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1.

生涯学習は認知症リスクの低下と関連

 米国の実業家であるヘンリー・フォード(Henry Ford)氏はかつて、「20歳であろうと80歳であろうと、学ぶことをやめた人は老いている。学び続ける人はいつまでも若い」と述べているが、この言葉には確かな根拠があるようだ。生涯にわたり学習を続ける人は、アルツハイマー病(AD)のリスクが低く、脳の老化も緩やかになることが、新たな研究で明らかにされた。米ラッシュ大学医療センター精神科・行動科学分野のAndrea Zammit氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に2月11日掲載された。 Zammit氏は、「われわれの研究では、幼少期から高齢期までの間の知的好奇心をかき立てる活動や環境に着目した。今回の結果は、高齢期の認知機能が、生涯を通じて知的に刺激的な環境に触れてきたかどうかに大きく影響されることを示唆している」と話している。 この研究では、認知症のない平均79.6歳の1,939人(75%女性)を7.6年にわたり追跡し、生涯を通じた認知エンリッチメントと、ADおよび関連認知症(ADRD)の病理指標、および認知的レジリエンスとの関連を検討した。エンリッチメントとは、何かをより良く、より豊かにすることを意味する。試験参加者は、人生のさまざまな段階でどれほど知的な活動に触れてきたかに関するアンケートに回答した。認知エンリッチメントの具体的な指標は、人生の早期段階(18歳まで)では、読み聞かせや読書、家庭に新聞や地図帳があるか、5年以上の外国語学習など、中年期(40歳頃)では、40歳時点の収入、雑誌の購読や図書館カードなどの家庭の文化的資源、図書館や博物館を訪れる頻度、高齢期(平均80歳〜)では、読書、文章を書くこと、ゲーム、退職後の収入などであった。 追跡期間中に551人がADを発症した。解析の結果、生涯の認知エンリッチメントが1単位高いことは、ADリスクの38%の低下と関連していた(ハザード比0.62)。また、認知エンリッチメントの高さが上位10%の人は、下位10%の人と比べて、ADの発症が平均5年遅れることも示された。さらに、生涯の認知エンリッチメントが高い人ほど、研究参加時の認知機能スコアが有意に高く、認知機能の低下速度も緩やかだった。 死亡した948人の脳を用いた解析からは、生涯の認知エンリッチメントと神経病理学的指標との間に意味のある関連は認められなかった。しかし、生涯の認知エンリッチメントが高い人では、死亡前の認知機能が有意に高く、神経病理学的変化の影響を統計学的に補正した後でも、認知機能の低下速度が緩やかだった。 Zammit氏は、「生涯を通じて多様な知的活動に継続的に取り組むことが、認知機能の維持に影響を与える可能性があることを示したこれらの結果には励まされる。公的投資により図書館や幼児教育プログラムなどの学ぶ楽しさを育む環境へのアクセスを拡大することは、認知症の発症を減らす一助になるだろう」と述べている。(HealthDay News 2026年2月18日)

2.

第310回 早漏のスマホアプリ治療で射精までの時間が2倍も延長

世界の男性の実に3人に1人近く1)に認められる早漏を治療するスマートフォンアプリの効果が、ドイツでの無作為化試験2)で示されました3,4)。意に反して挿入からたいてい1分と経たず射精してしまう早漏は寄り添う2人にとって厄介な問題で、人それぞれさまざまな負担を被ります。局所麻酔や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)服用などの治療があるといえばあるものの、効果はその場限りであって都度使用しなければなりませんし、副作用の心配もあります。決め手となる治療がないこともあってか病院に出向く早漏男性は少なく、10人に1人足らずです。試験で検討されたスマートフォンアプリのMelongaは、心理学者と泌尿器科医が誂えた課題の実行を早漏男性に指南します。早漏などの肩身の狭い思いをさせる病気を治療する情報技術やソフトウェアに取り組むオランダのPrognoix社によって開発されました。Melongaが指南するのは射精を察知する訓練、骨盤底の鍛錬、瞑想法(mindfulness)、考えや振る舞いを改めるようにする認知行動療法です。射精を堪えられなくなる段階を男性が認識できるようにし、呼吸、リラックスすること、止めたり始めたりすることで性的興奮を軽減させる術を身に付けさせます。加えて、連れ合いとの意思疎通を後押しし、ネガティブな思考パターンの解消を促します。試験に参加した男性80例は、12週間Melongaを使用する群か、まずは使わず12週間後に使えるようになる対照群のいずれかに無作為に割り振られました。性交の塩梅についての問い一揃いへの回答を一通り済ませた66例のうち、Melonga使用患者は挿入から射精までの時間が2倍ほど長くなりました。もとは平均1分程度(61秒)だったのが12週間後には2分超(125秒)に延長していました。アプリ非使用患者の挿入から射精までの時間はほとんど変化せず、1秒に満たない0.5秒上昇したのみでした。Melonga使用男性は射精の制御がだいぶ改善し、射精と関連する心配が減り、パートナーとの関係の支障が減ったと報告しました。また、挿入から射精までの時間の延長と関連して性交をより楽しめるようになりました。そして何よりなことにMelonga使用男性の4人に1人に近い22%は、12週時点の自己評価でもはや早漏ではなくなっていました。試験結果は欧州泌尿器科学会(EAU)の年次総会で発表されました。挿入から射精までの時間がほんの1~2分でも延びることは大成功であり、およそ4人に1人を早漏から解放したMelongaの効果は絶大だとEAUの一部門の長を務めるイタリアのGiorgio Russo氏は述べています4)。Russo氏はより大規模な試験でさらなる裏付けが得られることを期待しています。また、デジタル技術がその使用者の連れ合いの満足度にもたらす効果にも期待を寄せています。早漏治療アプリはすでに山ほどありますが、Melongaとは異なり、どれも対照試験で検討されてはいません4)。Melongaは試験が実施されたドイツをはじめ、アイルランド、オーストリア、ルクセンブルク、リヒテンシュタイン、ベルギーで利用可能となっています。参考1)Carson C, et al. Int J Impot Res. 2006;18:S5-13.2)CLIMACS(CLinical efficacy and systemic Improvements for MAnagement of premature ejaCulation Symptoms using a digital application) / German Clinical Trials Register3)Press release: Smartphone app can help men last longer in bed, finds research / European Association of Urology4)A smartphone app can help men last longer in bed / NewScientist

3.

地方在住のがん患者は手術のために都市部へ行くべきか

 地方のがん患者は、主要な医療機関で治療を受けるために長距離移動することが多いが、そうした長旅は、必ずしも必要ではないかもしれない。肺がんまたは大腸がん患者を対象にした新たな研究で、地元の病院で治療を受けた場合と都市部の医療機関へ移動して治療を受けた場合で、死亡率や手術の転帰に大きな差は認められなかったことが明らかになった。米ルイビル大学外科学分野のMichael Egger氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Surgeons」に2月11日掲載された。 Egger氏は、「地方に住むがん患者は、高品質で多職種が連携するがん治療を受ける機会を得られないことが多い。しかし、全ての患者が手術を受けるために長距離を移動できるわけではないし、すでに受け入れ能力の限界に達している都市部のハイボリューム施設にとっても持続可能ではない」とニュースリリースで指摘している。 Egger氏らは今回、SEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)-メディケアのデータを用いて、地方在住で65歳以上の大腸がん患者1万383人および肺がん患者6,006人を対象に、がんの手術を地方で受けた場合と都市部で受けた場合の転帰を比較した。 肺がん患者では、75%(4,493人)、大腸がん患者では54%(5,633人)が都市部の病院で手術を受けていた。肺がん患者、大腸がん患者のいずれにおいても、地方で手術を受けた群(地方群)と都市部で手術を受けた群(都市部群)の間に、人口統計学的特徴やがんのステージについて有意な差は認められなかった。術後3カ月間の死亡率は、肺がん患者では地方群で5.2%、都市部群で4.8%、大腸がん患者ではそれぞれ7.3%と6.9%であり、いずれも有意な群間差は認められなかった。さらに、術後30日間の再入院率についても、肺がん患者では両群とも10.4%、大腸がん患者では両群とも14.0%であり、群間差は認められなかった。 一方で、都市部の病院で治療を受けた患者は、治療のためにより長距離を移動していた。具体的には、大腸がん患者の移動距離の中央値は、地方群での16マイル(約26km)に対して都市部群は49マイル(約79km)と約3倍の距離を移動していた。これを移動時間に換算すると、それぞれ23分と58分に相当した。肺がん患者でも、地方群で35マイル(約56km)、都市部群で61マイル(約98km)と都市部群の移動距離が長く、移動時間はそれぞれ49分と72分に相当した。 地方在住の患者の一部は、依然として必要な治療を受けるために都市部へ移動しなければならない場合はあるが、研究グループは、「今回の結果は、地域病院でも一定のがん手術を十分に提供できることを示している」と述べている。Egger氏は、「移動時間の長さや移動に伴う費用は、地方在住のがん患者の多くにとって大きな負担となり得る。医療システムが医療供給体制を地域ごとに再編していく中で、地元で治療を受けても問題ない患者と、より集約化された医療を受けることで利益を得られる患者を見極めることが重要になってくるだろう」と述べている。 研究グループは今後、地方と都市部の病院のうち、最良の結果を出している施設を分析し、何が優れていたのかを明らかにする予定だという。また、地方の病院が、手術以外のがん治療においても都市部の施設と同等のケアを提供しているかどうかも調べる計画があるとしている。

