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65歳を過ぎてからの予防でも遅くはない! Lancetの14の危険因子を読み解く(中編)【外来で役立つ!認知症Topics】第39回

前回に続き、今回もLancet誌が掲げる認知症の修正可能な危険因子(リスクファクター)を扱う1)。当初は、前回解説した「難聴」と「高LDLコレステロール(LDL-C)」以外の12因子について個々に述べる予定であったが、その前に筆者自身、見落としがあると反省している。改めて注意喚起すべきは、これらはあくまで「認知症」の危険因子であって、必ずしも「アルツハイマー病(AD)」のみを指すものではないことだ。認知症の危険因子は70以上に及ぶとよく言われるが、示された14の危険因子がすべての認知症原因疾患(AD、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、その他)に当てはまるとは考え難い。一方で世界的に見ても、認知症の3分の2はADが占める。だから実際には、広く認知症全般に対する危険因子を論じているはずが、無意識に「ADの危険因子」として捉えてしまいがちだ。実際に、関係論文を読み込んでみても、こうした分野の知見の大部分はADに関するものであり、それ以外では血管性認知症とレビー小体型認知症に関するものがわずかにあるに過ぎない。たとえば血管性認知症については高血圧と糖尿病などが該当し、レビー小体型認知症なら大気汚染のPM2.5だろうか。いずれにせよ、認知症の危険因子を語るうえでは、ADに関わるものが主体になっている。こうした背景を踏まえ、危険因子とその対策を考えるうえで、基本でありながら見失いがちな「3つの視点」を整理しておきたい。ライフステージに沿った病理の段階を理解するまずLancetによる報告の1つの特徴は、危険因子を年代別に分けていることである。筆者は、これが「若年期・中年期・老年期」の3段階に分けられているのは、ADの発症から進行という病理の段階に沿って危険因子を説明したいからではないかと思う。その段階とは、「発病以前・発病の芽生え・発病前夜」である。1)若年期(発病以前):若年期の教育が、脳の神経回路や「認知予備能」という脳の骨格を作る。つまり大脳の基礎力がこの時期に形成されるわけだ。そして後年、これを維持し育てていくことが予防につながると考えればいいだろう。2)中年期(発病の芽生え):中年期は脳内でアミロイドの沈着が始まるという意味で、AD脳の芽生えの時期だと考えられる。この時期の危険因子では、通称「悪玉コレステロール」のLDL-Cや難聴、糖尿病などの疾病や障害が主体である。これらは中年期に発症しやすくAD病理の悪化を促進させるため、この時期に「悪の芽」を摘んでおくことが重要だ。3)老年期(発症前夜):老年期の危険因子である孤独や大気汚染、視力低下などは、発症の準備がほぼ整ったステージにおける「とどめの一押し」になりうる。これら3つの危険因子は、いずれもアミロイド仮説との直接的な関係は薄いかもしれないが、むしろ脳の衰弱ぶりを露呈させてしまう「最後の悪役」とみなすべきだろう。こうした要因はこれら3つに限らない。たとえば、せん妄や大腿骨頸部骨折、さらに入院など生活の場の変化といった要因もまた、認知症発症のとどめの一押しだったと経験された読者も多いだろう。画像を拡大する「疾患・障害」と「生活・環境」に分けて考える14の危険因子は、大きく2つのグループに分類できる。一つは、「疾患・障害リスク」である。糖尿病やLDL-Cが代表的で、これらは従来のアミロイド仮説を軸に、そこから派生した慢性炎症や抗酸化、また血管脳関門の観点から説明しやすい。もう一つは、「生活・環境リスク」だ。アミロイド仮説では説明し難いものである。上記の「教育」のように、若年期に基礎が作られた脳内ネットワーク・認知予備能といった別の考え方で説明される傾向がある。このように分類する理由を、次のように換言することもできるだろう。つまり前者の危険因子に注目することで、ADという病気の進行プロセスをくい止めようという表街道の予防法があることがわかる。また後者へ注目すれば、健常な神経細胞を増やす、あるいは減少させないという狙いの予防法もあるとわかる。前者が表街道なら、後者は側面からの援護射撃と例えられるだろう。65歳を過ぎてからの「予防」の留意点以上を踏まえて、65歳以上で現在は認知症ではない人を想定して、危険因子と予防を説明する際の留意点を述べたい。まず伝えたいのは、「若年期・中年期の危険因子は、老年期に入ったら無関係になるわけではない」ということだ。たとえば、若い頃の教育が不十分だったとしても、「生涯学習」の言葉どおり、人生を通して学び続ける姿勢は脳の維持につながるはずだ。この考え方は、中年期の危険因子の大半、とくに糖尿病や高血圧といった生活習慣病の管理にも当てはまる。一方で、こうした「老年期からの予防でも遅くはない」という考え方では難しい危険因子もある。その代表は「頭部外傷」だろう。というのは、過去の頭部外傷がもたらした脳へのダメージを癒したり進行を阻止させたりする確たる方法は、今のところなさそうだからである。実際、これまで調べた範囲では、頭部外傷という危険因子への対応の多くは、これからの転倒・転落を防ぐための方法であった。再発防止がポイントという意味で、「うつ病」への対応もそれに似ているかもしれない。最後に、老年期特有の因子として、「孤独」「大気汚染」「視力低下」がある。具体的には次回述べるが、これらは上記の「過去の蓄積」の危険因子とは異なり、「今現在の問題」である。実際の対応がそう容易だとも思われないが、これらへの備えを一念発起して始めるのに遅すぎるということはない。今からでも着手できるという意味で、最も重要かもしれない。参考文献1)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.

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爪白癬治療薬の推奨度に変化「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」

 新たな白癬菌抗原キットの保険収載、爪白癬に対する経口抗真菌薬のエビデンスの蓄積、耐性株の出現などを背景に、6年ぶりの改訂版となる「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」が2025年12月に公開された。ガイドライン策定委員会の委員長を務めた福田 知雄氏(埼玉医科大学総合医療センター)に、改訂のポイントと実臨床での活用について話を聞いた。足白癬・爪白癬の患者数は70代にピーク、80代以上の患者が増加 現在、日本人の7人に1人が足白癬、13人に1人が爪白癬に罹患していると推測される。このデータは16年ぶりに実施された足白癬・爪白癬の潜在罹患率調査(Foot Check 2023)1)によるもので、前回調査(Foot Check 2007)と比較すると減少傾向にある。この減少については、2023年の調査がより厳しい確定診断の条件を課していたことによる影響、新規抗真菌薬の治療効果により潜在罹患率が減少した可能性が考えられるという。 また、5年ごとに実施される全国調査の最新結果(2021年)2)では、足白癬・爪白癬の患者数はともに70代にピークがみられ、80代以上の足白癬患者は前回調査と比較して12.1%から16.7%に、爪白癬患者は17.6%から21.9%へ増加している。福田氏は、同調査結果のこれまでの経年変化をみても、足白癬・爪白癬ともに患者の高齢化傾向が続いていると指摘した。新たな白癬菌抗原キットの使いどころ 2022年、新たな白癬菌抗原キット(商品名:デルマクイック爪白癬)が保険収載された。同キットは、抽出液で爪甲中の白癬菌抗原を抽出し、免疫クロマトグラフィーの原理で検体中の白癬菌抗原を検出するもの。福田氏は「真菌検査の主軸はKOH直接顕鏡と真菌培養であることに変わりはない」とし、ガイドラインでも同キットはKOH直接鏡検の補助検査として位置付けられている。 KOH直接顕鏡は簡便で繰り返し検査可能な優れた検査であるが、経験豊富な医師では検出率が高くなる一方、不慣れな医師の場合は検出率が低くなる傾向がある。福田氏は、「同キットは検体採取の熟練度や菌の特性によらず検出が可能なため、併用することで不慣れな医師は誤診を減らすことができ、経験豊富な医師にとっても偽陰性を防ぐために活用できる」と話した。顕微鏡のない施設や訪問診療などでも、迅速なスクリーニングのための活用が期待される。爪白癬へのイトラコナゾールは推奨度Bに、ホスラブコナゾールはエビデンス増 爪白癬に対する内服薬として、前版ではテルビナフィン、イトラコナゾール、ホスラブコナゾールの3剤がいずれも推奨度A(行うよう強く勧める)と判定されていた。3剤を直接比較したデータはないものの、テルビナフィンとの比較においてイトラコナゾールはやや有効性が劣るという報告があること、併用禁忌・併用注意薬が非常に多いことから、今回は推奨度B(行うよう勧める)に引き下げられた。 2018年に発売されたホスラブコナゾールについては、前版発行後にいくつかのリアルワールドデータが報告され、いずれも臨床試験と同等あるいは上回る有効率が確認された。75歳以上の高齢者を対象とした試験、難治性・再発症例への追加投与・再投与について検討した試験においても有効性と安全性が確認されている。福田氏は、「他の薬剤にもいえることだが、推奨期間の投与を終えても治癒しない症例がある。ホスラブコナゾールの場合、12週の投与で治癒が期待できる症例は6割程度とされる。治りきらない症例においてどのような対応をすればよいのかがエビデンスとして示された点は大きい」と話す。テルビナフィンとの比較においては、薬価が大きく異なる点にも留意が必要となる。内服可能な症例には、まず内服薬でしっかり治すことが原則 現在爪白癬に対する外用薬として選択できる2剤については、ともに有効率は15%前後とされるが、実臨床では外用薬が優先して使われている。外用薬はリスクが低く使いやすいが、有効率は内服薬のほうが明確に高いことが示されており、福田氏は「外用薬と内服薬どちらも投与可能な患者さんに対しては、まず内服薬を使うことを推奨したい」と話した。ただし、高齢患者が増えている中で、多剤併用の観点などから外用薬を選択するケースもあるとし、「外用薬で治療を開始して、治癒が得られなかった場合に内服薬に切り替えるという選択もありえる」とした。ペット由来など、近年注意が必要な原因菌 現状、耐性株の出現率は日本では低く、実臨床では1~3%と推定される。注意が必要なのはテルビナフィンに対する耐性株だが、アゾール系(イトラコナゾール、ホスラブコナゾール)に対する耐性株も今後出てくる可能性はあり、福田氏はその可能性を認識しておくことが重要とした。今回のガイドラインでは各CQで耐性株に対するコメントも記載されている。 原因菌に関して、近年分類法が変更・精度が向上し、名称や分類が一部変更されている。今回のガイドラインでは、「留意すべき皮膚真菌症」として以下の4項目について記載が追加された。1.動物から感染する皮膚真菌症 ペットの多様化などにより、ヒトからヒトへの感染だけでなく、動物からの感染もあるということを認識しておく必要がある。例:ペットのデグーに由来するTrichophyton benhamiae var. luteum、ネコからのSporothrix globosaなど(本邦での報告はなし)2.Trichophyton tonsurans感染症 本邦では2000年頃より柔道、レスリングなどの格闘技選手間での集団発生が多発した。近年報告症例は減少しているものの、撲滅はできていない。3.耐性菌の中心となる可能性のあるTrichophyton indotineae 本邦に在留中のインド人の体部白癬から分離された。海外で安価で入手されるステロイド外用薬と抗真菌薬、抗菌薬配合のOTC外用薬の乱用が感染拡大に関与している可能性が指摘されており、本邦でもTrichophyton indotineaeによる体部白癬を繰り返す症例の報告が徐々に増加している。4.死亡率の高い侵襲性医療関連感染症を引き起こすCandida auris 本邦で見つかった株だが、世界的に急速に拡大している。現在は本邦では少数ではあるが分離はされており、認識しておく必要がある。

