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高齢腰痛患者の7割強が受診前から鎮痛薬を服用

 高齢の腰痛患者は一般開業医(GP)を受診することが多い。その際、鎮痛薬を処方される可能性が高いが、オランダ・エラスムス大学医療センターのWendy T M Enthoven氏らによる前向きコホート研究(BACE研究)の結果、GPを受診した高齢腰痛患者の7割強は、すでに受診前から鎮痛薬を使用していることが明らかになった。追跡期間中に鎮痛薬の使用は減少したが、3ヵ月後および6ヵ月後もまだかなりの患者が鎮痛薬を使用していたという。Pain Medicine誌オンライン版2014年8月4日号の掲載報告。 研究グループは、腰痛を主訴にGPを受診した55歳超の患者を対象に、ベースライン時、3ヵ月後および6ヵ月後の鎮痛薬の使用状況を評価した。 過去3ヵ月以内に腰痛のために薬剤を使用していた場合、薬剤名、使用量、使用頻度、および処方薬かOTCの別を質問した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象675例中、484例(72%)がベースライン時に鎮痛薬を使用していた。・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(57%)が、パラセタモール(以下、アセトアミノフェン)(49%)より高頻度であった。・アセトアミノフェンの多くがOTC(69%)、NSAIDsはほとんどが処方薬(85%であった。・ベースラインで重度の疼痛(数値的評価尺度で7ポイント以上)を有していた患者は、アセトアミノフェン、オピオイドおよび筋弛緩薬の使用が多かった。・慢性疼痛(3ヵ月超の腰痛)を有する患者は、アセトアミノフェンを使用することが多かったのに対して、疼痛の期間が短い患者はNSAIDsが多かった。・追跡期間中、薬剤の使用は全体的に減少したが、3ヵ月後および6ヵ月後もそれぞれ36%および30%の患者が依然として鎮痛薬を使用していた。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第9回

第9回:外来で出会う潜在性の消化管出血へのアプローチをどのように行うか? 外来診療の中で、採血を行った際に鉄欠乏性貧血を偶然発見する、大腸がんのスクリーニング検査で便潜血検査を行うと陽性であった、といったことはしばしば経験することだと思います。しかし、出血源を正しく評価するためにどのようにアプローチしていくかは、検査の侵襲性の問題もあり、頭を悩ませることも時にはあるかと思います。原因の検索のために確立された評価法を確認することで、このよくある問題に対する診療の一助となれば幸いです。 以下、 American Family Physician 2013年3月15日号1)より潜在性消化管出血1.概要潜在性消化管出血とは、明らかな出血は認められないが便潜血検査が陽性である消化管出血、または便潜血検査の結果に限らず鉄欠乏性貧血を認めている消化管出血と定義される。消化管出血の段階的な評価は確立されており、上下部内視鏡で消化管出血が診断つく人は48~71%に上る。繰り返し上下部の内視鏡で精査されて、見逃されていた病変が見つかる人は、出血が再発する患者の中で35%程度いる。もし上下部内視鏡で診断がつかない場合はカプセル内視鏡を行うことで、病変の診断率は61~74%に及ぶ。便潜血検査が陽性でも、詳細な評価を行わずして、低用量アスピリンや抗凝固薬が原因であるとしてはならない。2.病因上部消化管から小腸にかけての出血が鉄欠乏性貧血の原因となることが多い。 上部消化管(頻度:29~56%)食道炎、食道裂孔ヘルニア、胃十二指腸潰瘍、血管拡張、胃がん、胃前庭部毛細血管拡張症 大腸病変(頻度:20~30%)大腸ポリープ、大腸がん、血管拡張症、腸炎 上下部消化管の同時性の出血(1~17%) 出血源不明(29~52%)年齢での出血の原因としての頻度は、 40歳以下小腸腫瘤(最も原因として多い)、Celiac病、クローン病 40歳以上血管拡張、NSAIDsが最もcommon まれな原因感染(鈎虫)、長距離走(⇒内臓の血流が増加し、相対的に腸管の虚血が起こると考えられている)3.病歴と身体診察消化管出血、手術の既往または病因の聴取が重要な診断の手掛かりとなる。体重減少は、悪性腫瘍を示唆し、アスピリンや他のNSAIDs使用者の腹痛は、潰瘍性の粘膜障害を示唆する。抗凝固剤や、抗血小板剤は出血を引き起こす可能性がある。消化管出血の家族歴では遺伝性出血性血管拡張(唇、舌、手掌に血管拡張)、青色ゴム母斑症候群(Blue rubber bleb nevus syndrome:BRBNS 皮膚・腸管・軟部組織の静脈奇形)を示唆するかもしれない。胃のバイパス術は鉄吸収不良を引き起こす。肝疾患の既往や肝の出血斑は門脈圧亢進性胃症・腸症を示唆している。その他の有用な身体所見として、ヘルペス状皮膚炎(celiac病)、結節紅斑(クローン病)、委縮した舌とスプーン上の爪(Plummer-Vinson症候群)、過伸展した関節と眼球と歯の奇形(Ehlers-Danlos症候群)、口唇の斑点(Peutz-Jeghers症候群)などが挙げられる。4.診断的検査診断法の選択・流れは臨床的に疑う疾患の種類と随伴症状によって決められる。上部消化管出血(Vater乳頭近位部までの出血)は上部消化管内視鏡により診断が可能である。小腸近位部の出血はダブルバルーン内視鏡で診断が行える。小腸の中~遠位部の出血はカプセル内視鏡、バルーン内視鏡とCT検査で診断が可能である。下部消化管 (大腸出血)は下部消化管内視鏡で診断を行う。術中に行う内視鏡検査は前述した方法でもなお出血源が特定できず、出血が再発している患者に対しての選択肢として考えられる。5.評価方法・便潜血検査陽性で鉄欠乏性貧血を認めない場合アメリカ消化器病学会では段階的な評価を提唱している。 ・便潜血検査が陽性有無に限らず、鉄欠乏性貧血を認める場合男性と閉経後女性では消化管より出血していると想定できる。閉経前女性であれば月経による出血の可能性も考慮する。しかしながら、この集団においてはがんも含む大腸、上部消化管の病変の報告もある。 すべての患者において腸管外の出血(鼻出血、血尿、産科的出血)の評価は行わなければならない。※本内容は、プライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Bull-Henry K, et al. Am Fam Physician. 2013; 87:430-436.

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疼痛解消に、NSAIDsと胃粘膜保護薬の配合剤登場が待たれる?

 胃粘膜保護薬は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)およびアスピリンの長期投与による合併症および死亡率を減少させることが知られているが、英国・オックスフォード大学のRobert Andrew Moore氏らによるレビューの結果、筋骨格系疾患では非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の効果が不十分な患者がいることや、胃粘膜保護薬が必ずしも併用されていないことが示唆された。著者は、NSAIDsと胃粘膜保護薬の配合剤が1つの解決策となる、とまとめている。Pain Practice誌2014年4月号(オンライン版2013年8月13日号)の掲載報告。 研究グループの目的は、NSAIDsおよびNSAIDs起因性消化管傷害に対する保護薬のベネフィットとリスクを評価することであった。 PubMed(2012年12月までの発表論文)およびGoogle Scholarを用い、NSAIDsの有効性、疼痛軽減のベネフィット、胃粘膜保護の治療戦略、胃粘膜保護薬のアドヒアランス、NSAIDsならびに胃粘膜保護薬の重篤な有害事象に関する論文を検索し、関連論文や引用論文も含めて解析した。 主な結果は以下のとおり。・患者が必要としていることは、疼痛強度を半分に軽減することと、疲労・苦痛・QOLの改善であった。・筋骨格系疾患に対するNSAIDsの鎮痛効果は、二峰性の分布を示した。・プロトンポンプ阻害薬(PPI)と高用量ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)の胃粘膜保護効果は類似しており、高用量H2RAよりPPIのほうが有効であるという決定的なエビデンスはなかった。・2005年以降に発表された研究において、NSAIDsと胃粘膜保護薬の併用に関する指針に対するアドヒアランスは、処方者が49%、患者はほぼ100%であった。・長期間にわたる高用量PPIの使用は、骨折などの重篤な有害事象のリスクの増加と関連していた。