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第304回 Lancet誌が怒りあらわに、ケネディ氏に向けたEditorialを掲載

INDEX保健福祉省長官が公衆衛生を破綻に追い込む危険な結果を導き出す愚策感染症の流行で結果は明確保健福祉省長官が公衆衛生を破綻に追い込む前回は米国によるイラン攻撃の影響を取り上げたが、米国の無茶苦茶ぶりはほかでも進行中である。何かといえば、昨年2月に保健福祉省長官に就任したロバート・ケネディ・ジュニア氏のことである。過去に本連載でもケネディ氏によるLancet誌、NEJM誌、JAMA誌の3誌の腐敗呼ばわり、米国疾病予防管理センター(CDC)が推奨する小児向けワクチン接種スケジュールの大幅縮小、CDCにワクチン政策の助言・提案を行う外部専門家機関・ACIP(予防接種の実施に関する諮問委員会)の委員全員解任とワクチン懐疑派委員への入れ替え、mRNAワクチン開発への研究支援の縮小、自分の主張と反する科学的研究論文を掲載したジャーナルへの論文撤回要請などを取り上げてきた。しかし、ケネディ氏の傍若無人ぶりには、いよいよ目を背けたくなる。ケネディ氏の長官就任1年を経た2026年2月28日付のLancet誌407巻では、表紙にデカデカと“The destruction that Kennedy has wrought in 1 year might take generations to repair, and there is little hope for US health and science while he remains at the helm.”(ケネディがこの1年で引き起こした破壊は、修復するのに何世代もかかるかもしれない。そして彼が指揮を執り続ける限り、米国の保健と科学に希望はほとんどない)と謳い、冒頭では「Robert Kennedy Jr:1year failure(ロバート・ケネディ・ジュニア:1年間の失敗)」と題したEditorialが掲載された1)。詳細は省くが、これまでの数々の悪行を取り上げ、「ジャンクサイエンスや異端の信念が正当な説明もなく重視されている」「誤情報を拡散し、国の最も弱い立場にある人々を犠牲にして政治的な政策を推進し続けている」「議会から自身の決定について説明を求められても、彼は逃げ腰で攻撃的な態度をとってきた」と徹底的にこき下ろしている。危険な結果を導き出す愚策前述のようにケネディ氏は、小児向けワクチン接種スケジュールの大幅縮小により、従来は小児全員に推奨されていたインフルエンザ、B型肝炎、A型肝炎、ロタウイルス、髄膜炎菌、新型コロナウイルスの6種類のワクチンを推奨から外し、「高リスク群のみ」または「医師と個別に相談して決定」という枠組みに変更した。また、2025年10月、ケネディ氏が刷新したACIPは、「MMRV(麻疹・おたふくかぜ・風疹・水痘)ワクチン」の4歳未満への定期接種の推奨を取り消した。これにより州レベルでは、フロリダ州が接種義務解除に踏み切ったほか、低所得者層向けの無料接種プログラム(VFC)からMMRVワクチンが外れ、接種のハードルが上がった。そしてこれらの影響と思われる現実は深刻である。感染症の流行で結果は明確CDCによると、米国での2025年の麻疹感染報告は2,283例、2026年(3月6日時点)は1,281例で、今年はわずか3ヵ月で前年の半数超に達している。2024年が285例なので昨年は前年比で9倍弱、感染報告が増加したことになる。もちろんMMRVワクチンの非推奨は2025年秋のことなので、これが同年の麻疹患者増加の主要な原因とまでは言えない。しかし、2026年の急速な感染報告数の立ち上がりを見る限り、ケネディ氏の政策の影響は徐々に顕在化していると言わざるを得ない。しかも、ケネディ氏はこうした危機的な状況に対して何も具体的な対策を講じてはおらず、保健福祉省の公式声明でもコメントしていない。そもそも、ケネディ氏は以前からワクチン懐疑派であることは有名だが、昨年3月のFOX Newsでのインタビュー2)では麻疹ワクチンに関し、「ワクチンの効果は年間約4.5%低下する」「麻疹ワクチン接種が毎年死者を出している」と科学的根拠の乏しい発言をしている。ちなみにこの当時、麻疹が流行していたテキサス州では、米国では10年ぶりとなる麻疹による死者が発生し、2025年全体で麻疹による死者は3例が確認され、いずれもワクチン未接種者だったことがわかっている。この数字から算出される2025年の米国の麻疹感染者の死亡率は0.1%強。一般に先進国の麻疹感染者の死亡率は0.01%程度と言われるが、それより1桁高い数字だ。このままでは2026年はもっと悲惨なことになるかもしれない。また、インフルエンザについても懸念が生じ始めている。CDCの報告では、2025~26年シーズンの小児のインフルエンザによる死者は暫定値で90例。2024~25年シーズンの293例と比べればかなり少ない。ケネディ氏の考えに基づき、インフルエンザワクチンの接種推奨が外された中で、この数字は不思議に思われるかもしれない。ここはおそらく米国小児科学会(AAP)のケネディ氏に抗った努力の成果かもしれない。2025年9月にはAAP独自でインフルエンザワクチンの接種を推奨する声明を発表した3)ほか、今年1月にはアメリカの保険業界団体であるAHIP(America's Health Insurance Plans)と直接交渉し、インフルエンザワクチンなど推奨から外されたワクチン接種を2026年末までは無償提供を維持する旨の共同声明を発表している。もっとも2026年2月最終週の死者報告は11例だが、それ以前の3シーズンでは同時期に死者はいない。これも踏み込んで解釈すれば、ケネディ氏の政策決定の負の効果が表れているとは言えないだろうか。いずれにせよ国外では戦争、国内ではパンデミックというまさに内憂外患状態が今の米国である。ボーダレス化が一層加速する現在の世界で、この禍に日本が無縁でいられるだろうか?参考1)The Lancet. Lancet. 2026;407:825.2)FOX NEWS:We will make sure anyone who wants a vaccine can get one, says HHS secretary3)Committee on Infectious Diseases. Pediatrics. 2025;156:e2025073620.

5.

