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メチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)による院内感染を減らすため、医療政策担当者らが、入院する患者全員にユニバーサル・スクリーニング実施を要求していることに対して、スイスのジュネーブ病院・医科大学のStephan Harbarth氏らが、外科患者のMRSA院内感染初期の検出戦略効果を評価する大規模な研究を行い、「ユニバーサル・スクリーニングを行ってもMRSA手術部位感染率やMRSA院内獲得率は有意に変化しない」とスクリーニングに疑問を提示している。JAMA誌2008年3月12日号より。12の外科病棟で患者21754人を対象に実施研究では、2004年7月から2006年5月の間、スイスの教育病院のうち異なる専門領域を含む12の外科病棟で、外科患者計21,754例を対象として、入院時に迅速スクリーニングと標準的な感染症管理対策を行う介入群と、標準的な感染症管理対策だけを行う制御群に分け、両者を交叉法で比較した。各病棟は初めの9ヵ月間、介入群と制御群に割り付けられ、その後9ヵ月間は、割り付ける群を切り替えた。介入期間に介入病棟へ24時間以上入院する患者は、入院前または入院時に迅速な多重ポリメラーゼ連鎖反応検査でスクリーニングされた。介入期間の患者数は10,844例、制御期間は10,910例だった。全病棟で、MRSAキャリアとの接触隔離、専用道具(ガウンや手袋、必要ならマスクも)使用、MRSAキャリアの周術期抗生剤予防処置、コンピュータ化されたMRSA警戒システム、ムピロシン軟膏の鼻腔塗布とクロルヘキシジン身体洗浄による局所無菌化処置から成る5日間の標準感染症管理処置がとられた。主要評価項目は、MRSA院内感染の発生率、MRSA手術部位感染およびMRSA感染の院内獲得率とした。手術部位感染率も院内獲得率も有意な変化なし介入期間中の患者10,844例中10,193例(94%)をスクリーニングした結果、事前に未知のMRSAキャリア337例を含むMRSA陽性患者515例(5.1%)を特定。スクリーニングからMRSAキャリア試験結果通知までに要した時間の中央値は22.5時間(四分位数間領域は12.2~28.2時間)だった。このうち院内でMRSA感染症を発症したのは、介入期間中は93例(患者1,000人日につき1.11)だったが、制御期間中は76例(患者1,000人日につき0.91、調整された罹患率比率1.20、 95%信頼区間:0.85~1.69、P=0.29)だった。手術部位感染率と院内獲得率は有意に変化しなかった。介入区域で感染した患者93例中53例(57%)は、入院時にはMRSAと無縁だったが入院中に発症していた。これらからHarbarth氏らは「入院時に患者全員をスクリーニングする戦略は、標準的な感染症管理対策より有利とは言えない」とし、疑問を呈している。(朝田哲明:医療ライター)