アスピリンによる抗血小板作用が通常ほど見られない「アスピリン抵抗性」の存在が知られているが、20試験2,930例を解析したところ、心血管系疾患患者の28%に「抵抗性」が見られ、それらの患者では「非抵抗性」患者に比べ心血管系イベントリスク、死亡ともにオッズ比が有意に増加しているとの報告がBMJ誌2008年1月26号に掲載された(オンライン版1月17日付)。University Health Network(カナダ)のGeorge Krasopoulos氏らが報告した。
解析20試験中アスピリン抵抗性は2,930例中810例(28%)
本解析に含まれた20試験はいずれも、心血管系疾患患者に対するアスピリンの予後改善作用を検討したものである。アスピリン抵抗性の有無はそれぞれの試験で定義されている場合それに従い、定義がない場合はKrasopoulos氏らが文献から判定した。また6試験985例では、クロピドグレルやGPIIb/IIIa阻害薬などアスピリン以外の抗血小板薬服用が許されていた。
その結果、アスピリン抵抗性は2,930例中810例(28%)に認められた。男性に比べ女性、腎機能正常患者に比べ腎機能低下患者で「抵抗性」は有意に多かった。
また「抵抗性」患者では、心血管系イベント発生リスクが有意に高かった。すなわち、「非抵抗性」患者に比べたオッズ比は、全心血管系イベント:3.85(95%信頼区間:3.08~4.80)、急性冠症候群:4.06(95%信頼区間:2.96~5.56)、脳血管障害初発:3.78(95%信頼区間:1.25~11.41)、全死亡:5.99(95%信頼区間:2.28~15.72)だった。
アスピリン抵抗性患者における心血管系イベントリスクの増加は、75~100mg/日、100超~325mg/日、いずれの用量でも認められた。
本当にアスピリン抵抗性なのか
以上などからKrasopoulos氏らは「アスピリン抵抗性患者は心血管系イベントリスクが高い」と結論する。ただし本研究では3試験390例(13.3%)ではアスピリンの服薬コンプライアンスが全く確認されておらず、試験期間中コンプライアンスが繰り返し検討されたのは1試験71例だけだった。
またKrasopoulos氏らは、アスピリン抵抗性が見られる患者でも、それ故に処方を中止することのないよう注意を喚起している。
なおアスピリン抵抗性患者を対象としたGPIIb/IIIa阻害薬による二次予防作用を賢答化する無作為化試験として、TREND-AR(TiRofiban Evaluation of Surrogate ENDpoints in Prevention of Ischemic Complications During Percutaneous Interventions in Patients With Coronary Disease and Aspirin Resistance)[NCT00398463] が2006年5月に開始されたが、2007年末、対象患者にクロピドグレル抵抗性患者も含まれるよう変更された。終了は2011年の予定だという。
(宇津貴史:医学レポーター)