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英語論文を読みながら、英語力をアップさせる方法とは?【タイパ時代のAI英語革命】第13回

英語論文を読みながら、英語力をアップさせる方法とは?英語で書かれた医学論文を読むことに苦手意識を持つ日本の医療者は少なくありません。最近では、翻訳アプリやChatGPTのようなAIツールのおかげで、英文を日本語に翻訳して読むことはすぐにできるようになりました。でもせっかくなので、AIツールをもう一段活用して論文を深く読み、深く理解することを目指しましょう。医学論文には共通した「型」があり、その構造を理解することで内容の把握が飛躍的にラクになります。さらにAIを活用することで、専門用語の解釈や英文読解も大幅に効率化できます。厳密には、「英語の論文を読む」ことと「論文を理解する」ことは別のスキルです。本稿では、それぞれの場面でAIをどう活用できるのかを紹介します。まずは「英語の論文を読む」部分から解説します。最初に、英語の論文に関わる単語をおさらいしましょう。英語の医学論文の原稿は、通常「manuscript(マニュスクリプト)」と呼ばれます。このmanuscriptには、ある一定の構造が存在し、世界中の研究者が共通のフォーマットにのっとって論文を書きます。以下がその典型的な構造です。英語医学論文の主な構成要素:・Title(タイトル)論文の主題を示します。ここから研究の全体像を把握します。・Author(s)(著者)研究者名と所属が記載されている欄です。・Abstract(アブストラクト)冒頭に掲載される論文の要約部分です。日本語だと「要旨」もしくは「抄録」と呼ばれることが多いです。多くの場合、Abstractは300ワード前後でまとめられていることが多く、下記のような小見出しに分かれています。―Introduction(背景、目的)研究の背景、目的、先行研究のレビューなどが記載されています。―Methods(方法)研究デザイン、研究対象、使用した統計手法が詳述されます。―Results(結果)主要なデータや統計結果が提示されます。グラフや表が多く用いられます。―Discussion(考察)結果の解釈や意義、研究限界(Limitations)、将来の展望(Future Directions)などが議論されます。―Conclusion(結論)研究の最終的なまとめです。―References(参考文献)本文中で引用された文献一覧のことを英語でReferenceといいます。また、論文を引用することをCitation(引用)と呼びます。論文は必ず論理的な順序で構成されているので、どのセクションにどの情報が書かれているかを把握することで、必要な情報を効率的に読み取ることが可能となります。manuscriptを読む前に、まず目を通したいのがAbstractです。本文を簡潔にまとめてくれており、英語に慣れていない場合でも、Abstractをざっと読むだけで論文の概要を把握することができます。では、Abstractを英語と日本語で読むときのコツをお伝えしましょう。ChatGPTを使って「わからない単語」を辞書化する「頑張って英文のまま読みたい!」という努力家のあなたにおすすめなのが、ChatGPTを「自分専用の医療英単語辞書」のように使う方法です。Abstractは比較的まとまっていて読みやすいものの、読解が難しい専門的な医療英単語がたくさん出てくることが多く、つまずくポイントになりがちです。まずは難解語をChatGPTで自分が理解しやすい単語や表現に変換してもらいます。ChatGPTを開いて、以下のようにプロンプトを入力します。プロンプト例これから英語の医学論文を読むに当たり、英語が苦手な医療者でも理解しやすいように、難解な医学英単語を以下のいずれかの方法で説明してください。1.専門用語をより平易な英単語に言い換える2.わかりやすい英語で定義・解説を加える3.必要であれば日本語でも補足説明を加えるこのAbstractの中から、とくに理解が難しそうな単語・表現をリストアップして、それぞれについて上記の方法で解説してください。このように入力すると、「Abstractのテキストを貼ってください」といった返事がきます。その後は、Abstractをコピー&ペーストで貼り付けるだけで完了です。たとえば、Abstractに「equitable implementation」という表現があった場合、その表現をわざわざ指示しなくとも、ChatGPTが自動で難しそうな表現をピックアップし、下のように表示してくれました。equitable implementation簡単な言い換えfair use for everyone英語での説明Making sure the tool is used equally for different groups (for example, English- and non-English-speaking families).日本語補足すべての患者に公平に導入すること。このように、文中の専門用語が1つずつ丁寧に説明され、自分専用の用語リストがあっという間にできあがります。ほかにもわからない単語・表現があった場合、追加で単語・表現だけをコピーして再入力すれば、個別に解説してくれます。これで、英語を読むスタイルは保ちながらも、難しい単語・表現には辞書を引くようにChatGPTを使いながら読み解くことができます。まとめ英語医学論文は、ChatGPTのようなツールを適切に活用することで、苦手意識を大きく減らすことができます。まずはAbstractのざっと読みから始め、徐々に本文へと読み進めていくのがおすすめです。次のセクションでは、医学論文を読むだけでなく、正しく理解するためのプロンプトを紹介します。

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第321回 化学療法を省ける乳がん患者を遺伝子検査Prosignaで同定

化学療法をしなくて大丈夫な初期乳がん患者を、欧米で発売されている遺伝子発現解析検査Prosigna(PAM50)で選定しうることが示されました1,2)。ホルモン受容体陽性/HER2陰性の乳がんを切除し、担当医の見立てで術後化学療法が適切とされた40歳以上の男女4千例超(4,429例)が参加した第III相OPTIMA試験3)の結果です。被験者のほとんどは腋窩リンパ節転移(node-positive)を呈していましたが、腫瘍の大きさが30mm以上の患者は腋窩リンパ節転移が見当たらなくとも試験に参加することができました。被験者は定番の化学療法とそれに続く内分泌療法の組み合わせを実施する群(対照群)か、Prosignaの検査結果に基づいて化学療法をするかしないかを決める群(Prosigna利用群)にそれぞれおよそ半々に割り振られました。Prosignaは米国カリフォルニア州サウスサンフランシスコのがん診断会社Veracyteの製品で、50の遺伝子発現を解析して10年間の再発しやすさ(Risk of Recurrence:ROR)を点数で表します4)。Prosigna利用群の2,214例はROR値が高値(60超)なら対照群の2,215例と同様に化学療法と内分泌療法の組み合わせに振り分けられ、ROR値が低値(60以下)なら化学療法は省いて内分泌療法のみとされました。化学療法を省略しうるROR値が低い患者の割合は68%で、中央値およそ4年間(3.9年間)の浸潤性乳がんか死亡の発生数はProsigna利用群と対照群でほぼ同数のそれぞれ139例と141例でした。その結果からProsigna利用群の浸潤性乳がんなしでの5年間生存(invasive breast cancer free survival:IBCFS)率は90.4%であり、対照群の91.5%に統計的に劣りませんでした。ROR値が低い患者の比較でもやはり非劣性が裏付けられ、5年間IBCFS率はより高く94~95%ほどでした。言うまでもなく化学療法は心身に多大な負担をもたらし、不妊、認知障害、早すぎる閉経を強いる恐れがあります。後を引く神経障害の恐れも大きく、10年ほど前の報告によると、術後化学療法(ドセタキセル)を受けた乳がん患者およそ千人の半数近い43%が長く続く末梢神経障害を被っていました5)。今回のOPTIMA試験の結果は大勢の乳がん患者の治療を劇的に変えうる可能性を秘めており、医師が患者それぞれに見合った治療を選べるようにするのを手助けするだろう、とVeracyte社の乳がん分野の医学責任者Kelly Marcom氏は言っています2)。 参考 1) First results from the OPTIMA phase III randomized non-inferiority trial of test-directed chemotherapy in patients with high clinical risk ER-positive HER2-negative early breast cancer / 2026 ASCO Annual Meeting 2) OPTIMA Trial Results to Be Presented at ASCO Provide New Evidence Supporting Prosigna-Guided Chemotherapy Decisions in Breast Cancer / BusinessWire 3) Optimal personalised treatment of early breast cancer using multiparameter analysis / ISRCTN 4) Prosigna brochure 5) Eckhoff L. et al. Eur J Cancer. 2015;51:292-300.

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頻回増悪を示すCOPD、astegolimabの有効性・安全性(ALIENTO・ARNASAより)/Lancet

