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超早産児のアトピー性皮膚炎発症リスクは?

 超早産児(在胎期間29週未満)は、後期(29~34週)および満期で生まれた子供と比べて、アトピー性皮膚炎(AD)発症リスクが低いことが、フランス・ナント大学病院のS.Barbarot氏らによるコホート調査の結果、明らかになった。これまで、AD発症リスクが早産によって影響を受けるかどうかは不明であった。また、AD発症リスクについて、超早産児の大規模サンプルでの検討は行われたことがなかった。British Journal of Dermatology誌2013年12月号の掲載報告。 研究グループは、AD発症リスクの早産による影響を明らかにすることを目的に、2つの独立した住民ベースコホート(Epipageコホート、LIFTコホート)のデータを用いて、在胎期間とADとの関連を調べた。コホートの早産児は計2,329例で、そのうち479例が超早産児であった。 主な結果は以下のとおり。・より後期に生まれた子供と比べて、超早産児群におけるAD発症の割合は低かった。・Epipageコホート(2年アウトカム)でのAD発症率は、24~28週:13.3%、29~32週:17.6%、33~34週:21.8%(p=0.02)であった。・LIFTコホート(5年アウトカム)でのAD発症率は、同11%、21.5%、19.6%であった(p=0.11)。・交絡変数で補正後、在胎期間が短い(29週未満)こととAD発症率が低いことが、有意に関連していることが認められた。Epipageコホートにおける補正オッズ比(aOR)は0.57(95%信頼区間[CI]:0.37~0.87、p=0.009)であり、LIFTコホートでは同0.41(同:0.18~0.90、p=0.03)であった。

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糖尿病患者の腎保護作用を期待できる降圧薬は?(コメンテーター:浦 信行 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(157)より-

まず、在来の臨床研究では尿蛋白低減効果をエンドポイントとしたものが多いが、このメタ解析のエンドポイントをハードエンドポイントである血清クレアチニン濃度の倍化、末期腎不全、死亡としたことに意義がある。われわれの最終目標は腎障害進展抑制、生命予後改善だからである。 結果は、クレアチニンの倍化に関しては、ACE阻害薬でのみ有意な抑制効果が認められた。また、有意とはならなかったものの、ACE阻害薬が他剤、とりわけARBよりも数字的には良好であったとのことである。ACE阻害薬の糖尿病性腎症に対する効果を改めて示したことには、大きな価値がある。 しかし、本来であればACE阻害薬とARB間でのhead to headの臨床研究で、血圧値をマッチさせた成績が最も価値がある。そのような研究で大規模なものが極めて少ないため、メタ解析で評価するのはやむを得ないが、限界があることを留意した解釈が必要である。著者も述べているように、メタ解析では同じクラスの薬剤でも種類が違い、使用量の違いがある。従来の報告では、同じARBの中での薬剤間の差を報告したものが複数で認められる。また、降圧度や血圧値の差も検討されていない。どのような薬剤で降圧しようが、腎保護作用はまず血圧値に依存する。少なくともRA阻害薬による降圧度は、RA系阻害の程度を表すものであるから、それに差があるとすれば正当な評価はできにくくなる。 したがって、著者らも結論で述べているように、今回のメタ解析では糖尿病における腎障害進展抑制効果はACE阻害薬で明らかであった。また、ARBに関してはACE阻害薬に対する優位性は認められなかった、ということで理解できると考えられる。

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ACE阻害薬とARBの併用は危険!(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(151)より-

 NEPHRON-Dは、ARB(ニューロタン)を1ヵ月以上服用している糖尿病腎症の症例を、ACE阻害薬(リシノプリル)併用群とプラセボ併用群にランダマイズして追跡したトライアルであるが、併用療法群に高度な高カリウム血症と急性腎障害という生命を脅かす重篤な有害事象が多くみられたため、試験開始から2.2年で安全性の観点から中止された。この結果は、これまでのレニン・アンジオテンシン系抑制薬(ACE阻害薬)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、直接的レニン阻害薬(DRI)の2剤併用は有害事象を増加させるという、これまでの臨床試験ONTARGET、ALTITUDEの結果を確認する結果となった。 理論的には、Volume depletionの状態ではレニン・アンジオテンシン(RA)系が賦活して糸球体輸出細動脈を収縮させ、近位尿細管からのナトリウム再吸収の亢進と、アルドステロン分泌促進によってこの血管内容量を維持しようとする代償機序が作動するが、RA系薬剤の併用によってその代償機構を阻害してしまうために、腎障害や高カリウム血症という臨床上重篤な有害事象をもたらすと考えられる。 2.2年の中止時点で、腎機能悪化と末期腎不全への進展が試験開始後24ヵ月時点では併用療法で良好であったが、48ヵ月後では両群で差がなくなっており、長期的にみて併用療法のメリットはなく、有害事象を増加させるというデメリットの方が大きい結果を示した。 この試験結果はACE阻害薬とARBの安易な併用による有害事象を避けるためにも、「糖尿病腎症に対するARBとACE阻害薬の併用は禁忌」として保険診療にも反映されるべきである。

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またしてもACE阻害薬+ARBの併用、有効性示せず-糖尿病性腎症-/NEJM

 ACE阻害薬(ACEI)+ARB併用療法は、蛋白尿がみられる糖尿病性腎症患者の末期腎不全(ESRD)への病態進行のリスクを低減しないことが、米国・ピッツバーグ大学のLinda F. Fried氏らが行ったVA NEPHRON-D試験で確認された。糖尿病性腎症はESRDの主要原因であり、蛋白尿がみられる糖尿病患者はESRDのリスクが高い。観察試験では、レニン-アンジオテンシン系(RAS)の抑制により腎不全に起因する蛋白尿が低減し、腎機能が改善することが示されている。ACEIとARBの併用療法により蛋白尿が低下することが知られているが、腎不全の進行に及ぼす効果や安全性は確かめられていなかった。NEJM誌2013年11月14日号掲載の報告。併用によるRAS抑制の効果をプラセボ対照無作為化試験で評価 VA NEPHRON-D試験は、蛋白尿を改善することで糖尿病性腎症の進行が抑制されるとの仮説の検証を目的に、ロサルタン(商品名:ニューロタンほか)+リシノプリル(同:ゼストリルほか)併用療法と、標準的なロサルタン単独療法を比較する多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験。対象は、推算糸球体濾過量(eGFR)が30.0~89.9mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比が≧300の2型糖尿病患者であった。 ロサルタン100mg/日を30日以上投与されている患者を、リシノプリルまたはプラセボを追加投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。リシノプリルは、10mg/日を開始用量とし、有害事象やカリウム、クレアチニンの評価を行いながら2週ごとに20mg/日、40mg/日へと増量した。 主要評価項目はeGFRの低下(登録時≧60mL/分/1.73m2の患者は≧30mL/分/1.73m2の低下、<60mL/分/1.73m2の患者は≧50%の低下)、ESRDの発症、死亡であり、副次評価項目はeGFRの低下またはESRDの発症とした。ONTARGET試験やALTITUDE試験の知見と一致 併用群で重篤な有害事象、高カリウム血症、急性腎障害(AKI)が増加したため、2012年10月、データ・安全性監視委員会の勧告により、本試験は早期中止となった。 本試験には、2008年7月~2012年9月までに、米国の32の退役軍人省医療センターから1,448例が登録され両群に724例ずつが割り付けられた。試験期間中に182例が死亡またはESRDを発症し(死亡は併用群63例、単独群60例)、143例が脱落した(治療中止66例、追跡不能39例、参加を取り止めた施設の患者26例、その他の理由12例)。追跡期間中央値は2.2年。 患者背景は、併用群が平均年齢64.5±7.9歳、男性98.8%、BMI 34.9±6.7、血圧136.9±16.5/72.5±10.6mmHg、T-C/LDL-C/HDL-C 157.9±43.6/81.6±32.4/37.7±11.0mg/dL、eGFR 53.6±15.5mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比中央値842であり、単独群はそれぞれ64.7±7.7歳、99.6%、34.3±6.9、137.0±16.0/72.8±9.9mmHg、159.0±40.5/84.3±35.0/38.7±11.3mg/dL、53.7±16.2mL/分/1.73m2、862であった。尿中アルブミン/クレアチニン比≧1,000の患者は併用群326例、単独群336例であった。 主要評価項目の発生率は、併用群が18.2%(132例)、単独群は21.0%(152例)であり、両群間に差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.70~1.12、p=0.30)。 副次評価項の発生率は、併用群が10.6%(77例)、単独群は14.0%(101例)であり、併用群で良好な傾向を認めた(HR:0.78、95%CI: 0.58~1.05、p=0.10)が、このベネフィットは経時的に減少した(非比例性検定:p=0.02)。 ESRDの発症(3.7 vs 5.9%、HR:0.66、95%CI:0.41~1.07、p=0.07)、死亡(8.7 vs 8.3%、1.04、0.73~1.49、p=0.75)および心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院)(18.5 vs 18.8%、0.97、0.76~1.23、p=0.79)についても、両群間に有意な差はみられなかった。 高カリウム血症の発症率は、併用群が100人年当たり6.3件であり、単独群の2.6件に比べ有意に多かった(p<0.001)。AKIも、併用群が12.2件/100人年と、単独群の6.7件/100人年に比し有意に増加した(p<0.001)。 著者は、「蛋白尿を伴う糖尿病性腎症に対するACEI+ARB併用療法は、臨床的なベネフィットをもたらさず、有害事象を増加させた」とまとめ、「本試験の結果は、併用療法によるRAS抑制が心血管や腎のアウトカムに便益をもたらさず、有害事象を増加させたONTARGET試験やALTITUDE試験の知見と一致する」と指摘している。

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CKDでも、RA系阻害薬にBeyond Blood Pressure Lowering効果は認められない。(コメンテーター:石上 友章 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(146)より-

