サイト内検索

検索結果 合計:4881件 表示位置:1 - 20

1.

医師でリスクの低いがんは?~日本人の職業とがんリスクの大規模研究

 日本の労働者における職業とがん種別発症リスクの関連を全国規模で調査した、東海大学の深井 航太氏らによる大規模症例対照研究の結果、肉体労働や運輸関連の職業でがんリスクが高いなど、職業による違いがみられ、とくに男性で顕著であることがわかった。一方、医師などの専門職では肺がん、食道がん、胃がん、大腸がんのリスクが低いことが示された。Journal of Occupational and Environmental Medicine誌オンライン版2026年4月14日号に掲載。 本研究は、労働者健康安全機構の有する病職歴データベース(ICOD-R、2005〜23年度)を活用した多施設共同、病院ベース症例対照研究である。14万6,994例のがん症例と、年齢・性別・入院年をマッチングした27万8,244例の対照群を対象に分析した。喫煙、飲酒、肥満、シフトワークなどの生活習慣・背景因子を調整したうえで、一般事務従事者を基準とした職業別の調整オッズ比を算出した。 主な結果は以下のとおり。<男性>・がん全体では、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師、教師などの専門職およびホワイトカラーの職業においてリスクが低い一方で、肉体労働、サービス業、輸送関連の職業ではリスクが高い職業が多かった。・肺がん、食道がん、胃がん、大腸がんは、医師などの専門職でリスクが低かったが、販売、飲食物調理、接客サービス、自動車運転、建設、土木、金属製品、運搬の職業では、肺がん、大腸がん、肝がんのリスクが高かった。・木製品製造従事者は胆道がんリスクが高かった。・建築家、土木技術者、測量士、音楽家、化学製品製造従事者は膀胱がんリスクが高かった。・前立腺がんは多くの職種で一般事務職よりもリスクが低かったが、これは潜在的な発症率の差というより、受診行動やPSA検査を含む検診受診率における職業間の差異を反映している可能性がある。<女性>・がん全体では、職業分類による差は男性ほど顕著ではないが、特定の部位で関連が認められた。・電気機械組立従事者は、肺がん、胆道がん、胃がんのリスクが有意に高かった。・胃がんは、事務機器操作、商品販売、家庭生活支援サービス、衣服・宝石製品製造の従事者の間でリスクが高かった。・大腸がんは、教師、芸術家、デザイナー、写真家や、映像操作、販売類似職業、家庭支援サービス、介護サービス、農業の従事者でリスクが低かった。・乳がんは、保健師、助産師、看護師、その他の医療従事者、介護サービス従事者が、一般事務職と比較して有意にリスクが低かった。

2.

グラム陰性菌の菌血症、迅速抗菌薬感受性試験は臨床的に有効か/JAMA

 グラム陰性桿菌による血流感染症患者において、迅速抗菌薬感受性試験(AST)の追加は標準ASTと比較し、「desirability of outcome ranking(望ましい順位のアウトカム):DOOR」による評価では優越性は認められなかったことが、米国・Vanderbilt University Medical Center大学のRitu Banerjee氏らが行った「FAST試験」の結果で示された。血液培養時の陽性血液培養ボトルを用いて直接、感受性の表現型を評価する迅速ASTについて、その結果に基づき抗菌薬治療を行うことで臨床アウトカムを改善するかどうか、臨床的意義は不明であった。著者は、DOORでは差がなかったものの副次アウトカムや事前に規定した探索的アウトカムでは差がみられたことから、「今回の知見は、他の有効性および安全性のアウトカムと併せれば、迅速ASTの使用に関して役立つ可能性がある」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年4月18日号掲載の報告。主要アウトカムは、より望ましいアウトカムが得られる確率 FAST試験は、多剤耐性グラム陰性菌の有病率が高い4ヵ国の7施設(ギリシャ2、インド1、イスラエル3、スペイン1)で実施された無作為化非盲検優越性試験。 対象は、血液培養でグラム陰性桿菌が検出され、かつ血液培養の結果通知時点で入院中の患者で、年齢は問わなかった。ただし、直近7日以内のグラム陰性桿菌検出、血液培養結果通知時点で死亡、血液培養グラム染色でグラム陽性桿菌・グラム陽性球菌・グラム陰性球菌・酵母菌・真菌・複数の形態のグラム陰性桿菌を認めた患者などは除外した。 研究グループは、血液培養判定から16時間以内に対象患者を迅速AST群または標準AST群に無作為に割り付け、迅速AST群では各施設の標準ASTに加えVITEK REVEAL(bioMerieux製)を用いて迅速ASTを行った。 両群とも、全例、各施設の抗菌薬適正使用プログラムによる評価を受け、臨床チームで治療変更や抗菌薬の選択、用法および用量などを決定した。 主要アウトカムは、無作為化後30日時点のDOORであった。DOORは「有害イベントなしで生存」、「1つ以上の有害イベントを伴う生存」、「死亡」の3段階で順位付けし、有害イベントは入院継続または退院後30日以内の再入院、臨床効果なし、望ましくない事象(腎不全、多剤耐性菌の院内感染など)と定義した。迅速AST群で標準AST群より良好なDOORが得られる確率の95%信頼区間の下限が50%を超えた場合に、標準AST群に対する優越性が認められることとした。 副次アウトカムは、30日死亡、30日までの入院期間、集中治療室入室、院内感染、3日以内の有効な抗菌薬治療開始までの時間、3日以内の抗菌薬の増量または減量などであった。カルバペネム耐性菌感染症患者で、有効な抗菌薬治療開始までの時間が早まる 2023年12月~2025年5月に899例が無作為化され、このうち850例が解析対象集団となった(迅速AST群413例、標準AST群437例)。年齢中央値72歳、女性が43%であった。 迅速AST群で標準AST群より良好なDOORが得られる確率は48.8%(95%CI:45.3~52.4)であり、優越性は示されなかった。 有効な抗菌薬治療開始までの時間の中央値は両群で差はなく、抗菌薬の増量または減量までの時間の中央値は迅速AST群(22時間)が標準AST群(36時間)より14時間(95%信頼区間[CI]:6~22)短かった。その他の副次アウトカムは両群で差は認められなかった。 事前に規定されたサブグループ解析では、カルバペネム耐性菌感染症患者集団において有効な抗菌薬治療開始までの時間の中央値は迅速AST群で9.5時間、標準AST群で28時間であった(群間差:-18時間、95%CI:-42~6)。

3.

脳内出血既往患者、低用量3剤配合降圧薬の追加で再発減少/NEJM

 脳内出血患者において、標準治療に加え3種類の低用量降圧薬の配合錠を1日1回投与することにより、プラセボと比較し脳卒中の再発および主要心血管イベントの発生が減少したことを、オーストラリア・George Institute for Global HealthのCraig S. Anderson氏らTrident Research Groupが「TRIDENT試験」の結果で報告した。降圧は脳卒中を予防する、唯一の立証済み治療法である。標準的な降圧治療への低用量3剤配合降圧薬の追加が、標準治療単独より血圧をさらに低下させ、脳卒中再発リスクを低減できるかどうかは明らかにされていなかった。NEJM誌2026年4月23日号掲載の報告。テルミサルタン20mg+アムロジピン2.5mg+インダパミド1.25mgの配合錠 TRIDENT試験は、12ヵ国(オーストラリア、ブラジル、ジョージア、マレーシア、オランダ、ナイジェリア、シンガポール、スリランカ、スイス、台湾、英国、ベトナム)の61施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験。 対象は、非外傷性の脳内出血の既往歴があり、ベースラインの収縮期血圧が130~160mmHgで臨床的に安定(必要に応じて降圧治療中)の18歳以上の患者とした。 研究グループは、導入期として全例に低用量降圧薬の3剤配合錠(テルミサルタン20mg+アムロジピン2.5mg+インダパミド1.25mg)を1日1回2週間投与し、導入期終了後に同意が得られた適格患者を3剤配合錠(継続)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは脳卒中の初回再発、副次アウトカムは無作為化後6ヵ月時点の血圧コントロール(収縮期血圧130mmHg未満と定義)、主要心血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中または心血管死の複合)、心血管死、および安全性であった。脳卒中の再発は、3剤配合錠群4.6%vs.プラセボ群7.4% 2017年9月28日~2024年11月30日に、スクリーニングを受け適格性を評価された2,206例が導入期に参加し、導入期終了後に1,670例が無作為化された(3剤配合錠群833例、プラセボ群837例)。1,670例の平均(±標準偏差)年齢は57.8±11.4歳、563例(33.7%)が女性、1,213例(72.6%)がアジア系で、1,114例(66.7%)がスリランカ在住であった。 追跡期間中央値2.5年(四分位範囲:1.6~4.4)時点で、追跡期間中の平均収縮期血圧は3剤配合錠群127mmHg、プラセボ群138mmHgであり、平均拡張期血圧はそれぞれ82mmHg、86mmHgであった。 脳卒中再発は、3剤配合錠群38例(4.6%)、プラセボ群62例(7.4%)に発生し、ハザード比(HR)は0.61(95%信頼区間[CI]:0.41~0.92、p=0.02)であった。脳内出血再発は3剤配合錠群15例(1.8%)、プラセボ群37例(4.4%)であった(HR:0.40、95%CI:0.22~0.73)。 主要心血管イベントの発生割合は、3剤配合錠群がプラセボ群より有意に低かった(6.6%vs.9.8%、p=0.04)。 重篤な有害事象は、3剤配合錠群で193例(23.2%)、プラセボ群で218例(26.0%)に認められた。投与中止に至った有害事象の発現率はそれぞれ13.6%、6.0%であり、主な事象は血清クレアチニン値の20%以上の上昇であった。

4.

