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米国では2012~15年の期間に、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)の施行数が5倍以上に増加したが、TAVR後の脳卒中リスクは知られていない。米国・クリーブランドクリニックのChetan P. Huded氏らは、全国的な調査を行い、2011~17年の術後30日以内の脳卒中発生率は2.3%で、この期間の年間発生率の推移に大きな変動はないことを明らかにした。研究の詳細は、JAMA誌2019年6月18日号に掲載された。約10万例のレジストリデータを後ろ向きに解析 研究グループは、米国におけるTAVR導入後5年間の術後30日以内の脳卒中の発生状況を調査し、脳卒中と30日死亡率、薬物療法と30日脳卒中リスクとの関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(米国心臓病学会[ACC]全国心血管データレジストリなどの助成による)。 2011年11月9日~2017年5月31日までに、米国胸部外科学会(STS)/ACC経カテーテル的弁治療レジストリに参加する521施設でTAVR(経大腿動脈、非経大腿動脈)を受けた患者10万1,430例のデータを解析した。30日フォローアップは、2017年6月30日に終了した。 術後30日時の一過性脳虚血発作および脳卒中の評価を行った。また、Cox比例ハザードモデルを用いて脳卒中と30日死亡率の関連を、傾向スコアマッチングを用いて抗血栓薬療法と退院後30日時の脳卒中の関連を評価した。約7割が術後3日以内に発生、死亡率:脳卒中16.7% vs.非脳卒中3.7% 10万1,430例の年齢中央値は83歳(IQR:76~87)、女性が4万7,797例(47.1%)で、8万5,147例(83.9%)が経大腿動脈アクセスであった。術後30日のフォローアップデータは全例で得られた。 30日時に、2,290例(2.3%)が脳卒中を、373例(0.4%)が一過性脳虚血発作を発症した。調査対象の期間中、術後30日脳卒中の発生率は増加も減少もせず、全例(傾向検定:p=0.22)および経大腿動脈アクセス群(p=0.47)の双方で安定的に推移した。 30日以内の脳卒中のうち、1,119例(48.9%)は術後の初日に、1,567例(68.4%)は3日以内に発生した。 脳卒中2,290例のうち383例(16.7%)が死亡したのに対し、非脳卒中9万9,140例では3,662例(3.7%)が死亡し、脳卒中の発生は30日死亡率の上昇と有意な関連を示した(p<0.001、リスク補正後30日死亡のハザード比[HR]:6.1、95%信頼区間[CI]:5.4~6.8、p<0.001)。 傾向スコアマッチングによる解析では、経大腿動脈アクセス群の30日脳卒中リスクは、退院時の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)による治療の有無とは関連がなく(DAPT例0.55% vs.非DAPT例0.52%、HR:1.04、95%CI:0.74~1.46)、経大腿動脈以外でのアクセス群でも、退院時DAPTの有無で30日脳卒中リスクに差はなかった(0.71% vs.0.69%、1.02、0.54~1.95)。 同様に、退院時の経口抗凝固薬療法の有無についても、経大腿動脈アクセス群(0.57% vs.0.55%、HR:1.03、95%CI:0.73~1.46)および経大腿動脈以外でのアクセス群(0.75% vs.0.82%、0.93、0.47~1.83)の双方で、30日脳卒中リスクに差は認めなかった。 著者は、本試験で得られたTAVR導入後5年の主な知見を次のようにまとめている。1)TAVR技術の改善や、術者の経験の積み重ねにもかかわらず、TAVR後30日脳卒中の経時的な発生率に変化はない、2)TAVR後30日脳卒中の多くが、施術後3日以内に発生している、3)早期脳卒中は、30日死亡率の上昇と独立の関連がある、4)DAPTと経口抗凝固薬は、いずれも30日時の神経学的イベントのリスクとは関連しない。