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Dr.山中の攻める問診

「総論  "攻める”問診とは」「女性の腹痛 ~こんなこと聞いていいのかな?~」「胸腹部痛 ~的外れのコンサルト~」「めまい ~朝からめまい~」「一発診断 34歳女性 5日前から40℃の発熱」「一発診断 51歳男性 めまい」「一発診断 46歳女性 爪白癬が良くならない」 「診断の8割は問診でつく」と昔から言われます。しかし、日常の診療では患者さんの話を漠然と聞いていたり、検査・画像診断データに振り回されたりと、非効率な診療に疑問を感じていませんか?そんなときは、病歴・身体所見にキーワードを見い出し診断を絞り込む、“山中流 攻める問診術”です。最初の3分間で、患者さんの話から3つ程度に鑑別を絞り込み、そして確定診断を裏付けるための積極的な問診を展開!疾患のキーワードを覚えれば、Snap Diagnosis(一発診断)もできます。推理小説のごとく、診断が愉しくなること間違いなしの問診術を伝授します!「総論  "攻める”問診とは」“草食系救急内科医”山中克郎先生の新シリーズ。病歴・身体所見にキーワードをみいだし、確定を絞り込む問診術「攻める問診」の極意を披露。最初の3分で患者さんの話を聞き3つ程度の鑑別診断を想起。そして診断を裏付けるために積極的な問診を展開します。「女性の腹痛 ~こんなこと聞いていいのかな?~」【症例】21歳女性。9日前に右下腹部痛を発症。一旦軽快するも、5日前から下痢、嘔吐。3日前から右下腹部痛を再発。体温は39.7℃、性器出血あり、歩行時の振動が下腹部に響く。この患者さんを攻める問診で鑑別診断してみましょう。「胸腹部痛 ~的外れのコンサルト~」【症例】43歳女性。2週間前に咳・発熱・咽頭痛と息苦しさを感じるがすぐに快復。一昨日、右側腹部痛と右肩痛、胸膜刺激痛があり、救急外来でNSAIDsを処方される。今朝から痛みが増悪し、再度救急外来へ。この患者さんを鑑別診断してみましょう。「めまい ~朝からめまい~」【症例】79歳女性。朝、突然めまいを発症。最初はトイレまで歩けたが、直ぐに歩くことも困難になる。上胸部に違和感があり、左下肢腫脹がある。既往歴は10年前に子宮癌。2ヶ月前に心筋梗塞を発症。この患者さんを鑑別診断してみましょう。「一発診断 34歳女性 5日前から40℃の発熱」【症例】34歳女性。5日前から40℃の発熱。右手の親指に皮下出血、結膜に点状出血がある。実際の症例をもとに貴方の一発診断力を試し、診断ロジックを確認しましょう。「一発診断 51歳男性 めまい」【症例】51歳男性。めまいで救急外来を受診。手の指に特徴的な所見があります。病歴に小学生の時に心室中隔欠損の手術歴がある。病歴や身体所見から一発で診断をつけるSnap Diagnosis(一発診断)。今回も実際の症例をもとに貴方の一発診断力を試し、診断ロジックを確認しましょう。「一発診断 46歳女性 爪白癬が良くならない」【症例】46歳女性。近医で爪白癬を治療中も良くならない。手の爪にポツポツ白いものと、脚の指にも特徴的な所見がある。あなたはこの所見から疾患を特定できますか?

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NSAIDs誘発の蕁麻疹/血管性浮腫、慢性蕁麻疹には進展せず

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)によって誘発された蕁麻疹/血管性浮腫(NIUA)が、慢性蕁麻疹(CU)発症に先行するものとは認められなかったことが、スペイン・カルロス・アヤ病院のI. Dona氏らによる12年間の追跡調査の結果、報告された。NSAIDsは、薬物アレルギー反応と関連する頻度が最も高い薬物で、なかでもNSAIDs誘発であるNIUAの頻度が最も高い。一部の患者では、NIUAが時間の経過とともにCUに至ることが示唆され、NIUAはCUに先行する疾患である可能性が指摘されていた。Allergy誌オンライン版2013年12月23日号の掲載報告。 研究グループは、長期にわたって大規模なNIUA患者群と対照群を追跡し、これまで示唆されていたような関連があるかを確認することを目的とした。 検討では次の3群を比較した。(1)NIUA既往確認患者群(エピソード2回以上:2種以上のNSAIDsで発症もしくは薬物誘発試験陽性)、(2)強作用のCOX-1阻害薬への耐性良好および/あるいは特異的IgE抗体の支持についてin vivoのエビデンスがある1種のNSAIDsでNIUAエピソードが2回以上(単一NSAIDs誘発NIUA:SNIUA)、(3)NSAIDsに耐性がある対照群であった。 主な結果は以下のとおり。・3群の全ケースについて12年間追跡した。・NIUA患者群は190例(女性64.6%、平均年齢43.71±15.82歳)、SNIUA患者群は110例、対照群は152例であった。・12年時点の評価で、NIUA群で1~8年の間にCUを発症したのは、12例(6.15%)であった。・SNIUA群、対照群でもCU発症者の割合は、同程度であった。・中期間において、NSAIDs誘発であるNIUAは、CU発症に先行するものではないようであった。・今回の観察結果を検証するために、さらなる長期間の追跡を含む検討が必要である。

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中等度~重度の慢性腰痛にトラマドール・アセトアミノフェン配合剤が有用

 トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤徐放性製剤(TA-ER、商品名:トラムセット配合錠)は、2つの有効成分の相乗作用により迅速かつ長期にわたる鎮痛効果を発揮することが示されている。韓国・ソウル大学ボラメ病院のJae Hyup Lee氏らは、第3相二重盲検プラセボ対照並行群間試験により、同製剤が中等度~重度の慢性腰痛の鎮痛と、機能およびQOLの改善においてプラセボより優れており、忍容性も良好であることを明らかにした。Clinical Therapeutics誌オンライン版2013年11月1日号の掲載報告。 本研究の目的は、慢性腰痛に対するトラマドール塩酸塩75mg/アセトアミノフェン650mg配合剤徐放性製剤(TA-ER)の有効性および安全性を評価することであった。 対象は、従来の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)またはシクロオキシゲナーゼ-2選択的阻害薬で十分なコントロールが得られなかった、中等度~重度慢性腰痛(10cmの視覚的アナログスケールで4cm以上、3ヵ月以上持続)患者245例で、TE-ER群またはプラセボ群に無作為化しそれぞれ4週間投与した。 有効性の主要評価項目は、ベースラインから最終評価時までの疼痛強度の変化率が30%以上の患者の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・疼痛強度の変化率が30%以上の患者の割合は、最大解析対象集団および治験実施計画書に適合した対象集団のいずれの解析においても、TA-ER群がプラセボ群より有意に高かった(p<0.05)。 ・鎮痛成功率は、8日目と15日目においてTA-ER群がプラセボ群より有意に高かった。 ・TA-ER群ではプラセボ群と比較して、韓国版SF-36の身体の日常役割機能、全般的健康および健康状態の変化、韓国版オスウェストリー障害指数の身の回りのことに関する項目で有意な改善を認めた。・疼痛コントロールの患者評価において、「とても良い」と回答した患者の割合は、プラセボ群よりTA-ER群で有意に多かった。・有害事象は、プラセボ群よりTA-ER群で高頻度にみられた。最も多い有害事象は吐き気、めまい、便秘および嘔吐であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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患者の声を聴き、適切な治療選択を ~動き続けるための、膝の痛みの解消法の実際~

2013年9月24日(火)、ヤンセンファーマ株式会社主催の疼痛メディアセミナーが開催された。このセミナーで石島 旨章氏は、変形性膝関節症について講演。変形性膝関節症のわが国での実態や、解明されつつある病態、治療法について述べた。変形性膝関節症の痛みの要因膝関節の軟骨が摩耗し、関節に炎症や変形が生じる変形性膝関節症は、わが国では患者が約2,500万人、そのうち痛みを伴う患者は約800万人と推定されている。膝の痛みにより活動が制限され、移動能力が低下しロコモティブシンドロームにつながり、ひいては生命予後にも影響しかねない疾患である。変形性膝関節症の痛みは侵害受容性疼痛であるが、疼痛をもたらす要因として「炎症反応」と、軟骨の減少とともに関節が変形し、荷重を支える部位が狭くなり痛みを誘発する「生体力学的異常」がある。これに対し、診断に一般的に用いられる単純レントゲン検査は軟骨の厚みを間接的にみているにすぎず、症状と病態の連関が不十分で、レントゲンで診断できる段階では、軟骨だけでなく軟骨下骨や半月板などの組織にも障害が及んでいる。今後、患者の治療満足度の向上を図るためには、病態の解明を進め診断能力と進行予知能力を向上していく必要がある。進む病態研究現在は、とくに初期の変形性膝関節症をみていくために、バイオマーカーおよびMRIを用いて関節内の代謝異常と構造変化を詳細に評価し、疼痛との関連を評価する試みが進められている。この中で、近年の研究の進展とともに、疼痛に対する炎症の寄与はかなり初期の段階に限られており、変形性膝関節症が進行した状態では炎症の寄与は決して増加しないこと、また、初期の段階でも今まで認識できなかった構造異常に伴う生体力学的異常が起きていることが少しずつ解明されてきている。治療は非薬物療法と薬物療法変形性膝関節症の治療としては、現在は疾患修飾型治療が存在せず、既存の保存療法の選択肢の拡充とエビデンスを確立していくことが現在の課題である。保存療法では、運動療法を中心とした非薬物療法と薬物療法の併用がガイドライン*で推奨されており、薬物療法ではNSAIDsが推奨度Aとされ、広く用いられている。しかし、NSAIDsでは疼痛を改善できない患者も多数存在している。このようなNSAIDsが効かない疼痛に対し、海外ではオピオイドが有効であるとのエビデンスが、システマティクレビューにより報告されつつある(わが国ではオピオイドは本疾患への臨床経験がなく、ガイドラインに未掲載)。これについて前述の形態学的な話でいえば、構造変化に伴う生体力学的異常が進行している状態では、NSAIDsでの疼痛治療は困難と考えられ、このような場合にオピオイドの使用を考慮する余地がある。骨粗鬆症では治療により骨折を予防できる可能性が出てきた。変形性膝関節症ではその段階まで達していないが、病態の理解を丁寧に進めていくことで疾患の進行抑制につながるものと考えている。*変形性膝関節症の管理に関するOARSI(Osteoarthritis Research Society International)勧告:OARSIによるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン(日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会による適合化終了版) (ケアネット 萩原 充)

