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asciminib、新規診断の慢性期CMLに有効/NEJM

 新規に慢性期の慢性骨髄性白血病(CML)と診断された患者の治療において、ABLミリストイルポケットを標的とするBCR::ABL1阻害薬asciminibは、担当医が選択した第2世代チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)やイマチニブと比較して、分子遺伝学的大奏効(MMR)の達成割合が有意に高く、安全性プロファイルも良好であることが、ドイツ・イエナ大学病院のAndreas Hochhaus氏らASC4FIRST Investigatorsが実施した「ASC4FIRST試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月31日号に掲載された。第1/2世代TKIと比較する国際的な無作為化第III相試験 ASC4FIRST試験は日本を含む国際的な多施設共同非盲検無作為化第III相試験であり、2021年11月~2022年12月に参加者の無作為化を行った(Novartisの助成を受けた)。 年齢18歳以上、登録前3ヵ月以内に新規の慢性期CMLと診断された患者405例を登録した。これらの患者を、asciminibの投与を受ける群に201例、担当医が選択したTKI(第1世代TKIイマチニブまたは第2世代TKI[ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ])の投与を受ける群に204例(イマチニブ群102例、第2世代TKI群102例)を無作為に割り付けた。 主要評価項目は、48週時点でのMMR(BCR::ABL1IS≦0.1%)とし、asciminibと担当医選択TKI、asciminibとイマチニブの比較を行った。第2世代TKIとの比較では差がない 追跡期間中央値は、asciminib群が16.3ヵ月、担当医選択TKI群は15.7ヵ月であった。 48週時のMMRの達成割合は、asciminib群が67.7%、担当医選択TKI群は49.0%であり、イマチニブ群との比較ではasciminib群が69.3%、イマチニブ群は40.2%であった。 これらMMR達成割合のasciminib群と担当医選択TKI群の群間差は18.9ポイント(95%信頼区間[CI]:9.6~28.2、補正後両側p値<0.001)、asciminib群とイマチニブ群の群間差は29.6ポイント(16.9~42.2、p<0.001)であり、いずれもasciminib群で有意に優れた。 一方、asciminib群と第2世代TKI群の比較では、48週時のMMR達成割合はそれぞれ66.0%および57.8%と、両群間に有意な差を認めなかった(群間差:8.2ポイント、95%CI:-5.1~21.5)が、この比較は主要評価項目ではなかった。Grade3以上、投与中止に至った有害事象の頻度は低い 安全性プロファイルは、イマチニブや第2世代TKIに比べasciminib群で良好であった。Grade3以上の有害事象および試験薬の投与中止の原因となった有害事象の頻度は、イマチニブ(それぞれ44.4%、11.1%)、第2世代TKI(54.9%、9.8%)と比較してasciminib群(38.0%、4.5%)で低かった。また、試験薬に関連した死亡例は認めなかった。 著者は、「慢性期CMLの1次治療の選択は微妙であり、患者の目標やその他の患者固有の要因によって異なる。本試験では、無作為化前のTKIの選択は患者の希望を考慮して担当医が行ったため、共有意思決定が可能であった」とまとめ、「asciminibの有益性をさらに明らかにするには、長期の追跡調査を要する」としている。

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セマグルチドの減量効果を遺伝子検査で予測

 GLP-1受容体作動薬のセマグルチドを使い始めて数週間で減量に成功した人を見て、同薬による治療を開始したあなた。ところが体重計の針は期待したほど下がらない。なぜ? 米国消化器病週間(DDW2024、5月18~21日、ワシントン)で発表された新たな研究によると、その違いには遺伝子が関与しているようだ。 過去にも、セマグルチドによって体重が20%以上減る人がいる一方で、約7人に1人は1年以上使用しても5%以上は減らないという研究結果が報告されており、セマグルチドの減量効果には個人差があることが知られている。その個人差を、遺伝子検査によって事前に知ることができるようになるかもしれない。 この検査は、米メイヨー・クリニックの研究者らによって開発され、昨年その研究者らが設立したPhenomix Sciences社が、「MyPhenome」という名称でライセンスを取得した。CNNの報道によると、価格は350ドルで医家向けに提供される。 主任研究者のMaria Daniela Hurtado Andrade氏は、同社発のリリースの中で、「われわれのデータは、肥満者は個々に異なる遺伝的・生物学的背景を持っていて、肥満の改善には個別化された治療が重要である可能性を示している」と述べている。また、研究グループの一員である同クリニックのAndres Acosta氏は、「この遺伝子検査によって、体重を5%以上減らせられるか否かを95%の精度で予測可能だ」と、CNNの取材に対して語っている。同氏は、「セマグルチドの使用前に治療効果を知ることができれば、時間とコストを節約できる可能性がある。同薬は安価とは言えず、必ずしも保険でカバーされるとは限らないため、自己負担額が高額になる場合もある」とも述べている。 開発された新たな検査は、GLP-1のシグナル伝達経路に関連する遺伝子の変異を調べて、セマグルチドによる空腹感への影響を予測する。この検査の結果が陽性の人は、セマグルチドにシグナルが反応するのに対して、陰性の人は反応が弱く、空腹感が抑制されにくいという。 同クリニックで減量治療を受けた84人の血液または唾液検体を用いた小規模な研究から、この検査が陽性だった人はセマグルチド使用開始1年後に、平均19.5%の減量を達成していたことが分かった。これは、陰性だった人の減量幅である10%のほぼ2倍に相当する。 なお、重要なこととして、この新しい研究の結果は査読システムのある医学誌に未発表であるため、予備的なものと見なす必要がある。Acosta氏は、「薬剤と同じように、有用性を検討するためのゴールドスタンダードである、プラセボ対照無作為化二重盲検試験で検証する必要がある。ただ、われわれが既に行った研究も、減量治療が行われた時点では陽性か陰性か分かっていなかったため、実質的に盲検化はなされていた」としている。

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古代人にも動脈硬化、ミイラの調査で判明

 心臓病といえば現代生活の副産物だと思われがちだ。しかし、4,000年以上に及ぶ7つの異なる文化圏の成人のミイラのCT画像を調査した結果、3分の1以上のミイラに動脈硬化の痕跡が見つかり、心臓病が何世紀にもわたって人類を苦しめてきた疾患であることが明らかになった。米セントルークス・ミッドアメリカ心臓研究所のRandall Thompson氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に5月28日掲載された。 この研究では、世界中の成人のミイラのCT画像データを用いて、動脈硬化の有無を調べた。動脈硬化は、動脈と予測される場所にカルシウムの沈着が見られる場合を「ほぼ確実な動脈硬化」、識別可能な動脈の壁にカルシウムの沈着が見られる場合を「確実な動脈硬化」と見なした。調査対象のミイラは、古代エジプト人(161体)、低地の古代ペルー人(54体)、ボリビア高地の古代アンデス人(3体)、19世紀のアリューシャン列島のアレウト族(4体)、16世紀のグリーンランドのイヌイット(4体)、古代プエブロ族(5体)、中世のゴビ砂漠の牧畜民(4体)の7つの文化圏に由来するものに、19世紀のアフリカ系米国人(1体)とオーストラリアの先住民(1体)も加えた計237体であった。これらのミイラの死亡時の平均年齢は40±11.6歳で、58.6%(139体)が男性だった。 調査の結果、全ての文化圏に属する89体(37.6%)のミイラで「確実な動脈硬化」、または「ほぼ確実な動脈硬化」が確認されることが明らかになった。動脈硬化が認められる場所を多い順に並べると、大動脈(51体、21.5%)、腸骨-大腿動脈(49体、20.7%)、膝窩-脛骨動脈(38体、16%)、頸動脈(33体、14%)、冠動脈(9体、0.4%)であった。一方、男性と女性の間(38.1%対38.5%、P=0.36)や、エジプト人と非エジプト人(上流階級に属さない者が多い)との間(39.1%対38.5%、P=0.48)には、動脈硬化が見つかったミイラの割合に有意な差は認められなかった。 Thompson氏は、「古いものでは紀元前2,500年以前に遡る全ての時代、全ての文化圏のミイラにおいて、男女ともに、上流階級の人物であるか否かにかかわりなく、動脈硬化が認められた」とし、「これは、動脈硬化が現代の生活習慣により引き起こされる症状ではないという、われわれが以前の研究で得た知見をさらに裏付ける結果だ」と述べている。 研究グループは、「この結果は、人間には生まれつき動脈硬化のリスクがあることを示している」との見方を示している。またThompson氏は、「この研究は、喫煙、座位で過ごすことの多い生活、栄養バランスの悪い食事などの現代人の抱える心血管系のリスク因子が、加齢による自然なリスク増加に上乗せする形で動脈硬化の程度と影響を増大させる可能性があることを示している。だからこそ、コントロール可能なリスク因子をきちんとコントロールすることが重要なのだ」と話している。