最新の人工股関節、30年後も92%が再置換術不要/Lancet

 カナダ・Queen's School of MedicineのVeronica Pentland氏らは、システマティックレビューおよび各国の人工関節レジストリデータのメタ解析を行い、最新の人工股関節全置換術の30年生存率、すなわち30年間再置換術を施行しない患者の割合は92%と推定されることを報告した。人工股関節の耐用年数を知ることは、患者、外科医、そして医療機関にとって重要である。過去20年間で、人工股関節における最新のベアリングの使用がインプラントの摩耗、さらには耐久性に大きな変化をもたらしているが、これら最新インプラントの耐用年数を検討した大規模な研究はこれまでなかった。著者は、「今回の結果は、ベアリングの摺動面技術の進歩により人工股関節の長期耐久性が大幅に向上していることを示しており、患者への説明、医療計画の策定および医療機器規則に影響を及ぼす可能性がある」とまとめている。Lancet誌2026年2月28日号掲載の報告。臨床研究と8ヵ国のレジストリから人工股関節全置換術の30年生存率を推定 研究グループは、成人患者の初回人工股関節全置換術における最新のベアリング摺動面技術にのみ着目して評価を行った(高度架橋ポリエチレン[XLPE]vs.金属あるいは第3世代・第4世代セラミックヘッドおよびセラミック-on-セラミック)。 まず、MEDLINEおよびEmbaseを検索し、2024年6月13日までに発表された最低10年追跡しアウトカムを報告している論文を、固定法や手術アプローチにかかわらず特定した。次に、さまざまなベアリングの組み合わせにおけるあらゆる原因による再置換術を評価した8ヵ国の人工関節レジストリのデータを統合してメタ解析を行い、さらに、レジストリデータに基づく多変量ランダム効果モデルを用いて、抽出データを外挿し、30年までの生存率を推定した。 主要アウトカムは、初回人工股関節全置換術からあらゆる原因による初回再置換術までの期間(特定の時点における再置換されていないインプラントの割合)と定義した。全体で92.1%の患者が30年間再置換を受けない 臨床研究29件(5,203例)および8ヵ国のレジストリ(189万9,034例)から、計190万4,237例の人工股関節全置換術を特定した。 29件の臨床研究の統合解析では、ランダム効果モデルを用いた全生存率は全体で0.97(95%信頼区間[CI]:0.96~0.98)であった。 ベアリングの材質別では、金属-on-XLPEが0.97(95%CI:0.95~0.98)、セラミック-on-XLPEが0.96(95%CI:0.93~0.98)、セラミック-on-セラミックが0.97(0.96~0.98)であった。全体として、すべてのベアリングタイプにおいて、15年生存率は94%を超えた。 レジストリデータの統合解析では、全生存率は20年時点で93.6%(95%CI:92.3~94.7)と推定された。 各ベアリング材質の10年、15年、および20年生存率推定値は、臨床研究の統合解析とレジストリの統合解析で一致していた。 これらのデータを外挿すると、全体で25年生存率は92.8%(95%CI:91.2~94.2)、30年生存率は92.1%(95%CI:90.1~93.7)と予測された。

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エクソーム解析で家族性高コレステロール血症の遺伝子変異保有者を特定可能

 エクソーム解析により、家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia;FH)の遺伝子変異保有者を特定できるという研究結果が、「Circulation: Genomic and Precision Medicine」に11月12日掲載された。 米メイヨー・クリニックのN. Jewel Samadder氏らは、地理的にも人種的にも多様な米国内の3地域から参加者を募集し、エクソーム解析を用いた生殖細胞系列遺伝子検査によってFH遺伝子変異保有者を特定できるかを検討した。研究には、計8万4,413人が参加した。 解析の結果、FH関連遺伝子の病的バリアントおよび病的である可能性の高いバリアントを有する対象者が419人特定され(有病率0.50%)、内訳はAPOBが116人、LDLRが298人、PCSK9が5人であった。対象者の66%が女性で、平均BMIは27.3kg/m2、12.3%が糖尿病の既往を報告した。39.5%が高トリグリセライド血症(150mg/dL以上)を、56.7%がHDLコレステロール低値(50mg/dL未満)を呈していた。コレステロール低下薬を服用していなかったのは27.5%で、FHキャリアのうちLDLコレステロールの目標値を達成していたのは10%にとどまった。さらに、コホートの22.4%が冠動脈疾患の既往を報告していた。遺伝学的に新規にFHキャリアと診断された人が約90%を占め、そのうち現行の臨床診断基準を満たしていたのは30.8%にとどまった。 Samadder氏は、「現行のガイドラインでは血中コレステロール値や家族歴に基づいて遺伝学的検査の対象者を判定しているが、今回の研究結果はそのアプローチに盲点があることを示している」と述べている。 なお、複数の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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突発性発疹症【すぐに使える小児診療のヒント】第11回

突発性発疹症今回は、子育て世代のほとんどが経験する「突発性発疹症」についてです。小児科診療では非常によく遭遇する疾患ですが、解熱後も不機嫌が続くなど、保護者にとっては不安の連続です。非典型的な経過をたどることもあるため、少し踏み込んで学んでみましょう。症例生後8ヵ月、男児。保護者「40℃の発熱がもう3日も続いているんです。大丈夫なんでしょうか?」機嫌は良く全身状態は良好。咽頭所見で、口蓋垂の根元あたりに粟粒大の点状紅斑が集族している。医師「突発性発疹症かもしれませんね。」一般的な経過や症状突発性発疹症は、主にヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)、ときに7型(HHV-7)によって起こる乳幼児期の代表的なウイルス感染症です。生後6ヵ月頃から1歳台に好発し、2歳までにほとんどの児が感染するとされています。臨床経過はきわめて特徴的で、突然の高熱で発症し、39~40℃の発熱が3~5日持続します。それにもかかわらず、全身状態は比較的保たれていることが多く、「熱のわりに元気」という印象を受けることが少なくありません。咳や鼻汁などの上気道症状は軽度、あるいはほとんど目立たないこともあります。発熱期にはCRPが軽度上昇することがありますが、高値を示すことは多くありません。ただし、発熱3~5日目の時点では他疾患との鑑別が必要であり、安易に「突発性発疹症らしい」と決めつけることはできません。永山斑発熱初期にみられることがあるのが、いわゆる「永山斑」です。軟口蓋から口蓋垂基部にかけて出現する粟粒大の紅色小丘疹で、よく見ると点状に集まっています。頻度や特異度について具体的に記載された文献はほとんどありませんが、約3分の2の症例で認めるとの記載もあります。認めないからといって突発性発疹症を否定する根拠にはなりませんが、発疹が出る前の手がかりとなる数少ない身体所見の1つです。解熱後の皮疹と不機嫌突発性発疹症の診断を決定付けるのは、解熱とほぼ同時に出現する皮疹です。高熱がすっと下がった翌日、あるいはその日のうちに、体幹を中心に淡紅色の小丘疹が広がります。顔面は比較的軽く、四肢へ徐々に広がることもあります。全身にびっしり出るというよりは、やわらかく散在する印象です。この皮疹は通常1~3日で自然に消退し、色素沈着や落屑を残しません。強い掻痒を伴うこともまれです。一方で、この時期に特徴的なのが強い不機嫌です。解熱したにもかかわらず急にぐずりが強くなり、眠りが浅くなることがあります。そのため「不機嫌病」と呼ばれることもあります。冒頭の症例の男児は、2日後に再び来院しました。診察すると、体幹を中心に淡い紅色の発疹が広がっています。全身状態は安定しており、水分も摂れています。熱は下がったんですが、ぶつぶつが出てきて…しかも、とても不機嫌なんです。何か別の病気になってしまったのでしょうか?(ほっ。まさに教科書的な突発性発疹症の経過!)保護者にとっては数日続いた高熱がやっと下がって一安心…と思いきや、突然皮疹が出て不機嫌になり、不安になって受診されるご家庭は非常に多いです。発熱と解熱後皮疹以外の症状は?突発性発疹症では、発熱と皮疹以外にも注意すべき所見があります。発熱中に一過性の大泉門膨隆を認めることがあり、髄膜炎との鑑別が問題になることがあります。また、他のウイルス感染に比べて熱性けいれんを発症しやすいといわれており、発熱初期や解熱前後にけいれんを起こすことがあります。多くは典型的な単純型熱性けいれんですが、持続がやや長い例や、発熱のタイミングとずれる例もあり、「なんとなくすっきりしない」経過をたどることもあります。また、まれではありますが、HHV-6関連脳炎・脳症の報告もあり、意識障害や遷延する神経症状があれば慎重な評価が必要です。生涯に1度だけしか罹患しない?外来ではよく、「1度かかったら、もうなりませんよね?」と尋ねられます。HHV-6が突発性発疹症の代表的な原因ウイルスですが、HHV-7は異なるウイルスであり、それぞれに感染することで2度罹患することがあります。なお、HHV-7のほうが好発年齢はやや遅く、幼児期が多いです。したがって、「以前、突発性発疹症にかかっています」という情報だけで今回の可能性を完全に否定することはできません。突発性発疹症は、乳児期の子どもを育てる多くの家庭が経験するありふれた疾患です。しかし、発熱期には診断がまだ確定しておらず、尿路感染症や川崎病、細菌感染症などを念頭に置いた評価が欠かせません。なにより、その数日間を不安の中で過ごしているご家族がいます。解熱後に不機嫌が続くことで、不安がいっそう強まることも少なくありません。解熱後に発疹が出てきたとき、私たちは「やはり突発性発疹だった」と胸をなでおろします。その安心感を保護者と共有しつつ、不安だった日々に寄り添うことがこのありふれた疾患の診療に求められているのかもしれません。参考資料1)Up to date:Roseola infantum(exanthem subitum)2)Cherry J, et al. Roseola infantum(exanthem subitum). In:Cherry J, et al. Feigin and Cherry’s Textbook of Pediatric Infectious Diseases, 8th ed. Philadelphia:Elsevier;2018.p.559.3)Tanaka K, et al. J Pediatr. 1994;125:1-5.