これまでの多くの基礎研究の成果から、RA系阻害薬には、他のクラスの降圧薬にはないextraordinaryな効果があるとされてきた。 ARBを対象にしたKyoto Heart Studyや、Jikei Heart Studyなどの日本発臨床研究は、このような基礎研究の成果によって導かれたConceptを証明する、いわばProof Of Conceptとなる研究であり、その意味で画期的であったが、データ改ざんによる不正によって論文撤回という事態を招いてしまった。 臨床研究であっても、基礎研究であっても、『RA系阻害薬に降圧を超えた効果があるか?』というClinical Questionに対する答えが複数存在するわけではない。基礎研究であるならば、対象となる実験動物特有のヒトと異なる生物学的背景(マウスには、レニンが複数存在するものもあり、I型アンジオテンシン受容体は2種類あるなど、必ずしもヒトと同一のRA系ではない)であったり、人為的な実験条件による結果のバイアスがもたらした誤った結論である可能性も無視はできない。 EBMでは、エビデンスのピラミッドとして一次文献、二次文献に階層的な地位を与えている。ランダム化比較試験の結果はEBMの最も重要な一次文献であるが、一次文献を集めたメタ解析、システマチック・レビューの結果が、より上位のエビデンスと考えられている。 BPLTTC(Blood Pressure Lowering Treatment Trialist Collaboration)は、WHOとISHという公的な団体が、降圧薬の薬効に関して、中立な立場から研究・解析を行ったメタ解析である1)。これまでに、ACE阻害薬とARBについて、虚血性心疾患をエンドポイントにして、降圧効果と心血管イベント抑制効果の違いを明らかにする成果を上げている2)。BPLTTCによる解析の精度を示すエピソードとして、ONTARGET研究の結果が両薬剤の回帰直線上にプロットされることがあげられ、BPLTTCによる解析がランダム化比較試験の結果を予測しうる精度をもっていると考えられる。 今回の研究は、BPLTTCグループのオーストラリア・シドニー大学のV Perkovic氏らによる、CKDに対する降圧薬の効果についてのメタ解析である。結果は、降圧による心血管イベント抑制効果を支持したが、降圧薬のクラスエフェクトは認められなかった。 CKD診療のミッションは、『心血管イベント抑制』と『腎保護』の両立にある。『腎保護』について、直近のVA NEPHRON-D研究の結果だけでなく、多くの研究がRA系阻害薬の限界を明らかにしている3)。降圧だけが治療の選択肢ではないが、『腎保護』に対する降圧の有効性について、BPLTTCによる質の高いメタ解析が待たれる。

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糖尿病患者へのベスト降圧薬は?/BMJ

 糖尿病患者における腎保護効果はACE阻害薬のみで認められ、ARBがACE阻害薬と比べて良好な効果を示すというエビデンスはみつからなかったことが、台湾・亜東記念医院のHon-Yen Wu氏らによるシステマティックレビューとベイズネットワークメタ解析の結果、報告された。結果を踏まえて著者は「薬剤コストを考慮した場合、今回の知見において、糖尿病患者の降圧薬の第一選択はACE阻害薬とすることを支持するものであった。そして十分な降圧が得られない場合は、ACE阻害薬+Ca拮抗薬の併用療法とするのが好ましいだろう」と結論している。BMJ誌オンライン版2013年10月24日号掲載の報告より。単独・併用を含む降圧治療についてベイズネットワークメタ解析 コストを考慮しない場合、主要なガイドラインでは、糖尿病を有する高血圧患者の降圧薬の第一選択は、ACE阻害薬またはARBを提唱している。しかしこれまでACE阻害薬とARBを比較した臨床試験は稀有であり、糖尿病患者に関する両薬剤間の腎保護効果の差は不確定で、RA系阻害薬との併用療法の選択についてコンセンサスは得られていなかった。 研究グループは本検討で、糖尿病患者における異なるクラスの降圧薬治療(単独・併用含む)の、生存への影響および主要腎転帰への効果について評価することを目的とした。 PubMed、Medline、Scopus、Cochrane Libraryの電子データベースで2011年12月までに公表された文献を検索した。適格とした試験は、糖尿病高血圧患者を対象とし、追跡期間が12ヵ月以上の降圧治療(ACE阻害薬、ARB、α遮断薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、利尿薬、およびこれらの併用)の無作為化試験で、全死因死亡、透析導入または血清クレアチニン濃度倍増を報告していたものとした。 ベイズネットワークメタ解析では、直接的および間接的エビデンスを組み合わせ、治療間の効果の相対的評価、および保護効果に基づく治療ランキングの見込みを算出した。死亡抑制の最善治療はACE阻害薬+Ca拮抗薬 解析には、63試験・3万6,917例が組み込まれた。死亡例は2,400例、透析導入は766例、血清クレアチニン濃度倍増報告例は1,099例だった。 血清クレアチニン濃度倍増について、プラセボとの比較で有意に減少したのは、ACE阻害薬のみであった(オッズ比[OR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.32~0.90)。治療戦略間の比較(ACE阻害薬vs. ARB)では有意差は示されなかったが、最善の治療である確率はACE阻害薬が最も高かった。 末期腎不全(ESRD)への降圧治療の効果については、その転帰に関して治療間の有意差はみられなかったが、ESRD発生を最も抑制したのはACE阻害薬であった(OR:0.71)。次いでわずかな差でARBが続いていた(OR:0.73)。 死亡率で有意差が示されたのは、β遮断薬のみであった(同:7.13、1.37~41.39)。 ACE阻害薬の薬効は必ずしも有意ではなかったが、3つのアウトカムについて一貫してARBよりも効果が優れることを示す高位の位置を占めていた。 プラセボと比較した死亡を抑制する最善の治療は、ACE阻害薬+Ca拮抗薬が、統計的有意差は示されなかったが最も高率(73.9%)であることが示された。次いで、ACE阻害薬+利尿薬(12.5%)、ACE阻害薬(2.0%)、Ca拮抗薬(1.2%)、そしてARB(0.4%)であった。

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直接的レニン阻害薬に、降圧を超えたプラーク進展予防効果認めず(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(142)より-

 高血圧前症(prehypertension、血圧125~139/90mmHg未満)で、かつ心血管リスクを1つ以上有している冠動脈疾患症例において、直接的レニン阻害薬アリスキレンのプラーク進展予防効果をIVUSを用いて検討した試験である。 レニン-アンジオテンシン系を上流で直接的に阻害するアリスキレンは、RA系の究極の阻害薬として期待をもって登場したが、残念ながら臨床試験ではことごとくその有用性は否定されている。 本報告もその1つであり、血圧はプラセボ群に比べて若干下げているものの、プラークの退縮はまったく認めれなかった。ただし糖尿病患者以外では、RAS阻害薬(ACE阻害薬/ARB)を服用中であることも考慮すると、RAS阻害薬に直接的レニン阻害薬の併用は動脈硬化の進展予防をもたらさないと解釈すべきかもしれない。RAS阻害薬治療を受けている2型糖尿病患者において、直接的レニン阻害薬追加は心血管イベントや腎イベントの抑制に繋がらず、むしろ高カリウム血症などの有害事象を生じるとの結果が最近ALTITUDE試験の結果で示されているが、本試験では、RAS阻害薬治療中の糖尿病症例は除外されている。 本試験では、IVUSを用いてプラークの退縮効果を観察することで、降圧以外の抗炎症効果によるプラーク退縮の可能性を検討したが、血圧が若干下がったにも関わらず進展予防効果が認められなかったことは、降圧以外の心血管系へのベネフィットは否定されたと考えるべきであろう。

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受診ごとに血圧が変動する症例では認知機能が低下している(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(125)より-

受診ごとの血圧変動が大きい高齢者は、認知機能が低下しており、MRIで海馬の萎縮や皮質梗塞が多いという臨床研究である。 本試験はPROSPER試験という、高齢者に対するプラバスタチンの心血管合併症予防効果を検討した試験の後付解析として行われたものである。 日常、高齢者の高血圧患者を診療する場合、受診ごとに血圧が変動したり、家庭血圧でも測定ごとの血圧変動が大きい症例はよく見かけるが、多くはすでに冠動脈疾患、脳血管障害などの動脈硬化性合併症を併発しているという印象をもっている臨床医は多いと思う。実際そのことはいくつかの観察研究でも確認されている1,2)。しかし、本試験では認知機能の障害を示唆し、かつ海馬というアルツハイマー型認知症と関連の深い部位の萎縮を認めたという点で興味深い。 本試験は、血圧変動が、血管障害や認知機能障害の、原因であるのかあるいは結果であるのかを示すものではない。本試験で示された認知機能マーカやMRIは、3.2年間の試験終了時のデータであり、追跡前後の比較は示していない。そのため血圧変動が認知機能障害を低下させたのか、あるいは血管障害や海馬病変の結果として血圧変動が大きいのかは確認できない。 高齢者では収縮期血圧の絶対値が大きいほど、また脈圧が大きいほど予後が不良であることはすでに知られているが、本試験はさらに受診ごとの血圧変動が大きいことも予後不良のサインであることを示唆している。 また本試験には明記されていないが、多くは降圧薬を服用していると思われる。降圧薬自体にも血圧変動、すなわち降圧効果の安定性が異なるという報告もみられる。Ca拮抗薬やクロルタリドンなどの非ループ利尿薬などは受診ごとの血圧変動が少なく、ARBやβ遮断薬などは血圧変動が多いという3)。 高齢者高血圧を診療する場合、安定した降圧が得られるような降圧薬を選択することが重要である。

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データ改ざんが明らかに —KYOTO HEART Study論文