3.

妊娠後期の抗てんかん薬曝露、児の神経発達障害との関連は?/BMJ

 米国・ブリガム&ウィメンズ病院のLoreen Straub氏らは、米国の2つの医療利用データベースを用いて、妊娠後半期の抗てんかん薬への曝露が出生児の神経発達障害(NDD)のリスクに及ぼす影響を解析し、妊娠中のバルプロ酸曝露による児のNDDリスク増加についてさらに強固なエビデンスが得られたことを報告した。「ゾニサミドも複数のアウトカムとの関連性が示唆されたが、さらなる評価が必要である。他の抗てんかん薬についても、複数の比較やまれなアウトカムにおいて潜在的なシグナルが観察されているが、データの蓄積と確認が必要である」と述べている。BMJ誌2026年3月11日号掲載の報告。NDD(ADHD、ASD、学習障害など)のリスクを曝露群vs.非曝露群で検証 本検討には、米国における公的および民間の医療保険加入者の医療利用データ(Medicaid Analytic eXtract/Transformed Medicaid Statistical Information System Analytic Files[MAX/TAF]の2000~18年、およびMerative MarketScan Commercial Claims and Encounters Database[MarketScan]の2003~21年)が用いられた。 解析対象は、妊娠の3ヵ月以上前から出産後1ヵ月まで継続して保険に加入していた12~55歳のてんかんを有する女性とその児で、児の出生から保険加入期間終了、対象となるNDDの診断、研究期間終了または死亡のいずれか早い時点まで追跡した。 妊娠後半期に少なくとも1回の抗てんかん薬の処方(単剤療法または併用療法)を受けた妊婦とその児を曝露群、てんかんと診断されているが妊娠の3ヵ月以上前から出産後1ヵ月まで抗てんかん薬の投与を受けていない妊婦とその児を非曝露群とした。 抗てんかん薬は、カルバマゼピン、ラコサミド、ラモトリギン、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、トピラマート、バルプロ酸、ゾニサミドを対象とした。バルプロ酸はNDDとの関連が確立されていることから陽性対照として、ラモトリギンは一般的にNDDリスクと関連していないため陰性対照として用いた。 主要アウトカムは、検証済みのアルゴリズムを用いて特定されたNDD(ADHD、ASD、行動障害、発達性協調運動障害、知的障害、学習障害、発話または言語障害のいずれかを有すると定義)で、曝露群と非曝露群のNDDリスクを比較した。バルプロ酸とゾニサミドは複数のアウトカムと関連 解析対象は、MAX/TAFの1万7,590例(非曝露群7,245例、曝露群1万345例)、MarketScanの6,290例(それぞれ1,642例、4,648例)で、曝露群の個々の曝露件数はラコサミドの219例からレベチラセタムの5,261例の範囲にわたった。 ほとんどのNDDが診断されると予想される8歳時点でのNDDの累積発生率は、非曝露群で34.3%(95%信頼区間[CI]:32.0~36.7)に対し、曝露群ではラコサミド曝露の22.7%(95%CI:12.2~39.8)からゾニサミド曝露の42.6%(95%CI:31.9~55.3)にわたった。 バルプロ酸とゾニサミドは複数のアウトカムとの関連を示したが(補正後ハザード比[HR]の範囲:1.26~4.50)、レベチラセタムとフェニトインはいずれのアウトカムとも関連していなかった。 いくつかの薬剤は知的障害のリスクが増加したが、当該障害児が少なく正確な推定値を得られなかった。トピラマートとラモトリギンは、ほとんどのアウトカムにおいて有意な関連は認められなかったが、知的障害(両薬剤)および学習障害(トピラマートのみ、少数例に基づくHR:1.23)については潜在的なシグナルが認められた。 カルバマゼピンとオクスカルバゼピンは、ADHDおよび行動障害のリスクが中等度に増加した(HRの範囲:1.23~1.40)。 これらの結果は、ラモトリギンを対照薬として用いた場合を含む複数の感度解析においても一貫していた。

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がん関連VTE発症予測に包括的ゲノムプロファイリングは有用か/日本循環器学会

 がん患者における重要な心血管合併症の1つに静脈血栓塞栓症(VTE)があり、2023年に公開されたASCO Guidelineにおいても、このようなVTEの高リスク患者への1次予防が推奨されている。しかし、がん関連VTEの発症を正確に予測できるモデルは現段階では確立されていない。そこで今回、中村 栞奈氏(京都大学医学部附属病院 循環器内科)がVTE発症の予測として包括的ゲノムプロファイリングを用いた最新知見について、3月20~22日に開催された第90回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Cohort Studies 1において報告した。なお、本結果はJournal of thrombosis and haemostasis誌オンライン版2026年3月20日号に同時掲載された1)。 本研究は、VTEの発症とがん関連遺伝子変異との潜在的な関連性を調査することを目的として、FoundationOne CDxによる包括的ながんゲノムプロファイリング(CGP)を受けたVTE既往歴のない成人がん患者を対象に、324個のがん関連遺伝子の中からVTEに関連する遺伝子変異を探索した。主要評価項目はVTEの発症。 主な結果は以下のとおり。・京都大学医学部附属病院において、2015年3月~2024年6月の期間にCGPが行われた1,079例のうち、適格基準を満たした412例について検討した。・対象者の平均年齢は59歳、199例(48%)が女性であった。・がんの遠隔転移は319例(77%)、372例(90%)が化学療法を行っていた。・観察期間の中央値は693日で、検体採取後に59例(14%)にVTEを認めた。また、累積イベント発症率は1年で8.3%、3年で16.6%、5年で26.0%であった。 ・VTEを発症した患者の原発がんの部位は、膵臓14例(24%)、胆道7例(12%)、子宮7例(12%)、肺6例(10%)であった。・年齢と性別を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いたがん遺伝子変異の調整ハザード比(HR)を算出したところ、KRAS(HR:2.35、95%信頼区間[CI]:1.38~4.01)、CDKN2A(HR:2.06、95%CI:1.21~3.52)、TP53(HR:1.71、95%CI:0.99~2.93)など、VTEリスクの高さと関連する可能性のあるゲノム変異を特定した。  中村氏は「包括的なゲノムプロファイリングに基づくこの新しい研究は、VTEの発症に関連するいくつかのゲノム変異を明らかにし、従来の臨床指標にがん関連遺伝子変異情報を統合することで、より精緻なリスク層別化が可能となることが期待される」とコメント。ただし、本研究の制限について「対象者が少なく、がんの病期や治療内容による調整ができていないため、潜在的バイアスが存在した可能性がある」と述べた。 最後に同氏は「本研究を踏まえより大規模な研究を行っていくために、新たなコホートで検証するためにONCO CARDIO Registryを始めた。この研究では、日本全国の約40施設の大学病院・がんセンター・大規模基幹病院が集結し、約2万例(最大総数)のがん患者の登録を目指しており、世界的にも最大規模のがん関連遺伝子情報を含めた腫瘍循環器領域の疫学研究となる見込みである」と今後の展望を語った。

