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高齢者の骨折予防にビタミンD補充は有効か

 ビタミンD単独補充による骨折予防効果については、これまで一貫した結果が得られていない。今回、ビタミンD3が骨折リスクなどに及ぼす影響を評価した無作為化比較試験(FIND試験)により、ビタミンDがおおむね充足している高齢者集団ではビタミンD3補充を5年間行っても骨折リスクは低下しなかったことが、フィンランド・University of Eastern FinlandのToni Rikkonen氏らによって示された。Bone誌2026年12月号掲載の報告。 本試験の対象は、フィンランド在住の心血管疾患やがんの既往歴のない60歳以上の男性および65歳以上の女性であった。ビタミンD3を1,600 IU/日摂取する群、ビタミンD3を3,200 IU/日摂取する群、プラセボを摂取する群に1:1:1に無作為に割り付けられ、それぞれを5年間補充した。骨折はフィンランドの全国医療登録および死亡原因登録から把握した。骨折リスクは、年齢と性別で調整したCox比例ハザード回帰モデルを用いて評価し、プラセボ群を基準としたビタミンD3補充群のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は2,495人で、平均年齢68.2歳、女性42.8%であった。・血清25(OH)D濃度を測定した無作為抽出サブコホート(550人)では、ベースラインの平均血清25(OH)D濃度は74.8nmol/Lで、ビタミンD欠乏者(50nmol/L未満)は9.1%であった。12ヵ月後の平均濃度は、プラセボ群73.0nmol/Lに対し、ビタミンD3 1,600 IU/日群99.7nmol/L、ビタミンD3 3,200 IU/日群120.4nmol/Lに上昇した。・補充期間中に174例(7.0%)で少なくとも1回の骨折が確認された。少なくとも1回骨折した参加者の割合は、ビタミンD3 1,600 IU/日群8.8%、ビタミンD3 3,200 IU/日群6.2%、プラセボ群5.9%であった。・骨折リスクは、プラセボ群と比較して、ビタミンD3 1,600 IU/日群で有意に増加したが、ビタミンD3 3,200 IU/日群では有意な増加は認められなかった。 -ビタミンD3 1,600 IU/日群 HR:1.52、95%CI:1.06~2.18 -ビタミンD3 3,200 IU/日群 HR:1.07、95%CI:0.72~1.58・補充終了後も平均3.2年間追跡した延長追跡を含む7.3年間の解析でも、ビタミンD3 1,600 IU/日群ではプラセボ群と比べて骨折リスクが高かった。 -ビタミンD3 1,600 IU/日群 HR:1.40、95%CI:1.08~1.80 -ビタミンD3 3,200 IU/日群 HR:1.08、95%CI:0.83~1.41・骨折のサブタイプ別・部位別の解析では、いずれの群間比較においても統計学的に有意な差は認められなかった。・年齢、性別、BMI、骨折や転倒の既往、骨粗鬆症の有無などによるサブグループ解析でも、全体としてビタミンD3補充による骨折予防効果を示す結果は得られなかった。 研究グループは、1,600 IU/日群で認められた骨折リスクの増加について、「最も高用量で血清25(OH)D濃度が高かった3,200 IU/日群ではリスク増加がみられていないことから、ビタミンD3補充による直接的な影響であるとは考えにくい」と考察したうえで、「ビタミンD3 1,600 IU/日または3,200 IU/日の5年間の補充は骨折リスクを低下させなかった。これらの結果は、ビタミンDがおおむね充足している高齢者における骨折予防のためのビタミンD3補充を支持するものではない」とまとめた。

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静岡がんセンター、世界の専門家を招く「Oncology Seminar」をスタート

 静岡県立静岡がんセンターは2026年8月、国内外のがん診療の専門家を招く「Shizuoka Cancer Center Oncology Seminar」をスタートした。英語で講演とディスカッションを行う30分間のウェビナーで、以後月1回開催が予定されている。国内と海外の演者が交互に登壇し、最新のがん診療について学ぶとともに、若手医師が英語で議論する機会をつくることも狙いだ。最新のがん情報&英語で世界と議論する医師の育成も セミナー企画の中心となったのは、同センター消化器内科(胆膵)医長の大場 彬博氏。企画の出発点には、従来の院内勉強会をもっと魅力あるものにしたいという思いがあった。 同科では毎週2回、朝の30分を使って最新論文や学会報告、自身の研究などを共有する勉強会を行ってきた。しかし、がん診療の高度化・細分化に伴い、同じ診療科でも専門領域が分かれて専門的なディスカッションがしにくい、国際学会の情報は発表直後からオンラインで入手可能となり、数ヵ月後に改めて学ぶ意義が薄れる、などの環境変化があった。従来型の勉強会だけではその役割を十分に果たしにくくなっている、との問題意識があったという。 また、がん領域では、新薬の開発と臨床研究は、複数の国で同時に行われることが一般的だ。自身や自施設のプレゼンスを高めるためには海外の研究者と共同研究を進め、国際学会でその成果を発表することが求められる。そして、発表するだけでなく、その場で質問し、議論するためには相応の英語力が欠かせない。世界で活躍する研究者が実際にどう議論しているのかを若手に見せ、そこに自ら加わる機会をつくりたい――。そうした思いが新たなセミナー構想につながった。 「細かな専門が違っても、英語での質疑応答や司会、モデレーター、スピーカーとしての役割を学ぶことはできる。若手医師の英語、ディスカッションのトレーニングの場としても位置付けることができればと考えました」(大場氏)。講師は、各領域を代表する研究者へと広がる 企画を具体化するにあたり、当初は大場氏が国際学会などで面識のあった医師に声を掛けるかたちで進め、ボランティアベースでの開催も考えていた。しかし、計画を進めるうちに、講師陣は各領域を代表する研究者へと広がっていった。 2027年4月に登壇予定の米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのEileen O'Reilly氏は、膵がんを専門とする腫瘍内科医で、2026年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)でスタンディングオベーションが起きた新薬daraxonrasibがテーマ。国内からも9月には胃がんの第一人者である国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏が登壇し、2027年5月には大腸がんのスペシャリストで日本臨床腫瘍学会理事長を務める吉野 孝之氏が予定されている。大場氏は、国内外の第一線の研究者を招くためには正式かつ継続可能なセミナーとして運営する必要があると考え、院内の体制を構築した。第2回まで開催、「講演よりディスカッションがメイン」 こうした準備を経て、8月の第1回には韓国・Asan Medical CenterのChanghoon Yoo氏が「胆道がん2次治療」をテーマに、続く9月の第2回には設楽 紘平氏が「HER2陽性胃がん」のテーマで出演した。 医師向けのセミナーは終業後の夜間の時間帯に1時間程度の長さで開催されることが多いが、本セミナーは朝7時45分からの30分間、講演15分・ディスカッション15分の構成を基本とする。講演と同じ時間を議論に割くことにも、大場氏の狙いがある。 「学会発表の主戦場はディスカッション。講演を聞くだけではなく、世界の第一人者がどのように問い、答え、議論を展開するのかを見てほしい。本セミナーを最新のがん診療を学ぶことに加え、次世代の医師を国際舞台へ送り出すための場、世界の専門家が継続的に集まるプラットフォームへ育てたい」、と大場氏は将来像を描く。Shizuoka Cancer Center Oncology Seminar 今後の予定10月5日 Choong-kun Lee氏(Yonsei Cancer Center、韓国):HER2陽性胆道がん11月19日 後藤 悌氏(国立がん研究センター中央病院):肺がん12月2日 Andrew H. Ko氏(UCSF、米国):米国における膵管腺がん2027年1月13日 石木 寛人氏(国立がん研究センター中央病院):緩和ケア2月12日 Zev A. Wainberg氏(UCLA、米国):NALIRIFOX3月9日 砂川 優氏(聖マリアンナ医科大学):転移大腸がん4月22日 Eileen O'Reilly氏(MSKCC、米国):daraxonrasib5月10日 吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院):SCRUM-Japan6月16日 Teresa Macarulla氏(HUVH/VHIO、スペイン):欧州の膵管腺がん、KRAS G12D阻害薬7月7日 曽根 美雪氏(国立がん研究センター中央病院):Interventional Radiology開催概要時間:原則午前7時45分~8時15分(日本時間)※欧州から参加の講師の場合は時差を考慮した時間設定を予定形態:Zoomウェビナー(ライブ配信後にYouTubeでも公開)、英語(同時通訳なし)第3回の参加方法リンク先のzoomから参加(事前登録不要)https://zoom.us/j/96427183964?pwd=8FNepnKeWfbwuuKSbNM8DPx86erZVJ.1#success第4回以降の参加方法は下記で告知予定Xhttps://x.com/pbocsccInstagramhttps://www.instagram.com/pbocscchr過去回のアーカイブは下記で公開予定YouTubehttps://youtube.com/@pbocscchr

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PCI後のACS患者、プラスグレルvs.チカグレロル/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた急性冠症候群患者において、標準的に使用するP2Y12阻害薬としてプラスグレルを用いても、チカグレロルと比較し主要心血管イベントのリスクは改善しなかった。スウェーデン・ヨーテボリ大学のElmir Omerovic氏らが、研究者主導のステップウェッジ法を用いた非盲検クラスター無作為化比較試験「SWITCH-SWEDEHEART試験」の結果を報告した。急性冠症候群患者において、P2Y12阻害薬としてプラスグレルとチカグレロルのどちらを優先すべきかは明らかになっていない。NEJM誌オンライン版2026年8月29日号掲載の報告。なお、本研究は2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表された。スウェーデン人口の約半分を占める3つのクラスターを無作為化 研究グループは、スウェーデン人口の約半分を占める7つの地域をおおむね同規模となる3つのクラスターに分類し、2021年5月1日~2024年8月31日まで患者登録を行った。同期間を9ヵ月間の4期間に区切り(事前に規定されたブランキング期間を除く)、標準的に使用するP2Y12阻害薬をチカグレロルからプラスグレルへ切り替えるよう無作為化した。 対象は、SWEDEHEARTレジストリに登録された18歳以上の急性冠症候群による初回入院患者で、SWEDEHEARTレジストリの一部であるSCAAR(Swedish Coronary Angiography and Angioplasty Registry)を用いて特定した、急性冠症候群に対しPCIを受けたすべての適格患者を主要解析コホートとすることが事前に規定された。 主要評価項目は、1年間に発生した全死因死亡、致死的または非致死的心筋梗塞および致死的または非致死的脳卒中の複合(主要心血管イベント:MACE)で、ITT集団を解析対象として、クラスターおよび暦時間を調整した混合モデルを用い、治療方針の効果推定量を求めた。1年時MACE発生率、プラスグレル方針群11.1%、チカグレロル方針群11.8% 計1万7,095例が登録され、このうち7,651例が標準的に使用するP2Y12阻害薬をプラスグレルとする方針に基づく治療を受け(プラスグレル方針群)、9,444例がチカグレロルを標準薬とする方針に基づく治療を受けた(チカグレロル方針群)。 被験者は、平均年齢(±SD)69.8±11.5歳、75歳以上が36.8%、女性が27.8%であり、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)を呈した患者が39.4%、非STEMIが43.7%、不安定狭心症が16.8%であった。 1年時MACEは、プラスグレル方針群で848例(11.1%)、チカグレロル方針群で1,113例(11.8%)に認められた(プラスグレルvs.チカグレロルの補正後オッズ比[OR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.77~1.06、p=0.22)。 大出血(広義のICD-10定義に基づく)は、プラスグレル方針群で321例(4.2%)、チカグレロル方針群で413例(4.4%)に発生した(補正後OR:0.80、95%CI:0.64~0.99)。

