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1.

未破裂脳動脈瘤のある健康な人、全死亡リスクが5倍に

 MRIの普及に伴い、症状のない未破裂脳動脈瘤(UIA)が偶然発見される機会が増加している。しかし、偶然発見されたUIAを持つ人の長期的な死亡率や死因については、これまで十分に解明されていなかった。佐賀大学の緒方 敦之氏らが実施した、脳ドック受診者を対象とした前向きコホート研究「The Kashima Scan Study」の結果、偶然UIAが発見された健康な人は、UIAがない人と比較して全死亡リスクが約5倍高く、その主な死因は動脈瘤の破裂ではなく悪性腫瘍であることが判明した。Stroke and Vascular Neurology誌オンライン版2026年2月24日号に掲載。 本研究では、2005年12月~2011年11月に脳ドックを自費で受診した神経学的に健康な成人1,670例(平均年齢57.7歳[範囲23~84]、男性47.5%)を対象とした。平均追跡期間8.7年(SD 2.3)において、MRIおよびMRAで診断されたUIAの有無と死亡率の関連性を、年齢、性別、高血圧、糖尿病、喫煙習慣などの要因を調整したCox比例ハザードモデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・全対象者1,670例のうち90例にUIAが認められた。UIA群90例(5.4%)、非UIA群1,580例(94.6%)。・追跡期間中に36例が死亡した。全死因死亡は、UIA群で7例(死亡率:7.8%)、非UIA群で29例(同:1.8%)であり、UIA群で死亡率が有意に高かった(p=0.002)。・多変量解析の結果、UIAの存在は死亡リスクの有意な上昇と独立して関連していた(調整ハザード比[HR]:4.95、95%信頼区間[CI]:2.14~11.4)。・全死因のうち、最も多かったのは悪性腫瘍(15例)であった。悪性腫瘍による死亡は、UIA群の死亡例の57%(4/7例)、非UIA群の38%(11/29例)を占めた。・UIA群の死亡例(7例)のうち、動脈瘤破裂による死亡は1例のみであった。 本研究の結果、偶然見つかったUIAを持つ神経学的に健康な人は死亡リスクが著しく高いことが示された。著者らはこの原因として、動脈瘤形成に関与する「全身性の炎症状態」が、心血管疾患やがんの発症・進行という共通の病理学的経路を介している可能性を指摘している。UIAが発見された人に対しては、従来の動脈瘤の経過観察だけでなく、より集中的な健康モニタリングや総合的なリスク因子管理が有益である可能性を示唆している。

2.

日本におけるアルコール使用障害に対する薬物療法の開始率はどの程度か

 アルコール使用障害(AUD)は、世界的に広く認められる疾患である。しかし、薬物療法が行われている患者の割合は依然として低いままである。また、日本におけるAUDに対する薬物療法開始パターンは、これまで十分に解明されていなかった。京都大学の北村 美智氏らは、日本で新たにAUDと診断された患者における薬物療法開始の累積発生率を定量化し、評価を行った。Alcohol and Alcoholism誌2026年1月14日号の報告。 日本の保険請求データベースを用いて記述的研究を実施した。2012~21年度にかけて新たにAUDと診断された20~64歳の成人を対象とした年次コホートを作成した。薬物療法開始の累積発生率は、死亡を競合リスクとして、推定した。 主な結果は以下のとおり。・本研究の対象患者数は1万3,936例。・2012~21年度のコホート全体での平均年齢は43.3~44.8歳、各コホートでの男性の割合は72.6~79.3%であった。・コホート登録時(0日目)における薬物療法開始の累積発生率は、2012年度の18.0%から2021年度には35.2%に上昇した。・1年間の対応する累積発生率は、それぞれ28.1%と44.9%であった。・アカンプロサート(2013年度)とナルメフェン(2018年度)の承認および日本のAUD治療ガイドライン(2018年度)の策定に伴い、薬物療法開始はそれぞれ前年比で顕著に増加した。 著者らは「薬剤処方前にAUDの診断を義務付ける日本の保険償還制度により、今回観察された発症率は過大評価されている可能性があるものの、薬物療法の開始件数は他国で報告されている件数を上回り、2012年度以降着実に増加している。新薬の導入とガイドラインの普及により、治療開始が加速し、治療方法が大きく変化したと考えられる。これらの知見は、臨床医や政策立案者が根深い治療ギャップを埋めるうえで役立つ可能性がある」と結論付けている。

3.

定位放射線、5個以上の脳転移で症状負担・日常生活機能を改善/JAMA

 米国・ダナファーバーがん研究所のAyal A. Aizer氏らは、5~20個の脳転移を有するがん患者において、定位放射線照射(stereotactic radiation:STR)が海馬回避全脳照射(hippocampal-avoidance whole brain radiation:HA-WBR)と比較して、生活の質の重要な要件である症状負担と日常生活機能への支障を有意に改善することを示した。がん患者では脳転移が高頻度にみられるが、血液脳関門が薬剤の通過を阻害するため一般に放射線治療が行われる。脳転移が4個以下の患者では腫瘍に限定して集中照射するSTRが標準とされるが、5個以上の場合の標準治療は確立されていない。もう1つの選択肢である全脳照射は、認知機能障害を来すリスクがあるが、記憶に重要な海馬領域への照射を控えたHA-WBRが開発されていた。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年2月19日号に掲載された。2つの照射法を直接比較する米国の第III相試験 本研究は、米国の4施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2017年4月~2024年5月に、生検で確認された固形がんで、5~15個(2018年10月に一般化可能性を重視して5~20個に変更)の脳転移を有し、脳への放射線照射を受けたことがない患者を対象とした(Varianの助成を受けた)。 被験者を、STR(1日照射[定位手術的照射、標準線量20Gy]または5日間の分割照射[定位放射線治療、標準線量30Gy])を受ける群(98例)、またはHA-WBR(線量30Gy、10日間の分割照射、メマンチンを併用)を受ける群(98例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、MD Anderson症状評価表-脳腫瘍版(MDASI-BT)(0~10点[高スコアほど重症度が高く支障が大きい]、スコアの変化の範囲:-10~10点、-10点が最良)を用いた、患者報告による症状の重症度と日常生活への支障のスコアの、ベースラインから6ヵ月後までの変化の加重平均値。臨床的に意義のある変化量は0.98と定義した。主要アウトカムが有意に改善、生存期間は同程度 196例(平均年齢61歳、女性129例[66%])が登録された。ベースラインの全体の脳転移数中央値は14個(四分位範囲:11~18)で、49例(25%)が脳神経外科的切除術を受けた経験があった。83例(42%)が6ヵ月間の評価を完了した。 主要アウトカムについては、ベースラインから、6ヵ月間の追跡期間のベースライン後評価までの加重複合MDASI-BTスコアが、HA-WBR群で2.29点から3.03点へと悪化(平均変化量0.74点)したのに対し、STR群では2.69点から2.37点へと改善(同-0.32点)し、両群間に臨床的に意義のある有意な差を認めた(平均群間差:-1.06点、95%信頼区間:-1.54~-0.58、p<0.001)。 STR群で80例、HA-WBR群で85例が死亡し、生存期間中央値はそれぞれ8.3ヵ月および8.5ヵ月であった(p=0.30)。神経学的死亡は、STR群で19例(19%)、HA-WBR群で18例(18%)に発生し、年間累積発生率は9.4%および8.5%であった(p=0.35)。 新規脳転移の発生率はSTR群で有意に高く(年間累積発生率:45.4%vs.24.2%、p=0.003)、局所再発率はSTR群で有意に低かった(3.2%vs.39.5%、p<0.001)。頭蓋内病変の進展率には差がない(46.4%vs.39.4%、p=0.15)が、画像上の放射線脳壊死の発生率はSTR群で高かった(14.8%vs.1.1%、p=0.001)。また、12ヵ月時の認知機能はSTR群で有意に良好だった(p=0.004)。Grade3~5の有害事象に差はない 最も頻度の高い放射線照射関連有害事象は、STR群ではGrade1~3の疲労(27例[28%])、頭痛(15例[15%])、悪心(13例[13%])であり、HA-WBR群ではGrade1~3の疲労(43例[44%])、食欲不振(22例[22%])、頭痛(13例[13%])であった。Grade3~5の有害事象の発生率は両群で同程度だった(12例[12%]vs.13例[13%])。 著者は、「これまで4個以下の転移に限定されていたSTRの適応が、5~20個の多発性脳転移でも標準的な選択肢となりうることが裏付けられた」「この結果は、患者のwell-beingを優先する精密技術へのパラダイムシフトを強く主張するもの」としている。 また、「これらの知見は、頻回のMRIベースの監視とSTRを組み合わせれば、全脳照射を単に遅延させるだけでなく回避も可能と示唆するが、確認のための検討が必要である」と指摘している。

4.

