医師は医学文献を正しく理解するのに必要な統計的知識をどれぐらい持ち得ているのだろうか。内科研修医を対象とする統計方法および調査結果を正しく解釈できるか否かに関するサーベイが、エール大学医学部内科学Donna M. Windish氏らによって行われた。JAMA誌9月5日号の報告から。内科研修医対象に統計的知識を問う多項目選択式テスト
本サーベイは、複数の医学研修プログラムに参加する内科研修医を対象に横断的に行われた。Donna氏らは、まずBMJ、JAMA、Lancet、NEJMなど主要な総合医学専門誌6誌から、生物統計学・研究デザインに関する知識を問う20の質問事項からなる多項目選択式テストを作成。前段に、(1)年齢、研修レベル、統計学に関する過去のトレーニング経験の有無などからなる問い、(2)統計学に対する考え方を聞く5つの質問項目からなる問い、(3)統計概念の解釈と評価に関する4つの質問項目からなる問いを併せた調査票を用意した。これを用いてサーベイを行い、11の医学研修期間プログラムに参加する277人の研修医から回答が得られた(75.5%)。
正確な統計知識と結果解釈は平均41.4%
主要評価項目とした統計知識と結果解釈が正しかった割合は、研修医全体平均41.4%(95%信頼区間:39.7%-43.3%)。リサーチ・トレーニング中のフェローおよび総合内科教職員(faculty)は71.5%(同57.5%-85.5%)であった(P<0.001)。
スコアは、より高位の学位を持っている(Yes:50.0%、No:40.1%、P<0.001)、生物統計学トレーニングの経験(Yes:45.2%、No:37.9%、P=0.001)、大学のトレーニングプログラムに登録している(Yes:43.0%、No:36.3%、P=0.002)、そして男性(44.0%、女性38.8%、P=0.004)と相関してより高かった。
各質問項目で正しく相対危険度を解釈できたのは81.6%。
Donna氏は、「研修医は、どのように多変量回帰分析(37.4%)やカプラン・マイヤー解析(10.5%)の結果から補正オッズ比をどう解釈すべきかほとんどわかっていないようだ。学術誌論文で遭遇した統計について75%が全く理解できていないことを示していた。それでも、95%が文献の知的な読者であるためには、これらの概念を理解することが重要であることも感じている」と述べ、研修医が首尾よくこの重要な生涯スキル学習への道を歩めるよう、効果的な生物統計学に関するトレーニングを研修プログラムのカリキュラムに含む必要があると提起した。
(武藤まき:医療ライター)