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運動器疾患における疼痛に関する患者調査 ~痛みのために患者が困っていることとその解決法~

宗圓 聰 ( そうえん さとし ) 氏近畿大学医学部奈良病院  整形外科・リウマチ科 教授2013年9月24日(火)、ヤンセンファーマ株式会社主催の疼痛メディアセミナーが開催され、宗圓 聰氏は本年発表された、運動器疾患患者(椎間板ヘルニア、関節リウマチ、変形性膝関節症、骨粗鬆症、脊柱管狭窄症)の疼痛に関する治療実態や治療の満足度に関する調査1)(調査概要:文末参照)について報告した。痛みのために現在困っていること通院治療中の患者でも、痛みのために日常生活で支障を感じている患者は多く、とくに椎間板ヘルニア、変形性膝関節症、脊柱管狭窄症では70%以上の人が痛みのために日常生活に何らかの支障(階段を上るのに苦労するなど)を感じていた。治療による痛みの改善度合い・効果への満足度どの疾患でも治療により痛みは改善されているが、中程度の痛みが残っていた。痛みの治療効果に対する満足度は疾患により異なり、関節リウマチが最も高く(75%)、脊柱管狭窄症患者の満足度が最も低かった(55%)。関節リウマチでは、近年の治療薬の進歩とともに治療効果への満足度が向上していることがうかがえる。病院以外での治療実施割合治療効果に満足していない患者は、病院・クリニックでの治療以外にコルセット・サポーターなどの装具やサプリメントを中心に、何らかの治療をしている割合が高く、これらによる除痛効果を期待していることが示唆された。経口鎮痛薬:服用している薬剤、服用割合、服用期間経口鎮痛薬を服用している割合は、椎間板ヘルニアで約70%、関節リウマチ、変形性膝関節症、脊柱管狭窄症で50%強、骨粗鬆症で30%弱であった。服用している経口鎮痛薬は、NSAIDsが約90%を占め、経口薬服用患者のうち70%以上はすでに1年以上にわたって経口薬を服用していた。これらの調査結果から、宗圓氏は特筆すべき点として、経口鎮痛薬として約90%がNSAIDsを服用し、その多くの患者が1年以上続けている状況を指摘。「NSAIDsには副作用としてさまざまな臓器障害があり、とくに高齢者では1年以上続けると腎障害が強く懸念される。3ヵ月継続して効果が思わしくない場合は、オピオイドなど別の薬剤を検討すべきだ」と述べ、NSAIDsの長期使用は慎重に行うべきであると訴えた。*「運動器疾患における疼痛に関する患者実態調査」調査概要・目的:5大疾患の患者の治療実態や治療の満足度の把握・対象:5大疾患の診断を受け通院治療中の40歳以上の患者[椎間板ヘルニア165例、関節リウマチ179例、変形性膝関節症195例、骨粗鬆症186例、脊柱管狭窄症172例(併発している場合は主疾患を優先)]・方法:楽天リサーチ患者パネルを用いたWeb調査・調査地域:全国・期間:2012年11月27日~12月3日・実施:ヤンセンファーマ株式会社(ケアネット 萩原 充)出典1)宗圓 聰. Progress in Medicine. 2013; 33: 1215-1220.※ 所属・施設等は、制作当時のものです。

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中等度~重度乾癬患者はCKDに注意/BMJ

 米・ペンシルベニア大学のJoy Wan氏らは、英国でコホート内断面研究を行い、乾癬患者の慢性腎臓病(CKD)発症リスクについて調査した。その結果、乾癬の重症度が高いほど、CKD発症リスクが増加することが示された。 これまでの研究で乾癬は、糖尿病、メタボリックシンドローム、心血管疾患の発症と関連することが報告されていたが、腎臓疾患の発症との関連については検討が十分ではなかった。BMJ誌2013年10月15日掲載報告。 著者らは、英国の電子カルテデータベースを用いて、人口ベースのコホート研究を行った。被験者は18~90歳の乾癬患者14万3,883例で、そのうち軽度は13万6,529例、重度は7,354例であった。対照群は、乾癬罹患の記録がなく、年齢、治療、来院時期で適合させた68万9,702例であった。メインアウトカムは、中等度から高度(ステージ3~5)のCKD発症であった。 その後、コホート内断面研究であるiHOPE試験(Incident Health Outcomes and Psoriasis Events study)を実施した。被験者は25~64歳の乾癬患者8,731例で重症度別に登録され、対照群は乾癬罹患の記録がなく、年齢と治療で適合させた8万7,310例であった。メインアウトカムは、ベースラインでのCKDの有病率であった。 主な結果は以下のとおり。・コホート研究において、性別、年齢、心血管疾患、糖尿病、高血圧、脂質異常症、NSAIDsの使用、BMIで補正後、重度乾癬群ではCKD発症リスクが高かった(全患者のハザード比[HR] :1.05、95%信頼区間[CI] :1.02~1.07、軽度乾癬群のHR:0.99、95%CI:0.97~1.02、重度乾癬群のHR:1.93、95%CI:1.79~2.08)。・重度乾癬群を年齢別にみたところ、若年であるほどCKD発症リスクが増加していた(30歳のHR:3.82、95%CI:3.15~4.64、60歳のHR:2.00、95%CI:1.86~2.17)。・iHOPE試験において、性別、年齢、心血管疾患、糖尿病、高血圧、脂質異常症、NSAIDsの使用、BMI、観察期間で補正後、CKDの発症リスクは乾癬の重症度が高いほど増加していた(軽度乾癬群のオッズ比[OR]:0.89、95%CI:0.72~1.10、中等度乾癬群のOR:1.36、95%CI:1.06~1.74、重度乾癬群のOR:1.58、95%CI:1.07~2.34)。

