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抗血小板薬2剤併用、CABG後グラフト開存率を改善/JAMA

 チカグレロル+アスピリンによる抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は、アスピリン単剤に比べ、冠動脈バイパス術(CABG)後1年時の伏在静脈グラフトの開存率を改善することが、中国・上海交通大学医学院附属瑞金医院のQiang Zhao氏らが行った多施設共同試験(DACAB試験)で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年4月24日号に掲載された。CABG後の伏在静脈グラフトの開存に及ぼす、アスピリン+P2Y12受容体拮抗薬によるDAPTの効果については、いくつかの小規模な短期的臨床試験で相反する結果が報告されているという。1年後のグラフト開存率を3群で比較 研究グループは、CABG後の伏在静脈グラフトの開存におけるチカグレロル+アスピリンおよびチカグレロル単剤の効果を、アスピリン単剤と比較する非盲検無作為化試験を実施した(AstraZeneca社の助成による)。 対象は、年齢18~80歳の待機的CABGの適応例であった。緊急血行再建術、他の心臓手術の併用、CABG後にDAPTまたはビタミンK拮抗薬を要する患者や、重篤な出血のリスクを有する患者は除外された。 被験者は、CABG後24時間以内にチカグレロル(90mg×2回/日)+アスピリン(100mg/日)、チカグレロル単剤(90mg×2回/日)、アスピリン単剤(100mg/日)を投与する群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、1年間の治療が行われた。 主要アウトカムは、1年後の伏在静脈グラフトの開存(FitzGibbon分類:GradeA[狭窄<50%])とし、割り付け情報を知らされていない審査委員会が独立に判定を行った。探索的な事後解析として、グラフト非閉塞(GradeA+B[狭窄≧50%])の評価も行った。開存の評価には、マルチスライスCT血管造影法または冠動脈血管造影法を用いた。 2014年7月~2015年11月の期間に、中国の6つの3次病院に500例が登録された。2剤併用群に168例、チカグレロル単剤群に166例、アスピリン単剤群には166例が割り付けられた。1年グラフト開存率:88.7%、82.8%、76.5% ベースラインの全体の平均年齢は63.6歳で、91例(18.2%)が女性であった。461例(92.2%)が試験を完遂した。 1年時のグラフト開存率は、併用群が88.7%(432/487グラフト)、チカグレロル単剤群が82.8%(404/488グラフト)、アスピリン単剤群は76.5%(371/485グラフト)であった。併用群とアスピリン単剤群の差は12.2%(95%信頼区間[CI]:5.2~19.2)であり、有意な差が認められた(p<0.001)のに対し、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群の差は6.3%(-1.1~13.7)と、有意差は認められなかった(p=0.10)。 7日時のグラフト開存率には、併用群とアスピリン単剤群(94.9 vs.91.1%、p=0.11)、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群(94.3 vs.91.1%、p=0.17)のいずれの比較においても、有意な差はみられなかった。 事後解析では、1年時のグラフト非閉塞率は、併用群がアスピリン単剤群に比べ高かった(89.9 vs.80.6%、p=0.006)が、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群(86.1 vs.80.6%、p=0.17)には差がなかった。また、7日時の非閉塞率は、併用群とアスピリン単剤群(95.3 vs.92.8%、p=0.26)、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群(95.7 vs.92.8%、p=0.16)のいずれの比較においても、有意な差はなかった。 主要有害心血管イベント(MACE:心血管死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中)は、併用群が3例(1.8%)、チカグレロル単剤群が4例(2.4%)、アスピリン単剤群は9例(5.4%)で発現し、大出血は併用群が3例(1.8%)、チカグレロル単剤群は2例(1.2%)に認められた。 著者は、「相対的な出血リスクの評価には、患者数を増やしたさらなる検討を要する」としている。

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ACS症例におけるDAPTの期間は6ヵ月と12ヵ月のいずれが妥当か?(解説:上田恭敬氏)-848

 急性冠症候群症例(不安定狭心症、ST非上昇型急性心筋梗塞、ST上昇型急性心筋梗塞)を対象として、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の期間を6ヵ月とする群と12ヵ月以上とする群に無作為に割り付ける、韓国における多施設無作為化比較試験であるSMART-DATE試験の結果が報告された。 本試験では、韓国の31施設において2,712症例の急性冠症候群症例が、6ヵ月間のDAPT群(1,357症例)または12ヵ月以上のDAPT群(1,355症例)に無作為に割り付けられた。主要エンドポイントは18ヵ月時点での全死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントで、副次エンドポイントは主要エンドポイントの各構成要素、ステント血栓症(definite or probable)、出血性イベント(BARC type 2~5)である。 主要エンドポイントは、6ヵ月DAPT群で4.7%、12ヵ月以上DAPT群で4.2%と差を認めなかった。副次エンドポイントは、全死亡と脳卒中、ステント血栓症については群間に差を認めなかったが、心筋梗塞の発症は6ヵ月DAPT群で有意に高頻度に認められた(1.8% vs.0.8%、p=0.02)。出血性イベントは、6ヵ月DAPT群で2.7%、12ヵ月以上DAPT群で3.9%と有意な差は認めなかった(p=0.09)。 以上より、18ヵ月時点での主要エンドポイントに関しては、12ヵ月以上DAPTに対する6ヵ月DAPTの非劣性が示されたものの、主要エンドポイントの構成要素の1つである心筋梗塞の発症が6ヵ月DAPTで有意に高頻度であったために、6ヵ月DAPTが12ヵ月以上DAPTと同等に安全とは結論できなかったとしている。 通常、主要エンドポイントの結果が重要視され、副次エンドポイントの結果を強く主張することは控えるべきとされるが、本論文の記載は妥当なものと思われる。また、比較的低リスクの症例が登録されたかもしれないというselection biasの可能性などいくつかのlimitationが指摘されているが、それらはむしろ群間差をなくす方向に作用すると思われ、その中でも心筋梗塞の発症が6ヵ月DAPTで有意に高頻度であったことはやはり注目すべきである。著者も指摘しているように、現時点では、12ヵ月以上DAPTが急性冠症候群症例における標準的治療であることは揺らがず、安易にDAPT期間を短縮すべきではないと考える。

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日本のPCI患者のDAPT期間。リアルワールドでは6ヵ月?/日本循環器学会

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)における適正な抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の適正な期間は明らかになっていない。福岡山王病院 循環器センターの横井宏佳氏が、2018年3月23〜25日に大阪で開催された第82回日本循環器学会学術集会Late Breaking Cohort Studiesにて、リアルワールドデータを解析した日本人患者のDAPT継続期間とアウトカムの疫学研究を発表した。 この研究では、多数のDPC病院から成る、メディカルデータビジョン社のデータベースソースを使用した。2012年4月〜2013年6月までに登録された614万以上のデータのうちCADの診断がついた34万例以上から、登録基準に合致した7,473例が解析対象になった DAPT継続している患者の割合は、6ヵ月で63.4%、12ヵ月で41.9%であった。3ヵ月ランドマーク解析による虚血イベント(死亡、心筋梗塞、脳卒中)は、DAPT継続3ヵ月未満17.8%、3ヵ月以上9.7%であった(p=0.001)。6ヵ月ランドマーク解析による虚血イベントは、DAPT継続6ヵ月未満17.8%、6ヵ月以上9.7%であった(p=0.002)。12ヵ月ランドマーク解析による虚血イベントは、DAPT継続12ヵ月未満8.1%、12ヵ月以上5.9%であった(p=0.242)。継続期間6ヵ月まではShort DAPTよりもLong DAPTで有意にイベントが少ないという結果となった。

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PCI後のDAPT、6ヵ月 vs.12ヵ月以上/Lancet