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AIチャットボットの使用は精神疾患患者の症状悪化と関連

 AIチャットボットを安価な「セラピー代わり」として利用することは、かえって精神疾患を悪化させる恐れのあることが、新たな研究で示された。すでに精神疾患と診断されている人がAIチャットボットに頼った結果、妄想の悪化、躁状態の増強、自殺念慮の出現、摂食障害の悪化などの問題が生じたケースが確認されたという。オーフス大学病院(デンマーク)の精神科医であるSøren Dinesen Østergaard氏らによるこの研究結果は、「Acta Psychiatrica Scandinavica」に2月6日掲載された。 Østergaard氏は、「AIチャットボットの利用は、精神疾患を抱える人に深刻な悪影響を及ぼす可能性がある」と懸念を示している。研究グループによると、問題の一つは、AIチャットボットが利用者の不健全な思考や信念を正すのではなく、むしろそれを肯定・強化する傾向がある点だという。この点についてØstergaard氏は、「AIチャットボットには本質的に、利用者の信念を肯定する傾向が備わっている。すでに妄想を抱いているか、妄想を抱きつつある人にとって、これが大きな問題になることは明らかだ。実際、AIチャットボットが誇大妄想や被害妄想などを固定化させる要因になっているように思われる」と述べている。 ここ数年、AIチャットボットの利用が自殺と関連付けられた事例が複数報告されており、AIチャットボットが自殺に関与したとして、遺族がOpenAIやCharacter.AIを相手取り訴訟を起こすケースも出ている。 今回の研究では、2022年9月1日から2025年6月12日の間に精神科サービスを1回以上利用したデンマークの精神疾患患者5万3,974人(女性52%、年齢中央値27歳)の医療記録が分析された。その結果、126人の患者に関する「チャットボット/ChatGPT」という語を含む記録が181件見つかり、そのうち38人の患者の記録は、「AIチャットボットの使用が精神状態に悪影響を与えた可能性がある」と判断された。具体的には、AIチャットボットが妄想を助長したり、躁状態の傾向を強めたり、摂食障害患者のカロリー計算を手助けしたり、自殺方法に関する情報を提供したりしていた。 Østergaard氏は、「この問題は、多くの人が考えている以上に広がっているのではないかと懸念している。本研究で確認できたのは電子カルテに記載されていた症例のみであり、氷山の一角に過ぎない可能性がある」と述べている。 一方で、本研究では、AIチャットボットを症状理解や孤独感の軽減といった建設的な目的で利用していた患者も確認された。ただし、研究グループは、AIチャットボットは治療を目的として開発・検証されたものではない点を強調している。Østergaard氏は、「AIチャットボットを、心理教育や心理療法の分野で活用できる可能性はあるが、他の治療法と同様に厳密な臨床試験で検証する必要がある。これまでに行われた試験は十分に評価できるものではないと思われるし、そもそも私は、訓練を受けた心理療法士をAIチャットボットに置き換えることには懐疑的だ」と述べている。 Østergaard氏はさらに、AIチャットボットの運用に規則がない点を指摘し、「現状では、自社製品の安全性は企業の判断に委ねられている。しかし私は、この仕組みはあまりにもリスクが高いと結論付けるに足る証拠がそろっていると考えている」と述べている。 ただし、研究グループは、今回の研究がAIチャットボットの利用と精神状態の悪化との間に因果関係があることを証明したわけではないことも指摘している。Østergaard氏は、「AIチャットボットの使用と心理的な悪影響との因果関係を証明するのは困難だ。さまざまな角度から検討する必要がある。世界中で多くの研究プロジェクトが進行中であり、われわれだけがこの問題に真剣に取り組んでいるわけではない」と述べている。

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夜食を控えると心臓にメリットがもたらされる

 1日の終わりの習慣を少し変えるだけで、心臓の健康上のメリットを得られることが、新たな研究で明らかになった。就寝前の数時間、食事を控えるだけでよく、摂取カロリーは減らさなくても良いという。 この研究は、米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部睡眠医学科神経学研究室のDaniela Grimaldi氏らの研究によるもので、詳細は「Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology」に2月12日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「体の自然な覚醒・睡眠リズムに合わせて絶食時間を調整することで、心臓、代謝、睡眠の状態を改善できる。これらは全て、心血管の健康を守るために協調して働いている」と解説している。 重要な時間帯は、就寝前の3時間だという。眠りに就く3時間前から照明を抑えて食事を控えると、睡眠中、そして翌日1日を通して、心血管代謝に関わる指標が目に見えるほど改善するとのことだ。注目すべきことは、この研究参加者は摂取カロリーを減らしたわけではなく、単に夜間の食事の時間帯を変更しただけだったという点だ。 論文の上席著者である同大学医学部概日リズム・睡眠医学センターのPhyllis Zee氏は、「時間制限食の生理学的効果を得るには、『何をどれだけ食べるか』だけでなく、『睡眠との関係でいつ食べるか』も重要だ」と話す。なお、時間制限食は、心血管代謝関連マーカーを改善し、時には古くから行われているカロリー制限に匹敵する効果をもたらす可能性があることが研究で示唆されており、近年ますます人気が高まっている。 心血管代謝関連マーカーの数値が良くないと、心臓病や2型糖尿病、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)などの慢性疾患のリスクが上昇する。時間制限食がそれを抑制する可能性が示唆されているが、これまでの時間制限食に関する研究の多くは、代謝調節の鍵となる睡眠のタイミングと絶食のタイミングが一致しているか否かを考慮せずに、どれだけ長く断食するかということに焦点を当ててきていた。 Grimaldi氏らの研究には、36~75歳で肥満・過体重に該当する39人が参加した。参加者全体を2群に分け、7週間半にわたり、介入群は夜間に13~16時間絶食し、対照群は通常通りに食事を続けた。両群ともに、就寝の3時間前に照明を抑えることとした。 解析の結果、介入群は、心血管の健康状態を表す指標に明らかな改善が認められた。例えば、夜間の血圧は3.5%低下し、心拍数も5%低下していた。研究者らは、「これらの変化は、日中の活動中に心拍数と血圧が上昇し、夜間の休息中にそれらが低下するという、より健康的な変化のパターンを反映している。昼夜のメリハリがはっきりするということは、心血管の健康状態の改善と関連している」と述べている。 さらに、介入群では、日中の血糖状態も良好となった。研究者らによると、この変化は「ブドウ糖が体内に入ると、膵臓はより効果的に反応してインスリンが分泌され、血糖値が安定することを示唆している」という。 論文では、「睡眠のタイミングに合わせた時間制限食というこのアプローチは、心血管代謝機能を改善する有望な可能性を秘めた、実用性の高い新たなライフスタイル介入と言える」と結論付けている。

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認知症リスクが上昇するコーヒー摂取量は?

 認知症は神経変性疾患であり、環境因子や食習慣を含む生活習慣因子が重要な病因として関与していると考えられる。とくに、コーヒーや紅茶の摂取が認知症の予防効果とリスク因子の両方を示していることから、その影響については依然として議論が続いている。イタリア・University of Modena and Reggio EmiliaのElena Mazzoleni氏らは、コーヒーおよび紅茶の摂取と認知症リスクの用量反応関係を評価するため、メタ解析を実施した。Journal of Epidemiology and Population Health誌2026年2月号の報告。 2025年12月9日までに公表された研究をPubMed、EMBASEよりシステマティックに検索した。対象者の選定基準は、慢性疾患がなく、認知症の既往歴がない集団を対象にコーヒーまたは紅茶の摂取量および認知症発症リスクを評価したコホート研究またはコホート・ネストテッド・ケース・コントロール研究とした。研究の質の評価にはROBINS-Eツールを用いた。コーヒーと紅茶の摂取量増加と認知症の関係について、非線形用量反応モデルを作成した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には10件の研究を含めた。ベースライン時点で45万人超が参加し、平均フォローアップ期間は11.5年であった。・紅茶の摂取量の増加に伴い、すべての原因による認知症リスクは漸進的かつ直線的に減少することが明らかとなった。これは、すべての種類の紅茶と緑茶のみの場合でも同様の結果であった。・コーヒーはU字型の関係を示し、1日2~3杯(約300~450mL/日)でリスクが最も低かった。・アルツハイマー型認知症との関連では、1日3杯までのコーヒー摂取はリスクに差がみられなかったが、それ以上の量になるとリスクの増加が認められた。 著者らは「本研究では、適度なコーヒー摂取は認知症リスクに影響を及ぼさないが、1日3杯以上のコーヒー摂取は、すべての原因による認知症およびアルツハイマー型認知症のリスクを上昇させる可能性が示唆された。一方、紅茶の摂取はすべての原因による認知症リスクを直線的に低下させるようである。しかし、アルツハイマー型認知症については、1日1杯超の摂取ではリスクのさらなる低下は認められなかった」と結論付けている。