イヌリンにより変形性膝関節症の痛みが軽減か

 腸内環境を整えることで関節炎の痛みが和らぐかもしれない──そんな研究結果が報告された。変形性膝関節症(OA)患者を対象としたランダム化比較試験で、難消化性食品成分であるプレバイオティクスの摂取が痛みの軽減に寄与する可能性が示された。英ノッティンガム大学NIHRノッティンガム生物医学研究センターのAfroditi Kouraki氏らによるこの研究は、「Nutrients」に2月24日掲載された。 研究グループは、腸の健康を改善することがOAの新しい治療法になる可能性があると考えている。Kouraki氏は、「この研究は、朝食やヨーグルトにサプリメント(以下、サプリ)を加えるだけで、痛みが和らぎ、身体機能も改善される可能性があるという、わくわくするような可能性を示した」とニュースリリースで述べている。 腸内には何兆もの細菌が生息し、健康に幅広く影響を与えることが知られている。今回の研究では、チコリの根や菊芋などに含まれる天然食物繊維であるイヌリンに着目し、イヌリンのサプリと理学療法士の指導下で実施される運動プログラム(physiotherapy-supported exercise;PSE)が、OAの痛みにどのような影響を及ぼすのかを評価した。対象とされたOA患者117人(平均年齢67.5±9.4歳、女性58.1%)は、6週間にわたって、1)イヌリンのサプリ(20g/日)を摂取する群、2)イヌリン摂取とPSEを受ける群、3)PSEのみを受ける群、4)プラセボ(マルトデキストリン10g/日)を摂取する群の4群に、ランダムに割り付けられた。 その結果、イヌリンと理学療法は、いずれも単独で膝の痛みを軽減する効果のあることが明らかになった。Numerical Rating Scale(NRS)で評価した痛みは、プラセボ群と比較して、イヌリン群で−1.11ポイント(95%信頼区間−2.18〜−0.04、P=0.045)、PSE群で−1.55ポイント(同−2.52〜−0.58、P=0.002)改善した。また、イヌリン群では握力と、痛みに対する感受性(圧痛閾値、時間的荷重〔同じ強さの刺激を短時間で繰り返し受けると、痛みが次第に強く感じられる現象〕)に改善が見られた一方で、PSE群では、30秒立ち上がりテスト(30-CST)とTimed Up and Go(TUG)に改善が認められた。さらに、介入離脱率は、イヌリン群で3.6%だったのに対し、PSE群では21%だった。研究グループは、毎日のサプリ摂取は、定期的な運動よりも継続しやすい可能性があると指摘している。 このほか、イヌリン摂取群では、腸から分泌されるホルモンであるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の血中濃度の上昇と腸で産生される脂肪酸である酪酸レベルの上昇も確認された。GLP-1は、痛みの調節や筋肉の健康に関与しており、新しい肥満症治療薬でも標的とされている。一方、酪酸は全身の炎症や痛みの経路に影響を与えると考えられている。論文の上席著者であるNIHRノッティンガム生物医学研究センターAna Valdes氏は、「GLP-1と握力の関係は特に興味深く、腸-筋肉-痛みの相互作用が関連している可能性を示しており、今後、さらに調査する価値がある」と述べている。 本研究には関与していない、Arthritis UKで研究部長を務めるLucy Donaldson氏は、「研究者らは腸内細菌が痛みの感じ方にどのように関与するかを探り始めている。この予備的な研究は、食事と理学療法が異なるメカニズムで関節炎の症状を改善できる可能性を示しており、とても興味深い。バランスの取れた食事、食物繊維の摂取、定期的な運動が大切であることは分かっているが、それらがどのように作用して痛みを軽減するのかを理解するための研究をサポートできることをうれしく思う」とコメントしている。

5.

聴覚ビート刺激を組み合わせた音楽は不安軽減に有効

 短時間だけ音楽を聴くことが不安の軽減に役立つ可能性が、新たな臨床試験で明らかになった。試験では、脳活動に影響を与えることを目的とした音のパターンである聴覚ビート刺激(ABS)を組み合わせた音楽を24分間聴くことが、不安症状の軽減に最も効果的であることが示されたという。トロント・メトロポリタン大学(カナダ)心理学教授のFrank Russo氏らによるこの臨床試験の詳細は、「PLOS Mental Health」に1月21日掲載された。 この臨床試験では、先行研究で確認された、音楽にABSを組み合わせた(音楽+ABS)介入による追加の不安軽減効果が再現されるか、また、音楽+ABSの効果が最大となる聴取時間がどの程度かが検討された。対象は、中等度の不安を抱える成人144人(19〜73歳、平均年齢37.6歳)で、全参加者が、不安症状を管理するための薬剤を使用していた。 参加者は、1)ピンクノイズを24分間聴く群(対照群)、2)音楽+ABSを12分間聴く群、3)音楽+ABSを24分間聴く群、4)音楽+ABSを36分間聴く群のいずれかに割り付けられ、介入の前後に不安と気分の評価を受けた。なお、ピンクノイズは広い周波数帯域にわたる「ザー」という連続音で、リラックス効果があるとされている。主評価項目は状態不安の変化とし、STICSA(State-Trait Inventory for Cognitive and Somatic Anxiety)を用いて評価した。また、副次評価項目は感情(ポジティブ感情およびネガティブ感情)の変化とし、PANAS(Positive and Negative Affect Scale)を用いて評価した。 その結果、24分間の音楽+ABS介入は、ピンクノイズ介入と比較して、認知的不安および身体的不安を有意に低減し、先行研究の結果が再現された。感情については、ポジティブ感情は先行研究の結果と一致せず、いずれの介入でも低下が認められ、群間差も認められなかった。一方、ネガティブ感情は音楽+ABS介入により有意に低減し、先行研究とは異なる結果が示された。さらに、音楽の聴取時間に着目すると、不安はいずれの条件でも有意に低減し、特に24分の音楽+ABS介入の低減効果が最大であることが示された。ネガティブ感情については、36分の音楽+ABS介入で最大の低減効果が認められ、聴取時間の増加に伴う用量反応関係が示唆された。ポジティブ感情には、そのような傾向は認められなかった。 Russo氏は、「今回の臨床試験では用量反応関係が認められ、24分間の音楽+ABSが最適な長さであると考えられた。この長さは、不安レベルの意味のある改善をもたらすには十分でありながら、まとまった時間の確保を強いるものではない」とニュースリリースで付け加えている。 研究グループによると、不安を抱えている人は世界で数百万人に上るとされる。不安に対する一般的な治療法は薬物治療や心理療法だが、これらには時間や費用がかかり、副作用を伴うこともある。一方、音楽を用いたツールは、人々の症状の管理を助けるシンプルで低コストの方法となり得ると研究グループは述べている。

6.

