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ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。大阪大学の忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。もはや誰も覚えていない不定期連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」ですが、読者の皆さまが忘れたころに新興再興感染症というものは起こるものなのです。そうです、現在世間では「ハンタウイルス感染症」なるものが毎日ニュースをにぎわせています。今回はこの「ハンタウイルス感染症」の気を付け方について学んでいきましょう。感染症学習に使えるアプリさて、ハンタウイルス感染症について知りたい場合、一番手っ取り早いのは、そう、私が自作したiPhoneアプリ「くつ王感染症クイックリファレンス」で調べることです!トップ画面で「ハンタウイルス」と入れれば、あっという間に要点が丸わかり!App Storeで「くつ王感染症クイックリファレンス」を検索してみよう!アプリの詳細は最後の方をご覧ください!ハンタウイルスの概要宣伝はこれくらいにしておきまして…ハンタウイルス感染症は、ウイルス性出血熱の一群に含まれる重要な人獣共通感染症であり、世界各地に分布しています。まず、大事な事実として本疾患は臨床的に2つの主要な症候群を呈します。ヨーロッパおよびアジアでは腎症候性出血熱(HFRS)が、アメリカ大陸ではハンタウイルス肺症候群(HCPS)(またはハンタウイルス心肺症候群)が主に報告されています1, 2)。これらは別の疾患として捉えられていますが、血管透過性の亢進という共通の病態生理を基盤としており、臨床像においても多くの重複が見られるのが特徴です。図 ハンタウイルス感染症の流行地域と感染経路(文献1よりNotebookLMで作成)さらに、ハンタウイルスは、Bunyavirales目Hantaviridae科のOrthohantavirus属に分類されるウイルスの総称であり、表のようにヨーロッパ・アジアでHFRSを起こすハンタウイルス、そして、アメリカ大陸でHCPSを起こすハンタウイルスにもそれぞれ複数の種類が知られています。表 主要な原因ウイルスと臨床的特徴の比較画像を拡大する(文献1より作成)ハンタウイルスの症状、診断と治療なんか急に話がややこしくなってきたと思われるかもしれませんが、それぞれの細かいウイルスまで覚える必要はありません。主な自然宿主は齧歯類です。ウイルスは宿主の唾液、尿、糞便中に排泄され、人間はそれらが含まれるエアロゾルを吸入することで感染します。特筆すべき例外として、中南米のアンデスウイルス(ANDV)は、例外的にヒトからヒトへの感染が確認されている唯一のハンタウイルスであり、密接な接触がリスク要因となります3,4)。たとえば、誕生日のパーティーやお通夜への参加、同じ車内で長時間一緒に過ごしたなどの場面での感染が報告されています。注意すべき点としては、これまでに患者から医療従事者への感染例も報告されていることです。症状ですが、まず潜伏期間が長いのが特徴です。今回問題になっているANDVでは平均18日程度と報告されており、正確な渡航歴・接触歴・曝露歴の聴取が不可欠です。HFRS(腎症候性出血熱)では典型的には5つの病期(発熱期、低血圧期、乏尿期、利尿期、回復期)をたどります。高熱、頭痛、腹痛、背部痛に加え、視覚異常が感染者の最大70%に見られます。HCPS(ハンタウイルス肺症候群)では2~7日間の前駆症状(発熱、筋肉痛など)を経て、呼吸不全が急激に進行します。これは肺血管透過性の亢進により、数時間以内に非心原性肺水腫、呼吸不全、心原性ショックが進行するというものです。画像所見では、両側性の隔壁肥厚やすりガラス影、胸水貯留が急速に拡大します。どちらの病型にも共通している病態が「血管透過性の亢進」でありまして、HFRSでは主に腎髄質の毛細血管が、HCPSでは主に肺の毛細血管が強く影響を受けることがわかっています。先述の表にも記載していますが、致死率はHFRSでは1~12%、HCPSではなんと最大45%にも及びます。きわめて重症度の高い感染症です。診断は抗体検査またはPCRによって行います。IgMは通常、発症初期から検出可能とされます。RT-qPCRは高感度であり、抗体出現前の早期診断にきわめて有用です5)。治療については、リバビリンや高用量ステロイド、回復者血漿療法などが検討されてきましたが、現時点で確立した治療法はありません6,7)。体外式膜型人工肺(ECMO)が注目されており、血管透過性亢進が回復するまでECMOを使用することで予後が改善したという報告があります8)。とまあ、このように恐ろしいハンタウイルス感染症ですが、果たしてわが国に持ち込まれるリスクはどれくらいあるのでしょうか?次回はそこんとこを検討していきたいと思います。1)Vial PA, et al. Lancet Infect Dis. 2023;23:e371-e382.2)Manigold T, Vial P. Swiss Med Wkly. 2014:144:w13937.3)Padula PJ, et al. Virology. 1998;241:323-330.4)Martinez VP, et al. N Engl J Med. 2020;383:2230-2241.5)Guzman C, et al. Expert Rev Anti Infect Ther. 2015;13:939-946.6)Mertz GJ, et al. Clin Infect Dis. 2004;39:1307-1313.7)Vial PA, et al. Antivir Ther. 2015;20:377-386.8)Wernly JA, et al. Eur J Cardiothorac Surg. 2011;40:1334-1340.