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リンパ節腫脹の鑑別、患者が話さない内容をしつこく聞こう!【Dr.山中の攻める!問診3step】第14回

第14回 リンパ節腫脹の鑑別、患者が話さない内容をしつこく聞こう!―Key Point―後頸部リンパ節腫脹では全身の感染症、悪性リンパ腫、頭頸部がん、菊池病を想起するEBウイルスによる伝染性単核球症では、眼瞼浮腫、頸部リンパ節腫脹、咽頭炎、肝機能障害、肝脾腫、倦怠感、頭痛が特徴である1)。Kissing diseaseと呼ばれるように唾液からの感染が原因となる。10~20代に多い症例:21歳 男性主訴)発熱、頸部腫瘤現病歴)5日前から37℃前半の発熱と咽頭痛あり。2日前から両側眼瞼の腫脹と両側頸部に腫瘤を触知することに気がついた。昨日から咽頭痛が悪化し、38℃台の発熱になったため、心配になり来院した。既往歴)なし薬剤歴)なし生活歴)飲酒:ビール500mL/毎日喫煙:10本/日(20歳~)職業:建設業身体所見)体温38.7℃、血圧142/78mmHg、心拍数98回/分、呼吸回数20回/分、意識:清明眼瞼:両側に浮腫あり口蓋扁桃:発赤腫大し白苔を認める頸部:両側の胸鎖乳突筋後方に径1~2cmのリンパ節を数個触知する。リンパ節は軟で圧痛あり腹部:平坦、軟、右肋骨弓下に肝臓を2cm、左肋骨弓下に脾臓を3cm触知する経過)血液検査:末梢血中の異型リンパ球増加あり。ASTとALTの上昇あり伝染性単核球症を考えEBウイルス抗体価を測定し、抗VCA-IgM抗体の上昇と抗VCA-IgG抗体および抗EBNA抗体の陰性を認めた新しいガールフレンドとの交際をしつこく聞いたがまったくないという。1ヵ月前に同僚たちと日本酒の回し飲みをしたとのことであった。無症状であるEBウイルス既感染者の90%は唾液にウイルスを排泄していると言われる1)NSAIDsの定期内服で症状は軽快した。脾臓破裂の可能性があるので、激しく体が接触するスポーツを1ヵ月間は避けるように指導した。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!伝染性単核球症はEBウイルスにより起こるアンピシリンの服用により皮疹が出現するサイトメガロウイルスによる伝染性単核球様症状では咽頭痛や頸部リンパ節腫脹を認めないことが多い。性的に活発な年代に多いHIVやトキソプラズマの急性感染、薬剤でも同様の症状が起こる菊池病は若年女性に好発し、頸部リンパ節腫脹、発熱、皮疹、体重減少、関節痛、肝脾腫、無菌性髄膜炎など多彩な臨床像を示す。SLEへ移行することがある【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】症状を確認する急性発症か慢性発症かどの部位のリンパ節が腫れているか発熱、体重減少(体重の5%以上の減少)、盗汗(下着を変える必要があるほどの夜間の発汗)を伴っているか【STEP2-2】診察で詳細に確認するすべての表在リンパ節を触診する。2ヵ所以上の離れたリンパ節が腫れる全身性? 局所性?腫大したリンパ節の大きさと数を記載する圧痛があれば炎症性、圧痛がなければ悪性腫瘍の可能性が高まる炎症性では柔らかく、悪性リンパ腫では消しゴムの硬さ、癌では石のような硬さであることが多い可動性なら炎症性か悪性リンパ腫、可動性がなければ癌を示唆する肝腫大と脾腫の有無を触診で確認する直径3cm以上、硬い、可動性なし、鎖骨上窩リンパ節腫大、体重減少があれば重大な疾患の可能性がある2)【STEP3】鑑別診断を想起する3)胸鎖乳突筋の後方にある後頸部リンパ節腫脹があれば、全身の感染症(EBウイルス、サイトメガロウイルス、風疹ウイルス、HIV、結核)、悪性リンパ腫、頭頸部がん、菊池病を考える鎖骨上窩リンパ節腫大があれば、第一に悪性腫瘍を疑う。左鎖骨上窩リンパ節は消化器がんの転移部位として有名である(Virchow転移)腋窩リンパ節はネコひっかき病、乳がんで腫れる鼠径リンパ節は下肢からの感染、性感染症で腫れることが多い全身性リンパ節腫脹あれば、ウイルス感染症、結核、膠原病、成人Still病、悪性リンパ腫を疑う<参考文献・資料>1)Harrison’s Principles of Internal Medicine 20th edition. 2018. p1358-1365.2)McGee Evidence-Based Physical Diagnosis 5th edition. 2022. p221-231.3)石井義洋. 卒後10年目 総合内科医の診断術. 2015. p361-370.

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オミクロン株への感染で他の変異株への感染を防げるか/NEJM

 新型コロナウイルスにおけるオミクロン株感染後の中和抗体プロファイルについては、ほとんどわかってない。オーストリア・Medical University of InnsbruckのAnnika Rossler氏らは、オミクロンBA.1株に感染した人の回復後の血清サンプルについて6つの変異株に対する中和抗体価を分析し、他の株への感染歴やワクチン接種歴別に検討した。その結果、オミクロンBA.1株にのみ感染したワクチン未接種者は、オミクロンBA.1株以外の株による感染を予防できない可能性があることが示唆された。NEJM誌オンライン版2022年3月23日号のCORRESPONDENCEに掲載。オミクロン株のみの感染後は他の株に対する中和抗体がほとんど含まれていなかった 本研究は後ろ向き研究で、BA.1株に感染しPCR検査陽性となった日の5〜42日後に血清サンプルを採取。BA.1株に感染する前に、他の新型コロナ感染歴なしのワクチン接種者(15例)、他の新型コロナ感染歴なしのワクチン未接種者(18例)、野生株またはアルファ株またはデルタ株への感染歴ありのワクチン接種者(11例)、野生株またはアルファ株またはデルタ株への感染歴ありのワクチン未接種者(15例)の4群で検討した。野生株、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、オミクロンBA.1株に対する中和抗体価を分析した。 オミクロン株感染後の中和抗体価を分析した主な結果は以下のとおり。・オミクロンBA.1株に感染したワクチン接種者と、オミクロンBA.1株感染前に野生株またはアルファ株またはデルタ株に感染歴のあるワクチン接種者またはワクチン未接種者において、すべての株に対する中和抗体価が高かった。・ワクチン接種者でのオミクロンBA.1株に対する中和抗体価の平均は、他の株に対する中和抗体価の平均より低かったが、オミクロンBA.1株感染前に野生株またはアルファ株またはデルタ株への感染歴のあるワクチン未接種者での他の株に対する中和抗体価の平均と同等だった。・オミクロンBA.1株感染前に新型コロナ感染歴のないワクチン未接種者から得られた血清サンプルでは、大部分がオミクロンBA.1株に対する中和抗体で、他の株に対する中和抗体はほとんど含まれていなかった。 著者らは、「本研究にはサンプル数の少なさ、後ろ向き研究といった限界はあるが、オミクロンBA.1株が強力に免疫を回避し、他の株との交差反応性がほとんどないという仮説を支持している。したがって、ワクチン未接種で、以前の株の感染歴がなくオミクロンBA.1株にのみ感染した人は、オミクロンBA.1株以外の株による感染を十分に予防できない可能性があり、完全に予防するにはワクチン接種が必要」と考察している。

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ソトロビマブ、新型コロナ疾患進行リスク79%低減~第III相最終解析/JAMA

 高リスクの軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)非入院患者において、ソトロビマブの単回静脈内投与はプラセボと比較し、疾患進行(29日目までのあらゆる入院または死亡の複合エンドポイント)のリスクを有意に低下させることが認められた。カナダ・William Osler Health CentreのAnil Gupta氏らが、米国、ブラジル、カナダ、ペルーおよびスペインの57施設で実施した第III相多施設共同無作為化二重盲検試験「COMET-ICE試験」の最終解析結果を報告した。著者は、「本試験終了後に出現したSARS-CoV-2変異株に対する有効性は不明であるが、今回の結果は、入院していない高リスクの軽症~中等症COVID-19患者に対する治療選択肢としてソトロビマブを支持するものである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2022年3月14日号掲載の報告。ソトロビマブ群528例、プラセボ群529例で、29日目までの疾患進行を比較 研究グループは、軽症~中等症COVID-19の重症化予防におけるソトロビマブの有効性と安全性を評価する目的で、2020年8月27日~2021年3月11日に、症状発症から5日以内で、疾患進行リスクを1つ以上有する入院前の18歳以上の軽症~中等症COVID-19患者1,057例を、ソトロビマブ(500mg単回静脈内投与)群(528例)またはプラセボ群(529例)に、1対1の割合に無作為に割り付け追跡評価した(最終フォローアップは2021年4月8日)。 主要評価項目は、無作為化後29日目までにCOVID-19が進行(何らかの疾患の急性期管理のための24時間超の入院、または理由を問わない死亡)した患者の割合とした。また、29日目までの救急外来受診・何らかの疾患の急性期管理のための入院・死亡、29日目までの酸素補給または人工呼吸器を要する重度または生命を脅かすCOVID-19への進行などを含む5つの副次評価項目について階層的に検証した。疾患進行リスクは、ソトロビマブ群で79%低下 解析対象1,057例(年齢中央値53歳[IQR:42~62]、65歳以上20%、ラテン系65%)において、追跡期間中央値はソトロビマブ群103日、プラセボ群102日であった。 主要評価項目である無作為化後29日目までに24時間超の入院または死亡が認められた患者の割合は、ソトロビマブ群で1%(6/528例)、プラセボ群で6%(30/529例)であり、ソトロビマブ群で有意に減少した(補正後相対リスク[RR]:0.21[95%信頼区間[CI]:0.09~0.50]、絶対群間差:-4.53%[95%CI:-6.70~-2.37]、p<0.001)。 副次評価項目について、5項目中4項目でソトロビマブ群とプラセボ群との間に有意差が認められた。29日目までの救急外来受診・何らかの疾患の急性期管理のための入院・死亡が認められた患者の割合は、ソトロビマブ群2%(13/528例)vs.プラセボ群7%(39/529例)(補正後RR:0.34[95%CI:0.19~0.63]、絶対群間差:-4.91%[95%CI:-7.50~-2.32]、p<0.001)、重度または生命を脅かすCOVID-19への進行が認められた患者の割合はそれぞれ1%(7/528例)vs.5%(28/529例)(0.26[0.12~0.59]、-3.97%[-6.11~-1.82]、p=0.002)であった。 有害事象の発現率は両群間で差はなく(ソトロビマブ群22%vs.プラセボ群23%)、主な有害事象はソトロビマブ群が下痢(8例、2%)、プラセボ群がCOVID-19肺炎(22例、4%)であった。

