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不思議の国のアリス症候群、特定の薬剤が関連か

 不思議の国のアリス症候群(Alice in Wonderland syndrome:AIWS)は、物体や人の大きさが変わって見える、体が宙に浮くような感覚、時間の歪みなどの視覚的・知覚的歪みを伴う神経疾患である。従来から片頭痛やてんかん発作との関連が指摘され、その後、腫瘍や感染症、さらには薬物との関連も報告されている。フランス・ニース大学病院のDiane A. Merino氏らによる研究グループは、世界保健機関(WHO)の医薬品安全性データベースを解析した結果、モンテルカストやアリピプラゾールなどの特定の薬剤がAIWSの発現に関与している可能性を明らかにした。Psychiatry Research誌2026年2月号に掲載。 本研究では、1967年~2024年12月15日までにWHO医薬品安全性データベースVigiBaseに登録されたAIWS症例を抽出し、小児(0〜17歳)と成人(18歳以上)に分けて不均衡分析を実施した。AIWSと薬剤の関連性は、シグナル指標としてInformation Component(IC)と95%信頼区間(CI)を算出し、95%CIの下限値(IC025)が正の値を示す場合をシグナルが検出されたとみなした。 主な結果は以下のとおり。・抽出されたAIWS 87例のうち、小児は26例(29.9%)で平均年齢7.1歳(標準偏差[SD] 4.0)、成人は45例(51.7%)で40.6歳(SD 13.0)であった。・56例(64.4%)が重篤と判断された。転帰が判明している症例のうち43例(79.6%)が回復または回復中であることが確認された。・小児群では、喘息・アレルギー治療薬のモンテルカスト(IC:3.2、95%CI:1.7~4.2)および注意欠如・多動症(ADHD)治療薬のメチルフェニデート(IC:2.3、95%CI:0.3~3.5)において有意なシグナルが検出された。・成人群では、抗うつ薬のセルトラリン(IC:3.4、95%CI:2.1~4.4)、抗てんかん薬のトピラマート(IC:3.1、95%CI:1.3~4.2)、抗精神病薬のアリピプラゾール(IC:3.6、95%CI:2.5~4.4)、およびモンテルカスト(IC:2.7、95%CI:0.7~3.9)に有意な関連が認められた。・新型コロナウイルスワクチンも頻繁に報告されていたが(17例、19.5%)、統計的に有意なシグナルは検出されなかった(IC:0.63、95%CI:-0.26~1.31)。一方で、髄膜炎菌ワクチンについては有意なシグナルが認められた(IC:2.7、95%CI:1.2~3.7)。 本研究により、メチルフェニデートやモンテルカストといった特定の薬剤が年齢層に応じてAIWSを引き起こすトリガーとなる可能性が示唆された。著者らは、AIWSは通常、薬剤の投与中止により回復するが、視覚的・知覚的歪みの症状が患者に混乱をもたらす可能性があるため、慎重なリスク・ベネフィット評価が必要であり、本研究は自発報告データベースに基づくため、今後さらに大規模な集団ベースの調査が必要だとまとめている。

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乳がん後の心筋梗塞と脳卒中リスク

 乳がんと診断された女性におけるその後の心筋梗塞と脳卒中のリスクを分析したところ、心筋梗塞は20%、脳卒中は58%のリスク増加が示唆された。イタリア・トリノ大学のFulvio Ricceri氏らが、イタリア北西部の130万人の女性を対象とした大規模集団研究で分析した結果を、Breast Cancer Research and Treatment誌2026年1月29日号で報告した。 乳がんの生存期間は検診の普及と治療法の進歩により延長したが、同時に他疾患のリスクも増加している。原因としては、遺伝的要因、共通のリスク因子、治療による副作用などが挙げられる。そこで本研究では、治療の潜在的な副作用を考慮しつつ、乳がん患者における心筋梗塞と脳卒中のリスクを分析した。対象集団は、国勢調査データと複数の医療行政データベースをリンクさせた行政コホート研究であるピエモンテ縦断研究(PLS)の30~75歳の女性で、ベースライン時点で心筋梗塞または脳卒中の既往があった女性は除外した。原因別比例ハザードモデルを用いた競合リスク分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・30~75歳の134万2,333人のうち1万9,203人が乳がんと診断され、そのうち206人(1.1%)が心筋梗塞、203人(1.1%)が脳卒中を発症した。・乳がん患者では心筋梗塞(ハザード比[HR]:1.20、95%信頼区間[CI]:1.05~1.38)および脳卒中(HR:1.58、95%CI:1.38~1.82)のリスク増加が認められた。・心筋梗塞については化学療法が主要な危険因子であったが、脳卒中については治療法による違いは認められなかった。

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閉経前女性における卵巣がんの診断に最適な指標は?/BMJ

 閉経前女性の卵巣がんのリスク予測モデルの研究は、主に専門の超音波検査技師がいる2次検査以降の環境下で行われており、非専門医、プライマリケアまたは地域設定で一般化するには限りがある。すべての検査を直接比較した研究も見当たらないことから、英国・Sandwell and West Birmingham Hospitals NHS TrustのSudha Sundar氏らは、閉経前女性の卵巣がんの診断に寄与する最適なリスク予測モデルを特定する前向きコホート研究「ROCkeTS研究」を行った。現在、英国の国民保健サービス(NHS)の3次医療のトリアージで使用されているRisk of Malignancy Index 1(RMI 1)(閾値250)と比較して、他のほとんどの検査指標は、特異度は低いが感度が高く、なかでもInternational Ovarian Tumour Analysis(IOTA)のADNEXモデル(閾値10%)の感度が最も高く、特異度の低さは他の検査と同程度であることが示された。著者は、「IOTA ADNEXモデル(閾値10%)を用いた超音波検査を、2次医療における閉経前女性のトリアージとして新たな標準検査とすべきである。実施に当たっては、スタッフのトレーニングと質保証を組み込む必要がある」とまとめている。BMJ誌2026年1月28日号掲載の報告。6つのモデルについて比較 研究グループは、非特異的な症状を有し、血清腫瘍マーカーCA125値の上昇または画像検査異常を認め、主にNHSのがんが疑われる患者の緊急紹介制度を通じて一般診療所から紹介された患者を前向きに登録した。 IOTA画像診断用語の使用について訓練を受けたNHSスタッフが実施した血液検査と超音波検査を用い、6つのリスク予測モデルとスコアの精度を比較した。使用した指標は、RMI 1(事前に設定された閾値は200、250)、卵巣悪性腫瘍推定値(Risk of Malignancy Algorithm[ROMA])(7.4%、11.4%、12.5%、13.1%)、IOTAのAssessment of Different Neoplasias in the adnEXa(IOTA ADNEX)(3%、10%)、simple rules risk model(IOTA SRRisk)(3%、10%)およびsimple rules、ならびにCA125(87 IU/mL)であった。 患者は、手術標本、生検組織または細胞診の病理検査、または手術を受けなかった患者に対する12ヵ月間の経過観察で得られた参照基準に基づき、原発性浸潤性卵巣がん群と良性または正常群に分類された。なお、研究対象集団は、2018年6月より前に登録されたコホート1(保存的治療の患者も登録)と、2018年6月以降に登録されたコホート2(3ヵ月以内の手術予定患者のみを登録)で構成された。 主要評価項目は、卵巣がんの診断精度で、感度、特異度、陽性および陰性予測値、判別能(C指数、ROC曲線)および較正能(較正プロット、較正勾配)により評価した。 2015年6月30日~2023年3月23日に、英国の23施設より紹介された適格患者2,453例が登録され、2023年3月31日まで追跡調査を行った。本論では、2,453例のうち閉経前女性1,211例について報告されている。IOTA ADNEX(閾値10%)が優れる 閉経前女性1,211例のうち88例が原発性卵巣がんと診断された。コホート1では857例中49例(有病率5.7%)、コホート2では354例中39例(有病率11.0%)であった。 原発性卵巣がんの診断(他の診断58例を除外した799例)において、RMI 1(閾値250)の感度は42.6%(95%信頼区間[CI]:28.3~57.8)、特異度は96.5%(95%CI:94.7~97.8)であった。RMI 1(閾値250)と比較し、CA125と他のすべての検査は感度が高く(CA125[閾値87 IU/mL]:55.1%、p=0.06、ROMA[閾値11.4%]:79.2%、p<0.001、IOTA ADNEX[閾値10%]:89.1%、p<0.001、IOTA SRRisk[閾値10%]:83.0%、p<0.001、IOTA simple rules:75.0%、p=0.01)、特異度は低かった(それぞれ89.0%、73.1%、75.1%、76.0%[いずれもp<0.001]、95.2%[p=0.06])。なお、IOTA simple rulesでは、799例中120例で結果を確定できなかった。 卵巣がん発症リスクが高い閉経前女性354例を含む全コホート1,211例の解析でも、同様の結果が得られた。

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パーキンソン病で「痩せる理由」、体重減少の背景にあるエネルギー代謝の変化

 パーキンソン病(PD)は、手足の震えや動作の遅れなどの運動症状で知られる神経変性疾患だが、体重減少も重要な非運動症状の一つとされている。今回、PD患者では糖を使うエネルギー代謝が低下し、脂質やアミノ酸を利用する代謝へとシフトしている可能性が示され、体重減少が疾患特異的な代謝変化と関係していることが明らかになった。研究は、藤田医科大学医学部脳神経内科学教室の東篤宏氏、水谷泰彰氏らによるもので、詳細は11月30日付で「Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry(JNNP)」に掲載された。 PDにおける体重減少は、疾患進行や予後と関連する重要な非運動症状であり、体脂肪量の低下が主であることは知られていた。しかし、その背景でエネルギー代謝がどのように変化しているのか、糖・脂質・アミノ酸の利用経路がどう再編されているのかは明らかでなかった。本研究では、PD患者の体組成と血漿中のエネルギー代謝に関連する物質を包括的に解析し、体重減少が単なる栄養不足ではなく、エネルギー利用のシフトを伴う代謝異常と関連する可能性を検討した。 本研究では、藤田医科大学病院脳神経内科においてPDと診断された91名の患者と、対照として年齢・性別をマッチさせた健常人47名が登録された。体組成は生体電気インピーダンス法を用いて評価した。血漿代謝物は、質量分析法により、解糖系およびクエン酸回路に関連する代謝物、脂質やアミノ酸代謝に由来する代謝物など、計17種類の代謝物を測定した。これらのデータを用いて、PDにおける体組成の変化と血漿代謝物との関連を解析した。PD患者と健常対照の体重、BMI、体脂肪量、血漿代謝物濃度などの比較には、Wilcoxon順位和検定を使用した。体組成成分と血漿代謝物濃度との関連については、Spearmanの順位相関係数により相関解析を行った。多重検定の影響を考慮し、血漿代謝物解析では偽発見率(FDR)補正も併用して統計学的有意性を評価した。 PD患者では、健常対照と比べて体重(P=0.003)、BMI(P=0.001)、体脂肪量(P