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NSAIDsにより消化性潰瘍が穿孔し死亡したケース

消化器概要肺気腫、肺がんの既往歴のある67歳男性。呼吸困難、微熱、嘔気などを主訴として入退院をくり返していた。経過中に出現した腰痛および左足痛に対しNSAIDsであるロキソプロフェン ナトリウム(商品名:ロキソニン)、インドメタシン(同:インダシン)が投与され、その後も嘔気などの消化器症状が継続したが精査は行わなかった。ところがNSAIDs投与から12日後に消化性潰瘍の穿孔を生じ、緊急で開腹手術が行われたが、手術から17日後に死亡した。詳細な経過患者情報肺気腫、肺がん(1987年9月左上葉切除術)の既往歴のある67歳男性。慢性呼吸不全の状態であった経過1987年12月3日呼吸困難を主訴とし、「肺がん術後、肺気腫および椎骨脳底動脈循環不全」の診断で入院。1988年1月19日食欲不振、吐き気、上腹部痛が出現(約1ヵ月で軽快)。4月16日体重45.5kg5月14日症状が安定し退院。6月3日呼吸困難、微熱、嘔気を生じ、肺気腫と喘息との診断で再入院。6月6日胃部X線検査:慢性胃炎、「とくに問題はない」と説明。6月7日微熱が継続したため抗菌薬投与(6月17日まで)。6月17日軟便、腹痛がみられたためロペラミド(同:ロペミン)投与。6月20日体重41.5kg、血液検査で白血球数増加。6月24日抗菌薬ドキシサイクリン(同:ビブラマイシン)投与。6月26日胃もたれ、嘔気が出現。6月28日食欲低下も加わり、ビブラマイシン®の副作用と判断し投与中止。6月29日再び嘔気がみられ、びらん性胃炎と診断、胃粘膜保護剤および抗潰瘍薬などテプレノン(同:セルベックス)、ソファルコン(同:ソロン)、トリメブチンマレイン(同:セレキノン)、ガンマオリザノール(同:オルル)を投与。7月4日嘔気、嘔吐に対し抗潰瘍薬ジサイクロミン(同:コランチル)を投与。7月5日嘔気は徐々に軽減した。7月14日便潜血反応(-)7月15日嘔気は消失したが、食欲不振は継続。7月18日体重40.1kg。7月19日退院。7月20日少量の血痰、嘔気を主訴に外来受診。7月22日腰痛および膝の感覚異常を主訴に整形外科を受診、鎮痛薬サリチル酸ナトリウム(同:ネオビタカイン)局注、温湿布モムホット®、理学療法を受け、NSAIDsロキソニン®を1週間分投与。以後同病院整形外科に連日通院。7月25日血尿が出現。7月29日出血性膀胱炎と診断し、抗菌薬エノキサシン(同:フルマーク)を投与。腰痛に対してインダシン®坐薬、セルベックス®などの抗潰瘍薬を投与。7月30日吐物中にうすいコーヒー色の吐血を認めたため外来受診。メトクロプラミド(同:プリンペラン)1A筋注、ファモチジン(同:ガスター)1A静注。7月31日呼吸不全、嘔気、腰と左足の痛みなどが出現したため入院。酸素投与、インダシン®坐薬50mg 2個を使用。入院後も嘔気および食欲不振などが継続。体重40kg。8月1日嘔吐に対し胃薬、吐き気止めの投薬開始、インダシン®坐薬2個使用。8月2日10:00嘔気、嘔吐が持続。15:00自制不可能な心窩部痛、および同部の圧痛。16:40ブチルスコポラミン(同:ブスコパン)1A筋注。17:50ペンタジン®1A筋注、インダシン®坐薬2個投与。19:30痛みは軽快、自制の範囲内となった。8月3日07:00喉が渇いたので、ジュースを飲む。07:30突然の血圧低下(約60mmHg)、嘔吐あり。08:50医師の診察。左下腹部痛および嘔気、嘔吐を訴え、同部に圧痛あり。腹部X線写真でフリーエアーを認めたため、腸閉塞により穿孔が生じたと判断。15:00緊急開腹手術にて、胃体部前壁噴門側に直径約5mmの潰瘍穿孔が認められ、腹腔内に食物残渣および腹水を確認。胃穿孔部を切除して縫合閉鎖し、腹腔内にドレーンを留置。術後腹部膨満感、嘔気は消失。8月10日水分摂取可能。8月11日流動食の経口摂取再開。8月13日自分で酸素マスクをはずしたり、ふらふら歩行するという症状あり。8月15日頭部CTにて脳へのがん転移なし。白血球の異常増加あり。8月16日腹腔内留置ドレーンを抜去したが、急性呼吸不全を起こし、人工呼吸器装着。8月19日胸部X線写真上、両肺に直径0.3mm~1mmの陰影散布を確認。家族に対して肺がんの再発、全身転移のため、同日中にも死亡する可能性があることを説明。8月20日心不全、呼吸不全のため死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張慢性閉塞性肺疾患では低酸素血症や高炭酸ガス血症によって胃粘膜血流が低下するため胃潰瘍を併発しやすく、実際に本件では嘔気・嘔吐などの胃部症状が発生していたのに、胃内視鏡検査や胃部X線検査を怠ったため胃潰瘍と診断できなかった。さらに非ステロイド系消炎鎮痛薬はきわめて強い潰瘍発生作用を有するのに、胃穿孔の前日まで漫然とその投与を続けた。病院側(被告)の主張肺気腫による慢性呼吸器障害に再発性肺がんが両肺に転移播種するという悪条件の下で、ストレス性急性胃潰瘍を発症、穿孔性腹膜炎を合併したものである。胃穿孔は直前に飲んだジュースが刺激となって生じた。腹部の術後経過は順調であったが、肺気腫および肺がんのため呼吸不全が継続・悪化し、死亡したのであり、医療過誤には当たらない。ロキソニン®には長期投与で潰瘍形成することはあっても、本件のように短期間の投与で潰瘍形成する可能性は少なく、胃穿孔の副作用の例はない。インダシン®坐薬の能書きには消化性潰瘍の可能性についての記載はあるが、胃潰瘍および胃穿孔の副作用の例はない。たとえ胃潰瘍の可能性があったとしても、余命の少ない患者に対し、腰痛および下肢痛の改善目的で呼吸抑制のないインダシン®坐薬を用いることは不適切ではない。裁判所の判断吐血がみられて来院した時点で出血性胃潰瘍の存在を疑い、緊急内視鏡検査ないし胃部X線撮影検査を行うべき注意義務があった。さらに検査結果が判明するまでは、絶食、輸液、止血剤、抗潰瘍薬の投与などを行うべきであったのに怠り、鎮痛薬などの投与を漫然と続けた結果、胃潰瘍穿孔から汎発性腹膜炎を発症し、開腹手術を施行したが死亡した点に過失あり。原告側合計4,188万円の請求に対し、2,606万円の判決考察今回のケースをご覧になって、「なぜもっと早く消化器内視鏡検査をしなかったのだろうか」という疑問をもたれた先生方が多いことと思います。あとから振り返ってみれば、消化器症状が出現して入院となってから胃潰瘍穿孔に至るまでの約60日間のうち、50日間は入院、残りの10日間もほとんど毎日のように通院していたわけですから、「消化性潰瘍」を疑いさえすればすぐに検査を施行し、しかるべき処置が可能であったと思います。にもかかわらずそのような判断に至らなかった原因として、(1)入院直後に行った胃X線検査(胃穿孔の58日前、NSAIDs投与の45日前)で異常なしと判断したこと(2)複数の医師が関与したこと:とくにNSAIDs(ロキソニン®、インダシン®)は整形外科医師の指示で投与されたことの2点が考えられます(さらに少々考えすぎかも知れませんが、本件の場合には肺がん術後のため予後はあまりよくなかったということもあり、さまざまな症状がみられても対症療法をするのが限度と考えていたのかも知れません)。このうち(1)については、胃部X線写真で異常なしと判断した1ヵ月半後に腰痛に対して整形外科からNSAIDsが処方され、その8日後に嘔吐、吐血までみられたのですから、ここですぐさま上部消化管の検査を行うのが常識的な判断と思われます。しかもこの時に、ガスター®静注、プリンペラン®筋注まで行っているということは、当然消化性潰瘍を念頭に置いていたと思いますが、残念ながら当時患者さんをみたのは普段診察を担当していない消化器内科の医師でした。もしかすると、今回の主治医は「消化器系の病気は消化器内科の医師に任せてあるのでタッチしない」というスタンスであったのかも知れません。つまり(2)で問題提起したように、胃穿孔に至る過程にはもともと患者さんを診ていた内科主治医消化器系を担当した消化器内科医腰痛を診察しNSAIDsを処方した整形外科医という3名の医師が関与したことになります。患者側からみれば、同じ病院に入院しているのだから、たとえ診療科は違っても医者同士が連絡しあい、病気のすべてを診てもらっているのだろうと思うのが普通でしょう。ところが実際には、フリーエアーのある腹部X線写真をみて、主治医は最初に腸閉塞から穿孔に至ったのだろうと考えたり、前日までNSAIDsを投与していたことや消化性潰瘍があるかもしれないという考えには辿り着かなかったようです。同様に整形外科担当医も、「腰痛はみるけれども嘔気などの消化器症状は内科の先生に聞いてください」と考えていたろうし、消化器内科医は、「(吐血がみられたが)とりあえずはガスター®とプリンペラン®を使っておいたので、あとはいつもの主治医に任せよう」と思ったのかも知れません。このように本件の背景として、医師同士のコミュニケーション不足が重大な影響を及ぼしたことを指摘できると思います。ただしそれ以前の問題として、NSAIDsを処方したのであれば、たとえ整形外科であっても副作用のことに配慮するべきだし、もし消化器症状がみられたのならば内科担当医に、「NSAIDsを処方したけれども大丈夫だろうか」と照会するべきであると思います。同様に消化器内科医の立場でも、自分の専門領域のことは責任を持って診断・治療を行うという姿勢で臨まないと、本件のような思わぬ医事紛争に巻き込まれる可能性があると思います。おそらく、各担当医にしてみればきちんと患者さんを診察し、(内視鏡検査を行わなかったことは別として)けっして不真面目であったとか怠慢であったというような事例ではないと思います。しかし裁判官の判断は、賠償額を「67歳男性の平均余命である14年」をもとに算定したことからもわかるように、大変厳しい内容でした。常識的に考えれば、もともと肺気腫による慢性呼吸不全があり、死亡する11ヵ月前に肺がんの手術を行っていてしかも両側の肺に転移している進行がんであったのに、「平均余命14年」としたのはどうみても不適切な内容です(病院側弁護士の主張が不十分であったのかもしれません)。しかし一方で、そう判断せざるを得ないくらい「医師として患者さんにコミットしていないではないか」、という点が厳しく問われたケースではないかと思います。今回のケースから得られる教訓として、自分の得意とする分野について診断・治療を行う場合には、最後まで責任を持って担当するということを忘れないようにしたいと思います。また、たとえ専門外と判断される場合でも、可能な限りほかの医師とのコミュニケーションをとることを心掛けたいと思います。消化器

