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高用量不活化インフルエンザワクチン(HD-IIV)は、標準用量不活化インフルエンザワクチン(SD-IIV)と比較して、高齢者におけるインフルエンザまたは肺炎による入院に対して優れた予防効果を示すとともに、心肺疾患による入院、検査で確定したインフルエンザによる入院、全原因による入院の発生率も減少させることが明らかにされた。デンマーク・Copenhagen University Hospital-Herlev and GentofteのNiklas Dyrby Johansen氏らDANFLU-2 Study Group and GALFLU Trial Teamが、2試験の統合解析である「FLUNITY-HD」の結果で報告した。Lancet誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。方法論的に統一された2つの試験の統合解析 FLUNITY-HDは、HD-IIVとSD-IIVを比較する方法論的に統一された2つの実践的なレジストリベースの実薬対照無作為化試験(DANFLU-2、GALFLU)の、事前に規定された個人レベルのデータの統合解析であり、一般化可能性の向上とともに、高齢者における重度の臨床アウトカムに対する2つのワクチンの相対的ワクチン有効率(relative vaccine effectiveness:rVE)の評価を目的とした。 DANFLU-2試験は65歳以上を対象とし、2022~23年、2023~24年、2024~25年のインフルエンザ流行期にデンマークで、GALFLU試験は65~79歳を対象とし、2023~24年と2024~25年の流行期にスペインのガリシアで行われた。 両試験では、参加者をHD-IIV(1株当たり60μgのヘマグルチニン[HA]抗原を含む)またはSD-IIV(同15μg)の接種を受ける群に無作為に割り付け、各流行期のワクチン接種後14日目~翌年5月31日に発生したエンドポイントについて追跡調査した。主要エンドポイントは、インフルエンザまたは肺炎による入院であった。主要エンドポイントが有意に優れ、全死因死亡、重篤な有害事象は同程度 46万6,320例(HD-IIV群23万3,311例、SD-IIV群23万3,009例)を解析の対象とした。全体の平均年齢は73.3(SD 5.4)歳、22万3,681例(48.0%)が女性、24万2,639例(52.0%)が男性で、22万8,125例(48.9%)が少なくとも1つの慢性疾患を有していた。 主要エンドポイントは、SD-IIV群で1,437例(0.62%)に発生したのに対し、HD-IIV群では1,312例(0.56%)と有意に低い値を示した(rVE:8.8%、95%信頼区間[CI]:1.7~15.5、片側p=0.0082)。 HD-IIV群では、心肺疾患による入院(HD-IIV群4,720例[2.02%]vs.SD-IIV群5,033例[2.16%]、rVE:6.3%、95%CI:2.5~10.0、p=0.0006)、検査で確定したインフルエンザによる入院(249例[0.11%]vs.365例[0.16%]、31.9%、19.7~42.2、p<0.0001)、全原因による入院(1万9,921例[8.54%]vs.2万348例[8.73%]、2.2%、0.3~4.1、p=0.012)の発生率が、いずれも有意に優れた。 全死因死亡の発生率は両群で同程度であった(HD-IIV群1,421例[0.61%]vs.SD-IIV群1,437例[0.62%]、rVE:1.2%、95%CI:-6.3~8.3、p=0.38)。また、国際疾病分類第10版(ICD-10)の分類コードによるインフルエンザ関連入院は、それぞれ164例(0.07%)および271例(0.12%)(rVE:39.6%、95%CI:26.4~50.5)、肺炎による入院は、1,161例(0.50%)および1,187例(0.51%)(2.3%、-6.0~10.0)で発生した。 重篤な有害事象の発生は両群で同程度だった(HD-IIV群1万6,032件vs.SD-IIV群1万5,857件)。公衆衛生上、大きな利益をもたらす可能性 全原因による入院1件の予防に要するHD-IIV接種の必要数は515例(95%CI:278~3,929)と推定され、SD-IIVからHD-IIVへの単純な切り替えにより、医療システムにおけるインフルエンザの負担を大幅に軽減できると考えられた。 著者は、「本研究は、従来のワクチン試験では通常評価が困難なきわめて重度のアウトカムについて、十分な検出力を持つ無作為化された評価を可能にした」「インフルエンザのワクチン接種は適応範囲が広いことを考慮すると、高齢者に特化して開発されたHD-IIVの導入は公衆衛生上、大きな利益をもたらす可能性がある」としている。