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急性静脈血栓塞栓症の出血リスク、アピキサバンvs.リバーロキサバン/NEJM

 急性静脈血栓塞栓症の患者において、3ヵ月の治療期間における臨床的に重要な出血リスクは、アピキサバン投与群がリバーロキサバン投与群よりも有意に低下したことが、カナダ・オタワ大学のLana A. Castellucci氏らCOBRRA Trial Investigatorsによる検討で示された。アピキサバンおよびリバーロキサバンは、急性静脈血栓塞栓症の治療でよく用いられる経口抗凝固薬であるが、両薬の出血リスクの差については不明なままであった。NEJM誌2026年3月12日号掲載の報告。3ヵ月の投与中に発生した臨床的に重要な出血を評価 研究グループは、急性静脈血栓塞栓症の患者におけるアピキサバンとリバーロキサバンを比較するプラグマティックな多国間共同(カナダ、オーストラリア、アイルランドが参加)前向き無作為化非盲検エンドポイント盲検化試験を行った。 急性症候性肺塞栓症または近位深部静脈血栓症を有する患者を適格とし、アピキサバン群(10mgを1日2回7日間投与し、その後は5mgを1日2回投与)またはリバーロキサバン群(15mgを1日2回21日間投与し、その後は20mgを1日1回投与)に1対1の割合で無作為に割り付け、3ヵ月間投与した。 主要アウトカムは、3ヵ月の試験期間中に発生した臨床的に重要な出血で、大出血または臨床的に重要な非大出血の複合とした(出血の定義はInternational Society on Thrombosis and Haemostasisによる)。 副次アウトカムは、全死因死亡などであった。アピキサバン群、相対リスク0.46で有意に低下 2017年12月13日~2025年1月23日に3ヵ国の32施設で2,760例が無作為化された(アピキサバン群1,370例、リバーロキサバン群1,390例)。ITT集団はアピキサバン群1,345例、リバーロキサバン群1,355例であった。ベースラインの両群の特性は均衡が取れており、全体の平均年齢は58.3歳、女性が1,175例(43.5%)。多くの患者(2,087例、77.3%)が誘因のない静脈血栓塞栓症であった。 ITT解析において、主要アウトカムのイベント発生は、アピキサバン群44/1,345例(3.3%)、リバーロキサバン群96/1,355例(7.1%)であった(相対リスク[RR]:0.46、95%信頼区間[CI]:0.33~0.65、p<0.001)。 全死因死亡は、アピキサバン群1/1,345例(0.1%)、リバーロキサバン群4/1,355例(0.3%)で報告された(RR:0.25、95%CI:0.03~2.26)。 出血または静脈血栓塞栓症に関連しない重篤な有害事象は、アピキサバン群36/1,345例(2.7%)、リバーロキサバン群30/1,355例(2.2%)で報告された。

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身体活動の不足が糖尿病の合併症を引き起こす

 身体活動の不足と糖尿病の合併症リスクとの関連を示すデータが報告された。合併症の最大10%程度が身体活動の不足に起因していると考えられるという。リオグランデ・ド・スル連邦大学(ブラジル)のJayne Feter氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Sport and Health Science」に1月14日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「糖尿病の合併症は避けようのないものだと見なされることが多い。しかしわれわれの研究結果は、糖尿病患者が身体活動量を増やすことで、合併症のかなりの部分を予防できる可能性があることを示している」と述べている。 この研究では、これまでに世界中で実施されてきた前向きコホート研究や横断研究、計27件のデータを統合して、糖尿病患者237万7,414人の身体活動量と糖尿病が関連する合併症のリスクとの関係を検討した。身体活動の不足は、世界保健機関(WHO)の推奨(週に150分以上の中~高強度の身体活動)を満たしていない場合と定義した。なお、米疾病対策センター(CDC)は、中強度の身体活動とは早歩き、低速での自転車走行、アクティブなヨガなどで、高強度の身体活動とはランニング、水泳、エアロビクスダンス、高速での自転車走行、縄跳びなどが該当するとしている。 解析対象者の平均年齢は55.3~71.3歳の範囲で、女性の割合は33.4~57.1%だった。19カ国(そのうち16カ国は高所得国)からの前向き研究における追跡期間は3.8~27.9年だった。身体活動不足の有病率は国によって大きく異なり、ロシアが27.7%で最も低く、中国が83.9%で最も高かった。日本は44.7%だった。 糖尿病に特異的な合併症である糖尿病網膜症の発症に身体活動不足が寄与する程度(人口寄与割合〔PAF〕)は、9.7%(95%不確実性区間4.1~16.5)と計算された。さらに、糖尿病が関連して発症リスクが高まる合併症では、冠動脈性心疾患のPAFが5.3%(同2.0~9.4)、心血管疾患が5.2%(2.2~8.9)、脳卒中が10.2%(5.1~16.6)、心不全が7.3%(3.1~12.5)だった。日本のデータからは、糖尿病網膜症15.9%(7.6~24.6)、冠動脈性心疾患8.7%(3.8~14.2)、心血管疾患8.5%(4.2~13.4)、脳卒中16.7%(9.5~24.4)、心不全11.9%(5.6~18.7)と計算された。なお、研究者らによると、女性や教育歴の短い人たちは、身体活動不足に関連した糖尿病合併症の有病率が一貫して高い傾向が認められたという。 本研究についてFeter氏は、「糖尿病合併症予防戦略の中心に身体活動を位置付ける必要性を示すものと言える。糖尿病患者に身体活動を促すことが入院や障害の発生および医療費の削減につながり、また患者の生活の質(QOL)を向上させ得るのではないか」と総括している。ただし研究者らは一方で、身体活動の種類が環境によって異なることを考慮すると、画一的なアプローチは機能しないだろうとも述べている。例えば、高所得国の人々は余暇時間に身体活動をする傾向があるのに対して、低所得国の人々は肉体的な仕事として身体活動を行っていることが多いという。

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第53回 身近な人間関係のストレスが、あなたの「老化」を早めているかもしれないという話

日常生活の中で、「この人と会うとどっと疲れる」「いつも振り回されて嫌な思いをする」そんなふうに感じる相手はいませんか? それが家族や職場の同僚など、どうしても縁を切れない関係だと、毎日のようにストレスを抱え込んでしまいますよね。実は最近、こうした人間関係のストレスが、私たちの心身に及ぼす影響について、興味深い研究成果が報告されました。日々の診療現場でも、身近な人との関係性が患者さんの体調に直結している場面に直面することがありますが、それが細胞レベルでも証明されつつあるのです。「自分を悩ませる人」が細胞の時計を早める?ストレスが体に悪そうだということは、皆さんもイメージしやすいと思います。しかし、それを「生物学的な老化のスピード」という具体的な形で測定することは、これまで困難でした。近年、DNAの働き方の変化(エピジェネティクス)を調べることで、実際の年齢(暦年齢)とは異なる、体内の「生物学的な年齢」を正確に測る技術が進歩してきました。このため、こうした研究が容易になったというわけです。また、これまで、良好な人間関係が健康を守ることはよく知られていましたが、逆に「ネガティブな人間関係」がどう影響するかは十分に分かっていませんでした。そんな中、PNAS誌(米国科学アカデミー紀要)に興味深い論文が掲載されました1)。身近にいる「自分を悩ませる人(ハスラー)」の存在と、DNAの老化マーカーとの関係を調べた研究です。調査によると、約30%の人が身近な人間関係の中に少なくとも1人の「ハスラー」を抱えていることがわかりました。そして驚くべきことに、この「ハスラー」が1人増えるごとに、生物学的な老化のスピードが約1.5%速くなり、生物学的な年齢が約9ヵ月も老けてしまうことが示されたのです。さらに興味深いことに、相手が誰であるかによっても影響が異なりました。配偶者から受けるストレスは老化と明確な関連が見られなかった一方で、親や兄弟、子供といった血縁関係にある人からのストレスが、最も強く老化を早めることに関連していました。また、ハスラーの存在は老化だけでなく、うつや不安といったメンタルヘルスの悪化、BMIの増加、身体的な健康状態の悪化など、幅広い健康被害とも関連していることがわかっています。これらの結果をどう解釈すれば良いかなぜ配偶者では老化との関連が見られず、親や兄弟などの血縁者からのストレスがこれほど強く影響したのでしょうか? 論文では、その理由についても考察されています。考えてみれば、夫婦やパートナーという関係は、日々の摩擦や口うるさい小言(たとえば「健康のためにタバコをやめて」といった愛情や気遣いゆえの干渉)があったとしても、多くの場合お互いを支え合う「ポジティブな側面」も併せ持っています。この親密さや「サポートされている」という安心感が緩衝材となり、ストレスの悪影響を和らげているのかもしれません。一方で、親や兄弟、子供といった血縁関係はどうでしょうか。家族というつながりは「義務感」で強く結びついているため、関係がこじれたり過度な負担に感じたりしても、簡単には縁を切ることができません。論文でも血縁者からのストレスは「構造的に逃れられない」と表現されています。お互いの親密さやポジティブな支え合いが失われているにもかかわらず、「家族だから」というしがらみだけが残り、逃げ場のない慢性的なストレスに長期間さらされ続けることが、私たちの細胞に最も深いダメージを与えているのではないかと推測されています。ただし、この研究結果をただ手放しで鵜呑みにすることもできません。研究には必ず限界があるからです。まず、今回の研究はある時点での関係性を調べたものであり、「人間関係のストレスが原因で老化が早まった」という明確な因果関係を完全に証明するものではありません。また、「ハスラー」の存在はあくまで参加者の自己申告に基づいています。元々気分の落ち込みやストレスを抱えている人ほど、他人の言動を否定的に捉えやすいという偏りが影響している可能性もあります。さらに、すでに亡くなられた方や重い病気で調査に参加できなかった方々のデータが含まれていないため、実際の社会における最も健康リスクの高い人々を含めると、ネガティブな人間関係の真の影響はまた変化する可能性も指摘されています。自分を守る工夫が、一番のアンチエイジングそれでも、この研究は私たちに大切な視点を与えてくれます。避けられない人間関係のストレスは、単なる気の持ちようではなく、細胞レベルで私たちの体に慢性的な負担をかけている可能性があるということです。すべての人間関係を断ち切ることは現実的ではありませんが、つらいと感じる相手とは少し物理的な距離を置いてみる、あるいは一人で抱え込まずに誰かに相談するといった自分を守る工夫が、将来の健康を守る何よりのアンチエイジングに繋がるのかもしれません。参考文献・参考サイト1)Lee B, et al. Negative social ties as emerging risk factors for accelerated aging, inflammation, and multimorbidity. Proc Natl Acad Sci U S A. 2026;123:e2515331123.