 急性冠症候群に対する薬剤溶出ステント(DES)での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施後、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)において、6ヵ月投与群が12ヵ月以上投与群に対して、18ヵ月時点で評価した全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイントの発生について非劣性であることが示された。一方で、心筋梗塞発症リスクは、6ヵ月投与群が約2.4倍高かった。韓国・成均館大学校のJoo-Yong Hahn氏らが、2,712例を対象に行った無作為化非劣性試験の結果で、Lancet誌オンライン版2018年3月9日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「DAPT投与は短期間が安全であるとの結論に達するには、厳しい結果が示された。過度の出血リスクがない急性冠症候群患者のPCI後のDAPT期間は、現行ガイドラインにのっとった12ヵ月以上が望ましいだろう」と述べている。18ヵ月時点の心血管イベントリスクを比較 研究グループは2012年9月5日~2015年12月31日に、韓国国内31ヵ所の医療機関を通じて、不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞、ST上昇型心筋梗塞のいずれかが認められ、DESによるPCIを受けた患者2,712例について、非盲検無作為化非劣性試験を行った。急性冠症候群でPCI実施後のDAPT期間6ヵ月の群が、同じく12ヵ月以上の群に比べて非劣性かを評価した。 主要評価項目は、PCI実施後18ヵ月時点の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中のいずれかの複合エンドポイントとし、ITT解析で評価した。per protocol解析も行った。 副次評価項目は、PCI実施後18ヵ月時点の、主要評価項目に含まれた各イベントの発生、Academic Research Consortium(ARC)の定義に基づくdefinite/probableステント血栓症、BARC出血基準に基づくタイプ2~5の出血の発生だった。6ヵ月群の心筋梗塞リスクが2.41倍 被検者のうち、DAPTの6ヵ月投与群は1,357例、12ヵ月以上投与群は1,355例だった。P2Y12阻害薬としてクロピドグレルを用いたのは、6ヵ月群の1,082例(79.7%)、12ヵ月以上群の1,109例(81.8%)だった。 主要評価項目の発生は、6ヵ月群63例(累積イベント発生率:4.7%)、12ヵ月以上群56例(同:4.2%)で認められ、6ヵ月群の非劣性が示された(群間絶対リスク差:0.5%、片側上限値95%信頼区間[CI]:1.8%、事前規定の非劣性マージンは2.0%で非劣性のp=0.03)。 全死因死亡率は6ヵ月群が2.6%、12ヵ月以上群が2.9%と両群で同等だった(ハザード比[HR]:0.90、95%CI:0.57~1.42、p=0.90)。脳卒中発症率についても、それぞれ0.8%と0.9%であり、両群で同等だった(同:0.92、0.41~2.08、p=0.84)。 一方で心筋梗塞発症率については、6ヵ月群が1.8%に対し12ヵ月以上群が0.8%だった(HR:2.41、95%CI:1.15~5.05、p=0.02)。 ステント血栓症については、それぞれ1.1%と0.7%で、両群に有意差はなかった(p=0.32)。BARC出血基準2~5の出血発生頻度も、それぞれ2.7%、3.9%と有意差はなかった(p=0.09)。 per protocol解析の結果は、ITT解析の結果と類似していた。 著者は、「6ヵ月投与群の心筋梗塞リスクの増大と幅広い非劣性マージンによって、DAPTの短期間投与が安全であると結論付けることはできない」と述べている。

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脳内出血後の院内死亡、ワルファリンvs. NOAC/JAMA

 脳内出血(ICH)患者の院内死亡リスクを、発症前の経口抗凝固薬(OAC)で比較したところ、OAC未使用群に比べ非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)あるいはワルファリンの使用群で高く、また、NOAC使用群はワルファリン使用群に比べ低いことが示された。米国・デューク大学メディカルセンターの猪原拓氏らが、米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)による登録研究Get With The Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke)のデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果、明らかにした。NOACは血栓塞栓症予防としての使用が増加しているが、NOAC関連のICHに関するデータは限られていた。JAMA誌オンライン版2018年1月25日号掲載の報告。脳内出血患者約14万1,000例で、抗凝固療法と院内死亡率との関連を解析 研究グループはGWTG-Strokeに参加している1,662施設において、2013年10月~2016年12月にICHで入院した患者を対象に、ICH発症前(病院到着前7日以内)の抗凝固療法による院内死亡率について解析した。 抗凝固療法は、ワルファリン群・NOAC群・OAC未使用群に分類し、2種類の抗凝固薬(ワルファリンとNOACなど)を用いていた患者は解析から除外した。また、抗血小板療法については、抗血小板薬未使用・単剤群・2剤併用(DAPT)群に分類し、3群のいずれにも該当しない患者は解析から除外した。 解析対象は14万1,311例(平均[±SD]68.3±15.3歳、女性48.1%)で、ワルファリン群1万5,036例(10.6%)、NOAC群4,918例(3.5%)。抗血小板薬(単剤またはDAPT)を併用していた患者は、それぞれ3万9,585例(28.0%)および5,783例(4.1%)であった。ワルファリン群とNOAC群は、OAC未使用群より高齢で、心房細動や脳梗塞の既往歴を有する患者の割合が高かった。NOAC群は、未使用群よりは高いがワルファリン群よりも低い 急性ICHの重症度(NIHSSスコア)は、3群間で有意差は確認されなかった(中央値[四分位範囲]:ワルファリン群9[2~21]、NOAC群8[2~20]、OAC未使用群8[2~19])。 補正前院内死亡率は、ワルファリン群32.6%、NOAC群26.5%、OAC未使用群22.5%であった。OAC未使用群と比較した院内死亡リスクは、ワルファリン群で補正後リスク差(ARD)9.0%(97.5%信頼区間[CI]:7.9~10.1)、補正後オッズ比(AOR)1.62(97.5%CI:1.53~1.71)、NOAC群でARDは3.3%(97.5%CI:1.7~4.8)、AORは1.21(97.5%CI:1.11~1.32)であった。 ワルファリン群と比較して、NOAC群の院内死亡リスクは低かった(ARD:-5.7%[97.5%CI:-7.3~-4.2]、AOR:0.75[97.5%CI:0.69~0.81])。 NOAC群とワルファリン群の死亡率の差は、DAPT群(NOAC併用群32.7% vs.ワルファリン併用群47.1%、ARD:-15.0%[95.5%CI:-26.3~-3.8]、AOR:0.50[97.5%CI:0.29~0.86])において、抗血小板薬未使用群(NOAC併用群26.4% vs.ワルファリン併用群31.7%、ARD:-5.0%[97.5%CI:-6.8%~-3.2%]、AOR:0.77[97.5%CI:0.70~0.85])より数値上では大きかったが、交互作用p値は0.07で統計的有意差は認められなかった。 なお、著者は、GWTG-Strokeの登録データに限定していることや、NOAC群の症例が少なく検出力不足の可能性があることなどを、研究の限界として挙げている。

