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2024/07/10
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酒で顔が赤くなる人は、コロナ感染リスクが低い?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時、日本は欧米などと比較して人口当たりの感染率・死亡率が低かったことが報告されている1,2)。この要因としては、手洗いやマスクなどの感染予防策が奏効した、日本の高い衛生・医療水準によるものなどの要因が考えられているが、アジア人に多い遺伝子型も一因となっている可能性があるとの報告がなされた。佐賀大学医学部 社会医学講座の高島 賢氏らによって国内で行われた本研究の結果は、Environmental Health and Preventive Medicine誌に2024年3月5日掲載された。 日本人をはじめとした東アジア人には、アルコールを分解するアルデヒド脱水素酵素2型(ALDH2)の活性が弱く、飲酒時に顔が赤くなる特性を持つ人(rs671変異体)が多い。研究者らは、遺伝子型と新型コロナウイルス感染の防御効果の関連を検証するため、rs671変異体の代替マーカーとして飲酒後の皮膚紅潮現象を用い、後ろ向きに解析した。調査はWebツールを使って2023年8月7~27日に行われ、参加者は感染歴、居住地、喫煙・飲酒歴、既往症などの質問に回答した。 主な結果は以下のとおり。・計807例(女性367例、男性440例)から有効回答を得た。362例が非紅潮群、445例が紅潮群だった。・2019年12月~23年5月の42ヵ月間の観察期間全体で、非紅潮群は40.6%、紅潮群は35.7%がCOVID-19に感染した。年齢、性別、居住地等で調整後、初感染までの時間は紅潮群のほうが遅い傾向があった(p=0.057)。・COVID-19による入院例は、非紅潮群は2.5%、紅潮群は0.5%であった。COVID-19感染および関連した入院リスクは、紅潮群で低かった(p=0.03および<0.01)。・日本人の多くがCOVID-19ワクチンの2回接種を終える前である2021年8月31日までの21ヵ月間では、紅潮群の非紅潮群に対するCOVID-19感染のハザード比は0.21(95%信頼区間:0.10~0.46)と推定された。 研究者らは、「本研究は、飲酒後の皮膚紅潮現象とCOVID-19の感染および入院のリスク低下との関連を示唆しており、rs671変異体が防御因子であることを示唆している。本研究は感染制御に貴重な情報を提供するとともに、東アジア人特有の体質の多様性を理解する一助となる」としている。

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第89回 頸動脈プラークにすでにナノプラスチックが侵入

イラストボックスより使用プラスチックは私たちの生活の一部として、なくてはならないものになっています。日持ちしない食品の安全性を高め、重い荷物の輸送費用を削減し、脆弱な物質を保護する役割もあります。何より、低コストで生産できるメリットは無視できません。しかし、プラスチックが環境に与える影響は深刻です。使用量を減らし、環境汚染を改善する試みが行われていますが、プラスチックの代替物を利用するには高いコストがかかり、経済的に厳しい状況に陥ることは容易に想像できます。私たちは、プラスチックの問題を認識しつつも、使用をやめることができないジレンマに直面しているのです。プラスチックがよくないことはわかっていても、使用をやめられないというのが現実です。さて、プラスチックが体内に蓄積するということは通常想定されていません。これは、プラスチックが吸収されずに、排泄されていくと考えられているためです。しかし、プラスチックがきわめて小さな細片となり、体内に侵入することがありえます。このプラスチックの細片のうち、大きさが1μm~5mmのものをマイクロプラスチック、より小さくnm(ナノメートル)レベルのものをナノプラスチックと呼び、MNPs(Microplastics and Nanoplastics)と総称します。最近、MNPsがペットボトルの水の中に一定レベル存在しているということが話題となっています1)。MNPsが体内に存在する可能性があるとはいえ、「まあ健康被害といえるほどではないっしょ」と楽観視していた人が多かったと思います。しかしながら、頸動脈の動脈硬化病変に対して、血管内治療を行った症例を解析したところ、対象となった257例のうち、全体の58.4%でポリエチレンが頸動脈プラークから検出されたと報告されています2)。この研究では、約3年の観察期間中に、心筋梗塞や脳卒中を発症したか、死亡した症例は、MNPsが検出されなかった症例では7.5%だったのに対し、検出症例では20.0%と有意なリスクが認められたと報告されています(ハザード比:4.53、95%信頼区間:2.00〜10.27、p<0.001)。これは衝撃的な報告です。新しい治療法の進歩や医療アクセスの向上などによる健康寿命延伸の効果のほうが大きく、MNPsよりも生活習慣や運動のほうが大事かもしれません。他のリスクとまだ比較できる段階にはないのですが、もしMNPsが人類の大きな敵であるとわかったなら、世界はこの対策をすみやかに進めなければいけません。参考文献・参考サイト1)Qian N, et al. Rapid single-particle chemical imaging of nanoplastics by SRS microscopy. Proc Natl Acad Sci USA. 2024 Jan 16;121(3):e2300582121.2)Marfella R, et al. Microplastics and Nanoplastics in Atheromas and Cardiovascular Events. N Engl J Med. 2024 Mar 7;390(10):900-910.

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統合失調症の認知機能に対する抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、抗コリン作用負荷の影響

 統合失調症は、日常生活に影響を及ぼす認知機能障害を特徴とする疾患である。これまでの研究では、抗うつ薬が認知機能改善と関連している可能性があるとの仮説が立てられていたが、その結果に一貫性は見られていない。フィンランド・ヘルシンキ大学のVille Makipelto氏らは、臨床サンプルにおける反応時間と視覚学習の観点から、抗うつ薬の使用と認知機能との関連を調査した。また、ベンゾジアゼピン使用と抗コリン薬負荷との関連も調査した。Schizophrenia Research誌2024年4月号の報告。 参加者は、2016~18年にフィンランドの精神疾患患者を対象に実施されたSUPER-Finlandコホートより抽出された1万410例。分析には、統合失調症と診断された成人患者のうち認知機能評価結果が含まれていた3,365例を含めた。薬物治療および心理社会的要因に関する情報は、アンケートとインタビューを通じて収集した。認知機能は、返納時間と視覚学習を測定する2つのサブテストを備えたCambridge Neuropsychological Test Automated Battery(CANTAB)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・1種類以上の抗うつ薬を使用していた参加者は、36%であった。・全体として、抗うつ薬の使用と反応時間や視覚学習課題のパフォーマンスとの関連は認められなかった。・SNRI使用と反応時間短縮との関連が認められた。・ベンゾジアゼピン使用と高い抗コリン薬負荷は、反応時間と視覚学習のパフォーマンス低下と関連が認められた。 結果を踏まえ、著者らは「これまでの知見と同様に、統合失調症患者に対する抗うつ薬使用と認知機能との関連が認められないことが示唆された。ただし、SNRIと反応時間の改善との関連については、さらなる研究が必要である。さらに、統合失調症患者は、ベンゾジアゼピンの継続使用を避けるだけでなく、抗コリン作用負荷を軽減することにも注意を払うべきであることが明らかとなった」としている。