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クラウドサービス利用時に留意すべきサイバーセキュリティーのポイント【サイバー攻撃の回避術】第12回

オンライン問診や遠隔画像診断などの周辺システム、オンライン診療システム、職員の勤怠管理用システムなどは、大病院も含めクラウドサービスが当たり前の状況となっていく。この状況を踏まえ、医療者一人ひとりがサイバーリテラシーを磨く必要がある。今回は、今後、医療機関で急速に普及が進むと思われるクラウドサービスのサイバーセキュリティーについて概説します。クラウドサービスは、医療以外の業界では2010年代から急速に普及しています。ハードウェア導入などに伴う初期費用が抑えられること、導入後すぐにサービス利用が開始できることなどのメリットが普及の理由ですが、一方で医療業界においては、クラウド(インターネット)に接続することに関するアレルギーが存在したため、なかなか普及してこなかった現実があります。しかしながら、2021~23年に発生した医療機関のランサムウェア被害において、クラウド型の電子カルテは一件も被害を受けていないこと(表1)、医師の働き方改革の推進等に伴うビーコンを用いたクラウド型の勤怠管理システムの導入などを背景に、クラウド型サービスの導入が遅ればせながら始まっています。(表1)2021~23年の医療機関のランサムウェア被害一覧と課題[疑い例・未公表例含む]画像を拡大するさらに厚生労働省が医療DX推進のロードマップ1)の中で明確にクラウド型システムの推進と閉域網の見直しを打ち出したのも、追い風となっていると思われます。クラウドサービスのサイバーセキュリティークラウドサービスの使用には不正アクセスや情報漏えいなどのリスクがあるため、利用する医療機関は十分な対策を講じることが大切です。クラウドはインターネット経由でサービスを使用するため、自社のサーバにデータを保管するオンプレミス型よりもセキュリティーレベルを不安視する意見がありました。しかし、ここ数年でクラウドサービス利用者が増加したこともあり、サービスプロバイダ各社はセキュリティー対策に非常に力を入れています。専門家のさまざまな知見を集結させた高度なセキュリティーを用意しているため、現在においてクラウドはオンプレミスと比較して、遜色ないか場合によってはより高いセキュリティー品質が保たれています。ただし、クラウドサービスのセキュリティーがいくら高レベルであってもリスクは存在します。利用者は十分なセキュリティー対策を講じなければなりません。とくにクラウドサービスの構築環境をほかのユーザと共同利用するパブリッククラウドは、不特定多数がインターネット経由でアクセスできるためサイバー攻撃のリスクがあります。セキュリティー対策を実施しないと、クラウド環境に保存しているデータが盗まれる可能性があるため注意が必要です。クラウドセキュリティーの実施の詳細については、経済産業省の「クラウドサービス利用のための情報セキュリティマネジメントガイドライン」2)および総務省の「クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドライン」3)が参考になります。それらを基に、ここでは具体的に以下の5つのリスクについて解説します。1.不正アクセス2.サイバー攻撃3.情報漏洩4.データ消失5.シャドーIT1.不正アクセスとは、アクセス権限を持たない第三者がWebシステムやサーバ内部に侵入する攻撃です。クラウドサービスはインターネット上にログイン画面が公開されているため、IDやパスワードが流出すると容易にアクセスされてしまいます。とくに業務用のID/パスワードをほかのサイトのログインに流用している場合、そちらから漏えいしたID/パスワードを用いて不正アクセスされるリスクが高まります。不正アクセスを防ぐには、他者から推測されにくいパスワードの設定、パスワードの使いまわし防止、ログイン認証機能の強化などが有効です。またアクセス制御を設定し、いつ・どこで・どの端末からのアクセスを許可するか設定しておくことも重要です。また二要素認証などの導入も有効です。2.サイバー攻撃は、DDoS攻撃、ランサムウェアを含むマルウェアによる攻撃、標的型メール攻撃、サポート詐欺などのさまざまな手法があり、その組み合わせによる巧妙な攻撃も見受けられます。対策としてはOS、ブラウザ、各種アプリケーションなどの脆弱性対策、さまざまなセキュリティーツールの導入などが有用です。また電子メールを用いた攻撃が大半であるため、なりすましメール対策としてのDMARCの導入も有用です。3.情報漏えいは不正アクセスやサイバー攻撃により、サーバに保管されたデータが外部に漏れる情報漏えいが発生する可能性があります。医療機関の機密情報やユーザの個人情報が流出すると、金銭的損失や企業に対する信頼の失墜につながります。情報漏えいを防ぐには、通信の暗号化や安全なパスワードの設定・管理、ウイルスチェックシステムの導入などが有効です。仮に情報漏えいした場合でもデータが暗号化されていれば、実害はほぼないと考えられるため、データの暗号化は重要です。さらにクラウドサービスはインターネット経由で情報をやりとりするため、通信途中で第三者から攻撃される危険がつきまといます。攻撃リスクを下げるには、通信をSSL化して暗号化することが重要です。また人為的ミスで情報漏えいするケースもあるため、職員研修などを通じて情報漏えいへの意識を高めることも重要です。4.システム障害や設定の不具合、不正アクセスなどが原因で、クラウドサービスに保存されたデータが消失する可能性があります。また使用者が誤操作により、データを削除してしまうことも少なくありません。データ消失に対応できるように、日頃からバックアップを取っておくことが大切です。バックアップを取得していれば問題が発生しても復元が可能であるため、被害最小化が期待できます。またバックアップはランサムウェア対策としても重要です。多くのクラウドサービスでは、バックアップ機能があらかじめ備わっています。日時を指定しての自動バックアップや、自動で世代管理などを行えるサービスもあるので、活用してください。5.シャドーITは管理部門の許可を得ず職員が自己の判断で導入したクラウドサービスやIT機器などのことです。GoogleドライブやDropboxなどの無料サービスは導入が手軽で、複数人とファイル共有するのに便利なため、シャドーITになりやすい傾向があります。従業員がシャドーITを引き起こすのは、既存の環境では業務効率が悪いため、利便性を向上させようとするためです。シャドーITを防ぐには、職員研修を通じてシャドーITの禁止を徹底する一方で、業務を円滑に行えるよう医療機関が環境を整備する必要があります。クラウドサービス事業者の選定についてクラウドサービスのセキュリティーレベルの高さは、サービスを提供するサービス事業者(プロバイダ)のセキュリティー技術の高さに依存します。適切なサービスプロバイダを選定するために、クラウドサービスに備わっているセキュリティー機能やセキュリティーポリシーを確認して、安全性の高いサービスか見極めることが大切です。クラウドサービスの安全性を証明するために、サービスプロバイダ各社はセキュリティー基準を公表しています。世界的な基準には、米国国立標準研究所(NIST)が2014年に発行した「サイバーセキュリティフレームワーク(CSF)」4)がありますがCSFには認証制度がないため、別途認証制度のあるセキュリティー基準をクリアする必要があります。代表的な認証枠組みとして、ISMSクラウドセキュリティー認証5)があります。これはISO/IEC27001(ISMS)に加え、ISO/IEC27015(クラウドセキュリティー)を取得していることを示すものです。ほかにもCSマーク6)、CSA STAR認証7)、StarAudit8)、FedRamp9)、SOC2/SOC310)などの認証制度があり、実際には当該企業に説明を求める必要があります。また、事業者選定の際に具体的に確認すべき事項として以下が挙げられますので、ご確認ください。1.データセンターの物理的な情報セキュリティー対策(災害対策や侵入対策など)2.データのバックアップの有無・方式、関連するサービス3.ハードウェア機器の障害対策4.仮想サーバなどのホスト側のOS、ソフトウェア、アプリケーションにおける脆弱性対策の方式(頻度・方法)5.不正アクセスの防止方法6.アクセスログの管理方法(保存期間を含む)7.通信の暗号化の有無8.ISMSないしPマークの取得の有無(取得している場合は認証番号):厚生労働省ガイドラインの要求事項9.医療機関側の責任範囲まとめ医療機関の電子カルテなどの基幹システムは診療所や中小病院を中心にクラウド化が進んでいくと思われます。さらにオンライン問診や遠隔画像診断などの周辺システム、オンライン診療システム、職員の勤怠管理用システムなどは、大病院も含めクラウドサービスが当たり前の状況となっていくでしょう。クラウドサービスは、オンプレミス型システムと比較して、サイバーリスクの一部をサービス事業者に移転できるメリットがあり、自施設でセキュリティー要員が確保できない医療機関にとっては、セキュリティー対策を推進する上でも有用な選択肢となると思われます。ビーコン英語の「beacon」が語源であり、狼煙や灯台といった、物事の目印となるものの意味。IT業界では、低消費電力の近距離無線通信規格「BLE(Bluetooth Low Energy)」を用いた新しい位置特定技術、およびその技術を搭載したデバイスのことをビーコンと呼ぶ。オンプレミス自施設内にサーバや通信回線、システムを構築し、自社で運用を行う形態を指す。ちなみに、「プレミス(Premises)」は「構内」や「建物」という意味。対義語はクラウド型で、インターネット上のサーバを利用してソフトウェアを利用する形態を指す。利用者はインターネット環境さえあればどこでも利用できる。オンプレミス型とは異なりサーバなどの設備やその保守の必要がないため、比較的低コストで利用できる。DDoS攻撃Distributed Denial of Service attackの略でディードス攻撃と呼ばれる。分散した複数の端末から、攻撃対象のサーバやサイトに対して意図的に大量のパケットを送信し、相手のサーバやネットワークへ膨大な負荷をかけることで、サービスへのアクセス困難や停止を引き起こすサイバー攻撃のこと。標的型メール攻撃標的型メール攻撃とは特定の企業(組織)や個人を狙って、機密情報や知的財産、アカウント情報(ID、パスワード)などを窃取しようとするメールのこと。受信者が不審を抱かないよう、あたかも業務に関係したメールのように偽装するなど巧妙な騙しのテクニックが駆使されているのが特徴。サポート詐欺パソコンやスマートホンなどでインターネットを閲覧中に、突然ウイルス感染したかのような嘘の画面を表示させたり、警告音を発生させるなどして、ユーザの不安を煽り、画面に記載されたサポート窓口に電話をかけさせ、サポート名目で金銭を騙し取ったり、遠隔操作ソフトをインストールさせたりする犯罪の手口。DMARC世界標準のなりすましメール対策で、送信元のサーバー、電子証明書、ドメインサーバーによる連携で“なりすまし”メールをブロックするもの。SSLSecure Sockets Layer(SSL)は、Webサイトとブラウザ間(または2台のサーバ間)で送信されるデータを暗号化することによりインターネット接続を保護する標準的なテクノロジー。SSLを使用することで、ハッカーが個人情報や決済情報のような送信内容を盗み見ることを防止できる。NISTNational Institute of Standards and Technologyの略称で、米国立標準技術研究所と呼ばれる1901年に設置された米国商務省傘下の最古の物理化学研究所。CyberSecurityに関するさまざまな枠組み等を公表している。ISMS情報セキュリティマネジメントシステムのことで、組織における情報資産のセキュリティーを管理するための枠組み。ISOの規格の一つで、ISO27001として知られる。Pマーク(プライバシーマーク)個人情報の保護体制に対する第三者認証制度。個人情報保護体制の基準への適合性を評価し、一般財団法人日本情報経済社会推進協会が使用を許諾する。参考1)厚生労働省:医療DXの推進に関する工程表2)経済産業省:クラウドサービス利用のための情報セキュリティマネジメントガイドライン2013年版3)総務省:クラウドサービス利用・提供における適切な設定のためのガイドライン4)NIST:Cyber security framework 2.05)情報マネジメントシステム認証センター:ISMSクラウドセキュリティ認証6)JASA クラウドセキュリティ推進協議会:CSマーク7)CSAの認証制度:STAR認証について8)StarAudit Certification9)FedRamp10)KPMG:SOC2/SCO3