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免疫不全者へのコロナワクチン、3回で抗体陽転率上昇か~メタ解析/BMJ

 免疫不全患者(血液がん、固形がん、免疫性炎症性疾患、臓器移植、HIV)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種による抗体陽転率が免疫正常者と比較して低いが、1回目に比べると2回目接種後に改善され、3回目の接種は有効である可能性があることが、シンガポール国立大学のAinsley Ryan Yan Bin Lee氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年3月2日号で報告された。82件の前向き観察研究のメタ解析 研究グループは、免疫不全患者と免疫正常者においてCOVID-19ワクチンの有効性を比較する目的で、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 医学データベース(PubMed、Embase、Central Register of Controlled Trials、COVID-19 Open Research Dataset Challenge[CORD-19]、WHO COVID-19 databases)を用いて、2020年12月1日~2021年11月5日の期間に発表された試験が検索された。また、ClinicalTrials.govとWHO International Clinical Trials Registry Platformを検索して、2021年11月の時点で、これらのサイトに登録されているが未発表または進行中の試験が特定された。 対象は、免疫不全患者と免疫正常者でCOVID-19ワクチンの有効性を比較した前向き観察研究であった。 82件の研究がメタ解析に含まれた。このうち77件(94%)はmRNAワクチン(BNT162b2[Pfizer-BioNTech製]、mRNA-1273[Moderna製])、16件(20%)はウイルスベクターワクチン(AZD1222[Oxford-AstraZeneca製])、4件(5%)は不活化全粒子ワクチン(CoronaVac[Sinovac Biotech製])を使用していた。バイアスのリスクは、63件の研究が「低」、19件の研究は「中」であった。臓器移植患者は2回目接種後も陽転率が著しく低い ワクチン1回目接種後の抗体陽転のリスク比が最も低かったのは臓器移植患者(リスク比[RR]:0.06[95%信頼区間[CI]:0.04~0.09]、I2=0%、絶対リスク:0.06[95%CI:0.04~0.08]、I2=0%、エビデンスの確実性:中)であり、これは免疫正常者(対照)と比較して抗体陽転率が約16分の1であることを意味する。 次にリスク比が低かったのは血液がん患者(RR:0.40[95%CI:0.32~0.50]I2=80%、絶対リスク:0.29[95%CI:0.20~0.40]、I2=89%、エビデンスの確実性:中)であり、次いで免疫性炎症性疾患患者(0.53[0.39~0.71]、I2=89%、0.29[0.11~0.58]、I2=97%、中)、固形がん患者(0.55[0.46~0.65]、I2=78%、0.44[0.36~0.53]、I2=84%、中)の順であった。また、HIV患者の抗体陽転率を報告した研究が1件あり、免疫正常者と比較して差は認められなかった(1.06[0.74~1.54]、低)。 一方、2回目接種後の抗体陽転率は、依然として臓器移植患者(リスク比:0.39[95%CI:0.32~0.46]、I2=92%、絶対リスク:0.35[95%CI:0.26~0.46]、I2=92%、エビデンスの確実性:中)で最も低く、免疫正常者の約3分の1にすぎなかったが、1回目接種後に比べると高かった。 次いで、1回目接種後と同様に、抗体陽転率は血液がん患者(リスク比:0.63[95%CI:0.57~0.69]、I2=88%、絶対リスク:0.62[95%CI:0.54~0.70]、I2=90%、エビデンスの確実性:低)、免疫性炎症性疾患患者(0.75[0.69~0.82]、I2=92%、0.77[0.66~0.85]、I2=93%、低)、固形がん患者(0.90[0.88~0.93]、I2=51%、0.89[0.86~0.91]、I2=49%、低)の順に高くなり、いずれも1回目接種後よりも改善されていた。HIV患者の抗体陽転率は免疫正常者と同程度だった(1.00[0.98~1.01]、I2=0%、0.97[0.83~1.00]、I2=89%、低)。 11件の研究の系統的レビューでは、mRNAワクチンの3回目の接種によって、固形がん、血液がん、免疫性炎症性疾患の患者のうち2回のワクチン接種に応答しなかった患者において抗体陽転率が改善されたが、臓器移植患者では大きなばらつきがみられ、HIV患者やmRNAワクチン以外のワクチンを接種した患者の研究は十分ではなかった。また、免疫不全患者は免疫正常者に比べ抗体価が低かった。 著者は、「免疫不全患者は免疫正常者に比べ、全般に低い抗体価で抗体陽転が起きており、抗体保有の適切性に関して懸念が高まる。このような患者の抗体保有を向上させるには、従来のmRNAワクチン2回接種レジメンに、3回目の接種を加えるなど、新たな方策が必要となるだろう」としている。

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円錐角膜〔keratoconus〕

1 疾患概要■ 定義円錐角膜は、進行性の両眼角膜中央部もしくは下方の菲薄化と突出を来す疾患であり、近視化と不正乱視による視力低下を来す。■ 疫学円錐角膜の発症頻度は、450〜2,000人に1人とされてきた。しかし、診断技術の進歩により、軽症の円錐角膜の検出頻度が上がっている。屈折矯正外来を訪れる患者のうち円錐角膜または円錐角膜疑い患者は5%前後にみられる。また、難波らの調査からは、疑い例も含めると日本人の約100人に1人程度の有病率であるという結果が報告されていることから、軽症例も含めると従来考えられているよりも罹患人口が多い可能性が高い。性差については報告により異なるが、わが国では男性に多いという報告が多数ある。■ 病因明らかな病因はいまだに不明である。数多くの遺伝子変異が報告されているが、実際に遺伝的素因が明らかな例はあまり多くない。ダウン症候群やレーバー先天盲、エーラス・ダンロス症候群、マルファン症候群などでは円錐角膜の発症率が高いことが知られている。その他リスクファクターとしては、アトピーなどのアレルギー眼疾患、頻繁に目をこする、などが挙げられる。■ 症状軽度の症例では自覚症状はほとんどない場合もあるが、中等度以上になると近視性乱視と不正乱視が出現する。そのために眼鏡矯正視力が不良になりハードコンタクトレンズによる矯正が必要になる。ほとんどの場合両眼性に生じるが、程度に左右差があることも多い。■ 分類角膜の突出部位別の分類としては、以下のものがある。Nipple角膜中央の狭い範囲(5ミリ以下)に突出がみられるもの。Oval     突出部位が中央やや下方にみられるもの。最も頻度が高い。Globus突出部位が角膜の4分の3の範囲に及ぶもの。また、重症度分類としては、Amsler分類(表)が古くから用いられているが、測定機器の進歩によって、細隙灯顕微鏡で検出できない初期の変化が捉えられるようになってきたために、見直す必要がある。表 Amsler-Krumeich分類画像を拡大する■ 予後円錐角膜の多くは思春期から青年期にかけて発症し、その後加齢とともに進行するが、中年以降になると進行速度が緩やかになってやがて停止する。しかしながら、進行の有無やスピードには個人差が大きく、近年の報告によれば30歳以降でも進行する症例もみられることが明らかになっている。経過中に、デスメ膜破裂を来す場合がある。局所的な実質の浮腫と、それに伴う急速な視力低下と軽度の眼痛を認める(急性水腫:図1)。浮腫は自然に軽快するが、実質瘢痕を残すと視力が回復せずに角膜移植が必要となることもあるので、急性水腫を来さないような治療方針を建てることが重要となる。図1 急性水腫の前眼部所見急激に発症する角膜中央部の浮腫で、スリットランプでしばしば実質の裂隙とデスメ膜の断裂を認める。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)円錐角膜の診断には、正確な視力検査、自覚的屈折検査と角膜形状解析検査を行う必要がある。細隙顕微鏡での異常所見としては、角膜中央〜Vogt’s striae(角膜実質の線状の皺壁:図2)、Fleisher ring(突出部の周辺に認められるリング状のヘモジデリン沈着)、上皮化の瘢痕などが挙げられ、主として中等症以上で初めて認められる。図2 Vogt’s striae突出部に生じる細かい実質の皺壁。初期の円錐角膜の診断には、角膜トポグラフィー(形状解析検査)が有用であり、角膜中央から下方の前方突出が特徴的である(図3)。図3 典型的な円錐角膜の角膜トポグラフィー像下方角膜曲率の急峻化を認める。近年では、多くの機器で円錐角膜のスクリーニングプログラムが搭載されている。より初期の診断には、角膜前面だけではなく後面も評価でき、角膜厚の分布も検出できる角膜トモグラフィー(断層撮影)の感度が高い。さらに、角膜形状でなく生体力学的特性を調べる検査の有用性も報告されている。鑑別疾患としては、円錐角膜よりも周辺部角膜の菲薄化と突出を来たすペルーシド角膜辺縁変性が挙げられる。円錐角膜よりも発症が遅く進行が停止するまでの期間も長い。その他、レーシックなどの角膜屈折矯正手術後の角膜拡張症(エクタジア)も円錐角膜と同様の所見を呈する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)円錐角膜の治療は、視力矯正と進行予防の2つの目的があり、前者はさらに保存的治療と外科的治療に分かれる。■ 視力矯正1)保存的治療軽度の場合は眼鏡やソフトコンタクトレンズも用いられるが、一般的には酸素透過性ハードコンタクトレンズによる矯正が中心となる。角膜突出の程度が強くなると、多段階のベースカーブを有する円錐角膜用のハードコンタクトレンズが必要となる場合もある。ハードコンタクトレンズに伴う異物感が強い場合は、ソフトコンタクトレンズの上にハードコンタクトレンズを乗せる“piggy-back”とよばれる装用法や、中心部がハードレンズで周辺部がソフトレンズのハイブリッドレンズ、あるいは強膜レンズが用いられることもある。2)外科的治療軽度の非進行例については、有水晶体眼内レンズによる近視・乱視の矯正も試みられている。近年、角膜実質の混濁をともなわない例については、角膜実質にPMMA製のリングを入れる「角膜内リング」も一部で行われるようになった(国内未承認)。これによって角膜形状の改善とハードコンタクトレンズ装用感の向上が得られる場合がある。保存的治療で充分な視力矯正が得られない場合、角膜移植が1つの選択となりうる。かつては角膜全層を移植する「全層角膜移植」が広く行われたが、術後合併症への対策が欠かせないという欠点があり、それを補うために角膜実質をデスメ膜の直上まで切除して移植する「深層層状角膜移植」が行われているが、手術手技が難しいという欠点を持つ。■ 進行抑制約20年前から、「角膜クロスリンキング」という円錐角膜の進行抑制を目的とした治療が、諸外国で広く行われるようになった(国内未承認)。角膜実質内にリボフラビン(ビタミンB12)を浸透させた後に、紫外線を照射することで角膜実質のコラーゲン線維の架橋を促して強度を向上させる。これまでの研究で、円錐角膜の進行抑制が大半の例で得られ、若干の形状改善効果もあることが報告されている。進行抑制が得られれば、角膜移植などの外科的治療を受けずに済む可能性が高く、患者の生活の質の向上に役立つ。4 今後の展望上に挙げた治療法のいくつかは保険未収載であったり、機器の承認が取れていないため、治療は多くの場合が自費診療として行われる。特に角膜クロスリンキングは、疾患の進行抑制を効率で得られるために患者のQOLを長期にわたって改善できることが海外で報告されており、わが国でも早急に実施体制が整うことが求められる。また、多くの円錐角膜患者にとってハードコンタクトレンズは生活に欠かせないが、市町村によってはその購入に対する補助がなされないなど、患者負担が大きいことが問題となっている。5 主たる診療科眼科。しかし多くの例では、眼鏡店やコンタクトレンズ販売店、あるいは屈折矯正手術施行施設を訪れることも多く、これらの施設で適切に円錐角膜の診断をつけることが重要である。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報円錐角膜研究会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)National Keratoconus Foundation(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Amsler M. Ophtalmologica. 1946;111:96–101.公開履歴初回2023年3月8日

