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One dose fit all!の限界(解説:後藤信哉氏)-757

 いわゆるNOACs、DOACsの臨床開発に当たって、選択的抗トロンビン薬では有効性、安全性は薬剤の用量依存性と予測していた。開発試験の結果が出るまで、Xa阻害薬では出血合併症には用量依存性が少ないとの期待があった。急性冠症候群を対象とした第II相試験の結果を見て、抗Xa薬でも用量依存性に重篤な出血合併症が増加することを知って失望した。 それでも抗Xa薬は競争相手のワルファリンの自由度を縛ることによって、見かけ上安全な薬剤として開発、上梓された。論理の緻密な英語では「PT-INR 2~3を標的としたワルファリン治療より安全」と必ず述べるが、あいまいな日本語では「ワルファリン治療より安全」との誤解も広まった。目の前の自分の患者の予後を最重視する臨床医にはメーカー、メーカーの教育を受けた医師の「ワルファリン治療より安全」が、現場では「?」であることをすぐに実感する。 本論文は台湾の医療データベースの解析である。重篤な出血合併症の発症率は1%程度で第III相試験より著しく少ない。報告されていない出血もあると想定されるが、実臨床では添付文書に規定された用量よりも少量を使用していることが、出血イベントの実態が少ない原因と想定される。 「One dose fit all」と喧伝されたNOACsであるが、アミオダロン、フルコナゾールなどの併用性では出血合併症が多い。いわゆるNOACs、DOACsであっても薬剤との相互作用は重篤な出血イベントを倍増させるほどのインパクトがある。ワルファリンと異なり、個別最適化のためのバイオマーカーはない。INRの延長に相当する黄色信号なしに、いきなり出血の赤信号となるNOACs、DOACsを、実態を知りながら服用したいと思うヒトはきわめて少ないと私は思うが、いかがだろうか?

102.

脳卒中予防の重要性とアスピリンのインパクト!(解説:後藤信哉氏)-755

 冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患は全身の動脈硬化と血栓性が局所臓器にて症状を発現した疾病である。世界から外来通院中の安定した各種動脈硬化、血栓性疾患6万8千例を登録、観察したREACH registry研究では、冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患ともに年間の脳卒中の発症が最大の問題であることを示した。脳卒中の発症率が最も低い冠動脈疾患でも脳卒中発症率は年間1.6%であり、実臨床における新規に診断された心房細動症例の脳卒中発症率と同程度であった。価格の高い新薬を特許期間内に売り切ろうとするのか、年間3%程度に重篤な出血イベントを惹起することが第III相試験にて確認されている経口抗トロンビン薬、抗Xa薬がNOACs、DOACsなど非科学的なネーミングにより非弁膜症性心房細動に広く使用されているのは筆者の驚くところである。非弁膜症性であっても心房細動を合併すれば近未来の脳卒中リスクは増える。しかし、すでに脳卒中を発症した症例の再発率ほど発症リスクが高くなるわけではない。年間3%という重篤な出血合併症というコストに見合う効果を、非弁膜症性心房細動の脳卒中1次予防にて示した臨床研究は過去に施行されていない。同じく年間3%以上の重篤な出血性合併症を惹起する、INR 2~3を標的とした、現実の医療とは乖離した過去の「仮の標準治療」より出血が少ないといっても、年間3%以上の重篤な出血合併症は1次予防にて受け入れられる水準ではない。 心房細動になれば左房内の血流がうっ滞するように「思える」。血流がうっ滞すると左房内に血栓ができる「気」がする。このような「思い」「気」は、科学的に証明されていない。さらに、血流うっ滞部位の血栓には凝固系の寄与が大きい「雰囲気」がある。この「雰囲気」も科学的には証明されていない。むしろ、体内の血栓は血流条件にかかわらず血小板と凝固系の混合血栓であることが科学的事実である。 生体には連続性がある。加齢とともに心房細動の有病率が増加するのは事実であるが、心房細動の発症とともにヒトが激変するわけではない。心筋梗塞後の症例であってもCHADS2スコアが高ければ脳卒中リスクは高い。脳卒中の発症に対するCHADS2スコアと心房細動の寄与を比較して後者が大きいわけではない。さらに、心房細動の症例の脳卒中の多くが心原性脳塞栓であるわけでもない。高齢でCHADS2スコアの高い症例は心房細動の有無にかかわらず脳卒中予防が重要である。 COMPASS試験では冠動脈疾患、末梢血管疾患を対象に1)2.5mg×2/日の極微量のリバーロキサバンとアスピリンの併用、2)5mg×2/日の微量のリバーロキサバン、3)アスピリン単独の3群の比較を行った。2.5mg×2/日の極微量のリバーロキサバンは過去にアスピリン・クロピドグレルとの併用により急性冠症候群の心血管イベントとステント血栓症を低減させた用量である。アスピリンを抜いてクロピドグレル、チカグレロルと併用したときには抗血小板薬に比較した有効性を第II相試験において示せなかった。動脈系における極微量のリバーロキサバン開発試験を素直にみると、極微量のリバーロキサバンは心血管イベント発症予防に有効であるが、出血は増加させる。有効性はアスピリンとの併用時に明確になる。出血合併症は増加するが20mg×1/日に比較すれば少ない。今まで世界では20mg/日、日本では15mg/日を標準用量として心房細動の2次予防中心に販売攻勢をかけた開発企業には方向転換になるが、COMPASS試験はアスピリンとの併用における2.5mg×2/日にリバーロキサバンの有効性を再確認させるインパクトがあった。脳卒中予防効果も確認された。重篤な出血合併症は増加するが、20mg(15mg)×1/日よりは少ない。心血管病の2次予防でもあるため出血イベントリスクも受け入れやすい。出血リスクとの釣り合いが取れなかった非弁膜症性心房細動から、心血管病の再発予防の極微量投与に販売方針を転換してくれれば、わけのわからないうちに重篤な出血リスクに曝露される非弁膜症性心房細動の症例を減らせるかもしれない。重要なことは低リスクにおける脳卒中予防である。COMPASS試験ならば実臨床に投影できる可能性があると筆者は期待している。

103.