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医学生の英語力、コロナ禍のオンライン授業で向上

 2020年のコロナ禍以降、オンライン教育が取り入れられてきた。今回、新たな研究で、医学部2年生の英語力に関するオンライン教育の効果が検証された。その結果、「対面授業」と比べて、「オンライン授業」や「オンラインと対面の併用授業」を受けた医学生の英語力は向上していたという。北海道大学大学院医学研究院 医学教育・国際交流推進センターの高橋誠氏らによるこの研究は、「BMC Medical Education」に1月17日掲載された。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、大学や医療機関における教育は混乱に陥った。現場では「オンライン授業」に切り替えることで教育活動を維持してきたが、オンライン教育が医学教育に及ぼした影響については、まだ十分に解明されていない。そこで著者らは、北海道大学医学部における医学英語のコースを受講した大学2年生の成績を3年分調査し、オンライン教育の影響を検証した。 同コースでは毎年4~7月に、計15回の授業が行われた。全てが対面授業だった2019年、オンライン授業のみの2020年、オンラインと対面が半分ずつ併用された2021年の各年、受講した医学部2年生のうち計321人が対象となった。医学のための英語として、医学用語、問診・診察、根拠に基づいた医療(EBM)などの内容が、日本語と英語で指導された。 まず、コース前後に質問紙を用いて、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングのスキルを主観的に評価した。また、客観的な評価項目を3つ設定。1つ目は「医学用語」として、各授業の前後で知識を評価。2つ目の「EBM」は、学生を6~7人のグループに分け、「The New England Journal of Medicine」誌の論文を読んで分析し、最新の医学情報を抽出する方法を指導。コース終了後に、レポート提出、論文の要約、ポスター作成、ポイントの口頭発表を課した。3つ目の「最終試験」では、コース終了後に筆記試験を実施した。 解析対象の学生は、2019年が106人(女性19人)、2020年が104人(同19人)、2021年が111人(同27人)だった。各年で、女性の割合や、大学入学試験の英語の点数に有意差はなかった。主観的評価の結果、コース開始時に比べて、「対面授業」の2019年はリスニングとスピーキングの2つが有意に向上した。「オンライン授業」の2020年は、有意に向上していたのはライティングのみだった。「併用授業」の2021年には、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングの全てのスキルが有意に向上していた。 客観的な評価項目のうち、「医学用語」と「EBM」は、各年とも成績が有意に向上し、授業形態による違いは認められなかった。「最終試験」については、各年の平均点(100点満点)が2019年は78.6±8.8、2020年は82.8±8.2、2021年は79.7±12.1だった。すなわち、「オンライン授業」の方が、「対面授業」や「併用授業」よりも点数が有意に高かった。ただし、「対面授業」と「併用授業」の間では、点数の差は有意ではなかった。 著者らは研究論文の考察において、特筆すべきこととして、オンラインと対面の併用授業で全ての英語スキルが向上したことを挙げている。また今後、医学英語の他にも、多くの臨床前コースを対象とした大規模な研究が必要とした上で、「オンライン授業や併用授業による教育は、対面授業に劣らず効果的だった」と総括している。

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日本における片頭痛患者の治療パターンと特徴

 日本における片頭痛患者にみられる実際の臨床的特徴や治療実践については、十分に調査されていない。慶應義塾大学の滝沢 翼氏らは、近年の片頭痛の臨床実態、現在の治療選択肢では十分にコントロールできていない可能性のある患者の特徴を明らかにするため、レセプトデータベースを用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。The Journal of Headache and Pain誌2024年2月8日号の報告。 大規模レセプトデータシステムJMDCデータベースを用いて調査を行った。2018年1月~2022年7月に頭痛または片頭痛と診断された患者を対象とした頭痛コホート、頭痛コホート内で片頭痛と診断され片頭痛治療薬を使用した患者を対象とした片頭痛コホートとして定義し、検討を行った。頭痛コホートでは、医療機関の特徴、二次性頭痛を鑑別するための画像検査の状況を検討した。片頭痛コホートでは、急性期およびまたは予防的治療では十分にコントロールできていない可能性のある患者の治療パターン、および特徴を評価した。 主な結果は以下のとおり。・頭痛コホートには、98万9,514例(女性の割合:57.0%、平均年齢:40.3歳)が含まれた。1次診断のために診療所(19床以下)を受診した患者の割合は77.0%、CTおよびまたはMRIによる画像診断を行った患者の割合は30.3%であった。・片頭痛コホートでは、16万5,339例(女性の割合:65.0%、平均年齢:38.8歳)が含まれ、95.6%が急性期治療を行い、20.8%が予防的治療を実施していた。・片頭痛治療の初回選択肢は、アセトアミノフェン/非ステロイド系抗炎症薬(54.8%)が最も高く、次いでトリプタン(51.4%)であった。・初回治療では、15.6%に予防的治療が含まれていた。4回目治療時には、予防的治療の実施割合が82.2%へ増加していた。・12ヵ月以上のフォローアップ調査を行った患者のうち、薬物乱用頭痛のリスクが示唆される処方パターンが3.7%に認められた。これらの患者の特徴として、女性の割合が高い、併存疾患の有病率が高いが挙げられた。 著者らは「この研究により、医療機関に来院する片頭痛患者の約5分の1は、予防薬を使用していることが明らかとなった」とし、また、薬物乱用頭痛のリスクがある潜在的患者と片頭痛治療における診療所の役割についても述べた。