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ASCO-GI2018レポート

レポーター紹介2018年1月18日から1月20日まで米国サンフランシスコにて米国臨床腫瘍学会消化器がん会議(ASCO-GI)が開かれた。初日こそ雨であったものの、2日目、3日目は快晴であり過ごしやすい日程であった。学会ではOral Presentation、Poster Presentation、Rapid-Fire Abstract Session、Trials in Progress Sessionなどに分けられ、大規模臨床試験の結果だけでなく、小規模なデータや現在試行中の臨床試験の紹介も行われた。本稿では、そのなかのいくつかを紹介する。RAINFALL試験 抗VEGFR-2抗体であるラムシルマブ(RAM)は、RAINBOW試験、REGARD試験により胃がんに対する有効性が証明され、現在では本邦、NCCN、ESMOの胃がん治療ガイドラインにおいて、標準的な2次化学療法として位置付けられている。RAINFALL試験はRAMを1次治療として使用したときの効果、安全性を検証する第III相無作為化比較試験である。対象は、前治療歴のないHER2陰性胃がん・胃食道接合部がん症例であり、RAM+カペシタビン+CDDP(RAM群)、Placebo+カペシタビン+CDDP(Placebo群)に1:1に無作為割り付けされた。主要評価項目はPFSであり、副次評価項目はOS、RR、Safety、QOL、PK profileであった。全体で645例が登録され、326例がRAM群、319例がPlacebo群に割り付けられた。主要評価項目であるPFSは、RAM群5.72ヵ月、Placebo群5.39ヵ月(HR:0.75、95%CI:0.61~0.94、p=0.011)であり、統計学的に有意な結果であった。副次評価項目であるOSは、RAM群11.17ヵ月、Placebo群10.74ヵ月(HR 0.98、95%CI:0.80~1.16、p=0.68)であり両群に有意差を認めなかった。有害事象の解析では、高血圧、血小板減少、食思不振、消化管穿孔、出血、蛋白尿の比率がRAM群で高く認められた。後治療の導入率はRAM群46%、Placebo群51%であり、いずれの群でも2次治療以後にRAMを使用した症例が認められた。PFSはpositiveであったものの、その差はMedianでわずか0.3ヵ月であり、また、OSの延長効果は認められず、全体としてnegativeという趣旨の発表であった。興味深かったのが2次治療導入からのOSの解析であり、2次治療以後でRAMを使用した場合のOSは、RAM群7.7ヵ月、Placebo群8.8ヵ月、また2次治療以後でRAMを使用しなかった場合のOSは、RAM群6.5ヵ月、Placebo群6.7ヵ月であり、2次治療以後でRAMを使用したほうがOSは良好な傾向であった。Discussantはコストについても言及し、今回得られたPFSの延長0.3ヵ月(=9日)のためにかかるコストは、体重70kgの場合、1サイクルで7,457ドル、9サイクルで6万7,112ドルであり、その意義について疑問を呈していた。胃がんに対する1次治療としてのRAMはnegativeであったわけだが、今後の胃がん1次治療の新たな展開としては現在、免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験が進められており、本学会においても、ニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ+化学療法(XELOX or FOLFOX)、化学療法の3群の比較試験 (CheckMate-649, TPS 192)や 、FOLFOX、XELOXでInduction治療を行った後に維持療法として同じ治療を継続するか、抗PD-L1抗体であるアベルマブに変更するかを比較するJAVELIN試験(TPS 195)などが、Trials in Progress Sessionにおいて紹介されていた。RAINFALL: A randomized, double-blind, placebo-controlled phase III study of cisplatin (Cis) plus capecitabine (Cape) or 5FU with or without ramucirumab (RAM) as first-line therapy in patients with metastatic gastric or gastroesophageal junction (G-GEJ) adenocarcinoma. (Abstract No.:5)Charles SREVERCE試験 本邦で行われたREVERCE試験がRapid-Fire Sessionで報告された。現在、進行再発大腸がんにおけるガイドラインにおいては、セツキシマブ(C)などの抗EGFR抗体の後にレゴラフェニブ(R)を使用することが勧められている。一方、治療早期にRを使用することにより良好な効果が得られることも報告されており、CとRのより適正な投与順序を探索する本試験が行われた。対象は、フルオロピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカンなどの標準治療に不耐、不応となった、KRASもしくはRAS野生型の進行再発大腸がんであり、R→Cの順番で治療を行うR-C群と、C→Rの順番で治療を行うC-R群に無作為化割り付けされた。主要評価項目はOS、副次評価項目はTTF、PFS、RR、DCR、AE、QOLであった。当初180例の登録と132のイベントが必要とされたが、101例で登録終了となり、今回その結果が報告された。主要評価項目のOSは、R-C群17.4ヵ月、C-R群11.6ヵ月であり、R-C群において有意に良好であった(HR:0.61、95%CI:0.39~0.96、p=0.029)。先に行う治療のPFS(PFS1)は、R-C群(R)2.4ヵ月、C-R群(C)4.2ヵ月であり、後に行う治療のPFS(PFS2)はR-C群(C)5.2ヵ月、C-R(R)群1.8ヵ月であった。奏効率はRでは4.0%(R-C群)、0.0%(C-R群)、Cは20.4%(R-C群)、27.9%(C-R群)と、それぞれほぼ既報の通りであった。RをCの前に投与することでOSの延長がみられた、ということが今回の結果である。その機序であるが、PFSの比較をみるとR後のCのPFSが良好な印象である。Rの投与により、AKT系などさまざまな分子生物学的な変化が腫瘍細胞に起こることが基礎研究で明らかになっており、これらの変化がCの効果を増強した可能性は考えられるかもしれない。試験としては予定された症例数に満たず、Under Powerであることは念頭に置く必要があるが、これまで広く行われてきた治療方針と違う結果が示されたということは、その機序も含め、非常に興味深いところである。Reverce: Randomized phase II study of regorafenib followed by cetuximab versus the reverse sequence for metastatic colorectal cancer patients previously treated with fluoropyrimidine, oxaliplatin, and irinotecan.)(Abstract No.:557)Kohei ShitaraSAPPHIRE試験 RAS野生型進行再発大腸がんにおいてパニツムマブ(pani)+mFOLFOX6は標準治療の1つであるが、オキサリプラチン継続に伴う末梢神経障害は、患者のQOLを低下させるだけでなく、治療意欲の減退、治療継続性にも影響しうる重要な有害事象である。本試験は6コースのpani+mFOLFOX6を行った後に、そのまま同じ治療を継続するA群と、7コース目からはオキサリプラチンを休薬し、pani+5-FU+LVとして治療を継続するB群との2つの群を設定した無作為化第II相試験である。主要評価項目は無作為化後9ヵ月時点での無増悪生存率(PFS rate)であり、副次評価項目はPFS、OS、TTF、Safetyが設定された。本試験は2つの治療群のそれぞれの成績を検証するParallel-group studyという形がとられ、閾値30%、期待値50%、片側 α 値 0.10として各群50例、全体で100例の無作為化が必要な統計学的計算であった。164例が登録され、6コースのpani+FOLFOX後に腫瘍進行や手術移行などによる脱落を除いた113例がA群(56例)とB群(57例)に無作為化割り付けされた。主要評価項目である無作為化後9ヵ月(治療開始から約12ヵ月)時点でのPFS rateは、A群46.4%(95%CI:38.1~54.9、p=0.0037)、B群47.4%(95%CI: 39.1~55.8、p=0.0021)であり、両群ともに主要評価項目を満たした。副次評価項目であるPFSはA群9.1ヵ月、B群9.3ヵ月、RRはA群80.4%、B群87.7%であり、両群で近似した治療成績であった。Grade2末梢神経障害は、A群10.7%に対してB群1.9%であり、オキサリプラチンを早期で終了したB群において少なかった。昨年publishされたPan-Asian adapted ESMO consensus guidelinesにおいて、RAS野生型進行再発大腸がんにおいて原発巣が左側であれば1次治療からの抗EGFR抗体+doubletの使用が推奨され、本邦の各施設において同治療を行う機会は増えてくると予想される。そのときに、効果、有害事象をみながらであるが、早期にオキサリプラチンを中止し、pani+5-FU+LVという形で治療を継続しても、効果は大きくは落ちないことを示唆した結果であり、臨床での応用性は高いと考えられる。SAPPHIRE: A randomized phase II study of mFOLFOX6 + panitumumab versus 5-FU/LV + panitumumab after 6 cycles of frontline mFOLFOX6 + panitumumab in patients with colorectal cancer.(Abstract No.:729)Masato Nakamuraまとめ本稿では殺細胞薬、分子標的治療薬の演題につき報告したが、免疫チェックポイント阻害剤の話題も多くあり消化管、肝胆膵領域の化学療法も新たな時代に移ろうとしているのを実感した学会であった。

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PTSD心臓外科医のこだわりと肩すかし(解説:今中和人氏)-791