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原発性局所多汗症の関連因子は?/神戸大

 原発性局所多汗症は、温熱や精神的な負荷、またそれらによらずに大量の発汗が起こり、日常生活に支障を来す状態と定義されている。本邦における過去の調査では、患者の大部分が医療機関を受診していない可能性が示唆されており、関連のある因子を特定することは、未治療の患者を発見し適切な医療介入を行ううえで有用と考えられる。神戸大学の福本 毅氏らは、多施設共同の横断的質問紙調査(KOBE study)を行い、原発性局所多汗症の関連因子について検討した。Frontiers in Medicine誌2026年2月9日号の報告。 本研究では、2024年4月~7月に日本国内の24の皮膚科医療機関のいずれかを受診し、質問票に回答した5~64歳の患者を対象とした。関連因子を探索するため、単変量および多変量ロジスティック回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・計3,617例が解析に組み入れられた。原発性局所多汗症の有病率は15.0%(3,617例中544例)であった。・潜在的な関連因子の中でオッズ比(OR)が高かったのは、順に腋臭症(OR:5.440)、乾癬(OR:1.830)、湿性耳垢(OR:1.780)、HADS-A(Hospital Anxiety and Depression Scale - Anxiety subscale)スコアで不安障害が確定的(OR:1.780)、HADS-Aスコアで不安障害の疑い(OR:1.460)、喫煙(OR:1.450)であった。・ROC曲線解析の結果、原発性局所多汗症を疑うに当たりHADS-Aスコア6が最適なカットオフ値であることが示された。

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細胞外液補充液と維持輸液【ケースで学ぶ輸液オーダー】第1回

細胞外液補充液と維持輸液研修医が病院で初めて自らオーダーを立てる薬剤はおそらく点滴でしょう。いろいろな種類があり戸惑うかもしれませんが、原則は難しくありません。オーダーを受けた看護師から「輸液、わかってないな」と呆れられないよう、今一度原則を確認しましょう。症例洗面器約1杯分の鮮血を吐いた患者さんが救急搬入され、指導医とともに緊急で呼び出しされた初期研修医A君。指導医が緊急上部消化管内視鏡検査で出血性胃潰瘍と診断し、確実な止血処置を実施しました。現在の輸液内容は、救急科初療医が開始した細胞外液補充液(以下「外液」)です。治療終了時のバイタルサインは血圧120/60mmHg、脈拍90/分、ヘモグロビン値は正常範囲でした。「食事は明日からにしよう。じゃ、輸液オーダーは頼んだよ」と言って指導医は去っていきました。A君は翌日まで外液を継続する指示を出しました。このままでよいでしょうか。考えかたの整理輸液は「目的」によって以下の2つに整理できます1)。出血時など循環血漿量の補充外液絶食中の水分、電解質、糖の補充維持輸液イメージ的には、血液の代わりが外液、ごはんの代わりが維持輸液です。止血が得られ、循環動態が安定した時点で「失血に対する輸液」は役目を終えています。出血分を補えたら、止血後も外液を続ける理由はありません。一方、絶食が続く患者にブドウ糖を含まない輸液だけを投与すると、飢餓状態による低血糖を回避するために蛋白異化が進んでしまいます2)。図1 外液、維持輸液の組成の違いと輸液時の体液分画における分布画像を拡大する細胞内外を比較すると、細胞外はNaが多く、細胞内はKが多いのがポイントです。輸液の組成上、理論的には外液は細胞外へ、維持輸液は細胞内外へ分布するため役割が異なります。本症例の対応本症例では、出血は止血済み、バイタル安定、経口摂取は翌日から再開が予定されています。したがって、外液は減量・終了、維持輸液へ切り替えが妥当です。一方、止血されていたとしてもそれまでの出血量が多く、外液の投与量が出血量に追いついていなければ、維持輸液に並行して外液も投与すべきです。図2 臨床現場でよく見られる輸液療法の流れ画像を拡大する輸液は漫然と「昨日と同じ」にせず、目的を考えてオーダーしましょう。初期輸液は「とりあえずの輸液」英国のNICEガイドラインでは、routine maintenanceの目的の輸液組成には、25~30mL/kg/日の水分、1mmol/kg/日のNa、K、Cl、50~100g/日の糖(5%ブドウ糖液)が必要とされています3)。本邦で絶食時に頻用される維持輸液の3号液は合計2,000mL投与することにより、成人男性の1日の必要水分、電解質、最低限のブドウ糖を補える設定になっています4)。しかし、これら維持輸液のNa濃度は外液よりも低く、医原性の低Na血症が懸念されるため、海外ではNa濃度が外液並みの5%糖含有等張液の使用を提案する5)意見があります。こちらは3号液よりもK濃度が著しく低いため、長期の継続には低K血症に注意が必要です。いずれにしても初期輸液は居酒屋のお通し的立場の「とりあえずの輸液」と割り切り、数日間以上の絶食が予測される場合は、漫然と同じ輸液メニューを続けずに、電解質異常のチェックや補正、本格的な栄養輸液への移行を怠らないようにしましょう。輸液においては初回で満点を目指さず、追試上等と考えて大丈夫です。1)森本康裕. 【総論】輸液の基本のキ 輸液の調節をしてみよう. In:森本康裕. レジデントノート:羊土社;2017.p505-509.2)Gamble JL, et al. 水と電解質. 医歯薬出版;1957.p134-147.3)National Institute for Health and Care Excellence(NICE):Intravenous fluid therapy in adults in hospital. London4)室井延之. 静脈栄養剤の種類と組成、特徴. In:日本臨床栄養代謝学会. JSPENテキストブック:南江堂;2021.p.288-289.5)Moritz ML, et al. N Engl J Med. 2015;373:1350-1360.