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尋常性乾癬の生物学的製剤、費用対効果の評価

 効率的フロンティア(efficiency frontier:EF)と呼ばれる費用対効果の評価方法を用いることで、尋常性乾癬の生物学的製剤の価格の大幅な引き下げと、臨床的な費用対効果の最適化が実現可能であることを、米国・ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のAlexander C. Egilman氏らが示した。検討の結果を踏まえて著者は、「EFは政策立案者にとって従来の費用対効果分析手法に代わるアプローチとなるものである」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年2月21日号掲載の報告。 研究グループは、EFにより尋常性乾癬の生物学的製剤の薬価と臨床ベネフィットの適正化をどれほど図れるのかを評価した。また、米国における薬価の引き下げ幅について4ヵ国(オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ)と比較することにより推定した。 EFを用いた医療経済評価では、上記5ヵ国における尋常性乾癬の生物学的製剤11剤とバイオシミラー2剤の薬価と臨床ベネフィットを比較。EFは各生物学的製剤の有効性(Psoriasis Area and Severity Index[PASI]90達成率で評価)と2023年1月時点の年間治療コストをベースに構築し、EFに基づく薬価と従来の費用対効果分析に基づく価格を比較した。従来の費用対効果分析に基づく薬価は、1質調整生存年(QALY)当たり15万ドルを基準とした。 主な結果は以下のとおり。・13剤の生物学的製剤におけるPASI 90達成率は、17.9%(エタネルセプト)~71.6%(リサンキズマブ)の範囲にわたっていた。・米国の年間治療コストは、1,664ドル(infliximab-dyyb[インフリキシマブのバイオシミラー])~7万9,277ドル(リサンキズマブ)の範囲にわたっていた。・年間治療コストの中央値(四分位範囲[IQR])は、米国が3万4,965ドル(2万493~4万8,942)であり、オーストラリア(9,179ドル[6,691~1万2,688])、カナダ(1万5,556ドル[1万3,017~1万6,112])、フランス(9,478ドル[6,637~1万1,678])、ドイツ(1万3,829ドル[1万3,231~1万5,837])よりも高かった。・米国のEFで臨床的な費用対効果が良好であったのは、infliximab-dyyb(PASI 90達成率:57.4%、年間コスト:1,664ドル)、イキセキズマブ(同:70.8%、3万3,004ドル)、リサンキズマブ(同:71.6%、7万9,277ドル)であった。・米国の乾癬の生物学的製剤の価格について、EFを用いて推算した価格(最適価格)と一致させるためには中央値71%(IQR:31~95)引き下げる必要があった。同様のアプローチを用いた場合の他の4ヵ国の引き下げ幅はより小さく、カナダ41%(同:6~57)、オーストラリア36%(同:0~65)、フランス19%(同:0~67)、ドイツ11%(同:8~26)であった。・リサンキズマブを除き、EFに基づく薬価は従来の費用対効果分析に基づく薬価よりも低かった。

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マンモグラフィ検診は40歳以降から毎年が最善

 乳がん検診の開始年齢とその頻度をめぐる論争に終止符が打たれるかもしれない。米ダートマス大学ガイゼル医学部放射線学科教授のDebra Monticciolo氏らによる研究で、40歳から少なくとも79歳になるまで毎年、マンモグラフィ検診を受けることで、乳がんによる死亡が最大数回避され、生存期間も最長になることが示唆された。この研究結果は、「Radiology」に2月20日掲載された。 米国では、乳がんは女性の死因として2番目に多いが、マンモグラフィ検診が推奨されている女性の中で毎年受診しているのは半数に過ぎない。Monticciolo氏によれば、2009年に米国予防サービス専門委員会(USPSTF)が50歳からの隔年検診を推奨して以降、マンモグラフィ検診の受診率は急落したという。USPSTFは以前から、40代の女性には50歳以前に検診を始めるかどうかは、主治医との話し合いに基づいて個別に判断することを勧めていたが、2023年に、40歳から2年に1度の検診を開始し、健康状態が良好である限り継続するべきだとの新たな勧告を公表した。 今回の研究でMonticciolo氏らは、Cancer Intervention and Surveillance Modeling Network(CISNET)のモデルに基づく解析データを用いて、4つのシナリオの下で二次解析を行い、それぞれのシナリオの転帰を比較検討した。4つのシナリオとは、マンモグラフィ検診を、1)50〜74歳の間に隔年で受診、2)40〜74歳の間に隔年で受診、3)40〜74歳の間に毎年受診、4)40〜79歳の間に毎年受診、であった。 主な結果は以下の通りである。・40〜79歳の間に毎年検診を受けることで死亡リスクは41.7%低下する。・40〜74歳の間に隔年で検診を受けることで死亡リスクは30.0%低下する。・40〜79歳の間に毎年検診を受けることで、回避可能な乳がんによる死亡数が最大となり(1,000人当たり11.5人)、獲得生存年数も最長となる(1,000人当たり230年)。・40〜79歳の間に毎年検診を受けた場合には、4つのシナリオの中で偽陽性率が最も低く(6.5%)、がんの生検で良性と判定される割合も最も低かった(0.88%)。・マンモグラフィ検診のリコール(再勧奨)率は10%以下であり、3Dマンモグラフィ検診を毎年受けることで6.5%に低下する。 Monticciolo氏は、「マンモグラフィ検診に伴うリスクは、ほとんどの女性にとって致命的ではなく、対処可能なものだが、進行乳がんはしばしば致命的だ。乳がんは早期に発見されれば治療が容易であり、余分な手術や化学療法をせずに済む。それゆえ、がんを早期に発見する方向へシフトするのは良い考えであり、マンモグラフィ検診はそのためのものなのだ」と話す。 またMonticciolo氏は、40〜79歳の間の毎年のマンモグラフィ検診は、「女性の命を大切にすることにつながる。プライマリケア医が、検診のリスクは管理可能であり、検診を受けることで得られるベネフィットは多大であると理解することを期待している」と話している。