 インターロイキン-33(IL-33)とその受容体ST2は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪時に生じる好中球性および好酸球性の炎症に関与するとされる。イタリア・フェラーラ大学のAlberto Papi氏らALIENTO and ARNASA investigatorsは、2つの臨床試験「ALIENTO試験」「ARNASA試験」において、頻回の増悪歴を有するCOPD患者を対象に、2週ごとのastegolimab(ST2を介するIL-33の活性を阻害するヒト抗ST2 IgG2モノクローナル抗体)投与の有用性を評価し、ALIENTO試験ではプラセボと比較して年間増悪発生率が有意に低下し、ARNASA試験でも効果の大きさは同等であったが統計学的有意性は示されなかったことを報告した。Lancet誌2026年5月23日号掲載の報告。第IIb相と第III相の無作為化プラセボ対照比較試験 研究グループは、COPD治療におけるastegolimabの有効性と安全性の評価を目的に、2つの二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(第IIb相ALIENTO試験[24ヵ国191施設]、第III相ARNASA試験[35ヵ国319施設])を行った(GenentechとF. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。 対象は、ALIENTO試験が年齢40~90歳、ARNASA試験は40~80歳で、COPDと診断され、頻回の増悪歴(中等度または重度の増悪が年2回以上)を有し、試験開始時の診療ガイドラインに基づき最適化された2剤または3剤による吸入維持療法(ICS+LABA、LAMA+LABA、ICS+LAMA+LABA)を受けている患者とした。ベースラインの血中好酸球数は問わなかった。 被験者を、最適化された吸入維持療法に加えて、astegolimab 476mgを2週または4週ごとに皮下投与する群、またはプラセボ群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は52週間であった。 主要エンドポイントは、52週時点の、1回以上の試験薬の投与を受けた患者における中等度または重度の増悪の年換算発生率とした。重度増悪が減少する可能性も ALIENTO試験では、2021年10月~2024年2月に1,301例(年齢中央値67.0歳[四分位範囲[IQR]:41.0~90.0]、女性44.1%、astegolimabの2週ごと投与群433例、4週ごと投与群437例、プラセボ群431例)を、ARNASA試験では、2023年1月~2024年6月に1,375例(67.0歳[IQR:40.0~81.0]、35.6%、459例、459例、457例)を登録した。 プラセボ群との比較における年間増悪発生率の補正後率比(RR)は、ALIENTO試験のastegolimab 2週ごと投与群で0.85(95%信頼区間[CI]:0.72~1.00、p=0.049)と有意に優れたが、4週ごと投与群では0.93(95%CI:0.79~1.10、p=0.38)であり有意ではなかった。 一方、ARNASA試験では、astegolimab 2週ごと投与群のRRは0.85(95%CI:0.72~1.01、p=0.068)とALIENTO試験と同じ値を示したものの統計学的有意差はなく、同4週ごと投与群では0.82(95%CI:0.70~0.98、p=0.024)と有意差を認めた。 また、重度増悪(24時間以上の入院、死亡)の年間発生率の、プラセボ群と比較した補正後RRは、ALIENTO試験のastegolimab 2週ごと投与群で0.71(95%CI:0.49~1.05、p=0.088)、4週ごと投与群で0.78(95%CI:0.53~1.14、p=0.20)であり、ARNASA試験では、それぞれ0.67(95%CI:0.47~0.95、p=0.024)および0.83(95%CI:0.59~1.16、p=0.27)であった。上咽頭炎、上気道感染症が約10%で発現、選択肢が限られた患者で有用か 有害事象の発生率は治療群間で均衡しており、多くの参加者が1つ以上の有害事象を経験した(ALIENTO試験:1,301例中1,093例[84.0%]、ARNASA試験:1,375例中1,176例[85.5%])。試験からの脱落に至った有害事象は、ALIENTO試験で78例(6.0%)、ARNASA試験で59例(4.3%)に発生した。 ALIENTO試験で最も頻度の高かったCOPD以外の有害事象は上咽頭炎(134例[10.3%])であり、ARNASA試験では上気道感染症(146例[10.6%])であった。 死亡は、ALIENTO試験で40例(3.1%)、ARNASA試験で44例(3.2%)に認めた。両試験を通じて、合計3例(0.1%)の死亡が担当医により治療関連と判定された(ALIENTO試験の2週ごと投与群の1例[脳梗塞]、ARNASA試験の2週ごと投与群の2例[COVID-19、COPD])。 著者は、「これら2つの試験の知見を総合すると、症状が重度で臨床的負担が大きく、治療選択肢が限られているCOPD患者では、ST2/IL-33経路を標的とすることが、COPDの増悪の頻度を低減するうえで有用となる可能性が示唆される」としている。 また、「両試験の参加者は合わせて39ヵ国(日本を含む)の2,676例(21%が白人以外の人種)に上り、対象集団が広範にわたることから、さまざまな臨床的、生物学的な特性について検討することで、治療反応を示すサブグループの特定が可能と考えられる」と考察している。

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GLP-1Rを介さず肥満を改善?GIPR/GCGR標的薬の可能性

 体重減少にGLP-1受容体(GLP-1R)作動薬は本当に必要なのか――人気の肥満症治療薬の前提となっている考え方の一つに疑問を投げかける、新たな減量アプローチに関する研究成果が報告された。マウスやラットを用いた初期段階のこの研究により、GLP-1Rではなく、GIPおよびグルカゴンの受容体(GIPR/GCGR)を標的とする薬剤でも、GLP-1Rと同等の体重減少効果が得られる可能性が示唆された。米インディアナ大学ブルーミントン校化学科のRichard DiMarchi氏らによるこの研究結果は、「Molecular Metabolism」に4月15日掲載された。 DiMarchi氏はSTAT Newsの取材に対し、「われわれはGLP-1Rの重要性に強くとらわれてきた」と語った。一方、この新アプローチは、GLP-1Rを標的にしていない。同氏は、「われわれは、これを引き算による足し算と呼んでいる。つまり、何かを取り除くことで、より良い結果が得られる可能性があるということだ」と説明している。 複数の受容体を標的とする多重作動薬は、肥満および2型糖尿病治療において高い有効性を示す薬剤クラスとして注目されている。例えばGIPR/GLP-1Rを標的とする二重作動薬であるチルゼパチドは、GLP-1R作動薬のセマグルチドと比較してより大きな体重減少効果を示している。さらに、レタトルチドのようなGIPR/GCGR/GLP-1R三重作動薬では、24%前後の体重減少が報告されている。一方で、GLP-1R作動薬は吐き気や嘔吐などの副作用を伴い、そのため使用可能な用量が制限されることがある。こうした背景から、GLP-1R作動薬を用いずに、GIPRおよびGCGRの活性化のみで肥満を改善できるかが検討されている。 本研究では、GIPR、GCGR、GLP-1Rの選択的作動薬、二重作動薬、および三重作動薬が、食餌誘導性肥満マウス(野生型およびGLP-1R欠損マウス)における体重および血糖制御に与える影響が評価された。 その結果、選択的GIPR作動薬と選択的GCGR作動薬を併用すると、肥満モデルマウスにおいて体重減少と血糖改善が認められた。また、GLP-1R/GIPR/GCGR三重作動薬のレタトルチド投与により、GLP-1R欠損肥満マウスの体重が正常化した。さらに、GIPR/GCGR二重作動薬BWB3054は、GLP-1Rに対する活性は100倍以上低いにもかかわらず、レタトルチドと同等レベルの環状アデノシン一リン酸(cAMP)を産生し、肥満モデルマウスにおいてもレタトルチドと同程度の体重減少効果を示した。 安全性についても検討が行われた。サルを用いた試験では、高用量の新薬を投与しても苦痛の兆候は認められなかった。一方で、チルゼパチドなどの既存の薬剤では、サルでは高用量に対する忍容性が認められなかった。 ただし、動物実験の結果がそのままヒトに当てはまるとは限らない。また、GLP-1R作動薬は、心血管系への有益な効果が知られているが、新たな薬剤が同様の効果を持つか否かについては不明である。 本研究について、米ミシガン栄養肥満研究センターのディレクターであるRandy Seeley氏は、「この研究結果は有用で印象的だ。体重減少の仕組みについての新しい見方を提示している」と述べている。

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市中肺炎で検出された肺炎球菌、ワクチンカバー率は?/感染症学会・化学療法学会

 肺炎球菌は市中肺炎(CAP)の主要な原因菌である。侵襲性肺炎球菌感染症のサーベイランスは、日本を含む多くの国で確立されているものの、肺炎球菌性CAPの血清型分布については、国内データが十分に蓄積されているとはいえない。そこで、日本の成人入院CAP患者を対象に、肺炎球菌性CAPの臨床的特徴、臨床転帰、肺炎球菌血清型の分布を明らかにすることを目的として、多施設共同前向き研究「PNEUMO Japan」が実施されている。本研究の中間解析の結果、肺炎球菌陽性と判定された患者は17.6%であり、CAP患者から検出された計76血清型のうち、89.5%は21価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV21)に含まれる血清型であることが示された。2026年5月22~24日に開催された第100回日本感染症学会総会・学術講演会/第74回日本化学療法学会総会 合同学会において、柳原 克紀氏(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・診断学分野)が結果を報告した。なお本結果は、2026年5月17~21日に開催された第14回国際肺炎・肺炎球菌感染症学会(International Society of Pneumonia and Pneumococcal Diseases:ISPPD-14)のアンコール演題として発表された。 本研究は、日本国内23施設で実施されている多施設共同前向き研究であり、登録は2025年2月に開始され、2026年まで継続予定である。対象は、18歳以上の入院を要するCAP患者とした。肺炎球菌の検出には、無菌・非無菌検体の培養検査、迅速尿中抗原検査(BinaxNOW)、および32血清型を検出可能な血清型特異的尿中抗原検出法(Serotype Specific Urinary Antigen Detection:SSUAD)を用いた。患者背景および臨床転帰の解析対象は、2025年8月22日までに登録されたCAP患者318例、血清型分布の解析対象は、2025年11月18日までに登録されたCAP患者536例の尿検体のうち、SSUADで陽性の66例、計76血清型であった。 主な結果は以下のとおり。・CAP患者318例の平均年齢は71.6歳、女性の割合は43.1%であった。培養検査または迅速尿中抗原検査で肺炎球菌陽性と判定された患者の割合は17.6%(56例)、非肺炎球菌性CAPは82.4%(262例)であった。・肺炎球菌性CAP群は、非肺炎球菌性CAP群より若年であった。平均年齢は肺炎球菌性CAP群68.6歳、非肺炎球菌性CAP群で72.2歳であり(p=0.042)、75歳以上の割合は、それぞれ39.3%、53.8%であった。・CAP患者の20.1%に肺炎球菌ワクチン接種歴があり、5年以内の接種は5.7%であった。接種歴不明の割合が35.5%と高かった。各群の肺炎球菌ワクチン接種歴ありの割合は、肺炎球菌性CAP群32.1%(18例)、非肺炎球菌性CAP群17.6%(46例)であり、5年以内の接種歴ありの割合は、それぞれ7.1%(4例)、5.3%(14例)であった。・全CAP患者318例における院内死亡は2.5%(8例)に認められた(いずれも非肺炎球菌性CAP群の患者)。・入院期間中央値は、肺炎球菌性CAP群が9日であったのに対し、非肺炎球菌性CAP群では12日と長かった(p=0.007)。・SSUADで陽性の66例から検出された76血清型のうち、頻度が高かった血清型は、3型(15.8%)、35B型(11.8%)、19A型(10.5%)、11A型(7.9%)、22F型(6.6%)、23B型(6.6%)であった。・肺炎球菌ワクチンの血清型カバー率は、PCV21が89.5%、PCV20が60.5%であった。PCV21に含まれるがPCV20には含まれない血清型は39.5%を占めた。 本結果の結語として「肺炎球菌性CAPは全CAPの17.6%を占めており、とくに高齢者や慢性疾患を持つ人々の間で、大きな疾病負荷となっていることが示された。PCV21は、本研究で特定された肺炎球菌血清型の89.5%をカバーしており、疾患予防に寄与する可能性が示唆された。これらの知見は、日本の成人の予防接種プログラムにおいて、現行および次世代の肺炎球菌ワクチンの継続的な使用と評価を支持するものである」とまとめた。