 医療に必要不可欠な輸血療法の歴史は、肝炎やGVHDに代表される輸血後合併症との戦いの歴史でもある。多くの先人・関係者の研究とご尽力により、昨今、上記合併症は激減し、日本赤十字社の公式発表によれば、たとえば肝炎は2012年B型6例・C型ゼロ、2013年B型7例・C型1例、2014年B型2例・C型ゼロである。何よりも私たちは、このことに感謝しなければならない(もちろん、表面化していない症例はあるであろうが)。ただ、まれながら経験あるいは見聞した劇症肝炎やGVHDのすさまじさで、医療者、とくに輸血を頻用してきた心臓外科医はPTSDになっている。上記2つ以外の合併症も、遅発性溶血は1/2,500、急性肺障害1/5,000~10,000、アナフィラキシー8/100,000(いずれも対1単位)と学んでもなお恐れ、無輸血にこだわっている。 ウインドウ期の献血でHIV感染が1例起きて大騒ぎになったのは2013年。もう4年あまり前のことで、以降1例も報告されていないが、「いやいや、未知の病原体だってありうる」とこだわっている。 さらに、しばしばオーバーな報道に振り回されがちな患者さんたちが「無輸血」と聞くと喜ぶこともあるが、誇り高き心臓外科医が無輸血にこだわる、もう1つ大きな理由を率直に記すと「手術が上手→出血が少ない→無輸血」という図式である。別に同業者を揶揄するのではなく、たとえば当院での2017年11月の開心術は全例無輸血だったので、ためしにこの時期の14例(平均62歳)を集計すると、当日Hb9.9g/dL(7.7~11.3)、大抵2病日に最低となりHb8.3g/dL(7.3~11.1)。とくに6例が女性で、ACSが3例、DAPT中の症例も1例いたことを思うと、われわれもご多分に漏れず相当こだわっている。ただし多くの論文が指摘するように、無輸血と最も相関する因子は術前Hbで、当院の14例も13.6g/dL(10.7~16.6)と、術前から基準値を下回っていたのは2例のみだった。 一方、重症貧血では組織への酸素供給が不十分になる。無輸血にこだわることの安全性はとても重要で、最低Htと術後死亡率、入院期間、諸合併症率の相関を指摘する有名施設の論文もあり、心臓外科医は「どこまでこだわってよいか?」に強い関心がある。 そういった心臓外科医にとって、実に隔靴掻痒の論文である。 この北米中心の国際多施設共同研究(ちなみに中国・インドなどアジアの施設も参加しているが、本邦の施設は含まれていない)は、われわれが知りたい、無輸血の是非を論じたものでもなく、どの程度の貧血まで粘ってよいかを論じているのでもなく、輸血に踏み切るHb値をいくつに設定するかで比較しているにすぎない。だから制限輸血群でも52%が輸血をしているし、自由輸血群は73%。つまり自由群も1/4以上は無輸血なのだ。逆に、制限群に割り付けられたが、自由群だとしても無輸血でいけた症例も多いはずだ。 もっとがっかりするのは、この論文の言う輸血は「赤血球」限定で、FFPは両群とも25%前後、血小板は30%弱投与されており、何ら差がない。これはわれわれの言う無輸血とは異なるだけでなく、たとえばアナフィラキシーを含むアレルギーは圧倒的に血小板、次いでFFPに多いのだがまったくお構いなし。どちらも自由群である。 とどめは、この論文のエンドポイントに輸血合併症が含まれていないことで、これは国際共同研究のアキレス腱と言うべきか。今でもインドなどでは売血が一般的なようで、輸血合併症の頻度もさまざまで致し方ないのだろうが、強烈な肩すかし感が残る。せん妄とか痙攣なんてエンドポイントで差が出るわけがない。 で、結論は「どちらのHb設定でも大きな差はない」とのこと。さもありなん、である。 なお輸血は、国や施設によってはコストも大いに関係する。本邦の薬価、1単位当たり赤血球 約8,600円、FFP 約9,000円、血小板 約7,800円に対するご意見はさまざまだが、安全性の担保から街角で終日献血を呼びかける職員に至るまで、関係各位のご努力への感謝を忘れるべきでないと私は思う。

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抗血栓治療でPPAPは成立するか?(解説:香坂俊氏)-777

 動脈系血栓予防(冠動脈疾患など)に最適とされている薬剤はアスピリンである。静脈系血栓予防(深部静脈血栓や心房細動など)には長らくワルファリンが用いられてきた。では、冠動脈疾患に心房細動が合併したりして、その2つを一度に行わなければならないときはどうするか? 数年前までは何も考えずこの2剤を併用してきた。2016年の流行語にPPAP(PEN-PINAPPLE-APPLE-PEN:ペンパイナッポーアッポーペン)というものがあったが、まさに・動脈系血栓予防にはASPIRIN・静脈系血栓予防にはWARFARIN・それをくっつけASPIRIN-WARFARIN-APPLE-PENといった塩梅である(苦しいですが、年の瀬なので許してください)。 しかし冠動脈疾患の治療にステントが使われるようになると、インターベンション治療(PCI)を行った患者にはアスピリンに2剤目の抗血小板薬(クロピドグレルやプラスグレル)をかぶせなければならなくなった。いわゆるDAPT(Dual AntiPlatelet Therapy:抗血小板2剤併用療法)である。すると、例えばステント治療を行った心房細動患者にはDAPTに加えさらにワルファリンを投与することになり「ちょっと多いかもな」ということになる。これが杞憂でないことはWOESTという医師主導の臨床試験で立証され、3剤で行くよりもアスピリンを抜いた2剤(クロピドグレル+ワルファリン)のほうが出血イベントが半分程度になることがわかった(DOI)。 その後、ワルファリンの代替薬としてNOAC(Non-Vitamin K Oral Anticoagulant:非ビタミンK経口抗凝固薬)が使われる時代になり、メーカーがこうした臨床試験に協力してくれるようになった。そうした流れの中で初代NOACであるダビガトランを用いて行われたのがRE-DUAL PCI試験である(これより前にリバーロキサバンでPIONNEER AF-PCI試験が行われており[DOI、さらにアピキサバンでもAUGUSTUS試験が現在行われている)。 結果の詳細は別記事(CareNet該当記事参照)に譲るが、・ダビガトラン 150mg BID+P2Y12阻害薬単剤(2剤)・ダビガトラン 110mg BID+P2Y12阻害薬単剤(2剤)・ワルファリン+DAPT(3剤併用) の3群で比較され、WOESTとほぼ同様の結果が得られている。 掲載誌のEditorialにはこれまでの3つの試験(WOEST、PIONNEER、RE-DUAL)のメタ解析が掲載されているが、出血イベントに関する安全性はもちろんのこと(OR:0.49、95%CI:0.34~0.72)、2剤のほうが虚血イベント抑制に関しても有利でありそうだ(OR:0.80、95%CI:0.58~1.09)という結果が示されている。これは、出血に伴い血栓傾向が強まることを考え合わせると(以下の3つのメカニズムによる)首肯できる結果である。(1)抗血小板薬や抗凝固薬の中止を余儀なくされる(2)出血そのものが炎症反応を惹起する(3)輸血や止血手技でも同様に炎症反応が惹起される 昨今、効果に差を見出すのではなく(Efficacy Trial)、安全性やQOLの確保に重点をおいた減算型の臨床試験が多く行われているが、RE-DUALもその好例といえる(3剤から2剤に引いても安全ですよということを明示)。今後おそらくこの領域では、安易な足し算の発想(PPAP式?)で3剤併用が行われることは【圧倒的】に少なくなることが予想される。

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まだBMSを使う理由があるか?(解説:上田恭敬氏)-769

 本試験では、安定狭心症も急性冠症候群も含めた75歳以上のPCI施行患者を対象として、まずDAPTの期間を1〜6ヵ月の間(short DAPT)で臨床的必要性に応じて決めた後に、PCIに使用するステントをDES(Synergy、Boston Scientific)またはBMS(Omega or Rebel、Boston Scientific)に無作為に割り付けた。患者に対しては、「SENIOR stent」の表記で統一することによって、いずれに割り付けられたかわからないようにした(single-blind)。 その結果、複合主要評価項目である1年間のMACCE(全死亡、心筋梗塞、血行再建術、脳卒中)は、12%対16%(p=0.02)とDES群で有意に低値であった。血行再建術(Ischaemia-driven target lesion revascularisation)の差(2%対6%、p=0.0002)が、複合主要評価項目の差につながったと考えられ、出血性イベントも含めて、他のイベント項目に明らかな群間差を認めなかった。 DAPT期間を短縮するためにBMSを使用するという言い訳がよく聞かれるが、今回の試験の結果では、臨床的必要性に応じて短期間のDAPTを施行する高齢者においても、1年の短期成績で判断する限り、BMSを選択する必要はなく、むしろDESのほうが優れていることが示された。「DESでは新生内膜による被覆が不良なためDAPT期間を短くするとステント血栓症のリスクが高くなる」という固定観念は、そろそろ払拭されてもよいのかもしれない。ただし、10年以上の長期成績においてBMSとDESのいずれが優れているかはまた別の問題であり、別に議論されるべきだろう。