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統合失調症治療に抗炎症薬は有用か

 統合失調症の病態に脳の炎症は関連しているのか。オランダ・ユトレヒト大学のIris E. Sommer氏らは、抗炎症薬による統合失調症の症状軽減効果を評価するため、臨床試験26件について解析を行った。その結果、アスピリン、N-アセチルシステイン、エストロゲン製剤において、症状の重症度に対し有意な改善効果が認められることを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2013年10月8日号の掲載報告。 統合失調症の炎症説は新しいものではないが、最近、統合失調症の病因における免疫系の役割を示唆するデータが多く発表されており、再び注目を集めている。脳における炎症の増強が統合失調症の症状に関与しているとするならば、炎症の抑制は臨床経過を改善しうると考えられる。実際、最近、数件の試験において、抗炎症薬が統合失調症の症状を改善しうるか否かが検討されていた。本研究では、これまでに実施された臨床試験を基に、統合失調症の症状に及ぼす抗炎症薬の有効性に関する最新情報を調査した。PubMed、Embase、the National Institutes of Health のウェブサイト(http://www.clinicaltrials.gov)、Cochrane Schizophrenia Group entries in PsiTriおよびCochrane Database of Systematic Reviewsを用いてデータベース検索を行った。検索対象は、臨床アウトカムを検討した無作為化二重盲検プラセボ対照試験に限定した。主な結果は以下のとおり。・適格試験は26件が抽出された。・アスピリン、セレコキシブ、ダブネチド(国内未承認)、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)などの脂肪酸、エストロゲン製剤、ミノサイクリンおよびN-アセチルシステイン(NAC)について、症状の重症度に及ぼす影響を調査した。・そのうち、アスピリン(重み付け平均効果サイズ[ES]:0.3、270例、95%CI:0.06~0.537、I2=0)、エストロゲン製剤(ES:0.51、262例、95%CI:0.043~0.972、I2=69%)およびNAC (ES:0.45、140例、95%CI:0.112~0.779)において、有意な効果が認められた。・セレコキシブ、ミノサイクリン、ダブネチドおよび脂肪酸では、有意な効果が認められなかった。・以上より、抗精神病薬へのアスピリン、NAC、エストロゲン製剤の追加は有望だと思われた。・これら3製剤は、いずれも非常に幅広い活性を有している。症状の重症度に対する有益な効果が、真にその抗炎症作用を介したものであるか否かを検討する必要がある。関連医療ニュース 抗精神病薬へのNSAIDs追加投与、ベネフィットはあるのか? 新たな選択肢か?!「抗精神病薬+COX-2阻害薬」自閉症の治療  アルツハイマー病、アミロイドβ蛋白による“炎症反応”が関与

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アルツハイマー病、アミロイドβ蛋白による“炎症反応”が関与

 カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のPatrick L. McGeer氏らは、アルツハイマー病(AD)がアミロイドβ蛋白(Abeta)により誘発される炎症反応の結果によるものとし、早期の段階から抗炎症薬による介入を行うことの意義を示唆した。Acta Neuropathologica誌2013年10月号の掲載報告。 ADの重要な病因として、アミロイドカスケード説が広く認知されている。すなわち、ADの原因はAbeta産物であり、Abetaあるいはそのオリゴマーが神経毒性を示すとされている。しかし、筆者らは、Abeta自体がADの原因となりえないと考えたという。その理由として、毒性を引き起こすにはμmol濃度のAbeta体が必要であるが、実際のところ脳内レベルはpmolの範囲内であり、必要とされる濃度の100万倍も低いからだという。そして、おそらくADは、後にタウの凝集につながる細胞外Abeta沈着により誘発される“炎症反応”の結果であると示唆した。 その理由として次の点を挙げている。・実際、疾患進行時に活性化ミクログリアによる炎症反応が過剰に増強されている。・これまでの疾患修飾治療(根本治療)は失敗に終わっており、中心的役割を果たしている炎症を考慮に入れない限り、このような状況が続くと思われる。・多数の疫学研究および動物モデルを用いた研究において、抗炎症薬として最も広く使用されているNSAIDsが、ADに対して実際に補助的な効果を有することが示されている。 そしてこれらの研究は、疾患修飾として“抗炎症”というアプローチを支持するものと言えるとまとめた。 一方、バイオマーカー研究において、臨床的に確認される何十年も前に疾患が発症していることが明らかにされていることについても言及した。著者は、これらの研究が「早期介入の必要性を指摘している」と述べる。バイオマーカーと病理データの組み合わせにより、疾患の経過を約5年単位の6つのphaseに分けることができ、phase1は髄液中のAbetaの減少、phase2は髄液中のタウ増加とPETによる脳内Abeta沈着の確認、phase 3はPET-FDGによる脳内代謝速度の若干の減少、phase 4はMRIによる脳容積の若干の減少とわずかな認知障害、phase 5はスキャンによる異常所見の増加とADの臨床診断、phase 6は病院でのケアを要するADの進行である、とした。 以上を踏まえて、「疾患経過の早期における抗炎症薬の活用により、治療の機会が広がる。予防的でないものの、このような薬剤はAbetaとタウ凝集の両方に引き続いて起こる現象を防ぎうる手段として有利である。疾患発症から認知機能が低下するまでの間には十年以上あるため、真に効果的な疾患修飾レジメンを導入する機会が存在する。この機会の利用が将来の課題である」とまとめている。関連医療ニュース スタチン使用で認知症入院リスク減少 アルツハイマー病の進行抑制に関わる脳内分子を特定 アルツハイマー病の早期ステージに対し、抗Aβ治療は支持されるか?

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ベンゾジアゼピン使用は何をもたらすのか

 オーストラリア・カンバーランド病院のDonna Gillies氏らは、急性精神疾患に対するベンゾジアゼピン系薬剤の有用性についてレビューを行った。その結果、ベンゾジアゼピン単独または抗精神病薬と併用した場合の効果が、抗精神病薬単独または同薬併用、あるいは抗精神病薬と抗ヒスタミン薬などの併用と比べて、症状改善に差がないことを報告した。ただし、今回の評価の結果について著者は、ベンゾジアゼピンの単独または併用使用に関するエビデンスが弱く現段階では不明確であり、質の高い研究が必要だと指摘している。Cochrane database of systematic reviewsオンライン版2013年9月18日の掲載報告。 急性精神疾患、とくに興奮性または攻撃性の行動が認められる場合は精神安定剤や鎮静剤による緊急治療が必要となる。こうした状況に対し、いくつかの国ではベンゾジアゼピン単独またはベンゾジアゼピンと抗精神病薬の併用がしばしば行われている。本研究は、行動のコントロールならびに精神症状の軽減に対するベンゾジアゼピン単独または抗精神病薬との併用における効果を、プラセボまたは抗精神病薬単独または抗精神病薬と抗ヒスタミン薬を併用した場合の効果と比較検討することを目的としたものであった。 2012年1月現在のCochrane Schizophrenia Group's registerを検索し、適格試験を詳細に調べ、代表的な試験の著者らを調査した。急性精神疾患患者を対象とし、「ベンゾジアゼピン単独またはベンゾジアゼピン+抗精神病薬」と「抗精神病薬単独または抗精神病薬+その他の抗精神病薬、ベンゾジアゼピンまたは抗ヒスタミン薬」を比較したランダム化臨床試験(RCT)をすべて適格とした。 忠実な方法で試験を選択し、それらの質を評価してデータを抽出した。バイナリ(2値)アウトカムに対しては、固定効果モデルを用いて標準推定相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。連続アウトカムに対しては、群間の平均差(MD)を算出した。不均質性を認めた場合はランダム効果モデルを用いて探索した。 主な結果は以下のとおり。・21試験、1,968例を評価の対象とした。・「ベンゾジアゼピン」と「プラセボ」を比較した1試験において、大半のアウトカムで有意差は認められなかったが、プラセボ群のほうが「中期(1~48時間)の改善なし」のリスクがより高かった(1試験、102例、RR:0.62、95%CI:0.40~0.97、エビデンスの質:きわめて低い)。・「ベンゾジアゼピン」と「抗精神病薬」の比較において、中期に改善を認めなかった被検者数に差はみられなかった(5試験、308例、同:1.10、0.85~1.42、低)。ただし、ベンゾジアゼピン群では中期に錐体外路作用(EPS)が少ない傾向にあった(8試験、536例、同:0.15、0.06~0.39、中)。・「ベンゾジアゼピン+抗精神病薬」と「ベンゾジアゼピン単独」の比較において、有意差は認められなかった。・「ベンゾジアゼピン+抗精神病薬」と「同一抗精神病薬単独」との比較(すべての試験でハロペリドールであった)において、中期の改善に群間差は認められなかったが(3試験、155例、同:1.27、0.94~1.70、きわめて低い)、併用療法群で鎮静が得られた患者が多い傾向にあった(3試験、172例、同:1.75、1.14~2.67、きわめて低い)。・しかし、「ベンゾジアゼピン+ハロペリドール」群は、オランザピン群(1試験、60例、同:25.00、1.55~403.99、きわめて低い)またはジプラシドン(国内未承認)群(1試験、60例、同:4.00、1.25~12.75、きわめて低い)に比べ、中期の改善を認めた被検者が少なかった。・「ハロペリドール+ミダゾラム」は、オランザピンと比較して改善、鎮静、行動において優れているという若干のエビデンスが認められた。・以上のように、ベンゾジアゼピン単独使用に関して、良い結果は得られなかった。 良質なデータが非常に少なく、大半の試験はポジティブあるいはネガティブな差を検出するには母集団が少なすぎた。その他の薬剤へのベンゾジアゼピン追加による明らかなメリットはみられず、不要な有害事象の可能性があった。従来の抗精神病薬単独使用(抗コリン薬非併用)の妥当性を評価することは厳しいと思われる。本分野においては、より質の高い研究が求められる。関連医療ニュース 統合失調症患者にNaSSA増強療法は有用か:藤田保健衛生大学 急性期統合失調症、ハロペリドールの最適用量は 抗精神病薬へのNSAIDs追加投与、ベネフィットはあるのか?  担当者へのご意見箱はこちら