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第47回 脅威の致死率「ニパウイルス」について、私たちが知っておくべきこと

南アジアを中心に、散発的ながらも深刻な被害をもたらし続けている「ニパウイルス」。高い致死率とパンデミックを引き起こす潜在的なリスクから、世界保健機関(WHO)も「最優先で対策すべき病原体」の一つに指定しています1)。日本とニューヨークの医療現場ではもちろん出会ったことのない感染症ではありますが、最近になりインドで感染者が確認され、話題となっています。今回は、このウイルスの正体や感染の仕組み、そして希望の光となりうるワクチン開発状況について、これまで報告されている論文に基づいて解説します。「最優先病原体」ニパウイルスの正体とは ニパウイルスは、1998年にマレーシアで初めて確認されたウイルスで、オオコウモリを自然宿主としています1)。当初はブタを介してヒトへ感染しましたが、その後のバングラデシュやインドでの流行では、ウイルスに汚染されたナツメヤシの樹液を摂取することによる感染や、ヒトからヒトへの直接感染も確認されています2)。 このウイルスが恐れられている最大の理由は、その高い致死率にあります。流行の場所やウイルスの変異などによっても異なりますが、致死率は40%から、高い場合では75〜100%にも達すると報告されています1, 2)。ただし、新興感染症が生じた場合の常ですが、軽症者や無症状の患者は検出されていない可能性があり、実際の致死率は報告されている数値よりも低くなる可能性が高いと考えられます。しかしいずれにしても、新型コロナウイルスと比較すると、感染した場合の重症度は桁違いでしょう。 感染すると、発熱、頭痛、筋肉痛といった風邪のような症状から始まり、多くの場合は急速に悪化して重篤な脳炎を引き起こします2)。けいれんや意識障害が現れ、発症からわずか24〜48時間で昏睡状態に陥ることもまれではありません1, 2)。また、回復した場合でも、約20%の人に神経学的な後遺症が残るとされており、長期的な生活の質への影響も甚大とされています1)。ヒトからヒトへはどう広がるのか? 一般的にニパウイルスのヒトからヒトへの感染伝播(基本再生産数)は起こりにくいとされていますが、特定の条件下では「スーパースプレッダー」のような現象が起こりうることも指摘されています。この点について、バングラデシュでの14年間にわたる調査データがNew England Journal of Medicine誌に掲載されているのでご紹介します3)。 この研究によれば、ヒトからヒトへの感染リスクを高める要因として、呼吸器症状、年齢、濃厚接触かどうかといった点が指摘されています。 呼吸困難などの呼吸器症状がある患者は、そうでない患者に比べて、他者に感染させるリスクが劇的に高いようです。この研究では、呼吸器症状のない患者からの感染拡大は、きわめてまれであったのに対し、呼吸困難を伴う患者は感染源になりやすいことが示されています3)。これは、咳などによる飛沫が感染の主要なルートとなりうることを裏付けています。 また、患者の年齢が高い場合や、看病などで長時間(とくに48時間以上)患者と接した場合、または患者の体液に直接触れた場合に、感染リスクが有意に増加するようです。実際、配偶者への感染率は他の親族よりも高いという結果が報告されています3)。 こうしたデータは、私たちが住む地域で万が一感染者が発生した場合にどう行動すべきかを教えてくれます。つまり、呼吸器症状のある患者との接触には飛沫感染予防策を含む最大限の警戒が必要で、体液への曝露を防ぐための厳重な感染防御策も不可欠だということです。進むワクチン開発 現在、ニパウイルス感染症に対して承認された特効薬やワクチンは残念ながら存在しません1)。治療はあくまで症状を和らげる対症療法に限られており、これが高い致死率が報告される一因となっています。リバビリンなどの抗ウイルス薬が試されたこともありますが、その効果は限定的あるいは不明確のようです1)。 しかし、希望がまったくないわけではありません。すでに、ニパウイルスワクチンの第I相臨床試験の結果が発表されています4)。 この試験で用いられたのはサブユニットワクチン。これは、ニパウイルスと非常に似た構造を持つヘンドラウイルスのタンパク質(G糖タンパク質)を利用したもので、交差免疫(似たウイルスに対する免疫反応)によってニパウイルスも防ごうという戦略です。 この試験は18~49歳の健康な成人を対象に行われていますが、深刻な副反応や死亡例は報告されず、主な副反応は注射部位の痛みなどの軽度なものでした。 また、100μgのワクチンを28日間隔で2回接種したグループで最も高い効果が得られ、2回目の接種から7日後には、ニパウイルスに対する中和抗体(ウイルスを無力化する抗体)が劇的に上昇しました4)。 この結果は、まだ初期段階の試験ではあるものの、将来的にこのワクチンが実用化されれば、流行地域で感染拡大を防ぎ医療従事者を守る予防接種として使える可能性を示唆しています。今、どう向き合うか ニパウイルスは、現時点ではヒトからヒトへの感染伝播が起こりにくい以上、日本国内で大規模な感染流行が起こったり、世界的なパンデミックを起こすリスクは低いと考えられます。そこは冷静に捉えておくべきでしょう。しかし、グローバル化が進む現代において「対岸の火事」と決めつけることもできません。 同時に、私たち人間は無力でもありません。ワクチンのような科学の進歩が、着実に解決への道を切り開きつつもあります。今私たちに必要なのは、「ただ恐れる」ことではなく「解像度の高い理解」でしょう。病原体が身近になればなるほど、誤情報も増加します。データが示す科学的根拠とともに、今後の動向を冷静に見つめていく必要があります。 1) Madhukalya R, et al. Nipah virus: pathogenesis, genome, diagnosis, and treatment. Appl Microbiol Biotechnol. 2025;109:158. 2) Ganguly A, et al. The rising threat of Nipah virus: a highly contagious and deadly zoonotic pathogen. Virol J. 2025;22:139. 3) Nikolay B, et al. Transmission of Nipah Virus - 14 Years of Investigations in Bangladesh. N Engl J Med. 2019;380:1804-1814. 4) Frenck RW Jr, et al. Safety and immunogenicity of a Nipah virus vaccine (HeV-sG-V) in adults: a single-centre, randomised, observer-blind, placebo-controlled, phase 1 study. Lancet. 2025;406:2792-2803.

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米国の肥満有病率、2035年に向けて人種/民族問わず増加の見込み/JAMA

 1990~2022年の間の米国における成人肥満(BMI値30以上)有病率の変動を集団単位で調べた結果、人種/民族、居住州、性別、年齢によって大きな違いがみられたものの、すべての集団で肥満の有病率は高く、2035年に向けて増加し続けると見込まれることが、米国・ワシントン大学のNicole K. DeCleene氏らによって示された。米国における肥満の有病率は、過去数十年で急激に上昇しており、公衆衛生上の大きな負担となっている。集団によってかなりのばらつきがあることが示されている一方で、保健政策の策定や格差の縮小に必要な、集団レベルの肥満推計や予測の詳細情報は不足していた。JAMA誌オンライン版2026年1月28日号掲載の報告。合計1,131万5,421人のBMIデータを解析 研究グループは、人種/民族、居住州、性別、年齢(20歳以上)別に、1990~2022年の米国における肥満(BMI値30以上)の有病率を推定し、2035年に向けた傾向を予測した。 米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)からのBMI測定データと、行動リスク要因サーベイランスシステム(Behavioral Risk Factor Surveillance System:BRFSS)およびGallup Daily Surveyの、自己申告の身長と体重から算出したバイアス調整後BMI値を、時空間ガウス過程回帰法と年率換算変化率・メタ回帰ベイジアンスプライン統合モデルを用いて解析した。 入力データのサーベイは、州別および人種/民族別の集団ベースサンプリングを用いて行われ、米国人合計1,131万5,421人が参加した。 結果は、ヒスパニック系(人種は問わない)、非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系白人の集団について報告された。1990年19.3%から2022年42.5%に上昇、2035年には46.9%に 2022年の米国成人のうち肥満者は推定1億700万人(95%不確実性区間[UI]:1億101万~1億1,300万)で、米国成人の42.5%(95%UI:40.2~45.0)を占め、1990年の3,470万人(95%UI:3,110万~3,830万)・19.3%(95%UI:17.3~21.3)から増加しており、2035年には1億2,600万人(95%UI:1億1,800万~1億3,400万)・46.9%(95%UI:43.9~49.9)まで増加すると予測された。 全米全体でみると、2022年の人種/民族別にみた年齢標準化肥満有病率は、非ヒスパニック系白人男性の40.1%(95%UI:37.8~42.5)から非ヒスパニック系黒人女性の56.9%(95%UI:54.1~59.9)の範囲にわたっていた。 肥満有病率は、州レベルの差異が大きく、中西部および南部の州で最も高く、また州内の人種/民族によっても格差が見られ、男性よりも女性で格差は大きかった。 肥満有病率は年齢によってもばらつきが大きく、中年成人で最も高く、また若年成人のとくに女性で大幅に増加していた。

