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まだBMSを使う理由があるか?(解説:上田恭敬氏)-769

 本試験では、安定狭心症も急性冠症候群も含めた75歳以上のPCI施行患者を対象として、まずDAPTの期間を1〜6ヵ月の間(short DAPT)で臨床的必要性に応じて決めた後に、PCIに使用するステントをDES(Synergy、Boston Scientific)またはBMS(Omega or Rebel、Boston Scientific)に無作為に割り付けた。患者に対しては、「SENIOR stent」の表記で統一することによって、いずれに割り付けられたかわからないようにした(single-blind)。 その結果、複合主要評価項目である1年間のMACCE(全死亡、心筋梗塞、血行再建術、脳卒中)は、12%対16%(p=0.02)とDES群で有意に低値であった。血行再建術(Ischaemia-driven target lesion revascularisation)の差(2%対6%、p=0.0002)が、複合主要評価項目の差につながったと考えられ、出血性イベントも含めて、他のイベント項目に明らかな群間差を認めなかった。 DAPT期間を短縮するためにBMSを使用するという言い訳がよく聞かれるが、今回の試験の結果では、臨床的必要性に応じて短期間のDAPTを施行する高齢者においても、1年の短期成績で判断する限り、BMSを選択する必要はなく、むしろDESのほうが優れていることが示された。「DESでは新生内膜による被覆が不良なためDAPT期間を短くするとステント血栓症のリスクが高くなる」という固定観念は、そろそろ払拭されてもよいのかもしれない。ただし、10年以上の長期成績においてBMSとDESのいずれが優れているかはまた別の問題であり、別に議論されるべきだろう。

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FFRジャーナルClub 第7回

FFRジャーナルClubでは、FFRをより深く理解するために、最新の論文を読み、その解釈を議論していきます。第7回目の今回は、多枝疾患(multi vessel disease:MVD)におけるPCIとCABGを比較したSYNTAX studyの流れを継承し、FFR/iFR guide PCIが採用されたSYNTAX II studyにおける1年予後の結果報告を読みたいと思います。第7回 多枝疾患、左主幹部病変へのPCIはCABGに追いついたのか?SYNTAX II studySYNTAX studyは、多枝疾患、左主幹部病変を対象とし、PCIとCABGをランダム化し比較した試験である。薬剤溶出ステントを用いても、解剖学的に複雑な要素を持つ3枝疾患に関しては、依然CABGの優越性が示されていた。SYNTAX II studyでは、ハートチームによりPCI/CABGの治療選択の際の判断基準として、解剖学的複雑性とともに手術のリスクとなる臨床的患者背景を評価するSYNTAX score IIが採用された。さらにPCIの技術的進歩、これには、(1)薄いstrut/bio-resorbable polymerを有する新世代DES(SYNERGY stent)を用い、(2)ステントの植え込み時(留置前および留置後のoptimize)にIVUS guideを用い、(3)慢性完全閉塞(CTO)に対しては最新の手技を取り入れ、(4)抗血小板薬DAPTも最新のものを使う、これらに加え、(5)PCIの適応決定をphysiology guideにて行う、という最新のPCIテクノロジーを集結させることにより、MVDに対するPCI後の予後を改善させるかを検討することが、目的である。Escaned J, et al. Clinical outcomes of state-of-the-art percutaneous coronary revascularization in patients with de novo three vessel disease: 1-year results of the SYNTAX II study. Eur Heart J. 2017 Aug 26. [Epub ahead of print]Mohr FW, et al. Coronary artery bypass graft surgery versus percutaneous coronary intervention in patients with three-vessel disease and left main coronary disease: 5-year follow-up of the randomised, clinical SYNTAX trial. Lancet 2013;381:629-638.SYTAX II studyは、多施設共同、all comers、非盲検、単群試験である。前述したSYNTAX II strategyを行い、1年間のMACCE(全死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠血行再建)を観察し、SYNTAX I trialから抽出したPCI cohort、CABG cohortと予後を比較した。708例がハートチームで討議され、PCIが適切と判定された454例が登録された。このSYNTAX II strategyによる1年時の予後は、SYNTAX I PCI cohortよりも良好であった(MACCE 10.6% vs.17.4%、HR:0.58、95%CI:0.39~0.85、p=0.006)。その2群間の差は、心筋梗塞発症の低下(HR:0.27、95%CI:0.11~0.70、p=0.007)と、血行再建の低下(HR:0.57、95%CI:0.37~0.9、p=0.015)であった。全死亡、脳卒中発生に差はなかった。ステント血栓症(definite)は有意に少なかった(HR:0.26、95%CI:0.07~0.97、p=0.045)。本研究の主たる結果をまとめると、1)SYNTAX II strategyによって治療されたPCI後の予後は、SYNTAX I trialのPCI群よりも良好な予後を得ることができた。そのMACCE低下に寄与したのは、MI、血行再建、ステント血栓症の減少であった。画像を拡大する2)SYNTAX II scoreアルゴリズムによる中等度リスク(SYNTAX score 23~32)に対するPCIの短期予後は、低リスク群(SYNTAX score 22以下)と差がなかった。画像を拡大する3)機能的評価(iFR/FFR)は75.5%の病変で施行可能であった。またその結果、25.0%の病変でPCIがdeferされた。4)ステント後の評価にIVUSをsystematicに使用することにより、30.2%の病変で後拡張などの手技が追加された。5)Contemporary CTO techniqueにより、手技の予後が格段に改善した。CTOの108病変中初期成功率は87.0%であった。6)SYNTAX II strategyによるPCI後の臨床的予後は、SYNTAX I CABG cohortの予後と同等であった。画像を拡大する機能的評価は75.5%の病変で行われたが、その平均iFRは0.77±0.21であった。造影上は1,559病変の治療が予定されたが(3.49病変/患者)、機能的に有意であったものは74.6%(2.64病変/患者)であった。機能的評価により396病変(25.0%)がPCIをdeferされたことになる。本研究ではiFR-FFR hybrid approachが使用されているが、最近報告されたDEFINE FLAIR試験に採用されたiFRのPCI施行閾値である0.89を用いると、FFRによる虚血判定と異なり非虚血と判定された病変が35%に及んでいることが、supplementにて報告されている。画像を拡大する私見昨今のPCI技術・デバイスの進歩は著しく、その成績は安定し、治療手技としてはかなり成熟していると感じることが多い。しかしSYNTAX studyに代表される大規模な研究結果が報告されるたびに、まだCABGに届かないのか、と落胆する術者も多いことと思う。本研究SYNTAX IIの研究者は、まさにその考えに基づき、最新のPCI技術をもってすれば、CABGの成績を凌駕しているのではないか、という点を証明すべく行われた研究である。SYNTAX II strategyにはいくつかのポイントが挙げられるが、PCIの適応決定にphysiological guidanceを用いた点、およびPCI手技のoptimizationにIVUS guidanceを用いた点で、日本の日常臨床でわれわれが目指しているインターベンションにより近いものであることを感じる。その結果、多くの研究でみられるPCI手技関連のMIなど初期イベントは減少し、1年後までの予後もSYNTAX I PCI cohortよりも良好であり、CABGと同等の成績であることが証明された。ただしCABGとの比較では、死亡、MIが経過中徐々に増加し、初期のPCIの優越性は徐々に減少している点が気になる。われわれの日常臨床ではPCI後のMIや死亡というMajor eventは非常に少ないことから、まだ乖離があるのかもしれない。PCI後の評価としてIVUSの読影が十分に行えていたのか、PCI後のmedication、とくに抗血小板薬DAPTに対する反応性の相違などが気になる点である。また個人的には、ステント後のFFRを評価することにより、ステント後のoptimizationの精度を上げることができたのではないかと思う。最近、海外でもようやくステント後のFFRに注目が集まりはじめたが、ステント後のFFRは、ステントの拡張状態、ステントedgeのトラブル(解離、血腫、大量の残されたプラークなど)、ステント外の残存病変の重症度など、さまざまな情報を与えてくれる。IVUSを使用していれば、その多くはすでに認識することが可能であるが、IVUSの読影自体に経験が必要なこと(とくに外国の術者にとって)、IVUSにて注目していなかった部分に偶発的に存在する病変・解離などの発見、その重症度の定量的評価を可能とするので、せっかくFFRワイヤーがカテ台上に出ているのであれば、post stent FFRを計測しない理由はない。今回、FFR/iFR guideが使用された意義は大きい。しかし多施設で行う場合、どの程度その計測が正確に行われているか、得られた値の判断に従っているか、施設ごとの温度差が重要である。本研究でも、iFR-FFR hybrid approachのアデノシンゾーン外であってもFFRを計測されている症例、それらの虚血判断とは異なる治療適応決定がなされている症例などが散見された。画像を拡大するiFR positive(iFR<0.86)であってもFFRにて確認した症例は少数(16例、2.7%)であったが、iFR negative(iFR>0.93)でありFFRを確認した症例は42例(14.8%)であり、結局PCIが行われた症例は25例(8.8%)存在した。FFR、さらにはiFRに従うstrategyが十分には確立されていない状況が存在するものと予想される。CVITで行ったCVIT-DEFER trialにても、FFRの結果と異なる最終判断が行われた症例が19%存在した。FFR陽性であってもPCI手技のリスクを勘案しdeferされる症例、FFR陰性であっても自覚症状・他のモダリティー結果との総合判断からPCIが選択される症例、FFR自体があまり理解されていない場合など、さまざまな状況が考えられる。もちろんFFRがすべて正しいわけではないと思うが、FFRを十分に理解したうえでの慎重な判断が望まれる。FFRの臨床的、また経済的効果を最大限に引き出すためには、その使用適応、使用後の判断までしっかりと考えて行わなければならない。CABGとの比較においては、直接の比較試験の結果が必要であるが、現在FAME 3 studyが進行中であり、その結果が待たれるところである。