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慢性片頭痛、最も有望な治療薬はCGRP標的治療薬か

 慢性片頭痛は治療が難しいことがあるが、慢性片頭痛の成人患者を対象としたランダム化比較試験(RCT)を解析した大規模レビューで、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)またはその受容体を標的とする新しいクラスの治療薬が、最も有効である可能性が示された。CGRP標的治療薬には、eptinezumab(商品名Vyepti)やアトゲパント(商品名Qulipta、アクイプタ)などが含まれる。マクマスター大学(カナダ)Michael G. DeGroote Institute for Pain Research and CareのMalahat Khalili氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に5月5日掲載された。 CGRPは脳や神経系に存在するポリペプチドで、血管拡張作用を持ち、片頭痛時に増加して痛みや炎症に関与すると考えられている。CGRP標的治療薬は、CGRPまたはその受容体を標的とすることで、片頭痛発作を抑制するよう設計されている。 今回の研究でKhalili氏らは、慢性片頭痛の成人患者を対象とした43件のRCT(対象者の総計1万4,725人)のデータを解析して、慢性片頭痛に対する予防薬の効果と忍容性を比較検討した。 その結果、高~中等度の確実性を有するエビデンスにより、eptinezumabは月間片頭痛日数を2.34日、エレヌマブは2.08日、フレマネズマブは1.77日、ガルカネズマブは2.00日、アトゲパントは2.10日、それぞれプラセボと比べて減少させることが示された。これらの薬剤はいずれもCGRP標的治療薬で、注射剤、点滴静注剤、経口薬として使用されており、従来薬と比べて忍容性も良好だった。一方、ボツリヌストキシン(商品名ボトックス)は、月間片頭痛日数をわずかに(1.34日)減少させる可能性があるものの、エビデンスの確実性は低く、有害事象による治療中止リスクの上昇が示された。さらに、リメゲパントは有効ではない可能性が示唆されたほか、トピラマート、バルプロ酸(バルプロ酸ナトリウム)、プロプラノロールなどの従来薬については、研究数が少なくバイアスリスクも高かった。 研究グループは、CGRP標的治療薬に関する独立した研究を実施して、特に長期的な安全性や治療継続性について検討する必要があるとの見方を示している。また、新しい治療法が最も有望であるように見える一方で、適切な治療は、患者個々のニーズや希望、費用などによって異なると指摘し、最適な治療法を見つけるには医療従事者と相談することを推奨している。

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第63回 「自宅が病院になる」時代へ ― Hospital at Homeとは何か

高齢化が進む世界で、いま注目を集める医療提供モデルがあります。「Hospital at Home(以下、HaH)」と呼ばれる、自宅にいながら入院相当の急性期医療を受けられる仕組みです。日本ではまだなじみの薄い言葉かもしれませんが、欧米ではすでに一定の実装が進んでいます。私の勤めるマウントサイナイ医科大学にもHaHのチームがあり、救急外来からHaHに入院させることもしばしばです。今回ご紹介するのは、HaHが従来の入院医療と比べて高齢者にとって本当に有効で安全なのかを、ランダム化比較試験11件・計3,301例を統合して検証した系統的レビュー・メタ分析です1)。本稿ではまずHaHの概念を整理し、論文の知見をご紹介したうえで、日本社会への適用可能性について考えてみたいと思います。Hospital at Homeとはどのような仕組みかHaHとは、本来であれば急性期入院が必要な患者さんに対し、医師・看護師・理学療法士などの多職種チームが患者さんのご自宅へ出向き、「病院レベルの治療」を自宅で提供する仕組みです。点滴投与、バイタルサインの遠隔モニタリング、計画的な訪問診療などが組み合わされ、自宅という環境で入院に匹敵する医療が展開されます。入り口は大きく2通りに分かれます。救急外来などから直接ご自宅で治療を開始する「入院回避型(admission avoidance)」と、いったん病院で安定化させた後に早期退院し、自宅で治療を継続する「早期退院型(early discharge)」です。「住み慣れた場所で過ごしたい」という多くの高齢者の願いに応えつつ、院内感染やせん妄、廃用症候群といった「入院に伴う合併症」を減らすことが期待されています。私の所属する医療機関でも、両パターンの利用があります。メタ分析が明らかにしたこと本研究は、PubMedやCochrane Libraryなど主要なデータベースを2024年4月まで網羅的に検索し、65歳以上(または65歳以上が80%以上を占める集団)を対象とする11件のRCTを統合しました。結果は、なかなか印象的なものでした。在院日数はHaH群で平均およそ2.1日短縮し、総医療費もHaH群で有意に少なく、再入院リスクは18%の低下が示されました。さらに、手段的日常生活動作(IADL)で測る生活機能は、HaH群でわずかながら有意に改善していました。一方で、死亡率や有害事象(転倒・せん妄など)の発生頻度には両群間で差がありませんでした。安全性を損なうことなく、効率と機能予後の双方で利益があった、と読み取れる結果です。ただし、いくつかの限界もあります。再入院や費用に関する研究間のばらつきが大きく、HaHのモデル設計、医療システムの違い、患者選定の基準の違いなどが結果に大きく影響している可能性があります。著者ら自身も、対象研究の大半が西側先進国で行われており、文化や制度の異なる地域での適用可能性は不確かである、と慎重に述べています。日本に活かせるのかそれでは、HaHは日本に活かせるのでしょうか。日本は世界に類を見ない超高齢社会であり、急性期病床の逼迫、医療費の増大、そして「最期は住み慣れた場所で過ごしたい」という多くの声、いずれも切実な課題です。訪問診療・訪問看護・地域包括ケアという在宅医療の制度的基盤も整いつつあり、HaHを取り入れる素地は決して悪くないと考えられます。一方で、慎重に考えるべき点も少なくありません。HaHは「入院に代わる急性期治療」であり、24時間体制の急変対応、遠隔モニタリング、多職種連携が前提となります。日本の在宅医療は安定期の慢性管理や看取りを中心に発展してきた経緯があり、急性期医療を在宅で提供する人員配置や診療報酬体系は、現状のままでは十分とは言えないでしょう。家族介護者の負担、住環境、地域差といった現場の事情も無視できません。それでもなお、入院に伴う合併症を抑え、機能と尊厳を守りつつ医療資源を効率化できる可能性は、日本の医療にとって大きな示唆を含んでいるとも思います。本論文の知見を踏まえながら、日本の文脈に合った「日本版HaH」の検証研究や制度設計を進めていくこと。それが、これからの日本の医療界に課された大切な宿題と言えそうです。 1) He H, et al. Efficacy and Safety of Hospital-at-Home versus Traditional Hospital Care in Older Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Gerontology. 2026;72:384-396.

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軽度認知障害患者は1年でどの程度認知機能が低下するのか?

 中国・黒龍江中医薬大学のMingyang Liu氏らは、軽度認知障害(MCI)患者における認知機能低下の軌跡を調査し、関連するリスク因子を特定するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2026年4月13日号の報告。 対象は、2021~24年にMCIと診断された高齢患者500例。MCIから認知症への進行に関連するリスク因子を特定するため、多変量Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。認知機能低下の年間進行率は、最終スコアとベースラインスコアの差をフォローアップ期間で割って算出し、関連因子の特定には多変量線形回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値36ヵ月(四分位範囲:24~48ヵ月)の間に、78例(15.6%)で認知症への進行を認めた。・SLUMSスコアの年間平均低下率は0.8ポイント/年(95%信頼区間[CI]:0.6~1.0、p<0.001)、MoCAスコアの年間平均低下率は0.7ポイント/年(95%CI:0.5~0.9、p<0.001)であった。・特定の認知領域については、RAVLTスコアの年間平均低下率は1.2ポイント/年(95%CI:0.9~1.5、p<0.001)、CDTスコアの年間平均低下率は0.3ポイント/年(95%CI:0.2~0.4、p=0.002)であった。 著者らは「本研究により、高齢、男性、低学歴、高血圧、ベースライン時のSLUMSスコアの低さが、高齢MCI患者における認知機能低下の加速と関連していることが示唆された。早期のリスク層別化は介入戦略に役立つ可能性があるが、因果関係の推論には限界があるため、今後のプロスペクティブ研究が必要とされる」としている。

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広範囲脳梗塞でも血栓回収療法は有効か?~6試験メタ解析/Lancet