歯や口の困りごとがうつ病と関係?日本人成人1.5万人を追跡調査

 メンタルヘルス対策は精神症状そのものに焦点が当てられてきた一方で、日常生活に身近な身体的要因との関連は十分に検討されてこなかった。そうした中、日本人成人約1万5,000人を1年間追跡した縦断研究により、歯や口の困りごとによって口腔関連QoL(OHRQoL)が低い人ほど、その後にうつ病が発症しやすいことが示された。研究は、岡山大学学術研究院医療開発領域の竹内倫子氏、学術研究院医歯薬学域予防歯科学分野の江國大輔氏、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の田淵貴大氏らによるもので、詳細は1月4日付で「Journal of Clinical Medicine」に掲載された。 うつ病は世界的に大きな疾病負担をもたらす精神疾患であり、その発症には年齢、社会的孤立、慢性疾患、生活習慣、QoLなど多様な要因が関与する。近年、歯の欠損や口腔痛、歯周病、OHRQoLとうつ病との関連も報告されているが、多くは横断研究にとどまり、因果関係は明らかでない。本研究は、うつ病のない成人を対象に、口腔の健康状態およびOHRQoLがその後のうつ病の発症と関連するかを縦断的に検討することを目的とした。 本研究では、2022年および2023年に実施された「Japan COVID-19 and Society Internet Survey(JACSIS調査)」のデータを用いて解析を行った。ベースライン時点でうつ病の自己申告がない20歳以上の参加者1万5,068人を解析対象とした。うつ病は、2回の調査間における自己申告に基づいて判定した。OHRQoLは、Oral Health Impact Profile(OHIP)の短縮版である日本語版OHIP-14を用いて評価した。口腔の健康状態については、歯の喪失、歯周病、口腔痛、過去1年間の歯科受診の状況により評価を行った。これらの要因とうつ病発症との関連について、社会人口学的要因および行動要因を調整したロジスティック回帰分析を用い、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 追跡調査の結果、1年後に218人(1.45%)が「うつ病がある」と回答した。「うつ病がある」と回答した群と、「うつ病がない」と回答した群の背景因子を単変量で比較したところ、歯科受診状況やOHRQoL(OHIP-14)、年齢、性別、社会経済状況、生活習慣に加え、孤独感、社会的孤立、生活満足度、睡眠薬・抗不安薬の使用など、多くの心理社会的要因に差が認められた。 次にこれらの因子を独立変数、うつ病発症を従属変数として二項ロジスティック回帰分析を行った。その結果、OHRQoLが低いほど、うつ病を発症するリスクが有意に高いことが示された(OR 1.02、95%CI 1.00~1.04、P=0.039)。このほか、年齢が若いこと(OR 0.97、95%CI 0.96~0.99、P<0.001)、趣味や文化活動への参加(あり:OR 2.22、95%CI 1.50~3.30、P<0.001)、睡眠薬または抗不安薬の常用(現在使用:OR 3.51、95%CI 2.27~5.44、P<0.001)、孤独感の増大(OR 1.22、95%CI 1.14~1.30、P<0.001)、生活満足度の低さ(OR 0.90、95%CI 0.84~0.97、P=0.005)、および自己評価による健康状態の不良(OR 2.92、95%CI 1.81~4.72、P<0.001)も、うつ病の発症と関連していた。 さらに構造方程式モデリングによる解析では、OHRQoLの低下が、その後のうつ病の発症と関連する過程において、孤独感や社会的孤立、生活満足度、主観的健康感といった心理社会的要因が重要な媒介役を果たしていることが示された。OHRQoLは、これらの要因を介した間接的な影響に加え、うつ病発症への直接的な影響も認められた。 著者らは、「うつ病を自己申告していなかった人を追跡した結果、口腔関連QoLが低い人ほど、その後にうつ病が発症しやすいことが示された。この関連は、年齢や生活習慣などの要因を考慮した後も認められ、さらに孤独感や社会的つながり、生活満足度といった心理社会的要因が、その関係の一部を仲介している可能性がある」と述べている。 なお、本研究は自己申告に基づくオンライン調査であり、未評価の交絡因子や追跡期間の短さといった制約があるため、うつ病の評価とOHRQoLとの関連については因果的解釈に注意が必要であるとしている。

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男性の性機能障害、3つのリスク因子とは/順大

 不妊治療開始前の新婚または結婚予定男性の約5人に1人が性機能障害を有することが、日本の単施設研究で明らかになった。順天堂大学医学部附属浦安病院の谷口 歩氏らによる研究成果は、Reproductive Medicine and Biology誌2026年1月号に掲載された。 本研究は、新婚男性または結婚予定男性の性機能の現状を把握することを目的とした横断研究であり、2014年10月~2018年6月に順天堂大学医学部附属浦安病院および関連クリニックで各種不妊検査を受けた男性719例を対象とした。患者を直接面接し、患者自身が障害を感じているか否かの自己申告に基づく二分法判定により、勃起障害(ED)、射精障害、性欲減退、または複数の症状を有する者を性機能障害とした。年齢、性的状況、精液所見、喫煙状況、血液検査などの患者特性を評価し、性機能障害群と性機能正常群間で各種因子を比較して、単変量解析および多変量解析により性機能障害のリスク因子を特定した。 主な結果は以下のとおり。・対象となった719例は、平均年齢35.5±6.5歳、平均BMI 22.8±3.0kg/m2であった。113例(15.7%)が喫煙者であった。・719例中139例(19.3%)に性機能障害が認められ、内訳はEDが88例(12.2%)、射精障害が66例(9.1%)、性欲減退が35例(4.9%)であった(重複あり)。・性機能障害群では、単変量解析では年齢、アルブミン値、肝酵素、トリグリセライド、血糖値、精液量に有意差が観察されたが、多変量解析の結果、年齢、BMI、うつ症状を評価するベック抑うつ質問票スコアが、性機能障害の独立したリスク因子として特定された。 研究者らは「本研究により、高齢、肥満、うつ症状を呈する男性は、不妊治療開始前に性機能障害を経験する可能性が高いことが示された。新婚男性の約5人に1人という高い頻度で性機能障害が認められたことは、妊娠を希望するカップルにとって重要な知見である。これらの結果は、不妊治療開始前に、男性の性機能評価とリスク因子の把握が重要であることを示唆している。今後は、これらのリスク因子に対する早期介入や予防的アプローチの検討が、男性の生殖機能向上と治療成功率の改善につながる可能性がある」としている。

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第23回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2026

 日本臨床腫瘍学会は、2026年2月28日にプレスセミナーを開催し、3月26~28日に横浜で開催される第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)の注目演題などを紹介した。 今回のテーマは「Medical Oncologists for Cancer Patients」。これは、2025年9月19日に「がん薬物療法」領域が日本専門医機構によりサブスペシャルティ領域として正式に承認されたことを受けて、もう一度学会としてどのようにメディカルオンコロジスト(腫瘍内科医)を育成すべきかを考えるという意図が込められている。なお、がん薬物療法専門医は2025年4月1日時点で1,825人が認定されている。 今年の演題数は計1,482題で過去最多となる。本学会はアジアにおける国際学会に近づけることを目指しており、約半数の738題は海外からで、インドネシア、インド、中国、フィリピン、台湾、ベトナムなど多くの国から寄せられている。プレジデンシャルセッション・全19演題Presidential Session 1「血液」3月26日(木)08:30~10:301)MOSUNETUZUMAB PLUS POLATUZUMAB VEDOTIN IS SUPERIOR TO R-GEMOX IN PATIENTS WITH R/R LBCL: THE PHASE III SUNMO TRIAL2)EFFICACY OF RITUXIMAB-BENDAMUSTINE +/- ACALABRUTINIB IN PATIENTS WITH MANTLE CELL LYMPHOMA: THE PHASE 3 ECHO TRIAL3)EPCORE FL-1:再発・難治性濾胞性リンパ腫に対するエプコリタマブ+リツキシマブ・レナリドミド(R2)併用療法の第III相非盲検試験4)Improved long-term tolerability with asciminib (ASC) vs IS-TKIs in newly diagnosed CML-CP: ASC4FIRST week 96 analysisPresidential Session 2「消化器/肝」3月26日(木)14:00~16:001)胃癌/食道胃接合部癌に対するデュルバルマブとFLOT化学療法の術前術後補助療法(MATTERHORN)2)SKYSCRAPER-07:根治的化学放射線療法後の切除不能食道扁平上皮癌におけるアテゾリズマブ±チラゴルマブの第III相試験の日本部分集団解析結果3)Precemtabart tocentecan (Precem-TcT, M9140): Results from PROCEADE-CRC-01 and post-hoc analysis in Japanese patients4)TALENTACE:肝細胞癌患者を対象としたTACE及びアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用による第III相試験Presidential Session 3「呼吸器」3月27日(金)9:50~11:501)EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌における一次治療オシメルチニブ ± プラチナ製剤-ペメトレキセド併用療法の全生存期間:FLAURA2日本コホート2)MARIPOSA試験(未治療EGFR変異陽性非小細胞肺がんアミバンタマブ+ラゼルチニブ併用療法vsオシメルチニブ)全生存期間アジア人解析3)EGFR変異陽性進行非小細胞肺癌に対するラゼルチニブ併用療法におけるアミバンタマブの皮下投与と静脈注射の比較:PALOMA-3日本人サブセット解析4)進展型小細胞肺がんを対象としたイフィナタマブ デルクステカン(I-DXd)の第II相試験(IDeate-Lung01試験):日本人サブグループ解析結果の報告Presidential Session 4「乳癌」3月28日(土)8:20~10:201)ESR1遺伝子変異が出現した進行乳癌におけるカミゼストラントによる一次治療:SERENA-6試験の日本人サブグループ解析2)Pooled safety analysis of sacituzumab govitecan in metastatic breast cancer (mBC), including patients in NA/EU and Asia3)Sacituzumab govitecan + pembrolizumab vs chemo + pembrolizumab in untreated PD-L1+ advanced TNBC: ASCENT-04/KEYNOTE-D194)術前療法後に浸潤性残存病変を有する再発高リスクHER2陽性乳がん患者を対象に、T-DXdとT-DM1を比較したDESTINY-Breast05の中間解析Presidential Session 5「TR/第I相試験」3月28日(土)10:30~12:001)WGSに基づく個別化ctDNAパネルによるMRDの検出: MONSTAR-SCREEN-3プロジェクトにおける乳癌コホート2)固形がんにおけるチロシンキナーゼ阻害薬の有効性と標的遺伝子mRNA発現の関連:SCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN-23)DAREON-7: phase I study of obrixtamig plus chemotherapy in patients with DLL3-positive neuroendocrine carcinomas注目の演題会長企画シンポジウム9 がん患者が求める専門医とは3月28日(土)10:30~12:00 腫瘍内科医にはエビデンスを重視した医療だけでなく、対話を重視した医療も求められている。本シンポジウムでは、「がん患者が求める専門医とは」をテーマに、現在のがん治療が抱える問題について、3つのテーマで患者会側および専門医側が講演する。総合討論では、「がん患者が求める専門医」と「専門医の認識」についてすり合わせ、ディスカッションを深める。会長企画シンポジウム4 希少がんや希少フラクションの医薬品開発~戦略・デザイン・金・ゴール~3月26日(木)16:05~17:35 希少がん・希少フラクションなどを含む患者数の少ない集団では、開発や戦略の困難さ・事業計画の予見可能性・市場性の観点などさまざまなハードルがある。今後の運用や方向性を策定することで、バランスのとれた希少疾病指定医薬品の開発を促進し、医薬品開発力・科学性・先進性においてどのように世界をリードしていけるのかを議論する。委員会企画5 希少がんに対するエビデンスのある抗悪性腫瘍薬の供給問題3月27日(金)10:20~11:50 希少がんであっても、エビデンスの高い標準治療を滞りなくがん患者に届けるにはどうしたらよいのかを、アカデミア、製薬メーカー、がん患者、厚生労働省の立場より議論し、今後に必要なアクションについて考える。