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薬剤性パーキンソニズムリスク、8つの抗精神病薬比較

 薬剤性パーキンソニズムは、主に抗精神病薬によるドパミンD2受容体阻害により引き起こされる。しかし、in vitro試験では、実臨床における臨床転帰の変動性を十分に反映できないケースが多くみられる。韓国・Gachon UniversityのWoo-Taek Lim氏らは、in vitroの薬理学的指標が抗精神病薬使用に伴う薬剤性パーキンソニズムの実臨床リスクと一致するかどうかを評価するため、本研究を実施した。JMIR Public Health and Surveillance誌2026年1月28日号の報告。 一般的に使用される8種類の抗精神病薬について、D2受容体およびセロトニン2A受容体の阻害定数(Ki)、D2受容体の解離速度(Kr)、血液脳関門(BBB)通過速度など、主要なin vitroパラメーターを集計し、6つの複合薬剤性パーキンソニズムリスク指標を構築した。Seoul National University Hospital共通データモデル(2002~21年)を用いて、実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクを評価した。抗精神病薬使用者と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)使用者は、傾向スコアマッチングを用いて1:1でマッチングし、Cox比例ハザード回帰分析を用いて薬剤性パーキンソニズムリスクのハザード比(HR)を推定した。各in vitro指標と実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクとの相関は、対数回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・8つのマッチングコホートから4万4,664例の患者を抽出した。・薬剤性パーキンソニズムリスクが最も高かった薬剤はハロペリドール(HR:4.56、95%信頼区間[CI]:2.29~9.07)、最も低かった薬剤はアリピプラゾール(HR:2.11、95%CI:1.56~2.86)であった。・実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクと最も強い相関を示した指標はpKr×BBB透過率であった(R2=0.95)。・この相関は、D2受容体パーシャルアゴニストであるアリピプラゾールを解析に含めると低下が認められた(R2=0.58)。 著者らは「受容体結合動態とBBB透過を統合することで、D2受容体阻害作用を有する抗精神病薬の実臨床における薬剤性パーキンソニズムリスクの変動を反映するin vitroフレームワークを構築できる可能性が示唆された。これらの知見は、早期安全性評価において薬物動態パラメーターと中枢神経系曝露パラメーターを組み合わせることの重要性を裏付けている」と結論付けている。

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第309回 臨床医が扱い慣れたGLP-1薬なら依存症治療の敷居を低くできそう

セマグルチドやチルゼパチドなどのGLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)の使用が、アルコールやその他の薬物乱用を生じ難くするらしいことを示す大規模観察試験結果がまた1つ報告されました1-4)。BMJ誌に今回報告されたのは、米国の2型糖尿病の退役軍人の解析結果です。言わずもがなGLP-1薬は膵臓の受容体に働いてインスリン分泌を促します。しかしそれだけでなく、脳でも作用することが知られ、薬物乱用やアルコール依存を促す脳の報酬回路へのGLP-1薬の働きが盛んに検討されています4)。試験ではそのように脳でも働くGLP-1薬か、腎臓でもっぱら働くエンパグリフロジンなどのSGLT2阻害薬を使い始めた60万例超の経過が調べられました。3年間追跡したところ、薬物依存症の既往がない人のGLP-1薬使用は大麻、アルコール、コカイン、ニコチン、オピオイドの依存症の発生率がSGLT2阻害薬使用に比べて14%低いことと関連しました。すでに依存症の人の薬物乱用と関連した救急科受診、入院、オーバードーズの割合の比較でもGLP-1薬使用に分があり、SGLT2阻害薬に比べてそれぞれ約30%、25%、40%低いことが示されました。薬物乱用と関連する死亡や自殺念慮/自殺企図もGLP-1薬使用群がより少なく、SGLT2阻害薬群に比べてそれぞれ50%と25%低い割合で済んでいました。依存症へのGLP-1薬の効果は無作為化試験でも示されつつあります。昨年2月にはアルコール依存患者の飲酒量を減らすセマグルチド週1回注射の効果を裏付けた無作為化試験が報告されています5)。進行中の試験もあり、GLP-1薬の類いのmazdutideのアルコール依存治療を調べているプラセボ対照無作為化第II相試験がLillyの手によって実施されています。結果は今夏8月に判明するようです6)。セマグルチドの別の無作為化試験も米国立薬物乱用研究所(NIDA)医師のLorenzo Leggio氏の主導で進行中です7)。Leggio氏は、たいていが治療されないままのアルコール依存症の治療にGLP-1薬の類いが光明をもたらしうると考えています4)。日本もおよそ似たような状況と思われますが、Leggio氏によるとアルコール依存症患者のほぼ全員の98%は米国で承認されているアルコール依存治療薬を手にしていません。その原因の一端は臨床医のほとんどが依存症治療薬に精通していないことにあるとLeggio氏は言っています。アルコール依存症とは対照的に、糖尿病患者のほとんどの85%超は米国で承認された治療を受けており、臨床医はGLP-1薬を含む糖尿病薬の扱いに手慣れています。GLP-1薬が誰にでも効くというわけにはいかないでしょうが、もし効果の裏付けが済んでGLP-1薬による依存症治療が承認されたら専門医限定という垣根を超えて普及するだろうとLeggio氏は示唆しています。それに、糖尿病治療として社会的により受け入れられているGLP-1薬なら依存症の薬物治療への偏見も減らせるかもしれません4)。米国などでは承認されているnaltrexoneなどのめぼしい依存症治療薬が未承認の日本では、あくまでも有効性が確立して承認されればの話ですが、臨床医が扱いに慣れたGLP-1薬による依存症治療はとくに重宝されそうです。参考1)Cai M, et al. BMJ. 2026;392:e086886.2)GLP-1 diabetes drugs linked to reduced risk of addiction and substance-related death / Eurekalert3)GLP-1 medications get at the heart of addiction: study / Eurekalert4)GLP-1 drugs linked to lower addiction rates in large study of veterans / Science5)Hendershot CS, et al. JAMA Psychiatry. 2025;82:395-405.6)ClinicalTrials.gov(NCT06817356)7)ClinicalTrials.gov(STAR)

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未破裂脳動脈瘤のある健康な人、全死亡リスクが5倍に

 MRIの普及に伴い、症状のない未破裂脳動脈瘤(UIA)が偶然発見される機会が増加している。しかし、偶然発見されたUIAを持つ人の長期的な死亡率や死因については、これまで十分に解明されていなかった。佐賀大学の緒方 敦之氏らが実施した、脳ドック受診者を対象とした前向きコホート研究「The Kashima Scan Study」の結果、偶然UIAが発見された健康な人は、UIAがない人と比較して全死亡リスクが約5倍高く、その主な死因は動脈瘤の破裂ではなく悪性腫瘍であることが判明した。Stroke and Vascular Neurology誌オンライン版2026年2月24日号に掲載。 本研究では、2005年12月~2011年11月に脳ドックを自費で受診した神経学的に健康な成人1,670例(平均年齢57.7歳[範囲23~84]、男性47.5%)を対象とした。平均追跡期間8.7年(SD 2.3)において、MRIおよびMRAで診断されたUIAの有無と死亡率の関連性を、年齢、性別、高血圧、糖尿病、喫煙習慣などの要因を調整したCox比例ハザードモデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・全対象者1,670例のうち90例にUIAが認められた。UIA群90例(5.4%)、非UIA群1,580例(94.6%)。・追跡期間中に36例が死亡した。全死因死亡は、UIA群で7例(死亡率:7.8%)、非UIA群で29例(同:1.8%)であり、UIA群で死亡率が有意に高かった(p=0.002)。・多変量解析の結果、UIAの存在は死亡リスクの有意な上昇と独立して関連していた(調整ハザード比[HR]:4.95、95%信頼区間[CI]:2.14~11.4)。・全死因のうち、最も多かったのは悪性腫瘍(15例)であった。悪性腫瘍による死亡は、UIA群の死亡例の57%(4/7例)、非UIA群の38%(11/29例)を占めた。・UIA群の死亡例(7例)のうち、動脈瘤破裂による死亡は1例のみであった。 本研究の結果、偶然見つかったUIAを持つ神経学的に健康な人は死亡リスクが著しく高いことが示された。著者らはこの原因として、動脈瘤形成に関与する「全身性の炎症状態」が、心血管疾患やがんの発症・進行という共通の病理学的経路を介している可能性を指摘している。UIAが発見された人に対しては、従来の動脈瘤の経過観察だけでなく、より集中的な健康モニタリングや総合的なリスク因子管理が有益である可能性を示唆している。