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高齢者のPCI、短期DAPTでのDES vs.BMS/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける高齢患者において、薬剤溶出ステント(DES)を用い抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を短期間とする戦略は、ベアメタルステント(BMS)を用いDAPTを短期間とする戦略よりも予後は良好であり、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中および虚血による標的病変血行再建の発生に関しては同程度であることが示された。フランス・パリ第5大学のOlivier Varenne氏らによる無作為化単盲検試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年10月31日号で発表された。高齢患者は通常、DAPTの継続を短縮するために、DESの代わりにBMSの留置を受ける。研究グループは、高齢患者においてDAPTを短期間とした場合の両ステント間のアウトカムを比較する検討を行った。DAPT投与期間を事前に計画し、DES群またはBMS群に無作為化 試験は9ヵ国、44ヵ所の医療施設から患者を集めて行われた。被験者は、75歳以上で安定狭心症、無症候性心筋虚血、急性冠症候群を有し、70%以上狭窄の冠動脈が1枝以上(左主幹部50%以上)でPCI適応とみなされる患者を適格とした。除外基準は、冠動脈バイパス術による心筋血管再生手術の適応、DAPTに対する忍容性・獲得性・順守性がない、追加手術の必要性、1年以内に生命を脅かす非心臓疾患の併存、出血性脳卒中の既往、アスピリンまたはP2Y12阻害薬に対するアレルギー、P2Y12阻害薬禁忌、左心筋10%未満の無症候性虚血で冠血流予備量比0.80以上であった。 DAPTの計画投与期間が記録された後(安定症状患者は1ヵ月間、不安定症状患者は6ヵ月間)、被験者は中央コンピュータシステムによって、DESまたはBMSを受ける群のいずれかに無作為に割り付けられた(試験施設および抗血小板薬で層別化も実施)。割り付けは単盲検(患者はマスキングなど)で行われたが、アウトカムの評価者はマスキングされた。 主要アウトカムは、intention-to-treat集団における1年時点の重大有害心・脳血管イベント(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、虚血による標的病変血行再建)の両群間の比較であった。イベント評価は、30日、180日、1年時点のそれぞれで行った。1年時点の主要複合エンドポイントの発生、DES群が有意に低下 2014年5月21日~2016年4月16日に、患者1,200例が無作為化を受けた(DES群596例[50%]、BMS群604例[50%])。被験者の平均年齢は81.4歳(SD 4.3)、男性が747例(62%)であった。全体的にプロファイルは典型的な高齢者ハイリスク患者であることを示し、高血圧(各群72%、81%)、高コレステロール血症(52%、53%)、心房細動(17%、18%)などを有していた。既往歴は、一部を除外すればほぼバランスが取れていた。DAPT投与計画は、1ヵ月投与が全体で57%(各群55%、59%)を占め、同計画群の90%が安定狭心症または無症候性虚血の患者で、DES群とBMS群で差はなかった。6ヵ月投与は、ベースラインで急性冠症候群が認められた患者が大半を占めた(83%)。試験期間中のアスピリン用量中央値は100mg(IQR:75~100)、プラスグレル投与患者の半数は5mg/日量であった。また、88%(1,057例)の患者のP2Y12阻害薬がクロピドグレルであった。 主要複合エンドポイントの発生は、DES群68例(12%)、BMS群98例(16%)で報告された(相対リスク[RR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.52~0.94、p=0.02)。 1年時点の出血合併症の発現頻度は両群ともにまれで、DES群26例(5%)vs.BMS群29例(5%)であった(RR:0.90、95%CI:0.51~1.54、p=0.68)。ステント血栓症の発現頻度も同様であった(3例[1%]vs.8例[1%]、RR:0.38、95%CI:0.00~1.48、p=0.13)。 結果を踏まえて著者は、「出血イベントのリスクを減らすための短期BMS様DAPTレジメンとともに、血行再建術の再発リスクを減らすためのDESとの組み合わせ戦略は、PCIを受ける高齢患者の魅力的な選択肢である」と述べている。

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病変の複雑さでPCI後のDAPT延長効果は異なるか

 複雑病変に対し冠動脈ステント留置を受ける患者は、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を延長することによるリスクや利益が異なる可能性がある。DAPT Studyは、12ヵ月と30ヵ月のDAPTによる利益とリスクを比較した国際的な多施設二重盲検ランダム化比較試験であり、本研究では、米国Beth Israel Deaconess Medical CenterのRobert W. Yeh氏ら研究グループが経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後における2つの期間(30ヵ月と12ヵ月)のDAPTの効果を複雑病変の数に応じて評価した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年10月31日号に掲載。DAPT Studyから2万5,416例を評価 本研究では、2万5,416例の試験に組み入れられた患者およびチエノピリジン群とプラセボ群に無作為に割り付けられた1万1,554例について、心筋梗塞もしくはステント血栓症の発生、そして中等度~重症の出血について評価した。複雑病変は、以下のいずれかを含んだものと定義した。すなわち、(1)保護されてない左主幹冠動脈病変、(2)1つの冠動脈に2ヵ所以上の病変、(3)病変の長さが30mmを超える、(4)分岐部病変で分枝が2.5mm以上、(5)静脈バイパスグラフト、(6)血栓を含む病変、である。イベントは複雑病変の数に応じて評価され、DAPTスコアに応じて比較された。複雑病変が多いほど、PCI後1年以内での虚血イベントが増加する PCIから12ヵ月以内において、複雑病変が多い患者ほど心筋梗塞やステント血栓症の発生率が高かった(3.9% vs.2.4%、p<0.001)。最初の12ヵ月でイベントが発生しなかった患者の12~30ヵ月における心筋梗塞もしくはステント血栓症の頻度は、複雑病変の有無にかかわらず同等であった(3.5% vs.2.9%、p=0.07)。チエノピリジンによる12ヵ月以降の心筋梗塞もしくはステント血栓症の抑制効果は、複雑病変の有無にかかわらずチエノピリジン群とプラセボ群で同等であった(複雑病変あり:2.5% vs.4.5%、ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.38~0.79、p<0.001、複雑病変なし:2.0% vs.3.8%、HR:0.52、95%CI:0.39~0.69、p<0.001、相互作用のp=0.81)。チエノピリジンの継続による、中等度~重症の出血の発生の上昇は、複雑病変の有無にかかわらず同程度認められた(相互作用のp=0.41)。複雑病変を有する患者のうち、DAPTスコアが2以上の患者は、スコアが2未満の患者と比べて、チエノピリジン継続群では心筋梗塞もしくはステント血栓症の減少がより大きかった。(スコア2以上:3.0% vs.6.1%、p<0.001、スコア2未満:1.7% vs.2.3%、p=0.42、リスク差の比較のp=0.03)。DAPTスコアはDAPTの継続が有用な患者を同定できる 本研究では、複雑病変では虚血イベントが増加する傾向があり、その傾向はPCI後最初の1年で顕著であることが示された。最初の12ヵ月でイベントがない患者では、複雑病変の有無にかかわらず、DAPT延長による利益は認められなかった。また、複雑病変の有無にかかわらず、DAPTスコアが高い患者は、DAPT延長の利益を得られる可能性が高いことがわかった。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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血小板機能検査に基づく抗血小板療法の調節は意味がない?(解説:上田恭敬氏)-751