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冠動脈疾患の画像診断、放射線被曝量に世界的格差/JAMA

 近年、冠動脈疾患(CAD)の画像検査は世界中で著しく増加しているが、画像検査による患者被曝線量には大きなばらつきがあることが明らかとなった。米国・コロンビア大学アービング医療センターのAndrew J. Einstein氏らINCAPS 4 Investigators Groupが、世界101ヵ国の742施設が参加して行われた横断研究「IAEA Noninvasive Cardiology Protocols Study(INCAPS)4」の解析結果を報告した。著者は、「今回の結果は、世界的に放射線量低減のための研修、標準化されたプロトコール、そして最新機器の導入がきわめて重要であることを示している。これは、とくに低・中所得国の患者ならびに冠動脈CT血管造影(CCTA)を受ける患者に影響を与えるだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年2月25日号掲載の報告。2023年10~12月の1週間にデータを収集 研究グループは、2023年10月15日~12月10日のいずれか1週間において、参加施設で実施された冠動脈疾患画像検査(SPECTまたはPET心臓核医学検査、冠動脈石灰化スコア[CACS]評価のための心臓CT、またはCCTA)の情報を分析した。収集した情報は、各検査の実施件数、患者背景、撮像プロトコール、放射線関連パラメータであった。 主要アウトカムは、患者への放射線量(実効線量)、およびガイドライン推奨値である実効線量中央値が9mSv以下の施設の割合。 101ヵ国の742施設から1万9,302例のデータ(核医学検査1万1,061例[SPECT:1万295例、PET:726例]、CT検査8,241例[CCTA:6,939例、CACS:6,631例])が報告された。患者の実効線量中央値が最も高いのはCCTA、施設間でもばらつき大 1万9,302例の患者背景は、女性が8,515例(44%)、年齢中央値63歳(四分位範囲[IQR]:54~71)であった。 患者の実効線量は検査によって大きく異なり、中央値(IQR)でCACSが1.2(0.7~2.2)mSv、PETが2.0(1.6~2.4)mSv、SPECTが6.5(3.9~8.6)mSv、CCTAが7.4(3.5~15.5)mSvであった。施設別の実効線量中央値にもばらつきが認められた。 患者の実効線量中央値9mSv以下の施設は、核医学検査実施施設で81%(355施設)、CCTAで56%(216施設)であり、核医学検査実施施設が有意に多かった(p<0.001)。また、実効線量中央値9mSv以下の患者は、核医学検査を受けた患者がCCTAを受けた患者より有意に多かった(79%vs.56%、p<0.001) 同一検査における線量(中央値[IQR])は地域間で有意差が認められ、西ヨーロッパが最も低く(核医学心臓検査で4.8[2.3~7.3]mSv、CCTAで4.6[2.4~9.8]mSv)、核医学心臓検査は中南米(7.8[5.3~9.7]mSv)、CCTAはアフリカ(25.2[14.7~35.3]mSv)で最も高かった(いずれもp<0.001)。 回帰モデルでは、国の所得水準と線量の間に逆相関の関係が認められた。患者線量は、低・中所得国において高所得国より核医学検査が20%(95%信頼区間[CI]:3.6~38.4)、CCTAが最大96%(95%CI:41.7~170.8)高かった(いずれもp<0.001)。ただし、所得水準や地域間で顕著なばらつきが認められている。

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変形性関節症患者のQOLに重要なのは握力よりも日常生活動作

 握力は従来、筋力の指標とされているが、変形性関節症(OA)患者においては、握力よりも、椅子から立ち上がれるかなどの日常生活動作の方が生活の質(QOL)に大きく影響することが示された。シャルジャ大学(アラブ首長国連邦)のAsima Karim氏らによるこの研究の詳細は、「European Journal of Applied Physiology」に12月6日掲載された。Karim氏は、「この結果は非常に印象的だった。OA患者は握力が弱く、QOLも全体的に低いが、QOL低下の実態を示していたのは、握力ではなく日常生活動作だったのだ」と述べている。 この研究では、SHARE(Survey of Health, Ageing and Retirement in Europe)第8波の調査データを用いて、握力および身体能力と、コントロール感、自立度、自己実現、喜びの4領域から成る評価ツールであるCASP-12で測定した心理社会的QOLとの関連が検討された。対象者は、ヨーロッパの28カ国からSHAREに参加した50歳以上のOA患者7,591人(OA群)、およびOAではない参加者3万923人(非OA群)であった。 その結果、OA群は非OA群と比較して、握力とCASP-12スコアのいずれも有意に低かった(P<0.05)。また、両群とも握力が高いほどCASP-12スコアも高いという正の関連が認められたが、その関連は強いものではなく、非OA群の方がわずかに強かった。一方、身体機能との関連については、運動課題(歩行、椅子からの立ち上がり、階段の昇降など)が困難で疲労感が強いほどCASP-12スコアは低下するという負の関連が認められ、QOLが低いことの最も明確なサインは、簡単な日常生活動作がうまくできないことであることが示唆された。 Karim氏は、「この研究結果のメッセージは明確だ。OA患者においては、握力よりも、自信とエネルギーを持って世界を動き回れるかどうかがQOLを形作るということだ」と述べている。 さらに、本研究では、持続的な疲労感が患者の健康において重要であるにもかかわらず見落とされがちな要因であることも明らかになった。この結果を踏まえて研究グループは、「臨床医は、痛みの緩和だけでなくエネルギー管理も優先すべきだ。動く気力が出ないと、患者の自信や自立性は急速に低下し、QOLも全体的に低下する」と述べている。 共著者の1人である同大学のRizwan Qaisar氏は、「治療の目標を症状の管理にとどめるべきではない。高齢のOA患者のQOLを向上させたいのなら、薬だけでなく、移動能力、エネルギー、機能的自立に注目する必要がある」と述べている。

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複数のがん種で診断後の運動量とがん死亡リスク低下が関連

 これまでの研究で、一部のがん種では身体活動ががんの発症や再発・死亡リスク低下と関連することが報告されている。しかし、乳がん、大腸がん、前立腺がん以外のがん種における身体活動とがん死亡に関するエビデンスは限られている。今回、米国がん協会のErika Rees-Punia氏らは、身体活動とがん死亡との関連が十分に検討されてこなかった7種のがん(膀胱がん、子宮体がん、腎がん、肺がん、口腔がん、卵巣がん、直腸がん)の患者を対象に、診断後の身体活動量、および診断前後の身体活動量の変化とがん死亡リスクとの関連を検討する観察研究を実施した。結果はJAMA Network Open誌2026年2月17日号に掲載された。 本研究では、6つの大規模前向きコホート※の統合データを用いた。対象は上記7がん種の患者で、ベースラインデータは1976~97年に収集した。1週間当たりの余暇時間の中高強度身体活動量をMET・時/週で評価し、診断後少なくとも1年を経過した時点(平均2.8年後)の中高強度身体活動量とがん死亡との関連を解析した。主要アウトカムはがん死亡で、平均追跡期間は10.9年であった。※Cancer Prevention Study-II Nutrition Cohort、Health Professionals Follow-Up Study、NIH-AARP Diet and Health Study、Nurses' Health Study、Nurses' Health Study II、Women's Health Study 主な結果は以下のとおり。・統合解析には、1万7,141例のがん患者が含まれた(平均年齢67歳、女性60%)。多いがん種は膀胱がん(24%)、子宮体がん(22%)、肺がん(18%)であった。・膀胱がん、子宮体がん、肺がん、卵巣がん患者において、診断後の身体活動レベルが高い群では、身体活動を行っていない群と比較してがん死亡リスクの低下が認められた。・膀胱がん、子宮体がん、肺がん患者では、推奨量(7.5MET・時/週以上)を下回る身体活動レベルであっても、身体活動を行っていない群と比較して死亡リスクの低下が認められた。・口腔がんおよび直腸がんでは、一部の高い身体活動レベルにおいてがん死亡リスクの低下が示唆された。・腎がんでは、推奨量を満たす群でリスク低下の傾向がみられたものの、有意差は認められなかった。・診断前後の身体活動の変化を検討した解析では、肺がんおよび直腸がん患者において、診断前後ともに推奨量を満たさなかった群と比較して、診断前は推奨量を満たさなくても診断後に満たした群ではがん死亡リスクが低かった。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -肺がん HR:0.58(95%CI:0.47~0.71) -直腸がん HR:0.51(95%CI:0.32~0.83) 研究グループは「本研究は、身体活動量の低下が全身状態の悪化や死期が近いことを反映している逆因果の可能性、アンケートに回答できる健康な患者が対象となっている選択バイアス、喫煙による残余交絡の影響を完全には排除できない」と指摘したうえで、「これらの結果は、がんとともに生きる人々とがんを乗り越えた人々の寿命と全体的な健康のために身体活動を促進することが重要であることを示唆している」とまとめた。