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脳卒中患者の手術前の頭位が手術成績に影響

 手術を待つ脳卒中患者の病床での頭位が、脳内の血栓を除去する手術の成績に影響する可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。脳主幹動脈閉塞(large vessel occlusion;LVO)による急性期脳梗塞を発症して手術を待つ患者では、病床で頭位を30度挙上させるよりも0度(水平仰臥位)にする方が、術前の安定性が増し、神経学的機能も改善し、術後の転帰も良好になる可能性が示されたのだ。米テネシー大学健康科学センター看護学および神経科学分野教授のAnne Alexandrov氏らによるこの研究結果は、国際脳卒中会議(ISC 2024、2月7〜9日、米フェニックス)で発表された。 LVOでは、閉塞の原因となっている血栓を取り除いて脳内の血流を改善する血栓回収療法が、死亡リスクや脳に恒久的なダメージが及ぶリスクを低下させることが知られている。しかし、LVO患者に対する血栓回収療法は、さまざまな理由で遅れがちである。そのため、手術を待っている間の患者の脳への血流を最適化することは、神経学的な障害や身体的な障害を最小限に抑えるために不可欠である。 血栓回収療法を待つ患者に対しては、病床で頭位を30度以下の角度で挙上させておくことが推奨されている。しかし、Alexandrov氏らによるパイロット研究では、水平仰臥位を保つことで狭窄/閉塞した動脈の血流が20%増加することが示されていた。 今回のランダム化比較試験では、LVO患者を対象に、血栓回収療法を受ける前の患者の頭位を水平仰臥位にした場合と30度に挙上させた場合との間で臨床的安定性と転帰を比較した。患者は水平仰臥位で神経画像検査を受けた直後に、NIHSS(国立衛生研究所脳卒中尺度、0〜42点で評価し、スコアが高いほど重症)での評価を受けた。その後は、ランダム化された頭位(0度または30度)を維持したまま、手術を受けるまで10分ごとにNIHSSの再測定を受けた。 米国の12カ所の包括的脳卒中センターから92人の患者が登録され、中間解析が行われた。その結果、水平仰臥位を保つことで手術前の安定性が増し、および/または臨床的改善が得られることが明らかになった。このような有効性は、データ安全性モニタリング委員会(DSMB)が患者の新規登録を早々に打ち切る決定を下したほど高いものであった。研究グループは、水平仰臥位を保つことが手術後の患者に何らかの利益をもたらすかどうかについても調べた。研究グループは、手術そのものに大きな予後改善効果があるため、水平仰臥位と30度挙上の頭位との間で予後に差が出ることを予想していなかったという。しかし、手術から24時間後と7日後の両時点で、水平仰臥位を保っていた患者は30度挙上の頭位を保っていた患者に比べて、神経学的障害が少ないことが明らかになった。 Alexandrov氏は、「手術から3カ月後までには、両群の間で転帰に差は認められなくなったが、退院時にリハビリテーションを必要とする神経学的障害が生じた患者の数を減らせたのは喜ばしい結果だ」と話している。その上で同氏は、「頭位保持は、脳卒中の治療法ではなく、手術前に脳機能を維持するための方法と考えるべきだ」と主張している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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スマートイヤリングで健康状態を追跡

 健康状態を把握するイヤリング型のウェアラブルデバイスThermal Earringの開発に関する研究成果が、米ワシントン大学(UW)ポール・G・アレン・スクール・オブ・コンピューター・サイエンス&エンジニアリングのQiuyue Shirley Xue氏らにより報告された。このイヤリングは、耳たぶの温度を継続的にモニタリングすることが可能であり、6人を対象にした小規模試験では、安静時の皮膚温の感知においてスマートウォッチよりも優れていることが示されたという。この研究結果は、「Proceedings of the ACM on Interactive Mobile Wearable and Ubiquitous Technologies」に1月12日掲載された。 Xue氏は、「私は健康管理のためにスマートウォッチを使っているが、多くの人がスマートウォッチはファッション性に欠け、かさばる上に着用感も良くないと感じていることに気が付いていた」と、スマートイヤリングの開発に至った背景を説明している。 「イヤリングにできるほど小さく、また頻回な充電を必要としない頑丈なウェアラブルデバイスを作ることは工学的な挑戦であった」と研究グループは振り返る。論文の共著者である米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のYujia Nancy Liu氏は、「通常、電力を長持ちさせたいのであればバッテリーを大きくしなければならないが、それではサイズが犠牲になってしまう。ワイヤレスにすることで消費電力も増える」と話す。 このような問題を乗り越えて作り出されたスマートイヤリングのプロトタイプは、縦31mm、横11.3mm、重さ335mgと、小さなペーパークリップと同等の大きさと重さで、バッテリーは28日間持つという。イヤリングには、耳に接する上部とその数センチ下の下部に、それぞれ耳たぶの体温を測定するセンサーと気温を測定するセンサーが搭載されている。下部にはBluetoothのチップとアンテナも内蔵されており、Bluetoothのアドバタイズ(Bluetooth機器がペアリング可能であることを伝える信号)を使用してスマートフォンなどのデバイスにデータを転送する。データの転送後、イヤリングは節電のためにディープスリープモードに入る。このイヤリングはまた、精度に影響を与えることなくレジンや宝石などで装飾することも可能だという。 研究グループは、このイヤリングを6人の人に着用してもらい、スマートウォッチによる測定結果と比較した。その結果、安静時の耳たぶの温度の最大標準偏差は、スマートイヤリングでは0.32℃、スマートウォッチでは0.72℃であり、前者の測定結果の方が安定していることが示唆された。 また、体温が37.8℃以上の発熱患者5人(ただし、1人は37.6℃)と平熱(37℃前後)の健康な対照者20人を対象に、室温が20〜22℃の類似した環境でスマートイヤリングによる体温測定を行った。その結果、耳たぶの温度は、発熱患者で平均35.62±1.8℃であったのに対し健康な人では29.7±0.74℃であり、スマートイヤリングを発熱患者のモニタリングに活用できる可能性も示唆された。このほか、スマートイヤリングは、食事、運動、ストレス、女性での排卵に関連した体温変化の検出にも優れていたという。 Xue氏は、「Apple WatchやFitbitのようなウェアラブルデバイスにも温度センサーが内蔵されているが、1日の平均体温しか分からない上に、手首や手の温度の測定値は排卵を追跡するにはノイズが多過ぎる。われわれは、イヤリング型のウェアラブルデバイスが、特に女性やファッションに関心のある人にとっても魅力的な選択肢となり得るかを見てみたかった」と説明している。 研究グループは、それぞれの潜在的な用途に適合するようにスマートイヤリングのアルゴリズムを訓練し、より広範なテストを行う予定である。Xue氏は、「将来的には、このイヤリングにより心拍数や活動量のモニタリングもできるようになるかもしれない」と話している。また、このイヤリングは、太陽エネルギーやイヤリングの振動により生じる運動エネルギーで駆動するようにできる可能性もあるという。

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救急部の静脈ルート:18G vs.20Gガチンコ対決【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第253回