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中年期女性の血管運動神経症状に関連する不眠症に対するスボレキサントの効果

 神経ペプチドオレキシンは、覚醒促進、温度調節、閉経後に増加、女性に対しエストロゲン療法により正常化することから、血管運動神経症状(VMS)関連の不眠症治療においてオレキシン拮抗作用が重要な役割を果たしていることが示唆されている。米国・ハーバード大学のShadab A. Rahman氏らは、夜間のVMSに関連する慢性不眠症に対するデュアルオレキシン受容体拮抗薬スボレキサントの有効性について評価を行った。Sleep誌オンライン版2022年1月11日号の報告。 夜間のVMS、不眠症重症度尺度(ISI)スコア15以上、日誌による入眠後覚醒30分超を有する慢性不眠症の女性患者56例を対象に二重盲検プラセボ対照ランダム化試験を実施した。対象患者は、スボレキサント群(10~20mg)27例またはプラセボ群29例にランダムに割り付けられ、4週間就寝前経口投与を行った。個人内のISIスコアの変化についての分析では、ベースライン時のISIと人種を考慮し、調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の平均ISIスコアは、スボレキサント群で18.1(95%信頼区間[CI]:16.8~19.4)、プラセボ群で18.3(95%CI:17.2~19.5)であった(p=0.81)。・スボレキサント群のベースラインから4週間後における個人内の平均ISIスコアの変化(-8.1、95%CI:-10.2~-6.0)は、プラセボ群(-5.6、95%CI:-7.4~-3.9)と比較し、減少が認められた(p=0.04)。・スボレキサント群の夜間VMSの頻度(日誌で評価)は、プラセボ群と比較し、有意な減少が認められた(p<0.01)。・入眠後覚醒と総睡眠時間については、スボレキサント群で改善傾向が認められたが、多重比較の調整後、有意な差は認められなかった。・日中VMSおよびその他の睡眠関連アウトカムについては、両群間で差が認められなかった。・スボレキサント群の忍容性は良好であった。 著者らは「スボレキサントは、VMS関連の不眠症に対し、忍容性が高く、効果的な治療薬であり、夜間VMSを低下させる可能性が示唆された。オレキシン受容体の拮抗作用は、VMS関連の慢性不眠症を有する女性に対する新規治療オプションとなりうる可能性がある」としている。

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日本人の統合失調症、うつ病入院患者に対する睡眠薬の使用状況

 京都大学の降籏 隆二氏らは、統合失調症およびうつ病の入院患者に対する睡眠薬の使用率と睡眠薬と抗精神病薬使用との関連について調査を行った。Sleep Medicine誌オンライン版2021年11月22日号の報告。 全国の精神科病院200施設以上が参加する「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究」(EGUIDEプロジェクト)の一環として、全国横断的研究を実施した。統合失調症入院患者2,146例とうつ病入院患者1,031例のデータを分析した。すべての向精神薬の投与量を記録し、退院時のデータを分析した。睡眠薬と抗精神病薬使用との関連を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・睡眠薬を単剤または2剤以上で使用していた患者の割合は、それぞれ以下のとおりであった。 ●統合失調症入院患者:睡眠薬単剤療法55.7%、併用療法17.6% ●うつ病入院患者:睡眠薬単剤療法63.6%、併用療法22.6%・多変量ロジスティック回帰分析では、統合失調症入院患者における睡眠薬使用と正の関連が認められた因子は、2種類以上の抗精神病薬の使用および抗コリン作用薬、抗不安薬、気分安定薬、抗てんかん薬の使用であった。・うつ病入院患者では、2種類以上の抗うつ薬、抗精神病薬の使用および抗不安薬、気分安定薬、抗てんかん薬の使用と睡眠薬使用との間に正の関連が認められた。 著者らは「睡眠薬の使用は、精神疾患を有する入院患者において、頻繁に認められることが明らかであった。統合失調症およびうつ病の入院患者のいずれにおいても、抗精神病薬の併用療法は、睡眠薬使用に影響を及ぼすことが示唆された」としている。

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BNT162b2とmRNA-1273の液性/細胞性免疫、感染/発症/重症化予防効果の推移:オミクロン株を中心に(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