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認知症患者の4人に1人に脳に悪影響を及ぼす薬が処方

 認知症のあるメディケア加入高齢者の4人に1人が、抗精神病薬、バルビツール酸系薬、ベンゾジアゼピン系薬などの脳機能に影響を及ぼす薬剤によって危険にさらされていることが、新たな研究で明らかにされた。これらの高リスクの中枢神経系(CNS)活性薬は、転倒やせん妄、入院のリスクを上昇させ、特に、認知機能障害のある高齢患者においてはその影響が顕著であることから、ガイドラインでは使用を控えることが推奨されている。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイヴィッド・ゲフィン医科大学院のJohn Mafi氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に1月12日掲載された。 Mafi氏は、「正常な認知機能を持つ患者と比較して、有害事象のリスクがより高い認知機能障害のある高齢者で、これらの薬剤の処方頻度が高いことが分かった」とニュースリリースで述べている。 本研究では、米連邦政府の健康・退職研究(Health and Retirement Study;HRS)のデータとメディケア請求データをリンクさせ、2013年1月1日から2021年12月31日の間に、メディケアパートA・B・Dに連続2年以上加入している65歳以上の患者4,842人を対象に、処方パターンを調べた。対象患者は、正常、認知症ではない認知機能障害(CIND)、認知症の3群に分類された。また、CNS活性薬は、1)抗コリン作用の強い抗うつ薬、2)抗精神病薬、3)バルビツール酸系薬、4)ベンゾジアゼピン系薬、5)非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を対象とし、これらの薬剤を1種類以上、28日以上処方されていた患者の割合を調べた。さらに、各処方の臨床的適応の有無についても判定した。 その結果、潜在的に不適切なCNS活性薬を処方された対象者の割合は、認知機能が正常な人で17.0%、CINDのある人で21.7%、認知症のある人で25.1%と推定され、認知機能の状態が悪いほどこのタイプの薬剤を処方されやすいことが示唆された。潜在的に不適切なCNS活性薬を処方された対象者の割合は、2013年の19.9%から2021年には16.2%へと3.7パーセントポイント有意に低下していた。臨床的に適切な処方は、2013年の6.0%から2021年には5.5%へとわずかに減少したが、統計学的な有意差はなかった。一方、臨床的に不適切な処方は15.7%から11.4%へと有意に減少していた。 Mafi氏は、「この減少は心強いものの、2021年時点で、これらの処方を受けていた患者の3分の2以上に、臨床的に正当化できる記録がなかった。これは、不適切で有害となり得る処方が依然として多いことを示している」と述べている。 対象とした薬剤の種類別に分析すると、2013年から2021年にかけて、以下のような傾向が認められた。・ベンゾジアゼピン系薬は11.4%から9.1%に有意に減少。・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は7.4%から2.9%に有意に減少。・抗精神病薬は2.6%から3.6%へと増加したが、統計学的な有意差なし。・抗コリン作用の強い抗うつ薬は2.6%のままで変化なし。・バルビツール酸系薬は0.4%から0.3%にわずかに減少したが、統計学的な有意差なし。 論文の筆頭著者であるUCLA内科レジデントであるAnnie Yang氏は、「高齢患者やその介護者は、これらの薬剤が本当に適切かどうかを医師と密に相談することが重要だ。不適切と判断された場合には代替治療を検討し、リスクを抑えながら薬剤の減量や中止が可能かどうかをケアチームとともに考えるべきだ」とニュースリリースの中で述べている。

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AIで脂肪吸引手術の安全性が向上する可能性

 人工知能(AI)が脂肪吸引手術の安全性向上に役立つのではないかとする論文が、「Plastic and Reconstructive Surgery」1月号に掲載された。米メイヨー・クリニックのMauricio Perez Pachon氏らの研究によるもので、AIを活用することで脂肪吸引手術に伴う出血量を正確に予測でき、その精度は94%に及ぶという。 脂肪吸引手術は世界で毎年230万人以上が受けており、手術件数として美容外科手術全体の15~20%を占める。この手術は一般的に安全とされているが、脂肪吸引量が多い場合などに、大量出血という深刻な合併症が起きることがある。大量出血が発生すると輸血が必要になることや、時に患者が死亡に至ることもある。このようなリスクに対して近年、AIを用いて出血量を術前に予測する試みが行われている。Pachon氏は、「脂肪吸引手術における出血量を予測するAIモデルの開発と実装は、患者の安全と手術アウトカムの改善につながる画期的な進歩だ」と述べている。また、研究チームでは、「AIは常に進化しているという特徴を生かすことで、手術がよりスマートで安全になっていき、患者ごとのニーズに合わせてカスタマイズされた未来に近づけるのではないか」としている。 この研究では、コロンビアとエクアドルのクリニック2施設で大容量の脂肪吸引手術を受けた、721人(年齢中央値37歳、女性79.2%)の患者データが用いられた。このうち621人をAIのトレーニング用データとして用い、他の100人を構築されたモデルの検証用データとして用いた。AIのトレーニングには「教師あり学習」と呼ばれる手法を利用し、出血量を予測するためのパラメーターとして、年齢、性別、BMI、脂肪吸引量、ヘモグロビン値などを使用した。 構築されたモデルを検証用に割り当てられた100人に適用した結果、AIが予測した出血量は実際の出血量とよく一致していた。具体的には、平均絶対誤差が22.09mLであり、予測精度は94.1%と算出された。 研究者らによると、「美容外科手術では、患者の安全と最適な手術計画の立案のために、手術中の出血量をできるだけ正確に予測することが重要。本研究で示された予測精度は、術前の意思決定支援ツールとしての高い潜在的能力を示している」とのことだ。また、「高精度の予測がなされることによって、外科医は、輸血の必要性、体液管理、その他の集中治療措置などの周術期管理について、データに基づいた決定を下すことができる」としている。 研究チームでは現在、世界各地の外科医から提供されたデータを使ってトレーニングを行うなど、このAIモデルをさらに改良するための研究を進めていくことを予定している。Pachon氏は、「AIテクノロジーの発展は患者の安全性を高める無限の可能性があると、われわれは信じている。この分野での継続的な発展を期待している」と語っている。

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開胸手術は不要に? 世界初の低侵襲冠動脈バイパス術が登場

 動脈の詰まりによって起こる心疾患に苦しむ人に対する開胸手術は、近い将来、過去のものになるかもしれない。心疾患の長い既往歴を持つ67歳の男性に対して、胸壁を切開せずに行う世界初の低侵襲冠動脈バイパス術のVECTOR法(Ventriculo-coronary transcatheter outward navigation and reentry)が実施され、成功裡に終えたことが明らかにされた。手術から6カ月が経過しても、男性には動脈の詰まりに起因する心臓の問題は一切認められなかったという。米エモリー大学医学部のAdam Greenbaum氏らによるこの症例報告は、「Circulation: Cardiovascular Interventions」に1月6日掲載された。 Greenbaum氏は、「この患者は多くの治療歴があり、血管疾患やその他の複雑な要因を抱えていたため、開胸手術は選択肢になかった。このような症例において低侵襲な代替手段があることは、極めて重要だ」とニュースリリースで述べている。 冠動脈バイパス術とは、血流が著しく阻害された動脈を迂回し、心臓に血液と酸素を届ける新たな通路を作る手術である。これまで、最も低侵襲とされる冠動脈バイパス術でさえ、肋骨の間から胸部を切開し、筋肉を押し分け、骨を切除して手術部位に到達する必要がある。 これに対し、VECTOR法は、脚の血管(大腿動脈)からガイドカテーテルを挿入し、大動脈を経由して左冠動脈主幹部まで到達させる。また、大腿静脈からもガイドカテーテルを挿入して右心室に到達させ、スネア(ワイヤーなどを引っ掛けて回収する輪状のワイヤー)を配置する。その後、大腿動脈側のガイドカテーテルを介してガイドワイヤーを挿入し、左冠動脈主幹部から心筋中隔へ導き、中隔枝を介して右心室にワイヤーを貫通させる。次いで、右心室内に配置したスネアを操作してガイドワイヤーの先端を捕捉し、そのままワイヤーを大腿静脈側から体外へ引き出す。こうして大動脈から静脈までの連続したガイドワイヤーレールが形成され、これを足場として、治療用ガイドワイヤーやデバイスを、逆行性に左冠動脈主幹部内へ送達することが可能になる。 VECTOR法は、人に使用される以前は動物を用いた一連の前臨床試験で実証されていた。今回、VECTOR法が実施された男性は、カルシウムの蓄積により人工心臓弁の交換が必要な状態だった。しかし、左冠動脈の開口部が弁に非常に近接していたため、通常の経カテーテル大動脈弁置換術を行うと血流が遮断される可能性が高かった。Greenbaum氏は、「そこでわれわれは、冠動脈の開口部を危険域の外に移動させてしまえばよいのではないかと考えた」と振り返る。 研究グループは、VECTOR法が広く臨床で使われるようになるには、今後さらに多くのヒトを対象とした試験が必要だと述べている。報告書の筆頭著者である米エモリー大学心臓病学分野のChristopher Bruce氏は、「この成果を得るには、従来の枠にとらわれない発想が必要だったが、われわれは、非常に実用的な解決策を開発したと考えている」と話している。同氏は、「構想から動物実験、そして臨床応用へと、このプロジェクトが比較的短期間で実現したのを見るのは、極めて感慨深いことだった」と付け加えている。 なお、VECTOR法に関する研究は、米国国立心肺血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute)の支援を受けて実施された。

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診療科別2025年下半期注目論文5選(消化器内科編~肝胆膵領域)

