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BPLTTCから新たなメタ解析:65歳の上下で降圧薬の有用性を比較

降圧大規模試験に関する前向きメタ解析であるBlood Pressure Lowering Treatment Trialists’Collaboration(BPLTTC)から新たなデータが報告された。65歳未満の高血圧患者には「ACE阻害薬」、「より積極的な降圧」、「利尿薬またはβ遮断薬」がイベント抑制の観点からは好ましいようだ。BMJ誌2008年5月17日号(オンライン版2008年5月14日号)からの報告。31試験20満例弱を対象今回解析対象となったのは31試験に参加した190,606例。異なった薬剤あるいは降圧目標を比較した降圧無作為化試験のうち、1,000人年以上の規模を持ち2006年9月までにデータを入手でき、かつ本メタ解析が事前に定めている患者情報の得られた試験である。65歳「未満」群(平均年齢57歳)と「以上」群(平均年齢72歳)に分け、1次評価項目である心血管系イベント(脳血管障害、冠動脈イベント[突然死含む]、心不全)のリスクが比較された。65歳「以上」「未満」間で有意なバラツキみられず結果だが、まずプラセボ群と比較したACE阻害薬群、Ca拮抗薬群の心血管系イベント減少率は65歳「未満」「以上」で同等だった。すなわちプラセボ群と比較したACE阻害薬群の心血管系イベント相対リスクは、65歳未満で0.76(95%信頼区間:0.66~0.88)、65歳以上で0.83(95%信頼区間:0.74~0.94)[バラツキ:P=0.37]、Ca拮抗薬群では65歳未満0.84(95%信頼区間:0.54~1.31)、65歳以上0.74(95%信頼区間:0.59~0.92))[バラツキ:P=0.59]だった。「非積極的降圧」と「積極的降圧」を比較しても同様で、積極的降圧群の相対リスクは65歳未満で0.88(95%信頼区間:0.75~1.04)、65歳以上1.03(95%信頼区間:0.83~1.24 [バラツキ:P=0.24] となっていた。「ACE阻害薬 vs 利尿薬またはβ遮断薬」、「Ca拮抗薬 vs 利尿薬またはβ遮断薬」、「ACE阻害薬 vs Ca拮抗薬」、「ARB vs その他」で比較しても同様で、65歳「以上」と「未満」の間にイベント抑制作用の有意なバラツキはみられなかった。65歳「未満」・「以上」ではなく年齢を連続変数として解析しても、各種降圧薬による心血管系イベント抑制作用は有意な影響を受けていなかった。なお65歳「未満」と「以上」の間に「一定度の降圧により得られるイベント相対リスクの減少率」の差もなかった。降圧治療は少なくとも本解析で検討された範囲であれば年齢の高低を問わず有用であり、また年齢により降圧薬の有用性に差はない──と研究者らは結論している。(宇津貴史:医学レポーター)

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ARBは心筋梗塞の発症抑制についてACE阻害薬より劣るのか? -ARB史上最大規模の試験「ONTARGET試験」は何をもたらしたか(2)-