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高齢者のPCI、短期DAPTでのDES vs.BMS/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける高齢患者において、薬剤溶出ステント(DES)を用い抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を短期間とする戦略は、ベアメタルステント(BMS)を用いDAPTを短期間とする戦略よりも予後は良好であり、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中および虚血による標的病変血行再建の発生に関しては同程度であることが示された。フランス・パリ第5大学のOlivier Varenne氏らによる無作為化単盲検試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年10月31日号で発表された。高齢患者は通常、DAPTの継続を短縮するために、DESの代わりにBMSの留置を受ける。研究グループは、高齢患者においてDAPTを短期間とした場合の両ステント間のアウトカムを比較する検討を行った。DAPT投与期間を事前に計画し、DES群またはBMS群に無作為化 試験は9ヵ国、44ヵ所の医療施設から患者を集めて行われた。被験者は、75歳以上で安定狭心症、無症候性心筋虚血、急性冠症候群を有し、70%以上狭窄の冠動脈が1枝以上(左主幹部50%以上)でPCI適応とみなされる患者を適格とした。除外基準は、冠動脈バイパス術による心筋血管再生手術の適応、DAPTに対する忍容性・獲得性・順守性がない、追加手術の必要性、1年以内に生命を脅かす非心臓疾患の併存、出血性脳卒中の既往、アスピリンまたはP2Y12阻害薬に対するアレルギー、P2Y12阻害薬禁忌、左心筋10%未満の無症候性虚血で冠血流予備量比0.80以上であった。 DAPTの計画投与期間が記録された後(安定症状患者は1ヵ月間、不安定症状患者は6ヵ月間)、被験者は中央コンピュータシステムによって、DESまたはBMSを受ける群のいずれかに無作為に割り付けられた(試験施設および抗血小板薬で層別化も実施)。割り付けは単盲検(患者はマスキングなど)で行われたが、アウトカムの評価者はマスキングされた。 主要アウトカムは、intention-to-treat集団における1年時点の重大有害心・脳血管イベント(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、虚血による標的病変血行再建)の両群間の比較であった。イベント評価は、30日、180日、1年時点のそれぞれで行った。1年時点の主要複合エンドポイントの発生、DES群が有意に低下 2014年5月21日~2016年4月16日に、患者1,200例が無作為化を受けた(DES群596例[50%]、BMS群604例[50%])。被験者の平均年齢は81.4歳(SD 4.3)、男性が747例(62%)であった。全体的にプロファイルは典型的な高齢者ハイリスク患者であることを示し、高血圧(各群72%、81%)、高コレステロール血症(52%、53%)、心房細動(17%、18%)などを有していた。既往歴は、一部を除外すればほぼバランスが取れていた。DAPT投与計画は、1ヵ月投与が全体で57%(各群55%、59%)を占め、同計画群の90%が安定狭心症または無症候性虚血の患者で、DES群とBMS群で差はなかった。6ヵ月投与は、ベースラインで急性冠症候群が認められた患者が大半を占めた(83%)。試験期間中のアスピリン用量中央値は100mg(IQR:75~100)、プラスグレル投与患者の半数は5mg/日量であった。また、88%(1,057例)の患者のP2Y12阻害薬がクロピドグレルであった。 主要複合エンドポイントの発生は、DES群68例(12%)、BMS群98例(16%)で報告された(相対リスク[RR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.52~0.94、p=0.02)。 1年時点の出血合併症の発現頻度は両群ともにまれで、DES群26例(5%)vs.BMS群29例(5%)であった(RR:0.90、95%CI:0.51~1.54、p=0.68)。ステント血栓症の発現頻度も同様であった(3例[1%]vs.8例[1%]、RR:0.38、95%CI:0.00~1.48、p=0.13)。 結果を踏まえて著者は、「出血イベントのリスクを減らすための短期BMS様DAPTレジメンとともに、血行再建術の再発リスクを減らすためのDESとの組み合わせ戦略は、PCIを受ける高齢患者の魅力的な選択肢である」と述べている。

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病変の複雑さでPCI後のDAPT延長効果は異なるか

 複雑病変に対し冠動脈ステント留置を受ける患者は、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を延長することによるリスクや利益が異なる可能性がある。DAPT Studyは、12ヵ月と30ヵ月のDAPTによる利益とリスクを比較した国際的な多施設二重盲検ランダム化比較試験であり、本研究では、米国Beth Israel Deaconess Medical CenterのRobert W. Yeh氏ら研究グループが経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後における2つの期間(30ヵ月と12ヵ月)のDAPTの効果を複雑病変の数に応じて評価した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年10月31日号に掲載。DAPT Studyから2万5,416例を評価 本研究では、2万5,416例の試験に組み入れられた患者およびチエノピリジン群とプラセボ群に無作為に割り付けられた1万1,554例について、心筋梗塞もしくはステント血栓症の発生、そして中等度~重症の出血について評価した。複雑病変は、以下のいずれかを含んだものと定義した。すなわち、(1)保護されてない左主幹冠動脈病変、(2)1つの冠動脈に2ヵ所以上の病変、(3)病変の長さが30mmを超える、(4)分岐部病変で分枝が2.5mm以上、(5)静脈バイパスグラフト、(6)血栓を含む病変、である。イベントは複雑病変の数に応じて評価され、DAPTスコアに応じて比較された。複雑病変が多いほど、PCI後1年以内での虚血イベントが増加する PCIから12ヵ月以内において、複雑病変が多い患者ほど心筋梗塞やステント血栓症の発生率が高かった(3.9% vs.2.4%、p<0.001)。最初の12ヵ月でイベントが発生しなかった患者の12~30ヵ月における心筋梗塞もしくはステント血栓症の頻度は、複雑病変の有無にかかわらず同等であった(3.5% vs.2.9%、p=0.07)。チエノピリジンによる12ヵ月以降の心筋梗塞もしくはステント血栓症の抑制効果は、複雑病変の有無にかかわらずチエノピリジン群とプラセボ群で同等であった(複雑病変あり:2.5% vs.4.5%、ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.38~0.79、p<0.001、複雑病変なし:2.0% vs.3.8%、HR:0.52、95%CI:0.39~0.69、p<0.001、相互作用のp=0.81)。チエノピリジンの継続による、中等度~重症の出血の発生の上昇は、複雑病変の有無にかかわらず同程度認められた(相互作用のp=0.41)。複雑病変を有する患者のうち、DAPTスコアが2以上の患者は、スコアが2未満の患者と比べて、チエノピリジン継続群では心筋梗塞もしくはステント血栓症の減少がより大きかった。(スコア2以上:3.0% vs.6.1%、p<0.001、スコア2未満:1.7% vs.2.3%、p=0.42、リスク差の比較のp=0.03)。DAPTスコアはDAPTの継続が有用な患者を同定できる 本研究では、複雑病変では虚血イベントが増加する傾向があり、その傾向はPCI後最初の1年で顕著であることが示された。最初の12ヵ月でイベントがない患者では、複雑病変の有無にかかわらず、DAPT延長による利益は認められなかった。また、複雑病変の有無にかかわらず、DAPTスコアが高い患者は、DAPT延長の利益を得られる可能性が高いことがわかった。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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血小板機能検査に基づく抗血小板療法の調節は意味がない?(解説:上田恭敬氏)-751

