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European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer(ERSPC)試験は、PSA検査が前立腺がん死に及ぼす影響を評価するために、1993年から順次欧州8ヵ国が参加して行われた多施設共同無作為化試験。オランダ・ロッテルダム大学医療センターのMonique J. Roobol氏らERSPC Investigatorsは、その長期アウトカムの最新解析を行い、追跡期間中央値23年において、PSA検査勧奨を繰り返し受けているスクリーニング群は非勧奨(対照)群と比べて、前立腺がん死が持続的に減少し、harm-benefit比は改善していることを示した。NEJM誌2025年10月30日号掲載の報告。前立腺がん死への影響を非勧奨群と比較 ERSPC試験は1993年にオランダとベルギーで開始され、その後1994~98年にスウェーデン、フィンランド、イタリア、スペイン、スイスの医療施設が、2000年と2003年にフランスの2施設が加わった。試験対象は、全施設において事前に定義したコア年齢層(55~69歳)の参加者が含まれており、研究グループはこの年齢層に焦点を当て長期アウトカムの解析を行った。 コア年齢層の被験者はスクリーニング群(勧奨は最少2回、最多8回。勧奨間隔はほとんどの施設が4年に1回[スウェーデンとフランスは2年に1回、ベルギーは7年に1回])または対照群に1対1(フィンランドのみ1対1.5)の割合で無作為に割り付けられた。PSA検査陽性のカットオフ値は、ほとんどの施設で3.0ng/mLが用いられ(フィンランドとイタリアは4.0ng/mL)、陽性の場合には経直腸的超音波ガイド下生検を受けた。 主要アウトカムは、前立腺がん死であった。副次アウトカムは、診断時のEuropean Association for Urologyリスク分類により層別化された前立腺がんで、リンパ節/骨転移あり、またはPSA値100ng/mL超の場合は進行前立腺がんと定義した。 主要解析は、追跡が2020年12月31日または無作為化後23年のいずれか先に到達した時点で評価した。経年にスクリーニング群で前立腺がん死亡率低下、harm-benefitプロファイル向上 解析にはフランスの被験者(プロトコール順守率50%未満のため)と非コア年齢層を除外した計16万2,236例が包含された(スクリーニング群7万2,888例、対照群8万9,348例)。無作為化時の年齢中央値は60歳(四分位範囲:57~64)。生存被験者の追跡期間中央値は23年(四分位範囲:22~23)であった。スクリーニング群は検査を平均2回受けており、6万259例(83%)が少なくとも1回受け、うち1万7,077例(28%)が少なくとも1回陽性となり、生検順守率は89%であった。 追跡期間中央値23年時点の前立腺がん累積死亡率は、スクリーニング群1.4%、対照群1.6%であり、スクリーニング群が対照群より相対的に13%低かった(率比:0.87、95%信頼区間[CI]:0.80~0.95)。前立腺がん死の絶対リスク減少は0.22%(95%CI:0.10~0.34)で、前立腺がん死1例の予防に要するスクリーニングへの勧奨者数(number needed to invite:NNI)は456例(95%CI:306~943)、前立腺がんの診断者数(number needed to diagnose:NND)は12例(8~26)であった。これに対して追跡16年時点では、NNIは628例(95%CI:419~1,481)、NNDは18例(12~45)であった。 前立腺がんの累積発生率は、スクリーニング群(14%)が対照群(12%)より高率であり(率比:1.30、95%CI:1.26~1.33)、前立腺がんの絶対過剰発生率は、1,000人当たり27例(95%CI:23~30)であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「PSAベースのスクリーニングは、前立腺がん死亡率の低下と良好なharm-benefitプロファイルの向上に資することが示されたが、過剰診断および不必要な介入という関連リスクの懸念は依然として残っている」とし、「今後のスクリーニング戦略は、ベネフィットを維持しつつそれらの有害事象を最小限に抑えるリスクベースのアプローチに重点を置くべきであろう」とまとめている。