 広範囲の虚血性変化を呈する脳卒中患者は、従来、血管内血栓回収療法の対象から除外されることが多い。米国・University Hospitals Cleveland Medical CenterのAmrou Sarraj氏らATLAS Investigatorsは系統的レビューとメタ解析による「ATLAS研究」において、発症後24時間以内に受診した広範囲の虚血コアを有する虚血性脳卒中患者では、薬物療法と比較して血管内血栓回収療法は機能的アウトカムを有意に改善し、死亡率の低下をもたらすことを示した。研究の成果は、Lancet誌2026年5月23日号に掲載された。90日時のmRSスコア分布を2段階メタ解析で評価 ATLAS研究は、医学関連データベースを用いて2018年3月1日~2025年3月1日に発表された文献を検索し行われた。 発症後24時間以内に受診した広範囲の虚血コアを有する虚血性脳卒中患者(Alberta Stroke Program Early CT Score[ASPECTS]5点以下、または推定虚血コア体積50mL以上)を対象に、薬物療法との比較で血管内血栓回収療法の有効性と安全性を評価した試験を選出し、すべての試験から患者レベルの個別データを取得した。 主要アウトカムは、90日の時点での修正Rankinスケール(mRS)スコアの分布とした。変量効果モデルを用いた2段階メタ解析を行い、調整済み統合一般化オッズ比(aGenORs)を算出した。機能的自立、自立歩行も良好 日本の「RESCUE Japan-LIMIT試験」(202例)を含む6つの試験に参加した1,886例(血管内血栓回収療法群944例、薬物療法群942例)を解析の対象とした。ベースラインの全体の年齢中央値は70歳で、女性は43.8%であった。閉塞部位は中大脳動脈が63.0%、内頸動脈が36.9%で、NIHSSスコア中央値は19点、最終健常確認から無作為化までの時間中央値は360分、ASPECTS中央値は4点、虚血コア体積中央値は82.1mLだった。 90日時のmRSスコア中央値は、血管内血栓回収療法群4点(四分位範囲[IQR]:3~6)、薬物療法群5点(IQR:4~6)であった(aGenOR:1.63、95%信頼区間[CI]:1.42~1.88、p<0.0001)。 また、90日時の機能的自立(mRSスコア0~2点:19.5%vs.7.5%、補正後統合相対リスク[aRR]:2.57[95%CI:1.99~3.31]、p<0.0001)および自立歩行(mRSスコア0~3点:36.5%vs.19.9%、aRR:1.96[95%CI:1.58~2.43]、p<0.0001)、90日以内の全死因死亡(31.1%vs.37.3%、aRR:0.82[95%CI:0.70~0.97]、p=0.022)も、血管内血栓回収療法群で有意に優れた。 36時間以内の症候性頭蓋内出血(1.1%vs.1.0%、補正前統合リスク群間差:-0.17%ポイント[95%CI:-1.01~0.67]、p=0.69)、および24~48時間以内の神経学的悪化(22.0%vs.17.9%、aRR:1.19[95%CI:0.87~1.62]、p=0.27)には、両群間に有意な差を認めなかった。サブグループで一貫した改善効果 血管内血栓回収療法群における機能的アウトカムの改善は、臨床および画像所見上のサブグループ全体で一貫していた。ただし、推定虚血コア体積が150mL以上の患者では、とくに発症後早期(0~6時間)において、点推定値は血管内血栓回収療法を支持していたものの、95%CIが広かったため解釈には限界があると考えられた。 発症後6時間を超えて受診した超広範な虚血性変化(虚血コア体積150mL以上)を有する症例(エビデンスが限定的)を除き、発症後24時間以内に受診した患者では、ASPECTSスコアおよび虚血コア体積にかかわらず、その有益性は持続していた。 著者は、「これらの結果は、従来から血栓回収療法の適応外とされていた広範囲の虚血性病変を有するかなりの数の患者における、血管内血栓回収療法の有効性と安全性を裏付けるものである」としている。 また、「本研究の知見は、ASPECTSスコアや灌流画像上のミスマッチにかかわらず、高齢、脳卒中の重症度が高い、優位半球・劣位半球の脳卒中患者において、血管内血栓回収療法の適用を検討すべきであることを示唆する」と指摘している。

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半月板部分切除術、長期的改善は認められず

 世界的に広く実施されている膝の手術の一つである半月板部分切除術は、患者の症状改善に寄与しないばかりか、症状悪化につながる可能性がある----そんな研究結果を、ヘルシンキ大学(フィンランド)外科分野教授のTeppo Jarvinen氏らが報告した。半月板損傷は、膝関節内にある半月板が損傷することで、痛みや腫れ、関節可動域の制限などを引き起こす疾患で、半月板部分切除術は、その損傷部分を切除する手術だ。Jarvinen氏らの研究では、この手術は長期的には膝の痛みや機能を改善せず、むしろ関節炎の進行を促進する可能性が示された。詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に4月29日掲載された。Jarvinen氏は、「今回の結果は、広く行われている治療法に効果がないばかりか、有害でさえあることが判明する“医療の逆転”の一例である可能性がある」とニュースリリースで述べている。 この研究では、フィンランドで半月板損傷患者146人を対象に実施されたランダム化比較試験の10年間の追跡結果が解析された。患者の約半数(70人)には半月板部分切除術が実施され、残り半数(76人)にはシャム(偽)手術が行われていた。研究グループは、10年間にわたり、X線検査による変形性膝関節症の進行評価に加え、再手術の有無や追加の膝治療などを追跡した。また、3種類の患者報告アウトカム尺度を用いて、半月板損傷に伴う症状、膝機能、運動後の膝痛などについても繰り返し評価した。 患者のうち、いずれの群も91%(半月板部分切除術群64人、シャム手術群69人)が10年間の追跡調査を完了した。解析の結果、半月板部分切除術は、患者の症状改善にほとんど役立たなかったことが示された。具体的には、半月板損傷に伴う症状や日常生活機能障害を評価するウエスタンオンタリオ半月板評価ツール(WOMET)スコアの両群間の平均差は−9.4点で、半月板部分切除術群の結果の方が不良であった。また、膝機能を評価するLysholmスコアも−5.1点と、半月板部分切除術群で機能低下傾向が認められた。さらに、運動後の膝痛スコアは0.86点高く、半月板部分切除術群の方が痛みが強い傾向が示された。 加えて、X線画像で変形性膝関節症の進行が確認された割合は、半月板部分切除術群で81%、シャム手術群で70%であり、人工膝関節置換術または高位脛骨骨切り術を受けた患者の割合はそれぞれ12%、4%であり、いずれも半月板部分切除術群の方が高かった。 共著者の1人であるPihlajalinna Kelloportti Hospital(フィンランド)のRaine Sihvonen氏は、「この手術は、膝の内側の痛みが内側の半月板損傷によって引き起こされており、そうした損傷部位を外科的に治療できるという前提に基づいている。このような生物学的妥当性に基づく推論は、いまだ医学界で広く見られる。しかし今回の場合、その前提は厳密な検証によって支持されなかった」とニュースリリースで述べている。 論文の筆頭著者であるヘルシンキ大学整形外科・外傷学分野のRoope Kalske氏によれば、今回の結果は、半月板部分切除術の有効性が乏しいことを示した過去のランダム化比較試験の結果とも一致しているという。 Jarvinen氏は、「過去10年近くにわたり、多くの整形外科領域以外の独立した診療ガイドライン作成団体が、この手術の中止を推奨してきた。それにもかかわらず、米国整形外科学会(AAOS)や英国膝関節外科学会(BASK)などは、依然としてこの手術を推奨し続けている。これは、効果の乏しい治療法をやめることがいかに難しいかを如実に示している」と述べている。 なお、米ハーバード大学医学大学院は、半月板損傷に対する非外科的治療として、理学療法、膝を休ませること、膝の冷却および挙上、膝装具(ブレース)の使用、市販の鎮痛薬の服用などを推奨している。

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第320回 次世代“3G”薬retatrutideが肥満手術に匹敵するほど体重を減らした

Lillyのいわば「一挙三得」の3重アゴニストのretatrutide皮下注射が、第III相試験で肥満手術に匹敵するほどの30%近い体重低下をもたらしました1,2)。昨今の肥満薬の先駆けのNovo Nordiskのウゴービ(セマグルチド)は、糖に応じたインスリン放出を促すホルモンの一種のグルカゴン様ペプチド1(glucagon-like peptide-1:GLP-1)の受容体を活性化します。糖に応じたインスリン放出を助けるホルモンはGLP-1をはじめとしてインクレチンと総称されます。直接対決試験3)でウゴービを上回る体重減少作用を示したLillyの肥満薬ゼップバウンド(チルゼパチド)は、GLP-1受容体に加えてグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic polypeptide:GIP)というもう1つのインクレチン受容体も活性化するいわば両取り効果があります。Lillyの次なる肥満薬のretatrutideはそれら2つのインクレチン受容体に加えてさらにグルカゴン(glucagon:GCG)という一味違うホルモンの受容体も活性化します。マウスでの検討結果によると、retatrutideのGCG受容体活性化はエネルギー消費を亢進させることでさらなる体重低下を引き出すようです4)。それら3つのホルモンの英語表記の頭文字がどれもGであることからretatrutideはちまたでは3G薬(triple-G)と呼ばれたりします2)。当のLillyはというと、retatrutideを先に記したとおり3重アゴニスト(triple agonist)と称しています。TRIUMPH-1と銘打つ第III相試験には、BMIが30以上の肥満か、BMIが27以上で体重に関連する疾患がある過体重の成人2,339例が参加しました5)。糖尿病患者は参加していません。retatrutide投与群の体重は用量が多いほど減りました。被験者全員が試験の決まりどおりに治療されたとみなす解析(efficacy estimand)での低用量(4mg)、中用量(9mg)、高用量(12mg)群の80週時点の体重は、ベースラインに比べてそれぞれ19.0%、25.9%、28.3%低くて済んでいました。プラセボ群の体重はほぼ変化なしで、ほんの2.2%減ったのみです。別の解析手段(treatment-regimen estimand)でのretatrutide低用量、中用量、高用量群の体重低下率は若干低めで、それぞれ17.6%、23.7%、25.0%の低下を示しました(プラセボ群は3.9%低下)。ベースラインのBMIが35以上の患者に対する24週間のretatrutide継続投与で体重は一層減り、およそ2年の104週時点で多ければ30%ほどの体重減少に至っています。retatrutideの有害事象はインクレチンのように働く薬の試験で認められるものとおおむね一致しており、胃腸系の悪心、下痢、便秘、嘔吐が多く認められました。先立つ試験で認められた神経有害事象の感覚異常(dysesthesia)は、retatrutide低用量、中用量、高用量群でそれぞれ5.1%、12.3%、12.5%に生じました。プラセボ群ではほとんど生じていません(0.9%)。感覚異常はおおむね軽~中等度で、多くは試験中に解消し、retatrutide投与はたいてい継続しました。80週時点の体重がプラセボ効果差し引きで26%ほども減れば試験名のTRIUMPH-1にふさわしく上出来なようですが、今や肥満薬への期待はどうやら天井知らずで、そうでもないとする向きもあるようです。たとえばBMO Capital Marketsのアナリスト達はretatrutide投与群のプラセボ効果差し引き体重減少を実際の26%ほどより多い27~28.5%と見込んでいました2)。当のアナリスト達は、このまま進めば今年中にretatrutideは米国で承認申請されるとみています。TRIUMPH-1試験のさらなる結果は、来月に米国のニューオーリンズで開催される米国糖尿病協会年次総会で発表されます1,6)。 参考 1) Lilly's triple agonist, retatrutide, delivered powerful weight loss in pivotal Phase 3 obesity trial / PRNewswire 2) Lilly’s triple-G drug helps patients lose roughly a quarter of weight, showcasing competitive profile / FierceBiotech 3) Aronne LJ, et al. N Engl J Med. 2025;393:26-36. 4) Coskun T, et al. Cell Metab. 2022;34:1234-1247. 5) ClinicalTrials.gov(TRIUMPH-1試験) 6) What to know about retatrutide: An investigational triple hormone receptor agonist / Eli Lilly

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ヨーグルトや低脂肪チーズ、高齢期のうつ病や認知症予防に有効?