救急部の静脈ルート:18G vs.20Gガチンコ対決看護roo!より使用末梢静脈ルートは、救急医療だけでなく入院医療でも必須の処置の1つです。私は研修医の頃、太いルートを入れるのは苦手だったのですが、ベテラン看護師に集中特訓してもらう期間があって、それ以降わりと上手になりました。さて、三次救急の場合、18ゲージのような太いルートと、20ゲージのような細めのルートのどちらがよいでしょうか。当然、太い18ゲージのほうが大量輸液ができるわけで、こちらのほうが挿入難易度が高くなります。また、患者さんにとっても太い穿刺針は強い痛みを伴います。Mitra TP, et al. Spiced RCT: Success and Pain Associated with Intravenous Cannulation in the Emergency Department Randomized Controlled Trial.J Emerg Med. 2024 Feb;66(2):57-63.これは、三次救急の現場において、18ゲージと20ゲージの静脈ルート確保によって、患者が感じる疼痛や、手技の困難さを比較するために行われた単施設研究です。被験者は、18ゲージ群または20ゲージ群のいずれかにランダム化割り付けされました。評価項目は、患者が経験した挿入時の疼痛と、医療従事者が感じた手技上の困難さの2つで、10cmのVAS(Visual Analogue Scale)で評価されました。178例の患者が解析に含まれ、それぞれ89人ずつにランダム化されました。平均疼痛スコア(差0.23、95%信頼区間[CI]:0.56~1.02、p=0.5662)と平均手技難易度スコア(差0.12、95%CI:0.66~0.93、p=0.7396)の間に、統計学的または臨床的に有意差は確認されませんでした。また、18ゲージ群と20ゲージ群の間で、初回のルート確保成功率(89人中75人vs.89人中73人、p=0.1288)、および合併症(89人中1人vs.89人中2人)にも差は確認されませんでした。というわけで、18ゲージでも20ゲージでもそんなに変わりませんよ、というのが今回の研究の結論になります。しかし、個人的にはやはり18ゲージのほうが難しい気がするんですが…。うーむ。そうか、自信を持てということか!

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喫煙による咽頭がんリスク、非喫煙者の9倍に

 飲酒、喫煙ががん罹患リスクと関連するとの報告は多いが、頭頸部がんと飲酒、喫煙、食習慣との関連をみた研究結果が発表された。米国・ワシントン大学のDaniel P. Lander氏らによる本研究の結果は、JAMA Otolaryngology誌オンライン版2024年2月8日号に掲載された。 本研究は、前立腺がん、肺がん、大腸がんおよび卵巣がん検診に関する臨床試験参加者のコホート解析だった。参加者は55~74歳、1993年11月~2001年7月に全米10施設で募集された。頭頸部がんを発症した参加者は、喫煙、飲酒、食習慣解析のため、人口統計学および頭頸部がん家族歴に加え、喫煙状況および喫煙期間に基づいて対照群とマッチングされた。データ解析は2023年1~11月に行われた。 主な結果は以下のとおり。・計13万9,926例(女性51%、平均年齢62.6[SD 5.4]歳)が解析の対象となった。追跡期間中央値12.1(四分位範囲[IQR]:10.3~13.6)年に571例が頭頸部がんを発症した。・喫煙に関連した頭頸部がんのリスクはがんの部位が肺に近いほど増加し、リスクが最大だったのは喉頭がんだった(現在喫煙者の非喫煙者と比較したハザード比[HR]:9.36、95%信頼区間[CI]:5.78~15.15)。・飲酒と食習慣の解析には、喫煙解析例のうち9万4,466例が含まれ、追跡期間中央値12.2(IQR:10.5~13.6)年で264例が頭頸部がんを発症した。・頭頸部がんリスクは大量飲酒で増加(HR:1.85、95%CI:1.44~2.38)した一方で、全粒穀物の摂取(1オンス/日、HR:0.78、95%CI:0.64~0.94)、果物の摂取(1カップ/日、HR:0.90、95%CI:0.82~0.98)、Healthy Eating Index 2015でスコア化した健康的な食事の摂取(10ポイント、HR:0.87、95%CI:0.78~0.98)で減少した。 研究者らは「喫煙に関連する頭頸部がんのリスクは、肺に近い部位ほど大きくなった。大量飲酒はより大きな頭頸部がんのリスクと関連したが、健康的な食事はリスクの緩やかな低下と関連した」とした。

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男性乳がん患者、乳がん特異的死亡リスクは?

 StageI~IIIのホルモン受容体(HR)陽性の男性乳がん患者における乳がん特異的死亡リスクを調査した結果、そのリスクは少なくとも20年間持続することを、アルゼンチン・Grupo Oncologico Cooperativo del SurのJulieta Leone氏らが明らかにした。JAMA Oncology誌オンライン版2024年2月29日号掲載の報告。 研究グループは、米国国立がん研究所(NCI)のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)の集団ベースのデータを用いて、1990~2008年に乳がんと診断された男性を対象とした観察コホート研究を実施した。累積発生関数を用いて、乳がん特異的死亡および乳がん非特異的死亡の累積リスクに関するベースライン時の変数を推定した。Fine-Gray回帰を用いてあらかじめ選択した変数と乳がん特異的死亡との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析にはStageI~III、HR陽性の男性乳がん患者2,836例が組み込まれた。診断時の年齢中央値は67歳(四分位範囲:57~76)、追跡期間中央値は15.41年(同:12.08~18.67)であった。・乳がん特異的死亡の20年間の累積リスクは、StageIで12.4%、StageIIで26.2%、StageIIIで46.0%であった。・乳がん特異的死亡リスクのピークは二峰性で、N3で4年後、StageIIIで11年後に認められた。・診断から5年生存した患者において、乳がん特異的死亡リスクが高かったのは、64歳以上よりも50歳未満、グレード1よりもグレード2または3/4、StageIよりもIIまたはIIIであった。

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新規2型経口生ポリオワクチン(nOPV2)、有効性・安全性を確認/Lancet