7月11日、京都府立医科大学は、KYOTO HEART Studyに関する調査結果を発表した。その結果、主要エンドポイントである心血管疾患系複合エンドポイントの発生数においてカルテ記載データと解析に用いられたものとの間に大きな隔たりがあることが確認された。その概要は以下のとおりである。カルテ閲覧が可能であった223例のうち、1)複合エンドポイント発生数は、解析用データでは48件(21.5%)あったのに対し、カルテ上確認できたのは34例(15.2%)であった。すなわち14件が水増しされていた。この14件は、エンドポイントとしてエンドポイント委員会に届けられていない可能性が高い。2)複合エンドポイント発生において、カルテと解析用データで一致しなかった症例は、223例中34例(15.2%)にみられた。そのうちカルテで「なし」となっていたのに、解析用データで「あり」となっていたのが、バルサルタン群4例、対照群(非ARB群)20例と対照群において大幅に水増しされていた。3)逆に、カルテでは「あり」となっていたのに、解析用データでは「なし」となっていたのは、バルサルタン群9例、対照群1例と、バルサルタン群で大幅に減少させていた。このようなバルサルタン群を大幅に有利とする生データと解析用データの操作、人為的な改ざんと断定せざるをえない。我々は、論文で記載されているバルサルタン群の45%という複合エンドポイント発生の抑制を、PROBE法という枠内での問題として論じてきたが、事実はデータの改ざんという、科学的論議とは次元を全く異にする、極めて悪質な行為によって生じた結果であったことに憤りを覚える。今回の問題に関するノバルティス社のコメントは、企業として極めて無責任な印象はぬぐえない。ノバルティス社は、元社員に対する調査委員会の事情聴取を受けさせ、事実関係を明らかにする社会的義務があることを認識すべきである。エンドポイント委員会委員長はエンドポイントの食い違いに関する説明が必要である。また今回の臨床試験成績を医師向け商用雑誌における広告座談会などで頻回に本試験の結果を宣伝してきた日本高血圧学会幹部およびガイドライン委員長は、今回の調査結果を受けて一般医師に対して説明責任がある。今回の事件は、医師、薬剤師のみならず国民を欺いた罪は大きい。またわが国から発信される臨床試験に対する信頼性を大きく失墜させ、日本の臨床論文が海外ジャーナルに採択されにくくなることが懸念される。信頼性回復のための方策を立てることは急務である。

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Vol. 1 No. 2 糖尿病患者におけるPCIのエビデンス

大塚 頼隆 氏福岡和白病院循環器内科はじめに糖尿病(DM)および境界型糖尿病(IGT)患者の罹患数は、今後も全世界で増加の一途をたどると推測されている1)。現在、日本のDM有病率は全世界の第6位であり1)、また、厚生労働省のDM実態調査からもDM患者数は年々増加傾向にあり、2007年時点でDMかDMの可能性が否定できない人数は2,210万人に達すると報告されている2)。日本人において、DM(特に2型DM)患者は非DM患者に比べて心血管疾患、特に冠動脈疾患の発症のリスクが2~4倍に増加することが、久山町研究3)やJapan DiabetesComplications Study(JDCS)4)などの疫学調査から明らかである。また、舟形町研究からも、DMばかりでなく、IGTも心血管病のリスクファクターであることは明らかである3)。DMやIGTは、高血糖や酸化ストレスの増大ばかりでなく、インスリン抵抗性、高血圧、脂質代謝異常などの合併により複合的な病態を呈し、動脈硬化が進展すると考えられている。特に、食後過血糖(glucose spikes)は炎症・酸化ストレス増加により動脈硬化進展およびプラークの不安定化を招き、血管不全を起こす重要な因子と考えられている5)。事実、DM患者を長期観察したDiabetes Intervention Study(DIS)により、食後過血糖が心筋梗塞症の発症を増加させることが明らかとなり6)、食後過血糖が動脈硬化の強い促進因子であることも報告されている7)。本稿では、日本でも今後も増加し、他のリスクファクターよりも未だ解決されていないことが多いDMやIGTを有する患者における経皮的冠動脈インターベンション(PCI)のエビデンスについて概説する。1)糖尿病合併の虚血性心疾患患者の冠動脈の特徴欧米の報告によると、DM患者の死因の約80%が動脈硬化性疾患によるものであり、その約7割以上が冠動脈疾患によるものである。DM患者の冠動脈疾患の死亡率が高い原因として、(1)無症候性であることがしばしばあり、発見が遅れる(2)多枝病変、重症左主幹部病変、びまん性病変であることが多く、重症かつ治療難治性である(3)心機能低下症例(拡張能障害を含めた)が多い(4)経皮的冠動脈形成術後の再狭窄率が高い(5)多数のリスクファクター合併や他の合併症が多いなどの特徴があるなどが考えられる8)。また、2型DM患者における心血管病発症率や死亡率は、非DM患者に比し、男性の場合約2倍、女性の場合は約4倍で、特に女性においてDMと非DMとの差は顕著である9)。われわれは、耐糖能異常患者の冠動脈病変の特徴を明らかにするために、冠動脈造影を施行しOGTTを施行した534名の冠動脈の定量的冠動脈解析を行い、平均血管径および平均狭窄病変長を算出した10)。また、その2つの冠動脈指標に寄与している因子も同時に解析した。その結果、平均血管径は「正常耐糖能」「IGT」「preclinical DM」「treated DM」の順に小さくなり、平均狭窄病変長もその順に長くなることが証明された(本誌p21の図1を参照)。つまりこの結果は、耐糖能の病状が進むほどプラーク増加に伴い血管径が細くなり、びまん性の病変になることを示している。また、血管径および狭窄病変長に食後過血糖が強く関与していることがこの検討からは示唆された。このような特徴は、血管内超音波で調べられた研究におけるプラーク量が、非DM患者に比しDM患者において有意に多いことと一致するデータと考えられる11)。2)PCI後の予後上記のような冠動脈の特徴を持つDM患者は、PCI後の再狭窄率が高く、長期的な心血管イベント率が高いことが以前から知られている。われわれは、この冠動脈の特徴と耐糖能異常が、PCI後の長期の予後にどのように関与しているかを検討した12)。PCI対照血管径を、2.5mm以上と未満で大血管径、小血管径とに分け、「小血管径+耐糖能異常グループ」「小血管径+正常耐糖能グループ」「大血管径+耐糖能異常グループ」「大血管径+正常耐糖能グループ」の4群に分類し、PCI後の長期予後を検討した。小血管径+耐糖能異常グループは早期から心血管イベントが多く予後は不良であるが、大血管径であっても耐糖能異常があるグループは特に5年後より心血管イベントが増加し、長期的に予後不良であることが判明した(本誌p22の図2を参照)。また、多変量解析により、耐糖能異常が心血管イベントおよび死亡に大きく関与することが示され、PCI後の患者において長期的な予後に耐糖能異常そのものが大きな因子であることが明らかとなった。最近のimaging modalityを用いた研究では、急性冠症候群患者において、DM患者は非DM患者に比べて、不安定プラークを意味するTCFA(thincap fibroatheroma)が多く存在していることが明らかとなった13)。また、DMの罹病歴が長い患者ほどプラーク量が多く、TCFAの比率が高いことも証明されている14)。つまり、耐糖能異常をもつ患者は血管性状も悪く、“質も悪い”ということになる。局所治療のPCIのみでは、血管全体が悪いDM患者の長期予後の改善効果には結びつかないのである。このことはPCI(局所治療)を行った後も、DM患者においてはよりintensiveな動脈硬化治療を長期に行わなければならないことを意味している。3)PCIまたはCABG経皮的バルーン血管形成術(POBA)およびベアメタルステント(BMS)時代のDM患者は、非DM患者に比べて再狭窄率が高く、治療に難渋する症例も多々存在した。しかし、薬剤溶出性ステント(DES)の登場により再狭窄率は激減し、再狭窄率が高かったDM患者においても再狭窄率は激減している15)。DESを用いたPCIが標準治療となった現在、複雑病変や多枝病変についても良好な成績が示されている。しかしながら、DMが合併した多枝病変の治療において、血行再建の選択は難しい問題である。POBA時代のBARI研究においては、DMを有する患者において、冠動脈バイパス術(CABG)の方がPOBAによるPCI治療に比べて、長期的に死亡率が有意に低いことが示されている16)。POBA(6 trials)およびBMS(4 trials)を用いたPCI治療とCABGを比較したメタ解析によると、約5年予後において全体では死亡、心筋梗塞の発生率に両群間に差はなく、再血行再建率はCABGが有意に低いという結果であった17)。一方、DM患者のみのサブ解析では、BARI研究と同様にPCI治療群において死亡率が有意に高いという結果であった17)。再狭窄の問題とは別に、PCIがlesion treatmentであるのに対して、CABGはvessel treatmentであるため、血管全体が悪いDM患者においてCABGの方が血管保護的に働く(バイパスされている血管にイベントが生じても、心血管イベントに繋がらない)のではないかと推測される。一方、薬物療法が発達した現在、DM患者に対してDESを用いたPCIとCABGを比較した最近の研究においては、短期から中期予後において、少なくとも死亡・心筋梗塞・脳卒中の発生率において両群間に差がないことが示されている(本誌p23の図3を参照)18-20)。CARDia試験においてはDESまたはBMS vs. CABGが、SYNTAX試験のサブグループにおいてはpaclitaxel-eluting stent vs. CABGが比較検討されている(本誌p24~25の図4を参照)。これらの報告からは、DM患者における血行再建において未だ再血行再建率はPCI群が高いが、脳血管イベントに関してはCABGが高いことが示されている。また、SYNTAX scoreを用いた解析で、冠動脈が重症な患者ほどCABGの心血管イベントが低いことが報告されており(本誌p24~25の図4を参照)21)、DM患者の治療選択の際に冠動脈の重症度は大きな因子である。われわれも、多枝病変を有するDM患者に対するoff-pump CABGとDES(sirolimus-eluting stent)を用いたPCIの3年予後を検討しており、3年の死亡、心筋梗塞を含めた総心血管イベントに両群間で差は認めないが、PCIは再血行再建率が有意に高く、CABGは脳血管イベントが有意に高いという結果が得られた(本誌p26の図5を参照)22)。