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アルツハイマー病治療薬の最前線、「トロイの木馬」「弁慶の泣き所」で攻める!【外来で役立つ!認知症Topics】第45回

アルツハイマー病抗体薬は「第2世代」へレカネマブとドナネマブの2つの抗アミロイドβ抗体薬の流通が広まり、その評価も定まりつつある。こうした既存薬の第1世代から第2世代に移ってきたかと思わせる治験段階の新薬がある。3剤に注目するが、今回はそのうちの2剤を紹介する。まず、これまでに開発された抗アミロイドβ抗体薬と抗タウ抗体薬について指摘されてきた弱点をまとめる。抗アミロイドβ抗体薬と抗タウ抗体薬の弱点(1)抗体薬は分子量が大きいので血液脳関門(BBB)の突破効率が低く、脳実質への移行効率がよくない。(2)アミロイドもタウも播種(seeding)によって病変が広がるが、とくにタウではその広がりの源泉を叩ける薬がなかった。(3)タウにはいくつものタイプがあり、細胞内外に存在するのだが、その一部だけを治療標的にしていた。今回紹介する2剤は、これらの弱点を克服しようとするものである。(1)のBBB通過という課題には正面突破を図るtrontinemab(トロンチネマブ)、(2)の病変拡大に対しては悪の源泉を断ち切るetalanetug(エタラネツグ)が対応する。BBB正面突破のtrontinemab抗アミロイドβ抗体薬である本剤の薬理作用を、次の例え話で説明したい。「国境の通過を公認されたトラックが走っている。男トロンチは、国境検問所の前でその通過を待ち構える。来たら偽パスポートを見せて同乗させてもらう。トラックが国境を通過し向こうの国に着いたら、飛び降りて敵を討つ」trontinemabは、現在は開発が中止されたgantenerumabに、ブレインシャトルというBBBを通過する技術を結合させた改変型抗体である。gantenerumab単体では脳内への移行効率が約0.1%と非常に低く、臨床試験で主要評価項目を達成できなかった。なお、実は日本における治験成績は有効だった1)。そこで移行効率を高めるため、以下のメカニズムによって改変された。脳に必要な鉄分などを取り込むため、血管内皮細胞にはトランスフェリン受容体1(TfR1)が発現している。ブレインシャトルとは、この受容体を「BBB突破の運び屋」として利用する技術だ。trontinemabは、アミロイドβに結合する抗体の末端にTfR1に特異的に結合するシャトルモジュールを載せている。本剤が血管内のTfR1に結合すると、毛細血管内皮細胞の膜が内側に落ち込み、抗体を取り込んだ小胞が細胞内にできる。小胞は血管内皮細胞の中を移動して侵入口とは反対側の脳実質の細胞膜に融合する。すると受容体から分離したtrontinemabが脳実質側へ放出される仕組みだ。本剤開発の方向性が「トロイの木馬型アプローチ」と呼ばれることがある。トロイの木馬とは、ギリシャ神話のトロイア戦争に登場する敵を欺いて多くの兵士を乗せて敵地内に侵入した巨大な木製の馬像のこと。つまり本技術は「抗体は血液脳関門において異物とされ通過できないから、その通過が許された受容体をハイジャックして通過する」という戦略である。治験成績では、投与開始から約6ヵ月で9割以上の患者でアミロイドが画像上ほぼ完全除去された2)。なお、この効果を得るのに従来薬なら1~1.5年を要した。認知機能に関する詳細なデータは未発表である。しかし脳内移行効率が非常に高いので、投与量や投与頻度の低減による医療経済的・身体的負担の軽減が期待される。またARIA-Eの出現率は1%台~5%未満と従来薬より1桁低い。反面、懸念されるのは脳以外の全身にあるTfR標的化による貧血や溶血といった副作用である。「弁慶の泣き所」を突いて伝染源切断のetalanetug伝染源切断の薬理作用を例え話で示す。「弁慶をやっつけようと屈強な者たちが武器を持って挑む。時には肩を傷つけたり腹を突いたりするのだが、弁慶はびくともしない。ところがたまたま、長い棒が弁慶の向こう脛を叩くと、弁慶はドーンと崩れ落ちてしまう。弁慶の泣き所とは、いくら強い人にもある唯一の弱点で、向こう脛のこと。急所を知ってそこを突く、これが必勝法だ」近年、多くの抗タウ抗体薬が開発されてきたが、それらはうまくいかなかった。その主因はタウのN末端を標的にしており、凝集の中心であるMTBR(微小管結合領域:Microtubule-Binding Region)を標的にしていなかったことだとされる。MTBRを標的にした本剤を説明する基本として、播種(seeding)について要約する。ある細胞において構造異常を生じたタンパク質が「種(seed)」となり、隣接する健常な神経細胞へと放出され取り込まれる。すると隣の正常であったタンパク質が自分と同じ異常な形に変性させられ、凝集が生じる。このプロセスは連鎖的に増幅していく。つまり播種は、病変が脳の広範囲へと広がる分子メカニズムである。タウタンパク質における播種の起点となる部位は、MTBRに存在する2つの短い6アミノ酸配列だ。etalanetugはこのMTBRを狙い撃ちする抗体医薬で、脳内で病的なタウ病理を拡散させる「タウ伝播種」に特異的に結合し、他細胞への広がりを阻止・除去する。最新の知見では、3種類の家族性/顕性遺伝性アルツハイマー病の遺伝子を有する者(発症前も発症後も)を対象に、抗アミロイドβ抗体薬レカネマブをバックグラウンド投与し、抗タウ抗体薬etalanetugが上乗せ投与された。その結果、MTBR-tau243やp-tau217などタウ凝集バイオマーカーの低下が脳脊髄液と血液中で確認され、タウPETでも脳内タウ蓄積の増加抑制、減少傾向が観察された3)。なお、患者数の多い「孤発性の早期アルツハイマー病(MCI・軽度認知症)」を対象としたグローバル第II相臨床試験(Study 202)も並行して進められている。しかし、記憶をはじめ認知機能における臨床効果の立証は、現段階ではなされていない。 1) Asada T, et al. Japanese participant data from three gantenerumab trials in early Alzheimer's disease. Alzheimers Dement. 2025;21:e70192. 2) Klein G, et al. Interim biomarker results for trontinemab, a novel BrainshuttleTM antibody in development for the treatment of Alzheimer’s disease. Alzheimers Dement. 2025;21(Suppl 5):e104288. 3) Andreozzi E, et al. Etalanetug (E2814) in dominantly inherited Alzheimer's disease: an open-label phase 1b/2 study to assess safety and target engagement in participants with mild to moderate cognitive impairment. Alzheimers Res Ther. 2026;18:87.

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第338回 自然あふれる仮想空間に浸ってクラシック音楽を聴くことで救急科患者の血圧が低下

高血圧切迫症を呈する救急外来の患者の著しく高い血圧を、川や木々の自然あふれる仮想空間(バーチャルリアリティ:VR)に浸ってクラシック音楽を聴いてもらうことで速やかに下げられるかもしれません1-3)。高血圧切迫症として知られる高血圧は集中治療室の患者にしばしば認められ、降圧薬で治療されます。薬物治療を補完する非侵襲的治療も重要視されるようになっており、たとえば水槽の魚を見ること4)やクラシック音楽を聴くこと5)がどうやら有意義なことが示唆されています。そこでトルコの首都アンカラのUniversity of Health Sciencesの救急医療医Safa Donmez氏らは、心身の緊張を解くそのような介入の組み合わせの効果を無作為化試験で検討してみることにしました。Donmez氏によると、収縮期血圧か拡張期血圧がそれぞれ180mmHg以上か110mmHg以上の高血圧切迫症が救急外来の患者にかなり多いそうです。高血圧切迫症の標準治療の降圧薬投与に加えて、救急外来の患者の多くに認められる心配や怯えの手当てもおろそかにはできません。というのも不安は血管をこわばらせて血圧をさらに上げうるストレスホルモンの放出を招くからです。さらには、騒音、まぶしい光、不確実性などの救急外来の環境そのものが事態の一層の悪化を招くかもしれません。ならば、患者がより穏やかに過ごせるようにすることで、血圧をより早く下げられるのではないか?Donmez氏のそんな期待を込めて実施された試験には、さしあたり症状や臓器損傷の兆候がみられない救急外来の高血圧切迫症患者130例が参加しました。全員が通常の降圧薬治療を受け、半数の65例にはVRヘッドセット(VRゴーグル)を着けてもらって森を流れる川、高い木々、木製の吊り橋を映す安穏な自然景観に浸ってもらいました。また、スマートフォンのプレイリストを使ってバッハ、モーツァルト、ドビュッシー、ヴィヴァルディ、チャイコフスキーなどのクラシック曲も聴いてもらいました。あとの半数の65例(対照群)はそうしませんでした。治療開始から15、30、60、90、120分後に血圧を測定したところ、VRゴーグルを着けてクラシック音楽を聴いた患者(介入群)の15分後の平均動脈圧(MAP)はベースラインから16mmHg下がって116mmHgとなり、対照群の12mmHg低下を有意に上回りました。ただし、その差は30分後には縮まり、60分後には有意ではなくなりました。忙しい救急外来の環境で血圧を速やかに落ち着かせることは患者の安全性とリソースの効率的使用の両方の観点で重要であり、介入群のMAPが早くも15分時点でより低下したことは注目に値するとDonmez氏は言っています。自然に浸ってもらうVRとクラシック音楽が今回の試験では一緒だったのでそれら単独での効果のほどは不明です。Donmez氏らはより長期の大規模な試験でその課題を調べるつもりです。また、それぞれの患者が選曲したらどうなるかも調べられる予定です。参考1)Donmez S, et al. EUSEM 2026.2)Virtual reality and classical music help to reduce blood pressure in patients in an emergency department / Eurekalert3)Virtual green spaces and classical music reduce blood pressure in hospital / NewScientist4)Cracknell D, et al. Environ Behav. 2016;48:1242-1269.5)Darki C, et al. Cureus. 2022;14:e27348.