 本試験(TROPICAL-ACS)は、急性冠症候群(ACS)に対してPCIを施行した症例(2,610症例)を対象として、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の2剤目の薬剤を、プラスグレル(添付文書およびガイドラインに従って10mgまたは5mg/日)12ヵ月間とする対照群(control group)と、プラスグレル1週間、その後クロピドグレル(75mg/日)1週間、さらにその後は血小板機能検査の結果に基づいてプラスグレルかクロピドグレルを選択する調節群(PFT-guided de-escalation group)に無作為に割り付け、12ヵ月間の心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中、BARC分類class 2以上の出血を主要評価項目として比較して、調節群の非劣性を検討している多施設試験である。 血小板機能検査としては、Multiplate analyser(ロシュ・ダイアグノスティックス社、スイス)によって、抗血小板効果不十分を意味するhigh on­treatment platelet reactivity(HPR)であるかどうかを判定し、HPRであればクロピドグレルからプラスグレルへ戻すとしている。実際、調節群の39%の症例でHPRを認め、その99%の症例でプラスグレルに戻されている。また、プラスグレルの投与量については、FDAの添付文書では体重60kg未満では5mgを考慮することと記載されている。 結果は、群間にイベントの有意な差はなく、非劣性が証明されている。著者らは、統計的な差はないものの、調節群でイベントがやや少なく見えることも考慮して、血小板機能検査に基づいて抗血小板療法を減弱させることは、通常のDAPTに対して代替的治療手段となりうると結論している。 確かに、理論的には、血小板機能検査に基づいて抗血小板療法を調節することがイベントを減少させる可能性はあると思われるが、これまでの各種試験では、その有用性は証明されておらず、本試験でもその有用性は示されなかった。労力をかけて調節しても、決まった量を投与しても、アウトカムに影響しないのであれば、調節する意味はないという結論になる。 本試験で抗血小板療法を調節することの優位性が示されなかった1つの理由として、クロピドグレルへ変更(減弱)したままの症例が調節群の60%程度しかなかったことが挙げられているが、抗血小板効果が強過ぎるものも弱過ぎるものも、血小板機能検査に基づいて適切に調節するようなプロトコールであれば優位性が示されたのかもしれない。また、クロピドグレルの効果が常にプラスグレルよりも弱いわけでもなく、各薬剤の投与量が抗血小板効果に影響することは言うまでもない。各群で抗血小板効果が、実際どの程度に調節されていたかの比較も必要であろう。そもそも日本ではプラスグレルの標準投与量が日本人向けに設定されているため、本試験のデザインも結果も日本人には当てはまらない。「血小板機能検査に基づいて抗血小板療法を調節すること」の有用性を証明して、各個人に最適な治療を届けるという夢は、まだ夢のままである。

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PCI後ACSの抗血小板薬、de-escalationしても非劣性/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた急性冠症候群(ACS)患者において、抗血小板治療を血小板機能検査(PFT)のガイド下でプラスグレル(商品名:エフィエント)からクロピドグレルへと早期に変更(de-escalation)しても、1年時点のネット臨床的ベネフィットは、プラスグレルを継続する標準治療に対して非劣性であることが示された。ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのDirk Sibbing氏らが、欧州の33施設で行った無作為化非盲検試験「TROPICAL-ACS試験」の結果、報告した。現行のガイドラインでは、PCIを受けたACS患者に対しては12ヵ月間、プラスグレルまたはチカグレロル(商品名:ブリリンタ)による抗血小板療法が推奨されている。これらの抗血小板薬はクロピドグレルよりも作用が強力で、速やかに最大の抗虚血ベネフィットをもたらすが、長期にわたる治療で出血イベントを過剰に引き起こすことが指摘されていた。Lancet誌オンライン版2017年8月25日号掲載の報告。プラスグレルからクロピドグレルに切り替える戦略の安全性と有効性を検証 研究グループは、急性期には強力な抗血小板薬を投与し、維持期にはクロピドグレルに変更するという段階的治療戦略が、現行の標準治療に替わりうるかを明らかにするため、PFTガイド下でプラスグレルからクロピドグレルに変更する抗血小板療法の安全性と有効性を検証した。 TROPICAL-ACS試験は研究者主導、評価者盲検化にて、ACSのバイオマーカーが陽性でPCIに成功し、12ヵ月間の2剤併用抗血小板療法(DAPT)が予定されていた患者を登録して行われた。登録患者は、プラスグレル投与を12ヵ月間受ける標準治療群(対照群)、またはステップダウンレジメン群(退院後、第1週はプラスグレル[10mgまたは5mg/日]を投与、第2週はクロピドグレル[75mg/日]を投与し、14日目からはPFTに基づきクロピドグレルかプラスグレルの投与による維持期治療を行う:ガイド下de-escalation群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、無作為化後1年時点のネット臨床的ベネフィット(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、BARC出血基準Grade2以上の出血の複合)で、intention to treat解析で評価した。非劣性マージンは30%であった。プラスグレルからクロピドグレルへの早期変更で複合リスク増大は認められなかった 2013年12月2日~2016年5月20日に、患者2,610例が無作為化を受けた(ガイド下de-escalation群1,304例、対照群1,306例)。 主要エンドポイントの発生は、ガイド下de-escalation群95例(7%)、対照群118例(9%)であった(ハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.62~1.06、非劣性のp=0.0004、優越性のp=0.12)。 早期にプラスグレルから作用が弱い抗血小板薬クロピドグレルに切り替えたにもかかわらず、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合リスクについて、ガイド下de-escalation群での増大は認められなかった(32例[3%] vs.対照群42例[3%]、非劣性のp=0.0115)。BARC出血基準Grade2以上の出血イベントは、ガイド下de-escalation群64例(5%)、対照群79例(6%)であった(HR:0.82、95%CI:0.59~1.13、p=0.23)。 結果を踏まえて著者は、「試験の結果は、PCIを受けたACS患者において、抗血小板治療の早期de-escalationが代替アプローチになりうることを示すものであった」とまとめている。

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急性期脳梗塞患者の血流再開、吸引型 vs.ステント型(ASTER Trial)(中川原譲二氏)-725

 急性期脳梗塞患者に対する吸引型デバイスによる血流再開(contact aspirationまたはa direct aspiration first pass technique[ADAPT])と、ステントリトリーバーによる血流再開の優劣は、両者の無作為化比較試験の欠如からいまだに不明である。そこで、主幹動脈閉塞を有する急性期脳梗塞患者において、良好な再開通のための第1選択となる血管内治療法として、吸引型デバイスまたはステントリトリーバーを用いた場合の有効性と有害事象を比較する目的で、ASTER試験(The Contact Aspiration vs Stent Retriever for Successful Revascularization study)が行われた。吸引型デバイスとステントリトリーバーの有効性と安全性を比較 ASTER試験は、2015年10月~2016年10月に、フランスの総合脳卒中センター8施設で実施された無作為化非盲検臨床試験(評価者盲検)である。前方循環系の主幹動脈閉塞を有する発症後6時間以内の急性期脳梗塞患者を対象として、機械的血栓除去を行う直前に第1選択としての吸引型デバイス使用群(192例)と第1選択としてのステントリトリーバー使用群(189例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、すべての血管内治療が終了した時点で修正Thrombolysis in Cerebral Infarction(TICI)スコアが2bまたは3の良好な再開通が得られた患者の割合(再開通率)とし、副次評価項目は、90日後の修正Rankin Scale(mRS)スコアの全体的な分布で評価される自立障害の程度、24時間後のNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコアの変化、90日後の全死因死亡率、および治療手技に関連した重篤な有害事象などで、intention-to-treat解析が実施された。再開通率、臨床的有効性および有害事象は、両群で有意差なし 381例(平均年齢69.9歳、女性174例[45.7%])が割り付けられ、このうち363例(95.3%)が試験を完遂した。発症から動脈穿刺までの時間(中央値)は、227分(四分位範囲:180~280)であった。主要評価項目である再開通率は、吸引型デバイス群85.4%(164例)に対し、ステントリトリーバー群は83.1%(157例)であった(オッズ比:1.20、95%信頼区間[CI]:0.68~2.10、p=0.53、群間差:2.4%、95%CI:-5.4~9.7)。また、臨床的な有効性アウトカム(24時間後のNIHSSスコアの変化、90日後のmRSスコア)や有害事象は、両群間で有意差を認めなかった。 以上より、血栓回収療法が行われる前方循環の急性期脳梗塞において、第1選択された吸引型デバイスを用いた血栓回収療法は、ステントリトリーバーに比較して、手技の最終段階において良好な再開通率の増加を示さなかった。次世代のデバイス開発と血流再開を24時間提供できる総合脳卒中センターの整備が必要 急性期脳梗塞患者に対する血管内治療による血流再開の有効性のエビデンスは、2015年に、主としてステントリトリーバーを用いた血栓回収と血流再開によって確立された。その後、吸引型デバイスによる血栓回収が、迅速簡便な再開通率の高い手技として注目され、吸引型デバイスとステントリトリーバーによる血流再開の優劣が議論されてきた。本研究によって、両者の再開通率や臨床的有効性に差のないことが判明したが、本治療法では有効再開通率をさらに高める余地があることから、各々について次世代のデバイスの開発が必要である。 一方、わが国においては、2005年のtPA静注療法の一般臨床への導入以来、地域を単位とする急性期脳卒中診療の整備には誰もが賛成しながら、これを推進するための立法措置の遅れや地域医療構想での議論の遅れもあって、各地域での急性期脳卒中診療体制は未整備のまま推移している。急性期脳梗塞患者に対する血管内治療による血流再開を24時間提供できる本格的な総合脳卒中センターは、皆無に等しい。社会の超高齢化に伴う急性期脳梗塞患者の増加に対して、tPA静注療法および本治療法の実施率の向上はきわめて重要な課題であり、各地域において総合脳卒中センターの早急な整備が必要である。