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カテーテル関連感染予防に最も効果的な消毒薬の製剤と濃度~大規模メタ解析

 血管内カテーテル挿入前の皮膚消毒で使用するグルコン酸クロルヘキシジンとポビドンヨードにおけるカテーテル関連感染発生率が最も低い製剤や濃度を調べるため、フランス・Centre Hospitalier Universitaire de PoitiersのBertrand Drugeon氏らが過去最大規模の系統的レビューとメタ解析を実施した。その結果、イソプロパノールベースの高濃度グルコン酸クロルヘキシジン(1%以上)でカテーテル関連感染発生率が最も低いことがわかった。JAMA Network Open誌2026年2月12日号に掲載。 研究グループは、PubMed、EMBASE、Cochrane Central、Scopus、Web of Science、CINAHLを2025年1月7日まで検索し、試験登録データベースおよび関連研究、ガイドラインの参考文献リストをレビューした。対象は、血管内カテーテル挿入前の皮膚消毒としてグルコン酸クロルヘキシジンまたはポビドンヨードを用いた方法を比較した無作為化比較試験(RCT)で、1つ以上のカテーテル関連感染アウトカム(カテーテル関連血流感染、カテーテル先端コロニー形成、局所感染)を報告した研究とし、査読者2人が独立して、PRISMAガイドラインに従ってデータを抽出した。ランダム効果ネットワークメタ解析により相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を推定した。主要評価項目は、グルコン酸クロルヘキシジン製剤またはポビドンヨード製剤に関連するカテーテル関連血流感染発生率、カテーテル先端コロニー形成率、局所感染率とした。 主な結果は以下のとおり。・16件のRCT(7,803例、カテーテル1万1,985本)が選択基準を満たした。・アルコールベースの製剤は水溶液製剤より一貫して感染率が低く、またイソプロパノールがエタノールより優れていた。・アルコールベースのグルコン酸クロルヘキシジンは、アルコールベースのポビドンヨードより、カテーテル関連血流感染発生率(RR:0.70、95%CI:0.45~1.08)、カテーテル先端コロニー形成率(RR:0.42、95%CI:0.37~0.48)、局所感染率(RR:0.40、95%CI:0.23~0.70)が低かった。・高濃度グルコン酸クロルヘキシジン(1%以上)は、低濃度グルコン酸クロルヘキシジンより、カテーテル関連血流感染発生率(RR:0.31、95%CI:0.19~0.52)およびカテーテル先端コロニー形成率(RR:0.36、95%CI:0.30~0.42)が低かった。・局所的な有害事象はまれであり、アルコールベースの製剤でわずかに多く、グルコン酸クロルヘキシジンとポビドンヨードで同程度であった。 著者らは、「これらの結果は、アルコールベースのポビドンヨードと水溶液製剤は、グルコン酸クロルヘキシジンまたはアルコールが使用できない状況に限定すべきであることを示唆する」とまとめている。

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減塩食品の普及が国民の心臓や脳を守る

 加工食品として流通しているパンやピザなどの塩分が減ったとしても、それに気づく人はいないかもしれない。しかし、人々の体は間違いなくその変化に反応するようだ。減塩食品の普及によって、国民の心臓病や脳卒中のリスクが低下した可能性を示唆する欧州発の2件の論文が、「Hypertension」に1月26日掲載された。 一つ目の論文はフランス国立公衆衛生局のClemence Grave氏らによるもので、パンに含まれる食塩を減らすことで、毎年約1,200人のフランス人の命が救われただろうと推測している。同国では2022年に、政府とパン製造業界との間で食塩含有量を減らすための自主的な協定が結ばれており、今回の研究ではその潜在的な影響が調査された。なお、パンは意外なほど食塩含有量が多く、特にバゲット(最も一般的なフランスパン)には、1日当たり推奨摂取量の約25%の食塩が含まれているという。 2023年までに同国で製造されるパンの大半は新しい基準を満たしており、その影響もあり、フランス国民の1日の食塩摂取量は約350mg減少したとのことだ。その結果、心臓関連死は年間約1,186人減少したと推定され、心臓病や脳卒中による入院の減少という変化も現れている。 論文の筆頭著者であるGrave氏は、「この減塩対策は、フランス国民にほとんど気づかれなかった。われわれの研究結果は、そのようなわずかな変化にもかかわらず、このような対策が公衆衛生に大きな影響を与える可能性のあることを示している」と総括。また、「このアプローチは、個人の行動変容に依存しないという点で特に力強い。個人の行動変容を引き起こしてそれを持続させることはしばしば困難だが、この手法であれば、より健康的な食環境が自然に創出される」と解説している。 二つ目の論文は英オックスフォード大学のLauren Bandy氏らによるもので、同国の減塩施策の推進によって、20年間で約10万件の心臓病と2万5,000件の脳卒中を予防できると予測している。同国では2024年までに、さまざまな加工食品に含まれている食塩を削減する数値目標を設定していた。この施策の対象食品には、パン、チーズ、肉、スナックなどの食料品84品目に加え、ハンバーガー、カレー、ピザなどのテイクアウト食品24品目が含まれている。 Bandy氏らの試算によると、この減塩施策が完全に達成された場合、英国民の1日当たりの食塩摂取量は平均6,100mgから4,900mgへと、約18%減少すると考えられ、その結果、前記のように心臓病や脳卒中の発症が大きく減る可能性があるという。論文の筆頭著者である同氏は、「ほかの国と同様に英国でも心血管疾患が主要な死亡原因である。英国の食品会社が塩分削減目標を完全に達成することにより、英国民は食習慣を変える必要もなく、心血管疾患と死亡リスクを大きく抑制でき、医療費を削減できるはずだ」と述べている。その上で同氏は、「食品業界は減塩に関してまだ多くの進歩を遂げる必要があることも明らかであり、改善の余地は大いにある」と付け加えている。

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脳卒中後のリハビリ、対側より同側の腕の訓練が有用?

 脳卒中後のリハビリテーション(以下、リハビリ)は、障害が大きい側の腕や脚の筋力や動作の回復に焦点を当てて行われるのが通常である。しかし、新たな研究で、比較的障害が少ない側の腕に焦点を当ててリハビリを行う方が、動作能力を大きく改善することが示された。米ペンシルベニア州立大学医学部神経リハビリ研究室のCandice Maenza氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Neurology」に2月2日掲載された。Maenza氏は、「障害が少ない側の腕を訓練することで、患者の機能はより改善した。これは、生活の質(QOL)の向上や、介護者の負担軽減につながる可能性がある。片側の腕に重度の麻痺がある人は、食事や着替えなど、日常生活の多くを『良い方の腕』に頼っているためだ」と述べている。 脳卒中は運動を司る脳の領域にダメージを与え、しばしば身体の片側に麻痺や筋力低下をもたらす。これまで、脳卒中後のリハビリでは、障害の程度が重度で機能低下が明らかな側の腕に焦点が置かれてきた。しかし研究グループによると、一見問題がないように見える側の腕も、実は機能が大きく低下している可能性があるという。 論文の上席著者であるペンシルベニア州立大学運動学・神経学分野のRobert Sainburg氏は、「患者は片手でほとんどのことを行おうとするが、それは大きな負担になる。その腕に脳卒中の影響が及ぶと、運動協調性が10〜25%低下する。これは、患者が日常生活をどこまで自力でこなせるか、どの程度介助が必要かに大きく影響する」と話している。 今回の研究では、脳梗塞の病変側とは反対側(対側)の上肢に中等度~重度の障害があり、病変側(同側)の腕にも運動障害がある慢性期脳卒中患者58人(平均年齢59歳、女性32%)を対象に、同側の腕を鍛えることで動作能力が改善するかどうかを検討した。対象者は、5週間、計15回にわたり同側の腕を集中的に訓練する群(同側訓練群、25人)と、従来通り対側の腕を訓練する群(対側訓練群、28人)にランダムに割り付けられた。同側訓練群には、VR(バーチャルリアリティ)を使ったゲームや軌跡をなぞるゲーム、実生活に近い指先トレーニングなどが行われた。 その結果、同側訓練群では介入により、同側の手で小物をつまむ・カードをひっくり返すなどの機能を測定するJebsen Taylor手機能テストにおいて、所要時間が平均5.87秒有意に短縮した(12%の改善に相当)。この改善は、治療直後だけでなく、3週間後および6カ月後も継続していた。一方、対側の腕を鍛えても、大きな改善は見られなかった。 Sainburg氏は、「われわれが行っているのは、これまで一度も実施されてこなかった種類のリハビリだ。障害が少ない側の手の機能を改善し、日常生活動作をより効率的にしようとする試みだ」と述べている。Maenza氏は、「患者は、ボタンを留めるなどの動作はできるものの、時間がかかり過ぎるため、結局は自力でやろうとする意欲を失うことがある。しかし、少し動作が速くなるだけで、自分でやってみようという気持ちが生まれる。これは患者本人だけでなく、配偶者や介護者の生活を大きく変える」と話す。 Sainburg氏は、「このターゲットを絞った介入により、患者はセラピストが『好循環』と呼ぶ状態に入る。機能が少し戻ることで使う頻度が高まり、それがさらなる改善につながるのだ」と話している。研究グループは今後、こうした訓練を従来のリハビリプログラムとどのように組み合わせるかを検討する予定だとしている。