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生涯学習は認知症リスクの低下と関連

 米国の実業家であるヘンリー・フォード(Henry Ford)氏はかつて、「20歳であろうと80歳であろうと、学ぶことをやめた人は老いている。学び続ける人はいつまでも若い」と述べているが、この言葉には確かな根拠があるようだ。生涯にわたり学習を続ける人は、アルツハイマー病(AD)のリスクが低く、脳の老化も緩やかになることが、新たな研究で明らかにされた。米ラッシュ大学医療センター精神科・行動科学分野のAndrea Zammit氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に2月11日掲載された。 Zammit氏は、「われわれの研究では、幼少期から高齢期までの間の知的好奇心をかき立てる活動や環境に着目した。今回の結果は、高齢期の認知機能が、生涯を通じて知的に刺激的な環境に触れてきたかどうかに大きく影響されることを示唆している」と話している。 この研究では、認知症のない平均79.6歳の1,939人(75%女性)を7.6年にわたり追跡し、生涯を通じた認知エンリッチメントと、ADおよび関連認知症(ADRD)の病理指標、および認知的レジリエンスとの関連を検討した。エンリッチメントとは、何かをより良く、より豊かにすることを意味する。試験参加者は、人生のさまざまな段階でどれほど知的な活動に触れてきたかに関するアンケートに回答した。認知エンリッチメントの具体的な指標は、人生の早期段階(18歳まで)では、読み聞かせや読書、家庭に新聞や地図帳があるか、5年以上の外国語学習など、中年期(40歳頃)では、40歳時点の収入、雑誌の購読や図書館カードなどの家庭の文化的資源、図書館や博物館を訪れる頻度、高齢期(平均80歳〜)では、読書、文章を書くこと、ゲーム、退職後の収入などであった。 追跡期間中に551人がADを発症した。解析の結果、生涯の認知エンリッチメントが1単位高いことは、ADリスクの38%の低下と関連していた(ハザード比0.62)。また、認知エンリッチメントの高さが上位10%の人は、下位10%の人と比べて、ADの発症が平均5年遅れることも示された。さらに、生涯の認知エンリッチメントが高い人ほど、研究参加時の認知機能スコアが有意に高く、認知機能の低下速度も緩やかだった。 死亡した948人の脳を用いた解析からは、生涯の認知エンリッチメントと神経病理学的指標との間に意味のある関連は認められなかった。しかし、生涯の認知エンリッチメントが高い人では、死亡前の認知機能が有意に高く、神経病理学的変化の影響を統計学的に補正した後でも、認知機能の低下速度が緩やかだった。 Zammit氏は、「生涯を通じて多様な知的活動に継続的に取り組むことが、認知機能の維持に影響を与える可能性があることを示したこれらの結果には励まされる。公的投資により図書館や幼児教育プログラムなどの学ぶ楽しさを育む環境へのアクセスを拡大することは、認知症の発症を減らす一助になるだろう」と述べている。(HealthDay News 2026年2月18日)

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第310回 早漏のスマホアプリ治療で射精までの時間が2倍も延長

世界の男性の実に3人に1人近く1)に認められる早漏を治療するスマートフォンアプリの効果が、ドイツでの無作為化試験2)で示されました3,4)。意に反して挿入からたいてい1分と経たず射精してしまう早漏は寄り添う2人にとって厄介な問題で、人それぞれさまざまな負担を被ります。局所麻酔や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)服用などの治療があるといえばあるものの、効果はその場限りであって都度使用しなければなりませんし、副作用の心配もあります。決め手となる治療がないこともあってか病院に出向く早漏男性は少なく、10人に1人足らずです。試験で検討されたスマートフォンアプリのMelongaは、心理学者と泌尿器科医が誂えた課題の実行を早漏男性に指南します。早漏などの肩身の狭い思いをさせる病気を治療する情報技術やソフトウェアに取り組むオランダのPrognoix社によって開発されました。Melongaが指南するのは射精を察知する訓練、骨盤底の鍛錬、瞑想法(mindfulness)、考えや振る舞いを改めるようにする認知行動療法です。射精を堪えられなくなる段階を男性が認識できるようにし、呼吸、リラックスすること、止めたり始めたりすることで性的興奮を軽減させる術を身に付けさせます。加えて、連れ合いとの意思疎通を後押しし、ネガティブな思考パターンの解消を促します。試験に参加した男性80例は、12週間Melongaを使用する群か、まずは使わず12週間後に使えるようになる対照群のいずれかに無作為に割り振られました。性交の塩梅についての問い一揃いへの回答を一通り済ませた66例のうち、Melonga使用患者は挿入から射精までの時間が2倍ほど長くなりました。もとは平均1分程度(61秒)だったのが12週間後には2分超(125秒)に延長していました。アプリ非使用患者の挿入から射精までの時間はほとんど変化せず、1秒に満たない0.5秒上昇したのみでした。Melonga使用男性は射精の制御がだいぶ改善し、射精と関連する心配が減り、パートナーとの関係の支障が減ったと報告しました。また、挿入から射精までの時間の延長と関連して性交をより楽しめるようになりました。そして何よりなことにMelonga使用男性の4人に1人に近い22%は、12週時点の自己評価でもはや早漏ではなくなっていました。試験結果は欧州泌尿器科学会(EAU)の年次総会で発表されました。挿入から射精までの時間がほんの1~2分でも延びることは大成功であり、およそ4人に1人を早漏から解放したMelongaの効果は絶大だとEAUの一部門の長を務めるイタリアのGiorgio Russo氏は述べています4)。Russo氏はより大規模な試験でさらなる裏付けが得られることを期待しています。また、デジタル技術がその使用者の連れ合いの満足度にもたらす効果にも期待を寄せています。早漏治療アプリはすでに山ほどありますが、Melongaとは異なり、どれも対照試験で検討されてはいません4)。Melongaは試験が実施されたドイツをはじめ、アイルランド、オーストリア、ルクセンブルク、リヒテンシュタイン、ベルギーで利用可能となっています。参考1)Carson C, et al. Int J Impot Res. 2006;18:S5-13.2)CLIMACS(CLinical efficacy and systemic Improvements for MAnagement of premature ejaCulation Symptoms using a digital application) / German Clinical Trials Register3)Press release: Smartphone app can help men last longer in bed, finds research / European Association of Urology4)A smartphone app can help men last longer in bed / NewScientist

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地方在住のがん患者は手術のために都市部へ行くべきか

 地方のがん患者は、主要な医療機関で治療を受けるために長距離移動することが多いが、そうした長旅は、必ずしも必要ではないかもしれない。肺がんまたは大腸がん患者を対象にした新たな研究で、地元の病院で治療を受けた場合と都市部の医療機関へ移動して治療を受けた場合で、死亡率や手術の転帰に大きな差は認められなかったことが明らかになった。米ルイビル大学外科学分野のMichael Egger氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Surgeons」に2月11日掲載された。 Egger氏は、「地方に住むがん患者は、高品質で多職種が連携するがん治療を受ける機会を得られないことが多い。しかし、全ての患者が手術を受けるために長距離を移動できるわけではないし、すでに受け入れ能力の限界に達している都市部のハイボリューム施設にとっても持続可能ではない」とニュースリリースで指摘している。 Egger氏らは今回、SEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)-メディケアのデータを用いて、地方在住で65歳以上の大腸がん患者1万383人および肺がん患者6,006人を対象に、がんの手術を地方で受けた場合と都市部で受けた場合の転帰を比較した。 肺がん患者では、75%(4,493人)、大腸がん患者では54%(5,633人)が都市部の病院で手術を受けていた。肺がん患者、大腸がん患者のいずれにおいても、地方で手術を受けた群(地方群)と都市部で手術を受けた群(都市部群)の間に、人口統計学的特徴やがんのステージについて有意な差は認められなかった。術後3カ月間の死亡率は、肺がん患者では地方群で5.2%、都市部群で4.8%、大腸がん患者ではそれぞれ7.3%と6.9%であり、いずれも有意な群間差は認められなかった。さらに、術後30日間の再入院率についても、肺がん患者では両群とも10.4%、大腸がん患者では両群とも14.0%であり、群間差は認められなかった。 一方で、都市部の病院で治療を受けた患者は、治療のためにより長距離を移動していた。具体的には、大腸がん患者の移動距離の中央値は、地方群での16マイル(約26km)に対して都市部群は49マイル(約79km)と約3倍の距離を移動していた。これを移動時間に換算すると、それぞれ23分と58分に相当した。肺がん患者でも、地方群で35マイル(約56km)、都市部群で61マイル(約98km)と都市部群の移動距離が長く、移動時間はそれぞれ49分と72分に相当した。 地方在住の患者の一部は、依然として必要な治療を受けるために都市部へ移動しなければならない場合はあるが、研究グループは、「今回の結果は、地域病院でも一定のがん手術を十分に提供できることを示している」と述べている。Egger氏は、「移動時間の長さや移動に伴う費用は、地方在住のがん患者の多くにとって大きな負担となり得る。医療システムが医療供給体制を地域ごとに再編していく中で、地元で治療を受けても問題ない患者と、より集約化された医療を受けることで利益を得られる患者を見極めることが重要になってくるだろう」と述べている。 研究グループは今後、地方と都市部の病院のうち、最良の結果を出している施設を分析し、何が優れていたのかを明らかにする予定だという。また、地方の病院が、手術以外のがん治療においても都市部の施設と同等のケアを提供しているかどうかも調べる計画があるとしている。

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第304回 Lancet誌が怒りあらわに、ケネディ氏に向けたEditorialを掲載