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日本におけるアルコール使用障害に対する薬物療法の開始率はどの程度か

 アルコール使用障害(AUD)は、世界的に広く認められる疾患である。しかし、薬物療法が行われている患者の割合は依然として低いままである。また、日本におけるAUDに対する薬物療法開始パターンは、これまで十分に解明されていなかった。京都大学の北村 美智氏らは、日本で新たにAUDと診断された患者における薬物療法開始の累積発生率を定量化し、評価を行った。Alcohol and Alcoholism誌2026年1月14日号の報告。 日本の保険請求データベースを用いて記述的研究を実施した。2012~21年度にかけて新たにAUDと診断された20~64歳の成人を対象とした年次コホートを作成した。薬物療法開始の累積発生率は、死亡を競合リスクとして、推定した。 主な結果は以下のとおり。・本研究の対象患者数は1万3,936例。・2012~21年度のコホート全体での平均年齢は43.3~44.8歳、各コホートでの男性の割合は72.6~79.3%であった。・コホート登録時(0日目)における薬物療法開始の累積発生率は、2012年度の18.0%から2021年度には35.2%に上昇した。・1年間の対応する累積発生率は、それぞれ28.1%と44.9%であった。・アカンプロサート(2013年度)とナルメフェン(2018年度)の承認および日本のAUD治療ガイドライン(2018年度)の策定に伴い、薬物療法開始はそれぞれ前年比で顕著に増加した。 著者らは「薬剤処方前にAUDの診断を義務付ける日本の保険償還制度により、今回観察された発症率は過大評価されている可能性があるものの、薬物療法の開始件数は他国で報告されている件数を上回り、2012年度以降着実に増加している。新薬の導入とガイドラインの普及により、治療開始が加速し、治療方法が大きく変化したと考えられる。これらの知見は、臨床医や政策立案者が根深い治療ギャップを埋めるうえで役立つ可能性がある」と結論付けている。

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定位放射線、5個以上の脳転移で症状負担・日常生活機能を改善/JAMA

 米国・ダナファーバーがん研究所のAyal A. Aizer氏らは、5~20個の脳転移を有するがん患者において、定位放射線照射(stereotactic radiation:STR)が海馬回避全脳照射(hippocampal-avoidance whole brain radiation:HA-WBR)と比較して、生活の質の重要な要件である症状負担と日常生活機能への支障を有意に改善することを示した。がん患者では脳転移が高頻度にみられるが、血液脳関門が薬剤の通過を阻害するため一般に放射線治療が行われる。脳転移が4個以下の患者では腫瘍に限定して集中照射するSTRが標準とされるが、5個以上の場合の標準治療は確立されていない。もう1つの選択肢である全脳照射は、認知機能障害を来すリスクがあるが、記憶に重要な海馬領域への照射を控えたHA-WBRが開発されていた。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年2月19日号に掲載された。2つの照射法を直接比較する米国の第III相試験 本研究は、米国の4施設で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2017年4月~2024年5月に、生検で確認された固形がんで、5~15個(2018年10月に一般化可能性を重視して5~20個に変更)の脳転移を有し、脳への放射線照射を受けたことがない患者を対象とした(Varianの助成を受けた)。 被験者を、STR(1日照射[定位手術的照射、標準線量20Gy]または5日間の分割照射[定位放射線治療、標準線量30Gy])を受ける群(98例)、またはHA-WBR(線量30Gy、10日間の分割照射、メマンチンを併用)を受ける群(98例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、MD Anderson症状評価表-脳腫瘍版(MDASI-BT)(0~10点[高スコアほど重症度が高く支障が大きい]、スコアの変化の範囲:-10~10点、-10点が最良)を用いた、患者報告による症状の重症度と日常生活への支障のスコアの、ベースラインから6ヵ月後までの変化の加重平均値。臨床的に意義のある変化量は0.98と定義した。主要アウトカムが有意に改善、生存期間は同程度 196例(平均年齢61歳、女性129例[66%])が登録された。ベースラインの全体の脳転移数中央値は14個(四分位範囲:11~18)で、49例(25%)が脳神経外科的切除術を受けた経験があった。83例(42%)が6ヵ月間の評価を完了した。 主要アウトカムについては、ベースラインから、6ヵ月間の追跡期間のベースライン後評価までの加重複合MDASI-BTスコアが、HA-WBR群で2.29点から3.03点へと悪化(平均変化量0.74点)したのに対し、STR群では2.69点から2.37点へと改善(同-0.32点)し、両群間に臨床的に意義のある有意な差を認めた(平均群間差:-1.06点、95%信頼区間:-1.54~-0.58、p<0.001)。 STR群で80例、HA-WBR群で85例が死亡し、生存期間中央値はそれぞれ8.3ヵ月および8.5ヵ月であった(p=0.30)。神経学的死亡は、STR群で19例(19%)、HA-WBR群で18例(18%)に発生し、年間累積発生率は9.4%および8.5%であった(p=0.35)。 新規脳転移の発生率はSTR群で有意に高く(年間累積発生率:45.4%vs.24.2%、p=0.003)、局所再発率はSTR群で有意に低かった(3.2%vs.39.5%、p<0.001)。頭蓋内病変の進展率には差がない(46.4%vs.39.4%、p=0.15)が、画像上の放射線脳壊死の発生率はSTR群で高かった(14.8%vs.1.1%、p=0.001)。また、12ヵ月時の認知機能はSTR群で有意に良好だった(p=0.004)。Grade3~5の有害事象に差はない 最も頻度の高い放射線照射関連有害事象は、STR群ではGrade1~3の疲労(27例[28%])、頭痛(15例[15%])、悪心(13例[13%])であり、HA-WBR群ではGrade1~3の疲労(43例[44%])、食欲不振(22例[22%])、頭痛(13例[13%])であった。Grade3~5の有害事象の発生率は両群で同程度だった(12例[12%]vs.13例[13%])。 著者は、「これまで4個以下の転移に限定されていたSTRの適応が、5~20個の多発性脳転移でも標準的な選択肢となりうることが裏付けられた」「この結果は、患者のwell-beingを優先する精密技術へのパラダイムシフトを強く主張するもの」としている。 また、「これらの知見は、頻回のMRIベースの監視とSTRを組み合わせれば、全脳照射を単に遅延させるだけでなく回避も可能と示唆するが、確認のための検討が必要である」と指摘している。

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歯や口の困りごとがうつ病と関係?日本人成人1.5万人を追跡調査