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ネットワーク・メタ解析を読むときの留意点(コメンテーター:折笠 秀樹 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(132)より-

ネットワーク・メタ解析(Network meta-analysis)とはメタ解析の一種である。通常のメタ解析は治療法Aと治療法Cを比較した臨床試験を収集し、個々の比較結果を統計的に併合する。従って、治療法Aと治療法Dや、プラセボを比較した臨床試験は解析対象とはならない。これでは効率が良くないし、除外によりバイアスをもたらす可能性もある。今まで解析対象外となっていた臨床試験を含めたメタ解析がネットワーク・メタ解析である。この論文でも図示されているように、比較対象になっているすべての治療法の関連図はネットワークで示されるので、ネットワーク・メタ解析と呼んでいる。解析にはベイズ流という統計手法を用いる。 本論文は、こうしたネットワーク・メタ解析において、プラセボ群や未治療群を除外してしまうと結果が異なることを指摘した。たとえば、すべてを含めたネットワーク・メタ解析での治療法Aのプラセボに対する相対リスクが0.5だったとしよう。このとき、プラセボ群を除外したネットワーク・メタ解析をすると、この相対リスクが0.6くらいに増加することを見出した。プラセボ群を無視することにより、相対リスクは無効の方向へ、およそ1.2倍に増加していたのだ。 正確に言うと、プラセボや未治療群を除外すると1.16倍~3.10倍も相対リスクが高くなった(つまり治療効果が下がった)という結果であったが、よく見るとほとんどは1.2倍前後であり、1つだけ3.1倍という極端な結果があった。従って、プラセボや未治療群を除外することに伴うバイアスはそんなに大きくはなさそうである。 Table 3に何倍(Fold change)の計算例が載っている。Full modelは何も除外しないネットワーク・メタ解析(相対リスク0.37)であり、Reduced modelはプラセボや未治療群を除外したネットワーク・メタ解析(相対リスク0.41)である。この時、0.41÷0.37=1.11倍、相対リスクが増えた(治療効果が下がった)ことになる。 プラセボ比較試験はかなり昔に行われた例が多いため、昔のデータを加味すると治療効果は大きくなる傾向があるのだろう。つまり、時代の影響というか医療環境の変化が、結果に影響するのだろう。従って、昔行われたプラセボ・未治療を含むデータを除くと、無効の方向へ結論を導く可能性がある。 もう一つのメッセージは、プラセボ比較試験が多数あるときに影響大ということである。NSAIDsの消化管合併症への効果を見た例では、相対リスクが3.10倍にも上がっていた。論文中のFigureを見ると、Cox 2阻害薬とプラセボとの比較試験が多数あることが分かる(結ばれた線が太いことから)。それにもかかわらずプラセボ群を除外した解析をすると、それは影響大であることは直感的にも分かる。 ネットワーク・メタ解析では、関係する治療群をむやみに除外すると、治療効果の推定にバイアスを及ぼすことが分かった。とくに、プラセボや未治療群を除外すれば治療効果を過少評価することが分かった。通常のメタ解析でも網羅的に試験を含めるのが原則だが、ネットワーク・メタ解析でも網羅的に治療群(プラセボ・未治療群を含め)を含めることは大切であり、治療群を安易に除外すべきでないことを理解しておきたい。

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消化性潰瘍、5人に1人がH.pylori感染やNSAIDs/アスピリン内服と関連なし

 フランスの総合病院では、消化性潰瘍患者の5人に1人がヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)感染ともNSAIDs/アスピリン内服とも関連のない特発性潰瘍であることが、仏・ヴィルヌーヴ・サン・ジョルジュ病院消化器内科 C.Charpignon氏らによる研究で明らかになった。Alimentary pharmacology & therapeutics誌オンライン版2013年8月27日号の報告。 現在、H.pylori感染やNSAIDs/アスピリンの内服と関連のない消化性潰瘍について議論されている。本研究では、フランスの総合病院32施設の消化性潰瘍患者を対象に、消化性潰瘍の疫学的および臨床的特徴について1年以上にわたり前向きに調査した。H.pylori感染は、組織学的検査、血清学的検査、13C-尿素呼気試験により診断した。NSAIDsやアスピリンの服薬状況、合併症についてのデータは、内視鏡検査当日にカルテや聞き取りによって調査した。 主な結果は以下のとおり。 ・2009年の間に試験に登録された消化性潰瘍患者933例のうち、びらん性十二指腸炎や、他の原因による潰瘍を認めた症例などを除外した713例を以下の4群に分類した。 H.pylori(+)、NSAIDs/アスピリン内服なし 285例(40.0%) H.pylori(+)、NSAIDs/アスピリン内服あり 141例(19.8%) H.pylori(-)、NSAIDs/アスピリン内服あり 133例(18.7%) H.pylori(-)、NSAIDs/アスピリン内服なし 154例(21.6%)・H.pylori陰性で、NSAIDsやアスピリンの内服もしていない特発性潰瘍の患者の割合は21.6%であった。・特発性潰瘍患者の臨床的特徴はH.pylori陽性患者、NSAIDs/アスピリン内服患者と多くの点で異なっていた。・多変量解析の結果、年齢、都会生まれ、合併症が特発性潰瘍の独立した予測因子であることがわかった。・以上の結果により、フランスの総合病院では、消化性潰瘍患者の5人に1人がH.pylori感染ともNSAIDs/アスピリン内服とも関連のない特発性潰瘍であることが明らかになった。