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ストレスチェックで、その後の精神疾患による長期休職が予測できるか

 労働安全衛生法の改正に伴い、2015年より50人以上の労働者がいる事業所では、ストレスチェックの実施が義務化された。京都大学の川村 孝氏らは、ストレスチェックプログラムを用いた従業員の精神疾患による長期病欠の予測可能性を検討した。Journal of Occupational and Environmental Medicine誌2024年5月1日号の報告。 対象は、2016〜18年に精神疾患の長期病欠を取得した大学職員。対象者と性別、年齢、職種が一致した職場に出勤している大学職員を対照群に割り当てた。57項目の質問票より得られたデータの分析には多変量回帰分析を用い、最終的に予測モデルを開発した。2019年に検証を行った。 主な結果は以下のとおり。・本研究には、22大学(国立大学:19、私立大学:3)が参加し、2016〜19年度まで各年度で約4万500人(15万7,498人年)が参加した。・病欠を取得した職員は723人(10万人年当たり459.1人)、精神疾患により死亡した職員は605人(83.7%)であった。そのうち、病欠前2年以内にストレスチェックに回答した205人(33.9%、自殺者2人含む)を対象に割り付けた。・多変量回帰では、次の6項目が予測因子と特定され、これらを予測モデルに含めた。【職場の方針に自分の意見を反映できる】オッズ比(OR):0.652、95%信頼区間(CI):0.868〜0.490【イライラしたことがある】OR:0.559、95%CI:0.400〜0.783【非常に疲れを感じたことがある】OR:1.799、95%CI:1.334〜2.426【落ち着かないことがある】OR:1.580、95%CI:1.154〜2.163【悲しいことがある】OR:1.590、95%CI:1.148〜2.202【家庭生活に満足している】OR:0.627、95%CI:0.829〜0.475・受信者動作特性曲線下面積(AUC)は、0.768(95%CI:0.723〜0.813)であった。・本結果は、検証サンプルでも同様であった。 著者らは「予測モデルのパフォーマンスは中程度であり、ストレスチェックプログラムのさらなる改良が求められる」としている。

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体調不良のまま働くタクシー運転手の交通事故リスク

 体調不良を抱えたまま勤務する「プレゼンティーズム」は、欠勤するよりも大きな損失につながるとして注目されている。新たに日本のタクシー運転手を対象とした研究が行われ、プレゼンティーズムの程度が大きいほど交通事故リスクが高まることが明らかとなった。産業医科大学産業生態科学研究所環境疫学研究室の藤野善久氏、大河原眞氏らによる前向きコホート研究の結果であり、「Safety and Health at Work」に4月16日掲載された。 これまでに著者らは救急救命士を対象とした研究を行い、プレゼンティーズムの程度が大きいこととヒヤリハット事例発生との関連を報告している。今回の研究では、救急医療と同様に社会的影響の大きい交通事故が取り上げられた。その背景として、タクシー運転手は不規則な運転経路、時間厳守へのプレッシャーなどから事故を起こしやすいことや、車内で長時間を過ごすため運動不足や腰痛につながりやすく、睡眠や健康の状態も悪くなりやすい労働環境にあることが挙げられている。 著者らは今回の対象を福岡県のタクシー会社に勤務するタクシー運転手とし、2022年6月のベースライン調査時、産業医科大学が開発した「WFun」(Work Functioning Impairment Scale)という指標を用いてプレゼンティーズムを評価した。WFunは7つの質問(「ていねいに仕事をすることができなかった」など)により労働機能障害を判定するもので、その得点からプレゼンティーズムの程度を「問題なし」「軽度」「中等度以上」に分類した。2023年2月に追跡調査を行い、回答時点から過去3カ月間の擦り傷や軽い接触など(会社に報告していないものも含む)の件数を「軽微な交通事故」として評価した。 運転時間が週に10時間未満だった人などを除き、428人を解析対象とした。年齢中央値は67(四分位範囲60~72)歳、男性の割合は93.2%。プレゼンティーズムの程度は、問題なしが343人(80%)、軽度が72人(17%)、中等度以上が13人(3%)だった。 1件以上の軽微な交通事故の発生割合は、プレゼンティーズムの程度が問題なしの人では16%、軽度の人では17%、中等度以上の人では23%だった。性別、年齢、運転経験の影響を統計的に調整した上で、交通事故とプレゼンティーズムとの関連を調べた結果、プレゼンティーズムの程度が大きいほど、軽微な交通事故のリスクが高くなることが明らかとなった(傾向性P=0.045)。 今回の研究に関連して著者らは、これまで、突然の意識不明や死亡につながる脳血管疾患や心疾患などの重大な疾患が注目されてきたが、これらを原因とする交通事故の割合は、職業運転手による交通事故のうちの一部でしかないと説明。体調不良などによる交通事故は過少報告されている可能性が高く、見過ごされがちであることを指摘している。また、タクシー運転手の給与体系の多くが歩合制であることも体調不良のまま勤務してしまう要因となっていることを挙げ、「交通事故防止のため、職業運転手に対する社会経済的支援を強化し、健康管理を優先することが重要だ」と述べている。

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切除可能なdMMR大腸がん、ニボルマブ+イピリムマブ術前補助療法が有用/NEJM

 ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)の局所進行大腸がん患者において、ニボルマブ+イピリムマブによる術前補助療法の忍容性および安全性は良好であり、高い病理学的奏効を得られたことが、オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMyriam Chalabi氏らによる第II相多施設共同単群試験「NICHE-2試験」の結果で示された。dMMR腫瘍は、転移のない大腸がん患者の10~15%に認められ、化学療法の有効性は限られている。小規模なNICHE試験でニボルマブ+イピリムマブによる術前補助療法の有用性が示唆されていたが、さらに多くの症例において有効性と安全性を検討する目的でNICHE-2試験が行われた。NEJM誌2024年6月6日号掲載の報告。計115例を対象に安全性と3年無病生存率を評価 研究グループは、未治療で遠隔転移のない切除可能な局所進行dMMR直腸腺がんで、最初のNICHE試験ではStageI~III、2020年10月のプロトコール改訂後のNICHE-2試験ではcT3以上かつ/またはN+の18歳以上の患者を登録し、1日目にイピリムマブ1mg/kgとニボルマブ3mg/kgを、15日目にニボルマブ3mg/kgを投与した後、試験登録後6週間以内に手術を行うこととした。 主要評価項目は、適時手術(治療関連有害事象による手術の遅延が2週間以内)で定義された安全性および3年無病生存率(DFS)、副次評価項目は病理学的奏効とゲノム解析であった。 本報告では、NICHE試験に登録された32例、およびNICHE-2試験に登録された83例を合わせた115例(登録期間2017年7月4日~2022年7月18日)の解析結果が示されている。手術遅延なしが98%、病理学的著効が95%、病理学的完全奏効が68% 115例の患者背景は、年齢中央値60歳(範囲:20~82)、58%が女性、67%がStageIII、64%がcT4であった。 適時手術が行われた患者は、115例中113例(98%、97.5%信頼区間[CI]:93~100)で、2週間以上の手術遅延に至った治療関連有害事象は2例(2%)のみであった。免疫関連有害事象は全Gradeで73例(63%)、Grade3または4が5例(4%)に発現したが、治療中止に至った有害事象は認められなかった。 有効性解析対象111例のうち、109例(98%、95%CI:94~100)に病理学的奏効が認められた。105例(95%)が病理学的著効(MPR:残存腫瘍が10%以下と定義)、75例(68%)が病理学的完全奏効(pCR:原発巣およびリンパ節のいずれも残存腫瘍なし)であった。 追跡期間中央値26.2ヵ月(範囲:9.1~65.3)時点で、再発は認められなかった。追跡期間が3年を超えた37例は、全例、無病のままである。 なお著者は研究の限界として、大腸がんの放射線学的Stage判定は不正確であることが多く、過剰治療につながる可能性があることなどを挙げている。

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早期乳がん術前Dato-DXd+デュルバルマブ、33%が化学療法をスキップ可(I-SPY2.2)/ASCO2024

 70遺伝子シグネチャー(MammaPrint)で高リスクのStageII/IIIの早期乳がんの術前療法として、抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)+デュルバルマブ併用療法を4サイクル投与した第II相I-SPY2.2試験の結果、33%の患者が化学療法を行わずに手術が可能となったことを、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRebecca A. Shatsky氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。 I-SPY2.2試験は、高リスク早期乳がんの術前療法を評価する多施設共同第II相プラットフォーム連続多段階ランダム割付試験(Sequential Multiple Assignment Randomized Trials:SMART)※で、患者が最大の病理学的完全奏効(pCR)を得るための個別化医療を提供することを目的としている。ブロックAでDato-DXd+デュルバルマブを4サイクル投与し、MRIと生検でpCRが予測された場合は早期に手術を受けることができ、予測されない場合は化学療法や標的療法を行うブロックB/Cに進む。今回は、ブロックAの結果が報告された。※連続多段階ランダム割付試験:連続する多段階のランダム割り付けを通して、一連の動的治療計画を立てるためのデザイン 患者(すべてHER2-)は、免疫反応、DNA修復不全(DRD)、ホルモン受容体の状況に基づいて、(1)HR陽性/免疫陰性/DRD陰性、(2)HR陰性/免疫陰性/DRD陰性、(3)免疫陽性、(4)免疫陰性/DRD陽性、(5)HR+、(6)HR-の6つの腫瘍反応予測サブタイプ(RPS)に分類された。主要評価項目はpCRの達成であった。 主な結果は以下のとおり。・2022年9月~2023年8月に106例がブロックAに登録された。年齢中央値は50.0歳(範囲:25.0~77.0)、HR-が60.4%であった。・ブロックA終了後、33%(35例)が化学療法を受けることなく早期に手術に進むことができた。・Dato-DXd+デュルバルマブ治療後のRPS分類によるpCR率(95%信頼区間)と事前に設定された閾値は下記のとおり。 (1)HR陽性/免疫陰性/DRD陰性(25例):3%(0~7)、閾値15% (2)HR陰性/免疫陰性/DRD陰性(23例):13%(3~23)、閾値15% (3)免疫陽性(47例):65%(47~83)、閾値40% (4)免疫陰性/DRD陽性(11例):24%(4~44)、閾値40% (5)HR+(42例):18%(6~30)、閾値15% (6)HR-(64例):44%(32~56)、閾値40%・(3)の免疫陽性のサブタイプ(HR+もHR-も含む)のみが第III相試験へ進むための「卒業」の閾値に到達した。・安全性プロファイルは既知のものと同様であった。多く発現した有害事象(AE)は、悪心、口内炎、疲労、発疹、便秘、脱毛などで、Grade3以上のAEはまれであった。間質性肺疾患は1例に発現した。

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血液検査で危険なタイプの脳卒中を判別

 脳卒中を発症すると、ニューロンは数分で死滅し始めるため、脳卒中のタイプを迅速に特定して対処することが鍵となる。その特定プロセスを早めることができる血液検査の開発についての研究成果が、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJoshua Bernstock氏らにより報告された。この血液検査により、患者の発症した脳卒中が致死率の高い主幹動脈閉塞(LVO)を伴うものであるかどうかを高い精度で判定できることが示されたという。この研究結果は、「Stroke: Vascular and Interventional Neurology」に5月17日掲載された。 LVOを伴う脳梗塞であることが分かれば、医師は機械的血栓回収療法による治療を実施できる。これは、脳梗塞の原因となっている血栓を取り除く外科的手法だ。研究論文の上席著者であるBernstock氏は同病院のニュースリリースの中で、「機械的血栓回収療法のおかげで、この手術を行わなければ死亡するか重大な障害を負っていたであろう人が、あたかも脳卒中など経験しなかったかのように完全回復することができる」と説明している。同氏は続けて、「この治療は、迅速に行えば行うほど、患者の予後も良好になる」と指摘し、「われわれが開発したこの素晴らしい検査法は、世界中でより多くの人がより迅速にこの治療を受けられるようにする可能性を秘めている」と話している。 Bernstock氏らは以前、血液中に検出される2種類のタンパク質、すなわち出血性脳卒中や外傷性脳損傷とも関連するグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)と血栓形成の指標であるDダイマーに注目した研究を実施していた。今回の研究では、脳卒中の発症が疑われる323人の患者を対象に、これらの血液ベースのバイオマーカーのレベルを脳卒中の重症度を評価する5種類の指標と組み合わせることで、LVOを伴う脳梗塞の検出精度が向上するかどうかが検討された。対象患者の脳卒中のタイプは、LVOを伴う脳梗塞が9%、LVOを伴わない脳梗塞が15%、出血性脳卒中が4%、一過性脳虚血発作が3.9%、脳卒中ではないが脳卒中に似た症状を呈するstroke mimicsが68.1%を占めていた。 その結果、GFAPとDダイマーにFAST-ED(Field Assessment Stroke Triage for Emergency Destination、救急搬送先の現場評価脳卒中トリアージ)スコアを組み合わせた場合にLVOを伴う脳梗塞の検出精度が最も高くなり、脳卒中の発症から6時間以内に検査を行った場合の特異度は93%、感度は81%であることが示された。また、この検査により出血性脳卒中患者を除外できることも明らかになった。この結果は、将来的には出血性脳卒中を見つけるためにこの検査法を活用できる可能性のあることを示唆している。 Bernstock氏は、この新しい脳卒中の検査法は、「より多くの脳卒中患者が、適切なタイミングと場所で命を回復させるための重要な治療を受けられるようにするための、革新的で利用しやすいツールになる可能性を秘めている」と語っている。さらに同氏らは、この検査法が緊急事態における出血性脳卒中の発見や除外にも役立つだけでなく、ハイテクの診断スキャンが利用できないような貧困国で特に有用になると考えている。 Bernstock氏らは今後、救急車内でのこの検査の有効性を検証する予定であるとしている。Bernstock氏は、「患者を予防から回復までの適切な治療の流れに乗せるのが早ければ早いほど、予後は良好になる。それが出血性脳卒中を除外することであれ、介入を必要とする何かを除外することであれ、われわれが開発した技術によって病院到着前の環境で行うことができるようになれば、真に革新的なものになるだろう」と述べている。