DOAC、静脈血栓塞栓症でワルファリンと同等の安全性/BMJ

 静脈血栓塞栓症を呈した患者に対する直接経口抗凝固薬(DOAC)の投与は、ワルファリン投与に比べ、治療開始90日以内の大出血リスクや全死因死亡リスクを増大しないことが示された。カナダ・カルガリー大学のMin Jun氏らが、6万人弱を対象に行った大規模コホート試験で明らかにしたもので、BMJ誌2017年10月17日号で発表した。これまでに、無作為化試験でDOACのワルファリンに対する非劣性は示されていたものの、臨床試験の被験者は高度に選択的であるため、実際の臨床現場におけるルーチン投与の状況を反映したものなのか疑問の余地があった。90日以内の大量出血、総死亡リスクを比較 研究グループは、2009年1月1日~2016年3月31日にかけて、カナダと米国の6州のヘルスケアデータを用いて傾向スコアでマッチングした、住民ベースの後ろ向きコホート試験を行った。試験対象期間中に静脈血栓塞栓症の新規診断を受け、診断後30日以内にDOACまたはワルファリンの処方を受けた5万9,525例のデータを分析し、DOACの安全性についてワルファリンと比較検討した。 アウトカムは、大出血による入院または救急部門受診と、治療開始後90日以内の全死因死亡率などだった。傾向スコアマッチング法と共用異質性モデルにより、DOACとワルファリンの補正後ハザード比を推定した。CKDの有無、年齢、性別で分けても安全性は同等 5万9,525例について、追跡期間平均値85.2日の間に、1,967例(3.3%)が大出血を呈し、死亡は1,029例(1.7%)だった。 大出血リスクは、DOAC服用群とワルファリン服用群で同程度だった(プールハザード比:0.92、95%信頼区間[CI]:0.82~1.03)。また、死亡リスクも、両群間の差は認められなかった(同:0.99、0.84~1.16)。 なお、試験を実施した医療施設間に不均一性はなく、示された結果について、患者の慢性腎臓病(CKD)の有無、年齢、性別などによる違いは認められなかった。

104.

血尿よ、お前もか!-抗血栓薬は慎重に(解説:桑島巖氏)-748

 最近、循環器領域の疾患では、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)や抗血小板薬を処方する傾向が顕著になっている。確かに脳卒中や心筋梗塞予防効果はあることはあるが、そのウラ側にある有害事象のことも考えてほしいというのが本研究のメッセージである。抗血栓薬処方の爆発的な増加には企業の激しい宣伝合戦も影響しているかもしれないが、ここで一歩立ち止まって考える必要がありそうだ。言うまでもないことではあるが、抗血栓薬は血栓を予防して梗塞性イベントを防ぐ一方で、大出血という重大な有害事象を発生することも、あらためて認識する必要がある。 すでに、JAMA誌(Gaist D, et al. JAMA. 2017;317:836-846.)では、抗血栓薬で明らかに硬膜下血腫リスクが増大しているというデータを示しているが、今回の本論文は血尿である。 カナダ・オンタリオ州における66歳以上の一般住民の追跡調査であるが、抗凝固薬や抗血小板薬などの抗血栓薬服用者の肉眼的血尿発現率は、123.95イベント/1,000人年であり、これは非服用者の80.17人年に比べて1.44倍高かったという。この調査での血尿は、入院と救急外来受診者に限定され、一般診療での血尿は含まれておらず、一般臨床での血尿を含めるとさらに多くなると思われる。 本研究はあくまでも一般住民での追跡調査成績であり、いくつかのlimitationはあるとしても、抗血栓薬の安易な処方傾向に一石を投じる報告である。 抗血栓薬服用者では、泌尿器科処置に伴う合併症や、入院、救急外来受診率などの頻度も、非服用者に比していずれも有意に高かった。これらは医療行為による医師の負担を増大させ、医療経済の点から言ってもマイナスの要因であろう。 抗血栓薬処方の裏では、消化管出血、血尿、硬膜下血腫などの副作用で、消化器科医師、泌尿器科医師、脳外科医師がその後始末に四苦八苦している事情も知っておくべきである。 近年では、脳卒中の急性期治療の進歩により、脳卒中死は著しく減少したが、消化管出血、硬膜下血腫などは死亡に直結する有害事象であることは、あらためて認識する必要がある。とくにDOACは効果のマーカーがないだけに、高齢者では慎重な処方が必要である。

105.

PFO閉鎖術で脳梗塞再発が大幅に低減/NEJM

 卵円孔開存(PFO)との関連が考えられる原因不明の脳梗塞を呈し、関連する心房中隔瘤または心房間の大きな短絡が認められる患者に対して、PFO閉鎖術と抗血小板療法を組み合わせた治療は、抗血小板療法単独に比べ脳梗塞の再発を大幅に低減したことが示された。フランス・サン・タンヌ病院のJean-Louis Mas氏らが、663例を対象に行った非盲検無作為化試験の結果で、NEJM誌2017年9月14日号で発表した。これまでの試験で、PFO閉鎖術の脳梗塞再発予防に対する結論は得られていない。研究グループは、原因不明の脳梗塞患者および心エコーの特色が脳梗塞リスクを示す患者を対象に、抗血小板療法との比較において、PFO閉鎖術または抗凝固療法がベネフィットをもたらすかを調べる検討を行った。PFO閉鎖術+抗血小板療法、抗血小板療法単独、経口抗凝固療法を比較 Mas氏らは、PFOとの関連が考えられる脳卒中を発症したばかりで、関連する心房中隔瘤または心房間の大きな短絡が認められる16〜60歳の患者を、無作為に1対1対1に分け、PFO閉鎖術+長期抗血小板療法、抗血小板療法単独、経口抗凝固療法をそれぞれ行った(無作為化グループ1)。 また、別の無作為化グループとして、抗凝固薬またはPFO閉鎖術のいずれかが禁忌の患者を無作為に分け、禁忌ではない方の治療を行う群と、抗血小板療法を行う群に割り付けた(無作為化グループ2、3)。 PFO閉鎖術+抗血小板療法と抗血小板療法単独の比較については、無作為化グループ1と2を、経口抗凝固療法と抗血小板療法の比較については無作為化グループ1と3を、それぞれ統合して分析した。 主要評価項目は、致死的・非致死的脳梗塞の発症だった。PFO閉鎖術+抗血小板療法で脳梗塞再発リスクは0.03倍に 被験者総数は663例で、平均追跡期間は5.3年(標準偏差:2.0)だった。 脳梗塞を発症したのは、抗血小板療法単独群(235例)では14例だったのに対し、PFO閉鎖術+抗血小板療法群(238例)では再発例はなかった(ハザード比:0.03、95%信頼区間:0~0.26、p<0.001)。 一方で、PFO閉鎖術+抗血小板療法では、手技に関連する合併症が14例で発生した(5.9%)。また、心房細動発症率は、抗血小板療法単独群で0.9%だったのに対し、PFO閉鎖術+抗血小板療法群では4.6%で有意に高率だった(p=0.02)。重篤有害事象の発現率については、PFO閉鎖術と抗血小板療法群と抗血小板療法単独群の両群で同等だった(p=0.56)。 なお、経口抗凝固療法と抗血小板療法の比較では、脳梗塞を発症したのは経口抗凝固療法群187例中3例、抗血小板療法群174例中7例で、統計的有意差については検出力不足のため分析しなかった。

106.