ワクチン開発の現状 2022年1月12日現在、世界で開発されているワクチンは152個(開発中止になった10個を含む)に及び、その中で28個のワクチンが世界各国によって緊急使用あるいは完全使用が承認され、各ワクチンの感染/発症予防効果、重症化予防効果、特異的副反応などが徐々に明らかにされている。その結果、優れたワクチンとして生き残りつつあるのが、本邦をはじめ世界の先進国で優先的に使用されているRNAワクチンに分類されるPfizer/BioNtech社のBNT162b2(商品名:コミナティ筋注)とModerna社のmRNA-1273(同:スパイクバックス筋注)の2つである。 2021年の11月以降、世界を席巻するウイルスはデルタ株からオミクロン株に置換されつつある。本邦でも2022年1月に入り、オミクロン株感染者の急激な増加を認めている。オミクロン株のS蛋白をPlatformにしたワクチン開発は理論的には困難な問題ではない。しかしながら、新たなワクチンを実地臨床の現場で使用できるためには第I相から第III相に至る治験を介して有効性、安全性を検証する必要があり、膨大な時間を要する。その意味で、今年の冬から春にかけて世界を席巻するであろうオミクロン株に対する予防策としては、現在使用可能なBNT162b2、mRNA-1273の2回接種(通常接種)に加え、3回目以上のブースター接種を組み合わせて立ち向かう必要がある。以上のような事実を踏まえ、オミクロン株に対する今後のワクチン政策を医学的に正しい方向に誘導するためには、BNT162b2とmRNA-1273の予防手段としての優越性の違いを確実に把握しておく必要がある。RNAワクチン通常接種(2回接種)後のオミクロン株に対する液性免疫、細胞性免疫、予防効果の時間推移 BNT162b2、mRNA-1273を2回接種した場合の野生株(先祖株)S蛋白-RBD(Receptor binding domain)に対する中和抗体価のピーク値(2回目ワクチン接種2~4週後)は、BNT162b2接種後に比べmRNA-1273接種後のほうが40~50%高い(Richards NE, et al. JAMA Netw Open. 2021;4:e2124331., Self WH, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021;70:1337-1343.)。しかしながら、BNT162b2、mRNA-1273接種後の野生株中和抗体価はピーク値が異なるものの、それ以降4~6ヵ月間はほぼ同じ速度で低下する(Levin EG, et al. N Engl J Med. 2021;385:e84., Pegu A, et al. Science. 2021;373:1372-1377.)。 BNT162b2接種後のオミクロン株に対する中和抗体価は、ピーク値を与える時間帯ですでに検出限界近傍まで低下していた。また、mRNA-1273のオミクロン株に対する中和抗体価は、ワクチン接種後4~6ヵ月経過した時点で検出限界以下であった(Rossler A, et al. N Engl J Med. 2022 Jan 12. [Epub ahead of print])。以上より、BNT162b2、mRNA-1273のオミクロン株中和作用はワクチン接種後のいかなる時間帯でもほぼ無効と考えることができる。この現象はオミクロン株S蛋白に存在する多彩な遺伝子変異に起因する強力な液性免疫回避によって惹起されたものである。 ワクチン接種によって形成されたS蛋白には、CD4-T細胞反応を賦活する抗原決定基(Epitope)が約30個、CD8-T細胞反応を賦活する抗原決定基が約50個存在する(山口, 田中. 日本医事新報 2021;5088:38.)。但し、T細胞反応を規定する抗原決定基の個数に関する報告は一定しておらず、確実な個数は現時点では同定されていない。これらの抗原決定基は種々の変異の影響を受け難く、オミクロン株以外の変異株において85~95%(Tarke AT, et al. bioRxiv. 2021;433180.)、オミクロン株においても70~80%が維持される(WHO. COVID-19 Weekly Epidemiological Update. 2022 Jan 7.)。ワクチン接種後のT細胞性免疫の持続期間は野生株を用いた解析ではあるが、少なくとも8ヵ月間は緩徐に低下しながらも維持されることが示された(Barouch DH, et al. N Engl J Med. 2021;385:951-953.)。以上より、オミクロン株に対するワクチン惹起性T細胞性免疫は、時間経過と共にゆっくりと低下するものの、比較的長期間にわたり有効域に維持されるものと考えられる。賦活化されたCD4-T細胞はB細胞由来の液性免疫(中和抗体)と共同し補完的にウイルス感染を抑制する。一方、CD8-T細胞は、ウイルスに感染した生体細胞を殺傷/処理し、生体が感染後の過剰免疫状態に陥ることを阻止する(重症化抑制)。 本論評で取り上げたDickermanらの論文(Dickerman BA, et al. N Engl J Med. 2020;386:105-115.)は、アルファ株、デルタ株感染に対するBNT162b2、mRNA-1273の感染/発症予防効果、重症化(一般入院、ICU入院、死亡)予防効果の差を観察したものである。アルファ株、デルタ株感染にあって、感染/発症予防効果、ICUを含む入院予防効果に関してmRNA-1273のほうが勝っていた。しかしながら、死亡予防効果は両ワクチンで有意差を認めなかった。 オミクロン株に対する両ワクチンの予防効果に関する英国健康安全保障庁(UKHSA)の解析によると(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)、BNT162b2接種後のデルタ株発症予防効果が90%(ワクチン接種2~4週後)から60%(ワクチン接種後25週以上)まで低下するのに対し、同じ時間帯においてオミクロン株発症予防効果は65%から10%前後まで低下した。一方、mRNA-1273接種後のデルタ株発症予防効果は95%(ワクチン接種2~4週後)から75%(ワクチン接種後25週以上)まで低下、オミクロン株発症予防効果は同じ時間帯で70%から10%前後まで低下した。定性的に同様の結果は、米国からも報告されている(Accorsi EK, et al. JAMA. 2022 Jan 21. [Epub ahead of print])。これらの結果は、デルタ株に対する発症予防効果の時間的低下はmRNA-1273でより緩徐であるが、オミクロン株に対する発症予防効果の時間的低下は両ワクチンでほぼ同程度であることを意味する。オミクロン株に対する発症予防効果の時間推移は液性免疫の動態(両ワクチンの中和抗体形成能は低くワクチン接種直後から検出限界近傍)からは説明できず、予防効果の大部分が時間経過と共にゆっくりと低下するT細胞性免疫の賦活によって維持されていることを示唆する。そのため、オミクロン株に対するBNT162b2とmRNA-1273の発症予防効果の差は小さい。オミクロン株抑制を考えた場合、液性免疫ではなく細胞性免疫の賦活が重要である。その意味で、ドイツ・テュービンゲン大学で開発中のT細胞免疫賦活に特化したワクチン(CoVac-1)に論評者らは注目している(Heitmann JS, et al. Nature. 2021 Nov 23. [Epub ahead of print])。 オミクロン株に対するBNT162b2接種後の入院予防効果は、2~24週後に72%であったものが25週以上経過すると52%まで低下した。一方、デルタ株に対するBNT162b2の入院予防効果は接種後の時間経過(接種後20週以内)と無関係に90%前後の値を維持し(Tartof SY, et al. Lancet. 2021;398:1407-1416.)、オミクロン株に対する入院予防効果の動態とは異なっていた。オミクロン株感染における種々の重症化状態(酸素投与、機械呼吸、ICU入院、入院中の死亡)の頻度を解析した論文によると、これらの指標の発生頻度はデルタ株感染に比べオミクロン株感染で有意に低いことが示された(Maslo C, et al. JAMA. 2021 Dec 30. [Epub ahead of print])。オミクロン株が高感染性、低病原性の性質を有する特異的なウイルスであることは感染発症初期から観察されていた。感染性の増強は、Q498R, N501Y, H655Y, N679K, P681Hなどの多彩なS蛋白アミノ酸変異に起因する(CDC. Science Brief. 2021 Dec 2.)。一方、オミクロン株の低病原性は、肺胞領域でのウイルス複製/増殖能が低く、重症化の引き金になる肺炎が発生し難いという実験的事実から説明される(HKUMed News. HKUMed finds Omicron SARS-CoV-2 can infect faster and better than Delta in human bronchus but with less severe infection in lung. 2021 Dec 15.)。RNAワクチンブースター接種(3回目接種)後のオミクロン株に対する液性免疫、細胞性免疫、予防効果の時間推移 播種ウイルスの主体がデルタ株からオミクロン株に置換されつつある現在、オミクロン株を標的とした3回目ブースター接種の意義を明らかにする必要がある。オミクロン株に対する2回ワクチン接種後の中和抗体価は検出限界近傍の低値である(上述)。Nemetらの解析によると(Nemet I, et al. N Engl J Med. 2021 Dec 29. [Epub ahead of print])、BNT162b2の2回目接種5.5ヵ月後のオミクロン株中和抗体価に比べ3回目接種1ヵ月後の中和抗体価は97倍増加した。mRNA-1273の3回目ブースター接種に関するModerna社の報道によると(Moderna. Press Release. 2021 Dec 20.)、mRNA-1273の3回目接種後のオミクロン株に対する中和抗体価は2回目接種後の83倍まで増加したとのことである。 英国健康安全保障庁(UKHSA)の解析によると、BNT162b2の2回目接種後25週以上経過した時点で10%前後まで低下したオミクロン株に対する発症予防効果は、3回目ブースター接種2~4週後には70%以上に回復した(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)。しかしながら、3回目接種から10週以上経過するとBNT162b2のオミクロン株発症予防効果は40%台まで再度低下した。BNT162b2の3回目接種後のオミクロン株に対する発症予防効果の推移は、2回目接種後とは異なり、主として中和抗体価の動態によって説明可能である。mRNA-1273の3回目接種後のオミクロン株に対する発症予防効果は78%と報告され、BNT162b2の効果とほぼ同程度であった(Accorsi EK, et al. JAMA. 2022 Jan 21. [Epub ahead of print])。しかしながら、mRNA-1273の3回目接種後の各ウイルスに対する発症予防効果の時間推移は報告されていない。 BNT162b2の3回目接種によるオミクロン株に対する入院予防効果は、2回接種後25週以上で52%まで低下したが、3回目接種2週以後で88%まで回復した(UKHSA. Technical Briefing. 2021 Dec 31.)。入院予防効果など重症化予防効果が主としてT細胞性免疫によって規定されるならば、UKHSAの観察結果は、BNT162b2の3回目ブースター接種はオミクロン株に対する液性免疫に加え細胞性免疫も改善することを意味する。 mRNA-1273はBNT162b2に比べ一般的に免疫原性、予防効果の面でより優れた効果を発揮することが判明したが、オミクロン株に対する作用/効果には明確な差を認めない。両者の差を招来する主たる原因は生体に導入されるmRNA量の違いである。成人においてmRNA-1273の通常接種によって生体に導入されるmRNA量はBNT162b2の3.3倍であり、その結果として高い免疫原性が発現する。しかしながら、mRNA導入量の多さは副反応の多さとも関連し、mRNA-1273では心筋炎を含む多くの副反応の頻度がBNT162b2よりも有意に高いことを知っておく必要がある(Chapin-Bardales J, et al. JAMA. 2021;325:2201-2202., Husby A, et al. BMJ. 2021;375:e068665.)。

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朝の光が認知症高齢者の睡眠障害改善に及ぼす影響

 睡眠障害や概日リズムを改善するためには、光療法が効果的であるといわれている。台湾・国立陽明交通大学のChuen-Ru Liu氏らは、睡眠障害や概日リズムの改善には、一般的な照明よりも朝の明るい周囲光への曝露がより効果的であるとの仮説を立て、認知症高齢者のための新たな照射介入モデルの検討を試みた。Sleep Medicine誌オンライン版2021年10月21日号の報告。 本検討では、単盲検縦断グループ実験デザインを用いた。認知症患者は、コミュニティおよびナーシングホームより募集した。実験グループには、2,500ルクスの周囲光を、対照グループには114~307ルクスを用いた。睡眠障害および概日リズムの測定には、加速度計(XA-5)を用いた。効果反応までの時間を測定するため、縦断実験計画法を用いた。 主な結果は以下のとおり。・ベンゾジアゼピンの使用と日中の総活動量の共変量を分析するため、一般化推定方程式を用いた。・実験グループでは、5週目と9週目において以下の有意な改善が認められた。 ●睡眠効率の平均増加(5週目:41.9%[p<0.001]、9週目:31.7%[p=0.002]) ●睡眠時間の増加(5週目:141分[p=0.001]、9週目:135分[p=0.008]) ●覚醒時間の減少(5週目:116分[p=0.001]、9週目:108分[p=0.002]) ●入眠開始の改善/睡眠終了の遅延(入眠開始の改善:60~84分、睡眠終了の遅延:57~79分)・4週間の明るい周囲光による介入が、最も効果的であった。 著者らは「朝の明るい周囲光は、睡眠障害の改善に有用であり、概日リズムを安定させることにより、より良い結果をもたらすと考えられる」としている。

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人生100年時代、インスリンも100歳、今もこれからも現役【令和時代の糖尿病診療】第4回