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ドライアイと医師の集中力――診療中の「目の乾き」をどう防ぐか【医師のパフォーマンス向上術】第4回

ドライアイと医師の集中力――診療中の「目の乾き」をどう防ぐか「当直中に目がしょぼしょぼする」「夕方になるとカルテの文字がかすむ」「外来の途中で目が乾いてつらい」「手術や処置に集中していると、目の乾きに気づく」――。このような経験のある医師は少なくないのではないでしょうか。医師の仕事は、目を酷使する仕事です。電子カルテの閲覧、検査画像の読影、手術、顕微鏡、内視鏡のモニター、論文執筆、発表スライドの作成。医師の仕事の多くは、視覚情報を正確に読み取り、瞬時に判断することで成り立っています。そのため、目の乾きやかすみは単なる不快症状ではありません。集中力、作業効率、そして診療パフォーマンスに関わる問題です。ケアネットが30代以上の会員医師1,024人を対象に実施した「眼の健康問題」に関するアンケートでは、視力矯正としてコンタクトレンズを使用している医師は25.0%でした。また、日々の業務で視力等に支障を感じる場面として、カルテ入力・文書作成など文字を見る場面、論文閲覧、検査・処置などが挙げられています1)。医師にとって「見え方の質」は、日常診療の質を支える重要な基盤といえるでしょう。ドライアイは「見え方が不安定になる」疾患ドライアイは、単に涙が少ない状態ではありません。TFOS DEWS IIIでは、ドライアイは「涙液層および/または眼表面の恒常性喪失を特徴とする、症状を伴う多因子性疾患」と再定義されています。その背景には、涙液層の不安定性、涙液の高浸透圧、眼表面の炎症や障害、神経感覚異常などが関与します2)。つまり、ドライアイは「乾く」だけでなく、「見え方が不安定になる」病態でもあります。実際、ドライアイの患者さんは「視力検査では見えているのに、見えにくい」と訴えることがあります。これは涙液層が角膜表面の最前面で光を整える役割を担っているためです。涙液層が不安定になると、まばたきの直後は見えていても、数秒後には像がにじみ、かすみ、ピントが合いにくくなります。医師の診療中にこれが起これば、カルテ入力、画像確認、手元の処置、手術操作に余計な負荷がかかります。なぜ医師はドライアイになりやすいのか?医師がドライアイになりやすい背景には、大きく3つの要因があります。1. 長時間労働とモニター作業長時間労働では、電子カルテや検査画像を見続ける時間が増えるだけでなく、睡眠不足、当直中の睡眠不足、空調下での滞在時間の延長、コンタクトレンズの長時間装用などが重なります。睡眠不足や疲労は涙液分泌や眼表面の恒常性に影響し、空調や低湿度環境は涙液の蒸発を促進します。さらに、ビデオディスプレイ端末、いわゆるVDT作業でも瞬目(まばたき)回数が減少し、不完全瞬目が増えることが知られており、涙液層が不安定となり、眼表面の乾燥や炎症が進みやすくなります3)。電子カルテを見ながら患者さんの話を聞き、検査結果を確認し、処方や文書作成を行う医師は、まさにVDT関連ドライアイのリスクに常にさらされています。2. 集中による「まばたき」の抑制もう一つの要因は、集中によるまばたきの抑制です。外来で画像を細かく見るとき、手術で顕微鏡をのぞくとき、処置で手元に集中するとき、私たちは無意識にまばたきを減らしています。まばたきが減ると涙液が広がる機会が減り、角膜表面が乾きやすくなります。とくに手術室や外来診察室では、空調、低湿度、マスク周囲の気流、長時間の近見作業などが重なり、目の乾きを助長します。3. コンタクトレンズの長時間装用コンタクトレンズを装用している医師では、さらに注意が必要です。コンタクトレンズ装用中の不快感や乾燥感は、装用時間の短縮や中止につながる重要な問題として国際的にも議論されています4)。とくに当直中は、仮眠や夜間対応を挟みながら長時間コンタクトレンズを装用し続けることがあり、眼表面への負担が増えやすくなります。診療中は簡単にコンタクトレンズを外せない場面も多く、乾燥感や異物感を我慢しながら業務を続けることがあります。しかし、目の不快感を我慢することは、集中力を削る小さなストレスを抱え続けることでもあります。診療中の「目の乾き」を防ぐ3つのセルフケアでは、診療中の目の乾きをどう防げばよいのでしょうか。第1に、意識してまばたきを増やすことです。ただし、「たくさんまばたきをする」だけでは十分ではありません。重要なのは、上まぶたがしっかり下がり、角膜全体を覆う完全なまばたきを行うことです。不完全瞬目は涙液の分布不良や蒸発亢進につながり、ドライアイ症状を悪化させる要因になり得ます5)。また、瞬目トレーニングが不完全瞬目を減らし、ドライアイ症状や涙液安定性の改善に寄与する可能性も報告されています6)。カルテ入力や画像確認の合間に、数回ゆっくり完全瞬目を行うだけでも、涙液層を整える助けになります。第2に、画面環境を整えることです。モニターはやや下方視になる位置に置き、目を大きく見開かなくても見えるようにします。画面作業では瞬目回数が減少し、涙液蒸発が増えることが古くから報告されており、デジタル眼精疲労の大きな要因とされています7)。また、VDT症候群に関するレビューでは、適切な照明、グレア対策、モニターの人間工学的配置、定期的な休憩が視覚的快適性の改善に役立つ可能性が示されています8)。文字サイズを少し大きくする、画面輝度を周囲の明るさに合わせる、長時間の連続作業を避けるといった工夫も有用です。第3に、点眼を「症状が限界になってから使うもの」と考えないことです。私たちは肌の乾燥を防ぐために、症状が強くなる前から保湿を行います。しかし、目については、乾燥感や異物感、かすみが出てから初めて点眼する人が少なくありません。目の表面も、涙液によって常に保護されている組織です。人工涙液は不足した涙液を補い、目の快適性や視機能を支える役割があるとされています9)。本邦では、ドライアイに対して人工涙液、精製ヒアルロン酸ナトリウム点眼液、ジクアホソルナトリウム点眼液、レバミピド懸濁点眼液に加え、TRPV1阻害薬であるモツギバトレプ(商品名:アバレプト®懸濁性点眼液0.3%)などが使用可能です。ヒアルロン酸点眼:眼表面の保水や角結膜上皮障害の改善ジクアホソル:涙液やムチン分泌を促進レバミピド:ムチン産生促進などを介して眼表面の状態を改善モツギバトレプ:神経感覚異常が関与する症状への新たな選択肢このように、病態に応じて治療選択肢を考えることが重要です10,11)。大切なのは、点眼を漫然と使うのではなく、自分の症状や業務環境に合わせて選ぶことです。たとえば、電子カルテ作業や当直中の乾燥感が主体なのか、コンタクトレンズ装用に伴う不快感があるのか、角結膜上皮障害を伴っているのか、痛みやしみる感じが強いのかによって、適した点眼は異なります。防腐剤の少ない人工涙液やヒアルロン酸点眼などを、業務内容に合わせて適切に使うことで、乾燥による視機能の乱れを予防しやすくなります。とくにコンタクトレンズ装用者は、使用可能な点眼かどうかを確認しておく必要があります。自分の目を守ることは、医療の質を守ることドライアイ対策は、患者さんだけのものではありません。医師自身がよい状態で診療を続けるためのセルフケアです。目が乾く、かすむ、痛い、疲れるというサインは、単なる不快感ではなく、視機能の質が低下しているサインかもしれません。医師にとって、目は診療を支える重要な道具です。自分の目を守ることは、自分の集中力を守ることであり、ひいては患者さんに提供する医療の質を守ることでもあります。忙しい診療の中でも、目の乾きを我慢しない。まばたきを整え、画面環境を見直し、必要な点眼を適切に取り入れる。小さな工夫の積み重ねが、長くよい状態で働き続けるための「休息力」につながるのです。1)ケアネット. 手術時、視力低下で困っている外科医の割合は?/医師1,000人アンケート2)Wolffsohn JS, et al. TFOS DEWS III: Diagnostic Methodology. Am J Ophthalmol. 2025;279:387-450.3)Courtin R, et al. Prevalence of dry eye disease in visual display terminal workers: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open. 2016;6:e009675.4)Foulks G, et al. The TFOS International Workshop on Contact Lens Discomfort: report of the subcommittee on clinical trial design and outcomes. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2013;54:TFOS157-83.5)McMonnies CW. Incomplete blinking: exposure keratopathy, lid wiper epitheliopathy, dry eye, refractive surgery, and dry contact lenses. Cont Lens Anterior Eye. 2007;30:37-51.6)Kim AD, et al. Therapeutic benefits of blinking exercises in dry eye disease. Cont Lens Anterior Eye. 2021;44:101329.7)Tsubota K, et al. Dry eyes and video display terminals. N Engl J Med. 1993;328:584.8)Blehm C, et al. Computer vision syndrome: a review. Surv Ophthalmol. 2005;50:253-262.9)Aragona P, et al. Safety and Efficacy of a Preservative-Free Artificial Tear Containing Carboxymethylcellulose and Hyaluronic Acid for Dry Eye Disease: A Randomized, Controlled, Multicenter 3-Month Study. Clin Ophthalmol. 2020;14:2951-2963.10)Jones L, et al. TFOS DEWS III: Management and Therapy. Am J Ophthalmol. 2025;279:289-386.11)アバレプト懸濁性点眼液0.3% 添付文書/審査関連情報; 2025.