 “ARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させるのか?”、“ARBの心筋梗塞発症抑制はACE阻害薬より劣るのか?”-これらの疑問に対する答えを一身に背負わされてきた試験が先ごろ発表された。冠動脈疾患ハイリスク例に対してACE阻害薬とARB テルミサルタン、そしてその2剤併用療法を比較したONTARGET試験1)だ。ARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させる!? この疑問について注目を集めるきっかけを2004年に発表されたVALUE試験2)にまで遡ってみた。ハイリスク高血圧患者に対して、バルサルタンを投与した場合、アムロジピンより心筋梗塞の発症率が有意に高かったのである。VALUE試験において心筋梗塞の発症は二次評価項目ではあったが、このような結果が発表前に誰が予想しただろうか。 その年の11月、米国トロント総合病院心臓外科のVerma氏は、この結果を受け、「Angiotensin receptor blockers and myocardial infarction –These drugs may increase myocardial infarction and patients may need to be told」というタイトルの論文をBMJ誌に発表した3)。ここでは前述のVALUE試験以外にもCHARM-Alternative試験などの結果からARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させる可能性があり、ONTARGET試験の結果が発表されるまで、「ARBが咳の出ないACE阻害薬」と考えることに慎重になる必要があると言及した。そしてこの論争を投げかけたVerma氏も結論をONTARGET試験に委ねたのであった。ARBは心筋梗塞の発症リスクを高めない! その半年後、2005年夏にはARBの有用性を検証した無作為化比較試験のメタアナリシスが2報発表された4,5)。いずれの論文においても「ARBは心筋梗塞の発症リスクを有意に高めない」という結論に達し、Verma氏の仮説を支持するものとはならなかった。そしてここでもONTARGET試験がこの問題を解決する結果を導いてくれるものだと、ONTARGET試験に期待が寄せられた。ACE阻害薬は降圧効果と独立した冠動脈疾患発症抑制作用が認められる 一方、降圧薬の違いによるのアウトカムの格差に関するいくつかのメタアナリシスを発表してきたBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration (BPLTTC)は、2007年にACE阻害薬とARBのメタアナリシスを発表した6)。これによると5mmHgの降圧に対して冠動脈疾患の発症リスクをACE阻害薬は16%、ARBは17%減少させると推算されている。一方、降圧効果と独立した冠動脈疾患発症抑制作用はACE阻害薬だけに認められることを示した。 しかし、BPLTTCのメタアナリシスにおいては解析対象となった26の比較試験のうち、ACE阻害薬とARBをhead-to-headで比較した試験はわずか3つしか含まれていなかった。ELITEII7)(慢性心不全3,152例、カプトプリル vsロサルタン)、OPTIMAAL8)(急性心筋梗塞5,477例、カプトプリル vsロサルタン)、VALIANT9)(急性心筋梗塞9,818例、カプトプリル vsバルサルタン)の3つだ。これら個々の比較試験における心筋梗塞発症率や、これら3試験のメタアナリシス6)における冠動脈疾患発症率においてはACE阻害薬カプトプリルとARBの間には有意な差を認めてない。この有名なメタアナリシスもまた「ACE阻害薬とARBを直接比較した非常に大規模な比較試験であるONTARGET試験がこの疑問に対して何らかの重要な情報を与えてくれる」だろうとONTARGET試験への期待を抱かせたのであった。 「ARBは心筋梗塞の発症リスクを増加させる」のではと懸念される中、慢性心不全例へのARBカンデサルタンの有用性を検証したCHARM試験のOverall解析においてカンデサルタンの投与によって慢性心不全例の心筋梗塞の発症率が有意に抑制されたとの報告10)もあったことは押さえておきたい。 ARBと心筋梗塞発症の議論を一身に背負わされたONTARGET試験 このようにONTARGET試験は「脳心血管イベントの高リスク患者におけるARBテルミサルタンのACE阻害薬に対する非劣性を検証する」といった主要目的とは別のところで、「心筋梗塞の発症抑制に関してARBがACE阻害薬より劣るか否か(もしかすると優るのか)」も明らかしてくれるのではないかと期待された試験でもあった。 そして2008年春、ONTARGET試験は発表された1)。この試験では〈1〉冠動脈疾患、〈2〉末梢動脈疾患、〈3〉脳血管疾患、〈4〉臓器障害を伴う糖尿病の4つのうちいずれかを有する55歳以上の者を対象として、〈1〉ARBテルミサルタン、〈2〉ACE阻害薬ラミプリル、〈3〉その併用の3群のうちいずれかの治療が施され、〈1〉心血管死、〈2〉非致死的心筋梗塞、〈3〉非致死的脳卒中、〈4〉うっ血性心不全による入院のいずれかが発症率が主要評価項目として検証された。中央値56ヵ月、すなわち4年と8ヵ月において主要評価項目はテルミサルタン群とラミプリル群でそれぞれ16.7%、16.5%発症し、テルミサルタンのラミプリルに対する非劣性が証明された。 一方、主要評価項目の構成要素の1つとされた「非致死的心筋梗塞」は25,620例中1,291例(5.0%)に発症した。治療群別に見ると、ラミプリル群で4.8%、テルミサルタン群で5.2%であり、テルミサルタンによる治療を受けた場合、5年弱の間に心筋梗塞を発症する危険性はラミプリルと差がないという結果となった(相対リスク1.07、95%信頼区間:0.94-1.22)。すなわち、心筋梗塞発症抑制効果はテルミサルタンとラミプリルで同程度であり、Verma氏の論説から始まった「ARB投与、少なくともテルミサルタン投与の懸念」を払拭するものとなったとみている。1) ONTARGET Investigators:N Engl J Med. 2008;358:1547-15592) Julius S et al.: Lancet. 2004;363:2022-20313) Verma S et al:BMJ. 2004 ;329:1248-12494) McDonald MA et al.: BMJ. 2005;331:873.5) Verdecchia P et al:Eur Heart J. 2005;26:2381-2386.6) Blood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration:J Hypertens. 2007;25:951-9587) Pitt B et al:Lancet. 2000;355:1582-1587.8) Dickstein K et al:Lancet. 2002;360:752-760.9) Pitt B et al:N Engl J Med. 2003;348:1309-1321.10) Demers C et al:JAMA. 2005;294:1794-1798.