 ヨーグルトやチーズなどの発酵乳製品には、非乳製品とは異なる生理活性成分が含まれているが、高齢期のうつ病や認知症リスクとの関連性については依然として不明であった。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のMuniratul Idrus氏らは、発酵乳製品摂取と高齢期のうつ病および認知症リスクとの関連を調査した。Nutrients誌2026年3月24日号の報告。 年齢70~90歳で地域在住の高齢者を対象としたコホート研究であるSydney Memory and Ageing Studyのデータを用いて、乳製品摂取と抑うつ症状(15項目の老年期うつ病評価尺度:GDS15)、心理的苦痛(Kessler-10[K10尺度])、うつ病(医師による診断または抗うつ薬の使用)と認知症(DSM-IV基準)との関連性を検討した。ヨーグルト、チーズ、非発酵乳製品の摂取量は、ベースライン時に検証済みの食物摂取頻度調査票を用いて評価した。縦断的関連性は、死亡を考慮したFine-Gray競合リスクモデルを用いて検討した。また、横断的関連性も評価した。 主な結果は以下のとおり。・参加者966例(平均年齢:78.3歳、女性の割合:55.5%)において、ヨーグルトの摂取量が多い群(標準1食分)では、非摂取群と比較し、抑うつ症状スコアが有意に低かった(調整β:第3~4四分位群で-0.37および-0.39、平均:88.5~164g/日)。低脂肪チーズの摂取量が多い群でも同様の結果が得られた(調整β:-0.35、平均:13.2g/日)。・平均3.3年のフォローアップ期間中に、うつ病の新規発症が120例、死亡が68例に発生した。・ヨーグルトの摂取量が多い群と低脂肪チーズの摂取量が多い群では、非摂取群と比較し、うつ病リスクが低かった(各々、調整サブ分布ハザード比:0.41[95%信頼区間[CI]:0.19~0.88]および0.40[95%CI:0.21~0.78])。・心理的苦痛、認知機能、認知症発症(平均フォローアップ期間:5.2年、発症100例、死亡153例)については、有意な関連は認められなかった。・また、チーズや牛乳の定期的な摂取についても関連は認められなかった。 著者らは「発酵乳製品、とくにヨーグルトと低脂肪チーズの摂取は、非発酵乳製品とは異なり、高齢期のメンタルヘルスに潜在的な役割を果たす可能性が示唆された」としている。

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頻回増悪を示すCOPD、astegolimabが好酸球数によらず増悪を抑制か(ALIENTO・ARNASA併合解析)/ATS2026

 既存の維持療法によっても増悪リスクが残存する慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者が存在し、新たな治療選択肢が求められている。IL-33受容体であるST2を標的とするモノクローナル抗体astegolimabは、頻回増悪歴を有するCOPD患者を対象として、開発が進められている。本剤について、海外第IIb相試験「ALIENTO試験」および国際共同第III相試験「ARNASA試験」が実施されており、米国胸部学会国際会議(ATS2026 International Conference)において、2試験の併合解析結果をJadwiga A. Wedzicha氏(英国・インペリアル・カレッジ・ロンドン)が報告した。併合解析の結果、astegolimab 2週ごと投与は、ベースライン時の血中好酸球数にかかわらず、主要評価項目の中等度または重度のCOPD増悪の年間発現率をプラセボと比較して低下させ、忍容性も良好であることが示された。本解析結果は、American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌オンライン版2026年5月18日号に同時掲載された1)。 なお、ALIENTO試験およびARNASA試験の結果は、Lancet誌オンライン版2026年5月18日号に掲載された2)。astegolimab 2週ごと投与は、ALIENTO試験において主要評価項目を達成したが、ARNASA試験では主要評価項目を達成しなかった。 ALIENTOは海外第IIb相試験、ARNASAは国際共同第III相試験であり、いずれも頻回増悪歴を有するCOPD患者を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。対象は、12ヵ月間に中等度または重度のCOPD増悪を2回以上経験し、modified Medical Research Council(mMRC)グレード2以上で、最適化された維持療法を受けている患者とした。ベースライン時の血中好酸球数、慢性気管支炎の有無、喫煙歴を問わず組み入れられた。対象患者は、astegolimab 476mgを2週ごとに投与する群(Q2W群)、4週ごとに投与する群(Q4W群)、プラセボを投与する群(プラセボ群)に1:1:1の割合で割り付けられ、52週間の治療を受けた。主要評価項目は、52週時点までの中等度または重度のCOPD増悪の年間発現率とした。副次評価項目は、St. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)-C合計スコアの変化、重度のCOPD増悪の年間発現率、中等度または重度増悪の初回発現までの期間、気管支拡張薬投与後1秒量(FEV1)の変化、E-RS:COPD合計スコアなどとした。なお、今回の併合解析は事前規定されたものである。 主な結果は以下のとおり。・併合解析のmodified ITT集団は、Q2W群892例、Q4W群896例、プラセボ群888例であった。患者背景は各群でおおむねバランスがとれていた。平均年齢はそれぞれ66.76歳、67.10歳、67.14歳、男性の割合は60.3%、60.2%、60.4%であった。・血中好酸球数の平均値は、Q2W群183.5/μL、Q4W群187.6/μL、プラセボ群176.5/μLであった。血中好酸球数300/μL以上の患者は、それぞれ13.9%、13.1%、11.4%であった。・52週時点までの中等度または重度のCOPD増悪の年間発現率は、Q2W群1.04、Q4W群1.07、プラセボ群1.22であった。プラセボ群に対するレート比は、Q2W群0.85(95%信頼区間[CI]:0.76~0.96、p=0.0077)、Q4W群0.88(95%CI:0.78~0.99、p=0.0265)であった。・事前規定されたサブグループ解析において、ベースライン時の血中好酸球数、喫煙歴などのほとんどのサブグループで、Q2W群の中等度または重度のCOPD増悪の減少が一貫して認められた。プラセボ群と比較したレート比は、血中好酸球数150/μL未満では0.82、150/μL以上では0.88、300/μL未満では0.87、300/μL以上では0.73であった。・重度のCOPD増悪の年間発現率は、Q2W群0.15、プラセボ群0.22で、プラセボ群に対するレート比は0.68であった(95%CI:0.52~0.87、名目上のp=0.0028)。・52週時点でSGRQ-C合計スコアがベースラインから4点以上改善した患者の割合は、Q2W群がプラセボ群より高かった(オッズ比:1.35、95%CI:1.11~1.64、名目上のp=0.0029)。・SGRQ-C総スコアのベースラインからの変化量、気管支拡張薬投与後FEV1の変化量、E-RS:COPD総スコアの変化量については、明確な群間差は示されなかった。・安全性評価集団における100人年当たりの有害事象発現率は、Q2W群365、Q4W群403、プラセボ群408であった。重篤な有害事象はそれぞれ100人年あたり39、41、48であった。 本併合解析について、Wedzicha氏は「astegolimab 2週ごと投与は、頻回増悪歴を有するCOPD患者において良好なリスク・ベネフィットプロファイルを示した」とまとめた。

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糖尿病患者の下痢・便秘に有効なビフィズス菌の種類は?