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第308回 アフリカ睡眠病の画期的な新薬をサノフィが無償で提供する

俗に睡眠病として知られるアフリカトリパノソーマ症(以下、睡眠病)を根絶できるかもしれない画期的な経口薬Acoziborole Winthrop(acoziborole)の承認を、欧州医薬品庁(EMA)の実質的な意思決定の場の医薬品委員会(CHMP)が了承しました1-3)。睡眠病は、吸血性のツェツェバエに刺されて伝播する寄生虫2種によって生じます。今回CHMPが承認を了承したAcoziborole Winthropの用途は、アフリカの中央と西部で広まるその1つのガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)による睡眠病の治療です。睡眠病の大半はそのガンビアトリパノソーマが原因です。もう1種のローデシアトリパノソーマ(T. brucei rhodesiense)はもっぱらアフリカ東部で広まっています。感染の初期症状は発熱と頭痛で、他の病気と見紛うことが多々あります。寄生虫が脳(神経系)に侵入する重症段階になると、その病名のゆえんである寝起きのサイクルの逆転などの異常行動が生じます。治療しないままの患者はやがて昏睡に陥り、ほぼ全員が命を落とします。内戦で荒れた2000年代初期のスーダンの病院に運ばれてきた睡眠病の兵士の特異な振る舞いの様子がScienceのニュースに記されています3)。それら睡眠病の兵士は看護師に激怒したかと思えば治療の途中で行方不明になることもありました。脳に至った寄生虫は攻撃性や精神症状などの症状を引き起こして振る舞いの劇的な変化をもたらします。それゆえ睡眠病の患者を病院に留まらせることは非常に困難で、2週間ほどの治療期間に脱走しないように誰かが付き添っている必要がありました。睡眠病治療の現状はそのように手間で、複数回の投与、点滴静注、筋肉内注射、入院を要します。治療を決める病期判定には、脊髄に針を刺す腰椎穿刺で脳脊髄液(CSF)を採取して神経系に寄生虫が到達しているかどうかを調べる検査が含まれます。一方Acoziborole Winthropは軽症か重症かを問わず使用可能で、痛くて体を傷つける腰椎穿刺をする必要がありません。輸送も容易で、睡眠病が最も猛威を振るう遠隔地に届けることができます。Acoziborole Winthropの投与は1回きりなので、10日間の服用が必要な先発の経口薬fexinidazoleと異なり、医療者が繰り返しその服用を見届ける手間も不要です。スイスを本拠とする非営利団体DNDi(Drugs for Neglected Diseases Initiative)の創薬事業で見つかったAcoziborole Winthropは、2016年にファイザーが買収した米国カリフォルニア州のバイテック企業Anacor Pharmaceuticals社の開発品に端を発します4)。Anacorの社員を含むチームの手によって脳によく届くように最適化され、2012年に始まったフランスでの第I相試験5)でまずはヒトに安全に投与できることが確認されました。続く第II/III相試験はコンゴ民主共和国とギニアで実施され、重度の患者にも有効なことを裏付けた同試験結果6)を拠り所にしてCHMPはAcoziborole Winthrop承認を今回了承しました。第II/III相試験ではガンビアトリパノソーマによる睡眠病(g-HAT)の患者208例にAcoziborole Winthropが単回投与されました。トリパノソーマがCSFに及んでいたより重度の進行段階(second-stage)の患者167例のほとんどの159例(95%)が18ヵ月時点で治癒していました。治癒の定義はトリパノソーマが消失し、CSFの白血球数が20個/μL未満になっていることです。CSFにトリパノソーマが見当たらない感染後間もない段階(first- and intermediate-stage)の患者41例に至っては全員(100%)が18ヵ月月時点で治癒していました。CHMPのお墨付きが今回得られたことで、睡眠病が多いコンゴ民主共和国などの国々でのAcoziborole Winthropの承認の道が開けます。20年以上もの間DNDiと協力関係にあってAcoziborole Winthropを共同開発したサノフィが同剤を提供します。サノフィは同社の慈善事業Foundation Sを介して世界保健機関(WHO)にAcoziborole Winthropを無償で寄付し、患者が無料で使えるようにします。Acoziborole Winthropが相手するガンビアトリパノソーマによる睡眠病を2030年までに撲滅することをWHOは目指しています。Acoziborole Winthropはその目標達成を後押しするでしょう。睡眠病のもう1つの原因のローデシアトリパノソーマはヒトへの感染はまれで、もっぱら野生動物に認められます。それゆえ根絶は現実的ではないようです3)。参考1)Acoziborole Winthrop, developed by DNDi and Sanofi, receives CHMP positive opinion as three-tablet, single-dose treatment for most common form of sleeping sickness/ GlobeNewswire2)New single-dose oral treatment for human African trypanosomiasis (sleeping sickness)/ European Medicines Agency3)‘Truly spectacular’ drug for sleeping sickness simplifies treatment, raising hopes for eradication / Science4)Jacobs RT, et al. PLoS Negl Trop Dis. 2011;5:e1151.5)Human African Trypanosomiasis: First in Man Clinical Trial of a New Medicinal Product, the SCYX-71586)Betu Kumeso VK, et al. Lancet Infect Dis. 2023;23:463-470.

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膀胱がんへの周術期EV+ペムブロリズマブ、EFS・OS改善(KEYNOTE-905/EV-303)/NEJM

 筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)でシスプラチンベース化学療法適応外の患者において、エンホルツマブ ベドチン(ネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体)+ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)併用療法による周術期治療は、手術単独と比較して2年時の無イベント生存率(EFS)が有意に優れ、全生存率(OS)も改善することが示された。ベルギー・Integrated Cancer Center GhentのChristof Vulsteke氏らKEYNOTE-905/EV-303 Investigatorsが、「KEYNOTE-905/EV-303試験」の結果を報告した。MIBCの標準治療は、シスプラチンベースの術前化学療法と骨盤リンパ節郭清+根治的膀胱全摘除術であるが、ほぼ半数の患者が腎機能障害、高齢、併存疾患などの理由で適応外となり、手術単独による治療を受ける。これらの患者は、術前・術後の周術期治療により、アウトカムの改善の可能性が示唆されていた。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年2月18日号に掲載された。無イベント生存を評価する無作為化第III相試験 KEYNOTE-905/EV-303試験は、日本を含む27ヵ国242施設で実施した非盲検無作為化第III相試験(Merck Sharp and Dohmeの助成を受けた)。シスプラチンベースの化学療法が適応外、あるいはこれを希望しないMIBC(臨床病期:T2~T4a N0M0、またはT1~T4a N1M0)の成人(年齢18歳以上)患者を対象とした。 今回は、2020年12月~2024年6月の期間に登録した344例の初回中間解析の結果を報告した。 被験者は、周術期治療としてエンホルツマブ ベドチン(術前3+術後6=9サイクル)+ペムブロリズマブ(術前3+術後14=17サイクル)の投与を行う群(EV-Pembro群:170例、年齢中央値74.0[四分位範囲:47~87]歳、男性80.6%)、または手術のみを行う群(対照群:174例、72.5[46~87]歳、75.3%)に無作為に割り付けられた。 主要評価項目はEFSとし、盲検下独立中央判定で評価した。EFSは、無作為化から以下のいずれかが最初に発生するまでの期間と定義した。(1)手術不能と判断される画像上の病勢進行、(2)手術を受けなかった参加者における生検で確認されたMIBCの残存、(3)切除不能な腫瘍または新たに発見された転移性病変により、外科医が根治目的の手術を完遂できなかった場合、(4)画像診断または生検によって検出された、術後の局所または遠隔再発、(5)全死因死亡。 手術が行われなかったこと自体はイベントとはみなさず、手術を受けなかった参加者でも、EFSを評価するために定期的な画像診断による追跡調査を継続した。病理学的完全奏効率も大きく改善 追跡期間中央値は25.6ヵ月であった。シスプラチンベースの化学療法を希望しなかった参加者は、EV-Pembro群が16.5%、対照群は20.1%だった。手術は、それぞれ87.6%および89.7%で行われた。 2年時点のEFS率は、EV-Pembro群74.7%(66.9~80.8)、対照群39.4%(95%信頼区間[CI]:31.0~47.9)であった(ハザード比[HR]:0.40、95%CI:0.28~0.57、両側p<0.001)。EFS中央値は、EV-Pembro群が未到達(95%CI:37.3~NR)、対照群は15.7ヵ月(10.3~20.5)であった。 2年OS率は、EV-Pembro群79.7%(95%CI:72.5~85.3)、対照群63.1%(54.7~70.4)であった(HR:0.50、95%CI:0.33~0.74、両側p<0.001)。OS中央値は、EV-Pembro群未到達(95%CI:NR~NR)、対照群41.7ヵ月(31.8~NR)だった。 また、病理学的完全奏効(手術で採取された切除標本に、生存腫瘍が認められない状態[T0N0])は、EV-Pembro群97例(57.1%、95%CI:49.3~64.6)、対照群15例(8.6%、95%CI:4.9~13.8)で達成された(推定群間差:48.3%ポイント、95%CI:39.5~56.5、両側p<0.001)。術前補助療法は手術の実施可能性を毀損しない 有害事象は、EV-Pembro群で全例に、対照群では64.8%に発現し、Grade3以上はそれぞれ71.3%および45.9%、重篤な有害事象は58.1%および40.9%で発現した。EV-Pembro群で最も頻度の高い有害事象はそう痒(47.3%)と脱毛(34.7%)で、Grade3以上では尿路感染症(12.0%)の頻度が高かった。また、有害事象による死亡は、EV-Pembro群で13例(7.8%:術前補助療法期 2例、手術期[手術時から術後30日まで]4例、術後補助療法期 7例)、対照群で9例(5.7%:手術期 9例)に認めた。 EV-Pembro群における薬剤関連有害事象は、Grade3以上が45.5%、重篤な有害事象が19.8%に発生し、試験薬の投与中止が62例(37.1%)、試験薬関連死が2例(1.2%)にみられた。とくに注目すべき有害事象は、エンホルツマブ ベドチン関連のGrade3以上が16.2%、ペムブロリズマブ関連のGrade3以上が18.0%で発現した。 著者は、「手術を受けた参加者の割合は2つの治療群で同程度であり、これは術前補助療法としてのエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブが根治的膀胱全摘除術の実施可能性を損なわなかったことを示唆する」「手術の遅延はまれであり、手術遅延件数は両群で同程度だった」としている。 本試験の結果に基づき、米国食品医薬品局は、シスプラチン適応外のMIBCの成人患者に対する新たな治療選択肢として、膀胱全摘除術の術前および術後補助療法としてのエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブを承認している。