第4回 人生100年時代、インスリンも100歳、今もこれからも現役今回は、2021年の締めくくりとして、糖尿病治療において最も歴史のある「インスリン」について語ろうかと思う。今年は、20世紀最大の発見の1つともいわれるインスリンの生誕100年であり、本来なら世界中でいろいろな記念行事があったに違いない。しかしコロナの影響で中止を余儀なくされたり、バーチャル開催になってしまったりと残念でならない。読者の皆さんにもいろいろな年代層の方がいらっしゃると思う(ひょっとしたら100歳の方がご覧になっているかも!?)ので、私と同じく、あらためてインスリンについて考えてみるのもよいかと思う。100年前というと、和暦で大正10年まで遡る。歴史を紐解くと、この年は日本で原 敬首相暗殺というショッキングな事件があり、混沌とした時代だ。また、大正時代の市民生活は、大卒サラリーマンの初任給(月給)が50~60円というデータが残っているなど、まさにタイムスリップした気分で長い時の流れが感じられる。余談はこのくらいにして、少しインスリンの歴史を振り返ってみることにする。図1:インスリン発見100年の軌跡画像を拡大する1921年、カナダ・トロントの医師Frederick Grant Banting氏とCharles Best氏が膵島ホルモンの抽出に成功し、“isletin(アイレチン)”と命名した。その翌年、isletinは14歳の1型糖尿病患者に初めて投与されたが、当初は抽出物の精製が不十分であったためほとんど効果がなく、アレルギー反応が現れ投与は1回限りで中止された。それから程なくして、精製度を高めたものが用いられ、患者の血糖値は正常に低下した。トロントの研究グループは、膵からの抽出液isletinを“insulin”と名付け、製薬企業の協力下で製剤化し、大量生産ができる体制を整えた。これにより、糖尿病が治療可能な疾患になった。それ以前は、治療といえば飢餓療法という非常に悲しい延命策しかなく、不治の病だったのである。インスリンによる治療が可能になり、糖尿病性昏睡は激減したものの、網膜症・腎症の合併症がクローズアップされ、1930年代後半からは血糖コントロールと細小血管障害との関係があるのかなど、喧々諤々と議論されたこともあった。これに決着をつけたのが、1983~1993年に実施された糖尿病の大規模臨床研究DCCT1)である。数多あるインスリン製剤を使いこなすための基礎知識インスリン発見から100年後の2021年4月現在、インスリン製剤は26種類、59製品もの種類が存在する2)。こうまで増えると何を使用すればいいのかわかりづらく、「それなら糖尿病専門医に任せよう」ということにもなりかねないが、そうならないためにもこの場を借りてインスリン治療の基礎を伝授させていただく。まずはインスリンの適応であるが、日本糖尿病学会が提唱しているインスリン依存状態などの「絶対的適応」であれば、病態が安定するまでは専門医に任せてもよいと思われるので、今回は非依存状態であっても血糖コントロールのためにインスリンが必要な場合に、どのような選択をするかを中心に述べたいと思う。インスリン製剤は、作用時間により(超)超速効型・超速効型・速効型・中間型・持効型に分けられ、さらには作用時間が異なるインスリンを混ぜた混合型インスリン(配合注)が存在する。これらを適切に組み合わせ、正常な生理的インスリン分泌(下図)に近づけるよう単位調節を行っていく。インスリン治療の土台部分であり、食事と関係ない基礎分泌の補充を目的に使用される中間型・持効型、および食後の血糖値上昇に伴う追加分泌の補充を目的に使用される(超)超速効型・超速効型・速効型で分けて考えると理解しやすいかと思う。さらに、自己注射で使用できるデバイスには種類があり、それぞれメーカーや特徴によって名称が異なるため、これらの名前も覚えておくとよいだろう。図2:生理的インスリン分泌2型糖尿病患者にインスリン製剤を処方する際の実際(1)インスリンの導入は基礎か追加か?最初に使用するインスリン製剤については、空腹時血糖値の良しあし(個人的なカットオフ値の目安は150mg/dL)により決めることが多い。さほど高くなければ超速効型(追加分泌)から、高ければ持効型(基礎分泌)からと考えられるが、導入時はおそらくHbA1cが8%以上で空腹時血糖値が高い可能性が考えられる。慣れていない場合は、経口血糖降下薬に持効型(基礎)インスリンを追加する形のBOT(Basal supported Oral Therapy)が処方しやすいだろう。追加インスリンを使用する場合、今は食直前に投与する超速効型が主流だが、直近で登場したいわゆる(超)超速効型といわれる製剤(商品名:フィアスプ、ルムジェブ)は、食事2分前~食事開始後20分以内に注射する必要があり、打つタイミングの指導には注意しなければならない。(2)開始量は?糖尿病治療ガイド2020-20213)には、2型糖尿病における持効型インスリン療法開始時の投与量の目安として、1日0.1~0.2単位/実測体重(kg)程度(4~8単位)と記載されている。血糖値が高いからといって、最初から大量に投与することは避けるべきである。(3)1日の注射回数は?外来導入する場合は、1日1回の持効型または混合型インスリン(配合注)から始めるのが、先生方にとっても、また患者さんにとってもやりやすいかと思われる。とくに最近は高齢の糖尿病患者が非常に多くなり、自己注射がおぼつかないケースも増えている中で、1日1回なら同居家族の方に見守ってもらったり、打ってもらったりすることができるからである。(4)デバイス(インスリン注入器)は?インスリン製剤のデバイスは大きく3つに分かれ、使い捨てのプレフィルド製剤(ペンタイプ)、カートリッジ製剤(万年筆タイプ)、バイアル製剤があるが、それぞれにメリットとデメリットがある。わが国においては、利便性や衛生的な観点から圧倒的にプレフィルド製剤が多く使われているが、費用負担も大きいので、医療費を気にする患者さんには希望を確認したほうがよい。(5)注射針は?現在、太さ・長さ・構造が異なる8製品が処方可能であるが、これに関しての使い分けはマニアックなため一部の専門医に任せるとして、いたって標準的な製品で十分である。これで患者さんの同意が得られれば、インスリン導入ができ目標血糖値に合わせて単位の調節を行っていくことになる。インスリン注射部位の皮膚病変に注意ここで一つ注意点を述べておくと、インスリンは現時点で注射製剤のみであり、個人的に使用上で最も重要な事象として、同一部位に繰り返し注射をすることで発生する皮膚病変に留意している。アミロイドの沈着したインスリンボール(右写真)と、脂肪が肥大したリポハイパートロフィーの2種類がある4)。このような腫瘤部への注射で、インスリンの効果が顕著に減少してしまう。そのため、インスリン自己注射手技の再確認時に腹部の状態も忘れずに確認しておくことが大切である(とくに原因不明のコントロール悪化時など)。「注射部位を毎回変えている」と話す患者さんの中には、左右交互にはしているものの、同一部位に注射しているケースも多々あるので注意が必要だ(再三再四言ってはいるが、どうしても打ちやすい場所が決まってくる、中には硬いところに打った方が痛くないなどと言う患者さんまでいる)。これは糖尿病専門医ですらよく陥る失敗であり、読者にもぜひ心に留めておいてほしい。わが国において、1981年にインスリン自己注射が保険適応となり、自宅でも投与可能となったものの、以前はよく「インスリンは最後の治療」などと言われていた。かつては患者さんから「インスリンを打った知り合いはすぐに亡くなってしまった。だから打ちたくない」などという言葉をよく聞いたものだったが、最近はめっきり聞かなくなった。これは、われわれ医療従事者やインスリンを使用している患者さん方の地道な情報発信により、インスリン治療の有用性が未使用の人々にもきちんと理解されてきたからであろう。同時に、インスリンの早期導入によって生命予後がよくなることも伝わっていると認識している。これからも、インスリンは糖尿病患者さんのよりよい治療薬としてますます活躍していくに違いない。人生100年時代、インスリンも100歳今もこれからも現役今宵はインスリン100歳生誕記念に際し、楽しく気ままに書かせていただいた。まだまだ書き足りないことがあるものの、この辺で宮崎が生んだ焼酎「百年の孤独」を飲みながら、筆をおくことにする。それでは、皆さん来年こそいい年であることを祈りましょう!1)Diabetes Control and Complications Trial Research Group. N Engl J Med. 1993 Sep 30;329:977-986.2)竹内 淳. レジデント2021(医学出版)Vol.14 No.2. [通巻132号]:6-16.3)日本糖尿病学会編著. 糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂;2020.4)Nagase T, et al. Am J Med. 2014;127:450-454.

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見逃してはならない“しびれ”とその部位は?【Dr.山中の攻める!問診3step】第9回