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SMART療法を処方される喘息患者は少ない

 吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用型β2刺激薬(LABA)の合剤を、喘息の長期管理薬としても発作発現時の治療薬としても用いる治療法をSMART(スマート)療法という。この治療法は、全米喘息教育予防プログラムと喘息グローバルイニシアチブのそれぞれのガイドラインで使用が推奨されている。しかし、新たな研究で、中等度から重度の成人喘息患者のうち、SMART療法が処方されているのはわずか15%程度に過ぎず、呼吸器およびアレルギー専門医の40%以上がこの治療法を採用していないことが明らかになった。米イエール大学医学部の呼吸器・集中治療医であるSandra Zaeh氏らによるこの研究結果は、米国胸部学会(ATS 2024、5月17〜22日、米サンディエゴ)で発表された。 米国でのSMART療法には、ICSのブデソニドと、即効性の気管支拡張作用を併せ持つLABAであるホルモテロール配合のシムビコートや、モメタゾン(ICS)とホルモテロール配合のDuleraなどがある。SMART療法が登場する以前の喘息のガイドラインでは、長期管理薬として1日2回のICSの使用に加え、発作時には短時間作用型β2刺激薬(SABA)のアルブテロールのようなレスキュー薬の使用が推奨されていた。その後、2021年までに米国のガイドラインが更新され、維持療法とレスキュー療法の両方の目的でSMART療法を用いることが推奨されるようになった。研究グループは、2種類の吸入薬を使い分ける従来の治療法と比べて、両薬剤を一つに配合したSMART療法は喘息の症状や発作を有意に軽減することが示されていると説明する。 この研究では、米国北東部のヘルスケアシステムの電子カルテを用いて、中等度から重度の喘息患者におけるSMART療法の処方動向が調査された。対象は、2021年1月から2023年8月の間に1回以上呼吸器・アレルギークリニックで診察を受け、長期管理薬としてICSとLABA、またはICSのみを処方されていた喘息患者1,502人(平均年齢48.6歳、女性75.2%)であった。 その結果、44%(656/1,502人)の患者にICSとホルモテロールが長期管理薬として処方されており、SMART療法として処方されていたのはわずか15%(219/1,502人)に過ぎないことが明らかになった。また、SMART療法が処方されていた患者の89%(195/219人)は、SABAも同時処方されていた。さらに、SMART療法は、高齢患者とメディケア受益者に処方されにくい傾向のあることも示された。 Zaeh氏は、「これらの結果は、現行の喘息管理ガイドラインが臨床医によって日常的に実施または採用されていないことを示唆している」と述べている。イエール大学医学部のZoe Zimmerman氏は、「医療提供者は、高齢患者に対して新しい吸入レジメンを試すことに消極的だ。特に、患者が何年も同じ吸入薬を使用している場合、その治療レジメンを変更することに抵抗を感じやすい」との見方を示す。 研究グループによると、過去の研究では、ガイドラインが医師に広く採用されるようになるまでには15年以上かかることが指摘されているという。Zaeh氏は、「今回の研究結果は、臨床医によるガイドラインの採用には時間がかかるという考えを補強するものだ」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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大腸がん検診、検査方法の選択肢提示で受診率が向上

 患者に大腸がんの検査方法の選択肢を与えることで、検診を受ける患者数が2倍以上に増えたとする研究結果が報告された。米ペンシルベニア大学医学部のShivan Mehta氏らによるこの研究結果は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に4月30日掲載された。 研究グループの説明によると、大腸がん検診は現在、リスクレベルが平均的な人には45歳からの受診が推奨されているが、大腸がんの既往歴や家族歴がある人は、より早い時期から検診を受けなければならない可能性もあるという。 大腸がん検診で使われる大腸内視鏡検査(コロノスコピー)は、侵襲的ではあるが時間とともにがん化する可能性のある前がん性のポリープを除去することができる。大腸内視鏡検査は10年に1回の頻度で受けることが推奨されているが、その代わりに免疫学的便潜血検査(FIT)を年に1回受けるという選択肢もある。これは、便検体の中に血液が含まれていないかどうかを調べる検査だ。便中の潜血は、大腸がんの初期症状である可能性があり、陽性と判定された場合は大腸内視鏡検査を受ける必要がある。 Mehta氏らは今回、ランダム化比較試験を実施し、患者に大腸がん検診の選択肢を提示することで、大腸内視鏡検査のみを提示した場合と比べて検診受診率が向上するのかどうかを検討した。対象者は、大腸がん検診を推奨通りに受けていない、ペンシルベニア州の地域医療センターの患者738人(平均年齢58.7歳、48.6%がメディケイド受益者)。研究グループによると、この医療センターでの大腸がん検診の受診率はわずか約22%であり、米国での平均受診率(72%)からかけ離れているという。 対象患者は、大腸がん検診の方法として、1)大腸内視鏡検査のみを提示される群、2)大腸内視鏡検査かFITのどちらかを患者が選択できる(アクティブチョイス)群、3)FITのみを提示される群の3群に1対1対1の割合でランダムに割り付けられた。対象患者には、検診受診を勧める手紙と該当者にはFIT用のキットが送付され、その2カ月後と3〜5カ月後にリマインダーのテキストメッセージまたは自動音声が送られた。 その結果、試験開始から6カ月後の時点で大腸がん検診を受けた患者の割合は、大腸内視鏡検査のみの群で5.6%、アクティブチョイス群で12.8%、FITのみの群で11.3%であることが明らかになった。大腸内視鏡のみの群と比べた検診受診率の絶対差は、アクティブチョイス群で7.1%、FITのみの群で5.7%であった。 研究グループは、患者に単純な選択肢を提供することで大腸がん検診の受診率が向上したが、選択肢の数をさらに増やすことが、検診受診者のさらなる増加につながる可能性があるとの考えを示している。 以上のように有望な結果は得られたものの、未解決の問題が残されている。Mehta氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミック中にがん検診の実施が減り、現在はその回復途上にあることや、若年層へのスクリーニング推奨の拡大により、全国的に大腸内視鏡検査へのアクセス問題が存在することは確かであり、とりわけ地域医療センターの患者はより大きな影響を受ける可能性がある」と話す。その上で同氏は、「大腸内視鏡検査は、スクリーニング、症状の診断、FIT後のフォローアップ検査のためのツールとして重要だが、スクリーニング率を向上させたいのであれば、より低侵襲な選択肢を患者に提供することを考えるべきだ」と付け加えている。

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和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科)【大学医局紹介~がん診療編】

山本 信之 氏(教授)赤松 弘朗 氏(准教授)村上 恵理子 氏(学内助教)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴当科は、病院標榜科名を呼吸器内科・腫瘍内科としています。このように呼吸器疾患と腫瘍全般を一括して扱う診療科はほとんどなく、それが当科の特色となっています。当科では、腫瘍内科として、原発不明がんや肉腫などpitfallとなりやすい腫瘍の薬物療法や、標準的治療が終了後の患者に対する臨床試験(第I相試験)等も積極的に取り組んでいますが、腫瘍内科だけでは専門的に学ぶことが難しい、感染症・呼吸管理などの内科医として必要不可欠な技量・知識を習得することが可能です。研究面では、上記の治験を含む臨床研究のみならずリキッドバイオプシー等のトランスレーショナルリサーチが積極的に行われており、その成果は、New England Journal of Medicine等の、世界的なメジャージャーナルに発表されています。また、当科では、病棟をチーム体制にすることや当直明けの休暇の取得等で、ライフスタイルに合わせた仕事をしていただける体制を整えています。当科にきていただければ、どの方向に進むにしても、多くの選択肢から選んでいただくことが可能です。ぜひ、われわれと一緒に、楽しい仕事をしましょう。同医局でのがん診療/研究のやりがい、魅力「肺がんは個別化医療が最も成功したがんの1つ」と言われており、実地臨床でも免疫チェックポイント阻害薬・分子標的薬・細胞障害性抗がん剤を使いこなし、それらによる有害事象対策を多く経験する事で患者さんにとって最適な治療は何か? を常に考えながら、皆で議論しています。また多くの治験に参加しており、NEJMなどのbig journalにも当科医師が共著者として名を連ねています。同時に、地方の医大という事もあり、緩和領域の患者さんを看取る事も多く、「診断から緩和まで1人の患者さんと付き合っていく」経験ができます。医局の雰囲気、魅力若手が多く、中堅は国内留学帰りの先生が多いため、多彩なバックグラウンドを背景に最新の標準治療をどのように目の前の患者さんに適応していくか日々議論しています。また働き方改革にも対応しており、ワークライフバランスへの対応も兼ね備えています。医学生/初期研修医へのメッセージきちんとした日常臨床を身に付けることから始めて、最短での専門医取得を後押しします。また、若手同士の交流も盛んで楽しい医局です。ぜひ、皆で成長しましょう。若手が多く、交流も盛んこれまでの経歴和歌山県立医科大学を卒業し、同大学病院で初期研修を終えたのち呼吸器内科・腫瘍内科に入局しました。2回の産休・育休で診療から離れていた時期もありましたが、時短制度を利用して復職し大学院にも入学しました。子育ての都合で時間の制約があるため、研究日を設けてもらうなどしながら臨床研究を行ないつつ、一昨年がん薬物療法専門医を取得したところです。同医局を選んだ理由大学生のころの基礎実習で腫瘍に関連する研究に触れたことで抗がん剤に興味を持ちました。さまざまながんの治療に携わりたいと考えていたので、自分の目指すところに一致する診療科だと思い入局しました。実際入局してみると、抗がん剤の副作用管理から緩和ケアに至るまで幅広い知識と経験が必要な診療科であり、当初は大変でしたが今はそこもやりがいの1つです。今後のキャリアプラン下の子が1歳を過ぎたのを機に昨年からフルタイム勤務に復帰し、今年は大学院を卒業・学位取得を予定しています。一度に多くのタスクをこなすのは難しいですが、個々のライフスタイルや興味に応じて柔軟に対応してもらえる職場ですので、今後も内科関連の資格取得や新規臨床研究などを少しずつ進めていきたいと思っています。和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科)住所〒641-0012 和歌山県和歌山市紀三井寺811-1問い合わせ先h-akamat@wakayama-med.ac.jp医局ホームページ和歌山県立医科大学 内科学第三講座(呼吸器内科・腫瘍内科)専門医取得実績のある学会日本内科学会日本呼吸器学会日本がん薬物療法学会日本呼吸器内視鏡学会研修プログラムの特徴(1)女性医師も多い、明るい雰囲気の科です(2)さまざまなバックグラウンドを持つ医師から教育を受けることができます(3)どこに出しても恥ずかしくない一人前の呼吸器内科医になれるよう、援助は惜しみません