日本初、ワルファリンでの出血傾向を迅速に抑える保険適用製剤

 ワルファリン服用者の急性重篤出血時や、重大な出血が予想される手術・処置の際に、出血傾向を迅速に抑制する日本初の保険適用製剤として、乾燥濃縮人プロトロンビン複合体(商品名:ケイセントラ静注用)が9月19日に発売された。発売に先立ち、15日に開催されたCSLベーリング株式会社による記者発表において、矢坂 正弘氏(国立病院機構九州医療センター脳血管センター 部長)が、本剤の開発経緯や臨床成績、位置付けについて講演した。その内容をお届けする。ケイセントラは厚生労働省への早期開発要望により開発 ワルファリンは直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)より適応が広く、腎機能が低下している高齢者など幅広い患者に使用できる。しかし、ワルファリン投与中は頭蓋内出血を発症しやすく、大出血時には休薬などの処置に加え、ビタミンKの投与、新鮮凍結血漿の投与が行われる。これらの投与に関して矢坂氏は、ビタミンKは緊急止血には間に合わず、新鮮凍結血漿は800mL~1Lの投与が必要だが心不全を防ぐためにゆっくり投与せざるを得ず、また輸血による感染症のリスクもあったことを指摘した。 今回発売されたケイセントラは乾燥濃縮人プロトロンビン複合体であり、1996年にドイツで承認されて以降、欧州各国で承認され、2017年1月時点で米国を含む42の国と地域で承認されている。日本では、2011年に厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会」の開発要望募集で日本脳卒中学会が早期開発要望書を提出し、厚生労働省がCSLベーリング社に開発を要請、今年3月に「ビタミンK拮抗薬投与中の患者における、急性重篤出血時、又は重大な出血が予想される緊急を要する手術・処置の施行時の出血傾向の抑制」を効能・効果として承認された。30分以内の速やかなPT-INRの是正効果においてケイセントラの非劣性が確認された ケイセントラの臨床試験成績について、矢坂氏はまず、海外で実施された2つの第III相試験を紹介した。1つは、ビタミンK拮抗薬投与中に急性重篤出血を来した患者を対象に、全例にビタミンKを静脈内投与し、ケイセントラ投与もしくは血漿投与に無作為に割り付け、止血効果と速やかなPT-INRの是正効果を比較した無作為化非盲検非劣性多施設共同試験である。本試験で、投与終了後30分以内にPT-INRが1.3以下に低下した患者の割合は、ケイセントラ群が62.2%で血漿群の9.6%に対して非劣性が確認された。また、投与開始から24時間までの止血効果が有効であった患者の割合についても、ケイセントラ群が72.4%と血漿群の65.4%に対して非劣性が確認された。 もう1つは、ビタミンK拮抗薬投与中で緊急の外科手術または侵襲的処置を要する患者を対象とした無作為化非盲検非劣性多施設共同試験で、全例にビタミンKを投与し、ケイセントラ投与もしくは血漿投与に無作為に割り付けた。試験の結果、投与終了後30分以内にPT-INRが1.3以下に低下した患者の割合は、ケイセントラ群55.2%、血漿群9.9%、また投与開始から外科手術または侵襲的処置終了までの間に止血効果が有効であった患者の割合は、ケイセントラ群89.7%、血漿群75.3%と、どちらも血漿群に対しケイセントラの非劣性が確認された。 また、日本人を対象とした国内の第III相試験では、ビタミンK拮抗薬療法に起因する抗凝固状態で急性重篤出血を来した、あるいは外科手術または侵襲的処置を要する患者に対して、ビタミンKとケイセントラ投与により、PT-INR中央値はベースラインの3.13から、投与終了後30分で1.15に減少した。 最後に矢坂氏は、「ワルファリンは幅広い適応を持っているので今後も使われていく薬剤だが、注意すべきは出血性合併症」と述べ、ケイセントラの発売で「ワルファリン治療中の大出血時、緊急手術が必要な場合にワルファリン作用の緊急是正に使用できるようになり、非常に期待される」と締め括った。

107.