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インドの急性冠症候群はSTEMIが多く、貧困層の30日死亡率が高い

インドの急性冠症候群(ACS)患者は先進国に比べST上昇心筋梗塞(STEMI)の割合が高く、貧困層はエビデンスに基づく治療を受けにくいために30日死亡率が高いことが、インドSt John's医科大学のDenis Xavier氏が実施したCREATE registryにより明らかとなった。2001年には世界で710万人が虚血性心疾患で死亡したが、そのうち570万人(80%)が低所得国の症例であった。インドは世界でACSによる負担がもっとも大きい国であるが、その治療およびアウトカムの実態はほとんど知られていない。Lancet誌2008年4月26日号掲載の報告。心筋梗塞疑い例を対象としたレジストリー研究CREATE registryは、インドの50都市89施設で実施されたプロスペクティブなレジストリー研究である。対象は、明確な心電図上の変化(STEMI、非STEMI、不安定狭心症)が見られ急性心筋梗塞(MI)が疑われる症例、あるいは心電図上の変化は見られないが虚血性心疾患の既往を有しMIが疑われる症例とした。臨床的アウトカムおよび30日全原因死亡率の評価を行った。70%以上が貧困層~中間所得下位層2002~2005年の間に2万937例が登録され、明確な心電図上の変化により診断がなされた2万468例のうち1万2,405例(60.6%)がSTEMIであった。全体の平均年齢は57.5歳であり、非STEMI例/不安定狭心症(59.3歳)よりもSTEMI例(56.3歳)のほうが若年であった。1万737例(52.5%)が中間所得層の下位層であり、3,999例(19.6%)が貧困層であった。症状発現から来院までの所要時間中央値は360分、来院から血栓溶解療法開始までの時間は50分。糖尿病が6,226例(30.4%)、高血圧が7,720例(37.7%)、喫煙者は8,242例(40.2%)であった。30日死亡率はSTEMI例および貧困層で有意に高いSTEMI例は非STEMI例よりも血栓溶解薬(96.3%がストレプトキナーゼ)(58.5% vs 3.4%)、抗血小板薬(98.2% vs 97.4%)、ACE阻害薬/アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)(60.5% vs 51.2%)、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)(8.0% vs 6.7%)の施行率が有意に高かった(いずれもp<0.0001)。逆に、STEMI例は非STEMI例/不安定狭心症に比べβ遮断薬(57.5% vs 61.9%)、脂質低下薬(50.8% vs 53.9%)、冠動脈バイパス移植術(CABG)(1.9% vs 4.4%)の施行率が有意に低かった(いずれもp<0.0001)。STEMI例の30日アウトカムが死亡8.6%、再梗塞2.3%、心停止3.4%、脳卒中0.7%であったのに対し、非STEMI例/不安定狭心症ではそれぞれ3.7%、1.2%、1.2%、0.3%と有意に良好であった(いずれもp<0.0001)。富裕層は貧困層に比べ血栓溶解療法(60.6% vs 52.3%)、β遮断薬(58.8% vs 49.6%)、脂質低下薬(61.2% vs 36.0%)、ACE阻害薬/ARB(63.2% vs 54.1%)、PCI(15.3% vs 2.0%)、CABG(7.5% vs 0.7%)の施行率が有意に高かった(いずれもp<0.0001)。貧困層の30日死亡率は富裕層よりも有意に高かった(8.2% vs 5.5%、p<0.0001)。治療法で補正するとこの差は消失したが、リスク因子およびベースライン時の患者背景で補正した場合は維持された。Xavier氏は、「インドのACSは先進国に比べSTEMI例が多かった。これらの患者の多くは貧困層であり、それゆえにエビデンスに基づく治療を受けにくく、30日死亡率が高かった」と結論し、「貧困層における病院へのアクセスの遅れを解消し、高額すぎない治療法を提供できれば、罹患率および死亡率が低減する可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ARBとACE阻害薬の有効性は同等:ONTARGET試験結果