 2型糖尿病患者の下痢・便秘といった消化器症状にプロバイオティクスであるビフィドバクテリウム・ビフィダムG9-1(BBG9-1)が有効であることをマキノ病院の小林 玄樹氏らが明らかにした。Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2026年4月22日号掲載の報告。 研究者らは、下痢または便秘を伴う2型糖尿病患者100例を対象に12週間の非盲検ランダム化比較試験を実施。対照群またはBBG9-1群に1対1に無作為に割り付け、BBG9-1群にはビフィズス菌を1日12mg投与した。主要評価項目は全解析対象者(BBG9-1群43例、対照群51例)の消化器症状評価尺度(Gastrointestinal Symptom Rating Scale:GSRS)の変化。 主な結果は以下のとおり。・BBG9-1摂取群のGSRS全体スコアは、対照群(2.08±0.67~2.06±0.63)と比較して有意に改善した(2.22±0.67~1.83±0.62、群間差-0.34[95%信頼区間:-0.55~-0.14、p=0.001])。・サブグループ解析では、女性、便秘を有する、65歳以上、BMI25kg/m2未満の患者において、GSRS全体スコアの改善がより大きいことが示された。・GSRSサブスケールの中で、BBG9-1は対照群と比較して便秘スコアの平均減少が有意に高かった(-0.79±1.38 vs.-0.13±1.04、p=0.013)。・下痢スコアの平均変化には有意差がなかったものの(-0.42±1.14 vs.-0.06±1.08、p=0.14)、追跡調査による下痢スコアはBBG9-1群で有意に低かった(2.04±1.00 vs.2.58±1.44、p=0.049)。・腸内細菌叢を解析した結果、BBG9-1群でPhocaeicola属の相対存在量が有意に増加した(BBG9-1群:15.98±13.75%から19.56±14.79%、対照群:18.14±14.17%から18.21±13.58%)。・糞便中の短鎖脂肪酸(SCFA)の評価では、BBG9-1投与に関連した有意な変化は認められなかった。・両群間で有害事象の発生率は同程度であった。

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第62回 コンゴでエボラ流行、87人死亡。私たちが知らない落とし穴

2026年5月17日、世界保健機関(WHO)は、アフリカ・コンゴ民主共和国の東部イトゥリ州で発生しているエボラ出血熱の流行を、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に該当すると宣言しました1)。アフリカ連合によれば、すでに87例が亡くなり、疑い例を含めると336例の感染が判明しているとされています。隣国ウガンダではコンゴ人男性の死亡例もすでに報告されており、周辺国への波及が強く警戒される事態となっています2)。「またエボラ?」と思った方も多いかもしれません。「エボラのワクチンはあるって聞いたけど、どうして今も流行を抑えられないんだろう?」そんな素朴な疑問を抱いた方もいるかもしれません。実は、今回のニュースを少し立ち止まって整理してみると、その「あるはずのワクチン」の話に、知っておきたい大切な落とし穴が隠れています。そもそもエボラとは、どんな病気?エボラウイルス病は、フィロウイルス科に属するエボラウイルスによって引き起こされる感染症です。潜伏期間はおよそ6〜12日(最短2日、最長21日)で、発症後は突然の発熱、激しい頭痛、筋肉痛、倦怠感など、決して特徴的とはいえない症状から始まります3)。数日のうちに嘔吐や下痢が加わり、大量の体液の喪失をきたすことが、その病態の中心になります。「出血熱」という名前が独り歩きしている感がありますが、実際には出血が目立つ患者さんは少数派で、多くは脱水と臓器の障害、ショックで命を落とします3)。致死率は流行ごとに大きく異なります。1976~2022年までの集計によれば、ザイールウイルスで約66.6%、スーダンウイルスで約48.5%、そして今回コンゴで検出されたブンディブギョウイルスでは約32.8%とされています4)。「3割」と聞くと低く感じるかもしれませんが、新型コロナウイルス感染症の致死率が1%前後であったことを思えば、いかに恐ろしい数字かが分かるかと思います。感染は、症状のある患者さんや亡くなった方の血液・体液との直接接触によって起こります。空気感染はしません。つまり、感染拡大の主役となるのは、家族の看病、葬儀での遺体への接触、そして十分な防護具なしで治療にあたる医療者です3)。逆にいえば、「症状のない人」からはうつらない。これも知っておきたい大切なポイントです。なぜ「緊急事態宣言」がそんなに重い意味を持つのかWHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言するのは、その感染症が「国境を越える拡大リスクがあり、国際協調的な対応が必要」と判断されたときに限られます。これまでに発令されたのは、新型インフルエンザ(H1N1)、ポリオ、エボラ(西アフリカ流行、東部コンゴ流行)、ジカウイルス、新型コロナウイルス、エムポックスなど、ごく限られた事例です。つまりPHEICは、「世界中で警報を共有しましょう」「物資、人材、検査体制を国際的に動かしましょう」という、最上位レベルの号令です。今回もWHOは、コンゴと国境を接するウガンダや南スーダンへの飛び火を念頭に、検査強化や接触者追跡の必要性を強く訴えています2)。日本に直接的な影響が及ぶ可能性は現時点では高くはないものの、グローバル化した現代において、こうした宣言を「対岸の火事」と片付けるのは適切ではないと、私は考えています。エボラに対する承認済みのワクチンは?実は、エボラに対しては承認済みのワクチンがあります。「rVSV-ZEBOV(商品名:Ervebo)」と呼ばれるもので、2019年に欧米で承認され、その後アフリカ複数カ国でも使用が認められました。すでに30万人を超える人に接種されています5)。流行が発生すると、患者の接触者と、そのまた接触者にワクチンを打つ「リング・ワクチネーション」という戦略が用いられ、実際の流行抑制に効果を上げてきました6)。では、なぜ今回はそれができないのでしょうか。実は、承認されているErveboは、エボラウイルスの中の「ザイールウイルス」専用のワクチンであり、今回検出された「ブンディブギョ株」に対する有効性は確立されていないのです5)。エボラウイルス属にはザイール、スーダン、ブンディブギョ、タイフォレストなど複数の種が含まれ、それぞれ抗原性(ウイルスの顔立ち)が異なります。実験動物のデータでも、ザイールウイルス向けワクチンはスーダンウイルスにはうまく反応しないことが示されており、ウイルスが違えば効果はなくなる、というのが現実です5)。承認されている治療薬(atoltivimab/maftivimab/odesivimab[商品名:Inmazeb]やansuvimab[商品名:Ebanga]など)も同様に、ザイールウイルスにのみ有効性が確認されている薬剤です5)。ではなぜ、ブンディブギョ向けのワクチンが整備されてこなかったのか。理由は単純で、これまでブンディブギョの流行が散発的かつ小規模で、製薬開発の優先順位がどうしても下がってきたからです。2014年の西アフリカ大流行(約2万9,000例感染)が世界を震撼させ、Erveboの開発が一気に進んだことを思えば、対照的な状況といえます5)。これは「市場原理だけにワクチン開発を委ねるとどうなるか」という、グローバルヘルスにおける古くて新しい問題でもあります。流行が起きるまで開発の動機が生まれず、いざ流行すれば「ワクチンがない」と慌てる。この繰り返しを断ち切るために、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)など国際的な枠組みが動いてはいますが、まだ十分とは言いがたいのが実情です。日本に住む私たちが今すぐエボラそのものを過剰に恐れる必要はないでしょう。感染経路は限定的で、症状のない人からは感染しないからです。ただ、海外渡航前後の発熱を安易に放置しないこと、そして「アフリカで起きていることは、いずれ自分たちの問題にもなり得る」という視点を持つことは、パンデミックの時代に大切な姿勢かもしれません。今回のニュースは、感染症が今なお人類にとって克服しきれない相手であること、そして国家間で協力してワクチン開発を進める難しさを、改めて教えてくれているように思います。 1) WHO. Epidemic of Ebola Disease caused by Bundibugyo virus in the Democratic Republic of the Congo and Uganda determined a public health emergency of international concern. 2026 17 May. 2) 共同通信. コンゴのエボラ熱、緊急事態宣言 WHO、東部の州で死者87人. 2026年5月17日. 3) Bray M, et al. Clinical manifestations and diagnosis of Ebola disease. UpToDate. Waltham, MA: UpToDate Inc. Accessed May 17, 2026. 4) Izudi J, et al. Case fatality rate for Ebola disease, 1976-2022: A meta-analysis of global data. J Infect Public Health. 2024;17:25. 5) Chertow DS, et al. Treatment and prevention of Ebola and Sudan virus disease. UpToDate. Waltham, MA: UpToDate Inc. Accessed May 17, 2026. 6) Muyembe JJ, et al. Ebola Outbreak Response in the DRC with rVSV-ZEBOV-GP Ring Vaccination. N Engl J Med. 2024;391:2327.

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ガバペンチノイドと併用薬で薬物中毒リスクが上昇か

 ガバペンチノイド系鎮痛薬(以下、ガバペンチノイド)を他の薬剤と併用すると、薬物中毒のリスクが上昇する可能性が、新たな研究で示された。ガバペンチノイドとオピオイド系鎮痛薬(以下、オピオイド)やベンゾジアゼピン系薬剤(以下、ベンゾジアゼピン)の併用はこのリスクを高め、特に治療初期には顕著なリスク上昇が認められたという。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の薬剤疫学者であるKenneth Man氏らによるこの研究は、「PLOS Medicine」に4月16日掲載された。 Man氏らは、「今回の結果は、ガバペンチノイドが安全ではない、あるいは処方すべきではないことを示すものではない。ただ、特に他の薬剤を使用中の患者に処方する際には注意が必要であり、臨床医は患者を慎重にモニタリングする必要がある」とニュースリリースで述べている。 ガバペンチノイドは、主にガバペンチンやプレガバリン、ミロガバリンを含む薬剤群の総称であり、てんかん、神経痛、不安などの治療に広く用いられている。近年、ガバペンチノイドは、オピオイドの代替として鎮痛目的での使用が増加しており、現在では米国では7番目に多く処方される薬となっている。世界的に見ても、その使用量は2008年から2018年の間に4倍以上に増加している。 今回の研究では、2010年1月1日から2020年12月31日の間にガバペンチノイドを処方され、薬物中毒で入院した経験がある英国の18歳以上の患者1万6,827人(女性53.5%)を対象に、ガバペンチノイドによる治療と薬物中毒との関連が検討された。解析は自己対照ケースシリーズ(SCCS)デザインを用い、同一患者内で治療開始の90日前、治療開始後0~28日、29~56日、57~84日、およびそれ以降の治療期間に分けて、期間ごとの薬物中毒リスクを比較した。薬物中毒の症状は、意識消失、呼吸困難、けいれんなどである。観察期間中のいずれかの時点で、対象者の約9割がガバペンチノイドとオピオイドを、半数以上がベンゾジアゼピンを併用していた。 その結果、薬物中毒のリスクは、ガバペンチノイド非使用期間(対照期間)と比較して、治療開始の90日前にすでに約2倍に上昇していることが示された(調整発生率比2.09、P<0.001)。治療開始後0~28日間でもリスクは約1.8倍(同1.81、P<0.001)と高く、その後は徐々に低下したものの、それ以降の治療期間でも軽度の上昇が持続した(同1.11、P<0.001)。このことは、薬物中毒のリスクを軽減するためにガバペンチノイドを使用しても、その効果は限定的である可能性を示唆している。さらに、オピオイドやベンゾジアゼピンの併用によりリスクはさらに上昇し、治療開始後0~28日間では、オピオイド併用で約2倍、ベンゾジアゼピン併用で約4倍に達した。 薬物中毒リスクが最も高かったのがガバペンチノイドによる治療開始前90日間であったことは、オピオイドやベンゾジアゼピンなどの使用に対する懸念を背景に、医師がガバペンチノイドを処方した可能性を示唆している。論文の筆頭著者であるUCLのAndrew Yuen氏は、「臨床医がガバペンチノイドを処方する判断は、オピオイドなど他の薬剤に関連した薬物中毒リスクを減らす試みである場合がある」と述べている。同氏はまた、「ガバペンチノイドによる治療開始後に薬物中毒リスクはやや低下したものの、それでもなおリスクは高い状態が続いていた。この結果は、臨床医が治療期間を通じて継続的に薬物中毒リスクへ注意を払う必要があることを示唆している」と指摘している。 なお、ガバペンチノイドが直接的に薬物中毒を引き起こすかどうかは依然として不明である。ただし、これらの薬剤がオピオイドやベンゾジアゼピンなど他の薬の鎮静作用を増強する可能性があることを示すエビデンスは存在しているという。