The Lancet Commission on addressing the global hepatocellular carcinoma burden: comprehensive strategies from prevention to treatmentChan SL, et al. Lancet. 2025;406:731-778.<Lancet誌委員会レビュー>:肝がん、2050年に全世界で倍増する可能性肝がんは、適切な対策を講じなければ2050年に152万人へと倍増する可能性があるとLancet誌が報告しています。地域ごとの背景は大きく異なり、中国では肝がん対策の進展が停滞し、欧州や北米ではMASLDやアルコール関連肝障害に伴う発がんが増加しています。またアフリカでは、人口増加に加え高いウイルス性肝炎の有病率が危惧されています。この“倍増の危機”を抑えるためには、国際的な協調や対策の強化が喫緊の課題です。Association between longitudinal weight change and clinical outcome in individuals with MASLDShi Y, et al. Hepatology. 2025 Oct 8. [Epub ahead of print]<1万例超対象の国際共同研究>:MASLD患者における体重変化の臨床転帰への影響国際共同研究によるMASLD 10,014例の解析により、これまで漠然と重要視されてきた“体重変化”が、治療評価に直結する強力なエビデンスとして示されました。5%超の体重増加は肝関連イベントの増加と肝硬度悪化、5%超の減量は改善と関連。GLP-1RA/SGLT2i使用を調整しても、体重変化自体が独立した主要因でした。Risk of de novo HCC in patients with MASLD following direct-acting antiviral-induced cure of HCV infectionLiu CH, et al. J Hepatol. 2025;82:582-593.<DAA後の新規肝がん発症リスク>:MASLDを有する患者では発がん率が約2倍C型肝炎は直接作用型抗ウイルス薬(DAA)でほぼ100%治癒する時代ですが、その後の肝がん管理は依然として重要です。本研究ではC型肝炎治療後の1,598例を解析し、MASLDを有する患者では発がん率が約2倍に上昇していました。MASLDはそれ自体が肝がんリスクを高めるだけでなく、肥満や糖尿病などの心代謝危険因子(CMRFs)を介して肝がん発症を促す“橋渡し役”にもなっていることが明らかになりました。ウイルス学的著効(SVR)後もMASLDとCMRFsの適切な管理と、継続的なHCCサーベイランスが不可欠です。Neoadjuvant FOLFIRINOX versus neoadjuvant gemcitabine-based chemoradiotherapy in resectable and borderline resectable pancreatic cancer (PREOPANC-2): a multicentre, open-label, phase 3 randomised trialJanssen QP, et al. Lancet Oncol. 2025;26:1346-1356.<PREOPANC-2試験>:切除可能・境界切除可能膵がんに対するFOLFIRINOX、OSに有意差認めずFOLFIRINOXは切除可能・境界切除可能膵がんに対し、ゲムシタビン併用化学放射線療法と比較して全生存期間(OS)の延長を示しませんでした。安全性は両群で許容可能と判断され、どちらの術前療法も臨床的に選択肢となりうることが示されました。IgG4-related disease in the Japanese population: a whole-genome sequencing studyZhang YO, et al. Lancet Rheumatol.2026;8:e11-e22.<日本のIgG4関連疾患における全ゲノム解析>:HLA・FCGR2Bに加え、C4コピー数変動が新たな感受性因子として同定日本人における自己免疫性膵炎をはじめとしたIgG4関連疾患患者を対象とした全ゲノム解析により、既知のHLA・FCGR2Bに加え、補体C4が独立した遺伝的感受性因子であることが示されました。また、PTCH1およびlncRNA LOC102724227がミクリッツ病特異的な感受性遺伝子として明らかになり、IgG4関連疾患の臓器多様性を生む遺伝的多様性が示唆されました。

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日本人高齢者の緊急入院で死亡率が高いのは? インフルvs.コロナvs.RSV

 50歳以上(平均年齢81.4歳)を対象とした前向きコホート研究において、急性呼吸器症状による緊急入院では、RSウイルス(RSV)陽性者がSARS-CoV-2やインフルエンザA/B陽性者と比較して、30日全死亡率が高かった。このことからRSV感染症は、高齢者の看過できない死亡リスク因子であることが示唆された。本研究結果は、森本 剛氏(兵庫医科大学)らによって、Clinical Microbiology and Infection誌オンライン版2026年1月10日号で報告された。 研究グループは、日本の3施設(島根県立中央病院、洛和会音羽病院、奈良市立病院)において、急性呼吸器症状または徴候を呈して緊急入院した50歳以上の成人を対象に、前向きコホート研究「EVERY study」を実施した。登録期間は2023年7月1日~2024年12月31日とした。入院後24時間以内に採取された鼻咽頭ぬぐい液を用いて、FilmArray呼吸器パネル2.1による多項目遺伝子検査を行い、RSV、SARS-CoV-2、インフルエンザA/Bの陽性割合と臨床転帰(30日全死亡、下気道疾患[LRTI]、modified LRTI[画像所見を組み込んだ定義])を検討した。また、ワクチン接種歴(COVID-19[新型コロナウイルス感染症]ワクチンとRSVワクチンは過去に1回以上接種で接種あり、インフルエンザワクチンは当該シーズンに1回以上接種で接種ありとした)も調べた。 主な結果は以下のとおり。・解析対象となった3,067例(平均年齢81.4歳、男性55.3%)において、各ウイルスの陽性割合は、インフルエンザA/Bが2.3%、SARS-CoV-2が18.0%、RSVが1.6%であった。・解析対象(3,067例)のワクチン接種割合は、インフルエンザワクチン37.9%、COVID-19ワクチン62.3%、RSVワクチン0%であった。・抗ウイルス薬の投与割合は、インフルエンザA/B群62.3%、SARS-CoV-2群71.8%、RSV群0%であった。・30日全死亡率は、インフルエンザA/B群が2.9%であったのに対し、SARS-CoV-2群8.4%、RSV群14.3%であった。・インフルエンザA/B群を対照とした場合の30日全死亡の調整オッズ比は、SARS-CoV-2群が2.9(95%信頼区間[CI]:0.83~17.9)、RSV群が5.2(95%CI:1.2~36.7)であり、RSV群が高かった。・入院時のLRTIの割合は、インフルエンザA/B群88.4%、SARS-CoV-2群82.8%、RSV群87.8%であった。modified LRTIは、それぞれ95.7%、93.1%、93.9%といずれも高率であった。 本研究結果について、著者らは「急性呼吸器症状で緊急入院する高齢者において、RSVはインフルエンザやCOVID-19よりも高い死亡率に関連するリスク因子であった」と結論付けている。また「RSV陽性者の高い死亡率の背景には、抗ウイルス薬の使用機会がないことやワクチン未接種が影響している可能性がある」と考察し、日常診療におけるRSVの認識向上とともに、ワクチン接種を含む予防の重要性を強調している。

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DM合併冠動脈疾患、Abluminus DES+シロリムスステントの有用性は?/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける糖尿病合併患者において、血管壁側(abluminal)およびバルーン表面をコーティングしたシロリムス溶出ステント(Abluminus DES+SES)は、XIENCE耐久性ポリマーエベロリムス溶出ステント(XIENCE EES)と比較し、12ヵ月時の虚血による再度の標的病変血行再建術および標的病変不全の発生率が高く、非劣性は認められなかった。ブラジル・Heart Institute of University of Sao PauloのAlexandre Abizaid氏らが、16ヵ国74施設で実施した無作為化非盲検比較試験「ABILITY Diabetes Global試験」の結果を報告した。著者は、「糖尿病合併患者における治療成績の最適化が依然として課題であることが浮き彫りとなり、この患者集団における虚血リスクを低減するためステント設計および補助的薬物療法のさらなる革新が必要である」とまとめている。Lancet誌2026年1月17日号掲載の報告。Abluminus DES+SESのXIENCE EESに対する非劣性を評価 研究グループは、慢性冠症候群または非ST上昇型急性冠症候群で少なくとも1つの新規冠動脈病変に対しPCIを施行する1型または2型糖尿病の成人(18歳以上)患者を、Abluminus DES+SES群またはXIENCE EES群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 Abluminus DES+SES群では、薬剤移行を促進するためにバルーン拡張時間を45秒以上とすることが推奨された。また、全例に、臨床ガイドラインおよび現地の標準治療に基づいて2剤併用抗血小板療法を行った。 主要エンドポイントは、per-protocol集団における12ヵ月時点の虚血による再度の標的病変血行再建術(ID-TLR)および標的病変不全(TLF)(心血管死、標的血管心筋梗塞、またはID-TLRの複合エンドポイントと定義)の2つで、非劣性マージンはそれぞれ2.8%および3.0%とした。いずれも累積発生率はKaplan-Meier法で推定し、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。複合主要エンドポイントのID-TLRとTLFの発生、非劣性基準を満たさず 2020年6月12日~2022年9月9日に、3,032例がAbluminus DES+SES群(1,514例)またはXIENCE EES群(1,518例)に無作為に割り付けられた。3,032例中2,931例(96.7%)が死亡までまたは24ヵ月間の追跡調査を完了した。年齢中央値は68.0歳(四分位範囲:60~74)で、879例(29.0%)が女性、2,153例(71.0%)が男性であった。 per-protocol集団における12ヵ月時のID-TLRは、Abluminus DES+SES群で1,421例中67例(Kaplan-Meier推定値:4.8%、95%CI:3.9~6.2)、XIENCE EES群で1,446例中30例(2.1%、1.6~3.2)に認められ、絶対リスク群間差は2.7%(95%CI:1.3~4.1)で非劣性基準を満たさなかった(非劣性のp=0.44)。 また、TLFはAbluminus DES+SES群で137例(Kaplan-Meier推定値:9.7%、95%CI:8.4~11.5)およびXIENCE EES群で89例(6.2%、5.3~7.8)に認められ、絶対リスク群間差は3.5%(95%CI:1.5~5.5)であり(非劣性のp=0.68)、いずれの主要エンドポイントも絶対リスク群間差の95%CIの下限が0を上回った。 TLFを個別にみると、標的血管心筋梗塞は、Abluminus DES+SES群のほうが発生率は高かったが(Kaplan-Meier推定値:5.2%[95%CI:4.1~6.5]vs.3.1%[2.4~4.3])、心血管死(2.9%[2.1~3.9]vs.2.1%[1.5~3.0])および全死因死亡(3.7%[2.8~4.8]vs.3.3%[2.5~4.4])に有意差は認められなかった。 結果は、24ヵ月時点でもITT集団において一貫性が認められたが、12ヵ月から24ヵ月までのランドマーク解析では、両群間に有意差は認められなかった。