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急性期脳梗塞の血栓回収療法、吸引型 vs.ステント型/JAMA

 前方循環脳梗塞患者における吸引型デバイスを用いた血栓回収は、ステントリトリーバーを用いた場合に比べて、再開通率の向上をもたらさなかったことが、ASTER試験(The Contact Aspiration vs Stent Retriever for Successful Revascularization study)の結果、明らかとなった。フランス・ベルサイユ大学のBertrand Lapergue氏らが報告した。これまで、急性期脳梗塞患者において、吸引型デバイスによる血栓回収(a direct aspiration first pass technique[ADAPT]またはcontact aspiration)とステントリトリーバーによる血栓回収の有用性を比較した無作為化試験からは、十分なエビデンスを得られていなかった。JAMA誌オンライン版2017年8月1日号掲載の報告。吸引型およびステント型血栓回収デバイスの有効性と安全性を比較 ASTER試験は、2015年10月~2016年10月に、フランスの総合脳卒中センター8施設で実施された無作為化非盲検臨床試験(評価者盲検)である。前方循環系の主幹動脈閉塞を有する発症後6時間以内の急性期脳梗塞患者を対象に、機械的血栓除去術の施行前に第1選択として、吸引型デバイス使用群(192例)とステントリトリーバー使用群(189例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、すべての血管内治療が終了した時点で修正Thrombolysis in Cerebral Infarction(TICI)スコアが2bまたは3の良好な再開通が得られた患者の割合(再開通率)とし、副次評価項目は、90日後の修正Rankin Scale(mRS)スコアの全体的な分布で評価される障害の程度、24時間後のNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコアの変化、90日後の全死因死亡率、および治療関連の重篤な有害事象などで、intention-to-treat解析が実施された。再開通率、臨床的有効性および有害事象に両群で有意差なし 381例(平均年齢69.9歳、女性174例[45.7%])が割り付けられ、このうち363例(95.3%)が試験を完遂した。発症から動脈穿刺までの時間(中央値)は、227分(四分位範囲:180~280)であった。 主要評価項目である再開通率は、吸引型デバイス群85.4%(164例)に対し、ステントリトリーバー群は83.1%(157例)であった(オッズ比:1.20、95%信頼区間[CI]:0.68~2.10、p=0.53、群間差:2.4%、95%CI:-5.4~9.7)。また、臨床的有効性アウトカム(24時間後のNIHSSスコアの変化、90日後のmRSスコア)や有害事象は、両群間で有意差を認めなかった。〔8月25日 記事の一部を修正いたしました。〕

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薬剤溶出ステント留置後のDAPT、6ヵ月 vs. 24ヵ月

 2015年に発表されたITALIC(Is There a Life for DES After Discontinuation of Clopidogrel)試験では、第2世代薬剤溶出ステントを用いた冠動脈形成術後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)で、6ヵ月のDAPTを24ヵ月のDAPTと比較し、1年目の時点で出血と血栓症の発生率が同等であることが示された。ITALIC試験の最終結果となる今回は、6ヵ月DAPTの24ヵ月に対する非劣性を検証することを目的に、24ヵ月DAPTのフォローアップ結果がフランス・ブレスト大学のGilard氏らより報告された。Journal of the American College of Cardiology誌2017年6月26日号に掲載。主要評価項目は、死亡、心筋梗塞、標的病変の緊急再灌流療法、脳梗塞、重篤な出血の複合 本研究は多施設無作為化比較試験で、第2世代薬剤溶出ステントの植込みを受けたアスピリン抵抗性を示さない患者を、70施設から2,031例をスクリーニングし、6ヵ月(926例)もしくは24ヵ月(924例)のDAPTに割り付けた。主要評価項目は、12ヵ月の時点における死亡、心筋梗塞、標的病変の緊急再灌流療法、脳梗塞、重篤な出血の複合であった。副次評価項目は、24ヵ月の時点における同一の複合評価項目と各項目の結果であった。24ヵ月のフォローアップでも6ヵ月DAPTは24ヵ月DAPTに対し非劣性 6ヵ月と12ヵ月のDAPTを比べたところ、6ヵ月DAPTは24ヵ月DAPTに対し非劣性で、絶対リスク差は0.11%(95%信頼区間[CI]:−1.04%~1.26%、p=0.0002)であった。 24ヵ月の時点で、複合評価項目に変化はなく、6ヵ月群で3.5%、24ヵ月群で3.7%(p=0.79)、心筋梗塞(1.3% vs.1.0%、p=0.51)、脳卒中(0.6% vs.0.8%、p=0.77)、標的血管の緊急再灌流 (1.0% vs.0.3%、p=0.09)は、いずれも同等の結果であった。死亡率については、24ヵ月群で高い傾向にあった(2.2% vs.1.2%、p=0.11)。重篤な出血の発生は、24ヵ月群の4例に対して、6ヵ月群では1例も発生しなかった。ITALIC試験の24ヵ月時点における結果は、12ヵ月時点の結果を確認し、第2世代の薬剤溶出ステント留置後6ヵ月のDAPTが24ヵ月のDAPTと同様の成績を示すことが示された。■関連記事循環器内科 米国臨床留学記

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知ってますか?「derivation」と「validation」の意義と違い(解説:中川 義久 氏)-661