 新規2型経口生ポリオウイルスワクチン(nOPV2)は、ガンビアの乳幼児において免疫原性があり安全であることを、ガンビア・MRC Unit The Gambia at the London School of Hygiene and Tropical MedicineのMagnus Ochoge氏らが、単施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験の結果を報告した。nOPV2は、セービン株由来経口生ポリオウイルスワクチンの遺伝的安定性を改善し、ワクチン由来ポリオウイルスの出現を抑制するために開発された。著者は、「本試験の結果は、nOPV2の認可とWHO事前認証を支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年2月22日号掲載の報告。ガンビアの乳児および幼児で、有効性、ロット間の同等性、安全性を検討 研究グループは、ガンビアにおいて2021年2~10月に、生後18週以上52週未満の乳児と1歳以上5歳未満の幼児を登録した。 乳児は、nOPV2の3ロットのうちの1つ(各群670例)またはbOPVの1ロット(335例)の計4群に、2対2対2対1の割合で無作為に割り付けられた。また、nOPV2の3群のうち、それぞれ224例は2回投与群(1回目投与の28日後に同じロットのnOPV2を投与)に、bOPV群も同様に112例が2回投与群に無作為に割り付けられた。 幼児は、nOPV2(ロット1)群またはbOPV群に1対1の割合で無作為に割り付けられ、28日間隔で2回投与を受けた。 免疫原性の主要アウトカムは、乳児におけるnOPV2ワクチン1回目投与28日後のポリオウイルス2型のセロコンバージョン(抗体陽転)率で、nOPV2の3群のうち各2群間のセロコンバージョン率の差の95%信頼区間(CI)が-10%から10%の範囲内にある場合、各ロットは同等であるとみなした。 忍容性および安全性の主要アウトカムは、投与後7日までの特定有害事象(solicited adverse events)、28日後までの非特定有害事象(unsolicited adverse events)、および投与後3ヵ月までの重篤な有害事象の発現率で、便中のポリオウイルス排泄量も調査した。全体で2回投与後の抗体保有率は93~96% 乳児2,346例が無作為に割り付けられ、2,345例がワクチンの投与を受け、2,272例が1回投与後の解析対象集団に、また746例が2回投与後の解析対象集団に組み入れられた。幼児は600例が無作為に割り付けられ、全例がワクチン投与を受けた。 乳児の1回投与群におけるセロコンバージョン率は、ロット1が48.9%、ロット2が49.0%、ロット3が49.2%であった。2ロット間のセロコンバージョン率の差の95%CIは、ロット1とロット2の比較で-5.5~5.4、ロット1とロット3の比較で-5.8~5.1、ロット2とロット3の比較で-5.7~5.2であり、ロット間の同等性が示された。 ベースラインにおいて血清陰性であった乳幼児におけるセロコンバージョン率は、乳児で1回投与後が63.3%(316/499例)(95%CI:58.9~67.6)、2回投与後が85.6%(143/167例)(79.4~90.6)、幼児ではそれぞれ65.2%(43/66例)(52.4~76.5)、83.1%(54/65例)(71.7~91.2)であった。 ベースラインにおいて血清陰性および血清陽性であった乳幼児における2回投与後の抗体保有率(血清中和抗体価が≧8を抗体保有と定義)は、乳児で92.9%(604/650例)(95%CI:90.7~94.8)、幼児で95.5%(276/286例)(92.4~97.6)であった。 安全性に関する懸念は認められなかった。1回目投与の7日後にポリオウイルス2型の排泄を認めた乳児は、187例中78例(41.7%)(95%CI:34.6~49.1)であった。

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第88回 麻疹以外でもKoplik斑が出る!?

イラストレインより使用先週も麻疹について取り上げましたが、東京都で感染者が報告されたことで、とうとう全国的にも麻疹が報道されるようになりました。私、先週からずっと言ってますからね!!「2峰目」前の診断が難しい麻疹は、症状でどこまで疑えるかがポイントになります。2峰性の経過なので、2峰目の発熱と発疹で「こりゃ麻疹やで!」ということになりますが、1峰目の発熱時にKoplikが口腔内にみられることがあり(写真1)、これが特異的な所見だと思われてきました。Koplikは、この所見が麻疹にみられることを発見した130年前の医師です(写真2)。「2峰目」前の診断が難しい麻疹は、症状でどこまで疑えるかがポイントになります。2峰性の経過なので、2峰目の発熱と発疹で「こりゃ麻疹やで!」ということになりますが、1峰目の発熱時にKoplikが口腔内にみられることがあり(写真1)、これが特異的な所見だと思われてきました。Koplikは、この所見が麻疹にみられることを発見した130年前の医師です(写真2)。       写真1. Koplik斑        写真2. Henry Koplik(1858~1927年)(Wikipediaより使用)写真1. Koplik斑写真2. Henry Koplik(1858~1927年)(Wikipediaより使用)2峰目で発見する前に麻疹らしいかどうかを判断する上で、Koplik斑は100年以上にわたって小児科医や内科医の間で「定番の所見」として君臨してきました。しかしながら、Koplik斑は感度や特異度についてまとまった報告がなく、他の感染症でも観察されるのではないかという見解もありました。Koplik斑の診断精度をみた国内3,000例以上の研究日本において、2009~14年にかけて、麻疹および麻疹が疑われる3,023例の全国調査が行われました1)。診断はPCRやRT-PCRを用いて行われ、合計3,023例が登録されました。このうち、Koplik斑が観察されたのは717例(23.7%)であり、麻疹と確定した症例の28.2%、風疹と確定した症例の17.4%、パルボウイルスB19感染症と確定した症例の2.0%にみられたのです。その他、アデノウイルス、ライノウイルス、ヘルペスウイルスでもKoplik斑が観察されました。この研究によると、麻疹の診断マーカーとしてのKoplik斑の感度は48%、特異度は80%と報告されています。つまり、風疹を含めた他のウイルス感染症でもKoplik斑が観察されるというわけです。もちろん周囲に麻疹の人がいれば事前確率は高くなりますが、一般的な発熱外来におけるKoplik斑は確実な所見とは言えないのかもしれません。参考文献・参考サイト1)Kimura H, et al. The Association Between Documentation of Koplik Spots and Laboratory Diagnosis of Measles and Other Rash Diseases in a National Measles Surveillance Program in Japan. Front Microbiol. 2019 Feb 18;10:269.

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Gout(痛風)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第1回

言葉の由来痛風は英語にすると“gout”です。この“gout”、語源は諸説あるようですが、フランス語の“goute”ないし、中世ラテン語の“gutta”という言葉から来ているようです。これらの言葉にはともに“drop”(落とす)という意味があるそうです。「痛風」と「落とす」…。一瞬つながりがわかりにくいですが、痛風という病気は、古くは「血液中の原因物質が関節に“落っこちる”」ことで起きると信じられてきたそうです。ここから、この言葉が当てられたようです。そして、この由来は当たらずといえども遠からずで、痛風とは、尿酸が結晶となって関節内に“落っこちる”ことで起こるのですよね。実際に、“gout”を“drop”(落とす、滴る)という古典的な意味合いで用いるケースも、読み書きでは残っているようです。口語で耳にすることはありませんが、“gouts of phlegm”と言うと、「痰の塊」の意味となり、“drop”に近い意味合いだと思われます。日本語の「痛風」という病名の由来も諸説あるようですが、「風が当たっただけでも痛い」ところから来ている、というのが定説ですね。そう考えると、痛風は英語と日本語でまったく語源が異なるようです。併せて覚えよう! 周辺単語痛風発作gout attack尿酸urate/uric acid結晶crystalプリン体purine関節炎arthritisこの病気、英語で説明できますか?Gout is a common, painful form of arthritis. It causes swollen, red, and stiff joints. It occurs when uric acid builds up in the blood and causes inflammation in the joints.講師紹介