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未治療HER2+進行乳がん、T-DXd±ペルツズマブの12ヵ月PFS率(DESTINY-Breast07)/ASCO2024

 HER2+(IHC 3+またはIHC 2+/ISH+)の進行・転移乳がんの1次療法として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)単独療法とT-DXd+ペルツズマブ併用療法の有用性を検討した第Ib/II相DESTINY-Breast07試験の中間解析の結果、両群ともに12ヵ月無増悪生存(PFS)率は80%以上であり、薬剤性間質性肺疾患(ILD)による死亡は認められなかったことを、フランス・Gustave RoussyのFabrice Andre氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2024 ASCO Annual Meeting)で発表した。 DESTINY-Breast07試験は、HER2+の進行・転移乳がん患者を対象に、T-DXd単独または他の抗がん剤との併用による安全性、忍容性および抗腫瘍活性を検討する国際共同無作為化非盲検第Ib/II相試験。用量漸増パートと用量拡大パートで構成され、今回は1次療法としてのT-DXd±ペルツズマブを評価した用量拡大パートの中間解析の結果が報告された。 対象は、術後補助療法から12ヵ月以上の無病期間があり、測定可能な病変があり、脳転移がない/または既治療で安定状態で、進行・転移に対する治療を受けていないHER2+の進行・転移乳がん患者であった。T-DXd単独群(5.4mg/kgを3週間間隔)とT-DXd+ペルツズマブ併用群(T-DXd:5.4mg/kg+ペルツズマブ:初回840mg、2回目以降420mgを3週間間隔)に無作為化された。主要評価項目は安全性と忍容性、主要副次評価項目は、治験責任医師評価による奏効率(ORR)およびPFS、奏効期間(DOR)であった。 主な結果は以下のとおり。・T-DXd単独群75例、T-DXd+ペルツズマブ併用群50例が治療を受けた。両群の患者プロファイルはおおむねバランスがとれていたが、HR+(62.7%および68.0%)、de novo(64.0%および60.0%)の割合で差がみられた。追跡期間中央値はそれぞれ23.9ヵ月(治療継続中が62.7%)、25.3ヵ月(56.0%)であった(データカットオフ:2023年12月22日)。・12ヵ月PFS率は、単独群80.8%(80%信頼区間[CI]:73.7~86.1)、併用群89.4%(81.9~93.9)であった。・ORRは、単独群76.0%(80%CI:68.5~82.4)、併用群84.0%(75.3~90.5)であった。CRはそれぞれ8.0%、20.0%であった。・DOR中央値は両群とも評価不能(NE)であったが、範囲は単独群2.1~28.5ヵ月、併用群4.5~28.3ヵ月であった。12ヵ月DOR率はそれぞれ76.0%、84.0%であった。・有害事象(AE)は両群ともに100%に発現した。Grade3以上のAEの発現率は、単独群52.0%、併用群62.0%であった。単独群では、治療に関連しない死亡が1例報告された(新型コロナウイルス感染症の罹患後症状)。・頻度の高いAEは、悪心(単独群71%[うちGrade3以上が4%]、併用群68%[0%])、好中球減少症(36%[27%]、38%[24%])、嘔吐(36%[3%]、40%[0%])、下痢(35%[3%]、62%[6%])などであった。ILDは、それぞれ9.3%、14.0%に認められたが、死亡例は認められなかった。新たな安全性シグナルはみられなかった。 DESTINY-Breast07試験は進行中であり、第III相DESTINY-Breast09試験の解析結果により、HER2+の進行・転移乳がんの1治療法としてのT-DXd±ペルツズマブに関する確定的なデータが得られる予定。

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セマグルチド、CKDを伴う2型DMの腎機能低下や心血管死亡を抑制/NEJM

 慢性腎臓病(CKD)を伴う2型糖尿病患者は、腎不全、心血管イベント、死亡のリスクが高いが、GLP-1受容体作動薬セマグルチドによる治療がこれらのリスクを軽減するかは知られていない。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のVlado Perkovic氏らFLOW Trial Committees and Investigatorsは「FLOW試験」において、プラセボと比較してセマグルチドは、主要腎疾患イベントの発生が少なく、腎特異的イベントや心血管死、全死因死亡のリスクを低減することを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月24日号に掲載された。28ヵ国387施設の無作為化プラセボ対照試験 FLOW試験は、28ヵ国387施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2019年6月~2021年5月に参加者を募集した(Novo Nordiskの助成を受けた)。 対象は、2型糖尿病とCKDを有する患者とし、推算糸球体濾過量(eGFR)が50~75mL/分/1.73m2で尿中アルブミン-クレアチニン比(アルブミンはミリグラム、クレアチニンはグラムで測定)が>300~<5,000、またはeGFRが25~50mL/分/1.73m2で尿中アルブミン-クレアチニン比が>100~<5,000と定義した。 被験者を、セマグルチド1.0mgを週1回皮下投与する群、またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、主要腎疾患イベント(major kidney disease event)であり、腎不全(透析、移植、eGFR<15mL/分/1.73m2)の発生、eGFRのベースラインから50%以上の低下、腎臓関連の原因または心血管関連の原因による死亡の複合と定義した。主要アウトカムの相対リスクが有意に低下 3,533例(平均[±SD]年齢66.6±9.0歳、女性30.3%)を登録し、セマグルチド群に1,767例、プラセボ群に1,766例を割り付けた。中間解析の結果に基づき、独立データ安全性監視委員会は有効性について試験の早期終了を勧告し、試験終了時の追跡期間中央値は3.4年だった。 主要アウトカムのイベント発生の頻度は、セマグルチド群で低く(初回イベント:セマグルチド群331件[5.8/100人年]vs.プラセボ群410件[7.5/100人年])、主要アウトカムの相対リスクはセマグルチド群で24%低かった(ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.66~0.88、p=0.0003)。 また、主要アウトカムの腎特異的構成要素の複合(HR 0.79、95%CI 0.66~0.94)および心血管死(0.71、0.56~0.89)についても、結果は主要アウトカムと同様であった。eGFR年間変化率の勾配、主な心血管イベント、全死因死亡も良好 3つの確認のための主な副次アウトカムは、いずれもセマグルチド群で良好だった。eGFRの無作為化から試験終了までの平均年間変化率の傾きの程度(eGFR slope)は、プラセボ群に比べセマグルチド群で1.16mL/分/1.73m2(95%CI:0.86~1.47)低く、減少の仕方が緩徐であった(p<0.001)。主な心血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死の複合)のリスクは、セマグルチド群で18%低く(HR:0.82、95%CI:0.68~0.98、p=0.029)、全死因死亡のリスクは20%低かった(0.80、0.67~0.95、p=0.01)。 重篤な有害事象の報告は、プラセボ群に比しセマグルチド群で少なかった(49.6% vs.53.8%)。一方、試験薬の恒久的な投与中止の原因となった有害事象の頻度はセマグルチド群で高かった(13.2% vs.11.9%)。 著者は、「これらの知見に基づくと、2型糖尿病とCKDを有する患者に対するセマグルチドの使用は、腎保護作用とともに、心血管リスクの低減に有効である可能性がある」としている。