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重症薬疹

薬剤性とウイルス性の発疹症の鑑別法について教えてください。これは難しい質問です。薬剤によって出来る発疹とウイルスによって出来る発疹はメカニズムが似ています。薬剤もウイルスもMHC(主要組織適合遺伝子複合体)を介してT細胞に抗原認識されるという点では同じであり、実際の鑑別も簡単ではありません。ただ、ウイルスには流行がありますし、麻疹や風疹などウイルスでは抗体価が上がります。鑑別では、これらの情報を有効活用すべきだと思います。重症薬疹の、ごく初期の場合の見分け方を教えてください。初期段階での重症化予測については盛んに研究を行っているものの、まだ結論にはたどり着かない状態です。“軽く見える薬疹が2日後に非常に重症になる”といった症例を臨床の場でも経験することがあります。実際、初期であればあるほど見分けは難しく、大きな問題です。しいてコツをあげれば、思い込みを捨てて経過を良く観察する事でしょう。経過を良く見ていると、問題の発疹の原因や悪化要因となっている病気の本態やその赴く方向・勢いが顕になり、おかしいと点に気づくようになります。そこが非常に大事な点だと思います。重症化する薬疹の診断基準や早期診断の項目で、とくに重要な項目はありますか?粘膜疹と高熱の発現は重要です。とくに熱については、高熱がなければウイルス関与の薬疹ではない事が多いといえます。いずれにせよ、この2項目が出た場合は、注意しなければいけないと思います。また一般検査では、白血球増多と白血球減少のどちらも要注意で、血液像で核左方移動を伴う好中球増多がるのなのか、異形リンパ球の出現とその増加があるのか、また特殊検査になりますがTh2の活性化を示唆する血清TARC値の上昇が見られるのかも、薬疹の病型・重症度・病勢を推定・判定する上で重要です。マイコプラズマ感染症に続発する皮疹と薬疹を鑑別する方法はありますか?この2つはきわめて似ています。しかしながら、マイコプラズマに続発する場合は、気道が障害される傾向がありますし、胸部所見からの情報も得られます。また子供よりも大人の方が鑑別難しい症例が多いといえます。これも一番のコツは経過をじっと観察し、通常の定型的薬疹と違うことに気づくことだと思います。同じ薬剤でも薬疹の臨床型には個人差があるが、その要因を知りたい。難しい質問ですが、その患者さんの持っている免疫応答性とそれに影響を及ぼす遺伝的・非遺伝的な各種要因に関係した患者さんの持っている特性などが影響するのでしょう。SJSからTENへの移行とありますが、病理組織学的に両者は別疾患と聞いたことがあります。疾患連続性について御教授ください。これにはいろいろな意見があります。SJSは、通常SJSの発疹の拡大と病勢の伸展・進行によりTENに移行します。しかし、TENの場合、SJSを経ないで現れるものもあります。そのため、現時点ではSJSからTENに移行するものは一群として考えているといってよいと思います。免疫グロブリンは、軽症でも粘膜疹があれば早期投与した方が良いのでしょうか?免疫グロブリンを用いるのは、通常の治療で治らない場合と明らかにウイルス感染があるなど免疫グロブリンの明らかな適応がある場合などに限ります。このような症例を除いては、早期に使わないのが原則だと考えます。また、高価であり保険の問題もありますので、当然ながら安易な処方は避けるべきでしょう。AGEPにおける、ステロイド投与適応の指標は?AGEPには原因薬を中止して治る例とそうでない例があります。ステロイド適応は原因薬をやめて治らない場合ですね。なお、AGEPの場合は、TENやSJSとは異なり比較的低用量のステロイドでも治る症例があることに留意すべきものと思われます。初期に判断が難しい際には、全身ステロイドは控えるべきですか?判断が困難な場合は、第一の選択肢は、まず専門医に紹介するべきでしょう。中途半端な治療の後、悪化してわれわれの施設に来られる患者さんも少なくありません。こういった医療が最も良くないといえるでしょう。そういう意味で、病気に寄り添い、責任を持ってとことん病気を見切ることが重要です。その経過中に無理だと判断したら専門の医師に紹介した方が良いといえます。重症薬疹の原因薬剤として意外なもの(あまり認識されていないもの)はありますか?抗痙攣薬、消炎鎮痛解熱薬(NSAIDs)、抗菌薬、痛風治療薬などが原因薬としてよく取り上げられますが、どんな薬剤でも起こり得ると思った方が良いと思います。被疑薬の特定が困難である場合、治療のために全て薬剤を中止することが多いですが、どのように因果関係を証明したらよいでしょうか?とくに多剤内服中の方について病気の程度によりますが、軽くて余裕があれば、怪しい薬剤から抜いていって、良くなったらその薬剤が原因である可能性が高いわけです。一方、薬疹の進行が激しく一刻の猶予もない場合は、すべて中止したほうが良いと考えます。そして、その症状が治るか収まるかして、ステロイドなどの治療薬を中止できるか、ある程度まで減量できた時に、推定される原因薬剤を用いて、患者さんの末梢血に由来するリンパ球の刺激培養(in vitroリンパ球刺激試験)を実施し、出来れば、in vivoのパッチテストも行い、原因薬を診断・推定することは今後の予防という視点からも重要です。

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統合失調症患者へのセロトニン作動薬のアドオン、臨床効果と認知機能を増大

 抗精神病薬治療中の統合失調症患者に対し、選択的セロトニン5-HT6受容体拮抗薬の追加併用療法は、抗精神病効果および一部の認知機能(注意力)を増大することが、ロシア医科学アカデミー国立精神保健センターのMorozova MA氏らによるパイロット試験の結果、報告された。CNS Spectrums誌オンライン版2013年6月17日号の掲載報告。 統合失調症患者へのアドオン治療として、セロトニン作動薬は有望視されている。研究グループは、抗精神病薬治療により症状が安定している統合失調症患者において、選択的セロトニン5-HT6受容体拮抗薬のAVN-211(CD-008-0173)が、臨床的および認知機能的効果を増大するかを明らかにすることを目的に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験のパイロット試験を4週(4r-week)にわたって行った。治療効果は、臨床的評価スケールと注意力テストにて測定した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は47例(試験薬追加併用群21例、プラセボ併用群26例)であり、そのうち併用群17例、プラセボ群25例が試験を完了した。・陽性・陰性症状スケール(PANSS)について、ベースラインでは両群に差はみられなかったが、試験終了時点では陽性サブスケールスコアについて有意差が認められ(p=0.058)、試験薬併用群の症状がより改善していた。・PANSS陽性サブスコア(p=0.0068)、臨床上の医師の印象による重症度(CGI-S)スコア(p=0.048)は、治療群のみにおいて有意な変化がみられた。・プラセボ群だけでみられた有意な変化は、カルガリー抑うつ評価スケール(CDRS)総スコアであった。・注意力テストの結果は試験終了時においても両群間の差を認めなかった。ただし、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)のサブテストVIIIの結果は例外であり、試験薬群において有意に変化が大きかった(p=0.02)。・試験薬併用群内のみにおいて、選択的および持続的注意力の有意な変化が認められた。標準注意検査法(CAT)において、総正解率(p=0.0038)、反応時間(p=0.058)で有意な変化がみられた。関連医療ニュース 精神科薬物治療で注目される5-HT1A受容体 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か?:藤田保健衛生大学 抗精神病薬へのNSAIDs追加投与、ベネフィットはあるのか?

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NSAIDsは血管・消化管イベントリスクを増大、心不全は約2倍に/Lancet

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与により、血管・消化管イベントリスクは増大することが明らかにされた。英国・オックスフォード大学のColin Baigent氏らCoxib and traditional NSAID Trialists’(CNT)共同研究グループが、メタ解析の結果、報告した。これまでCOX-2選択的阻害薬や従来型NSAIDs(tNSAIDs)を含むNSAIDsの血管・消化管への影響は、とくに血管疾患を有する患者において明らかではなかった。Lancet誌2013年5月30日号掲載の報告より。合計754件のプラセボ対照試験とNSAIDs間比較試験についてメタ解析 研究グループは、NSAIDsとプラセボについて行った無作為化プラセボ対照比較試験280件(被験者総数12万4,513例)と、NSAIDs間(1種類対その他種類)について行った無作為化比較試験474件(同22万9,296例)について、メタ解析を行い、NSAIDsの血管・消化管イベントリスクへの影響について分析した。 主要アウトカムは、重大血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致的死脳卒中、血管死)、重大冠動脈イベント(非致死的心筋梗塞または冠動脈死)、脳卒中、死亡、心不全、上部消化管合併症(穿孔、閉塞、出血)とした。ナプロキセンは重大血管イベントが増加せず 解析の結果、重大血管イベント発生率は、プラセボとの比較で、COX-2とジクロフェナクで3割増しと増大が大きく、率比はそれぞれ1.37(95%信頼区間[CI]:1.14~1.66、p=0.0009)と1.41(同:1.12~1.78、p=0.0036)だった。同リスクの増加は主に、重大冠動脈イベントリスクの増大によるもので、COX-2とジクロフェナクの同イベント率比は1.76(p=0.0001)と1.70(p=0.0032)だった。 プラセボとの比較で、COX-2とジクロフェナクに割り付けられた被験者1,000例のうち、年間で3例以上が重大血管イベントを発症し、うち1例は致死的であった。 イブプロフェンは、重大冠動脈イベントの発生リスクは有意に増大したが(率比:2.22、95%CI:1.10~4.48、p=0.0253)、重大血管イベント発生リスクは有意な増大は認められなかった(同:1.44、95%CI:0.89~2.33)。ナプロキセンも、重大血管イベント発生リスクについて、有意な増大はみられなかった(同:0.93、0.69~1.27)。 血管死リスクは、COX-2(率比1.58、99%CI:1.00~2.49、p=0.0103)とジクロフェナク(同:1.65、0.95~2.85、p=0.0187)で有意な増大がみられた。イブプロフェンでは有意差はみられず(同:1.90、0.56~6.41、p=0.17)、ナプロキセンでは、同リスクが増大しなかった(同:1.08、0.48~2.47、p=0.80)。 なお、重大血管イベントへの影響の割合は、ベースラインでの特性(血管リスクを含む)とは関連していなかった。 心不全発症リスクについては、すべてのNSAIDsでおよそ2倍に増大した。 またすべてのNSAIDsで、上部消化管合併症リスクの増大がみられた。各率比はそれぞれCOX-2が1.81(p=0.0070)、ジクロフェナク1.89(p=0.0106)、イブプロフェン3.97(p<0.0001)、ナプロキセン4.22(p<0.0001)だった。 著者は「高用量のジクロフェナクとおそらくイブプロフェンは、COX-2と比べて血管リスクが高いこと、一方で高用量ナプロキセンはその他のNSAIDsと比べて血管リスクは低いことが示された。NSAIDsは血管・消化管イベントリスクを増大する。しかしそのリスクの大きさは予測可能であり、臨床意思決定に役立つだろう」と報告をまとめている。

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抗精神病薬へのNSAIDs追加投与、ベネフィットはあるのか?