 本試験(TROPICAL-ACS)は、急性冠症候群(ACS)に対してPCIを施行した症例(2,610症例)を対象として、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の2剤目の薬剤を、プラスグレル(添付文書およびガイドラインに従って10mgまたは5mg/日)12ヵ月間とする対照群(control group)と、プラスグレル1週間、その後クロピドグレル(75mg/日)1週間、さらにその後は血小板機能検査の結果に基づいてプラスグレルかクロピドグレルを選択する調節群(PFT-guided de-escalation group)に無作為に割り付け、12ヵ月間の心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中、BARC分類class 2以上の出血を主要評価項目として比較して、調節群の非劣性を検討している多施設試験である。 血小板機能検査としては、Multiplate analyser(ロシュ・ダイアグノスティックス社、スイス)によって、抗血小板効果不十分を意味するhigh on­treatment platelet reactivity(HPR)であるかどうかを判定し、HPRであればクロピドグレルからプラスグレルへ戻すとしている。実際、調節群の39%の症例でHPRを認め、その99%の症例でプラスグレルに戻されている。また、プラスグレルの投与量については、FDAの添付文書では体重60kg未満では5mgを考慮することと記載されている。 結果は、群間にイベントの有意な差はなく、非劣性が証明されている。著者らは、統計的な差はないものの、調節群でイベントがやや少なく見えることも考慮して、血小板機能検査に基づいて抗血小板療法を減弱させることは、通常のDAPTに対して代替的治療手段となりうると結論している。 確かに、理論的には、血小板機能検査に基づいて抗血小板療法を調節することがイベントを減少させる可能性はあると思われるが、これまでの各種試験では、その有用性は証明されておらず、本試験でもその有用性は示されなかった。労力をかけて調節しても、決まった量を投与しても、アウトカムに影響しないのであれば、調節する意味はないという結論になる。 本試験で抗血小板療法を調節することの優位性が示されなかった1つの理由として、クロピドグレルへ変更(減弱)したままの症例が調節群の60%程度しかなかったことが挙げられているが、抗血小板効果が強過ぎるものも弱過ぎるものも、血小板機能検査に基づいて適切に調節するようなプロトコールであれば優位性が示されたのかもしれない。また、クロピドグレルの効果が常にプラスグレルよりも弱いわけでもなく、各薬剤の投与量が抗血小板効果に影響することは言うまでもない。各群で抗血小板効果が、実際どの程度に調節されていたかの比較も必要であろう。そもそも日本ではプラスグレルの標準投与量が日本人向けに設定されているため、本試験のデザインも結果も日本人には当てはまらない。「血小板機能検査に基づいて抗血小板療法を調節すること」の有用性を証明して、各個人に最適な治療を届けるという夢は、まだ夢のままである。

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PCI後ACSの抗血小板薬、de-escalationしても非劣性/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた急性冠症候群(ACS)患者において、抗血小板治療を血小板機能検査(PFT)のガイド下でプラスグレル(商品名:エフィエント)からクロピドグレルへと早期に変更(de-escalation)しても、1年時点のネット臨床的ベネフィットは、プラスグレルを継続する標準治療に対して非劣性であることが示された。ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのDirk Sibbing氏らが、欧州の33施設で行った無作為化非盲検試験「TROPICAL-ACS試験」の結果、報告した。現行のガイドラインでは、PCIを受けたACS患者に対しては12ヵ月間、プラスグレルまたはチカグレロル(商品名:ブリリンタ)による抗血小板療法が推奨されている。これらの抗血小板薬はクロピドグレルよりも作用が強力で、速やかに最大の抗虚血ベネフィットをもたらすが、長期にわたる治療で出血イベントを過剰に引き起こすことが指摘されていた。Lancet誌オンライン版2017年8月25日号掲載の報告。プラスグレルからクロピドグレルに切り替える戦略の安全性と有効性を検証 研究グループは、急性期には強力な抗血小板薬を投与し、維持期にはクロピドグレルに変更するという段階的治療戦略が、現行の標準治療に替わりうるかを明らかにするため、PFTガイド下でプラスグレルからクロピドグレルに変更する抗血小板療法の安全性と有効性を検証した。 TROPICAL-ACS試験は研究者主導、評価者盲検化にて、ACSのバイオマーカーが陽性でPCIに成功し、12ヵ月間の2剤併用抗血小板療法(DAPT)が予定されていた患者を登録して行われた。登録患者は、プラスグレル投与を12ヵ月間受ける標準治療群(対照群)、またはステップダウンレジメン群(退院後、第1週はプラスグレル[10mgまたは5mg/日]を投与、第2週はクロピドグレル[75mg/日]を投与し、14日目からはPFTに基づきクロピドグレルかプラスグレルの投与による維持期治療を行う:ガイド下de-escalation群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、無作為化後1年時点のネット臨床的ベネフィット(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、BARC出血基準Grade2以上の出血の複合)で、intention to treat解析で評価した。非劣性マージンは30%であった。プラスグレルからクロピドグレルへの早期変更で複合リスク増大は認められなかった 2013年12月2日~2016年5月20日に、患者2,610例が無作為化を受けた(ガイド下de-escalation群1,304例、対照群1,306例)。 主要エンドポイントの発生は、ガイド下de-escalation群95例(7%)、対照群118例(9%)であった(ハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.62~1.06、非劣性のp=0.0004、優越性のp=0.12)。 早期にプラスグレルから作用が弱い抗血小板薬クロピドグレルに切り替えたにもかかわらず、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合リスクについて、ガイド下de-escalation群での増大は認められなかった(32例[3%] vs.対照群42例[3%]、非劣性のp=0.0115)。BARC出血基準Grade2以上の出血イベントは、ガイド下de-escalation群64例(5%)、対照群79例(6%)であった(HR:0.82、95%CI:0.59~1.13、p=0.23)。 結果を踏まえて著者は、「試験の結果は、PCIを受けたACS患者において、抗血小板治療の早期de-escalationが代替アプローチになりうることを示すものであった」とまとめている。

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急性期脳梗塞患者の血流再開、吸引型 vs.ステント型(ASTER Trial)(中川原譲二氏)-725