また、SYNTAX scoreはCABGで有意に高値であった。このデータはrandomized controlled trialではないので、すべての多枝病変を有するDM患者にこの結果を当てはめることはできない。しかし、内科医・外科医が患者背景および冠動脈の重症度からPCIまたはCABGの選択を適切に判断すれば、DM合併多枝病変患者においてもDESを用いたPCIで良好な成績が期待できると思われる。また、PCIとCABGの直接比較試験ではないが、DM合併の虚血性心疾患患者を対象に、「早期血行再建+積極的薬物療法」と「積極的薬物療法単独」とを比較したBARI-2D研究では23)、積極的薬物療法単独群の42%が血行再建へ移行したが、両群間に死亡率の差はなく、より重症冠動脈病変が多いCABG群のほうが薬物療法群より心筋梗塞発症率が少ないことが報告された。つまり、血行再建を行う上で積極的薬物療法は不可欠であるのは間違いなく、重症冠動脈病変にはCABGがより有効であることが示唆される。長期のイベントにおいては、未だ十分なデータの蓄積はないが、RAS系降圧薬、スタチンや抗血小板薬などの内科的治療が発達した現在、多枝病変をもつDM患者におけるPCI治療の位置づけが今後のデータによりはっきりするのではないかと考えられる。特に、第1世代のDESに比べ、安全性および有効性が良好な第2・第3世代のDESでのデータが待たれる。現状では、DM合併の虚血性心疾患患者は予後不良と認識し、積極的薬物療法を行いつつ、個々の患者背景、冠動脈病変の重症度を十分評価した上で、心臓血管外科医との適切な検討のもと治療戦略を立てて治療に当たるべきであると考えられる。4)再狭窄への対応DMは、ステント留置後のステント内再狭窄において最も重要なリスク因子の1つである。ステント留置後の再狭窄の原因は新生内膜の増生であるが、DM患者へのステント留置後のステント内新生内膜の増生は、非DM患者へのステント留置後に比べて多いことが知られている。それは、DM患者の血管性状(4つの重要な因子)が大きく関与している(本誌p27の表1を参照)24)。DMでは、高血糖、インスリン抵抗性だけでなく、先にも述べたように高血圧や脂質代謝異常の合併により複合的な病態を有しており、DM患者に合併した多数のリスク因子の合併が新生内膜の増生や動脈硬化進展に寄与しているところが大きい。DMは慢性高血糖状態によりprotein kinase Cの活性化に伴う酸化ストレスの産生亢進や、NF-κBの活性化を介した炎症性サイトカインや増殖因子の分泌を促進し、内皮障害、血管拡張障害および動脈硬化進展を引き起こしている25)。しかし、血糖を下げる糖尿病治療薬において、現在のところ、再狭窄を予防できる確立したエビデンスはない。また、転写調節因子のperoxisome proliferator-activated receptor(PPAR)-γは、インスリン抵抗性の改善や脂肪細胞の分化誘導、および抗炎症作用などと関連していることが報告され、それにより動脈硬化進展や再狭窄予防に作用することが知られている25)。PPAR-γのアゴニストでインスリン抵抗性改善薬であるチアゾリジン薬は、炎症反応、LDLコレステロール、中性脂肪などの減少効果を持ち合わせ、動物実験により平滑筋細胞の増殖抑制や再狭窄予防効果が確認されている26)。また、いくつかの臨床研究において、チアゾリジン薬がステント内再狭窄を抑制することが報告されており27-29)、最近のメタアナリシスでもチアゾリジン薬がDM患者の再狭窄を予防するばかりでなく30)、非DM患者においても再狭窄予防効果があることが報告されている31)。このことは、チアゾリジン薬が血糖降下作用ばかりでなく、他の多面的効果により再狭窄を予防する可能性が示唆されるデータと考えられる。また、PERISCOPE試験におけるスルホニルウレア(SU)薬との比較では、チアゾリジン薬が動脈硬化進展抑制(むしろ退縮)する可能性を示した32)。一方、SU薬やインスリンに比べ、心筋梗塞症および死亡の減少に効果があることがUKPDS 80において報告されたメトホルミンが33)、PCI後のDM患者の心筋梗塞症や再血行再建術の発生を減らすことがいくつかの臨床試験で報告されており34, 35)、現在のところ、チアゾリジン薬、メトホルミン、後述するDPP-4阻害薬は、再狭窄を予防する糖尿病治療薬として期待できる薬剤であり、PCIを施行したDM患者に選択すべき薬剤ではないかと考える(本誌p27の表2を参照)。5)2次予防このように、長期的に予後不良なDMおよびIGT患者は、血行再建を行うと同時に長期的予後改善を目指して、厳重なる2次予防が重要である。DM患者を対象としたSteno-2 試験では、厳格かつ集学的な治療(血糖コントロールばかりでなく、厳密な脂質コントロールや血圧コントロールなど)を行うと、特に長期的に心血管イベントを有意に抑制できることや、legacy effect(遺産効果)を認めることが証明されている36)。従来療法群に比較して、強化療法群では心血管死、非致死性心筋梗塞および脳卒中を含めた複合1次エンドポイントが50%低下している。現在のところ、虚血性心疾患患者の2次予防としてエビデンスがあるのはピオグリタゾンのPROactive研究である37)。PROactive研究の中で心筋梗塞症の既往のあるサブグループ解析では、placeboに比べピオグリタゾンは急性冠症候群の発症を有意に(37%)減少させている。また、先にも述べたPERISCOPE研究において、SU薬のグリメピリドでは冠動脈プラークの進展が認められたが、ピオグリタゾンでは冠動脈プラークがむしろ退縮させることが確認され、抗動脈硬化作用があることが証明されている32)。また、新規DM患者を対象としたUKPDS 80では、SU薬とインスリンによる厳格な血糖コントロールを行った群の方が、通常治療群よりも心筋梗塞症の発症率や死亡率を減少させることが証明され、特にメトホルミンを使用した群では、さらに心筋梗塞症の発症率や死亡率を低下させることが証明されている33)。メトホルミンは、血糖コントロール以外にも心血管保護作用があることが報告されており、虚血性心疾患の2次予防にも期待できる薬剤である。インクレチン(GLP-1)の働きを利用する薬剤として、最近使用可能となったDPP-4阻害薬が注目されている。GLP-1受容体は心筋細胞や血管内皮細胞に存在しているため、DPP-4阻害薬は心血管保護作用をもつのではないかと推測されている。最近の動物実験により、DPP-4阻害薬はApo Eノックアウトマウスの内皮機能改善効果および動脈硬化進展予防が確認されている38)。また、この論文では、虚血性心疾患のない患者の血中活性型GLP-1濃度は、虚血性心疾患のある患者の血中活性型GLP-1濃度よりも有意に高値であることが示され、それは非DM患者においても同様であることが報告されている。このことは、血糖コントロールによる動脈硬化進展予防効果以外に、活性型GLP-1上昇による抗動脈硬化作用がDPP-4阻害薬には期待できる可能性を示唆している38, 39)。よって、DPP-4阻害薬も虚血性心疾患患者の2次予防に期待できる薬剤と考えられる。また、IGT患者に対しては、STOP-NIDDM研究40)や日本人のVICTORY研究41)においてα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)が有意に新規DM発症を予防することが報告されており、STOP-NIDDMにおいては、心血管イベントを49%低下させることが報告されている42)。特に、心血管イベントの中で、急性心筋梗塞症の発症を有意に低下させていることは注目すべき点である。このことは、DM患者を対象にしたメタ解析のMeRIA7における、α-GIが心血管イベント特に心筋梗塞症の発症リスクを有意に減少させるとした結果と一致しており43)、食後過血糖を抑制するα-GIは、虚血性心疾患患者の2次予防に期待できる薬剤であるといえる。現在のところ、虚血性心疾患の2次予防という観点において、DM患者にはチアゾリジン薬、メトホルミン、DPP-4阻害薬、IGT患者にはα-GIまたはDPP-4阻害薬が期待できる薬剤ではないかと考えられる。最後にDM患者に対するPCIは、DESの登場により再狭窄は激減しているが、未だDM患者はPCI後のハイリスク因子であることに変わりはない。DM患者を治療する上での留意点としては、上記のようなDM患者の冠動脈の特徴を理解しつつ、血管(狭窄)のみを診て治療するのではなく、患者全体を診て、長期的な予後改善の観点に立ちインターベンション治療と同時に積極的薬物的なインターベンションも考慮して治療を行わなければならないと考えている。また、早期の耐糖能異常の検索も重要である。われわれは急性心筋梗塞症患者に対して退院前に75g OGTTを施行している44)。その結果、正常耐糖能の 25%に対し、IGT 33%、preclinical DM 16%、DM 26%という割合であり、いわゆる“隠れ耐糖能異常”の存在が多いことが明らかとなった。これは、欧米からの報告45)とまったく同じ結果であり、虚血性心疾患患者における隠れ耐糖能異常の存在は日本人にとっても“対岸の火事”ではない。また、虚血性心疾患発症後は耐糖能異常を発症するリスクが高まることも報告されている46)。このように、虚血性心疾患を発症した患者には耐糖能異常が多く存在することを認識し、また、耐糖能異常の発症リスクが高いことも理解し、早期からの検索および治療介入を行う必要があるのではないか。そのためにも、日本人におけるDMまたはIGT合併の虚血性心疾患患者に対する検索の意義および治療介入のエビデンスがさらに必要である。さいたま医療センターの阿古潤哉先生、神戸大学の新家俊郎先生らとともに、糖尿病専門医の先生方も交えて心疾患と糖尿病に関する研究会「Cardiovascular Diabetology meeting」を発足し、日本人におけるエビデンス構築に一役買いたいと考えている。興味のある方は、ぜひともご参加いただきたい。文献1)http://www.eatlas.idf.org/media/2)http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/h1225-5.html3)Tominaga M, Eguchi H, Manaka H, et al. 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Vol. 1 No. 2 糖尿病と心血管イベントの関係