第316回 米国でサイケデリック薬が超速優先審査に

毎年20人に1人以上もの米国成人が生きるのを辛くし、活動を妨げる深刻な精神不調を被ります。その治療を推進する取り組みの一環として、今月18日にドナルド・トランプ大統領がサイケデリック薬(psychedelic drug)の超速優先審査(Commissioner’s National Priority Vouchers:CNPV)を米国FDAに命じました1,2)。大統領からのその通知によると、1,400万例を超える米国成人が深刻な精神不調を患い、およそ800万例にそれらの治療薬が処方されています。精神疾患の最悪の帰結の自殺率は2000~18年に37%も上昇しましたが、トランプ大統領の1期目に精神疾患患者を助ける取り組みが進展し、2018~20年には幸いにも5%低下しました3)。しかし、トランプ大統領曰く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延とバイデン政権下での停滞のせいで進捗は止まり、自殺率は再び上昇して2022年には2018年と同じ最悪の水準に逆戻りしてしまいました。感じ方を変える(perception-altering)とFDAが説明4)するサイケデリック薬は、一通りの標準治療後も不調が続く深刻な精神疾患患者を対象とする試験で有望な成績を上げており、開発中のいくつかはすでに画期性優遇(Breakthrough Therapy)の指定を受けています。トランプ大統領は画期性優遇の指定を得ているサイケデリック薬の目ぼしいものにCNPV権利を付与することを18日に命じました。それを受けてFDA長官Marty Makary氏はLSDやマジックマッシュルームの活性成分のpsilocybinなどが属するセロトニン2A受容体作動薬の3つに権利を付与すると同日の記者会見で述べています5)。いわば大統領の「推し」となり、FDAの厚遇も約束されたサイケデリック薬への投資家の期待は当然ながら一気に膨らみ、AtaiBeckley、Compass Pathways、Enveric BioSciences、GH Research、Definium Therapeutics、Cybinなどのその界隈の会社の株価が軒並み上昇しています6)。そして、大統領命令からおよそ1週間後の先週金曜日24日に、FDAはサイケデリック薬を開発する3社に約束どおりCNPV権利を付与しました4,7)。FDAの発表では具体的な社名は明かされませんでしたが、大統領命令後に株価上昇の恩恵を得た一堂のうちの一社のCompass Pathwaysがその幸運に恵まれたことを明らかにしています8)。Compass社によるとCNPV権利を使うことで承認申請後の審査期間が超速の1~2ヵ月に短縮されます。Compass社はCOMP360という名称の人工のpsilocybinを開発しています。COMP360は治療抵抗性うつ病患者が参加した2つの第III相試験で目標の効果を示しており、先月の同社の発表によるとFDAへの承認申請が今年中に完了する見込みです9)。FDAがCNPV権利を付与したあとの2社の1つは大うつ病へのpsilocybin開発会社、もう1つは心的外傷後ストレス障害(PTSD)へのmethylone開発会社です。Usona InstituteとTranscend Therapeuticsがそれらの治療を開発しており、Reutersからの問い合わせに対してUsona Instituteは権利を得たと回答しています7)。一方、Transcend社はReutersに回答していません。Transcend社が開発しているmethyloneは植物成分のカチノンの類いです。カチノンはアンフェタミン様の作用を求めて使われているアラビア南部やアフリカ東部で育つ植物のカート(Catha edulis)の葉に含まれています10)。Transcend社はTSND-201という名称でmethyloneを開発しており、PTSD患者を対象とした第III相試験が進行中です11)。サイケデリック薬の時代の到来を予想していたのか、わが国の大塚製薬はほかでもないそのTranscend社の買収をつい先月末に発表しています12)。日本でサイケデリック薬が日の目を見ることもそう遠くないうちに実現するかもしれません。参考1)ACCELERATING MEDICAL TREATMENTS FOR SERIOUS MENTAL ILLNESS / THE WHITE HOUSE2)Trump orders FDA to fast-track reviews of psychedelic drugs after lobbying by podcaster / FierceBiotech3)Suicide Data and Statistics / CDC4)FDA Accelerates Action on Treatments for Serious Mental Illness Following Executive Order / FDA5)Trump orders FDA to fast-track reviews of psychedelic drugs after lobbying by podcaster. FierceBiotech.6)Psychedelic drug developers rally after Trump orders FDA to expedite reviews / Reuters7)US FDA moves to fast-track psychedelic drugs after Trump order / Reuters8)Compass Pathways Announces FDA Granted NDA Rolling Review Request and Awarded Commissioner's National Priority Voucher / BusinessWire9)Compass Pathways Announces Fourth Quarter and Full-Year 2025 Financial Results and Business Highlights / BusinessWire10)Effects of Synthetic Cathinones Contained in “Bath Salts” on Motor Behavior and a Functional Observational Battery in Mice NIH11)EMPOWER-1試験(ClinicalTrials.gov)12)大塚製薬のTranscend Therapeutics社買収について

7.

食後高血糖がアルツハイマー型認知症のリスクと関連

 食後高血糖がアルツハイマー型認知症のリスクを高める可能性があることを示すデータが報告された。この関連性は、全脳体積や白質の変化では説明できないものだという。英リバプール大学のAndrew C. Mason氏らの研究の結果であり、詳細は「Diabetes, Obesity and Metabolism」に12月12日掲載された。 疫学研究により、高血糖、2型糖尿病、インスリン抵抗性などが、認知症リスクの上昇を含む脳の健康状態の悪化と関連することが示されている。しかし、そのメカニズムには不明点が多く、直接的な因果関係が存在するかどうかも明らかでない。一方、近年では空腹時血糖値、空腹時インスリン値、糖負荷2時間後血糖値(2hPG)といった糖代謝関連指標について、遺伝的背景との関係を検討することが可能となってきている。これにより、糖代謝異常と認知症との関連や、その基盤となるメカニズムをより詳細に解析できる環境が整いつつある。こうした背景の下、Mason氏らは、英国の一般住民を対象とした大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いた検討を行った。 この研究では、観察研究の弱点である残余交絡や逆因果関係の影響を受けにくい2標本メンデルランダム化解析(2SMR)を実施した。解析対象は35万7,883人で、平均年齢56.9±8.0歳、女性54%、BMI27.4±4.8、脳卒中の既往2.6%だった。遺伝的素因に関して、インスリン抵抗性関連の53変異、空腹時血糖値関連の109変異、空腹時インスリン値関連の48変異、2hPG関連の15変異を採用し、変異と転帰との関連は10個の主成分(PCs)を調整した上で解析した。 2SMR解析の結果、2hPGが高いことが、アルツハイマー型認知症のオッズ比(OR)上昇と関連していた。具体的には、主解析に用いた逆分散重み付け法(IVW)でOR1.69(95%信頼区間1.38~2.07)、感度分析に用いた加重中央値推定法(WME)でOR1.66(同1.25~2.20)だった。つまり、2hPGの高さは、全脳体積や海馬体積の萎縮などとは独立して、アルツハイマー型認知症のリスクを高める可能性が示唆された。また2hPGは、認知症全体(あらゆる原因による認知症)との関連も有意だった(IVWでのOR1.23〔1.06~1.42〕)。ただし血管性認知症との関連は非有意だった。 2hPG以外に検討した、インスリン抵抗性、空腹時血糖値、空腹時インスリン値についてはいずれも、全脳体積、海馬体積、白質高信号病変体積との関連が見られなかった。なお、2hPGとアルツハイマー型認知症との関連の再現性をゲノムワイド関連解析(GWAS)で検討した結果、この関連は再現されなかった。 Mason氏は、「われわれの研究結果は、血糖値の全体的な管理だけでなく、特に食後の血糖値を管理することの重要性を示している。この知見は、今後のアルツハイマー型認知症予防戦略の確立に役立つのではないか」と述べている。 なお、1人の著者がアストラゼネカ社と利益相反(COI)に関する情報を開示している。

8.

米国のCOVID-19死亡数、過小評価の可能性

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック初期における米国での実際の死亡数は、公式発表よりも大幅に多かった可能性が新たな研究で示唆された。2020年から2021年にかけて、COVID-19関連死亡のうち、最大で約15万5,000人分が見逃されていた可能性が示されたという。同期間に死亡診断書に記録されたCOVID-19による死亡数は約84万人であることから、今回の推計に基づくと、関連死亡の約19%がカウントされていなかったことになる。米ミネソタ大学社会学准教授のElizabeth Wrigley-Field氏らによるこの研究の詳細は、「Science Advances」3月20日号に掲載された。 研究グループによれば、2020年3月から2021年12月にかけてのパンデミック初期には、病院内で死亡した患者のほぼ全例が新型コロナウイルスの検査を受けており、また、この期間の病院内における内因死の超過死亡数は、COVID-19による院内死亡数と概ね一致していた。これらの点を踏まえてWrigley-Field氏らは、機械学習アルゴリズムを用いて病院内で確認されたCOVID-19死亡の特徴を学習させ、そのモデルを肺炎や糖尿病など別の死因として記録された病院外死亡に適用することで、見逃されたCOVID-19による死亡数を推定した。パンデミック初期には、病院外で死亡した多くの人が新型コロナウイルスの検査を受けていなかった。 その結果、この期間におけるCOVID-19による死亡数は、公式発表では84万251人であったが、研究グループの推計では99万5,787人であった。これは、死亡数が公式発表より19%、人数にすると15万5,536人多いことに相当する。また、このような見逃された死亡が多く見られたのは、ヒスパニック系やネイティブ・アメリカン、アラスカ先住民、アジア系、黒人、アラバマ州、オクラホマ州、サウスカロライナ州などの南部および南西部の地域、さらに世帯収入が低く住民の健康状態が不良な郡であった。 専門家は、こうした差は医療アクセスの問題を反映していると指摘している。本研究には関与していない、米バージニア・コモンウェルス大学、社会・健康センターのSteven Woolf氏は、「社会的に周縁に置かれた人々は、医療にアクセスできないために、依然として不均衡に高い割合で死亡している」とAP通信に語った。 パンデミック初期には、特に病院外での検査体制が限られており、自宅で使える検査キットも普及していなかった。そのため、診断を受けることなく死亡した人もいた。また、地域によっては、死因調査を選挙で選ばれた検視官が担っているが、そうした検視官は法医学専門医と同等の訓練を受けていない場合もある。さらに、家族が死因としてCOVID-19の記載を望まなかったケースや、死後に検査が実施されなかったケースもあった。 論文の上席著者である米ボストン大学グローバルヘルス分野のAndrew Stokes氏は、「特に大都市以外では、時代遅れの死因調査制度が正確な死亡数の把握を妨げた主な要因の一つだ」と述べている。 米疾病対策センター(CDC)によると、パンデミックの発生以降、米国でのCOVID-19による死亡数は120万人を超えており、その3分の2以上が2020年と2021年に集中しているという。パンデミックによる正確な死亡数をめぐっては、オンライン上で誤情報が拡散したこともあり、過大評価か過小評価かを含めて広く議論されている。

9.