 急性期脳梗塞患者に対する吸引型デバイスによる血流再開(contact aspirationまたはa direct aspiration first pass technique[ADAPT])と、ステントリトリーバーによる血流再開の優劣は、両者の無作為化比較試験の欠如からいまだに不明である。そこで、主幹動脈閉塞を有する急性期脳梗塞患者において、良好な再開通のための第1選択となる血管内治療法として、吸引型デバイスまたはステントリトリーバーを用いた場合の有効性と有害事象を比較する目的で、ASTER試験(The Contact Aspiration vs Stent Retriever for Successful Revascularization study)が行われた。吸引型デバイスとステントリトリーバーの有効性と安全性を比較 ASTER試験は、2015年10月~2016年10月に、フランスの総合脳卒中センター8施設で実施された無作為化非盲検臨床試験(評価者盲検)である。前方循環系の主幹動脈閉塞を有する発症後6時間以内の急性期脳梗塞患者を対象として、機械的血栓除去を行う直前に第1選択としての吸引型デバイス使用群(192例)と第1選択としてのステントリトリーバー使用群(189例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、すべての血管内治療が終了した時点で修正Thrombolysis in Cerebral Infarction(TICI)スコアが2bまたは3の良好な再開通が得られた患者の割合(再開通率)とし、副次評価項目は、90日後の修正Rankin Scale(mRS)スコアの全体的な分布で評価される自立障害の程度、24時間後のNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコアの変化、90日後の全死因死亡率、および治療手技に関連した重篤な有害事象などで、intention-to-treat解析が実施された。再開通率、臨床的有効性および有害事象は、両群で有意差なし 381例(平均年齢69.9歳、女性174例[45.7%])が割り付けられ、このうち363例(95.3%)が試験を完遂した。発症から動脈穿刺までの時間(中央値)は、227分(四分位範囲:180~280)であった。主要評価項目である再開通率は、吸引型デバイス群85.4%(164例)に対し、ステントリトリーバー群は83.1%(157例)であった(オッズ比:1.20、95%信頼区間[CI]:0.68~2.10、p=0.53、群間差:2.4%、95%CI:-5.4~9.7)。また、臨床的な有効性アウトカム(24時間後のNIHSSスコアの変化、90日後のmRSスコア)や有害事象は、両群間で有意差を認めなかった。 以上より、血栓回収療法が行われる前方循環の急性期脳梗塞において、第1選択された吸引型デバイスを用いた血栓回収療法は、ステントリトリーバーに比較して、手技の最終段階において良好な再開通率の増加を示さなかった。次世代のデバイス開発と血流再開を24時間提供できる総合脳卒中センターの整備が必要 急性期脳梗塞患者に対する血管内治療による血流再開の有効性のエビデンスは、2015年に、主としてステントリトリーバーを用いた血栓回収と血流再開によって確立された。その後、吸引型デバイスによる血栓回収が、迅速簡便な再開通率の高い手技として注目され、吸引型デバイスとステントリトリーバーによる血流再開の優劣が議論されてきた。本研究によって、両者の再開通率や臨床的有効性に差のないことが判明したが、本治療法では有効再開通率をさらに高める余地があることから、各々について次世代のデバイスの開発が必要である。 一方、わが国においては、2005年のtPA静注療法の一般臨床への導入以来、地域を単位とする急性期脳卒中診療の整備には誰もが賛成しながら、これを推進するための立法措置の遅れや地域医療構想での議論の遅れもあって、各地域での急性期脳卒中診療体制は未整備のまま推移している。急性期脳梗塞患者に対する血管内治療による血流再開を24時間提供できる本格的な総合脳卒中センターは、皆無に等しい。社会の超高齢化に伴う急性期脳梗塞患者の増加に対して、tPA静注療法および本治療法の実施率の向上はきわめて重要な課題であり、各地域において総合脳卒中センターの早急な整備が必要である。

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急性期脳梗塞の血栓回収療法、吸引型 vs.ステント型/JAMA

 前方循環脳梗塞患者における吸引型デバイスを用いた血栓回収は、ステントリトリーバーを用いた場合に比べて、再開通率の向上をもたらさなかったことが、ASTER試験(The Contact Aspiration vs Stent Retriever for Successful Revascularization study)の結果、明らかとなった。フランス・ベルサイユ大学のBertrand Lapergue氏らが報告した。これまで、急性期脳梗塞患者において、吸引型デバイスによる血栓回収(a direct aspiration first pass technique[ADAPT]またはcontact aspiration)とステントリトリーバーによる血栓回収の有用性を比較した無作為化試験からは、十分なエビデンスを得られていなかった。JAMA誌オンライン版2017年8月1日号掲載の報告。吸引型およびステント型血栓回収デバイスの有効性と安全性を比較 ASTER試験は、2015年10月~2016年10月に、フランスの総合脳卒中センター8施設で実施された無作為化非盲検臨床試験(評価者盲検)である。前方循環系の主幹動脈閉塞を有する発症後6時間以内の急性期脳梗塞患者を対象に、機械的血栓除去術の施行前に第1選択として、吸引型デバイス使用群(192例)とステントリトリーバー使用群(189例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、すべての血管内治療が終了した時点で修正Thrombolysis in Cerebral Infarction(TICI)スコアが2bまたは3の良好な再開通が得られた患者の割合(再開通率)とし、副次評価項目は、90日後の修正Rankin Scale(mRS)スコアの全体的な分布で評価される障害の程度、24時間後のNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコアの変化、90日後の全死因死亡率、および治療関連の重篤な有害事象などで、intention-to-treat解析が実施された。再開通率、臨床的有効性および有害事象に両群で有意差なし 381例(平均年齢69.9歳、女性174例[45.7%])が割り付けられ、このうち363例(95.3%)が試験を完遂した。発症から動脈穿刺までの時間(中央値)は、227分(四分位範囲:180~280)であった。 主要評価項目である再開通率は、吸引型デバイス群85.4%(164例)に対し、ステントリトリーバー群は83.1%(157例)であった(オッズ比:1.20、95%信頼区間[CI]:0.68~2.10、p=0.53、群間差:2.4%、95%CI:-5.4~9.7)。また、臨床的有効性アウトカム(24時間後のNIHSSスコアの変化、90日後のmRSスコア)や有害事象は、両群間で有意差を認めなかった。〔8月25日 記事の一部を修正いたしました。〕

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金子英弘のSHD intervention State of the Art 第13回