横井 宏佳 氏小倉記念病院循環器内科はじめに糖尿病患者の心血管イベント(CV)予防とは、最終的には心筋梗塞、脳梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症といったアテローム性動脈硬化症(ATS)の発症をいかに予防するか、ということになる。そのためには、糖尿病患者の動脈硬化の発生機序を理解して治療戦略を立てることが必要となる。糖尿病において見られるアテローム血栓性動脈硬化症の促進には慢性的高血糖、食後高血糖、脂質異常症、インスリン抵抗性を含むいくつかの代謝異常が関連しており、通常状態や血管再生の状態でのCVを起こすような脆弱性を与える。また、代謝異常に加えて、糖尿病は内皮細胞・平滑筋細胞・血小板といった複数の細胞の配列を変える。糖尿病が関連するATSのいくつかの特徴の記述があるにもかかわらず、ATS形成過程の始まりと進行の確定的なメカニズムはわからないままであるが、実臨床における治療戦略としてはATSに関わる複数の因子に対して薬物治療を行うことが必要になる。インスリン抵抗性脂質代謝異常、高血圧、肥満、インスリン抵抗性はすべて、メタボリックシンドロームのカギとなる特徴であり、引き続いて2型糖尿病に進行する危険性の高い患者の最初の測定可能な代謝異常でもある。インスリン抵抗性は、インスリンの作用に対する体の組織の感度が低下することであり、これは筋肉や脂肪でのグルコース処理や肝臓でのグルコース産出でのインスリン抑制に影響する。結果的に、より高濃度のインスリンが、末梢でのグルコース処理を刺激したり、2型糖尿病患者では糖尿病でない患者よりも肝臓でのグルコース産出を抑制したりするのに必要である。生物学的なレベルでは、インスリン抵抗性は凝固、炎症促進状態、内皮細胞機能障害、その他の病態の促進に関連している。インスリン抵抗性の患者では、内皮細胞依存性血管拡張は減少しており、機能障害の重症度はインスリン抵抗性の程度と相互に関係している。インスリン抵抗性状態での内皮細胞依存性血管拡張異常は、一酸化窒素(NO)の産生を減少させる細胞内シグナルの変化によって説明できる。つまり、インスリン抵抗性は、遊離脂肪酸値の上昇と関連しており、それがNO合成酵素の活性を減少させ、インスリン抵抗性状態においてNOの産生を減らす。臨床的には、インスリン抵抗性はCVリスクを増加させることに関連している。当院の2006年の急性心筋梗塞患者連続137例の検討では、本邦のメタボリックシンドロームの診断基準を満たす患者は49%を占めており、久山町研究の男性29%、女性21%よりも高率であった。この傾向は1990年前半に行われた米国の全国国民栄養調査の成績と同様であった。また、当院で施行した糖尿病と診断されていない患者への糖負荷試験と冠動脈CTの臨床研究でも、インスリン抵抗性と冠動脈CT上の不安定プラークの存在(代償性拡大、低CT値、限局性石灰化)との間に有意な相関を認めた。インスリン抵抗性を改善する薬物にはビグアナイド薬(BIG)とチアゾリジン薬(TZD)が存在するが、ATSの進展抑制の観点からはTZDがより効果的である。TZD(PPARγアゴニスト)は、血中インスリン濃度を高めることなく血糖を低下させる効果を有し、インスリン抵抗性改善作用はBIGよりも強力である。また、糖代謝のみならず、BIGにはないTG低下、HDL増加といった脂質改善作用、内皮機能改善による血圧降下作用、アディポネクチンを直接増加させる作用を有し、抗動脈硬化作用が期待される。さらに、造影剤使用時の乳酸アシドーシスのリスクはなく、PCIを施行する患者には安心して使用できる利点がある。このほかに、血管壁やマクロファージに直接作用して抗炎症、抗増殖、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1( PAI-1)減少作用を有することが知られている。この血管壁に対する直接作用はATS進展抑制作用が期待され、CVイベント抑制に繋がる可能性が示唆される。実際、臨床のエビデンスとしては、PROactive試験のサブ解析における心筋梗塞既往患者2,445例を抽出した検討で、ピオグリタゾン内服患者が非内服患者に比較して、心筋梗塞、急性冠症候群(ACS)などの不安定プラーク破裂により生じる心血管イベントは有意に低率であることが示されている。またPERISCOPE試験では、糖尿病を有する狭心症患者におけるIVUSを用いた検討において、SU剤に比較してピオグリタゾンは18か月間の冠動脈プラークの進行を抑制し、退縮の方向に転換させたことが明らかとなり、CV抑制の病態機序が明らかとなった。また、ロシグリタゾンではLDL上昇作用によりCVイベントを増加させるが、ピオグリタゾンのメタ解析ではCVイベントを有意に抑制することが報告されている。ピオグリタゾンは、腎臓におけるNa吸収促進による循環血液量の増大による浮腫、体重増加、心不全の悪化、骨折、膀胱癌などの副作用が指摘されているが、CVイベント発症時の致死率を考えるとrisk/benefitのバランスからは、高リスク糖尿病患者には血糖管理とは別に少なくとも15mgは投与することが望ましいと思われる。内皮細胞機能障害糖尿病血管疾患は内皮細胞機能障害によって特徴づけられ、それは、高血糖、遊離脂肪酸産生の増加、内皮細胞由来のNOの生物学的利用率の減少、終末糖化産物(AGE)の形成、リポ蛋白質の変化、そして前述のインスリン抵抗性と関係する生物学的異常である。内皮細胞由来のNOの生物学的利用率の減少は、後に内皮細胞依存性の血管拡張障害を伴うが、検出可能なATS形成が進行するよりもずっと前に糖尿病患者において観察される。NOは潜在的な血管拡張因子であり、内皮細胞が介在して制御する血管弛緩のメカニズムのカギとなる物質である。加えて、NOは血小板の活性を抑え、白血球が内皮細胞と接着したり血管壁に移動したりするのを減少することによって炎症を制限し、血管平滑筋細胞の増殖と移動を減らす。結果として、正常な場合、血管壁におけるNO代謝は、ATS形成阻害という保護効果を持つ。AGEの形成は、グルコースについているアミノ基の酸化の結果である。増大するAGE生成物によって誘発される追加の過程は、内皮下細胞の増殖、マトリックス発現、サイトカイン放出、マクロファージ活性化、接着分子の発現を含んでいる。慢性的高血糖、食後高血糖による酸化ストレスが、糖尿病合併症の病因として重要な役割を果たしているのだろうと推測されている。高血糖は、グルコース代謝を通して直接的にも、AGEの形成とAGE受容体の結合という間接的な形でも、ミトコンドリア中の活性酸素種の産生を誘発する。臨床的には内皮細胞機能障害がATSの進行を助長するのみならず、冠動脈プラーク破裂の外的要因である冠スパスムも助長することになる。急性心筋梗塞患者の20%は冠動脈に有意狭窄はなく、薬物負荷試験で冠スパスムが誘発される。高血圧患者に対して施行されたVALUE試験では、スパスムを予防できるカルシウム拮抗薬(CCB)が有意にアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)よりも心筋梗塞の発症を予防すること、またBPLTTCのメタ解析では、NO産生を促すACE阻害薬がARBよりも冠動脈疾患の発生が少ないことなどが明らかにされ、これらの結果は、心筋梗塞の発生に内皮細胞機能障害によるスパスムが関与していることを示唆している。従って糖尿病患者においては内皮細胞機能障害を念頭に、特にスパスムの多いわが国においては、降圧薬としてはHOPE試験でエビデンスのあるRA系阻害薬に追加してCCBの投与を考慮すべきではないかと思われる。また、グルコーススパイクが内皮細胞のアポトーシスを促進させることが知られている。自験例の検討でも、食後高血糖がPCI施行後のCVイベント発症を増加させることが判明しており、STOP-NIDDM試験、MeRIA-7試験のエビデンスと合わせて、内皮機能障害改善のためにα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)の投与も考慮すべきであると思われる。血栓形成促進性状態糖尿病患者が凝固性亢進状態にあるという知見は、血栓形成イベントのリスク増加と凝固系検査値の異常が基となっている。ACS患者の血管内視鏡による検討では、プラーク潰瘍および冠内血栓は、糖尿病患者においてそうでない患者よりも頻繁に見られることが明らかにされている。同様に、血栓の発生率は、糖尿病患者から取った粥腫切除標本の方が、そうでない患者から取ったそれよりも高いこともわかった。糖尿病患者では、ずり応力(シェアストレス)に対して、血小板の作用と凝集が亢進し、血小板を刺激する。加えて、血小板表面上の糖タンパク質GP-Ib受容体やGPⅡb/Ⅲaの発現が増加するといわれている。その上、抗凝集作用を持つNOやプロスタサイクリンの内皮細胞からの産生が減少するのに加え、フィブリノゲン、組織因子、von Willebrand因子、血小板因子4、因子Ⅶなどの凝血原の値が増加し、プロテインC、抗トロンビンⅢなどの内因性抗凝血物質の濃度が低下することが報告されている。さらにPAI-1が内在性組織のプラスミノーゲンアクチベーター仲介性線溶を障害する。つまり、糖尿病は、内因性血小板作用亢進、血小板作用の内在性阻害機構の抑制、内在性線溶の障害による血液凝固の亢進によって特徴づけられる。臨床的には、CVイベント予防のために高リスク糖尿病患者へのアスピリン単剤投与がADAのガイドラインでも推奨されている。クロピドグレルの併用は、出血のリスクとのバランスの中で症例個々に検討していく必要があると思われる。GPⅡb/Ⅲa受容体拮抗薬は、糖尿病患者のPCIの予後を改善することが報告されているが、本邦では未承認である。炎症状態炎症は、急性CVイベントだけでなくATS形成の開始と進行にも関係がある。糖尿病を含むいくつかのCVリスクファクターは炎症状態の引き金となるだろう。白血球は一般的には炎症の主要なメディエーターと考えられているが、近年では、炎症における血小板がカギとなる役割を果たすことが報告されている。この病態と関連する代謝障害が血管炎症の引き金となるということはもっともなことだが、その逆もまた正しいのかもしれない。従って、C反応性タンパク質(CRP)が進行する2型糖尿病のリスクを非依存的に予測するものとして示されてきた。糖尿病や明らかな糖尿病が見られない状態でのインスリン抵抗性状態において上昇する炎症パラメーターには、高感度C反応性タンパク質(hsCRP)、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、循環性(可溶性)CD40リガンド(sCD40L)がある。さらに内皮細胞(E)-セレクチン、血管細胞接着分子1(VCAM-1)、細胞内接着分子1(ICAM-1)などの接着分子の発現が増加することもわかっている。血管炎症作用亢進状態での形態学的な基質は、ACS患者の粥腫切除標本の分析から得たものである。糖尿病患者の組織は、非糖尿病患者の組織と比較して、脂質優位の粥腫がより大部分を占めており、より明らかなマクロファージ浸潤が見られる。特に糖尿病患者においては、冠血管のATS形成過程を促進することでAGE受容体(RAGE)が炎症過程や内皮細胞作用に重要な役割を果たすかもしれない。近年では、ATS形成が見られる患者における炎症促進のカギとなるサイトカインであるCRPが、内皮細胞でのRAGE発現をアップレギュレートすることが報告されている。これらの知見は、炎症、内皮細胞機能障害、ATS形成における糖尿病の機構的な関連を強化している。臨床的にCVイベントの発生に炎症が関与しており、その介入治療としてスタチンが効果的であることがJUPITER試験より明らかとなった。CARDS試験ではストロングスタチンが糖尿病患者のCVイベント抑制に効果的であることが報告されたが、この効果はLDL低下作用とCRP低下作用の強力な群でより顕著であった。2010年、ADAでは糖尿病患者のLDL管理目標値は1次予防で100mg/dL、2次予防で70mg/dLとより厳格な脂質管理を求めているが、脂質改善のみならず、抗炎症効果を期待したものでもあると思われる。プラーク不安定性と血管修復障害ATS形成の促進に加えて、糖尿病ではプラーク不安定性も起きる。糖尿病患者での粥状動脈硬化症病変は、非糖尿病患者に比して、血管平滑筋細胞が少ないことが示されている。コラーゲン源として血管平滑筋細胞は粥腫を強化し、それを壊れにくくする。加えて、糖尿病の内皮細胞は、血管平滑筋細胞によるコラーゲンの新たな合成を減少させる過剰量のサイトカインを産生する。そして最後に、糖尿病はコラーゲンの分解につながるマトリックスのメタロプロテイナーゼの産生を高め、プラークの線維性キャップの機械的安定性を減少させる。つまり、糖尿病はATS病変の形成、プラーク不安定性、臨床的イベントによって血管平滑筋細胞の機能を変える。糖尿病患者では非糖尿病患者より、壊れやすい脂質優位のプラークの量が多いことが報告されてきた。その上、糖尿病患者では、血管修復に重要な制御因子であると考えられているヒト内皮前駆細胞の増殖、接着、血管構造への取り込みが障害されていることが近年の知見で示唆されている。前述の機能障害に加えて、年齢と性をマッチさせ調整した対照群と比較して、培養液中の糖尿病患者から取った内皮前駆細胞の数が減っていることがわかり、その減少は逆にHbA1c値と関係していた。別の調査では、末梢動脈疾患を持つ糖尿病患者では、内皮前駆細胞値が特に低いことが報告されており、この株化細胞の枯渇が、末梢血管の糖尿病合併症の病変形成に関わっているのではないかと推測されている。ピオグリタゾンは糖尿病患者の内皮前駆細胞を増加させることが知られている。まとめ以上のごとく、糖尿病患者のCVイベント予防のためにはHbA1cの管理に加えて、ATS発症に影響を及ぼす多様な因子に対して集学的アプローチが重要となる。Steno-2試験では糖尿病患者に対して血糖のみならず、脂質、高血圧管理を同時に厳格に行うことでCVイベントを抑制した。血糖管理に加えて、スタチン、アスピリン、RA系阻害薬、CCB、TZD、α-GIによる血管管理がCVイベント抑制に効果的であると思われる。また、今後EPA製剤による脂肪酸バランスの是正、DPP-4やGLP-1などのインクレチン製剤による心血管保護も、糖尿病患者のCVイベント抑制に寄与することが期待される。今後は、糖尿病患者ごとにCVイベントリスクを評価し、薬物介入のベネフィットとリスクとコストのバランスを考慮して最適な薬物治療を検討していくことが重要になると思われる。このような観点から、今後登場する各種合剤は、この治療戦略を実行する上で患者服薬コンプライアンスを高め、助けになると思われる。