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IgA腎症〔IgA nephropathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義IgA腎症は、糸球体性血尿や蛋白尿などの検尿異常が持続し、腎生検で腎糸球体メサンギウム領域を中心としたIgA優位の免疫グロブリン沈着を認め、全身性疾患や慢性疾患など明らかな原因疾患を伴わない原発性糸球体腎炎である。確定診断には腎生検が必須である。■ 疫学IgA腎症は、世界で最も頻度の高い原発性糸球体腎炎であり、わが国を含む東アジアでとくに多いとされる。わが国では学校検尿や健康診断が普及しているため、無症候性血尿・蛋白尿を契機に若年~中年で診断される例が多い。一方、欧米では症候性の症例や腎機能障害を伴って初めて診断される例が多いとされる。■ 病因病因としては、「粘膜免疫異常により過剰産生された糖鎖異常IgA1が、自己抗体や補体と免疫複合体を形成し、糸球体メサンギウムに沈着して炎症と線維化を惹起する」というマルチヒット仮説が提唱されている。遺伝的素因も関与しており、HLA領域や粘膜免疫関連遺伝子の関連が報告されている。■ 症状多くは自覚症状に乏しく、持続する顕微鏡的血尿・軽度蛋白尿のみである。上気道感染や消化管感染の数日後に肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)を来す例が典型的である。進行例では浮腫、高血圧、倦怠感など慢性腎臓病(CKD)としての症状が出現する。■ 分類組織学的には腎糸球体メサンギウム増多所見が主体であるが、半月体形成、分節性硬化、全節性硬化など多彩な像をとる。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する。■ 予後かつての長期追跡では、診断後20年で約4割が慢性腎不全に至ると報告され、決して良性の腎炎ではないことが明らかとなった。近年では、早期発見・レニンアンギオテンシン(RA)系阻害薬の普及などにより予後は改善しつつあるが、蛋白尿が持続する例や腎機能障害を伴う例では依然としてCKD進行のリスクが高い。国際IgA腎症予測ツール(International IgAN Prediction Tool)により、臨床所見とMEST-Cスコアを組み合わせた予後予測も行われている。2 診断■ 検査1)尿検査持続する顕微鏡的血尿(尿定性検査に加え、尿沈査分析が必要。しばしば赤血球円柱がみられる)程度の異なる蛋白尿(しばしば0.3~1g/日程度から始まり得る)急性上気道炎や消化管感染後の一過性肉眼的血尿(褐色尿、コーラ色尿)2)血液検査血清クレアチニン、推算糸球体ろ過量(eGFR)で腎機能を評価する。血清IgA値はしばしば高値だが、診断的特異性は高くない。補体価は通常正常であり、低補体血症では他疾患を考慮する。3)腎生検IgA腎症の確定診断には腎生検が必要である。腎生検は、確定診断のみならず予後や治療反応性を予測する上でも重要である。光顕でメサンギウム増殖性糸球体腎炎を示し、免疫蛍光法でメサンギウム優位のIgA沈着(しばしばC3が共に沈着)を認める(図1、2)。病理重症度評価にはOxford分類(MEST-Cスコア)が広く用いられており、メサンギウム・管内細胞増多、分節性硬化、尿細管萎縮/間質線維化、半月体の有無を評価する(表)。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、IgA腎症が疑われる成人で蛋白尿0.5g/日以上が持続する場合、腎生検を考慮することが推奨されている。図1 IgA腎症の代表的な光顕所見画像を拡大する画像を拡大するa:メサンギウム細胞増多(↑)とメサンギウム基質増生(*)b:メサンギウムへの半球状沈着物(↑)c:管内細胞増多を示す糸球体糸球体毛細血管内の細胞数が増加し、管腔が狭小化している(↑)d:係蹄壊死この糸球体では毛細血管基底膜が断裂し(↑)、フィブリンの析出(*)がみられるe:細胞性半月体この糸球体の半月体は、ほとんどが細胞成分で占められているf:線維細胞性半月体この半月体は細胞成分10%以上50%未満で、細胞外基質は90%未満であるg:線維性半月体この半月体は細胞成分10%未満で、細胞外基質が90%以上を占めているh:分節性硬化点線で囲まれた部分に硬化がみられ、硬化はすべての係蹄には及んでいない(参考文献1、2より引用)図2 蛍光抗体法(IgA)画像を拡大する主にメサンギウム領域にIgAが高度に沈着している(参考文献1より引用)表 IgA腎症Oxford分類画像を拡大する■ 鑑別診断IgA腎症と類似する状態として、以下の疾患などと鑑別する必要がある。菲薄基底膜病、アルポート症候群など遺伝性血尿疾患IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病):紫斑、腹痛、関節痛など全身症状を伴う。感染関連糸球体腎炎(とくにMRSA感染に伴うIgA優位の感染関連糸球体腎炎)ループス腎炎など他の自己免疫性腎炎慢性肝疾患に伴う二次性IgA沈着症家族歴を含む臨床背景、血清学的検査、腎生検での所見を総合して診断する。3 治療■ 治療の基本方針治療の第1目標は、蛋白尿をできるだけ低く抑え(目標0.5g/日未満、理想的には0.3g/日未満)、腎機能低下速度を生理的なレベル(年間eGFR低下1mL/分/年未満)に近付けることである。■ 腎保護療法すべての患者に以下の腎保護療法が基本となる。生活習慣介入:減塩(食塩<6g/日が目安)、適正体重の維持、禁煙、適度な運動。血圧管理:目標<130/80mmHg(蛋白尿が多い例ではさらに厳格に)。RA系阻害薬:ACE阻害薬またはARBは蛋白尿減少と腎保護効果のエビデンスがあり、IgA腎症でも第1選択である。SGLT2阻害薬:糖尿病の有無にかかわらずCKD進行抑制効果が示されており、蛋白尿を伴うIgA腎症では追加投与が推奨されている。■ 免疫抑制療法腎保護療法を十分に行っても蛋白尿が持続し、腎機能低下が進行する例では免疫抑制療法を検討する。副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド):わが国のガイドラインでは、中等度以上の蛋白尿や組織学的重症例で、一定期間のステロイド療法が推奨されている。ただし、糖尿病、肥満、感染など副作用リスクが高い症例では慎重な適応判断が必要である。扁摘+ステロイドパルス療法:わが国では、口蓋扁桃摘出術とステロイドパルス療法の併用が長年行われており、蛋白尿の寛解や長期予後改善を示す国内データが蓄積している。その他の免疫抑制薬:シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)などについては一定の効果報告もあるが、エビデンスは限定的であり、難治例や特別な状況に限って専門医のもとで検討されるべきである。■ 高リスク例・特殊病型急速進行性糸球体腎炎像(半月体多数、急激なeGFR低下)を示す例では、ステロイド大量療法にシクロホスファミドなどを併用する血管炎に類似した治療が行われるが、エビデンスは限られている。ネフローゼ症候群を呈する微小変化病合併IgA腎症などでは、ステロイド単独でも反応性が良い場合が多い。4 今後の展望■ 新たな診断・予後マーカー血中の糖鎖異常IgA1(galactose-deficient IgA1)やそれに対する自己抗体、補体関連マーカーなどがIgA腎症に特異的なバイオマーカー候補として研究されているが、現時点では診断や治療選択に用いる標準検査としては確立していない。国際IgAN予測ツールや病理MEST-Cスコアを活用したリスク層別化が進み、今後は個々の患者に応じた治療強度の決定に応用されることが期待される。■ 新規治療薬近年、IgA腎症の病態(粘膜免疫・補体・腎保護)を標的とした新規薬剤の開発が急速に進んでいる。標的放出型ブデソニド(Nefecon):回腸末端の腸管関連リンパ組織に到達するよう設計された経口ステロイドで、病的IgA1産生の抑制を目的とする。海外第III相試験では蛋白尿減少とeGFR低下抑制が示され、欧米などで承認されているが、わが国ではまだ使用できない。デュアルET-A/AT1受容体拮抗薬(sparsentan):ARB作用に加えエンドセリン受容体拮抗作用を併せ持ち、蛋白尿減少とeGFRスロープ改善を示している。補体阻害薬:経口補体因子B阻害薬iptacopanをはじめ、C5、C3、レクチン経路などを標的とした薬剤がIgA腎症で検証されており、一部は海外で承認されつつある。B細胞/BAFF・APRIL経路阻害薬:自己抗体産生抑制を目的としたataciceptや他の抗BAFF/APRIL抗体が臨床試験段階にある。「KDIGO 2025国際ガイドライン」では、「病的IgA産生と免疫複合体形成を抑える治療」と「すでに生じたネフロン喪失に伴うCKDの進行を抑える治療」を並行して行う2本立ての治療戦略が提案されている。わが国でも、支持療法にSGLT2阻害薬などを組み合わせつつ、新規薬剤が順次導入されれば、より早期から蛋白尿を強力に抑え、長期腎予後のさらなる改善が期待される。5 主たる診療科腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター IgA腎症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報難病治験ウェブ(難病に関する治験情報を簡単検索、医療従事者向けのまとまった情報)1)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性腎障害に関する調査研究班 編集. エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン 2020. 2020:東京医学社.2)厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業:進行性腎障害に関する調査研究班報告 IgA腎症分科会 IgA診療指針-第3版-補追 IgA腎症組織アトラス.日腎会誌. 2011;53:655-666.3)KDIGO 2025 Clinical Practice Guideline for the Management of Immunoglobulin A Nephropathy (IgAN) and Immunoglobulin A Vasculitis (IgAV).公開履歴初回2026年2月27日