 本論は、心血管イベントハイリスク患者に対するアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)テルミサルタン(国内商品名:ミカルディス)の生命予後改善効果を検討する大規模臨床試験「ONTARGET」の結果。第57回米国心臓病学会(ACC)にて発表された同日(2008年3月31日)、NEJMオンライン版にて公表され、本誌では2008年4月10日号で掲載された。25,620例対象に単独、併用を比較 ONTARGET試験は、血管疾患患者およびハイリスクの糖尿病患者(ともに心不全なし)を対象に、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬ramipril単独投与、ARBテルミサルタン単独投与、および両剤併用療法を二重盲検無作為化にて比較。 世界40ヵ国730施設から登録された25,620例の対象は、3週間の試験導入期間後(単純盲検法にて)、ACE阻害薬単独投与群(ramipril 10mg/日、8,576例)、ARB単独投与群(テルミサルタン 80mg/日、8,542例)、両剤併用群(8,502例)に割り付けられた。主要評価項目は、心血管系に起因する死亡、心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院。両剤併用は有害事象増加 結果、平均血圧はACE阻害薬群に比べて、ARB群は0.9/0.6mmHg、併用群は2.4/1.4mmHg上回って低下していた。 追跡間中央値56ヵ月時点で主要評価項目が観察されたのは、ACE阻害薬群は1,412例(16.5%)、ARB群は1,423例(16.7%)(相対リスク:1.01、95%信頼区間:0.94~1.09)。 ACE阻害薬群に比べてARB群は、咳嗽(1.1% 対 4.2%、P<0.001)、血管性浮腫(0.1% 対 0.3%、P=0.01)の発生率が低かったが、低血圧(2.7% 対 1.7%、P<0.001)の発生率が高かった。失神は同等(0.2%)。 また併用療法群で主要評価項目が観察されたのは 1,386 例(16.3%、相対リスク:0.99、95%信頼区間:0.92~1.07)。ACE阻害薬群に比べてリスクが高かったのは、低血圧(4.8% 対 1.7%、P<0.001)、失神(0.3% 対 0.2%、P=0.03)、腎機能障害(13.5% 対 10.2%,P<0.001)だった。 「血管疾患患者またはハイリスク糖尿病患者において、ARBはACE阻害薬と同等の有効性を有し、血管性浮腫がより少ないことと関連していた。両剤併用は有害事象の増加と関連し、さらなるベネフィットは得られなかった」と結論づけた。

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2型糖尿病患者への積極的治療は動脈硬化を退縮するが…

心血管疾患(CVD)リスクの高い2型糖尿病患者の、リスク因子コントロールの目標値について、MedStar Research Institute(米国)のBarbara V. Howard氏らの検証結果が発表された。JAMA誌2008年4月9日号より。動脈硬化進行を「積極的治療群」と「標準治療群」とで比較本研究は2型糖尿病を有する40歳以上の米国原住民(American Indians)男女が対象。「SANDS」(Stop Atheroschlerosis in Native Diabetics Study)と呼ばれる。CVD履歴のない参加者499例をLDLコレステロールと収縮期血圧(SBP)の目標値をそれぞれ、「70mg/dL以下」「115mmHg以下」に定めた「積極的治療群」(n=252)と、「100mg/dL以下」「130mmHg以下」に定めた「標準目標治療群」(n=247)とに無作為に割り付け、無症状アテローム性動脈硬化症の進行が比較された。実施場所はオクラホマ州1、アリゾナ州2、サウスダコタ州1の計4つのクリニカルセンター。追跡期間は2003年4月~2007年7月にわたる間の3年。主要エンドポイントは総頸動脈内膜中膜厚(IMT)により評価されるアテローム性動脈硬化の変化。副次エンドポイントは、他の頸動脈、心臓超音波検査、CVDイベント発生とされた。介入後のLDL・SBPの平均値(最低12カ月間)は、「積極的治療群」では72mg/dL・117mmHg(95%信頼区間:69~75、115~118)、「標準目標治療群」は104mg/dL・129mm Hg(101~106、128~130)で、両群とも治療目標値はほぼ達成維持された。CVDイベント発生に有意差なし、「積極群」の降圧薬に関する有害事象多しで…「積極的治療群」ではIMTの退縮(-0.012mm)が認められた。一方の「標準目標治療群」は進行(0.038mm)していた(P