 メンタルヘルス対策は精神症状そのものに焦点が当てられてきた一方で、日常生活に身近な身体的要因との関連は十分に検討されてこなかった。そうした中、日本人成人約1万5,000人を1年間追跡した縦断研究により、歯や口の困りごとによって口腔関連QoL(OHRQoL)が低い人ほど、その後にうつ病が発症しやすいことが示された。研究は、岡山大学学術研究院医療開発領域の竹内倫子氏、学術研究院医歯薬学域予防歯科学分野の江國大輔氏、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の田淵貴大氏らによるもので、詳細は1月4日付で「Journal of Clinical Medicine」に掲載された。 うつ病は世界的に大きな疾病負担をもたらす精神疾患であり、その発症には年齢、社会的孤立、慢性疾患、生活習慣、QoLなど多様な要因が関与する。近年、歯の欠損や口腔痛、歯周病、OHRQoLとうつ病との関連も報告されているが、多くは横断研究にとどまり、因果関係は明らかでない。本研究は、うつ病のない成人を対象に、口腔の健康状態およびOHRQoLがその後のうつ病の発症と関連するかを縦断的に検討することを目的とした。 本研究では、2022年および2023年に実施された「Japan COVID-19 and Society Internet Survey(JACSIS調査)」のデータを用いて解析を行った。ベースライン時点でうつ病の自己申告がない20歳以上の参加者1万5,068人を解析対象とした。うつ病は、2回の調査間における自己申告に基づいて判定した。OHRQoLは、Oral Health Impact Profile(OHIP)の短縮版である日本語版OHIP-14を用いて評価した。口腔の健康状態については、歯の喪失、歯周病、口腔痛、過去1年間の歯科受診の状況により評価を行った。これらの要因とうつ病発症との関連について、社会人口学的要因および行動要因を調整したロジスティック回帰分析を用い、オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 追跡調査の結果、1年後に218人(1.45%)が「うつ病がある」と回答した。「うつ病がある」と回答した群と、「うつ病がない」と回答した群の背景因子を単変量で比較したところ、歯科受診状況やOHRQoL(OHIP-14)、年齢、性別、社会経済状況、生活習慣に加え、孤独感、社会的孤立、生活満足度、睡眠薬・抗不安薬の使用など、多くの心理社会的要因に差が認められた。 次にこれらの因子を独立変数、うつ病発症を従属変数として二項ロジスティック回帰分析を行った。その結果、OHRQoLが低いほど、うつ病を発症するリスクが有意に高いことが示された(OR 1.02、95%CI 1.00~1.04、P=0.039)。このほか、年齢が若いこと(OR 0.97、95%CI 0.96~0.99、P<0.001)、趣味や文化活動への参加(あり:OR 2.22、95%CI 1.50~3.30、P<0.001)、睡眠薬または抗不安薬の常用(現在使用:OR 3.51、95%CI 2.27~5.44、P<0.001)、孤独感の増大(OR 1.22、95%CI 1.14~1.30、P<0.001)、生活満足度の低さ(OR 0.90、95%CI 0.84~0.97、P=0.005)、および自己評価による健康状態の不良(OR 2.92、95%CI 1.81~4.72、P<0.001)も、うつ病の発症と関連していた。 さらに構造方程式モデリングによる解析では、OHRQoLの低下が、その後のうつ病の発症と関連する過程において、孤独感や社会的孤立、生活満足度、主観的健康感といった心理社会的要因が重要な媒介役を果たしていることが示された。OHRQoLは、これらの要因を介した間接的な影響に加え、うつ病発症への直接的な影響も認められた。 著者らは、「うつ病を自己申告していなかった人を追跡した結果、口腔関連QoLが低い人ほど、その後にうつ病が発症しやすいことが示された。この関連は、年齢や生活習慣などの要因を考慮した後も認められ、さらに孤独感や社会的つながり、生活満足度といった心理社会的要因が、その関係の一部を仲介している可能性がある」と述べている。 なお、本研究は自己申告に基づくオンライン調査であり、未評価の交絡因子や追跡期間の短さといった制約があるため、うつ病の評価とOHRQoLとの関連については因果的解釈に注意が必要であるとしている。

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男性の性機能障害、3つのリスク因子とは/順大

 不妊治療開始前の新婚または結婚予定男性の約5人に1人が性機能障害を有することが、日本の単施設研究で明らかになった。順天堂大学医学部附属浦安病院の谷口 歩氏らによる研究成果は、Reproductive Medicine and Biology誌2026年1月号に掲載された。 本研究は、新婚男性または結婚予定男性の性機能の現状を把握することを目的とした横断研究であり、2014年10月~2018年6月に順天堂大学医学部附属浦安病院および関連クリニックで各種不妊検査を受けた男性719例を対象とした。患者を直接面接し、患者自身が障害を感じているか否かの自己申告に基づく二分法判定により、勃起障害(ED)、射精障害、性欲減退、または複数の症状を有する者を性機能障害とした。年齢、性的状況、精液所見、喫煙状況、血液検査などの患者特性を評価し、性機能障害群と性機能正常群間で各種因子を比較して、単変量解析および多変量解析により性機能障害のリスク因子を特定した。 主な結果は以下のとおり。・対象となった719例は、平均年齢35.5±6.5歳、平均BMI 22.8±3.0kg/m2であった。113例(15.7%)が喫煙者であった。・719例中139例(19.3%)に性機能障害が認められ、内訳はEDが88例(12.2%)、射精障害が66例(9.1%)、性欲減退が35例(4.9%)であった(重複あり)。・性機能障害群では、単変量解析では年齢、アルブミン値、肝酵素、トリグリセライド、血糖値、精液量に有意差が観察されたが、多変量解析の結果、年齢、BMI、うつ症状を評価するベック抑うつ質問票スコアが、性機能障害の独立したリスク因子として特定された。 研究者らは「本研究により、高齢、肥満、うつ症状を呈する男性は、不妊治療開始前に性機能障害を経験する可能性が高いことが示された。新婚男性の約5人に1人という高い頻度で性機能障害が認められたことは、妊娠を希望するカップルにとって重要な知見である。これらの結果は、不妊治療開始前に、男性の性機能評価とリスク因子の把握が重要であることを示唆している。今後は、これらのリスク因子に対する早期介入や予防的アプローチの検討が、男性の生殖機能向上と治療成功率の改善につながる可能性がある」としている。

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第23回日本臨床腫瘍学会の注目演題/JSMO2026

 日本臨床腫瘍学会は、2026年2月28日にプレスセミナーを開催し、3月26~28日に横浜で開催される第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)の注目演題などを紹介した。 今回のテーマは「Medical Oncologists for Cancer Patients」。これは、2025年9月19日に「がん薬物療法」領域が日本専門医機構によりサブスペシャルティ領域として正式に承認されたことを受けて、もう一度学会としてどのようにメディカルオンコロジスト(腫瘍内科医)を育成すべきかを考えるという意図が込められている。なお、がん薬物療法専門医は2025年4月1日時点で1,825人が認定されている。 今年の演題数は計1,482題で過去最多となる。本学会はアジアにおける国際学会に近づけることを目指しており、約半数の738題は海外からで、インドネシア、インド、中国、フィリピン、台湾、ベトナムなど多くの国から寄せられている。プレジデンシャルセッション・全19演題Presidential Session 1「血液」3月26日(木)08:30~10:301)MOSUNETUZUMAB PLUS POLATUZUMAB VEDOTIN IS SUPERIOR TO R-GEMOX IN PATIENTS WITH R/R LBCL: THE PHASE III SUNMO TRIAL2)EFFICACY OF RITUXIMAB-BENDAMUSTINE +/- ACALABRUTINIB IN PATIENTS WITH MANTLE CELL LYMPHOMA: THE PHASE 3 ECHO TRIAL3)EPCORE FL-1:再発・難治性濾胞性リンパ腫に対するエプコリタマブ+リツキシマブ・レナリドミド(R2)併用療法の第III相非盲検試験4)Improved long-term tolerability with asciminib (ASC) vs IS-TKIs in newly diagnosed CML-CP: ASC4FIRST week 96 analysisPresidential Session 2「消化器/肝」3月26日(木)14:00~16:001)胃癌/食道胃接合部癌に対するデュルバルマブとFLOT化学療法の術前術後補助療法(MATTERHORN)2)SKYSCRAPER-07:根治的化学放射線療法後の切除不能食道扁平上皮癌におけるアテゾリズマブ±チラゴルマブの第III相試験の日本部分集団解析結果3)Precemtabart tocentecan (Precem-TcT, M9140): Results from PROCEADE-CRC-01 and post-hoc analysis in Japanese patients4)TALENTACE:肝細胞癌患者を対象としたTACE及びアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用による第III相試験Presidential Session 3「呼吸器」3月27日(金)9:50~11:501)EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌における一次治療オシメルチニブ ± プラチナ製剤-ペメトレキセド併用療法の全生存期間:FLAURA2日本コホート2)MARIPOSA試験(未治療EGFR変異陽性非小細胞肺がんアミバンタマブ+ラゼルチニブ併用療法vsオシメルチニブ)全生存期間アジア人解析3)EGFR変異陽性進行非小細胞肺癌に対するラゼルチニブ併用療法におけるアミバンタマブの皮下投与と静脈注射の比較:PALOMA-3日本人サブセット解析4)進展型小細胞肺がんを対象としたイフィナタマブ デルクステカン(I-DXd)の第II相試験(IDeate-Lung01試験):日本人サブグループ解析結果の報告Presidential Session 4「乳癌」3月28日(土)8:20~10:201)ESR1遺伝子変異が出現した進行乳癌におけるカミゼストラントによる一次治療:SERENA-6試験の日本人サブグループ解析2)Pooled safety analysis of sacituzumab govitecan in metastatic breast cancer (mBC), including patients in NA/EU and Asia3)Sacituzumab govitecan + pembrolizumab vs chemo + pembrolizumab in untreated PD-L1+ advanced TNBC: ASCENT-04/KEYNOTE-D194)術前療法後に浸潤性残存病変を有する再発高リスクHER2陽性乳がん患者を対象に、T-DXdとT-DM1を比較したDESTINY-Breast05の中間解析Presidential Session 5「TR/第I相試験」3月28日(土)10:30~12:001)WGSに基づく個別化ctDNAパネルによるMRDの検出: MONSTAR-SCREEN-3プロジェクトにおける乳癌コホート2)固形がんにおけるチロシンキナーゼ阻害薬の有効性と標的遺伝子mRNA発現の関連:SCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN-23)DAREON-7: phase I study of obrixtamig plus chemotherapy in patients with DLL3-positive neuroendocrine carcinomas注目の演題会長企画シンポジウム9 がん患者が求める専門医とは3月28日(土)10:30~12:00 腫瘍内科医にはエビデンスを重視した医療だけでなく、対話を重視した医療も求められている。本シンポジウムでは、「がん患者が求める専門医とは」をテーマに、現在のがん治療が抱える問題について、3つのテーマで患者会側および専門医側が講演する。総合討論では、「がん患者が求める専門医」と「専門医の認識」についてすり合わせ、ディスカッションを深める。会長企画シンポジウム4 希少がんや希少フラクションの医薬品開発~戦略・デザイン・金・ゴール~3月26日(木)16:05~17:35 希少がん・希少フラクションなどを含む患者数の少ない集団では、開発や戦略の困難さ・事業計画の予見可能性・市場性の観点などさまざまなハードルがある。今後の運用や方向性を策定することで、バランスのとれた希少疾病指定医薬品の開発を促進し、医薬品開発力・科学性・先進性においてどのように世界をリードしていけるのかを議論する。委員会企画5 希少がんに対するエビデンスのある抗悪性腫瘍薬の供給問題3月27日(金)10:20~11:50 希少がんであっても、エビデンスの高い標準治療を滞りなくがん患者に届けるにはどうしたらよいのかを、アカデミア、製薬メーカー、がん患者、厚生労働省の立場より議論し、今後に必要なアクションについて考える。

