小児の心拍数と呼吸数の正常範囲は、既存のガイドラインの定義と実際とで著しく異なることが、英国・オックスフォード大学プライマリ・ケア科のSusannah Fleming氏らの調査で明らかとなった。心拍数と呼吸数は、小児の心肺蘇生中の救命介入への反応の予測において重要な因子であり、疾患急性期の標準的な臨床評価やトリアージにおいても不可欠な要素である。しかし、既存のガイドラインの正常範囲の多くは臨床的なコンセンサスに準拠しており、エビデンスに基づくものではないという。Lancet誌2011年3月19日(オンライン版2011年3月15日号)掲載の報告。
新たなパーセンタイル曲線を作成して既存データと比較
研究グループは、健常小児のバイタルサインに関する観察研究の系統的なレビューを行い、心拍数と呼吸数についてエビデンスベースの新たな正常範囲の基準値の定義を試みた。
Medline、Embase、CINAHLおよび文献リストを検索して、1950~2009年4月までに発表された0~18歳の健常小児の心拍数あるいは呼吸数について検討した試験を抽出した。
ノンパラメトリックカーネル回帰を用いて、年齢別の心拍数と呼吸数のパーセンタイル曲線を作成した。次いで、得られたデータを既存の基準範囲と比較した。
心拍数、呼吸数とも既存値と顕著に相違
選択基準を満たした69試験から、小児の心拍数(14万3,346人)および呼吸数(3,881人)のデータを抽出して0~18歳のパーセンタイル曲線を作成した。
呼吸数は出生から青年期にかけて低下しており、2歳以下の幼児期における低下度が最も急激であった。すなわち、呼吸数中央値は出生時の44回/分から2歳時には26回/分にまで低下した。
心拍数は、生後1ヵ月に小さなピークがみられた。心拍数中央値が出生時の127拍/分から約1ヵ月後には145拍/分と最大値に達し、その後2歳時には113拍/分にまで低下した。
これらのデータを、公表されている既存の心拍数、呼吸数の基準範囲と比較したところ、顕著な相違がみられた。既存のガイドラインの正常範囲の基準値は、今回得られた0~18歳の99パーセンタイルおよび1パーセンタイルの曲線を逸脱したり、中央値の曲線と交差する場合もみられた。
著者は、「これらのエビデンスベースのパーセンタイル曲線は、小児の疾患急性期の臨床評価とともに、蘇生ガイドラインの改訂やトリアージスコアの策定などに有用と考えられる」と結論している。
(菅野守:医学ライター)