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ACE阻害薬とARBの併用療法は心血管疾患発症抑制においてもはや有用でない-ARB史上最大規模の試験「ONTARGET試験」は何をもたらしたか(1)-

 4日、先頃、発表されたONTARGET試験の発表を受けて、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、アステラス製薬株式会社は、ARBテルミサルタン(販売名:ミカルディス)が心血管疾患のハイリスク患者に対して、既に心血管疾患の発症抑制効果が確立しているACE阻害薬ラミプリルと同等の効果を有することを発表し、同日、檜垣實男氏(愛媛大学大学院 病態情報内科学 教授)はその意義についてプレスセミナーにおいて講演した。ここではその内容を基にONTARGET試験に関していくつかの観点からレビューする。ONTARGET試験では心血管イベントハイリスク患者を対象にARB(ミカルディス、一般名:テルミサルタン)単独投与のACE阻害薬(一般名:ラミプリル)単独投与に対する非劣性と、テルミサルタンとACE阻害薬併用療法のACE阻害薬単独投与に対する優越性を検証された。その結果は3月31日、第57回米国心臓病学会(ACC)にて発表された。また、この内容はNew England Journal of Medicine誌4月10日号に発表される予定である(インターネット上には31日、掲載されている)。(1)ACE阻害薬とARBの併用療法はもはや有用でない ONTARGET試験の中で、最も注目した結果は、ACE阻害薬とARBの併用療法が、ACE阻害薬単独投与に比べて優越性を示せなかったことである。ONTARGET試験では、1次評価項目として「心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院のいずれかの発現」と複合心血管イベントが設定されたが、その発現率は、ACE阻害薬単独投与群で16.5%、ACE阻害薬とARBの併用群で16.3%であった。1次評価項目における併用療法のACE阻害薬に対するハザード比は0.99(95%信頼区間:0.92-1.07)であり、ACE阻害薬にARBを併用しても有意な心血管系イベントの改善には至らなかったのだ。 そもそも、なぜ、この試験が行われたか。ACE阻害薬はアンジオテンシンIからアンジオテンシンIIへの変換を促進させる酵素ACEを阻害することによってアンジオテンシンIIの産生を抑制する。しかし、アンジオテンシンIIはキマーゼなどACE以外の酵素によっても産生され、完全にはレニン・アンジオテシン系(RAS)をブロックできない。ARBはアンジオテンシンII受容体を直接遮断する。したがってACE阻害薬とARBの併用によるRASのデュアルブロックによって、ACE阻害薬で証明されている数々の心血管疾患発症抑制効果がさらに増強されると期待されていた。 これまでにACE阻害薬とARBの併用療法の有用性を検証した臨床試験はONTARGET試験が初めてではない。大規模な試験としては、心筋梗塞後の左室収縮不全または心不全例に対してバルサルタン(販売名:ディオバン)とカプトプリル(カプトリル)の併用療法の有用性を検証したVALIANT試験と、慢性心不全例に対してカンデサルタン(販売名:ブロプレス)とACE阻害薬(どのACE阻害薬を選択するかは医師の判断:エナラプリル27%、リシノプリル19%、カプトプリル17%)の併用療法の有用性を検証したCHARM-Added試験がある。 これらの結果は対照的なものとなった。すなわち、VALIANT試験では併用療法がACE阻害薬単独投与に対して優越性を示せず、CHARM-Added試験では併用療法が単独療法に対して優越性を示したのである。 Yusuf氏らはONTARGET試験やVALIANT試験の対象は、他の薬剤によって治療が成功している集団であったため、ACE阻害薬とARBの最大投与量を用いたRASのデュアルブロックによる臨床ベネフィットはほとんど得られなかったのではないかと考察している。 また、安全性面に目を向けてみると、ONTARGET試験では、ACE阻害薬とARBの併用療法によって低血圧、失神、腎機能障害、高カリウム血症が有意に増加し、透析を必要とする腎不全も増加傾向にあった。これらを受け、檜垣氏は「ハイリスク例では副作用が増加するだけで、併用療法の有用性は心不全例を除いては期待できない」と述べた。 血圧値は141.8/82.1mmHgからACE阻害薬投与によって6.4/4.3mmHg降下し、ACE阻害薬とARBの併用療法によって9.8/6.3mmHg降下した。すなわち、その差は2.4/1.4mmHg。この血圧差からは4-5%のイベント抑制が期待できるとしているが、今回はそこまでの結果に至らなかった。テルミサルタンを併用しても血圧差が2.4/1.4mmHgであったこと、血圧差があったにも関わらず、一次評価項目で全く差がなかったのはなぜか、まだ疑問は残る。 一方、わが国で保存期腎不全例を対象にACE阻害薬(トランドラプリル)とARB(ロサルタン)の併用療法は、それぞれの単独療法に比べ腎不全への進行を抑制することができたことがCOOPERATE試験より証明されており、我々もLancet誌発表直後に著者の中尾尚之氏に独占インタビューした。心血管疾患発症抑制ではなく、腎疾患の進展抑制における併用療法の効果について期待できるかもしれない。 2007年6月に弊社が独自に調査した結果によると、高血圧症例を10例/月に診察している医師(n=503)がCa拮抗薬およびARBが投与されている例で降圧効果が不十分な場合、増量、切り換え、追加などの中から、ACE阻害薬を追加投与し、3剤併用を選択する割合は平均5.2%であった。まだ、臨床においてはARBとACE阻害薬の併用投与が行われている。今回のONTARGETの結果は、ハイリスク患者における心血管疾患発症抑制を目的としたACE阻害薬とARBの併用療法の臨床意義は期待できないことを証明したといえる。 次回は「ARB投与による冠動脈疾患発症抑制」についてレビューする。