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不安定な外果骨折、ギプス固定は手術に非劣性/BMJ

 初回X線検査で足関節窩が整合しており安定とみられたものの、外旋ストレステストでは不安定と判定されたWeber分類タイプBの足関節外果単独骨折の治療において、ギプス固定は手術に対して非劣性であることが認められ、概してギプス固定は手術と比較し治療関連有害事象が少ないことが示された。フィンランド・オウル大学病院のTero Kortekangas氏らが、同大学病院の外傷専門センターで実施した実用的無作為化非劣性試験「SUPER-FIN試験」の結果を報告した。足関節骨折の約3分の2は外果骨折(Weber B)である。最近の臨床試験やガイドラインでは、特定の患者に対し保存治療を支持するケースが増えているが、不安定なWeber B外果骨折に対しては主たる治療として手術が行われる状況が続いていた。BMJ誌2026年1月14日号掲載の報告。6週間ギプス固定と、手術+6週間ギプス固定で、2年時のOMASを比較 研究グループは、2012年12月~2019年3月に来院した、足関節外果(腓骨)単独骨折(Weber B)を認め静止X線で足関節窩が整合していることが確認された、16歳以上の全患者840例を対象に試験を行った。外旋ストレステストを実施し、ストレス陽性(内側クリアスペースが5mm以上の場合を不安定と定義)が確認され適格基準を満たした126例を、6週間のギプス固定群または開放整復とプレート固定による手術と6週間のギプス固定を行う手術群に、1対1の割合で無作為に割り付け2年間追跡した(最終追跡調査は2021年7月7日)。 主要アウトカムは、2年時のOlerud-Molander Ankle Score(OMAS、0~100点、高スコアほどアウトカムが良好で症状が少ないことを示す)で、非劣性マージンは-8点と規定した。副次アウトカムは、足関節機能、疼痛、健康関連QOL、足関節可動域およびX線所見で、治療関連有害事象も評価した。ギプス固定の非劣性が認められた 無作為化された患者126例のうち2年間の追跡調査を完遂した121例(96%)を主要解析対象集団とした。 2年時のOMAS(平均±SD)は、ギプス固定群89±17点、手術群87±16点で、平均群間差は1.3点(95%信頼区間:-4.8~7.3)であった。副次アウトカムはいずれも、統計学的に有意な群間差は認められなかった。 各群で1例に骨癒合不全のX線所見が認められた。また、手術群では、浅部創傷感染が1例、創傷治癒遅延が1例に認められ、9例が金属器具除去処置を受け、うち2例に術後感染(深部1例、浅部1例)が発生した。

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重度の慢性便秘に対する手術は「最終手段」

 米国消化器病学会(AGA)が発表した新しいガイドラインにおいて、重度の慢性便秘患者に対する外科的手術は最終手段とすべきことが明示された。治療に反応しない難治性便秘の患者に対しては、結腸の一部または全てを切除する結腸切除術を検討することがある。しかし、ガイドラインの著者らは、結腸切除術は重大な健康リスクを伴い、必ずしも症状の改善につながるわけではないとしている。米マサチューセッツ総合病院(ボストン)消化器運動研究室ディレクターのKyle Staller氏らがまとめたこのガイドラインは、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に1月7日掲載された。 Staller氏は、「慢性便秘に何年も苦しんできた人にとって、手術は永続的な解決策に聞こえることがある。特に、多くの薬が効かなかった場合にはなおさらだ」と話す。同氏はさらに、「検査で、結腸の動きが極端に遅く、他の治療で何も効果が得られない場合に手術が検討されることがある。しかし、手術はほとんどの患者には適しておらず、事実上リスクを伴い、手術後も腹部膨満感、腹痛、排便コントロール困難などの症状が続く人もいる」と述べている。 米国では約8~12%の人が慢性便秘に苦しんでいると推定されている。Staller氏は、「多くの人は、生涯のどこかの時点で便秘を経験するが、食事の見直し、食物繊維や水分の摂取、市販の下剤の使用といった簡単な対策で改善する。難治性便秘はそれとは別物であり、時間をかけて処方薬やバイオフィードバック、骨盤底筋療法を試しても改善しない状態を指す」と説明している。一方、結腸切除術は、腸閉塞、持続性の腹痛、腹部膨満感、便秘の再発、下剤への継続的依存など、高い合併症率と関連しているという。 新ガイドラインでは、手術を検討する前に踏むべき複数のステップが示されている。例えば、まずは慢性便秘の原因から薬剤の副作用、神経疾患、精神的問題を除外すべきことが述べられている。オピオイド系鎮痛薬や抗精神病薬、鉄剤は便秘を引き起こすことが知られている。また、膀胱疾患、アレルギー、気分障害の治療に使われる抗コリン薬も、腸の不随意運動に関与する神経伝達物質の働きを阻害するため、便秘と関連している。さらに、パーキンソン病や多発性硬化症といった神経疾患、摂食障害や抑うつ・不安などの精神的な問題も便秘リスクに影響する。 精神的な問題が便秘に関与することもあるため、術前の心理評価も意思決定プロセスの重要な一部として推奨されている。また、米食品医薬品局(FDA)の承認薬や市販薬に加え、便秘への有効性が示されている適応外使用薬も全て試すべきだとされている。さらに、大腸通過時間検査や排便造影検査など、結腸機能に加えて腸管全体の活動を評価する検査の実施を推奨している。その上で、最終手段として、一時的人工肛門(ストーマ)の使用を推奨している。これは可逆的で、恒久的な結腸切除が有益かどうかを判断する材料になる。 以上のように、ガイドラインは、手術には慎重な個別判断が必要であることを強調している。Staller氏は、「最良の結果は、十分な準備と共有された意思決定から生まれる。手術が本当に必要な場合でも、現実的な期待を持ち、消化器内科医、外科医、精神医療専門家が連携することで最善の結果が得られる」と述べている。 Staller氏は、慢性便秘のリスクを下げるためにできることとして、1)便秘を悪化させる薬剤について、定期的に医師と見直すこと、2)食事を極端に制限するのではなく規則正しく摂取すること、3)腸の運動を促すために身体的に活発に過ごすこと、4)便意のあるときは我慢せずに排泄すること、5)症状が続く場合は自己判断で治療を強化せず、医療機関を受診すること、を挙げている。また、正常な排便習慣には個人差があり、毎日排便する必要はないことも付け加えている。さらに同氏は、「何より重要なのは、便秘はしばしば長期的な管理を要する慢性疾患であると理解することだ。それがフラストレーションを防ぎ、症状が重症化・難治化するリスクを減らすことにつながる」と述べている。

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うつ病か?せん妄か?うつ病の過剰診断の現状

 精神科以外の臨床医によるうつ病とせん妄の誤診は一般的である。うつ病の過剰診断は、正常な情緒反応へのスティグマやせん妄への対応遅延につながる可能性がある。米国・クリーブランド・クリニックのMolly Howland氏らは、精神科以外の医療サービスとコンサルテーション・リエゾン精神科(CLP)サービスとの間における診断の一致率を調査するため、多施設におけるレトロスペクティブカルテレビューを実施した。Journal of Psychosomatic Research誌2026年2月号の報告。 クリーブランド・クリニックの2施設における入院患者を対象に、うつ病およびせん妄の紹介について調査した。紹介理由とCLPサービスの診断の一致率を評価した。従属変数として、うつ病の過剰診断、うつ病と誤診されたせん妄を、独立変数として、チームの主要専門分野、人口統計学的、臨床的変数を用いて、多変量ロジスティック回帰モデルを実施した。 主な結果は以下のとおり。・診断一致率は、せん妄で88%、厳密なうつ病診断で67%、広義のうつ病診断で80%であった。・CLP精神医学的診断を受けなかったうつ病で紹介された患者のうち、適応障害が49%、不安症/強迫症が18%、せん妄が16%、神経認知障害が4%で診断された。・高齢、過去の精神医学的診断は、うつ病の過剰診断の可能性を低下させた。・向精神薬の使用は、せん妄がうつ病と誤診される可能性を高めた。 著者らは「プライマリケアでは、うつ病が過剰診断されており、せん妄はより正確に診断されていた。しかし、代替診断のほとんどが不安症/強迫症であったことを考えると、プライマリケアは心理的苦痛の特定に長けているように思われ、これは精神科医によるスティグマ解消の啓発や教育活動に関連している可能性がある。プライマリケアでは、過去の精神疾患診断をうつ病のリスク因子として認識し、高齢者の症状にも配慮していたが、過去の向精神薬の使用はバイアスをもたらす可能性が示唆された。直接的な知識や態度の評価を含む、さらなる研究が今後求められる」としている。

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米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(American Society of Medical Oncology Gastrointestinal Cancers Symposium:ASCO GI 2026)まとめ