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ライフスタイル関連の認知症危険因子――Lancetの14の危険因子を読み解く(その4)【外来で役立つ!認知症Topics】第41回

前回は、病理の進行を直接抑える「表街道」と、脳の予備能を高める「援護射撃」という視点で各因子を紐解いてきた。「Lancetの14の危険因子を読み解く」シリーズの完結編となる今回は、日常の選択が脳の未来を左右する6つの因子を整理する。脳の「炎症」を助長する因子今回取り上げる6つの因子のうち、肥満、喫煙、過度な飲酒、そして大気汚染の4つは、主に神経炎症や酸化ストレスを介して認知症の悪化を加速させる危険因子である。肥満:伝統的な食事で予防中年期の肥満は、認知症のリスクを最大3倍も増加させる。肥満の原因は、高カロリーやジャンクフードといった不適切な食生活、運動不足、睡眠不足、慢性ストレスなどである。脳への悪影響のメカニズムとして、運動不足やストレスに加え、睡眠時無呼吸症候群に伴う低酸素刺激、さらにはミクログリア炎症などの脳内炎症との関連も注目されている。計画的な体重減少は認知機能を改善させる。減量には食事や運動が基本だが、最近ではセマグルチドなど、いわゆる「痩せ薬」の有用性も注目されている。ただし、筋肉喪失と骨の脆弱化を防ぐために、年間3~4kg程度の緩やかな体重減少に留めるのが望ましい。ここで興味深いデータがある。先進諸国の肥満率を比較すると、アメリカが42.9%と最高であるのに対し、日本は最低の4.9%というものである1)。その背景には、伝統的な食生活と活動的なライフスタイルが指摘されている。前者は、日本食が地中海食と同様に生活習慣病予防食である事と関連するだろう。後者については勤勉を尊ぶ日本人の伝統的な価値観が関わっているのかもしれない。喫煙:禁煙5年でリスクをリセット今現在の喫煙者は非喫煙者に比べて、認知症リスクが30~50%高い。やはり喫煙は「やめるしかない」のである。以前からCOPD予防の文脈で、禁煙すれば呼吸器系がクリーニングされると知られていた。認知症に関しても、禁煙の効果を示す報告がある。印象的なのは、禁煙の5~7年以内に、吸わない者と同程度まで認知症のリスクが低下するという報告だ2)。なお禁煙による体重の増加には留意したい。禁煙しても体重が増加すればリスク低減効果は相殺されてしまう。治療では、薬理学的治療と行動療法が組み合わされる。最近では電子タバコが良いとも言われるが、実は酸化ストレスと脳の慢性炎症をもたらす点では、従来のタバコとあまり変わらない。過度な飲酒:不定期の大量飲酒に注意飲酒については適切な基準の把握が欠かせない。純アルコール10g (ビールで200mL 日本酒で0.5合、焼酎で40mL)を1単位とした場合、1週間に14単位を超える飲酒は認知症リスクを大幅に増加させる。飲酒の安全基準には男女差があり、男性は1日2単位、女性では1日1単位である。過度の飲酒は、記憶関連の大脳領域を萎縮させ、脳内のメッセージ伝達能力を障害する。さらに高血圧や心臓病、脳卒中のリスクを増加させる。注意すべきは、定期的な飲酒以上に、不定期に大量飲酒するほうが脳への悪影響が大きいことである。飲酒の認知機能への影響について、興味深い大規模なコホート研究がある3)。軽度~中等度の継続的な飲酒者は、ずっと非飲酒者より認知症のリスクが低減する。さらに、飲酒量を多量から中等量へと節酒することで、ずっと飲まない者に比べて認知症のリスクがさらに低下するという。もっとも、認知症予防のために、わざわざ飲酒を開始すべきではないことは言うまでもない。大気汚染:PM2.5とレビー小体型認知症大気汚染、とくにPM2.5は、認知症の危険因子だと認識される。それが脳に到達するのに3つの経路が考えられる。まず肺から血液吸収され脳に至るもの、次に鼻から直接脳に到達するもの、そして血流を通して脳に至って血液脳関門(BBB)を破壊するものである。PM2.5は高齢者にとってとくに危険だが、この濃度は交通量の多い道路周辺で最高である。しかし主要道路から100メートル離れるごとに曝露量は10~15%軽減し、300メートルで30~40%低減する。大通りを避けて住宅街の裏道の利用が望ましい。また室内で空気清浄機を活用すると、PM2.5を半分以下にできる。ところでPM2.5について斬新な最近の報告がある5)。PM2.5がレビー小体型認知症(DLB)の病理学的特徴であるαシヌクレインの異常な折り畳みを引き起こし、PM2.5の曝露量が多いとDLBやパーキンソン病発症リスクが高まるという。脳への「インプット」を阻害する因子残る2つの孤独と視力障害は、脳へのインプットを阻害する因子であり、これらへの対策は認知予備能を高める側面が強い。孤独:脳の萎縮を防ぐ「社会との接点」孤独とは主観的な感覚であり、社会的孤立は交流のない状態だが、いずれも認知機能低下と強く関連する。孤独感は全認知症リスクを31%増加させる。アルツハイマー病で14%、血管性認知症で17%、軽度認知障害で12%の増加をもたらす。また社会的孤立は孤独とは独立に26~50%の増加をもたらす。孤独感が単なる「気持ちの持ちよう」というレベルではないことを示す脳画像研究がある4)。前頭前野背外側部などの大脳部位は、共感や思いやりとの関連が知られているが、これらの脳部位の萎縮と、孤独が相関するという。つまり、共感・思いやりと孤独は表裏一体をなす脳活動なのだろう。対策としては、共通の関心事に基づくグループ参加が最も効果的だとされる。筆者が経験的に良いと思うのは、ペット(ペットロボットも含む)、趣味(読書、ガーデニング、手作業)のグループを探すこと。あるいは図書館や学校(登校・放課後の見守り)などのボランティア、地域で日常的に行われているラジオ体操などもいいだろう。視力低下:認知負荷を強いる「見えにくさ」の罠視力障害のある高齢者は正常視力の人と比べ、認知症発症リスクが1.5~2.3倍高い。想定されるメカニズムとして、視覚障害により脳への感覚入力が減少し、視覚処理領域の神経萎縮が起こり、脳刺激の減少、神経細胞の消失と連鎖していくことが考えられる。また視力障害と認知低下は、基礎的なプロセスに共通性があるかもしれない。たとえば脳血管障害、アミロイドβ蓄積、慢性炎症や神経変性である。さらに、視力低下により他の認知的リソースを使って情報を得なければならないため、本来の認知能力がその分減るとする「認知負荷仮説」も考えられる。目というと視力と考えがちだが、最近では「コントラスト感度」、つまり明暗を判別する能力が重要だとされる6)。たとえば夜間の活動には、高いコントラスト感度が必要だ。また照度が低い状態や、霧、眩しさのある状況ではその感度が鈍り、転倒・転落や交通事故のリスクが高まる。視力障害への対応は、白内障手術や眼鏡処方、低視力リハビリテーションが代表的である。これらにより、臨床リスクを30%低減できる可能性がある。今回をもって「Lancetの14の危険因子を読み解く」シリーズは終了となる。繰り返しになるが、この危険因子とはアルツハイマー病のみならず、すべての認知症に対するものである。また危険因子は、古典的なアミロイド仮説に関連するもののみならず、認知予備能仮説のように最大限に脳を守る・活用していくという方向に大別される。 1) WorldAtlas. The Most Obese Countries In The World In 2024. 2) Chen H, et al. Smoking Cessation, Weight Change, and Risk of Dementia: A Prospective Cohort Study. medRxiv. 2025 Nov 6. [preprint] 3) Jeon KH, et al. Changes in Alcohol Consumption and Risk of Dementia in a Nationwide Cohort in South Korea. JAMA Netw Open. 2023;6:e2254771. 4) Lam JA, et al. Neurobiology of loneliness: a systematic review. Neuropsychopharmacology. 2021;46:1873-1887. 5) Zhang X, et al. Lewy body dementia promotion by air pollutants. Science. 2025;389:eadu4132. 6) Risacher SL, et al. Visual contrast sensitivity in Alzheimer's disease, mild cognitive impairment, and older adults with cognitive complaints. Neurobiol Aging. 2013;34:1133-1144.