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MRSA院内感染率は全入院患者のスクリーニングでも低下しない

メチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)による院内感染を減らすため、医療政策担当者らが、入院する患者全員にユニバーサル・スクリーニング実施を要求していることに対して、スイスのジュネーブ病院・医科大学のStephan Harbarth氏らが、外科患者のMRSA院内感染初期の検出戦略効果を評価する大規模な研究を行い、「ユニバーサル・スクリーニングを行ってもMRSA手術部位感染率やMRSA院内獲得率は有意に変化しない」とスクリーニングに疑問を提示している。JAMA誌2008年3月12日号より。12の外科病棟で患者21754人を対象に実施研究では、2004年7月から2006年5月の間、スイスの教育病院のうち異なる専門領域を含む12の外科病棟で、外科患者計21,754例を対象として、入院時に迅速スクリーニングと標準的な感染症管理対策を行う介入群と、標準的な感染症管理対策だけを行う制御群に分け、両者を交叉法で比較した。各病棟は初めの9ヵ月間、介入群と制御群に割り付けられ、その後9ヵ月間は、割り付ける群を切り替えた。介入期間に介入病棟へ24時間以上入院する患者は、入院前または入院時に迅速な多重ポリメラーゼ連鎖反応検査でスクリーニングされた。介入期間の患者数は10,844例、制御期間は10,910例だった。全病棟で、MRSAキャリアとの接触隔離、専用道具(ガウンや手袋、必要ならマスクも)使用、MRSAキャリアの周術期抗生剤予防処置、コンピュータ化されたMRSA警戒システム、ムピロシン軟膏の鼻腔塗布とクロルヘキシジン身体洗浄による局所無菌化処置から成る5日間の標準感染症管理処置がとられた。主要評価項目は、MRSA院内感染の発生率、MRSA手術部位感染およびMRSA感染の院内獲得率とした。手術部位感染率も院内獲得率も有意な変化なし介入期間中の患者10,844例中10,193例(94%)をスクリーニングした結果、事前に未知のMRSAキャリア337例を含むMRSA陽性患者515例(5.1%)を特定。スクリーニングからMRSAキャリア試験結果通知までに要した時間の中央値は22.5時間(四分位数間領域は12.2~28.2時間)だった。このうち院内でMRSA感染症を発症したのは、介入期間中は93例(患者1,000人日につき1.11)だったが、制御期間中は76例(患者1,000人日につき0.91、調整された罹患率比率1.20、 95%信頼区間:0.85~1.69、P=0.29)だった。手術部位感染率と院内獲得率は有意に変化しなかった。介入区域で感染した患者93例中53例(57%)は、入院時にはMRSAと無縁だったが入院中に発症していた。これらからHarbarth氏らは「入院時に患者全員をスクリーニングする戦略は、標準的な感染症管理対策より有利とは言えない」とし、疑問を呈している。(朝田哲明:医療ライター)

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来年1月1日からプレミネントの投薬期間制限が解除

アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)と少量利尿薬との合剤である「プレミネント」の投薬期間制限が2008年1月1日より解除される。「プレミネント」には2週間に1度の投薬期間制限が設けられているが、発売後の市販直後調査等を経て、1年が経過する来年1月1日より長期処方が可能となる。詳細はプレスリリースへhttp://www.banyu.co.jp/content/corporate/newsroom/2007/product_news_1226.html

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未熟児無呼吸発作に対するカフェイン療法の長期的影響は?