レポーター紹介2026年1月8~10日に、米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(American Society of Medical Oncology Gastrointestinal Cancers Symposium:ASCO GI 2026)が米国・サンフランシスコで開催され、後の実臨床を変え得る注目演題が複数報告された。国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科 医員の山本 駿氏が重要演題をピックアップし、結果を解説する。1. 食道がん術前FLOT療法の第II相試験:生存時間解析Phase II study of neoadjuvant chemotherapy with fluorouracil, leucovorin, oxaliplatin and docetaxel for resectable esophageal squamous cell carcinoma: Survival analysis【♯350】本邦の食道がんの約60%を占める、切除可能な局所進行食道扁平上皮がんに対する標準的術前化学療法は、JCOG1109試験の結果から術前DCF(ドセタキセル+シスプラチン+5-FU)療法である。しかし、術前DCF療法は発熱性好中球減少や嘔気・嘔吐、粘膜障害といった有害事象が起こりやすく、慎重な有害事象管理が求められるレジメンである。そのような中、欧米の胃がん、食道胃接合部がんを中心に開発が進められているFLOT療法(フルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン+ドセタキセル)は、DCF療法と同系統の薬剤の組み合わせによるレジメンであるが、発熱性好中球減少の頻度が限定的であり、投与時間も短いことから、食道扁平上皮がんでの開発が希求されていた。そのような背景から、切除可能な食道扁平上皮がんに対する術前FLOT療法の有効性・安全性を評価する、この多施設共同第II相試験が行われた。2025年のASCO GIで、主要評価項目である病理学的奏効割合(pRR)が43.4%と有望な結果が報告されていた。今年のASCO GIでは、生存期間解析の結果が報告されており、フォローアップ期間中央値は27ヵ月で、解析対象となった53例では、2年無増悪生存期間(PFS)割合が50.4%、2年全生存期間(OS)割合が78.2%であった。なお、本試験は鎖骨上リンパ節転移陽性例(cM1)も含まれており、それらを除いた44例のcM0症例では、2年PFS割合が49.4%、2年OS割合が76.4%であった。JCOG1109試験の患者背景と比較すると、本試験には75歳以上も含まれ、クレアチニンクリアランスも50mL/分以上とJCOG1109試験よりも緩い基準とされていたため、ややフレイルな対象が含まれていたが、それでもJCOG1109試験に極端に劣らない生存期間が得られていることは重要なポイントである。現状、全身状態が保たれ、シスプラチンが投与可能な症例における標準的な術前治療はDCF療法であるが、とくに腎機能障害や心機能障害など、シスプラチンが不適な症例においては、今後は術前FLOT療法が治療選択肢の1つとして挙がってくる可能性が示唆される。参考サイトjRCT登録番号:jRCTs0312000942. 胃がん・食道胃接合部がんHERIZON-GEA-01試験Zanidatamab + chemotherapy ± tislelizumab for first-line (1L) HER2-positive locally advanced, unresectable, or metastatic gastroesophageal adenocarcinoma(mGEA): Primary analysis from HERIZON-GEA-01【♯LBA285】今回のASCO GIで最も注目度が高かった演題が、このHERIZON-GEA-01試験である。現在、未治療のHER2陽性の切除不能な進行胃がん・食道胃接合部がんに対する標準治療は、ToGA試験とKEYNOTE-811試験の結果から、PD-L1 CPS 1以上であればトラスツズマブとペムブロリズマブ、2剤併用化学療法、PD-L1 CPS 1未満であればトラスツズマブと2剤併用化学療法である。しかし、OS中央値は15~20ヵ月であり、いまだに予後は限定的である。そのような中、HER2の細胞外ドメイン2、4に結合して抗腫瘍効果を発揮する二重特異性抗体であるzanidatamabの開発が進められ、未治療のHER2陽性の切除不能な進行胃がん・食道胃接合部がんを対象にした研究が、このHERIZON-GEA-01試験である。本試験は、トラスツズマブ+化学療法を対照群として、試験群にはzanidatamab+化学療法(zanidatamab群)、zanidatamab+チスレリズマブ+化学療法(zanidatamab+チスレリズマブ群)の2群、計3群が設定され、全体で914例が登録された。主要評価項目であるPFS中央値は、8.1ヵ月vs.12.4ヵ月vs.12.4ヵ月であり、zanidatamab群(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.52~0.81)と、zanidatamab+チスレリズマブ群(HR:0.63、95%CI:0.51~0.78)は、対照群と比較してどちらも優越性を示した。もう1つの主要評価項目であるOS中央値は、19.2ヵ月vs.24.4ヵ月vs.26.4ヵ月であり、zanidatamab群(HR:0.80、95%CI:0.64~1.01)は優越性を示せなかったが、zanidatamab+チスレリズマブ群は優越性を示した(HR:0.72、95%CI:0.57~0.90)。安全性に関しては、下痢の発生頻度が高く、全Gradeで試験治療群であるzanidatamab群では76%、zanidatamab+チスレリズマブ群では82%と報告されたが、初回の下痢発現までは約1週間であり、1サイクル目の7日間のロペラミド内服でコントロール可能と報告された。今回のHERIZON-GEA-01試験は中間解析の結果であるが、すでにzanidatamab+チスレリズマブを含むレジメンはPFS/OSの優越性を証明しており、practice changeとなった発表といえる。zanidatamabと2剤併用化学療法は、現段階ではOSの優越性を示していないが、今後の最終解析の結果が期待される。本レジメンは下痢の発生頻度が高いが、上記のような対応が可能であれば、実臨床でも十分投与可能と考える。さらにはサブ解析ではあるが、4剤併用療法はPD-L1 CPS発現によらず有望な結果を示しており、HER2陽性かつPD-L1 CPS 1未満であっても免疫チェックポイント阻害薬が初回治療で使用可能になるかが期待される。参考サイトHERIZON-GEA-01試験(ClinicalTrials.gov)ILUSTRO試験(コホート4A/B)Phase 2 ILUSTRO trial of 1L zolbetuximab plus mFOLFOX6 and nivolumab in patients with CLDN18.2+ locally advanced (LA) unresectable or metastatic gastric or gastroesophageal junction (mG/GEJ) adenocarcinoma【♯LBA284】HER2陰性、CLDN18.2陽性の切除不能な進行胃がん、食道胃接合部がんに対する標準的な初回薬物療法は、SPOTLIGHT試験とGLOW試験の結果からゾルベツキシマブと2剤併用化学療法であるが、同対象はCheckMate 649試験やKEYNOTE-859試験にも含まれており、抗PD-1抗体と2剤併用化学療法も選択肢である。しかし、同対象にゾルベツキシマブと抗PD-1抗体を併用した場合のデータは乏しく、その検討を行ったのがILUSTRO試験のコホート4A/Bである。ILUSTRO試験(コホート4A/B)は、未治療のHER2陰性かつCLDN18.2陽性(50%以上の発現例)の、切除不能な進行胃がん・食道胃接合部がんを対象に、ゾルベツキシマブとニボルマブとmFOLFOX6の併用療法を検討した第II相試験である。71例が登録された、有効性を検討したコホート4Bでは、PFS中央値は14.8ヵ月であり、CLDN18.2高発現(75%以上)/中等度発現(50~75%)では18.0ヵ月vs.6.7ヵ月と高発現群で良好な傾向であった。さらに客観的奏効割合は62.1%であり、こちらもCLDN18.2発現別では68.1%vs.40.0%と、高発現群で良好な傾向が示唆された。なおPFSのPD-L1 CPS発現別の解析では、1以上/1未満で23.6ヵ月vs.12.1ヵ月で、PD-L1 CPS 1以上で治療効果が高い傾向であった。有害事象プロファイルも嘔気や食欲不振の頻度が高かったが、Grade3以上の発現頻度は限られていた。現在、HER2陰性で、CLDN18.2陽性、PD-L1 CPS 1以上の初回治療例を対象に、抗PD-1抗体と2剤併用化学療法に、ゾルベツキシマブの上乗せを検討する国際共同第III相試験であるLUCERNA試験が進行中である。ILUSTRO試験の結果を加味すると、非常に有望な試験治療と考えられ、今後の進捗に期待がかかる。参考サイトILUSTRO試験(ClinicalTrials.gov)3. 大腸がんBREAKWATER試験(コホート3)BREAKWATER: Primary analysis of first-line (1L) encorafenib + cetuximab (EC) + FOLFIRI in BRAF V600E mutant metastatic colorectal cancer(mCRC)【♯13】BREAKWATER試験は、未治療のBRAFV600E変異を有する切除不能な進行大腸がんを対象に、エンコラフェニブとセツキシマブの意義を検証した第III相試験であり、すでにmFOLFOX6療法との併用においては、標準治療群と比較して、有意なOSの延長(HR:0.49、95%CI:0.375~0.632)が報告されている。今回のBREAKWATER試験コホート3は、同じ未治療のBRAFV600E変異を有する切除不能な進行大腸がんを対象に、FOLFIRI±ベバシズマブ療法と、FOLFIRI+エンコラフェニブ+セツキシマブ併用療法を直接比較した。コホート3には147例が登録され、主要評価項目である奏効率(ORR)は39.2%vs.64.4%と報告され、有意差を示した(p=0.0011)。またOSはimmatureであるが、HR:0.49(95%CI:0.237~1.032)と報告され、現段階ではmFOLFOX6療法をベースにした場合のHRと近い値が得られていると考えられた。有害事象も好中球減少や下痢など、予期されうるプロファイルであり、mFOLFOX6療法では末梢神経障害が懸念されうる点も加味すると、FOLFIRI療法をベースとした併用療法も実臨床ではニーズはあると推察される。今後はさらにmatureした生存期間の結果の報告が期待される。参考サイトBREAKWATER試験(ClinicalTrials.gov)COMMIT試験NRG-GI004/SWOG-S1610: COlorectal cancer dMMR Immuno-Therapy (COMMIT) study A randomized phase III study of atezolizumab monotherapy versus mFOLFOX6/bevacizumab/atezo in the first-line treatment of patients with dMMR or MSI-H metastatic colorectal cancer【♯14】dMMR/MSI-highを有する切除不能な進行大腸がんの初回薬物療法は、抗PD-1抗体、またはニボルマブ+イピリムマブ併用療法である。とくにニボルマブ+イピリムマブ併用療法はCheckMate 8HW試験で高い有効性と忍容性を示しており、実臨床でも頻用されていると推察される。そのような中、米国を中心に行われたCOMMIT試験は、未治療のdMMR/MSI-highを有する切除不能な進行大腸がんを対象に、抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブ単剤療法と、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+mFOLFOX6併用療法を直接比較したランダム化第III相試験である。主要評価項目はPFSと設定され、副次評価項目はORRやOS等が設定された。当初ベバシズマブ+mFOLFOX6療法群も設定されていたが、KEYNOTE-177試験の結果から登録中止とされた。またCheckMate 8HW試験の結果により、2025年3月には全体の登録が中止された。予定していた中間解析の時期と近かったことから、102例の登録例における解析が行われた。主要評価項目であるPFS中央値は、5.3ヵ月vs.24.5ヵ月(HR:0.439、95%CI:0.23~0.84、p=0.0103)と報告され、事前に規定した有意水準(0.0152)を満たし、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+mFOLFOX6併用群の優越性が示された。ただし、CheckMate 8HW試験で確立されたニボルマブ+イピリムマブ併用療法は3年PFS割合が67%であり、忍容性も保たれていたことを加味すると、現状ではmFOLFOX6療法をベースとするCOMMIT試験レジメンを積極的に選択すべき集団が明らかでない。そのため、このCOMMIT試験のみでなく、CheckMate 8HW試験におけるmatureしたOSの結果の報告も期待される。参考サイトCOMMIT試験(ClinicalTrials.gov)