 PCI術後には、ステント血栓症などの血栓性イベント予防のために抗血小板薬としてアスピリンとチエノピリジン系薬剤に代表される、ADP受容体P2Y12阻害薬の併用投与(Dual Anti-platelet Therapy:DAPT)が主流となっている。DAPTを継続することは出血性合併症を増す危険性がある。血栓性イベントリスクと出血リスクの両者のトレードオフで比較すべき問題である。DAPTを継続すべき期間については明確な指針はないが、全患者に画一的な期間を設定するよりも、リスク評価に基づいて患者層別化することにより個々の患者に至適DAPT期間を設定することが医療の質を高める。このような個別化医療は時代の潮流であり、患者層別化のための方法論も進化している。 今回、スイス・ベルン大学のFrancesco Costa氏らは、新しい出血リスクスコアである「PRECISE-DAPTスコア」をLancet誌2017年3月11日号に発表した。これは、「年齢・クレアチニンクリアランス・ヘモグロビン値・白血球数・特発性出血の既往」という入手が簡易な5項目を用いて算出するものである。論文のタイトルは長いが紹介しよう。「Derivation and validation of the predicting bleeding complications in patients undergoing stent implantation and subsequent dual antiplatelet therapy(PRECISE-DAPT)score:a pooled analysis of individual-patient datasets from clinical trials.」である。このタイトルの文頭の「derivation and validation」という用語について考察してみたい。 症状・徴候・診断的検査を組み合わせて点数化して、その結果から対象となるイベントを発症する可能性に応じて患者を層別化することをclinical prediction rule(CPR)という。この作業は2つに大別される。モデル作成段階(derivation)と、モデル検証段階(validation)である。(1)モデル作成段階とは、データを元にCPRモデルを作成する段階である。このモデル作成のためにデータを使用した患者群をderivation sample(誘導群)という。この群のデータから誘導されたモデルであるから、この患者群におけるモデルの内的妥当性が高いことは当然である。この段階では、このモデルを他の患者群に当てはめても正しいかどうかは明らかではない。(2)モデル検証段階とは、別のデータを用いてモデルの検証を行う段階である。このためにデータを用いる患者群をvalidation sample(確認群)という。CPRモデルを一般化して当てはめて良いかどうか、つまり外的妥当性を検証する作業である。PRECISE-DAPTスコアを提唱する本論文においては、多施設無作為化試験8件の患者合計1万4,963例をderivation sampleとし、PLATO試験(8,595例)およびBernPCI registry(6,172例)をvalidation sampleとしている。本論文は、患者層別化のためのスコアリングモデルの作成作業を教科書的に遂行している。CPRモデル提唱論文における、derivationとvalidationについて語るに相応しい題材でありコメントさせていただいた。

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ACS後のP2Y12阻害薬+低用量リバーロキサバンの安全性/Lancet

 急性冠症候群(ACS)患者に対する低用量経口抗凝固薬リバーロキサバンとP2Y12阻害薬との併用、すなわちデュアル・パスウェイ抗血栓療法は、従来のアスピリンとP2Y12阻害薬との併用(抗血小板薬2剤併用療法:DAPT)と比較し、臨床的に重大な出血リスクに差はないことが示された。米国・デューク大学医学部のE Magnus Ohman氏らが、P2Y12阻害薬との併用薬はアスピリンより低用量リバーロキサバンが安全かを検証したGEMINI-ACS-1試験の結果を報告した。ACS後のDAPTに第Xa因子阻害薬であるリバーロキサバンを追加すると、死亡と虚血イベントは減少するが、出血が増加する恐れがあることが示唆されている。しかし、アスピリンの代わりに低用量リバーロキサバンをP2Y12阻害薬と併用する抗血栓療法の安全性は、ACS患者でこれまで評価されていなかった。Lancet誌オンライン版2017年3月18日号掲載の報告。CABGに関連しない臨床的に重大な出血を評価 GEMINI-ACS-1試験は、多施設共同無作為化二重盲検比較第II相試験として、21ヵ国371施設で実施された。対象は、不安定狭心症、心電図上の虚血変化または血管造影で確認されたアテローム性責任病変のいずれかを伴う心臓バイオマーカー陽性の、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)またはST上昇型心筋梗塞(STEMI)の18歳以上の患者であった。 ACS発症による入院後10日以内に、置換ブロック法(ブロックサイズ4)を用いて、使用予定のP2Y12阻害薬で層別化し、アスピリン(100mg/日)群またはリバーロキサバン(2.5mg、2回/日)群に1対1の割合で無作為に割り付け、二重盲検下で180日以上治療を行った。P2Y12阻害薬(クロピドグレルまたはチカグレロル)の選択については、無作為化はせず、研究者の好みや各国の利用状況(試験期間中、日本では未承認)に基づいて選択された。 主要評価項目は、390日目までの冠動脈バイパス術(CABG)に関連しない臨床的に重大な出血(TIMI出血基準の大出血、小出血、治療を要する出血)で、intention-to-treat解析で評価した。低用量リバーロキサバン群とアスピリン群で同等 2015年4月22日~2016年10月14日に、ACS患者3,037例が無作為化された(アスピリン群1,518例、リバーロキサバン群1,519例)。1,704例(56%)はチカグレロル、1,333例(44%)はクロピドグレルが用いられた。 治療期間中央値は291日(IQR:239~354)であった。TIMI出血基準のCABGに関連しない臨床的に重大な出血は、全体で154例(5%)、リバーロキサバン群とアスピリン群の頻度は80/1,519例(5%) vs.74/1,518例(5%)で、同程度であった(HR:1.09、95%信頼区間[CI]:0.80~1.50、p=0.5840)。 著者は研究の限界として、患者は無作為化前に安定したDAPTを受ける必要があったりACS発症から無作為化までに約5日の遅れが生じたこと、対象患者の多くが白人であったことなどを挙げながら、「この新しい抗血栓療法の有効性と安全性を検証するため、さらに大規模で十分な検出力のある治験が必要である」とまとめている。

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PCI後のDAPT期間決定に有用な新規出血リスクスコア/Lancet

 スイス・ベルン大学のFrancesco Costa氏らは、簡易な5項目(年齢、クレアチニンクリアランス、ヘモグロビン、白血球数、特発性出血の既往)を用いる新しい出血リスクスコア「PRECISE-DAPTスコア」を開発し、検証の結果、このスコアが抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)中の院外での出血を予測する標準化ツールとなりうることを報告した。著者は、「包括的に臨床評価を行う状況において、このツールはDAPT期間を臨床的に決める支援をすることができるだろう」とまとめている。アスピリン+P2Y12阻害薬によるDAPTは、PCI後の虚血イベントを予防する一方で、出血リスクを高める。ガイドラインでは、治療期間を選択する前に出血リスクの高さを評価することを推奨しているが、そのための標準化ツールはこれまでなかった。Lancet誌2017年3月11日号掲載の報告。約1万5,000例のデータで新たな出血リスクスコアを開発し、検証 研究グループは、それぞれ独立したイベント評価が行われている多施設無作為化試験8件から、PCI後にDAPT(主にアスピリン+クロピドグレル、経口抗凝固薬の適応なし)を受けた患者合計1万4,963例の個人レベルのデータを用い、プール解析を行った。解析にはCox比例ハザードモデルを使用し、院外出血(TIMI出血基準の大出血/小出血)の予測因子を試験で層別化して特定し、数値的出血リスクスコアを開発した。 新しいスコアの予測性能は、予測因子を導き出した抽出コホートで評価し、PLATelet inhibition and patient Outcomes(PLATO)試験(8,595例)およびBernPCI registry(6,172例)におけるPCI施行患者群(検証コホート)で評価した。また、異なるDAPT期間に無作為化された患者(10,081例)において、新しいスコアの四分位数でベースラインの出血リスクを4つに分類し(高、中、低、最低リスク)、長期治療(12~24ヵ月)または短期治療(3~6ヵ月)の出血/虚血への影響を評価した。5項目から成るPRECISE-DAPTスコア、院外出血の予測性能あり 開発したPRECISE-DAPTスコア(年齢、クレアチニンクリアランス、ヘモグロビン、白血球数、特発性出血の既往)は、院外でのTIMI大/小出血に関する予測性能を示すC統計値が、抽出コホートで0.73(95%信頼区間[CI]:0.61~0.85)、検証コホートのPLATO試験で0.70(95%CI:0.65~0.74)、BernPCI registryで0.66(95%CI:0.61~0.71)であった。 長期DAPTは、高リスク患者(スコア≧25)では出血を有意に増加させたが、低リスク患者では増加させなかった(相互作用のp=0.007)。一方、虚血イベントの予防に関して有意な有用性が認められたのは、低リスク患者群のみであった。 著者は、今回のモデルにはフレイル(高齢者の虚弱)など新しい出血予測因子が欠けている可能性を挙げ、スコアの予測性能を改善するためさらなる研究が必要だと述べている。

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