メチルキサンチン等カフェインは、新生児集中治療で頻繁に使用される薬剤の1つで、未熟児無呼吸発作に対して一般的に用いられているが、その有効性と安全性に関する十分なデータはない。ハミルトン大学(カナダ)Barbara Schmidt氏ら未熟児無呼吸発作カフェイン療法研究グループ(Caffeine for Apnea of Prematurity Trial Group)は、神経発達と成長の長期的影響に関する知見を報告した。NEJM誌11月8日号掲載。極低出生体重児2,006例の18~21ヵ月時点の転帰評価出生時体重500~1,250gの乳児2,006例を、カフェイン投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付け、未熟児無呼吸発作の治療を必要としなくなるまで治療が続けられた。主要転帰は修正月齢18~21ヵ月時点での、死亡、脳性麻痺、認知機能の発達遅延(ベイリー乳幼児発達検査の精神発達指スコア<85)、難聴、視覚障害の複合。主要転帰検討のための十分なデータが得られたのはカフェイン投与群937例、プラセボ投与群932例だった。カフェイン投与群で神経発達能力障害を伴わない生存率を改善死亡または神経発達障害を伴い生存は、カフェイン投与群377例(40.2%)に対し、プラセボ投与群431例(46.2%)だった(施設間調整後オッズ比0.77、 95%信頼区間:0.64-0.93、P=0.008)。脳性麻痺の発病率に関しても、カフェイン投与群4.4%に対しプラセボ投与群7.3%、補正オッズ比0.58(95%信頼区間:0.39-0.87、P=0.009)で、カフェイン投与群のほうが低い。認知機能の発達遅延についても、カフェイン投与群33.8%、プラセボ投与群38.3%、補正オッズ比0.81(同0.66-0.99、P=0.04)で同様の結果が得られた。死亡、難聴、視覚障害、および身長、体重、頭囲の平均のパーセンタイルは、2群間で有意差がなかった。研究グループは、「未熟児無呼吸発作に対するカフェイン療法は、神経発達能力障害を伴わない生存率を改善する」と結論づけている。(武藤まき:医療ライター)

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米国心臓学会において「HIJ-CREATE」の成績が発表

 11月7日(米国時間)、フロリダ州・オーランドで開催されている第80回米国心臓学会 (AHA: the American Heart Association's Scientific Sessions 2007) のlate-breaking clinical trials sessionにおいて、高血圧症治療薬ブロプレス(一般名:カンデサルタン シレキセチル)の大規模臨床試験「HIJ-CREATE」の成績が発表された。HIJ-CREATE試験は2001年6月から実施されたもので、日本の14施設が参加、高血圧症を有する日本人の冠動脈疾患患者2,049例を対象に、アンジオテンシン・受容体拮抗薬(ARB)ブロプレスを基礎治療にした薬剤群(ブロプレス群)とARBを使用しない標準治療薬剤群(標準治療群)について、心血管系イベントの発症を指標として比較。 今回の発表では、以下の点が明らかになった。1.ブロプレス群は標準治療群と比較して、心血管系イベントの発症リスクを11%抑制したものの統計的な有意差は得られなかった(p=0.194)。<主要評価項目> 2.糖尿病の新規発症率は、ブロプレス群1.1%、標準治療群2.9%であり、ブロプレス群は糖尿病の発症を抑制した(p=0.027)。<副次評価項目>3.腎機能の低下した患者においてブロプレス群は標準治療群と比較して、心血管系イベントの発症リスクを21%抑制した(p=0.039)。