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災害時、“トイレが使えない”現実を前に――医療者として何を備えるべきか【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第13回

災害時、“トイレが使えない”現実を前に――医療者として何を備えるべきか大規模災害が発生した際、医療機関が直面する最も深刻なインフラ障害の一つが「トイレ」です。能登半島地震の支援で現地へ向かった際、私自身その現実を痛感しました。支援に入った本部で突き付けられたのは、「下水が完全に止まっている」という事実でした。小便は雪解け水をバケツで汲み、便器に流し込んで重力で無理やり流すしかありませんでした。大便については、幸いポータブルトイレがあったため対応できましたが、もしなかったら、支援に入った医療者も被災者も、排泄すらままならない状況だったと思います。排泄物の処理方法、照明のない暗い個室、強い臭気や衛生面の不安……。診療の前に、人としての基本が揺らぐ環境がそこにありました。図1. トイレに雪解け水を利用図2. 災害時ポータブルトイレトイレが使えないと、なぜ医療が成り立たなくなるのか災害時、排泄環境は「最初に悪化し」「最後まで復旧が遅れる」インフラといわれています。しかし、その影響は単なる不便さにとどまりません。高齢者や基礎疾患のある方は、排泄を我慢するだけで、脱水、急性腎障害、電解質異常、便秘、せん妄を起こしやすいことが指摘されています1)。我慢そのものが健康被害につながるのです。また、適切な排泄管理ができない環境ではノロウイルスなどの胃腸炎が集団発生しやすく、避難所や臨時診療所の医療機能を大きく低下させるリスクがあります2,3)。国際的な災害医療基準でも「医療従事者自身のトイレ環境の確保」は必須項目として位置付けられています4,5)。医療者が安全にトイレを使用できなければ、長時間にわたる診療継続は困難になります。つまりトイレとは、医薬品や医療機器と同様に医療を支える基礎インフラなのです。来たるべきトイレ問題に何を備えておくべきか能登での経験から、小規模医療機関であっても「トイレが止まれば診療が止まる」という現実が浮き彫りになりました。ここでは『避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン』6)を基に、無理なく準備できる最低限の備えをまとめます。(1)携帯トイレ(凝固剤タイプ)の備蓄1日5〜7回を目安に、職員と患者さん分の数日分を備蓄しておくことが望ましいです。既存の洋式トイレにビニール袋をかぶせ、用を足したら凝固剤を入れ、封をして破棄することで、下水道が止まっていてもトイレを使用することができます。(2)ポータブルトイレの準備能登でも、ポータブルトイレが“あるか・ないか”で現場の負担が大きく変わりました。急性期は50人当たりに1台のトイレが推奨されており、有床診療所や小規模な病院であれば、職員も合わせて1、2台あれば足りるでしょう。発災時に災害用のトイレが迅速に調達できるよう、関係団体と協定を結んでおくのもよいと思います。マンホール直上にトイレを設置する方法もあります7,8)。マンホールトイレは、下水道管路にあるマンホールの上に簡易な便座やパネルを設け、災害時に迅速にトイレ機能を確保するものです。図3. 東日本大震災や熊本地震で使用されたマンホールトイレ(参考文献8より)(3)雑用水(洗浄・手洗い用水)のストック雪解け水でしのいだ経験からも、飲用とは別に生活用水の備蓄は必須だと実感しました。飲料水の確保は考えていても、排泄用の水を試算にいれてないことが多いため、事前に計算して備蓄しておくことをお勧めします。また感染症予防のために手洗い水の確保も重要です。(4)トイレ空間の簡易照明停電下でトイレが真っ暗になると、転倒リスクが高まり、医療者の利用にも支障を来します。また防犯上も明かりは必須です。充電式、乾電池式のヘッドライトなどが役立ちます。トイレを確保することは、医療と被災者の安全を守ること災害時には、医療者も被災者も排泄の安全を確保することが不可欠です。医療者は診療継続のため、被災者は健康保持のため、清潔で使いやすいトイレの存在が重要になります。診療を守るための第一歩として、今一度、災害時のトイレの備えを見直していただければと思います。 1) 阪東 美智子. 避難所・応急仮設住宅の現状と課題 ― 高齢者・障がい者への配慮や健康影響の視点から. 保健医療科学. 2021;70:407-417. 2) Kasaoka S, et al. Poor Environmental Conditions Created the Acute Health Deteriorations in Evacuation Shelters after the 2016 Kumamoto Earthquake. Tohoku J Exp Med. 2023;26:309-315. 3) 前田 信治, ほか. 東日本大震災時における避難所のトイレの実態調査. 空気調和・衛生工学会論文集. 2018;43:59-64. 4) Sphere Association. The Sphere Handbook: Humanitarian Charter and Minimum Standards in Humanitarian Response. WASH Section. 2018. 5) World Health Organization (WHO). Technical Notes on Drinking-water, Sanitation and Hygiene in Emergencies. WHO Press. 2013. 6) 避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン. 内閣府. 2022. 7) マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン2025年版. 国土交通省. 2025. 8) 国土交通省. 災害時に使えるトイレ

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第303回 がん細胞が作るアルツハイマー病予防タンパク質を発見

中国の研究者らによる10年を優に超える研究が実を結び、がん細胞が放つタンパク質のシスタチンC(Cyst-C)がどうやらアルツハイマー病を阻止する効果を担うことが突き止められました1,2)。がんとアルツハイマー病の併発がまれなことは長く知られており、そのどちらかがもう片方を防ぐ仕組みがあるのかもしれないと考えられてきました。イタリア北部の100万人超を調べた2013年の報告では、アルツハイマー病患者のがんのリスクは50%低く、がん患者のアルツハイマー病のリスクは35%低いことが示されています3)。米国でのFramingham Heart試験も同様で、がん生存者のアルツハイマー病のリスクががんでない人に比べて33%低いという結果となっています4)。最近のメタ解析でもやはりがん患者はアルツハイマー病をより免れていました。2020年9月2日までの22の観察試験の960万例超が解析され、がんと診断された人のアルツハイマー病発生率はがんではない人より11%低いことが示されます5)。アルツハイマー病の病変を抑制するがんの効果を示唆する報告もあります。785例を死ぬまで追跡した試験では、アルツハイマー病のアミロイドやタウ病変の程度ががんと診断された人では低くて済んでいました6,7)。それらの裏付けの数々に背中を押され、中国の武漢市の華中科技大学(Huazhong University of Science and Technology)の神経学者Youming Lu氏らはがんがアルツハイマー病を生じにくくする仕組みを調べることを思い立ちます2)。まずLu氏らは研究に最適なマウス作りに取り掛かります。実に6年の歳月を費やした後に、アルツハイマー病を模すマウスに3種類(肺、前立腺、大腸)の腫瘍を移植する手段に行き着きます。それらのマウスはアルツハイマー病に特有の脳のアミロイド病変を生じずに済みます。続いてがん細胞が放つタンパク質の数々を解析し、血液脳関門を通過して脳に浸透しうるタンパク質が探索されました。6年を超える取り組みの甲斐あって、Lu氏らはとうとうCyst-Cにたどり着きます。Cyst-Cは脳のアミロイド重合体に結合し、続いて脳の免疫細胞のマイクログリアの受容体TREM2を活性化します。そうしてマイクログリアがアミロイド病変を分解できるようにします。水に濡れずに済む抜け道をマウスに覚えさせる迷路実験でCyst-Cの記憶改善効果も確認されました。アルツハイマー病マウスはその抜け道を探すのに苦労しますが、Cyst-Cやがん細胞の分泌タンパク質一揃いを与えたところ手際が良くなり、抜け道をより早く見つけられるようになりました8)。アルツハイマー病の薬といえば大抵が脳の新たな障害の予防が焦点ですが、Cyst-Cはすでに生じてしまったアミロイド病変の除去を促す効果があります。ヒトでもマウスと同様の効果があるなら、認知症の新たな治療法へと通じる道が開けそうです。参考1)Li X, et al. Cell. 2026 Jan 22. [Epub ahead of print] 2)Cancer might protect against Alzheimer’s - this protein helps explain why / Nature3)Musicco M, et al. Neurology. 2013;81:322-328.4)Driver JA, et al. BMJ. 2012;344:e1442.5)Ospina-Romero M, et al. JAMA Netw Open. 2020;3:e2025515.6)Karanth SD, et al. Brain. 2022;145:2518-2527.7)Cancer Tied to Reduced Risk of Alzheimer’s Disease / TheScientist8)Cancer tumors may protect against Alzheimer's by cleaning out protein clumps / Medical Xpress

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逆流性食道炎へのボノプラザン、5年間の安全性は?(VISION研究)