実臨床におけるWATCHMAN1,000例超の結果が明らかに本連載でも取り上げてきたように、左心耳閉鎖デバイスであるWATCHMAN(Boston Scientific社)は非弁膜症性心房細動における心原性脳塞栓症予防として欧米で広く使用されています。今回は、WATCHMANの大規模レジストリーであるEWOLUTION試験の1年フォローの結果について取り上げたいと思います。1)連載の第2回「左心耳閉鎖デバイスWatchmanの真の実力を検証!!」でも紹介しましたが、EWOLUTION試験には、ヨーロッパ、ロシア、中東の13ヵ国47施設が参加し、WATCHMANの実臨床における効果と安全性について評価しています。2013年10月から2015年5月までに登録された1,025症例の平均年齢は73歳で平均CHA2DS2-VAScスコア4.5、平均HAS-BLEDスコア2.3、そして約3割の症例に脳卒中の既往を認めました。同時に約3割の症例に大出血の既往があり、73%の症例は抗凝固療法が不適切であるとの判断からWATCHMANの適応となっています。手技成功率は98.5%と高率で、デバイス留置における最も大きな合併症である心タンポナーデ・心嚢液貯留はわずか0.3%と極めてまれでした。約9割の症例でフォローアップの経食道心エコー検査が行われ、適切なシーリング(デバイス周囲に幅5mmを超えるリークを認めない)は99%で確認され、デバイス血栓症の発生率は3.7%でした。抗血栓薬のプロトコールについては各施設の判断に委ねられていますが、治療直後は、抗血小板剤2剤(DAPT)が60%、経口抗凝固薬は27%に処方され、6%の症例は一切の抗血栓薬が処方されていませんでした。フォロー中に抗血栓薬のプロトコールは切り替えられ、抗血小板剤単剤(SAPT)が55%と最多となり、経口抗凝固薬の処方率は8%まで減少していました。術後1年間の死亡率は9.8%であり、虚血性脳卒中は1.1%、大出血イベントは2.6%の症例に認められました。CHA2DS2-VAScスコアに基づいて予想される年間虚血性脳卒中の発生率は7.2%であり、実に84%のリスク減少が達成されています(図1)。またHAS-BLEDスコアに基づくワルファリン使用時の年間大出血イベント発生率は5.0%であることから、こちらも48%のリスク減少が得られています(図2)。図1:CHA2DS2-VAScスコアに基づいて予測される年間虚血性脳卒中の発生率とEWOLUTION試験における同値の比較画像を拡大する図2:HAS-BLEDスコアに基づくワルファリン使用時の年間大出血イベント発生率とEWOLUTION試験における同値の比較画像を拡大する虚血性脳卒中予防効果に関しては、当然のことながらWATCHMANの効果だけでなく、経過中に処方された抗血栓薬の効果も考えなければなりません。一方で抗血栓薬のプロトコールを切り替えた後は9割以上の症例で経口抗凝固療法が行われていないことから、さらに長期のフォローを行うことで、WATCHMAN留置による虚血性脳卒中予防効果がより明らかになるでしょうし、その結果によってWATCHMAN留置後の抗血栓薬の至適プロトコールも確立されるものと期待されます。また、HAS-BLEDスコアはワルファリンを使用した場合の出血リスクを予想するスコアですので、出血性合併症の少ない直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)との比較については今後、さらなる議論が必要となると思われます。このように左心耳閉鎖術のリーディングデバイスであるWATCHMANについては今後、まだまだ明らかにすべき点が数多く挙げられますが、そのような中でも今回の研究はWATCHMANの実臨床における成果を考えるうえで非常に意義のあるものです。WATCHMANについてはわが国における治験もすでに開始されており、近い将来の導入が期待されています。わが国への安全で有効な本治療の導入のためにも、引き続きWATCHMANの臨床成績に注目していきたいと思います。1)Boersma LV, et al. Heart Rhythm. 2017 May 31. [Epub ahead of print]

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薬剤溶出ステント留置後のDAPT、6ヵ月 vs. 24ヵ月

 2015年に発表されたITALIC(Is There a Life for DES After Discontinuation of Clopidogrel)試験では、第2世代薬剤溶出ステントを用いた冠動脈形成術後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)で、6ヵ月のDAPTを24ヵ月のDAPTと比較し、1年目の時点で出血と血栓症の発生率が同等であることが示された。ITALIC試験の最終結果となる今回は、6ヵ月DAPTの24ヵ月に対する非劣性を検証することを目的に、24ヵ月DAPTのフォローアップ結果がフランス・ブレスト大学のGilard氏らより報告された。Journal of the American College of Cardiology誌2017年6月26日号に掲載。主要評価項目は、死亡、心筋梗塞、標的病変の緊急再灌流療法、脳梗塞、重篤な出血の複合 本研究は多施設無作為化比較試験で、第2世代薬剤溶出ステントの植込みを受けたアスピリン抵抗性を示さない患者を、70施設から2,031例をスクリーニングし、6ヵ月(926例)もしくは24ヵ月(924例)のDAPTに割り付けた。主要評価項目は、12ヵ月の時点における死亡、心筋梗塞、標的病変の緊急再灌流療法、脳梗塞、重篤な出血の複合であった。副次評価項目は、24ヵ月の時点における同一の複合評価項目と各項目の結果であった。24ヵ月のフォローアップでも6ヵ月DAPTは24ヵ月DAPTに対し非劣性 6ヵ月と12ヵ月のDAPTを比べたところ、6ヵ月DAPTは24ヵ月DAPTに対し非劣性で、絶対リスク差は0.11%(95%信頼区間[CI]:−1.04%~1.26%、p=0.0002)であった。 24ヵ月の時点で、複合評価項目に変化はなく、6ヵ月群で3.5%、24ヵ月群で3.7%(p=0.79)、心筋梗塞(1.3% vs.1.0%、p=0.51)、脳卒中(0.6% vs.0.8%、p=0.77)、標的血管の緊急再灌流 (1.0% vs.0.3%、p=0.09)は、いずれも同等の結果であった。死亡率については、24ヵ月群で高い傾向にあった(2.2% vs.1.2%、p=0.11)。重篤な出血の発生は、24ヵ月群の4例に対して、6ヵ月群では1例も発生しなかった。ITALIC試験の24ヵ月時点における結果は、12ヵ月時点の結果を確認し、第2世代の薬剤溶出ステント留置後6ヵ月のDAPTが24ヵ月のDAPTと同様の成績を示すことが示された。■関連記事循環器内科 米国臨床留学記

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知ってますか?「derivation」と「validation」の意義と違い(解説:中川 義久 氏)-661

 PCI術後には、ステント血栓症などの血栓性イベント予防のために抗血小板薬としてアスピリンとチエノピリジン系薬剤に代表される、ADP受容体P2Y12阻害薬の併用投与(Dual Anti-platelet Therapy:DAPT)が主流となっている。DAPTを継続することは出血性合併症を増す危険性がある。血栓性イベントリスクと出血リスクの両者のトレードオフで比較すべき問題である。DAPTを継続すべき期間については明確な指針はないが、全患者に画一的な期間を設定するよりも、リスク評価に基づいて患者層別化することにより個々の患者に至適DAPT期間を設定することが医療の質を高める。このような個別化医療は時代の潮流であり、患者層別化のための方法論も進化している。 今回、スイス・ベルン大学のFrancesco Costa氏らは、新しい出血リスクスコアである「PRECISE-DAPTスコア」をLancet誌2017年3月11日号に発表した。これは、「年齢・クレアチニンクリアランス・ヘモグロビン値・白血球数・特発性出血の既往」という入手が簡易な5項目を用いて算出するものである。論文のタイトルは長いが紹介しよう。「Derivation and validation of the predicting bleeding complications in patients undergoing stent implantation and subsequent dual antiplatelet therapy(PRECISE-DAPT)score:a pooled analysis of individual-patient datasets from clinical trials.」である。このタイトルの文頭の「derivation and validation」という用語について考察してみたい。 症状・徴候・診断的検査を組み合わせて点数化して、その結果から対象となるイベントを発症する可能性に応じて患者を層別化することをclinical prediction rule(CPR)という。この作業は2つに大別される。モデル作成段階(derivation)と、モデル検証段階(validation)である。(1)モデル作成段階とは、データを元にCPRモデルを作成する段階である。このモデル作成のためにデータを使用した患者群をderivation sample(誘導群)という。この群のデータから誘導されたモデルであるから、この患者群におけるモデルの内的妥当性が高いことは当然である。この段階では、このモデルを他の患者群に当てはめても正しいかどうかは明らかではない。(2)モデル検証段階とは、別のデータを用いてモデルの検証を行う段階である。このためにデータを用いる患者群をvalidation sample(確認群)という。CPRモデルを一般化して当てはめて良いかどうか、つまり外的妥当性を検証する作業である。PRECISE-DAPTスコアを提唱する本論文においては、多施設無作為化試験8件の患者合計1万4,963例をderivation sampleとし、PLATO試験(8,595例)およびBernPCI registry(6,172例)をvalidation sampleとしている。本論文は、患者層別化のためのスコアリングモデルの作成作業を教科書的に遂行している。CPRモデル提唱論文における、derivationとvalidationについて語るに相応しい題材でありコメントさせていただいた。

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ACS後のP2Y12阻害薬+低用量リバーロキサバンの安全性/Lancet