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男性乳がんに術前化学療法は有効か~SEERデータでの検討

 術前化学療法(NAC)は女性の乳がんで広く行われているが、男性の乳がんにおけるNACの有効性は十分に明らかになっていない。今回、中国・Zhejiang University School of MedicineのLiwei Pang氏らは、SEERデータベースを用いて、男性乳がんに対するNAC後の病理学的完全奏効(pCR)率および全生存期間(OS)をサブタイプ別に検討した。その結果、男性乳がん患者では女性乳がん患者と比較してpCR率が有意に低く、とくにホルモン受容体(HR)+/HER2-およびHR+/HER2+ではNACへの抵抗性がより高かった。また、男性乳がんにおいてpCRはOSの予後因子ではないことが示唆された。Breast Journal誌2026年9月12日号に掲載。 本研究は、米国のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースから2000~20年にNACを受けた男性乳がん患者のデータを抽出して実施した後ろ向き観察研究である。患者をHR+/HER2-、HR+/HER2+、HR-/HER2+、HR-/HER2-に分類し、pCR(ypT0/Tis ypN0)率を比較した。OSはKaplan-Meier法で推定し、log-rank検定により差を解析した。また、後ろ向き観察研究での選択バイアスを軽減するため傾向スコアマッチングを行い、単変量および多変量Cox比例ハザード回帰によりOSに関連する予後因子を検討した。 主な結果は以下のとおり。・NACを受けた男性乳がん260例が解析対象となった。・NACを受けた男性と女性の比較では、OSに有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.067、95%信頼区間[CI]:0.929~1.226、p=0.358)が、傾向スコアマッチング後の解析では、女性のOSが男性より良好であった(HR:0.930、95%CI:0.913~0.948、p<0.001)。・男性における5年OSは、pCR達成例で92%、非達成例で77.3%で有意差は認められなかった(HR:1.236、95%CI:0.787~1.942、p=0.357)。・男性では、術後化学療法はNACと比較してOSが良好であった(HR:3.223、95%CI:2.772~3.747、p<0.001)。・サブタイプ別のpCR率は、HR-/HER2+が50.0%(3例)、HR-/HER2-が41.7%(5例)、HR+/HER2+が10.7%(7例)、HR+/HER2-が5.5%(9例)であった。・サブタイプ別のOSは、HR+/HER2-(HR:1.363、95%CI:1.129~1.646、p=0.001)およびHR+/HER2+(HR:1.951、95%CI:1.449~2.627、p<0.001)でNACが術後化学療法より不良であった。一方、HR-/HER2+(HR:2.296、95%CI:0.807~6.538、p=0.119)およびHR-/HER2-(HR:1.758、95%CI:0.847~3.649、p=0.130)では、NACと術後化学療法で有意差は認められなかった。 著者らは、男性乳がんではpCRが生存率改善の予後因子ではないことが示されたことから、NACは必ずしも必要ではないかもしれないと考察している。

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Country Specific and Practical Clinical TrialsがNEJMに掲載される時代(解説:後藤信哉氏)

 臨床研究者はNEJMに論文を掲載されるのが夢である。NEJM掲載の審査は、きわめて慎重に行われており、世界の医学にインパクトを与える論文が発表されてきた。歴史的に循環器内科領域では、米国、欧州の研究代表者による論文が多かったが、日本などで施行された研究も、臨床へのインパクトが大きい場合には採択される場合があった。 本研究では、冠動脈にDES留置後12ヵ月のDAPTとクロピドグレル単独療法が、臨床的、病変的にhigh riskとされた症例において比較された。症例数は3,203例と、著しく多いわけではないが仮説検証には十分な症例数であった。 NEJMの論文として少し従来と異なるのは、primary end pointが死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳梗塞に加えて、重篤な出血イベントを加えている。すなわち、本研究は、従来のようなDAPTとSAPTの有効性・安全性の比較検証ではない。実臨床における有用性をcombined endpointにて評価している。新薬の認可承認試験ではないので、実臨床の指針になる本研究のような研究には意味と価値があると思う。さらに、本研究はglobal trialではない。韓国1国で施行された試験である。東アジアにおけるクロピドグレルの効果については、他の地域との比較における特異性などが従来から指摘されている。すなわち、本研究の結果は、全世界に適用できるものではないかもしれない。 筆者の目では、NEJMは少し変わった。1)純粋な科学性よりも実臨床への応用性を重視しているpracticalな研究でも採択されるかもしれない、2)必ずしも世界への応用が担保された研究でなくても採択されるかもしれない、など、日本人の研究者にもNEJMへの道は広くなったと思う。

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tozorakimab、喫煙歴を問わずCOPD増悪を3割抑制/NEJM

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)において、標準的な吸入療法とtozorakimabを併用した元喫煙者集団ならびに現喫煙者も含む全体集団では、中等度または重度のCOPD増悪の年間発生率がプラセボ併用と比較して有意に低下した。米国・ピッツバーグ大学のFrank C. Sciurba氏らOBERON and TITANIA Trial Investigatorsが、同一のプロトコールにより別々の施設で実施した2つの第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「OBERON試験」および「TITANIA試験」の結果を報告した。tozorakimabはインターロイキン-33(IL-33)を標的とするモノクローナル抗体で、IL-33シグナル伝達の調節異常がCOPDの病態に関与していることが示唆されていた。NEJM誌オンライン版2026年9月8日号掲載の報告。元喫煙者における中等度または重度COPD増悪の年間発生率を評価 両試験の対象は、登録の12ヵ月以上前にCOPDと診断され、過去3ヵ月間標準治療である吸入療法(3剤または2剤併用療法)による維持療法を継続している40歳以上の現喫煙者または元喫煙者であった。さらに、過去12ヵ月間に中等度以上のCOPD増悪が2回以上または重度の増悪が1回以上あることが適格条件とされ、そのうち少なくとも1回は全身性のステロイド治療を要し、少なくとも1回は維持療法中の発生であることとした。血中好酸球数に関する適格基準は設けなかった。 適格患者を、tozorakimab群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、吸入療法に加えて、それぞれ300mgを4週ごと52週間皮下投与した。 なお、当初はtozorakimab 300mgの4週ごと投与群、同8週ごと投与群、プラセボ4週ごと投与群の3群であったが、試験途中で第II相試験の結果に基づきプロトコールが修正され、8週ごと投与群への割り付けが中止された。すでに8週ごと投与群に割り付けられていた患者はそのまま投与を継続したが、有効性解析対象集団には含まれなかった。 主要評価項目は、元喫煙者集団における中等度または重度COPD増悪の年間発生率、重要な副次評価項目は、全体集団における中等度または重度COPD増悪の年間発生率であった。元喫煙者集団、全体集団のいずれにおいてもtozorakimab群で年間発生率が有意に減少 2022年1月3日~2024年12月20日に、OBERON試験で1,690例、TITANIA試験で1,896例がスクリーニングされた。そのうち無作為化され有効性解析対象集団に組み込まれた患者は、OBERON試験で877例(tozorakimab群446例[元喫煙者342例]、プラセボ群431例[同337例])、TITANIA試験で873例(tozorakimab群438例[元喫煙者350例]、プラセボ群435例[同344例])であった。 元喫煙者集団における中等度または重度COPD増悪の年間発生率は、OBERON試験ではtozorakimab群1.34件/年(95%信頼区間[CI]:1.14~1.58)、プラセボ群1.90件/年(95%CI:1.63~2.21)であり(率比:0.71、95%CI:0.57~0.88、p=0.002)、TITANIA試験ではそれぞれ1.37件/年(95%CI:1.19~1.57)、2.07件/年(95%CI:1.81~2.37)であった(率比:0.66、95%CI:0.55~0.80、p<0.001)。 全体集団における中等度または重度COPD増悪の年間発生率は、OBERON試験ではtozorakimab群1.41件/年、プラセボ群2.00件/年(率比:0.70、95%CI:0.58~0.85、p<0.001)、TITANIA試験ではそれぞれ1.44件/年、2.03件/年(率比:0.71、95%CI:0.59~0.84、p<0.001)であった。 有害事象の発現割合は、OBERON試験でtozorakimab群70.4%、プラセボ群77.2%、TITANIA試験でそれぞれ80.1%および79.8%であり、各試験の両群間で類似していた。

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2049年までに世界の1型糖尿病患者数が約3割増加と予測

 世界の1型糖尿病の患者数が、2049年までに急速に増加する可能性のあることが分かった。ステノ糖尿病センター(デンマーク)のAnders Green氏らの研究の結果であり、詳細は第62回欧州糖尿病学会(EASD2026、9月28日~10月2日、イタリア・ミラノ)での発表が予定されている。 この研究では、1型糖尿病の発症率、人口年齢分布、生存率に関する入手可能なデータに加え、各国におけるインスリン供給の歴史的変化のパターンも考慮に入れた、「DIAMOND-T1Dモデル」という新しい予測モデルを用いて、1型糖尿病の発症率、有病率、死亡率の変化を、全世界と国・地域別に予測した。その結果、世界の1型糖尿病患者数は、今後24年間で29%増加し、2025年の944万5,191人から2049年には1218万3,418人に達する可能性が示された。また、1年当たりの新規発症者数も同期間中に14%増加し、2049年には60万5,058人に達すると予測された。 国別に見ると、米国では、2025年の149万2,825人から2049年には205万5,235人と50万人以上増加、英国では同期間に31万3,725人から42万551人と10万人以上増加すると予測。このほか、ドイツやイタリア、フランス、オーストラリアなどを含む高所得国では患者数の増加が予測されたが、新規発症者数は2049年も2025年とほぼ同じ水準にとどまると見込まれている。 著者らによると、高所得国で予測される患者数の増加や有病率の上昇は、遺伝的要因や環境的要因に加え、これらの国々の優れた医療インフラを背景とした患者の検出率の高さを示唆するものだという。なお、日本の患者数は、2025年が13万3,800人で、2049年に14万9,097人と予測されている。 一方、現在の所得水準が低い国は、今後、インスリンへのアクセスの向上や血糖値モニタリングの普及によって生存率が向上すると見込まれることから、患者数の大幅な増加が見込まれる。例えば、世界銀行により低所得国とされるモザンビークは、2025年が9,604人で、2049年は1万9,478人、低中所得国とされるタンザニアでは同じく1万9,101人、3万9,673人に増加すると予測されている。 このほかに、1型糖尿病の発症は若年期に多いことも示され、2025年において新規発症例の42%を19歳以下が占めると推定された。所得水準別では、高所得国ではその割合が37%、低所得国では49%とされている。 また、1型糖尿病患者の全死因による死亡者数は、2025年の36万1,383人から2049年には53万7,621人に増加すると予測。なお、2025年において1型糖尿病患者の全死因死亡の15%は19歳以下が占めると推定され、この割合は高所得国では4%と低い一方、低所得国では34%に及ぶと推定された。 著者らは、「今回の研究結果は、特に医療資源の乏しい地域において、インスリンへのアクセスと医療の質を継続的に改善していく必要性を強調するものだ」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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ショウガは片頭痛予防に有効?