AF患者の経口抗凝固療法、教育的介入で増加/Lancet

 心房細動患者への経口抗凝固療法に関して、多角・多面的な教育介入により同療法を受ける患者の割合が有意に増加したことが、ルーマニア・キャロルダビラ医科大学のDragos Vinereanu氏らが5ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、中国、インド、ルーマニア)を対象に行った国際クラスター無作為化試験「IMPACT-AF試験」の結果、示された。心房細動患者は脳卒中を発症するリスクが高いが、経口抗凝固療法で予防は可能であり、現行ガイドラインでも推奨されている。しかし、適応患者への同療法が十分に行われていない状況が報告されており、とくに中所得国において過少で、任意抽出集団を対象に調べた投与患者の割合は、東ヨーロッパ・南米・インドでは40%未満、中国では11%にとどまるという。研究グループはこれらの国々における教育介入のインパクトを評価した。Lancet誌オンライン版2017年8月25日号掲載の報告。医療提供者と患者に啓発、Webやeメール、SNSを活用 IMPACT-AF試験では、心房細動を有し経口抗凝固療法が適応(CHA2DS2-VAScスコア2以上、またはリウマチ性心臓弁膜症)の18歳以上の患者を包含したクラスターを、質的改善の教育介入を受ける群(介入群)または通常治療群(対照群)に、無作為に1対1の割合で割り付けた。無作為化は、eClinicalOS電子データ収集システムを用いて中央コーディングセンターで行われた。 介入は、医療提供者および患者の両者に対して行われ、定期的なモニタリングとフィードバックを伴った。患者・家族に対しては小冊子やウェブベースのビデオ教材を用いた啓発を行い、医療提供者には定期的なeメール送付で系統的レビューや関連論文、ウェブカンファレンスやオンラインセミナー、コーディングセンターとの質疑応答ができる掲示板の案内などを行った。介入は経口抗凝固療法の導入と継続を奨励することに焦点が置かれていた。 主要アウトカムは、ベースラインから教育介入1年時点までの、経口抗凝固療法を受けた患者の割合の変化であった。1年間で介入群12%増に対し対照群3%増、オッズ比は3.28 2014年6月11日~2016年11月13日の間に、5ヵ国の48クラスター(ブラジル8、その他各国10クラスター)、患者計2,281例(アルゼンチン343例、ブラジル360例、中国586例、インド493例、ルーマニア499例)が登録された。追跡期間は中央値12.0ヵ月(IQR:11.8~12.2)。 介入群において、経口抗凝固療法を受けた患者の割合は、ベースライン時68%(804/1,184例)から1年時点80%(943/1,184例)へ増大した(変化:12%)。一方、対照群は64%(703/1,092例)から67%(732/1,092例)への増大であった(同3%)。両群の変化の絶対差は9.1%(95%信頼区間[CI]:3.8~14.4)であり、オッズ比(OR)は3.28(95%CI:1.67~6.44、補正後p=0.0002)であった。 抗凝固療法に関する主な副次アウトカムをみると、ベースラインと1年時点いずれにおいても同療法を受けていた患者の割合は介入群と対照群で有意差はなかったが(補正後OR:1.68、p=0.10)、介入群においてわずかだがビタミンK拮抗薬の使用率が低下した変化がみられた(87%から78%、対照群は78%で推移)。また、同療法をベースラインでは受けていなかったが1年時点では受けていた患者の割合は、介入群48%、対照群18%であった(補正後OR:4.60、95%CI:2.20~9.63、p<0.0001)。 副次臨床的アウトカムのうち、Kaplan-Meier法で推定した脳卒中の発生は、対照群と比べて介入群で減少したことが示された(HR:0.48、95%CI:0.23~0.99、log-rank検定p=0.0434)。同値は補正後Coxモデルの評価でも変わらなかったが、CI値の上下限値幅が大きかった(HR:0.49、95%CI:0.21~1.13、p=0.09)。なお、全死因死亡、複合アウトカム(脳卒中・全身性塞栓症・大出血)、大出血の発生は、両群で差はなかった。

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抗凝固薬の中和薬:マッチポンプと言われないためには…(解説:後藤 信哉 氏)-715

 手術などの侵襲的介入時におけるヘパリンの抗凝固効果はプロタミンにより中和可能であり、経口抗凝固薬は外来通院中の症例が使用しているので、ワルファリンの抗凝固効果は新鮮凍結血漿により即座に、ビタミンKの追加により緩除に中和できることを知っていても、中和薬の必要性を強く感じる場合は少なかった。止血と血栓は裏腹の関係にあるので、急性期の血栓、止血の両者を管理する必要のある症例の多くは入院症例であり、その多くは調節可能な経静脈的抗凝固療法を受けていた。 モニタリングせずに使用する経口抗トロンビン、抗Xa薬(いわゆるNOACs、DOACs)は、血栓イベントリスクの高い機械弁、僧帽弁狭窄症では使われていない。緊急手術が必要な状態になった場合、重篤な出血が薬剤により惹起されたとき、薬剤投与を中止して止血できるまで、どの程度の時間が必要であるかがわからない。プロトロンビンを濃縮した血液製剤などを使うと直感的に止血を実感できる。本研究ではトロンビンの酵素作用を直接阻害するダビガトランに中和抗体を作用させれば、即座に抗トロンビン効果は消失することを示した。臨床的な止血効果をおそらく医師は現場で実感したと想定するが、臨床試験にて有効性を数値で示すことはできなかった。 血液凝固カスケードは液相の反応が広く知られるが、現実の血液凝固の重要部分は活性化血小板膜上にて起こる。Xaは血小板上のプロトロンビナーゼ複合体の形成に未知の複雑なメカニズムで作用するので、Xaのおとりではプロトロンビン時間が正常化しても血栓イベントは増えるような結果であった。ダビガトランの抗体の作用は、Xa阻害薬の中和薬よりは作用が直線的である。それでも、「抗凝固薬を不必要に多用して、自然歴ではない出血イベントを多発させ、抗凝固薬の中和薬を多用する」のは、マッチポンプ的で患者にも社会にも不利益をもたらす。抗Xa薬の中和薬よりは直線的だがダビガトラン抗体に価値があるのかどうか、現時点では筆者にもわからない。 放置すれば近未来ほぼ確実に血栓イベントが起こる症例に、抗凝固薬を限局的に使用する世界が筆者には効率的に思える。

110.