Z薬の使用と全死亡率との関係~メタ解析

 ゾルピデム、エスゾピクロン、ゾピクロン、zaleplonなどの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬であるZ薬は、世界中の不眠症患者に広く用いられている。Z薬は、ベンゾジアゼピン系薬剤よりも安全性が高いと考えられてきたが、いくつかの研究においてZ薬の副作用についての議論が巻き起こっている。韓国・慶北大学校のJi-Yeon Park氏らは、Z薬と全死因死亡率との関連性を評価するため、観察コホート研究のメタ解析を実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2006年1月23日号の報告。 2025年3月14日までに報告された観察コホート研究をPubMed、Embase、Scopusより検索し、メタ解析を実施した。研究対象集団は臨床患者であった。Z薬と全死因死亡率との関連性を評価するため、ランダム効果モデルを用いて全死因死亡率の統合ハザード比(HR)、95%信頼区間(CI)を算出した。感度分析およびサブグループ解析も実施した。 主な結果は以下のとおり。・9件のコホート研究より参加者201万8,397例をメタ解析に含めた。・Z薬の使用は、全死亡リスクの増加と有意な関連が認められた(HR:1.600、95%CI:1.027~2.491、p=0.038)。ただし、研究間の異質性は有意に高かった(I2=99.642%、p<0.001)。・感度分析では、結果の安定性が確認された(HR:1.440~1.761、各々p<0.05)。・サブグループ解析では、地域、フォローアップ期間、研究の質にかかわらず、一貫して正の相関傾向が認められた(HR:1.120~1.780)が、一部は統計的に有意ではなかった。 著者らは「本メタ解析において、Z薬の使用と全死亡率との間に正の関連が示された。しかし、研究間の異質性が非常に高いため、これらの結果の解釈には注意が必要である」としながらも「臨床医は、高リスク患者にZ薬を使用する際には注意を払うべきである」と結論付けている。

10.

若年女性で膵がん増加の兆候~日本全国データ解析

 膵がんは依然として予後不良ながんの一つであり、その発症動向の変化が注目されている。今回、日本の全国データを解析した研究で、若い女性における膵がん罹患率の上昇を示す兆候が確認された。また、高齢者では膵体尾部切除を中心に膵がんの手術件数が増加していることも明らかになった。研究は、稲毛病院整形外科の城戸優充氏、京都府立医科大学外科学教室消化器外科学部門の森村玲氏らによるもので、詳細は「Annals of Gastroenterological Surgery」に1月22日付でオンライン掲載された。 膵がんは世界的に罹患率が上昇しており、2022年には世界で約51万人が新たに診断され、がん死亡原因の上位を占めている。日本は人口10万人当たりの罹患率(粗罹患率)が世界で最も高く、2023年には男女ともにがん死亡原因の第3位となるなど、その影響は大きい。近年は若年発症例の増加も国際的に懸念されているが、日本における最新の発症動向や術式別の手術実態については、全国規模での詳細な検討が十分とはいえない。そうした中、本研究では、日本の全国規模データを用いて、近年の膵がん罹患率の推移と年齢・性別ごとの特徴、さらに術式別の手術動向について包括的に検討した。 膵がんの罹患データ(2016~2021年)は、国立がん研究センターの全国がん登録データを用いて解析した。手術件数(2016~2023年)は、厚生労働省の管理する匿名医療保険等関連情報データベース(National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups:NDB)から抽出した。膵臓は、「膵頭部(すいとうぶ)」「膵体部(すいたいぶ)」「膵尾部(すいびぶ)」の3つの部位に分けられる。膵がんの手術は、膵体尾部切除(膵体部・尾部を切除)と膵頭十二指腸切除(膵頭部や十二指腸などを切除)に分類し、さらに開腹手術と腹腔鏡手術に区分した。なお、コード定義の変更により、膵頭十二指腸切除および術式別(開腹・腹腔鏡)のデータは2020~2023年のみ取得可能であり、膵体尾部切除は2016~2023年の期間で解析した。人口10万人当たりの罹患率・手術率を算出し、ポアソン回帰分析で年間リスク比(RR)を推定した。多重比較の影響を考慮し、ボンフェローニ補正を適用した。 2016~2021年の調査期間中、日本では年間平均約4万3,000人が膵がんと診断され、症例の約8割は65歳以上であった。 年齢調整後の膵がん罹患率は、男性・女性・男女合計のいずれにおいても有意に上昇した(RR=1.007、1.016、1.011、いずれもP<0.0001)。特に10~29歳の女性では顕著な上昇がみられた(RR=1.347~1.449、いずれもP<0.0009)。 膵体尾部切除の手術率も、男性・女性・男女合計のいずれにおいても有意に増加した(RR=1.033、1.032、1.033、いずれもP<0.0001)。年齢別にみると、65~89歳の高齢者で特に増加が顕著であった(RR=1.018~1.114、いずれもP<0.0012)。膵頭十二指腸切除の手術率も2020~2023年にかけて増加したが、解析期間が短いため年次推移の統計的評価は行えなかった。 2023年の膵がん手術は計1万4,397件で、その内訳は膵頭十二指腸切除が65.6%(9,444件)、膵体尾部切除が34.4%(4,953件)であった。アプローチ別では、開腹手術が77.0%(1万1,079件)と主流で、腹腔鏡手術は23.0%(3,318件)、ロボット支援手術は8.8%(1,271件)であった。 著者らは、「日本の膵がん疫学において、若年女性での罹患増加の兆候と、高齢者での膵体尾部切除の増加という二つの変化がみられた」と述べている。若年女性については組織型の違いも含めた原因解明とハイリスク群への層別スクリーニングが、高齢者については低侵襲手術を含む外科治療体制の整備が、今後の課題として重要になるとしている。 なお、本研究の限界として、病期・組織型などの臨床情報を含まないデータの使用、コード変更に伴う解析期間の制約、異なるデータベースを用いた推定による解釈の不確実性などを挙げている。

11.

がん患者、24時間以内の死亡予測は可能か

 角膜反射の消失は、末期がん患者において24時間以内に死が差し迫っていることを示す特異的かつ臨床的に有用な徴候であることを韓国・Gyeongsang National University Changwon HospitalのSe-Il Go氏らが明らかにした。BMJ Supportive and Palliative Care誌2026年2月27日号掲載の報告。 研究者らは、末期がん患者における24時間以内の死亡を予測する上で、角膜反射の予後予測的意義を評価することを目的として前向き観察研究を実施。Gyeongsang National University Changwon Hospitalのホスピスセンターに入院し、死期が迫っている進行がん患者665例の分析を行った。訓練を受けた看護師が標準化された基準を用いて、角膜反射およびそのほかの臨死期の徴候を1日3回評価。混合効果ロジスティック回帰を用いて24時間以内の死亡予測因子を特定し、24~96時間における診断性能を検討した。 主な結果は以下のとおり。・角膜反射の消失は24時間以内の死亡と強く関連しており(オッズ比5.48、p<0.001)、24時間死亡は70.7%であった。・角膜反射の消失の特異度は85.0%、陽性的中率は70.7%といずれも高かった。・鎮静度を10段階に分けて評価するRichmond Agitation-Sedation Scale(RASS)スコアが-4(深い鎮静状態)または-5(昏睡)の患者においても角膜反射の消失は24時間死亡の有意な予測因子であり、角膜反射が消失した患者の71.2%が、反射が残存した患者の37.1%が24時間以内に死亡した。・そのほかの有意な予測因子として、末梢性チアノーゼ、酸素飽和度低下、低血圧などが認められた。 研究者らは「本研究結果は、臨死期の予後予測および意思決定への応用を裏付けるもの」としている。

12.