 オーストラリア・Bond UniversityのTiffany Atkins氏らは、片頭痛の治療およびマネジメントにおけるショウガの有効性を明らかにするため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMJ Evidence-Based Medicine誌オンライン版2026年8月14日号の報告。 著者らは、ショウガの単独または補助療法の効果を、プラセボまたは通常の有効対照薬(バルプロ酸、アミトリプチリン、スマトリプタンなど)と比較したRCTを対象とした。2025年3月26日(2026年4月16日に更新)までに公表された研究をPubMed、Embase、CINAHL、PsycINFO、Epistemonikos、Cochrane CENTRALより検索した。採用された対象研究について、引用文献および被引用文献のフォローアップ調査(前方・後方検索)を実施した。2人の著者が独立して文献のスクリーニングとデータ抽出を行い、Cochrane Risk of Bias 2(ROB 2)ツールを用いてバイアスのリスクを評価した。主要評価項目には、治療後の頭痛重症度または疼痛スコア、治療後に疼痛消失または疼痛緩和が得られた患者の割合、片頭痛発作の頻度と持続時間、片頭痛に伴う症状を含めた。ランダム効果モデルを用いたメタ解析を実施し、Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)手法を用いてエビデンスの確実性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・594例の患者を対象とした8件のRCTをメタ解析に含めた。・急性期治療において、ケトプロフェンにショウガを併用した場合とプラセボを併用した場合を比較すると、投与2時間後の頭痛重症度にほとんど、あるいはまったく差がない可能性が示唆された(平均差[MD]:-1.27、95%信頼区間[CI]:-1.46~-1.08、1試験、60例、エビデンスの確実性:低)。・片頭痛予防に古くから用いられているフィーバーフュー(ナツシロギク)とショウガの併用とプラセボとの比較、ショウガ単独とスマトリプタンとの比較において、疼痛緩和や疼痛消失が得られた患者の割合または投与2時間後の平均頭痛重症度が改善するかどうかについては、きわめて不確実であった。・予防療法として、有効成分を含む薬剤にショウガを併用した場合、プラセボの有無にかかわらず当該薬剤単独と比較し、3ヵ月時点での頭痛の重症度が有意に軽減する可能性が示唆された(統合MD:-3.18、95%CI:-3.94~-2.42、2試験、183例、エビデンスの確実性:低)。・しかし、バルプロ酸やアミトリプチリンといった有効成分を含む薬剤と比較し、ショウガと他のハーブを併用した場合、3ヵ月時点での頭痛の頻度、持続時間、重症度が低下するかどうかについては、きわめて不確実であった。・すべての評価項目におけるエビデンスの全体的な確実性は、「低い」~「きわめて低い」の範囲であった。 著者らは「既存のエビデンスは限られており、その確実性も『低い』または『きわめて低い』であった。そのため現時点では、ショウガが片頭痛の急性期治療または予防療法のいずれにおいて有効であるか、確実な判断を下すことは困難である。したがって、エビデンスの確実性を高めるためには、片頭痛の急性期治療および予防療法に関するさらなる試験が求められる」と結論付けている。

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香り付きの清掃製品が室内空気汚染の原因に?

 掃除したばかりの部屋に漂う柑橘系や松、花の香りには、予想外のものが伴っている可能性がある。それは、目に見えない空気汚染である。新たな研究で、一般的な香り付きの製品か植物由来成分の製品かにかかわらず、清掃製品から放出される香料成分が室内の空気中のオゾンと反応してナノ粒子を形成することが示された。この粒子を吸い込むと、肺の奥深くまで到達する可能性があるという。米パデュー大学土木・建設工学分野のBrandon Boor氏らによるこの研究は、米国化学会主催の秋季国際会議(ACS Fall 2026、8月23~27日、米シカゴ)で発表された。研究グループは、曝露を減らすため、無香料の製品を選ぶことや使用中に換気扇を使うこと、洗浄中はオゾン発生装置を使用しないことを推奨している。 Boor氏らは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック中に、洗浄剤や化学消毒剤が室内環境に与える影響について研究を始めた。研究を進める中で、同氏らはこれらの製品の多くに強い香料が含まれていることに気付いた。Boor氏は、「香料を入れる目的は多くの場合、室内を心地良い香りの空間にするためだ。しかし、きれいな空気は強い柑橘系の香りなどしない。実際には、何もにおいがしないはずだ」と述べる。 過去の研究では、松の木から放出されるピネンなどの植物由来のテルペン類がオゾンと反応して大気中のナノ粒子を生成することが明らかにされている。これらのナノ粒子は凝集し、最終的には雲の種となるほど大きくなる。しかし、森林ではテルペン類の濃度が比較的低いため、粒子形成はゆっくりと進行するという。 一方、室内で香り付きの製品を使用すると、香料成分が環境表面や噴霧された液滴から蒸発する際にテルペン類が放出される。洗浄液に含まれていることが多いテルペン類は、ピネン、リモネン(レモンなどの柑橘類に含まれる香気成分)、チモール(タイムに含まれる香気成分)、リナロール(ラベンダーなどに含まれる香気成分)などで、その濃度は自然界に存在する濃度よりもはるかに高いとされている。その結果、清掃中に空気中のテルペン類濃度は、森林での濃度の数十倍から数百倍にも達する可能性があるとBoor氏は指摘する。 日常的な清掃の過程で何が起きるのかを調べるため、研究グループは、キッチンや浴室などを備えた小さなモデルハウスで、従来の香り付きの液体製品と植物由来成分を含む消毒スプレーやウェットティッシュを使い、空気中の揮発性有機化合物とナノ粒子の粒径分布をリアルタイムで測定した。 その結果、環境表面の洗浄や消毒を行うと、テルペン類およびテルペノイド類の混合比は10~1,000 ppbまで急上昇し、しばしば屋外の森林環境で観測されるレベルを上回った。これらの化合物は、特にオゾンなどの室内酸化剤と反応し、ナノ粒子の核生成と成長を引き起こした。その核生成速度は1 cm3当たり毎秒約10万個、凝縮成長速度は1時間当たり最大300 nmで、屋外で一般的に観測される値を大幅に上回った。その結果、室内ナノ粒子数濃度は、一時的に1 cm3当たり10万~1億個に達した。さらに、これらのナノ粒子は、急速に成長することで呼吸器系のさまざまな部位に効率よく沈着する大きさに達し、その結果、単位時間当たりの吸入量は、自動車からの排出ガスなどの一次燃焼源による曝露と同程度かそれを上回った。 Boor氏は、「重要なのは、清掃によって環境表面からウイルスや細菌を除去できる一方、目に見えない空気汚染が生じる可能性があるという点だ。空気中に目に見えるほこりや煙はなくとも、こうした粒子は形成されている」と述べている。研究グループは、ナノサイズの粒子は、呼吸器への刺激や炎症の一因となったり、血流に入り込んだりする可能性があると警告している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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第313回 「安い薬価」が薬を遠ざける?-「ドラッグラグ」から「ドラッグロス」の時代へ