金子英弘のSHD intervention State of the Art 第13回

実臨床におけるWATCHMAN1,000例超の結果が明らかに本連載でも取り上げてきたように、左心耳閉鎖デバイスであるWATCHMAN(Boston Scientific社)は非弁膜症性心房細動における心原性脳塞栓症予防として欧米で広く使用されています。今回は、WATCHMANの大規模レジストリーであるEWOLUTION試験の1年フォローの結果について取り上げたいと思います。1)連載の第2回「左心耳閉鎖デバイスWatchmanの真の実力を検証!!」でも紹介しましたが、EWOLUTION試験には、ヨーロッパ、ロシア、中東の13ヵ国47施設が参加し、WATCHMANの実臨床における効果と安全性について評価しています。2013年10月から2015年5月までに登録された1,025症例の平均年齢は73歳で平均CHA2DS2-VAScスコア4.5、平均HAS-BLEDスコア2.3、そして約3割の症例に脳卒中の既往を認めました。同時に約3割の症例に大出血の既往があり、73%の症例は抗凝固療法が不適切であるとの判断からWATCHMANの適応となっています。手技成功率は98.5%と高率で、デバイス留置における最も大きな合併症である心タンポナーデ・心嚢液貯留はわずか0.3%と極めてまれでした。約9割の症例でフォローアップの経食道心エコー検査が行われ、適切なシーリング(デバイス周囲に幅5mmを超えるリークを認めない)は99%で確認され、デバイス血栓症の発生率は3.7%でした。抗血栓薬のプロトコールについては各施設の判断に委ねられていますが、治療直後は、抗血小板剤2剤(DAPT)が60%、経口抗凝固薬は27%に処方され、6%の症例は一切の抗血栓薬が処方されていませんでした。フォロー中に抗血栓薬のプロトコールは切り替えられ、抗血小板剤単剤(SAPT)が55%と最多となり、経口抗凝固薬の処方率は8%まで減少していました。術後1年間の死亡率は9.8%であり、虚血性脳卒中は1.1%、大出血イベントは2.6%の症例に認められました。CHA2DS2-VAScスコアに基づいて予想される年間虚血性脳卒中の発生率は7.2%であり、実に84%のリスク減少が達成されています(図1)。またHAS-BLEDスコアに基づくワルファリン使用時の年間大出血イベント発生率は5.0%であることから、こちらも48%のリスク減少が得られています(図2)。図1:CHA2DS2-VAScスコアに基づいて予測される年間虚血性脳卒中の発生率とEWOLUTION試験における同値の比較画像を拡大する図2:HAS-BLEDスコアに基づくワルファリン使用時の年間大出血イベント発生率とEWOLUTION試験における同値の比較画像を拡大する虚血性脳卒中予防効果に関しては、当然のことながらWATCHMANの効果だけでなく、経過中に処方された抗血栓薬の効果も考えなければなりません。一方で抗血栓薬のプロトコールを切り替えた後は9割以上の症例で経口抗凝固療法が行われていないことから、さらに長期のフォローを行うことで、WATCHMAN留置による虚血性脳卒中予防効果がより明らかになるでしょうし、その結果によってWATCHMAN留置後の抗血栓薬の至適プロトコールも確立されるものと期待されます。また、HAS-BLEDスコアはワルファリンを使用した場合の出血リスクを予想するスコアですので、出血性合併症の少ない直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)との比較については今後、さらなる議論が必要となると思われます。このように左心耳閉鎖術のリーディングデバイスであるWATCHMANについては今後、まだまだ明らかにすべき点が数多く挙げられますが、そのような中でも今回の研究はWATCHMANの実臨床における成果を考えるうえで非常に意義のあるものです。WATCHMANについてはわが国における治験もすでに開始されており、近い将来の導入が期待されています。わが国への安全で有効な本治療の導入のためにも、引き続きWATCHMANの臨床成績に注目していきたいと思います。1)Boersma LV, et al. Heart Rhythm. 2017 May 31. [Epub ahead of print]

111.

日本人心房細動患者における左心耳血栓、有病率と薬剤比較:医科歯科大

 心房細動(AF)は、一般的な心臓不整脈であり、血栓塞栓性事象を含む心血管罹患率および死亡率の増加と関連している。東京医科歯科大学の川端 美穂子氏らは、抗凝固療法中に前処置経食道心エコー(TEE)を受けている日本人非弁膜症性心房細動(NVAF)患者における左心耳(LAA)血栓の有病率を評価し、ワルファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC)の有効性の比較を行った。Circulation journal誌オンライン版2017年2月7日号の報告。 抗凝固療法を3週間以上行ったのち、前処置TEEを受けたNVAF患者559例(男性:445例、年齢:62±11歳)をレトロスペクティブに検討した。 主な結果は以下のとおり。・非発作性のAFは、275例(49%)で認められた。・LAA血栓は、15例(2.7%)で認められた。・LAA血栓の有病率は、DOAC群(2.6%)とワルファリン群(2.8%)で同様であった(p=0.86)。・CHA2DS2-VAScスコア0、脳卒中歴のない発作性AF、一過性虚血発作では、LAA血栓を有する患者はいなかった。・単変量解析では、LAA血栓と関連していた項目は、非発作性AF、心構造疾患、抗血小板療法、左心房の大きさ、高BNP、LAA流量の減少、CHA2DS2-VAScスコアの高さであった。・多変量解析では、BNP173pg/mL以上のみがLAA血栓の独立した予測因子であった。 著者らは「経口抗凝固療法を継続しているにもかかわらず、LAA血栓は、日本人NVAF患者の2.7%に認められた。血栓の発生率は、DOAC群、ワルファリン群で同様であった」としている。

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リバーロキサバン、VTE再発リスクを有意に低下/NEJM

 6~12ヵ月間の抗凝固薬投与を完了した静脈血栓塞栓症(VTE)患者において、リバーロキサバンの治療用量(20mg)または予防用量(10mg)はいずれも、アスピリンと比較し、出血リスクを増加させることなく再発リスクを有意に低下させることが認められた。31ヵ国244施設で実施された無作為化二重盲検第III相試験「EINSTEIN CHOICE」の結果を、カナダ・マックマスター大学のJeffrey I Weitz氏らが報告した。抗凝固療法の長期継続はVTEの再発予防に有効であるが、出血リスクの増加が懸念されることから、6~12ヵ月以上の抗凝固療法には抵抗感も強い。長期治療時の出血リスクを減少するため、低用量の抗凝固薬あるいはアスピリンの使用が試みられているが、どれが効果的かはこれまで不明であった。NEJM誌オンライン版2017年3月18日号掲載の報告。リバーロキサバン2用量とアスピリンの有効性および安全性を比較 研究グループは、2014年3月~2016年3月に、ワルファリンまたは直接経口抗凝固薬(DOAC)による6~12ヵ月の治療を完了した18歳以上のVTE患者3,396例を、リバーロキサバン20mg、10mgまたはアスピリン100mgの各投与群(いずれも1日1回)に1対1対1の割合で無作為に割り付け、12ヵ月間投与した。 有効性の主要評価項目は、致死的または非致死的な症候性再発性VTE、安全性の主要評価項目は大出血(2g/dL以上のヘモグロビン低下、2単位以上の赤血球輸血または致死的)とした。解析にはCox比例ハザードモデルを使用し、診断(深部静脈血栓症/肺塞栓症)で層別化も行った。リバーロキサバンで症候性再発性VTEの相対リスクが約70%減少 3,365例がintention-to-treat解析に組み込まれた(治療期間中央値351日)。 致死的/非致死的症候性再発性VTEの発生は、リバーロキサバン20mg群が1,107例中17例(1.5%)、リバーロキサバン10mg群が1,127例中13例(1.2%)、一方、アスピリン群では1,131例中50例(4.4%)であった(リバーロキサバン20mg群 vs.アスピリン群のハザード比[HR]:0.34、95%信頼区間[CI]:0.20~0.59/リバーロキサバン10mg群 vs.アスピリン群のHR:0.26、95%CI:0.14~0.47、いずれもp<0.001)。 大出血の発生率は、リバーロキサバン20mg群0.5%、リバーロキサバン10mg群0.4%、アスピリン群0.3%、重大ではないが臨床的に問題となる出血はそれぞれ2.7%、2.0%および1.8%であった。有害事象の発生率は3群すべてにおいて同程度であった。 本研究では、治療用量での抗凝固薬長期投与を必要とする患者は除外されていた。また、試験期間が最大12ヵ月と短かった。著者は「より長期にわたる継続投与の有益性を検証するさらなる試験が必要である」とまとめている。