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ARB+レニン阻害薬で降圧作用は増強

初めての経口レニン阻害薬として注目されているaliskiren(日本未承認)の降圧作用はARBバルサルタンと同等で、またバルサルタンとの併用により降圧作用がさらに増強されることが明らかになった。アメリカ・アラバマ大学のSuzanne Oparil氏らがLancet誌7月21日号で報告した。バルサルタン+aliskiren併用のコンプライアンスは良好本検討の解析対象となったのは、随時血圧で拡張期が95mmHg以上、110mmHg未満、自由行動下昼間8時間の血圧平均値が90mmHg以上である18歳以上の男女1,797例。バルサルタン群(455例)、aliskiren群(437例)、バルサルタン+aliskiren併用群(446例)とプラセボ群(459例)に無作為割り付けされ、8週間二重盲検にて追跡された。バルサルタンは単独・併用を問わず160mg/日より開始し、4週間後に320mg/日へ増量、aliskirenも同様に150mg/日から開始して、4週間後に300mg/日へ増量した。1,797例中196例(11%)が脱落したが、脱落率が最も高かったのはプラセボ群(14%)で、最小はバルサルタン+aliskiren併用群の8%だった。8週間で17.2/12.2mmHg降圧1次評価項目である「服用開始8週間後の随時血圧」は、バルサルタン群で試験開始時に比べ12.8/9.7mmHg、aliskiren群で13.0/9.0mmHg低下しており、いずれもプラセボ群(4.6/4.1mmHg)に比べ有意に高値だった(p<0.0001)。さらにバルサルタン+aliskiren併用群では試験開始時に比べ17.2/12.2mmHgという著明な降圧を認め、この値はバルサルタン単独、aliskiren単独よりも有意に大きかった(p<0.0001)。24時間自由行動下血圧で検討しても同様の結果であり、ARBとaliskiren併用の臨床的有用性を検討すべきだとOparil氏らは結論している。(宇津貴史:医学レポーター)

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メディケア・パートDの処方薬リストから広適用薬を探し出せ

65歳以上の高齢者を対象とした米国の医療保険メディケアは2006年1月から、それまで保険給付外だった外来患者の処方薬を給付対象とした。これはメディケア・パートDと呼ばれ、メディケア発足以来の大改革と言われているが、薬代を給付する民間保険会社と契約している患者ごとに処方薬リストが異なるため、少なからず混乱を招いている。 ハワイ大学医学部のチェン・ウエン・ツェン氏らは、カリフォルニア州とハワイ州をサンプルに、各保険会社の処方薬リストがどのような薬をカバーしているのかを調査した。その結果、各リスト間には多くの相違があり、開業医が処方薬を把握するのは容易でないことが明らかになった。JAMA誌2007年6月20日号に掲載。115処方薬リストから8療法の広適用薬を調査メディケア受給者が全米で最も多いカリフォルニア州(72の処方薬リストがある)と、受給者数が少ないハワイ州(43リスト)の2州で、処方頻度の高い治療薬それぞれにおいて、大多数のパートDで適用される広適用薬が少なくとも1つあり、それを医師が確認できるかどうかを調べた。両州のパートD処方薬リストの適用範囲を調べるため、2006年3月1日から4月15日にかけてメディケアのウェブサイトで、高血圧、高脂血症、うつ病治療で使われる8療法(〔1〕ACE阻害薬、〔2〕ARB、〔3〕β遮断薬、〔4〕カルシウムチャネル遮断薬、〔5〕ループ利尿薬、〔6〕SSRI、〔7〕スタチン、〔8〕チアジド利尿薬)を調査(保険の事前承認なし、患者負担≦$35、リスト収載率≧90%)。主要評価項目は、広適用薬を少なくとも1つ持つとした。ジェネリック73%、ブランド薬6%が広適用薬カリフォルニア州では、確認できた薬が75例で、それぞれの適用範囲は7%から100%まで幅があった。しかしこうした変動幅はあったが、8療法のうちARBを除く7療法には、少なくとも1つの広適用薬が含まれていた。そして34例の広適用薬(45%)のうち、2例以外はジェネリック医薬品だった。リスト収載率を≧95%、患者負担≦$15に制限しても、8療法中7つには最低1つの広適用薬が含まれていた。また全体として、73%のジェネリック薬と6%のブランド薬は広適用薬と言えた。この所見はハワイにおいても同様で、処方薬リストはかなり異なっていたが、ARBを使った療法以外は少ない患者負担分で1つ以上の広適用薬があった。ツェン氏らはこの結果を受け、「医師にとって容易ではないが、ジェネリック薬品のすべてが広適用薬ではないこと、また、ブランド薬の多くは広適用薬ではないことを認識し、処方を書く前にどの薬が広適用薬であり、どこまでが適用範囲かを確認する必要があるようだ」と述べている。(朝田哲明:医療ライター)

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