新薬がわが国に入ってこない「ドラッグロス」の現実海外では標準的に承認され使用されている医薬品が、日本では使えない--。かつては欧米より承認が遅れる「ドラッグラグ」が問題視されていましたが、近年はより深刻な「ドラッグロス」への懸念が急速に高まっています。ドラッグロスとは、「欧米の製薬企業が日本国内での治験や発売自体を見送り、新薬がいつまで待っても国内に入ってこなくなる事態」を指します。医師にとっても患者にとっても看過できないこの問題の背景には、国際的な薬価政策の地殻変動があります。米国・トランプ政権の「最恵国待遇(MFN)」政策がもたらす余波背景として急浮上しているのが、米国における薬価政策の大転換です。トランプ大統領は2025年、米国内の薬価引き下げを目的に「最恵国待遇(MFN)」に関する大統領令に署名しました。これは、わが国や欧州など他国の実質価格(ネット価格)を参照し、バスケットの中で「2番目に低い価格」などを基準に米国の公的保険などの価格を引き下げる政策です。世界最大の医薬品市場である米国は、グローバル新薬の売上・利益の大部分を支えています。その一方で、わが国の薬価は、算定時に米英独仏の平均価格を参照する外国平均価格調整があるものの、毎年の薬価改定や市場拡大再算定などにより、収載後に価格が急速に削られていく仕組みになっています。そのため、国際的に見ても低水準にとどまる品目が少なくありません。もし、わが国で安く設定された薬価が米国の参照価格の底を押し下げ、巨大市場である米国内の薬価引き下げに直撃するのであれば、製薬企業にとっては「わが国で安価に発売するより、わが国への投入自体を見送るか遅らせたほうが得策」という経営判断が成り立ってしまいます。国内企業の4割に影響、スイスでも起きている「新薬見送り」この懸念はすでに現実化しつつあります。日本製薬工業協会が加盟16社を対象に行った調査では、37.5%が「すでに米国の薬価政策による影響が生じている」と回答しました。国内での治験や開発プロジェクトの縮小、承認申請・発売時期の見直しといった動きが報告されています。ロシュやノバルティスなどの大手製薬企業が本拠を置くスイスでも同様の事態が進行しています。同国では2025年1月~2026年6月に承認された革新的新薬22品目のうち、約3割に当たる7品目で国内の保険適用申請が見送られました。米国との価格差が本国市場での収益に及ぼす影響を警戒した結果とみられており、わが国にとっても対岸の火事ではありません。低薬価の歪み-チルゼパチドの教訓と未発売新薬低薬価による歪みは、臨床現場にもすでに現れています。糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)は、わが国の薬価が主要国の中で最も低い水準に抑えられた結果、安価な入手を求めて近隣国から来日する「医療ツーリズム」や、自由診療による適応外の痩身目的処方が問題視されました。本来治療を必要とする患者への供給不安を招き、イノベーション評価と供給維持の難しさを浮き彫りにしています。さらに深刻な実例として、日経新聞(「がんや糖尿病、承認済み新薬の発売遅れ 割安な薬価を米欧勢が警戒か」)が報じたように、国内で製造販売承認を取得しながら薬価が決まらず発売に至っていない経口乳がん治療薬などの事例も出現し始めています。従来、診療報酬改定のたびに「薬価引き下げ」を財源として捻出し、医療費を調整してきたわが国の手法は、世界の薬価が連動する時代を迎えて完全に限界を迎えつつあります。海外ガイドラインで「標準治療」とされる分子標的薬や遺伝子治療薬にわが国だけアクセスできないという、医療の後進国化すら危惧される状況です。「薬価(単価)」から「処方量(ボリューム)」の適正化へでは、国民皆保険を維持しながら新薬アクセスを守るために、わが国はどう舵を切るべきでしょうか。第1に、医薬品の価値に応じたメリハリのある薬価制度(Value-based Pricing)の確立です。これまでにない治療効果をもたらす画期的新薬や、生命予後を有意に改善する薬剤には国際水準に見合う十分な薬価を認め、特許期間中は予見性の高い薬価を維持する一方で、既存薬と大差のない新薬は厳格に評価するという優先順位付けが不可欠です。残念ながらわが国で行われている費用対効果評価制度では、2019年に制度が始まって以降の価格調整の実績(図)で見ると特許期間中の45品目中36品目で薬価が引き下げられ、わずか9品目のみが薬価維持という状況でした。評価をしても薬価が引き上げられた新薬は1つもありませんでした(中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会)。製薬企業の業界団体からは議論が十分されないままであり、制度面の議論が尽くされず、かつ薬価を引き下げる局面にない現状では、費用対効果評価制度による価格調整は当面凍結すべきと提言しています。図 費用対効果評価制度における価格調整の実績画像を拡大する第2に、医師である私たちが向き合うべき課題が「薬剤使用量(ボリューム)」の適正化です。米国のシンクタンクであるランド(RAND)研究所の調査によると、わが国の1人当たり処方薬使用量、とりわけ新薬の数量シェアは経済協力開発機構(OECD)平均や米国を大きく上回っています。高齢者のポリファーマシーによる薬剤量の是正、不必要な抗菌薬の処方削減、バイオシミラーの活用、さらには患者の体格やエビデンスに基づいた抗がん剤の投与量・投与期間の適正化を進める必要があります。すなわち、「必要な新薬には適正な対価を支払い、必要性の低い投薬を減らす」という構造転換が求められるのです。おわりに国民皆保険の真の強みは、価値ある新薬が収載されれば全国民が公平に地域に関係なく治療を受けられる点にあります。しかし、この仕組みを維持するためには、「世界で最も薬価が安い国」を目指すのではなく、「真に必要な新薬を世界と同時に導入し、無駄な処方を削って確実に患者へ届ける国」を目指さなければなりません。政府が創薬・先端医療を国家成長戦略の柱に位置付ける今、臨床現場のわれわれ医師も、患者に求められるがままの漫然とした処方を見直し、医療資源の適正配分に主体的に関わっていく姿勢が求められています。 参考 1) 「新薬の薬価算定において価値評価をどのように導入すべきか」坂巻弘之(日本医事新報) 2) 米国の薬価政策が「新薬開発に影響」、国内4割…日本では薬が使えない「ドラッグロス」につながる恐れ(読売新聞) 3) がんや糖尿病、承認済み新薬の発売遅れ割安な薬価を米欧勢が警戒か(日経新聞) 4) スイスで「ドラッグロス」米との医薬品価格に差 革新薬3割、保険申請見送り(同) 5) 薬価引き下げは革新を阻害英アストラゼネカ マーク・デュノワイエCSO(同) 6) トランプ大統領MFN政策導入で処方薬価格は3.9%下落 今後10年間の上市新薬で5,290億ドル削減へ(ミクスオンライン) 7) 米国トランプ薬価政策がわが国に与える影響-わが国の薬剤費政策の根本的転換の好機-(日本総研) 8) 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会意見陳述 資料(中医協)

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加糖飲料の毎日の摂取は胃がんのリスク上昇と関連

 加糖飲料(sugar-sweetened beverage;SSB)が悪影響を及ぼすのは歯だけではないようだ。新たな研究で、SSBを1日1サービング(約237mL)超摂取する人の胃がんの発症リスクは、SSBをほとんど摂取しない人の約2.5倍である可能性が示された。米マス・ジェネラル・ブリガムがん研究所のAndrew Chan氏らによる研究で、詳細は8月17日付で「Gastro Hep Advances」に掲載された。 Chan氏は、「米国人を対象に、SSBの摂取と胃がんとの関連を示した研究は、われわれが知る限り今回が初めてである。胃がんは世界でがんによる死亡原因の第5位だが、食事が胃がんの発症にどう関与するのかについては、これまでほとんど分かっていなかった」と述べている。 この研究では、Nurses’ Health Study(NHS)とHealth Professionals Follow-up Study(HPFS)のデータを用いて、SSBまたは人工甘味料入り飲料(artificially sweetened beverage;ASB)の摂取と胃がん発症との関連を解析した。SSBには、レモネード、炭酸飲料、スポーツドリンクなどが含まれていた。飲料摂取に関する調査が開始された1986年を本研究のベースラインとし、このときの調査に回答したNHS参加者の女性看護師6万8,311人、HPFS参加者の男性医療従事者4万2,973人を解析に含めた。飲料の摂取量は、ほぼ摂取しない(1サービング未満/月)、1~3サービング/月、1~3サービング/週、4~7サービング/週、1サービング超/日の5カテゴリーに分類した。 320万4,001人年の追跡期間中に278例(NHS:140例、HPFS:138例)の胃がん症例が確認された。NHSとHPFSを統合して解析した結果、SSBの摂取量が1サービング超/日の群の胃がんの発症リスクは、ほぼ摂取しない群の2.45倍であった(ハザード比2.45、95%信頼区間1.49~4.04)。コホート別に解析しても、SSBの摂取量が1サービング超/日の群の胃がん発症のハザード比は、NHSとHPFSでそれぞれ3.04(95%信頼区間1.46~6.33)、1.99(95%信頼区間1.00~3.93)であった。一方、ASBの摂取と胃がん発症との間に関連は認められなかった。 研究グループは、リスク上昇の背景には、体重増加やインスリン抵抗性の上昇、ステロイドホルモンの不均衡、炎症、DNA損傷、ディスバイオシス(口腔細菌叢や腸内細菌叢のバランスが乱れた状態)が関与している可能性があるとの見解を示している。

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高齢者がん診療で迷ったら立ち返る7つの原則【高齢者がん治療 虎の巻】第13回