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硬膜下血腫例の約半数が抗血栓薬服用、高齢化社会では今後ますます増えることが予想される(解説:桑島 巖 氏)-652

 硬膜下血腫は、しばしば認知症と誤診されたり、見逃した場合には死に至ることもある重要疾患である。本研究は、その硬膜下血腫の実に47.3%が抗血栓薬を服用していたという衝撃的な成績を示し、高齢化がいっそう進み、今後さらに急増していくことを示唆している点で重要な論文である。 この研究は、2000年から2015年にデンマークでの国民登録研究からのケースコントロール試験による成果である。抗血栓薬の使用頻度は、2000年には一般住民1,000人当たり31人程度にすぎなかったが、5年後の2015年には76.9人に急増している。硬膜下血腫が、それと軌を一にして増加したかを明確に示している。とくに、75歳以上での硬膜下血腫の頻度は2000年では10万人当たり年間55.1人であったのが、2015年では99.7人とほぼ倍増している。また発症例では、ワルファリン使用率が非発症例に比べて3.69倍高く、ワルファリンと抗血栓薬との併用例はさらに高い。 本試験では、INRについての記載がなく、ワルファリンのコントロール状況との分析ができていないため、抗血栓薬併用例などで適切な用量設定ができていなかったことが一因として考えられる。しかし、2000~15年はまだ新規抗凝固薬(NOAC、DOAC)がそれほど普及していない時期にしてこの結果である。2015年以降、固定用量が処方される新規抗凝固薬が相次いで世の中に登場し、また冠動脈インターベンションの普及による2剤併用抗血小板療法(DAPT:dual antiplatelet therapy)の処方も増えている。さらに、人口の高齢化率も増えたことと相まって、今後、硬膜下血腫の頻度はいっそう増加の一途をたどることが予想される。 抗血栓薬と抗凝固薬併用症例では、抗凝固薬の用量を適正に調節することや血圧を厳格にコントロールすることが予防手段となろう。

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抗血栓薬で硬膜下血腫リスク増大/JAMA

 抗血栓薬服用が硬膜下血腫リスクを増大することが、デンマーク・オーデンセ大学病院のDavid Gaist氏らによる、硬膜下血腫患者約1万例とその適合対照40万例を対象としたケースコントロール試験で明らかになった。なかでも、ビタミンK拮抗薬(VKA)の服用により、硬膜下血腫発症リスクは約3.7倍と大幅な増加が認められたという。また、2000~15年にかけて抗血栓薬服用率が2倍以上に増加し、一般集団における硬膜下血腫罹患率も約1.7倍に増加したことも明らかにされた。JAMA誌2017年2月28日号掲載の報告。硬膜下血腫患者1万例と適合対照40万例を対象に試験 研究グループは、2000~15年に初発硬膜下血腫で入院し退院した20~89歳の患者1万10例(症例群)と、年齢、性別などを適合した40万380例(対照群)について、ケースコントロール試験を行い、抗血栓薬服用と硬膜下血腫発症との関連について検証した。 硬膜下血腫の発症と抗血栓薬の服用については、住民ベース地域データ(48万4,346例)とデンマーク全国データ(520万例)を基に特定した。条件付きロジスティック回帰分析を用いてオッズ比(OR)を求めた。併存疾患、教育や収入レベルの補正を行った。 関連を調べた抗血栓薬服用は、低用量アスピリン、クロピドグレル、VKA、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)と、複数の抗血栓薬の併用だった。VKAと低用量アスピリン併用、硬膜下血腫発症リスクは約4倍に 症例群の平均年齢は69.2歳、そのうち女性は34.6%で、抗血栓薬の服用率は47.3%だった。 硬膜下血腫のリスクは抗血栓薬の服用者で高いことが認められた。低用量アスピリン(服用者は症例群26.7% vs.対照群22.4%)に関する補正後ORは1.24(95%信頼区間[CI]:1.15~1.33)、クロピドグレル(5.0% vs.2.2%)は1.87(同:1.57~2.24)、DOAC(1.0% vs.0.6%)は1.73(同:1.31~2.28)、VKA(14.3% vs.4.9%)は3.69(同:3.38~4.03)だった。 VKAと他の抗血栓薬併用者の硬膜下血腫発症リスクが最も高く、VKA+低用量アスピリン併用(3.6% vs.1.1%)では、補正後ORは4.00(95%信頼区間:3.40~4.70)だった。クロピドグレルとの併用(0.3% vs.0.04%)では7.93(同:4.49~14.02)だった。 また、抗血栓薬の服用率は2000年の31.0/1,000人から、2015年は76.9/1,000人へと倍増していた(傾向p<0.001)。それに伴い硬膜下血腫罹患率も、2000年の10.9/10万人年から2015年は19.0/10万人年へと増大が認められた(傾向p<0.001)。なかでも増大幅が最も大きかったのは75歳超の高齢者で、2000年は55.1/10万人年であったが、2015年は99.7/10万人年だった(傾向p<0.001)。

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納豆は心血管系疾患の死亡リスクを減少?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第84回