血栓後症候群、血管内治療が症状およびQOLを有意に改善/NEJM

 中等症または重症の血栓後症候群(PTS)および腸骨静脈閉塞を有する患者において、血管内治療は標準治療と比較し、6ヵ月後のPTS重症度を有意に軽減し健康関連QOLを改善した。ただし、出血リスクは高かった。米国・ワシントン大学のSuresh Vedantham氏らC-TRACT Trial Investigatorsが、同国29施設で実施した第III相無作為化非盲検評価者盲検比較試験「Chronic Venous Thrombosis: Relief with Adjunctive Catheter-Directed Therapy trial:C-TRACT試験」の結果を報告した。PTSは深部静脈血栓症(DVT)発症後によくみられ、下肢の重篤な症状により患者の活動性やQOLを著しく低下させることがある。血管内治療は、慢性静脈閉塞を除去でき、PTS重症度を軽減することが期待されていた。NEJM誌オンライン版2026年4月13日号掲載の報告。血栓後症候群に対する血管内治療の有効性を、6ヵ月後のPTS重症度で評価 研究グループは、中等症または重症のPTSを有し、画像診断により腸骨静脈閉塞(閉塞または50%以上の狭窄)が確認された患者を登録した。 PTSは、登録の3ヵ月以上前に発症したDVTの同側下肢における慢性静脈疾患と定義し、静脈症状により日常活動や作業能力に著しい制限が生じ、修正Venous Clinical Severity Score(VCSS)が8以上、Villalta PTSスコアが10以上、または開放性静脈性潰瘍を認める場合を中等症または重症とした。 適格患者を、血管内治療(腸骨静脈ステント留置および強化抗血栓療法)群または非血管内治療(標準治療のみ)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。両群とも標準的なPTS治療として、圧迫療法、抗凝固療法、生活指導を行い、開放性静脈性潰瘍を有する患者はエビデンスに基づくケアを行うため創傷/潰瘍ケアクリニックへ紹介された。 主要アウトカムは、無作為化後6ヵ月時のPTS重症度で、VCSS(スコア範囲:0~30、高スコアほど重症)を用いて盲検下で評価した。主要な副次アウトカムは、無作為化後6ヵ月時の患者報告によるQOLで、静脈疾患に特異的なVenous Insufficiency Epidemiological and Economic Study Quality of Life(VEINES-QOL)質問票(範囲:0~100、4~6ポイントの変化を臨床的に重要な変化と定義)、および包括的なMedical Outcomes Study 36-Item Short-Form Health Status Survey(SF-36)を用いて評価した。安全性アウトカムは、出血、静脈血栓塞栓症の再発、および死亡とした。PTS重症度は血管内治療群で有意に低下、生活の質も向上 2018年7月~2025年6月に225例が無作為化された。このうち画像検査で腸骨静脈閉塞がないことが判明した1例を除く224例(血管内治療群112例、非血管内治療群112例)が主要解析の対象集団となった。 無作為化後6ヵ月時のPTS重症度は、血管内治療群が非血管内治療群に比べて有意に低かった(平均[±SD]VCSSスコア:8.1±5.1 vs.10.0±4.9、補正後群間差:-2.0、95%信頼区間[CI]:-3.2~-0.8、p=0.001)。 VEINES-QOLスコア(平均値±標準偏差)は、6ヵ月時点で血管内治療群62.8±24.6、非血管内治療群48.6±26.7であり、血管内治療群が良好であった(補正後群間差:14.5ポイント、95%CI:9.5~19.4、p<0.001)。同様に、SF-36の身体機能スコアも血管内治療群のほうが良好であった(補正後群間差:6.1ポイント、95%CI:2.8~9.3、p<0.001)。 安全性については、出血(大出血+非大出血)は血管内治療群のほうが非血管内治療群より発現割合が有意に高く(11.6%vs.3.6%、p=0.03)、その主な要因は非大出血であった(9.8%vs.2.7%)。

13.

加齢観が健康改善に関連、高齢者の約半数で機能向上

 加齢は、身体的な衰退や認知機能の低下とイコールだと捉えられやすい。しかし新たな研究によると、高齢者でも心構え次第で歳とともに健康状態が改善するケースが少なくないことが示唆された。米イェール大学公衆衛生大学院のBecca Levy氏らが、米国健康・退職研究(Health and Retirement Study;HRS)のデータを解析して明らかにしたもので、詳細は「Geriatrics」に3月4日掲載された。 HRSは米国立加齢研究所のサポートにより、50歳以上の米国民を対象に隔年で実施されている長期追跡調査。Levy氏らの研究ではこのHRS参加者のうち、加齢に対する考え方と健康状態に関するデータに欠落のない1万1,000人以上を解析対象とした。加齢に対する考え方は、「歳を取ると役立たなくなると感じる」、「若いころと同じくらいに幸せだ」などの5項目の質問に対する同意の程度をスコア化して評価した。身体的健康状態は歩行速度で評価し、認知機能は妥当性が評価された電話による認知機能評価(Telephone Interview for Cognitive Status;TICS)にて評価した。 最長12年間の追跡で、参加者の45%が身体的健康または認知機能のいずれか、あるいはその両方で改善を示した。具体的には、身体的健康については4,638人(平均年齢74.03±6.07歳)を平均8.54±2.86年追跡し、対象者の28.00%に歩行速度の向上が認められた。認知機能については1万1,314人(同68.12±9.92歳)を平均8.04±3.27年追跡し、対象者の31.88%にTICSスコアの上昇が認められた。この結果の重要な点として、Levy氏は、「全体の平均値で評価すると、こうした改善は認められず、加齢による機能低下が示唆された。しかし、個々人の推移を見ると全く異なる変化が認められ、健康状態が改善していた高齢者がかなりの割合を占めていた」と指摘している。 また、加齢をポジティブに捉えている人は、身体的健康と認知機能の双方が改善することが多いという関連も見つかった。具体的には、加齢の捉え方のスコアが中央値を上回っている人は、スコアが中央値以下の人と比べ、交絡因子(年齢、性別、人種/民族、教育歴、婚姻状況、社会的孤立、抑うつレベル、認知症の遺伝的リスク〔APOE4〕など)を調整後、TICSスコア上昇のオッズ比(OR)が1.04(95%信頼区間1.00~1.08)であり、歩行速度の向上はOR1.09(同1.02~1.17)だった。なお、加齢に対する否定的な考え方が、記憶力や歩行速度の低下、心臓病やアルツハイマー病のリスク増大につながる可能性があることは、先行研究でも示されている。 Levy氏は、「得られた結果は、晩年になっても健康状態を改善する余地のあることを示唆している。そして、その可能性に影響を及ぼし得る加齢観は変更可能である。これらの知見は、高齢者の健康のために、個人ができることと社会的に介入すべきことの双方の可能性を開くものと言える」と総括。また研究者らは、一連の研究成果が高齢者の潜在的な回復力を活用する予防医療、リハビリテーション、健康増進プログラムの推進につながるだろうと述べている。

14.

第58回 【解説】医療機器サプライチェーンの危機:日米が直面する「透析インフラ」の脆弱性

近年、私たちの生命維持に直結する医療インフラが思わぬ形で脅威にさらされています。現在、日本とアメリカの双方で、人工透析などに不可欠な医療機器の供給危機が表面化しています。引き金となった原因は両国で異なりますが、浮き彫りになったのは「医療物資のサプライチェーンが抱える構造的な脆弱性」という共通の課題です。本稿では、日米それぞれの現状と今後の見通しについて解説していきます。中東情勢が直撃する日本現在、日本が直面しているのは、中東情勢の悪化に端を発するプラスチック原料「ナフサ」の世界的欠乏による直接的な打撃です。日本やアジアの医療機器メーカーは、製造工程において中東産のナフサに大きく依存しています。ロイター通信の報道によると、ナフサの供給不足により、国内シェアの大部分を占める医療機器メーカーのタイやベトナム工場で生産に遅れが生じ始めています1)。影響は深刻で、人工透析に使用されるチューブなどの「透析回路」は、早いもので2026年8月ごろから国内への出荷が困難になる可能性が指摘されています。また、手術用の廃液容器に至っては4月半ばで供給が途絶える見込みとされています。日本国内には約34万人(2024年末時点)の透析患者がおり、代替品の確保や調達先の多角化は待ったなしの状況です2)。 政府も危機感を強めており、高市政権下で経済産業省などがエネルギーの安定供給を含めた対応策の整理を急いでいるようです。構造的弱点が露呈した米国一方、アメリカの状況は日本とは少し異なります。アメリカでは、国内で豊富に採れる天然ガス由来の「エタン」をプラスチックの主な代替原料としているため、今回の中東情勢を起因とするナフサ不足の直接的な影響は受けていません。しかし、それならアメリカで全く問題がないのかといえば、そうではありません。アメリカもまた透析回路をはじめとする医療機器の深刻な不足にあえいでいるのです。その原因は、サプライチェーンの「極端な寡占化」と「製造拠点の偏在」という構造的な弱点にあるようです。アメリカでは、2025年初頭に主要サプライヤーの工場で発生した製造・供給トラブルの余波が現在も長引いており、FDAのリストでも血液回路が全国的な不足状態の物品に指定されています3)。 過去にも自然災害による特定工場の被災で全米の透析液が枯渇する事態が起きており、単一の企業や地域に過度に依存するリスクが恒常的に顕在化しているのです。命をつなぐインフラを守るための課題と今後の展望「原材料の海外依存(日本)」と「サプライヤーの寡占化(米国)」。原因は違いますが、一部の供給網の乱れが即座に患者の命を脅かすというリスクは日米共通です。この危機を乗り越えるため、日米の現場では使用機材の最大限の節約と、重症患者への優先使用といった運用レベルの対応が迫られています。さらに抜本的な対策として、米国腎臓学会は政府に対し、透析関連物資を自然災害や有事に備える「国家戦略備蓄」に正式に組み込むよう強く求めています4)。日本においても、今回のナフサ不足を教訓とし、調達ルートの多角化や国内製造基盤の支援、さらには重要医療物資の国家的な備蓄体制の構築が不可欠となるでしょう。グローバル化に伴い、いわば効率化されすぎてしまったサプライチェーンを、いかに強靱なものにしていくか。日米の医療現場と政府は今、大きな岐路に立たされているといえるでしょう。 1) Reuters(ロイター通信)「ナフサ供給不足に関する報道」2026年3月27日(参照日:2026年4月17日) 2) 日本透析医学会(JSDT)統計調査委員会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」日本透析医学会ホームページ(統計調査資料)(参照日:2026年4月17日) 3) U.S. Food and Drug Administration (FDA), “Disruptions in Availability of Hemodialysis Bloodlines - Letter to Health Care Providers,” 2025 Mar 14. (参照日:2026年4月17日) 4) American Society of Nephrology (ASN), “RE: CMS-1516-ANPRM-Medicare Program; Ensuring Safety Through Domestic Security with Made in America Personal Protective Equipment (PPE) and Essential Medicine Procurement in Medicare Participating Hospitals” (comment letter), 2026 Mar 30.(参照日:2026年4月17日)

15.