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ハゲタカジャーナルの査読をしているのは誰?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第258回

ハゲタカジャーナルの査読をしているのは誰?世の中にはハゲタカジャーナルというものがあります。著者が論文投稿料を支払うことで、誰でも論文を読むことができるオープンジャーナルのモデルを悪用した医学雑誌のことで、すみやかに出版したい著者をだまして高額な投稿料をせしめるとんでもないジャーナル群のことを指します。ハゲタカジャーナルは、査読は形式的に行われるか、あるいはまったく行わないため、投稿された論文の質は極めて低いものが多いです。そんなハゲタカジャーナルにまつわる珍しい論文を紹介しましょう。Severin A, et al. Characteristics of scholars who review for predatory and legitimate journals: linkage study of Cabells Scholarly Analytics and Publons data.BMJ Open. 2021 Jul 21;11(7):e050270.この論文はPublonsに登録された査読が対象となっています。Publonsは世界における査読者の査読実績を集める事業を展開しています。Publonsのアカウントを取得した研究者は、Publonsに自分が担当した論文の査読歴を登録・管理することができます。まあ、この事業のことは今回の本旨とは異なりますので割愛します。この論文では、1万9,598人のレビュアーによってPublonsに投稿された18万3,743件の査読が分析対象となりました。このうち、67件のレビューがハゲタカジャーナル(1,160誌が該当)に対するもの(レビュー全体の3.31%)、1万7,766件のレビューが非ハゲタカジャーナル(6,403誌が該当)に対するもの(96.69%)であることがわかりました。全体の90%の査読者は、これまでハゲタカジャーナルに関与したことはない、と回答しています。ハゲタカジャーナルの査読を行っている人は、学歴が若く、研究・出版物や査読数自体も少ないということがわかりました。つまり、まだまだ研究の世界では未熟とされる若者たちが査読を行っているという現状が浮き彫りになったわけです。また、ハゲタカジャーナルの査読のほとんどが、アフリカから行われていることも示されています。査読というのは、闇が存在します、闇が。私のもとにもハゲタカジャーナルの査読依頼はよく来ますが、すべて断っています。というか、スパムメールフォルダに入っているので、基本的に無視しています。

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syphilis(梅毒)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第6回

言葉の由来梅毒は英語で“syphilis”といい、「スィフィリス」という発音になります。近年、日本では感染者が急増していますが、その歴史や語源はご存じでしょうか?世界で初めて梅毒が確認されたのは15世紀の後半です。梅毒の起源については、コロンブスがアメリカ大陸から欧州に持ち帰ったなど諸説ありますが、15世紀末にフランス軍がイタリアに侵攻した際に、性的接触を介してイタリアで大流行が起こりました。このことからフランスでは「イタリア病」や「ナポリ病」、イタリアでは「フランス病」と呼ばれました。この呼び方は当時の国家間の政治的対立を反映したものであり、一種のプロパガンダとして利用されたともいえます。“syphilis”という名前は、イタリアの詩人、ジローラモ・フラカストロによって1530年に書かれたラテン語の詩「梅毒またはフランスの病」(Syphilis sive morbus gallicus)で初めて登場しました。この詩では、羊飼いの“syphilis”という英雄が、神を冒涜した罰としてこの病気に初めて感染した、と描かれています。このフラカストロは医師でもあり、新しい病気の名前をこの主人公からとって医学論文を発表したことから、“syphilis”という名前が広まったとされています。なお、日本で梅毒が最初に記録されたのは1512年といわれており、欧州での大流行から程なくして日本に伝わったことがわかります。日本語の「梅毒」という病名は症状として見られる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来しているという説が一般的です。併せて覚えよう! 周辺単語性感染症sexually transmitted diseases下疳chancre扁平コンジロームcondylomata lataゴム腫gumma神経梅毒neurosyphilisこの病気、英語で説明できますか?Syphilis is a sexually transmitted disease that can may lead to severe health complications if left untreated. Infection develops in stages, including primary, secondary, latent, and tertiary, and each stage can have different signs and symptoms.講師紹介

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がんの臨床試験への参加でOSが延長するか?/JAMA

 カナダ・マギル大学のRenata Iskander氏らは、がんの臨床試験に参加した患者と参加しなかった患者の全生存期間(OS)を比較した研究についてシステマティック・レビューとメタ解析を行い、全体として試験参加群におけるOSの改善が示唆されたが、バイアスや交絡因子を考慮した研究に限定するとOSに対するベネフィットは認められなかったことを示した。がん患者が臨床試験に参加することが、試験に参加せず通常の治療を受けた場合と比較してOSの延長と関連するかどうかは明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2024年5月20日号掲載の報告。OSを比較した研究をメタ解析 研究グループは、PubMedおよびEmbaseを用い、がん患者を対象とし、臨床試験参加者(試験参加群)と試験に参加せず通常の治療を受けた患者(通常治療群)の生存転帰を比較した研究のうち、2000年1月1日~2022年8月31日に発表された英語の論文を検索した。主なキーワードは、cancer、oncology、clinical trial、retrospective cohort、trial participation、trial effect、participation bias、nonparticipant、nontrialなどである。また、検索で得られた文献に引用されている文献、ならびに検索で得られた文献を引用している文献についても調査した。 適格基準は、ハザード比(HR)を用いて試験参加群(無作為化試験かは問わない)と通常治療群のOSを比較していること、治療には薬剤/生物学的製剤が含まれることであった。2人の研究者が独立して、Covidenceソフトウエアを用いて解析対象とする研究のスクリーニング、データの抽出および方法論的な質の評価を行った。 主要アウトカムは、試験参加群と通常治療群のOSのHRで、DerSimonian-Lairdランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施した。バイアスや交絡因子を考慮した研究では、試験参加によるOSに対する有益性は減少  174件の論文について適格性を評価した結果、39件の研究(計85件の比較)がメタ解析に含まれた。 85件の比較のうち、32件は試験効果の測定を目的としたものであった(本論文において、試験効果とは、治療効果[臨床試験における介入群への割り付けによってもたらされたアウトカムに対する試験参加の効果]と、参加効果[臨床試験における介入群への割り付けによって媒介されない試験参加の効果]を組み合わせたものと定義されている)。また、通常治療群のデータソースは、レジストリが67件、医療記録が18件であり、サンプルサイズの中央値は試験参加群が209例、通常治療群が409例であった。 メタ解析の結果、試験デザインや質に関係なくすべての研究をプールした場合、試験参加群と通常治療群のOSのHRは0.76(95%信頼区間[CI]:0.69~0.82)であり、試験参加群でOSが有意に改善した。 一方、試験参加群と通常治療群を適格基準に一致させた研究のみをプールすると、試験参加群のOSに対するベネフィットは減少した(HR:0.85、95%CI:0.75~0.97)。また、質の高い研究のみをプールした場合、試験参加群でOSの改善は認められず(0.91、0.80~1.05)、潜在的な出版バイアスにより推定値を調整した場合も同様であった(0.94、0.86~1.03)。

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重症大動脈弁狭窄症へのTAVI、Myvalは既存THVに非劣性/Lancet

 症候性重症大動脈弁狭窄症患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)において、バルーン拡張型の経カテーテル心臓弁(THV)であるMyval(Meril Life Sciences・インド)は、術後30日時の複合エンドポイントに関して既存のTHV(Sapienシリーズ[Edwards Lifesciences・米国]、またはEvolutシリーズ[Medtronic・米国])に対し非劣性であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のAndreas Baumbach氏らLANDMARK trial investigatorsが実施した「LANDMARK試験」で示された。バルーン拡張型弁(BEV)であるMyval THVシリーズは直径が1.5mm刻みであることから、通常の3mm刻みの生体弁と比較し、大動脈弁輪との正確なサイズ合わせが容易となる。Myval THVの安全性と有効性は、これまで症候性重症大動脈弁狭窄症患者および二尖弁患者を対象とした単群試験または傾向スコアマッチング試験において示されていた。Lancet誌2024年オンライン版5月22日号掲載の報告。欧州・南米など16ヵ国31施設で無作為化非盲検非劣性試験を実施 LANDMARK試験は、16ヵ国(ドイツ、フランス、スウェーデン、オランダ、イタリア、スペイン、ニュージーランド、ポルトガル、ギリシャ、ハンガリー、ポーランド、スロバキア、スロベニア、クロアチア、エストニア、ブラジル)の31施設で実施された、前向き無作為化非盲検非劣性試験である。 研究グループは、TAVIの適応を有する18歳以上の症候性重症大動脈弁狭窄症患者を、Myval群または既存群に1対1の割合に無作為に割り付けた。患者の適格性は、2021年欧州心臓病学会のガイドラインに従い地域のハートチームが評価した。 有効性および安全性の主要エンドポイントは、VARC-3の定義に基づく術後30日時の全死亡、脳卒中、出血(VARCタイプ3および4)、急性腎障害(ステージ2、3および4)、主要血管合併症、中等度以上の人工弁逆流および新たに恒久的なペースメーカー植込みを必要とする伝導系障害の複合エンドポイントであった。Myval THVの既存THVに対する非劣性は、ITT集団において、非劣性マージン10.44%、両群のイベント発生率26.10%と仮定して検証した。既存の生体弁に対する非劣性を検証 2021年1月6日~2023年12月5日に、症候性重症大動脈弁狭窄症患者768例がMyval THV群(384例)および既存THV群(384例)に割り付けられた。患者背景は、平均年齢がそれぞれ80.0歳(SD 5.7)と80.4歳(5.4)、女性が193例(50%)と176例(46%)で、米国胸部外科医学会の予測死亡リスク(STS-PROM)スコアの中央値は両群とも2.6%(四分位範囲[IQR]:1.7~4.0)であった。 複合エンドポイントのイベントは、Myval THV群で25%(94/381例)、既存THV群で27%(103/381例)に発生した。群間リスク差は-2.3%(95%信頼区間[CI]:NA~3.8)であり、95%CIの上限が事前に設定された非劣性マージンを超えなかったことから、Myval THVの既存THVに対する非劣性が示された(非劣性のp値<0.0001)。 複合エンドポイントの各要素の発生率に、両群で有意差はみられなかった。