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de novo転移乳がん、治療を受けない場合の生存期間

 新規に転移のある乳がん(dnMBC)と診断され、その後治療を受けなかった患者の全生存期間(OS)中央値は2.5ヵ月と、1回以上治療を受けた患者の36.4ヵ月に比べて有意に短かったことが、米国・Duke University Medical CenterのJennifer K. Plichta氏らの研究でわかった。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2024年3月5日号に掲載。 本研究では、2010~16年における成人dnMBC患者を米国・National Cancer Databaseから抽出し、1回以上治療受けた患者(治療あり群)と理由にかかわらず治療を受けなかった患者(治療なし群)に層別化した。OSはKaplan-Meier法を用いて推定し、OSに関連する因子はCox比例ハザードモデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・5万3,240例のdnMBC患者のうち、治療ありが92.1%、治療なしが7.9%だった。・治療なし群は、年齢が高く(中央値:68歳vs.61歳、p<0.001)、合併症スコアが高く(p<0.001)、トリプルネガティブの割合が高く(17.8% vs.12.6%)、疾病負荷が高かった(転移部位2ヵ所以上:未治療38.2% vs.既治療29.2%、p<0.001)。・OS中央値は治療あり群が36.4ヵ月、治療なし群が2.5ヵ月であった(p<0.001)。・治療なし群のOS悪化に関連する因子は調整後、高齢、高い合併症スコア、高い腫瘍悪性度、トリプルネガティブ(vs.HR+/HER2-)が挙げられた(すべてp<0.05)。 本研究の結果、治療を受けなかったdnMBC患者は、高齢で、合併症があり、臨床的にアグレッシブながんが多く、治療なし患者の予後は治療あり患者と同様、選択された患者および疾患特性と関連していた。著者らは「治療しなかったdnMBCの予後は悲惨」としている。

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高齢者の睡眠の質改善に対するバイノーラルビートの効果

 バイノーラルビートとは、人間の耳では聞くことのできない脳に効果のある低い周波数を、特別な方法で聞こえるようにしたものであり、脳波をコントロールし、集中力や睡眠に影響を及ぼすことが期待される。高齢者の睡眠の質改善に対するバイノーラルビートの影響を明らかにするため、台湾・Shu Zen Junior College of Medicine and ManagementのPin-Hsuan Lin氏らは、単盲検ランダム化対照試験を実施した。Geriatrics & Gerontology International誌2024年3月号の報告。 対象は、台湾の長期介護施設に入居している睡眠の質の低下が認められる高齢者64例。対象患者は、14日間のバイノーラルビートミュージック(BBM)介入を行ったBBM群と対照群にランダムに割り付けた。介入期間中、BBM群は、週3回、朝と午後に20分間、BBMを組み込んだTaiwanese Hokkien oldiesをリスニングした。対照群は、BBMを組み込んでいないTaiwanese Hokkien oldiesをリスニングした。アンケートや心拍変動分析により、対象者の睡眠の質、心拍変動、抑うつ症状を評価した。 主な結果は以下のとおり。・介入後、BBM群では、心拍数と正常な洞拍動の心拍数変動平均値の増加、低周波正規化単位と抑うつ症状の重症度の減少とともに、睡眠の質の有意な改善が認められた。・対照群では、睡眠の質に対する影響に一貫性がなかったが、心拍変動の一部の自律神経調節における有意な改善、抑うつ症状重症度の有意な減少が認められた。・BBM群は、対照群と比較し、睡眠の質の有意な向上が認められ、交感神経活動の有意な低下が認められた。 著者らは「睡眠の質が低下している長期介護施設入所の高齢者に対し、非侵襲的なBBM介入を14日間実施することで、睡眠の質や抑うつ症状を改善できる可能性が示唆された」とまとめている。

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認知症発症の危険因子としてのコロナ罹患【外来で役立つ!認知症Topics】第15回

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が始まってから、コロナと認知症との関係という新たなテーマが生まれた。まず予防には3密だと喧伝された。その結果、孤独化する高齢者が増えたので、認知症の発症が増加しているという報告が相次いだ。つまり孤独という認知症の危険因子を、コロナが一気に後押ししたという考え方である。そうだろうなとは思いつつ、このエビデンスは乏しかった。それから次第に前向きの疫学研究から、コロナ罹患と認知症発症との関係を報告するものが出てきた。そして最近では、こうしたもののレビューも報告されるようになり、なるほど、こういうことかとポイントが見えてきた。そこで今回は、認知症発症の危険因子としてのコロナ罹患を中心にまとめてみたい。スペイン風邪と認知症の関連は?まず人畜共通感染症による第1のパンデミックとされる「スペイン風邪(Spanish Flu)」を連想した。というのは、コロナはスペイン風邪をしのぐ人畜共通感染症によるパンデミックをもたらしたからだ。スペイン風邪の原因は、トリインフルエンザウイルスとヒトインフルエンザウイルスの遺伝子が混ざり合った新型のウイルス(Influenza A virus subtype H1N1の亜系)だと考えられている。そこで1918年の第1次世界大戦当時に世界的に流行したこのスペイン風邪の認知症への影響はどうだったのかと調べてみた。説得力の強いものに、デンマークで1918年当時妊娠中の母親の胎内にあったヒトに注目し、対象とコントロールで合計28万人余りのデータを用いた研究がある1)。ここでは、該当者が62~92歳に達した期間において、あらゆる認知症性疾患についての発症に注目し、その相対危険度を調査している。その結果、スペイン風邪罹患と認知症発症の間には有意な関係はなかったとされる。この報告のように、どうも積極的に両者の関係を指摘する報告は乏しいようだ。コロナと認知症、追跡期間が長いほど発症率が上昇?さてコロナについて成された近年の報告のレビューが注目された2)。多くの研究結果からは、コロナに罹患することでアルツハイマー病を含むすべての認知症の発症率はおよそ2倍と考えられている。実際、これまでの報告の多くは、60歳以上のヒトにおいては、コロナに罹患することで、亜急性期、慢性期の認知症発症は確かに高まりそうだと報告している。もっとも、コロナ罹患による認知症発症への影響力は、他の呼吸器系のインフルエンザ感染や細菌感染と大差がないとの結論になっている。一方で興味深いのは、追跡期間の違いによる認知症の発症率の相違である。すなわち発症から3ヵ月間もしくは6ヵ月間追跡した研究に比べて、1年間追跡した研究では認知症の発症率が高くなっているのである。このことは、コロナによる認知症の発症は、罹患ののち長期間にわたって続くことを示唆している。また疫学から、なぜコロナが認知症とくにアルツハイマー病に関連するかについてのレビューも興味深い3)。まずコロナへの罹患しやすさについては、加齢が最大にして唯一の危険因子だとされる。そしてその背景として高血圧、糖尿病、心疾患など、いわゆる生活習慣病が考えられている。またこうした要因が、回復を遅くすることも事実である。さらに、最初に述べたような孤独化と普通の生活に戻れないことが高齢者においてうつ病や不安を生じる間接的な要因になることも関係しているだろうとされる。ところで、すでに認知症であった人が、パンデミックによって社会的な交流がなくなったり、ケアが手薄になったりしたことで死亡率が高まった可能性もあることが述べられている。実際、パンデミック時代になってから、コロナ感染の有無にかかわらず、認知症者の死亡率が25%も高まったことを報告したメタアナリシスもある4)。認知症発症の原因として注目される炎症こうしたコロナによる認知機能の低下や認知症発症の原因として最も注目されるのは炎症、とくにこれに関わるサイトカインであろう。このサイトカインとは、ある細胞から他の細胞に情報伝達するための物質である。その中でも有名なのは、インターフェロンやインターロイキンだろう。感染量が多くなるほど、サイトカインも大量に放出されるが、それが著しい場合はサイトカインストーム(免疫暴走)と呼ばれる。サイトカインストームが起こることで大脳組織の炎症が生じる結果、認知機能に障害が生じる。なお近年では、アルツハイマー病の病因仮説として、脳の炎症説は主流の1つとなっている。また別の説として、新型コロナウイルスは、微小血管に障害をもたらし、肺の組織を障害することによって、大脳への酸素の流れに支障を来すことに注目するものがある。さらには、新型コロナウイルスとアミロイドやタウとの関係にも注目するもの、あるいはアルツハイマー病の危険因子とされるAPOE4を介して発症に関係するという考えなどもある。いずれにせよ現時点において新型コロナウイルスと認知症の発症との関係について確立しているわけではない。今後の長期的なフォローアップにより、少しずつ解明が進んでいくと思われる。参考1)Cocoros NM, et al. In utero exposure to the 1918 pandemic influenza in Denmark and risk of dementia. Influenza Other Respir Viruses. 2018;12:314-318.2)Sidharthan C. COVID-19 linked to higher dementia risk in older adults, study finds. News-Medical.Net. 2024 Feb 9.3)Axenhus M, et al. Exploring the Impact of Coronavirus Disease 2019 on Dementia: A Review. touchREVIEWS in Neurology. 2023 Mar 24.4)Axenhus M, et al. The impact of the COVID-19 pandemic on mortality in people with dementia without COVID-19: a systematic review and meta-analysis. BMC Geriatr. 2022;22:878.