認知症の病理を叩く「表街道」、脳を育む「援護射撃」――Lancetの14の危険因子を読み解く(その3)【外来で役立つ!認知症Topics】第40回

前回、私はLancet誌の提唱する認知症の修正可能な14の危険因子1)を、「疾患・障害リスク」と「生活・環境リスク」とに分ける考え方を述べた。前者は従来のアミロイド仮説を軸に、そこから派生した慢性炎症や抗酸化などの病理から説明しやすいもので、糖尿病や高LDLコレステロール(LDL-C)が代表的だ。これはいわば、アルツハイマー病の病理進行をくい止めようという「表街道」の予防法である。一方、後者はアミロイド仮説とは異なり、脳内ネットワークや認知予備能といった考え方で説明される。健常な神経細胞を増やす、あるいは減少させないという、側面からの「援護射撃」ともいえる。この考え方をイラストに示した。以下に示す個々の危険因子について、それが「表街道」と「援護射撃」のどちらに属するかを述べていく。画像を拡大する筆者作成若年期の教育:脳の「控え選手」を育てる援護射撃若年期の危険因子だが、これは「教育」が中心となる。ここで作る大脳の基礎力が十分でなかったとしても、後年これを育み続けることが予防につながると考えればいい。この考え方の基本は、以前から知られる「認知予備能」に関連する。ざっくり言えば、人は生まれ持った脳細胞の一部しか使わないうちに一生を終える。これまで使ってこなかった「控え選手の神経細胞(予備能)」に働きかけるのである。具体的な方法としては、新たな社会交流が勧められる。とくにインターネットリテラシーが低い人こそ、ここで情報を得る習慣を持てば大きな成果が期待できる。教育は、まさに一生続く「援護射撃」なのである。中年期の危険因子:再発とうっかり事故を防ぐ表街道中年期の危険因子のトップは、第38回で述べたとおり難聴と高LDL-Cだが、続いて「うつ病」に触れたい。うつ病経験者は、そうでない者と比べ認知症の危険性が2倍とされる。背景には、神経炎症や、脳由来栄養因子を介した神経の可塑性障害、コルチゾール過剰分泌による海馬体積の減少説などがある。臨床的に大切なのは、うつ病は何度も繰り返しやすく、その再発自体が認知症発症の危険性を高める点だ。だからこそ再発予防が重要であり、主治医と共にフォローを欠かさないことが、病理を抑える「表街道」の対策となる。次に「頭部外傷」については、中等度のもので認知症リスクを2.3倍、重度で4~4.5倍にも増大させる2)。ボクシングなどによる頭部外傷が、50年以上も後にリスクとして現れる。なお高齢者では「転落が脳挫傷原因の3分の2以上」とされるだけに、住環境への配慮が重要になる。照明の改善、手すりやレールの設置、段差の除去や滑りにくい床への改善などが望ましい。身体機能面からは、運動機能の維持、視力や聴力の調整も重要となる。そして、単純ながら基本となるのが「適切な履物」の着用だ。屋内でスリッパなど履かないほうがよい人は多い。これもまた、脳への物理的ダメージを回避する「表街道」の予防といえる。運動不足:座りっぱなしを解消する援護射撃運動不足という危険因子は、従来からいわれてきた運動の予防効果の裏返しである。最近は、単に「たくさん運動すればよい」というより、「身体活動をしない者が運動すれば効果が生まれる」という考え方に変化してきた。最近、老年医学の分野では「座りがちな」という意味の英語で「sedentary」という言葉をよく見かける。そこですべき運動は、有酸素運動の一辺倒ではなく、レジスタンス運動やバランス運動を組み合わせることが重要だ。腰や膝の障害で運動が難しい人の場合でも、皿洗いや掃除、洗濯物干しなどの家事労働を長時間行えば、運動不足をかなり補える。こうした活動の積み重ねが、脳を支える「援護射撃」となる。糖尿病と高血圧:血管から病理を断つ表街道の王道糖尿病は認知症リスクを60%高めるとされるが、アルツハイマー病以上に、血管性認知症の危険性を高める。生物学的メカニズムとしては、直接的な血管障害や神経障害のほかにインスリン分解酵素(IDE)の影響が指摘されている。インスリンとアミロイドβ(Aβ)は同じIDEで分解されるため、高インスリン血症になるとAβの分解が滞り、蓄積していくと考えられる。なお低血糖発作は深刻な危険因子だと強調されている。食事による対応では、地中海食、そこに減塩を超えたダッシュ食、低炭水化物が推奨される。運動では、有酸素運動、レジスタンス運動、バランス運動を組み合わせた「表街道」の包括的な管理が求められる。そして、高血圧こそ認知症発症における最重要な修正可能リスクだろう。40~65歳の中年期の高血圧は、認知症リスクを61~69%増加させるが、降圧薬による治療により、認知症全体で12%、アルツハイマー病で16%のリスクを低減できるとされる3)。高血圧が認知症の危険因子となる理由として複数の説がある。まず脳血管損傷経路、また酸化ストレスと神経炎症経路、血液脳関門破壊経路、さらに脳構造変化と脳萎縮などである。これらをみると、アルツハイマー病の病理が形成されていくプロセスに関わる仮説の多くが高血圧と関連すると改めてわかる。治療面では、とくに血流の改善と脳構造の保護が重要である。わが国のガイドラインでは、年齢別、個人差を考慮した段階的な血圧管理を推奨している。また、いわゆる白衣高血圧の多さを考慮してか、最近では家庭用血圧計における継続的な測定結果が重視される。診察室での血圧よりも、自宅でリラックスして測定した値こそ「真の値」と考えるからだ。『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、全年齢の降圧目標が、「診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満」に定められている4)。なお言うまでもないが、血圧コントロールのみならず糖尿病や脂質異常症などの関連疾患の包括的な管理を通して、大きな予防効果が期待できる。これも「表街道」の予防法だ。認知症の修正可能な危険因子に関する今回の解説は以上である。14の危険因子のうちあと6つ、主にライフスタイルに関連するものが残っているが、これについては次回に述べることにしよう。参考文献・参考サイト1)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.2)Gottlieb S. Head injury doubles the risk of Alzheimer's disease. BMJ. 2000;321:1100.3)Ding J, et al. Antihypertensive medications and risk for incident dementia and Alzheimer's disease: a meta-analysis of individual participant data from prospective cohort studies. Lancet Neurol. 2020;19:61-70.4)日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会編. 高血圧管理・治療ガイドライン2025. ライフサイエンス出版; 2025.

16.