 急性冠症候群(ACS)患者に対する低用量経口抗凝固薬リバーロキサバンとP2Y12阻害薬との併用、すなわちデュアル・パスウェイ抗血栓療法は、従来のアスピリンとP2Y12阻害薬との併用(抗血小板薬2剤併用療法:DAPT)と比較し、臨床的に重大な出血リスクに差はないことが示された。米国・デューク大学医学部のE Magnus Ohman氏らが、P2Y12阻害薬との併用薬はアスピリンより低用量リバーロキサバンが安全かを検証したGEMINI-ACS-1試験の結果を報告した。ACS後のDAPTに第Xa因子阻害薬であるリバーロキサバンを追加すると、死亡と虚血イベントは減少するが、出血が増加する恐れがあることが示唆されている。しかし、アスピリンの代わりに低用量リバーロキサバンをP2Y12阻害薬と併用する抗血栓療法の安全性は、ACS患者でこれまで評価されていなかった。Lancet誌オンライン版2017年3月18日号掲載の報告。CABGに関連しない臨床的に重大な出血を評価 GEMINI-ACS-1試験は、多施設共同無作為化二重盲検比較第II相試験として、21ヵ国371施設で実施された。対象は、不安定狭心症、心電図上の虚血変化または血管造影で確認されたアテローム性責任病変のいずれかを伴う心臓バイオマーカー陽性の、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)またはST上昇型心筋梗塞(STEMI)の18歳以上の患者であった。 ACS発症による入院後10日以内に、置換ブロック法(ブロックサイズ4)を用いて、使用予定のP2Y12阻害薬で層別化し、アスピリン(100mg/日)群またはリバーロキサバン(2.5mg、2回/日)群に1対1の割合で無作為に割り付け、二重盲検下で180日以上治療を行った。P2Y12阻害薬(クロピドグレルまたはチカグレロル)の選択については、無作為化はせず、研究者の好みや各国の利用状況(試験期間中、日本では未承認)に基づいて選択された。 主要評価項目は、390日目までの冠動脈バイパス術(CABG)に関連しない臨床的に重大な出血(TIMI出血基準の大出血、小出血、治療を要する出血)で、intention-to-treat解析で評価した。低用量リバーロキサバン群とアスピリン群で同等 2015年4月22日~2016年10月14日に、ACS患者3,037例が無作為化された(アスピリン群1,518例、リバーロキサバン群1,519例)。1,704例(56%)はチカグレロル、1,333例(44%)はクロピドグレルが用いられた。 治療期間中央値は291日(IQR:239~354)であった。TIMI出血基準のCABGに関連しない臨床的に重大な出血は、全体で154例(5%)、リバーロキサバン群とアスピリン群の頻度は80/1,519例(5%) vs.74/1,518例(5%)で、同程度であった(HR:1.09、95%信頼区間[CI]:0.80~1.50、p=0.5840)。 著者は研究の限界として、患者は無作為化前に安定したDAPTを受ける必要があったりACS発症から無作為化までに約5日の遅れが生じたこと、対象患者の多くが白人であったことなどを挙げながら、「この新しい抗血栓療法の有効性と安全性を検証するため、さらに大規模で十分な検出力のある治験が必要である」とまとめている。

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PCI後のDAPT期間決定に有用な新規出血リスクスコア/Lancet

 スイス・ベルン大学のFrancesco Costa氏らは、簡易な5項目(年齢、クレアチニンクリアランス、ヘモグロビン、白血球数、特発性出血の既往)を用いる新しい出血リスクスコア「PRECISE-DAPTスコア」を開発し、検証の結果、このスコアが抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)中の院外での出血を予測する標準化ツールとなりうることを報告した。著者は、「包括的に臨床評価を行う状況において、このツールはDAPT期間を臨床的に決める支援をすることができるだろう」とまとめている。アスピリン+P2Y12阻害薬によるDAPTは、PCI後の虚血イベントを予防する一方で、出血リスクを高める。ガイドラインでは、治療期間を選択する前に出血リスクの高さを評価することを推奨しているが、そのための標準化ツールはこれまでなかった。Lancet誌2017年3月11日号掲載の報告。約1万5,000例のデータで新たな出血リスクスコアを開発し、検証 研究グループは、それぞれ独立したイベント評価が行われている多施設無作為化試験8件から、PCI後にDAPT(主にアスピリン+クロピドグレル、経口抗凝固薬の適応なし)を受けた患者合計1万4,963例の個人レベルのデータを用い、プール解析を行った。解析にはCox比例ハザードモデルを使用し、院外出血(TIMI出血基準の大出血/小出血)の予測因子を試験で層別化して特定し、数値的出血リスクスコアを開発した。 新しいスコアの予測性能は、予測因子を導き出した抽出コホートで評価し、PLATelet inhibition and patient Outcomes(PLATO)試験(8,595例)およびBernPCI registry(6,172例)におけるPCI施行患者群(検証コホート)で評価した。また、異なるDAPT期間に無作為化された患者(10,081例)において、新しいスコアの四分位数でベースラインの出血リスクを4つに分類し(高、中、低、最低リスク)、長期治療(12~24ヵ月)または短期治療(3~6ヵ月)の出血/虚血への影響を評価した。5項目から成るPRECISE-DAPTスコア、院外出血の予測性能あり 開発したPRECISE-DAPTスコア(年齢、クレアチニンクリアランス、ヘモグロビン、白血球数、特発性出血の既往)は、院外でのTIMI大/小出血に関する予測性能を示すC統計値が、抽出コホートで0.73(95%信頼区間[CI]:0.61~0.85)、検証コホートのPLATO試験で0.70(95%CI:0.65~0.74)、BernPCI registryで0.66(95%CI:0.61~0.71)であった。 長期DAPTは、高リスク患者(スコア≧25)では出血を有意に増加させたが、低リスク患者では増加させなかった(相互作用のp=0.007)。一方、虚血イベントの予防に関して有意な有用性が認められたのは、低リスク患者群のみであった。 著者は、今回のモデルにはフレイル(高齢者の虚弱)など新しい出血予測因子が欠けている可能性を挙げ、スコアの予測性能を改善するためさらなる研究が必要だと述べている。

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硬膜下血腫例の約半数が抗血栓薬服用、高齢化社会では今後ますます増えることが予想される(解説:桑島 巖 氏)-652

 硬膜下血腫は、しばしば認知症と誤診されたり、見逃した場合には死に至ることもある重要疾患である。本研究は、その硬膜下血腫の実に47.3%が抗血栓薬を服用していたという衝撃的な成績を示し、高齢化がいっそう進み、今後さらに急増していくことを示唆している点で重要な論文である。 この研究は、2000年から2015年にデンマークでの国民登録研究からのケースコントロール試験による成果である。抗血栓薬の使用頻度は、2000年には一般住民1,000人当たり31人程度にすぎなかったが、5年後の2015年には76.9人に急増している。硬膜下血腫が、それと軌を一にして増加したかを明確に示している。とくに、75歳以上での硬膜下血腫の頻度は2000年では10万人当たり年間55.1人であったのが、2015年では99.7人とほぼ倍増している。また発症例では、ワルファリン使用率が非発症例に比べて3.69倍高く、ワルファリンと抗血栓薬との併用例はさらに高い。 本試験では、INRについての記載がなく、ワルファリンのコントロール状況との分析ができていないため、抗血栓薬併用例などで適切な用量設定ができていなかったことが一因として考えられる。しかし、2000~15年はまだ新規抗凝固薬(NOAC、DOAC)がそれほど普及していない時期にしてこの結果である。2015年以降、固定用量が処方される新規抗凝固薬が相次いで世の中に登場し、また冠動脈インターベンションの普及による2剤併用抗血小板療法(DAPT:dual antiplatelet therapy)の処方も増えている。さらに、人口の高齢化率も増えたことと相まって、今後、硬膜下血腫の頻度はいっそう増加の一途をたどることが予想される。 抗血栓薬と抗凝固薬併用症例では、抗凝固薬の用量を適正に調節することや血圧を厳格にコントロールすることが予防手段となろう。

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PCI後の心房細動患者、リバーロキサバン+抗血小板薬は有効か/NEJM