 逆流性食道炎は再発や再燃を繰り返しやすく、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)やプロトンポンプ阻害薬(PPI)による維持療法が長期に及ぶことがある。P-CABのボノプラザンは、PPIより強力かつ持続的な酸分泌抑制を示すが、長期使用による高ガストリン血症を介した胃粘膜の変化や、腫瘍性変化のリスクが懸念されていた。 CareNet.comでは、P-CABとPPIの安全性に関するシステマティックレビューおよびメタ解析結果を報告した論文(Jang Y, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2026;41:28-40.)について、記事「P-CABとPPI、ガストリン値への影響の違いは?」を公開している。本論文では、P-CAB群はPPI群と比較して血清ガストリン値が高かったものの、有害事象プロファイルはPPI群と同様であることが示唆された。しかし、メタ解析に含まれた研究は観察期間が短く、本邦で実施されたボノプラザンとランソプラゾールの比較試験「VISION研究」は含まれていない。 そこで本稿では、逆流性食道炎患者を対象に、5年間の維持療法としてボノプラザンとランソプラゾールを比較した国内第IV相試験「VISION研究」について紹介する。本試験では、維持療法を実施した5年間において、ボノプラザン群とランソプラゾール群のいずれでも、腺窩上皮細胞の腫瘍性/異形成性変化が1例も認められず、逆流性食道炎の累積再発率はボノプラザン群で低かった。本試験の結果は、上村 直実氏(国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長/東京医科大学内視鏡センター 客員教授)らによって、Clinical Gastroenterology and Hepatology誌2025年4月号で報告された。【VISION研究の概要】・試験デザイン:国内多施設共同非盲検無作為化並行群間比較第IV相試験・対象:Helicobacter pylori(H. pylori)陰性で、ロサンゼルス分類A~Dの逆流性食道炎患者(H. pylori除菌歴のある患者は除外)・試験群(ボノプラザン群):ボノプラザン(20mg、1日1回)を最大8週間→ボノプラザン(10mgまたは20mg、1日1回)を最大260週間 139例対照群(ランソプラゾール群):ランソプラゾール(30mg、1日1回)を最大8週間→ランソプラゾール(15mgまたは30mg、1日1回)を最大260週間 69例・評価項目:[主要評価項目]胃粘膜病理組織学的検査で臨床的に問題となる症例の割合(腺窩上皮細胞の腫瘍性/異形成性変化など)[副次評価項目]内視鏡所見での逆流性食道炎再発割合、治療期終了時における逆流性食道炎の治癒割合、安全性[その他の評価項目]血清ガストリン値、血清クロモグラニンA値など 主な結果は以下のとおり。・本試験において、最大8週間の治療期から最大260週間の維持療法期へ移行したのは、ボノプラザン群135例、ランソプラゾール群67例であった。・維持療法期へ移行した患者の平均年齢は、ボノプラザン群60.4歳、ランソプラゾール群61.5歳であった。男性の割合はそれぞれ71.9%、61.2%であり、治療開始時の血清ガストリン値(平均値)はそれぞれ130.2pg/mL、155.4pg/mLで、血清クロモグラニンA値の中央値は両群ともに0ng/mLであった。・260週時における血清ガストリン値の中央値は、ボノプラザン群625pg/mL、ランソプラゾール群200pg/mL、血清クロモグラニンA値の中央値はそれぞれ250ng/mL、100ng/mLであり、ボノプラザン群が高かった(p<0.0001)。血清ガストリン値と血清クロモグラニンA値は、両群で投与期間を通じて安定して推移し、4~260週時のいずれの測定時点においてもボノプラザン群が高値であった(p<0.001)。・260週時点までに、腺窩上皮細胞の腫瘍性/異形成性変化が認められた症例は、ボノプラザン群、ランソプラゾール群のいずれも0例であった。260週時点の病理組織学的所見の発現割合の詳細は以下のとおり(ボノプラザン群vs.ランソプラゾール群)。 腺窩上皮細胞の腫瘍性/異形成性変化:0%vs.0% 壁細胞隆起/過形成:97.1%vs.86.5%(p=0.01) 腺窩上皮細胞過形成:14.7%vs.1.9%(p=0.01) G細胞過形成:85.3%vs.76.9%(p=0.29) ECL細胞過形成:4.9%vs.7.7%(p=0.49)・維持療法期に胃底腺ポリープ(260週時の発現割合:ボノプラザン群72.1%、ランソプラゾール群84.9%)および胃過形成性ポリープ(同:23.1%、11.3%)の発現が増加したが、いずれも両群に有意な差はみられなかった。・神経内分泌腫瘍は、いずれの群にも認められなかった。・有害事象の発現割合は、ボノプラザン群93.3%(126/135例)、ランソプラゾール群95.5%(64/67例)であり、治療関連有害事象は、それぞれ45.9%(62/135例)、53.7%(36/67例)に発現した。204週時までに、ボノプラザン群で腺窩上皮型腺腫が1例、ランソプラゾール群で胃底腺型胃腺腫が1例認められた。・260週時点までの逆流性食道炎の累積再発率は、ボノプラザン群10.8%、ランソプラゾール群38.0%であった(p=0.001、log-rank検定)。 本結果について、本論文の筆頭著者である上村氏にコメントを求めたところ、以下の回答が得られた。【上村氏のコメント】日本人の胃酸分泌はH. pylori感染率の低下とともに増えてきた 日本人の胃酸分泌はH. pyloriの感染率の低下に伴い次第に増加してきた。すなわち50年前の1970年代には陽性者が80%以上であり、加齢とともに胃酸分泌が低下していた。その後、感染率が低下するとともに、高齢になっても胃粘膜の老化現象を認めず胃酸分泌の低下を認めないH. pylori未感染者が多数を占めるようになり、2020年代の30歳未満の感染率は5%台まで低下し、除菌治療の影響も加わって高酸分泌を呈する高齢者も多くなり、逆流性食道炎を含む胃食道逆流症(GERD)の患者が増加している。胃酸分泌の増加と酸関連疾患の変化とともに新たな胃酸分泌抑制薬が開発された 1980年に登場したヒスタミン受容体拮抗薬(H2ブロッカー)により外科的治療が必要であった胃潰瘍や十二指腸潰瘍に対して、H2ブロッカーを用いた内科的な治療が主体となった。さらに強力な胃酸分泌抑制が必要となった1990年にPPIが登場して、難治性潰瘍やGERDの治療および低用量アスピリン(LDA)や非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID)による潰瘍の予防に大きな役割を果たしている。2000年に保険適用となったH. pylori除菌治療により消化性潰瘍の再発がほぼ消失して、コントロールが必要な主な酸関連疾患は逆流性食道炎・GERDとなってきた。2015年には、PPIよりさらに強力な酸分泌抑制薬のボノプラザン(VPZ)が日本において開発されて、PPIから置き変わりつつあるのが現状である。VISION研究はボノプラザン長期投与の安全性を検証する試験 H2ブロッカーが出現した当初から酸分泌抑制に対するフィードバックとして出現する高ガストリン血症によるEnterochromaffin-like(ECL)細胞の過形成に続く神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine cell neoplasm:NEN[カルチノイド])の発生が危惧されていた。しかし、より強力な酸分泌抑制を有するPPIの長期投与による高ガストリン血症が、胃カルチノイドの発生リスクを著明に上昇させる明確なエビデンスも得られていない。 筆者らが本研究を企画したのは、VPZの承認を目的とした臨床治験の結果において、血清ガストリン値がPPIに比べてもさらなる高値を示し、3,000pg/mL以上の高値を示す症例が存在したことから、一般診療現場における長期投与が胃内微小環境に与える影響、とくに腫瘍性変化のリスクを危惧したためである。 VPZを含むP-CABとPPIの安全性に関するYewon Jang氏らによるメタ解析には、日本の臨床治験3試験と米国の1試験を含む11の研究結果が解析されているが、CareNet.comの記事に指摘されているように、観察期間が1年以下と短く、腫瘍の発生や組織学的変化のリスクを評価するには短期間にすぎるものである。さらに一般臨床の現場では数年間使用されることもあり、長期間の胃酸分泌抑制に伴う副事象の解明が必要と考えて5年間の経過観察とした次第である。 VISION研究では、VPZ群とPPI群に無作為に分類して、5年間毎年、生検を含む内視鏡検査により胃内微小環境の変化を観察した結果、内視鏡的に胃底腺ポリープや過形成ポリープの新たな発生や数の増加を認めた。一方、PPIに比べてVPZは有意な高ガストリン血症および高クロモグラニンA血症を呈したものの、カルチノイドなどの組織学的腫瘍性変化を認めなかった。内分泌腫瘍の腫瘍マーカーとして知られている血清クロモグラニンA値が高値を示した点から、ECL細胞が胃底腺粘膜全体に増加している可能性も推測され、カルチノイドの発生には5年よりさらに長期間の慎重な観察が必要と思われた。 VISION研究の結果から、著明な肝機能異常や骨折および重篤な腸管感染症のリスクはPPIと同様の安全性を示すことが確認された。しかし、本研究はH. pylori陽性や除菌後を除く陰性の逆流性食道炎患者としている点は非常に重要であり、一般の診療現場では、本試験の結果をそのまま充当できないH. pylori現感染者や除菌後の患者に対する診療では胃がんやカルチノイドのリスクにも注意することが必要である。

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精神疾患早期介入プログラムで治療を受けた患者のLAI抗精神病薬継続率は?

 精神疾患の早期介入プログラムで治療を受けた患者は、通常治療を受けた患者と比較し、治療成績が良好であり、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の使用率が20~50%と高くなるといわれている。このプログラムでは通常2~3年間治療が行われ、その後、多くの患者は他の精神保健サービスへ移行し退院する。また、罹病期間がより長期の統合失調症患者を対象とした研究において、経口抗精神病薬への切り替えが一般的に行われている可能性が示唆されている。しかし退院後のフォローは、複数の臨床サービスや医療提供者間での患者記録の移行という課題によって複雑化しているのが現実である。カナダ・ダルハウジー大学のCandice E. Crocker氏らは、精神疾患の早期介入サービス(EIS)から退院した後に、LAI抗精神病薬の使用が継続されるかどうかを調査した。Therapeutic Advances in Psychopharmacology誌2025年10月16日号の報告。 本レトロスペクティブコホート研究では、精神疾患のEISによる治療を完了した患者を対象に、LAI抗精神病薬による治療の継続または中止の影響を検討した。2016~18年の3年間にわたる、精神疾患のEISを受け退院した患者のレトロスペクティブコホートを作成し、退院時および退院後6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月時点での、その後2年間の精神保健アウトカムと処方された抗精神病薬についてフォローアップ調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・カナダの3州にある3施設から退院し、完全なフォローアップ調査が実施可能であった85例の患者のうち、60例(71%)が24ヵ月後もLAI抗精神病薬を継続していた。・EIS入院時のコホートにおける患者の平均年齢は22±4.7歳であった。・退院時に最も多く使用されたLAI抗精神病薬はアリピプラゾールであり、LAI抗精神病薬を継続していた患者の多くは24ヵ月後も同一製剤を使用していた。・中止の主な理由は、患者からの希望であった。・LAI抗精神病薬を継続した患者と継続しなかった患者では、再入院の減少という点において臨床転帰に有意差が認められた。 著者らは「精神疾患のEISの利用は、退院後24ヵ月が経過しても、LAI抗精神病薬継続の良好なアドヒアランスと関連していることが示唆された」としている。

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