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認知症の周辺症状に対する薬物療法【非専門医のための緩和ケアTips】第118回

認知症の周辺症状に対する薬物療法今回は認知症の周辺症状に対する薬物療法に関する質問をいただきました。緩和ケアの実践に限らず、多くの方が経験する状況だと思いますので、私なりに感じる点を述べてみます。今日の質問病棟にいると認知症の方が非常に多く、家族も対応に困りながらギリギリのところで生活しているのでは、と感じます。医療関係者の中には、認知症の周辺症状に対してすぐに抑肝散やクエチアピンを使うべき、とする方もいますが、やや疑問に感じます。質問ありがとうございます。ご家族の大変さにも目を向けているのは非常に重要な点ですね。私自身、認知症の行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)に対して抑肝散やクエチアピンといった薬物療法を行う場合、少し後ろめたさを感じることがあります。この思いの理由は何なのか、振り返って考えてみました。いくつかの論点があると思いますが、まずは「薬物療法の副作用が気になる」という点です。急性期病院に勤務していると、医原性の状態悪化で入院する方をよく見ます。良かれと思って処方された薬剤が理由で状態が悪化している方を見ると、「薬以外に取り組むべきことはないのか」「できるだけ非薬物療法で対応したい」と考えるのは普通かと思います。一方、薬物療法を求める医療者や家族の気持ちを考えてみましょう。これは2つの要素が大きいのではと思います。1つは、認知症に対する看護や介護の大変さが切実だからでしょう。とくに夜間対応の大変さは、ここで語るまでもありません。もう1つの要素としては、以前の回で紹介した「ユマニチュード」に代表される、認知症の非薬物療法に対する知識不足や不慣れさがあるのではないでしょうか。いずれにせよ、誰しも認知症の高齢者に薬を飲ませたくて仕方ないわけではなく、さまざまな要因で対応に困っているために薬物療法が求められているのだと思います。さて、では結局のところ認知症のBPSDへの薬物療法について、どのように対処すると良いのでしょうか? ここでのキーワードは「個別性」と「フォローアップ」です。認知症のBPSD=即薬物が必須、ではありません。一方で、抗精神病薬などを必要とする患者や状況もあるでしょう。関わる多職種で薬物療法の注意点を共有し、患者ごとに必要性を判断することが大切です。もう1つ、適切な薬物療法が提供されているか、非薬物療法にも取り組んでいるかといった、継続的なフォローアップも重要です。こうした取り組みを行う前提があれば、薬物療法も有効な選択肢になりうる、というのが私の見解です。今日のTips今日のTips周辺症状を伴う認知症患者へのケアは、薬物療法と非薬物療法のどちらも大切。

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第50回 AI単体なら「名医」でも、人間が使うと「凡人以下」に? 最新研究が明かすAI医療相談のリアル

医学部卒業試験で満点に近いスコアを取るほど優秀な最新のAI。しかし、一般の人が実際に体調不良を相談してみると、その精度は驚くほど下がってしまうことがわかりました。今回は、デジタル時代の医療情報の探し方について、最新の大規模研究のデータをもとに考えてみましょう。優秀なAIも、人間と対話すると精度が急降下Nature Medicine誌に興味深い論文が報告されました1)。イギリスの一般市民1,298人を対象に行われたこの研究では、参加者に「突然の激しい頭痛」や「長引く腹痛」といった10種類のよくある症状のシナリオを与え、私たちがよく用いるAI(GPT-4oなど)を使って「何の病気が疑われるか」「救急車を呼ぶべきか」といった判断をしてもらいました。すると、AI単体に医師の書いた抜けのないすべての情報を与えて回答させた場合、関連する病名を94.9%という高い確率で正確に言い当て、次に取るべき行動についても平均56.3%の正解率を示しました。これは優秀な成績だと思います。ところが、一般の参加者が対話形式で同じAIに相談した場合、病名を正解できたケースは34.5%以下、受診の緊急性を正しく判断できたのは44.2%以下にまで急降下してしまったのです。さらに皮肉なことに、AIを使わずに従来のインターネット検索などで自力で調べたグループでは、AIを使ったグループよりも約1.76倍正確に病名を特定できていました。AIに尋ねるより、Googleなどで自分で調べたほうがよっぽど正確だったのです。なぜすれ違うのか? 見えてきた課題なぜ、これほど賢いと言われるAIを使いながら、検索エンジンにすら負けてしまうのでしょうか。論文のデータからは、AIと人間の「コミュニケーションの壁」が見えてきます。まず、利用者側の問題として、AIに十分な情報を伝えられていないケースが多かったことがわかりました。分析した30件の会話サンプルのうち、16件では最初のメッセージに症状の一部しか伝えられていませんでした。たとえば胆石の症状を持つ参加者が「食後に激しい胃痛があり、嘔吐することもある」とだけ伝え、痛みの場所・強さ・頻度という重要な情報を省いてしまったケースがありました。医師はそれらの情報が不足している場合に問診で必要な追加情報を引き出しますが、AIはそこまで積極的に聞き返さずに結論を導き出してしまうことが多く、結果として的外れなアドバイスにつながっていました。次に、AIが正しい答えを含めていたとしても、利用者がそれを最終的な回答として選択しなかったケースも確認されました。AIは複数の病名候補を提示しましたが、利用者が提示された候補の中から正しいものを選び出すことができていなかったのです。さらに衝撃的なケースとして、まったく同じような症状(激しい頭痛、首の硬直、光過敏)を伝えた2人の参加者に対し、GPT-4oがまったく逆のアドバイスを返したことも記録されています。一方の参加者には「暗い部屋で安静にして」と指示し、もう一方には「脳出血の可能性があるので今すぐ救急へ」と適切なアドバイスをしていました。違いは「突然」という一言があったかどうかだけでした。AIの回答がわずかな表現の差で大きく変わる「不安定さ」が、実際の使用場面での危険性として浮かび上がりました。本当に脳出血のケースだったとしたら、暗い部屋で安静にしていたら命取りになってしまいます。もちろん、この研究にも限界はあります。実際の急病患者ではなく架空のシナリオを用いた実験であるため、本物のパニックや強いストレス下での行動を完全に再現できているわけではありません。しかし、そのような場面では、冷静に情報を提示できる可能性はさらに低くなるため、AIの正確性はさらに下がる懸念があります。いずれにせよ、「最新AIの医学知識がどれほど充実していても、一般人がそれを使って正しい判断を下せるわけではない」という事実をデータをもって突き付けた点において、きわめて重要な警鐘だと言えます。AI時代における私たちの身の守り方では、私たちはこの未完成な「AIドクター」とどう付き合っていけばよいのでしょうか。第1に、AIの回答は不完全で一貫性に欠ける場合があるということを認識しておくのが大切でしょう。多くの一般ユーザーは医療者ではないため、診断の鍵となる重要な情報を無意識に省いてしまいます。その結果、同じ症状でも伝え方によってまったく異なるアドバイスが返ってくる可能性があることを念頭に置く必要があります。第2に、AIが複数の病名候補を提示しても、その中から正しいものを選ぶのは医学的知識のない一般人には難しいという点です。AIはもっともらしい候補をいくつも挙げますが、最終的な回答としてどれが自分に当てはまるのかをユーザー自身が見極めるのは至難の業であることがデータでも示されています。第3に、緊急性の判断を誤るリスクがあることです。今回の実験でも、ユーザーが症状の緊急性を過小評価する傾向が確認されました。AIがもっともらしい理由で「自宅で様子を見て」と言っても、あなたの「いつもと違う」という直感の方が正しいことは多々あります。テクノロジーは確かに進化していますが、自分の身を守る最後の砦は、依然として自身の体の声に耳を傾けることと、信頼できる医療専門家に相談することでしょう。AIはあくまで「相談前のメモ帳」程度に捉え、上手に距離を保ちながら付き合っていくのが、いま私たちが持っておくべきリテラシーなのだと思います。1)Bean AM, et al. Reliability of LLMs as medical assistants for the general public: a randomized preregistered study. Nat Med. 2026;32:609-615.