 ステント留置により冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心房細動患者に対し、低用量のリバーロキサバン(商品名:イグザレルト)+P2Y12の12ヵ月間投与、および超低用量リバーロキサバン+2剤併用抗血小板療法(DAPT)の1、6、12ヵ月投与はいずれも、標準療法のビタミンK拮抗薬+DAPT(P2Y12+アスピリン)の1、6、12ヵ月投与と比べて、臨床的に有意に出血リスクを抑制することが示された。有効性については3群で同等だった。米国・ハーバード・メディカル・スクールのMichael C. Gibson氏らが行った2,124例を対象とした無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2016年11月14日号で発表された。標準療法のビタミンK拮抗薬+DAPTは、血栓塞栓症および脳卒中のリスクを抑制するが、出血リスクを増大する。抗凝固薬リバーロキサバン+抗血小板薬(単剤または2剤併用)の有効性、安全性は確認されていなかった。リバーロキサバン+P2Y12、リバーロキサバン+DAPT、標準療法を比較 試験は、非弁膜性心房細動でステント留置によるPCIを受けた2,124例を、1対1対1の割合で無作為に3群に割り付けて行われた。1群は、低用量リバーロキサバン(15mgを1日1回)+P2Y12を12ヵ月間、2群は超低用量リバーロキサバン(2.5mgを1日2回)+DAPTを1、6または12ヵ月間、3群は標準療法の用量調整にて投与するビタミンK拮抗薬(1日1回)+DAPTを1、6または12ヵ月間、それぞれ投与した。 主要安全性アウトカムは、臨床的に重大な出血(TIMI基準に基づく重大出血または小出血もしくは医学的介入を要した出血の複合)であった。標準療法との比較によるハザード比は0.59、0.63 結果、リバーロキサバンを併用した1群(低用量リバーロキサバン+P2Y12)と2群(超低用量リバーロキサバン+DAPT)はいずれも、3群(標準療法)と比べて臨床的に重大な出血の発生が低下した。発生率は1群が16.8%、2群が18.0%、3群は26.7%で、ハザード比は1群 vs.3群は0.59(95%信頼区間[CI]:0.47~0.76、p<0.001)、2群vs.3群は0.63(95%CI:0.50~0.80、p<0.001)であった。 心血管系が原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中の発生率については、3群間で同等だった(Kaplan-Meier法による推定発生率:1群6.5%、2群5.6%、3群6.0%、すべての比較のp値に有意差なし)。ただし95%CI値の幅が大きく、有効性に関する結論は限定的なものだとしている。

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リバーロキサバン、PCI施行心房細動患者の出血減らす:バイエル

 Bayer AGは2016年11月14日、第III相試験PIONEER AF-PCIの結果から、経口Xa阻害薬リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)の2つの治療戦略が、冠動脈ステントを留置した心房細動患者の出血リスクを、ビタミンK拮抗薬(以下、VKA:Vitamin K Antagonist)に比べ有意に減少させたと発表した。とくに、リバーロキサバン15mg/日と抗血小板薬剤の併用は、VKAと抗血小板2剤療法(以下、DAPT:Dual AntiPlatelet Therapy)の併用に比べ、臨床上著明な出血を41%減少させた。また、リバーロキサバン2.5mg×2/日とDAPTの併用は、VKAとDAPTの併用に比べ、臨床的に著明な出血を37%減少させた。これらの結果は、いずれも統計学的に有意であった。同様の結果が効果評価項目(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、ステント血栓症)でもみられたが、この試験は統計学的に有意を示すにはパワー不足であった。 この米国で初めてのNOACとVKAとの無作為化比較試験であるPIONEER AF-PCIの結果は、2016年米国心臓学会議(AHA)学術集会のLate Breaking Clinical Trialセッションで発表され、同時にThe New England Journal of Medicine誌に掲載された。PIONEER AF-PCI試験について PCIによる冠動脈ステント留置を行った非弁膜症性心房細動患者2,124例を対象に、リバーロキサバンとVKAの効果と安全性を評価した世界26ヵ国による非盲検無作為化比較試験。主要評価項目は臨床的に著明な出血(TIMI major bleeding)。被験者は以下の3群に割り付けられた。・リバーロキサバン15mg/日+クロピドグレル(またはプラスグレル、チカグレロル)12ヵ月投与・リバーロキサバン2.5mg×2/日+DAPT(主治医の判断により1ヵ月、6ヵ月または12ヵ月)の後、リバーロキサバン15mg/日+低用量アスピリン投与、計12ヵ月・VKA+DAPT(主治医の判断により1ヵ月、6ヵ月または12ヵ月)の後、VKA+低用量アスピリン投与、計12ヵ月(ケアネット 細田 雅之)参考バイエル社(ドイツ):ニュースリリースPIONEER AF-PCI試験(ClinicalTrials.gov)原著論文Gibson CM, et al. N Engl J Med. 2016 Nov 14.[Epub ahead of print]

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ステント留置後のDAPT期間、糖尿病の有無で検討/BMJ

 薬剤溶出ステント留置後の2剤併用抗血小板療法(DAPT)の投与期間は、短期か長期か。スイス・ベルン大学のGiuseppe Gargiulo氏らが、メタ解析により糖尿病患者と非糖尿病患者を層別化して検討した。その結果、糖尿病はステント留置後の重大有害心血管イベント(MACE)の独立予測因子であることが明らかになったが、MACE発生のリスクは、糖尿病患者また非糖尿病患者についてもDAPT投与期間の短期(6ヵ月以下)と長期(12ヵ月)で有意な差はなく、一方で長期DAPTは出血リスクを増大することが示された。BMJ誌2016年11月3日号掲載の報告より。MACE発生との関連について1万1,473例のデータをメタ解析 メタ解析は、Medline、Embase、Cochrane databases、国際学会の抄録から、薬剤溶出ステント留置後のDAPTの投与期間について調べた無作為化対照試験を検索。被験者個別データをプールして、試験によって層別化したCox比例回帰モデルを作成し糖尿病のアウトカムへの影響を調べた。 主要試験アウトカムは、心臓死、心筋梗塞、definite/probableのステント塞栓症で定義したMACE。すべての解析はintention-to-treatにて行った。 検索により6つの無作為化試験の被験者1万1,473例のデータをプールした。そのうち、糖尿病患者は3,681例(32.1%)、非糖尿病患者は7,708例(67.2%)で、平均年齢はそれぞれ63.7(SD 9.9)歳、62.8(10.1)歳であった。残る84例については情報が紛失し不明であった。また、糖尿病患者のうち、短期DAPT群は1,828例、長期DAPT群は1,853例、非糖尿病患者はそれぞれ3,860例、3,848例であった。追跡1年時点のMACEリスク減少効果は、短期と長期で有意差なし 解析の結果、糖尿病はMACEの独立予測因子であった(ハザード比[HR]:2.30、95%信頼区間[CI]:1.01~5.27、p=0.048)。 しかしながら追跡1年時点で、長期DAPT群は短期DAPT群と比べて、MACEのリスク減少との関連が、糖尿病患者群(1.05、0.62~1.76、p=0.86)および非糖尿病患者群(0.97、0.67~1.39、p=0.85)のいずれにおいても認められなかった(交互作用のp=0.33)。 心筋梗塞のリスクについて、糖尿病・非糖尿病患者別で検討した場合は、糖尿病患者群での有意な増大が認められたが、DAPT投与期間の長短で比較すると、糖尿病患者群(0.95、0.58~1.54、p=0.82)、非糖尿病患者群(1.15、0.68~1.94、p=0.60)共に差はみられなかった(交互作用のp=0.84)。 definite/probableのステント塞栓症のリスクは、糖尿病・非糖尿病患者別で検討した場合は、糖尿病患者群で有意差はないが数的には増大が認められた(HR:1.89、95%CI:0.31~11.38、p=0.49)。DAPT投与期間の長短で比較すると、ランドマーク解析法では、両群共にベネフィットがある傾向が示されたが、陽性交互検定では、糖尿病患者群で長期DAPT群のほうが短期DAPT群よりも有意な低下が認められ(0.26、0.09~0.80、p=0.02)、非糖尿病患者群では観察されなかった(1.42、0.68~2.98、p=0.35)(交互作用のp=0.04)。 大小の出血リスクについては、糖尿病の有無にかかわりなく、長期DAPT群で高かった。