第315回 キノコが作る抗酸化物質L-エルゴチオネインが生理痛を緩和

キノコ(真菌)が作る硫黄含有アミノ酸の類いのL-エルゴチオネイン(L-ergothioneine、以下「EGT」)が安全に女性の生理痛を和らげました1,2)。EGTは抗酸化作用を担うことで知られます。有機カチオン輸送体のOCTN1を介して細胞内に取り込まれ、蓄積し、フリーラジカルを捕らえてDNAやタンパク質が酸化で傷つかないようにする働きを有します。生理痛を引き起こす原発性月経困難症(PD)は若年女性に最も多い婦人科疾患で、骨盤に明らかな病変がないにもかかわらず月経の直前や最中に生じる下腹部痛を特徴とします。PDの有病率は高ければ9割を超え、患者の生きやすさ、学業、仕事の生産性を大きく損なわせます。子宮の過剰収縮、虚血、低酸素を招く子宮内膜プロスタグランジンの過剰生成がPDの根源とされ、それらの虚血が炎症反応と重度の酸化ストレスを招くようです。抗酸化物質の枯渇と並行して活性酸素種(ROS)や脂質過酸化指標が増えることは生理痛の重症度と密接に関連します。そこで中国の南京市のGene III Biotechnology社のGuohua Xiao氏らは抗酸化物質のEGTに白羽の矢を立て、その生理痛緩和効果を調べる臨床試験を実施しました。試験にはPDと診断済みで、先立つ1ヵ月間に鎮痛薬や漢方薬などのPD治療を試みたことがない18~30歳の女性40例が参加しました。半数の20例は120mgのEGTを3回の月経の間に毎日服用し、あとの半数の20例にはプラセボが与えられ、生理痛のピークの推移が視覚アナログ尺度(Visual Analog Scale:VAS)で測定されました。EGT投与群のVASはベースライン時に4.8で、その後の1、2、3回目の生理時にはそれぞれ4.1、3.6、2.3に有意に下がっていました。プラセボ群では有意なVAS低下は認められませんでした。EGTは細胞に蓄積することから投与を続けるほどより有効なようです。実際、3回目の生理のときのEGT投与のVAS低下はプラセボを有意に上回りました。今回の試験で血中の炎症バイオマーカーはEGT群とプラセボ群で差がありませんでした。炎症を減らしてプロスタグランジンの生成を阻止するイブプロフェンなどの昔ながらの鎮痛薬が今のところ生理痛の緩和に使うべきとされていますが、どうやらEGTはそれら鎮痛薬が手を出す馴染みの炎症経路とは独立した細胞保護経路を介して鎮痛効果を発揮するのかもしれません。EGTは全身の炎症反応の誘発に至るより前に細胞ストレス発生源のフリーラジカルを排除してしまうらしいとXiao氏は言っています2)。Xiao氏は多施設でのより大規模な試験を計画しています。今回の試験で有害事象は幸いにも認められませんでしたが、大規模試験を実施すればEGTの効果を支える仕組みのみならず、安全性もより正確に把握できそうです。Xiao氏が年初に報告した別の試験では、肝機能異常を示す被験者の肝機能、体調、睡眠の指標がEGTで改善しています3)。2024年に報告された無作為化試験では軽度認知障害の高齢者の記憶/学習能力を改善しうるEGTの効果が示されており4)、その取り柄は生理痛緩和にとどまらず幅広いようです。参考1)Guo C, et al. Efficacy and Safety of Oral L-Ergothioneine Supplementation in Primary Dysmenorrhea: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Clinical Trial. medRxiv. 2026 Mar 27.2)Antioxidant in mushrooms may target uterus cells to ease period pain / NewScientist3)Guo C, et al. Hepatoprotective Efficacy of GeneIII L-Ergothioneine Capsules: A Self-Controlled Clinical Trial. medRxiv. 2026 Jan 2.4)Yau YF, et al. J Alzheimers Dis. 2024;102:841-854.

17.

次世代の経口TYK2阻害薬が乾癬症状を大幅に改善

 重症の尋常性乾癬患者は、効果があまり高くないが服用しやすい内服薬か、効果は極めて高いが手間のかかる注射製剤による治療かのいずれかを選ばざるを得ないことが多い。しかし、こうしたトレードオフは今後、変わる可能性がある。中等症から重症の尋常性乾癬患者約1,800人を対象とした2件の第3相臨床試験で、次世代のチロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬Zasocitinib(ザソシチニブ)の1日1回の経口投与が、これまで注射製剤でしか期待できなかったレベルの皮膚の改善をもたらす可能性が示された。この研究結果は、米国皮膚科学会(AAD)年次総会(2026 AAD Annual Meeting、3月27〜31日、米デンバー)で発表された。 尋常性乾癬は、皮膚細胞の増殖が過剰に速くなることで、厚く盛り上がった赤い発疹と銀白色の鱗屑を形成する疾患であり、増悪時にはかゆみや灼熱感を伴う。一方、武田薬品工業株式会社が開発を主導しているZasocitinibは現在、最終段階の試験中であり、米食品医薬品局(FDA)の承認は得られていない。 この2件の国際多施設共同ランダム化比較試験では、21カ国の中等症から重症の尋常性乾癬の成人患者(各試験の対象者数は693人および1,108人)を対象に、Zasocitinibの有効性と安全性および忍容性が評価された。対象者は、Zasocitinib、プラセボ、または実薬対照のアプレミラストを投与する群にランダムに割り付けられた。 その結果、16週時点で医師による静的総合評価(sPGA)のスコア0(消失)/1(ほぼ消失)を達成した患者の割合は、Zasocitinib群で71.4%および69.2%だったのに対し、プラセボ群では10.7%および12.6%、アプレミラスト群では32.1%および29.7%であり、Zasocitinib群で有意に高かった。皮膚症状の完全な消失(sPGAスコア0)の達成率についても、Zasocitinib群で有意に高かった(Zasocitinib群:39.9%および33.7%、プラセボ群:0.7%および1.4%、アプレミラスト群8.0%および6.5%)。 また、16週時点で、乾癬の面積と重症度の指数であるPASI(Psoriasis Area and Severity Index)による評価でPASI 90(ベースラインから90%以上の改善)を達成した割合は、Zasocitinib群で61.3%および51.9%であり、プラセボ群での5.0%および4.0%、アプレミラスト群での16.8%および15.9%と比較して有意に高かった。 さらに、40週時点でPASI 75、PASI 90またはsPGA 0/1を達成し、試験期間を通じてZasocitinib投与を継続した患者の90%以上が、60週時点でもその効果を維持していた。安全性については、新たな懸念は認められなかった。最も一般的な副作用は、風邪のような上気道感染症など、比較的軽度のものであった。また、約6.5%の患者でにきび(ざ瘡)が報告されたが、これはTYK2阻害薬と呼ばれるこの薬剤クラスの既知の副作用である。 主任研究者であるカナダ・オンタリオ州の皮膚科医のMelinda Gooderham氏は、「乾癬治療の目標は皮膚症状の消失またはほぼ消失であり、これまでは主に注射製剤によって達成されてきた。今回の試験の結果は、1日1回の内服薬でも迅速かつ持続的な症状消失効果が得られる可能性を示した」と述べている。 武田薬品工業株式会社の消化器・炎症領域責任者でシニア・バイスプレジデントのChinweike Ukomadu氏は、「本試験の結果は、高選択的なTYK2阻害が中等症から重症の尋常性乾癬患者に対し、皮膚症状の消失、またはほぼ消失という治療効果をもたらす可能性を示している」と述べている。同社は、今後1年以内にFDAへの承認申請を行う予定である。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

18.