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Vol. 1 No. 1 ACSの治療-2次予防を考えた長期治療

大倉 宏之 氏川崎医科大学循環器内科はじめに急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)の慢性期治療には、責任病変での再発防止と非責任病変の新規発症防止、すなわち2次予防が含まれる。責任病変の再発予防には、薬剤溶出ステント(DES)による再狭窄抑制と、適切な抗血小板療法によるステント血栓症の予防が重要である。一方、非責任病変の新規発症を防ぐには、抗血小板薬を含むさまざまな薬物による長期にわたる2次予防が必要である。ACSの予後:欧米と日本の違いACS患者の予後は不良である。欧米のデータでは、その20%は1年以内に再入院し、男性の18%、40歳以上の女性の23%が死亡するとの報告がある1)。また、心筋梗塞(AMI)後の患者は退院後1年以内にその8~10%がAMIを再発するとも報告されている2)。ただ、その再発率は保有するリスクによって異なる。Finnish studyでは、糖尿病例(年率7.8%)は非糖尿病例(年率3%)と比較して心筋梗塞再発が高率であることが示されている3)。ランダム化試験のデータでは、AMIの再発率は1~5%程度とおおむねレジストリーよりも低めである。AMIに対するDESと金属ステント(BMS)を比較したランダム化試験のメタ解析によると、AMI再発はDES留置例で3.1%、BMS留置例で3.3%であった4)。日本のデータでも非ACS症例と比較すると、ACS例の予後は不良であるが(図:本誌p21参照)5, 6)、ACS発症後のAMI再発率は、日本や韓国では1%以下と欧米と比較すると低率である7, 8)。もともとAMIの発症自体が少ないことに加えて、急性期に速やかに経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)による治療がなされていることと、その後も主治医によるきめ細やかな2次予防が行われていることがその理由かもしれない。至適薬物療法によるACSの2次予防欧米では、ACSの予後は経年的に改善していることが示されている。The Global Registry of Acute Coronary Events(GRACE)レジストリーに登録されたACS患者約4万例のデータ(図:本誌p21参照)において、入院中の死亡や心不全、6か月後のAMI新規発症が2000年から2005年にかけて有意に減少していることが示された9)。これは、エビデンスに基づいた薬物治療の浸透と、急性期のPCI施行率が高くなってきた結果である(図:本誌p22参照)。ACS後の2次予防を目指した薬物療法についてはガイドラインに詳細に述べられており10-15)、β遮断薬、ACE阻害薬(またはARB)、アルドステロン阻害薬、スタチン等の有用性が示されている。これらの薬物療法が、日本の臨床の現場にどの程度浸透しており、その結果、日本人のACS患者の予後が実際に改善しているのかどうかについては今後検証すべき課題である。ACS患者では、非責任病変の血管内超音波所見によって、ハイリスク病変を予測可能との報告がなされている16)。もともとイベント発生率の低い日本人でも、同様の予測が可能であるのかについても明らかにすべきである。抗血小板薬によるACSの2次予防薬物による2次予防のうちでも、特に重要な役割を果たしているのが抗血小板療法である。表に日本、米国、欧州の各ガイドライン10-15)に記載されている抗血栓療法の推奨をまとめた(Class I、Class IIaのみ記載)(表:本誌p23参照)。アスピリンが第1選択である点はすべてのガイドラインに共通である。欧州、米国のガイドラインでは、アスピリンに加えてクロピドグレル(または他のP2Y12阻害薬)を12か月間投与することが推奨されている。日本のガイドラインにはその期間は特定されていない11)。抗血小板薬2剤併用療法の至適期間抗血小板薬2剤併用療法(dual anti-platelet therapy: DAPT)の至適投与期間は、ステントの種類(BMSかDESか)と病型(安定狭心症かACSか)により異なる。一般に、DESの場合は12か月間以上のDAPTが推奨されているが20)、至適期間についてのエビデンスは十分ではない。j-Cypherレジストリーでは、ACS例において6か月以上DAPTを継続していた例と、DAPTを6か月時点で中止していた例との間には、その後2年間のイベント発生率に差を認めなかったことが示されている5)。日本では、患者背景や病変背景を考慮した至適な抗血小板薬療法が行われていることが反映されているのかもしれない。ACSの研究ではないが、韓国からはステント留置後12か月以上イベントのなかった2,701例を、DAPT群とアスピリン単剤群にランダム化した試験が報告されている18)。2年間の観察期間中、両群間に心筋梗塞+心臓死の頻度に差はなく、ステント血栓症にも差はなかった(図:本誌p24参照)。EXCELLENT試験は、CypherもしくはXience/Promusステント留置例1,443例のDAPT期間を、6か月間と12か月間にランダム化したものである19)。12か月後のTVF(target vessel failure)や死亡もしくは心筋梗塞の発生には両群間に差を認めなかったが、ステント血栓症はDAPT6か月間群で多い傾向にあった。ただし、6か月間群のステント血栓症発症例6例中5例は6か月以内の発生であり、DAPTの期間が影響した可能性は低い。Prolonging Dual Antiplatelet Treatment after Grading Stent-induced Intimal Hyperplasia study(PRODIGY)では、ステント留置例約2,000例を対象にランダム化し、DAPTの期間を6か月間と24か月間で比較したものである。2年間の追跡期間中に全死亡+心筋梗塞+脳血管障害+ステント血栓症の頻度は6か月間群と24か月間群は同等であったが(10.0% vs. 10.1%, p=0.91)、出血は6か月間群で少なかったとの結果であった(ESC2011で報告)。The Dual Antiplatelet Therapy(DAPT)study20)は、15,000例のDES留置例と5,400例のBMS留置例を登録し、DAPTの投与期間を12か月間と30か月間にランダム化して両者を比較する大規模臨床試験である。すでに患者登録は終了し、現在フォローアップが進行中である。本邦においても、Optimal Duration of DAPT Following Treatment with Endeavor in Real-world Japanese Patients: A Prospective Multicenter Registry (OPERA) studyやNobori Dual antiplatelet therapy as appropriate duration (NIPPON) studyが現在進行中である。これらの研究にはACSも含まれており、日本人独自のエビデンスが得られるものと期待される。抗血小板薬投与と出血性合併症抗血小板薬投与に関連した問題点には出血性合併症がある。ACSに出血性合併症を発生した場合には、その長期予後は不良である21)。DAPT継続にあたっては、そのベネフィットのみならず出血のリスクも考慮せねばならない。ACSにおいて、出血のリスクが特に問題となるのが心房細動合併例である。欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン22)では、心房細動合併例に対するステント留置術後の抗血栓療法は表のごとく推奨されている(Class IIa)(表:本誌p25参照)。注目すべき点は、塞栓症のリスクを有する心房細動例では最後的には抗血小板薬は中止し、ワルファリンのみを一生継続することが推奨されている点である。日本でも、心房細動合併ACS例に対する至適抗血栓療法をいかにすべきかは重要な検討課題である。おわりにACSの予後改善には、急性期治療に加えて、抗血小板薬を中心とした長期にわたる2次予防が重要な役割を演じている。ただし、これら多くは欧米のデータに基づいたものであるため、今後、日本人における検証はぜひとも行われるべきである。文献1)Menzin J et al. 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重度皮膚有害反応の医薬品特定にパッチテストが有用・安全