納豆は心血管系疾患の死亡リスクを減少? FREEIMAGESより使用 うちの4歳の子供は納豆が結構好きで、ご飯にかけてモリモリ食べています。私も嫌いではないのですが、ご飯にかけてまで食べたいとは思いません。納豆に含まれる血栓溶解酵素であるナットウキナーゼは、世界で唯一の食品由来の血栓予防剤だ、と主張されている研究者もいますよね。今回紹介するのは、有名な高山スタディからの報告。 Nagata C, et al.Dietary soy and natto intake and cardiovascular disease mortality in Japanese adults: the Takayama study.Am J Clin Nutr. 2016 Dec 7. [Epub ahead of print]この研究は、大豆の摂取が心血管系疾患(CVD)のリスクを低下させるかどうか調べたものです。大豆製品として、日本古来の食材である納豆を選びました。研究の目的は、納豆、大豆タンパク、大豆イソフラボンの摂取が、日本の集団ベースコホート研究でCVDの死亡率減少と関連しているかどうかを調べることです。この高山スタディでは、1万3,355人の男性と1万5,724人の女性が選ばれました(いずれも35歳以上と規定)。1992年に登録した時点で、食物摂取に関するアンケートを実施しました。CVDによる死亡は、16年次を超えて発症がみられました。追跡期間中、1,678人の死亡がみられました。その内訳は、677人が脳卒中、308人が虚血性心疾患でした。最も納豆をたくさん食べた四分位の人は、最も低い四分位と比較して、CVDによる死亡リスクを減少させました(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.64~0.88、傾向のp=0.0004)。ただし、大豆タンパクや大豆イソフラボンのみを摂取しても、CVDに対する影響は観察されませんでした。脳卒中に対しては、納豆だけでなく大豆タンパクの摂取でも、有意に死亡リスクが減少しました(納豆のHR:0.68、95%CI:0.52~0.88、傾向のp=0.0004、大豆タンパクのHR:0.75、95%CI:0.57~0.99、傾向のp=0.03)。最も納豆を多く食べる四分位の群では、虚血性脳卒中の死亡リスクが有意に減少しました(HR:0.67、95%CI:0.47~0.95、傾向のp=0.03)。最近はいろいろな直接経口抗凝固薬(DOAC)を内服している患者さんが増えている一方、ワルファリンの内服患者さんが減りましたから、またそのうち納豆ブームでも来るのではないかと思っています。インデックスページへ戻る

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やはり高齢者では、抗血栓薬、糖尿病治療薬で薬物有害事象が多発(解説:桑島 巖 氏)-626

 米国において2013~14年の58ヵ所の救急診療部に搬送された症例のうち、薬剤の有害事象についてまとめた報告である。予想どおり、抗凝固薬、糖尿病治療薬による出血事故や低血糖症状などの有害事象が、とくに65歳以上で多いことが明らかにされた。 これらは、高齢化社会の実現による心房細動患者や糖尿病患者の増加を反映していると共に、それらの治療薬としての強力な抗血小板薬、抗凝固薬や糖尿病治療薬の不適切な使用法を意味している。最近では、冠動脈疾患ではクロピドグレルやアスピリンといった抗血小板薬が標準薬となっており、また心房細動では、ワルファリンやダビガトランなどの抗凝固薬は脳梗塞予防には必須の薬となっている。しかし、これらの抗血栓薬はいずれも高齢者に多い出血事故の原因となる「諸刃の剣」であることを、臨床医は肝に銘じなければならない。とくに最近のわが国では、新規抗凝固薬(DOAC)は企業宣伝効果もあり、その適応基準が低くなる傾向があるが、抗凝固機能をモニターすることなく処方することが、高齢者の診療において適切であるか否かをいま一度考えてみる必要はあろう。 また近年、SGLT2阻害薬などの新しい機序の糖尿病治療薬が実用化されているが、本論文はその普及前の調査であることから、今後、低血糖に由来する有害事象が増えることが予想される。 昨今の治療薬は、“毒にも薬にもなるクスリ”であることを臨床医は銘記する必要があろう。

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日本初のDOAC中和剤発売、迅速・完全・持続的な効果

 経口抗凝固薬ダビガトランに対する特異的中和剤であるイダルシズマブ(商品名:プリズバインド、日本ベーリンガーインゲルハイム)が、7ヵ月という短い審査期間で今年9月に承認され、11月18日に発売された。11月15日の発売記者説明会では、国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管・神経内科の矢坂正弘氏が、抗凝固薬による出血リスク、イダルシズマブの効果や意義について紹介し、「迅速・完全・持続的に効果を示すイダルシズマブは臨床現場で有用な薬剤になるだろう」と述べた。DOACでも大出血は起こりうる 心原性脳塞栓症予防のための抗凝固療法において、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)はワルファリンと比較し、「管理が容易」「脳梗塞予防効果は同等かそれ以上」「大出血は同等かそれ以下」「頭蓋内出血が大幅に低下」というメリットがあり、ガイドラインでも推奨されるようになった。しかしDOACでも大出血は起こりうる、と矢坂氏は強調する。大出血時の一般的な対応は、まず休薬し、外科的処置を含めた止血操作、点滴でのバイタルの安定、出血性脳卒中なら十分な降圧を行うことである。この処置に加えて、活性炭や第IX因子複合体(保険適応外)の投与などの工夫がなされてきたが、より急速な中和剤が望まれていた。このような現状の中、ダビガトランに特異的な中和剤イダルシズマブが承認された。 商品名のプリズバインド(PRIZBIND)は、PRazaxaとIdaruciZumabがBIND(結合)して効果を発揮することに由来しているという。効能・効果は次のとおり。 以下の状況におけるダビガトランの抗凝固作用の中和  ・生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時  ・重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時中和剤に求められる特性を達成 矢坂氏は、中和剤に求められる特性として、「迅速に」「完全に」「持続的に」効くという3つを挙げ、「イダルシズマブはこれを達成した中和剤と言える」と紹介した。 国内第I相試験によると、イダルシズマブ静注後1分以内に、希釈トロンビン時間(dTT)が正常値上限を下回り(すなわち、抗凝固作用を完全に中和)、それが24時間持続することが示され、第III相試験(RE-VERSE AD試験)においても同様に、迅速・完全・持続的な中和効果が認められている。 RE-VERSE AD試験における患者において、出血の種類は消化管出血・頭蓋内出血が大部分を占め、緊急手術・処置の理由は骨折が最も多かった。 また、同試験の中間集計では、243例中13例(5.3%)に脳梗塞や深部静脈血栓症などの血栓性イベントが発現したが、1例を除き血栓性イベント発現時点で抗凝固療法を再開していなかった。矢坂氏は、これは抗凝固療法を適切な時点で再開するようにというメッセージを示していると述べた。ダビガトランの場合は24時間後に再開が可能であり、他の抗凝固薬であれば24時間以内でも投与できる。中和剤は自動車のエアバッグのようなもの 矢坂氏は、中和剤の必要性について、「DOACはワルファリンに比べて頭蓋内出血は大幅に低下するがゼロになるわけではなく、また避けられない転倒や事故による出血も起こりうるので、リバースする中和剤は必要である」と指摘した。 中和剤はよく自動車のエアバッグに例えられるという。エアバッグがなくても運転できるし、ほとんどの人は事故に遭わないが、なかには衝突し、エアバッグがあったので助かったということも起こりうる。このエアバッグに相当する中和剤があるということは「抗凝固薬選択のオプションの1つになるだろう」と矢坂氏は述べ、講演を終えた。