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冠動脈疾患の画像診断、放射線被曝量に世界的格差/JAMA

 近年、冠動脈疾患(CAD)の画像検査は世界中で著しく増加しているが、画像検査による患者被曝線量には大きなばらつきがあることが明らかとなった。米国・コロンビア大学アービング医療センターのAndrew J. Einstein氏らINCAPS 4 Investigators Groupが、世界101ヵ国の742施設が参加して行われた横断研究「IAEA Noninvasive Cardiology Protocols Study(INCAPS)4」の解析結果を報告した。著者は、「今回の結果は、世界的に放射線量低減のための研修、標準化されたプロトコール、そして最新機器の導入がきわめて重要であることを示している。これは、とくに低・中所得国の患者ならびに冠動脈CT血管造影(CCTA)を受ける患者に影響を与えるだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2026年2月25日号掲載の報告。2023年10~12月の1週間にデータを収集 研究グループは、2023年10月15日~12月10日のいずれか1週間において、参加施設で実施された冠動脈疾患画像検査(SPECTまたはPET心臓核医学検査、冠動脈石灰化スコア[CACS]評価のための心臓CT、またはCCTA)の情報を分析した。収集した情報は、各検査の実施件数、患者背景、撮像プロトコール、放射線関連パラメータであった。 主要アウトカムは、患者への放射線量(実効線量)、およびガイドライン推奨値である実効線量中央値が9mSv以下の施設の割合。 101ヵ国の742施設から1万9,302例のデータ(核医学検査1万1,061例[SPECT:1万295例、PET:726例]、CT検査8,241例[CCTA:6,939例、CACS:6,631例])が報告された。患者の実効線量中央値が最も高いのはCCTA、施設間でもばらつき大 1万9,302例の患者背景は、女性が8,515例(44%)、年齢中央値63歳(四分位範囲[IQR]:54~71)であった。 患者の実効線量は検査によって大きく異なり、中央値(IQR)でCACSが1.2(0.7~2.2)mSv、PETが2.0(1.6~2.4)mSv、SPECTが6.5(3.9~8.6)mSv、CCTAが7.4(3.5~15.5)mSvであった。施設別の実効線量中央値にもばらつきが認められた。 患者の実効線量中央値9mSv以下の施設は、核医学検査実施施設で81%(355施設)、CCTAで56%(216施設)であり、核医学検査実施施設が有意に多かった(p<0.001)。また、実効線量中央値9mSv以下の患者は、核医学検査を受けた患者がCCTAを受けた患者より有意に多かった(79%vs.56%、p<0.001) 同一検査における線量(中央値[IQR])は地域間で有意差が認められ、西ヨーロッパが最も低く(核医学心臓検査で4.8[2.3~7.3]mSv、CCTAで4.6[2.4~9.8]mSv)、核医学心臓検査は中南米(7.8[5.3~9.7]mSv)、CCTAはアフリカ(25.2[14.7~35.3]mSv)で最も高かった(いずれもp<0.001)。 回帰モデルでは、国の所得水準と線量の間に逆相関の関係が認められた。患者線量は、低・中所得国において高所得国より核医学検査が20%(95%信頼区間[CI]:3.6~38.4)、CCTAが最大96%(95%CI:41.7~170.8)高かった(いずれもp<0.001)。ただし、所得水準や地域間で顕著なばらつきが認められている。

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変形性関節症患者のQOLに重要なのは握力よりも日常生活動作

 握力は従来、筋力の指標とされているが、変形性関節症(OA)患者においては、握力よりも、椅子から立ち上がれるかなどの日常生活動作の方が生活の質(QOL)に大きく影響することが示された。シャルジャ大学(アラブ首長国連邦)のAsima Karim氏らによるこの研究の詳細は、「European Journal of Applied Physiology」に12月6日掲載された。Karim氏は、「この結果は非常に印象的だった。OA患者は握力が弱く、QOLも全体的に低いが、QOL低下の実態を示していたのは、握力ではなく日常生活動作だったのだ」と述べている。 この研究では、SHARE(Survey of Health, Ageing and Retirement in Europe)第8波の調査データを用いて、握力および身体能力と、コントロール感、自立度、自己実現、喜びの4領域から成る評価ツールであるCASP-12で測定した心理社会的QOLとの関連が検討された。対象者は、ヨーロッパの28カ国からSHAREに参加した50歳以上のOA患者7,591人(OA群)、およびOAではない参加者3万923人(非OA群)であった。 その結果、OA群は非OA群と比較して、握力とCASP-12スコアのいずれも有意に低かった(P<0.05)。また、両群とも握力が高いほどCASP-12スコアも高いという正の関連が認められたが、その関連は強いものではなく、非OA群の方がわずかに強かった。一方、身体機能との関連については、運動課題(歩行、椅子からの立ち上がり、階段の昇降など)が困難で疲労感が強いほどCASP-12スコアは低下するという負の関連が認められ、QOLが低いことの最も明確なサインは、簡単な日常生活動作がうまくできないことであることが示唆された。 Karim氏は、「この研究結果のメッセージは明確だ。OA患者においては、握力よりも、自信とエネルギーを持って世界を動き回れるかどうかがQOLを形作るということだ」と述べている。 さらに、本研究では、持続的な疲労感が患者の健康において重要であるにもかかわらず見落とされがちな要因であることも明らかになった。この結果を踏まえて研究グループは、「臨床医は、痛みの緩和だけでなくエネルギー管理も優先すべきだ。動く気力が出ないと、患者の自信や自立性は急速に低下し、QOLも全体的に低下する」と述べている。 共著者の1人である同大学のRizwan Qaisar氏は、「治療の目標を症状の管理にとどめるべきではない。高齢のOA患者のQOLを向上させたいのなら、薬だけでなく、移動能力、エネルギー、機能的自立に注目する必要がある」と述べている。