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うつ病エピソードと緯度との関連とは

 カナダにおける緯度と年間のうつ病エピソードの有病率との関連について、カナダ・カルガリー大学のScott B Patten氏らが検討を行った。Canadian journal of psychiatry誌オンライン版2016年10月11日号の報告。 2つの全国調査プログラム(The National Population Health Survey、the Canadian Community Health Survey)のデータより、1996~2013年に収集した10個のデータセットを使用した。両プログラム合わせて回答者92万2,260例、そのうち49万5,739例はComposite International Diagnostic Interview1/2ショートバージョン(8研究)とCanadian adaptation of the World Mental Health version(2研究)を用いてうつ病エピソードを評価されていた。大まかな緯度は、郵便番号データとの連携により決定した。データは、ロジスティック回帰を用い分析し、個々レベルのメタ分析を用いて、調査全体でプールした。 主な結果は以下のとおり。・連続変数としての緯度経度標高モデルでは、有病率の増加と緯度の増加の間に統計学的に有意な関連が認められた。・この関連は、既知の危険因子で調整後も認められた。・緯度勾配は、あまり大きくなく、うつ病エピソード/緯度の有病率オッズで、1~2%の増加が観察された。・低密度なデータであったため、この勾配は、主要な人口重心を越えて一般化することができなかったが、北緯55度未満で発生する傾向があった。・本断面解析では、病因を確認することができず、光曝露、気象パターン、社会的要因のような潜在的な変数を評価することができなかった。関連医療ニュース 低緯度地域では発揚気質が増強される可能性あり:大分大学 性別で異なる、睡眠障害とうつ病発症の関連:東京医大 出生地が双極性障害発症時期に影響

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金子英弘のSHD intervention State of the Art 第5回

TAVIの新たな課題~デバイス血栓症~世界的に急速に普及が進む経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)ですが、それに伴い術後の人工弁血栓症が新たな懸念として浮上しています。これまでの報告では「TAVI後の人工弁血栓の発生はきわめてまれである」とされてきました1)~3)。一方で、人工弁血栓がTAVI後の大動脈弁圧較差の原因となりうること3)、そして生体弁による外科的弁置換術後の血栓症も予想以上に多く、術後数年を経過してから発生すること4)もありうることが報告されています。われわれの施設でもTAVI後、約2年が経過した症例で人工弁に血栓が生じ、左冠動脈主幹部に塞栓症を起こし、重篤な転帰となった症例を経験しており5)、見逃すことのできない合併症と考えています。最近、TAVI後の血栓症について新たな興味深い報告が発表されましたので紹介したいと思います。本研究では、デンマークの単施設で行われたSAPIEN XTあるいはSAPIEN 3を用いたTAVIの連続登録症例460例のうち、術後1~3ヵ月以内にMDCTおよび経胸壁・経食道心エコーによる人工弁血栓症の評価が行われた405例で解析が行われました。その結果、28例(7%)の症例で血栓の発生が確認され、大きな人工弁(29mm)留置と、術後ワルファリン未使用が人工弁血栓の独立した予測因子であることが示されました。また、ワルファリン使用によって人工弁血栓が消退することも同時に報告されています6)。これまでの報告と同様に、今回の研究でも多くの症例で人工弁血栓症は無症候性で、脳梗塞の発症などのイベントとの関連を示すには至っていません。ただ、当院で経験した症例のように重篤な転帰に至る症例もあることから、TAVI後の人工弁血栓の臨床的意義、予測因子、そして予防法・治療法を明らかにすることは非常に重要です。TAVI後の抗血栓療法のレジメンとしては、心房細動を合併しない症例では、アスピリン・クロピドグレルの抗血小板薬2剤併用を6ヵ月間、その後抗血小板薬1剤を継続することが推奨されています。しかしながら、今回の研究結果をみると、血栓症のリスクの高い症例では抗凝固療法を加えたプロトコルのほうが優れているのではないかとも考えられます。この点については、現在進行中のRandomized trialであるGALILEO trial、 POPular-TAVI trial、ATLANTIS trialなどの結果によって明らかになると思われます。これまでの連載で紹介したSAPIEN 3(エドワーズライフサイエンス社)など新世代デバイスの登場によって急性期の合併症が著しく減少したTAVIですが、その分、今後はこのような長期的な予後や管理について明らかにすることが重要になってくると考えています。ドイツでは年間1万3,000例以上のTAVIが行われ、私が勤務する施設においても年間300例以上と、大変多くの症例を経験することができています。これまではTAVIにおける症例選択やより安全なTAVIの施行に重点を置いてきましたが、今後は術後の至適治療という視点からもTAVIについて考えていきたいと思っています。1.Latib A, et al. Circ Cardiovasc Interv. 2015;8.2.De Backer O, et al. Eur Heart J. 2016;37:2271.3.De Marchena E, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2015;8:728-739.4.Egbe AC, et al. J Am Coll Cardiol. 2015;66:2285-2294.5.Neuss M , Kaneko H, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2016.6.Hansson NC, et al. J Am Coll Cardiol. 2016.

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複雑なPCI症例ではDAPTを延長すべきか?

 薬剤溶出ステント(DES)留置を行った複雑な経皮的冠動脈形成術(PCI)後、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の最適期間は定まっていない。Gennaro Giustino氏ら研究グループは、PCIの複雑性に応じ、短期間(3~6ヵ月)と長期間(12ヵ月以上)におけるDAPTの有効性および安全性を比較検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2016年10月25日号に掲載。6つの無作為化コントロール試験から患者データを抽出 研究グループは、PCI後のDAPTの期間を調査した6つの無作為化コントロール試験に基づく患者データを用いた。複雑なPCIとは、以下に挙げた特徴を少なくとも1つ以上有するものと定義した。すなわち、(1)3つ以上の冠動脈を治療、(2)3つ以上のステント留置、(3)3つ以上の病変を治療、(4)分枝病変で2つのステントの留置、(5)ステントの全長が60mmより長い、(6)慢性完全閉塞、である。1次エンドポイントは心臓死、心筋梗塞、もしくはステント血栓症の複合イベントで定義された主要心血管イベント(MACE)とした。安全性に関する主要評価項目は、大出血イベントとした。主要な解析手法として、Intention-to-treatが用いられた。9,577例の患者データを解析、85%が新世代DES PCIの手技に関する変数が入手可能な患者データ9,577例を解析したところ、1,680例(17.5%)が複雑なPCIを受けていた。全体として、85%の患者が新世代のDESを留置されていた。平均追跡期間の中央値392日(四分位範囲:366~710日)で、複雑なPCIを受けた患者はMACEのリスクが高かった(調整ハザード比[HR]:1.98 、95%信頼区間[CI]:1.50~2.60、p<0.0001)。長期間DAPTで複雑なPCI群においては、MACEを有意に減少させた(調整HR:0.56、95%CI:0.35~0.89)。一方、長期間DAPTで複雑ではないPCI群においては、MACEを有意に減少させなかった(調整HR:1.01、95%CI:0.75~1.35、交互作用のp=0.01*)。*長期間DAPTの使用に関して、複雑なPCIにおいてはMACEの減少につながるということを示している。長期間DAPTのベネフィットは手技の複雑性と比例する 長期間DAPTのベネフィットは、手技の複雑性が増すほど大きくなっていた。また、長期間DAPTは大出血リスクが高かったが、PCIの複雑性にかかわらず同等であった(交互作用のp=0.96)。これまでにわかっている臨床上のリスクに加えて、手技の複雑性もDAPTの継続期間の決定因子として考慮されるべき重要なパラメーターといえる。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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