INDEX保健福祉省長官が公衆衛生を破綻に追い込む危険な結果を導き出す愚策感染症の流行で結果は明確保健福祉省長官が公衆衛生を破綻に追い込む前回は米国によるイラン攻撃の影響を取り上げたが、米国の無茶苦茶ぶりはほかでも進行中である。何かといえば、昨年2月に保健福祉省長官に就任したロバート・ケネディ・ジュニア氏のことである。過去に本連載でもケネディ氏によるLancet誌、NEJM誌、JAMA誌の3誌の腐敗呼ばわり、米国疾病予防管理センター(CDC)が推奨する小児向けワクチン接種スケジュールの大幅縮小、CDCにワクチン政策の助言・提案を行う外部専門家機関・ACIP(予防接種の実施に関する諮問委員会)の委員全員解任とワクチン懐疑派委員への入れ替え、mRNAワクチン開発への研究支援の縮小、自分の主張と反する科学的研究論文を掲載したジャーナルへの論文撤回要請などを取り上げてきた。しかし、ケネディ氏の傍若無人ぶりには、いよいよ目を背けたくなる。ケネディ氏の長官就任1年を経た2026年2月28日付のLancet誌407巻では、表紙にデカデカと“The destruction that Kennedy has wrought in 1 year might take generations to repair, and there is little hope for US health and science while he remains at the helm.”(ケネディがこの1年で引き起こした破壊は、修復するのに何世代もかかるかもしれない。そして彼が指揮を執り続ける限り、米国の保健と科学に希望はほとんどない)と謳い、冒頭では「Robert Kennedy Jr:1year failure(ロバート・ケネディ・ジュニア:1年間の失敗)」と題したEditorialが掲載された1)。詳細は省くが、これまでの数々の悪行を取り上げ、「ジャンクサイエンスや異端の信念が正当な説明もなく重視されている」「誤情報を拡散し、国の最も弱い立場にある人々を犠牲にして政治的な政策を推進し続けている」「議会から自身の決定について説明を求められても、彼は逃げ腰で攻撃的な態度をとってきた」と徹底的にこき下ろしている。危険な結果を導き出す愚策前述のようにケネディ氏は、小児向けワクチン接種スケジュールの大幅縮小により、従来は小児全員に推奨されていたインフルエンザ、B型肝炎、A型肝炎、ロタウイルス、髄膜炎菌、新型コロナウイルスの6種類のワクチンを推奨から外し、「高リスク群のみ」または「医師と個別に相談して決定」という枠組みに変更した。また、2025年10月、ケネディ氏が刷新したACIPは、「MMRV(麻疹・おたふくかぜ・風疹・水痘)ワクチン」の4歳未満への定期接種の推奨を取り消した。これにより州レベルでは、フロリダ州が接種義務解除に踏み切ったほか、低所得者層向けの無料接種プログラム(VFC)からMMRVワクチンが外れ、接種のハードルが上がった。そしてこれらの影響と思われる現実は深刻である。感染症の流行で結果は明確CDCによると、米国での2025年の麻疹感染報告は2,283例、2026年(3月6日時点)は1,281例で、今年はわずか3ヵ月で前年の半数超に達している。2024年が285例なので昨年は前年比で9倍弱、感染報告が増加したことになる。もちろんMMRVワクチンの非推奨は2025年秋のことなので、これが同年の麻疹患者増加の主要な原因とまでは言えない。しかし、2026年の急速な感染報告数の立ち上がりを見る限り、ケネディ氏の政策の影響は徐々に顕在化していると言わざるを得ない。しかも、ケネディ氏はこうした危機的な状況に対して何も具体的な対策を講じてはおらず、保健福祉省の公式声明でもコメントしていない。そもそも、ケネディ氏は以前からワクチン懐疑派であることは有名だが、昨年3月のFOX Newsでのインタビュー2)では麻疹ワクチンに関し、「ワクチンの効果は年間約4.5%低下する」「麻疹ワクチン接種が毎年死者を出している」と科学的根拠の乏しい発言をしている。ちなみにこの当時、麻疹が流行していたテキサス州では、米国では10年ぶりとなる麻疹による死者が発生し、2025年全体で麻疹による死者は3例が確認され、いずれもワクチン未接種者だったことがわかっている。この数字から算出される2025年の米国の麻疹感染者の死亡率は0.1%強。一般に先進国の麻疹感染者の死亡率は0.01%程度と言われるが、それより1桁高い数字だ。このままでは2026年はもっと悲惨なことになるかもしれない。また、インフルエンザについても懸念が生じ始めている。CDCの報告では、2025~26年シーズンの小児のインフルエンザによる死者は暫定値で90例。2024~25年シーズンの293例と比べればかなり少ない。ケネディ氏の考えに基づき、インフルエンザワクチンの接種推奨が外された中で、この数字は不思議に思われるかもしれない。ここはおそらく米国小児科学会(AAP)のケネディ氏に抗った努力の成果かもしれない。2025年9月にはAAP独自でインフルエンザワクチンの接種を推奨する声明を発表した3)ほか、今年1月にはアメリカの保険業界団体であるAHIP(America's Health Insurance Plans)と直接交渉し、インフルエンザワクチンなど推奨から外されたワクチン接種を2026年末までは無償提供を維持する旨の共同声明を発表している。もっとも2026年2月最終週の死者報告は11例だが、それ以前の3シーズンでは同時期に死者はいない。これも踏み込んで解釈すれば、ケネディ氏の政策決定の負の効果が表れているとは言えないだろうか。いずれにせよ国外では戦争、国内ではパンデミックというまさに内憂外患状態が今の米国である。ボーダレス化が一層加速する現在の世界で、この禍に日本が無縁でいられるだろうか?参考1)The Lancet. Lancet. 2026;407:825.2)FOX NEWS:We will make sure anyone who wants a vaccine can get one, says HHS secretary3)Committee on Infectious Diseases. Pediatrics. 2025;156:e2025073620.

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最新の人工股関節、30年後も92%が再置換術不要/Lancet

 カナダ・Queen's School of MedicineのVeronica Pentland氏らは、システマティックレビューおよび各国の人工関節レジストリデータのメタ解析を行い、最新の人工股関節全置換術の30年生存率、すなわち30年間再置換術を施行しない患者の割合は92%と推定されることを報告した。人工股関節の耐用年数を知ることは、患者、外科医、そして医療機関にとって重要である。過去20年間で、人工股関節における最新のベアリングの使用がインプラントの摩耗、さらには耐久性に大きな変化をもたらしているが、これら最新インプラントの耐用年数を検討した大規模な研究はこれまでなかった。著者は、「今回の結果は、ベアリングの摺動面技術の進歩により人工股関節の長期耐久性が大幅に向上していることを示しており、患者への説明、医療計画の策定および医療機器規則に影響を及ぼす可能性がある」とまとめている。Lancet誌2026年2月28日号掲載の報告。臨床研究と8ヵ国のレジストリから人工股関節全置換術の30年生存率を推定 研究グループは、成人患者の初回人工股関節全置換術における最新のベアリング摺動面技術にのみ着目して評価を行った(高度架橋ポリエチレン[XLPE]vs.金属あるいは第3世代・第4世代セラミックヘッドおよびセラミック-on-セラミック)。 まず、MEDLINEおよびEmbaseを検索し、2024年6月13日までに発表された最低10年追跡しアウトカムを報告している論文を、固定法や手術アプローチにかかわらず特定した。次に、さまざまなベアリングの組み合わせにおけるあらゆる原因による再置換術を評価した8ヵ国の人工関節レジストリのデータを統合してメタ解析を行い、さらに、レジストリデータに基づく多変量ランダム効果モデルを用いて、抽出データを外挿し、30年までの生存率を推定した。 主要アウトカムは、初回人工股関節全置換術からあらゆる原因による初回再置換術までの期間(特定の時点における再置換されていないインプラントの割合)と定義した。全体で92.1%の患者が30年間再置換を受けない 臨床研究29件(5,203例)および8ヵ国のレジストリ(189万9,034例)から、計190万4,237例の人工股関節全置換術を特定した。 29件の臨床研究の統合解析では、ランダム効果モデルを用いた全生存率は全体で0.97(95%信頼区間[CI]:0.96~0.98)であった。 ベアリングの材質別では、金属-on-XLPEが0.97(95%CI:0.95~0.98)、セラミック-on-XLPEが0.96(95%CI:0.93~0.98)、セラミック-on-セラミックが0.97(0.96~0.98)であった。全体として、すべてのベアリングタイプにおいて、15年生存率は94%を超えた。 レジストリデータの統合解析では、全生存率は20年時点で93.6%(95%CI:92.3~94.7)と推定された。 各ベアリング材質の10年、15年、および20年生存率推定値は、臨床研究の統合解析とレジストリの統合解析で一致していた。 これらのデータを外挿すると、全体で25年生存率は92.8%(95%CI:91.2~94.2)、30年生存率は92.1%(95%CI:90.1~93.7)と予測された。

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エクソーム解析で家族性高コレステロール血症の遺伝子変異保有者を特定可能

