会的コストと、精神医学を拡大・改善する政策により得られるものについての認識を深めることができたと言えよう」と述べている。

80.

65歳未満の心房細動患者は想定よりも多い

 心房細動と呼ばれる危険な心臓のリズム障害が中高年に増えつつあることを警告する研究結果が発表された。米ピッツバーグ大学医療センター(UPMC)で過去10年間に心房細動の治療を受けた患者の4分の1以上が65歳未満であったことが明らかになったという。UPMCの心臓電気生理学者であるAditya Bhonsale氏らによるこの研究結果は、「Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology」に4月22日掲載された。 これは、高齢者以外の患者における心房細動の有病率とされている2%よりはるかに高い数値である。Bhonsale氏は、「循環器医の間では、65歳未満の人に心房細動が生じることはまれであり、発症してもそれほど有害ではないというのが常識である。しかし、それを裏付けるデータはこれまで存在しなかった」と話す。同氏はさらに、「UPMCでは近年、若年の心房細動患者を診察することが増えていることから、これらの患者の実際の臨床経過を理解することに興味があった」と同大学のニュースリリースで述べている。 今回の研究では、2010年1月から2019年12月までの間にUPMCで心房細動の治療を受けた患者6万7,221人(平均年齢72.4±12.3歳、女性45%)の電子カルテを用いて、65歳未満での心房細動と全死亡リスクとの関連が検討された。対象患者の26%近く(1万7,335人)が65歳未満であり、その大半が男性だった(男性の割合は50歳未満で73%、50〜65歳で66.3%)。 65歳未満の患者には、現喫煙者、肥満、高血圧、糖尿病、心不全、冠動脈疾患、脳卒中の既往歴などの心血管疾患のリスク因子を有している人が多かった。これらの患者の入院理由としては、心房細動、心不全、心筋梗塞が多く、50歳未満では同順で31%、12%、2.7%、50〜65歳では38%、19%、4.7%を占めていた。平均5年超に及ぶ追跡期間中に、50歳未満で204人(6.7%)、50〜65歳で1,880人(13.1%)の計2,084人が死亡していた。 解析の結果、心房細動のない内部患者コホート(91万8,073人)と比べて、心房細動のある65歳未満の患者では死亡リスクの増加が有意であった。死亡のハザード比は、50歳未満の男性で1.49(95%信頼区間1.24〜1.79)、女性で2.40(同1.82〜3.16)、50〜65歳の男性で1.34(同1.26〜1.43)、女性で1.75(同1.60〜1.92)であり(全てP<0.001)、女性のリスクの方がはるかに高いことが示された。 論文の上席著者であるUPMC心血管研究所のSandeep Jain氏は、「本研究で得られた知見が今後、心房細動患者に対する最適な治療法を評価する研究の実施を促すものと期待している」と話している。

検索結果 合計:4245件 表示位置:61 - 80