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致死率がより高いエムポックスウイルスの感染がコンゴで拡大

 コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)は、エムポックス(サル痘)ウイルス(MPXV)の感染者数の記録的な増加に直面している。その背景にあるのは、2022年に欧米で感染が拡大した型のMPXVよりも致死率が高いクレード(系統群)のウイルスである「クレードI」の発生だ。米疾病対策センター(CDC)のChristina Hutson氏らは、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」5月16日号に掲載された報告書で、「クレードIのコンゴでの感染拡大は、このウイルスが国外にも拡大する可能性を懸念させるものであり、ウイルスを封じ込めるためのコンゴの取り組みを全世界で協調的かつ緊急に支援することの重要性を示している」と主張している。 2年前にアフリカから欧州や北米へと広がったMPXVは、クレードIIと呼ばれるものであった。エムポックスは痛みを伴い、重症化することもあるが、死亡率は0.1~3.6%程度であることがさまざまな研究で示されている。しかし、Hutson氏らによると、クレードIのMPXVは致死率がより高く、その死亡率は1.4~10%に上るという。 コンゴで流行中のクレードIのMPXVは、すでに多くの犠牲者を出している。同国の報告によると、2023年初頭から2024年4月14日までに「複数の地方でアウトブレイクが発生」し、推定患者数は1万9,919人、死亡者数は975人に上り、患者20人当たり1人程度が死亡したと推定されている。 今回のアウトブレイクはおそらく最も広範囲に及んでおり、「2023年から2024年にかけて、26州中25州から、そして初めて首都キンシャサからもクレードIのMPXVの症例が報告された」とHutson氏らは指摘している。特に、小児はエムポックスに対して脆弱で、報告書によると「MPXVの感染が疑われる症例の3分の2(67%)と、MPXVによる死亡が疑われる症例の4分の3以上(78%)を15歳以下の小児が占めている」という。 MPXVは密接な接触を介して感染する。通常、感染には皮膚と皮膚の接触が伴うため、性行為が感染経路となることが多い。初期症状は発熱、悪寒、疲労感、頭痛、筋力低下などで、多くの場合、こうした症状の発現後に病変を伴う発疹ができ、かさぶたになって数週間のうちに徐々に治癒する。感染する可能性は誰にでもあるが、特に男性と性行為をする男性はリスクが高く、またHIV感染者は重症化しやすい。 MPXVはサルなどの動物との接触を介してヒトに感染する可能性があり、長い間アフリカの風土病であった。最近コンゴで発生したアウトブレイクに関しては、「動物宿主からの複数回にわたるウイルスの伝播がアウトブレイクに関与していることがデータから示唆された」とHutson氏らは説明している。ただ、幸いなことに、Jynneosという商品名で製造されているMPXVのワクチンがある。同ワクチンは約1カ月の間隔を空けて2回接種する。 Hutson氏らによると、CDCは長年にわたってコンゴのMPXVのアウトブレイクとの闘いを支援する取り組みを続けてきた。今回のアウトブレイクに関しては、コンゴおよびその周辺国におけるMPXVの封じ込めとともに、米国人の間にクレードIのMPXVの感染者が発生した場合の備えを強化するための取り組みも行っているという。 Hutson氏らは、「米国や、MPXVの流行が発生していない他の国では、クレードIのMPXVの症例は報告されていない」と述べている。また、米国では動物がMPXVを保有していないこと、米国の一般的な家庭ではコンゴの家庭よりも衛生状態が良好であることなどから、米国の小児がクレードIのMPXVに感染するリスクは低いと強調している。ただし、「ゲイやバイセクシュアルの男性などのハイリスク集団では、米国においてもクレードIのMPXV感染者が発生するリスクはある」と同氏らは指摘している。

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臨床留学通信、ニューヨーク最終章【臨床留学通信 from NY】第61回

第61回:臨床留学通信、ニューヨーク最終章ニューヨークからボストンのハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院(MGH)に移るに当たって、書類処理に追われています。まず、アメリカの病院で働く際には、健康診断がかなりきっちりしています。過去のワクチンの証明書やMMRなどの抗体価、日本人だとツベルクリン反応が陽性になってしまうので、クォンティフェロンの採血結果(3ヵ月以内)の提出などです。日本で働いてると、友達に採血オーダーしてもらってちょっとした合間に採血して、ということは簡単ですが、こちらだとそうはいきません。自身のプライマリケアにMyChartと呼ばれるウェブサイトから、その都度ラインのように担当医に連絡してオーダーしてもらい、通ってるプライマリケアまで行って採血をする形で、結構不便です。多くの場合、かかりつけの病院と自身の勤務先の病院は離れているため、勤務先の病院で採血、というわけにはいかないのです。今回、ニューヨーク州からマサチューセッツ州へ州が変わることもあり、州用のライセンス取得のために申請が必要で、過去のUSMLEの合格証明を、発行機関にお金を払って送ってもらったりします。新しい病院で働く場合多くはHIPPA(Health Insurance Portability and Accountability Act)と呼ばれる、病院で働く際の医者の守秘義務等を履行するために、オンラインコースを延々と受けなければいけません。そのほかに、もし銃撃事件に巻き込まれたら、といった恐ろしいシミュレーションを想定したオンラインコースもあります。隠れることもできず、退路を断たれたらどうする?という質問に対して、“Fight”という選択肢をどうしても選ぶことはできませんでしたが、どうやらそれが正解のようです…。ACLS/BLSも必要で、コースを受けなければいけませんが、病院側が用意してくれたコースがあるのでお金は掛かりません。引っ越しもなかなか大変で、不動産会社を経由して、古くて狭い2LDKが現在とほぼ同等の1ヵ月2800ドル、光熱費込みで約3,000ドル(45万円)です。引っ越し料金は、引っ越し業者に頼むと1,800ドル(27万円)も掛かります。米国では小学校の格差が激しく、学区の良い地域に住むと、どうしても古くて狭くても家賃が高くなってしまうのです。現在のニューヨーク郊外も、今度のボストン郊外も、そこだけはなんとか守るようにしています。なお、皇后雅子さまが住まわれたBelmontと呼ばれる地域の近くで、この地域の公立の高校からハーバード大学に入ることも多いようです。なお、6月下旬に引っ越すのですが、家賃を6月1日から払わないとなかなか良い物件は借りられないと不動産会社に言われたこともあり、6月はほぼ2倍の家賃を払うことになってしまいます。また夏休みに日本に一時帰国するのですが、ボストンから東京への直航便は、ニューヨークより便が少ないせいか高額で、エコノミークラスでも往復で3,200ドル(48万円)もして、なんじゃこりゃと言いたいところです。フェローの給料ではなかなか厳しいものです。そんなこんなで日々追われていますが、ニューヨークのNプログラム※の会合でBBQなどがあり、最後のニューヨークステイを楽しみたいと思います。アイコンの自由の女神のあるリバティ島には大学生の時に行きましたが、この6年間は行かずじまいになりそうです。7月以降は、施設を変わると最初はどうしても大変だったりしますが、comfort zoneに甘んじることなく、いろいろな施設の違いを感じ、世界最高峰の病院の1つと呼ばれるMGHを楽しんでいきたいと思います。※Nプログラムは、東京海上日動火災保険株式会社が実施する、米国の教育病院における臨床医学レジデンシー・プログラムに日系の若手医師を派遣するプログラム。

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