第9回 見逃してはならない“しびれ”とその部位は?―Key Point―しびれは重大な疾患の一つの症状のことがあるしびれの分布や部位から原因疾患を絞り込むことができる頻度が高い疾患は、症状の特徴を覚えておくと診断が容易である症例:68歳 女性主訴)右胸痛、呼吸苦現病歴)7日前、突然左指と左口唇がしびれたが数分で改善した。脳MRI検査を受けたが異常なし。昨夕から徐々に右胸痛と右背部痛が出現。体動時と深呼吸時に痛みは増悪。動くと息切れあり。本日、外出時に痛みの増悪を認め来院した。既往歴)COPD薬剤歴)なし社会歴)たばこ:20歳から45歳まで30本/日アルコール:飲まない経過)左指と左口唇のしびれからは視床の病変が連想される(手口感覚症候群)。視床では口唇と手指の感覚領域が近接して存在する息をすると胸が痛むという症状は胸膜に病変が及んでいることを示唆する胸部レントゲン写真で異常陰影を認めたので、胸部CT検査を行い原発性肺がん(S4) と右第7肋骨骨転移の診断となった肺がんのため過凝固となり手口感覚症候群を起こしたと考えられた◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!高齢者はしびれをよく訴える多発神経障害は臨床で遭遇する頻度が高い多発性単神経障害なら原因疾患を絞り込みやすい【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】見逃してはならないしびれかを考察する1)手口感覚症候群(視床の出血/梗塞)指先がしびれている時には、口もしびれていないか必ず確かめるWallenberg症候群(延髄外側症候群)病側の顔面温痛覚低下(V)+構音障害/嚥下障害(IX、X) + ホルネル症候群 + 小脳失調、反対側の体幹/上下肢の温痛覚低下(外側脊髄視床路)Guillain-Barre症候群数日から数週間で急速に進行する。カンピロバクター感染症による下痢が先行することがある。症状は下肢から始まる左右対称性弛緩麻痺、呼吸筋麻痺、自律神経障害(血圧変動、頻脈、徐脈)。感覚障害はなくてもよい。閉鎖孔ヘルニア患側大腿内側から下腿の痛み/しびれ(Howship-Romberg兆候)、やせ型の高齢女性に多いNumb chin syndrome顎がしびれる。悪性リンパ腫/乳がん/前立腺がんが三叉神経(V3下顎神経)に浸潤【STEP2-2】しびれの分布から考える多発神経障害(polyneuropathy)2)神経線維の長い足底から上方にしびれが進行。左右対称性<主な原因>DANG THERAPIST(ひどい療法士)*以下の各頭文字を表しているDM(糖尿病)Alcohol(飲酒)Nutritional(ビタミンB12、銅欠乏)Guillain-Barre(ギランバレー症候群)Toxic(中毒:重金属、薬剤)Hereditary(Charcot-Marie-Tooth)Renal(尿毒症)Amyloidosis(アミロイドーシス)Porphyria(ポルフィリン症)Infection(感染症:HIV、ライム病)Systemic(全身性:血管炎、サルコイドーシス、シェーグレン症候群)Tumor(腫瘍随伴症候群)多発性単神経障害(mononeuritis multiplex)いろいろな部位の単神経障害が左右非対称に進行糖尿病、血管炎、膠原病(SLE、関節リウマチ)、HIV【STEP3】部位から原因を鑑別する■母指~環指橈側のしびれ(正中神経支配)手根管症候群(最も頻度の高い末梢性絞扼神経障害)夜間に増悪、手を振ると軽快、リスクファクターは手を使う職業、甲状腺機能低下症、糖尿病、関節リウマチ、アミロイドーシス、末端肥大症、妊娠。猿手■環指尺側と小指のしびれ(尺骨神経支配)肘部管症候群変形性関節症、ガングリオン、スポーツ、小児期の骨折による外反肘が原因。鷲手変形■手背母指と示指のしびれ(橈骨神経支配)橈骨神経麻痺飲酒後に肘掛け椅子で寝て上腕内側を圧迫。下垂手■上肢のしびれ…頸椎症による神経障害3)神経根症頸部~肩甲骨部の痛み、デルマトームに沿った根性疼痛(しびれだけなら脊髄症)脊髄症手のしびれで発症し、手指が器用に動かせなくなる。10秒テスト: 手掌を下にしてできるだけ速く、グーとパーを繰り返す。10秒間で正常者では25~30回できる。胸郭出口症候群上肢のしびれ、肩/上肢/肩甲骨周囲の痛み、腕神経叢の障害■大腿外側のしびれ大腿外側皮神経痛体重増加、妊娠、きついベルトが原因。股関節の伸展/深い屈曲で症状増悪■腰痛+殿部や膝より末梢の下肢に放散痛3)椎間板ヘルニアSLR(straight leg raising)test陽性(感度80%、特異度40%)。95%はL5とS1の根が関与。膝蓋腱反射低下(L4)足関節/母趾背屈力低下(L5)アキレス腱反射低下/つま先立ちができない(S1)■下腿外側~足背のしびれ総腓骨神経麻痺右下肢外側腓骨頭での圧迫。外傷やギプス固定が原因。下垂足のため鶏様歩行■足底~つま先のしびれ足根管症候群内果後方の足根管で脛骨神経を圧迫閉塞性動脈硬化症下肢のしびれや痛み、冷感、間欠性跛行(休息で改善)ABI(ankle-brachial index)1.3<治療>原疾患の治療を行う。 <参考文献>1)塩尻俊明.非専門医が診る しびれ. 羊土社. 2018.2)Mansoor AM. Frameworks for Internal Medicine. 2019. p525-539.3)仲田和正. 手・足・腰診療スキルアップ. シービーアール. 2004.

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英語で「眠気が出ます」は?【1分★医療英語】第7回

第7回 英語で「眠気が出ます」は?Are there any side effects of this med?(何か副作用はありますか?)This medication may cause drowsiness.(服用後、眠気が出る可能性があります)《例文1》I feel drowsy during the daytime.(昼間に眠気がひどいです)《例文2》When did you start feeling drowsiness?(眠気の症状はいつから始まりましたか?)《解説》「眠気」は“drowsiness”や“sleepiness”で表現します(文語では“somnolence”を使うこともあります)。これが「疲労」となると“tiredness”や“fatigue”(文語では倦怠感・不快感として“malaise”)、「だるい」「ぼーっとする」は“sluggish”(文語では“lethargic”)など、似たような症状でも多くの単語があります。現場では、患者のさまざまな表現を聞き取り、チャートには文語を使って書くなど、使い分けをしています。また、日本語は主語を省略しても成り立つので、日本語から英語へ直訳しようとすると、「あれ?」となることも多くあります。「眠気が出る可能性がある」を“There is a possibility…”と一字一句を訳すのではなく、会話例のように“The medication(この服薬)”を主語にする、または“You may feel drowsiness.”にするなど、直訳ではなく、自分が知っている単語を使って状況を説明するように心掛けると、さらにスムーズに英語が出てくるようになるかもしれません。講師紹介

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特発性基底核石灰化症〔IBGC:idiopathic basal ganglia calcification〕