 エクソーム解析により、家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia;FH)の遺伝子変異保有者を特定できるという研究結果が、「Circulation: Genomic and Precision Medicine」に11月12日掲載された。 米メイヨー・クリニックのN. Jewel Samadder氏らは、地理的にも人種的にも多様な米国内の3地域から参加者を募集し、エクソーム解析を用いた生殖細胞系列遺伝子検査によってFH遺伝子変異保有者を特定できるかを検討した。研究には、計8万4,413人が参加した。 解析の結果、FH関連遺伝子の病的バリアントおよび病的である可能性の高いバリアントを有する対象者が419人特定され(有病率0.50%)、内訳はAPOBが116人、LDLRが298人、PCSK9が5人であった。対象者の66%が女性で、平均BMIは27.3kg/m2、12.3%が糖尿病の既往を報告した。39.5%が高トリグリセライド血症(150mg/dL以上)を、56.7%がHDLコレステロール低値(50mg/dL未満)を呈していた。コレステロール低下薬を服用していなかったのは27.5%で、FHキャリアのうちLDLコレステロールの目標値を達成していたのは10%にとどまった。さらに、コホートの22.4%が冠動脈疾患の既往を報告していた。遺伝学的に新規にFHキャリアと診断された人が約90%を占め、そのうち現行の臨床診断基準を満たしていたのは30.8%にとどまった。 Samadder氏は、「現行のガイドラインでは血中コレステロール値や家族歴に基づいて遺伝学的検査の対象者を判定しているが、今回の研究結果はそのアプローチに盲点があることを示している」と述べている。 なお、複数の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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突発性発疹症【すぐに使える小児診療のヒント】第11回

突発性発疹症今回は、子育て世代のほとんどが経験する「突発性発疹症」についてです。小児科診療では非常によく遭遇する疾患ですが、解熱後も不機嫌が続くなど、保護者にとっては不安の連続です。非典型的な経過をたどることもあるため、少し踏み込んで学んでみましょう。症例生後8ヵ月、男児。保護者「40℃の発熱がもう3日も続いているんです。大丈夫なんでしょうか?」機嫌は良く全身状態は良好。咽頭所見で、口蓋垂の根元あたりに粟粒大の点状紅斑が集族している。医師「突発性発疹症かもしれませんね。」一般的な経過や症状突発性発疹症は、主にヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)、ときに7型(HHV-7)によって起こる乳幼児期の代表的なウイルス感染症です。生後6ヵ月頃から1歳台に好発し、2歳までにほとんどの児が感染するとされています。臨床経過はきわめて特徴的で、突然の高熱で発症し、39~40℃の発熱が3~5日持続します。それにもかかわらず、全身状態は比較的保たれていることが多く、「熱のわりに元気」という印象を受けることが少なくありません。咳や鼻汁などの上気道症状は軽度、あるいはほとんど目立たないこともあります。発熱期にはCRPが軽度上昇することがありますが、高値を示すことは多くありません。ただし、発熱3~5日目の時点では他疾患との鑑別が必要であり、安易に「突発性発疹症らしい」と決めつけることはできません。永山斑発熱初期にみられることがあるのが、いわゆる「永山斑」です。軟口蓋から口蓋垂基部にかけて出現する粟粒大の紅色小丘疹で、よく見ると点状に集まっています。頻度や特異度について具体的に記載された文献はほとんどありませんが、約3分の2の症例で認めるとの記載もあります。認めないからといって突発性発疹症を否定する根拠にはなりませんが、発疹が出る前の手がかりとなる数少ない身体所見の1つです。解熱後の皮疹と不機嫌突発性発疹症の診断を決定付けるのは、解熱とほぼ同時に出現する皮疹です。高熱がすっと下がった翌日、あるいはその日のうちに、体幹を中心に淡紅色の小丘疹が広がります。顔面は比較的軽く、四肢へ徐々に広がることもあります。全身にびっしり出るというよりは、やわらかく散在する印象です。この皮疹は通常1~3日で自然に消退し、色素沈着や落屑を残しません。強い掻痒を伴うこともまれです。一方で、この時期に特徴的なのが強い不機嫌です。解熱したにもかかわらず急にぐずりが強くなり、眠りが浅くなることがあります。そのため「不機嫌病」と呼ばれることもあります。冒頭の症例の男児は、2日後に再び来院しました。診察すると、体幹を中心に淡い紅色の発疹が広がっています。全身状態は安定しており、水分も摂れています。熱は下がったんですが、ぶつぶつが出てきて…しかも、とても不機嫌なんです。何か別の病気になってしまったのでしょうか?(ほっ。まさに教科書的な突発性発疹症の経過!)保護者にとっては数日続いた高熱がやっと下がって一安心…と思いきや、突然皮疹が出て不機嫌になり、不安になって受診されるご家庭は非常に多いです。発熱と解熱後皮疹以外の症状は?突発性発疹症では、発熱と皮疹以外にも注意すべき所見があります。発熱中に一過性の大泉門膨隆を認めることがあり、髄膜炎との鑑別が問題になることがあります。また、他のウイルス感染に比べて熱性けいれんを発症しやすいといわれており、発熱初期や解熱前後にけいれんを起こすことがあります。多くは典型的な単純型熱性けいれんですが、持続がやや長い例や、発熱のタイミングとずれる例もあり、「なんとなくすっきりしない」経過をたどることもあります。また、まれではありますが、HHV-6関連脳炎・脳症の報告もあり、意識障害や遷延する神経症状があれば慎重な評価が必要です。生涯に1度だけしか罹患しない?外来ではよく、「1度かかったら、もうなりませんよね?」と尋ねられます。HHV-6が突発性発疹症の代表的な原因ウイルスですが、HHV-7は異なるウイルスであり、それぞれに感染することで2度罹患することがあります。なお、HHV-7のほうが好発年齢はやや遅く、幼児期が多いです。したがって、「以前、突発性発疹症にかかっています」という情報だけで今回の可能性を完全に否定することはできません。突発性発疹症は、乳児期の子どもを育てる多くの家庭が経験するありふれた疾患です。しかし、発熱期には診断がまだ確定しておらず、尿路感染症や川崎病、細菌感染症などを念頭に置いた評価が欠かせません。なにより、その数日間を不安の中で過ごしているご家族がいます。解熱後に不機嫌が続くことで、不安がいっそう強まることも少なくありません。解熱後に発疹が出てきたとき、私たちは「やはり突発性発疹だった」と胸をなでおろします。その安心感を保護者と共有しつつ、不安だった日々に寄り添うことがこのありふれた疾患の診療に求められているのかもしれません。参考資料1)Up to date:Roseola infantum(exanthem subitum)2)Cherry J, et al. Roseola infantum(exanthem subitum). In:Cherry J, et al. Feigin and Cherry’s Textbook of Pediatric Infectious Diseases, 8th ed. Philadelphia:Elsevier;2018.p.559.3)Tanaka K, et al. J Pediatr. 1994;125:1-5.

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薬剤性パーキンソニズムリスク、8つの抗精神病薬比較

 薬剤性パーキンソニズムは、主に抗精神病薬によるドパミンD2受容体阻害により引き起こされる。しかし、in vitro試験では、実臨床における臨床転帰の変動性を十分に反映できないケースが多くみられる。韓国・Gachon UniversityのWoo-Taek Lim氏らは、in vitroの薬理学的指標が抗精神病薬使用に伴う薬剤性パーキンソニズムの実臨床リスクと一致するかどうかを評価するため、本研究を実施した。JMIR Public Health and Surveillance誌2026年1月28日号の報告。 一般的に使用される8種類の抗精神病薬について、D2受容体およびセロトニン2A受容体の阻害定数(Ki)、D2受容体の解離速度(Kr)、血液脳関門(BBB)通過速度など、主要なin vitroパラメーターを集計し、6つの複合薬剤性パーキンソニズムリスク指標を構築した。Seoul National University Hospital共通データモデル(2002~21年)を用いて、実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクを評価した。抗精神病薬使用者と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)使用者は、傾向スコアマッチングを用いて1:1でマッチングし、Cox比例ハザード回帰分析を用いて薬剤性パーキンソニズムリスクのハザード比(HR)を推定した。各in vitro指標と実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクとの相関は、対数回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・8つのマッチングコホートから4万4,664例の患者を抽出した。・薬剤性パーキンソニズムリスクが最も高かった薬剤はハロペリドール(HR:4.56、95%信頼区間[CI]:2.29~9.07)、最も低かった薬剤はアリピプラゾール(HR:2.11、95%CI:1.56~2.86)であった。・実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクと最も強い相関を示した指標はpKr×BBB透過率であった(R2=0.95)。・この相関は、D2受容体パーシャルアゴニストであるアリピプラゾールを解析に含めると低下が認められた(R2=0.58)。 著者らは「受容体結合動態とBBB透過を統合することで、D2受容体阻害作用を有する抗精神病薬の実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクの変動を反映するin vitroフレームワークを構築できる可能性が示唆された。これらの知見は、早期安全性評価において薬物動態パラメーターと中枢神経系曝露パラメーターを組み合わせることの重要性を裏付けている」と結論付けている。

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