講師紹介<今回のPoint>暦年齢やPSだけではなく、「その人」を知ることから高齢者がん診療は始まるGAは治療の可否を決めるためではなく、治療を安全に届ける方法を考えるために使う高齢者がん診療に唯一の正解はなく、患者・家族・医療者で「その人に合った治療」を考えることが重要<症例>(第1回、第2回、第4回、第5回と同じ患者)88歳、女性。進行肺がんと診断され、本人は『できることがあるなら治療したい』と希望。既往に高血圧症、糖尿病、軽度の認知機能低下があり、Performance Status(PS)は1~2。診察には娘が同席し、『年齢的にも無理はさせたくない。でも本人が治療を望んでいるなら…』と戸惑いを見せる。遺伝子変異検査ではドライバー変異なし、PD-L1発現25%。さて、皆さんならどうしますか?この連載をここまで読んでくださった方であれば、おそらく「88歳だから治療しない」「PS 1だから標準治療」とすぐに決めることはないと思います。しかし、実際の診療では、このようにどちらとも簡単には決められない患者と毎日のように出会います。そこで今回は、これまでの連載でお伝えしてきた内容を振り返りながら、私が高齢者がん診療で迷ったときに立ち返りたいことを「7つの原則」として整理してみたいと思います。原則1 「何歳か」ではなく「どんな人か」を診る高齢者がん診療で確認したいのは、暦年齢やPSのみではありません。同じ85歳でも、毎日畑仕事をしている方もいれば、日常生活に介助を必要とする方もいます。併存疾患、認知機能、栄養状態、身体機能、社会的背景も一人ひとり異なります。したがって、「80歳を超えているから」「90歳だから」といった暦年齢だけを理由に治療を見送ることは適切ではありません。一方、「PS 0だから大丈夫」とも限りません。PSだけでは見えてこない脆弱性が、高齢者には少なくないからです。まずは年齢やPSという数字から少し離れて、「この患者さんはどのような人なのか」を知ること。それが高齢者がん診療の出発点です。原則2 治療を決める前に、生活を知るそこで役立つのが高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)です。G8、CGA7など、どのツールを使うかに目が向きがちですが、GAの目的は点数をつけることではありません。「最近、体重が減っていないか」「転倒していないか」「薬を自分で管理できているか」「買い物や食事の準備は誰がしているか」「通院を支えてくれる人はいるか」こうした情報は、がんの治療方針を考えるうえで極めて重要です。冒頭の患者も、PSだけを見れば治療可能にみえます。しかし、「G8:10.5点(失点項目:年齢、併用薬数、外出の制限など)/HDS-R 20点(認知症の可能性あり)」という情報が加われば、外来で安全に治療を継続できるかという新たな問題が見えてきます。GAは患者を分類するための検査ではなく、患者の生活を知るためのツールと考えると、日常診療での使い方がわかりやすくなります。原則3 GAは「治療する・しない」を決める検査ではない「G8の点数でレジメンや投与量を決めるのでしょうか?」と質問されることがあります。この問いに対する現時点での答えは「現時点でエビデンスはない」です。GAの目的は患者をfit、vulnerable、frailと分類して治療の可否やレジメン、投与量を機械的に決めることではありません。重要なのは、どの項目に脆弱性があり、そこに何ができるかを考えることです。冒頭の患者であれば、薬剤師には併用薬の整理を、医療ソーシャルワーカー(MSW)には家庭環境の支援を依頼し、チームで治療準備をすることが、安全な薬物療法を届けるために重要であると見えてきます。GAは点数をつけて終わりではありません。結果を「介入」に変えてこそ意味があると考えています(第4回、第5回)。原則4 治療法を決める前に、治療目標を共有する治療選択肢の説明に一生懸命になるあまり、私たちは時に、「その前に確認すべきこと」、すなわち治療目標の共有を忘れてしまいがちです。「この治療で何を目指すのか」「患者は何を期待しているのか」「患者にとって守りたい生活は何なのか」という治療目標の共有です。患者は「治療を受けたい」と話していても、「少しでも長く生きたい」のか、「自宅での生活をできるだけ維持したい」のか、「孫の結婚式までは元気でいたい」のかによって、選ぶ治療は変わるかもしれません。医療者が考える「最善」と患者が考える「最善」が一致しているとは限りません。治療の選択肢を提示する前に、まずゴールを共有する。そのうえでShared Decision-Making(SDM)を行うことが重要です。原則5 減量は「高齢だから」ではなく、理由をもって行う「高齢だから、とりあえず8割で始めよう」「G8が低いから20%減量しよう」日常診療ではよく行われている判断かもしれません。しかし、高齢者全員もしくはG8の点数で一律に減量することも、年齢だけで治療を見送ることと同じone size fits allの考え方です。腎機能、肝機能、栄養状態、身体機能、これまでの治療歴、予測される毒性などを評価し、「なぜこの患者では減量するのか」を考える必要があります。減量するのであれば、可能な限り高齢者を対象とした臨床試験で検証されたレジメンや、臨床試験で用いられた減量基準を参考にします。一方、GAで脆弱性があっても、十分な支持療法と多職種介入を行ったうえで標準治療を選択することもあります。減量すること自体が目的なのではなく、その患者に治療を安全に届けることが目的です。原則6 多職種は「困ってから相談する人」ではなく、最初から診療するチーム高齢がん患者の問題は、医師だけでは解決できません。栄養状態が悪ければ管理栄養士、ポリファーマシーがあれば薬剤師、身体機能低下や転倒があれば理学療法士、認知機能や生活環境に問題があれば看護師やMSWなど、それぞれの専門性が必要になります。重要なのは、問題が起こってから「紹介する」のではなく、治療開始前から患者の情報を共有し、必要な支援を一緒に考えることです。これまでの連載でも繰り返してきましたが、多職種とつなげて“点”が“線”になる。GAは多職種との連携に使ってこそ価値が出ます(第5回)。原則7 「正しい治療」ではなく、「その人に合った治療」を考える冒頭の88歳女性には、どの治療を選択すればよいでしょうか。もうおわかりと思いますが、紹介した情報だけで唯一の正解を決めることはできません。標準治療を選ぶことも、治療内容を調整することも、場合によっては薬物療法を行わないこともあり得ます。重要なのは、患者の状態を評価し、脆弱性に介入し、治療目標を共有し、治療によって得られる利益と不利益を説明し、患者・家族と医療者が一緒に治療を選択する患者の状態を評価し、脆弱性に介入し、治療目標を共有し、治療によって得られる利益と不利益を説明し、患者・家族と医療者が一緒に治療を選択することなのです。同じ患者でも、「何を大切にしたいか」が違えば、選択される治療も違って当然です。高齢者がん診療には、唯一の「正解」がないことが少なくありません。だからこそ、客観的な評価とエビデンスを土台にしながら、患者・家族・医療者が一緒に「この患者に合った治療」を選択することが重要なのだと思います。今回ご紹介した7つの原則は、特別な技術を必要とするものではありません。そして7つを並べてみると、どれも高齢者だけに必要な診療ではないことに気付きます。GAやGeriatric Assessment and management(GAM:高齢者機能評価に基づく介入)について学び、高齢者がん診療について考えるようになってから、私自身の患者の診かたも少しずつ変わってきました。高齢者がん診療は、年齢という数字に惑わされず、患者一人ひとりを診ることの大切さを、改めて私たちに教えてくれる領域なのかもしれません。7つの原則 虎の巻画像を拡大する次回はいよいよ本連載の最終回です。この連載を始めるよりずっと前から高齢者がん診療にかかわってきた私自身が、何を学び、何を考え、そして診療がどのように変わったのか。「高齢者がん診療で、私が変わった10のこと」として振り返ってみたいと思います。

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インフルで入院しやすい人、死亡リスクが高い人の特徴~メタ解析

 インフルエンザ患者における入院および死亡に関連するリスク因子を特定することは、臨床管理および公衆衛生戦略を策定するうえで重要である。今回、中国・Shandong University School of Public HealthのYa Gao氏らは、WHOインフルエンザ臨床ガイドラインの更新を支援する目的で、季節性インフルエンザ患者における入院および全死因死亡のリスク因子を系統的レビューおよびメタ解析で検討した。その結果、非重症例の入院の主要リスク因子として、65歳以上、免疫不全、心血管疾患、神経疾患、慢性呼吸器疾患が、重症例の全死因死亡の主要リスク因子として、2次細菌感染、栄養不良、敗血症、急性腎障害、65歳以上、慢性心血管疾患、悪性腫瘍、慢性神経疾患が示唆された。Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2026年9月8日号に掲載。 本研究では、Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Global Healthにおいて、2000年1月1日~2025年10月30日に発表された観察研究を検索した。対象とした研究は、年齢を問わず、検査で確認された季節性インフルエンザ患者を登録し、少なくとも1つのリスク因子と入院または全死因死亡との関連について調整済み効果推定値を報告したものとした。逆分散法によるランダム効果モデルでメタ解析を行い、エビデンスの確実性はGRADEアプローチで評価した。 主な結果は以下のとおり。・特定された3万5,808件の登録のうち、63研究(計215万518例、平均年齢:3.6~87.9歳)が適格基準を満たしていた。・非重症インフルエンザ患者における入院の主要なリスク因子として、GRADEで確実性が中または高のエビデンスにより、高齢(成人における10歳上昇当たりのオッズ比[OR]:1.72、95%信頼区間[CI]:1.02~2.89)、心血管疾患(OR:2.72、95%CI:1.24~5.94)、HIV感染/免疫不全/免疫抑制(OR:2.70、95%CI:1.55~4.70)、慢性呼吸器疾患(OR:2.24、95%CI:1.90~2.64)、神経疾患全般(OR:2.31、95%CI:1.65~3.24)が示された。・非重症例の入院に関する追加リスク因子としては、妊娠(OR:1.88、95%CI:1.73~2.05)、糖尿病(OR:1.84、95%CI:1.26~2.67)、悪性腫瘍(OR:1.75、95%CI:1.12~2.75)が認められた。・重症インフルエンザ患者における全死因死亡の主要なリスク因子として、2次細菌感染(OR:4.13、95%CI:1.53~11.14)、栄養不良(OR:3.29、95%CI:1.57~6.89)、敗血症(OR:3.19、95%CI:2.08~4.89)、急性腎障害(OR:2.92、95%CI:1.11~7.73)、65歳以上(OR:2.47、95%CI:2.21~2.75)、慢性心血管疾患(OR:2.43、95%CI:1.16~5.09)、悪性腫瘍(OR:2.21、95%CI:1.31~3.72)、慢性神経疾患(OR:2.08、95%CI:1.13~3.83)が示された。・重症例の全死因死亡に関する追加リスク因子としては、肝疾患全般(OR:1.86、95%CI:1.35~2.58)、HIV感染/免疫不全/免疫抑制(OR:1.79、95%CI:1.51~2.13)、慢性閉塞性肺疾患(OR:1.74、95%CI:1.37~2.20)が認められた。

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米国の20代の8割に心腎代謝症候群の兆候

 米国では多くの若年成人が、将来の心血管・腎・代謝に関する健康リスクを高める状態にあることが明らかになった。米ボストン大学のDonald Lloyd-Jones氏らの研究の結果であり、詳細は「Circulation:Population Health and Outcomes」に8月20日付で掲載された。平均年齢23歳という若年集団を対象とした調査で、参加者の約8割に心腎代謝(CKM)症候群の兆候が認められたという。 CKM症候群とは、代謝性リスク因子、腎疾患、心血管疾患が相互に関連し、心血管疾患の発症・進行リスクを高める状態を指し、米国心臓協会(AHA)によると、その初期兆候として、高血圧、脂質異常、インスリン抵抗性、糖尿病前症などが現れてくるという。Lloyd-Jones氏らは、子どもとその家族の健康状態を長期間追跡している研究(FF-CHAYA研究)の参加者、1,283人(平均年齢22.9±0.7歳、女性54.4%)から得られたデータを用いて、CKM症候群のステージを解析した。 その結果、ステージ4(心臓病や腎不全の発症後)の該当者はいなかったが、40.2%がステージ1(脂肪の過剰蓄積がある状態)に該当し、さらに36.2%はステージ2(代謝リスク因子がある状態)であり、2.8%はステージ3(潜在的な心血管疾患や腎疾患がある状態)に該当し、ステージ0(リスク因子なし)は20.7%にとどまった。また、頸動脈IMT(首の動脈の血管壁の肥厚)は、CKM症候群ステージが進んでいる人ほど高値となる有意な関連があり(傾向性P<0.001)、20代前半という若年期でも、頸動脈の動脈硬化性変化がみられる可能性が示された。 この結果について研究者らは、「心血管の健康状態を評価する指標である『Life's Essential 8(健康に重要な8項目)』に含まれている生活習慣や行動を、若い人たちに対して教育する必要性を強調するものだ」と述べている。なお、今回の研究では、CKM症候群のステージが進んでいる人ほどLife's Essential 8スコアが低値(高リスク)という有意な関連が認められた(傾向性P<0.001)。論文の上席著者であるLloyd-Jones氏は、「本研究により、30歳未満の成人において、CKM症候群のステージ分類とLife's Essential 8スコアは互いに補完し合うような関係にあり、動脈硬化が急速に進行して将来の心血管イベントのリスクが上昇する可能性のある人を特定するのに役立つことが示された」と解説している。 Life's Essential 8に含まれる生活習慣や行動とは、以下のとおり。 ・より良い食生活 ・より活動的な生活 ・タバコを避ける ・必要な睡眠を取る ・体重のコントロール ・コレステロールのコントロール ・血糖値のコントロール ・血圧のコントロール Lloyd-Jones氏は、「われわれは20代の若い人たちに、心血管系の健康状態を改善することを意識してほしいと考えている。私の診療経験から言えること、そして私が推奨することは、今日の健康、そして将来の健康のためにLife's Essential 8を心掛け、できる限り遵守するということだ」と話している。

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第77回 「もう打たなくていい」は本当か?最新155本の研究が示すコロナワクチンの効果と安全性