1 疾患概要■ 概念・定義特発性基底核石灰化症(idiopathic basal ganglia calcification:IBGC)は従来、ファール病と呼ばれた疾患で、歴史的にも40近い疾患名が使われてきた経緯がある。欧米では主にprimary familial brain calcification(PFBC)の名称が用いられることが多い。基本は、脳内(両側の大脳基底核、小脳歯状核など)に生理的な範囲を超える石灰化を認める(図1)、その原因となる生化学的異常や脳内石灰化を来す基礎疾患がないことである。最近10年間で、原因遺伝子として、4つの常染色体優性(AD)遺伝子(SLC20A21)、PDGFRB2)、PDGFB3)、XPR14))、2つの常染色体劣性(AR)遺伝子(MYORG5)、JAM26))が報告された。日本神経学会で承認された診断基準が学会のホームページに公開されている(表)。図1  IBGCの典型的な頭部CT画像画像を拡大する69歳・男性。歯状核を中心とした小脳、両側の大脳基底核に加え、視床、大脳白質深部、大脳皮質脳回谷部などに広範な石灰化を認める。表 特発性基底核石灰化症診断基準<診断基準>1.頭部CT上、両側基底核を含む病的な石灰化を認める。脳以外には病的な石灰化を認めないのが特徴である。病的とする定義は、大きさとして斑状(長径で10mm以上のものを班状、10mmm未満は点状)以上のものか、あるいは点状の両側基底核石灰化に加えて小脳歯状核、視床、大脳皮質脳回谷部、大脳白質深部などに石灰化を認めるものと定義する。注1高齢者において生理的石灰化と思われるものは除く。注2石灰化の大きさによらず、原因遺伝子が判明したものや、家族性で類似の石灰化を来すものは病的石灰化と考える。2.下記に示すような脳内石灰化を二次的に来す疾患が除外できる。主なものとして、副甲状腺疾患(血清カルシウム(Ca)、無機リン(Pi)、iPTHが異常値)、偽性副甲状腺機能低下症(血清Ca低値)、偽性偽性副甲状腺機能低下症(Albright骨異栄養症)、コケイン(Cockayne)症候群、ミトコンドリア病、エカルディ・グティエール(Aicardi Goutieres)症候群、ダウン(Down)症候群、膠原病、血管炎、感染(HIV脳症など、EBウイルス感染症など)、中毒・外傷・放射線治療などを除外する。注1iPTH:intact parathyroid hormone インタクト副甲状腺ホルモン注2小児例では、上記のような先天代謝異常症に伴う脳内石灰化である可能性も推測され、全ゲノム解析などの遺伝子検索が望まれる。3.下記に示すような 緩徐進行性の精神・神経症状を呈する。頭痛、精神症状(脱抑制症状、アルコール依存症など)、てんかん、精神発達遅延、認知症、パーキンソニズム、不随意運動(PKDなど)、小脳症状などの精神・神経症状 がある。注1PKD:paroxysmal kinesigenic dyskinesia 発作性運動誘発性ジスキネジア注2無症状と思われる若年者でも、問診などにより、しばしば上記の症状を認めることがある。神経学的所見で軽度の運動機能障害(スキップができないなど)を認めることもある。4.遺伝子診断これまでに報告されているIBGCの原因遺伝子は常染色体優性遺伝形式ではSLC20A2、PDGFRB、PDGFB、XPR1、常染色体劣性遺伝形式ではMYORG、JAM2があり、これらに変異を認めるもの。5.病理学的所見病理学的に脳内に病的な石灰化を認め、DNTCを含む他の変性疾患、外傷、感染症、ミトコンドリア病などの代謝性疾患などが除外できるもの。注1 DNTC:Diffuse neurofibrillary tangles with calcification(別名、小阪-柴山病)この疾患の確定診断は病理学的診断であり、生前には臨床的にIBGCとの鑑別に苦慮する。●診断Definite1、2、3、4を満たすもの。1、2、3、5を満たすもの。Probable1、2、3を満たすもの。Possible1、2を満たすもの。日本神経学会ホームページ掲載のものに、下線を修正、追加(改訂申請中)してある。■ 疫学2011年に厚生労働省の支援により本症の研究班が立ち上がった。研究班に登録されている症例は、2021年現在で、家族例が40家系、孤発例が約200例である。症例の中には、頭部外傷などの際に撮影した頭部CT検査で偶発的にみつかったものもあり、実際にはこの数倍の症例は存在すると推定される。■ 病因2012年に中国から、IBGCの原因遺伝子としてリン酸トランスポーターであるPiT2をコードするSLC20A2の変異がみつかったことを契機に、上記のように4つの常染色体優性遺伝子と2つの常染色体劣性遺伝子が連続して報告されている。また、症例の中には、過去に全身性エリテマトーデス(SLE)の既往のある症例、腎透析を受けている症例もあり、2次性とも考えられるが、腎透析を受けている症例すべてが著明な脳内石灰化を呈するわけではなく、疾患感受性遺伝子の存在も示唆される。感染症も含めた基礎疾患の関与によるもの、外傷、薬剤、放射線など外的環境因子の作用も推測される。原因遺伝子がコードする分子の機能から、リン酸ホメオスタシスの異常、また、周皮細胞、血管内皮細胞とアストロサイトの関係を基軸とした脳血管関門の破綻がこの石灰化の病態、疾患の発症機構の基盤にあると考えられる。■ 症状症状は中枢神経系に限局するものである。無症状からパーキンソン症状など錐体外路症状、小脳症状、精神症状(前頭葉症状など)、認知症を来す症例まで極めて多様性がある。発症年齢も30~60歳と幅がある。自験例の全202例の検討では、パーキンソニズムが26%、認知機能低下26%、精神症状21%、てんかん14%、不随意運動4%であった7)。不随意運動の内訳はジストニアが4例、ジスキネジアが2例、発作性運動誘発性ジスキネジア(Paroxysmal kinesigenic dyskinesia:PKD)が2例であった。わが国では諸外国と比して、不随意運動の頻度が低かった8)。必ずしも遺伝子変異によって特徴的臨床所見があるわけではない。国内外でもSLC20A2遺伝子変異患者ではパーキンソニズムが最も多く、PDGFB遺伝子変異では頭痛が多く報告されている。筆者らの検索でも、PDGFB変異患者では頭痛の訴えが多く、患者の語りによる質的研究でも、QOLを低下させている一番の原因であった。PKDはSLC20A2遺伝子変異患者で多く報告されている。筆者らはIBGC患者、とくにSLC20A2変異患者の髄液中の無機リン(Pi、リン酸)が高いことを報告している9)。頭部CT画像にも各遺伝子変異に特徴的な画像所見はないが、JAM2遺伝子変異では、他ではあまりみられない橋などの脳幹に石灰化がみられることがある。■ 分類原因遺伝子によって分類される。遺伝子の検索がなされた家族例(FIBGC)では、40%がSLC20A2変異10)、10%がPBGFB変異11)で、他XPR-1変異が1家系、PDGFRB変異疑いが1家系で、この頻度は国内外でほぼ一致している。■ 予後緩徐進行性の経過を示すが、症状も多彩であり、詳しい予後、自然歴を調べた論文はない。石灰化の進行を評価するスケール(total calcification score:TCS)を用いて、遺伝子変異では、PDGFRB、PDGFB、SLC20A2の順で石灰化の進行が速く、さらに男性、高齢、男性でその進行速度が速くなるという報告がある12)。原因遺伝子、二次的な要因によっても、脳内石灰化の進行や予後は変わってくると推定される。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)基本的には原因不明の脳内に限った石灰化症である。National Center for Biotechnology Information(NCBI)には、以下のPFBCの診断基準が挙げられている。(1)進行性の神経症状(2)両側性の基底核石灰化(3)生化学異常がない(4)感染、中毒、外傷の2次的原因がない(5)常染色体優性遺伝の家族歴がある常染色体優性遺伝形式の原因遺伝子として、すでにSLC20A2、PDGFB、PDGFRB、XPR1の4遺伝子が報告され、現在、常染色体劣性遺伝形式の原因遺伝子MYORG、JAM2がみつかってきており、上記の(5)は改訂が必要である。わが国では孤発例の症例も多く、疾患の名称に関する課題はあるが、診断は前述の「日本神経学会承認の診断基準」に準拠するのが良いと考える(上表)。鑑別診断では、主なものとして、副甲状腺疾患(血清カルシウム、Pi、iPTHが異常値)、偽性副甲状腺機能低下症(血清カルシウム低値)、偽性偽性副甲状腺機能低下症(オルブライト骨異栄養症)、コケイン症候群、ミトコンドリア脳筋症(MELASなど)、エカルディ・グティエール症候群(AGS)、ダウン症候群、膠原病、血管炎、感染(HIV脳症など、EBウイルス感染症など)、中毒・外傷・放射線治療などを除外する。IBGCの頭部CT画像は、タツノオトシゴ状、勾玉状などきれいな石灰化像を呈することが多いが、感染症後などの二次性の場合は、散発した乱れた石灰化像を呈することが多い。後述のDNTCの病理報告例の頭部CT所見は、斑状あるいは点状の石灰化である。IBGCは小児期、青年期は大方、症状は健常である。小児例では、AGSを始め、多くは何らかの先天代謝異常に伴う脳内石灰化症、脳炎後など主に二次性の脳内石灰化症が示唆されることが多い。今後の病態解明のためには、とくに家族例、いとこ婚などの血族結婚の症例を含め、エクソーム解析や全ゲノム解析などの遺伝子検索が望まれる。高齢者の場合は、淡蒼球の生理的石灰化、また、初老期以降で認知症を呈する“石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病”(diffuse neurofibrillary tangles with calcification:DNTC、別名「小阪・柴山病」)が鑑別に上がる。DNTCの確定診断は、病理学的所見に基づく。しかし、最近10年間の班研究で調べた中ではDNTCと病理所見も含めて診断しえた症例はなかった。脳内石灰化をみた場合の診断の流れを図2に提示する。図2 脳内石灰化の診断のフローチャート画像を拡大する脳内に石灰化をみた場合のフローチャートを示す。今後、病態機構によって、漸次、更新されるものである。全体をPFBCとして包括するには無理がある。名称として現在は、二次性のものを除外して、全体をPBCとしてまとめておくのが良いと考える。【略号】(DNTC:Diffuse neurofibrillary tangles with calcification、FIBGC:Familial Idiopathic Basal Ganglia Calcification、IBGC:Idiopathic Basal Ganglia Calcification、PBC:Primary Brain Calcification)3 治療 (治験中・研究中のものも含む)根本的な治療法はまだみつかっていない。遺伝子変異を認めた患者の疾患特異的iPS細胞を用いて、PiT2、PDGFを基軸に創薬の研究を進めている。対症療法ではあるが、不随意運動や精神症状にクエチアピンなど抗精神病薬が用いられている。また、病理学的にもパーキンソン病を合併する症例があり、抗パーキンソン病薬が効果を認め、また、PKCではカルバマゼピンが効果を認めている。4 今後の展望中国からAR遺伝形式の原因遺伝子MYORG、JAM2が見出され、今後さらなるARの遺伝子がみつかる可能性がある。また、疾患感受異性遺伝子、環境因子の関与も想定される。IBGC、とくにSLC20A2変異症例では根底にリン酸ホメオスタシスの異常があることがわかってきた。ここ数年で、Pi代謝に関する研究が大いに進み、生体におけるPi代謝にはFGF23が中心的役割を果たす一方、石灰化にはリン酸とピロリン酸(二リン酸, pyrophosphate:PP)の比が重要である指摘やイノシトールピロリン酸 (inositol pyrophosphate:IP-PP)が生体内のリン酸代謝に重要であることが注目されている。最近では細胞内のPiレベルの調節にはイノシトールポリリン酸 (inositol polyphosphate: InsPs)、その代謝にはイノシトール-ヘキサキスリン酸キナーゼ、(inositol-hexakisphospate kinase:IP6K)がとくに重要で、InsP8が細胞内の重要なシグナル分子として働き、細胞内Pi濃度を制御するという報告がある。また、SLC20A2-XPR1が基軸となって、クロストークを起こすことによって、細胞内のPiやAPTのレベルを維持する作用があることも明らかとなってきた。生体内、細胞内でのPi代謝の解明が大きく進展している。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。IBGCでは通常は小児期には症状を呈さない。小児期における脳内石灰化の鑑別では小児神経内科医へのコンサルトが必要である。精神発達遅滞を呈する症例あり、脳内石灰化の視点から、多くの鑑別すべき先天代謝異常症がある。とくに、MELAS、AGS、副甲状腺関連疾患、コケイン症候群、Beta-propeller protein-associated Neurodegeneration (BPAN、 SENDA)などは重要である。また、家族例では、IRUD-P(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases in Pediatrics:小児希少・未診断疾患イニシアチブ)などを活用したエクソーム解析や全ゲノム解析などの遺伝子解析が望まれる。   そのほか、症例の中には、統合失調症様や躁病などの精神症状が前景となる症例もある。これらはある一群を呈するかは今後の課題であるが、精神科医との連携が必要なケースもまれならずある。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本神経学会診断基準(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)NCBI GeneReviews Primary Familial Brain Calcification Ramos EM, Oliveira J, Sobrido MJ, et al. 2004 Apr 18 [Updated 2017 Aug 24].(海外におけるPFBCの解説、医療従事者向けのまとまった情報)●謝辞本疾患の研究は、神経変性疾患領域の基盤的調査研究(20FC1049)、新学術領域(JP19H05767A02)の研究助成によってなされた。本稿の執筆にあたり、貴重なご意見をいただいた岐阜大学脳神経内科 下畑 享良先生、林 祐一先生、国際医療福祉大学 ゲノム医学研究所 田中 真生先生に深謝申し上げます。1)Wang C, et al. Nat Genet. 2012;44:254–256.2)Nicolas G, et al. Neurology. 2013;80:181-187.3)Keller A, et al. Nat Genet. 2013;45:1077-1082.4)Legati A, et al. Nat Genet. 2015;47:579-581.5)Yao XP et al. Neuron. 2018;98:1116-1123. 6)Cen Z, et al. Brain. 2020;143:491-502.7)山田 恵ほか. 臨床神経. 2014;54:S66.8)山田 恵ほか. 脳神経内科. 2020;92:56-62.9)Hozumi I, et al. J Neurol Sci. 2018;388:150-154.10)Yamada M, et al. Neurology. 2014;82:705-712.11)Sekine SI, et al. Sci Rep. 2019;9:5698.12)Nicolas G, et al. Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 2015;168:586-594.公開履歴初回2021年12月2日