 米国・ザッカーヒルサイド病院精神医学研究部門のMasahiro Nitta氏らは、統合失調症における非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)追加投与の意義を検討するためメタ解析を実施した。その結果、NSAIDs追加によるベネフィットは明確に示されなかったことを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2013年5月29日号の掲載報告。 統合失調症におけるNSAIDsの有効性と忍容性をプラセボと比較評価するため、メタ解析を行った。2012年12月31日までに公表されたPubMed、PsycINFO、ISI Web of Scienceおよび米国国立精神保健研究所(NIMH)の臨床試験登録を検索し、無作為化プラセボ対照試験のシステマティックレビューとメタ解析により、NSAIDs追加の有効性を評価した。主要アウトカムは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)総スコアの変化とした。副次アウトカムは、PANSSの陽性および陰性サブスコアの変化、全原因による試験中止、忍容性とした。プールされた標準化平均変化によるランダム効果(Hedges'g)およびリスク比を算出した。 主な結果は以下のとおり。・未公表の3試験を含む8試験(774例)において、PANSS総スコアの平均効果量(effect size)は、-0.236(95%CI:-0.484~0.012、p=0.063、I2=60.6%)であり、NSAIDsのプラセボに対する優越性は傾向を示すにとどまった。・PANSS陽性スコアの平均効果量は、-0.189(同:-0.373~-0.005、p=0.044)、PANSS陰性スコアの平均効果量は-0.026(同:-0.169~0.117、p=0.72)であった。・全原因による試験中止の相対リスクは1.13(同:0.794~1.599、p=0.503)であった。・PANSS総スコアにおけるNSAIDsのプラセボに対する有意な優越性は、アスピリン投与(2件、p=0.017)、入院(4件、p=0.029)、初回エピソード(2件、p=0.048)およびメタ回帰解析におけるPANSS陰性サブスコア低値(6件、p=0.026)などの状況下で減弱がみられた。・以上のように、抗精神病薬によるファーストライン治療が行われている統合失調症患者において、NSAIDsの追加はPANSS総スコアの変化においてベネフィットをもたらさないことが示された。・また、陽性症状においてはNSAIDsによるベネフィットが得られる可能性があるが、その効果はわずかで小さいものであった。・データベースに限界があるため、とくに初回エピソード患者においてはさらなる対照試験が必要である。関連医療ニュース 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か? 高齢の遅発統合失調症患者に対する漢方薬の効果は? 統合失調症治療にベンゾ併用は有用なのか?

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【CASE REPORT】腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症 症例解説

■症例:65歳 女性 腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症腰椎圧迫骨折の急性期に、NSAIDs抵抗性の侵害受容性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を段階的に導入して十分な鎮痛効果が得られ、痛みの緩和だけでなくADLの改善が達成された症例である。高齢者の腰椎圧迫骨折後の5年生存率は30%との報告(Lau E, et al. J Bone Joint Surg Am. 2008; 90: 1479-1486)もあり、腰椎圧迫骨折による疼痛(とくに体動時痛)→安静臥床の遷延→廃用症候群→寝たきり→誤嚥性肺炎→生命危機という経過が考えられる。オピオイド鎮痛薬は最も強力な鎮痛薬であることから、痛みの程度に応じて使用しADLを改善することはきわめて重要な意義を持つ。さらに、オピオイド鎮痛薬の導入にあたっては嘔気や便秘といった副作用対策も予防的に行われており、患者のオピオイド鎮痛薬に対する忍容性も達成されていた。本症例のように腰椎圧迫骨折後に痛みが遷延することは決して珍しくはない。しかしながら、このような遷延する痛みが骨折に伴う侵害受容性疼痛だといえるだろうか。言い換えると、「遷延する痛みが器質的な原因の結果として妥当であるか否か」ということだが、これは必ずしも明確に妥当であるとは言えないことが多い。確かに、本症例では、通常組織傷害が治癒すると考えられる3ヵ月を経過しても、体動とは無関係な持続痛が徐々に増悪・拡大しており、当初の腰椎圧迫骨折だけが痛みの原因とは考えにくい。したがって、われわれは非特異的腰痛症と診断した。このような症例に対して、オピオイド鎮痛薬の効果が明確では無いにもかかわらず、オピオイド鎮痛薬をやみくもに漸増し、さらに頓用薬を併用していたことは不適切であるといわざるを得ない。オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、1. Analgesia (オピオイド鎮痛薬を適切に使用し痛みを緩和させること)、2. Activities of daily living(オピオイド鎮痛薬の使用はADLを改善するためであることを医師が理解し患者に教育すること)、3. Adverse effects(オピオイド鎮痛薬による副作用対策を十分に実施すること)、4. Aberrant drug taking behavior(精神依存や濫用を含む不適切な使用を常に評価し、患者教育を行うこと)の頭文字をとって4Asという注意事項が知られている。本症例は急性期のAnalgesiaとAdverse effectsへの対処は適切であったと考えられるが、腰椎圧迫骨折から3ヵ月が経過した慢性期での対応については検討の余地がある。日本ペインクリニック学会が発行した「非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン」では、オピオイド鎮痛薬の使用目的として、痛みを単に緩和するだけでなくADLを改善するために使用することを推奨している。したがって、組織修復(骨癒合)がある程度進んだであろう時期には、痛みが残存している状況でもオピオイド鎮痛薬を増加させずに運動療法の導入やADL改善の意義について教育すべきであったと考えられる。このことは、慢性腰痛に対して長期安静がred flagとして認識されていることと同義である。よって本症例で慢性期に痛みが残存しておりオピオイド鎮痛薬を増量しても痛みが緩和しないことから、医師が安静を指示していたことは適切であるとは言い難い。また、器質的障害による疼痛(侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛)に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合には精神依存や濫用を引き起こしにくいことが基礎研究によって示されているが、この知見は言い換えるとオピオイド鎮痛薬を非器質的な疼痛に対して使用する場合には精神依存を防止し難いことを意味する。また、オピオイド鎮痛薬の血中濃度が乱高下すると精神依存を形成しやすい。したがって、日本ペインクリニック学会の指針でも、オピオイド鎮痛薬は器質的障害が明確な疼痛疾患に対して使用し、その使用時にはオピオイド鎮痛薬の血中濃度を一定にするために徐放製剤(2013年3月現在、非がん性慢性疼痛に対して保険適応を持つ製剤は、デュロテップMTパッチ®、トラムセット®、ノルスパンテープ®である)を使用することが推奨されている。また、このようなオピオイド鎮痛薬を使用する場合にも、非がん性慢性疼痛に対しては一日量として経口モルヒネ製剤120mg換算までにとどめることも推奨されている。これは、鎮痛薬を増量することとQOLの改善効果が必ずしも線形相関にはならず天井効果が現れることがあり、高用量では精神依存や濫用への懸念があるからである。さらに、オピオイド鎮痛薬の使用期間が長くなればなるほど精神依存や濫用、不適切使用が増加することも報告されており、オピオイド鎮痛薬の使用期間は可能な限り短期間にとどめなければならない。このほか、患者自身が鎮痛薬を管理する能力が低下している場合には、家族など患者の介護者にオピオイド鎮痛薬についての知識を教育し、その管理に関与するように指導することも重要である。本症例をまとめると、急性期の腰椎圧迫骨折に対してオピオイド鎮痛薬を早期から導入し、疼痛緩和とADLの改善を達成したことは適切であった。慢性期の腰痛に対して、オピオイド鎮痛薬を増量するとともに頓用させていた点は不適切であった。したがって、オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、治療指針などの推奨事項を十分に理解したうえで適切に使用し、そのことを患者に教育しなければならない。つまり、オピオイド鎮痛薬に対する精神依存や濫用の形成から患者を保護することは医師の義務であると同時に、これらが疑われる患者やオピオイド鎮痛薬の不適切使用が認められる患者に対しては、痛みの重症度にかかわらずオピオイド鎮痛薬を処方しないことは医師の権利であると考えている。

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