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日本初のDOAC特異的中和剤イダルシズマブ、承認取得

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:青野吉晃)は、2016年9月28日、直接トロンビン阻害剤ダビガトラン(商品名:プラザキサ)の特異的中和剤であるイダルシズマブ(遺伝子組換え)(商品名:プリズバインド)の製造販売承認を取得したことを発表した。直接トロンビン阻害剤やXa因子阻害剤などの直接作用型経口抗凝固薬(DOAC:Direct oral anticoagulant)に対する特異的中和剤の製造販売承認取得は日本初である。なお、米国と欧州では昨年、承認を取得している。 イダルシズマブは、頻度は非常に低いものの、ダビガトラン服用中に生命を脅かす出血または止血困難な出血の発現時や、重大な出血が予想される緊急を要する手術または処置の施行時において、ダビガトランの抗凝固作用を迅速に中和する必要がある場合に使用される。イダルシズマブはヒト化抗体フラグメントで、ダビガトランに特異的に結合し、凝固カスケードを妨げることなく抗凝固作用を中和する。効能・効果以下の状況におけるダビガトランの抗凝固作用の中和・生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時・重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時用法・用量通常、成人にはイダルシズマブ(遺伝子組換え)として1回5g(1バイアル2.5g/50mLを2バイアル)を点滴静注又は急速静注する。ただし、点滴静注の場合は1バイアルにつき5〜10分かけて投与すること。日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社のプレスリリースはこちら

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BMJは権威ある“一流”雑誌?〜大規模試験の意義を考える〜(解説:西垣 和彦 氏)-553

BMJは? 『ありがとう、センテンス・スプリング…』。今年前半にはやった“ゲスの極み”と化した大衆雑誌に掲載された記事であるが、これが信じられないほど売れた。この記事からは、何ら自身の生産性を上げるものでも、何ら知識欲を満たすものでもなく、単に時間を浪費させるだけのものに過ぎないことは明白であるが、現実として、とにもかくにもこの雑誌の当該号は売れたのである。以後、ゴシップネタはエスカレートし、ついに他誌でも都知事を辞任まで追い込み、“sekoi”という英単語を創作するまでに至った。この偏狭な営利主義とも思えることが、残念なことではあるが医学雑誌にも持ち込まれているのが現実である。 ご存じのように、BMJ誌はイギリス医師会雑誌であり、British Medical Associationが監修し、BMJ Groupから発行されている。国際的にも権威が高く、いわゆる“一流”雑誌といわれ、世界五大医学雑誌の1つなどとも呼ばれている。BMJ誌の特徴として、根拠に基づく医療(EBM)を推進していることが挙げられるが、多分に論説は英国医師会の立場を堅持した“sekoi”ものであり、アンチ製薬会社の立場から新規薬剤に対する非情なまでの批判論説が多いといわざるを得ない。 そうかと思うと、年末特集号ではイギリス的な皮肉を込めたジョーク論文を何本か載せるのが恒例であり、小学生レベルの日常ネタや夫婦生活に関するどうでも良い“ゲス”なネタなど、まさに完全に“娯楽化した雑誌”といわざるを得ない号もある。 本論文は、心房細動患者に対するダビガトランとワルファリンの無作為ランダム化比較試験を用いて新たなリスクモデルを開発し、当該薬剤の重大リスクの発生を正確に補足できるかを評価したものであるが、この論文に賛同できた人がどれだけいるのかまったく疑わしく、“またBMJか…”といったため息しか聞こえてこない。その理由を、大規模試験の意義を含めて概説する。本論文のポイントは? ダビガトランのような直接的な経口抗凝固薬(DOAC)は、ワルファリンと比較して心房細動患者の死亡率を低下させ、ワルファリンと少なくとも遜色なく安全であることが、これまでの大規模試験で示されてきた。 本論文では、試験データによって予測されるリスクが、医療で実際に観察されるリスクと類似しているかどうかを比較検討するために、市販ヘルスケア請求データベースより、心房細動のためダビガトランまたはワルファリンを処方された2万1,934例の患者の血栓症と出血のベースライン・リスクを算出した。その結果、血栓塞栓症推定発症率は、予測モデルとRCTでほぼ同等であったが、大出血の推定発症率は大規模試験では過小評価されていた。HAS-BLEDスコア高値のワルファリン服用例ではとくに顕著であり、過小評価分は最大4.0/100人年にも達するものであったと結論している。大規模試験の意義と読み方 医師個人で経験できる症例数は限られている。したがって、治療薬や治療法を選択する際には、多くの症例が組み込まれた大規模試験から得られた結果を参考にする。つまり、大規模試験の結果あるいは解釈は、医師個人で行われたわずかな症例から得られたものより尊重されるべきである。これが、根拠に基づく医療(EBM)であり、この点で大規模試験には大きな意義があるが、大規模試験のピットフォールをよく理解していないと、この論文のように誤認することがある。 大規模試験のピットフォールで最も気をつけたいことは、対象は、数々の除外項目で除かれた対象群であるということである。除外項目は、年齢制限だけでなく、基礎疾患や合併症、他の治療の有無など細かく設定されており、これら多くの除外項目で除かれたほんのわずかな、非常に特殊な症例から得られた結果であるという認識が必要となる。 したがって、大規模試験に登録された症例は、実臨床での患者母集団とまったく異なる“特別な母集団”であり、適応条件を満たす最も軽症な患者で、除外項目に引っかからない最も純粋な症例群である。このことは暗黙の了解であるが、本論文が指摘している、“実際の出血と比較し、出血の頻度を過小評価している”との結論に関しては、14日以内の脳卒中または6ヵ月以内の重症脳卒中、出血リスク上昇、クレアチニンクリアランス<30mL/分、活動性肝疾患など出血性因子の高い患者を登録時から除外している以上、当然といえば当然の結論ではないだろうか。 ダビガトラン群、ワルファリン群ともに同じ除外条件で選抜された対象群であることから、実地臨床を行っている臨床医においては、大規模試験から得られた結果を評価したうえで、実臨床にどの程度反映できるものかを吟味することが当然求められる。結論として 最近のBMJ誌を読むたびに、何か商業主義に席巻された医学雑誌という残念な印象を拭い去ることはできず、誠に遺憾である。衝撃的な、扇動的な巻頭表紙の挿絵程度ならまだしも、その本文までもとなるならば、没落の一途は否めないであろう。権威ある“一流”雑誌への復活を願うばかりである。

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