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第10回 EGFR-TKI併用療法、これまでのまとめ1)Stinchombe TE, Janne PA, Wang X, et al. Effect of Erlotinib Plus Bevacizumab vs Erlotinib Alone on Progression-Free Survival in Patients With Advanced EGFR-Mutant Non-Small Cell Lung Cancer A Phase 2 Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol. 2019 Aug 8. [Epub ahead of print]2)Noronha V, Patil VM, Joshi M, et al. Gefitinib Versus Gefitinib Plus Pemetrexed and Carboplatin Chemotherapy in EGFR-Mutated Lung Cancer. J Clin Oncol. 2019 Aug 14. [Epub ahead of print]3)Nakagawa K, et al. Ramucirumab plus erlotinib in patients with untreated, EGFR-mutated, advanced non-small-cell lung cancer (RELAY): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial.Lancet Oncol. 2019 Oct 4.[Epub ahead of print]EGFR変異陽性例に対する初回治療は、オシメルチニブがOSでも有効性を示した(Ramalingam S, ESMO2019)ことでおおむね片が付いたとみる向きが多いが、次なる方向性として併用療法やcell-free DNAを組み合わせたアプローチなどが模索されている。今回は最近の報告を基に併用療法についてまとめてみた。1)について米国から報告された第II相試験。88例をエルロチニブ+/-ベバシズマブに1:1で無作為化。プライマリーエンドポイントであるPFSは17.9ヵ月 vs.13.5ヵ月と併用群で延長していたが、統計学的な有意差なし(HR:0.81、p=0.39)。ORRは同等(81% vs.83%)、驚くべきことにOSは併用群で劣る傾向(32.4ヵ月 vs.50.6ヵ月、HR:1.41、p=0.33)であった。後治療としてオシメルチニブが併用療法群で10例・単剤群で13例投与されている(これらを省いたOSデータは示されていない)。2)について細胞傷害性抗がん剤との併用インドから報告された単施設の(!)第III相試験。350例をゲフィチニブ+/-化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)に1:1で無作為化。PS 2が21%と多く含まれている。プライマリーエンドポイントであるPFSは16ヵ月 vs.8ヵ月と併用群で有意に延長していた(HR:0.51、p<0.001)。ORR(75% vs.63%)、OS(中央値未到達vs.17ヵ月、HR:0.45、p<0.001)も併用群で有意に上回っていた。後治療として単剤群のうち、カルボプラチン+ペメトレキセドを受けたものは32.4%とやや低めである。解説血管新生阻害薬との併用については、本邦から報告されたゲフィチニブ+/-ベバシズマブの第II相試験(JO25567)での良好なPFSを基に複数の第III相臨床試験が計画された。昨年・本年のASCOで本邦からの第III相試験が報告され、PFS延長が確認されたことは周知のとおり(Saito, Lancet Oncol. 2019、Nakagawa, Lancet Oncol. 2019)。今後、中国やEUからも第III相試験の報告が予想されている。今回の第II相試験は残念ながらnegativeな結果に終わったが、著者らも触れているように単剤群の治療成績が予想よりよかったことも影響しており、血管新生阻害薬併用によるPFS延長は十分確認されたと考えられる。ただし、より重要なのは、JO試験に引き続いてOSの延長が認められなかったことであろう。それほど毒性の強い治療でもないので後治療に差があるわけではないと思うのだが、この理由は明らかになっておらず、今後の開発にやや不安を残したといえる。オシメルチニブとの併用を含めた主だった試験のまとめは以下のとおり。細胞傷害性抗がん薬との併用は、古くTRIBUTE試験などで検討されてきたが、EGFR変異陽性例に絞った検討はNEJグループが牽引してきた経緯がある(Sugawara S, Ann Oncol2015, Oizumi S, ESMO Open2018)。第III相試験については昨年のASCOで報告され(Furuya N, ASCO2018)、本年インドからも同様の結果が示された。PFSは延長して当然な一方で、2つの第III相試験ともにOS延長が示されたことは重要である(ただしインドの試験では低い後治療の割合がOSの大きな差に影響している可能性はあり)。主だった試験のまとめは以下のとおり。以上が現状のまとめとなる。元々のコンセプトとして、前者はEGFR-TKIの効果増強を意図している一方で、後者は腫瘍のheterogeneityに対して異なる機序の薬剤の相乗効果を狙っている。また、血管新生阻害剤併用の場合には後治療として化学療法(+免疫チェックポイント阻害剤)が使用可能であるのに対して、細胞傷害性抗がん剤併用後の増悪に対しては単剤化学療法が標準と考えられることから、これら併用療法のPFSを単純に比べることはあまり意味がなさそうである。一方でこれら試験結果を待っている間に、オシメルチニブというgame changerが登場したため、結果の解釈はより難しくなった。現在、オシメルチニブを用いても同様の治療戦略が成り立つのかを検討すべく、さまざまな計画がなされている(Yu H, ASCO2019)。以上、簡単にEGFR-TKI併用療法の現状をまとめた。今後オシメルチニブを軸に治療開発がなされると考えられるが、エンドポイントをどう設定するかは非常に重要な問題である。クロスオーバーの影響を考慮すべき治療の場合、PFSでは不十分な可能性があるが、そうなると相当大規模な症例数が必要となる。長期奏効の指標としてX年無再発率のような新しい指標を検討すべきなのか、乳がんのホルモン治療やICIで近年検討されているように「試験治療開始から化学療法開始までの期間(=どの程度の期間化学療法を回避できたか)」や「治療休止期間」のような患者のQOLをより反映したソフトエンドポイントも興味深く、ドライバー変異陽性肺がんもこうした新規エンドポイントを検討すべき時代になっているのかもしれない。また、オシメルチニブ単剤でも良好なPFSが得られる状況において、果たして併用療法が本当に意義のあるPFS延長を示せるのかも気になる点である(実際、オシメルチニブ+ベバシズマブの試験ではPFSはそれほど延びていない)。図表(ppt)はこちら。右クリックでダウンロードできます。