緩和ケア:オピオイド過量徴候【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第8回

「緩和ケア」はがん診療を行う上で重要な役割を担っています。とくにがん患者の約70%が痛みを経験するといわれており、がん疼痛管理においてオピオイドは欠かせない薬剤です。しかし、治療経過の中で痛みの原因そのものが軽減した場合や、全身状態の変化により薬剤の代謝や排泄が変化した場合には、オピオイドが過量となることがあります。オピオイド使用中の患者さんやご家族から、「眠気が強い」「様子がいつもと違う」といった相談が、かかりつけ医に寄せられることも少なくありません。このような場面で、「外来での対応にとどめてよいのか」「病院への相談や紹介が必要なのか」と判断に迷うことも多いと思います。今回は、オピオイド過量が疑われる場面における評価のポイントと対応について、症例を通して整理します。【症例1】70歳、男性主訴悪心、嘔吐、眠気病歴進行胃がん(StageIV)に対して緩和的化学療法を実施中。初診時より心窩部痛を自覚しており、オキシコドンを使用していた。1ヵ月前のCTで原発巣の縮小を指摘されていた。1週前から日中も寝て過ごすことが多くなり、悪心のため食事摂取量も低下していた。昨日より嘔吐も出現したため、家族に連れられてかかvりつけ医(クリニック)を受診。診察所見呼吸数12回/分、瞳孔2.5mm/2.5mm、眠気が強い様子ではあるが、意思疎通は問題なく可能。発熱なし、腹部圧痛なし、心窩部の持続痛なし、腸蠕動音正常、食事摂取割合3割程度。排便は毎日あり、普通便。内服ロキソプロフェン60mg 3錠 分3、アセトアミノフェン500mg 3錠 分3、オキシコドン徐放錠60mg/日、オキシコドン散10mg/回(最近は使用せず)【症例2】58歳、女性主訴尿量減少、傾眠病歴進行直腸がん術後再発に対して緩和的化学療法を実施中。以前から骨盤内病変による臀部痛、肛門部痛があり、モルヒネ製剤を使用していた。3日前からストマ排泄量が増加し、口渇感と尿量減少を自覚していた。本日朝より傾眠傾向となり、「声をかけたら返答はあるがすぐに寝入ってしまう」と家族がかかりつけ医(クリニック)に相談。診察所見話しかけると覚醒し、短文での簡単なコミュニケーションは可能だが、刺激がなくなるとすぐに入眠する。呼吸数8回/分、瞳孔1.5mm/1.5mm。抗がん剤10日前にイリノテカンを含む治療を実施。内服ロキソプロフェン60mg 3錠 分3、モルヒネ徐放性剤120mg/日、モルヒネ速放性製剤ステップ1 オピオイド過量徴候の評価オピオイド過量となりやすい状況オピオイド過量は、必ずしも増量時に起こるわけではありません。外来で評価する際には、まず過量となりやすい背景がないかを整理しておくことが重要です。不適切なベース設定疼痛評価が十分でないまま増量が続いている場合全身状態の変化脱水、肝機能障害、腎機能障害により、オピオイドの代謝・排泄が低下している場合痛みの大きな変化がん治療や神経ブロックなどにより、痛みが大幅に軽減した場合代謝産物の蓄積腎機能障害がある、または急激に進行した場合(オピオイド代謝産物が蓄積しやすい)このような状況がある場合には、「投与量が変わっていない」ことだけで過量を否定しないことが重要です。必ず確認したい3つのポイントオピオイド過量を疑う際には、以下の3点を必ず確認します。(1)眠気(傾眠)眠気が強くなっていないか、呼びかけへの反応が鈍くなっていないかを確認します。刺激がなくなるとすぐに入眠してしまう場合は注意が必要です。家族からの「最近よく寝ている」「反応が遅い」といった訴えは重要なサインになります。(2)呼吸抑制呼吸数は必ず実測します。呼吸数の低下は、オピオイド過量を示唆する最も重要な所見の1つです。短時間でも数えて確認することが望まれます。(3)縮瞳縮瞳はオピオイド過量の典型的な所見です。他の症状と併せて評価することで、判断の助けになります。上記に加えて、他のオピオイド関連副作用(悪心・嘔吐、便秘、せん妄など)が悪化していないかも確認します。これらの副作用が目立ってきている場合も、過量を疑うきっかけとなります。ステップ2 対応は?では、冒頭の患者さんの対応を考えてみましょう。症例1の場合、画像上で原発巣の縮小が確認されており、レスキュー薬の使用もないことから、痛みの原因そのものが軽減している可能性があり、相対的オピオイド過量が疑われます。眠気や悪心といった所見はみられるものの、意思疎通は可能で呼吸数も保たれており、急速な悪化は認められていません。このような場合には、外来での対応が可能です。対応としては、オピオイドの漸減を行います(表1)。表1 オピオイドの減量方法画像を拡大するオピオイド退薬症候(表2)の出現を避けるため、急激な減量は避け、症状を確認しながら慎重に調整することが重要です。減量後は、数日以内の再診や電話でのフォローを行い、痛みの再燃や副作用、退薬徴候の出現がないかを確認します。経過の中で判断に迷う場合には、病院側と情報を共有しながら対応することで、安全に調整を進めることができます。表2 オピオイド退薬症候画像を拡大する症例2の場合、傾眠の進行と呼吸数の低下が認められ、オピオイド過量による中枢神経抑制が強く疑われます。加えて、下痢による脱水や尿量減少を背景に、腎機能障害が急速に進行している可能性があり、短時間で状態が悪化するリスクが高い状況です。このような場合には、外来での減量や経過観察にとどまらず、速やかに病院へ相談・紹介することが適切です。呼吸抑制や意識障害が進行している可能性があるため、ナロキソンによる拮抗や注射製剤への切り替えを含めた速やかなオピオイド用量調整が必要となることがあり、病院での対応が望まれます。外来では、オピオイドを大きく調整する判断は避け、呼吸数や意識状態、脱水や尿量減少といった背景因子を整理したうえで、病院側に情報を共有します。早期に連携することで、重篤化を防ぐことが重要です。まとめオピオイド過量は、増量時だけでなく、痛みの軽減や全身状態の変化をきっかけに生じることがあります。外来では、まず眠気(傾眠)、呼吸数、縮瞳の3点を確認し、急な変化がないかを評価することが重要です。状態が安定している場合には、かかりつけ医での慎重な減量や経過観察が可能な一方、呼吸抑制や意識障害を伴う場合には、外来で完結させず速やかに病院へ相談する判断が求められます。日常診療での気付きを共有しながら連携して対応することが、安全ながん疼痛管理につながります。1)Isaac T, et al. Pain Res Manag. 2012;17:347-352.2)Snijders RAH, et al. Cancers(Basel). 2023;15:591.3)World Health Organization. WHO guidelines for the pharmacological and radiotherapeutic management of cancer pain in adults and adolescents. Geneva: World Health Organization;2018.4)日本緩和医療学会編. がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版. 金原出版;2020.講師紹介

19.

マルチビタミン・ミネラルが生物学的老化の進行をわずかに抑制か

 毎日マルチビタミン・ミネラル(MVM)を摂取することで得られる健康への効果は、老化の進み方にも及ぶ可能性があるようだ。新たな研究において、MVMを2年間摂取した高齢者では、生物学的老化における「wear and tear(体や遺伝子に蓄積していく摩耗や損耗)」の進行が遅くなる傾向が認められた。この効果は、研究開始時点ですでに老化が加速していた高齢者において顕著だったという。米マス・ジェネラル・ブリガムで予防医学部門副部長を務めるHoward Sesso氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に3月9日掲載された。 Sesso氏は、「現在、人々の関心は、単に長生きすることだけではなく、より良く生きることにも向けられている。MVMの摂取に生物学的老化の指標と関連する利益があることを示した本研究結果は、非常に興味深い。また、より健康で質の高い老化に寄与する、身近で安全な介入法をさらに探るための扉を開く結果でもある」とニュースリリースで述べた。 生物学的老化の検査では、日常生活による体の「wear and tear」が遺伝子、特にDNAメチル化に及ぼす影響を評価し、それに基づき生物学的年齢を推定する。生物学的年齢は、体の状態が暦年齢より若いか老いているかを示す指標である。 今回の研究では、958人(平均年齢70.2歳、女性50.3%)を対象に、MVMまたはココアから抽出されたフラバノール(500mg/日、以下、フラバノール)の摂取がDNAメチル化に基づく生物学的老化指標へ与える影響を検討した。対象者は、1)フラバノールとMVM、2)フラバノールとMVMプラセボ、3)フラバノールプラセボとMVM、4)フラバノールプラセボとMVMプラセボを摂取する群にランダムに割り付けられた。2年に及ぶ試験期間中に、研究グループは5種類のエピジェネティッククロックを用いて生物学的年齢を繰り返し評価した。 その結果、MVMの摂取は、第2世代のエピジェネティッククロック(PCPhenoAge、PCGrimAge)で、生物学的老化の進行を有意に抑制した。この効果は、試験開始時に生物学的老化が加速していた人で、より大きかった。第1世代の老化指標(PCHorvath、PCHannum)や老化速度を示すDunedinPACEでは、プラセボ群と比べて生物学的老化の進行速度を抑制する傾向は認められたものの、統計学的な有意差は認められなかった。一方、フラバノールの摂取は、いずれの生物学的老化指標にも影響を及ぼさなかった。 論文の共著者である米オーガスタ大学ジョージア医科大学内ジョージア予防研究所所長のYanbin Dong氏は、「今回検討された5種類のエピジェネティッククロックに加え、今後追加される指標を用いても、同様の生物学的老化の遅延が試験終了後も持続するのかを明らかにするため、追跡研究を計画している」と述べている。 また研究グループは、MVMがなぜ老化の進行を遅らせ得るのかについて解明するためにさらなる研究が必要だとしている。Sesso氏は、「多くの人が、必ずしも具体的な利益を理解しないままMVMを摂取している。したがって、その潜在的な健康効果に関する知見は、できるだけ多く得られることが望ましい」と語っている。

20.

体内CAR-T細胞生成による多発性骨髄腫治療、ESO-T01の第I相試験結果/Nat Med

 体内でのCAR-T細胞の生成は、体外培養やリンパ球除去を省略できるため、細胞療法へのアクセスを簡素化・迅速化する可能性がある。今回、再発・難治性多発性骨髄腫の成人患者を対象に、体内でCAR-T細胞を生成するレンチウイルスベクターであるESO-T01の安全性と忍容性を評価した第I相試験の結果を、中国・Huazhong University of Science and TechnologyのNing An氏らがNature Medicine誌オンライン版2026年3月25日号に報告した。 ESO-T01は、ナノボディ指向性の免疫遮蔽レンチウイルスベクターで、ヒト化抗B細胞成熟抗原(BCMA)CARをコードしている。本試験では、白血球アフェレーシス、体外培養、リンパ球除去化学療法を実施せずに、0.2×109形質導入単位を静脈内に単回投与した。前治療歴の多い男性患者5例(治療ライン中央値:3)が連続して登録され、追跡期間中央値は6.0ヵ月であった。主要評価項目は安全性、忍容性、副次評価項目は有効性、薬物動態、薬力学などであった。 主な結果は以下のとおり。・全例でGrade3以上の有害事象が認められた。・サイトカイン放出症候群が4例(Grade3が3例、Geade2が1例)に認められ、副腎皮質ステロイド、トシリズマブ、支持療法で管理された。・最も多かった毒性は一過性の血球減少および可逆的な肝酵素値の上昇で、Grade2の感染症が3例に認められた。・Grade1の免疫エフェクター細胞関連神経毒性が1例に認められ、骨髄外病変に関連する脊髄圧迫により死亡した。・5例中4例で奏効が得られ、うち3例は厳格な完全寛解であった。・評価可能な奏効例(4例)すべてで、60日目までに微小残存病変陰性(10-5)が確認された。

検索結果 合計:4881件 表示位置:1 - 20