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンは、今も打つ意味があるのでしょうか。JAMA誌に発表された最新の系統的レビュー論文は、2025年8月以降に公表された155本の研究を総ざらいし、ワクチンが高齢者・妊婦・乳幼児・持病のある人で入院リスクをおおむね半分に減らし続けていること、そして新たな安全性の懸念は見つからなかったことを報告しました1)。いまも「風邪」で終わらない病気新型コロナは、すでに「ただの風邪」になったと感じている方も多いかもしれません。しかし、米国の2024~25年シーズンだけで、推定1,040万~1,670万例が感染し、29万~45万例が入院、3万4千~5万3千例が亡くなったと報告されています。入院率が最も高いのは75歳以上で、次いで生後6ヵ月未満の赤ちゃんです。そしてコロナ関連死の88.4%は65歳以上に集中しています。つまり「重症化しやすい人」がはっきりしている病気なのです。今回のレビューは、米国の研究チームが2025年8月~2026年6月末に発表された論文1万1,829本から、質の基準を満たした155本を選び、最新の流行に合わせて更新されたワクチンの効果と安全性をまとめたものです。入院リスクは「およそ半分」結果をそれぞれ数字で見てみましょう。ワクチンの有効率(VE)とは、「接種した人が、しなかった人と比べて発症などのリスクをどれだけ減らせたか」を示す割合です。65歳以上の高齢者:2025~26年シーズンのワクチンで、コロナ関連の入院リスクが53.0%低下。集中治療室(ICU)入室に対しては57.0%、人工呼吸や院内死亡に対しては73.0%の減少が報告されています。18〜64歳の成人:入院リスクが54.0%低下(2024~25年シーズン)。妊娠中の接種:妊婦本人の救急外来受診が58.0%減少。さらに生まれてきた赤ちゃんの生後2ヵ月間のコロナ関連の受診も50〜54%減りました。妊娠のどの時期に打っても効果がみられています。生後9ヵ月~4歳の乳幼児:救急外来受診が76.0%減少。免疫能が低下している人(透析患者など):ICU入室や死亡といった重篤な結果が32~53%減少。医療従事者:3~5回接種した人は2回だけの人に比べ、検査で確認された感染が41.0%、いわゆる「コロナ後遺症」も57.0%少なくなっていました。注意すべきは、これらは「感染そのものをゼロにする」数字ではないことです。ワクチンの主な役割は、たとえ感染しても入院や死亡といった深刻な事態を避けることにあり、その効果は「おおむね半分に減らす」と覚えておくとよいでしょう。安全性はどうだったかワクチンの話題になると必ず出てくるのが副反応の懸念です。今回のレビューでは、心筋炎・心膜炎、心筋梗塞、ギラン・バレー症候群、脳卒中、血栓症といった「特に注目すべき有害事象」について、150万例を超える米国退役軍人のデータを含む複数の大規模研究を検証しました。結論は「新たな安全性の懸念は見つからなかった」というものです。心筋炎については、若い男性で2回目接種後にリスクが上がるという報告が以前からあり、米国では2022年2月に接種間隔を延ばす指針の変更が行われています。今回のレビューで心筋炎リスクの上昇を報告した研究は、いずれもこの変更前に接種した人を対象としたもので、変更後に限って調べた研究では新たなリスク上昇は報告されていません。妊婦では、死産、早産、低出生体重児のいずれも増加はみられず、むしろ早産はわずかに少ないという結果でした。インフルエンザワクチンとの同時接種でもリスク上昇は確認されていません。もちろん限界もあります。多くが観察研究であり、接種する人としない人の背景の違いを完全には取り除けません。また、これは米国のデータであり、接種状況や流行が異なる日本にそのまま当てはまるとは限りません。それでも、私たちが知っておきたいのは以下の点です。コロナは今も高齢者や乳幼児にとって重い病気であり、更新されたワクチンは重症化リスクをおおむね半分に減らし、その安全性は膨大なデータで裏付けられ続けている、ということです。とくに65歳以上の方、妊娠中の方、持病で免疫が下がっている方は、秋の流行シーズン前にかかりつけ医と接種について相談する価値があるでしょう。1)Lipson RA, et al. COVID-19 vaccine effectiveness and safety for the 2026-2027 respiratory season. JAMA. 2026 Sep 2. [Epub ahead of print]2)Wiegand RE, et al. Interim estimated effectiveness of 2025-2026 COVID-19 vaccines in adults using a test-negative design. JAMA Netw Open. 2026;9:e2625152.3)Ma KC, et al. Estimated effectiveness of 2024-2025 COVID-19 vaccination against severe COVID-19. JAMA Netw Open. 2026;9:e2557415.4)Eide HN, et al. COVID-19 mRNA vaccination in pregnancy and risk of infection in early childhood. Pediatrics. 2026;157:e2025073661.5)Irving SA, et al. Effectiveness of 2024-2025 COVID-19 vaccines in children in the United States-VISION, August 29, 2024-September 2, 2025. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2025;74:607-614.

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糖尿病へのスタチン、開始時期で認知症リスクに差?/ESC2026

高齢化に伴い認知症の負担は増大しており、とくに糖尿病患者ではリスクが高いことが知られている。一方、LDLコレステロールは認知症の修正可能なリスク因子として注目されている。そこで、デンマーク・Copenhagen University Hospital-Herlev and GentofteのTummas Ternhamar氏らは、2型糖尿病診断後のスタチン開始時期と認知症リスクとの関連を検討した。その結果、診断後1年以内の「スタチン早期開始」が、全認知症リスクの有意な低下と関連することが示された。本結果は、2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表され、The Lancet Regional Health Europe誌オンライン版2026年8月27日号に掲載された。本研究は、デンマークの全国レジストリを用いた観察研究である。対象は、2006~19年に40歳超で2型糖尿病を発症した、スタチン未使用の13万2,585例。糖尿病診断日から、認知症、死亡、国外移住、診断後10年、または2021年12月31日のいずれか早い時点まで追跡した。Clone-Censor-Weight法を用いて、(1)診断後5年間スタチンを開始しなかった非投与群(対照)、(2)診断後1~5年に開始するスタチン後期開始群、(3)診断後1年以内に開始するスタチン早期開始群における認知症の発症率を解析した。主要評価項目は、死亡を競合リスクとして扱ったAalen-Johansen生存曲線に基づく10年時の全認知症リスクとし、副次評価項目として血管関連認知症(血管性認知症および詳細不明の認知症)およびアルツハイマー型認知症を評価した。主な結果は以下のとおり。・患者13万2,585例の内訳は、スタチン非投与群5万6,693例、スタチン早期開始群5万2,496例、スタチン後期開始群2万3,396例で、診断時の平均年齢はそれぞれ63.5歳、59.8歳、59.5歳であった。・追跡期間中央値は7.1年(四分位範囲[IQR]:3.8~9.9)で、全認知症は3,592例(2.7%)に発症した。血管関連認知症は2,532例(1.9%)、アルツハイマー型認知症は1,571例(1.2%)で、511例(0.4%)は両方の診断を受けていた。・全認知症の10年時の絶対リスクは、非投与群3.9%、早期開始群3.3%、後期開始群3.5%であった。・非投与群と比較した10年時の全認知症相対リスク(RR)は、早期開始群で15%低下(RR:0.85、95%信頼区間[CI]:0.79~0.91)、後期開始群で10%低下(RR:0.90、95%CI:0.85~0.97)であった。・10年時の絶対リスク差(対非投与群)は、早期開始群で0.59%ポイント低下(95%CI:0.34~0.86)、後期開始群で0.38%ポイント低下(95%CI:0.12~0.61)であった。・全認知症リスクは3年、5年、8年時でも非投与群で最も高く、次いで後期開始群、早期開始群の順に低かった(10年間の曲線比較:すべてp<0.001)。・血管関連認知症では早期開始群(絶対リスク差:0.61%ポイント低下)、後期開始群(同:0.44%ポイント低下)ともに段階的なリスク低下が認められたが、アルツハイマー型認知症では明確なパターンはみられなかった。本研究結果について著者らは、2型糖尿病患者におけるスタチン治療は認知症リスクの低下と関連し、その効果は早期に開始した患者で最も顕著であったとまとめている。

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卵巣がん患者の17.1%が診断後3年で心血管イベントを発症/Gynecol Oncol

 卵巣がん患者は、非がん患者と比較して心血管イベントリスクが増加していることが明らかになった。また、その傾向は若年患者(55歳未満)においてより顕著であった。 婦人科がん患者の間では心血管疾患(CVD)の負担が大きいとされる。さらに治療の進歩により生存率が向上するにつれ、CVDの脅威は増大している。 卵巣がんとCVDの関係は十分に解明されていないものの、卵巣がんの両側卵巣摘出術(外科的閉経)は、エストロゲンの心臓保護効果の喪失を介してCVDリスクの上昇に関与しているとされる。 そのような中、米国・イェール大学のAbdelrahman AlAshqar氏らは後ろ向きコホート研究を実施し、卵巣がん患者と非がん患者における主要心血管イベント(MACE)の発生を比較した。この研究では、保険請求データとSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)プログラムのデータを使用し、18歳以上の卵巣がんで両側卵巣摘出術を受けた患者と、良性疾患で同摘出術を受けた患者を傾向スコアマッチングしてMACEの発生を比較した。本研究結果はGynecologic Oncology誌オンライン版8月号で発表された。 主な結果は以下のとおり。 ・1,148例の卵巣がん患者を2,284例の非がん患者とマッチングさせた。・追跡期間の中央値は、卵巣がん患者で29ヵ月、対照群で40ヵ月であった。・1年、2年、3年、5年後のMACEリスクは、対照群(それぞれ5.3%、9.1%、12.9%、18.6%)と比較して、卵巣がん患者(それぞれ7.7%、12.0%、17.1%、24.8%)で高かった。・卵巣がんはMACEリスクの増加と関連していた(ハザード比[HR]:1.33、95%信頼区間[CI] :1.14~1.56)。・卵巣がん患者のMACEリスクを年齢別に見ると、55歳未満のHRは1.95(95%CI:1.01~3.58)、55歳以上のHRは1.30(95%CI:1.09~1.53)で、55歳未満の患者でMACEリスク増加が顕著であった。 卵巣がん患者は、非がん患者よりもMACE発生リスクが増加しており、その傾向は若年患者において強いことが示された。

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