 重度皮膚有害反応(severe cutaneous adverse drug reactions:SCAR)の医薬品特定にパッチテストが有用かつ安全であることが、フランス・ナンシー大学のA. Barbaud氏らによる多施設共同研究の結果、示された。検討されたのは3つの主要なSCARである、急性汎発性膿疱性発疹症(AGEP)、薬剤性過敏症症候群(DRESS)、スティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症(SJS/TEN)であった。British Journal of Dermatology誌2013年3月号の掲載報告。 パッチテストは、遅延型薬物過敏症を再現できる可能性があるが、患者の医薬品に対する中程度の再曝露を伴う可能性がある。著者らは、SCARを引き起こしている医薬品の特定に、パッチテストが有用であるかについて調べた。 複数施設において、発症から1年以内のDRESS、AGEP、SJS/TENで紹介されてきた患者を対象とした。SCAR発症前2ヵ月から前週まで服用していたすべての医薬品について調べた。 主な結果は以下のとおり。・被験者は134例で、男性が48例、平均年齢は51.7歳であった。パッチテストに用いられた医薬品は24種類であった。・パッチテストで陽性反応が確認されたのは、DRESS患者64%(46/72例)、AGEP患者58%(26/45例)、SJS/TEN患者24%(4/17例)であった。・再発が起きたのはAGEPの1例のみであった。・パッチテストの有用性は、医薬品の種類およびSCARの種類により異なった。たとえば、カルバマゼピン(商品名:テグレトールほか)は、DRESS症例では11/13例で陽性反応がみられたが、SJS/TEN症例では0/5例であった。・陽性反応の頻度が高かったのは、βラクタム系抗菌薬(22例)、プリスチナマイシン(11例)、DRESS症例におけるプロトンポンプ阻害薬(5例)であった。・一方で常に陰性であったのは、アロプリノール(商品名:ザイロリックほか)とサラゾスルファピリジン(同:サラゾピリンほか)であった。・DRESS患者18例のうち8例では、ウイルス再活性化とパッチテストの陽性反応が認められた。また、DRESS患者では、複数の薬品の有害反応の頻度が高く(症例のうち18%)、長年にわたって感作が持続していた。

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心不全への標準治療に加えたアリスキレン投与、長期アウトカム改善せず/JAMA

 心不全入院患者に対し、利尿薬やβ遮断薬などの標準的治療に加え、直接的レニン阻害薬の降圧薬アリスキレン(商品名:ラジレス)の投与を行っても、6ヵ月、12ヵ月後のアウトカム改善は認められなかったことが、米国・ノースウェスタン大学のMihai Gheorghiade氏らによるプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、報告された。研究グループは、先行研究における、心不全患者に対するアリスキレン投与は脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を有意に低下し良好な血行動態をもたらすといった報告を踏まえて、アリスキレンの長期アウトカム改善の可能性に関する本検討を行った。JAMA誌2013年3月20日号掲載の報告より。世界316ヵ所で、心不全入院患者1,639例を無作為化 研究グループは2009年5月~2011年12月にかけて、南・北米、ヨーロッパ、アジアの316ヵ所の医療機関を通じ、心不全で入院した患者1,639例を対象に無作為化試験を行った。アリスキレンを、標準的な治療に加え投与した場合のアウトカムについて比較した。 被験者は18歳以上で、左室駆出率(LVEF)40%以下、BNP値400pg/mL以上、またはN末端プロBNP(NT-proBNP)値1,600pg/mL以上であった。また、水分過負荷の徴候や症状も認められた。 主要アウトカムは、6ヵ月後および12ヵ月後の心血管死または心不全による再入院とした。心血管死または心不全のイベント発生率、両群で同程度 被験者のうち最終的に分析対象に組み込まれたのは1,615例だった。平均年齢は65歳、平均LVEFは28%、平均推定糸球体濾過量(eGFR)は67mL/分/1.73m2だった。また被験者のうち41%が糖尿病を有していた。無作為化時点で利尿薬を服用していたのは95.9%、β遮断薬は82.5%、ACE阻害薬またはARBは84.2%、アルドステロン受容体拮抗薬は57.0%だった。 6ヵ月後の主要エンドポイント発生率は、アリスキレン群24.9%(心血管死:77例、心不全による再入院:153例)に対し、プラセボ群は26.5%(同:85例、同:166例)であり、両群で有意差はなかった(ハザード比:0.92、95%信頼区間:0.76~1.12、p=0.41)。 12ヵ月後の同イベント発生率についても、アリスキレン群35.0%に対しプラセボ群37.3%と、両群で有意差はなかった(同:0.93、0.79~1.09、p=0.36)。 なお、高カリウム血症、低血圧症、腎機能障害や腎不全の発症率は、いずれもアリスキレン群で高率だった。

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Follow-up tests to detect recurrent disease: Patient’s reassurance or medical need? (Ian Smith, UK)

経過観察中に再発を発見するための検査:患者の安心のため?それとも医学的必要性?現在“多くの新しい治療が再発乳がんに対して利用可能となり、早く見つけることが治療において重要である“という定説がある。経過観察の理由として考えられるものは、早期発見により予後を改善する、QOLを改善する、治療の長期的な効果をみる、長期経過観察データを集める、BRCAのようなハイリスクにおける新規病変を検出する、である。集中的な経過観察は利益があるかということに関して3つの無作為化比較試験があり、3,055名の女性が登録されたが、生存率、無再発生存率に差はなく、年齢や腫瘍径、リンパ節転移状況によっても5年の死亡率に差がなく、QOLにも違いがなかった。Pelliら(1999年)は1,243名の患者からなる比較試験で、10年生存率にまったく差がないことを示した。Kokkoら(2005年)はフィンランドにおいて472名の患者を4群(i.3ヵ月毎受診+定期検査、ii.3ヵ月毎受診、iii.6ヵ月毎受診+定期検査、iv.6ヵ月毎受診)、に分けて経過観察したところ(定期検査の内容は、来院毎に血算/生化学/CA15-3、6ヵ毎月に胸部レントゲン、肝USと骨シンチを2年毎)、無再発生存率、全生存率ともに差はなく、コストは3ヵ月と6ヵ月で1,050から2,269ユーロへ、定期検査なしとありとで、1つの再発を見つけるのに4,166から9,149ユーロへ上昇した。それでは患者の安心のために定期検査を行うのか。QOLには差はなく、定期検査で10~15%の偽陽性があり、患者は検査による不安を増していて、むしろ余計な資金を用いることなく必要に応じて受けることを希望している。それにもかかわらず、なぜ患者は定期的な経過観察と検査を行いたがるのか。それは、医師、慈善活動、あるいはメディアがそうするのがよいと言っているからである。しかし、適切に説明したらそうはならないだろう。Pennantら(2010年)は、早期乳がんにおいてPET-CTのステージングについて28の研究をレビューしているが、診断精度は改善したものの、患者の予後が改善したというエビデンスはなかった。Augusteら(2010年)は2つの経済研究から1QALYあたり50,000ユーロ上昇するとした。現在ASCO、ESMO、St Gallenのいずれのガイドラインも、注意深い病歴の聴取、身体検査、定期的なマンモグラフィが、乳がん再発の適切な発見のために推奨されるとしている。身体検査は最初の3年は3~6ヵ月、4~5年は6~12ヵ月毎であり、マンモグラフィは1年毎である。血算、生化学、骨シンチ、胸部レントゲン、肝臓超音波、CT、18FDG-PET、MRI、腫瘍マーカー(CEA、CA15-3、CA27.29)は、無症状の患者に対して定期的に行うことは推奨されていない。それでは誰が経過観察をすることが大切であろうか。Grunfeldら(2006年)は、968名の患者を腫瘍専門医と家庭内科医による経過観察に無作為に割り付け、中央値で3.5年追跡したところ、再発、死亡、QOLともに有意な差はみられなかった。Koinbergら(2004年)は、264名の患者を腫瘍専門医と看護師による経過観察に割り付け5年追跡したが、やはり再発、死亡、QOLともに差がなかった。Meyerら(2012年)は、Dana Farberにおいて547名中218名の早期乳がん患者で、少なくとも診断から2年以上経過している方に質問票に答えてもらったところ、腫瘍内科医による経過観察を好む傾向にはあったものの、家庭内科医やナースプラクティショナーともに問題はなかった。ほとんどの方は電話相談を好んでおらず、ナースプラクティショナーによる経過観察はQOLとサバイバーケアを改善させる1つの方法であることを示した。Royal Marsden病院の経験では、ほとんどの再発は患者自身が自覚し、通常定期的な予約の間であった。より多くの女性は以前よりも乳がんから生存するようになり、経過観察のクリニックも大きくなっており、患者はこれらのクリニックで若い医師が診るようになっている。定期的な経過観察は、しばしば心配を引き起こし、予約がそれほど先でなければ患者からの症状の報告は遅れるかもしれない。最初の2年に2,232名の患者から問い合わせがあり、月平均で55回の電話があり、乳房の症状が40%、更年期症状が20%、再建のことが15%、精神社会的サポートが15%であった。そのうち10~15%がクリニックへの来訪を必要とし、多くが乳房の腫瘤であった。現在、より感度の高い検査法として末梢血中の腫瘍細胞や血清中の腫瘍由来DNAの検出があり、また標的治療が臨床応用されている。Dielら(2008年)らは、大腸がん18名で術後に血中変異DNAを測定し、検出されたものはされなかったものより、有意に無再発生存率が不良であることを示した。分子標的治療の時代に高い技術による経過観察ははたして利益があるだろうか。それを証明するためには次世代の無作為化試験が必要である。レポート一覧

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乳がんの放射線療法、その後の虚血性心疾患を増大/NEJM