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インフルA型、B型それぞれの感染に影響する個人的・環境的要因

 インフルエンザの感染伝搬について、個人的および環境的要因が及ぼす影響について評価したカナダ・マクマスター大学のNushrat Nazia氏らによる研究の結果、高年齢であることはとくにB型インフルエンザ感染において防御的に働く可能性が示された。また環境・地理的要因がインフルエンザ感染に与える影響はウイルスの型ごとに異なっていた。Influenza and Other Respiratory Viruses誌2026年2月号掲載の報告。 本研究は、カナダの厳格なキリスト教徒「フッター派(Hutterite)」のコミュニティを対象に行われた。同コミュニティは外部との接触が少なく、ライフスタイルが共通した単一的で明確な集団構造を持つ。Nazia氏らは、「階層構造を明確に定義できる」という特性を活かすことで、一般的な社会では困難な、集団と個人の各要因が感染リスクに与える影響をより高い精度で推論可能な点が本研究の強みとしている。 2008年のインフルエンザシーズンにおける、カナダの46のフッター派コロニーに属する3,271例のデータが解析された。PCR検査で確定されたインフルエンザA型およびB型の週別症例について、人口統計学的要因、ワクチン接種状況、地理的および気象条件との関連を検討した。解析には、コロニーのクラスタリングと時間的自己相関を考慮したIntegrated Nested Laplace Approximations(INLA法)によるマルチレベル・ベイズ階層モデルが使用された。 主な結果は以下のとおり。・3,271例(平均年齢26歳、女性43.5%、インフルエンザワクチン接種率24.3%)中、239例(7.3%)がPCR検査によりインフルエンザと確定された(A型:128例、B型:111例)。・年齢の高さによる防御的な効果が認められ、インフルエンザB型(相対リスク[RR]:0.93、95%信用区間[CrI]:0.91~0.95)ではインフルエンザA型(RR:0.99、95%CrI:0.98~1.00)よりも強い効果が認められた。・男性は女性と比較してわずかに感染リスクが低かった。・いずれのモデルにおいても、個別ワクチン接種による予防効果は認められなかった。しかし、コロニー単位でのワクチン接種群への割り当ては、すべてのインフルエンザ(RR:0.29、95%CrI:0.10~0.83)およびインフルエンザA(RR:0.17、95%CrI:0.04~0.62)の感染リスクの大幅な低下と関連していたが、インフルエンザBでは関連がみられなかった。・最寄りの都市までの距離と標高は、感染リスク低下と弱い関連を示したが、不確実性が大きく、その関連は限定的であった。・前週の気温の高さは、インフルエンザAの感染リスク低下(RR:0.91、95%CrI:0.86~0.95)およびインフルエンザBの感染リスク上昇(RR:1.19、95%CrI:1.09~1.31)と関連していた。

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更年期のホルモン補充療法、死亡は増加せず/BMJ

 45歳以降に初めて更年期ホルモン補充療法を受けた女性は、受けなかった女性と比較して死亡リスクは増加しないことが、デンマーク・Copenhagen University Hospital HerlevのAnders Pretzmann Mikkelsen氏らの調査で示された。これまでの研究では、更年期ホルモン補充療法後の死亡率は減少または変化なしと報告されていたが、方法論的な限界が指摘されていた。BMJ誌2026年2月18日号掲載の報告。デンマークの45歳以上の約88万例について追跡調査 研究グループは、デンマークに在住し、45歳時点で生存している1950~77年生まれのデンマーク人女性を、45歳の誕生日から2023年7月31日まで追跡した。デンマーク処方箋登録から、更年期ホルモン補充療法の情報が収集された。 主要アウトカムは、デンマークの中央個人登録簿(Central Persons Register)に記録された死亡、副次アウトカムは死因登録簿(Cause of Death Register)より特定した死因に基づく死因別死亡率(心血管疾患、がん、その他)であった。 更年期ホルモン補充療法が死亡リスクに及ぼす影響について、年齢、暦年、分娩回数、学歴、所得分類(四分位に基づく)、出生国、糖尿病、高コレステロール血症、高血圧、心房細動、弁膜症、心不全および44~45歳時の3回以上の医療機関利用歴で調整したCox回帰分析によりハザード比(HR)を推定し評価した。 1950~77年に生まれ45歳時点で生存していたデンマーク人女性は96万9,424例で、このうち、追跡開始前にホルモン補充療法の禁忌(血栓症素因、肝疾患、脳卒中や心筋梗塞を含む動脈血栓症、静脈血栓症、乳がん、子宮内膜がん、卵巣がん)を有していた女性、45歳以前の更年期ホルモン補充療法または両側卵巣摘出の既往歴がある9万2,619例が除外され、適格基準を満たした87万6,805例を対象に解析した。更年期ホルモン補充療法非曝露に対する曝露の死亡の補正後HRは0.96 追跡期間中央値14.3年(四分位範囲[IQR]:7.9~21.0)において、87万6,805例のうち追跡終了日までに更年期ホルモン補充療法を少なくとも1回処方された女性は10万4,086例(11.9%)、死亡は4万7,594例(5.4%)であった。 更年期ホルモン補充療法曝露群の死亡発生率は1万人年当たり54.9に対し、非曝露群は35.5で、補正後HRは0.96(95%信頼区間[CI]:0.93~0.98)であった。更年期ホルモン補充療法の累積使用期間で層別化した場合の補正後HRは、1年未満で1.01(95%CI:0.98~1.05)、1~2.9年で0.94(0.89~0.98)、3~4.9年で0.90(0.84~0.95)、5~9.9年で0.89(0.84~0.95)、10年以上で0.98(0.90~1.07)であった。 死因別死亡率(心血管疾患、がん、その他)について、曝露群と非曝露群で明確な差は認められなかった。 45~54歳で両側卵巣摘出術を受け、追跡期間中に死亡した703例においては、更年期ホルモン補充療法曝露は非曝露と比較し死亡の補正後HRが27~34%低く、死亡時年齢の中央値は曝露群60.9歳(IQR:55.3~66.6)vs.非曝露群56.6歳(52.9~62.0)であった。

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がん研究、約10%が不正な「ペーパーミル製論文」か/BMJ

 ペーパーミル(論文工場)は、がん研究論文において深刻かつ拡大する問題であり、低インパクトファクターの雑誌に限った問題ではないことが、フランス・L'Institut AgroのBaptiste Scancar氏らが行った機械学習モデルの構築・検証およびスクリーニングの結果で示された。著者は、「ペーパーミルの問題に対処するためには、関係者全体でこの課題を共有し行動を起こすことが不可欠である」とまとめている。BMJ誌2026年1月29日号掲載の報告。ペーパーミル製論文2,202報を用いて機械学習モデルを開発 研究グループは、撤回論文のデータベースであるRetraction Watchにおいて「ペーパーミル」と分類された撤回済み論文2,202報を用い、論文タイトルと抄録を入力したBERT(bidirectional encoder representations from transformers)ベースのテキスト分類モデルを学習させた。内部検証の後、画像整合性に関する専門家が収集した独立データによる外部検証を実施し、PubMedに収載された1999~2024年のがん研究原著論文264万7,471報を対象にスクリーニングを行った。 主要アウトカムはモデルの分類精度で、撤回されたペーパーミル出版物と類似すると判定された論文(フラグ付き論文)の割合とその95%信頼区間(CI)を評価した。また、時系列・国別・出版社別・がん種別・研究領域別の分布、ならびに高インパクトファクターの雑誌(上位10%)における割合も調べた。1999~2024年のがん研究原著論文の約10%がペーパーミル、最も多いのは中国 モデルの精度は内部検証で0.91、外部検証で0.93、感度はいずれも0.87、特異度はそれぞれ0.96、0.99を達成した。 がん研究原著論文に適用したところ、264万7,471報中26万1,245報がフラグ付けされ、この数は全がん研究原著論文の9.87%(95%CI:9.83~9.90)に相当した。 フラグ付き論文数は、1999~2024年に全体およびインパクトファクター上位10%の雑誌の両方で著明かつ急速に増加し、年間フラグ付き論文数は1999~2022年に指数関数的増加傾向を示した。フラグ付き論文の割合は2000年代初頭には約1%で推移したが、2020年代初頭までに年間がん研究論文総数の15%超(2万6,457/17万1,656報)まで増加した。 国別の解析では、フラグ付き論文の割合が最も高かったのは中国で、同国のがん研究論文全体の36%を占めた(17万7,907/49万7,672報)。 出版社別の解析では、フラグ付き論文の割合が最も高かったのは、Verduci Editore発行のEuropean Review for Medical and Pharmacological Sciences誌で約67%(2,834/4,199報)に上った。大手出版社(Springer Nature、Elsevier、John Wiley and Sonsなど)はフラグ付き論文の割合は比較的低い(約10%)ものの、絶対数は多かった。 がん種別・研究領域別では、フラグ付き論文の割合は胃がんが最も多く(22%)、骨がん(21%)、肝がん(20%)の順で続き、研究領域としてはがん生物学・基礎研究分野が13%超と最も高く、治療開発・評価ならびに診断・予後領域で10%を超えていた。

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