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複数のがん種で診断後の運動量とがん死亡リスク低下が関連

 これまでの研究で、一部のがん種では身体活動ががんの発症や再発・死亡リスク低下と関連することが報告されている。しかし、乳がん、大腸がん、前立腺がん以外のがん種における身体活動とがん死亡に関するエビデンスは限られている。今回、米国がん協会のErika Rees-Punia氏らは、身体活動とがん死亡との関連が十分に検討されてこなかった7種のがん(膀胱がん、子宮体がん、腎がん、肺がん、口腔がん、卵巣がん、直腸がん)の患者を対象に、診断後の身体活動量、および診断前後の身体活動量の変化とがん死亡リスクとの関連を検討する観察研究を実施した。結果はJAMA Network Open誌2026年2月17日号に掲載された。 本研究では、6つの大規模前向きコホート※の統合データを用いた。対象は上記7がん種の患者で、ベースラインデータは1976~97年に収集した。1週間当たりの余暇時間の中高強度身体活動量をMET・時/週で評価し、診断後少なくとも1年を経過した時点(平均2.8年後)の中高強度身体活動量とがん死亡との関連を解析した。主要アウトカムはがん死亡で、平均追跡期間は10.9年であった。※Cancer Prevention Study-II Nutrition Cohort、Health Professionals Follow-Up Study、NIH-AARP Diet and Health Study、Nurses' Health Study、Nurses' Health Study II、Women's Health Study 主な結果は以下のとおり。・統合解析には、1万7,141例のがん患者が含まれた(平均年齢67歳、女性60%)。多いがん種は膀胱がん(24%)、子宮体がん(22%)、肺がん(18%)であった。・膀胱がん、子宮体がん、肺がん、卵巣がん患者において、診断後の身体活動レベルが高い群では、身体活動を行っていない群と比較してがん死亡リスクの低下が認められた。・膀胱がん、子宮体がん、肺がん患者では、推奨量(7.5MET・時/週以上)を下回る身体活動レベルであっても、身体活動を行っていない群と比較して死亡リスクの低下が認められた。・口腔がんおよび直腸がんでは、一部の高い身体活動レベルにおいてがん死亡リスクの低下が示唆された。・腎がんでは、推奨量を満たす群でリスク低下の傾向がみられたものの、有意差は認められなかった。・診断前後の身体活動の変化を検討した解析では、肺がんおよび直腸がん患者において、診断前後ともに推奨量を満たさなかった群と比較して、診断前は推奨量を満たさなくても診断後に満たした群ではがん死亡リスクが低かった。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -肺がん HR:0.58(95%CI:0.47~0.71) -直腸がん HR:0.51(95%CI:0.32~0.83) 研究グループは「本研究は、身体活動量の低下が全身状態の悪化や死期が近いことを反映している逆因果の可能性、アンケートに回答できる健康な患者が対象となっている選択バイアス、喫煙による残余交絡の影響を完全には排除できない」と指摘したうえで、「これらの結果は、がんとともに生きる人々とがんを乗り越えた人々の寿命と全体的な健康のために身体活動を促進することが重要であることを示唆している」とまとめた。

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カテーテル関連感染予防に最も効果的な消毒薬の製剤と濃度~大規模メタ解析

 血管内カテーテル挿入前の皮膚消毒で使用するグルコン酸クロルヘキシジンとポビドンヨードにおけるカテーテル関連感染発生率が最も低い製剤や濃度を調べるため、フランス・Centre Hospitalier Universitaire de PoitiersのBertrand Drugeon氏らが過去最大規模の系統的レビューとメタ解析を実施した。その結果、イソプロパノールベースの高濃度グルコン酸クロルヘキシジン(1%以上)でカテーテル関連感染発生率が最も低いことがわかった。JAMA Network Open誌2026年2月12日号に掲載。 研究グループは、PubMed、EMBASE、Cochrane Central、Scopus、Web of Science、CINAHLを2025年1月7日まで検索し、試験登録データベースおよび関連研究、ガイドラインの参考文献リストをレビューした。対象は、血管内カテーテル挿入前の皮膚消毒としてグルコン酸クロルヘキシジンまたはポビドンヨードを用いた方法を比較した無作為化比較試験(RCT)で、1つ以上のカテーテル関連感染アウトカム(カテーテル関連血流感染、カテーテル先端コロニー形成、局所感染)を報告した研究とし、査読者2人が独立して、PRISMAガイドラインに従ってデータを抽出した。ランダム効果ネットワークメタ解析により相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を推定した。主要評価項目は、グルコン酸クロルヘキシジン製剤またはポビドンヨード製剤に関連するカテーテル関連血流感染発生率、カテーテル先端コロニー形成率、局所感染率とした。 主な結果は以下のとおり。・16件のRCT(7,803例、カテーテル1万1,985本)が選択基準を満たした。・アルコールベースの製剤は水溶液製剤より一貫して感染率が低く、またイソプロパノールがエタノールより優れていた。・アルコールベースのグルコン酸クロルヘキシジンは、アルコールベースのポビドンヨードより、カテーテル関連血流感染発生率(RR:0.70、95%CI:0.45~1.08)、カテーテル先端コロニー形成率(RR:0.42、95%CI:0.37~0.48)、局所感染率(RR:0.40、95%CI:0.23~0.70)が低かった。・高濃度グルコン酸クロルヘキシジン(1%以上)は、低濃度グルコン酸クロルヘキシジンより、カテーテル関連血流感染発生率(RR:0.31、95%CI:0.19~0.52)およびカテーテル先端コロニー形成率(RR:0.36、95%CI:0.30~0.42)が低かった。・局所的な有害事象はまれであり、アルコールベースの製剤でわずかに多く、グルコン酸クロルヘキシジンとポビドンヨードで同程度であった。 著者らは、「これらの結果は、アルコールベースのポビドンヨードと水溶液製剤は、グルコン酸クロルヘキシジンまたはアルコールが使用できない状況に限定すべきであることを示唆する」とまとめている。

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減塩食品の普及が国民の心臓や脳を守る

 加工食品として流通しているパンやピザなどの塩分が減ったとしても、それに気づく人はいないかもしれない。しかし、人々の体は間違いなくその変化に反応するようだ。減塩食品の普及によって、国民の心臓病や脳卒中のリスクが低下した可能性を示唆する欧州発の2件の論文が、「Hypertension」に1月26日掲載された。 一つ目の論文はフランス国立公衆衛生局のClemence Grave氏らによるもので、パンに含まれる食塩を減らすことで、毎年約1,200人のフランス人の命が救われただろうと推測している。同国では2022年に、政府とパン製造業界との間で食塩含有量を減らすための自主的な協定が結ばれており、今回の研究ではその潜在的な影響が調査された。なお、パンは意外なほど食塩含有量が多く、特にバゲット(最も一般的なフランスパン)には、1日当たり推奨摂取量の約25%の食塩が含まれているという。 2023年までに同国で製造されるパンの大半は新しい基準を満たしており、その影響もあり、フランス国民の1日の食塩摂取量は約350mg減少したとのことだ。その結果、心臓関連死は年間約1,186人減少したと推定され、心臓病や脳卒中による入院の減少という変化も現れている。 論文の筆頭著者であるGrave氏は、「この減塩対策は、フランス国民にほとんど気づかれなかった。われわれの研究結果は、そのようなわずかな変化にもかかわらず、このような対策が公衆衛生に大きな影響を与える可能性のあることを示している」と総括。また、「このアプローチは、個人の行動変容に依存しないという点で特に力強い。個人の行動変容を引き起こしてそれを持続させることはしばしば困難だが、この手法であれば、より健康的な食環境が自然に創出される」と解説している。 二つ目の論文は英オックスフォード大学のLauren Bandy氏らによるもので、同国の減塩施策の推進によって、20年間で約10万件の心臓病と2万5,000件の脳卒中を予防できると予測している。同国では2024年までに、さまざまな加工食品に含まれている食塩を削減する数値目標を設定していた。この施策の対象食品には、パン、チーズ、肉、スナックなどの食料品84品目に加え、ハンバーガー、カレー、ピザなどのテイクアウト食品24品目が含まれている。 Bandy氏らの試算によると、この減塩施策が完全に達成された場合、英国民の1日当たりの食塩摂取量は平均6,100mgから4,900mgへと、約18%減少すると考えられ、その結果、前記のように心臓病や脳卒中の発症が大きく減る可能性があるという。論文の筆頭著者である同氏は、「ほかの国と同様に英国でも心血管疾患が主要な死亡原因である。英国の食品会社が塩分削減目標を完全に達成することにより、英国民は食習慣を変える必要もなく、心血管疾患と死亡リスクを大きく抑制でき、医療費を削減できるはずだ」と述べている。その上で同氏は、「食品業界は減塩に関してまだ多くの進歩を遂げる必要があることも明らかであり、改善の余地は大いにある」と付け加えている。

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