 乳がんの放射線療法は、虚血性心疾患を増大することが、英国・オックスフォード大学のSarah C. Darby氏らによる住民ベースの症例対照研究の結果、報告された。疾患増大は平均照射線量に比例しており、照射曝露後数年以内に増大し始め20年以上続くこと、もともと心臓リスク因子を有する女性の絶対リスクが大きいことも明らかになった。乳がんの放射線療法では、心臓への偶発的な電離放射線曝露の頻度が高い。しかし、曝露による心臓への影響、その後の虚血性心疾患リスクについては確認されていなかった。NEJM誌2013年3月14日号掲載の報告。放射線療法を受けた2,168例の主要冠動脈イベント発生を分析 本研究は、心筋梗塞、冠動脈再建、虚血性心疾患死といった主要冠動脈イベント発生について、1958~2001年に、侵襲性乳がんのため体外照射線療法を受けたデンマークおよびスウェーデンの女性2,168例(主要冠動脈イベント発生群963例、対照群1,205例)を対象に検討が行われた。 被験者情報は病院の診療録から入手した。各被験者の、心臓全体と左冠動脈前下行枝(LAD)への平均照射線量を治療チャートから算出し分析に用いた。照射線量1Gy増大につき主要冠動脈イベント発生率7.4%増大 結果、全被験者における、心臓全体への平均照射線量は4.9Gy(範囲:0.03~27.72)であった。 主要冠動脈イベント発生率は、心臓への平均照射線量と比例しており、照射線量1Gy増大につき7.4%(95%信頼区間:2.9~14.5、p<0.001)の上昇がみられた。明瞭な閾値は示されなかった。 イベント発生の増大は、照射後5年以内に始まり30年間継続した。 照射線量1Gy当たりの主要冠動脈イベント率の増大は、放射線療法時に心臓リスク因子がある女性とない女性で同程度であった。

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レニン・アンジオテンシン系阻害薬の併用は死亡率の低下をもたらさない/BMJ

 レニン・アンジオテンシン系(RAS)の二重遮断は、心不全を主とする入院を減らし一見ベネフィットがあるように見えるが、死亡率の低下には結びついておらず、有害事象の超過リスクとの関連が認められることが、米国・コロンビア大学付属St Luke's Roosevelt HospitalのHarikrishna Makani氏らによるメタ解析の結果、報告された。RAS二重遮断は、治療抵抗性の心不全、高血圧症、糖尿病性腎症、蛋白尿症と幅広く用いられているが、有効性と安全性については議論が続いていた。今回の解析で示されたリスク・ベネフィットの結果を踏まえて著者は、「RAS二重遮断のルーチンな使用の反証が示された」と結論している。BMJ誌オンライン版2013年1月28日号掲載より。RAS二重遮断療法と単独療法を比較した無作為化対照試験をメタ解析 Makani氏らは、RAS二重遮断の長期の有効性と安全性について、単独療法とを比較するシステマティックレビューとメタ解析を行った。文献の検索は、1990年1月~2012年8月に発表されたPubMed、Embase、Cochrane central register of controlled trialsにて行い、RAS二重遮断療法と単独療法を比較した無作為化対照試験で、長期の有効性(1年以上)と安全性(4週以上)を報告しており、被験者数が50例以上であったものを適格とした。 解析は、試験コホートを心不全の有無別で階層化して比較が行われた。全死因死亡について有意な有効性みられず、一方で有害事象の有意な増大 解析には、33の無作為化対照試験、6万8,405例(平均年齢61歳、男性71%)が組み込まれた。試験期間は平均52週であった。 RAS二重遮断は単独療法と比較して、全死因死亡について有意な有効性を示す関連が認められなかった[相対リスク:0.97、95%信頼区間(CI):0.89~1.06、p=0.50]。また、心血管死とも有意な有効性を示す関連は認められなかった(同:0.96、0.88~1.05、p=0.38)。 単独療法と比較してRAS二重遮断は、心不全による入院を有意に18%減少した(同:0.82、0.74~0.92、p=0.0003)。しかし一方で、高カリウム血症リスクを有意に55%増大し(p<0.001)、低血圧症リスクを有意に66%増大し(p<0.001)、腎不全リスクを有意に41%増大した(p=0.01)。有害事象による治療中止リスクも有意に27%増大した(p<0.001)。 有効性と安全性の結果は、患者の心不全の有無別にかかわらず、全死因死亡に関する結果を除きRAS二重遮断と単独療法の比較での結果は一貫していた。全死因死亡については、心不全コホートの検討では有効性は示されず(p=0.15)、非心不全コホートの検討ではむしろ増大が示された(p=0.04)。腎不全のリスクについては、コホート間を比較すると心不全コホートでの有意な増大が示された(p<0.001)。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(57)〕 重ね着にメリットなし、かえって風邪をひくかも-ACE阻害薬とARB併用に効果増強みられず-

 Renin-angiotensine(RA)系抑制薬として、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)そして直接的レニン阻害薬 アリスキレン(商品名:ラジレス)が実用に供されているが、これらのうち2種類の併用を“dual blockade”と称する。最近このdual blockade 治療を検証したONTARGET試験やALTITUDE試験などで、その有用性が相次いで否定されている。 本試験はこれまで発表されたDual Blockade Therapy(DBT)に関する33のランダム化試験約6万8,000人のメタ解析である。その結果は、DBTは単独治療に比べて全死亡を減らすことはなく、高カリウム血症や低血圧、腎不全などの有害事象を増加させたというものである。本試験は、各トライアルの患者の臨床背景が不一致であるというメタ解析一般にみられるlimitationを差し引いても妥当な結果といえよう。 過剰なRA系の抑制は、かえって生体の代償機転を損ねる可能性が示唆されるが、今後保険上の縛りをいれることで、RA系同士の併用が処方されることのないようにわが国の臨床医に啓蒙していく必要があろう。

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エキスパートに聞く!「COPD」Q&A

認知症や寝たきり患者さんのCOPD診断の方法は?この場合、呼吸機能検査や胸部所見もとれませんので厳しい状態ではありますが、換気不全については呼気CO2アナライザーを用いて確認可能です。換気不全があると呼気中CO2濃度は上昇します。間質性肺疾患など拘束性換気障害ではこのような現象はみられませんので、呼気中CO2濃度の上昇は閉塞性障害がベースにあるという根拠になります。長い喫煙歴がありCOPDの肺所見もあるが、スパイロメトリーは正常な患者に対する対応法は?横隔膜の平低化などの画像所見がある方で、スパイロメトリーが正常だということはまずなく、何か異常があるものです。しかし、閉塞性換気障害が確認できない場合でも、咳や痰などの症状がある場合、旧分類ではステージ0とされ、将来COPDになる可能性が高いため、禁煙が推奨されています。また、こういった方たちの進行をいかにして防ぐかというのは今後の課題でもあります。呼吸器・循環器疾患の既往がなく非喫煙者であるものの、スパイロメトリーが異常な患者に対する対応法は?このケースではさまざまな要素が考えられます。閉塞性換気障害があることを想定すると、まず喘息の鑑別が必要です。また、非喫煙者であっても受動性喫煙についての情報をとることも重要です。さらに、胸郭の変形の確認や、日本人にはほとんどいませんがαアンチトリプシン欠損の除外も必要です。それから、もう1つ重要なことは、再検査によるデータの確認です。患者さんの努力依存性の検査ですから、適切に測定されて得られる結果かどうかの確認はぜひとも必要です。COPDと心不全合併症例における治療方針は?原則としてCOPDについてはCOPDの治療を行いますが、薬物療法とともに低酸素血症への酸素投与が重要です。COPDにより誘導される心不全は、基本的には右心不全であり、利尿薬が選択されます。拡張性心不全に準じて、利尿薬とともに利尿薬によるレニン-アンジオテンシン系の刺激作用を抑制するためにACE阻害薬やARBの併用が勧められています。不整脈などの症状が出たら、それに合わせた対応が必要となります。吸入ステロイドを導入するケースは?吸入ステロイド(以下:ICS)はCOPDそのものに対する有効性はあまり認められていません。しかし、急性増悪の頻度を減らすことが認められています。そのため、ICSは増悪を繰り返す際に安定を得るために投与するのが良いと考えられます。また、現在は長時間作用性β2刺激薬(以下:LABA)との配合剤もあり、選択肢が広がっています。LAMA、LABA/ LAMA配合薬、ICS/LABA配合薬の使い分けについて教えてくださいLAMAおよびLABA/LAMAについては、さまざまな有効性が証明されており、COPDの薬物療法のベースとして考えていただくべきだと思います。ICS/LABA配合薬 については、上記ICSの適応症例に準じて、適用を判断していくべきだと思います。また、テオフィリンのアドオンも良好な効果を示し、ガイドラインで推奨されているオーソドックスな方法であることを忘れてはいけないと思います。*ICS:吸入ステロイド、LABA:長時間作用性β2刺激薬、LAMA:長時間作用性抗コリン薬

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抗精神病薬や気分安定薬を服薬中の女性、妊娠・出産のリスクはどの程度?

 女性に対する抗精神病薬や気分安定薬の処方は、妊娠や出産へのリスクを十分に考慮する必要がある。イタリア・ヴェローナ大学のC Barbui氏らは、抗精神病薬服薬中の妊娠可能年齢女性における、妊娠転帰に関するデータをまとめ、発表した。Epidemiology and psychiatric sciences誌オンライン版2013年2月1日号の報告。 イタリア・ロンバルディア州(人口1,000万人、妊娠可能年齢女性175万2,285人)で、抗精神病薬を投与されている統合失調症および双極性障害を有する妊娠可能年齢の女性の割合を算出し、妊娠転帰に関するデータを調査した。精神科医療、薬物療法、妊娠転帰に関するデータは、12ヵ月の国勢調査によるローカル管理データベースから取得した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬または気分安定薬を投与されていた妊娠可能年齢女性は、統合失調症を有する2,893例(すべての統合失調症を有する女性の74.8%)、双極性障害を有する918例(すべての双極性障害を有する女性の80.1%)であった。・有病率は1,000人の女性あたり、統合失調症で1.65(95%CI:1.59~1.71)、双極性障害で0.52(95%CI:0.49~0.55)であった。・催奇形性のある薬剤の継続的投与を受けていたのは、妊娠可能年齢女性1,000人あたり1人であった。・統合失調症女性における妊娠は57例、そのうち正常分娩は23例(40%)であった。双極性障害女性における妊娠は26例、そのうち正常分娩は10例(38%)であった。関連医療ニュース ・抗うつ薬を使いこなす! 種類、性、年齢を考慮 ・双極性障害とADHDは密接に関連 ・妊娠中のSSRI服用と死産、新生児・0歳時死亡には有意な関連みられず

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