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スクリーンタイムとうつ病との関連には男女差あり

 これまでの研究において、スクリーンタイムは、とくに小児のうつ病と関連していることが示唆されている。この関連性は、男性よりも女性において、強くみられることがいくつかのエビデンスで示されているが、これらの調査結果は決定的なものではない。米国・コロンビア大学のLauren E. Kleidermacher氏らは、代表的な米国成人を対象に、スクリーンタイムとうつ病との関連を性別階層化のうえ、調査を行った。AJPM Focus誌2024年4月号の報告。 本研究は、2015~16年の米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)のデータを用いて、2023年に分析を実施した。スクリーンタイムは、テレビおよびコンピュータの時間を含め、3群(1日当たり0~2時間、3~4時間、4時間以上)に分類した。うつ病の定義は、患者健康質問票(PHQ)スコアが10以上とした。テレビおよびコンピュータのスクリーンタイムについて、個別の分析も行った。スクリーンタイムとうつ病との関連性を評価するため、多変量ロジスティック回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・性別とスクリーンタイムとの間に、有意な相関が確認された。・最もスクリーンタイムが長い群(4時間以上/日)とうつ病との関連は、女性で観察された(オッズ比:3.09、95%信頼区間:1.68~5.70)。・スクリーンタイムの種類は、この関連に影響しており、テレビはコンピュータよりも強い関連性を示した。・男性では、すべての群において、有意な関連は認められなかった。 著者らは「とくにテレビの視聴時間の増加が、女性のうつ病と関連していることが示唆された。これが女性のうつ病のリスクマーカーとなりうるかを明らかにするためには、さらなる研究が求められる」としている。

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日本人片頭痛患者における日常生活への影響~OVERCOME研究

 日本人の片頭痛患者を対象に、日常生活活動や基本的な健康指標(睡眠、メンタルヘルス)など、日常生活に及ぼす影響を詳細に調査した研究は、これまであまりなかった。鳥取県済生会境港総合病院の粟木 悦子氏らは、日本人片頭痛患者における日常生活への影響を明らかにするため、横断的観察研調査を実施した。Neurology and Therapy誌2024年2月号の報告。 日本における片頭痛に関する横断的疫学調査(OVERCOME研究)は、2020年7~9月に実施した。片頭痛による家事、家族/社交/レジャー活動、運転、睡眠への影響は、片頭痛評価尺度(MIDAS)、Migraine-Specific Quality of Life(MSQ)、Impact of Migraine on Partners and Adolescent Children(IMPAC)scales、OVERCOME研究のために作成したアンケートを用いて評価を行った。片頭痛のない日の負担を評価するため、Migraine Interictal Burden Scale(MIBS-4)を用いた。抑うつ症状および不安症状の評価には、8項目の患者健康質問票うつ病尺度(PHQ-8)、7項目の一般化不安障害質問票(GAD-7)をそれぞれ用いた。日常生活への影響は、MIDAS/MIBS-4カテゴリで評価した。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛を有する1万7,071例のうち、定期的に家事援助を必要とした人の割合は24.8%であった。・片頭痛により人間関係、余暇活動、社会活動に支障を来した人は、それぞれ31.8%、41.6%、18.0%であった。・頭痛が起こる日の間に、社交/レジャー活動の予定を立てることを少なくとも時々心配する人の割合は、26.8%であった。・家族と同居している人(1万3,548例)では、片頭痛により家族活動への参加や家族との楽しみにも影響がみられた。・運転経験のある人(1万921例)のうち、症状により運転が妨げられると報告した人の割合は、43.9%であった。・片頭痛により睡眠が妨げられた人は52.7%、気分が低下した人は70.7%であった。・PHQ-8の閾値を満たした臨床的うつ病の割合は28.6%、GAD-7の閾値を満たした臨床的不安症の割合は22.0%であった。・日常生活に対する片頭痛の影響は、MIDAS/MIBS-4カテゴリの重症度が増加するほど強力であった。 著者らは「日本人片頭痛患者にとって、日常生活、睡眠、メンタルヘルスへの負担は大きいため、臨床現場では、頭痛症状だけでなく、日常生活に及ぼす影響を評価することが重要である」としている。

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