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異形成のある炎症性腸疾患患者では大腸腫瘍発症リスクが上昇

 炎症性腸疾患(IBD)患者において異形成を認める場合、将来的な大腸腫瘍(CRN;大腸異形成および大腸がんを含む)のリスクが上昇するという研究結果が、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に2月16日掲載された。 米ニューヨーク大学グロスマン医学部のJordan Axelrad氏らは、IBD患者における異形成の有無およびタイプ別の臨床経過を検討するため、スウェーデン全国患者登録およびESPRESSO組織病理学コホートを用いた全国規模のコホート研究を実施した。対象は1969~2023年にIBDと診断された患者5万4,534人で、初回の異形成発生エピソードに基づき、異形成なし(ND)、判定保留(IND)、軽度の異形成(LGD)、高度の異形成(HGD)に分類された。 その結果、対象IBD患者のうち5万3,214人がND、1,320人に異形成の初回発生が認められた(IND 264人、LGD 1,031人、HGD 25人)。中央値13.3年の追跡期間中、進行したCRNを発症した割合はND群で2.3%であったのに対し、IND群では5.3%、LGD群では8.3%であった(調整ハザード比はそれぞれ1.85、3.51)。HGD群では40%が大腸がんを発症した(同47.88)。将来の異形成発生のリスク因子としては、男性であること、診断時年齢が低いこと、全大腸炎型の大腸炎、原発性硬化性胆管炎、組織学的炎症が挙げられた。 Axelrad氏は、「この知見は、がん検診の頻度や介入の必要性について、医師と患者がより適切な意思決定を行うために、信頼性の高い長期的データを提供することになる」と述べている。 なお、複数の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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ハンタウイルス感染症に気を付けろッ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。大阪大学の忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。もはや誰も覚えていない不定期連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」ですが、読者の皆さまが忘れたころに新興再興感染症というものは起こるものなのです。そうです、現在世間では「ハンタウイルス感染症」なるものが毎日ニュースをにぎわせています。今回はこの「ハンタウイルス感染症」の気を付け方について学んでいきましょう。感染症学習に使えるアプリさて、ハンタウイルス感染症について知りたい場合、一番手っ取り早いのは、そう、私が自作したiPhoneアプリ「くつ王感染症クイックリファレンス」で調べることです!トップ画面で「ハンタウイルス」と入れれば、あっという間に要点が丸わかり!App Storeで「くつ王感染症クイックリファレンス」を検索してみよう!アプリの詳細は最後の方をご覧ください!ハンタウイルスの概要宣伝はこれくらいにしておきまして…ハンタウイルス感染症は、ウイルス性出血熱の一群に含まれる重要な人獣共通感染症であり、世界各地に分布しています。まず、大事な事実として本疾患は臨床的に2つの主要な症候群を呈します。ヨーロッパおよびアジアでは腎症候性出血熱(HFRS)が、アメリカ大陸ではハンタウイルス肺症候群(HCPS)(またはハンタウイルス心肺症候群)が主に報告されています1, 2)。これらは別の疾患として捉えられていますが、血管透過性の亢進という共通の病態生理を基盤としており、臨床像においても多くの重複が見られるのが特徴です。図 ハンタウイルス感染症の流行地域と感染経路(文献1よりNotebookLMで作成)さらに、ハンタウイルスは、Bunyavirales目Hantaviridae科のOrthohantavirus属に分類されるウイルスの総称であり、表のようにヨーロッパ・アジアでHFRSを起こすハンタウイルス、そして、アメリカ大陸でHCPSを起こすハンタウイルスにもそれぞれ複数の種類が知られています。表 主要な原因ウイルスと臨床的特徴の比較画像を拡大する(文献1より作成)ハンタウイルスの症状、診断と治療なんか急に話がややこしくなってきたと思われるかもしれませんが、それぞれの細かいウイルスまで覚える必要はありません。主な自然宿主は齧歯類です。ウイルスは宿主の唾液、尿、糞便中に排泄され、人間はそれらが含まれるエアロゾルを吸入することで感染します。特筆すべき例外として、中南米のアンデスウイルス(ANDV)は、例外的にヒトからヒトへの感染が確認されている唯一のハンタウイルスであり、密接な接触がリスク要因となります3,4)。たとえば、誕生日のパーティーやお通夜への参加、同じ車内で長時間一緒に過ごしたなどの場面での感染が報告されています。注意すべき点としては、これまでに患者から医療従事者への感染例も報告されていることです。症状ですが、まず潜伏期間が長いのが特徴です。今回問題になっているANDVでは平均18日程度と報告されており、正確な渡航歴・接触歴・曝露歴の聴取が不可欠です。HFRS(腎症候性出血熱)では典型的には5つの病期(発熱期、低血圧期、乏尿期、利尿期、回復期)をたどります。高熱、頭痛、腹痛、背部痛に加え、視覚異常が感染者の最大70%に見られます。HCPS(ハンタウイルス肺症候群)では2~7日間の前駆症状(発熱、筋肉痛など)を経て、呼吸不全が急激に進行します。これは肺血管透過性の亢進により、数時間以内に非心原性肺水腫、呼吸不全、心原性ショックが進行するというものです。画像所見では、両側性の隔壁肥厚やすりガラス影、胸水貯留が急速に拡大します。どちらの病型にも共通している病態が「血管透過性の亢進」でありまして、HFRSでは主に腎髄質の毛細血管が、HCPSでは主に肺の毛細血管が強く影響を受けることがわかっています。先述の表にも記載していますが、致死率はHFRSでは1~12%、HCPSではなんと最大45%にも及びます。きわめて重症度の高い感染症です。診断は抗体検査またはPCRによって行います。IgMは通常、発症初期から検出可能とされます。RT-qPCRは高感度であり、抗体出現前の早期診断にきわめて有用です5)。治療については、リバビリンや高用量ステロイド、回復者血漿療法などが検討されてきましたが、現時点で確立した治療法はありません6,7)。体外式膜型人工肺(ECMO)が注目されており、血管透過性亢進が回復するまでECMOを使用することで予後が改善したという報告があります8)。とまあ、このように恐ろしいハンタウイルス感染症ですが、果たしてわが国に持ち込まれるリスクはどれくらいあるのでしょうか?次回はそこんとこを検討していきたいと思います。1)Vial PA, et al. Lancet Infect Dis. 2023;23:e371-e382.2)Manigold T, Vial P. Swiss Med Wkly. 2014:144:w13937.3)Padula PJ, et al. Virology. 1998;241:323-330.4)Martinez VP, et al. N Engl J Med. 2020;383:2230-2241.5)Guzman C, et al. Expert Rev Anti Infect Ther. 2015;13:939-946.6)Mertz GJ, et al. Clin Infect Dis. 2004;39:1307-1313.7)Vial PA, et al. Antivir Ther. 2015;20:377-386.8)Wernly JA, et al. Eur J Cardiothorac Surg. 2011;40:1334-1340.

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アトピーは学業成績に影響するか

 アトピー性皮膚炎(AD)は、睡眠障害や併存疾患、あるいは心理社会的影響により学業成績を低下させる可能性があるが、集団ベースの縦断的研究によるエビデンスは限られている。英国・London School of Hygiene & Tropical MedicineのRita J. Iskandar氏らは、デンマークおよび英国の小児約78万人を対象とした並行コホート研究において、ADは学業成績の低下と関連するか、またその関連は疾患表現型や社会経済的背景によって異なるかどうかを検討した。JAMA Dermatology誌オンライン版2026年4月8日号掲載の報告。 本研究は、デンマークおよび英国における、ADを有する小児および有さない小児を対象とした集団ベースの並行コホート研究。デンマークでは、全国的なレジストリから1986~2000年に出生した小児を抽出し、2018年まで追跡調査を行った。英国では、Avon親子縦断研究(ALSPAC)から得られた1991~92年に出生した小児データを、国立生徒データベース(National Pupil Database)と連携させ、2009年まで追跡調査を行った。データ解析は2022年10月~2024年4月に実施された。 ADは、13歳未満での診断(デンマーク)または11.5歳までの母親から2回以上のADの報告(イングランド)と定義した。デンマークの分析では、遺伝的因子を考慮するため、AD罹患状況が異なり両親を同じくする兄弟姉妹を対象とした反復解析を実施した。 主要評価項目は、16歳時の義務教育修了時の全国統一試験における不合格の成績(2値アウトカム;ポアソン回帰による割合比)および平均学業成績スコア(連続アウトカム;線形回帰による平均差)であった。 主な結果は以下のとおり。・両研究を合わせて、計78万2,837人の小児が対象となった。・デンマーク(n=77万6,214人、AD患者1万259人、女児38万6,408人[49.8%])では、AD患者と非AD患者の間で、不合格率(12.0%vs.11.2%、調整割合比[aPR]:1.06、95%信頼区間[CI]:1.01~1.12)および平均学業成績(調整平均差:-0.06ポイント、95%CI:-0.11~-0.01)に差は認められなかった。・活動性AD患者では、非AD患者と比較して不合格率の高さとの関連がみられた(aPR:1.19、95% CI:1.03~1.37)。・兄弟姉妹間における解析でも同様の結果が得られた。・イングランド(n=6,623人、AD患者2,967人、女児3,332人[50.3%])では、AD患者は非AD患者に比べて、不合格率がわずかに低く(37.7%vs.47.4%、aPR:0.88、95%CI:0.83~0.93)、平均学業成績が高かった(調整平均差:10.48ポイント、95%CI:6.49~13.86)。・表現型分析によると、中等度-寛解型(moderate-declining)および中等度-頻発型(moderate-frequent)AD患者の成績が優れることがこれらの結果を主に説明しており、軽度-間欠型(mild-intermittent)または重度-頻発型(severe-frequent)AD患者の成績は、非AD患者または症状のほとんどないAD患者と同程度であった。・全体として、学業成績について、表現型や社会経済的背景による一貫した差異はみられなかった。 著者らは、「2つの大規模コホートにおけるトライアンギュレーション(triangulation)アプローチによる検討と多重解析により、ADは義務教育修了時の全国統一試験における学業成績の著しい低下とは関連がない可能性が高いことが示された」とし、「本結果はADを有する小児やその家族、教員や臨床医にとって安心材料となるもの」とまとめている。

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