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SLEに待望の治療薬アニフロルマブが発売/アストラゼネカ

 アストラゼネカ株式会社は、全身性エリテマトーデス(SLE)の治療薬アニフロルマブ(商品名:サフネロー)点滴静注300mgを11月25日より販売開始した。アニフロルマブは、完全ヒト型モノクローナル抗体であり、I型インターフェロンα受容体のサブユニット1(IFNAR1)を標的とする治療薬。用量調整が不要で、4週間ごとに1回30分以上かけて投与する点滴静注製剤。アニフロルマブ投与者で観察期間52週間の全例調査を実施 SLEは、免疫系が体内の正常な組織を攻撃する自己免疫疾患。慢性的であり、さまざまな臨床症状を伴う複雑な疾患であるため、多くの臓器に影響を及ぼし、疼痛、発疹、倦怠感、関節の腫れ、発熱など幅広い症状の原因となる。SLE患者の50%以上は、本疾患自体あるいは既存の治療薬が原因の恒久的な臓器障害を引き起こし、症状が増悪や死亡リスクの上昇につながる。世界中に少なくとも500万人がある種のループス疾患に罹患していると推定されている。 今回発売されたアニフロルマブは、発売後600例にわたって観察期間52週間の全例調査を実施し、既存治療で効果不十分なSLE患者を対象に、アニフロルマブの製造販売後の使用実態下における長期の安全性および有効性に関する情報収集および評価を実施する予定。なお、アニフロルマブの投与を中止した場合(再来院しなくなった場合を含む)はその日付および理由を確認し、最終投与後8週間を目安に、可能な限り観察を行う。アニフロルマブの概要製品名:サフネロー点滴静注300mg一般名:アニフロルマブ(遺伝子組換え)剤形:注射剤(バイアル)効能または効果:既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス用法および用量:通常、成人にはアニフロルマブ(遺伝子組換え)として、300mgを4週間ごとに30分以上かけて点滴静注製造販売承認:2021年9月27日発売日:2021年11月25日製造販売元:アストラゼネカ株式会社

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英語で「予防接種を受けましたか」は?【1分★医療英語】第3回

第3回 英語で「予防接種を受けましたか」は?Did you receive a measles shot as a child?(子供のころに麻疹の予防接種を受けましたか?)Yes, I did. And I think all my vaccines are fully up-to-date.(はい、受けました。必要なワクチンはすべて受けていると思います)《例文1》I’ll get vaccinated against the flu tomorrow.(明日、インフルエンザのワクチンを受けます)《例文2》The patient has just received the second COVID shot/jab.(その患者は2回目のコロナワクチンを接種したばかりだ)《解説》予防接種を受ける行為やプログラムのことを“vaccination”と表現します。日本でもよく聞く“vaccine”のほうは、予防接種時に投与する薬剤そのものを指します。また、簡易的な表現として米国では“shot”、英国では“jab”という表現もよく使われます。注射全般を指す“injection”も文脈次第でワクチンを意味することがあり、「予防」という意味の“protection”もワクチンを指すことがあります。また、抗体検査をしてワクチンの効果を確認したり、必要なワクチン接種を追加接種したりすることを“To update one’s vaccine status”ということがあります。“Which of my vaccines need to be updated?”(受け直したほうがいい予防接種はありますか?)などのように使います。講師紹介

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うつ病の寛解に対する夜型生活改善の影響

 夜型生活は、うつ病のより悪いアウトカムと関連している。時間生物学的治療による夜型生活の改善の可能性や、その結果がうつ病の長期アウトカムに及ぼす影響については、よくわかっていない。これらの影響を明らかにするため、香港中文大学のJoey Wy Chan氏らは、うつ病治療における夜型生活改善効果について検討を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2021年9月21日号の報告。 5週間の補助的光療法のランダム化比較試験に参加した非季節性単極性うつ病で夜型生活の成人患者91例を対象とし、そのデータを分析した。夜型生活の定義は、朝型夜型質問票(MEQ)スコア41以下とした。治療5週目でのMEQスコア41超を達成した場合を夜型生活の改善とし、治療後5ヵ月目までMEQスコア41超を維持した場合を夜型生活の持続的な改善と定義した。 主な結果は以下のとおり。・治療5週目に夜型生活の改善が認められた患者は33例(36%)であった。・一般化推定方程式モデルでは、治療5週目の夜型生活の改善は、5ヵ月後のうつ病寛解の2倍増を予測していた(OR:2.61、95%CI:1.20~5.71、p=0.016)。・夜型生活の持続的な改善が認められた患者は25例(75.7%)であり、5ヵ月後のうつ病寛解の可能性が高かった(OR:3.18、95%CI:1.35~7.50、p=0.008)。 著者らは「夜型生活のうつ病患者に対する5週間の時間生物学的治療は、約3分の1の患者で夜型生活を改善し、5ヵ月後の寛解の可能性が高まることが示唆された」としている。

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中等症~重症喘息へのitepekimabの有効性と安全性~第II相試験/NEJM

 中等症~重症の喘息患者において、抗IL-33モノクローナル抗体itepekimabはプラセボと比較し、喘息コントロール喪失を示すイベントの発生率を低下させ、肺機能を改善することが、米国・National Jewish HealthのMichael E. Wechsler氏らによる第II相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ比較対照試験で示された。itepekimabは、上流のアラーミンであるIL-33を標的とした新規開発中のモノクローナル抗体である。これまで、喘息患者におけるitepekimab単剤療法、あるいはデュピルマブとの併用療法の有効性と安全性は不明であった。NEJM誌2021年10月28日号掲載の報告。itepekimab単剤またはデュピルマブとの併用をプラセボと比較 研究グループは、吸入ステロイド薬と長時間作用性β刺激薬(LABA)の投与を受けている中等症~重症の成人喘息患者296例を、itepekimab(300mg)群、itepekimab+デュピルマブ併用療法(いずれも300mg)群、デュピルマブ(300mg)群、プラセボ群に、1対1対1対1の割合に無作為に割り付け、いずれも2週ごとに12週間皮下投与した。無作為化後、4週時にLABAを中止し、6~9週に吸入ステロイドを漸減した。 主要評価項目は、喘息コントロール喪失(Loss of asthma control:LOAC)を示すイベント(朝の最大呼気流量が2日連続でベースラインから30%以上減少、電子日誌で報告された短時間作用性β2刺激薬の追加吸入が2日連続でベースラインから6回以上増加、全身性ステロイド投与を要した喘息増悪、直近の吸入ステロイドの投与量が4倍以上増加、または喘息による入院または救急外来受診)で、itepekimab群または併用療法群をプラセボ群と比較した。 副次評価項目およびその他の評価項目は、肺機能、喘息コントロール、QOL、タイプ2バイオマーカー、安全性などであった。itepekimab単剤で喘息コントロール喪失のイベント発生率が低下し、肺機能が改善 12週間におけるLOACのイベント発生率は、itepekimab群22%、併用療法群27%、デュピルマブ群19%、プラセボ群41%であった。プラセボ群に対するオッズ比は、itepekimab群が0.42(95%信頼区間[CI]:0.20~0.88、p=0.02)、併用療法群が0.52(0.26~1.06、p=0.07)、デュピルマブ群が0.33(0.15~0.70)であった。 気管支拡張薬使用前の1秒量は、プラセボ群と比較しitepekimab群ならびにデュピルマブ群では増加したが、併用療法群では増加しなかった。itepekimabの投与により、プラセボ群と比較し喘息コントロールとQOLを改善し、平均血中好酸球数が著明に減少した。 有害事象の発現率は、itepekimab群70%、併用療法群70%、デュピルマブ群66%、プラセボ群70%と、4つの治療群で類似していた。

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ソトロビマブ、高リスクの軽~中等症COVID-19への第III相中間解析/NEJM

 高リスクの軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体ソトロビマブは、疾患進行リスクを軽減することが示された。安全性シグナルは確認されなかった。カナダ・William Osler Health CentreのAnil Gupta氏らが、現在進行中の第III相多施設共同無作為化二重盲検試験「COMET-ICE試験」の、事前規定の中間解析の結果を報告した。COVID-19は、高齢および基礎疾患のある患者で入院・死亡リスクが高い。ソトロビマブは疾患早期に投与することで高リスク患者のCOVID-19の疾患進行を防ぐようデザインされた。NEJM誌オンライン版2021年10月27日号掲載の報告。24時間超入院・29日未満の死亡を比較 研究グループは、米国、カナダ、ブラジル、スペインの4ヵ国37ヵ所で、症状発症から5日以内で、疾患進行リスクが1つ以上認められた、入院前COVID-19患者を1対1の割合で無作為に2群に分け、一方にはソトロビマブ(500mg)を、もう一方にはプラセボをそれぞれ静脈投与した。 有効性の主要アウトカムは、24時間超のあらゆる入院または無作為化後29日以内の死亡だった。 試験は、2020年8月27日に開始され、2021年3月4日まで追跡された。本報告は、事前規定の中間解析の結果である。入院・死亡リスクはソトロビマブ群で8割強低下 中間解析でITT解析の対象とした被験者は583例で、ソトロビマブ群が291例、プラセボ群が292例だった。そのうち、疾患進行により入院または死亡に至ったのは、プラセボ群21例(7%)だったのに対しソトロビマブ群は3例(1%)だった(相対リスクの低下:85%、97.24%信頼区間:44~96、p=0.002)。 プラセボ群のうち5例が、集中治療室(ICU)で治療を受け、うち1例は無作為化後29日までに死亡した。 安全性については、868例(ソトロビマブ群430例、プラセボ群438例)を対象に評価した。報告された有害イベントは、ソトロビマブ群17%、プラセボ群19%、重篤有害イベントはそれぞれ2%と6%で、プラセボ群よりソトロビマブ群で低率だった。

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