ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori:以下、ピロリ菌)の除菌効果は、プロトンポンプ阻害薬オメプラゾールと次クエン酸ビスマス+メトロニダゾール+テトラサイクリンの4剤併用レジメンが、標準的な3剤併用療法よりも優れることが、ドイツ・Otto-von-Guericke大学のPeter Malfertheiner氏らの検討で示された。ピロリ菌は、消化性潰瘍、胃がん、胃MALTリンパ腫など上部消化管の良性/悪性疾患を引き起こすが、先進国では国民の20~50%が、開発途上国では最大で80%が感染しているとされる。日本を含め国際的なガイドラインでは、標準的な1次治療としてオメプラゾールにアモキシシリンとクラリスロマイシンを併用する方法が推奨されるが、最近の耐性菌の増加に伴い新たなレジメンの開発が求められているという。Lancet誌2011年3月12日号(オンライン版2011年2月22日号)掲載の報告。
除菌率を比較する非劣性試験、優越性も評価
研究グループは、ピロリ菌の除菌治療における標準治療とオメプラゾール+3つの抗菌薬を含有するカプセル薬併用療法の有効性および安全性を比較するオープンラベルの無作為化第III相非劣性試験を行った。
2008年6月~2009年6月までに、7ヵ国(フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、ポーランド、スペイン、イギリス)の39施設から、ピロリ菌感染が確認され、上部消化管症状を呈する18歳以上の患者が登録された。
これらの患者が、オメプラゾール20mg(1カプセルを朝夕食後の1日2回)+3剤含有カプセル薬(次クエン酸ビスマス140mg、メトロニダゾール125mg、テトラサイクリン125mg、3カプセルを毎食後と就寝前の1日4回)を10日間服用する群(4剤併用群)、あるいはオメプラゾール20mg+アモキシシリン500mg+クラリスロマイシン500mg(朝夕食前の1日2回)を7日間服用する群(標準治療群)に無作為に割り付けられた。
主要評価項目はピロリ菌除菌率とし、治療終了後28日以降と56日以降に13C尿素呼気試験(UBT)を行い、2回とも陰性の場合に「除菌」と判定した。本研究は非劣性試験としてデザインされたが優越性の検出能も備えていた。非劣性の評価ではper-protocol(PP)解析を行い、優越性についてはintention-to-treat(ITT)解析を実施した。
除菌率:PP解析で93% vs. 70%、ITT解析で80% vs. 55%
ITT集団の440例(4剤併用群:218例、標準治療群:222例)のうち、UBT非施行例など101例(それぞれ40例、61例)を除く339例(178例、161例)がPP集団となった。
PP解析における除菌率は、4剤併用群が93%(166/178例、95%信頼区間:88.5~96.5%)、標準治療群は70%(112/161例、同:61.8~76.6%)であった。両群間の差の95%信頼区間は15.1~32.3%(p<0.0001)であり、4剤併用群の95%信頼区間の下限値は事前に規定された非劣性の境界値である-10%よりも大きく、標準治療に対する非劣性が確認された。
ITT解析でも、4剤併用群の除菌率は80%(174/218例)と、標準治療群の55%(123/222例)に比べ有意に優れていた(p<0.0001)。
安全性プロフィールは両群で同等であり、主な有害事象は消化管および中枢神経系の障害であった。
著者は、「ピロリ菌の除菌治療においては、標準的な3剤併用レジメンの7日間服用よりも、ビスマス製剤を含む抗菌薬3剤+オメプラゾールの4剤併用レジメンの10日間服用のほうが有意に優れる」と結論し、「4剤併用は安全性と耐用性が標準治療と同等で、除菌効果は有意に優れるため、クラリスロマイシン耐性ピロリ菌増加の観点からは、4剤併用レジメンを1次治療として考慮すべき」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)